JP2002524043A - 膵臓及び卵巣のポリペプチドzsig58 - Google Patents

膵臓及び卵巣のポリペプチドzsig58

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JP2002524043A JP2000563779A JP2000563779A JP2002524043A JP 2002524043 A JP2002524043 A JP 2002524043A JP 2000563779 A JP2000563779 A JP 2000563779A JP 2000563779 A JP2000563779 A JP 2000563779A JP 2002524043 A JP2002524043 A JP 2002524043A
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zsig58
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オー. シェパード,ポール
チャンドラセカー,ヤスミン
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ザイモジェネティクス,インコーポレイティド
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、TIGR族タンパク質の新規メンバーであるzsig58に対応するポリヌクレオチドおよびポリペプチド分子に関連する。zsig58をコードするポリヌクレオチドは、たとえばヒトの病状に関連するゲノム領域を特定するために使用されよう。本発明はまたかかるタンパク質の産生方法、その用途、およびそれに対する抗体も含まれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の背景 分泌タンパク質と炭水化物からなる細胞外マトリックスは、生体機能をいくつ
か持っている。細胞外マトリックスは、組織内で細胞同士を結合させ、細胞運動
の枠組みを提供し、ホルモンの貯蔵場所となるという機能を有する。それに加え
て、局所的に機能する分泌タンパク質は、細胞間の相互作用において重要である
。そのようなタンパク質が、ある細胞と局所的に相互作用すると、遺伝子の発現
状態が変化し、さまざまな効果が生まれる。さまざまな効果とは、例えば、成長
、分化、細胞の形の変化、細胞の運動などである。総説として、『Molecular Ce
ll Biology』、ロディッシュ他編、サイエンティフィック・アメリカン・ブック
ス、ニューヨーク、1995年、1123-1200ページを参照されたい。
【0002】 線維柱帯網誘導(Trabecular meshwork-induced)グルココルチコイド応答(T
IGR)タンパク質は、細胞外タンパク質の1つである。原発性開放隅角緑内障は、
一般に視神経症を特徴とし、治療せずに放置すると完全に失明してしまうことが
ある病気だが、この病気には、TIGRにおけるさまざまな突然変異やミオシリン遺
伝子が関係している(サルファラジ、Human Molecular Genetics, 第6巻, 1667
-1677ページ, 1997年)。cDNAクローンが、目の毛様体から分離された(エスク
リバーノ他、J. Biochem、第118巻、921-931ページ、1995年)。TIGR遺伝子産物
は、目の房水流出経路に沿って並んだ特殊な上皮細胞を含む線維柱帯網において
も発現する。
【0003】 目の毛様体と線維柱帯網は、眼圧の制御に関係する目の構造物である。眼圧の
大きな上昇は、原発性開放隅角緑内障と関係していることがしばしばある。緑内
障において房水流出抵抗が大きくなるのに伴い、結合組織を構成する要素の種類
または数が変化すると考えられていた。研究の結果、TIGRがこの症状に関係して
いる可能性のあることがわかっている。TIGRが房水の流出を妨げるために眼圧が
上昇しているのかもしれない(ストーン他, Science, 第275巻, 668-670ページ
、1997年)。
【0004】 グルココルチコイドは、培養したヒト線維柱帯網(human trabecular meshwor
k)(HTM)細胞におけるTIGRの誘導を制御している(ポランスキー他, Ophthalm
ologica, 第211巻, 126-139ページ, 1997年)。グルココルチコイドによるTIGR
の誘導は、コルチコステロイドで治療している患者の眼圧を変化させるのに必要
な時間および投与量と似ていた。したがってこれは、緑内障の房水流出障害にお
いてTIGRがある役割を演じていることのさらなる証拠となっている。もう1つ別
の重要な観察は、TIGRタンパク質の構造中にロイシン・ジッパーの存在が確認さ
れたことである。
【0005】 これは、TIGR-TIGRオリゴマー化が起こっていることを示している。この発見
は、タンパク質の過剰発現によって病気の状態になることの裏づけとなっている
。したがって、遺伝子を変化させることに加え、ホルモンによる刺激および環境
からの刺激を与えてTIGRを制御すると、タンパク質が過剰に発現して病気の状態
になる可能性がある。
【0006】 新しいTIGRホモログやそれと同等なものを発見することが常に求められている
。TIGRのインビボでの活性は、関連したポリペプチドやそのアゴニストとアンタ
ゴニストに臨床での大きな可能性があり、それらが必要とされていることを示し
ている。本発明は、そのようなポリペプチドを、当業者には本明細書の記載から
明らかなはずのそうした用途およびそれ以外の用途に向けて提供するものである
【0007】 発明の要約 本発明の1つの側面によれば、 (a)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号141(システイン)か
らアミノ酸番号402(リシン)まで; (b)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)から
アミノ酸番号402(リシン)まで; (c)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号1(メチオニン)から
アミノ酸番号402(リシン)まで、
【0008】 からなる群から選択した1つのアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミ
ノ酸残基配列を含むzsig58ポリペプチドをコードしている分離されたポリヌクレ
オチドにおいて、アミノ酸の同一性が、ktup=1、最初のギャップのペナルティ=
10、延長ギャップのペナルティ=1、置換行列=BLOSUM62、他のパラメータはデ
フォルト設定としたFASTAプログラムによって決定されることを特徴とする、分
離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0009】 一実施態様によれば、分離された上記ポリヌクレオチドは、 (a)配列番号:1に示したポリヌクレオチド配列のヌクレオチド505からヌク
レオチド1290まで;(b)配列番号:1に示したポリヌクレオチド配列のヌクレオ
チド160からヌクレオチド1290まで;(c)配列番号:1に示したポリヌクレオチ
ド配列のヌクレオチド85からヌクレオチド1290まで、 からなる群から選択する。 別の実施態様によれば、分離された上記ポリヌクレオチドは、配列番号:5の
ヌクレオチド1からヌクレオチド1206までを含んでいる。
【0010】 別の実施態様によれば、分離された上記ポリヌクレオチドは、(a)配列番号
:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号141(システイン)からアミノ酸番号40
2(リシン)まで;(b)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(
トレオニン)からアミノ酸番号402(リシン)まで;および(c)配列番号:2に
示したアミノ酸配列のアミノ酸番号1(メチオニン)からアミノ酸番号402(リ
シン)まで、からなる群の中から選択したアミノ酸配列と同一のアミノ酸残基配
列を含んでいる。別の実施態様によれば、分離された上記ポリヌクレオチドは、
配列番号:2に示したアミノ酸残基配列のアミノ酸番号26(トレオニン)からア
ミノ酸番号402(リジン)までで構成されている。
【0011】 本発明の第2の側面によれば、操作上関連した以下の要素、すなわち転写プロ
モーターと;配列番号:2のアミノ酸番号26(トレオニン)からアミノ酸番号402
(リシン)までで示されるzsig58ポリペプチドをコードしているDNA断片と;転
写ターミネーターとを含む発現ベクターが提供される。一実施態様によれば、上
記発現ベクターは、上記のDNA断片と操作上関連した分泌シグナル配列をさらに
含んでいる。 本発明の第3の側面によれば、上記の発現ベクターを導入した培養細胞であっ
て、その細胞が、上記のDNA断片によってコードされたポリペプチドを発現して
いることを特徴とする培養細胞が提供される。
【0012】 本発明の別の側面によれば、融合タンパク質をコードするDNA構造物が提供さ
れる。このDNA構造物は、 (a)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号1(メチオニン)から
アミノ酸番号25(システイン)まで; (b)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)から
アミノ酸番号140(セリン)まで; (c)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号141(システイン)か
らアミノ酸番号402(リシン)まで;および (d)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)から
アミノ酸番号402(リシン)まで、 からなる群から選択したポリペプチドをコードしている第1のDNA断片と;別の
ポリペプチドをコードしている少なくとも1つの別のDNA断片とを含むDNA構造物
であって、第1のDNA断片と別のDNA断片がフレーム内で結合されて、上記融合タ
ンパク質をコードしていることを特徴とするDNA構造物である。
【0013】 本発明の別の実施態様によれば、作用可能に連結された以下の要素、すなわち (a)転写プロモーター; (b)上記融合タンパク質をコードしているDNA構造物;並びに (c)転写ターミネーター; を含むベクターが導入された宿主細胞を培養し、次に、上記DNA断片によって
コードされたタンパク質を回収する操作を含む方法によって生産される融合タン
パク質が提供される。
【0014】 本発明の別の実施態様によれば、 (a)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号141(システイン)か
らアミノ酸番号402(リシン)まで; (b)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)から
アミノ酸番号402(リシン)まで;並びに (c)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号1(メチオニン)から
アミノ酸番号402(リシン)まで; からなる群の中から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ
酸残基の配列; を含む分離されたポリペプチドにおいて、アミノ酸同一性、ktup=1、最初のギ
ャップのペナルティ=10、延長ギャップのペナルティ=1、置換行列=BLOSUM62
、他のパラメータはデフォルト設定としたFASTAプログラムによって決定される
ことを特徴とする、分離されたポリペプチドが提供される。
【0015】 一実施態様によれば、分離された上記ポリペプチドはさらに、互いに離れたモ
チーフ1−モチーフ7を、N末端からC末端までの間に、(a)M1-[46]-M2-[37-41]-
M3;及び(b)M4-[48-52]-M5-[49]-M1-[1]-M6-[39]-M2-[37-41]-M3-[4]-M7から
なる群の中から選択した構成で含んでいる。別の実施態様によれば、分離された
上記ポリペプチドは、 (a)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号141(システイン)か
らアミノ酸番号402(リシン)まで; (b)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)から
アミノ酸番号402(リシン)まで;並びに (c)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号1(メチオニン)から
アミノ酸番号402(リジン)まで、 からなる群から選択したアミノ酸配列と同一であるアミノ酸残基配列を含んで
いる。 別の実施態様によれば、分離された上記ポリペプチドは、配列番号:2に示し
たアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)からアミノ酸番号402(リシン
)までである。
【0016】 本発明の別の側面によれば、上記の細胞を培養し、その細胞が産生したzsig58
ポリペプチドを分離する操作を含む、zsig58ポリペプチドの生産方法が提供され
る。 本発明の別の側面によれば、zsig58タンパク質の活性を変化させるモジュレー
タがテストサンプル中に存在しているかどうかを検出する方法が提供される。こ
の方法は、 zsig58に応答する細胞に対し、zsig58によって刺激される細胞内の酵素触媒反
応に応答するレポーター遺伝子構造物をトランスフェクトし; 上記の方法に従ってzsig58ポリペプチドを生産し; そのzsig58ポリペプチドを、テストサンプルの存在下と不在下で上記細胞に添
加し; バイオアッセイまたは生化学的アッセイにより、zsig58ポリペプチドに対する
応答レベルをテストサンプルの存在下と不在下で比較し; その比較を通じ、テストサンプル中にzsig58の活性を変化させるモジュレータ
が存在しているかどうかを確認する操作を含んでいる。
【0017】 本発明の別の側面によれば、zsig58ポリペプチドに対する抗体の生産方法が提
供される。この方法は、 (a)9-402個のアミノ酸からなり、配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミ
ノ酸番号26(トレオニン)からアミノ酸番号402(リシン)までの一部と切れ目
なしに一致するポリペプチド; (b)配列番号:2に示したアミノ酸配列のアミノ酸番号26(トレオニン)から
アミノ酸番号140(セリン)まで;並びに (c)上記のポリペプチドとからなる群の中から選択した、動物に免疫応答を
起こさせるポリペプチドを動物に接種し、その動物から抗体を分離するという操
作をこの順番で含んでいる。
【0018】 本発明の別の側面によれば、上記の方法で生産した、zsig58ポリペプチドと結
合する抗体が提供される。一実施態様によれば、上記の抗体は、モノクローナル
抗体である。本発明の別の側面によれば、上記のポリペプチドに特異的に結合す
る抗体が提供される。 本発明のこれら側面ならびに他の側面は、以下の詳細な説明と添付の図面を参
照することによって明らかになろう。
【0019】 発明の詳細な説明 本発明を詳細に説明する前に、以下の用語を定義しておくと発明の理解に役立
つであろう。 “アフィニティ・タグ”という用語は、本明細書では、ポリペプチド断片のう
ち、別のポリペプチドに結合させることができて、その別のポリペプチドの精製
または検出を行なったり、その別のポリペプチドを基板に付着させるための部位
を提供したりするポリペプチド断片を指すのに用いる。原則として、抗体または
それ以外の特異的結合媒体を用いることができる任意のペプチドまたはタンパク
質がアフィニティ・タグとして使用可能である。
【0020】 アフィニティ・タグとしては、ポリヒスチジン領域、プロテインA(ニルソン
他, EMBO J., 第4巻, 1075ページ, 1985年;ニルソン他, Methods Enzymol., 第
198巻, 3ページ, 1991年)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(スミスとジ
ョンソン、Gene、第67巻、31ページ、1988年)、グルタミン酸−グルタミン酸ア
フィニティ・タグ(グルッセンメイヤー他, Prog. Natl. Acad. Sci. USA, 第82
巻, 7952-7954ページ, 1985年)、サブスタンスP、Flag(登録商標)ペプチド(
ホップ他, Biotechnology, 第6巻, 1204-1210ページ, 1988年)、ストレプトア
ビジン結合ペプチド、あるいはこれ以外のエピトープや結合ドメインなどがある
。一般的な参考文献として、フォード他、Protein Expression and Purificatio
n, 第2巻, 95-107ページ, 1991年を参照されたい。
【0021】 DNAをコードするアフィニティ・タグは、民間企業から調達することができる
(例えばファルマシア・バイオテック社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州
)。
【0022】 “対立遺伝子変異体”という用語は、本明細書では、染色体の同じ遺伝子座を
占めている遺伝子の2つ以上の可能な形態のいずれをも示すのに用いる。対立遺
伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内で表現型の多型を生じさせる
可能性がある。遺伝子の突然変異は、サイレントである(コードされたポリペプ
チドには変化がない)場合と、アミノ酸配列が変化したポリペプチドをコードし
ている場合とがある。対立遺伝子変異体という用語は、本明細書では、対立遺伝
子変異が起こった遺伝子によってコードされたタンパク質を指すのにも用いる。
【0023】 “アミノ末端”と“カルボキシル末端”という用語は、本明細書では、ポリペ
プチド内の位置を示すのに用いる。文脈上可能な場合には、これら用語は、ポリ
ペプチドの特定の配列または部分について近くの位置または相対位置を指すのに
用いる。例えばある配列を、カルボキシル末端があるポリペプチドに含まれる参
照配列と揃うように配置した場合、その配列は参照配列のカルボキシル末端の近
くに位置しているが、そのポリペプチド全体のカルボキシル末端に位置している
わけではない。
【0024】 “相補体/抗相補体ペア”という用語は、適切な条件のもとで、共有結合以外
の手段で結びついて安定なペアを形成している互いに同一ではない2つの部分の
ことを意味する。例えばビオチンとアビジン(またはストレプトアビジン)は、
相補体/抗相補体ペアの典型である。それ以外の相補体/抗相補体ペアとしては
、受容体/リガンドのペア、抗体/抗原(またはハプテンまたはエピトープ)の
ペア、センス/アンチセンス・ポリヌクレオチドのペアなどが挙げられる。相補
体/抗相補体ペアがペア形成後に解離することが望ましいような場所では、相補
体/抗相補体ペアの結合アフィニティが109M-1未満であることが好ましい。
【0025】 “ポリヌクレオチド分子の相補体”という用語は、参照配列と相補的で向きが
逆の塩基配列を有するポリヌクレオチド分子のことを意味する。例えば5'-ATGCA
CGGG-3'は、5'-CCCGTGCAT-3'と相補的である。 “コンティグ”という用語は、ポリヌクレオチドのうち、そのポリヌクレオチ
ドとは別のポリヌクレオチドと同じ配列または相補的な配列を内部に含んでいる
ポリヌクレオチドのことを意味する。切れ目のない配列は、所定のポリヌクレオ
チド配列の全体または一部と“重なっている”と言える。例えばポリヌクレオチ
ド配列5'-ATGGAGCTT-3'に対する代表的なコンティグは、5'-AGCTTgagt-3'と3'-t
cgacTACC-5'である。
【0026】 “縮重したヌクレオチド配列”という用語は、(1つのポリペプチドをコード
している参照用ポリヌクレオチド分子と比較した場合に)縮重したコドンが2つ
以上含まれているヌクレオチド配列のことを意味する。縮重したコドンは、異な
るヌクレオチド・トリプレットを含んでいるが、同じアミノ酸残基をコードして
いる(すなわちGAUとGACというトリプレットはそれぞれアスパラギン酸をコード
している)。
【0027】 “DNA構造物”とは、自然界には見られないようなやり方で結合、並置された
複数のDNA断片を含む、一本鎖または二本鎖になった直線状または環状のDNA分子
のことである。DNA構造物は、人為的な操作によって存在するようになった。DNA
構造物には、人工的に作られた分子のクローンやその他のコピーが含まれる。 “DNA断片”は、より大きなDNA分子のうちの特殊な性質を有する部分のことで
ある。例えば特殊なポリペプチドをコードしているDNA断片は、プラスミドやプ
ラスミドの断片などであり、より大きなDNA分子の一部となっている。より大き
なDNA分子のその部分を5'から3'の方向に読むと、その特殊なポリペプチドのア
ミノ酸配列がコードされている。
【0028】 “発現ベクター”という用語は、目的とするポリペプチドをコードしている断
片と、操作上関連していてその断片の転写を行なう別の複数の断片とを含む直線
状または環状のDNA分子を指すのに用いる。これら別の断片にはプロモーター配
列とターミネーター配列が含まれており、それ以外に、1つ以上の複製起点、1つ
以上の選択可能なマーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどが含ま
れていてもよい。一般に発現ベクターはプラスミドまたはウイルスDNAに由来す
るが、両方の要素を含んでいてもよい。
【0029】 “分離された”という用語は、ポリヌクレオチドに適用する場合には、ポリヌ
クレオチドが天然の遺伝子環境から取り出されていて、したがって他の異質なコ
ード配列または望まないコード配列からは自由であり、遺伝子工学によるタンパ
ク質生産システムの中で使用するのに適した形態であることを意味する。このよ
うな分離された分子は自然環境から隔離された分子であり、例としてcDNAやゲノ
ムクローンが挙げられる。本発明の分離されたDNA分子は、普通なら付随してい
る他の遺伝子を含まないが、プロモータやターミネータなどの自然に発生する5'
と3'の翻訳されない領域は含んでいてもよい。付随する領域の同定法は、当業者
には明らかであろう(例えば、ディナンとティジャン、Nature, 第316巻, 774-7
78ページ, 1985年を参照されたい)。
【0030】 “分離された”ポリペプチドまたはタンパク質は、自然環境とは異なる条件、
例えば血液や動物組織から離れた状態で見つかったポリペプチドまたはタンパク
質である。分離されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物由来の他の
ポリペプチドを実質的に含んでいないことが好ましい。ポリペプチドは、高純度
の形態、すなわち95%を超える純度、さらに好ましくは99%を超える純度で提供
されることが好ましい。“分離された”という用語をこの文脈で使用する場合に
は、同じポリペプチドが別の物理的形態、例えば二量体、グリコシル化された別
の形態、または誘導化された別の形態で存在している状態も“分離された”状態
から除外されることはない。
【0031】 “作用可能に連結された”という用語は、DNA断片について述べるならば、複
数の断片が、望みとする目的、例えば転写がプロモーター内で始まりコード断片
を通ってターミネーターまで進むという目的のために協調して機能するように配
置されていることを意味する。 “オーソログ”という用語は、1つの種から得られたポリペプチドまたはタン
パク質のうち、異なる種のポリペプチドまたはタンパク質の機能と同等なものを
意味する。種分化の結果、オーソログ間での配列の違いが生まれた。
【0032】 “パラログ”は、ある1つの生物によって作られたタンパク質のうち、互いに
異なるが構造的に関連しているものである。パラログは、遺伝子の重複を通じて
生まれると考えられている。例えばα−グロブリンとβ−グロブリンとミオグロ
ブリンは、互いにパラログである。
【0033】 “ポリヌクレオチド”はデオキシリボ核酸またはリボ核酸の塩基を5'末端から
3'末端まで読んだ一本鎖または二本鎖のポリマーである。ポリヌクレオチドには
RNAとDNAが含まれる。ポリヌクレオチドは、自然界から、あるいはインビトロで
の合成により、あるいは天然分子と合成分子の組み合わせによって得ることがで
きる。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(“bp”と省略)、ヌクレオチド(
“nt”)、またはキロ塩基(“kb”)で表わす。文脈上可能な場合には、後ろの
2つの用語は、一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチドを記述するのに用いても
よい。
【0034】 これら用語を二本鎖の分子に適用する場合には、全長を表わすのに用い、“塩
基対”という用語と同じであるものと理解する。当業者であれば、二本鎖のポリ
ヌクレオチドの2本の鎖は長さがわずかに異なっていてもよく、また、その末端
部は酵素による開裂の結果として互いにずれていてもよいことが理解できよう。
したがって、1つの二本鎖ポリヌクレオチド分子の中のすべてのヌクレオチドが
ペアになっていなければならないわけではない。そのようにペアになっていない
末端部の長さは、一般に20ntを超えることはない。
【0035】 “ポリペプチド”は、天然のものであれ合成によるものであれ、ペプチド結合
によって結合した複数のアミノ酸残基からなるポリマーである。アミノ酸残基が
10個未満のポリペプチドは、普通は“ペプチド”と呼ばれる。 “プロモーター”という用語は、本明細書では、当業者の用語法と同じように
、RNAポリメラーゼの結合と転写の開始を行なうDNA配列を含む遺伝子の一部を指
すのに用いる。プロモーター配列は、普通は遺伝子の5'非コード領域に見いださ
れるが、必ずしもそうとは限らない。
【0036】 “タンパク質”は、1本以上のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。タンパ
ク質は、炭水化物などの非ペプチド要素も含んでいてよい。タンパク質には、そ
のタンパク質が合成される細胞を通じて炭水化物やそれ以外の非ペプチド置換基
を付加することができるが、付加するものは、細胞のタイプごとに異なる。タン
パク質は、本明細書では、骨格となるアミノ酸構造に基づいて決まる。一般に炭
水化物などの置換基を明記することはないが、そのような置換基が存在していて
もよい。
【0037】 “受容体”という用語は、生体活性分子(すなわちリガンド)と結合し、その
リガンドの効果を細胞に伝える細胞付随タンパク質のことを意味する。膜結合受
容体は、細胞外リガンド結合ドメインと、主にシグナル伝達に関係する細胞内エ
フェクター・ドメインとを含むマルチペプチド構造によって特徴づけられる。リ
ガンドが受容体と結合する結果、受容体の立体配座が変化し、細胞内においてエ
フェクター・ドメインと他の分子の間で相互作用が起こる。この相互作用によっ
て今度は細胞の代謝が変化する。
【0038】 受容体とリガンドの相互作用に関係する代謝現象には、遺伝子の転写、リン酸
化、脱リン酸化、サイクリックAMPの生産増大、細胞のカルシウムの移動、膜脂
質の移動、細胞の接着、イノシトール脂質の加水分解、リン脂質の加水分解など
が含まれる。一般に、受容体が結合できるのは、細胞膜または核膜である。受容
体には、膜を1回貫通するタイプ(例えば甲状腺刺激ホルモン受容体、βアドレ
ナリン受容体)と、膜を複数回貫通するタイプ(例えばPDGF受容体、成長ホルモ
ン受容体、IL-3受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、エリスロポエチン受容体
、IL-6受容体)がある。
【0039】 “分泌シグナル配列”という用語は、ポリペプチド(“分泌ペプチド”)をコ
ードしているDNA配列を意味する。このポリペプチドは、より大きなポリペプチ
ドの一部として、このより大きなポリペプチドが細胞内で合成されてその細胞の
分泌経路を通っていくように仕向ける。一般に、そのより大きなポリペプチドは
開裂して、輸送の間に分泌ペプチドを分泌経路を通じて除去する。
【0040】 “スプライス変異体”という用語は、本明細書では、1つの遺伝子から転写さ
れたRNAの可能なさまざまな形態を指すのに用いる。スプライス変異体は、転写
された1つのRNA分子の中で選択的スプライシング部位を利用して自然に生まれる
。あるいはそれより頻度は少ないが、別々に転写されたRNA分子同士の間でもス
プライス変異体は生まれる。その結果、同一の遺伝子からいくつかのmRNAが生ま
れることになる。スプライス変異体は、アミノ酸配列が変化したポリペプチドを
コードしている可能性がある。スプライス変異体という用語は、本明細書では、
1つの遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体によってコードされたタン
パク質を指すのにも用いる。
【0041】 不正確な分析方法(例えばゲル電気泳動)で決定したポリマーの分子量と長さ
は、おおまかな値であると理解するものとする。そのような値が“約”Xとか“
ほぼ”Xと表記されている場合には、Xの申告値が±10%の精度であると理解する
ものとする。 本明細書で引用したすべての文献は、参考としてその全体を本明細書に組み込
んである。
【0042】 本発明の一部は、ヒトTIGRと相同な部分を有するポリペプチドをコードしてい
る新規なDNA配列と、そのホモログである神経のオルファクトメディン関連配列
(遺伝子バンク登録番号Q99784)、ミオシリン前躯体(アダム他、Hum. Mol. Ge
net., 第6巻, 2091-2097ページ, 1997年)、オルファクトメディン前躯体(バル
他、Biochemistry, 第32巻, 1047-1053ページ, 1993年)を発見したことに基づ
いている。この新規なDNAに対応するmRNAが組織内にどのように分布しているか
を解析することにより、卵巣と膵臓で発現が最大であることがわかった。このポ
リペプチドはzsig58と名づけられた。
【0043】 本発明の新規なzsig58ポリペプチドは、そもそもは、ある分泌シグナル配列を
含むタンパク質と相同なタンパク質をESTデータベースで検索していて同定され
たものである。これらタンパク質は、上流のメチオニン開始部位と、約13個のア
ミノ酸からなる疎水性領域と、その後に続くペプチド・シグナル・ペプチダーゼ
開裂部位とで特徴づけられる。翻訳したものがこの検索基準に合致すると思われ
る新規なDNA配列をESTデータベースで探した。
【0044】 ESTが1つ見つかり、それに対応するcDNAの配列を決定した。そのcDNAによって
コードされている新規なポリペプチドは、ヒトTIGRとの相同性を示した(ヌグヤ
ン, J. Biol. Chem., 第273巻, 6341-6350ページ, 1998年)。TIGRのホモロジー
に基づくと、zsig58ヌクレオチド配列は、予言されたタンパク質の全コード配列
をコードしていると考えられる。zsig58は、新規な細胞−細胞間シグナル伝達分
子、新規な成長因子、または成長因子ホルモン活性を有する新規な細胞外マトリ
ックス関連分泌タンパク質などの可能性があり、TIGRファミリーのタンパク質の
新規なメンバーとなっている。
【0045】 zsig58ポリペプチドの配列は、対応するポリヌクレオチド配列を含むと考えら
れる単一のクローンから得られた。このクローンは脳下垂体ライブラリーから得
られた。そのような配列を探すとよいと思われる他のライブラリーとしては、卵
巣ライブラリー、胎盤ライブラリーなどがある。
【0046】 zsig58をコードしている代表的なDNAのヌクレオチド配列は、配列番号:1に記
載してある。この配列から導き出した403個のアミノ酸は、配列番号:2に記載し
てある。zsig58ポリペプチド(配列番号:2)は、その全体がポリペプチド断片
の全長(配列番号:2のアミノ酸残基1(メチオニン)からアミノ酸残基402(リ
シン)まで)を表わしている。zsig58は長さがTIGRと似ており、このzsig58分子
の3分の2のところにあるカルボキシル領域に、シグナル配列と、TIGRと似た領域
とを含んでいる。zsig58のさまざまなドメインと構造上の特徴について以下にさ
らに記述する。
【0047】 配列番号:1のDNA配列によってコードされたzsig58ポリペプチドを分析したと
ころ、403個のアミノ酸(配列番号:2)をコードしているオープンリーディング
フレームが明らかになった。そこには、25個のアミノ酸残基からなる予言された
シグナルペプチド(配列番号:2のアミノ酸残基1(メチオニン)からアミノ酸残
基25(システイン))と、377個のアミノ酸からなる成熟ポリペプチド(配列番
号:2のアミノ酸残基26(トレオニン)からアミノ酸残基402(リシン))が含ま
れている。このzsig58ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基141(システ
イン)からアミノ酸残基402(リシン)に対応する領域を含んでいる。この領域
は、以後、“カルボキシル・ドメイン”と呼ぶことにする。
【0048】 このカルボキシル・ドメインの中には、ファミリーのメンバー同士を比較する
ことにより保存されていることがわかったアミノ酸からなるいくつかのモチーフ
がある(図面を参照のこと)。さらに、変化が少ない領域もカルボキシル・ドメ
インの中にいくつか存在している(シェパード,P他、Gene、第150巻、163-167
ページ、1994年を参照のこと)。多数のアラインメント(図面参照のこと)を調
べることにより、よく保存されていると同時に縮重度が低い以下のモチーフが明
らかになった。
【0049】 1)“モチーフ1”(配列番号:2の271番目〜276番目のアミノ酸に対応)、 2)“モチーフ2”(配列番号:2の321番目〜328番目のアミノ酸に対応)、 3)“モチーフ3”(配列番号:2の370番目〜375番目のアミノ酸に対応)。 モチーフ1〜モチーフ3は、N末端からC末端の間で、互いに離れて M1-[46]-M2-[37-41]-M3 (ここにM#は上記の特定のモチーフ(例えばM1はモチーフ1、など)を表わし、[
#]はモチーフ間に存在するアミノ酸の数を表わす)となるように配置されている
【0050】 以上に加え、zsig44カルボキシ・ドメイン内の保存された他のモチーフまたは
縮重度が低い他のモチーフが明らかである。 4)“モチーフ4”(配列番号:2の162番目〜167番目のアミノ酸に対応)、 5)“モチーフ5”(配列番号:2の216番目〜221番目のアミノ酸に対応)、 6)“モチーフ6”(配列番号:2の278番目〜283番目のアミノ酸に対応)、 7)“モチーフ7”(配列番号:2の380番目〜385番目のアミノ酸に対応)。 モチーフ4〜モチーフ7は、N末端からC末端の間で、互いに離れて M4-[48-52]-M5-[56]-M6-[92-96]-M7 (ここにM#は上記の特定のモチーフ(例えばM4はモチーフ4、など)を表わし、[
#]はモチーフ間に存在するアミノ酸の数を表わす)となるように配置されている
【0051】 モチーフ1〜モチーフ7は、N末端からC末端の間で、互いに離れて M4-[48-52]-M5-[49]-M1-[1]-M6-[39]-M2-[37-41]-M3-[4]-M7 (ここにM#は上記の特定のモチーフ(例えばM4はモチーフ4、など)を表わし、[
#]はモチーフ間のアミノ酸の数を表わす)となるように配置されている。
【0052】 一般に、保存されていたり変化が少なかったりするモチーフの存在は、その場
所が、タンパク質内で構造上重要な領域と関係があるか、重要な領域そのもので
あることを意味している。変化が少ない領域(例えば疎水性クラスター)は、一
般に、構造上重要な領域に存在している(シェパード,P他、Gene、第150巻、16
3-167ページ、1994年)。変化が少ないそのような領域には、トリプトファンな
どの稀なアミノ酸、すなわち出現度が低いアミノ酸が含まれていることがしばし
ばある。
【0053】 そのように保存されていたり変化が少なかったりするモチーフに隣接する領域
やそれらモチーフの間に挟まれた領域は変化がより大きい可能性があるが、機能
的には重要であることがしばしばある。というのも、それら領域が、結合ドメイ
ン、生物学的活性、酵素活性、シグナル伝達、組織局在ドメインなどの重要な構
造や活動と関係していたり、そうした構造や活動を規定していたりする可能性が
あるからである。例えばフランキング領域でのN末端からカルボキシ・ドメイン
までは、配列番号:2の26番目の残基(トレオニン)から140番目の残基(セリン
)までを含んでおり、機能的に重要である可能性がある。
【0054】 以上に加え、配列2にはカルボキシル・ドメイン全体を通じて個別に保存され
たアミノ酸がいくつかある。すなわち、141(システイン)、147(グリシン)、
180(グリシン)、186(バリン)、188(グルタミン酸)、195(フェニルアラニ
ン)、196(メチオニン)、209(ロイシン)、216(トレオニン)、219(バリン
)、223(グリシン)、227(フェニルアラニン)、233(セリン)、235(イソロ
イシン)、241(ロイシン)、245(トレオニン)、255(グリシン)、293(バリ
ン)、296(リシン)、308(トリプトファン)、310(トレオニン)、391(チロ
シン)である。
【0055】 zsig58ポリペプチドには、種を超えて共通するリン酸化部位が3箇所ある。す
なわち、配列番号:2のアミノ酸150(セリン)からアミノ酸152(リシン)まで
のSLKと、配列番号:2のアミノ酸172(セリン)からアミノ酸174(リシン)まで
のSPKと、配列番号:2のアミノ酸395(トレオニン)からアミノ酸397(アルギニ
ン)までのTKRである。これら部位は、PIR 17またはTIGRには存在していない。
図面を参照されたい。
【0056】 zsig58ポリペプチドではさらに、配列番号:2のアミノ酸番号66(アスパラギ
ン)、137(アスパラギン)、183(アスパラギン)の位置がグリコシル化部位で
あることが予想されている。これらアミノ酸位置にあるグリコシル化部位に対応
するグリコシル化部位は、TIGRまたはPIR 173639には見当たらない。図面を参照
されたい。しかも小胞体残留シグナルはzsig58には存在していない、これは、こ
の分子がTIGRとは違って細胞から分泌されることを示唆している。
【0057】 zsig58のカルボキシ・ドメインや膜貫通ドメインでアミノ酸残基が保存された
領域、またはzsig58の保存されたモチーフは、ファミリーの新しいメンバーを同
定する道具として使うことができる。例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT
-PCR)を用いて、さまざまな組織または細胞系から得られるRNAの保存領域をコ
ードしている配列を増幅することができる。特に、zsig58配列をもとに設計した
縮重度が高いプライマーがこの目的に役立つ。縮重したこのようなプライマーを
設計して使用することは、当業者には容易であろう。
【0058】 本発明によれば、本明細書に記載したzsig58をコードするポリヌクレオチド分
子も提供される。ポリヌクレオチド分子には、DNA分子とRNA分子が含まれる。当
業者であれば、遺伝コードが縮重していることを考慮すると、配列の異なるかな
り多数のポリヌクレオチド分子が可能であることが容易に理解できよう。配列番
号:5は、配列番号:2のzsig58ポリペプチドをコードするあらゆるDNAを網羅し
ている縮重DNA配列である。当業者であれば、Uの代わりにTを用いると、配列番
号:5の縮重配列も、配列番号:2をコードしているあらゆるRNA配列を提供して
いることが理解できよう。
【0059】 したがって、配列番号:5のヌクレオチド1−ヌクレオチド1206を含んでいてzs
ig58ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、それに対応するRNAが、本
発明によって考案される。表1は、縮重したヌクレオチドの位置を示すのに配列
番号:5で用いた1文字コードの説明である。“分割”はコード文字によって表わ
したヌクレオチドである。“相補物”は相補的なヌクレオチドのコードを示して
いる。AはTと相補的であり、GはCと相補的であるので、例えばコードYはCまたは
Tを表わし、その相補物RはAまたはGを表わす。
【0060】
【表1】
【0061】 配列番号:5で用いた縮重したコドンは、任意のアミノ酸に対する可能なすべ
てのコドンを網羅している。それを表2に記載する。
【0062】
【表2】
【0063】 当業者であれば、各アミノ酸をコードしている可能なあらゆるコドンの代表で
ある縮重したコドンを1つ決定する際に、いくらかあいまいさがあることが理解
できよう。例えばセリンに対する縮重したコドン(WSN)は、場合によってはア
ルギニン(AGR)をコードすることができ、アルギニンに対する縮重したコドン
(MGN)は、場合によってはセリン(AGY)をコードすることができる。
【0064】 似たような関係が、フェニルアラニンをコードしているコドンとロイシンをコ
ードしているコドンの間に存在している。したがって、縮重した配列に含まれる
いくつかのポリヌクレオチドは、さまざまなアミノ酸配列をコードする可能性が
あるが、当業者であれば、配列番号:2のアミノ酸配列を参照してそのようなさ
まざまな配列を容易に同定できる。さまざまな配列は、本明細書に記載したよう
にして容易に機能をテストすることができる。
【0065】 当業者であれば、異なる種の間で“コドン利用法の好み”が存在しうることも
理解できよう。一般的な参考文献として、ガンサム他, Nuc. Acids Res., 第8巻
, 1893-1912ページ, 1980年;ハアス他, Curr. Biol., 第6巻, 315-324ページ,
1996年;ウェイン−ホブソン他, Gene, 第13巻, 355-364ページ, 1981年;グロ
スジャンとフィアース, Gene, 第18巻, 199-209ページ, 1982年;ホルム、Nuc.
Acids Res., 第14巻, 3075-3087ページ, 1986年;イケムラ, J. Mol. Biol., 第
158巻, 573-597ページ, 1982年を参照されたい。
【0066】 本明細書で使う“コドン利用法の好み”または“好みのコドン”という表現は
、ある1つの種の細胞内で非常に頻繁に使われているタンパク質翻訳コドンのこ
とを意味する当業者の表現である。したがって、各アミノ酸をコードしている可
能なコードのうち、代表的な1つまたはいくつかが好んで利用される(表2を参照
されたい)。例えばトレオニン(Thr)というアミノ酸は、ACA、ACC、ACG、ACT
のいずれかによってコードされているが、哺乳類の細胞ではACCが最もよく使わ
れるコドンである。それに対して他の種、例えば昆虫、酵母、ウイルス、バクテ
リアでは、トレオニンに対して別のコドンのほうが好まれている可能性がある。
【0067】 ある特定の種で好まれるコドンは、当業者に知られているさまざまな方法で本
発明のポリヌクレオチドに導入することができる。組み換えDNAに好みのコドン
配列を導入すると、例えば特定のタイプの細胞または種においてタンパク質への
翻訳がより効率的になってタンパク質の生産が増える可能性がある。したがって
配列番号:5に示した縮重コドン配列は、当業者が普通利用しているさまざまな
タイプの細胞や種、および本明細書に記載したさまざまなタイプの細胞や種にお
けるポリヌクレオチドの発現を最適化するためのテンプレートとして役立つ。好
みのコドンを含む配列は、本明細書に記載したように、さまざまな種で発現をテ
ストして最適化したり、機能をテストしたりすることができる。
【0068】 本発明の好ましい実施態様によれば、分離されたポリヌクレオチドは、条件が
厳しい場合には、配列番号:1の似たようなサイズの領域、またはそれと相補的
な配列とハイブリッドを形成する。一般に、厳しい条件は、温度が、規定のイオ
ン強度とpHにおける特定の配列に対する融点(Tm)よりも約5℃低くなるように
選択する。Tmは、目的とする配列の50%が、完全に相補的なプローブと(規定の
イオン強度とpHにおいて)ハイブリッドを形成する温度である。典型的な厳しい
条件とは、pH7においてNaClの濃度が約0.03Mまでであり、温度が少なくとも約60
℃よりも高いという条件である。
【0069】 上述したように、本発明の分離されたポリヌクレオチドにはDNAとRNAが含まれ
る。DNAとRNAを準備する方法は当業者には周知である。一般に、RNAは大量のzsi
g58RNAを生産する組織または細胞から分離される。そのような組織と細胞は、ノ
ーザン・ブロット法によって明らかになる(トーマス、Proc. Natl. Acad. Sci.
USA、第77巻、5201ページ、1980年)。そのような組織と細胞としては、膵臓や
卵巣と、これら臓器に由来する細胞系などがある。全RNAは、グアニジン・イソ
チオシアネート抽出法の後、濃度傾斜のあるCsClの中で遠心力を利用して分離す
ることにより得ることができる(チャーグウィン他、Biochemistry、第18巻、52
-94ページ、1979年)。
【0070】 ポリ(A)+RNAは、全RNAに対してアヴィヴとレーダーの方法を用いることによ
って得られる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第69巻、1408-1412ページ、1972
年)。相補的DNA(cDNA)は、ポリ(A)+RNAに対して公知の方法を用いることに
よって得られる。その一方で、ゲノムDNAを分離することができる。次に、zsig5
8ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを同定し、分離する。そのた
めには、例えばハイブリダイゼーションまたはPCRを利用する。
【0071】 zsig58をコードしているクローンの全体は、従来のクローニング法で得ること
ができる。相補的DNA(cDNA)のクローンのほうがゲノム・クローンよりも好ま
れるが、用途(例えばトランスジェニック動物における発現)によってはゲノム
・クローンを用いるか、あるいはcDNAのクローンを変化させてゲノム・イントロ
ンを少なくとも1つ含むようにするほうが好ましかろう。cDNAとゲノムクローン
を得る方法は周知であり、当業者の技術の範囲である。その方法には、ライブラ
リーのプロービングまたはプライミングのために本明細書に記載した配列または
その一部を用いることが含まれる。発現ライブラリーは、zsig58に対する抗体、
受容体の断片、またはそれ以外の特異的結合パートナーを用いて調べることがで
きる。
【0072】 本発明のポリヌクレオチドは、DNA合成装置を用いて合成することもできる。
現在好まれている方法はフォスフォアミダイト法である。化学的に合成された二
本鎖DNAが遺伝子または遺伝子断片の合成などの用途に必要とされる場合には、
相補的な鎖をそれぞれ別々に作る。短いポリヌクレオチド(60〜80bp)の生産は
技術的に簡単であり、相補的な鎖を合成し、次いでそれをアニールすることによ
って実現される。しかし、より長いポリヌクレオチド(300bp以上)を生産する
ためには、普通は特殊な方法を用いる。というのも、DNAを化学的に合成すると
き各サイクルで結合効率が100%になることはほとんどないからである。この問
題を解決するため、長さが20〜100ヌクレオチドの一本鎖の断片をモジュールの
形態に組み合わせて合成遺伝子(二本鎖)にする。
【0073】 ある方法では、合成遺伝子を作るのに、それぞれが20〜60ヌクレオチド分の長
さで互いに重なり合った領域を有する一群の相補的オリゴヌクレオチドをまず最
初に合成する必要がある。遺伝子のそれぞれの内部区画は、隣接する区画と正確
に塩基対を作るように設計した相補的な3'末端延長部と5'末端延長部を有する。
したがって遺伝子を組み立てた後、2本の鎖の背骨に沿って切れ目をT4 DNAリガ
ーゼでシールすることによって、この方法が完成する。合成遺伝子は、タンパク
質をコードしている配列に加え、制限エンドヌクレアーゼ部位へのクローニング
・ベクターの挿入を容易にする末端配列を用いて設計することもできる。さらに
、転写と翻訳の正しい開始と終了のためのシグナルを含む他の配列も付加する必
要がある。
【0074】 遺伝子の全体を得る別の方法は、互いに重なり合った領域を有する一群の特別
なオリゴヌクレオチド(40〜100ヌクレオチド)を合成することである。互いに
重なり合った相補的な短い3'領域と5'領域(6〜10ヌクレオチド)をアニールす
ると、まだ大きなギャップが残っている。しかし塩基がペアになったこの2つの
短い領域は、どちらも、合わさって構造物を作るには十分に長く、かつ十分に安
定している。
【0075】 大腸菌のDNAポリメラーゼIという酵素によるDNA合成を通じてギャップは埋ま
り、2本鎖構造のDNAが完成する。酵素による合成が終わると、T4 DNAリガーゼを
用いて切れ目を塞ぐ。二本鎖構造物が互いに順番に結合していき、遺伝子配列の
全体が形成される。そのことは、DNA配列を分析することで確認される。グリッ
クとパステルナーク、『Molecular Biotechnology, Pinciples & Applications
of Recombinant DNA』(ASMプレス、ワシントンD.C.、1994年);イタクラ他、A
nnu. Rev. Biochem.、第53巻、323-356ページ、1984年;クリミー他、Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA、第87巻、633-637ページ、1990年を参照されたい。
【0076】 本明細書に記載したzsig58ポリヌクレオチド配列は、zsig58遺伝子の5'非コー
ド領域をクローニングするためのプローブまたはプライマーとしても使うことが
できる。ノーザン・ブロット法でzsig58において組織特異的な発現が観察された
ことを考慮すると、この遺伝子領域は、卵巣または膵臓において特異的に発現す
ることが期待される。したがって、zsig58遺伝子に由来するプロモーター要素を
用いて、例えばトランスジェニック動物または遺伝子治療を受けている患者にお
いて異種遺伝子を組織特異的に発現させることができよう。zsig58タンパク質を
容易に生産するには、5'フランキング配列をクローニングして“遺伝子を活性化
させる”方法もある。
【0077】 この方法は、アメリカ合衆国特許第5,641,670号に記載されている。要するに
、zsig58遺伝子座に、標的配列と、調節配列と、エキソンと、不対スプライス・
ドナー部位とを少なくとも含むDNA構造物を導入することによって、細胞内の内
在性zsig58遺伝子の発現を変化させる。標的配列はzsig58の5'非コード配列であ
り、この5'非コード配列が、DNA構造物と内在性zsig58遺伝子座の相同性組み換
えを可能にする。こうすることにより、DNA構造物内の配列が内在性zsig58コー
ド配列と作用可能に連結される。このようにして、内在性zsig58プロモーターを
他の調節配列で置き換えたり、内在性zsig58プロモーターに他の調節配列を補足
したりすることで、組織特異的な発現を増大、とまでは言えなければ調節した発
現を起こすことができる。
【0078】 本発明によれば、他の種において対応するポリペプチドとポリヌクレオチド(
オーソログ)がさらに提供される。その種に含まれるのは、哺乳類、鳥類、両生
類、爬虫類、魚類、昆虫、それ以外の脊椎動物、無脊椎動物などであるが、それ
だけに限定されるわけではない。特に興味深いのは、他の哺乳類に由来するzsig
58ポリペプチド、例えばネズミ、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマと、ヒ
ト以外の霊長類のポリペプチドである。ヒトzsig58のオーソログは、本発明によ
り提供される情報と組成物を従来のクローニング技術と組み合わせることでクロ
ーニングすることができる。
【0079】 例えばcDNAは、本明細書に記載したzsig58を発現するタイプの組織または細胞
から得られたmRNAを用いてクローニングできる。適切なmRNA源は、本明細書に記
載した配列をもとにして設計したプローブを用いてノーザン・ブロット法を行な
うことにより明らかにできる。するとポジティブな組織または細胞系のmRNAから
ライブラリーが準備される。次に、zsig58をコードするcDNAをさまざまな方法で
分離することができる。例えば、ヒトcDNAの全体または一部を用いてプロービン
グする方法や、本明細書に記載した配列に基づいた縮重プローブの集合を1つ以
上用いてプロービングする方法がある。
【0080】 cDNAは、本明細書に記載した代表的なヒトzsig58ポリヌクレオチド配列をもと
に設計したプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(マリス、アメリ
カ合衆国特許第4,683,202号)を行なわせることによってクローニングすること
もできる。別の方法として、cDNAライブラリーを利用して宿主細胞の形質変換を
行なうか宿主細胞にトランスフェクトするかし、目的とするcDNAの発現をzsig58
ポリペプチドに対する抗体を用いて検出することもできる。同様の技術を適用し
てゲノムクローンを分離することもできる。
【0081】 当業者であれば、配列番号:1に記載した配列がヒトzsig58の単一の対立遺伝
子を表わしており、対立遺伝子変異と選択的スプライシングの発生が予測できる
ことが理解できよう。この配列の対立遺伝子変異体は、標準的な方法に従って異
なる個体に由来するcDNAライブラリーまたはゲノム・ライブラリーをプロービン
グすることによりクローニングできる。配列番号:1に示したDNAの対立遺伝子変
異体は、サイレント突然変異を含むものや、突然変異の結果としてアミノ酸配列
が変化したものも含め、本発明の範囲に含まれる。それと同様に、配列番号:2
の対立遺伝子変異体であるタンパク質も本発明の範囲に含まれる。
【0082】 mRNAの選択的スプライシングにより生まれたcDNAは、zsig58ポリペプチドの特
性を保持しており、本発明の範囲に含まれる。それと同様に、そのようなcDNAと
mRNAによってコードされたポリペプチドも本発明の範囲に含まれる。これら配列
の対立遺伝子変異体とスプライシング変異体は、異なる個体または組織に由来す
るcDNAライブラリーまたはゲノム・ライブラリーを当業者に知られている標準的
な方法に従ってプロービングすることによりクローニングできる。
【0083】 本発明によれば、配列番号:2のポリペプチドと実質的に相同な分離されたzsi
g58ポリペプチドと、そのオーソログも提供される。“実質的に相同”という表
現は、本明細書では、配列番号:2に示した配列またはそのオーソログと配列が
一致する割合が50%、好ましくは60%、さらに好ましくは少なくとも80%である
ポリペプチドを示すのに用いる。そのようなポリペプチドは、配列番号:2に示
した配列またはそのオーソログと配列が一致する割合が少なくとも90%であるこ
とがさらに好ましいが、それ以上に好ましいのは一致の割合が95%以上となって
いることである。
【0084】 配列が同一である割合は、従来の方法で確認することができる。例えば、アル
トシュル他、Bull. Math. Bio., 第48巻, 603-616ページ, 1986年と;ヘニコフ
とヘニコフ, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第89巻, 10915-10919ページ, 1992
年を参照されたい。要するに、最初のギャップのペナルティを10、延長ギャップ
のペナルティを1にし、表3に示したヘニコフとヘニコフ(前掲文献)の“BLOSUM
62”スコアリング行列(アミノ酸は標準的な1文字記号で表記してある)を用い
て、アラインメント・スコアが最適になるように2つのアミノ酸配列をアライン
メントする。すると一致の割合が以下の式から計算できる。
【0085】
【数1】
【0086】
【表3】
【0087】 ポリヌクレオチド分子の配列の一致は、比を用いた上記の方法と似た方法で確
認する。 当業者には、2つのアミノ酸配列を整列させるのに多くの確立されたアルゴリ
ズムが利用できることが知られている。ピアーソンとリップマンの“FASTA”類
似度検索アルゴリズムは、本明細書に記載したアミノ酸配列と予想されるzsig58
変異体のアミノ酸配列が一致している割合を調べるのに適したタンパク質アライ
ンメント法である。FASTAアルゴリズムは、ピアーソンとリップマン、Proc. Nat
'l Acad. Sci. USA, 第85巻, 2444ページ, 1988年;ピアーソン, Meth. Enzymol
., 第183巻, 63ページ, 1990年に記載されている。
【0088】 要するに、FASTAはまず最初に、調べている配列(例えば配列番号:2)とテス
ト配列の間で、一致箇所(ktup変数が1)が最も多くなっているか、または一致
ペアの箇所(ktup=2の場合)が最も多くなっている領域を明らかにすることによ
って配列の類似度を特徴づける。ただし、保存されたアミノ酸の置換、挿入、欠
失は考慮しない。アミノ酸置換行列を用いてすべてのアミノ酸対の類似度を比較
することによって、一致箇所が多い上位から10の領域のスコアを再度計算し、そ
れら領域の端部を“トリミングして”最高スコアに寄与するアミノ酸残基だけが
含まれるようにする(配列の長さとktup値に基づいた所定の公式で計算した)。
【0089】 “カットオフ”値よりも大きなスコアとなる領域がいくつか存在している場合
には、トリミングした最初の領域を調べ、その領域を加えることでギャップを伴
う大まかなアラインメントが形成されるかどうかを確認する。最後に、2つのア
ミノ酸配列の最高スコアの領域を、ネーデルマン−ヴンシュ−セラーズのアルゴ
リズム(ネーデルマンとヴンシュ, J. Mol. Biol., 第48巻, 444ページ, 1970年
;セラーズ, SIAM J. Appl. Math., 第26巻, 787ページ, 1974年)を用いてアラ
インメントする。
【0090】 なおこのアルゴリズムでは、アミノ酸の挿入と欠失が許されている。FASTA解
析における好ましいパラメータは、ktup=1、最初のギャップのペナルティ=10、
延長ギャップのペナルティ=1、置換行列=BLOSUM62であり、他のパラメータは
デフォルトに設定する。これらパラメータは、ピアーソン、Meth. Enzymol.、第
183巻、63ページ、1990年の付録2に説明してあるように、スコアリング行列ファ
イル(“SMATRIX”)を変更することによってFASTAプログラムに導入することが
できる。
【0091】 上記の比を用いると、FASTAで核酸分子の配列の一致を決定することもできる
。ヌクレオチド配列を比較する場合には、ktup値は1〜6が可能であるが、その値
は3〜6であることが好ましく、それ以上に好ましいのは3であり、他のパラメー
タはデフォルトに設定する。
【0092】 BLOSUM62の表(表3)は、関連したタンパク質のグループ500以上において高度
に保存された領域となっているタンパク質配列断片群に対して約2,000の局所的
多重アラインメントを行なうことにより導き出されたアミノ酸置換行列である(
ヘニコフとヘニコフ, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA, 第89巻, 10915ページ, 199
2年)。したがって、BLOSUM62置換頻度を用いて、本発明のアミノ酸配列におい
て置換できる保存されたアミノ酸を決定することができる。
【0093】 (以下に説明するように)置換するアミノ酸を化学的性質だけに基づいて決め
ることが可能であるとはいえ、“保存されたアミノ酸の置換”という表現は、BL
OSUM62の値が-1よりも大きい置換について用いることが好ましい。例えば、BLOS
UM62の値が0、1、2、または3で特徴づけられる置換の場合には、アミノ酸の置換
は保存されている。このシステムによれば、保存されたアミノ酸の好ましい置換
は、BLOSUM62の値が1以上(例えば1または2または3)であることで特徴づけられ
る。しかしそれよりも好ましい保存されたアミノ酸の置換は、BLOSUM62の値が2
以上(例えば2または3)であることで特徴づけられる。
【0094】 zsig58ポリペプチドの変異体またはzsig58ポリペプチドの実質的な相同体は、
アミノ酸の置換、欠失、または挿入が1つ以上あることで特徴づけられる。これ
らの変化は小さいことが好ましい。すなわち、変化が起こる場合には、保存され
たアミノ酸の置換となっており(表4参照)、それ以外の置換はポリペプチドの
折り畳みや活性に大きな影響を与えず、欠失は少なく、典型的には約30個分のア
ミノ酸であり、アミノ末端またはカルボキシル末端には延長部があって、例えば
アミノ末端のメチオニン残基、約20〜25残基までの小さなリンカー・ペプチド、
アフィニティ・タグなどになっていることが好ましい。
【0095】 本発明はしたがって、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好
ましくは95%以上が配列番号:2の対応する領域と一致した配列を含む約345〜約
435個のアミノ酸残基からなるポリペプチドを含んでいる。アフィニティ・タグ
を含むポリペプチドはさらに、zsig58ポリペプチドとアフィニティ・タグの間に
タンパク質分解開裂部位を含むことが可能である。そのような部位として好まし
いのは、トロンビン開裂部位、Xa因子開裂部位などである。
【0096】
【表4】
【0097】 本発明によれば、上記以外のさまざまなポリペプチド融合体と、ポリペプチド
融合体を1つ以上含む関連した多量化タンパク質がさらに提供される。例えばzsi
g58ポリペプチドは、アメリカ合衆国特許第5,155,027号および第5,567,584号に
記載されているように、二量化タンパク質に対する融合体として得ることができ
る。この点に関して好ましい二量化タンパク質としては、免疫グロブリンの定常
領域ドメインなどがある。免疫グロブリン−zsig58ポリペプチド融合体は、遺伝
子工学で作られた細胞の中で発現させて、さまざまな多量化zsig58アナローグを
生み出すことができる。補助ドメインをzsig58ポリペプチドと融合させて、それ
を特定の細胞、組織、または巨大分子(例えばコラーゲン)に到達させることが
できる。
【0098】 例えばzsig58ポリペプチドまたはzsig58タンパク質は、zsig58ポリペプチドを
標的細胞の表面にある受容体に特異的に結合するリガンドと融合させることによ
って、所定のタイプの細胞に到達させることができる。このように、病気の治療
や診断を目的としてポリペプチドやタンパク質を標的にすることができる。zsig
58ポリペプチドは、精製用アフィニティ・タグと標的ドメインなど、2つ以上の
部分と融合させることができる。ポリペプチド融合体は、1つ以上の開裂部位を
特にドメイン間に含んでいてもよい。トゥアン他、Connective Tissue Research
, 第34巻, 1-9ページ, 1996年を参照されたい。
【0099】 本発明のタンパク質は、自然界には存在しないアミノ酸残基を含んでいてもよ
い。自然界には存在しないアミノ酸としては、トランス-3-メチルプロリン、2,
4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリ
ン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチ
ルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグル
タミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-メチル
プロリン、4-メチルプロリン、3, 3-ジメチルプロリン、第3ロイシン、ノルバリ
ン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニ
ン、4-フルオロフェニルアラニンなどが挙げられるが、これがすべてではない。
【0100】 自然界には存在しないアミノ酸をタンパク質に組み込む方法がいくつか従来技
術として知られている。例えば、ナンセンス突然変異を化学的にアミノアシル化
したサプレッサーtRNAを用いて抑制するというインビトロのシステムを用いるこ
とができる。アミノ酸とアミノアシル化したtRNAを合成する方法が従来技術とし
て知られている。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写と翻訳は、大腸菌
S30抽出物と市販されている酵素およびその他の試薬とを含む細胞フリーのシス
テムで行なわせる。タンパク質はクロマトグラフィーで精製する。例えばロバー
トソン他、J. Am. Chem. Soc., 第113巻, 2722ページ, 1991年;エルマン他, Me
thods Enzymol., 第202巻, 301ページ, 1991年;チャン他, Science, 第259巻,
806-809ページ、1993年;チャン他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第90巻, 101
45-10149ページ、1993年を参照されたい。
【0101】 第2の方法では、突然変異したmRNAと化学的にアミノアシル化したサプレッサ
ーtRNAをアフリカツメガエルの卵母細胞に微量注入することにより、翻訳をその
卵母細胞の中で行なわせる(トゥルカッティ他, J. Biol. Chem., 第271巻, 199
91-19998ページ, 1996年)。第3の方法では、大腸菌の細胞を、置換されるはず
の天然アミノ酸(例えばフェニルアラニン)が存在していない状態、かつ、自然
界には存在しない所望のアミノ酸(例えば2-アザフェニルアラニン、3-アザフェ
ニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、または4-フルオロフェニルアラニン)
が存在している状態で培養する。
【0102】 自然界には存在しないそのアミノ酸を、それに対応する自然界のアミノ酸の代
わりにタンパク質に組み込む。例えば、コイデ他, Biochem., 第33巻, 7470-747
6ページ、1994年を参照されたい。自然界に存在するアミノ酸残基は、インビト
ロでの化学的な修飾によって自然界には存在しない種類のものに変換できる。化
学的な修飾に部位指向性突然変異誘発を組み合わせると、置換の範囲をさらに広
げることができる(ウィンとリチャード、Protein Sci., 第2巻, 395-403ページ
, 1993年)。 保存されていないアミノ酸、遺伝コードでコードされていないアミノ酸、自然
界には存在しないアミノ酸、無理に作ったアミノ酸のうちの限られたものは、zs
ig58のアミノ酸残基で置換することができる。
【0103】 本発明のポリペプチドに含まれる不可欠なアミノ酸は、部位指向性突然変異誘
発やアラニン・スキャンニング突然変異誘発などの従来技術で知られている方法
に従って明らかにすることができる(カニンガムとウエルズ, Science、第244巻
、1081-1085ページ, 1989年;バス他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第88巻, 4
498-4502ページ、1991年)。後者の方法では、アラニンのみの突然変異を分子内
のすべての残基に導入し、その結果として得られる突然変異した分子の生物学的
活性を以下に記載した方法でテストして、その分子の活性にとって重要なアミノ
酸残基を明らかにする。ヒルトン他、J. Biol. Chem., 第271巻, 4699-4708ペー
ジ、1996年も参照されたい。
【0104】 リガンド−受容体の部位またはそれ以外に生物学的相互作用をしている部位は
、核磁気共鳴、結晶学、電子線回折、またはフォトアフィニティラベルなどの技
術によって決定される構造の物理的解析と、接触部位となることが予想されるア
ミノ酸の突然変異とを組み合わせることによっても決定できる。例えば、ド・ヴ
ォス他, Science, 第255巻, 306-312ページ, 1992年;スミス他、J. Mol. Biol.
, 第224巻, 899-904ページ, 1992年;ウロダヴァー他, FEBS Lett., 第309巻, 5
9-64ページ, 1992年を参照されたい。どれが不可欠なアミノ酸であるかは、ヒト
TIGRなどの関連したタンパク質との相同性を分析することによっても推定できる
【0105】 多数のアミノ酸の置換を既知の突然変異誘発法を用いて実現し、それを既知の
スクリーニング法でテストすることができる。そうした方法は、例えばライトハ
アル−オルソンとザウアー(Science、第241巻、53-57ページ、1988年)または
ボヴィとザウアー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第86巻、2152-2156ページ、1
989年)が記載している。要するに、これら研究者は、ポリペプチド内の2つ以上
の位置を同時にランダム化し、機能的なポリペプチドを選択し、次いで突然変異
したポリペプチドの配列を決定して各位置で可能な置換の範囲を決定する方法を
記載している。
【0106】 用いることのできる他の方法としては、ファージ提示(例えばロウマン他, Bi
ochem, 第30巻, 10832-10837ページ, 1991年;ラドナー他, アメリカ合衆国特許
第5,223,409号;フューズ、WIPO公開WO 92/06204)や領域指向性突然変異誘発(
ダービシャー他、Gene、第46巻, 145ページ, 1986年;ナー他, DNA, 第7巻, 127
ページ, 1988年)などがある。
【0107】 本明細書に記載したzsig58DNAとzsig58ポリペプチドの変異体は、DNAシャッフ
リングによって生み出すことができる。それについては、ステンマー、Nature、
第370巻、389-391ページ, 1994年;ステンマー, Proc. Natl. Acad. Sci. USA、
第91巻、10747-10751ページ、1994年;WIPO公開WO 97/20078に記載されている。
要するに、変異したDNAは、親となるDNAをランダムに断片化してインビトロで相
同的組み換えを行なわせた後、PCRを利用して再度組み立てると、ランダム点突
然変異が導入されることによって生まれる。
【0108】 この方法には変更を施すことができる。そのためには、親となるDNAのファミ
リー、例えば対立遺伝子変異や異なる種に由来するDNAなどを用いてさらなる変
異をプロセス中に導入する。所望の活性を選択またはスクリーニングした後、突
然変異誘発とアッセイを繰り返すと、所望の突然変異を選択すると同時に害のあ
る変化を除外することになり、配列が迅速に“進化”する。
【0109】 本明細書に記載した突然変異誘発法を高処理能力の自動化されたスクリーニン
グ法と組み合わせると、宿主細胞内でクローニングされた突然変異ポリペプチド
の活性を検出することができる。活性のあるポリペプチド(例えばシグナル伝達
または結合活動に関わるポリペプチド)をコードしている突然変異したDNA分子
は、宿主細胞から回収し、最新式の装置を用いて配列を迅速に決定することがで
きる。これらの方法を用いると、目的とするポリペプチドの個々のアミノ酸残基
の重要度を迅速に決定することができる。したがってこれらの方法は、構造が未
知のポリペプチドに適用することができる。
【0110】 当業者であれば、本明細書に記載の方法を用いると、野生型zsig58タンパク質
の持つTIGR様特性、結合特性、細胞−細胞間コミュニケーション特性、またはシ
グナル伝達特性などを失わずにいる、配列番号:2のさまざまなポリペプチド断
片またはポリペプチド変異体を明らかにすることおよび/または得ることができ
る。例えば上記の方法を用いると、zsig58上の受容体結合ドメイン、ヘテロ二量
化結合ドメインとホモ二量化結合ドメイン、それ以外の機能ドメインまたは構造
ドメイン、またはタンパク質−タンパク質間相互作用やシグナル伝達にとって重
要なそれ以外のドメインを明らかにすることができよう。このようなポリペプチ
ドには、本明細書に一般論として記載したように、アフィニティ・タグなどの付
加的なポリペプチド断片も含まれていてよい。
【0111】 当業者であれば、変異体と融合タンパク質も含めた任意のzsig58ポリペプチド
について、上掲の表1と表2に示した情報を利用してその変異体をコードしている
完全に縮重したポリヌクレオチド配列を容易に作り出すことができる。
【0112】 本発明のzsig58ポリペプチドは、全長が完備したポリペプチド、生物学的に活
性な断片、融合ポリペプチドも含め、従来技術に従って遺伝子工学で作った宿主
細胞の中に生産させることができる。適切な宿主細胞は、形質変換ができるか、
あるいは外部DNAをトランスフェクトできて、しかも培養によって成長させるこ
とができるタイプの細胞である。そうした宿主細胞としては、バクテリア、菌類
の細胞、培養した高等な真核細胞などがある。好ましいのは、真核細胞、特に多
細胞生物の培養した細胞である。
【0113】 クローニングされたDNA分子を操作したり、外部DNAをさまざまな宿主細胞に導
入したりする技術については、サムブルック他、『Molecular Cloning:A Labor
atory Manual』第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレ
ス、コールド・スプリング・ハーバー, ニューヨーク, 1989年と、オースベル他
編、『Current Protocols in Molecular Biology』、ジョン・ワイリー・アンド
・サンズ社, ニューヨーク, 1987年に記載されている。
【0114】 一般に、zsig58ポリペプチドをコードしているDNA配列は、その発現に必要と
される他の遺伝子要素と作用可能に連結されている。一般に、他の遺伝子要素に
は、発現ベクター内の転写プロモーターと転写ターミネーターが含まれる。発現
ベクターは、一般に、1つ以上の選択可能なマーカーと1つ以上の複製起点も含ん
でいる。もっとも当業者であれば、選択可能なマーカーが別々のベクターにあり
、外部DNAの複製が宿主細胞のゲノムと一体化することによってなされるような
システムもあることが理解できよう。プロモーター、ターミネーター、選択可能
なマーカー、ベクター、ならびにそれ以外の要素の選択は、当業者にとっては日
常茶飯事の仕事である。数多くのそうした要素が文献に記載されており、市販品
として提供されている。
【0115】 zsig58ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路へと導くため、分泌シグナル配列(
リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列とも呼ばれる)を発現ベクターに
組み込む。分泌シグナル配列は、zsig58の分泌シグナル配列でも、別の分泌タン
パク質(例えばt-PA)から由来したものでも、新たに合成したものでもよい。分
泌シグナル配列は、zsig58DNA配列と作用可能に連結されている。
【0116】 すなわち、これら2つの配列は正しいリーディング・フレームで結合して、新
たに合成されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くような位置になってい
る。分泌シグナル配列は、一般に、目的とするポリペプチドをコードしているDN
A配列に対して5'の位置にある。それに対してある種の分泌シグナル配列は、目
的とするDNA配列の別の場所に位置していてもよい(例えばウェルチ他、アメリ
カ合衆国特許第5,037,743号;ホランド他、アメリカ合衆国特許第5,143,830号を
参照されたい)。
【0117】 また、本発明のポリペプチドに含まれる分泌シグナル配列は、他のポリペプチ
ドを分泌経路に導くのに用いられる。本発明によれば、そのような融合ポリペプ
チドが提供される。配列番号:2のアミノ酸1(メチオニン)からアミノ酸25(シ
ステイン)までのシグナルペプチドをコードしている分泌シグナル配列が、ある
ポリペプチドをコードしている別のDNA断片と操作上関連しているようなシグナ
ル融合ポリペプチドを、従来から知られている方法および本明細書に記載の方法
を用いて作ることができる。
【0118】 本発明の融合ポリペプチドに含まれる分泌シグナル配列は、アミノ末端が付加
ペプチドと融合して、その付加ペプチドを分泌経路へと導くことが好ましい。そ
のような構造物には、当業者に知られている多数の応用がある。例えば、分泌シ
グナル配列が融合したこれらの新規な構造物は、通常は分泌されないタンパク質
の活性要素を分泌するように仕向けることができる。このような融合は、インビ
ボまたはインビトロで用い、ペプチドを分泌経路へと導くことができる。
【0119】 培養した哺乳類の細胞は、本発明において適切な宿主である。外部DNAを哺乳
類の宿主細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウムを用いたトランスフェ
クション法(ウィグラー他、Cell, 第14巻, 725ページ, 1978年;コルサロとピ
アーソン、Somatic Cell Genetics, 第7巻, 603ページ, 1981年;グラハムとフ
ァン・デア・エブ, Virology, 第52巻、456ページ, 1973年)、 電気穿孔法(ノイマン他, EMBO J., 第1巻, 841-845ページ、1982年)、
【0120】 DEAE-デキストランを用いたトランスフェクション法(オースベル他、前掲文
献)、 リポソームを用いたトランスフェクション法(ホーレイ−ネルソン他, Focus,
第15巻, 73ページ, 1993年;チッカローネ他, Focus, 第15巻, 80ページ, 1993
年)、 ウイルス・ベクター法(ミラーとロスマン, BioTechniques, 第7巻, 980-990
ページ、1989年;ワンとファイナー、Nature Med.、第2巻、714-716ページ、199
6年)などがある。
【0121】 培養した哺乳類の細胞内における組み換えポリペプチドの生産について記載さ
れているのは、例えば、レヴィンソン他、アメリカ合衆国特許第4,713,339号;
ハーゲン他、アメリカ合衆国特許第4,784,950号;パーミター他、アメリカ合衆
国特許第4,579,821号;リンゴールド、アメリカ合衆国特許第4,656,134号である
。培養した哺乳類の細胞として適切なのは、COS-1(ATCC番号CRL1650)、COS-7
(ATCC番号CRL1651)、BHK(ATCC番号CRL1632)、BHK570(ATCC番号CRL10314)
、293(ATCC番号CRL1573;グラハム他、J. Gen. Virol.、第36巻、59-72ページ
、1977年)、チャイニーズハムスターの卵巣(例えばCHO-K1、ATCC番号CCL61)
細胞系などである。
【0122】 さらに別の適切な細胞系が当業者には知られており、アメリカン・タイプ・カ
ルチャー・コレクション、マナサス、バージニア州などの公的委託機関から入手
することができる。それ以外の適切な細胞系としては、卵巣細胞系、膵臓細胞系
、骨芽細胞、破骨細胞、造血細胞系、リンパ系細胞系などがあるが、これらに限
定されるわけではない。一般には、強力な転写プロモーター、例えばSV-40やサ
イトメガロウイルスに由来するプロモーターが好ましい。例えば、アメリカ合衆
国特許第4,956,288号を参照されたい。これ以外の適切なプロモーターとしては
、メタロチオネイン遺伝子に由来するプロモーター(アメリカ合衆国特許第4,57
9,821号と第4,601,978号)や、アデノウイルス主要後期プロモーターなどがある
【0123】 外部DNAが挿入された哺乳類の培養細胞を選択するには、一般に薬剤選択が利
用される。そのような細胞は普通は“トランスフェクタント”と呼ばれる。選択
された試薬の存在下で培養されていて、目的とする遺伝子をその子孫に伝えるこ
とのできる細胞は、“安定なトランスフェクタント”と呼ばれる。好ましい選択
可能なマーカーは、抗生物質のネオマイシンに対する耐性をコードしている遺伝
子である。選択は、ネオマイシン・タイプの薬剤、例えばG-418などの存在下で
行なう。選択システムを用いて目的とする遺伝子の発現レベルを上昇させること
も可能である。
【0124】 このプロセスは“増幅”と呼ばれる。増幅は、選択した試薬を少量存在させた
状態でトランスフェクタントを培養し、次に選択した試薬の量を増やしておき、
導入された遺伝子の産物を大量に生産する細胞を選択することにより行なう。増
幅が可能である選択可能なマーカーとして好ましいのは、メトトレキセートに対
する耐性を与えるジヒドロ葉酸レダクターゼである。他の薬剤耐性遺伝子(例え
ばハイグロマイシン耐性、多剤耐性、ピューロマイシン・アセチルトランスフェ
ラーゼ)も用いることができる。変化した表現型を導入するグリーン蛍光タンパ
ク質などのマーカーや、CD4、CD8、クラスIのMHC、胎盤アルカリホスファターゼ
などの細胞表面タンパク質を用いて、FACSソーティング、または磁性ビーズ分離
技術などの方法で、トランスフェクトされていない細胞からトランスフェクトさ
れた細胞を取り出すことができる。
【0125】 植物の細胞、昆虫の細胞、鳥類の細胞など、上記した以外の高等な真核細胞も
宿主として用いることができる。アグロバクテリウム・リゾゲネスを植物細胞の
中で遺伝子発現させるためのベクターとして用いることが、シンカー他, J. Bio
sci.(Bangalore), 第11巻, 47-58ページ、1987年に記載されている。昆虫細胞
を形質転換し、外部のポリペプチドをその細胞の中で生産することが、グアリノ
他、アメリカ合衆国特許第5,162,222号とWIPO公開WO 94/06463に記載されている
【0126】 昆虫細胞は、組み換えバキュロウイルスに感染させることができる。組み換え
バキュロウイルスは、普通は、Autographa californica nuclear polyhedrosis
virus(AcNPV)に由来する。キング,L.A.とポッシー,R.D.、『The Baculoviru
s Expression System:A Laboratory Guide』、ロンドン、チャップマン&ホー
ル社;オライリー,D.R.他, 『Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory
Manual』、ニューヨーク, オックスフォード大学出版社、1994年;リチャード
ソン,C.D.編、『Baculovirus Expression Protocols:Methods in Molecular B
iology』、トトワ、ニュージャージー州、ヒューマナ出版社、1995年を参照され
たい。
【0127】 組み換えzsig58バキュロウイルスを作る第2の方法では、ラッコウによるトラ
ンスポゾンに基づいたシステムが用いられる(ラッコウ,V.A.他、J. Virol.,
第67巻, 4566-4579ページ、1993年)。このシステムはBac-to-Bac(登録商標)
キット(ライフ・テクノロジーズ社、ロックヴィル、メアリーランド州)に含め
る形で販売されている。
【0128】 このシステムでは、トランスファー・ベクターとしてTn7トランスポゾンを含
むpFastBacl(登録商標)(ライフ・テクノロジーズ社)を利用して、zsig58ポ
リペプチドをコードしているDNAを、“バクミド(bacmid)”と呼ばれる大きな
プラスミドとして、大腸菌の中に維持されているバキュロウイルスの遺伝子の中
に移動させる。pFastBacl(登録商標)トランスファー・ベクターは、AcNPVポリ
ヘドリン・プロモーターを利用して、目的とする遺伝子の発現、すなわちここで
はzsig58の発現を促進する。しかしpFastBacl(登録商標)は、かなりの程度ま
で変えることができる。
【0129】 ポリヘドリン・プロモーターを除去してバキュロウイルスの塩基性タンパク質
プロモーター(Pcor、p6.9、またはMPプロモーターとも呼ばれる)で置換するこ
とができる。このプロモーターは、バキュロウイルスに感染した早い段階で発現
するため、分泌タンパク質の発現にとって有利であることが知られている。ヒル
−パーキンズ,M.S.とポッシー,R.D., J. Gen. Virol., 第71巻, 971-976ペー
ジ, 1990年;ボンニング,B.C.他、J. Gen. Virol., 第75巻, 1551-1556ページ
、1994年;チャゼンバルク,G.D.とラポポート,B., J. Biol. Chem.、第270巻
、1543-1549ページ, 1995年を参照されたい。そのようなトランスファー・ベク
ター構造物においては、塩基性タンパク質プロモーターの短いもの、または長い
ものを用いることができる。
【0130】 さらに、本来のzsig58分泌シグナル配列を昆虫のタンパク質に由来する分泌シ
グナル配列で置き換えたトランスファー・ベクターを構成することができる。例
えば、エクジステロイド・グルコシルトランスフェラーゼ(EGT)、ミツバチの
メリチン(インヴィトロジェン社、カールスバード、カリフォルニア州)または
バキュロウイルスgp67(ファルミンジェン社、サンディエゴ、カリフォルニア州
)に由来する分泌シグナル配列を構造物中で本来のzsig58分泌シグナル配列の代
わりに用いることができる。
【0131】 以上に加え、トランスファー・ベクターは、発現したzsig58ポリペプチドのC
末端またはN末端の位置にあるエピトープ・タグ、例えばグルタミン酸−グルタ
ミン酸エピトープ・タグをコードしているDNAとのフレーム内融合体を含んでい
てもよい(グルッセンメイヤー,T.他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第82巻,
7952-7954ページ、1985年)。
【0132】 当業者に知られている技術を用いてzsig58を含むトランスファー・ベクターを
大腸菌に導入し、組み換えバキュロウイルスであることを示す切断されたlacZ遺
伝子を含むバクミドを探すため、スクリーニングを行なう。組み換えバキュロウ
イルス遺伝子を含むバクミドDNAを一般的な方法で分離し、このバクミドDNAをス
ポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)の細胞、例えばSf9細胞に
トランスフェクトする。するとzsig58を発現する組み換えウイルスが生産される
。組み換えウイルスは、当業者が一般に用いている方法でストックする。
【0133】 組み換えウイルスは、宿主細胞、典型的にはヨトウガの一種であるスポドプテ
ラ・フルジペルダに由来する細胞系を感染させるのに用いる。一般的な参考文献
として、グリックとパステルナーク、『Molecular Biotechnology:Principles
and Application of Recombinant DNA』、ASMプレス, ワシントンD.C., 1994年
を参照されたい。別の適切な細胞系は、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni
)に由来するHigh FiveO(登録商標)細胞系(インヴィトロジェン社)(アメリ
カ合衆国特許第5,300,435号)である。
【0134】 細胞を成長させて維持するには、市販されている血清フリーな培地を用いる。
適切な培地は、Sf9細胞に対してはSf900 IT(商標)(ライフ・テクノロジーズ
社)またはESF 921(商標)(エクスプレッション・システムズ社)であり、ト
リコプルシア・ニ細胞に対してはEx-cellO405(商標)(JRHバイオサイエンシー
ズ社、レネクサ、カンザス州)またはExpress FiveO(商標)(ライフ・テクノ
ロジーズ社)である。
【0135】 細胞は、接種密度が約2〜5×105個から1〜2×106個になるまで成長させ、その
時点で組み換えウイルスのストックを添加して感染多重度(MOI)が0.1〜10にな
るようにする。感染多重度の典型的な値は約3である。用いる方法は、たいてい
、入手可能な実験室マニュアルに記載されている(キング,L.A.とポッシー,R.
D.、前掲文献;オライリー,D.R.他, 前掲文献;リチャードソン,C.D., 前掲文
献)。上記の操作に続けて、本明細書に記載の方法を用いて上澄液からzsig58ポ
リペプチドを精製することができる。
【0136】 菌類の細胞は、酵母の細胞も含め、本発明でも利用することができる。この点
に関して特に興味深い酵母の種類としてはサッカロミセス・セレヴィジエ(Sacc
haromyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・
メタノリカ(Pichia methanolica)などがある。サッカロミセス・セレヴィジエ
の細胞を外部DNAで形質変換し、その細胞から組み換えポリペプチドを生産する
方法は、例えばカワサキ、アメリカ合衆国特許第4,599,311号;カワサキ他、ア
メリカ合衆国特許第4,931,373号;ブレイク、アメリカ合衆国特許第4,870,008号
;ウェルチ他、アメリカ合衆国特許第5,037,743号;マレイ他、アメリカ合衆国
特許第4,845,075号に記載されている。形質変換された細胞は、表現型で判断し
て選択する。
【0137】 表現型の確認は、選択可能なマーカー、一般には薬剤耐性のある選択可能なマ
ーカーによって行なうか、あるいは特定の栄養素(例えばロイシン)の不在下に
おいて成長する能力によって行なう。サッカロミセス・セレヴィジエの中で用い
るのが好ましいベクター・システムは、カワサキ達が記載しているPOT1ベクター
・システム(アメリカ合衆国特許第4,931,373号)であり、このシステムを用い
ると、形質変換された細胞をグルコースを含む培地における成長度の違いによっ
て選択することができる。
【0138】 酵母の中で用いるのに適したプロモーターとターミネーターとしては、解糖酵
素遺伝子に由来するもの(例えば、カワサキ、アメリカ合衆国特許第4,599,311
号;キングスマン他、アメリカ合衆国特許第4,615,974号;ビター、アメリカ合
衆国特許第4,977,092号を参照されたい)やアルコール・デヒドロゲナーゼ遺伝
子に由来するものなどがある。また、アメリカ合衆国特許第4,990,446号、第5,0
63,154号、第5,139,936号、第4,661,454号も参照されたい。
【0139】 他の酵母、例えばハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、スキ
ゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイヴェロミセ
ス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイヴェロミセス・フラジリス(
Kluyveromyces fragilis)、ウスティラゴ・マイディス(Ustilago maydis)、
ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、ピキア・グイレルモンディイ(Pich
ia guillermondii)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)に対する形質
変換システムも従来技術で知られている。
【0140】 例えば、グリーソン他, J. Gen. Microbiol., 第132巻, 3459-3465ページ, 19
86年と、クレッグ、アメリカ合衆国特許第4,882,279号を参照されたい。アスペ
ルジルス(Aspergillus)の細胞をマクナイト他、アメリカ合衆国特許第4,935,3
49号の方法に従って用いることもできる。アクレモニウム・クリソゲヌム(Acre
monium chrysogenum)の形質変換を行なう方法は、スミノ他、アメリカ合衆国特
許第5,162,228号に記載されている。ニューロスポラ(Neurospora)の形質変換
を行なう方法は、ランボヴィッツ、アメリカ合衆国特許第4,486,533号に記載さ
れている。
【0141】 ピキア・メタノリカを組み換えタンパク質生産用の宿主として利用することは
、WIPO公開WO 97/17450、WO 97/17451、WO 98/02536、WO 98/02565に記載されて
いる。ピキア・メタノリカを形質変換するのに用いるDNA分子は、一般に、二本
鎖の環状プラスミドとして得られるが、形質変換の前にそれを直線状にすること
が好ましい。ピキア・メタノリカの中でポリペプチドを生産させるためには、プ
ラスミドの中にあるプロモーターとターミネーターが、ピキア・メタノリカの遺
伝子、例えばピキア・メタノリカのアルコール利用遺伝子(AUG1またはAUG2)の
プロモーターとターミネーターであることが好ましい。
【0142】 役に立つこれ以外のプロモーターとしては、ジヒドロキシアセトン・シンター
ゼ(DHAS)、蟻酸デヒドロゲナーゼ(FMD)、カタラーゼ(CAT)などの遺伝子の
プロモーターがある。DNAを宿主の染色体に容易に組み込めるようにするには、
両端部に宿主のDNA配列が隣接した、プラスミドの完全発現断片を作ることが好
ましい。ピキア・メタノリカの中で用いる選択可能なマーカーとして好ましいの
は、ピキア・メタノリカのADE2遺伝子である。
【0143】 この遺伝子は、ホスホリボシル-5-アミノイミダゾール・カルボキシラーゼ(A
IRC;EC4.1.1.21)をコードしており、ade2宿主細胞がアデニンなしで成長する
のを可能にする。メタノールの使用を最小限に留めることが望ましい大規模な工
業的プロセスでは、両方のメタノール利用遺伝子(AUG1とAUG2)が2つとも除去
された宿主細胞を用いることが好ましい。分泌タンパク質の生産には、液胞プロ
テアーゼ遺伝子(PEP4とPRB1)がない宿主細胞が好ましい。目的とするポリペプ
チドをコードしているDNAを含むプラスミドをピキア・メタノリカの細胞に容易
に導入できるようにするのに電気穿孔を用いる。
【0144】 ピキア・メタノリカの細胞を形質変換するには、指数関数的に減衰するパルス
電場を用いた電気穿孔が好ましい。電場の強さは、2.5〜4.5kV/cmにするが、約3
.75kV/cmが好ましく、時定数(τ)は1〜40ミリ秒にするが、最も好ましいのは
約20ミリ秒である。ピキア・メタノリカの細胞は、十分な量の炭素および窒素と
微量の栄養素を含む培地の中で約25℃〜35℃の温度にて培養する。
【0145】 培養液に十分な空気が通るようにする。そのためには、例えば小さなフラスコ
を振ったり発酵物質を散布したりという従来の方法を用いる。ピキア・メタノリ
カにとって好ましい培地は、YEPD(2%D-グルコース、2%Bacto(商標)ペプト
ン(ディフコ・ラボラトリーズ社、デトロイト、ミシガン州)、1%Bacto(商標
)酵母抽出物(ディフコ・ラボラトリーズ社)、0.004%アデニン、0.006%L-ロ
イシン)である。
【0146】 原核宿主細胞には、大腸菌やバシラスの系統、それ以外の属のバクテリアの系
統が含まれるが、これら原核主細胞も本発明の宿主細胞として役に立つ。これら
宿主細胞を形質変換し、その細胞の中でクローニングされた外部DNA配列を発現
させる技術は、当業者には周知である(例えばサムブルック他、前掲文献を参照
されたい)。zsig58ポリペプチドを大腸菌などのバクテリアの中で発現させると
き、そのポリペプチドは、細胞質の中にたいてい不溶性の粒子として保持されて
いるか、バクテリアの分泌配列によって細胞周辺腔へと導かれているかのいずれ
かである。前者の場合、細胞を溶解させて粒子を回収し、例えばグアニジン・イ
ソチオシアネートまたは尿素を用いて変性させる。
【0147】 変性したポリペプチドは、その変性剤を希釈すると再び折り畳まれて二量化す
る。変性剤の希釈は、例えば、尿素溶液と、還元されたグルタチオンおよび酸化
されたグルタチオンの組み合わせに対して透析を行ない、それに続けて緩衝生理
溶液に対して透析を行なうことにより実現される。後者の場合、ポリペプチドは
、細胞周辺腔から可溶かつ機能的な形態で回収することができる。それが可能に
なるのは、(例えば超音波処理または浸透圧衝撃によって)細胞を破裂させるこ
とで細胞周辺腔の内容物を放出させ、その中からタンパク質を回収しているため
、変性と再度の折り畳みが不要になるからである。
【0148】 形質変換された宿主細胞またはトランスフェクトされた宿主細胞は、栄養素と
、その宿主細胞の成長に必要な他の要素とを含む培地の中で、一般的な方法に従
って培養する。特定用途の培地や複合培地も含め、適切なさまざまな培地が従来
技術で知られている。培地には、一般に、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタ
ミン、ミネラルなどが含まれている。培地には、必要に応じて成長因子、血清な
どが含まれていてもよい。一般に、成長用培地を用いると、例えば薬剤選択また
は必須栄養素の欠乏によって、外部から添加されたDNAを含む細胞を選び出すこ
とができる。なお欠乏した必須栄養素は、発現ベクターによって運ばれる選択可
能なマーカー、または宿主細胞に同時トランスフェクトされた選択可能なマーカ
ーによって補う。
【0149】 本発明のポリペプチドは、80%以上の純度に精製することが好ましい。純度は
90%以上であることがより好ましく、95%以上だとさらに好ましい。特に好まし
いのは、不純物である巨大分子、特に他のタンパク質と核酸に関して薬理学的に
純粋な状態である99.9%以上となっており、感染源と発熱源の含まれていないも
のである。精製したポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物起源の他のポ
リペプチドを実質的に含んでいないことが好ましい。
【0150】 発現した組み換えzsig58ポリペプチド(またはキメラのzsig58ポリペプチド)
は、分画化法と分画化媒体および/または従来の精製法と精製媒体を利用して精
製することができる。例えば、TIGRに対する特別な精製法(ヌグヤン、前掲文献
に記載)がその一例であり、当業者であれば以下に記載した方法を用いてこの精
製法をzsig58ポリペプチドに適合させることができる。例えば、アフィニティ・
タグとして、哺乳類の細胞、例えばBHK細胞が生産したN末端またはC末端のフラ
グ・タグを有するタンパク質構造物の精製法には、フラグ・タグのエピトープに
対する抗体を用いてzsig58タンパク質を精製する操作が含まれる。
【0151】 BHK細胞で条件づけしたならし培地を、4インチの0.2mMミリポア(ベッドフォ
ード社、マサチューセッツ州)オプティキャップ・カプセル・フィルターと0.2m
Mゲルマン(アン・アーバー社、ミシガン州)スーパーキャップ50を順番に通過
させて濾過滅菌する。次に、その培地を、15平方フィートで3000kDaの分離膜を
備えるA/Gテック(ニーダム社、マサチューセッツ州)中空ファイバー・カート
リッジに取りつけられたアミコン(ベヴァーリー社、マサチューセッツ州)DC 1
0L濃縮器を用いて濃縮する。
【0152】 濃縮された培地を、上記のゲルマン・フィルターを用いて再度濾過滅菌する。
アンチ−フラグ・セファロース(イーストマン・コダック社、ロチェスター、ニ
ューヨーク州)のアリコートをそのサンプルに添加してバッチ吸着させ、そうや
って得られた混合物をホイートン(ミルヴィル、ニュージャージー州)ローラー
培養装置の上で4℃にて18.0時間にわたって軽く撹拌する。
【0153】 次にその混合物を5.0×20.2cmのエコノ−カラム(バイオ−ラド・ラボラトリ
ーズ社、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)の中に注ぎ、ゲルを30カラム分の
容量のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて洗浄する。カラムに保持されず
に流出する分画は捨てる。
【0154】 280nMにおける流出物の吸光度が0.05よりも小さくなったとき、カラムを通る
流れをゼロにして、アンチ・フラグ・セファロース・ゲルを、フラグ・ペプチド
であるN−アスパラギン酸−チロシン−リシン−アスパラギン酸−アスパラギン
酸−アスパラギン酸−アスパラギン酸−リシン−C(配列番号:6)(イーストマ
ン・コダック社)0.2mg/mlを含むPBS2.0カラム分の容量を用いて洗浄する。1.0
時間にわたって4℃に維持した後、流れを再開し、溶離したタンパク質を回収す
る。この分画は、ペプチド溶離液と呼ばれる。アンチ−フラグ・セファロース・
ゲルを2.0カラム分の容量の0.1Mのグリシン(pH2.5)で洗浄し、そのグリシン洗
浄液を別に回収する。グリシンが溶離した分画に10倍に薄めたPBSを少量添加し
てpHを7.0に調節し、4℃で貯蔵する。
【0155】 ペプチド溶離液を、分子量が5,000の分離膜濃縮器(ミリポア、ベッドフォー
ド社、マサチューセッツ州)を製造者の指示に従って用いて5.0mlに濃縮する。
次に、濃縮されたペプチド溶離液を、クロマトグラフィーにより、遊離したペプ
チドから分離する。そのクロマトグラフィーは、PBSの中で平衡させた1.5×50cm
のセファデックスG-50(ファルマシア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州
)カラム上でバイオカド・スプリントHPLCシステム(パーセプティヴ・バイオシ
ステムズ社、フラミンガム、マサチューセッツ州)を用いて流速1.0ml/分にして
行なう。分画を2ml回収し、280nMにおける吸光度をモニターする。280nMで吸光
があり、カラムの空隙の近くで溶離する第1のピークの物質を回収する。
【0156】 SDS-PAGE、ウエスタン分析、アミノ酸分析、N末端の配列決定を、精製したタ
ンパク質に対して行なうことができる。タンパク質の濃度は、BCA分析(ピアー
ス社、ロックフォード、イリノイ州)により決定できる。
【0157】 サンプルの分画化には、硫安沈殿と、酸抽出またはカオトロピック抽出を利用
することができる。精製ステップには、例えば、ヒドロキシアパタイト・クロマ
トグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、FPLC、逆相高性能液体クロマト
グラフィーが含まれる。適切なクロマトグラフィー媒体としては、デキストラン
誘導体、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、特殊シリカなどがある
。PEI、DEAE、QAE、Q誘導体が好ましい。
【0158】 クロマトグラフィー媒体としては、フェニル基、ブチル基、またはオクチル基
を有する誘導体、例えばフェニル−セファロースFF(ファルマシア社)、トヨパ
ール・ブチル650(トーソー・ハアス社、モンゴメリーヴィル、ペンシルバニア
州)、オクチル−セファロース(ファルマシア社)などのほか、ポリアクリル樹
脂、例えばアンバークロムCG71(トーソー・ハアス社)などがある。適切な固相
支持体としては、ガラス・ビーズ、シリカをベースにした樹脂、セルロース樹脂
、アガロース・ビーズ、架橋したアガロース・ビーズ、ポリスチレン・ビーズ、
架橋したポリアクリルアミド樹脂など、使用する条件下で溶けないものが挙げら
れる。これら支持体は反応性のある基で修飾して、タンパク質が、アミノ基、カ
ルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基および/または炭水化物部分
によって結合できるようにするとよい。
【0159】 結合に関する化学の例としては、ブロモシアン活性化、N-ヒドロキシスクシン
イミド活性化、エポキシド活性化、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化や
、カルボジイミド結合に関する化学のためのカルボキシル誘導体とアミノ誘導体
などがある。これら固相媒体やそれ以外の固相媒体は周知であり、民間企業から
入手可能で、当業者の間で広く使われている。受容体のポリペプチドを支持体に
結合させる方法は、当業者には周知である。どの方法を選ぶかは、日常的な実験
計画の問題であるが、選択した支持体の特性によって決まってくる部分もある。
例えば、『Affinity Chromatography:Principles & Methods』、ファルマシアL
KBバイオテクノロジー社, ウプサラ, スウェーデン, 1988年を参照されたい。
【0160】 本発明のポリペプチドは、その生化学的、構造的、生物学的な特性を利用して
分離できる。例えば固定化金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーを用いて
、ヒスチジンを豊富に含むタンパク質を、ポリヒスチジン・タグを含むタンパク
質も含め、精製することができる。要するに、まず最初にゲルを2価の金属イオ
ンで荷電させてキレートを形成する(スルコフスキー、Trends in Biochem.、第
3巻, 1-7ページ, 1985年)。ヒスチジンを豊富に含むタンパク質は、使用する金
属イオンが何であるかに応じて異なるアフィニティでこのマトリックスに吸着さ
れる。
【0161】 吸着タンパク質は、競合溶離によって、またはpHを下げることによって、また
は強力なキレート剤を使用することによって溶離させる。他の精製法としては、
レクチン・アフィニティ・クロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィー
によってグルコシル化されたタンパク質を精製する方法などがある(Methods in
Enzymol.、第182巻、『Guide to Protein Purification』、M.ドイチャー編、
アカデミック・プレス, サンディエゴ, 1990年, 529-539ページ)。本発明のさ
らに別の実施態様では、目的とするポリペプチドとアフィニティ・タグ(例えば
、マルトース結合タンパク質、ヒスチジン・タグ、または免疫グロブリン・ドメ
イン)の融合体を構成して精製を容易にする。
【0162】 以上に加え、従来から知られている方法を利用して、zsig58ポリペプチドの領
域またはドメインと、他の関連したタンパク質(例えばヒトTIGR)または異種タ
ンパク質の領域またはドメインとを組み合わせることにより、ポリペプチド融合
体またはハイブリッドのzsig58タンパク質を構成する(サムブルック他、前掲文
献;アルトシュール他、前掲文献;ピカード, Cur. Opin. Biology, 第5巻, 511
-515ページ、1994年と、これら文献の中に挙げられている参考文献)。
【0163】 これらの方法により、目的とするポリペプチドの中のより大きなドメインまた
は領域の生物学上の重要度を決定することができる。そのようなハイブリッドは
、反応のキネティックスや結合を変えたり、基質の特異性を制限または拡張した
り、ポリペプチドの組織局在性と細胞局在性を変えたりする可能性があるため、
構造がまだわかっていないポリペプチドに応用することができる。
【0164】 融合タンパク質は、その融合タンパク質の各成分を用意し、それらを化学的に
結合させるという当業者に知られた方法で作ることができる。また、正しいリー
ディング・フレーム内で融合タンパク質の異なる要素をコードしているポリヌク
レオチドを、既知の技術と本明細書に記載の方法を用いて生産することができる
。例えば、生物学的機能を与えている1つ以上のドメインの一部またはすべてを
、本発明のzsig58と、TIGRなどの別のタンパク質ファミリーのメンバーの両者に
おいて対応するドメイン間で交換することができる。
【0165】 そうしたドメインには、分泌シグナル配列、保存されたモチーフ(例えばモチ
ーフ1〜モチーフ7)、保存されたモチーフに挟まれた可変領域、フランキング領
域のN末端からカルボキシル・ドメインまで、カルボキシル・ドメインなどがあ
るが、これがすべてではない。そうした融合タンパク質は、どのような融合が構
成されたかに応じ、本発明のポリペプチドと同じか類似した生物学的機能特性を
持ったり、他のTIGRファミリーのタンパク質と同じか類似した生物学的機能特性
を持ったりすることが予想されるであろう。さらに、そうした融合タンパク質は
、本明細書に記載した他の特性も示す可能性がある。
【0166】 標準的な分子生物学的技術とクローニング技術を用いて、互いに等価なドメイ
ンを、zsig58ポリペプチドとその等価なドメインが融合しているポリペプチドの
間で交換することができる。一般に、目的とするドメイン、例えば本明細書に記
載したzsig58ドメインをコードしているDNA断片は、付加ポリペプチド(例えば
、TIGRまたはそれと似たポリペプチドに由来するドメインまたは領域)をコード
している少なくとも1つの他のDNA断片とフレーム内で操作上関連しており、本明
細書に記載したように、適切な発現ベクターの中に挿入される。一般にDNA構造
物は、以下のようにして作られる。すなわち、ポリペプチドの各領域をコードし
ているいくつかのDNA断片がフレーム内で作用可能に連結されているため、融合
タンパク質全体、またはその機能部分をコードしている単一の構造物が作られる
【0167】 例えば、DNA構造物は、融合タンパク質のN末端からC末端までをコードするが
、その融合タンパク質の中には、分泌シグナル配列が含まれており、それに続い
て保存されたモチーフ(例えばモチーフ1〜モチーフ7で、可変領域がそれら保存
されたモチーフの間に挟まれている)、それに続いてフランキング領域のN末端
からカルボキシル・ドメインまで、そしてカルボキシル・ドメインが含まれてい
る。そうした融合タンパク質は、本明細書に記載したように、発現させること、
分離すること、活動を検定することが可能である。
【0168】 zsig58ポリペプチドまたはその断片は、化学的合成によっても得ることができ
る。zsig58ポリペプチドは単量体でも多量体でもよく、グリコシル化されていて
もされていなくてもよく、ペジル化されていてもされていなくてもよく、アミノ
酸残基の開始メチオニンを含んでいてもいなくてもよい。
【0169】 本発明のポリペプチドはまた、純固相法、部分固相法、フラグメント縮合法、
または古典的な溶液法でも合成できる。ポリペプチド合成法は当業界において周
知である。たとえば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149, 1963; Kaiser
et al., Anal. Biochem. 34:595, 1970を参照。固形担体上での所望ペプチドの
完全合成後、ペプチドを樹脂から切り離しほとんどの側鎖保護基を除去するよう
な試薬をペプチド−樹脂に加える。かかる方法は当業界において確立されている
。本発明の分子の活性は種々の検定法、たとえばシグナルトランスダクション、
細胞運動性、ステロイド合成、有糸分裂生起または結合などを測定する方法によ
って測定することができる。こうした検定法も当業界において周知である。
【0170】 本発明のzsig58ポリペプチドは膵細胞の増殖または分化の検定に使用できる。
本発明のかかる方法は一般に、α細胞、β細胞、δ細胞、F細胞および腺房細胞
をzsig58ポリペプチド、そのモノクローナル抗体、アゴニストまたはアンタゴニ
ストの存在下および不在下で培養すること、および膵島細胞の増殖または分化の
変化を観測することより成る。
【0171】 本発明はさらなる態様でインスリンの試験方法を提供する。本発明のかかる方
法は、含脂肪細胞をzsig58ポリペプチド、そのモノクローナル抗体、アゴニスト
またはアンタゴニスト±インスリンから成る培地で培養すること、および含脂肪
細胞のタンパク質分泌または分化の変化を観測することより成る。
【0172】 本発明はまた哺乳動物の細胞代謝の試験方法を提供する。本発明のかかる方法
は被検細胞、たとえば適当なヒト細胞株をzsig58ポリペプチド、そのモノクロー
ナル抗体、アゴニストまたはアンタゴニストの存在下および不在下で培養するこ
と、および脂肪生成、糖新生、グリコーゲン分解、脂質生成、グルコース摂取な
どの変化を観測することより成る。
【0173】 また、zsig58ポリペプチド、そのアゴニストまたはアンタゴニストは創傷治癒
、たとえば膵臓における創傷治癒の促進という点で治療上有用あろう。本発明の
zsig58ポリペプチド、そのアゴニストまたはアンタゴニストにそうした効能があ
ることを検証するには、当業界において周知の手順により創傷治癒促進面でのそ
の効能を評価する。もし望むなら、この点でのzsig58ポリペプチドの性能を増殖
因子、たとえばEGF、NGF、TGF-α、TGF-β、インスリン、IGF-I、IGF-II、繊維
芽細胞増殖因子(FGF)などと比較することもできる。さらに、zsig58ポリペプ
チド、そのアゴニストまたはアンタゴニストは1種以上の増殖因子と組み合わせ
て相乗効果を評価することもできる。
【0174】 さらに、zsig58ポリペプチド、そのアゴニストまたはアンタゴニストは抗菌用
途でも治療上有用であろう。本発明のzsig58ポリペプチド、そのアゴニストまた
はアンタゴニストにそうした効能があることを立証するには、当業界において周
知の手順によりその抗菌特性を評価する。たとえば、Barsum et al., Eur. Resp
r. J. 8(5): 709-14, 1995; Sandovsky-Losica et al., J. Med. Vet. Mycol(En
gland) 28(4): 279-87, 1990; Mehentee et al., J. Gen. Microbiol(England)
135 (Pt. 8): 2181-8, 1989; Segel and Savage, Journal of Medical and Vete
rinary Mycology 24: 477-479, 1986などを参照。
【0175】 もし望むなら、この点でのzsig58ポリペプチドの性能を同様の機能をつもこと
が知られているタンパク質、たとえばプロリン濃厚タンパク質、リゾチーム、ヒ
スタチン、ラクトペルオキシダーゼなどと比較することもできる。さらに、zsig
58ポリペプチド、そのアゴニストまたはアンタゴニストは1種以上の抗菌薬と組
み合わせて相乗効果を評価することもできる。
【0176】 抗菌保護薬は直接的または間接的に作用しよう。細胞膜との会合または細胞膜
への穿孔という作用機構を通じて働く抗菌薬は加害細菌に直接付着する。抗菌薬
は酵素的機構を通じて細菌の保護物質や細胞壁/膜に分解、破壊作用を及ぼすこ
ともできる。以上述べたいずれかの機構により細菌の増殖または作用を阻害しあ
るいは細菌の完全状態を壊すことができる抗菌薬は、そうした抗菌活性を被りや
すい細菌による細胞培養の汚染を防止する方法に有用である。かかる方法はzsig
58ポリペプチド、そのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量の存在下で細胞
を培養することより成る。
【0177】 また、zsig58ポリペプチドまたはそのアゴニストは外因性の微生物感染、たと
えば細菌、ウィルスまたは真菌感染などのin vitro試験で細胞培養試薬として使
用することもできよう。かかる成分はin vivo動物感染モデルにも使用できよう
。また、zsig58ポリペプチドまたはそのアゴニストの微生物付着特性を結合検定
法などにおける多様な条件の下で試験することもできる。
【0178】 骨芽細胞などのような骨細胞前駆体は骨髄で生成されるが、卵巣ホルモンの影
響を強く受ける。本発明の卵巣局限性を考えると、骨形成/骨吸収を測定する検
定法はzsig58活性を評価するための重要な検定法である。その一例は、カルシト
ニン受容体を発現する細胞上の、選択的カルシトニン受容体活性をもつ物質のす
ばやい特定を可能にする検定法である。カルシトニン受容体はG-タンパク質受容
体ファミリーの一員であり、アデニル酸シクラーゼの活性化を通じて信号を変換
し、細胞のcAMP濃度を高めるようにする(Lin et al., Science 254: 1022-24,
1991)。この検定法は受容体のcAMP濃度向上機能に着目して、カルシトニン受容
体を刺激し信号変換を開始させることのができる他分子を検知する。
【0179】 受容体の活性化は次の方法により検知することができる:(1)アデニル酸シク
ラーゼ活性の測定(Salmon et al., Anal. Biochem. 58: 541-48, 1974; Alvare
z and Daniels, Anal. Biochem. 187: 98- 103, 1990);(2)通常の放射免疫測
定法の使用による細胞内cAMP濃度の測定(Steiner et al., J. Biol. Chem 247:
1106-13, 1972; Harper and Brooker, J. Cyc. Nucl. Res. 1: 207-18, 1975)
;または(3)cAMPシンチレーション近似測定法(SPA)の使用(アメルシャム社(A
mersham Corp.)−イリノイ州アーリントンハイツ )。
【0180】 代わりの検定法として、カルシトニン受容体の発現を欠く細胞ではなくカルシ
トニン受容体を発現する細胞におけるcAMP濃度上昇の結果としてcAMP応答要素−
ルシフェラーゼリポーター遺伝子−の発現を誘発することができるポリペプチド
の選択を伴う方法があり、これについては米国特許第5,622,839号、米国特許第5
,674,689号および米国特許第5,674,981号で説明されている。
【0181】 カルシトニン受容体と相互作用するzsig58ポリペプチドのin vivo効果を試験
するには既知の動物モデルを使用することができる。そのうえ、これらの動物モ
デルは骨に対するzsig58の、カルシトニン受容体経由以外の効果を試験するため
にも使用できる。たとえば、血清カルシウムへの効果を測定するには低カルシウ
ム血症ラットまたはマウスモデルを使用することができるし、骨粗鬆症の場合は
卵巣切除ラットまたはマウスモデルをモデル系として使用することができる。
【0182】 これらのモデルに、またエストロゲン欠乏症の初期段階にあるヒトに見られる
骨の変化は定性的には類似している。カルシトニンは卵巣切除を受けた女性また
はラットの骨喪失の防止に有効であることがすでに証明されている(Mazzuoli e
t al., Calcif. Tissue Int. 47: 209-14, 1994; Wronski et al., Endocrinolo
gy 129: 2246-50, 1991)。高用量エストロゲンは卵巣切除マウスモデルで骨吸
収を阻害し骨形成を助長することが証明されている(Bain et al., J. Bone Min
er. Res. 8: 435-42, 1993)。
【0183】 したがって、カルシトニン受容体と相互作用し、卵巣からのホルモン産生を刺
激し、または他の効果を骨に及ぼす本発明の生理活性zsig58ポリペプチドは、カ
ルシトニンが有効である治療用途への使用に好都合であると見込まれる。その種
の用途はたとえば、骨粗鬆症、パジェット病、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、
乳児突発性高カルシウム血症などの治療である。他に、急性膵炎および胃腸疾患
の治療に際して胃液の分泌を抑える用途や、骨痛などに適した鎮痛薬としての用
途もある。
【0184】 骨形成率の変化を測定するためのin vivo検定法には、骨組織検査(レッカー(
Recker, R)編「骨組織形態測定:手法と解釈(Bone Histomorphometry: Techniqu
es and Interpretation)」CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1993を参照)や
定量的コンピュータ断層撮影法(QCT;Ferretti, J. Bone 17: 353S-364S, 1995
; Orphanoludakis et al., Investg. Radiol. 14: 122-130, 1979; Durand et a
l., Medical Physics 19: 569-573, 1992)がある。骨形成の変化を調べるため
のex vivo検定法には頭蓋冠測定法(Gowen et al., J. Immunol. 136: 2478-248
2, 1986)または吸収頭蓋冠測定法(Linkhart, T.A., and Mohan, S., Endocrin
ology 125:1484-1491, 1989)などの例がある。
【0185】 本発明のタンパク質は、たとえば、卵巣、目、血液または骨の疾患の治療に有
効であり、培養細胞を使用してin vitroで、または本発明の分子を適当な実験動
物に投与することによりin vivoで、それぞれ測定することができる。たとえば
、分泌形態のzsig58ポリペプチドを発現する宿主細胞をアルギン酸塩環境に包理
し受容動物に注入(移植)することができよう。トランスフェクションした哺乳
動物細胞または一次哺乳動物細胞を閉じ込めて、閉じ込めた細胞から分泌または
放出されるタンパク質または他の高分子を受容動物に拡散させるようにするため
の手段としては、アルギン酸塩-ポリ-L-リシンによるマイクロカプセル封入、選
択透過膜および拡散透過膜によるカプセル封入がある。
【0186】 何より重要なのは、これらのカプセルが受容動物の免疫反応から、異物として
の包理細胞を隠蔽、遮蔽することである。こうしたカプセル封入は注入細胞の寿
命を(裸細胞の場合の)数時間または数日間から(包理細胞の場合の)数週間へ
と延ばすことができる。アルギン酸糸は、包理細胞を生成し、その細胞から分泌
されるタンパク質をin vivoで試験するための簡便な手段を提供してくれる。
【0187】 アルギン酸糸の生成に必要な材料は当業界において周知である。模範的な手順
では、3%アルギン酸塩を滅菌水で調製し、滅菌ろ過する。アルギン酸糸を生成す
る直前に、アルギン酸塩溶液を再ろ過する。約50%の細胞懸濁液(約5×105〜5×
107個/mlの細胞を含む)を3%アルギン酸塩溶液と混合する。この混合液1 mlを1
00 mM滅菌ろ過CaCl2溶液中に〜15分間にわたり押し出して「糸」を成形する。
【0188】 次に、押し出し成形した糸を50 mM CaCl2溶液に、次いで25 mM CaCl2に通す。
それから糸を純水ですすぎ洗いしてから、0.01%ポリ-L-リジン溶液中に温置する
ことにより糸を被覆する。最後に、この糸を乳酸加リンガー液ですすぎ洗いし、
リンガー液から(針なし)注射器に吸い込む。次いで、注射器に大内径針を取り
付け、糸を最小量の乳酸加リンガー液と共に受容動物に腹腔内注入する。
【0189】 本発明のタンパク質を測定するためのもう1つのin vivo法ではウィルス送達系
を使用する。この目的に適したウィルスはアデノウィルス、ヘルペスウィルス、
レトロウィルス、ワクシニアウィルスおよびアデノ随伴ウィルス(AAV)などで
ある。アデノウィルスは2本鎖DNAウィルスであるが、異種核酸送達用の遺伝子導
入ベクターとしての研究が現在のところ最も進んでいる(T.C. Becker et al.,
Meth. Cell. Biol. 43: 161-89, 1994およびJ.T. Douglas and D.T. Curiel, Sc
ience & Medicine 4: 44-53, 1997を参照)。
【0190】 アデノウィルス系には次のようにいくつかの利点がある:(i)アデノウィルス
は比較的大きなDNAウィルスインサートを受け入れることができる;(ii)高滴定
濃度へと増殖させることがでる;(iii)多様な種類の哺乳動物細胞に感染しうる
;および(iv)多様な(たとえば偏在型、組織特異的、および調節可能)プロモー
ターとの併用が可能。また、アデノウィルスは血流中で安定的であるため、静脈
注射で投与することができる。
【0191】 アデノウィルスゲノムを部分的に欠失したアデノウィルスベクターを使用して
、同時トランスフェクションプラスミドとの直接結合または相同組み換えにより
このウィルスのDNAにインサートを組み込む。例示の系では、ウィルスベクター
から必須のE1遺伝子を除去してあるため、このウィルスは宿主細胞(たとえばヒ
ト293細胞株)からE1遺伝子が提供されない限り複製しない。
【0192】 アデノウィルスは手付かずの動物に静脈内投与されると、主に肝臓を標的にす
る。アデノウィルス送達系がE1遺伝子を欠いていれば、ウィルスは宿主細胞内で
複製することができない。しかし、宿主の組織(肝臓など)はこの異種タンパク
質を発現し、プロセッシング(し、また分泌シグナル配列が存在する場合には、
分泌)することになろう。分泌されたタンパク質は血管再生が高度に進んだ肝臓
内で循環系に入ることになるため、感染動物への効果が測定可能になる。
【0193】 さらに、ウィルス遺伝子に様々な欠失があるアデノウィルスベクターはベクタ
ーに対する免疫反応の低下または解消を目指す場合に利用できる。そうしたたア
デノウィルスはE1遺伝子を欠くだけでなく、E2AまたはE4も欠いている(Lusky,
M. et al., J. Virol. 72: 2022-2032, 1998; Raper, S.E. et al., Human Gene
Therapy 9: 671-679, 1998)。
【0194】 E2bの欠失もまた免疫反応の低下につながると報告されている(Amalfitano, A
. et al., J. Virol. 72: 926-933, 1998)。さらに、アデノウィルスゲノムを
全部除去すれば、きわめて大きな異種DNAインサートを入れることができる。ウ
ィルス遺伝子をすべて除去した、いわゆる「腑抜け」アデノウィルスは大きなDN
Aインサートの挿入に特に好都合である。Yeh, P. and Perricaudet, M., FASEB
J. 11: 615-623, 1997を参照。
【0195】 アデノウィルス系はタンパク質のin vitro生産にも使用できる。アデノウィル
スに感染した非ヒト293細胞を細胞分裂が急速には進行しないような条件で培養
すると、細胞はタンパク質を長時間にわたって生産することができる。たとえば
BHK細胞を増殖させて細胞工場内に集め、次いで目的の分泌タンパク質をコード
するアデノウィルスベクターに接触させる。次に、感染細胞をあまり細胞分裂を
起こさずに生き延びられるようにするような無血清条件下で、この細胞を増殖さ
せる。
【0196】 あるいは、アデノウィルスベクターに感染した293細胞を、粘着細胞として、
または比較的高い細胞密度の浮遊培地で培養し、多量のタンパク質を生産させる
こともできる(Garnier et al., Cytotechnol. 15: 145-55, 1994を参照)。い
ずれのプロトコルでも、発現、分泌した異種タンパク質は細胞内の発現タンパク
質の性質次第で、細胞培地の上澄み、溶解物、または膜フラクションから繰り返
し単離することができる。感染293細胞生産プロトコルでは、非分泌タンパク質
もまた効果的に得られよう。
【0197】 zsig58ポリペプチドのリガンドとしての活性はシリコン基板バイオセンサーで
あるマイクロ生理機能計で測定できる。これは受容体結合とそれに伴う細胞応答
に付随する細胞外酸性化率またはプロトン放出を測定するものである。デバイス
例としてカリフォルニア州サニーベールのモリキュラー・デバイセズ社(Molecu
lar Devices)製のCytosensorTM Microphysiometerなどがある。この方法により
種々の細胞応答、たとえば細胞増殖、イオン輸送、エネルギー生産、炎症反応、
調節および受容体活性化などを測定することができる。たとえば、McConell, H.
M. et al., Science 257: 1906 -1912, 1992; Pitchford, S. et al., Meth. En
zymol. 228: 84-108, 1997; Arililli, S. eta al., J. Immunol. Meth. 212: 4
9-59, 1998; Van Liefde, I. et al., Eur. J. Pharmacol. 346: 87-95, 1998な
どを参照。
【0198】 マイクロ生理機能計は粘着性または非粘着性の真核または原核細胞の検定に使
用できる。マイクロ生理機能計は細胞培地内の細胞外酸性化の時間的な変化を測
定することにより、zsig58ポリペプチド、そのアゴニストまたはアンタゴニスト
などを含む種々の刺激に対する細胞応答を直接測定する。好ましくは、マイクロ
生理機能計はzsig58ポリペプチド応答性真核細胞の応答を、zsig58ポリペプチド
に応答しない対照真核細胞との比較で測定するのに使用する。zsig58応答性真核
細胞は、zsig58受容体をトランスフェクションさせてzsig58に応答するようにし
た細胞、または本来zsig58応答性を備えた細胞、たとえば卵巣および膵臓組織に
由来する細胞から成る。
【0199】 zsig58ポリペプチドと接触させた細胞の応答の、zsig58と接触させていない対
照細胞との比較で見た差異はある種の変化たとえば細胞外酸性化の増減によって
測定されるが、測定された差異はzsig58により調節された細胞応答の直接測定値
となる。しかも、こうしたzsig58調節細胞応答は種々の刺激下で測定することが
できる。マイクロ生理機能計を使用すれば、zsig58ポリペプチドのアゴニストを
特定する方法が与えられる。
【0200】 この方法はzsig58ポリペプチド応答性細胞を用意すること、それらの細胞の第
1部分を試験化合物の不在下で培養すること、それらの細胞の第2部分を試験化合
物の存在下で培養すること、および第2部分の細胞の細胞応答に生じる、第1部分
の細胞との比較で見たある種の変化、たとえばある種の増減を検知することから
成る。さらに、これらの細胞の第3部分をzsig58ポリペプチドの存在下かつ試験
化合物の不在下で培養すれば、zsig58応答性細胞に関する正の制御手段として、
また試験化合物のアゴニスト活性をzsig58ポリペプチドの活性と比較するための
対照として、使用することができる。
【0201】 さらに、マイクロ生理機能計の使用によりzsig58ポリペプチドのアンタゴニス
トを特定する方法が与えられる。この方法はzsigポリペプチド応答性細胞を用意
すること、それらの細胞の第1部分をzsig58の存在下かつ試験化合物の不在下で
培養すること、これらの化合物の第2部分をzsig58の存在下かつ試験化合物の存
在下で培養すること、および第2部分の細胞の細胞応答に生じる、第1部分の細胞
との比較で見たある種の変化、たとえばある種の増減を検知することから成る。
細胞応答のそうした変化は測定可能な細胞外酸性化率の変化として示される。こ
の方法によりzsig58ポリペプチドのアンタゴニストおよびアゴニストを迅速に特
定することができる。
【0202】 さらに、zsig58はdsig58刺激経路に応答する細胞、組織または細胞株の特定に
使用することができる。前述のマイクロ生理機能計は本発明のzsig58に応答する
細胞などのようなリガンド応答性細胞の迅速な特定に使用することができる。細
胞はzsig58ポリペプチドの存在下または不在下で培養することができる。zsig58
の存在下で細胞外酸性化の測定可能な変化を誘発する細胞はzsig58応答性である
。かかる細胞株は前述のようにzsig58ポリペプチドのアンタゴニストおよびアゴ
ニストの特定に使用できる。
【0203】 zsig58に観察される組織分布に照らして、アゴニスト(天然リガンド/基質/
補因子などを含む)とアンタゴニストはin vito、in vivo両用途で大きな可能性
をもつ。zsig58アゴニストとして特定された化合物はin vitoおよびin vivoの細
胞増殖または信号伝達を刺激するのに有用である。たとえば、zsig58およびアゴ
ニストは規定細胞培地の成分として有用であり、単独でまたは他のサイトカイン
およびホルモンと組み合わせて使用し、細胞培養に広く使用されている血清の代
用とすることが可能である。
【0204】 アゴニストはこのように、培養細胞の増殖および/または発育を促進するうえ
で特に有用である。zsig58の卵巣と膵臓での高発現を考えると、zsig58ポリペプ
チドおよびzsig58アゴニストは、特に膵細胞型および卵巣細胞株、ヒト卵、動物
の胚に由来する細胞またはこれらの組織に由来する初代培養の増殖を目的とした
研究試薬として特に有用であろう。そのようなものとして、zsig58ポリペプチド
は細胞培地の補助成分となりうる。
【0205】 アンタゴニストもまたリガンド−受容体相互作用部位の特性記述のための研究
試薬として有用である。zsig58活性阻害物質(zsig58アンタゴニスト)としては
zsig58ポリペプチドに結合する抗zsig58抗体および可溶性タンパク質、さらには
他のペプチド薬および非ペプチド薬(リボザイムを含む)などがある。
【0206】 zsig58ポリペプチドはその活性阻害物質(アンタゴニスト)の特定に使用でき
る。zsig58の活性を阻害する化合物を特定するには試験化合物を本書で開示した
生物学的または生化学的検定法に加える。本書で開示した検定法とは別に、受容
体結合またはzsig58依存細胞応答の刺激/阻害を測定するための様々な検定法で
検体を試験しzsig58活性の阻害を調べることができる。たとえば、zsig58応答性
細胞株にzsig58刺激細胞経路に応答するリポーター遺伝子カセットを導入するこ
とができる。この種のリポーター遺伝子カセットは当業界において周知であり、
一般に検定法で検出可能なタンパク質、たとえばルシフェラーゼをコードする遺
伝子に作動可能に結合されたzsig58-DNA応答エレメントから成る。
【0207】 DNA応答エレメントにはcAMP応答エレメント(CRE)、インスリン応答エレメン
ト(IRE)(Nasrin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5273-7, 1990)お
よび血清応答エレメント(SRE)(Shaw et al., Cell 56: 563-72, 1989)があ
るが、それだけに限らない。cAMP応答エレメントについてはRoestler et al., J
. Biol. Chem. 263(19):9063-6, 1988およびHabener, Molec. Endocrinol. 4 (8
):087-94, 1990で概説されている。ホルモン応答エレメントについてはBeato, C
ell 56:335-44, 1989で概説されている。
【0208】 検体となる候補化合物は溶液、混合物またはエキスを含めて試験し、zsig58ポ
リペプチドへの応答レベルを調べる。ターゲット細胞上でのzsig58ポリペプチド
活性を阻害する検体の力は、検体の不在下で培養された対照との関係で見た、検
体の存在下でのzsig58のリポーター遺伝子発現刺激の低下によって裏付けられる
。この種の検定法は細胞表面受容体へのzsig58の結合たとえば二量体化を直接阻
む化合物、および受容体−リガンド結合後の細胞経路内の諸過程を阻む化合物を
検出することになろう。
【0209】 あるいは、検出可能なラベル(たとえば125I、ビオチン、ワサビ・ペルオキシ
ダーゼ、FITCなど)で標識したzsig58を使用して化合物または他の検体を試験し
て、受容体へのzsig58の結合を直接阻むかどうかを調べることもできる。この種
の検定法では、標識zsig58の受容体への結合を阻害する検体の力が阻害活性を示
唆することになり、それは二次検定法で確認できる。結合検定法で使用される受
容体は細胞受容体、または単離、固定化された受容体であろう。
【0210】 あるいは、以上の方法を用いてzsig58活性のアゴニストを特定するともできる
。溶液、混合物またはエキスを含めた検体となる候補化合物を前述の検定法によ
り試験し、ターゲット細胞上でのzsig58ポリペプチドの活性を模倣する力を調べ
る。この力は(検体の不在およびzsig58ポリペプチドの不在下で培養された)対
照との関係で見た、検体の存在およびzsig58の不在下でのリポーター遺伝子発現
刺激によって裏付けられる。
【0211】 zsig58ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖の定常領域、一般的には(2つの
定常領域ドメインをもち、可変領域を欠く)Fcフラグメントとの融合体として発
現させることもできる。こうした融合体をつくる方法は米国特許第5,155,027号
および第5,567,584号で開示されている。こうした融合体は一般に多重結合分子
として分泌されるが、そこではFc部分が互いにジスルフィド結合し、また2つの
非Igポリペプチドが互いに近接配列している。この種の融合体は、in vito検定
手段またはzsig58のアンタゴニストとしてリガンドをアフィニティ精製するため
に使用することができる。検定法に使用する場合、このキメラはFc領域を介して
担体に結合し、ELISA様式で使用する。
【0212】 zsig58ポリペプチドはまた、レセプターまたはレセプターに結合されるポリペ
プチドの精製にも使用できる。zsig58ポリペプチドはアガロースビーズ、架橋ア
ガロース、ガラス、セルロース樹脂、シリカ系樹脂、ポリスチレン、架橋ポリア
クリルアミド、または使用条件下で安定的である類似材料などのような固形担体
に固定化する。ポリペプチドを固形担体に結合する方法は周知技術であり、アミ
ン化学、臭化シアン活性化、N-ヒドロキシスクシニド活性化、エポキシド活性化
、スルフヒドリル活性化、ヒドラジド活性化などがある。得られる媒体は一般に
カラム形に作り、受容体を含む膜フラクションを1回以上カラムに通して受容体
をリガンドzsig58ポリペプチドに結合させる。次いで、塩濃度変化、カオトロピ
ック剤(グアニジンHCl)またはpHを利用してリガンド−受容体結合を破り、受
容体を溶出させる。
【0213】 リガンド結合受容体(または抗体、相補体/抗相補体ペアの一方)またはその
結合フラグメントおよび市販のバイオセンサー装置(BIAcore。ニュージャージ
ー州ピスカタウェーのファーマシア・バイオセンサー社(Pharmacia Biosensor)
製)を使用する検定法の採用が好都合であろう。かかる受容体、抗体、相補体/
抗相補体ペアの一方、またはフラグメントは受容体チップの表面に固定化する。
この装置の使用についてはKarlsson, J. Immunol. Methods 145:229-40, 1991お
よびCunningham and Wells, J. Mol. Biol. 234:554-63, 1993が開示している。
【0214】 受容体、抗体、相補体/抗相補体ペアの一方、またはフラグメントは、フロー
セル内の金皮膜に結合しているデキストラン繊維に、アミンまたはスルフヒドリ
ル化学を用いて共有結合させる。検体はセルに通す。リガンド、エピトープまた
は相補体/抗相補体ペアの他方が検体中に存在すれば、それは固定化された受容
体、抗体、またはペアの一方にそれぞれ結合し、媒体の屈折率を変化させるので
、その変化を金皮膜の表面プラスモン共鳴の変化として検出する。この方法では
、オンレート(on-rate)およびオフレート(off-rate)が求められるので、そ
れを基に結合親和力を計算し、または結合の化学量論比を評価することができる
【0215】 リガンド結合受容体ポリペプチドはまた、当業界において周知の他の検定法に
も使用できる。たとえば、結合親和力を求めるためのスキャッチャード解析法(
Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51:660-72, 1949を参照)や熱量測定法(Cunni
ngham et al., Science 253:545-48, 1991; Cunningham et al., Science 245:8
21-25, 1991)など。
【0216】 zsig58ポリペプチドはまた、zsig58エピトープ、ペプチドまたはポリペプチド
に結合する抗体の産生にも使用できる。zsig58ポリペプチドまたはその断片は、
動物に接種して免疫反応を誘発するための抗原(免疫原)となる。当業者は抗原
性の、エピトープをもつポリペプチドがzsig58ポリペプチド(例:配列番号:2)
の連続アミノ酸残基少なくとも6個の、好ましくは少なくとも9個の、もっと好ま
しくは少なくとも15個ないし約30個の配列を含むことを了解しよう。zsig58ポリ
ペプチドのもっと大きな部分、たとえば残基数30〜10からアミノ酸配列全長に至
るまでの部分をもつポリペプチドも含まれる。
【0217】 抗原または免疫原性エピトープはまた、本書で説明するように添付タグ、アジ
ュバントおよびキャリヤーを含むこともできる。適当な抗原は配列番号:2 zsig5
8ポリペプチドをアミノ酸番号26(Thr)からアミノ酸番号402(Lys)まで、また
は連続9〜402 AAアミノ酸断片を含む。抗原として使用するのに好ましいペプチ
ドは、当業者が疎水性プロットから、たとえば隠れたG、SおよびT残基と露出し
たH、YおよびW残基を無視してスライディング6残基ウインドウ法(a sliding si
x-residue window)に基づくHopp/Woods親水性プロファイルから予測するような
親水性ペプチドである。
【0218】 さらに、本書で説明するようなカルボキシル基ドメイン、保存モチーフ、zsig
58の保存モチーフ間の可変領域、およびカルボキシル基ドメインに対してN末端
のフランキング領域もまた適する。これらの抗原を動物に接種し、それによって
産生される免疫反応に由来する抗体は本書で説明するようにして単離、産生する
ことができる。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生、単離法は当業
界において周知である。
【0219】 たとえば、米・国立保健研究所・クーリガン編「最新免疫学プロトコル」(Cu
rrent Protocols in Immunology, Cooligan et al., (eds.), National Institu
tes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995)、サムブルック著「分子ク
ローニング:実験マニュアル、第2版」(Sambrook et al., Molecular Cloning:
A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、お
よびハレル編「モノクローナルハイブリドーマ抗体:手法と応用」(Hurrell, J
.G.R. ed., Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications,
CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1982)を参照。特異的結合性の抗zsig58抗
体は、以下に開示する多数の技術的方法により検出可能である。
【0220】 当業者には自明であろうが、ポリクローナル抗体は種々の温血動物たとえばウ
マ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、ラットなどにzsig
58ポリペプチドまたはその断片を接種することにより産生させることができる。
zsig58ポリペプチドの免疫原性はアジュバント、たとえばミョウバン(水酸化ア
ルミニウム)またはフロイント完全/不完全アジュバントなどの使用により高め
ることができる。
【0221】 免疫法に有効なポリペプチドには融合ポリペプチド、たとえばzsig58またはそ
の一部と免疫グロブリンポリペプチドまたはマルトース結合タンパク質との融合
体なども含まれる。ポリペプチド免疫原は完全長分子でも、その一部分でもよい
。ポリペプチド部分が「ハプテン様」である場合には、かかる部分を高分子キャ
リヤー(キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)ま
たは破傷風タキサイドなど)と連結または結合すると免疫法には好都合である。
【0222】 本書で使用する用語「抗体」はポリクローナル抗体、アフィニティ精製ポリク
ローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗原結合フラグメント、たとえばF(
ab’)2およびFabタンパク質分解フラグメントなどを含む。遺伝子組み換えした
手付かずの抗体またはフラグメント、たとえばキメラ抗体、Fvフラグメント、1
本鎖抗体などや、合成抗原結合ペプチドおよびポリペプチドも含まれる。非ヒト
抗体は、非ヒトCDRsをヒト枠組みおよび定常領域に接合することにより、または
非ヒト可変ドメイン全体を組み込む(随意に、露出残基の置換によりヒト様表面
で非ヒト可変ドメインを「覆い」、「化粧張りした」(veneered)抗体とする)
ことにより、ヒト化することができる。
【0223】 場合によっては、ヒト化した抗体はヒト可変領域枠組みドメイン内に非ヒト残
基を保持し、固有の結合特性を強めることもある。ヒト化する抗体を通じて、生
物学的半減期が長くなり、また投与時にヒトに対する免疫反応の弊害が緩和され
よう。さらに、WIPO公告WO 98/24839で開示されているように、ヒト抗体は遺伝
子組み換えによりヒト免疫グロブリン遺伝子をもたせたヒト以外のトランスジェ
ニック動物で産生させることもできる。これらの動物の内在免疫グロブリン遺伝
子は相同組み換えなどにより不活性化または除去するのが好ましい。
【0224】 抗体は(1)閾値の結合親和力を示し、かつ(2)関連ポリペプチド分子とあまり交
差反応しないという条件を満たす場合に、特異的に結合すると考えられる。閾値
の結合親和力を示すと判定されるのは、抗zsig58抗体がzsig58ポリペプチド、ペ
プチドまたはエピトープに対し、対照(非zsig58)ポリペプチドに対する結合親
和力の少なくとも10倍大きな親和力で結合する場合である。抗体が示す結合親和
力(Ka)は106M-1以上、好ましくは107M-1以上、もっと好ましくは108M-1以上、
最も好ましくは109M-1以上であるのが望ましい。当業者は抗体の結合親和力を、
たとえばスキャッチャード解析法(Scatchard, G., Ann. NY Acad. Sci. 51:660
-672, 1949)により容易に求めることができる。
【0225】 抗zsig58抗体が関連ポリペプチド分子とあまり交差反応しないかどうかは、た
とえば標準ウェスタンプロット法を用いる既知の関連ポリペプチドではなくzsig
58ポリペプチドを検出する抗体により示される(Ausubel et al., ibid.)。既
知の関連ポリペプチドの例は先行技術で開示されているもの、たとえば既知オル
トログ(例:PIR#17363 (配列番号:3));パラログ(例:TIGR (配列番号:4))
および類似の既知タンパク質族メンバーなどである。非ヒトzsig58、およびzsig
58ミュータントポリペプチドを使用してスクリーニングを行うこともできる。さ
らに、抗体を既知の関連ポリペプチドに「照らしてスクリーニング」し、zsig58
ポリペプチドに特異的に結合する集団を単離することもできる。
【0226】 たとえば、zsig58に格上げされた抗体を、不溶性マトリックスに付着した関連
ポリペプチドに吸着させる。その場合、zsig58に特異的な抗体は適当な緩衝条件
下でマトリックスを貫流しよう。スクリーニングによって、既知の、密接に関連
するポリペプチドに対して非交差反応性のポリクローナルおよびモノクローナル
抗体の単離が可能になる(ハーロー/レーン編「抗体:実験マニュアル」(Antib
odies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane eds., Cold Spring Harbor Lab
oratory Press, 1988;米・国立保健研究所・クーリガン編「最新免疫学プロト
コル」(Current Protocols in Immunology, Cooligan et al., eds., National
Institutes of Health, John Wiley and Sons, Inc., 1995))。
【0227】 特異的抗体のスクリーニングと単離は当業界において周知である。ポール編「
基礎免疫学」(Fundamental Immunology, Paul (eds.), Raven Press, 1993);
Getzoff et al., Adv. in Immunol. 43:1-98, 1988;ゴーディング編「モノクロ
ーナル抗体:原理と実務」(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice
, Goding, N.W. (eds.), Academic Press Ltd., 1996);Benjamin et al., Ann
. Rev. Immunol. 2: 67-101, 1984を参照。
【0228】 ここでの有用抗体を産生または選別するための代替技法としてはzsig58タンパ
ク質またはペプチドに対するリンパ球のin vitro接触、およびファージまたは類
似ベクターに作り込んだ抗体ディスプレーライブラリーの(たとえば、固定化ま
たは標識付けzsig58タンパク質またはペプチドの使用による)選別などがある。
zsig58ポリペプチド結合ドメインをもつ可能性のあるポリペプチドをコードする
遺伝子はファージ上に並べた(ファージディスプレー)、またはE. coliなどの
ようなバクテリア上に並べたランダムペプチドライブラリーのスクリーニングに
よって得ることができる。
【0229】 この種のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は多様な方法により、た
とえばランダム突然変異誘発法およびランダムポリヌクレオチド合成法などによ
り、得ることができる。これらのランダムペプチドディスプレーライブラリーは
、既知ターゲットと相互作用するペプチドのスクリーニングに使用することがで
きる。この既知ターゲットは、リガンドまたは受容体などのようなタンパク質す
なわちポリペプチド、生体または合成高分子、または有機または無機物質であり
うる。
【0230】 かかるランダムペプチドディスプレーライブラリーを作成しスクリーニングす
るための手法は当業界において周知であり(Lander et al., US Patent No. 5,2
23,409; Lander et al., US Patent No. 4,946,778; Lander et al., US Patent
No. 5,403,484; Lander et al., US Patent No. 5,571,698)、かかるライブラ
リーをスクリーニングするためのランダムペプチドディスプレーライブラリーお
よびキットは、たとえばクロンテック社(Clontech, Palo Alto, CA)、インビ
トロゲン社(Invtrogen Inc., San Diego, CA)、ニューイングランド・バイオ
ラブズ社(New England Biolabs, Inc., Beverly, MA)およびファーマシアLKB
バイオテクノロジー社(Pharmacia LKB Biotechnology Inc., Pscataway, NJ)
から市販されている。
【0231】 ランダムペプチドディスプレーライブラリーは、zsig58に結合するタンパク質
を特定するために、本書で開示したzsig58配列を使用してスクリーニングするこ
とができる。zsig58ポリペプチドと相互作用するこれらの「結合性タンパク質」
は細胞の標識付けやアフィニティ精製による相同ポリペプチドの単離に使用する
ことができるし、また薬剤、毒素、放射性核種などに直接または間接に接合する
ことができる。
【0232】 これらの結合性タンパク質はまた、発現ライブラリーのスクリーニングや活性
の中和などを目的とした分析法にも使用できる。さらに、ポリペプチドの循環濃
度の測定、潜在的な病理または病気の指標としての可溶性ポリペプチドの検出ま
たは定量を目的とした診断的検定法にも使用できる。これらの結合性タンパク質
はまたzsig58の結合、zsig58仲介細胞間相互作用、およびin vitoおよびin vivo
シグナル変換を遮断するzsig58「アンタゴニスト」として作用することもできる
【0233】 zsig58タンパク質またはポリペプチドに特異的に結合する抗体の検出には、当
業界において周知の様々な検定法を利用することができる。模範的な検定法につ
いてはハーロー/レーン編「抗体:実験マニュアル」(Antibodies: A Laborator
y Manual, Harlow and Lane (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1
988に詳しい解説がある。そうした検定法の代表例は並行免疫電気泳動法、放射
免疫測定法、放射免疫沈殿法、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ドットブロット
またはウェスタンブロット法、阻害または競合法、サンドイッチ法などである。
さらに、野生型対変異型zsig58タンパク質またはポリペプチドへの結合に応じて
抗体をスクリーニングすることもできる。
【0234】 zsig58に対する抗体は、zsig58を発現する細胞の標識付け、アフィニティ精製
によるzsig58の単離、zsig58ポリペプチドの循環濃度を測定するための診断的検
定、潜在的病理または病気の指標としての可溶性zsig58の検出または定量、FACS
を採用する分析方法、発現ライブラリーのスクリーニング、抗イディオタイプ抗
体の産生などに、また中和抗体として、またはzsig58のin vitroおよびin vivo
活性を遮断するためのアンタゴニストとして、使用できよう。
【0235】 適当な直接標識またはラベルは放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍
光マーカー、化学発光マーカー、磁粉などである。間接標識またはラベルではビ
オチン−アビジンまたは他の補体/抗補体ペアが媒介として使用されよう。ここ
でいう抗体はまた、薬剤、毒素、放射性核種などに直接または間接に接合し、そ
れらの接合体in vivo診断または治療用途に使用することもできる。さらに、zsi
g58またはその断片に対する抗体をin vitroで使用して、種々の検定法、たとえ
ばウェスタンブロット法や当業界において周知の他の方法で変性zsig58またはそ
の断片を検出することもできる。
【0236】 ここでいう抗体、結合性タンパク質またはポリペプチドは薬剤、毒素、放射性
核種などに直接または間接に接合し、それらの接合体in vivo診断または治療用
途に使用することもできる。たとえば、本発明のポリペプチドまたは抗体は、対
応する抗補体分子(それぞれ、受容体または抗原など)を発現する組織または器
官の特定や治療に使用できる。特に、zsig58ポリペプチドまたは抗zsig58抗体、
あるいはそれらの生体活性断片または部分は検出可能な、または細胞障害性の分
子に結合させ、抗補体分子分子を発現する細胞、組織または器官をもつ哺乳動物
に送達することができる。
【0237】 適当な検出可能分子はポリペプチドまたは抗体に直接または間接に付着させる
ことができ、また放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光マーカー、化
学発光マーカー磁粉などを含もう。適当な細胞障害性分子はポリペプチドまたは
抗体に直接または間接に付着させることができ、また細菌または植物毒素(たと
えば、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素、リシン、アブリンなど)、さらに
は治療用放射性核種、たとえばヨウ素131、レニウム188、イットリウム99などを
含もう(これらはポリペプチドまたは抗体に直接付着させるか、またはたとえば
キレート構造部分を介して間接的に付着させる)。
【0238】 ポリペプチドまたは抗体はまた細胞障害性薬剤、たとえばアドリアマイシンに
接合することもできる。検出可能または細胞障害性分子を間接的に付着させる場
合、検出可能または細胞障害性分子は多数の補体/抗補体ペアの一方に接合する
ことができる。その場合には、ペアの他方はポリペプチドまた抗体部分結合させ
る。これらの目的のためには、ビオチン/ストレプタビジンが補体/抗補体ペア
の見本となる。
【0239】 別の態様では、ポリペプチド−毒素融合タンパク質または抗体−毒素融合タン
パク質を(たとえば、がん細胞または組織の治療を目的とした)標的化細胞また
は組織の阻害または除去に使用することができる。あるいは、ポリペプチドが多
機能ドメイン(すなわち活性化ドメインまたはリガンド結合ドメイン、それに加
えて標的化ドメイン)をもつ場合、検出可能分子、細胞障害性分子、または補体
分子を目的の細胞または組織に送達するには標的化ドメインだけを含む融合タン
パク質が適するだろう。ドメインオンリーの融合タンパク質が相補体分子を含む
場合には、抗相補体分子を検出可能または細胞障害性分子に接合することができ
る。かかるドメイン−相補体分子融合タンパク質はこうして、包括的な抗相補体
−検出可能/細胞障害性分子接合体の細胞/組織特異的送達のための包括的な標
的化手段となる。
【0240】 別の態様では、zsig58ポリペプチドまたは抗zsig58抗体がたとえば高増殖性の
血液または骨髄細胞を標的にする場合にzsig58−サイトカイン融合タンパク質ま
たは抗体−サイトカイン融合タンパク質を使用して、標的化組織(たとえば卵巣
および膵臓がん)のin vivoキリングを強化することができる(一般に、Hornick
et al., Blood 89:4437-47, 1997を参照)。融合タンパク質は所望作用部位へ
のサイトカインの標的化を、したがってサイトカイン局部濃度の上昇を可能にす
るとされている。
【0241】 適当なzsig58ポリペプチドまたは抗zsig58抗体は望ましくない細胞または組織
(すなわち、腫瘍または白血病)を標的にし、また融合体中のサイトカインは効
果細胞によるターゲット細胞の溶解を促進する。この目的のための適当なサイト
カインは、たとえばインターロイキン2および顆粒球マクロファージコロニー刺
激因子(GM- CSF)などである。
【0242】 さらに別の実施態様では、zsig58ポリペプチドまたは抗zsig58抗体が血管細胞
または組織を標的にする場合に、かかるポリペプチドまたは抗体に放射性核種を
、特にβ放出体を接合することにより、再狭窄を抑えることができる。そのよう
な治療法は放射線療法を実施する臨床医にとっては危険が少なくなる。たとえば
、イリジウム192含浸リボンをステント処置した患者血管内に、必要な線量が照
射されるまで留置すると、プラセボリボンを留置した対照群と比較して、血管内
の組織成長の鈍化と管腔径の拡大が見られた。さらに、治療群では血行再開後お
よびステント血栓症が著しく減った。本書で述べたような放射性核種を接合した
生体活性接合体の標的化でも類似の結果が予測される。
【0243】 本書で述べた生体活性ポリペプチドまたは抗体接合体は静脈内、動脈内、また
は腺管内的に送達することができるし、また所期の作用部位に局部的に導入して
もよい。 本発明の分子は、zsig58の相互作用または結合の対象となる受容体の特定およ
び単離に使用することができる。たとえば、本発明の分子は、それにzsig58が相
互作用するか又は結合する受容体の同定又は単離のために使用することができる
。例えば、本発明のタンパク質又はペプチドは、カラムに固定化し、そしてカラ
ム上で膜調製を行うことができる。「固定化アフィニティーリガンド技術」(Imm
obilized Affinity Ligand Techniques, Hermanson et al., eds., Academic Pr
ess, Sandiego, CA, 1992, pp.152-202))。
【0244】 タンパク質とペプチドは放射標識することが(ドイッチャー編「酵素学の方法
」vol.182所収『タンパク質精製ガイド』(Methods in Enzymol., vol.182, “Gu
ide to Protein Purification”, M. Deutscher, ed., Acad. Press, San Diego
, 1990, 721-37))または光親和性標識することができるし(Brunner et al., A
nn. Rev. Biochem. 62:483-514, 1993;Fedan et al., Biochem. Pharmacol. 33
:1167-80, 1984)、特異的細胞表面タンパク質を特定することもできる。
【0245】 本発明のポリペプチド、核酸および/または抗体は性腺発育、妊娠、思春期の
変化、閉経、卵巣がん、受精、卵巣機能、多嚢胞性卵巣症候群、膵臓、糖尿病、
眼病、下垂体機能、骨粗鬆症、およびその他の骨病に関連する疾患の治療に使用
することができる。本発明の分子は膵臓や卵巣などのような多様な組織の病状の
進行を調節し、治療し、あるいは予防するために使用することができる。特に、
ある種の症候群または病気はこうした診断、治療または予防になじむであろう。
さらに、本発明の分子により排卵などのような生理機能を抑制または調節して避
妊に役立てることもできる。
【0246】 本発明のポリペプチド、核酸および/または抗体は糖尿病関連の疾患の治療に
使用できよう。本発明の分子は眼の血管再生、糖尿病性足潰瘍などのような血行
不良関連の合併症、脳卒中、および血管形成が有効であるその他の徴候にも有効
であろう。 zsig58ポリペプチドは膵臓で発現する。したがって、本発明のzsig58ポリペプ
チド製剤組成物は膵臓の神経内分泌および外分泌細胞の拡大の調節異常に関連す
る膵疾患、たとえばIDDM、膵がん、血中グルコース濃度の調節異常、インスリン
抵抗性、または消化機能障害などの予防または治療に有効であろう。
【0247】 本発明のzsig58ポリペプチドは神経内分泌/外分泌細胞の運命決定経路で作用
するであろうから、膵臓の神経内分泌および外分泌細胞の拡大を調節することが
できる。そうした調節用途の1つは膵島再生に関連する。また、IDDMの引き金と
なる自己免疫は子宮内で始まるものと仮定されているが、zsig58ポリペプチドは
細胞分割にかかわる発現遺伝子である。外分泌/神経内分泌細胞の系譜決定をモ
ニターするための、膵細胞均衡を観測するための、また前述の疾患の予防または
治療面でzsig58ポリペプチド、フラグメント、融合タンパク質、抗体、アゴニス
トまたはアンタゴニストを評価するための種々の検定法や動物モデルは当業界に
おいて周知である。
【0248】 また、zsig58ポリペプチドは卵巣でも発現するため、膵臓機能とは独立の、以
下に述べるような追加の生体活性をもつであろう。 卵形成は、二倍体幹細胞が多数の分化段階を経て、独特の機能をもつ卵母細胞
という最終分化細胞を形成するに至る過程である。青春期に始まり生涯継続する
男子の精子形成と異なり、卵形成は運命を決定する発生期に始まるし、また女子
の一次卵母細胞の全供給量は生まれつき原子卵胞に貯えられ、成熟と放出に備え
る。
【0249】 成人の卵巣では、卵胞形成は原子卵法胞が発育段階に入るときに始まる。初期
の発育卵胞は劇的な細胞増殖・分化過程をたどる。黄体形成ホルモン(LH)と卵
胞刺激ホルモン(FSH)による卵巣機能の古典的調節は今日では、卵胞細胞の細
胞間相互作用を促進する働きをする多様な分子の作用を包摂すると考えられてい
る。参考として、Gougeon, A., Endocrine Rev. 17:121-155, 1996を参照。した
がって、卵胞形成と支配的卵胞選択を調節する機構はなお研究途上にある。zsig
58は卵巣でも発現するため、卵胞細胞の増殖と分化に影響を及ぼすことにより卵
胞形成と支配的卵胞選択の調節に一役買い、細胞間相互作用に影響を及ぼし、こ
の過程にかかわるホルモン類を調節するなどしている可能性がある。
【0250】 哺乳動物の卵巣周期は卵胞の発育と成熟、それに続く排卵と卵胞の黄体への転
換が含まれる。卵巣周期における生理的事象は視床下部−下垂体−卵巣軸内のゴ
ナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、LH、FSHなどを含むホルモンと細胞の間の
相互作用に依存する。さらに、卵胞で合成されるエストラジオールは視床下部−
下垂体軸を準備し、また卵母細胞の減数分裂の再開を刺激し排卵とその後の卵母
細胞の卵胞からの押し出し誘発する周期半ばのゴナドトロピンの急増を招くうえ
で必要とされる。このゴナドトロピンの急増はまた、エストラジオール分泌から
プロゲステロン分泌への卵胞細胞の分化を促進する。
【0251】 黄体から分泌されるプロゲステロンは、受精卵母細胞の着床に必要な子宮の発
育に必要とされる。卵巣周期および生殖カスケードにおける視床下部−下垂体−
性腺ホルモン類の中心的な役割、および性ステロイドの、ターゲット組織および
器官たとえば子宮、乳房、脂肪組織、骨、肝臓などでの役割からして、それらの
活性を調節する物質が治療用途に好ましいものとなってきた。そうした用途には
、性的早熟、子宮内膜症、子宮平滑筋種、多毛、不妊、月経前症候群(PMS)、
無月経などの治療、および避妊薬などが含まれる。
【0252】 この種のホルモンの作用を調節するzsig58ポリペプチド、アゴニストおよびア
ンタゴニストは治療上有効でありうる。かかる分子はまたin vitro、in vivo両
方のステロイド形成の調節、および卵巣周期の諸相、たとえば卵母細胞の成熟、
卵巣細胞間の相互作用、卵胞の発育および破裂、黄体機能、および受精卵の子宮
内着床促進などを調節するうえでも有効でありうる。
【0253】 ホルモン作用を調節する分子は思春期の前または始まりに使用するための治療
薬として有効でありうる。たとえば、女子の思春期はホルモンレベルとホルモン
生産を調節するためのフィードバックループの確立をもって指標とする。ホルモ
ン不均衡に由来する種々の異常が観察されており、思春期の変化が女子において
8歳前に訪れる性的早熟もその1つである。この場合、ホルモン調節分子の使用に
よりホルモンの分泌を抑え、思春期の始まりを遅らせることができる。
【0254】 ゴナドトロピンおよびステロイドホルモンのレベルと比率からは種々の病気に
関連するホルモン不均衡の存在を評価し、また治療薬投与後に正常なホルモン均
衡が回復されたかどうかを判定することができる。たとえば血清中のエストラジ
オール、プロゲステロン、LH、FSHなどの測定法は当業界において周知である。
そうした測定法によって、zsig58のin vivo投与後の、またはzsig58遺伝子を発
現させるかマウスオルトログを除去するかしたトランスジェニックマウスモデル
の、ホルモンレベルをモニターすることができる。
【0255】 したがってホルモン調節分子としてのzsig58ポリペプチドは、たとえば閉経期
不正出血(breakthrough menopausal bleeding)の治療、妊娠支援治療計画の一
環、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、PMSおよび更年期に関連する症状の治療など
の用途が可能である。さらに、たとえばPCOSなどに対するzsig58ポリペプチドの
効果を検定するための他のin vivoマウスモデルも当業界において周知である。
【0256】 本発明のタンパク質はまた、ヒトまたは動物の介助生殖に際して受精の確率を
高めるための用途にも使用できる。かかる介助生殖法は当業界において周知であ
り、人工授精、体外受精、胚移植、配偶子卵管内移植などはその一例である。こ
うした方法は自然妊娠を妨げるような生理的異常または代謝異常を抱えている可
能性のある患者の支援に有用である。こうした方法は動物、たとえば家畜、競馬
馬、ペット、野生動物などの繁殖計画にも使用されるし、またトランスジェニッ
ク動物を誕生させる方法として使用することも可能である。
【0257】 zsig58ポリペプチドは排卵誘発に、単独で、またはゴナドトロピン、またはク
エン酸クロミフェンまたはブロモクリプチンなどのような薬剤の投与と組み合わ
せて使用することができよう(スペロフらの共著「排卵誘発、臨床産婦人科内分
泌学および不妊症」第5版(Speroff et al., Induction of Ovulation, Clinical
Gynecologic Endocrinology and Infertility, 5th ed., Baltimore, Williams
& Wilkins, 1994))。
【0258】 したがって、本発明のタンパク質は受容者に対し受精前に、または体外または
体内受精前に精子、卵または卵−精子混合物と混ぜて投与することができる。か
かるタンパク質はまた冷凍保存前の卵母細胞と混ぜて、介助生殖への使用に備え
て保存される卵母細胞の生存能力を高めるようにすることもできる。
【0259】 本発明のzsig58ポリペプチド、アゴニストおよびアンタゴニストは生殖障害治
療のために、直接または療法に組み込んで使用することができる。黄体期欠損症
などのような疾患にはこうした療法が有効であろう(ソウルズ「黄体期欠損症:
微妙な排卵異常」、キー編「不妊症:評価と治療」所収(Soules, “Luteal phas
e deficiency: A subtle abnormality of ovulation” in, Infertility: Evalu
ation and Treatment, Keye et al., eds., Philadelphia, WB Saunders, 1995)
)。
【0260】 さらに、ゴナドトロピン放出ホルモンの投与は生殖行動を刺激することが証明
されている(Riskin and Moss, Res. Bull. 11:481-5, 1983; Kader et al., Ph
ysiol. Behav. 51:601-5, 1992; Silver et al., J. Neroendocrin. 4:207-10,
199; King and Miller, Cell Mol. Neurobiol. 15:5-23, 1995)。ヒトの性的機
能不全やインポテンスが多くなっているため、ゴナドトロピン活性を調節または
強化するするようなzsig58などの分子はこれらの症状の治療に用途を見出すこと
ができる。
【0261】 本発明のzsig58ポリペプチドはたとえば顆粒膜細胞をエストラジオール産生細
胞からプロゲステロン産生細胞へと転換する黄体形成剤として作用するため、卵
巣細胞の増殖、成熟および分化を調べるのに使用することができる。本発明のか
かる方法は一般に、顆粒膜細胞、卵胞細胞、卵母細胞、またはそれらの組み合わ
せをzsig58ポリペプチド、そのモノクローナル抗体、アゴニストまたはアンタゴ
ニストの存在下/不在下で培養すること、および細胞の増殖、成熟、分化を観測
することより成る。たとえば、Basini et al., J. Rep. Immunol. 37:139-53, 1
998; Duleba et al., Fert. Ster. 69:335-40, 1998; Campbell, B.K. et al.,
J. Reprod. and Fert. 112: 69-77, 1998を参照。
【0262】 本発明の分子は本書で述べるような規定培地の成分として有用であり、また細
胞培養で一般使用されている血清の代わりに、単独でか他のサイトカインおよび
ホルモンと組み合わせて使用することができる。本発明の分子は特に、培養卵巣
細胞の増殖、発育、分化、および/または成熟を特異的に促進するうえで有用で
あり、また卵巣周期、生殖機能、卵巣細胞間相互作用、および受精の検査にも有
用であろう。
【0263】 さらに、本発明はまたステロイド形成およびステロイド分泌を試験する方法を
提供する。かかる方法は一般に、卵巣細胞をzsig58ポリペプチド、そのモノクロ
ーナル抗体、アゴニストまたはアンタゴニストから成る培地でゴナドトロピンお
よび/またはステロイドホルモンの存在下および不在下で培養すること、その後
にタンパク質およびステロイド分泌を観測することより成る。
【0264】 ゴナドトロピンホルモンの具体例は黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンなど
である(Rouillier et al., Mol. Reprod. Dev. 50:170-7, 1989)。ステロイド
ホルモンの具体例はエストラジオール、アンドロステンジオン、プロゲステロン
などである。ステロイド形成またはステロイド分泌に対するzsig58の効果は当業
界において周知の方法、たとえば(エストラジオール、アンドロステンジオン、
プロゲステロンなどの濃度を測定するための)放射免疫測定法、および免疫放射
定量測定法(IRMA)などで測定することができる。
【0265】 zsig58ポリペプチドなどのような卵巣で発現する分子であってホルモン、ホル
モン受容体、増殖因子、細胞間相互作用または生殖カスケードを調節するか、あ
るいは卵母細胞または卵巣の発育にかかわるものは、生殖器官がんのマーカーと
して、またホルモン依存性がんの治療薬として腫瘍細胞のホルモン依存性増殖お
よび/または発育を阻害するのに有効であろう。生殖器官がんの中で罹患率が最
も高いのは卵巣がんであり、その症例数はこの10年で30%も増加した。
【0266】 さらに、生殖カスケードにかかわるステロイドホルモンの受容体はヒト腫瘍お
よび腫瘍細胞株(乳、前立腺、子宮内膜、卵巣、腎臓および膵臓腫瘍)に見つか
っている(Kakar et al., Mol. Cell. Endocrnol. 106:145-49, 1994; Kakar an
d Jennes, Cancer Letts. 98:57-62,1995)。こうして、zsig58の卵巣での発現
は本発明のポリペプチドが卵巣がんの検知とモニタリングのための診断法に有効
であることを示唆する。
【0267】 本発明の診断法は、生殖機能検査または卵巣がん検診を受ける患者の血清また
は組織生検標本からのzsig58ポリペプチドの検出を含む。かかるポリペプチドは
、ポリペプチドエピトープを識別することができる本書で述べた免疫測定法およ
び抗体を用いれば検出可能である。特に、本発明は次のステップから成るzsig58
ポリペプチド検出法を見込む:
【0268】 zsig58ポリペプチドを潜在的に含む検体を固形担体に付着させた抗体と接触さ
せ、前記抗体がzsig58ポリペプチドの第1エピトープと結合するようにすること
; 固定化された抗体−ポリペプチドを洗浄し、未結合の汚染物質を除去すること
; 固定化された抗体−ポリペプチドを、zsig58ポリペプチドの第2エピトープに
割り当てられた第2抗体と接触させ、第2抗体に検出可能な標識を付けるようにす
ること; 検出可能な標識を検出すること。血清、汗、唾液、生検標本などのような検体
のzsig58ポリペプチド濃度の変化は正常対照との比較により、生殖機能または卵
巣がんまたは疾患の指標としてモニターすることができる。
【0269】 たとえば本書で開示したヌクレオチド配列に由来するプローブまたはプライマ
ーを使用する別の方法によっても、患者の検体、たとえば血液、唾液、汗、組織
標本などでのzsig58の発現を検出することが可能である。たとえば、プローブを
腫瘍組織にハイブリダイズし、ハイブリダイズした複合体をin situハイブリダ
イゼーションによって検出することが可能である。
【0270】 zsig58配列は、サンプルmRNAの逆翻訳により生成されたcDNAを鋳型として使用
するPCR増幅法によっても検出可能である(ディーフェンバックおよびドベクス
ラー編「PCRプライマー:実験マニュアル」(PCR Primer A Laboratory Manual,
Dieffenbach and Dveksler, eds., Cold Spring Harbor Press, 1995 ))。正常
対照との比較で患者検体中のzsig58発現の増減をモニターし、疾患の指標または
診断材料とすることができる。
【0271】 zsig58ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、zsig58活性の向上また
は阻害が望ましいような遺伝子治療用途に有用である。哺乳動物がzsig58遺伝子
を変異させているか欠失している場合、zsig58遺伝子をその哺乳動物に導入する
ことができる。一態様では、zsig58ポリペプチドをコードする遺伝子をウィルス
ベクターにin vivo導入する。かかるベクターは、単純ヘルペスウィルス(HSV)
、乳頭腫ウィルス、EBウィルス(EBV)、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス
を含むがそれだけに限らない弱毒化または欠損DNAウィルスなどである。ウィル
ス遺伝子を完全に、またはほぼ完全に欠く欠損ウィルスが好ましい。こうした欠
損ウィルスは細胞への導入後、感染力をもたない。
【0272】 欠損ウィルスベクターを使用すると、特定局所内の細胞への導入が可能になり
、ウィルスが生産され感染により他細胞にベクターが移動するという心配もない
。かかるベクターの具体例には、欠損単純ヘルペス1ウィルス(HSV1)ベクター
(Kaplitt et al., Molc. Cell. Neurosci. 2:320-30, 1991)、Stratford-Perr
icaudet et al., J. Cli. Inves. 90:626-30, 1992で述べられているような弱毒
化アデノウィルスベクター、および欠損アデノ随伴ウィルスベクター(Samulski
et al., J. Virol. 61:3096-101, 1987; Samluski et al., J. Virol. 63:3822
-8, 1989)などがあるが、それだけに限らない。
【0273】 別の態様では、zsig58遺伝子をレトロウィルスベクターに導入することが可能
である。Anderson et al., US Patent No. 5,399,346; Mann et al., Cell 33:1
53, 1983; Temin et al., US Patent No. 4,650,764; Temin et al., US Patent
No. 4,980,289; Markowitz et al., J. Virol. 62: 1120, 1988; Temin et al.
, US Patent No. 5,124,263; Dougherty et al.が1995年3月に公開した国際特許
公開No. WO 95/07358; Kuo et al., Blood 82:845, 1993を参照。あるいは、リ
ポソームを使用してin vivoリポフェクションによりベクターを導入することも
可能である。
【0274】 マーカーをコードする遺伝子のin vivoリポフェクションに使用するリポソー
ムの調製には合成カチオン性脂質を使用することができる(Felgner et al., Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7, 1987; Mackey et al., Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA 85:8027-31, 1988)。リポフェクションにより外部遺伝子を特定器
官にin vivo導入する方法にはある種の実際的な利点がある。
【0275】 特定細胞へのリポソームの分子標的化はそうした利点が得られる分野の1つで
ある。たとえば、トランスフェクションの対象を特定細胞型に絞る方法は膵臓、
卵巣、肝臓、腎臓、脳などのような細胞異質性組織では特に有利である。標的化
目的のためには脂質を他分子と化学結合させることになろう。標的となるペプチ
ド(ホルモンまたは神経伝達物質など)、タンパク質(抗体など)、または非ペ
プチド分子をリポソームに化学結合させることができる。
【0276】 標的細胞を生体から取り出し、ベクターを裸のDNAプラスミドとして導入し、
次いで形質転換細胞を生体に戻すことが可能である。遺伝子治療用の裸のDNAベ
クターは周知技術の方法、たとえばトランスフェクション、エレクトロポレーシ
ョン、マイクロインジェクション、トランスダクション、細胞融合、DEAEデキス
トラン法、リン酸カルシウム共沈殿法、遺伝子ガンの使用、またはDNAベクター
トランスポーターの使用などにより所望の宿主細胞に導入することができる。Wu
et al., J. Biol. Che. 267:963-7, 1992; Wu et al., J. Biol. Chem. 263:14
621-4, 1988などを参照。
【0277】 zsig58遺伝子の転写を阻害する、たとえば細胞のin vivo増殖を阻害するには
アンチセンス法を使用することができる。zsig58をコードするポリヌクレオチド
(配列番号:1のポリヌクレオチドなど)の断片に対して相補的であるポリヌクレ
オチドが、zsig58をコードするmRNAに結合しmRNAの翻訳を阻害するように設計さ
れる。こうしてできたアンチセンスポリヌクレオチドを使用してzsig58ポリペプ
チドをコードする遺伝子の細胞培養での、または生体内での発現を阻害する。
【0278】 本発明は診断分野での用途が見込まれる試薬を提供する。たとえば、zsig58遺
伝子、zsig58 DNAまたはRNAもしくはその部分配列を具備するプローブを使用し
て、zsig58遺伝子が第11染色体上に存在するかどうか、または突然変異が起きて
いるかどうかを調べることができる。zsig58は11番染色体の11p15.4-p15.3領域
に位置する(実施例3を参照)。
【0279】 zsig58遺伝子座における検出可能な遺伝子異常には異数性、遺伝子コピー数変
異、挿入、欠失、制限酵素認識部位変異、転位があるが、それだけに限らない。
こうした異常は本発明のポリヌクレオチドを使用して、分子遺伝学的手法、たと
えば制限酵素断片長多型(RELP)解析法、PCR法を使用する短縦列反復(STR)解
析法、および当業界において周知のその他の遺伝子連鎖解析法により検出するこ
とができる(Sambrook et al.前掲; Ausubel et al.前掲; Marian, Chest 108:2
55-65, 1995)。
【0280】 遺伝子位置に関する正確な知見は数多くの目的に役立ちうる。たとえば、(1)
ある配列が既存コンティグの一部をなすかどうかを判定し、またYACs、BACsまた
はcDNAクローンなどのような様々な形態の追加周辺遺伝子配列を獲得すること、
(2)同一染色体領域との連鎖を示す遺伝病の有力候補遺伝子を提供すること、お
よび(3)特定遺伝子がどのような役割を果たすかを見極めるのに役立つマウスな
どのようなモデル生物の相互参照、などである。
【0281】 zsig58遺伝子は11番染色体の11p15.4-p15.3に位置する。この領域には、役割
がわかっているいくつかの遺伝子が位置する。副甲状腺ホルモンは11p15.3-p15.
1に位置し、血中カルシウムバランスの調節に関係している。たとえばPhillips
et al., Am. J. Hum. Genet. 59:613-619, 1996を参照。カルシトニン/カルシ
トニン関連ペプチドαおよびβ、すなわち血中カルシウム濃度を下げる働きをす
るペプチドホルモンは染色体11p15.2-p15.1に位置する。たとえばHoovers et al
., Genomics 15:525-9, 1993を参照。膵細胞に見られ、インスリンの分泌促進に
関連するスルホニル尿素受容体は染色体11p15.1に位置する。たとえばThomas et
al., Science 268:426-9, 1995を参照。
【0282】 心筋、膵臓β細胞、脳および筋肉に見られ、グルコース誘発インスリン分泌の
重要な調節機構である内向き整流カリウムチャンネルは染色体11p15.1に位置す
る。たとえば、Inagaki et al., Neuron 16:1011-17, 1996を参照。乳がん腫瘍
感受性遺伝子は11p15.2-p15.1に位置する。たとえばLi et al., Cell 88:143-54
, 1997を参照。心筋形成の正制御物質である心臓LIMタンパク質は染色体11p15.1
に位置する。たとえばFung et al., Genomics 28:602-3, 1995を参照。これらは
いずれもzsig58遺伝子と同じ染色体領域との連鎖を示す遺伝病の有力候補遺伝子
である。
【0283】 zsig58遺伝子を発現するよう遺伝子を改変したマウス(いわゆるトランスジェ
ニックマウス)とzsig58遺伝子機能が完全に欠如したマウス(いわゆるノックア
ウトマウス)もまた生成されよう(Snouwaert et al., Science 257:1083, 1992
; Lowell et al., Nature 366:740-42, 1993; Capecchi, M.R., Science 244:12
88-1292, 1989; Palmiter, R.D. et al., Annu. Rev. Genet. 20:465-499, 1986
)。たとえば、zsig58を偏在的に、もしくは組織特異的または組織限定的プロモ
ーターの下で過剰発現するトランスジェニックマウスは、過剰発現が表現型を引
き起こすかどうかを見るのに使用できる。
【0284】 たとえば、野生型zsig58ポリペプチド、そのポリペプチド断片または突然変異
体の過剰発現は正常な細胞過程を変化させ、その結果としてzsig58の発現が機能
的に関連するような組織を識別する表現型を生み出し、またzsig58、そのアゴニ
ストまたはアンタゴニストの治療上のターゲットを指示する可能性がある。たと
えば、改変するのに好ましいトランスジェニックマウスは、zsig58成熟ポリペプ
チド(ほぼ配列番号:2の残基26(Thr)〜残基402(Lys))を過剰発現するようなト
ランスジェニックマウスである。さらに、かかる過剰発現は、ヒトの病気との類
似性を示す表現型をもたらす可能性がある。同様に、ノックアウトzsig58マウス
は、zsig58がin vivoで絶対的に必要とされるかどうかを見るのに使用できる。
【0285】 ノックアウトマウスの表現型は、本書で述べたようなzsig58アンタゴニストが
及ぼす可能性のあるin vivo効果を予言してくれる。ヒトzsig58 cDNAは、後でノ
ックアウトマウスの生成に使用されるマウスzsig58 mRNA、cDNAおよびゲノムDNA
の単離に使用することができる。これらのマウスはzsig58遺伝子およびそれによ
ってコードされるタンパク質のin vivo系での研究に使用可能であり、また対応
するヒトの病気に関するin vivoモデルとしても使用可能である。さらに、本書
で述べたようなzsig58に対抗して向けられるzsig58アンチセンスポリヌクレオチ
ドまたはリボザイムのトランスジェニックマウスによる発現は前述のトランスジ
ェニックマウスと同様に使用することができる。
【0286】 本発明のタンパク質は製薬に使用する場合には、通常の方法による非経口投与
、とくに静脈または皮下投与用に調製する。静脈投与は静脈内ボーラスによるか
、または一般に1ないし数時間の期間にわたる輸液によろう。一般に、製剤はzsi
g58タンパク質に製薬上許容しうる賦形剤、たとえば生理食塩水、緩衝食塩水、5
%デキストロース水溶液などを混ぜたものとなろう。製剤にはさらに、1種以上の
佐剤、保存料、可溶化剤、緩衝剤、ウィルス表面でのタンパク質喪失を防ぐため
のアルブミンなども含まれよう。
【0287】 製剤方法は周知技術であり、たとえばレミントン「製薬学の技術と実務」第19
版、ゲンナロ編(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Gennaro
ed., Mack Publishing Co. Easton, PA, 19th ed., 1995)で説明されている。
用量は一般に、臨床医が一般基準に沿って、病状の性質や重さ、患者の特性など
を勘案しながら決定することになろう。用量と治療継続期間の決定は普通の技術
的熟練の範囲内である。以下、非限定的な実施例により本発明についてさらに説
明する。
【0288】 実施例 実施例1.zsig58の同定 A. 完全長zsig58を獲得するためのEST配列の使用 シグナルトラップをキーワードにして翻訳済み膵臓、肝臓、肺および乳房ライ
ブラリーDNAデータベースを検索し、ある発現配列タグ(EST)配列がヒト分泌シ
グナル配列と相同であると特定された。
【0289】 このEST配列の確認は、EST配列の起源となっているcDNAの配列解析によって行
った。このcDNAはヒト下垂体ライブラリー由来のプラスミドに含まれており、こ
のクローンの完全2本鎖配列を生成するために次のプライマーを使用して配列を
決定た:ZC976 (配列番号:7), ZC6768 (配列番号:8), ZC17601 (配列番号:9), Z
C17602 (配列番号:10), ZC17766 (配列番号:11), ZC17767 (配列番号:12), ZC17
676 (配列番号:13), ZC17677 (配列番号:14), ZC17852 (配列番号:15)およびZC
17854 (配列番号:16)。このプラスミドインサートは2本鎖の解析から完全長であ
ることが判明した。
【0290】 実施例2.組織分布 Human Multiple Tissue Blots(MTNI、MTN IIおよびMTN III)(Clontech社
)を使用してノーザンブロット法による解析を行った。まずEcoRIとXhoI(Boe
hringer社)、それに市販キット(Qiaex IITM;Qiagen社)を用いて精製したゲ
ルを用いて、実施例1で述べた完全長クローンからインサートを切り取り、次い
でランダムプライムラベリングシステムであるRediprimeTM(Amersham社)を用
いてメーカーの仕様書に従って32P-dCTPで放射性同位体標識した。次いでこのプ
ローブをNucTrapTMカラム(Strategene社)を用いてメーカーの仕様書に従って
精製した。
【0291】 ExpressHybTM(Clontech社)液をプレハイブリダイゼーションに、またノーザ
ンブロット法用のハイブリダイジング液としても、用いた。ハイブリダイゼーシ
ョンは標識付けしたプローブ3×106 cpm/mlを用いて55℃で一晩かけて行った。
次いでブロットを2X SSC/1% SDS中で65℃で洗浄し、さらに0.1X SSC/0.1% SDS中
で55℃で洗浄した。転写は約3kbで検出され、卵巣と膵臓で強い信号が見られた
。弱い信号は小腸、心臓、脾臓、結腸、胃、甲状腺、脊髄、リンパ節、気管およ
び副腎で見られた。ブロットで表されたその他の組織には信号が見られなかった
【0292】 Human RNA Master BlotsTM(Clontech社)を用いてドットブロット法も行った
。その方法と条件は前述のMultiple Tissue Blots(多組織ブロット法)の場合
と同じである。強い信号強度は卵巣、膵臓および小腸で見られた。中程度の信号
は心臓、大動脈、結腸、膀胱、子宮、前立腺、胃、脾臓、乳腺、肝臓、虫垂、肺
、胎盤、気管、胎児心臓、胎児腎臓、胎児脾臓、胎児肺など他の多数の組織で見
られた。
【0293】 実施例3.zsig58の染色体上の配置 「スタンフォードG3放射線ハイブリッドマッピングパネル(Stanford G3 Radia
tion Hybrid Mapping Panel)」の市販版(Reserach Genetics社、アラバマ州ハ
ンツビル)を使用してzsig58の11番染色体へのマッピングを行った。「スタンフ
ォードG3 RHマッピングパネル」は全ヒトゲノムの83放射線ハイブリッドクロー
ンのそれぞれからのDNAと2つの対照DNA(RM供与体とA3受容体)を入れてある。
公開WWWサイト(http://shgc-www. stanford.edu)を利用すると、マーカーの染
色体上の定位が可能である。
【0294】 「スタンフォードG3 RHパネル」によりzsig58をマッピングするために、20 μ
lの反応液をPCR適性96ウェルマイクロタイタープレート(Strategene社、カリフ
ォルニア州ラホーヤ)に用意し、RoboCycler Gradient 96サーマルサイクラー(
Strategene社)に入れて使用した。85のPCR反応系のそれぞれは2 μl 10X KlenT
aq PCR反応緩衝液(Clontech Laboratories社、カリフォルニア州パロアルト)
、1.6 μl dNTPsミックス(各2.5 mM、PERKIN-ELMER社、カリフォルニア州フォ
スターシティー)、1 μlセンスプライマーZC18,333(配列番号:17)、1 μlア
ンチセンスプライマーZC18,334(配列番号:18)、2 μl “RediLoad”(Researc
h Genetics社)、0.4 μl 50X Advantage KlenTaq Polymerase Mix(Clontech社
)、個別ハイブリッドクローンまたは対照に由来するDNA 25 ngから成り、ddH2O
を加えて全量を20 μlとした。
【0295】 これらの反応系に等量の鉱油をかぶせてシールした。PCRサイクラー条件は次
のとおりであった:最初の1サイクル−95℃で5分間変性;35サイクル−95℃で1
分間変性、62℃で1分間アニール、72℃で1.5分間伸長;最後の1サイクル−72℃
で7分間伸長。反応系は2%アガロースゲル(Life Technologies社)上での電気泳
動で分離した。
【0296】 その結果は、zsig58が枠組みマーカーSHGC-30914にLODスコア>13で、かつ同
マーカーから10.40 cR#10000の距離で連鎖していることを示した。周辺マーカー
を利用するとzsig58は総合LDB 11番染色体地図上の11p15.4-p15.3に位置づけら
れる(The Generic Location Database, University of Southhampton, WWWサイ
ト:http://cedar.genetics.soton.ac.uk/public#html/)。
【0297】 実施例4.無標識zsig組み換え型アデノウィルスの生成 ヒトzsig58のタンパク質コード領域をPCRにより、5’末端と3’末端にそれぞ
れFseIとAscIの制限酵素認識部位を付加したプライマーを使用して増幅した。
PCRプライマーZC18843(配列番号:19)およびZC18844(配列番号:20)を、完全
長zsig58 cDNA(実施例1)を含む鋳型pBluescriptベクター(Strategene社)と
共に用いPCR反応を次のように起こさせた:1サイクル−95℃ 5分間;15サイクル
−95℃ 1分間、61℃ 1分間、72℃ 1.5分間;次いで72℃ 7分間;次いで4℃ソー
ク。PCR反応生成物をTEA緩衝液に溶かした1.2%(低メルト)SeaPlaque GTGゲル
(FMC社、メイン州ロックランド)上に移した。
【0298】 xsig58 PCR生成物をゲルから切り取り、QIAquickTM PCR Purification Kitゲ
ルクリーンナップキット(Qiagen社)を用いてキットの説明書に従って精製した
。次いでPCR生成物をPmeI-AscIで消化し、フェノール/クロロホルムで抽出し
、EtOHで沈殿させ、20 ml TE(トリス/EDTA、pH 8)で再水和した。1209 bpのz
sig58フラグメントを次いでトランスジェニックベクターpTG12-8(以下の実施例
5を参照)のFseI-AscI部位に連結し、エレクトロポレーション法によりDH10B
コンピテントセルに導入した。
【0299】 zsig58を含むクローンをプラスミドDNAミニプレップにより特定し、続いてFse
I-AscIで消化した。陽性クローンを配列決定に回し、カセット中に欠失や他の
異常がないことを確認した。zsig58 cDNAの配列が確認された。以下に述べる作
業を続けるためのDNA生成にはQiagen Maxi Prepプロトコル(Qiagen社)を用い
た。
【0300】 A. アデノウィルス生成のためのDNAカセットの調製 FseIおよびAscI酵素を用いて1209 bpのzsig cDNAをTG12-8ベクターから切り
離した。このcDNAは1%低メルトSeaPlaqueTMゲル(FMC社、メイン州ロックランド
)上で単離し次いでゲルから切り取り、ゲルスライスを70℃で溶かし、等量のト
リス緩衝フェノールで2回抽出し、EtOHで沈殿させた。このDNAは10 μl H2Oに再
懸濁させた。
【0301】 zsig58 cDNAを変更pAdTrack CMV(He, T-C. et al., PNAS 95:2509-2514, 199
8)のFseI-AscI部位に導入した。このカセットはGFPマーカー遺伝子を含んで
いる。GFPの発現を促すCMVプロモーターはSV40プロモーターに置き換え、またSV
40ポリアデニル酸化シグナルはヒト成長ホルモンポリアデニル酸化シグナルに置
き換えてあった。さらに、天然ポリリンカーはFseI、EcoRVおよびAscI部位に
置き換えてあった。この変更型pAdTrack CMVはpZyTrakと名づけた。連結はFast-
LinkTM DNA連結およびスクリーニングキット(Epocentre Technologies社、ウィ
スコンシン州マディソン)を用いて行った。
【0302】 zsig58を含むクローンはミニプレップDNAのFseI-AscIによる消化によって特
定された。このプラスミドを線状化するために、pZyTrack zsig58プラスミド約5
μgをPmeIで消化した。線状化したプラスミド約1 μgを200 ngのスーパーコイ
ル構造pAdEasy(He et al.,前掲)と共にBJ5183細胞に導入した。この同時導入
にはBio-Rad Gene Pulserを2.5 kV、200オーム、25 mFaで使用した。同時導入し
た細胞を25 μg/mlのカナマイシンを入れた4 LBプレートに塗った。
【0303】 最小コロニーを選び出して、LB/カナマイシン培地で増殖させ、組み換え型ア
デノウィルスDNAを標準DNAミニプレップ法により特定した。組み換え型アデノウ
ィルスをFseI-AscIで消化し、zsig58の存在を確認した。組み換え型アデノウ
ィルスミニプレップDNAをDH10Bコンピテントセルに導入し、またQiagen Maxi Pr
epキットを用いキットの説明書に従ってDNAを調製した。
【0304】 実施例5.ヒトzzsig58トランスジェニックマウス生成用のカセット コンセンサスKozak配列と正確なヒトzsig58コード領域を含むPCRフラグメント
を生成するようにオリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチド
は5’末端にFseI部位を、また3’末端にAscI部位を設けて、われわれの標準ト
ランスジェニックベクターであるpMT12-8に導入しやすくしてある。pMT12-8はマ
ウスMT-1プロモーターと5’ラットインスリンIIイントロンをFseI部位の上流に
含んでいる。
【0305】 PCR反応には200 ng zsig58鋳型(実施例1)とオリゴヌクレオチドZC18843(配
列番号:19)およびZCZC18844(配列番号:20)を用いた。PCR反応の条件は次のと
おりであった:95℃で5分間、その間にAdvantageTM cDNAポリメラーゼ(Clontec
h社)を添加;15サイクル−95℃ 60秒間、61℃ 60秒間、72℃ 90秒間;それに72
℃ 7分間。PCR生成物はアガロースゲル電気泳動で分離しQiaQuickTM(Qiagen社
)ゲル抽出キットで精製した。単離した1209 bpのDNA断片をFseIとAscI(Boer
hinger-Mannheim社)で消化し、エタノールで沈殿させ、あらかじめFseIとAsc
Iで消化しておいたpMT12-8に連結した。
【0306】 このpMT12-8プラスミドは目的の遺伝子をトランスジェニックマウスで発現さ
せることを狙ったものであり、10 kbのMT-1 5’ DNAと7 kbのMT-1 3’ DNAのフ
ランク配列に接する発現カセットを含んでいる。発現カセットはMT-1プロモータ
ー、ラットインスリンIIイントロン、所望のクローンを挿入するためのポリリン
カー、およびヒト成長ホルモンのポリA配列を備えている。
【0307】 約1 μlの連結反応系をエレクトロポレーションによりDH10B ElectroMaxTMコ
ンピテントセル(GIBCO BRL社、メリーランド州ゲーサーズバーグ)に、メーカ
ーの説明書に従って導入し、アンピシリン100 μg/mlを入れたLBプレートに塗り
、一晩培養した。コロニーを選択して、アンピシリン100 μg/mlを入れたLB培地
で増殖させた。 選び出したクローンからミニプレップDNAを調製し、EcoRIによ
る制限消化とその後のアガロースゲル電気泳動によりzsig58インサートをもつも
のを選別した。正確なpMT-zsig58カセットのマクシプレップを実施した。5’と3
’のフランキング配列、MT-1プロモーター、ラットインスリンIIイントロン、zs
ig58 cDNAおよびヒト成長ホルモンのポリA配列を含むSalIフラグメントを調製
し、マウス受精卵へのマイクロインジェクションに使用した。
【0308】 実施例6.zsig58発現トランスジェニックマウスの組織病理学検査 以下に述べる組織病理学検体をメス4匹とオス6匹の超低または低発現トランス
ジェニックマウス(実施例5)の様々な組織から採取した。低発現トランスジェ
ニックマウスのメス2匹では筋肉の変化が明白であった。
【0309】 13匹のマウスから採取した組織を組織検査にかけた。13匹の内訳は超低発現ま
たは低発現トランスジェニックマウスのオス、メス合わせて10匹、非発現トラン
スジェニックマウスのオス1匹、対照の非トランスジェニックマウスがオス、メ
ス各1匹であった。検体は肝臓、心臓、肺、腎臓、胸腺、脾臓、皮膚、膵臓、小
腸、腸間膜リンパ節、胃、脳、唾液腺、大腸、気管、食道、甲状腺、副腎、卵巣
、子宮、下垂体、骨格筋、末梢神経および大腿などから採取した。通常の方法を
用いて、検体を10%緩衝ホルマリンで固定し、脱水し、Tissue-Tek VIP自動プロ
セッサー(Miles社、インディアナ州エルクハート)で透明にし、パラフィンで
包み込み、3〜5 μmの切片にし、ヘマトキシリンとオエシンで染色した。切片は
ACVP認定の獣医病理学者が光学顕微鏡で検査した。
【0310】 低発現トランスジェニックのメス2匹で観察されたのは、細胞好塩球増加症を
示している筋細胞核の集中と拡散、まばらな筋繊維を特徴とする軽〜中度の多発
性筋障害であり、再生を暗示しているという重要な事実であった。まばらな筋繊
維は膨大し、条痕が消えていた。病気に冒された繊維に近接する間質には少数の
好中級が存在した。
【0311】 実施例7.大腸菌(E. coli)におけるヒトzsig58の発現 A. zsig58−MBP融合発現ベクターpTAP98/zsig58の構築 C末端でマルトース結合タンパク質(MBP)と融合したヒト・ザルファル(zalp
hall)可溶性受容体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを相当組
み換えにより構築した。MBP−ザルファル可溶性受容体融合ポリペプチドに対応
するポリペプチド配列は配列番号:21に、また対応する予想タンパク質配列は配
列番号:22にそれぞれ示してある。ヒトzsig58 cDNA(配列番号:23)のフラグメ
ントをPCR法で単離した。
【0312】 PCR反応でのヒトzsig58フラグメントの生成には次の2つのプライマーを使用し
た:(1)プライマーZC23,288(配列番号:24)−40 bpのベクターフランク配列と
ヒトzsig58のアミノ末端に対応する27 bpを含む;(2)プライマーZC23,289−ベク
ターフランク配列に対応する3’末端の40 bpとヒトzsig58のカルボキシル末端に
対応する27 bp。PCR反応条件は次のとおりであった:25サイクル−94℃ 30秒間
、50℃ 30秒間、72℃ 1.5分間;次いで4℃ソーク、これを2回反復。
【0313】 100 μl PCR反応系のうち2 μlを0.1%アガロースゲル+1X TBE緩衝液に流して
みると、約1140 bpフラグメントの予想されたバンドが見られた。PCR反応系の残
りの90 μlを第2 PCR管で400 μlの純エタノールにより沈殿させ、以下に述べる
ような、Sma1で切断した受容ベクターpTAP98への組み換え導入によるMBP−zsig5
8融合体をコードするカセットの構築に備えた。
【0314】 プラスミドpTAP98はプラスミドpRS316およびpMAL-c2に由来した。プラスミドp
RS316はSaccharomyces cerevisiaeシャトルベクターである(Hieter, P. and Si
korski, R. Genetics 122:19- 27, 1989)。pMAL-C2(NEB)は大腸菌(E. coli
)発現プラスミドであり、Ma1E(MBPをコードする遺伝子)を駆動するtacプロモ
ーター、それに続くHisタグ、トロンビン切断部位、クローニング部位、およびr
rBターミネーターを備える。ベクターpTAP98は酵母の相同組み換えを使用して構
築した。100 ng EcoR1切断pMAL-c2を1 μg Pvu1切断pRS316、1 μgリンカー、お
よび1 μg Sca1/EcoR1切断pRS316で組み換えた。
【0315】 リンカーはPCR反応で結合された次の4個のオリゴから成った:ZC19,372(配列
番号:26)(100 pmol);Z19,351(配列番号:27)(1 pmol);ZC19,352(配列番号:
28)(1 pmol);およびZC19,371(配列番号:29)(100 pmol)。条件は次のとおり
であった:10サイクル−94℃ 30秒間、50℃30秒間、72℃ 30秒間;次いで4℃ソ
ーク。PCR生成物は100%エタノール沈殿により濃縮した。
【0316】 100 μlの酵母(S. serevisiae)コンピテント細胞を、約1 μgのヒトzsig58
インサートと100 ngのSmaI消化pTAP98ベクターを含む混合液10 μlと混ぜ、0.2
cmエレクトロポレーションキュベットに移した。酵母/DNA混合物に0.75 kV(5
kV/cm)、無限オーム、25 μFaで電気パルスをかけた。各キュベットに1.2 Mソ
ルビトール600 μlを加えた。次いで、酵母を2個の-URA Dプレートに300 μlず
つ塗り、30℃で培養した。
【0317】 約48時間後に、1個のプレートからのUra+酵母形質転換体を1 ml H2Oに再懸濁
させ、ざっと遠心機にかけ酵母細胞をペレットにした。この細胞ペレットを1 ml
の溶菌緩衝液(2% Trton X-100、1% SDS、100 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.0、
1 mM EDTA)に再懸濁させた。この溶菌混合物500 μlを、300 μlの酸洗ガラス
ビーズと200 μlフェノール−クロロホルムを入れたEppendorf管に加え、1分間
隔で2、3回渦撹拌し、次いでEppendorf遠心機により最高速度で5分間遠心分離し
た。水相300 μlを新しい管に移し600 μlエタノール(EtOH)でDNAを沈殿させ
、次いで4℃で10分間遠心機にかけた。DNAペレットは100 μl H2Oに再懸濁させ
た。
【0318】 エレクトロコンピテント大腸菌(E. coli)細胞(MC1061, Casadaban et al.,
J. Mol. Biol. 138:179-207)の形質転換は1 μl酵母DNAプレップと40 μlのMC
1061細胞で行った。細胞に2.0 kV、25 μF、400オームで電気パルスをかけた。
エレクトロポレーションに続いて、0.6 ml SOC(2% BactoTM Tryptone(Difco社
、ミシガン州デトロイト)、0.5%酵母エキス(Difco社)、10 mM NaCl、2.5 mM KCl
、10 mM MgCl2、10 mM MgSO4、20 mMグルコース)をLB AMPプレート(LBブロス(
Lennox社)、1.8% BactoTM Agar(Difco社)、100 mg/Lアンピシリン)に一定量ず
つ塗った。
【0319】 ヒトzsig58の正確な発現カセットを備える個別クローンを発現により特定した
。細胞を100 μg/mlアンピシリン添加Superbroth II(Becton Dickinson社)で
一晩培養した。次いで、培養物50 μlを2 mlの新しいSuperbroth II+100 μg/m
lアンピシリンに接種した。培養物を37℃で、振とうしながら2時間増殖させた。
1 mlの培養物を1 mM IPTGで誘導した。
【0320】 2〜4時間後、各培養物250 μlを250 μl酸洗ガラスビーズと250 μl Thorner
緩衝液+5%βMEおよび色素(8 M尿素、100 mMトリスpH 7.0、10%グリセロール、
2 mM EDTA、5% SDS)に混ぜた。試料を1分間渦撹拌し、5〜10分間で65℃まで加
熱した。4%〜12% PAGEゲル(NOVEX社)にレーン当たり20 μlをたらした。ゲル
電気泳動には1XMES緩衝液を使用した。陽性クローンをpTAP145と名づけ、配列分
析にかけて配列を検証した。pTAP145内のMBP-zsig58融合体のポリヌクレオチド
配列は配列番号:21に示される。
【0321】 B. ヒトzsig58の細菌での発現 1 μlの連続DNAを使用してW3110菌株(ATCC社)の形質転換を行った。細胞に2
.0 kV、25 μF、400オームで電気パルスをかけた。エレクトロポレーションに続
いて、0.6 ml SOC(2% BactoTM Tryptone(Difco社、ミシガン州デトロイト)、0.
5%酵母エキス(Difco社)、10 mM NaCl、2.5 mM KCl、10 mM MgCl2、10 mM MgSO4
、20 mMグルコース)をLB AMPプレート(LBブロス(Lennox社)、1.8% BactoTM Ag
ar(Difco社)、100 mg/Lアンピシリン)に一定量ずつ塗った。
【0322】 個別クローンを発現により特定した。細胞を100 μg/mlアンピシリン添加Supe
rbroth II(Becton Dickinson社)で一晩培養した。次いで、培養物50 μlを2 m
lの新しいSuperbroth II+100 μg/mlアンピシリンに接種した。培養物を37℃で
、振とうしながら2時間増殖させた。1 mlの培養物を1 mM IPTGで誘導した。
【0323】 2〜4時間後、各培養物250 μlを250 μl酸洗ガラスビーズと250 μl Thorner
緩衝液+5%βMEおよび色素(8 M尿素、100 mMトリスpH 7.0、10%グリセロール、
2 mM EDTA、5% SDS)に混ぜた。試料を1分間渦撹拌し、10分間で65℃まで加熱し
た。4%〜12% PAGEゲル(NOVEX社)にレーン当たり20 μlをたらした。ゲル電気
泳動には1XMES緩衝液を使用した。陽性クローンは増殖させて、BMP-zsig58融合
タンパク質のタンパク質精製に使用することができる。
【0324】 実施例8.zsig58抗ペプチド抗体 ニュージーランドシロウサギのメス2匹とBalb Cマウスのオス5匹をペプチド、
すなわち成熟zsig58ポリペプチドのN末端領域に由来するhuzsig58-1(配列番号:
30)ペプチドまたはやはりzsig58由来のhuzsig58-2(配列番号:31)ペプチドで
免疫にすることにより、ポリクローナル抗ペプチド抗体を形成させた。これらの
ペプチドはApplied Biosystems Model 431Aペプチドシンセサイザー(Applied B
iosystems社、カリフォルニア州フォスターシティー)を使用して、メーカーの
説明書に従って合成した。合成したペプチドをキャリヤータンパク質のマレイミ
ド活性化キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に、システイン残基(Pierc
e社、イリノイ州ロックフォード)を介して連結した。
【0325】 ウサギにはそれぞれ、初回腹腔内(IP)注射で200 μgの連結ペプチドをフロ
イント完全アジュバント(Pierce社)に混ぜて投与し、その後3週間ごとにブー
スターIP注射で100 μgの連結ペプチドをフロイント不完全アジュバントに混ぜ
て投与した。マウスにはそれぞれ、初回腹腔内(IP)注射で20 μgの連結ペプチ
ドをフロイント完全アジュバントに混ぜて投与し、その後2週間ごとにブースタ
ーIP注射で10 μgの連結ペプチドをフロイント不完全アジュバントに混ぜて投与
した。3回目のブースター投与の7〜10日後にこれらの動物から採血し血清を採取
した。ウサギはその後3週間ごとにブースター投与と採血し、マウスは採血後に2
回の追加ブースター投与をした。
【0326】 zsig58ペプチド特異的抗体をウサギの血清からアフィニティ精製し、続いてPB
Sで一晩透析した。アフィニティ精製にはCNBr-SEPHAROSE 4Bペプチドカラム(Ph
armacia LKB社)を使用したが、このカラムは各ペプチド10 mg/g-CNBr-SEPHARO
SEを使用して調製した。ペプチド特異的zsig58抗体は、抗体ターゲットとして適
当なペプチドを1 μg/ml使用してELISAタイターチェックにより特性を調べた。
【0327】 実施例9.zSig58CEEのバキュロウィルスでの発現 zsig58ポリペプチドを昆虫細胞で発現させるために、発現ベクターpSig58CEE
を作成した。pSig58CEEはC末端にGlu-Gluタグをもつzsig58ポリペプチド(配列
番号:35)を発現するよう設計した。このカセットは、zsig58のN末端アミノ酸残
基を、シグナルペプチドが切り取られた後に決定するために使用できる。
【0328】 A. pSig58CEEの作成 5’および3’末端にそれぞれBgl IIおよびXbaI制限酵素認識部位をもつ1238
bpのzsig58フラグメントをzsig58 cDNA(実施例1)を含むプラスミドからPCR増
幅法により生成した。プライマーにはZC18,902(配列番号:32)およびZC19,118
(配列番号:33)を使用した。PCR反応条件は次のとおりであった:25サイクル−
94℃ 30秒間、50℃ 30秒間、72℃ 1.5分間;1サイクル−72℃ 10分間;次いで4
℃ソーク。フラグメントはゲル電気泳動(1% SeaPlaque/1% NuSieve)で視覚化
した。
【0329】 バンドを切り取り、0.5%アガロース+2 mM MgCl2へと希釈し、65℃で溶かし、
EcoRI/XbaI消化バキュロウィルス発現ベクターpZBV32Lに連結した。pZBV32Lベ
クターはpFastBaclTM(Life Technologies社)発現ベクターの変更版であり、多
面体プロモーターを除去して代わりに遅発活性化「塩基性タンパク質プロモータ
ー」を据え、またGlu-Gluタグに対応するコード化配列と停止シグナルをマルチ
クローニング領域の3’末端に挿入している。制限酵素で消化したzsig58インサ
ート約25 ngと対応するベクター約32 ngを16℃で一晩かけて連結した。
【0330】 連結混合物をTE(10 mMトリスHCl pH 7.5および1 mM EDTA)で3倍に希釈し、
希釈した連結混合物4 fmolをDH5αLibrary Efficiencyコンピテントセル(Life
Technologies社)に、メーカーの説明書に従って、42℃水浴中での45秒間の熱シ
ョックにより導入した。形質転換DNAおよび細胞をSOC媒体(2% Bacto Tryptone
、0.5% Bacto Yeast Extract、10 ml 1M Nacl、1.5mMKCl、10 mM MgCl2、10 m
M MgSO4および20 mMグルコース)450 μlで希釈し、100 μg/mlアンピシリン添
加LBプレートに塗った。
【0331】 クローンを制限酵素による消化で調べ、陽性クローン1 μlを20 μlのDH10Bac
Max Efficiencyコンピテントセル(GIBCO-BRL社、メリーランド州ゲーサーズバ
ーグ)に、メーカーの説明書に従って、42℃水浴中での45秒間の熱ショックによ
り導入した。連結DNAを980 μlのSOC媒体(2% Bacto Tryptone、0.5% Bacto Yea
st Extract、10 ml 1M Nacl、1.5mMKCl、10 mM MgCl2、10 mM MgSO4および20
mMグルコース)で希釈し、50 μg/mlカナマイシン、7 μg/mlゲンタマイシン、1
0 μg/mlテトラサイクリン、IPTGおよびBluo Galを加えたLuria Agarプレートに
塗った。
【0332】 細胞を37℃で48時間培養した。プラスミド(「バクミド」と呼ぶ)に組み込ん
でおいたウィルスをもつ細胞の特定には色による選択を用いた。そうした細胞は
白色を呈するので、その色によって選び出し調べた。QiaVac Miniprep8システム
(Qiagen社)を用いて、メーカーの説明書に従って陽性コロニーからバクミドDN
Aを単離した。クローンは、プライマーを使用してPCR法でDNAをバクミド内の転
位因子(transposalle element)まで増幅することにより、正しい挿入部をもつ
ものを選別した。
【0333】 このPCR法にはプライマーZC447(配列番号:34)およびZC976(配列番号: 7)
を使用した。PCR反応条件は次のとおりであった:35サイクル−94℃ 45秒間、50
℃ 45秒間、72℃ 5分間;1サイクル−72℃ 10分間;次いで4℃ソーク。PCR産物
は1%アガロースゲル電気泳動にかけて挿入部サイズをチェックした。正しい挿入
部をもつものをスポドプテラ・フルジペルダ(Spodeptera frugiperda)(Sf9)
細胞のトランスフェクションに使用した。
【0334】 B. トランスフェクション Sf9細胞を35 mmプレート当たり5×106個まいて、27℃で1時間にわたり付着さ
せた。5 μlのバクミドDNAを100 μlのSf-900 II SFM(Life Technologies社)
で希釈した。CellFECTION試薬(Life Technologies社)6 μlを100 μlのSf-900
II SFMで希釈した。バクミドDNA溶液と脂質溶液を静かに混合し、室温で45分間
培養した。1個の細胞プレートから媒体を吸収し、細胞を2 mlの新鮮なSf-900 II
SFM媒体で1回洗浄した。800 μlのSf-900 II SFMを脂質−DNA混合液に加えた。
【0335】 洗浄媒体を吸引してDNA−脂質混合液を細胞に加えた。細胞を27℃で4〜5時間
培養した。DNA−脂質混合液を吸引し、2 mlのSf-900 II媒体を各プレート加えた
。プレートを27℃、湿度90%の孵卵器に入れ、96時間後にウィルスを採取した。
【0336】 C. 一次増幅 Sf9細胞を125 mlシェークフラスコの50 ml Sf-900 II SFM中で、およそ0.4〜0
.52×105個/mlの密度までになるまで増殖させた。次いで、この細胞に前記のウ
ィルス株100 μlで感染させ、27℃で2〜3日間培養してから、当業界において周
知の標準的な方法でウィルスを採取した。 以上の説明から、本発明の具体的な実施態様をわかりやすく解説したものの、
本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更を加えられることは自明であ
ろう。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1a】 図面は、zsig58のアラインメント(配列番号:2)と、ラットの神経のオルフ
ァクトメディン関連ER局在タンパク質(PIR 173639;ダニエルソン他、J. Neuro
sci. Res.、第38巻、468-478ページ、1994年)(配列番号:3)と、ヒトTIGR(
ヒトMYOC、ストーン他、Science、第275巻、668-670ページ、1997年)(配列番
号:4)を示している。
【図1b】 図面は、zsig58のアラインメント(配列番号:2)と、ラットの神経のオルフ
ァクトメディン関連ER局在タンパク質(PIR 173639;ダニエルソン他、J. Neuro
sci. Res.、第38巻、468-478ページ、1994年)(配列番号:3)と、ヒトTIGR(
ヒトMYOC、ストーン他、Science、第275巻、668-670ページ、1997年)(配列番
号:4)を示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/15 C12N 1/19 4H045 1/19 1/21 1/21 C12P 21/02 C 5/10 21/08 C12P 21/02 C12Q 1/02 21/08 G01N 33/15 Z C12Q 1/02 33/50 Z G01N 33/15 (C12P 21/02 C 33/50 C12R 1:19) //(C12P 21/02 (C12P 21/02 C C12R 1:19) C12R 1:91) (C12P 21/02 C12N 15/00 ZNAA C12R 1:91) 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA,Z W (72)発明者 チャンドラセカー,ヤスミン アメリカ合衆国,ワシントン 98040,マ ーサー アイランド,エイティーサード プレイス サウスイースト 5912 Fターム(参考) 2G045 AA40 DA12 DA13 DA36 FB03 4B024 AA11 BA44 BA80 CA04 DA02 DA06 EA02 EA04 FA07 GA11 GA18 GA19 HA01 HA12 HA15 4B063 QA01 QA18 QQ20 QQ79 QR48 QR59 QR77 QR80 QS05 QS24 QS28 QS36 4B064 AG01 AG27 AG31 CA02 CA10 CA19 CC24 DA13 4B065 AA26X AA90X AA93Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA46 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 BA41 CA40 DA76 DA86 EA50 FA71 FA74 GA26

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号141(Cys)からアミ
    ノ酸番号402(Lys)までのアミノ酸配列; (b) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号26(Thr)からアミノ酸番号402(L
    ys)までのアミノ酸配列;および (c) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号1(Met)からアミノ酸番号402(Ly
    s)までのアミノ酸配列; から成る群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸残
    基配列を含んで成るzsig58ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチ
    ドにおいて、 アミノ酸同一性がFASTAプログラムを使用して、ktup=1、ギャップオープニン
    グペナルティー=10、ギャップエクステンションペナルティー=1、置換マトリ
    ックス=BLOSUM62とし、その他のパラメーターをデフォールトとして設定して計
    算されることを特徴とするポリヌクレオチド。
  2. 【請求項2】 ポリヌクレオチドが次のポリヌクレオチド配列: (a) 配列番号:1に示されるヌクレオチド505からヌクレオチド1290までのポ
    リヌクレオチド配列; (b) 配列番号:1に示されるヌクレオチド160からヌクレオチド1290までのポ
    リヌクレオチド配列;および (c) 配列番号:1に示されるヌクレオチド85からヌクレオチド1290までのポリ
    ヌクレオチド配列; から成る群より選択される、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  3. 【請求項3】 ポリヌクレオチドが配列番号:5のヌクレオチド1ないしヌク
    レオチド1206を含んで成る、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド配列
  4. 【請求項4】 zsig58ポリペプチドが次のアミノ酸配列: (a) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号141(Cys)からアミノ酸番号402(Lys)
    までのアミノ酸配列; (b) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号26(Thr)からアミノ酸番号402(Lys)
    までのアミノ酸配列;および (c) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号1(Met)からアミノ酸番号402(Lys)ま
    でのアミノ酸配列; から成る群より選択されるアミノ酸配列と同一であるアミノ酸残基配列を含んで
    成る、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  5. 【請求項5】 zsig58ポリペプチドが配列番号:2に示されるアミノ酸番号2
    6(Thr)からアミノ酸番号402(Lys)までのアミノ酸残基配列を含んで成る、請求項
    4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 【請求項6】 作用可能に結合された次の要素: 転写プロモーター; 配列番号:2に示されるアミノ酸番号26(Thr)からアミノ酸番号402(Lys)までの
    zsig58ポリペプチドをコードするDNA断片;および 転写ターミネーター; を含んで成る発現ベクター。
  7. 【請求項7】 さらにDNA断片に動用可能に結合された分泌シグナル配列を
    含んで成る請求項6に記載の発現ベクター。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の発現ベクターが導入されている培養細胞で
    あって、前記DNA断片によってコードされたポリペプチドを発現する細胞。
  9. 【請求項9】 融合タンパク質をコードするDNAカセットであって (a) 配列番号:2に示される残基番号1(Met)から残基番号25(Cys)までのアミ
    ノ酸配列; (b) 配列番号:2に示される残基番号26(Thr)から残基番号140(Ser)までのア
    ミノ酸配列; (c) 配列番号:2に示される残基番号141(Cys)から残基番号402(Lys)までのア
    ミノ酸配列; (d) 配列番号:2に示される残基番号26(Thr)から残基番号402(Lys)までのア
    ミノ酸配列; から成る群より選択されるポリペプチドをコードする第1DNA断片;並びに 追加のポリペプチドをコードする少なくとも1つの他のDNA断片; を含んで成り、前記第1 DNA断片と前記他のDNA断片がフレーム内で連結されてお
    り、かつ融合タンパク質をコードすることを特徴とするDNAカセット。
  10. 【請求項10】 動用可能に結合された次の要素 (a) 転写プロモーター; (b) 請求項9に記載の融合タンパク質をコードするDNAカセット;および (c) 転写ターミネーター; を含んで成るベクターがその中にすでに導入されている宿主細胞を培養し;そし
    て 前記DNA断片によりコードされたタンパク質を回収する; ことを含んで成る方法により産生される融合タンパク質。
  11. 【請求項11】 (a) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号141(Cys)からア
    ミノ酸番号402(Lys)までのアミノ酸配列; (b) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号26(Thr)からアミノ酸番号402(L
    ys)までのアミノ酸配列;および (c) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号1(Met)からアミノ酸番号402(Ly
    s)までのアミノ酸配列; から成る群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸残
    基配列を含んで成る単離されたポリヌクレオチドにおいて、 アミノ酸同一性がFASTAプログラムを使用して、ktup=1、ギャップオープニン
    グペナルティー=10、ギャップエクステンションペナルティー=1、置換マトリ
    ックス=BLOSUM62とし、その他のパラメーターをデフォールトとして設定して計
    算されることを特徴とするポリヌクレオチド。
  12. 【請求項12】 ポリヌクレオチドがさらに (a) M1-[46]-M2-[37-41]-M3;および (b) M4-[48-52]-M5-[49]-M1-[1]-M6-[39]-M2-[37-41]-M3-[4]-M7 から成る群より選択される構成においてN末端からC末端までの間に間隔をおいて
    モチーフ1〜モチーフ7を含むことを特徴とする、請求項11に記載の単離されたポ
    リペプチド。
  13. 【請求項13】 ポリペプチドが次のアミノ酸配列: (a) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号141(Cys)からアミノ酸番号402(Lys)
    までのアミノ酸配列; (b) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号26(Thr)からアミノ酸番号402(Lys)
    までのアミノ酸配列;および (c) 配列番号:2に示されるアミノ酸番号1(Met)からアミノ酸番号402(Lys)ま
    でのアミノ酸配列; から成る群より選択されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸残基の配列を含んで成
    る、請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  14. 【請求項14】 アミノ酸残基の配列が配列番号:2のアミノ酸番号26(Thr)
    からアミノ酸番号402(Lys)までに示されるとおりである、請求項13に記載の単離
    されたポリヌクレオチド。
  15. 【請求項15】 zsig58ポリペプチドの製造方法であって、 請求項8に記載の細胞を培養し;そして その細胞によって産生されるzsig58ポリペプチドを単離する; ことを含んで成る方法。
  16. 【請求項16】 zsig58タンパク質活性の調節物質の存在を検体から検出す
    る方法であって zsig58応答細胞を、zsig58に刺激された細胞経路に応答するリポーター遺伝子
    カセットによりトランスフェクトし; 請求項14に記載の方法によりzsig58ポリペプチドを産生し; 検体の存在下および不在下で前記細胞にzsig58ポリペプチドを付加し; 生物学的または生化学的検定法により、検体の存在下および不在下で、zsig58
    ポリペプチドへの応答レベルを比較し;そして 前記の比較から検体にzsig58活性の調節物質が存在するかどうかを決定する;
    ことを含んで成る方法。
  17. 【請求項17】 zsig58ポリペプチドに対する抗体の製造方法であって、 (a) 9〜402個のアミノ酸から成り、配列が配列番号:2のアミノ酸番号26(Thr
    )からアミノ酸番号402(Lys)までのアミノ酸の連続配列と同一であるポリペプチ
    ド; (b) 配列番号:2の残基番号26(Thr)から残基番号140(Ser)までのアミノ酸配
    列;および (c) 請求項11に記載のポリペプチド; から成る群より選択されたポリペプチドを動物に接種し、ここで前記ポリペプ
    チドが免疫反応を惹起し;そして 前記動物から抗体を単離する; ことを含んで成る方法。
  18. 【請求項18】 請求項17に記載の方法によって産生される、zsig58ポリペ
    プチドに結合する抗体。
  19. 【請求項19】 抗体がモノクローナル抗体である請求項18に記載の抗体。
  20. 【請求項20】 請求項11に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
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