JP2002541803A - 乳癌の処置および診断のための組成物ならびに方法 - Google Patents

乳癌の処置および診断のための組成物ならびに方法

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Abstract

(57)【要約】 乳癌の、検出および治療のための、組成物および方法が開示される。提供される本願化合物は、乳房腫瘍組織において優先的に発現されるヌクレオチド配列、ならびにこのようなヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドを含む。このような化合物を含むワクチンおよび薬学的組成物もまた提供され、そして、例えば、乳癌の予防および処置のために使用され得る。このポリペプチドはまた、抗体の産生のために使用され得、この抗体は、患者における乳癌の進行を診断およびモニターするのに有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は、一般に、乳癌の検出および治療に関する。本発明は、より詳細には
、乳房腫瘍組織で優先的に発現されるヌクレオチド配列およびこのようなヌクレ
オチド配列によりコードされるポリペプチドに関する。ヌクレオチド配列および
ポリペプチドは、乳癌の予防および処置のためのワクチンおよび薬学的組成物に
おいて使用され得る。ポリペプチドはまた、化合物(例えば、患者における乳癌
の進行を診断およびモニターするために有用な抗体)の産生のために使用され得
る。
【0002】 (発明の背景) 乳癌は、米国および世界中で、女性についての重大な健康問題である。その疾
患の検出および処置において、進歩が成されてきたが、乳癌は、女性の癌関係の
第二番目の死因のままであり、毎年、米国で180,000人を超える女性が罹
患している。北米の女性に関して、生存中の乳癌に罹る可能性は、現在8人に1
人である。
【0003】 現在のところ利用可能である、乳癌の予防または処置のためのワクチンまたは
他の一般に優れた方法は存在しない。その疾患の対応は、現在のところ、早期の
診断(慣用的な乳房のスクリーニング手順を通じて)および積極的な処置の組み
合わせに依存し、その処置は、手術、放射線治療、化学療法、およびホルモン療
法のような、1以上の種々の処置を含み得る。特定の乳癌の処置の過程は、しば
しば、特異的な腫瘍マーカーの分析を含む、種々の予後のパラメーターに基づい
て選択される。例えば、Porter−JordanおよびLippman、B
reast Cancer 8:73−100(1994)を参照のこと。しか
し、確立されたマーカーの使用は、しばしば、解釈が難しい結果を導き、そして
乳癌患者において観察される高い死亡率は、その疾患の処置、診断、および予防
において、改善が必要とされることを示している。
【0004】 従って、当該分野において、乳癌の治療および診断の改善された方法の必要性
が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、さらに他の関係する利点を提
供する。
【0005】 (発明の要旨) 手短に述べると、本発明は、乳癌の診断および治療のための組成物および方法
を提供する。第1の局面において、単離されたポリヌクレオチドが提供され、こ
のようなポリヌクレオチドは、以下を含む:(a)正常組織と比較して、乳癌組
織において優先的に発現されるヌクレオチド配列;(b)以下で規定されるよう
な、このような配列の改変体;あるいは、(c)上記の配列の少なくとも1つに
よりコードされるポリペプチドのエピトープをコードするヌクレオチド配列。1
つの実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1に列挙され
るヒト内因性レトロウイルス配列を含む。他の実施形態において、単離されたポ
リヌクレオチドは、以下の配列:
【0006】
【化11】 のいずれか1つに列挙される配列を含む。
【0007】 関連する実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、ポリペプチドの
エピトープをコードし、ここでこのポリペプチドは、以下のようなヌクレオチド
配列によりコードされる:(a)ストリンジェントな条件下で、以下の配列:
【0008】
【化12】 のいずれか1つに列挙される配列に対してハイブリダイズするヌクレオチド配列
;および(b)以下の配列:
【0009】
【化13】 のいずれか1つに列挙される配列と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配
列。
【0010】 別の実施形態において、本発明は、ポリペプチドのエピトープをコードする単
離されたポリヌクレオチドを提供し、このポリペプチドは、以下によりコードさ
れる:(a)配列番号141の配列から転写されるヌクレオチド配列;または(
b)わずか20%のヌクレオチド位置で1つ以上のヌクレオチド置換、欠失、挿
入および/または改変を含む上記ヌクレオチド配列の改変体。この結果、上記の
ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの抗原および/または免疫原
性特性が保持される。上記のように、ポリヌクレオチドに対して相補的なヌクレ
オチド配列を含む、単離されたDNA分子およびRNA分子もまた、提供される
【0011】 関連する局面において、本発明は、上記のようなポリヌクレオチドを含む組換
え発現ベクターおよびこのような発現ベクターを用いて形質転換またはトランス
フェクトされた宿主細胞を提供する。
【0012】 さらなる局面において、上記のようなポリヌクレオチドによりコードされるア
ミノ酸配列を含むポリペプチド、およびこのようなポリペプチドに結合するモノ
クローナル抗体が提供される。特定の実施形態において、本願ポリペプチドは、
配列番号:299、300、304〜306、308および315からなる群よ
り選択されるアミノ酸配列、ならびに以下に規定されるようなその改変体を含む
【0013】 なお別の局面において、患者における乳癌の存在を決定するための方法が、提
供される。1つの実施形態において、この方法は、生物学的サンプル中に上記の
ようなポリペプチドを検出する工程を包含する。別の実施形態において、この方
法は、生物学的サンプル中に、上記のようなポリペプチドをコードするRNA分
子を検出する工程を包含する。なお別の実施形態において、この方法は、(a)
上記のようなポリペプチドを患者の皮内に注入する工程;および(b)患者の皮
膚における免疫応答を検出する工程およびそれから患者における乳癌の存在を検
出する工程を包含する。さらなる実施形態において、本発明は、上記のような患
者における乳癌の存在を決定するための方法を提供し、この癌の存在において、
ポリペプチドは、以下の配列番号:
【0014】
【化14】 およびストリンジェントな条件下でそれに対してハイブリダイズする配列からな
る群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0015】 関連する局面において、乳癌の決定において有用な診断キットが提供される。
この診断キットは、一般に、上記のような1つ以上のモノクローナル抗体、また
は以下の配列番号:
【0016】
【化15】 において提供される配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によりコー
ドされるポリペプチドに結合する1つ以上のモノクローナル抗体のいずれか、な
らびに検出試薬を含む。
【0017】 診断キットもまた提供され、この診断キットは、第1のポリメラーゼ連鎖反応
プライマーおよび第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーを含み、このプライマ
ーの少なくとも1つは、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドに特異的であ
る。1つの実施形態において、少なくとも1つのプライマーは、上記のようなポ
リヌクレオチドの少なくとも約10個の連続するヌクレオチド、または以下の配
列:
【0018】
【化16】 からなる群より選択される配列によりコードされるポリペプチドをコードするポ
リヌクレオチドを含む。
【0019】 別の関連する局面において、診断キットは、少なくとも1つのオリゴヌクレオ
チドプローブを含み、このプローブは、本明細書中に記載されるポリヌクレオチ
ドに特異的である。1つの実施形態において、このプローブは、上記のようなポ
リヌクレオチドの少なくとも約15個の連続するヌクレオチド、または以下の配
列:
【0020】
【化17】 からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む。
【0021】 別の関連する局面において、本発明は、患者における乳癌の進行をモニターす
るための方法を提供する。1つの実施形態において、この方法は、以下の工程:
(a)生物学的サンプルにおいて、第1の時点で上記のようなポリペプチドの量
を検出する工程;(b)次の時点で、工程(a)を繰り返す工程;および(c)
工程(a)および(b)において検出されるポリペプチドの量を比較し、そして
そこから患者における乳癌の進行をモニターする工程、を包含する。別の実施形
態において、この方法は、(a)生物学的サンプルにおいて、第1の時点で上記
のようなポリペプチドをコードするRNA分子の量を検出する工程;(b)次の
時点で工程(a)を繰り返す工程;および(c)工程(a)および(b)におい
て検出されるRNA分子の量を比較し、そしてそこから患者における乳癌の進行
をモニターする工程を包含する。なお他の実施形態において、本発明は、上記の
ような患者における乳癌の進行をモニターし、ここでこのポリペプチドは、以下
の配列:
【0022】
【化18】 およびストリンジェントな条件下でそれに対してハイブリダイズする配列からな
る群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0023】 なお他の局面において、生理学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、上記
のようなポリペプチドを含む薬学的組成物、および免疫促進剤またはアジュバン
トと組み合わせて上記のようなポリペプチドを含むワクチンが提供される。なお
他の局面において、本発明は、薬学的組成物およびワクチンを提供し、これらは
、以下の配列:
【0024】
【化19】 およびストリンジェントな条件下でそれらに対しハイブリダイズする配列、から
なる群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドを含む
【0025】 関連する局面において、本発明は、患者における乳癌の発達を阻害するための
方法を提供し、この方法は、上記のような薬学的組成物またはワクチンを、患者
に投与する工程を包含する。
【0026】 本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照
して明らかとなる。本明細書中に開示される全ての参考文献は、各々が個々に援
用されるように、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0027】 (発明の詳細な説明) 上記のように、本発明は、一般的に、乳癌の診断、モニタリングおよび治療の
ための組成物および方法に関する。本明細書中に記載される組成物としては、ポ
リペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体が挙げられる。本発明のポリペプチド
は、一般的に、正常な乳房組織よりヒト乳房腫瘍組織において、より大きいレベ
ルで発現される(すなわち、ポリペプチドをコードするRNAのレベルが、腫瘍
組織において少なくとも2倍高い)タンパク質の少なくとも一部を含む。このよ
うなポリペプチドは、本明細書中で乳房腫瘍特異的ポリペプチドといわれ、そし
てこのようなポリペプチドをコードするcDNA分子は、乳房腫瘍特異的cDN
Aといわれる。本発明のポリヌクレオチドは、一般に、上記のようなポリペプチ
ドの全てまたは一部をコードするか、またはこのような配列に対して相補的であ
る、DNA配列またはRNA配列を含む。抗体は、一般的に、免疫系部分または
そのフラグメントであり、これらは、上記のようなポリペプチドの一部分に結合
可能である。抗体は、細胞培養技術により産生され得、この技術としては、組換
え抗体の産生を可能にするために、本明細書中に記載されるようなモノクローナ
ル抗体の生成、または抗体遺伝子の適切な細菌細胞宿主または哺乳動物細胞宿主
中へのトランスフェクションを介することを含む。
【0028】 本発明の範囲内のポリぺプチドとしては、これらに限定されないが、ヒト内因
性レトロウイルス配列(例えば、B18Ag1で示された配列)(図5および配
列番号1)によりコードされるポリペプチド(およびそのエピトープ)が挙げら
れる。B18Ag1(配列番号141)を含むレトロウイルスゲノム内の他の配
列によりコードされるポリペプチドもまた、本発明の範囲内である。このような
配列としては、これらに限定されないが、配列番号3〜10に列挙される配列が
挙げられる。B18Ag1は、内因性ヒトレトロウイルスエレメントS71のg
ag p30遺伝子に対する相同性を有し(Wernerら、Virology
174:225−238に記載されるような)、そしてまた、約30個の他の
レトロウイルスgag遺伝子に対する相同性を示す。以下でより詳細に議論され
るように、本発明はまた、多くの付加的な乳房腫瘍特異的ポリペプチドを含む(
例えば、以下の配列番号において列挙されるヌクレオチド配列によりコードされ
るポリペプチド:
【0029】
【化20】 本明細書中に使用される場合、用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ
酸鎖(本明細書中に列挙される配列を含む全長タンパク質を含む)を含む。本明
細書中に記載されるような配列を含むタンパク質のエピトープを含むポリペプチ
ドは、大体、エピトープからなり得、または付加的な配列を含み得る。付加的な
配列は、ネイティブなタンパク質に由来し得るか、または異種であり得、そして
このような配列は、(必要ではないが)免疫原性特性または抗原特性を保有し得
る。
【0030】 「エピトープ」とは、本明細書中において使用する場合、B細胞および/また
はT細胞の表面抗原レセプターにより認識される(すなわち、特異的に結合され
る)、ポリペプチドの部分である。エピトープは、一般的にPaul,Fund
amental Immunology,第3版、243−247(Raven
Press,1993)およびそこに引用される参考文献に要約される技術の
ような周知技術を使用して、同定され得る。このような技術は、抗原特異的な抗
血清および/あるいはT細胞株またはT細胞クローンと反応する能力について、
ネイティブなポリペプチド由来のポリペプチドをスクリーニングする工程を含む
。ポリペプチドのエピトープは、(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反
応性アッセイにおいて)その全長ポリペプチドの反応性に類似のレベルで、この
ような抗血清および/またはT細胞と反応する部分である。このようなスクリー
ニングは、一般的に、当業者に周知の方法(例えば、HarlowおよびLan
e,Antibodies:A Laboratory Manual,Col
d Spring Harbor Laboratory,1988に記載の方
法)を使用して行われ得る。B細胞およびT細胞のエピトープはまた、コンピュ
ーター分析により、予測され得る。腫瘍組織において優先的に発現されるポリペ
プチドのエピトープを含むポリペプチド(さらなるアミノ酸配列を有するかまた
は有さない)は、本発明の範囲内である。
【0031】 本明細書において用いる場合、用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌ
クレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意
味し、そしてDNA分子および対応するRNA分子を含む。これは、HnRNA
分子およびmRNA分子、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含み、そして
cDNA、ゲノムDNAおよび組換えDNA、ならびに全合成ポリヌクレオチド
または部分合成ポリヌクレオチドを含む。HnRNA分子は、イントロンを含み
、そして一般に1対1の様式でDNA分子に対応する。mRNA分子は、イント
ロンが切除されたHnRNA分子およびDNA分子に対応する。ポリヌクレオチ
ドは、遺伝子全体またはその任意の部分からなり得る。作動可能なアンチセンス
ポリヌクレオチドは、対応するポリヌクレオチドのフラグメントを含み得、従っ
て、「ポリヌクレオチド」の定義には、このような作動可能なアンチセンスフラ
グメントのすべてを含む。
【0032】 本発明の組成物および方法はまた、上記のポリペプチドおよびポリヌクレオチ
ドの改変体を包含する。
【0033】 本明細書において用いる場合、ポリペプチドの「改変体」は、このポリペプチ
ドの抗原性の特性が保持されるような保存的な置換および/または改変でのみ、
示されたポリペプチドと異なるポリペプチドである。好ましい実施態様において
、改変ポリペプチドは、同定された配列と、5アミノ酸以下の置換、欠失または
付加だけ異なる。このような改変体は、一般に、上記のポリペプチド配列の1つ
の改変により、および例えば、本明細書において記載される代表的な手順を用い
て、この改変されたポリペプチドの抗原性特性を評価することにより同定され得
る。ポリペプチド改変体は、好ましくは、同定されたポリペプチドに対して、少
なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは
少なくとも約95%の同一性(以下で記載されたように決定された)を示す。
【0034】 本明細書において用いる場合、「保存的置換」は、アミノ酸が類似の特性を有
する別のアミノ酸へと置換されるものであり、この結果、ペプチド化学の当業者
は、そのポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標(hydropath
ic)の特徴が実質的に変化しないことを予想する。一般に、アミノ酸の以下の
群は保存的変化を表す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gl
n、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)
val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、h
is;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0035】 改変体はまた(または、代わりに)、他の改変を含み得、これは、ポリペプチ
ドの抗原性特性、二次構造および疎水性親水性指標の特徴に最小限の影響を有す
るアミノ酸の欠失または付加を含む。例えば、ポリペプチドは、タンパク質の転
移を翻訳と同時にまたは翻訳後に指向するそのタンパク質のN末端のシグナル(
またはリーダー)配列に結合体化され得る。このポリペプチドはまた、ポリペプ
チド(例えば、ポリ−His)の合成、精製または同定を容易にするために、あ
るいは固体支持体へのポリペプチドの結合を増強するために、リンカーまたは他
の配列に結合体化され得る。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域
に結合体化され得る。
【0036】 ヌクレオチド「改変体」は、1つ以上のヌクレオチドの欠失、置換または付加
を有するという点で挙げられたヌクレオチド配列と異なる配列である。このよう
な改変は、標準的な変異誘発技術(例えば、Adelmanら(DNA、2:1
83、1983)に教示されるような、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変
異誘発を用いて容易に導入され得る。ヌクレオチド改変体は、天然に存在する対
立遺伝子改変体、または天然に存在しない改変体であり得る。改変体のヌクレオ
チド配列は、好ましくは、挙げられた配列に対して、少なくとも約70%、より
好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも約90%の同
一性(以下で記載されたように決定された)を示す。
【0037】 本発明によって提供される乳癌腫瘍抗原は、本明細書において具体的に挙げら
れた1つ以上のDNA配列に対して実質的に相同であるDNA配列によってコー
ドされる改変体を含む。本明細書において用いる場合、「実質的な相同性」は、
中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA配列をいう。
適切である、中程度にストリンジェントな条件としては、以下が挙げられる:5
×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での
予備洗浄;50℃〜65℃、5×SSC(または、種交叉相同性の場合は、45
℃で0.5×SSC)での、一晩のハイブリダイゼーション;続いて各々0.1
%SDS含有の2×、0.5×および0.2×SSCのそれぞれを用いた20分
間、65℃での2回の洗浄。このようなハイブリダイズするDNA配列はまた、
本発明の範囲内である。なぜなら、ヌクレオチド配列はコードの縮重に起因して
、ハイブリダイズするDNA配列によりコードされる免疫原性ポリペプチドをコ
ードするからである。
【0038】 2つのヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、その2つの配列における
ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列が、以下に記載のように最大一致につい
て整列されたときに同じである場合に、「同一」であるといわれる。2つの配列
の間の比較は、代表的には、比較ウインドウにわたって配列を比較して配列類似
性の局所領域を同定および比較することにより実行される。本明細書において用
いる場合、「比較ウインドウ」は、少なくとも約20の連続位置、通常30〜約
75、40〜約50のセグメントをいい、ここで配列は、2つの配列が最適に整
列された後、同じ数の連続位置の参照配列と比較され得る。
【0039】 比較のための配列の最適整列は、デフォルトパラメーターを用いて、バイオイ
ンフォーマティクス(生物情報科学)のソフトウエア(DNASTAR、Inc
.,Madison,WI)のLasergene suiteにおけるMeg
alignプログラムを用いて行われ得る。このプログラムは、以下の参考文献
において記載されたいくつかの整列スキームを統合する:Dayhoff、M.
O.(1978)(A model of evolutionary cha
nge in proteins−Matrices for detecti
ng distant relationships)、Dayhoff、M.
O.(編)Atlas of Protein Sequence and S
tructure、National Biomedical Researc
h Foundation、Washington DC、第5巻、補遺3、3
45〜358頁;Hein J.(1990)Unified Approac
h to Alignment and Phylogenes 626〜64
5頁 Methods in Enzymology 183巻、Academ
ic Press、Inc.,San Diego、CA;Higgins、D
.G.およびSharp、P.M.(1989)Fast and sensi
tive multiple sequence alignments on
a microcomputer CABIOS 5:151〜153;My
ers,E.W.およびMuller W.(1988)Optimal al
ignments in linear space CABIOS 4:11
〜17;Robinson、E.D.(1971)Comb.Theor 11
:105;Santou、N.Nes、M.(1987)The neighb
or joining method.A new method for r
econstructing phylogenetic trees Mol
.Biol.Evol.4:406〜425;Sneath,P.H.A.およ
びSokal、R.R.(1973)Numerical Taxonomy−
the Principles and Practice of Numer
ical Taxonomy、Freeman Press、San Fran
cisco、CA;Wilbur、W.J.およびLipman,D.J.(1
983)Rapid similarity searches of nuc
leic acid and protein data banks Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0040】 好ましくは、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20の位置の比
較ウインドウにわたって2つの最適に整列した配列を比較することにより決定さ
れる。ここで、比較ウインドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、2つの
配列の最適整列について参照配列(付加または欠失を含まない)と比較した場合
、20%以下、通常、5〜15%、または10〜12%の付加または欠失(すな
わち、ギャップ)を含み得る。このパーセンテージは、適合した位置の数を算出
するために、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に存在する位置の
数を決定すること、適合する位置の数を参照配列の位置の総数(すなわち、ウイ
ンドウのサイズ)で割ること、そして配列同一性のパーセンテージを算出するた
めに得られた結果を100倍することにより算出される。一般に、本明細書中に
記載されるポリペプチドの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドは、い
くつかの技術のいずれかを使用して、調製され得る。例えば、このようなポリペ
プチドをコードするcDNA分子は、ディファレンシャルディスプレイPCRを
用いて、対応するmRNAの乳房腫瘍特異的発現に基づいてクローン化され得る
。この技術は、正常な組織および乳房腫瘍組織から調製されたRNAテンプレー
ト由来の増幅産物を比較する。cDNAは、(dT)12AGプライマーを用いる
RNAの逆転写により調製され得る。ランダムプライマーを用いるcDNAの増
幅後、腫瘍RNAに特異的な増幅産物に対応するバンドは、銀染色したゲルから
切り出され、そして適切なベクター(例えば、Tベクター、Novagen,M
adison,WI)にサブクローニングされ得る。本明細書中に開示される乳
房腫瘍特異的ポリペプチドの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドは、
上記のように調製されたcDNAから、配列番号87〜125に示すランダムプ
ライマーを使用して、増幅され得る。
【0041】 あるいは、本明細書中に記載されるポリペプチド(またはその部分)をコード
するポリヌクレオチドは、ヒトゲノムDNAから、または乳房腫瘍cDNAから
、ポリメラーゼ連鎖反応により、増幅され得る。このアプローチのために、B1
8Ag1配列特異的プライマーが、配列番号1に与えられる配列に基づいて設計
され得、そして購入または合成され得る。乳房腫瘍cDNAからの増幅のために
適した1つのプライマー対は、(5’ATG GCT ATT TTC GGG
GGC TGA CA)(配列番号126)および(5’CCG GTA T
CT CCT CGT GGG TAT T)(配列番号127)である。次い
で、B18Ag1の増幅部分を使用して、ヒトゲノムDNAライブラリーから、
または乳房腫瘍cDNAライブラリーから、周知の技術(例えば、Sambro
okら、Molecular Cloning:A Laboratory M
anual、Cold Spring Harbor Laboratorie
s、Cold Spring Harbor、NY(1989)に記載される技
術)を使用して、全長遺伝子を単離し得る。B18Ag1が一部を構成するレト
ロウイルスゲノム内の他の配列は、B18Ag1に特異的な配列をプローブとし
て使用して、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、同様に
調製され得る。次いで、配列番号141に示すレトロウイルスゲノム由来のタン
パク質に翻訳されるヌクレオチドを、対応するcDNAをクローニングすること
により決定し得、オープンリーディングフレームを推定し、そして適切なcDN
Aを、T7のようなウイルスプロモーターを含むベクターにクローニングする。
得られる構築物を、当業者に周知の技術を使用する翻訳反応に使用し、タンパク
質の発現を生じるヌクレオチド配列を同定し得る。同様に、本明細書中に記載の
乳房腫瘍特異的ポリペプチドの残りに特異的なプライマーを、配列番号11〜8
6、142〜298、301〜303、307、313、314、316および
317に与えられるヌクレオチド配列に基づいて、設計し得る。
【0042】 上記DNA配列によりコードされる組換えポリペプチドは、DNA配列から容
易に調製され得る。例えば、培養培地中に組換えタンパク質またはポリペプチド
を分泌する適切な宿主/ベクター系由来の上清は、まず、市販のフィルターを用
いて濃縮され得る。濃縮後、濃縮物を適切な精製マトリックス(例えば、アフィ
ニティーマトリックスまたはイオン交換樹脂)に適用し得る。最終的に、1回以
上の逆相HPLC工程を用いて、組換えポリペプチドをさらに精製し得る。
【0043】 一般に、当業者に公知の種々の発現ベクターのいずれかを使用して、本発明の
組換えポリペプチドを発現させ得る。発現は、組換えポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされて
いる任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞としては、原
核生物細胞、酵母細胞および高等真核生物細胞が挙げられる。好ましくは、使用
される宿主細胞は、E.coli、酵母、またはCOSもしくはCHOのような
哺乳動物の細胞株である。
【0044】 このような技術はまた、ネイティブなポリペプチドのエピトープまたは改変体
を含むポリペプチドを調製するために、使用され得る。例えば、ネイティブなポ
リペプチドの改変体は、一般に、標準的な変異誘発技術(例えば、オリゴヌクレ
オチド指向性部位特異的変異誘発)を使用して調製され得、そしてDNA配列の
部分が除去されて、短縮化ポリペプチドの調製を可能にし得る。約100より少
ないアミノ酸、および一般的に、約50より少ないアミノ酸を有する部分および
他の改変体もまた、合成の手段により、当業者に周知の技術を用いて作製され得
る。例えば、このようなポリペプチドは、伸長しているアミノ酸鎖にアミノ酸が
順次加えられるMerrifield固相合成法のような、商業的に利用可能な
固相技術のいずれかを用いて合成され得る。Merrifield、J.Am.
Chem.Soc.85:2149−2146(1963)を参照のこと。ポリ
ペプチドの自動合成装置は、Perkin Elmer/Applied Bi
oSystems Division(Foster City、CA)のよう
な供給業者から市販されており、そして製造業者の使用説明書に従って操作し得
る。
【0045】 特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、以下のいずれか1つに表
される配列を有するポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含む:
配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154
〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204
、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240
、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266
、268、269、271〜273、275、276、278、280、281
、284、288、291〜298、301〜303、307、313、314
、316および317;ならびにこのようなポリペプチドの改変体。本発明の範
囲内のポリペプチドはまた、ストリンジェントな条件下で、以下のいずれか1つ
により表される配列とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる、ポリ
ペプチド(およびそのエピトープ)を含む:配列番号1、3〜26、28〜77
、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178
〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214
、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250
、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273
、275、276、278、280、281、284、288、291〜298
、301〜303、307、313、314、316および317。ここで、こ
のDNA配列は、示される配列に対して全体の配列が少なくとも80%同一であ
り、そしてここで、このヌクレオチド配列に対応するRNAは、正常な胸部組織
より高いレベルで、ヒト胸部腫瘍組織において発現される。本明細書中において
使用する場合に、「ストリンジェントな条件」とは、6×SSC、0.2%SD
Sの溶液中での予備洗浄;65℃で、6×SSC、0.2%SDSで一晩のハイ
ブリダイゼーション;続いて各々65℃で1×SSC、0.1%SDS中での3
0分間の2回の洗浄、および各々65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中で
の30分間の2回の洗浄をいう。本発明によるポリヌクレオチドは、上記ポリペ
プチドのいずれかをコードする分子を含む。
【0046】 本発明の別の局面において、抗体が提供される。このような抗体は、当業者に
公知の種々の技術のいずれかにより、調製され得る。例えば、Harlowおよ
びLane、Antibodies:A Laboratory Manual
、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を
参照のこと。1つのこのような技術において、ポリペプチドを含む免疫原は、任
意の広範な種々の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、または
ヤギ)にまず注射される。この工程で、本発明のポリペプチドは、改変なしの免
疫原として働き得る。あるいは、特に、比較的短いポリペプチドについて、この
ポリペプチドがキャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはキーホ
ールリンペットヘモシアニン)に結合する場合、優れた免疫応答が惹起され得る
。この免疫原は、好ましくは所定のスケジュール(1回以上のブースター免疫を
組み込む)に従って、動物宿主に注射され、そしてこの動物は、定期的に採血さ
れる。次いで、このポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体は、例えば、適
切な固体支持体に結合しているポリペプチドを用いるアフィニティークロマトグ
ラフィーにより、このような抗血清から精製され得る。
【0047】 目的の抗原性ポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体は、例えば、
KohlerおよびMilstein、Eur.J.Immunol.6:51
1−519(1976)の技術、ならびにその改良型を使用して調製され得る。
手短には、これらの方法は、所望の特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの
反応性)を有する抗体を産生し得る不死化細胞株の調製を包含する。このような
細胞株は、例えば、上記のように、免疫された動物から得られた脾臓細胞から産
生され得る。次いで、脾臓細胞は、例えば、ミエローマ細胞融合パートナー(好
ましくは、免疫された動物と同系のもの)との融合によって不死化される。種々
の融合技術が使用され得る。例えば、脾臓細胞およびミエローマ細胞は、非イオ
ン性界面活性剤と数分間組み合わせられ得、次いで、ハイブリッド細胞の増殖を
支持するが、ミエローマ細胞の増殖を支持しない選択培地上で低密度でプレート
される。好ましい選択技術は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミ
ジン)選択を使用する。十分な時間(通常約1〜2週間)後、ハイブリッドのコ
ロニーが観察される。単一コロニーが選択され、そしてそれらの培養上清が、ポ
リペプチドに対する結合活性について試験される。高い反応性および特異性を有
するハイブリドーマが好ましい。
【0048】 モノクローナル抗体を、増殖しているハイブリドーマコロニーの上清から単離
し得る。さらに、種々の技術(例えば、適切な脊椎動物宿主(例えば、マウス)
の腹膜腔へのハイブリドーマ細胞株の注入)が、収量を増大させるために利用さ
れ得る。次いで、モノクローナル抗体を、腹水または血液から収集し得る。夾雑
物を、通常の技術(例えば、クロマトグラフィー、ゲルろ過、沈殿、および抽出
)によって抗体から除去し得る。本発明のポリペプチドを、例えば、アフィニテ
ィークロマトグラフィー工程における精製プロセスにおいて使用し得る。
【0049】 抗体を、例えば、患者において乳癌を検出するための方法において、使用し得
る。このような方法は、本明細書中に記載されるような乳房腫瘍特異的ポリペプ
チドの、適切な生物学的サンプルにおける存在または非存在を検出するための、
抗体の使用を包含する。本明細書中において使用される場合に、適切な生物学的
サンプルとしては、患者から得られる腫瘍組織生検もしくは正常な組織生検、乳
房切除、血液、リンパ節、血清または尿サンプル、あるいは他の組織、ホモジネ
ートまたはこれらの抽出物が挙げられる。
【0050】 サンプルにおいてポリペプチドマーカーを検出するための抗体の使用について
、当業者に公知の種々のアッセイ様式が存在する。例えば、Harlowおよび
Lane、Antibodies:A Laboratory Manual、
Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参
照のこと。例えば、このアッセイはウエスタンブロット様式中で実施され得、こ
こで、生物学的サンプル由来のタンパク質調製物が、ゲル電気泳動にされ、適切
な膜にトランスファーされ、そして抗体と反応される。次いで、膜上の抗体の存
在が、以下に記載されるような適切な検出試薬を用いて検出され得る。
【0051】 別の実施形態において、このアッセイは、サンプルの残余物中のポリペプチド
と結合し、そしてそこからポリペプチドを除去するために固体支持体上に固定化
された抗体の使用を含む。次いで、この結合したポリペプチドは、レポーター基
を含む第2の抗体または試薬を使用して検出され得る。あるいは、ポリペプチド
が、レポーター基で標識され、そして抗体とサンプルとのインキュベーションの
後に固定化された抗体への結合を可能にする競合アッセイが利用され得る。サン
プル成分が、標識されたポリペプチドの抗体への結合を阻害する程度は、サンプ
ルと固定化された抗体との反応性を示し、結果として、サンプル中のポリペプチ
ドの濃度を示す。
【0052】 固体支持体は、抗体が付着され得る、当業者に公知の任意の物質であり得る。
例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレートの試験ウェル、またはニトロ
セルロース膜もしくは他の適切な膜であり得る。あるいは、この支持体は、ビー
ズまたはディスク(例えば、ガラス、ファイバーガラス、ラテックス、またはプ
ラスチック物質(例えば、ポリスチレンもしくはポリ塩化ビニル))であり得る
。この支持体はまた、磁気性粒子または光ファイバーセンサー(fiber o
ptic sensor)(例えば、米国特許第5,359,681号に開示さ
れるようなもの)であり得る。
【0053】 抗体は、当業者に公知の種々の技術を使用して固体支持体上に固定化され得、
これは特許および科学文献に十分に記載されている。本発明の状況において、用
語「固定化」とは、非共有結合的な会合(例えば、吸着)および共有結合的な付
着(これは、抗原と支持体上の官能基との間で直接結合され得るかまたは架橋剤
を用いて結合され得る)の両方をいう。マイクロタイタープレートのウェル、ま
たは膜への吸着による固定化は好ましい。このような場合、吸着は、適切な緩衝
液中で固体支持体を用いて適切な時間で抗体に接触させることによって達成され
得る。接触時間は、温度によって変化するが、代表的には、約1時間から約1日
の間である。一般的には、約10ng〜約1μg、そして好ましくは約100n
g〜約200μgの範囲の量の抗体とプラスチックマイクロタイタープレート(
例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニル)のウェルを接触させることは、適
切な量のポリペプチドを固定化するのに十分である。
【0054】 固体支持体への抗体の共有結合的付着はまた、一般に、支持体および抗体上の
官能基(例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基)の両方と反応する二官能性試
薬と支持体を最初に反応させることによって達成され得る。例えば、この抗体は
、ベンゾキノンを用いるかまたは結合パートナー上のアミンおよび活性水素を用
いる支持体上のアルデヒド基の縮合によってコートする適切なポリマーを有する
支持体に、共有結合的に付着され得る(例えば、Pierce Immunot
echnology Catalog and Handbook、1991、
A12−A13を参照のこと)。
【0055】 特定の実施形態において、サンプル中のポリペプチドの検出のためのこのアッ
セイは、2抗体サンドイッチアッセイである。本アッセイは、最初に、固体支持
体(通常、マイクロタイタープレートのウェル)上で固定化されている抗体を生
物学的サンプルと接触させて、サンプル内のポリペプチドを固定化抗体に結合さ
せることによって実施され得る。次いで、非結合サンプルは固定化ポリペプチド
−抗体複合体から除去され、そしてそのポリペプチド上の異なる部位に結合し得
る二次抗体(レポーター基を含む)が添加される。次いで、固体支持体に結合し
たままである二次抗体の量が、特定のレポーター基に関して適切な方法を用いて
決定される。
【0056】 より詳細には、一旦抗体が上記のように支持体上に固定化されると、支持体上
の残りのタンパク質結合部位は、通常ブロックされる。任意の適切なブロック剤
(例えば、ウシ血清アルブミンまたはTween20TM(Sigma Chem
ical Co.,St.Louis,MO))は、当業者に公知である。固定
化抗体は次いで、サンプルとインキュベートされ、そしてポリペプチドをこの抗
体に結合させる。インキュベーションの前に、このサンプルは適切な希釈液(例
えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS))で希釈され得る。概して、適切な接
触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、乳癌を有する個体から得られ
たサンプル内のポリペプチドの存在を検出するのに十分な時間である。好ましく
は、この接触時間は、結合ポリペプチドと非結合ポリペプチドとの間の平衡が少
なくとも約95%で達成される結合レベルを達成するのに十分な時間である。当
業者は、ある時間にわたって起こる結合レベルをアッセイすることによって、平
衡に達するまでに必要な時間が容易に決定され得ることを認識する。室温では、
一般に、約30分間のインキュベーション時間で十分である。
【0057】 次いで、非結合サンプルが、適切な緩衝液(例えば、0.1%Tween20 TM を含むPBS)を用いて固体支持体を洗浄することによって除去される。レポ
ーター基を含む二次抗体が次いで、固体支持体に添加され得る。好ましいレポー
ター基は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、基質、補因子、イン
ヒビター、色素、放射性核種、発光基、蛍光基およびビオチンを含む。レポータ
ー基への抗体の結合体化は、当業者に公知の標準方法を使用して達成され得る。
【0058】 次いで、二次抗体が、結合されたポリペプチドを検出するのに十分な量の時間
、固定化抗体−ポリペプチド複合体とインキュベートされる。適切な量の時間は
、一般に、ある時間にわたって起こる結合のレベルをアッセイすることによって
決定され得る。次いで、非結合の二次抗体は除去され、そして結合した二次抗体
は、レポーター基を用いて検出される。レポーター基を検出するために使用され
る方法は、レポーター基の性質に依存する。放射性基について、一般的には、シ
ンチレーション計数法またはオートラジオグラフィー法が適切である。分光法は
、色素、発光基および蛍光基を検出するために使用され得る。ビチオンは、異な
るレポーター基(一般に、放射性もしくは蛍光基または酵素)に結合されたアビ
ジンを使用して検出され得る。酵素レポーター基は、一般に、基質の添加(一般
には、特定の期間)、続いて反応産物の分光分析または他の分析により検出され
得る。
【0059】 乳癌の存在または非存在を決定するために、固体支持体に結合したままのレポ
ーター基から検出されるシグナルが、一般に、非腫瘍組織から確立された予備決
定されたカットオフ値と対応するシグナルと比較される。1つの好ましい実施形
態において、このカットオフ値は、固定化抗体を、乳癌を有さない患者由来のサ
ンプルとインキュベートした際に得られた平均シグナル値である。概して、予備
決定されたカットオフ値を3標準偏差上回るシグナルを生じるサンプルが、乳癌
に対して陽性とみなされ得る。代わりの好ましい実施形態において、このカット
オフ値は、Sackettら、Clinical Epidemiology:
A Basic Science for Clinical Medicin
e,Little Brown and Co.,1985,106〜7頁の方
法に従って、レシーバーオペレーターカーブ(Receiver Operat
or Curve)を使用して決定される。簡単に言うと、本実施形態において
、このカットオフ値は、診断試験結果について各可能なカットオフ値に対応する
真の陽性割合(すなわち、感度)および偽陽性割合(100%−特異性)の対の
プロットから決定され得る。プロット上の上方左手角に最も近いカットオフ値(
すなわち、最大領域を囲む値)が、最も正確なカットオフ値であり、そして本方
法によって決定されたカットオフ値より高いシグナルを生ずるサンプルが陽性と
見なされ得る。あるいは、カットオフ値は、偽陽性割合を最小にするためにプロ
ットに沿って左へシフトされ得るか、または偽陰性割合を最小にするために右へ
シフトされ得る。概して、本方法によって決定されたカットオフ値より高いシグ
ナルを生ずるサンプルが、乳癌に対して陽性と見なされる。
【0060】 関連の実施形態において、このアッセイは、フロースルー試験形式またはスト
リップ試験形式で実行される(ここで、抗体は、ニトロセルロースのような膜上
で固定化される)。フロースルー試験では、サンプル内のポリペプチドは、サン
プルが膜を通過するときに固定化抗体に結合する。次いで、標識化された二次抗
体が、この二次抗体を含む溶液がその膜を介して流れるときに、抗体−ポリペプ
チド複合体と結合する。次いで、結合した二次抗体の検出は、上記のように実行
され得る。ストリップ試験形式では、抗体が結合される膜の一端をサンプルを含
む溶液中に浸す。このサンプルは、膜に沿って、二次抗体を含む領域を通って、
固定化抗体の領域まで移動する。固定化抗体の領域での二次抗体の濃度が、乳癌
の存在を示す。代表的には、その部位での二次抗体の濃度は、視覚的に読みとら
れ得るパターン(例えば、線)を生成する。このようなパターンを示さないこと
は陰性の結果を示す。概して、この膜上に固定化される抗体の量は、生物学的サ
ンプルが、上記の形式において、2抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグ
ナルを生じるのに十分であるレベルのポリペプチドを含む場合、視覚的に識別可
能なパターンを生じるように選択される。好ましくは、膜上に固定化される抗体
の量は、約25ng〜約1μgの範囲であり、そしてより好ましくは、約50n
g〜約1μgの範囲である。このような試験は、代表的には、非常に少ない量の
生物学的サンプルを用いて実行され得る。
【0061】 患者における乳癌の存在または非存在もまた、所定のカットオフ値と比較して
、生物学的サンプル(例えば、患者由来の生検材料、乳房切除および/または血
液サンプル)内の、本明細書中に記載されるような乳癌腫瘍特異的ポリペプチド
をコードするmRNAのレベルを評価することによって決定され得る。このよう
な評価は、当業者に公知の任意の種々の方法(例えば、インサイチュハイブリダ
イゼーションおよびポリメラーゼ連鎖反応による増幅のような)を用いて達成さ
れ得る。
【0062】 例えば、ポリメラーゼ連鎖反応は、上記の生物学的サンプルの1つから単離さ
れるRNAより調製されるcDNAから、配列を増幅するために使用され得る。
このような増幅における使用のための配列特異的プライマーは、配列番号1、1
1〜86、142〜298、301〜303、307、313、314、316
および317のいずれか1つに提供される配列に基づいて示され得、そして購入
または合成され得る。B18Ag1の場合、本明細書中に述べられるように、1
つの適切なプライマー対が、B18Ag1−2(5’ATG GCT ATT
TTC GGG GGC TGA CA)(配列番号126)およびB18Ag
1−3(5’CCG GTA TCT CCT CGT GGG TAT T)
(配列番号127)である。次いで、このPCR反応産物は、ゲル電気泳動によ
り分離され得、そして当業者に周知の方法に従って可視化され得る。増幅は、代
表的に、一致した対の組織(同じ個人由来の腫瘍組織および非腫瘍組織)または
一致していない対の組織(異なる個人由来の腫瘍組織および非腫瘍組織)から得
られるサンプル上で実施される。増幅反応は、2桁の大きさにおよぶいくつかの
cDNA希釈物について行われる。腫瘍でないサンプルのいくつかの希釈物と比
較して、腫瘍サンプルの同じ、いくつかの希釈物における2倍以上の発現増加は
、陽性とみなされる。
【0063】 本明細書で用いられるように、用語「ポリヌクレオチドに特異的なプライマー
/プローブ」とは、問題のポリヌクレオチドに対して、少なくとも約80%の同
一性、好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95
%の同一性を有するオリゴヌクレオチド配列、または問題のポリヌクレオチドに
対して、少なくとも約80%の同一性、好ましくは少なくとも約90%、そして
より好ましくは少なくとも約95%の同一性を有する配列に対するアンチセンス
であるオリゴヌクレオチド配列を意味する。本発明の診断方法において有用に利
用され得るプライマーおよび/またはプローブは、好ましくは少なくとも約10
〜40ヌクレオチドを有する。好ましい実施形態において、このポリメラーゼ連
鎖反応プライマーは、本明細書中で開示されるポリペプチドの1つをコードする
かまたは本明細書中に開示されるポリペプチドの1つをコードする配列に対する
アンチセンスである、ポリヌクレオチドの少なくとも約10の連続したオリゴヌ
クレオチドを含有する。好ましくは、本発明の診断方法における使用のためのオ
リゴヌクレオチドプローブは、本明細書中で開示されるポリペプチドの1つをコ
ードするかまたは本明細書中に開示されるポリペプチドの1つをコードする配列
に対するアンチセンスである、ポリヌクレオチドの少なくとも約15の連続した
オリゴヌクレオチドを含有する。PCRに基づくアッセイおよびインサイチュハ
イブリダイゼーションアッセイの両方に関する技術が、当該分野において周知で
ある。
【0064】 アガロースおよびエチジウムブロマイド染色を用いた、従来のPCRプロトコ
ールは、遺伝子の特異性を規定することにおいて重要であるが、それらを定量す
る(すなわち、飽和曲線および/または滴定曲線の構築)のに必要とされる時間
および労力、ならびにそれらのサンプルのスループットのために、診断キットの
開発にそれらは役に立たない。この問題は、1つのチューブで実施されるアッセ
イを可能にするリアルタイムRT−PCRのような手順の開発により克服され、
そして順番に96ウェルプレートフォーマットにおける使用のために改変され得
る。このような方法論を実施する計測器は、Perkin Elmer/App
lied Biosystems Divisionから入手可能である。ある
いは、このようなプローブに対する、標識された(例えば、酵素性蛍光、放射性
)抗体と組み合わせて、標識されたプローブ(例えば、ジゴキシゲニン)を用い
た他の高いスループットアッセイもまた、96ウェルプレートアッセイの開発に
おいて使用され得る。
【0065】 患者における乳癌の存在または非存在を決定するためのなお別の方法において
、記載される、1つ以上の乳房腫瘍特異的ポリペプチドが、皮膚試験において使
用され得る。本明細書中に使用されるように、「皮膚試験」は、遅延型過敏症(
DTH)反応(例えば、腫脹、赤化(reddening)または皮膚炎)が、
上記のような1つ以上のポリペプチドの皮内注射後に測定される。このような注
射は、ポリペプチド(単数または複数)を、患者の皮膚細胞と接触させるのに十
分な任意の適切なデバイス(例えば、ツベルクリンシリンジまたは1mLシリン
ジ)を用いて達成され得る。好ましくは、この反応は、注射後好ましくは少なく
とも48時間、より好ましくは48〜72時間で測定される。
【0066】 このDTH反応は、細胞媒介免疫応答であり、これは、試験抗原(すなわち、
利用されるポリペプチドの免疫原性部分、またはその改変体)に以前曝露された
患者において、より大きい。この応答は、定規を用いて可視的に測定され得る。
一般に、直径で約0.5cmより大きく、好ましくは直径約5.0cmより大き
い応答は、陽性応答であり、乳癌の指標である。
【0067】 本明細書中に記載される乳癌腫瘍特異的ポリペプチドは、少なくとも1つのポ
リペプチドおよび生理的に受容可能なキャリア(例えば、水、生理的食塩水、ア
ルコール、または緩衝液)を含む薬学的組成物として、皮膚試験に使用されるた
めに、好ましく処方される。このような組成物は、代表的に、0.1mLのボリ
ューム中に、約1μg〜100μg、好ましくは、約10μg〜50μgにわた
る量で、上記のポリペプチドの1つ以上を含む。好ましくは、このような薬学的
組成物に利用されるキャリアは、適切な保存剤(例えば、フェノールおよび/ま
たはTween 80TM)を含む生理的食塩水溶液である。
【0068】 本発明の他の局面において、乳癌の処置に対する、進行および/または応答が
が、時間にわたる任意の上記のアッセイを実施し、そして応答のレベルの変化(
すなわち、検出されるポリペプチドまたはmRNAの量、あるいは皮膚試験の場
合、検出される免疫応答の範囲)を評価することにより、モニターされ得る。例
えば、このアッセイは、1〜2年の期間、毎月〜1ヶ月おきに実施され得る。一
般的に、乳癌は、応答のレベルが時間が経って増加する患者において進行してい
る。対照的に、検出されるシグナルが、一定して残るかまたは時間と共に減少す
るかのいずれかの場合、乳癌は進行していない。
【0069】 本発明のさらなる局面において、本明細書中に記載される化合物は、乳癌の免
疫治療のために使用され得る。これらの局面において、この化合物(これは、ポ
リペプチド、抗体またはポリヌクレオチドであり得る)は、好ましくは、薬学的
組成物またはワクチンの中に取り込まれる。薬学的組成物は、1つ以上のこのよ
うな化合物および生理学的に受容可能なキャリアを含む。ワクチンは、免疫促進
剤と組み合わせて、1つ以上のこのような化合物を含み得る(例えば、アジュバ
ントまたはリポソーム(この中に化合物が取り込まれる))。免疫促進剤は、外
因性抗原に対する免疫応答(抗体および/または細胞媒介)を増強するか(en
hance)または増加させる(potentiate)任意の物質であり得る
。免疫促進剤の例としては、アジュバント、生分解性のミクロスフェア(例えば
、ポリ乳酸ガラクチド(polylactic galactide)およびリ
ポソーム(この中に、化合物が取り込まれる;例えば、Fullerton、米
国特許第4,235,877号を参照のこと)が挙げられる。ワクチン調製物は
、一般的に、例えば、M.F.PowellおよびM.J.Newman編、「
Vaccine Design(the subunit and adjuv
ant approach)」、Plenum Press(NY、1995)
に記載される。本発明の範囲内にある薬学的組成物およびワクチンはまた、生物
学的に活性または不活性であり得る他の化合物を含み得る。例えば、他の腫瘍抗
原の1つ以上の免疫原性部分は、組成物またはワクチンにおいて、融合ポリペプ
チドに組み込まれてかまたは個々の化合物としてのいずれかで存在し得る。
【0070】 あるいは、ワクチンは、上記のような1つ以上のポリペプチドをコードするD
NAを含み得、その結果、このポリペプチドはインサイチュで生成される。この
ようなワクチンにおいて、DNAは、当業者に公知の種々の任意の送達系(核酸
発現系、細菌性発現系、およびウイルス性発現系を含む)において存在し得る。
適切な核酸発現系は、患者における発現のために必要なDNA配列を含む(例え
ば、適切なプロモーターおよび終結シグナル)。細菌性送達系は、細胞表面上で
ポリペプチドの免疫原性部分を発現する細菌の投与を含む。好ましい実施形態で
は、ウイルス性発現系(例えば、ワクシニアもしくは他のポックスウイルス、レ
トロウイルス、またはアデノウイルス)を使用してDNAが導入され得る。この
ウイルス発現系は、非病原性(欠損性)で複製能力のあるウイルスの使用を含み
得る。このような発現系にDNAを組み込む技術は、当業者に周知である。DN
Aはまた、例えば、Ulmerら、Science 259:1745−174
9(1993)において記載され、そしてCohen、Science 259
:1691−1692、1993によって概説されるように、「裸」であり得る
。裸のDNAの取り込みは、生分解性ビーズ(これは、細胞に効率的に輸送され
る)上にDNAをコーティングすることによって増加され得る。
【0071】 当業者に公知の任意の適切なキャリアが本発明の薬学的組成物において使用さ
れ得るが、キャリアの型は、投与の様態に依存して変化する。非経口投与(例え
ば、皮下注射)のためにキャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール
、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与のためには、任意の上記のキャ
リアまたは固体キャリア(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステ
アリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム(talcum)、セ
ルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウム)が利用され得る。
生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリラクテートポリグリコレート)がまた、
本発明の薬学的組成物のためのキャリアとして利用され得る。
【0072】 任意の種々の免疫促進剤が、本発明のワクチンに利用され得る。例えば、アジ
ュバントが含まれ得る。ほとんどのアジュバントは、抗原を迅速な異化から防御
するように設計された物質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)および免
疫応答の刺激因子(例えば、リピドA(lipid A)、Bortadell
a pertussisまたはMycobacterium tubercul
osis由来のタンパク質)を含む。適切なアジュバントは、例えば、フロイン
ト不完全アジュバント(Freund’s Incomplete Adjuv
ant)および完全アジュバント(Complete Adjuvant)(D
ifco Laboratories,Detroit,MI);Merck
Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.,R
ahway,NJ);AS−2(SmithKline Beecham,Ph
iladelphia,PA);アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム
ゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウム);カルシウム、鉄、または亜鉛
の塩;アシル化したチロシンの不溶性懸濁液;アシル化した糖;カチオン(ca
tionically)またはアニオンに(anionically)由来され
る(derived)多糖類;ポリフォスファーゼン;生分解性ミクロスフェア
、モノホスホリルリピドAおよびクイルA(quil A)として市販されてい
る。サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはインターロイキン−2、インタ
ーロイキン−7もしくはインターロイキン−12)もまた、アジュバントとして
使用され得る。
【0073】 本明細書中で提供されるワクチンにおいて、アジュバンド組成物は、好ましく
は、優勢なTh1型の免疫応答を誘導するように設計される。高レベルのTh1
型サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNFα、IL−2およびIL−12)
は、投与された抗原に対する細胞媒介性免疫応答の誘導を好む傾向にある。対照
的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−
6およびIL−10)は、体液性免疫応答の誘導を好む傾向にある。本明細書中
に提供されるようなワクチンの適用に従って、患者は、Th1型応答およびTh
2型応答を誘導する免疫応答を支持する。応答が優勢なTh1型である好ましい
実施形態において、Th1型サイトカインのレベルは、Th2型サイトカインの
レベルよりもはるかに高い程度まで増加する。これらのサイトカインのレベルは
、標準的アッセイを使用して容易に評価され得る。サイトカインのファミリーの
総説については、MosmannおよびCoffman、Ann.Rev.Im
munol.7:145−173、1989を参照のこと。
【0074】 優勢なTh1型応答を誘発する使用のための好ましいアジュバンドは、例えば
、モノホスホリルリピドA、好ましくは3−de−O−アシル化モノホスホリル
リピドA(3D−MPL)の、アルミニウム塩との組み合わせを含む。MPLア
ジュバンドは、Corixa Corporation(Seattle,WA
;米国特許第4,436,727号;同第4,877,611号;同第4,86
6,034号および同第4,912,094号を参照のこと)から入手可能であ
る。CpG含有オリゴヌクレオチド(ここで、CpGジヌクレオチドはメチル化
されていない)はまた、優勢なTh1応答を誘導する。このようなオリゴヌクレ
オチドは周知であり、そして例えばWO96/02555およびWO99/33
488に記載される。免疫促進DNA配列がまた、例えば、Satoら、Sci
ence 273:352,1996によって記載される。別の好ましいアジュ
バンドは、サポニン、好ましくはQS21(Aquila Biopharma
ceuticals Inc.,Framingham,MA)であり、これは
単独でか、または他のアジュバンドと組み合わせて使用され得る。例えば、増強
された系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組み合わせ(例えば
、WO94/00153に記載されるような、QS21と3D−MPLとの組み
合わせ、またはWO96/33739に記載されるような、Q21がコレステロ
ールで抑制(quench)される、あまり反応発生的(reactogeni
c)でない組成物)を含む。他の好ましい処方物は、水の油乳濁液およびトコフ
ェロールを含む。水の油乳濁液中にQS21、3D−MPLおよびトコフェロー
ルを含む特に強力なアジュバンド処方物は、WO95/17210に記載される
【0075】 他の好ましいアジュバンドとしては、Montanide ISA 720(
Seppic,France)、SAF(Chiron,California
,United States)、ISCOMS(CSL)、MF−59(Ch
iron)、アジュバンドのSBASシリーズ(例えば、SBAS−2またはS
BAS−4(SmithKline Beecham、Rixensart、B
elgiumから入手可能である)、Detox(Ribi ImmunoCh
em Research Inc.,Hamilton,MT)、RC−529
(Ribi ImmunoChem Research Inc.,Hamil
ton,MT)およびアミノアルキルグルコサミニド4−ホスフェート(AGP
)が挙げられる。
【0076】 本明細書中に提供される任意のワクチンは、抗原、免疫促進剤および適切なキ
ャリアまたは賦形剤を組み合わせて得られる周知の方法を使用して調製され得る
。本明細書において記載される組成物は、徐放性処方物(すなわち、投与後、化
合物の緩徐な放出をもたらすカプセル、スポンジ、またはゲル(例えば、多糖類
からなる)のような処方物)の一部として投与され得る。このような処方物は一
般に、周知の技術(例えば、Coombesら、Vaccine 14:142
9−1438,1996)を用いて調製され得、そして例えば、経口、直腸また
は皮下移植によってか、あるいは所望の標的部位への移植によって投与され得る
。徐放性処方物は、キャリアマトリックスに分散され、そして/または速度制御
膜に囲まれる貯蔵所内に含まれる、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体
を含み得る。
【0077】 このような処方物内での使用のためのキャリアは、生体適合性であり、そして
また生分解性であり得る;好ましくは、この処方物は比較的一定レベルの活性成
分の放出を提供する。このようなキャリアとしては、ポリ(ラクチド−co−グ
ルコリド)ならびにポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロースおよ
びデキストランのマイクロマプセルが挙げられる。他の徐放性キャリアは、非液
性(non−liquid)親水性コア(例えば、架橋ポリサッカリドまたはオ
リゴサッカリド)を含む超分子バイオベクター、ならびに必要に応じて、両親媒
性化合物を含む外部層(例えば、リン脂質)(例えば、米国特許第5,151,
254号およびPCT出願WO 94/20078、WO/94/23701お
よびWO 96/06638を参照のこと)を含む超分子バイオベクターを含有
する。徐放性処方物内に含まれる活性な化合物の量は、移植の部位、放出の速度
および予期される期間、ならびに処置または予防されるべき状態の性質に依存す
る。
【0078】 任意の種々の送達ビヒクルは、薬学的組成物およびワクチン内で利用され、腫
瘍細胞を標的とする抗原特異性免疫応答の生成を容易にし得る。送達ビヒクルは
、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球
、および有効なAPCであるように操作され得る他の細胞)を含む。このような
細胞は、抗原を提示する能力を増大するように、T細胞応答の活性化および/ま
たは維持を改良するように、それ自体で抗腫瘍効果を有するように、そして/あ
るいは受け手(すなわち、一致するHLAハプロタイプ)と免疫学的に適合性で
あるように遺伝学的に改変され得るが、改変される必要はない。APCは、一般
に、種々の生物学的な流体および器官(腫瘍および腫瘍周辺組織を含む)のいず
れかから単離され得、そして自己細胞、同種異系細胞、同系細胞、または異種細
胞であり得る。
【0079】 本発明の特定の好ましい実施形態は、抗原提示細胞として、樹状細胞またはそ
の前駆細胞を使用する。樹状細胞は、高度に強力なAPCであり(Banche
reauおよびSteinman、Nature 392:245−251、1
998)、そして予防的または治療的な抗腫瘍免疫性を誘発するための生理学的
アジュバンドとして有効であることが示されてきた(Timmermanおよび
Levy、Ann.Rev.Med.50:507−529、1999を参照の
こと)。一般に、樹状細胞は、それらの代表的な形状(インサイチュでは星状、
インビトロでは目に見える顕著な細胞質プロセス(樹枝状結晶)を有する)、高
い効率で抗原を取り込み、処理し、そして提示するそれらの能力、および未処置
の(naive)T細胞応答を活性化するそれらの能力に基づいて同定され得る
。もちろん樹状細胞は、インビボまたはエキソビボで樹状細胞上に通常見出され
ない特定の細胞表面レセプターまたはリガンドを発現するように操作され得、こ
のような改変樹状細胞は、本発明によって意図される。樹状細胞の代替として、
分泌小胞抗原装荷樹状細胞(secreted vesicles antig
en−loaded dendritic cell)(エキソソーム(exo
some)と呼ばれる)がワクチン内で使用され得る(Zitvogelら、N
ature Med.4:594−600,1998を参照のこと)。
【0080】 樹状細胞および前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周辺組織浸潤
細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血、または任意の他の適切な組織もしくは液
体から得られ得る。例えば、樹状細胞は、末梢血から収集された単球の培養物に
、GM−CSF、IL−4、IL−13および/またはTNFαのようなサイト
カインの組み合わせを添加することによってエキソビボで分化され得る。あるい
は、末梢血、臍帯血または骨髄から収集されたCD34陽性細胞は、培養培地に
GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガ
ンドおよび/または樹状細胞の分化、成熟、および増殖を誘導する他の化合物の
組み合わせを添加することによって、樹状細胞に分化され得る。
【0081】 樹状細胞は、「未熟」細胞および「成熟」細胞として都合良く分類され、この
ことは、2つの充分に特徴付けられた表現型との間を区別する単純な方法を与え
る。しかしこの学名は、あらゆる可能な分化の中間段階を排除するように解釈さ
れるべきではない。未熟な樹状細胞は、抗原の取り込みおよび処理の高い能力を
有するAPCとして特徴付けられ、この能力は、Fcγレセプターおよびマンノ
ースレセプターの高度な発現と相関する。成熟表現型は、代表的に、クラスIお
よびクラスII MHC、接着分子(例えば、CD54およびCD11)ならび
に同時刺激性分子(例えば、CD40、CD80、CD86および4−1BB)
のようなT細胞活性化の原因である細胞表面分子の高度な発現ではなく、これら
のマーカーのより低い発現によって特徴付けられる。
【0082】 APCは、一般に、本発明のポリペプチド(またはその一部もしくは他のその
改変体)をコードするポリヌクレオチドを用いてトランスフェクトされ得、その
結果、ポリペプチドまたはその免疫原性部分が細胞表面上に発現される。このよ
うなトランスフェクションはエキソビボで生じ得、次いでこのようなトランスフ
ェクトされた細胞を含む組成物またはワクチンは、本明細書中に記載されるよう
に、治療目的のために使用され得る。あるいは、細胞を提示する樹状または他の
抗原を標的とする遺伝子送達ビヒクルが、患者に投与され得、インビボで起こる
トランスフェクションを生じる。樹状細胞のインビボおよびエキソビボでのトラ
ンスフェクションは、例えば、WO 97/274447に記載される方法、ま
たはMahviら、Immunology and cell Biology
75:456−460、1997によって記載される遺伝子銃アプローチのよ
うな当該分野で公知の任意の方法を使用して一般に実施され得る。樹状細胞の抗
原装荷は、樹状細胞または前駆細胞を、ポリペプチド、DNA(裸のもしくはプ
ラスミドベクター中の)またはRNA;あるいは抗原発現性組換え細菌またはウ
イルス(例えば、痘疹、鶏痘、アデノウイルスまたはレンチウイルスのベクター
)とインキュベートすることによって達成され得る。装荷の前に、ポリペプチド
は、T細胞補助(例えば、キャリア分子)を提供する免疫学的パートナーに共有
結合され得る。あるいは、樹状細胞は、別個にかまたはポリペプチドの存在下で
、結合していない免疫学的パートナーと同調(pulse)され得る。
【0083】 ワクチンおよび薬学的組成物は、シールされたアンプルまたはバイアルのよう
な、単回用量容器または複数用量容器中に存在し得る。このような容器は、好ま
しくは、使用まで処方物の無菌性を維持するために、密封状態でシールされる。
一般に、処方物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中で、懸濁液、溶液または
エマルジョンとして保存され得る。あるいは、ワクチンまたは薬学的組成物は、
使用の直前に無菌水性キャリアの添加のみを必要とする、凍結乾燥状態で保存さ
れ得る。
【0084】 上記の薬学的組成物およびワクチンが、例えば、患者の乳癌の治療に対して使
用され得る。本明細書に用いられる場合、「患者」とは、任意の温血動物、好ま
しくはヒトをいう。患者は、乳癌に罹患していてもいなくてもよい。従って、上
記の薬学的組成物およびワクチンは、乳癌の発生を予防するために、または乳癌
に罹患した患者を処置するために用いられ得る。好ましい実施形態において、こ
の化合物は、初期腫瘍の外科的除去および/または放射線治療剤もしくは従来の
化学療法剤の投与の、前にかまたはその後のいずれかで投与され得る。乳癌の発
達を予防するか、または遅らせるために、本明細書中に記載されるような1つ以
上のポリペプチドを含む薬学的組成物またはワクチンが、患者に投与され得る。
あるいは、このポリペプチドをコードする、裸のDNAまたはプラスミドまたは
ウイルスDNAが投与され得る。乳癌を有する患者を処置するために、薬学的組
成物またはワクチンは、1つ以上のポリペプチド、抗体または本明細書中に記載
されるようなポリペプチドをコードするDNAに対して相補的なポリヌクレオチ
ドを含み得る(例えば、アンチセンスRNAまたはアンチセンスデオキシリボヌ
クレオチドオリゴヌクレオチド)。
【0085】 投与の経路および頻度、ならびに投与量は、個人、個人で変化する。概して、
薬学的組成物およびワクチンは、注射(例えば、皮内、筋肉内、静脈内、または
皮下)により、経鼻的に(例えば、吸引により)または経口的に、投与され得る
。好ましくは、52週間にわたって1〜10用量の間で投与され得る。好ましく
は、1ヶ月の間隔で6用量が投与され、そしてブースターワクチン接種がその後
定期的に与えられ得る。交互のプロトコールが個々の患者に適切であり得る。適
切な用量は、上記のように投与された場合、抗腫瘍免疫応答を促進し得る化合物
の量である。このような応答は、患者内の抗腫瘍抗体を測定することによってか
、またはインビトロでの患者の腫瘍細胞を殺傷し得る細胞溶解性効果細胞のワク
チン依存性の生成によってモニターされ得る。このようなワクチンはまた、ワク
チン接種されていない患者と比較すると、ワクチン接種された患者において、改
善された臨床的結果(例えば、より頻繁な症状の軽減、完全もしくは部分的に疾
患を有さないか、またはより長く疾患を有さない生存)を導く免疫応答を生じ得
るはずである。一般に、1つ以上のポリペプチドを含む薬学的組成物およびワク
チンについて、用量中に存在する各ポリペプチドの量は、約100μg〜5mg
にわたる。適切な用量サイズは、患者の大きさで変化するが、代表的には約0.
1mL〜約5mLの範囲である。
【0086】 本明細書に開示されたポリぺプチドはまた、癌の処置のための養子免疫治療に
おいて利用され得る。養子免疫治療は、広範には、能動的免疫治療または受動的
免疫治療のいずれかに分類され得る。能動的免疫治療において、処置は、内因性
の宿主免疫系のインビボでの刺激に依存し、免疫応答改変薬剤(例えば、腫瘍ワ
クチン、細菌アジュバント、および/またはサイトカイン)の投与で腫瘍に対し
て反応する。
【0087】 受動的免疫治療において、処置は、確立された腫瘍−免疫反応性を有する生物
学的試薬(例えば、エフェクター細胞または抗体)の送達を包含する。この確立
された腫瘍−免疫反応性は、抗腫瘍効果を直接的または間接的に媒介し得、そし
てインタクトの宿主免疫系に必ずしも依存しない。エフェクター細胞の例として
は、Tリンパ球(例えば、CD8+細胞傷害性Tリンパ球、CD4+Tヘルパー
、腫瘍浸潤性リンパ球)、キラー細胞(ナチュラルキラー細胞、リンフォカイン
活性化キラー細胞)、B細胞、または開示された抗原を発現する抗原提示細胞(
例えば、樹状細胞およびマクロファージ)が挙げられる。本明細書に開示された
ポリぺプチドはまた、受動的免疫治療のために、抗体または抗イディオタイプ抗
体を産生するため(米国特許第4,918,164号と同様)に使用され得る。
【0088】 養子免疫治療のための適当数のT細胞を調達する優勢な方法は、インビトロで
免疫T細胞を増殖することである。単一の抗原特異的なT細胞をインビボでの抗
原認識の保持を伴う数で、数十億まで拡大するための培養条件は、当該分野で周
知である。これらのインビトロ培養条件は、代表的には、しばしばIL−2のよ
うなサイトカインおよび非分裂(non−dividing)フィーダー細胞の
存在下における、抗原を用いた断続的刺激を利用する。上記に記載したように、
本明細書に記載された免疫反応性ポリぺプチドは、免疫治療のための十分な数の
細胞を生成するために、抗原特異的なT細胞培養物を迅速に拡大するために使用
され得る。特に、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージまたはB細
胞)は、当該分野に周知の標準的な技術を使用して、免疫反応性ポリぺプチドで
パルス(pulse)され得るか、またはポリヌクレオチド配列を用いてトラン
スフェクトされ得る。培養T細胞が治療において有効であるためには、培養T細
胞は、増殖し、かつ、広範に分布し得、かつ、インビボで長期生存し得なければ
ならない。研究は、培養T細胞が、IL−2を補充された抗原での反復刺激によ
り、インビボで増殖し、かつ、実質的な数において長期生存するように誘導され
得ることを示した(例えば、Cheeverら、Ibidを参照のこと)。
【0089】 本明細書中に開示されたポリぺプチドはまた、腫瘍反応性のT細胞を生成およ
び/または単離するために用いられ得、このT細胞は、次いで、患者に投与され
得る。1つの技術において、抗原特異的なT細胞株は、開示されたポリぺプチド
の免疫原性部分に対応する短いペプチドを用いて、インビボで免疫化することに
よって生成され得る。得られた抗原特異的CD8+ CTLクローンが患者から
単離され得、標準的な組織培養技術を使用して拡大され得、そして患者に戻され
得る。
【0090】 あるいは、ポリぺプチドの免疫原性部分に対応するペプチドは、例えば、Ch
angら(Crit.Rev.Oncol.Hematol.,22(3),2
13,1996)に記載されるように、自己T細胞のインビトロでの選択的な刺
激および拡大によって腫瘍反応性のT細胞サブセットを生成し、続いて患者に移
入され得る抗原特異的なT細胞を提供するために用いられ得る。
【0091】 別の実施形態において、同系または自己樹状細胞は、本明細書に開示されたポ
リぺプチドの少なくとも免疫原性部分に対応するペプチドでパルスされ得る。得
られた抗原特異的な樹状細胞は、患者に移入され得るか、またはT細胞を刺激し
て順に患者に投与され得る抗原特異的なT細胞を提供するために用いられ得るか
のいずれかである。抗原特異的なT細胞を生成するためのペプチドパルスされた
樹状細胞の使用、ならびにマウスモデルにおいて腫瘍を根絶するためのこのよう
な抗原特異的なT細胞の続く使用が、Cheeverら(「Therapy W
ith Cultured T Cells:Principles Revi
sited」、Immunological Reviews,157:177
,1997)により示される。
【0092】 さらに、開示されたポリヌクレオチドを発現するベクターは、患者から採取さ
れた幹細胞に導入され得、そして同患者へ自己の移植片をもどすためにインビト
ロでクローン増殖され得る。1つの実施形態において、T細胞のような免疫系の
細胞は、例えば、CellPro Incorporated’s(Bothe
ll,WA)CEPRATETMシステム(米国特許第5,240,856号;米
国特許第5,215,926号;WO 89/06280;WO 91/161
16およびWO 92/07243を参照のこと)のような市販の細胞分離シス
テムを使用して、患者の末梢血から単離され得る。分離された細胞は、送達ビヒ
クル(例えば、ミクロスフェア)内に含まれる免疫反応性ポリぺプチドの1つ以
上で刺激され、抗原特異性のT細胞を提供する。次いで、腫瘍抗原特異的なT細
胞の集団が、標準的な技術を使用して拡大され、そしてその細胞は患者に戻し投
与される。
【0093】 以下の実施例は、例示のために提供され、そして限定のためではない。
【0094】 (実施例) (実施例1:ディファレンシャルディスプレイRT−PCRを用いた胸部腫瘍
特異的cDNAの調製) 本実施例は、ディファレンシャルディスプレイスクリーニングを用いた、胸部
腫瘍特異的ポリペプチドをコードするcDNA分子の調製を示す。
【0095】 (A.B18Agl cDNAの調製およびmRNA発現の特徴付け) 組織サンプルを、患者から除去した後、病理学により乳癌と確認された患者の
胸部腫瘍および正常組織から調製した。正常RNAおよび腫瘍RNAをサンプル
から抽出し、そしてmRNAを単離し、そして(dT)12AG(配列番号130
)アンカー3’プライマーを用いてcDNAに変換した。次いで、ディファレン
シャルディスプレイPCRを、無作為に選択したプライマー(CTTCAACC
TC)(配列番号103)を用いて実行した。増幅条件は、1.5mM MgC
2、20pmolのプライマー、500pmolのdNTP、および1ユニッ
トのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer,Branchb
urg,NJ)を含有する標準緩衝液であった。94℃変性(30秒)、42℃
アニーリング(1分)、および72℃伸長(30秒)を用いて40サイクルの増
幅を行った。76の増幅産物を含有するRNAフィンガープリントを得た。胸部
腫瘍組織のRNAフィンガープリントは正常胸部組織のRNAフィンガープリン
トに対して98%を超えて同一であったが、腫瘍のRNAフィンガープリントパ
ターンに特異的であるバンドが繰り返して観察された。このバンドを銀染色した
ゲルから切り出し、Tベクター(Novagen,Madison,WI)にサ
ブクローニングし、そして配列決定した。
【0096】 cDNA(B18Aglといわれる)の配列を配列番号1に提供する。GEN
BANKおよびEMBLのデータベース検索により、最初にクローニングされた
B18Aglフラグメントが内因性ヒトレトロウイルスエレメントS71(これ
は、シミアン肉腫ウイルス(SSV)に相同な短縮化レトロウイルスエレメント
である)に対して77%同一であることが明らかになった。S71は、3’末端
に不完全なgag遺伝子、pol遺伝子の一部およびLTR様構造を含有する(
Wernerら、Virology 174:225−238(1990)を参
照のこと)。B18Aglはまた、P30(gag)遺伝子座に対応する領域に
おいてSSVに対して64%同一である。B18Aglは、3つの別個かつ不完
全なリーディングフレームを含有する。このリーディングフレームは、かなりの
相同性を共有する領域を哺乳動物に感染するレトロウイルスの広範な種々のga
gタンパク質に変換する。さらに、S71に対する相同性は、単にgag遺伝子
内ではなく、LTRを含む配列の数kbにまたがる。
【0097】 B18Agl特異的PCRプライマーをコンピューター分析ガイドラインを用
いて合成した。RT−PCR増幅(94℃、30秒;60℃→42℃、30秒;
72℃、30秒を40サイクル)により、B18Aglが、患者の胸部腫瘍組織
において比較的高レベルで存在する実際のmRNA配列を示すことが確認された
。増幅において使用したプライマーは、3.5mM マグネシウム濃度およびp
H8.5でB18Agl−1
【0098】
【化21】 (配列番号128)およびB18Agl−4
【0099】
【化22】 (配列番号129)ならびに2mMマグネシウム(pH9.5)で B18Agl−2
【0100】
【化23】 (配列番号126)およびB18Agl−3
【0101】
【化24】 (配列番号127)であった。同じ実験により、この患者の正常胸部組織におい
て存在しない発現レベルにまで異常に低いことが示された(図1を参照のこと)
。次いで、RT−PCR実験を用いて、9つの他の胸部腫瘍サンプル(ブラジル
人および米国人の患者由来)においてB18Agl mRNAが存在するが、各
癌患者に対応する正常胸部組織においては存在しないか、または異常に低いレベ
ルであることを示した。RT−PCR分析によってまた、B18Agl転写物が
種々の正常組織(リンパ節、心筋および肝臓を含む)に存在せず、そしてPBM
Cおよび肺組織において比較的低レベルで存在することが示された。B18Ag
l mRNAが胸部腫瘍サンプルにおいて存在し、そして正常胸部組織に存在し
ないことは、図2に示されるように、ノザンブロット分析により確認された。
【0102】 胸部腫瘍組織におけるB18Aglの差次的発現はまた、RNase保護アッ
セイにより確認された。図3は、4つの異なるRNase保護アッセイにおいて
決定されたように種々の組織型におけるB18Agl mRNAのレベルを示す
。レーン1〜12は、種々の正常胸部組織サンプルを示し、レーン13〜25は
種々の胸部腫瘍サンプルを示し;レーン26〜27は正常前立腺サンプルを示し
;レーン28〜29は前立腺腫瘍サンプルを示し;レーン30〜32は結腸腫瘍
サンプルを示し;レーン33は正常大動脈を示し;レーン34は正常小腸を示し
;レーン35は正常皮膚を示し、レーン36は正常リンパ節を示し;レーン37
は正常卵巣を示し;レーン38は正常肝臓を示し;レーン39は正常骨格筋を示
し;レーン40は第1の正常胃サンプルを示し、レーン41は第2の正常胃サン
プルを示し;レーン42は正常肺を示し;レーン43は正常腎臓を示し;そして
レーン44は正常膵臓を示す。実験間の比較は、各アッセイに既知のβ−アクチ
ンメッセージの量のポジティブコントロールRNAを含め、そしてこの陽性コン
トロールに対して異なるアッセイの結果を正規化することにより容易にした。
【0103】 RT−PCRおよびサザンブロット分析により、B18Agl遺伝子座がヒト
ゲノムDNAに単一コピーの内因性レトロウイルスエレメントとして存在するこ
とが示された。約12〜18kbのゲノムクローンを最初のB18Agl配列を
プローブとして使用して単離した。4つのさらなるサブクローンもまたXbaI
消化により単離した。これらのクローンのXbaI消化物の末端から得たさらな
るレトロウイルス配列(図4に示されるように位置づけた)を、配列番号3〜配
列番号10として示す。ここで、配列番号3は、図4において10と標識された
配列の位置を示し、配列番号4は11〜29と標識された配列の位置を示し、配
列番号5は3と標識された配列の位置を示し、配列番号6は6と標識された配列
の位置を示し、配列番号7は12と標識された配列の位置を示し、配列番号8は
13と標識された配列の位置を示し、配列番号9は14と標識された配列の位置
を示し、そして配列番号10は11〜22と標識された配列の位置を示す。
【0104】 引き続く研究により、図5Aおよび5Bに示されるように、12〜18kbの
ゲノムクローンが約7.75kbのレトロウイルスエレメントを含むことが示さ
れた。このレトロウイルスエレメントの配列を、配列番号141に示す。図5A
の上部の番号付けした線は、レトロウイルスゲノムクローンのセンス鎖配列を示
す。この線の下のボックスは、選択された制限部位の位置を示す。矢印は、レト
ロウイルスエレメントを配列決定するために使用した異なる重複クローンを示す
。矢印の方向は、単一経路のサブクローン配列がセンス鎖またはアンチセンス鎖
に対応したか否かを示す。図5Bは、B18Aglを含有するレトロウイルスエ
レメントの模式図であり、このエレメント内のウイルス遺伝子の組織化を示す。
白抜きのボックスは、メチオニンで始まる推定オープンリーディングフレームに
対応し、エレメント全体で見出された。6つのありそうなオープンリーディング
フレームの各々を、ボックスの左側に示されるように、センス鎖に対して見出さ
れたものに対応するフレーム1〜3とともに示す。
【0105】 配列番号1のcDNAをプローブとして用いて、より長いcDNAを得た(配
列番号227)。これは、配列番号141に示されるゲノム配列と比較して、微
少なヌクレオチド差異(1%未満)を含む。
【0106】 (B.他の胸部腫瘍特異的ポリペプチドをコードするcDNA分子の調製) 上記のように、正常RNAおよび腫瘍RNAを調製し、そしてmRNAを単離
し、そして(dT)12AGアンカー3’プライマーを用いてcDNAに変換した
。次いで、ディファレンシャルディスプレイPCRを、無作為に選択した配列番
号87〜125のプライマーを用いて行った。増幅条件は上記のとおりであり、
そして腫瘍のRNAフィンガープリントパターンに特異的であると観察されたバ
ンドを銀染色ゲルから切り出し、Tベクター(Novagen,Madison
,WI)またはpCRIIベクター(Invitrogen,San Dieg
o,CA)のいずれかにサブクローニングし、そして配列決定した。配列を配列
番号11〜配列番号86に提供する。単離した79の配列のうち、67が新規で
あることが見出された(配列番号11〜26および28〜770(図6〜20も
また参照のこと))。
【0107】 抗原B15Agl(配列番号27において提供された、最初に同定された部分
配列)に対して伸長したDNA配列(配列番号290)をさらなる研究において
得た。上記のように、配列番号290の配列のGeneBankにおける配列と
の比較により、既知のヒトβ−A−アクチビン遺伝子に対して相同であることが
明らかになった。さらなる研究により、抗原B21GT2(B311Dともいわ
れる;配列番号56において提供された、最初に同定された部分cDNA配列)
の全長cDNA配列の単離がもたらされた。この全長配列は、配列番号307に
おいて提供され、対応するアミノ酸配列は配列番号308に提供される。さらな
る研究により、B311Dのスプライス改変体の単離が導かれた。配列番号31
6のB311Dクローンを配列決定し、そしてこのクローン由来のXhoI/N
otIフラグメントをゲル精製し、そしてさらなるスクリーニングのためのプロ
ーブとして使用するために、ランダムプライミングにより32P−cDTP標識
して、さらなるB311D遺伝子配列を得た。ヒト胸部腫瘍cDNAの細菌ライ
ブラリーの2つの画分を標準的技術を用いてスクリーニングした。このようにし
て単離したクローンのうちの1つは、ポリA+テイル(tail)を含むさらな
る配列を生じた。このクローンの決定されたcDNA配列(B311D_BT1
_1Aといわれる)を配列番号317に提供する。配列番号316および317
の配列は、464bpの領域に対して同一性を共有することが見出され、これは
、配列番号317のポリA+配列近辺で分かれている。
【0108】 引き続く研究により、さらなる146の配列(配列番号142〜289)を同
定した。このうち115が新規であるようである(配列番号142、143、1
46〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜1
98、200〜204、206、207、209〜214、216、218、2
19、221〜240、243〜245、247、250、251、253、2
55、257〜266、268、269、271〜273、275、276、2
78、280、281、284、288および291)。本発明者らの知見が及
ぶ限りでは、これまでに同定された配列のいずれも、正常胸部組織よりヒト胸部
腫瘍組織において、より高いレベルで発現されることはこれまで示されていない
【0109】 さらなる研究において、抗原B11Agl(B305Dともいわれる)のいく
つかの異なるスプライス形態を単離した(種々のスプライス形態の各々はB11
Aglコードフレームのわずかに異なるバージョンを含む)。スプライス接合部
配列は個々のエキソンを規定し、このエキソンは、種々のパターンおよび配置に
おいて種々のスプライス形態を作製する。プライマーを設計して、下記のように
RT−PCRを使用してエキソンの各々の発現パターンを試験した。各エキソン
を最初のB11Aglクローンと同じ発現パターン(この発現は、胸部腫瘍特異
的、正常前立腺特異的および正常精巣特異的である)を示すために見出した。単
離したタンパク質コードエキソンについて決定したcDNA配列を、それぞれ配
列番号292〜298に提供する。配列番号292および298の配列に対応す
る推定アミノ酸配列を配列番号299および300に提供する。cDNA末端の
迅速な増幅(RACE)、上記に提供したB11Aglのスプライス形態のうち
の1つに対する特異的5’プライマーおよび胸部腺癌を用いたさらなる研究によ
り、アイソフォームB11C−15、B11C−8およびB11C−9,16と
いわれる、3つのさらなる関連したスプライス形態の単離がもたらされた。これ
らのアイソフォームについての決定されたcDNA配列を、配列番号301〜3
03に提供する。対応する推定アミノ酸配列を、配列番号304〜306に提供
する。
【0110】 B305DアイソフォームA(配列番号292に提供されるcDNA配列)に
対する引き続く研究において、このcDNA配列(配列番号313に提供する)
は884位でさらなるグアニン残基を含むことが見出され、このことにより、オ
ープンリーディングフレームにおいてフレームシフトがもたらされた。このOR
Fの決定されたDNA配列を配列番号314に提供する。このフレームシフトは
、B305Dの他のアイソフォームに共通するC末端ドメインを含むがN末端領
域において異なる293アミノ酸のタンパク質配列(配列番号315に提供する
)を生成する。
【0111】 (実施例2) (ヒトゲノムDNA由来のB18AG1 DNAの調製) 本実施例は、ヒトゲノムDNAからの増幅によるB18Ag1 DNAの調製
を例示する。
【0112】 B18Ag1 DNAを、20pmolのB18Ag1特異的プライマー、5
00pmol dNTPおよび1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Pe
rkin Elmer,Branchburg,NJ)を使用して、以下の増幅
パラメーターを使用して250ngのヒトゲノムDNAから調製し得る:94℃
で30秒間の変性、60℃〜42℃への30秒間のタッチダウン(touuch
down)アニーリング(2サイクル毎に2℃増やす)および72℃で30秒間
の伸長。最後の増大(42℃のアニーリング温度)は、25回のサイクルで行う
べきである。プライマーを、コンピュータ分析を使用して選択した。合成プライ
マーは、B18Ag1−1、B18Ag1−2、B18Ag1−3、およびB1
8Ag1−4であった。使用され得るプライマー対は、1+3、1+4、2+3
および2+4である。
【0113】 ゲル電気泳動の後に、B18Ag1 DNAに対応するバンドを、切り出しそ
して適切なベクター中にクローニングし得る。
【0114】 (実施例3) (乳房腫瘍cDNA由来のB18AG1 DNAの調製) 本実施例は、ヒト乳房腫瘍cDNAからの増幅による、B18Ag1 DNA
の調製を例示する。
【0115】 第1鎖(first strand)cDNAを、500ngポリA+RNA
、200pmolのプライマー(T)12AG(すなわち、TTT TTT TT
T TTT AG)(配列番号130)、1×第1鎖逆転写酵素緩衝液、6.7
mM DTT、500mmol dNTP、および1ユニットAMVまたはMM
LV逆転写酵素(任意の供給元(例えば、Gibco−BRL(Grand I
sland,NY))から)を30μlの最終容量中に含む反応混合液において
、ヒト乳房腫瘍組織から調製したRNAから合成した。第1鎖合成の後に、この
cDNAを、およそ25倍に希釈して、そして1μlを、実施例2に記載される
ような増幅に使用した。いくつかのプライマー対が、転写物の不均一な集団を生
じ得るが、プライマーB18Ag1−2(5’ATG GCT ATT TTC
GGG GGC TGA CA)(配列番号126)およびB18Ag1−3
(5’CCG GTA TCT CCT CGT GGG TAT T)(配列
番号127)は、単一の151bpの増幅産物を生じる。
【0116】 (実施例4) (B18AG1のB細胞およびT細胞のエピトープの同定) 本実施例は、B18Ag1エピトープの同定を例示する。
【0117】 B18Ag1配列を、種々のコンピュータアルゴリズムを使用してスクリーニ
ングし得る。B細胞エピトープを決定するために、配列を、Hopp.Prog
.Clin.Biol.Res.172B:367〜77(1985)またはC
easeら、J.Exp.Med.164:1779〜84(1986)もしく
はSpougeら、J.Immunol.138:204〜12(1987)の
方法を使用して、疎水性および親水性の値についてスクリーニングし得る。さら
なるクラスII MHC(抗体またはB細胞)エピトープを、AMPHIのよう
なプログラム(例えば、Margalitら、J.Immunol.138:2
213(1987))またはRothbardおよびTaylorの方法(例え
ば、EMBO J.7:93(1988))を使用して、推定し得る。
【0118】 一旦、ペプチド(15〜20個のアミノ酸の長さ)を、これらの技術を使用し
て同定すると、個々のペプチドを、自動化ペプチド合成装置(製造業者(例えば
、Perkin Elmer/Applied Biosystems Div
ision,Foster City,CA)から入手可能)およびメリーフィ
ールド合成のような技術を使用して合成し得る。合成の後に、このペプチドを使
用して、乳癌を患う患者がこのペプチドと反応する抗体を保有するか否かを決定
するために、正常または乳癌のいずれかの患者から回収した血清をスクリーニン
グし得る。乳癌の患者におけるこのような抗体の存在により、問題となる特異的
B細胞エピトープの免疫原性が確認される。このペプチドをまた、インビボでの
免疫後に動物(マウス、ラット、ウサギ、チンパンジー(chimps)など)
において血清学的免疫または液性免疫を生成するそれらの能力について試験し得
る。このような免疫の後のペプチド特異的抗血清の生成はさらに、問題となる特
異的B細胞エピトープの免疫原性を確認する。
【0119】 T細胞エピトープを同定するために、B18Ag1配列を、HLAクラスI
MHC分子に結合し得る、B18Ag1配列内の8〜10個のアミノ酸モチーフ
を同定するのに有用である異なるコンピュータアルゴリズムを使用してスクリー
ニングし得る(例えば、Rammenseeら、Immunogenetics
41:178〜228(1995)を参照のこと)。合成後に、このようなペ
プチドを、標準的な結合アッセイ(例えば、Setteら、J.Immunol
.153:5586〜92(1994)を参照のこと)を使用して、クラスI
MHCに結合するそれらの能力について試験し得、そしてより重要なことには、
患者のまたは正常な末梢血単核細胞のインビトロ刺激の後に、抗原反応性細胞傷
害性T細胞を生成するそれらの能力について、例えば、Bakkerら、Can
cer Res.55:5330〜34(1995);Visserenら、J
.Immunol.154:3991〜98(1995);Kawakamiら
、J.Immunol.154:3961〜68(1995);およびKast
ら、J.Immunol.152:3904〜12(1994)の方法を使用し
て、試験し得る。インビトロでのペプチド刺激の後に、自系(同じクラスI M
HC分子を保有する)腫瘍細胞を殺傷し得るT細胞のインビトロでの首尾のよい
生成はさらに、B18Ag1抗原の免疫原性を確認する。さらに、このようなペ
プチドを使用して、特定のヒトMHCクラスIハプロタイプを発現するヒトラン
スジェニックマウスにおけるインビボでの免疫の後に、マウスペプチドおよびB
18Ag1反応性細胞傷害性T細胞を生成し得る(Vitielloら、J.E
xp.Med.173:1007〜15(1991))。
【0120】 推定HLAクラスI MHC結合抗原に従って破壊された、推定B18Ag1
B細胞およびT細胞のエピトープの代表的な表を、以下に示す:
【0121】
【化25】 (実施例5) (B11AG1のT細胞エピトープの同定) 本実施例は、B11Ag1(B305Dともいわれる)エピトープの同定を例
示する。B11−8、B11−1、B11−5およびB11−12といわれる、
4つのペプチド(それぞれ、配列番号309〜312)は、B11Ag1遺伝子
に由来した。
【0122】 ヒトCD8T細胞を、Van Tsaiら(Critical Review
s in Immunology 18:65〜75,1998)のプロトコル
に従って、樹状細胞を使用してペプチドB11−8に対してインビトロでプライ
ムした。得られたCD8 T細胞培養物を、B−LCL株JYによって提示され
る、B11−8ペプチドまたは陰性コントロールペプチドを認識するそれらの能
力について試験した。簡潔には、T細胞を、10μg/mlペプチド、10ng
/ml IL−7および10μg/ml IL−2の存在下で自系単球とともに
インキュベートして、そして標準的な51−Cr放出アッセイにおいて標的細胞
を特異的に溶解するそれらの能力についてアッセイした。図22に示されるよう
に、バルク培養株は、B11−8ペプチドの強力な認識とともに、ペプチドB1
1−1の弱い認識を実証した。
【0123】 このCTL株由来のクローンを、モノクローナル抗体OKT3およびヒトIL
−2を使用する迅速な増殖後に単離した。図23に示されるように、このクロー
ン(A1といわれる)は、特定のペプチドを認識し得ることに加えて、B11A
g1遺伝子で形質導入されたJY LCLを認識した。このデータは、B11−
8がB11Ag1遺伝子の天然に処理されるエピトープであることを実証する。
さらに、これらのT細胞は、HLA−A2制限様式において、B11Ag1を天
然に発現している樹立腫瘍細胞株を認識しかつ溶解することが見出された(図2
4)。このT細胞は、HLA−A2で形質導入されたB11Ag1を天然に発現
している肺腺癌(LT−140−22)、およびB11Ag1で形質導入された
A2+乳癌(CAMA−1)を強力に認識するが、非形質導入株または別の陰性
腫瘍株(SW620)を強力に認識しない。
【0124】 これらのデータは、これらのヒトT細胞がB11特異的ペプチドのみでなく、
形質導入された細胞および天然に発現する腫瘍株もまた認識することを明確に実
証する。
【0125】 上記の手順を使用して、抗原B11−5およびB11−12に対して惹起され
たCTL株は、対応するペプチドでコーティングされた標的を認識することが見
出された。
【0126】 (実施例6) (ディファレンシャルディスプレイによって発見された乳房腫瘍遺伝子の特徴
付け) ディファレンシャルディスプレイPCRによって発見された乳房腫瘍遺伝子の
特異性および感受性を、RT−PCRを使用して決定した。この手順は、大量の
RNAを使用することなく、半定量的に、乳房腫瘍遺伝子mRNA発現を迅速に
評価することを可能にした。遺伝子特異的プライマーを使用して、種々の組織に
おけるmRNA発現レベル(8つの乳房腫瘍、5つの正常な乳房、2つの前立腺
腫瘍、2つの結腸腫瘍、1つの肺腫瘍、ならびに14の他の成人ヒト組織(正常
な前立腺、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、骨格筋、皮膚、胃および精巣を
含む)を含む)を、試験した。
【0127】 RT−PCRの半定量的な性質を保障するために、β−アクチンを、試験した
組織の各々について内部コントロールとして使用した。第1鎖cDNAの連続希
釈物を調製して、そしてRT−PCRアッセイを、β−アクチン特異的プライマ
ーを使用して行った。次いで、β−アクチンテンプレートの線形範囲の増殖を可
能にし、かつ初期コピー数における差異を反映するに十分な感度である、希釈物
を、選択した。この条件を使用して、β−アクチンレベルを、各組織からの各逆
転写反応物について決定した。DNAの混入を、DNase処理によって、およ
び逆転写酵素を加えることなく調製された第1鎖cDNAを使用した場合の陰性
結果を確認することによって最小化した。
【0128】 遺伝子特異的プライマーを使用して、mRNA発現レベルを、種々の組織にお
いて決定した。現在までに、38個の遺伝子が、RT−PCRによって首尾よく
試験されている。このうち5個(B15AG−1、B31GA1b、B38GA
2a、B11A1aおよびB18AG1a)は、乳房腫瘍に対して良好な特異性
および感受性を示す。図21Aおよび21Bは、これらの遺伝子のうち3つに対
する結果を示す:B15AG−1(配列番号27)、B31GA1b(配列番号
148)およびB38GA2a(配列番号157)。表Iは、正常な乳房組織お
よび乳房腫瘍において、そしてまた、他の組織において試験した全ての遺伝子の
発現レベルを要約する。
【0129】
【表1】 前述から、本発明の特定の実施形態は、例示の目的のために本明細書中に記載
されているが、種々の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくな
され得ることが理解される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ゲルエレクトロポレーションにより分離され、正常乳房組織より調製
されたcDNA(レーン1および2)、および同じ患者由来の乳房腫瘍組織より
調製されたcDNA(レーン3および4)、から得られたPCR産物のディファ
レンシャルディスプレイを示す。矢印は、B18Ag1に対応するバンドを示す
【図2】 図2は、正常乳房組織におけるレベルと、乳房腫瘍組織(レーン1)における
B18Ag1 mRNAのレベルを比較する、ノザンブロットである。
【図3】 図3は、RNaseプロテクションアッセイにより決定されるように、種々の
正常組織および非乳房腫瘍組織のB18Ag1 mRNAのレベルと比較された
、乳房腫瘍組織におけるB18Ag1 mRNAのレベルを示す。
【図4】 図4は、B18Ag1に関連して、XbaI制限消化の末端から得られる付加
的なレトロウイルス配列(配列番号3〜10において提供される)の位置を示す
ゲノムクローンマップである。
【図5】 図5Aおよび図5Bは、B18Ag1を含むレトロウイルスエレメントについ
ての、配列決定ストラテジー、ゲノム構築および推測されたオープンリーディン
グフレームを示す。
【図6】 図6は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B18Ag1のヌクレオチド配列
を示す。
【図7】 図7は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B17Ag1のヌクレオチド配列
を示す。
【図8】 図8は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B17Ag2のヌクレオチド配列
を示す。
【図9】 図9は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B13Ag2aのヌクレオチド配
列を示す。
【図10】 図10は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B13Ag1bのヌクレオチド
配列を示す。
【図11】 図11は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B13Ag1aのヌクレオチド
配列を示す。
【図12】 図12は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B11Ag1のヌクレオチド配
列を示す。
【図13】 図13は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B3CA3cのヌクレオチド配
列を示す。
【図14】 図14は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B9CG1のヌクレオチド配列
を示す。
【図15】 図15は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B9CG3のヌクレオチド配列
を示す。
【図16】 図16は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B2CA2のヌクレオチド配列
を示す。
【図17】 図17は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B3CA1のヌクレオチド配列
を示す。
【図18】 図18は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B3CA2のヌクレオチド配列
を示す。
【図19】 図19は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B3CA3のヌクレオチド配列
を示す。
【図20】 図20は、代表的な乳房腫瘍特異的cDNA B4CA1のヌクレオチド配列
を示す。
【図21A】 図21Aは、乳房腫瘍組織(レーン1〜8)および正常乳房組織(レーン9〜
13)およびH2O(レーン14)における乳房腫瘍遺伝子のRT−PCR分析
を示す。
【図21B】 図21Bは、前立腺腫瘍(レーン1、2)、結腸腫瘍(レーン3)、肺腫瘍(
レーン4)、正常前立腺(レーン5)、正常結腸(レーン6)、正常腎臓(レー
ン7)、正常肝臓(レーン8)、正常肺(レーン9)、正常卵巣(レーン10、
18)、正常膵臓(レーン11、12)、正常骨格筋(レーン13)、正常皮膚
(レーン14)、正常胃(レーン15)、正常精巣(レーン16)、正常小腸(
レーン17)、HBL−100(レーン19)、MCF−12A(レーン20)
、乳房腫瘍(レーン21〜23)、H2O(レーン24)、および結腸腫瘍(レ
ーン25)における、乳房腫瘍遺伝子のRT−PCR分析を示す。
【図22】 図22は、抗B11−8CTL株による、B11Ag1ペプチド(B11−8
といわれる)の認識を示す。
【図23】 図23は、B11−8特異的結腸A1による抗原B11Ag1を用いて形質導
入された細胞株の認識を示す。
【図24】 図24は、B11−8特異的クローンA1による、肺腺癌株(LT−140−
22)および乳房腺癌株(CAMA−1)の認識を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 39/00 A61K 48/00 4C085 39/395 A61P 35/00 4C086 48/00 C07K 14/82 4C087 A61P 35/00 16/32 4H045 C07K 14/82 19/00 16/32 C12N 1/15 19/00 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 C12Q 1/68 A 1/21 G01N 33/53 D 5/06 M 5/10 33/566 C12Q 1/68 33/574 A G01N 33/53 C12P 21/02 C C12N 15/00 ZNAA 33/566 5/00 A 33/574 E // C12P 21/02 A61K 37/02 (31)優先権主張番号 09/534,825 (32)優先日 平成12年3月23日(2000.3.23) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C N,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EE ,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR, HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,K P,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU ,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX, NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S G,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ ,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 リード, スティーブン ジー. アメリカ合衆国 ワシントン 98005, ベルビュー, 122エヌディー プレイス エヌ.イー.−2843 (72)発明者 ミシェル, リンダ イー. アメリカ合衆国 ワシントン 98115, シアトル, 53アールディー アベニュー エヌ.イー. 6251 (72)発明者 レッター, マルク ダブリュー. アメリカ合衆国 ワシントン 98014, カーネイション, エヌ.イー. 43アー ルディー プレイス 33402 (72)発明者 ディロン, デイビン シー. アメリカ合衆国 ワシントン 98053, レッドモンド, エヌ.イー. 24ティー エイチ ストリート 21607 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA12 BA36 BA45 CA04 CA07 GA11 HA15 4B063 QA01 QA18 QA19 QQ02 QQ42 QR56 QR62 QS12 QS25 QS34 4B064 AG27 AG31 CA10 DA05 DA14 4B065 AA90X AA93Y AB01 BA02 CA24 CA44 CA46 4C084 AA02 AA03 AA07 AA13 BA01 BA02 BA08 BA22 BA23 BA41 CA18 CA36 CA56 DA01 MA02 MA05 NA14 ZB022 ZB052 ZB261 ZC412 4C085 AA03 AA13 BB01 CC03 CC08 DD62 DD86 EE06 4C086 AA01 AA02 AA03 EA16 MA01 MA02 MA03 MA04 MA05 NA14 ZB02 ZB05 ZB21 ZB26 ZC41 4C087 AA01 AA02 AA03 BB43 BB64 BB65 BC83 CA04 CA12 MA02 MA05 NA14 ZB02 ZB05 ZB21 ZB26 ZC41 4H045 AA10 AA11 AA30 BA10 BA41 CA41 DA76 DA86 EA28 EA31 EA51 FA74

Claims (60)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、少な
    くともタンパク質またはその改変体、の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク
    質は、以下: (a)以下の配列番号: 【化1】 に列挙される配列; (b)中程度にストリンジェントな条件下で、以下の配列番号: 【化2】 のいずれか1つに列挙される配列にハイブリダイズする配列;および (c)(a)または(b)の配列の相補鎖、 からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸
    配列を含む、ポリペプチド。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の単離されたポリペプチドであって、ここで
    、前記ポリペプチドが、以下の配列番号: 【化3】 のいずれか1つに列挙されるポリヌクレオチド配列、または該ポリヌクレオチド
    配列のいずれかの相補鎖によってコードされるアミノ酸配列を含む、ポリペプチ
    ド。
  3. 【請求項3】 配列番号299、300、304〜306、308および3
    15いずれか1つに列挙される配列を含む、単離されたポリペプチド。
  4. 【請求項4】 タンパク質、またはその改変体、の少なくとも15アミノ酸
    残基をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、該改変体は抗原特異的
    抗血清と反応する改変体の能力が実質的に減少されないような、1つ以上の置換
    、欠失、付加および/または挿入において異なり、ここで該腫瘍タンパク質が、
    以下の配列番号: 【化4】 のいずれか1つに列挙される配列または該配列のいずれかの相補鎖を含むポリヌ
    クレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
  5. 【請求項5】 タンパク質、またはその改変体、をコードする単離されたポ
    リヌクレオチドであって、ここで該腫瘍タンパク質は、以下の配列番号: 【化5】 のいずれか1つに列挙される配列、または該配列のいずれかの相補鎖を含むポリ
    ヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
  6. 【請求項6】 単離されたポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド
    が、以下の配列番号: 【化6】 のいずれか1つに列挙される配列を含む、ポリヌクレオチド。
  7. 【請求項7】 単離されたポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチド
    が、中程度にストリンジェントな条件下で、以下の配列番号: 【化7】 のいずれか1つに列挙される配列に対してハイブリダイズする配列を含む、ポリ
    ヌクレオチド。
  8. 【請求項8】 請求項4〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドと相
    補的な、単離されたポリヌクレオチド。
  9. 【請求項9】 請求項4〜8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含
    む、発現ベクター。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の発現ベクターを用いて形質転換またはト
    ランスフェクトされた宿主細胞。
  11. 【請求項11】 以下の配列番号: 【化8】 のいずれか1つに列挙されるポリヌクレオチド配列、または該ポリヌクレオチド
    配列のいずれかの相補鎖、によりコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質に
    特異的に結合する、単離された抗体、またはその抗原結合フラグメント。
  12. 【請求項12】 請求項1に記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む、
    融合タンパク質。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の融合タンパク質であって、ここで該融
    合タンパク質は、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いてトラ
    ンスフェクトされた宿主細胞において、該融合タンパク質の発現を増大する発現
    エンハンサーを含む、融合タンパク質。
  14. 【請求項14】 請求項12に記載の融合タンパク質であって、ここで該融
    合タンパク質は、請求項1に記載のポリペプチド内に存在しないTヘルパーエピ
    トープを含む、融合タンパク質。
  15. 【請求項15】 前記融合タンパク質がアフィニティータグを含む、請求項
    12に記載の融合タンパク質。
  16. 【請求項16】 請求項12に記載の融合タンパク質をコードする、単離さ
    れたポリヌクレオチド。
  17. 【請求項17】 薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、生理学的に受
    容可能なキャリア、および以下: (a)請求項1に記載のポリペプチド; (b)請求項4に記載のポリヌクレオチド; (c)請求項11に記載の抗体; (d)請求項12に記載の融合タンパク質;および (e)請求項16に記載のポリヌクレオチド、 からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む、薬学的組成物。
  18. 【請求項18】 免疫促進剤および以下: (a)請求項1に記載のポリペプチド; (b)請求項4に記載のポリヌクレオチド; (c)請求項11に記載の抗体; (d)請求項12に記載の融合タンパク質;および (e)請求項16に記載のポリヌクレオチド、 からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む、ワクチン。
  19. 【請求項19】 前記免疫促進剤がアジュバントである、請求項18に記載
    のワクチン。
  20. 【請求項20】 前記免疫促進剤が主にI型応答を誘導する、請求項18に
    記載のワクチン。
  21. 【請求項21】 患者において癌の発達を阻害する方法であって、該方法は
    、請求項17に記載の薬学的組成物の有効量を患者に投与する工程を包含する、
    方法。
  22. 【請求項22】 患者において癌の発達を阻害する方法であって、該方法は
    、請求項18に記載のワクチンの有効量を患者に投与する工程を包含する、方法
  23. 【請求項23】 薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて
    、請求項1に記載のポリペプチドを発現する抗原提示細胞を含む、薬学的組成物
  24. 【請求項24】 前記抗原提示細胞が樹状細胞またはマクロファージである
    、請求項23に記載の薬学的組成物。
  25. 【請求項25】 タンパク質またはその改変体の少なくとも1つの免疫原性
    部分を含むポリペプチドを発現する抗原提示細胞を含むワクチンであって、ここ
    で該タンパク質は、免疫促進剤と組み合わせて、以下: (a)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜29
    8、301〜303、307、313、314、316および317に列挙され
    る配列; (b)中程度にストリンジェントな条件下で、以下の配列番号:1、3〜26
    、28〜86、142〜253、255〜298、301〜303、307、3
    13、314、316および317のいずれか1つに列挙される配列に対してハ
    イブリダイズする配列;ならびに (c)(i)または(ii)の配列の相補鎖、 からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配
    列を含む、ワクチン。
  26. 【請求項26】 前記免疫促進剤がアジュバントである、請求項25に記載
    のワクチン。
  27. 【請求項27】 前記免疫促進剤が主にI型応答を誘導する、請求項25に
    記載のワクチン。
  28. 【請求項28】 前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項25に記載の
    ワクチン。
  29. 【請求項29】 患者における癌の発達を阻害するための方法であって、該
    方法は、タンパク質またはその改変体、の少なくとも1つの免疫原性部分を含む
    ポリペプチドを発現する抗原提示細胞の有効量を患者に投与する工程であって、
    ここで該タンパク質は、以下: (a)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜29
    8、301〜303、307、313、314、316および317に列挙され
    る配列; (b)中程度にストリンジェントな条件下で、配列番号:1、3〜26、28
    〜86、142〜253、255〜298、301〜303、307、313、
    314、316および317のいずれか1つに列挙される配列に対してハイブリ
    ダイズする配列;および (c)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜29
    8、301〜303、307、313、314、316および317のいずれか
    1つに列挙されるポリヌクレオチドによりコードされる配列の相補鎖、 からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配
    列を含む、工程; ならびにそれによって該患者における癌の発達を阻害する工程、を包含する、方
    法。
  30. 【請求項30】 前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項29に記載の
    方法。
  31. 【請求項31】 前記癌が乳癌である、請求項21、22および29のいず
    れか1項に記載される、方法。
  32. 【請求項32】 生物学的サンプルから腫瘍細胞を除去するための方法であ
    って、該方法は、タンパク質と特異的に反応するT細胞と生物学的サンプルとを
    接触させる工程を包含し、ここで該タンパク質が以下: (i)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜29
    8、301〜303、307、313、314、316および317のいずれか
    1つに列挙されるポリヌクレオチド;および (ii)該ポリヌクレオチドの相補鎖; からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配
    列を含み、ここで該接触させる工程が、該サンプルから抗原を発現している細胞
    の除去を可能にするのに十分な条件下および時間で実施される、方法。
  33. 【請求項33】 前記生物学的サンプルが血液またはその画分である、請求
    項32に記載の方法。
  34. 【請求項34】 患者における癌の発達を阻害するための方法であって、請
    求項32に記載の方法に従って処置された生物学的サンプルを患者に投与する工
    程を包含する、方法。
  35. 【請求項35】 タンパク質に特異的なT細胞を、刺激および/または増殖
    するための方法であって、該方法は、T細胞の刺激および/または増殖を可能に
    するのに十分な条件下および時間で、T細胞を、以下: (a)タンパク質、またはその改変体、の少なくとも1つの免疫原性部分を含む
    ポリペプチドであって、ここで、該タンパク質が、以下: (i)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜29
    8、301〜303、307、313、314、316および317に列挙され
    る配列; (ii)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜2
    98、301〜303、307、313、314、316および317のいずれ
    か1つに列挙される配列に対して、中程度にストリンジェントな条件下でハイブ
    リダイズする配列;および (iii)(i)または(ii)の配列の相補鎖; からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸
    配列を含む、ポリペプチド; (b)(a)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;ならびに (c)(a)のポリペプチドを発現する抗原提示細胞; からなる群より選択される少なくとも1つの成分と接触させる工程を包含する、
    方法。
  36. 【請求項36】 請求項35に記載の方法に従って調製されるT細胞を含む
    、単離されたT細胞集団。
  37. 【請求項37】 患者における癌の発達を阻害するための方法であって、該
    方法は、請求項36に記載のT細胞集団の有効量を患者に投与する工程を包含す
    る、方法。
  38. 【請求項38】 患者における癌の発達を阻害するための方法であって、該
    方法は、以下の工程: (a)患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を、以下から
    なる群より選択される少なくとも1つの成分と共にインキュベートし、その結果
    T細胞が増殖する工程: (i)タンパク質またはその改変体の、少なくとも1つの免疫原性部分を含む
    ポリペプチドであって、ここで、該タンパク質が、以下からなる群より選択され
    るポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、ポリペプチ
    ド: (1)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜2
    98、301〜303、307、313、314、316および317に列挙さ
    れる配列; (2)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜2
    98、301〜303、307、313、314、316および317のいずれ
    か1つに列挙される配列に対して、中程度にストリンジェントな条件下でハイブ
    リダイズする配列;および (3)(1)または(2)の配列の相補鎖; (ii)(i)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および (iii)(i)のポリペプチドを発現する抗原提示細胞;ならびに (b)該増殖したT細胞の有効量を該患者に投与する工程であって、それにより
    該患者における癌の発達を阻害する、工程 を包含する、方法。
  39. 【請求項39】 患者における癌の発達を阻害するための方法であって、以
    下の工程: (a)患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を、以下から
    なる群より選択される少なくとも1つの成分と共にインキュベートし、その結果
    T細胞が増殖する工程: (i)タンパク質、またはその改変体の、少なくとも1つの免疫原性部分を含
    むポリペプチドであって、ここで、該タンパク質が、以下からなる群より選択さ
    れるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、ポリペプ
    チド: (1)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜2
    98、301〜303、307、313、314、316および317に列挙さ
    れる配列; (2)配列番号:1、3〜26、28〜86、142〜253、255〜2
    98、301〜303、307、313、314、316および317のいずれ
    か1つに列挙される配列に対して、中程度にストリンジェントな条件下でハイブ
    リダイズする配列;および (3)(1)または(2)の配列の相補鎖; (ii)(i)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および (iii)(i)のポリペプチドを発現する抗原提示細胞; (b)少なくとも1つの増殖した細胞をクローニングして、クローンT細胞を提
    供する工程;ならびに (c)該クローンT細胞の有効量を該患者に投与する工程であって、それによっ
    て該患者における癌の発達を阻害する、工程 を包含する、方法。
  40. 【請求項40】 患者における癌の存在または非存在を決定するための方法
    であって、以下の工程: (a)患者から得られた生物学的サンプルを、タンパク質に結合する結合剤に接
    触させる工程であって、ここで、該タンパク質が、配列番号:1、3〜26、2
    8〜86、142〜253、255〜298、301〜303、307、313
    、314、316および317のいずれか1つに列挙されるポリヌクレオチド配
    列または該ポリヌクレオチド配列のいずれかの相補鎖によってコードされるアミ
    ノ酸配列を含む、工程; (b)該サンプルにおいて、該結合剤に結合するポリペプチドの量を検出する工
    程;ならびに (c)該ポリペプチドの量を所定のカットオフ値と比較し、それから該患者にお
    ける癌の存在または非存在を決定する工程、 を包含する、方法。
  41. 【請求項41】 前記結合剤が抗体である、請求項40に記載の方法。
  42. 【請求項42】 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項40に記載
    の方法。
  43. 【請求項43】 前記癌が乳癌である、請求項40に記載の方法。
  44. 【請求項44】 患者における癌の進行をモニターするための方法であって
    、以下の工程: (a)患者から、第1の時点で得られた生物学的サンプルを、タンパク質に結合
    する結合剤に接触させる工程であって、ここで、該タンパク質が、配列番号:1
    、3〜26、28〜86、142〜253、255〜298、301〜303、
    307、313、314、316および317のいずれか1つに列挙されるポリ
    ヌクレオチド配列または該ポリヌクレオチド配列のいずれかの相補鎖によってコ
    ードされるアミノ酸配列を含む、工程; (b)該サンプルにおいて、該結合剤に結合するポリペプチドの量を検出する工
    程; (c)該患者から、次の時点で得られた生物学的サンプルを使用して、工程(a
    )および(b)を繰り返す工程;ならびに (d)工程(c)において検出された該ポリペプチドの量を、工程(b)におい
    て検出された量と比較し、それから該患者における該癌の進行をモニターする工
    程、 を包含する、方法。
  45. 【請求項45】 前記結合剤が抗体である、請求項44に記載の方法。
  46. 【請求項46】 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項45に記載
    の方法。
  47. 【請求項47】 前記癌が乳癌である、請求項44に記載の方法。
  48. 【請求項48】 患者における癌の存在または非存在を決定するための方法
    であって、以下の工程: (a)患者から得られた生物学的サンプルを、タンパク質をコードするポリヌク
    レオチドに対してハイブリダイズするオリゴヌクレオチドに接触させる工程であ
    って、ここで、該タンパク質が、配列番号:1、3〜26、28〜86、142
    〜253、255〜298、301〜303、307、313、314、316
    および317いずれか1つに列挙されるポリヌクレオチド配列または該ポリヌク
    レオチド配列のいずれかの相補鎖によってコードされるアミノ酸配列を含む、工
    程; (b)該サンプルにおいて、該オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする
    ポリヌクレオチドの量を検出する工程;ならびに (c)該オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする該ポリヌクレオチドの
    量を所定のカットオフ値と比較し、それから該患者における癌の存在または非存
    在を決定する工程、 を包含する、方法。
  49. 【請求項49】 前記オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする前記
    ポリヌクレオチドの量が、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して決定される、請求項
    48に記載の方法。
  50. 【請求項50】 前記オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする前記
    ポリヌクレオチドの量が、ハイブリダイゼーションアッセイを使用して決定され
    る、請求項48に記載の方法。
  51. 【請求項51】 患者における癌の進行をモニターするための方法であって
    、以下の工程: (a)患者から得られた生物学的サンプルを、タンパク質をコードするポリヌク
    レオチドに対してハイブリダイズするオリゴヌクレオチドに接触させる工程であ
    って、ここで、該タンパク質が、配列番号:1、3〜26、28〜86、142
    〜253、255〜298、301〜303、307、313、314、316
    および317のいずれか1つに列挙されるポリヌクレオチド配列または該ポリヌ
    クレオチド配列のいずれかの相補鎖によってコードされるアミノ酸配列を含む、
    工程; (b)該サンプルにおいて、該オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする
    ポリヌクレオチドの量を検出する工程; (c)該患者から、次の時点で得られた生物学的サンプルを使用して、工程(a
    )および(b)を繰り返す工程;ならびに (d)工程(c)において検出された該ポリヌクレオチドの量を、工程(b)に
    おいて検出された量と比較し、それから該患者における該癌の進行をモニターす
    る工程、 を包含する、方法。
  52. 【請求項52】 前記オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする前記
    ポリヌクレオチドの量が、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して決定される、請求項
    51に記載の方法。
  53. 【請求項53】 前記オリゴヌクレオチドに対してハイブリダイズする前記
    ポリヌクレオチドの量が、ハイブリダイゼーションアッセイを使用して決定され
    る、請求項51に記載の方法。
  54. 【請求項54】 診断キットであって、以下: (a)請求項11に記載の1つ以上の抗体;および (b)レポーター基を含む検出試薬、 を備える、キット。
  55. 【請求項55】 前記抗体が固体支持体上に固定化される、請求項54に記
    載のキット。
  56. 【請求項56】 前記検出試薬が、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロ
    テインAまたはレクチンを含む、請求抗54に記載のキット。
  57. 【請求項57】 前記レポーター基が、放射性同位体、蛍光基、発光基、酵
    素、ビオチンおよび色素粒子からなる群より選択される、請求項54に記載のキ
    ット。
  58. 【請求項58】 タンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して、中程
    度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする10〜40の連続したヌク
    レオチドを含むオリゴヌクレオチドであって、ここで、該タンパク質が、以下の
    配列番号: 【化9】 のいずれか1つに列挙されるポリヌクレオチド配列、または該ポリヌクレオチド
    のいずれかの相補鎖によってコードされるアミノ酸配列を含む、オリゴヌクレオ
    チド。
  59. 【請求項59】 請求項58に記載のオリゴヌクレオチドであって、ここで
    該オリゴヌクレオチドが、以下の配列番号: 【化10】 のいずれか1つに列挙される10〜40の連続したヌクレオチドを含む、オリゴ
    ヌクレオチド。
  60. 【請求項60】 診断キットであって、以下: (a)請求項59に記載のオリゴヌクレオチド;および (b)ポリメラーゼ連鎖反応またはハイブリダイゼーションアッセイにおける使
    用のための診断試薬、 を備える、キット。
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