JP2002525488A - 内燃機関用の燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 内燃機関用の燃料噴射弁であって、弁体（１）の孔（５）内で軸方向に摺動可能に案内された弁部材（７）の燃焼室側の端部に、弁シール面（９）が設けられていて、該弁シール面（９）が、内燃機関の燃焼室に連通する少なくとも１つの噴射開口（１３）に対する燃料流過部を制御するために、孔（５）の燃焼室側の端部に設けられた弁座（１１）と協働しており、弁部材（７）を孔（５）内で摺動可能に案内するガイド面（２３）が、弁部材（７）の燃焼室とは反対側の端部に設けられている形式のものにおいて、弁部材（７）のガイド面（２３）内に、弁部材（７）を液力式に孔（５）内でセンタリングする多数の切欠きが設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 従来技術 本発明は、請求の範囲第１項の上位概念に記載の形式の内燃機関用の燃料噴射
弁に関する。この種の燃料噴射弁においては、ピストン状の弁部材が軸方向で摺
動可能に弁体の孔内で案内されていて、この場合、弁部材の燃焼室側の端部は弁
シール面を備えている。弁シール面によって弁部材は、内燃機関の燃焼室に連通
する噴射開口に対する燃料流過部を制御するために、孔の燃焼室側の端部に設け
られた定置の弁座と協働する。この場合、弁部材の開放行程運動は戻し力に抗し
て、通常弁ばねの力に抗して、弁部材に開放方向で作用する流入する燃料の高い
燃料圧力によって行われる。この場合、弁部材に対する前記開放圧力の力導入の
ために、弁部材は環状段部によって形成された圧力肩を有していて、該圧力肩は
、孔の横断面拡大部によって形成された圧力室内に突入する。この場合、弁部材
は、燃焼室とは反対側の横断面を拡大されたシャフト部分によって、シールされ
て摺動可能に、ガイド区分を形成する孔部分において弁体内で案内される。この
場合、弁部材のガイド区分は、弁部材の燃焼室とは反対側の端部でガイド面を形
成し、該ガイド面は、孔内での極めて狭いガイドに基づき高い摩耗にさらされる
。この場合、公知の燃料噴射弁は特に高い噴射圧力の場合に、弁部材ガイド内で
燃料圧力フィールドを生ぜしめるという欠点をもたらし、該圧力フィールドは、
片側の側方力を弁部材に伝達しかつこのようにして弁部材の片側の接触に基づき
弁部材と孔ガイド面との間で片側の面圧を生ぜしめ、該面圧によって著しい摩耗
が生じ、この結果不所望の漏れが発生しかつ噴射弁が使用不能になる。

【０００２】 ドイツ国実用新案第２９５０４６０８号明細書から既に、弁体内のガイド孔と
弁部材との間のガイド面が２つの別個のガイド領域に分割されている内燃機関用
の燃料噴射弁が公知である。このようにして、ガイド孔の壁部に対する弁部材の
片側の接触ひいては片側の摩耗が回避される。しかしながらこの場合公知の燃料
噴射弁の欠点は、弁部材と、別個のガイド領域間のガイド孔壁との間の大きな遊
び面に基づき、可動構成部材の間で潤滑フィルムの引裂きが生じ、これにより新
たな摩耗形成が促進されるということにある。

【０００３】 発明の利点 請求の範囲第１項に記載の特徴を有する本発明による内燃機関用の燃料噴射弁
の利点は、弁部材の傾倒ひいてはガイド面における片側の摩耗が確実に回避され
るということにある。この場合この利点は有利には、弁体内のガイド孔と弁部材
との間に液力的なくさびが設けられることによって得られ、該液力的なくさびは
、弁部材と孔との間のガイド面の主要部分に亘って延びかつこのようにして弁部
材を孔内で液力式にセンタリングする。この場合、弁部材のガイド面内の切欠き
は有利にはガイド面の周方向に亘って分配されて配置されているので、弁部材に
おいて一様な圧力補償が生じ、弁部材とガイド孔との間の局部的な圧力ピークひ
いては片側の側方力導入が回避される。

【０００４】 この場合、弁部材のガイド面内の前記切欠きは溝として、有利には横溝、点状
の凹部又は傾斜溝として構成でき、この場合、選択的に別の切欠き形状も可能で
ある。この場合、可動な弁部材と該弁部材をガイドする孔壁との間での液力式の
潤滑フィルムの引裂きを確実に回避するために、切欠きはほぼ最大１ｍｍのマイ
クロメータ範囲でのみ設けられる。

【０００５】 弁部材の軸線に対して横方向に延びる潤滑溝を使用する場合、潤滑溝は所定の
半径で湾曲していて、この場合、半径は有利には０．１ｍｍである。この場合、
横溝は有利には、ガイド面領域で弁部材直径がほぼ４ｍｍである場合、ほぼ０．
１６ｍｍの幅、ほぼ０．０３ｍｍの最大深さ及びほぼ０．６ｍｍ乃至０．８ｍｍ
の相互間隔を有している。

【０００６】 いわゆる潤滑ポケットを形成する多数の個々の切欠きを使用する場合には、切
欠きは有利には０．２ｍｍ乃至０．５ｍｍの直径を有しかつほぼ０．０２ｍｍ乃
至０．０５ｍｍの深さで弁部材内に加工される。この場合、前記潤滑ポケットの
製作は有利には、弁部材の周面内への押込み圧延（Einwalzen）又はレーザー焼
付け法（Lasereinbrennverfahren）によって行われる。

【０００７】 別の利点は、液力式の圧力補償を生ぜしめる切欠きが弁部材のガイド面内で、
弁部材周方向のほぼ１８０度に亘る傾斜溝として形成される場合に、得られる。
この場合、前記傾斜溝は特に有利には螺旋状に湾曲して構成でき、これにより、
ガイド孔に弁部材が片側で接触した場合に高い液力的な圧力が螺旋溝の始端で導
入され、次いで接触する弁部材側に案内されるという、利点が得られる。この場
合、螺旋溝の幅は、ガイド孔内部での弁部材のセンタリングを補助する増強され
た戻し力を生ぜしめる。

【０００８】 この場合、液力式の圧力補償切欠きは、既述の構成の場合には、弁部材の周面
内に設けられているが、選択的に、圧力補償切欠きを弁部材のガイド面の領域で
ガイド孔の壁部内に設けかつこのようにして同じ液力式のセンタリング効果を生
ぜしめることができる。この場合、圧力補償切欠きは、弁部材と孔との間の潤滑
フィルム引裂きを確実に回避するために、マイクロメータサイズの範囲で形成さ
れねばならない。

【０００９】 本発明の有利な構成は、その他の請求項並びに実施例及び図面から明らかであ
る。

【００１０】 次に図示の実施例に基づき本発明による内燃機関の燃料噴射弁の実施例を説明
する。

【００１１】 本発明にとって重要な範囲のみを図示した、本発明による内燃機関用の燃料噴
射弁の第１図で図示の第１実施例では、燃焼室とは遠い方の端面３を起点として
延びる軸方向の袋孔５が設けられている弁体１が図示されている。袋孔５内には
ピストン状の弁部材７が軸方向に摺動可能に案内されていて、該弁部材の燃焼室
側の下端は円錐形に形成されている。この場合、円錐面はテーパ状の弁シール面
９を形成する。この場合、弁シール面９は袋孔５を燃焼室側で制限するテーパ状
の弁座１１と協働し、該弁座からは弁シール面９と弁座１１との間のシールライ
ンの下流側で噴射孔１３が案内されていて、該噴射孔は燃料供給される内燃機関
の燃焼室に連通している。更に、弁部材７は弁部材の７の直径縮小部によって形
成された、弁シール面９の方向に向いた圧力肩１５を有していて、該圧力肩は、
弁体１内の、圧力室１７を形成する孔５の横断面拡大部内に突入している。圧力
室１７内には、端面３から斜めに延びる高圧通路１９が連通していて、該高圧通
路は、図示しない形式で、供給管路を介して燃料噴射ポンプに接続されている。
燃料噴射ポンプは圧力室を選択的に高圧下の燃料で充填する。下流側では圧力室
１７は、弁部材７と孔壁５との間に形成された環状ギャップ２１を介して弁座面
１１まで連続しているので、燃料高圧は弁シール面９と弁座１１との間のシール
横断面にかけられる。

【００１２】 弁座とは反対側で圧力肩１５に隣接する、弁部材７の弁部材シャフト領域は、
弁部材７を密な嵌合いで袋孔５の壁部に沿って摺動可能に案内するガイド面２３
を形成している。この場合、第２図及び第２ａ図で拡大図で図示のように、ガイ
ド面２３内には第１実施例では弁部材７の軸線に対して直角な横方向に延びる環
状溝２５が加工されている。この場合このミクロ環状溝は、液力的な圧力補償ク
ッションにより、袋孔５内部での弁部材７の旋回もしくは傾倒を確実に阻止しひ
いてはガイド面における片側の摩耗を回避する。この場合、環状溝２５はガイド
面２３の壁部に、ガイド面２３と孔５の壁との間の潤滑フィルム引裂きが確実に
回避され得るように、小さく形成されている。この場合環状溝２５は実施例にお
いて、ガイド面２３の領域で弁部材直径がほぼ４ｍｍである場合、ほぼ０．１６
ｍｍの幅ｂ、ほぼ０．０３ｍｍの深さｔを有する。この場合個々の環状溝２５の
間の間隔ａは、ガイド面２３の弁座から遠い方の端部における０．６ｍｍと弁座
に面した方の端部における０．８ｍｍとの間で変化している。更に、第１実施例
の環状溝２５は、半径状の横断面を有していて、この場合、環状溝２５の半径は
実施例では０．１ｍｍである。

【００１３】 弁部材７のガイド面２３の領域のみを図示した第３図で図示の第２実施例は、
第１図乃至第２ａ図で図示の第１実施例とは、ガイド面２３内に設けられる圧力
補償切欠きとして形成された切欠きの形式においてのみ異なっている。この場合
第２実施例では、弁部材７のガイド面２３の切欠きは、多数の潤滑ポケット２７
として形成されていて、該潤滑ポケット２７はガイド面２３の周方向に亘って分
配されて配置されている。この場合潤滑ポケットは、ガイド面２３内に凹部とし
て形成されていてかつ０．２ｍｍ乃至０．５ｍｍの直径を有していて、弁部材７
の壁部内にほぼ０．０２ｍｍ乃至０．０５ｍｍの深さで加工されている。この場
合、潤滑ポケット凹部は、有利にはガイド面２３内への押込み圧延又はレーザー
焼付け法によって設けられている。

【００１４】 本発明による燃料噴射弁の第４図で図示の第３実施例では、圧力補償切欠きは
弁部材７のガイド面２３内に傾斜溝２９として形成されていて、該傾斜溝は、そ
れぞれ弁部材周方向のほぼ１８０度に亘って設けられかつ互いにずらされて配置
されている。この場合傾斜溝２９は一端で、他端よりも大きな横断面を有してい
るか又は選択的に、図示しない形式で、螺旋溝として形成されている。傾斜溝２
９は、燃焼室とは反対側の上端の方向にみて、下端のほぼ０．１５ｍｍから上端
のほぼ０．３乃至０．５ｍｍに拡大されている。

【００１５】 この場合、個々の傾斜溝の横断面拡大端部領域をずらして設けることによって
、袋孔５の壁部に弁部材７が片側で接触した場合に傾斜溝の始端、この場合接触
側とは反対側の高い液圧が、弁部材の接触側に案内されかつそこで増強された液
圧を生ぜしめ、該液圧が、弁部材７を袋孔５内部で弁部材センタリング位置に押
し戻す。

【００１６】 本発明による内燃機関用の燃料噴射弁は次のように作業する。

【００１７】 噴射休止中には弁ばね（図示せず）により弁部材７の弁シール面９が弁座１１
に接触してシール状態を維持するので、圧力室１７から噴射開口１３への燃料流
過部が閉鎖される。噴射弁において燃料噴射を行う場合には、高圧下の燃料が燃
料噴射ポンプ（図示せず）から高圧通路を介して圧力室１７内に供給され、そこ
で燃料は圧力肩１５を介して開放方向で弁部材７に作用する。所要の噴射開放圧
力に達した後で、圧力肩１５に作用する液力的な開放力が弁ばねの戻し力を越え
かつ弁部材７を弁ばねの閉鎖力に抗して弁座１１から持上げる。この場合、高圧
下の燃料は圧力室１７から環状ギャップ２１を介して及び今や制御された弁シー
ル面９と弁座１１との間の横断面を介して噴射開口１３に達しかつ噴射開口を介
して燃料供給される内燃機関の燃焼室内に噴射される。圧力室１７内への燃料高
圧供給が終了することにより噴射が終了するので、この場合燃料高圧は新たに弁
ばねの閉鎖圧力以下に低下し、これにより、弁部材７は弁ばねによって戻されて
新たに弁座１１に接触する。この場合、弁シール面９は噴射開口１３に対する流
過横断面を弁座１１において新たに密閉するので、引き続き燃料は内燃機関の燃
焼室内には噴射されない。

【００１８】 この場合袋孔５内での弁部材７の片側の傾倒およびこれに関連したガイド面に
おける摩耗を確実に回避するために、弁部材７のガイド面２３内に、実施例では
溝又は切欠きとして形成されている適当な圧力補償切欠きが設けられている。こ
の場合、圧力補償溝２５，２９もしくは潤滑ポケット２７は、燃料で充填されか
つ弁部材７と袋孔５の壁部との間で液力的な圧力クッションを形成し、これによ
って弁部材７は袋孔５内でセンタリングされる。この場合同時に一様な潤滑のた
めに必要な弁部材７と袋孔壁部との間の潤滑フィルムの引裂きを回避するために
、圧力補償切欠きはマイクロメータ範囲で弁部材７のガイド面２３の壁部内に形
成されているので、液力的な安定化が得られると同時に潤滑フィルムの引裂きが
確実に回避される。

【００１９】 このようにして本発明による燃料噴射弁は、孔５の壁部に対する弁部材７の片
側の接触を回避できかつ燃料噴射弁の故障を生ぜしめる摩耗を確実に阻止できる
。

【図面の簡単な説明】

【図１】 切欠きが横溝として弁部材のガイド面内に形成されている本発明による燃料噴
射弁の第１実施例の縦断面図。

【図２】 弁部材のガイド面領域の第１図で図示の区分の拡大図。

【図２ａ】 弁部材のガイド面領域の第１図で図示の区分の拡大図。

【図３】 切欠きが潤滑ポケット凹部として形成されている、ガイド面領域で弁部材を簡
単に図示した第２実施例図。

【図４】 切欠きが傾斜溝として弁部材のガイド面内に形成されている、第３図の変化実
施例の第３実施例図。

【符号の説明】

１ 弁体、 ５ 孔、 ７ 弁部材、 ９ 弁シール面、 １１ 弁座、 １
３ 噴射開口、 ２３ ガイド面

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内燃機関用の燃料噴射弁であって、弁体（１）の孔（５）内
   で軸方向に摺動可能に案内された弁部材（７）の燃焼室側の端部に、弁シール面
   （９）が設けられていて、該弁シール面（９）が、内燃機関の燃焼室に連通する
   少なくとも１つの噴射開口（１３）に対する燃料流過部を制御するために、孔（
   ５）の燃焼室側の端部に設けられた弁座（１１）と協働しており、弁部材（７）
   を孔（５）内で摺動可能に案内するガイド面（２３）が、弁部材（７）の燃焼室
   とは反対側の端部に設けられている形式のものにおいて、弁部材（７）のガイド
   面（２３）内に、弁部材（７）を液力式に孔（５）内でセンタリングする多数の
   切欠きが設けられていることを特徴とする、内燃機関用の燃料噴射弁。
2. 【請求項２】 切欠きが、弁部材（７）の軸線に対して横方向に延びる溝（
   ２５）として形成されている、請求項１記載の燃料噴射弁。
3. 【請求項３】 溝（２５）が、半径状の横断面を有していて、この場合半径
   が有利には０．１ｍｍである、請求項２記載の燃料噴射弁。
4. 【請求項４】 溝（２５）が１ｍｍに等しいか又は１ｍｍよりも小さく形成
   されいてかつ有利には、ほぼ０．１６ｍｍの幅、ほぼ０．０３ｍｍの最大深さｔ
   及び０．６ｍｍ乃至０．８ｍｍの相互間隔を有している、請求項２記載の燃料噴
   射弁。
5. 【請求項５】 弁部材（７）のガイド面（２３）内の切欠きが、ガイド面（
   ２３）の周方向に亘って分配されて配置されている多数の潤滑ポケット（２７）
   として形成されている、請求項１記載の燃料噴射弁。
6. 【請求項６】 潤滑ポケット（２７）がガイド面（２３）内の凹部として形
   成されていて、該凹部が、有利には０．２ｍｍ乃至０．５ｍｍの直径を有しかつ
   ほぼ０．０２ｍｍ乃至０．０５ｍｍの深さで弁部材（７）内に加工されている、
   請求項５記載の燃料噴射弁。
7. 【請求項７】 潤滑ポケットが、レーザー法により製作されている、請求項
   ５記載の燃料噴射弁。
8. 【請求項８】 潤滑ポケットが、弁部材（７）の周面内に押し込み圧延され
   ている、請求項５記載の燃料噴射弁。
9. 【請求項９】 弁部材（７）のガイド面（２３）内の切欠きが、弁部材周方
   向のほぼ１８０度に亘って延びる傾斜溝（２９）として形成されている、請求項
   １記載の燃料噴射弁。
10. 【請求項１０】 傾斜溝（２９）が、螺旋状に湾曲して形成されている、請
    求項９記載の燃料噴射弁。
11. 【請求項１１】 傾斜溝（２９）が、弁座とは反対側の端部の方向に拡大し
    ている、請求項９記載の燃料噴射弁。