【発明の詳細な説明】
共有結合したトロポニン複合体発明の分野
本発明は、一般的に、臨床化学に関する。特に、心筋梗塞または他の虚血性事
象の診断に有用な安定化されたトロポニン複合体に関する。関連出願の相互参照
本出願は、1997年5月29日に出願された米国特許出願第08/865,468号および199
7年6月13日に出願された米国特許出願第08/874,556号の一部継続出願である。発明の背景
特定の構成成分または分析物の存在または量の決定は、疾患および健康状態の
診断に有用である。ヒト体液(例えば、血液、血清、血漿、脊髄液、または尿)
に存在する構成成分が挙動する方法と同様に挙動する組成物は、臨床実験室で使
用される。これらの組成物は、構成成分を測定するために実験室で使用される臨
床器械設計および手順が正確であるかどうかの決定を助ける。これらの組成物は
また、サンプル中の構成成分の量または存在を測定する臨床デバイスを較正する
ために使用される。これらの組成物は、本明細書では以降、コントロール組成物
またはコントロールという。
さらに、コントロール組成物中に存在する分析物または分析物のアナログが、
患者の体液中の試験されるべき対応する分析物と同様に挙動する−−すなわち、
コントロール組成物が患者サンプルを模倣するべきであることが、重要である。
心筋梗塞(「MI」)の発生を正確に診断するかまたは不安定なアンギナのよう
な他の虚血性事象を区別するために使用され得る迅速かつ簡便な試験は、非常に
重要である。心臓トロポニンI(cTnI)およびトロポニンTは、最近、心臓窮迫
を評価する際の選択のマーカーとして確立されている。New England Journal of
Medicine 335巻18号,1342-1349頁,Antmanら、および1333-1341頁,Ohmanらを
参照のこと。
トロポニン複合体は、骨格筋および心筋の両方に存在し、そして3つのサブユ
ニット、トロポニン結合サブユニットであるトロポニンT(「TnT」)、Ca++結
合サブユニットであるトロポニンC(「TnC」)、およびアクトミオシンMg++−A
TPaseを阻害するTnIからなる。
トロポニン複合体への大多数の研究は、骨格筋中のトロポニン複合体の調節機
能および構造に集中している。トロポニン複合体は、筋肉収縮を助ける。TnC分
子は、二価金属イオンを結合するための4つの結合ドメインを有する。Ca++/Mg+
+結合部位は、COOH末端領域にあり、そしてCa++結合部位は、アミノ末端領域に
ある。骨格筋の研究において、Ca++の存在下で、TnIのアミノ末端は、TnCのCOOH
末端領域に、およびTnTの球状COOH末端領域に結合する。したがって、研究は、T
nIおよびTnCが逆平行であり、そしてTnIおよびTnTが逆平行であることを示す。
カルシウムイオンの存在は、TnIの阻害性およびCOOH領域に対するTnCアミノ末端
ドメインの親和性を増加させる。さらに、TnIおよびTnTについてのCa++依存性結
合部位を示すTnCのN末端ドメインに疎水性表面がある。Ca++依存性反応が調節
メカニズムに関連し、そしてCa++非依存性相互作用が複合体の構造統合性を維持
することが提案されている。骨格筋の調節におけるトロポニン複合体の構造およ
び機能を研究するために、架橋研究が実行されている。Farah,C.およびReinach
,F.Review:The Troponin complex and regulation of muscle contraction.F
ASEB Journal 9 755-767頁(1995)を参照のこと。TnCと骨格筋TnIとの間の共有結
合は、EDCを使用してTnCのカルボキシル基とTnIのリジン基との間に形成されて
いる。Kobayoshiら(1994),Structure of the troponin complex:implications
of photocrss-linking of troponin I totroponin C thiol mutants.J.Biol.
Chem.269,5725-5729。さらに、Leszykら(1987)Cross-linking of rabbit sk
eltal muscle troponin with the photoactive reagent 4-malemidobenzophenon
e;identification of residues in troponin I that are close to cystein-98
of troponin C.Biochemistry 26,7042-7047は、TnCと骨格筋TnIとの間の架橋
の主産物が、TnCのN末端調節ドメイン(残基46〜78)および骨格TnIの阻害性領
域(残基96〜116)に由来するセグメントを含むことを報告した。トロ
ポニン複合体は、本明細書中で、三重複合体ともいう。
1997年5月29日に出願され、そしてまた出願人によって所有される、米国特許
出願第08/865,468号は、MI後のヒト血清中の天然のcTnIの大多数がTnCおよびTnT
と関連することを発見したということを開示する。MI患者血清中の他のトロポニ
ンサブユニットとの複合体中のTnIの存在は、その安定性を増加させ、そしてさ
らなる分解からそれを保護する。さらに、トロポニン複合体は、心臓特異的抗体
が結合する部位を保護する。1997年5月29日に出願された米国特許出願第08/865,
468号はまた、MI患者血清から複合体を単離する方法を開示する。
筋原線維収縮タンパク質、トロポニンI(「TnI」)の心臓イソタイプは、心
筋に唯一存在する。TnIは、心筋および横紋筋にカルシウム感受性を与える細フ
ィラメント調節タンパク質複合体である、トロポニンの阻害性サブユニットであ
る。トロポニンIは、3つのイソ形態で存在する:2つの骨格TnI(速および遅
)イソ形態(分子量=19,800ダルトン)、および23,000ダルトンの分子量で生じ
るN末端におけるさらなる31残基(ヒトTnI)を有する心臓TnI(「cTnI)イソ形
態。
心臓TnIは、MI後迅速に(約4〜6時間以内に)ヒト血清中に見いだされる。
約18〜24時間後にピークレベルに達し、そして6〜7日まで血流中で上昇したレ
ベルのままである。したがって、ヒトcTnIについて試験し得るイムノアッセイは
、医学界におよび公衆に価値がある。
MI患者血清中で見られるものに匹敵する免疫学的に反応性のヒトcTnIイソ形態
を使用することが望ましい。発明者らは、MI患者血清が、cTnI分子のC末端プロ
セシングの結果であるTnIフラグメントを含むことを見いだした。心臓TnIと骨格
筋TnIとの間のC末端領域で見られる高い配列相同性(Larueら1992 Molec.Immu
nology 29,271-278、Vallinsら1990 FEBS Lett.270,57-61、Leszkyら1988 Bi
ochemistry 27,2821-2827)によって、非心臓特異性を有するこの領域に対する
TnI抗体が産生される(Larueら1992)。発明者らのデータおよびLarueら1992は
、公知のcTnI特異的抗体のほとんどが、TnI分子のほぼ最初の75%に位置するエ
ピトープを有することを示唆する。したがって、TnI分子のこの部分は、ほとん
どのイムノアッセイシステムにおいてMI特異的cTnIイソ形態として機能すべ
きである。
現在、cTnIイムノアッセイは、Dade International,Behring Diagnostics、
およびSanofi Pasteur Diagnosticsから市販されている。Dade産物は、Stratus
天然のインタクトなヒトcTnIは、ヒト心臓の不足のため得ることが困難であり
、そして天然のインタクトなヒトcTnIは、精製中にタンパク質分解を非常に受け
やすい。天然のヒトcTnIとは違って、組換え心臓TnI(「r-TnI」)は、受容可能
な量で産生および精製され得る。Dadeによって表されるように、r-TnIの一次構
造は、226アミノ酸(配列番号1)を含み;そのうちの209は、TnI配列(配列番
号2)を示す。cTnI(配列番号2)の一次配列の他に、Dade Internationalによ
って表されるr-TnIは、N末端における8アミノ酸のリード配列(MASMTLWM)お
よびC末端の9アミノ酸のテイル配列(PMVHHHHHH)を有する(配列番号1)。r
-TnI分子の一次構造は、-7位、-4位、0位、153位、154位、200位、および211位
にメチオニン残基を有する(配列番号1)。図1も参照のこと。
全長心臓トロポニンIは、以下の配列を有することが公知である:
ADGSSDAAREPRPAPAPIRRRSSNYRAYATEPHAKKKSKISASRKLQLKTLLLQIAKQELEREAEERRGEKG
RALSTRCQPLELTGLGFAELQDLCRQLHARVDKVDEERYDIEAKVTKNITEIADLTQKIFDLRGKFKRPTLR
RVRISADAMMQALLGARAKESLDLRAHLKVKKEDTEKENREVGDWRKNIDALSGMEGRKKKFES(配列番
号2)(Armour,K.L.ら,(1993)Cloning and Expression in Escheria Coli of
the cDNA Encoding Human Cardiac Troponin I,Gene,131(2):287-292)。
米国特許出願第08/564,526号は、これもまた出願人らによって所有され、そし
て参考として本明細書に援用され、これは、化学的切断によってヒトr-TnIから
生成されるヒトcTnIフラグメントの使用を開示する。臭化シアン(CNBr)による
r-TnIの切断によって、153アミノ酸の主要なポリペプチドを得、本明細書では以
降「CNBr-cTnIイソ形態」という(配列番号3)。図2を参照のこと。CNBr-cTnI
イソ形態は、ヒトcTnIの一次構造の73%を表し、そしてr-TnIよりも免疫学的に
反応性である。精製されたCNBr-cTnIイソ形態は、放射状分配イムノアッセイに
よって測定した場合、r-TnIよりも3〜4倍高い反応性およびより低い非特異的
結合の平均を有する。CNBr-cTnIイソ形態の分子サイズは、MI患者血清中の天然
の心臓TnIの主要な分解産物に、分子量で匹敵する。
MI患者血清で検出されるものに匹敵する免疫学的に反応性のヒトcTnIイソ形態
を使用することが望ましい。r-TnIの利用可能性は、心臓cTnIイソ形態の産生を
容易にし得る。さらに、公知のヒト心臓特異的TnI抗体のほとんどは、TnI分子の
ほぼ最初の75%に位置するエピトープを有するので、TnI分子のその部分は、ほ
とんどのイムノアッセイにおいてcTnIイソ形態として機能する。
CNBr-cTnIイソ形態は、種々のcTnIイムノアッセイにおいてキャリブレーター
またはコントロールとして使用され得る。
1997年5月29日に出願された米国特許出願第08/865,468号は、一般配列X-A-B-Y
の心臓トロポニンIフラグメントの使用を開示し、ここで、Xは、全長心臓トロ
ポニンIのアミノ酸1〜27のいずれかを含み、Aは、全長心臓トロポニンIの残
基28〜69を含み、Bは、全長心臓トロポニンIのアミノ酸残基70〜90を含み、そ
してYは、全長心臓トロポニンIのアミノ酸残基91〜170の任意の連続するアミノ
酸配列を含む。これらの配列はまた、従来技術の化合物よりも増加した免疫反応
性および安定性を有する。
39,000Kdの分子量を有するトロポニンT(TnT)は、筋肉収縮装置の一部であ
りそしてアクチンおよびトロポミオシン調節エレメントを含む細フィラメントの
トロポニン−トロポミオシン複合体の一部である。TnTの骨格筋研究は、TnTが構
造的に非対称であることを見いだした。その末端球状COOH末端ドメイン(TnT-2
)は、TnIおよびTnCとの相互作用を媒介する。アミノ末端ドメインでのTnT-1は
、トロポミオシンと相互作用する。Farah,C.およびReinach,F.(1995)Review:
The Troponin complex and regulation of muscle contraction.FASEB Journal
9 755-767を参照のこと。骨格TnTが、穏和なタンパク質分解によって骨格TnT-1
およびTnT-2TnI-Tncフラグメントに切断されることが報告される。Schaertl,S.
ら(1995)Separation and Characterization of the Two Functional Regions
of Troponin Involved in Muscle Thin Filalnent Regulation.Biochemistry 3
4(49)15890-15894。TnTは、トロポミオシン骨格とトロポニンI/トロポニン
C複合体との間の連結として作用する。TnTは、心筋ならびに速筋および遅筋に
おいてイソタイプを有する。胸部痛の開始の約3時間後の血清中に存在し、そし
て
MI後少なくとも10日間上昇したままであった。完全な心臓特異性の不足にもかか
わらず、血流へ迅速に出現するため、有用であり得る。トロポニンTは、J.Bio
chem.72:723-735頁(1972)またはJ.Biol.Chem.249:4742-4748に記載のように
得られ得るか、あるいは市販で購入され得る。TnT遺伝子プロモーターおよびそ
の誘導体は、米国特許第5,266,488号に開示される。骨格筋のTnTイソ形態は、ア
ミノ末端の約30アミノ酸領域およびカルボキシ末端の約14アミノ酸領域において
所定の種の変動を示す。Pan,B.S.およびPotter,J.D.(1992)Two Genetically
Expressed Troponin T Fragments Representing α and β Isoforms Exhibit F
unctional Differences.Journal of Biol ogical Chemistry 267(82)23052-2
3056。
心臓マーカーのためのインビトロ安定化された溶液が、開示されている。米国
特許第5,583,200号およびBodorら,(1992)Development of Monoclonal Antibodi
es for an Assay of Cardiac Troponin-I and Preliminary Results in Suspect
ed Cases of Myocardial Infarction,Clinical Chemistry 38,(11)2203-2214
の2204は、トロポニンCおよびカルシウムイオンを使用する安定化されたトロポ
ニンTおよび/またはトロポニンIを開示する。米国特許第5,583,200号は、血
清が添加され得ることを開示する。1997年6月13日に出願された米国特許出願第0
8/874,566号は、トロポニンTまたはトロポニンI/トロポニンC複合体の安定
化における改良を開示し、そしてトロポニンを測定する診断アッセイのためのキ
ャリブレーターまたはコントロールとして有用な溶液を開示する。米国特許出願
第08/564,526号および1997年5月29日に出願された米国特許出願第08/865,468号
はまた、CNBr-cTnIイソ形態および他のフラグメントの免疫学的および生物学的
活性ならびに非特異的結合におけるTnCの効果を開示する。米国特許出願第08/56
4,526号は、CNBrによって形成される複合体−イムノアッセイに有用であるとし
てcTnIイソ形態、TnC、およびTnTの活性を開示する。
安定化剤とともに加工された仔ウシ血清中のヒト心臓トロポニンIの凍結乾燥し
た調製物である。再構成した産物は、2〜8℃で保存した場合、7日間安定であ
る。Sanofi PasteurのトロポニンIアッセイにおけるキャリブレーターおよびコ
ントロールは、緩衝化されたヒト血清マトリクス中の凍結乾燥した調製物である
。再構成したキャリブレーターは、再構成を完了した15分後以内に使用されなけ
ればならないが、小分けされそして約6カ月まで−20℃で凍結保存され得る。Da
deトロポニンIアッセイにおけるキャリブレーターおよびコントロールは、凍結
して提供される。融解した場合、産物は、2〜8℃で保存した場合30日間安定で
ある。
安定化されたトロポニンIおよび/またはトロポニンTの改良された方法およ
び組成物は、ある条件下で複合体が解離し得るので(例えば、カルシウムの除去
、SDSのような界面活性剤の存在)、なお必要である。さらに、組成物に使用さ
れる分析物がトロポニン複合体の実際に循環しているイソ形態に近いほど、組成
物は、一次参照物質−−他のキャリブレーターが基礎であるキャリブレーターで
ある−−としてより良好に機能する。発明の要旨
本発明は、心臓トロポニンのイムノアッセイにおける使用のための、以下の安
定化された組成物に関する:トロポニンIおよびトロポニンC複合体(TnI:TnC
);トロポニンTおよびトロポニンC複合体(TnT:TnC);トロポニンTおよび
トロポニンI複合体(TnI:TnT);ならびにトロポニンI、トロポニンT、およ
びトロポニンC複合体(TnI:TnC:TnT)。
トロポニンIおよび/またはトロポニンTは、先行技術の複合体および分析物
よりも増強された安定性および/または免疫反応性を有する組成物を提供するた
めに、トロポニンCに共有結合によって複合体化され得る。
TnI:TnC複合体では、TnIは、TnCに共有結合される。トロポニンIは、天然ま
たは組換えであり得るか、あるいはフラグメント化されるかまたは全長であり得
る。
TnT:TnC複合体では、TnTは、TnCに共有結合される。TnTは、天然または組換え
であり得るか、あるいはフラグメント化されるかまたは全長であり得る。
TnT:TnI複合体では、TnIおよびTnTは、共有結合される。
TnT:TnC:TNI複合体では、TnIまたはTnTのいずれかまたは両方が、TnCに共有結
合される。
複合体は、TnI、TnC、および/またはTnTについて、あるいは一次参照物質と
しての使用についてアッセイする方法のためのキャリブレーターまたはコントロ
ールとして有用である。
コントロール組成物は、緩衝液または血清ベースのマトリクスを含むべきであ
り、そしてカルシウムおよび/またはマグネシウムイオンのような金属イオンを
含み得る。コントロール組成物は、凍結乾燥されるかまたは液体であり得る。
共有結合剤には、トロポニンTおよび/またはトロポニンIと、トロポニンC
との間の実質的に「天然の長さ」の共有架橋を提供する結合剤を含む。本明細書
で使用される場合、用語「天然の長さ」の架橋は、非共有結合した複合体と実質
的に同じ免疫学的活性を有する共有結合した複合体を提供する、トロポニンIま
たはTのいずれかとトロポニンCとの間で形成される共有結合を意味する。一般
的に、共有結合の長さは、天然の複合体におけるトロポニンIおよび/またはT
とトロポニンCとの間の長さ、あるいは天然の複合体におけるトロポニンIとト
ロポニンTとの間の長さを近づけるべきである。しかし、タンパク質複合体は構
造が堅くはないので、複合体の構造に変動性があることが理解されるべきである
。共有結合した複合体の安定性および免疫学的活性は、重要なことである。図面の簡単な説明
図1は、Dade Internationalによって表されるような心臓トロポニンのアミノ
酸配列(配列番号1)および心臓トロポニンIのアミノ酸配列(配列番号2)を
示す。
図2は、組換えトロポニンI(ヒトcTnIイソ形態またはTnI−153)のCNBr切断
産物のアミノ酸配列を示す。
図3は、複合体の2つの希釈物での、架橋したrTnI-153:TnC複合体の45℃での
安定性および免疫反応性を示す。試料を、両方ともDade Internationalから入手
可能なStratus IIアナライザーおよびStratus Troponin Fluorometric Assay Ki
tを使用して評価した。
図4は、希釈した架橋rTnI-153:TnC複合体の種々の温度での安定性を示す。試
料を、両方ともDade Internationalから入手可能なStratus IIアナライザーおよ
びStratus Troponin Fluorometric Assay Kitを使用して評価した。
図5は、TnCの3つの異なるロットを使用する架橋したrTnI-153:TnC複合体の
安定性を示す。
図6は、45℃での架橋したrTnI:TnC複合体の安定性を示す。
図7は、rTnI-153:TnCの架橋および非架橋複合体のポリアクリルアミドゲルを
示す。発明の詳細な説明
TnI:TnC複合体では、TnIはTnCに共有結合する。心臓トロポニンIは、天然ま
たは組換えであり得、そしてフラグメント化されるかまたは全長であり得る。い
くつかの複合体化していないトロポニンは、心筋事象後ヒト血清で見られ得、ほ
とんどの心臓特異的トロポニンは複合体として見られる。複合体中のTnIが、18,
000Kdフラグメントおよび14,000Kdフラグメントを提供するためにC末端でのタ
ンパク質分解切断によって分解されることが見いだされている。一般的に、14,0
00Kdフラグメントは、18,000Kdフラグメントから切断される。18,000フラグメン
トへの切断後、N末端タンパク質分解切断は、Arg26のカルボキシル側鎖で生じ
、そのためN末端の最初の26アミノ酸を排除する。N末端での31アミノ酸配列は
、抗体に対する最良の位置として提案されているが、この最近の所見は、この抗
体が血清TnIの画分のみを認識することを示唆する。
したがって、心臓トロポニンIを含む本発明の複合体が、14,000Kdフラグメン
トから生成したトロポニンIの少なくとも1つのフラグメントを含むことが好ま
しい。本来、イムノアッセイにおける使用のための抗体は、14,000Kdトロポニン
I配列を含むトロポニンIまたはトロポニン複合体の一部に対して生成される。
もちろん、抗体は、キャリブレーターまたはコントロールで使用される心臓トロ
ポニンIまたは複合体と、免疫学的に(例えば、フラグメント上にエピトープ部
位を有する)および特異的に(例えば、骨格筋トロポニンIと実質的に交差反応
すべきではない)反応しなければならない。
したがって、化学的切断によってヒト心臓r-TnIから生成されたヒトcTnIフラ
グメントの使用は、天然の形態の大多数に最も近いので、TnI:TnC複合体に好ま
しいフラグメントである。臭化シアン(CNBr)によるr-TnIの切断によって、153
アミノ酸の主要なポリペプチドを得、本明細書以後では「CNBr-cTnIイソ形態」
という(配列番号3)。CNBr-cTnIイソ形態は、ヒトcTnIの一次構造の73%を示
し、そして放射状分配イムノアッセイを使用して決定した場合にr-TnIよりも免
疫学的に反応性である。精製されたCNBr-cTnIイソ形態は、Dade International
Inc.から入手可能な、放射状分配イムノアッセイによって測定した場合、r-TnI
よりも3〜4倍高い反応性およびより低い非特異的結合の平均を有する。図2に
示すように、CNBr-cTnIイソ形態の分子サイズは、MI患者血清中の天然の心臓TnI
ystemで使用される抗体についてのエピトープを保持した。(Vallinsら(1990)
FEBS Lett.270,57-61を参照のこと)。
一般的に説明すると、臭化シアン切断における第1の工程は、分子間または分
子内ジスルフィド架橋によるダイマー化を抑制するために、位置79および96でr-
TnIのシステイン残基(TnI配列中に2つある)(配列番号1)をカルボキシメチ
ル化することである。システイン残基のカルボキシメチル化は、153アミノ酸イ
ソ形態の生成のために前もって必要ではない。(配列番号3)。むしろ、カルボ
キシメチル化は、CNBr切断中または後の複雑化を最小にすることによってこのプ
ロセスを促進する。
CNBr処理は、カルボキシメチル化したr-TnIで行われる。他の可能な切断反応
(例えば、酵素反応)とは異なって、CNBr処理は、免疫原性部位の一次配列に影
響を及ぼすことなく、テイル配列、リード配列、およびTnI C末端領域の一部を
除去する。
他の好ましいペプチドは、1997年5月29日に出願された米国出願08/865,468に
開示され、そして一般配列X-A-B-Yの心臓トロポニンIフラグメントを含み、こ
こで、Xは、全長心臓トロポニンIのアミノ酸1〜27のいずれかを含み、Aは、全
長心臓トロポニンIの残基28〜69を含み、Bは、全長心臓トロポニンIのアミノ
酸残基70〜90を含み、そしてYは、全長心臓トロポニンIのアミノ酸残基91〜170
の任意の連続するアミノ酸配列を含む。
Xに好ましい残基には、配列番号2の残基1〜27、2〜27、3〜27、4〜27、
5〜27、6〜27、7〜27、8〜27、9〜27、10〜27、15〜27、20〜27、21〜27、
22〜27、23〜27、24〜27、25〜27、26〜27、および27が含まれる。より好ましく
は、Xは配列番号2のアミノ酸27である。
Aは、配列番号2のアミノ酸残基28〜69を含む。Bは、配列番号2のアミノ酸残
基70〜90を含む。Yの好ましい残基には、配列番号2の残基91〜92、91〜93、91
〜94、91〜95、91〜96、91〜97、91〜98、91〜99、91〜100、91〜105、91〜110
、91〜115、91〜116、91〜117、91〜118、91〜119、91〜120、91〜121、91〜122
、91〜123、91〜124、91〜125、91〜126、91〜127、91〜128、91〜129、91〜130
、91〜131、91〜132、91〜133、91〜134、91〜135、91〜136、91〜137、91〜138
、91〜139、91〜140、91〜141、91〜142、91〜143、91〜144、91〜145、91〜146
、91〜147、91〜148、91〜149、91〜150、91〜151、91〜152、91〜153、91〜154
、91〜155、91〜160、91〜165、91〜170が含まれる。より好ましくは、Yは、配
列番号2の91〜95、91〜100、91〜105、91〜110、91〜115、91〜120、91〜130、
91〜140、91〜145、91〜150、91〜153、91〜155、91〜160、91〜165、91〜170の
いずれかであり得る。
患者血清のプールから単離された、より低分子量の14,000TnIフラグメントは
、N末端同定のために配列決定されている。TnI 14,000フラグメントのN末端配
列は、ヒト心臓TnI配列において位置27(Ala)で始まる。14,000フラグメントは
、約100アミノ酸長であり、インタクトなcTnIにおいて約アミノ酸120から約アミ
ノ酸130までの領域で終わる。18,000フラグメントのN末端配列は、インタクト
なヒトcTnIのN末端でまたはその非常に近くで始まる。18,000フラグメントは、
約140アミノ酸長であり、インタクトなcTnIの約アミノ酸番号135から約145まで
の領域で終わる。したがって、フラグメントの1つの好ましい群は、Xを配列番
号2の25〜27、26〜27、または27として、およびYを配列番号2の91から135〜14
5のいずれかまでとして有する。
フラグメントはまた、配列AYATEPHAKKKSKISASRKLQLKTLLLQIAKQEL(配列番号4
)またはRAYATEPHAKKKSKISASRKLQLKTLLLQIAKQEL(配列番号5)を含む心臓トロ
ポニンIタンパク質フラグメントであり得る。フラグメントは、MADGSSDAAREP
RPAPAPIRRRSSNYRAYATEPHAKKKSKISASRKLQLKTLLLQIAKQELEREAEERRGEKGRALSTRCQPLE
LAGLGFAELQDLCRQLHARVDKVDEERYDIEAKVTKNITEIADLTQKIFDLRGKFKRPTLRRVRISADAMMQ
ALLGARAKESLDLRAHLKQVKKEDTEKENREVGDWRKNIDALSGMEGRKKKKFEES(配列番号6);
ADGSSDAAREPRPAPAPIRRRSSNYRAYATEPHAKKKSKISASRKLQLKTLLLQIAKQELEREAEERRGEKG
RALSTRCQ(配列番号7);または類似のヒトまたはウシフラグメントのような組
換え配列であり得る。ヒトトロポニンが好ましいが、他の種が置換され得ること
が理解されるべきである。一般的に、これらの他の種は、全長一次構造中に適切
なメチオニン残基を欠く。しかし、CNBrによる切断時に適切なフラグメントを提
供する位置での一次構造へのメチオニンの挿入は、代替種の使用を可能にする。
トロポニンCは、多くの供給源から市販され、そして供給源または種は重要で
はない。一般的に、ウサギトロポニンCは、より低い費用のため使用されるが、
ヒトおよび他の種も使用され得る。組換えトロポニンCも使用され得る。トロポ
ニンCの分子量は、約17,500Kdである。先に述べられるように、TnCは、COOH末
端領域にCa++/Mg++結合ドメインおよびアミノ末端領域にCa++結合ドメインを有
し、そして長い中心ヘリックスによって「ダンベル」形状に連結されると考えら
れる。
本発明で有用な共有結合剤には、トロポニンTおよび/またはトロポニンIと
トロポニンCとの間に実質的に「天然長」の共有架橋を提供する結合剤が含まれ
る。好ましい結合剤は、複合体で存在する場合、タンパク質間の距離を適切にす
るTnIまたはTnTとTnCとの間の共有結合を形成する。架橋剤は、1-エチル-3-[3-(
ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)のような「ゼロ長」架橋剤、
および1つのタンパク質上の活性化カルボキシル基間のアミド結合を提供しそし
て他のタンパク質上のアミノ基へカップリングする他の水溶性カルボジイミドで
あり得る。Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking,CRC Press
,Inc.を参照のこと。シュウ酸、マロン酸、およびコハク酸誘導体のような他の
結合剤はまた、Pierce Chemical Co.から入手可能なような市販で入手可能な架
橋剤の多くがあるので、使用され得る。使用される実際の結合剤は、共有結合し
た複合体が、非共有結合複合体、天然複合体、または市販の入手可能な産物と比
較した場合、免疫学的にまたは安定性に関してどのように行われるかは重要でな
い。
複合体は、結合剤に特異的な方法でトロポニンCおよびトロポニンIと結合剤
を合わせることによって調製される。TnCおよびTnIの結合反応は、Ca++またはMg
++または他の二価金属イオンの存在下で行われるべきである。条件は、利用され
る結合剤に依存して変化するが、この条件は公知および公表された方法を参照し
て当業者によって容易に決定され得る。緩衝液の選択は重要ではないが、緩衝液
は約10〜200mMの重量モル濃度を有するべきである。カルシウムおよびマグネシ
ウムイオンの濃度は重要ではないが、好ましくは、約20μM〜約20mMであるべき
である。マグネシウムイオンが単独で使用されるならば、カルシウムについて使
用されるよりも高い濃度であるべきである。カルシウムおよび/またはマグネシ
ウムの代表的な量は、約2〜5mMである。緩衝液は、約50mM〜500mMで塩化ナト
リウムまたは塩化カリウムのような塩を含み得る。トロポニンCの量は重要では
ないが、利用されるトロポニンIの量と等しいまたはより大きいモル量であるべ
きである。一般的に、トロポニンCの量は、0.02mg/mL〜5mg/mLであり得る。結
合剤の量は、トロポニンCの量に依存して調節される必要があり得る。
希釈した最終結合産物の臨床的に有意な濃度は、トロポニンIアッセイ(例え
ば、Dade International Inc.から入手可能なもの)で免疫学的に評価され、そ
して同じ方法で評価される天然の複合体または非共有結合複合体または市販で入
手可能な産物と比較され得る。一般的に、トロポニンIまたはTの目的の臨床範
囲は、約0.01ng/mL〜1μg/mL以下であり、そして代表的には0.1ng/ml〜200ng/m
Lである。さらに、安定性は、同じ方法で評価される天然の複合体または非共有
結合複合体または市販で入手可能な産物と比較して、あるいは安定性を評価する
ために複合体を電気泳動ゲルで流すことによって、1つ以上の温度にてある時間
にわたって免疫学的活性を比較することによって決定され得る。
天然複合体は、血清試料で得られ得る。さらに、天然複合体は単離され得る。
この方法は当業者に公知である。例えば、Tn複合体を単離する好ましい方法は、
試験されるべき試料を、Tn複合体のサブユニットに対する抗体でコーティングし
た基材とインキュベートする工程を包含する。多くの抗体が有用であり、そして
当業者によって選択され得る。このような抗体の例には、抗TnI、抗TnC、および
抗TnT抗体が挙げられる。好ましい基材はビーズであり、そしてより好ましくは
、基材はラテックスビーズを含む。結合した複合体は、例えば、尿素を使用して
、Tnサブユニットの会合に影響を及ぼさない条件下で溶出される。これらの条件
は、当業者によって決定され得る。好ましい緩衝液システムは、尿素を含み、そ
してSDSを含まない。
好ましい結合剤は、EDCまたは他の水溶性カルボジイミドである。塩およびカ
ルシウムイオンを含む緩衝化した溶液では、トロポニンCは、EDCと組み合わさ
れる。EDCの濃度は重要ではなく、そして1〜10mMであり得る。N-ヒドロキシス
クシンイミド(NHS)またはSNHSのような化合物を約1〜10mMで添加して、水溶
性カルボジイミドによるトロポニンCの活性化を増強し得る。NHSを、代表的に
は、EDCの添加前に添加し、そして少なくとも約5分間タンパク質をインキュベ
ートするが、15分が代表的である。次いで、EDCを添加し、そして混合物を、代
表的には室温にて約15分間、代表的には、30分間以上インキュベートする。反応
は、穏和な酸性pH値(例えば、約6)で最良に行われるが、pHは5〜9の範囲で
あり得る。十分な反応時間後、メルカプトエタノールのような還元剤を添加して
、反応を停止する。他の還元剤は、メルカプトエタノールと置換され得る。
次に、心臓トロポニンI、好ましくはCNBr-TnIイソ形態を添加して、トロポニ
ンCと約1:1のモル比を提供するが、TnIの量はより少なくあり得る。一般的に、
TnIは、TnIを溶解するために十分な量で塩または尿素を含む緩衝液中にある。代
表的な緩衝液は、pH8での100mMリン酸ナトリウム、10mM Tris、および8M尿素(P
TU緩衝液)である。緩衝液の選択は、本発明に重要ではない。しかし、緩衝液は
、cTnIの溶解性を維持しなければならない。反応物は、一般的に室温にて約1時
間および代表的には約2時間インキュベートする。形成した複合体は、他の緩衝
液に緩衝液交換され得る。架橋した複合体の活性は、Stratus Troponinイムノア
ッセイを使用して測定され、そして天然の複合体と比較される。共有結合によっ
て架橋した複合体の存在は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して確認さ
れ得る。複合体は、還元条件下であるいはEDTAまたは他の金属複合体化剤の存在
下で解離しない。
EDCのような非特異的結合剤を使用した場合、カルシウムまたはマグネシウム
イオンは、TnCまたはTnIのいずれかの溶液に存在すべきである。カルシウムおよ
び/またはマグネシウムは複合体形成を生じさせる。したがって、天然の複合体
において複合体を形成するのと同じように、タンパク質の空間的配向は、天然の
複合体または非共有結合複合体に匹敵する。したがって、架橋はより選択的に生
じ、そして形成した結合は、正確なコンホメーションで複合体を「凍結」する。
共有結合した複合体はEDTAまたは他のキレート剤に感度がなく(したがって、カ
ルシウムまたはマグネシウムに非依存的である)、SDSの存在下で解離せず、そ
して非架橋複合体よりも高い温度まで抵抗性である。
さらに、一般的にはTnIまたはTnTよりもむしろTnCは、EDCまたは他の水溶性カ
ルボジイミド処理にかけられるべきである。例えば、TnIがエピトープ部位の保
護なしにEDCによって活性化されるならば、エピトープ部位が非特異的結合剤に
よって影響を及ぼされる−−すなわち、TnIまたはフラグメントは免疫学的に活
性でない可能性がある。
TnT:TnC複合体およびTnT:TnC:TnI複合体は、TnI:TnCと同様の様式で調製され
る。TnTフラグメント、特にTnT-2のようなカルボキシフラグメントが調製される
。トロポニンIについて説明されるように、トロポニンTは、トロポニンCの量
と等しいまたはより少ないモル量で添加されるべきである。トロポニンCは、0.
02mg/mL未満から5mg/mLであり得る。TnIおよびTnTについての範囲は同様である
。TnT:TnC複合体は、トロポニンTについてのアッセイを使用する以外は、トロ
ポニンI複合体について記載のように評価される。トロポニンTアッセイは、Bo
ehringer Mannheimから入手可能である。
しかし、TnT:TnI複合体はまた、本発明の他の複合体と同様に調製され得、免
疫学的(エピトープ)部位は実質的に保持されなければならない。TnTおよびTnI
の両方とも免疫学的に測定されるので、エピトープ領域が両方のタンパク質につ
いて保持されることが好ましい。したがって、非特異的結合剤は、EDCまたはシ
ュウ酸誘導体のような薬剤よりも有用であり得ない。
骨格筋TnIが、TnIの約40〜80アミノ酸でTnTと複合化することが記載されてい
る。Potter,J.D.ら(1995)A Direct Regulatory Role of Troponin T and a D
ual Role for Troponin C in the Ca++ Regulation of Muscle Control.Journa
l of Biological Chemistry 270(6)2557-2562を参照のこと。したがって、cTn
I上の相同部位が結合に有用であることが提案されている。好ましくは、TnIおよ
びTnTは、ほぼ等モル比で添加される。この量は、0.02mg/mL〜5mg/mLであり得る
。免疫学的部位が変化されないことは重要である。エピトープ部位が、アッセイ
に使用される抗体に依存して変化することが理解されるべきである。抗体の生成
は、例えば、Bodorら,(1992)Development of Monoclonal Antibodies for an A
ssay of Cardiac Troponin-I and Preliminary Results in Suspected Cases of
Myocardial Infarction,Clinical Chemistry 38(11)2203-2214によって当該
分野で記載される。さらに、トロポニンIまたはトロポニンTについてアッセイ
するいくつかの方法は、市販されている。
本発明は、トロポニン複合体を含みそして維持するためのコントロールマトリ
クスとして有用に定義された基礎物質を使用し、この基礎物質はpH5〜8を維持す
るための緩衝剤の水溶液、抗菌剤を含み、そしてカルシウムイオンまたはタンパ
ク質を含む他の安定化剤を含み得る。
定義された基礎物質は、トロポニンIまたはトロポニンIフラグメント、トロ
ポニンCと複合体化したトロポニンTまたはトロポニンTフラグメント、あるい
はトロポニンTと複合体化したトロポニンIを含むストック溶液およびコントロ
ールを調製するために利用され得る。
得られる溶液は、液体または冷凍で貯蔵され得るか、あるいは適切な充填剤が
含まれるならば凍結乾燥され得る。
最終アッセイコントロールに利用されるものよりもトロポニンIおよび/また
はトロポニンTのより高い濃度でストック溶液を調製することが好ましい。スト
ックは、冷凍または凍結乾燥して貯蔵され得、そしてコントロールまたはキャリ
ブレーション標準の適切な希釈を調製するために必要な場合、融解または再構成
され得る。したがって、上記のように調製された複合体は、共有結合後に適切な
緩衝液に緩衝液交換され得る。
ストックおよびコントロールを調製するために使用される水溶液は、緩衝液を
含み得、そして緩衝液は、一般的には、5〜8のpH範囲で機能する緩衝液のいず
れかであり得る。これらの緩衝液のうち、好ましい機能の緩衝液は、6〜8のpH
範囲にある。緩衝液の濃度は、10mM〜200mMである。緩衝液濃度をより低く、20
〜100mMの範囲で保つことが好ましい。好ましくは、キャリブレーターまたはコ
ントロールに使用される緩衝液は、ウシ血清アルブミン(BSA)を含む。特定の
実施態様では、緩衝液は、BSA、糖、塩、および抗菌剤を含む。有用な緩衝液の
例は、HEPS、MES、またはTRIS緩衝液を含む。好ましい緩衝液は、pH6〜7で6.5%
BSAを含むMES緩衝液を含む。他の好ましい緩衝液は、同時係属出願U.S.S.N.08/
400,158(参考として本明細書に援用される)に記載のように還元剤、安定化タ
ンパク質、キレート剤、および塩を含む。
あるいは、緩衝液の代わりに、フラグメントは、血清(例えば、ヒトまたはウ
シ)に、あるいは希釈した血清(例えば、BSAを含むMES緩衝液で1:1に希釈した
血清)に加えられる。
抗菌剤および抗真菌剤は、増殖を抑制するために添加され得、そしてゲンタマ
イシン(gentamycin)、クロトリマゾール(clortrimazole)、アジ化ナトリウ
ム、マイコスタチン、チメロサール、Kathon、および/またはProcli n300のよ
うな従来技術で見いだされた濃度で従来技術で普通に見いだされる薬剤を含み得
る。
さらに、アルブミン、ゼラチン、オボアルブミン(ovalalbumin)、またはカ
ゼインのような安定化タンパク質が含まれ得る。安定化タンパク質の濃度は、0
〜15%および好ましくは7〜12%であり得る。好ましくは、安定化タンパク質は
アルブミンであり、そして好ましくはアルブミンは、実質的にプロテアーゼを含
まない。
溶液が低いプロテアーゼ活性を有し、したがってアプロチニンおよび「Protea
se Inhibitor」(Sigma)のようなプロテアーゼインヒビターが効果的であるこ
とが好ましい。しかし、本明細書に記載の組換えフラグメントの使用は、全長タ
ンパク質が感受性である程度にはプロテアーゼ活性に対して感受性ではない。イ
ンヒビターは添加され得、そして製造業者の推奨濃度で使用され得る。
他のプロテアーゼインヒビターの例には、ベンザミジン、(2S,3R)-3-アミノ-2
-ヒドロキシ-5-メチルヘキサノイル]-Val-Val-Asp(Amastatin-Sigma)、[2S,3R
]-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-[4-ニトロフェニル]-ブタノイル-L-ロイシン、Ant
ipain、[2S,3R]-3-アミノ-2-ヒドロキシ-5-メチルヘキサノイル」-Val-Val-Asp
(Epiamastatin-Sigma)、([2S,3R]-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノ
イル)-L-ロイシン(Epibestain-Sigma)、Foroxymithine、アセチル-Leu-Leu-Ar
g-al(Leupeptin-Sigma)、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタン酸、4-ア
ミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、N-(α-ラムノピラノシルオキシ-ヒド
ロキシホスフィニル)-Leu-Trp、およびフェニルメタンスルホニルフルオリド(P
MSF)が挙げられる。実質的にプロテアーゼを含まない溶液を提供するための手
段が、実質的にプロテアーゼを含まないタンパク質(例えば、実質的にプロテア
ーゼを含まないアルブミン)を使用することであることが、最も好ましい。
所望であれば血清が含まれ得る。また、14,000Kdフラグメントに類似のフラグ
メントの使用は、プロテアーゼの関連を実質的に排除する。
この方法によって調製されるコントロールは、当該技術分野で公知であるバル
ク剤を添加することによって凍結乾燥され得るが、コントロールはまた液体でも
あり得る。さらに、液体コントロールは凍結されて、さらに貯蔵期間を増加され
得る。
MI患者血清においてcTnIおよびcTnTを検出するために現在使用されるアッセイ
は、サンドイッチアッセイを利用する。しかし、本発明の複合体はまた、血清に
おけるcTnIまたはcTnTの検出のための競合型アッセイを設計するために使用され
得る。このようなアッセイでは、cTnIまたはcTnTに対する抗体の飽和以下の量が
、固相(例えば、マイクロタイタープレートまたはラテックスビーズ)に結合さ
れる。本発明の複合体は、例えば、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペ
ルオキシダーゼで標識される。一定量の標識された複合体は、未知量のcTnIおよ
び/またはcTnTを含むMI患者血清のサンプルと混合される。次いで、試験サンプ
ルを、固相に結合したcTnIおよび/またはcTnT抗体の飽和以下の量に結合させら
れる。サンプル中のcTnIおよび/またはcTnTは、抗体コーティングした固相との
結合について標識された複合体と競合する。結合していないタンパク質を洗浄に
よって除去し、そして固相に結合した標識した複合体の量を測定する。固相上の
抗体に結合した標識した複合体の量は、血清に存在するcTnIまたはcTnTの量を示
す。血清が高濃度のcTnIまたはcTnTを含む場合、標識された複合体と効果的に競
合し、
そして標識された複合体は、ほとんどまたは全く抗体コーティングされた固相と
結合しない。
TnI、TnT、およびTnCのフラグメントのいくつかのアミノ酸の変化は、特異的
アッセイ抗体が結合するエピトープで生じる変化、およびTnCに対する結合ドメ
インのアミノ酸の変化を除いて、その性能に影響を及ぼし得ない。影響は、調製
された複合体のゲル電気泳動および免疫学的分析によって容易に決定され得る。
実施例1心臓マーカーについての規定基礎物質の調製
抗酸化剤(例えば、200ミリグラムのグルタチオン、200ミリグラムのグルコー
ス、50mgのアスコルビン酸、および1.1ミリリットルのフェノール)、約2.7グラ
ムのL-乳酸、約225ミリグラムの塩化カルシウムまたは1〜3mMカルシウムイオ
ンを提供するための他のカルシウム塩、抗菌および抗真菌剤(例えば、約20ミリ
グラムのクロトリマゾール、35ミリグラムのゲンタマイシン、および約1ミリリ
ットルのProclin 300)、約95グラムのプロテアーゼを含まないBSA、ならびに約
1グラムのゼラチンを、塩化ナトリウム(約30グラム)のような塩も含む約pH7.
3の50mM TRIS緩衝化水溶液中で合わせて、約1リットルの基礎物質を提供する。
100ミリリットルの水に1グラムのゼラチンを添加しそしてゼラチンが溶解す
るまで穏やかに加熱することによってゼラチンを溶解することにより、溶液中に
ゼラチンを添加することが最良である。次いで、ゼラチン含有溶液を、基礎物質
に添加する。
得られた溶液を、約0.22ミクロンフィルターのようなどんな細菌をも除去する
ために十分なフィルターを使用して濾過する。低タンパク質結合フィルターが好
ましい。
実施例2トロポニンIおよびトロポニンTの架橋 トロポニンIストック溶液およびコントロールの調製
架橋を、GreaserおよびGergely(1971)に記載されるEDC方法を使用して達成し
た。0.1M KCl、0.2mM CaClを含むpH6での20mM Mes緩衝液に、5.7mMの最終濃度で
新しく調製したNHSを添加し、次いでTnCを添加して0.2mg/mLを提供した。混合物
を、室温にて15分間インキュベートした。TnCを、5.7mM EDC(最終濃度)の添加
、次いで室温での30分間のインキュベーションによって活性化した。活性化工程
を、βメルカプトエタノール(20mM最終濃度)の添加によって終結した。PTU緩
衝液中のCNBr-rTnIイソ形態(TnI 153)を、0.175mg/mLの最終濃度で添加した。
混合物を室温にて2時間インキュベートした。複合体を緩衝液交換する。架橋し
た複合体の活性を、Stratus TnIイムノアッセイを使用して測定した。共有結合
によって架橋した複合体の存在を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で確認した
。得られた複合体は、天然の複合体よりも、環境(温度を含む)に対して感受性
ではない。得られたストック溶液を、0.22ミクロン以下の低タンパク質結合フィ
ルターを使用して滅菌濾過する。ストック溶液は、2年間より長く−20℃凍結保
存し得る。ストック溶液は、1週間より長く2〜8℃で保存し得る。
ストック溶液を使用して、実施例1で調製された規定基礎物質または他の基礎
物質中でストック溶液を希釈することによって、目的の臨床的範囲(約0〜200n
g/mL)でトロポニンIの希釈溶液を調製する。
実施例3共有結合複合体の安定性および免疫学的活性
実施例2で調製された(希釈されたストック溶液の)トロポニンI複合体の異
なる濃度を表す種々のアリコートを、種々の温度で貯蔵した。アリコートを、ト
ロポニンI濃度についてStratus II Immunoassay分析機で分析した。濃度の変化
を時間に対して評価した。図3は、45℃で貯蔵した複合体の2つの濃度(25ng/m
Lおよび45ng/mLのトロポニンI)の希釈ストックの安定性を示す。希釈物は、45
℃で3週間より長く安定であった。図4は、28ng/mL溶液を4℃、25℃、37℃、
および45℃での安定性について評価し、そしてすべての温度で少なくとも6週間
安定であったことを示す。図5は、市販で入手可能なTnCの3つの異なるロット
ナンバーを用いて調製した場合の複合体の安定性を示す。すべてのロットは、45
℃で10日間超にわたって安定であった。全長rTnI-TnC複合体もまた、調製した。
45℃での架橋した複合体の安定性を、図6に示す。
実施例4カルシウムイオンに対する複合体の非依存性
複合体のポリアクリルアミドゲルを評価した。レーン2〜4は、EDTA(金属キ
レート剤)の存在下で共有結合rTnI-153:TnC複合体の電気泳動パターンを示す。
レーン5は、EDTAの非存在下での非共有結合rTnI-153:TnC複合体を示す。レーン
6〜7は、EDTAの存在下での非共有結合rTnI-153:TnC複合体の電気泳動パターン
を示す。複合体の上部バンドの消失は、レーン6〜7で明らかであるが、レーン
2〜4では明らかではない。レーン8はTnCである。図7を参照のこと。
実施例5トロポニンTコントロールの調製
トロポニンTでトロポニンIが置換されること以外は、実施例2を繰り返す。
ストック溶液のアリコートを、0.01ng/mL〜10ng/mLの目的の臨床範囲に希釈する
。アリコートを、Boehringer Mannheimから市販のアッセイのようなトロポニン
Tアッセイを使用して、免疫学的活性について分析し得る。
実施例6トロポニンI、トロポニンC、およびトロポニンTの三重複合体の調製
トロポニンIおよびトロポニンTの両方とも活性化したトロポニンCに添加す
る以外は、実施例2を繰り返す。三重複合体を、EDTAの存在下で電気泳動の実行
を使用して観察し得る。トロポニンI免疫学的活性を、実施例2に記載のように
評価し得、そしてトロポニンT免疫学的活性を、実施例5に記載のように評価し
得る。
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