JP2002533149A - プレチスモグラフ脈拍認識プロセッサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 規則に基づく知的プロセッサは、パルス酸素濃度計により得られる光プレチスモグラフ波形における個々の脈拍の認識をもたらす。脈拍認識は、２段階で行われる。第１段階では、プレチスモグラフ波形における候補脈拍が識別される。候補脈拍を識別する段階では、波形脈拍の理想化された三角形の波のモデルに対応する山及び谷を表す波形における点が識別される。この段階で、特徴的な重複切痕を含む、このモデルに一致しない波形の特徴が除去される。第２段階では、プレチスモグラフ・モデルが候補脈拍に適用され、どの脈拍がこのモデルの条件を満たすかが決定される。これは、先ず所定の脈拍特徴を計算し、次に生理的に容認可能な特徴を識別するために異なるチェックを用いることにより行われる。その後、様々な統計が、各脈拍の周期及び信号強度、並びに生理的に容認可能であると分類されている分析された波形セグメントの比率である脈拍密度を含む、結果として生じる脈拍情報から導かれることが可能である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 酸素測定は、血中の酸素の状態の測定である。低い血中酸素量の早期検知は、
不十分な酸素供給が、数分で脳傷害及び死をもたらし得ることから、例えば、重
症者管理及び外科的処置等の医療分野において重要である。パルス酸素測定は、
酸素供給の指標である動脈血の酸素飽和度を測定するための広く容認された無侵
襲的手法である。パルス酸素濃度計（オキシメータ）は一般に、患者の酸素飽和
度の数値情報、脈拍数の数値情報、及び各脈動時に生じる可聴のインジケータ、
即ち「ビープ音」を提供する。

【０００２】 パルス酸素測定システムは、患者に取り付けられたセンサ、モニタ、及びセン
サとモニタとを接続するケーブルから構成される。従来より、パルス酸素測定セ
ンサは、赤色光及び赤外線（ＩＲ）発光ダイオード（ＬＥＤ）エミッタ、及び光
ダイオード検出器の両方を有する。センサは一般に、大人の患者の指又は幼児の
患者の足に取り付けられる。エミッタが手の指の爪を通してその下の血管及び毛
細血管に光を投じるように、センサは指に対して配置される。光ダイオードは、
ＬＥＤより放射された光が指の組織から現れると、それを検知するように、爪と
反対側の指先に配置される。

【０００３】 パルス酸素測定モニタ（パルス酸素濃度計）は、センサにより放たれる２つの
波長の動脈血による吸収の差を計算することによって酸素飽和度を決定する。パ
ルス酸素濃度計は、センサのＬＥＤエミッタの駆動、及び光ダイオード検出器に
より生成される結果として得られる電流の読み取りを交互に行う。この電流は、
検出された光の強さに比例する。パルス酸素濃度計は、検出された赤色光及び赤
外線の強さの比率を計算し、動脈の酸素飽和値は、得られた比率に基づいて経験
的に決定される。パルス酸素濃度計は、センサを制御し、センサ信号を処理し、
患者の酸素飽和度及び脈拍数を表示するための回路を含む。更に、パルス酸素濃
度計は、動脈血流量に起因する照明された組織における血量の時間の経過に従っ
た変化の視覚化である、患者のプレチスモグラフ（血量記録器）の波形を表示し
得る。パルス酸素濃度計は、本発明の発明者の譲受人に譲受された米国特許第5,
632,272号に記載されている。

【０００４】 図１は、パルス酸素濃度計から得られる標準のプレチスモグラフ波形１００を
示す。波形１００は、ｙ軸１１０に沿って示される血量の、ｘ軸１２０に沿って
示される時間に関する表示である。プレチスモグラフ波形１００の形状は、心臓
拍動量、圧力勾配、動脈の弾性、及び末梢抵抗の関数である。理想的な波形１０
０は、急勾配である短時間の流入フェーズ１３０の後に、流入フェーズの３乃至
４倍の長さの流出フェーズ１４０が続く、幅広い辺縁（末梢、peripheral）流動
曲線を表示する。流入フェーズ１３０は、心室収縮中の急激な血量流入による組
織の膨張の結果である。流出フェーズ１４０では、血流は弛緩期の間、血管床に
流れ続ける。弛緩期の終わりの基底線１５０は最小の基底組織潅流を示す。その
性質が議論されている重複切痕１６０が、流出フェーズ１４０の最中に存在する
。古くから、重複切痕１６０は、心室収縮期の終わりに大動脈弁が閉じることに
起因するとされている。しかしながら、これは、大動脈弁が開くと生じ、且つ動
脈流波の前に生じる、最初の素早く伝播する脈圧の周辺からの反射の結果でもあ
り得る。二重の重複切痕が、時々観察され得る。その説明ははっきりしないが、
恐らく、異なる時間に反射の結果がセンサに到達する。

【０００５】 図２は、パルス酸素飽和度センサにより照明された組織部位での光の吸収の区
分モデルを示すグラフ２００である。グラフ２００は、その組織部位により吸収
される光の総量を表すｙ軸２１０と、ｘ軸２２０に沿って示される時間とを有す
る。総吸収量は、組織２３０、静脈血２４０、及び動脈血の基底２５０に起因す
る静的な吸収層を含む複数の層により表される。また、脈動（パルス）を加えら
れる動脈血２６０の量に起因する可変の吸収層も示される。脈動を加えられる動
脈血２６０の曲線２７０は、図１に示されるプレチスモグラフ波形１００のよう
に見られる。

【０００６】 図３は、パルス酸素濃度計のセンサにより検出される光プレチスモグラフ強度
信号３００を示す。パルス酸素濃度計は、標準のプレチスモグラフ波形１００（
図１）を直接は検出しない。しかしながら、標準のプレチスモグラフは、検出さ
れた強度信号３００が単に、吸収の曲線２７０の位相外れのバージョンであるこ
とを観察することにより、導かれ得る。即ち、検出された強度の頂点３７２は、
最小吸収量２７２（図２）の時点で生じ、検出された最小強度３７４は、最大吸
収量２７４（図２）の時点で生じる。更に、プレチスモグラフの流入フェーズで
の吸収２７６（図２）における急激な上昇は、強度における急降下３７６に反映
され、プレチスモグラフの流出フェーズでの吸収における漸落２７８（図２）は
、検出された強度における漸増３７８に反映される。

【０００７】 血中の酸素飽和度に加えて、好適なパルス酸素測定のパラメータは、心臓が鼓
動する速度、即ち脈拍数である。一見、上述の赤色光及び赤外線プレチスモグラ
フ波形から脈拍数を決定することは容易な作業に見える。しかしながら、理想的
な条件下においてさえ、この作業は様々な生理的なプレチスモグラフ波形により
複雑になる。更に、プレチスモグラフ波形は、上記米国特許第2,632,272号に記
載されているような動作アーチファクトを含むノイズによって、しばしば変形さ
れる。特に動作アーチファクト及び他のノイズ源の存在下において、プレチスモ
グラフによる脈拍認識は、脈拍数を決定するため、及び脈の発生の視覚的又は聴
覚的な指示を提供するために有用な構成要素である。

【０００８】 本発明の脈拍認識プロセッサの一態様において、入力されたプレチスモグラフ
波形内の脈拍に関する情報は、プロセッサの出力で提供される。プロセッサは、
入力波形内の複数の潜在脈拍を決定する候補脈拍部を有する。プロセッサの生理
的モデル部はその後、これらの潜在脈拍の内の生理的に容認可能な脈拍を決定す
る。プロセッサは更に、容認可能な脈拍に関する統計を提供し得る。１つの統計
は、容認可能な脈拍の周期と、入力波形セグメントの持続時間との比率である脈
拍密度である。

【０００９】 候補脈拍部は、理想化された三角形の波形に一致しない波形部分を潜在脈拍と
しての考慮から外す一連の構成要素を有する。この処理は、特徴的な重複切痕、
及びノイズ又は動作アーチファクトによりもたらされる特徴等の関係のない波形
特徴を除去する。候補脈拍部は、この三角形の波形の山及び谷に関連する潜在脈
拍を識別する指標を有する出力を提供する。

【００１０】 プロセッサの生理的モデル部は、生理的に容認可能な脈拍に匹敵しない潜在脈
拍を捨てる一連の構成要素を有する。モデル部の第１の構成要素は、脈拍の開始
点、脈拍周期、及び脈拍の信号強度を含む潜在脈拍の特徴を抽出する。これらの
特徴は、様々なチェック（検査）項目と比較される。そのチェック項目には、所
定のしきい値より短い周期を有する脈拍であるか、非対称の脈拍であるか、後に
続く上昇傾向よりも概してなだらかな下降傾向を有する脈拍であるか、脈拍数及
び脈拍の信号強度の経験的な関係に十分に従わない脈拍であるか、及び短時間の
平均信号強度とは所定量を超えて異なる信号強度を有する脈拍であるか、が含ま
れる。

【００１１】 本発明の別の一態様において、脈拍認識方法は、入力波形における複数の潜在
脈拍を識別するステップと、少なくとも１つの生理的に容認可能な脈拍を導き出
すために、この潜在脈拍を生理的な脈拍モデルと比較するステップと、を含む。
容認可能な脈拍に関する統計を生成する更なるステップが含まれてもよい。この
生成ステップは、容認可能な脈拍の周期（間隔）の合計を決定するステップと、
脈拍密度の値を導き出すために、この合計周期（間隔）と、入力波形セグメント
の持続時間との比率を計算するステップと、を含む。比較ステップは、潜在脈拍
から脈拍の特徴を抽出するステップと、抽出された特徴を脈拍基準に関してチェ
ックするステップと、を含む。

【００１２】 本発明の更に別の態様は、入力波形における潜在脈拍を識別し、三角形の波形
出力を提供するための候補脈拍手段を有する脈拍認識プロセッサである。また、
このプロセッサは、三角形の波形出力における生理的に容認可能な脈拍を決定し
、脈拍出力として容認可能な脈拍の指標を提供するためのプレチスモグラフ・モ
デル手段を有する。脈拍認識プロセッサは更に、上述の脈拍出力から累積的な脈
拍特性を決定するための脈拍統計手段を有し得る。

【００１３】 本発明は、添付の図面に関連して以下で詳細に説明される。

【００１４】 図４は、本発明のプレチスモグラフ脈拍認識プロセッサ４００を示す。脈拍プ
ロセッサ４００は、候補脈拍サブプロセッサ４１０、プレチスモグラフ・モデル
・サブプロセッサ４６０、及び脈拍統計サブプロセッサ４９０の３つのサブプロ
セッサを有する。候補脈拍サブプロセッサ４１０は、様々な波形基準、即ち「エ
ッジ・チェック（辺の検査）」を用いて、入力波形の「スナップショット」４１
２における候補脈拍を検出する。ある特定の実施の形態において、スナップショ
ットは、６２．５Ｈｚのサンプリング速度で抽出された検出された強度プレチス
モグラフの４００サンプルである。このスナップショットは、６．４秒の波形セ
グメントを表す。候補脈拍サブプロセッサ４１０の出力４１４は、識別された候
補脈拍の三角形の波のモデルを表す入力波形セグメントの山及び谷である。候補
脈拍出力４１４は、プレチスモグラフ・モデル・サブプロセッサ４６０に入力さ
れ、プレチスモグラフ・モデル・サブプロセッサ４６０は、これらの候補脈拍を
生理的な脈拍のための内部モデルと比較する。プレチスモグラフ・モデル・サブ
プロセッサ４６０の出力４６２は、生理的に容認可能な脈拍である。容認可能な
脈拍出力４６２は、脈拍統計サブプロセッサに入力される。脈拍統計サブプロセ
ッサの出力４９２は、以下で説明されるように、平均脈拍周期及び脈拍密度を含
む容認可能な脈拍に関する統計である。

【００１５】 図５は、候補脈拍サブプロセッサ４１０の構成要素を示す。このサブプロセッ
サは、特徴的な重複切痕を含む、理想化された三角形の波形に一致しない波形特
徴を除去する。例えば、図３に示されるように、候補脈拍構成要素は、点Ｃ及び
Ｄを不要として、点Ａ、Ｂ及びＥを識別しなければならない。候補脈拍サブプロ
セッサ４１０は先ず、入力波形セグメント内の「エッジ（辺）」を識別する。エ
ッジは、フィルタにかけられた波形信号の山及びそれに続く谷を結ぶセグメント
として定義される。その後、候補脈拍プロセッサ４１０は所定の条件を満たさな
いエッジを捨てる。

【００１６】 図５に示されるように、候補脈拍サブプロセッサは、湾曲５００、低域通過フ
ィルタ５１０（実施の一形態における）、及びエッジ・ファインダ５２０を含む
エッジを識別する構成要素を有する。実施の一形態において、湾曲構成要素５１
０は、波形をカーネル[1,-2,1]によりたたみ込み積分する（convolve）ことによ
り実施される。実施の一形態において、低域通過フィルタ５１０の代わりに、帯
域通過フィルタを用いることが可能である。これは、カーネルサイズがｎである
場合に、次式のように表すことができる。

【数１】

【００１７】 なお、この式において、μ_kはｋ番目の入力サンプルであり、ｙ_kはｋ番目の出
力サンプルであり、そしてｗは固定の重みベクトルである。エッジ・ファインダ
５２０は、フィルタ５１０の出力における山及びそれに続く谷を識別する。

【００１８】 図６は、湾曲５００、フィルタ５１０、及びエッジ・ファインダ５２０の各構
成要素が２つの波形脈拍６１０に適用された結果を示す。処理された波形６６０
は、山（頂点）Ａ及びＣ、並びに対応する谷（底点）Ｂ及びＤを有する。２つの
エッジが存在し、第１のエッジは、Ａ及びＢを結ぶ直線セグメント６７０により
表される。第２のエッジは、Ｃ及びＤを結ぶ直線セグメント６８０により表され
る。

【００１９】 図５に示されるように、候補脈拍部はまた、識別されたエッジの内の所定のエ
ッジを除去する、ΔＴ５３０、ゼロ交叉５４０、振幅しきい値５５０、及び最大
値及び最小値５６０のチェックを含む。ΔＴチェック５３０は、固定間隔の範囲
内に納まらない終点間の距離を有する全てのエッジを捨てる。これは、生理的な
脈拍としては遅すぎるか早すぎる入力波形の脈拍に類似する部分を除去するため
に設計される。特定の実施の形態において、この間隔は、６２．５Ｈｚのサンプ
リング速度で５乃至３０サンプルであり、即ち８０乃至４８０ミリ秒である。つ
まり、長さが８０ミリ秒未満又は４８０ミリ秒を超えるエッジは除去される。

【００２０】 図７は、上述のΔＴチェック５３０（図５）を示す。処理された波形７６０、
エッジａ（７８０）及びエッジｂ（７９０）が、比較のための容認可能なエッジ
の長さの最大間隔７７０と共に示される。この例において、３５サンプル長であ
るエッジａ（７８０）は、３０サンプルである容認可能な最大間隔７７０の長さ
を超えるので、除去されるであろう。対照的に、２５サンプル長であるエッジｂ
（７９０）は、容認される。

【００２１】 また、図５に示されるように、ゼロ交叉チェック５４０は、ゼロと交叉しない
全てのエッジを除去する。ゼロ交叉チェックは、入力波形セグメントにおける小
さな曲率の変化、即ち、山でも谷でもない小さな隆起を除去する。

【００２２】 図８は、ゼロ交叉チェック５４０（図５）の結果を示す。処理された波形８６
０が示される。エッジａ（８７０）、エッジｂ（８８０）、及びエッジｃ（８９
０）が、処理された波形８６０のためのゼロ線８６５に関して示される。この例
では、エッジａ（８７０）及びエッジｂ（８８０）は容認されるが、エッジｃ（
８９０）は、ゼロ線８６５と交叉しないので除去される。

【００２３】 図５に示されるように、振幅しきい値チェック５５０は、重複切痕等のゼロ交
叉チェック５４０よりも大きい「隆起」を除去するために設計される。これは、
固定長のウィンドウ内の各エッジの右側の極値（谷）を、そのウィンドウ内の最
小値の定率に基づくしきい値と比較することにより行われる。谷が十分に深くな
い場合、エッジは拒絶される。特定の実施の形態において、ウィンドウ・サイズ
は、新生児に関しては５０サンプルに設定され、大人のより遅い脈拍数に適応さ
せるために、大人に関しては１００サンプルに設定される。また、最小値の６０
％であるしきい値が用いられる。

【００２４】 図９は、振幅しきい値チェック５５０（図５）の例を示す。処理された波形９
６０が示される。ウィンドウ９７０の開始点は、第１のエッジａの左側の極値（
山）９４２に設定される。ウィンドウ９７０内の最小値９８０が決定される。最
小値９８０の６０％であるしきい値９８２が決定される。エッジａの右側の極値
９９２は、しきい値９８２と比較される。右側の極値９９２はしきい値９８２よ
りも小さい（しきい値よりもマイナスである）ので、エッジａは残される。その
後、エッジｂの右側の極値９９３が、しきい値９８２と比較される。右側の極値
９９３はしきい値９８２よりも大きい（しきい値ほどマイナスではない）ので、
エッジｂは除去される。同様に、エッジｃは残される。次に、ウィンドウ９７０
はエッジｂの左側の極値９４３に移動され、処理は繰り返される。

【００２５】 また、図５に示されるように、最大値及び最小値チェック５６０は、エッジに
別の除去基準を適用する。最大値及び最小値チェック５６０は、チェックされて
いるエッジの最小値と、次のエッジの山との間の処理された波形の間隔を考慮す
る。最大値及び最小値チェック５６０は、この間隔内の処理された波形の最大値
を検出する。最大値が、そのエッジの右側の極値（最小値）の絶対値のあるパー
センテージよりも大きい場合、チェックされているエッジは除去される。最も厳
しいアルゴリズム性能を必要とする実施の一形態において、しきい値は、エッジ
の右側の極値の７７％に設定される。それほど厳しくないアルゴリズム性能を必
要とする別の実施の形態において、しきい値は、エッジの右側の極値の２００％
に設定される。最大値及び最小値チェック５６０は、脈拍に類似しているが動作
に対応するエッジを除去するのに効果的である。

【００２６】 図１０は、最大値及び最小値チェック５６０（図５）の例を示す。処理された
波形１０６０が示される。最大値及び最小値チェック５６０は、エッジｂ（１０
７０）に適用される。エッジｂ（１０７０）の頂点である点Ｂ（１０７４）と、
エッジｃ（１０８０）の頂点である点Ｃ（１０８４）との間の間隔Ｂ−Ｃが考慮
される。間隔Ｂ−Ｃにおける最大値は、点Ｃ（１０８４）である。点Ｃ（１０８
４）は、この例では、エッジｂ（１０７０）の最小値である点Ｐ１（１０７２）
の絶対値の７７％である第１のしきい値１０７８と比較される。エッジｂ（１０
７０）は、点Ｃ（１０８４）がこの第１のしきい値１０７８よりも小さいので捨
てられないであろう。別の例として、最大値及び最小値チェック５６０が、エッ
ジｃ（１０８０）に適用される。エッジｃ（１０８０）の頂点である点Ｃ（１０
８４）と、エッジｄ（１０９０）の頂点である点Ｄ（１０９４）との間の間隔Ｃ
−Ｄが考慮される。間隔Ｃ−Ｄにおける最大値は、点Ｖ（１０９３）である。点
Ｖ（１０９３）は、エッジｃ（１０８０）の底点である点Ｐ２（１０８２）の絶
対値の７７％である第２のしきい値１０８８と比較される。エッジｃは、点Ｖ（
１０９３）がこの第２のしきい値１０８８よりも大きいので捨てられるであろう
。

【００２７】 図５に示されるように、脈拍ファインダ５７０は、候補脈拍サブプロセッサ４
１０の最後の構成要素である。脈拍ファインダ５７０は、様々なエッジ・チェッ
クを行った後に残っているエッジを、理想化された三角形の波形の候補脈拍に変
換し、候補脈拍はプレチスモグラフ・モデル・サブプロセッサ４６０（図４）に
供給される。残っているエッジの頂点及び底点の指標に関する情報から、入力波
形における脈拍を決定することは容易である。残っているエッジは先ず、エッジ
の対、即ち、第１及び第２のエッジ、第２及び第３のエッジ、のように分割され
る。脈拍の第１の点は、ある対の第１のエッジの頂点及び底点により決定される
指標の間隔における波形セグメントの最大値に一致する。第２の点は、第１のエ
ッジの底点と、第２のエッジの頂点との間の最小値である。第３及び最後の点は
、第２のエッジの頂点及び底点の間の最大値である。

【００２８】 図１１は、入力波形セグメント１１４０に重ねられた三角形の波のように見ら
れる特定の脈拍ＸＹＺ（１１２０）を含む、一連の脈拍１１１０として示される
脈拍ファインダ５７０（図５）の結果を示す。また、残っているエッジａ（１１
７０）、ｂ（１１８０）、及びｃ（１１９０）も示される。この例において、脈
拍ＸＹＺ（１１２０）は、エッジｃ（１１８０）及びｅ（１１９０）の対から形
成される。点Ｘ（１１２２）は、エッジｃ（１１８０）の頂点１１８２と、底点
１１８４との間の時間間隔における波形セグメント１１４０の最大値である。点
Ｙ（１１２４）は、エッジｃ（１１８０）の底点１１８４と、エッジｅ（１１９
０）の頂点１１９２との間の時間間隔における波形セグメント１１４０の最小値
である。点Ｚ（１１２８）は、エッジｅ（１１９０）の頂点１１９２及び底点１
１９４の間の時間間隔における波形セグメント１１４０の最大値である。

【００２９】 図１２は、プレチスモグラフ・モデル・サブプロセッサ４６０の構成要素を示
す。このサブプロセッサは、候補脈拍サブプロセッサ４１０（図４）により識別
された候補脈拍を入力として取得し、これらの候補脈拍の内の何れが、生理的な
プレチスモグラフ波形のための内部モデルの条件を満たすかを決定する。候補脈
拍サブプロセッサ４１０（図４）は、一連のチェックをエッジに対して実行する
が、プレチスモグラフ・モデル・サブプロセッサは、一連のチェックを脈拍特徴
に対して実行する。モデル・サブプロセッサの第１の構成要素は、関連する脈拍
特徴を計算する。モデル・サブプロセッサの残りは、これらの脈拍特徴をチェッ
クし、生理的に容認可能な特徴を識別する。

【００３０】 図１２に示されるように、脈拍特徴構成要素１２１０は、モデル・サブプロセ
ッサの他の構成要素による下流での処理のために必要とされる入力候補脈拍に関
する３項目の情報を抽出する。抽出される特徴は、脈拍の開始点、周期、及び信
号強度である。

【００３１】 図１３は、候補脈拍１３００、及び脈拍特徴構成要素１２１０（図１２）によ
り抽出される３つのパラメータを示す。脈拍１３００は、参考のために入力波形
１３０２に重ねて示される。開始点Ａ（１３６０）は、脈拍１３００の第１の山
である。周期Ｐ（１３７０）は、脈拍１３００の第１の山１３６０及び第２の山
１３６２の発生時の時間の差である。信号強度ＳＳ（１３５０）は、脈拍１３０
０の第１の山１３６０及び谷１３６４の値の差である。信号強度ＳＳ（１３５０
）は、この値を、点Ａ（１３６０）に対応する点での赤外線の生の信号データの
値により除算することにより正規化される。

【００３２】 また、図１２には、２５０ＢＰＭチェック１２２０が示される。この構成要素
は、１５サンプルより少ない周期Ｐ（１３７０）（図１３）を有する脈拍を捨て
る。これは、１分当たり２５０回の拍動（２５０ＢＰＭ）に設定された、脈拍数
の上限に一致する。即ち、 15サンプル/拍動=(62.5サンプル/秒×60秒/分)/250拍動/分 （２） である。

【００３３】 更に、図１２は、スティック（貼り付け）モデル・チェック１２３０を示す。
この構成要素は、対応する波形がスティック・モデルにぴったり合わない場合、
即ち、脈拍を三角形の波形で表すことができない場合、これらの脈拍を捨てる。
この構成要素は、入力波形と、この波形の三角形の波の表現との間の正規化され
た差を測定する。得られた値はしきい値と比較され、正規化された差がそのしき
い値よりも大きい場合、脈拍は捨てられる。

【００３４】 図１４は、スティック・モデル・チェック１２３０（図１２）により実行され
る計算を示す。入力波形脈拍１４１０及び対応するスティック・モデル脈拍１４
６０が示される。スティック・モデル・チェック１２３０（図１２）構成要素は
、波形脈拍１４１０及びスティック・モデル脈拍１４６０の間の濃い黒の領域１
４２０として示される、絶対較差の合計である第１の値を計算する。また、この
構成要素は、脈拍１４１０の下降部を取り囲む第１の長方形の灰色領域１４７０
と、脈拍１４１０の上昇部を取り囲む第２の灰色領域１４８０との合計である第
２の値を計算する。その後、スティック・モデル・チェック１２３０（図１２）
は、第１の値を第２の値で除算することにより、第１の値を正規化する。この正
規化された値はしきい値と比較される。生理的な脈拍は、高い脈拍数では、ステ
ィック・モデルと大きく異なることはない。しかしながら、１５０ｂｐｍを大き
く下回る脈拍数では、重複切痕及び他の「隆起」の出現のために、これは真では
ない。従って、しきい値は脈拍数の関数である。実施の一形態において、しきい
値は次の通りである。 0.15 脈拍数＜130の場合 (３) 0.430455769e^-0.008109302（脈拍数） 130＜脈拍数＜160の場合 (４) 0.1 脈拍数＞160の場合 (５)

【００３５】 図１２には、角度チェック１２４０が示される。角度チェック１２４０は、脈
拍の上昇部に関する正規化された傾斜角度の計算に基づく。この角は、同一周期
を有する理想の脈拍の同じ角と比較される。このチェックは、極端に非対称の脈
拍を捨てるのに効果的である。

【００３６】 図１５は、角度チェック１２４０（図１２）の例を示す。対応する入力波形１
５０２に重ねられた１つの三角形脈拍１５００が示される。上昇脈拍部１５０４
は、垂直な高さａ（１５１０）及び水平距離ｂ（１５２０）を有する。高さ１５
１０及び距離１５２０は、脈拍信号強度ｓｓ（１５３０）、及びこの特定の実施
の形態では６２．５Ｈｚである脈拍周波数に関して正規化される。角度θ１５４
０は、次式のように計算される。 θ＝arctan[(a/ss)/(b/62.5)]×180/π (６) 角度θは、ａが信号強度に等しく、ｂが周期ｃ（１５５０）引く６に等しい場合
、同一周期を有する理想的な脈拍の同じ角と比較される。しきい値のマージンと
して、この値に３度が加算される。従って、θは、次式のように計算されるθ_{re f} と比較される。 θ_ref＝arctan {[a/ss]/[(c-6)/62.5]}×(180/π)+3 (７) もし、θ＜θ_refであるならば、脈拍は捨てられる。図１６は、セグメントａ（
１６１０）が信号強度ｓｓ（１６３０）よりもかなり小さいので、角度チェック
により捨てられるであろう脈拍１６００の例を示す。

【００３７】 また、比率チェック１２５０が図１２に示される。時間比率チェック構成要素
は、上昇脈拍部の持続時間と、下降脈拍部の持続時間との比率が所定のしきい値
よりも小さい脈拍を除去する。特定の実施の形態において、しきい値は１．１で
ある。このチェックの理論的根拠は、各生理的な脈拍において、上昇部は、心室
収縮を表す下降部よりも時間が短いことである。

【００３８】 図１７は、時間比率チェック１２５０（図１２）により捨てられるであろう脈
拍１７００の例を示す。この例において、上昇部１７１０の持続時間ａ（１７６
０）は、下降部１７２０の持続時間ｂ（１７７０）よりも短い。従って、上昇持
続時間１７６０と下降持続時間１７７０の比率（ａ／ｂ）は、しきい値１．１よ
りも小さい。

【００３９】 更に、図１２は、信号強度チェック１２６０を示す。信号強度チェック１２６
０は、各脈拍の信号強度に基づいて、各脈拍に信頼値を割り当てる。高低２つの
レベルの信頼度が存在する。信頼度の決定は、２つのメカニズムに基づく。第１
のメカニズムは、脈拍数が多いほど、信号強度が低いという観測結果に基づいて
いる。このメカニズムは、脈拍数と信号強度との経験的な関係を用いて実施され
る。測定された信号強度が、この経験的な関係よりも固定マージンの分だけ高い
場合、脈拍の信頼度は低い。第２のメカニズムは、信号強度が短時間に過度に変
化し得ないという生理的な限界を組み入れる。脈拍信号強度が、短時間の平均信
号強度よりも固定マージンの分だけ高い場合、脈拍の信頼度は低い。脈拍が両方
の基準を満たす場合、この脈拍は高い信頼度を有する。単一の波形セグメント又
はスナップショットにおける全ての脈拍は、同一の信頼値を有する。従って、高
い信頼度を有する脈拍が１つでも存在すれば、低い信頼度を有する全ての脈拍は
、除去されるであろう。

【００４０】 図１８は、上述の第１の信号強度基準を示す。実施の一形態において、信号強
度と脈拍数との関係は、曲線１８００により示され、これは次の方程式により説
明される。 ＳＳ＝110.e^-0.02131PR＋１ (８) 先ず、脈拍数ＰＲ（１８１０）が脈拍周期から決定される。次に、対応する信号
強度ＳＳ_ref（１８２０）が、方程式（８）及び脈拍数１８１０から決定される
。方程式（８）は、経験的に導き出されるので、個々の患者により適するように
、上下にずらされる。長期の平均信号強度（長期ＳＳ）１８３０、及び長期の平
均脈拍数（長期ＰＲ）１８４０が導き出される。長期ＳＳ（１８３０）が、長期
ＰＲ（１８４０）に対応する位置で曲線１８００を超えている場合、長期ＳＳと
曲線１８００との差に２を加えた値がオフセット１８５０となる。測定された脈
拍信号強度（脈拍ＳＳ）が、ＳＳ_ref＋オフセット１８６０よりも小さい場合、
このチェックは通過される。

【００４１】 図４に示されるように、候補脈拍サブプロセッサ４１０及びプレチスモグラフ
・モデル・サブプロセッサ４６０の後に、脈拍認識プロセッサ４００は、生理的
に容認可能なプレチスモグラフのための所定のモデルに該当する入力波形スナッ
プショット内の全ての脈拍を識別する。これらの脈拍に関する情報から、脈拍統
計サブプロセッサ４９０は、このスナップショット自体に関する統計を抽出する
ことが可能である。導き出される２つの有用な統計パラメータは、脈拍周期及び
信号強度の中間値である。４００ポイント（ほぼ７秒）の波形スナップショット
内で、各脈拍に関連する周期及び信号強度は大きく異なり得るので、平均値より
も寧ろ中間値が用いられる。別のパラメータは、信号強度の信頼度のレベルであ
り、これはある実施の形態では、スナップショットの全ての認識された脈拍にと
って同じである。第４の有用なパラメータは、脈拍密度である。脈拍密度は、容
認可能な脈拍の周期（間隔）の合計を、スナップショットの長さで除算すること
により得られる。脈拍密度は、生理的に容認可能であると分類されているスナッ
プショットの比率を表す。脈拍密度は、０及び１の間の値であり、１は、スナッ
プショットの全てが生理的に容認可能であることを意味する。換言すると、脈拍
密度は、データが間違いないか、又は例えば、動作アーチファクトにより歪めら
れているかの尺度である。

【００４２】 最後に、これらの上述された基準に基づいて、脈拍数が選択され得る。図１９
に示されるように、更なるモニタリング入力を有するシステムにおいて、脈拍数
選択及び比較モジュール１９００が提供され得る。例えば、酸素濃度計の脈拍数
（及び、必要に応じて、対応する信頼度情報）が、第１の入力１９０２で提供さ
れることが可能である。複数のパラメータを有する患者モニタでは、脈拍数又は
脈拍に関する情報（及び、場合によっては信頼度情報）もまた、ＥＣＧ又はＥＫ
Ｇモニタからの第２の入力１９０４、血圧モニタからの第３の入力１９０６、動
脈線からの第４の入力１９０８、及び他の可能なパラメータ１９１０、１９１２
で提供され得る。その後、脈拍数モジュール１９００は、多様な入力を比較し、
どれが相関するか、又はどれが相関し、且つ最も高い信頼関係を有するかを決定
することが可能である。選択された脈拍数はその後、出力１９１４で提供される
。或いは、脈拍数モジュール１９００は、個々の入力又は選択された入力を平均
するか、又は利用可能であれば、信頼度情報に基づいて重み付けされた平均を提
供してもよい。

【００４３】 プレチスモグラフ脈拍認識プロセッサは、本発明の様々な実施の形態に関連し
て詳細に開示された。これらの実施の形態は、例として開示されたものであり、
本願の請求項により定義される本発明の範囲を制限するものではない。当業者は
、本発明の範囲内の多数の変形及び変更を理解するであろう。

【図面の簡単な説明】

【図１】 プレチスモグラフ波形の単一の脈拍を示すグラフである。

【図２】 血液及び組織の様々な成分の吸収寄与を示すグラフである。

【図３】 「プレチスモグラフ」のパルス酸素測定の強度波形を示すグラフである。

【図４】 本発明のプレチスモグラフ脈拍認識プロセッサのブロック図である。

【図５】 本発明の候補脈拍検出サブ・プロセッサ部のブロック図である。

【図６】 フィルタにかけられたプレチスモグラフ脈拍の湾曲、及び関連付けられたエッ
ジを示すグラフである。

【図７】 エッジに対するΔＴチェックを示すグラフである。

【図８】 エッジに対するゼロ交叉チェックを示すグラフである。

【図９】 エッジに対する振幅のしきい値チェックを示すグラフである。

【図１０】 エッジに対する最大値及び最小値チェックを示すグラフである。

【図１１】 脈拍ファインダの出力を示すグラフである。

【図１２】 本発明のプレチスモグラフ・モデル・サブプロセッサ部のブロック図である。

【図１３】 モデル・サブプロセッサの脈拍特徴構成要素により抽出されるパラメータを示
すグラフである。

【図１４】 候補脈拍に対するスティック・モデル・チェックを示すグラフである。

【図１５】 候補脈拍に対する角度チェックを示すグラフである。

【図１６】 角度チェックにより捨てられるであろう脈拍を示すグラフである。

【図１７】 比率チェックにより捨てられるであろう脈拍を示すグラフである。

【図１８】 信号強度チェックの１つのテストを示すグラフである。

【図１９】 本発明の好適な実施の形態に従う脈拍数選択及び比較モジュールのブロック図
である。

Claims (17)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 プレチスモグラフの波形入力、及び該波形入力内の脈拍に関
   する情報を提供する脈拍認識出力を有するプロセッサであって、 前記波形入力内の複数の潜在脈拍を決定する候補脈拍部と、 前記脈拍の中の生理的に容認可能な脈拍を決定する生理的モデル部と、 を含む、プレチスモグラフ波形入力及び脈拍認識出力を有するプロセッサ。
2. 【請求項２】 前記波形入力を有する脈拍の統計を決定する部分を更に含む
   、請求項１に記載のプロセッサ。
3. 【請求項３】 前記統計の１つが、前記波形入力内の生理的に容認可能な脈
   拍の密度であることを特徴とする、請求項２に記載のプロセッサ。
4. 【請求項４】 前記候補脈拍部が、前記潜在脈拍を三角形の波の山及び谷と
   して識別する出力を提供する、請求項１に記載のプロセッサ。
5. 【請求項５】 前記生理的モデル部が前記潜在脈拍の特徴を抽出する構成要
   素を含む、請求項１に記載のプロセッサ。
6. 【請求項６】 前記特徴が、脈拍周期、脈拍の開始点、及び脈拍の信号強度
   の少なくとも１つを含む、請求項５に記載のプロセッサ。
7. 【請求項７】 前記生理的モデル部が、前記潜在脈拍の中の所定のしきい値
   未満の周期を有する潜在脈拍を無視する構成要素を含む、請求項１に記載のプロ
   セッサ。
8. 【請求項８】 前記生理的モデル部が、前記潜在脈拍の中の概して非対称で
   ある潜在脈拍を無視する構成要素を含む、請求項１に記載のプロセッサ。
9. 【請求項９】 前記生理的モデル部が、前記潜在脈拍の中の、後に続く上昇
   傾斜よりも概して遅い下降傾斜を有する潜在脈拍を無視する構成要素を含む、請
   求項１に記載のプロセッサ。
10. 【請求項１０】 前記生理的モデル部が、前記潜在脈拍の中の脈拍数及び脈
    拍信号強度の経験的な関係に十分に従わない潜在脈拍を無視する構成要素を含む
    、請求項１に記載のプロセッサ。
11. 【請求項１１】 前記生理的モデル部が、前記潜在脈拍の中の、短期の平均
    信号強度とは所定量を超えて異なる信号強度を有する潜在脈拍を無視する構成要
    素を含む、請求項１に記載のプロセッサ。
12. 【請求項１２】 プレチスモグラフ波形内の脈拍を認識する方法であって、 前記波形における複数の潜在脈拍を識別するステップと、 少なくとも１つの生理的に容認可能な脈拍を導き出すために、前記潜在脈拍を
    生理的脈拍モデルと比較するステップと、 を含む、プレチスモグラフ波形内脈拍認識方法。
13. 【請求項１３】 前記少なくとも１つの容認可能な脈拍に関する統計を生成
    するステップを更に含む、請求項１３に記載の方法。
14. 【請求項１４】 前記統計を生成するステップが、 前記少なくとも１つの容認可能な脈拍の総周期を決定するステップと、 脈拍密度を導き出すために、前記総周期と前記波形の持続時間との比率を計算
    するステップと、 を含む、請求項１４に記載の方法。
15. 【請求項１５】 前記比較するステップが、 前記潜在脈拍から脈拍の特徴を抽出するステップと、 複数の脈拍基準に対して該特徴をチェックするステップと、 を含む、請求項１３に記載の方法。
16. 【請求項１６】 脈拍認識プロセッサであって、 入力波形における潜在脈拍を識別し、三角形の波形出力を提供するための候補
    脈拍サブプロセッサ手段と、 前記三角形の波形出力における生理的に容認可能な脈拍を決定し、脈拍出力と
    して容認可能な脈拍の指標を提供するためのプレチスモグラフ・モデル・サブプ
    ロセッサ手段と、 を含む、脈拍認識プロセッサ。
17. 【請求項１７】 前記脈拍出力から累積的な脈拍特性を決定するための脈拍
    統計サブプロセッサ手段を更に含む、請求項１７に記載の脈拍認識プロセッサ。