JP2002503463A - ヒト輸送関連分子 - Google Patents

ヒト輸送関連分子

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JP2002503463A
JP2002503463A JP2000531554A JP2000531554A JP2002503463A JP 2002503463 A JP2002503463 A JP 2002503463A JP 2000531554 A JP2000531554 A JP 2000531554A JP 2000531554 A JP2000531554 A JP 2000531554A JP 2002503463 A JP2002503463 A JP 2002503463A
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polynucleotide
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JP2000531554A
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オウ−ヤング、ジャニス
ヒルマン、ジェニファー・エル
ラル、プリーティ
ゲグラー、カール・ジェイ
コーレイ、ニール・シー
ユエ、ヘンリー
バンドマン、オルガ
ボーグン、マライア・アール
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Incyte Pharmaceuticals Inc
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    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
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    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Abstract

(57)【要約】 本発明は、ヒト輸送関連分子(TRANP)並びにTRANPを同定及びコードするポリヌクレオチドを提供する。また、本発明は発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニスト、及びアンタゴニストを提供する。更に、本発明はTRANPの発現に関わる疾患の治療または予防の方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 技術分野 本発明は、ヒト輸送関連分子の核酸配列およびアミノ酸配列、並びに癌および
輸送障害の診断・予防・治療におけるこれらの配列の利用法に関するものである
【0002】 発明の背景 真核細胞は脂質2重層膜によって囲まれ、機能的に異なる膜結合性コンパート メントに細分される。膜は、サイトゾル、細胞外環境、及び各細胞間の小器官の
間の本質的な相違を維持する。脂質膜が必須の栄養素の極性分子輸送に対して高
度に不透過性であるので、脂質膜を横切る、細胞内小器官の間にある代謝性の廃
棄産物、細胞シグナル伝達分子、巨大分子およびタンパク質は、種々の輸送関連
分子に媒介されなければならない。
【0003】 細胞内小器官または小胞の間の分子の輸送は細胞機能に必須である。真核生物
のタンパク質は小胞体(ER)の中で合成され、ERから翻訳後のプロセシング及び
ソーティングのためにゴルジ体まで送られ、更にゴルジ体から細胞内および細胞
外の特定の行先に輸送される。このタンパク質分子の細胞内および細胞外の輸送
は、小胞輸送と呼ばれる。輸送は、ドナーの細胞内小器官膜から出芽する特定の
小胞の中にタンパク質分子がパッケージングされ、それが輸送されて標的の膜と
融合して完了する。特定の細胞型は特有の小胞輸送経路を利用する。例えば、内
分泌腺におけるホルモンや他の分泌されたタンパク質は、原形質膜を通して細胞
外部への細胞外放出のために分泌顆粒に集められる。マクロファージでは、ペル
オキシダーゼ及びプロテアーゼがリソソームに集められる。脂肪細胞および筋細
胞では、グルコース輸送体が、インシュリンの刺激に応じて原形質膜と融合する
小胞内に蓄えられる。
【0004】 輸送小胞の形成、ターゲティング、及び融合、並びにタンパク質のこれらの小
胞中への適切なソーティングのために多くのタンパク質が必要である。小胞輸送
機構には、ドナー膜からの小胞の出芽を促進するコートタンパク質、互いに結合
して標的の膜に小胞をドッキングさせる小胞特異性識別子および標的特異性識別
子(v-SNARE及びt-SNARE)、SNARE複合体に結合して標的の膜への小胞の融合を 誘導するタンパク質が含まれる。
【0005】 低分子量GTP結合タンパク質のRabファミリーは、小胞輸送の重要な制御因子で
ある。種々のRabタンパク質が、異なる細胞内コンパートメント及びそれらの小 胞のキャリアと関連している。Rabタンパク質のGTP結合及び加水分解によって小
胞輸送の特異性と方向が制御される。40以上のRabタンパク質が、広範な機能的 特異性を示す35〜95%の間の同一性を共有する配列を有する哺乳類の細胞におい て同定されている。通常、これらのタンパク質は特異的な細胞内小器官と関連し
ている。例えば、Rab1はER及びゴルジ体に対して局在し、Rab2は移行性のER及び
cisゴルジネットワークに局在し、Rab3は分泌性の小胞に局在し、Rab4は早期の エンドソームに局在し、Rab5は早期のエンドソーム及び原形質膜に対して局在し
、 Rab6は内側およびtransゴルジシスターネ(Golgi cisternae)に対して局在し 、Rab7 は遅発のエンドソームに対して局在し、 Rab9は遅発のエンドソーム及び
transゴルジネットワークに対して局在する。さらに、RABタンパク質は特異的な
組織のタイプに対して局在する。RAB17は別個の先端、基底外側、及び経細胞輸 送性の輸送経路を含む上皮細胞に見られ、一方Rab3a、Rab15、及びRab23は主と して脳および神経系において発現される(Kuge,O.ら(1993) J.Cell.Biol.123:17
27-1734; Olkkonen,V.M.ら(1994) Gene 138:207-211; Olkkonen,V.Mら(1997) In
t.Rev.Cytol.176:1-85; 及びStahl. B. (1994) J.Biol.Chem.269:24770-24776)
【0006】 ゴルジ装置は小胞輸送経路の中心に位置し、シスターネのスタックからなり、
それらはスタックのどちらかの面のcis−及びtrans−ゴルジネットワークを伴う
。分子は、1つのコンパートメントから出芽して次のものと融合する小胞によっ て、ゴルジ装置を含む連続コンパートメントを通して輸送される。有糸分裂にお
いて、ゴルジ装置は何百もの小胞に分解される。次にこれらの断片は2つの娘細 胞の間で分割され得る。有糸分裂のゴルジ断片の大半は、ゴルジスタックによる
順行性および逆行性の輸送を担うcoatomer I 依存性機構 (coatomer I-dependen
t mechanism;COPI)によって生成された小さな一様性の小胞である。また、より
大きくより不均一性の断片を生成するCOPI-非依存性経路が存在する。有糸分裂 におけるゴルジ断片の蓄積が膜融合の抑制に関連すると仮定される。p115タンパ
ク質は、3つのゴルジ輸送ステップ、即ち(1)ゴルジ内の輸送、(2)ゴルジ 輸送への小胞体、及び(3)経細胞輸送に関連づけられてきた。p115は膜融合の
前のドッキングステップに関与することが明らかにされている。ゴルジ膜に対す
るp115の結合は、膜に対する改変の結果として有糸分裂の条件下で特異的に阻害
される。in vitroでの早期の有糸分裂のゴルジ分解は、過剰なp115によるp115受
容体の占有によって抑制される。これらの資料は、p115結合の有糸分裂の抑制が
小胞ドッキングの早期の作用による膜融合の阻害の一因となることを示している
(Sapperstein,S.K.ら(1996) J.Cell Biol.132:755-767)。
【0007】 ER及びゴルジからの出芽の過程における小胞は、エンドサイトーシスの小胞の
クラスリン被膜と類似のタンパク質被膜で覆われている。タンパク質被膜は、サ
イトゾルの前駆体分子から構築され、細胞小器官膜の出芽領域に制限される。コ
ートタンパク質(COP)被覆小胞は、小胞が標的の膜と融合することを可能にす るためにアンコーティング(脱被覆)される。
【0008】 COPコートは2つの主要な構成要素、即ちグアノシントリホスファターゼ及び被
膜プロトマー(coatomer)からなる。タンパク質被膜の中に組込まれるまで個々
のタンパク質はサイトゾル的(cytosolic)である。coatomerは7つのタンパク質、
即ちalpha−、beta−、beta'−、gamma−、delta−、epsilon−及びzeta−COPの
等モルの複合体である。coatomer複合体は、dilysineモチーフと結合し、ゴルジ
のnon-clatherin被覆小胞と可逆的に結合する。更に、これらの小胞はERからゴ ルジを経てtrans−ゴルジネットワークまでの輸送を媒介する。coatomer複合体 はゴルジ膜からの出芽に必要とされ、またdilysineモチーフ含有タンパク質のゴ
ルジからERへの逆行性の輸送に必須である。zeta−COPに向けられたポリクロー ナル抗体は、ゴルジ膜に対するcoatomerの結合を遮断し、またゴルジシスターネ
におけるCOP被覆小胞の構築を妨げる。条件致死のアッセイ、チャイニーズハム スター卵巣(CHO)細胞の温度感受性のepsilon−COP変異体は、分泌されたタン パク質および必須の膜の適切なERからゴルジへの輸送のために、また低濃度のリ
ポタンパク質受容体の正常なエンドサイトーシスの再循環のために、epsilon−C
OP及び関連するCOP coatomerがゴルジ構造の確立および保持に必要であることを
示す(Kuge,O.ら(1993) 前出; 及び Cosson, P.ら(1996)EMBO J. 15:1792-1798 )。 核と細胞質の間のタンパク質とRNAの輸送は、核膜孔複合体(NPC)を通して起こ
る。NPC媒介輸送は、核膜を通して両方向で起こる。核の全てのタンパク質は、 細胞質、即ちそれらの合成部位から移入される。トランスファーRNA及びメッセ ンジャーRNAは、核、即ちそれらの合成部位から細胞質、即ちそれらの機能部位 へと移出される。核内低分子RNAのプロセッシングには、細胞質への移出、タン パク質の組立て及び核内低分子リボ核タンパク質(snRNP)の生成のための過度 のメチル化のような修飾、及びその後のsnRNPの核への移入が含まれる。リボソ ームの組立てには、細胞質からの初期のリボソームタンパク質の移入、RNAを伴 うそれらのリボソームサブユニットへの組込み、及び細胞質への移出を必要とす
る(Gorlich,D.及びMattaj, I.W. (1996) Science 271:1513-1518)。
【0009】 タンパク質とmRNAのNPCを横切る輸送は選択的であり、核局在化シグナル(NLS
)に依存し、通常は核輸送因子との結合を必要とする。転写、キャップ形成、ス
プライシング、及びポリアデニル化において、核のmRNAは多数のタンパク質と結
合する。これらの結合は、mRNAの合成、プロセッシング、及びその後の細胞質へ
の輸送の種々の段階と協調する。幾つかのタンパク質は核のmRNAがNPCを横切り 輸送される前に解離され、一方で別のものは核のmRNAがNPCを横切り輸送されて 核に再移入された直後に解離される。S.pombe及びS. cerevisiaeにおけるmRNA移
出変異体の実験は、mRNAと直接結合する核タンパク質における変異を示し、NPC におけるmRNAのドッキングをもたらすための仮説を設けている(Brown,J.A.ら(1
995) J.Biol.Chem. 270:7411-7419)。
【0010】 欠陥のある核の輸送は癌において一定の役割を果たしている可能性がある。BR
CA1タンパク質にはimportin αと総合作用する3つの潜在的NLSが含まれ、またそ
れらはimportin/NPC経路によって核に輸送される。乳癌細胞において、BRCA1タ ンパク質は細胞質に異常に局在する。6つの異なる乳癌細胞系において発現され る野生型BRCA1タンパク質は細胞質に局在する。しかし、4つの非乳癌細胞系で発
現される野生型BRCA1タンパク質は核に局在し、それは乳癌細胞系におけるBRCA1
タンパク質のミスロケーション(mislocation)がNPC核内移行経路における欠陥の
ためである可能性を示唆している(Chen, C.F.ら(1996) J.Biol.Chem.271:32863
-32868)。 27件中10件の乳癌の研究において、p53腫瘍サプレッサータンパク質が細胞質の 中に発見されている。細胞質のp53タンパク質と共に乳癌から得られたp53 cDNA の大半は野生型であった。対照的に、核のp53タンパク質と共に乳癌から得られ たp53 cDNAには、種々のミスセンスの変異とナンセンスの変異が含まれていた。
そのことは、幾つかの乳癌においては、細胞の核における作用部位から離れた、
細胞質におけるタンパク質の隔離によってp53の腫瘍抑制活性が不活性化される ことを示している。また、細胞質の野生型p53はヒトの頸部癌の細胞系において 発見されている(Moll, U.M.ら(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7262-7266;
及びLiang, X.H.ら(1993) Oncogene 8:2645-2652)。
【0011】 また、膜を横切る輸送は輸送体、即ちポンプ、膜貫通タンパク質に依存し、そ
れは特定の種類の分子と結合し、結合分子を膜を横切り輸送するために一連の立
体配置的変化を受ける。ポンプによる輸送は、受動的な濃度依存機構によって起
こり得て、或いはATPの加水分解もしくはイオン勾配のようなエネルギー源と関 連し得る。例としては、促通性の輸送体、イオン濃度によって駆動される2次的 な活性共輸送体および対向輸送体、並びにMHCクラスI分子に対する抗原性ペプチ
ドのターゲティング及び多剤耐性に関与する活性なATP結合カッセット輸送体が 挙げられる。輸送された基質は、栄養素およびイオンから多種多様な薬物、ペプ
チド、及びタンパク質にわたる。
【0012】 大抵の哺乳類の細胞のエネルギーの要求は、血液中を循環するグルコースの連
続的な供給によって満たされる。グルコースは、原形質膜に存在する特定のグル
コース輸送体分子によって細胞内に入る。そのファミリーには、哺乳類の組織の
典型的な受動的輸送体および細菌からの活性なH(+)結合の糖輸送体が含まれる。
これらの輸送体は、特徴として大きな親水性の細胞質領域によって離隔された6 つの推定上の膜貫通αへリックスの2つのグループを含む。また、配列のN末端及
びC末端領域は細胞質であると予想される。ヒトの赤血球グルコース輸送体の生 物物理学的研究は、膜貫通αへリックスが親水性のチャネルまたは膜を横切り延
在する基質結合性の間隙の形成に関連することを示している。基質転移の機構に
は、立体配置的変化による膜の各面に対する基質結合部位の交互の露出が含まれ
る(Pessin,J.E.及びBell G.I.(1992) Annu Rev Physiol 54:911-930)。
【0013】 輸送体は、pH、薬物の排泄、及び細胞のK+/Na+バランスの調節において主要な
役割を担っている。モノカルボキシレート陰イオン輸送体は、L−乳酸、ピルビ ン酸、ケトン体酢酸塩、アセト酢酸、及びβ−ヒドロキシ酪酸を含む広範な基質
特異性を有するプロトン共役共輸送体(proton-coupled symporters)である。現 在まで少なくとも7つのアイソフォーム(isoforms)が同定されている。アイソフ ォームはTM6とTM7の間に大きな細胞内ループを有する12の膜貫通(TM)ヘリカル
ドメインを有し、また解糖において乳酸とともに化学量論的に生成された水素イ
オンを除去することによって、細胞内のpHを維持する重要な役割を担っていると
予想される。最も特徴的なH(+)モノカルボキシレート輸送体は、L−乳酸および 広範な他の脂肪族のモノカルボキシレートを輸送する赤血球膜である。別の細胞
は、異なる基質及びインヒビター選択性を有するH(+)結合モノカルボキシレート
輸送体を有する。特に心筋および腫瘍細胞は、L−からD−乳酸の立体選択性を含
む一定の基質に対するKm値が異なり、またインヒビターに対する選択性が異なる
輸送体を有する。腎臓上皮および腸の管腔の表面にNa(+)モノカルボキシレート 共輸送体が存在し、それによって乳酸、ピルビン酸、およびケトン体をこれらの
組織に取込むことが可能となる。さらに、腎臓、腸、及び肝臓を含む器官におい
て、有機的陽イオン及び有機的陰イオンに対する特異的かつ選択的な輸送体が存
在する。有機的陰イオン輸送体は、電子求引性の側鎖を有する疎水性の荷電分子
に対して選択的である。アンモニウム輸送体のような有機的陽イオン輸送体は、
種々の薬物および内因性の代謝産物の分泌を媒介し、また細胞間のpHの保持に寄
与する(Poole,R.C.及びHalestrap, A. P. (1993) Am. J. Physiol. 264:C761-C
782; Price, N.T.ら(1998) Biochem. J. 329:321-328; 並びにMartinelle, K.及
びHaggstrom, I. (1993) J. Biotechnol. 30: 339-350)。
【0014】 ATP-結合カセット(ABC)輸送体は、生体膜を横切り小さな親水性の分子を輸 送する膜タンパク質のスーパーファミリーの構成要素である。それらは、各々2 つの部分、即ち複数の膜貫通セグメントを有する膜貫通ドメイン及びヌクレオチ
ド結合ドメイン、を含む2つの相同的な部分(homologous halves)を有する。哺乳
類のABC輸送体は、例えば多剤耐性輸送体および嚢胞性線維症の膜貫通制御因子 タンパク質のような完全な輸送体として、或いは、例えば抗体プロセッシングに
関する輸送体、即ち2量体化して活性TAP輸送体を形成するTAP1及びTAP2タンパク
質のような部分輸送体(half transporters)として発見されている。2つの部分AB
C輸送体は、ヒトのペルオキシソーム膜、副腎白質萎縮症タンパク質(ALDP)及 び70kDaのペルオキシソームの膜タンパク質(PMP70)において同定されている。
副腎白質萎縮症遺伝子における変異は、X-連鎖の副腎白質萎縮症、脂肪酸の超長
鎖のペルオキシソームのβ-酸化の先天的エラーの原因となる。PMP70遺伝子の突
然変異は、ツェルヴェーガー症候群、ペルオキシソーム生物発生の先天的エラー
の患者で発見されている。多剤耐性(MDR)は、ABC輸送体ファミリーの別の構成
要素、P糖タンパク質の過剰生産に起因する。MDRは、主としてP糖タンパク質に よる耐性菌からの薬物放出の増加の結果である。P糖タンパク質は、ヌクレオチ ド結合のコンセンサス配列に隣接する6つの疎水性セグメントを含む2つの相同的
な部分を有する。疎水性のセグメントが膜チャネルを形成するのに対して、ヌク
レオチド結合部位は薬物輸送の促進に関与し得る(Saurin.W.ら(1994) Mol. Mic
robiol.12:993-1004; Shani. N.ら(1996)J.Biol.Chem.271:8725-8730; 並びにKo
ster,W.及びBohm,B.(1992) Mol. & Gen.Genet. 232:399-407)。
【0015】 多くのヒトの疾病および障害の病因は、細胞内小器官または細胞表面に対する
膜を通したタンパク質の輸送における欠陥に起因する可能性がある。膜結合型の
輸送体およびイオンチャネルの輸送における欠陥は、例えば嚢胞性線維症、グル
コース−ガラクトース吸収不良症候群、高コレステロール血症、フォンギールケ
病、ある一定の型の真性糖尿病のような幾つかの障害に関係する。異常なホルモ
ンの分泌は、例えば尿崩症(バソプレッシン)、高血糖および低血糖(インシュ
リン、グルカゴン)、グレーブス病および甲状腺腫(甲状腺ホルモン)、クッシ
ング病およびアジソン病(副腎皮質刺激ホルモン)のような障害に関係する。膜
を横切り小さな分子を輸送できないことの原因となる単一遺伝子欠陥の疾病には
、例えばシスチン尿症、イミノグリシン尿症、Hartup病、ファンコニ病が含まれ
る(van't Hoff. W.G. (1996) Exp. Nephrol. 4:253-262; Talente,G.M.ら(1994
) Ann. Intern. Med. 120:218-226; 並びにChillon,M.ら(1995)New Eng. J. Med
. 332:1475-1480)。
【0016】 癌細胞は、過剰な量のホルモンまたは他の生物学的に活性なペプチド類を分泌
する。癌細胞による生物学的に活性なペプチド類の過剰な分泌に関連する障害に
は、例えば膵島細胞腺腫−島細胞腫瘍によってインシュリン分泌が増加すること
による空腹時の低血糖、副腎髄質および交感傍神経節のクロム親和細胞腫から分
泌されたエピネフリン及びノルエピネフリンの増加による高血圧症、並びに 例えば腸の腫瘍から分泌された過剰な量のポリペプチドホルモン、セロトニン、
ブラジキニン、ヒスタミン、及びプロスタグランジンに起因する腹部の痙攣、下
痢、及び弁膜性心疾患を含むカルチノイド症候群が含まれる。生物学的に活性な
ペプチド類の異所性の合成および分泌には、例えば肺および膵癌におけるACTH及
びバソプレッシン、肺および膀胱癌における副甲状腺ホルモン、肺および乳癌に
おけるカルシトニン、並びに延髄の甲状腺癌における甲状腺刺激ホルモンが含ま
れる(Schwartz, M.Z.(1997) Semin. Pediatr. Surg. 3:141-146; 並びにSaid,
S.I.及びFaloona, G.R.(1975) N. Engl. J. Med. 293:155-160)。
【0017】 新規なヒト輸送関連分子及びこれらの分子をコードするポリヌクレオチドの開
示は、癌及び輸送障害の診断・治療・予防に役立つ新たな組成物を提供して従来
技術における要求を満たすものである。
【0018】 発明の概要 本発明は、まとめて「TRANP」と、また個別には「TRANP-1」、「TRANP-2」、「TRANP-3」
、「TRANP-4」、「TRANP-5」、「TRANP-6」、「TRANP-7」、「TRANP-8」、及び「TRANP-9」と
称される実質的に精製されたポリペプチド、ヒト輸送関連分子を特徴とする。一
態様において、本発明はSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4
、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並 びにそれらの断片からなるグループより選択されたアミノ酸配列を有する実質的
に精製されたポリペプチドを提供する。
【0019】 また、本発明はSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ
ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9又はそれ らの配列の任意の断片のアミノ酸配列に対して少なくとも90%以上のアミノ酸同 一性を有する実質的に精製された変異体を提供する。更に本発明はSEQ ID NO:1 、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ I
D NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれらの断片からなるグループよ
り選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離され精製された
ポリヌクレオチド配列を提供する。更に本発明にはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、
SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID
NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれらの断片からなるグループより選択されたア ミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対して少な
くとも90%以上のポリヌクレオチド同一性を有する単離され精製されたポリヌク レオチドの変異配列が含まれる。 更に、本発明はSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID
NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれ らの断片からなるグループより選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチド配列に対して相補的な単離され精製されたポリヌクレ
オチド配列だけでなく、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4
、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並 びにそれらの断片からなるグループより選択されたアミノ酸配列を含むポリペプ
チドをコードするポリヌクレオチド配列と厳密な条件の下でハイブリダイズする
単離され精製されたポリヌクレオチドを提供する。
【0020】 更に、本発明はSEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、
SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18
並びにそれらの断片からなるグループより選択されたポリヌクレオチド配列を含
む単離され精製されたポリヌクレオチドを提供する。更に本発明はSEQ ID NO:10
、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、
SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18並びにそれらの断片からなるグ
ループより選択されたポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列に対して相
補的な単離され精製されたポリヌクレオチドだけでなく、SEQ ID NO:10、SEQ ID
NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID N
O:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18並びにそれらの断片からなるグループよ
り選択されたポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列に対して少なくとも
90%以上のポリヌクレオチド同一性を有する単離され精製されたポリヌクレオチ ドの変異配列が含まれる。 更に、本発明はSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID
NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれ らの断片からなるグループより選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチドの少なくとも断片を含む発現ベクターを提供する。別
の態様では、その発現ベクターは宿主細胞に包含される。
【0021】 更に、本発明はSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ
ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9又はそれ らの断片のアミノ酸配列を含むポリペプチドの製造方法を提供し、その方法には
、(a)前記ポリペプチドの発現に適した条件下で、TRANPをコードするポリヌ クレオチド配列の少なくとも断片を含む発現ベクターを含む宿主細胞を培養する
過程と、(b)その宿主細胞の培地からポリペプチドを回収する過程とが含まれ
る。
【0022】 更に、本発明はSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ
ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそ れらの断片のアミノ酸配列からなるグループから選択された実質的に精製された
ポリペプチドを適切な製薬用担体と共に含む医薬品成分を提供する。
【0023】 更に、本発明には前記ポリペプチドの精製されたアゴニストおよび精製された
アンタゴニストだけでなく、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID
NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:
9並びにそれらの断片のアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合する精製された 抗体が含まれる。また本発明はTRANPの活性または発現の増大に関連する癌の治 療又は予防の方法を提供し、その方法には、そのような治療が必要な被験者に対
してSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ
ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれらの断片か らなるグループより選択されたポリペプチドのアンタゴニストを有効な量投与す
る過程が含まれる。 更に、本発明はTRANPの活性または発現の増大に関連する輸送障害の治療又は予 防の方法を提供し、その方法には、そのような治療が必要な被験者に対してSEQ
ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6
、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれらの断片からなるグ ループより選択されたポリペプチドのアンタゴニストを有効な量投与する過程が
含まれる。
【0024】 更に、本発明はTRANPの活性または発現の低下に関連する輸送障害の治療又は 予防の方法を提供し、その方法には、そのような治療が必要な被験者に対してSE
Q ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO
:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれらの断片からなる グループより選択されたポリペプチドを有効な量投与する過程が含まれる。
【0025】 更に、本発明は核酸を含む生物学的サンプルにおけるSEQ ID NO:1、SEQ ID NO
:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ
ID NO:8、及びSEQ ID NO:9並びにそれらの断片からなるグループより選択され たポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの検出方法を提供し、その検出方
法には、(a)生物学的サンプルの少なくとも1つの核酸と、SEQ ID NO:1、SEQ
ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7
、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9又はそれらの断片を含むポリヌクレオチドをコ
ードするポリヌクレオチド配列の相補配列とをハイブリダイズさせて、ハイブリ
ダイゼーション複合体を形成する過程と、(b)前記ハイブリダイゼーション複
合体の存在が、前記生物学的サンプルにおけるTRANPをコードするポリヌクレオ チドの存在と相関性を有する、前記ハイブリダイゼーション複合体を検出する過
程とが含まれる。一態様においては、前記ハイブリダイゼーション過程の前にポ
リメラーゼ連鎖反応法により生物学的サンプルの核酸を増幅する。
【0026】 発明を実施するための形態 本発明のタンパク質、核酸配列、及び方法について説明する前に、本発明は、
ここに開示した特定の方法論、プロトコル、細胞系、ベクター、及び試薬に限定
されるものではなく、その実施形態は変更可能であることを理解されたい。また
、ここで使用した専門用語は、特定の実施例のみを説明する目的で用いたもので
あり、特許請求の範囲のみで限定される本発明の範囲を限定することを意図した
ものではないことも理解されたい。
【0027】 請求の範囲を含む本明細書において、単数形の「或る」及び「その(この)」
の表記は、文脈からそうでないことが明らかである場合以外は、複数の意味も含
むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」の表記には、複数のそ
のような宿主細胞が含まれ、この「抗体」の表記は、1またはそれ以上の抗体及
び当業者に周知のその等価物なども表している。
【0028】 特別に定義されていない限り、本明細書における全ての専門用語及び特定の用
語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に一般に理解され
るものと同じ意味を有する。ここで説明したものと類似あるいは等価な方法や材
料を本発明の実施や試験において使用可能であるが、本明細書においては好適な
方法、装置、材料を説明する。本発明で言及した全ての文献は、文献で報告され
た本発明に関して用いられ得る株化細胞、ベクター、及び方法論を説明・開示す
るために引用したものである。本明細書のあらゆる開示内容は、本発明が従来発
明によるそのような開示に先行し得ないことを認めるものと解釈してはならない
【0029】 定義 ここで用いる「TRANP」は、任意の種、詳細にはウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、 ウマ、及び好ましくをヒトを含む特定の哺乳類の種から得られたものであって、
天然、合成、半合成か、或いは組換え体を起源として得られた実質的に精製され
たTRANPのアミノ酸配列を指す。
【0030】 ここで用いる用語「アゴニスト」は、TRANPと結合した場合にTRANPの効果を高め
たり、その効果の持続時間を延ばす分子を指す。アゴニストには、TRANPに結合 してその作用を調節するタンパク質、核酸、糖質、または任意の他の分子が含ま
れ得る。
【0031】 ここで用いる「アレル」または「アレルの配列」は、TRANPをコードする遺伝子の 対立形である。アレルは、核酸配列における少なくともひとつの突然変異に起因
し、変異したmRNA或いはポリペプチドが生ずるが、それらの構造又は機能は変化
する場合と変化しない場合がある。与えられた任意の自然の遺伝子または組換え
型の遺伝子には、アレル形がないもの、1つ存在するもの、或いは多数存在する
ものがある。一般にアレルが生じる通常の変異は、ヌクレオチドの自然な欠失、
付加、または置換に因るものである。これらのタイプの変化の各々は、単独また
は他の変化と組み合わされて、所定の配列において1またはそれ以上の回数で生
じ得る。
【0032】 ここで用いるTRANPをコードする「変異した(altered)」核酸配列には、結果と
して同一のTRANPまたはTRANPの機能的特徴の少なくとも1つをともなうポリペプ チドをコードするポリヌクレオチドをもたらす種々のヌクレオチドの欠失、挿入
、または置換をともなうそれらの配列が含まれる。この定義には、TRANPをコー ドするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検
出可能な、或いは検出困難な多型と、またTRANPをコードするポリヌクレオチド 配列の正常の染色体の位置とは別の所定の位置を有する、アレルに対する不適切
な或いは予期しないハイブリダイゼーションとが含まれる。コード化されたタン
パク質もまた「変異した」ものであり得て、サイレント変化(silent change)を生 ずるアミノ酸残基の置換、欠失、または挿入を含み、結果的に機能的に等価TRAN
Pとなるものである。意図的なアミノ酸置換は、TRANPの生物学的または免疫学的
活性が保持される限りにおいて、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、
および/または両親媒性の性質についての類似性に基づき行なわれ得る。例えば
、負に荷電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、正に
荷電したアミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ、同様な親水性値を有す
る非電荷の極性頭基(polar head groups)を有するアミノ酸には、ロイシン、イ ソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン
、スレオニン、フェニルアラニン、及びチロシンが含まれる。
【0033】 ここで用いる「アミノ酸」または「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチ ド、ポリペプチド、又はタンパク質の配列、またはそれらの何れかの断片であり
、自然発生又は合成の分子を指す。TRANPの断片は、好ましくは約5〜約15個のア
ミノ酸の長さを有し、TRANPの生物的活性又は免疫学的活性を保持しているもの である。この文脈において、「断片」、「免疫原性の断片」、または「抗原性の断片」
は、好ましくは約5〜15のアミノ酸の長さであってTRANPの生物学的活性または免
疫学的活性を保持するTRANPの断片を指す。ここで「アミノ酸配列」は、自然発 生タンパク質分子のアミノ酸配列を指すものとして挙げているが、「アミノ酸配
列」や類似の用語は、列挙されたタンパク質分子に関連する完全で元のままのア
ミノ酸配列にアミノ酸配列を限定する意味で用いられるわけではない。
【0034】 ここで用いる「増幅」は、核酸配列の追加の複製物を生成することであり、通
常は当業者に周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて実施される(Die
ffenbach, C.W.及びG.S. Dveksler (1995) PCR Primer. a Laboratory Manual,
Cold Spring Harbor Press, Plainview, NY,pp.1-5参照)。
【0035】 ここで用いる用語「アンタゴニスト」は、TRANPに結合した場合にTRANPの生物
学的又は免疫学的活性の効果の程度を低下させたり、効果の持続時間を短縮する
分子を指す。アンタゴニストには、タンパク質、核酸、糖質、或いはTRANPの作 用を低下させる任意の他の分子が含まれ得る。
【0036】 ここで用いる用語「抗体」は、完全な分子、並びに抗原決定基と結合し得るFa
、F(ab')2、及びFvフラグメントのようなそれらの断片も指す。TRANPポリペプチ ドに結合する抗体は、無処置のポリペプチドを用いて、或いは免疫化する抗原と
して関与する小型のペプチドを含むその断片を用いて調製することができる。動
物(例えば、マウス、ラット、またはウサギ)を免疫化するのに用いるポリペプ
チドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳または化学的に合成されたものから得 られ、必要ならば担体タンパク質と結合可能である。ペプチドと化学的に結合す
る通常用いられる担体には、ウシ血清アルブミン及びサイログロブリン、キーホ
ールリンペットヘモシアニン(KLH)が含まれる。次に、この結合したペプチド を用いて動物を免疫化する。
【0037】 ここで用いる用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の断片(即ち
、エピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質の断片を用いてホストの動
物を免疫化する場合、このタンパク質の多くの領域が、抗原決定基(タンパク質
の所定の領域または三次元構造)と特異的に結合する抗体の産生を誘発し得る。
抗原決定基は抗体への結合について元の抗原(即ち、免疫応答を誘発するために
用いられる免疫原)と競合し得る。
【0038】 ここで用いる用語「アンチセンス」は、特定の核酸配列と相補的な核酸配列を
含む任意の成分を指す。用語「アンチセンス鎖」は、「センス」鎖に対して相補
的な核酸鎖に関して用いられる。アンチセンス分子は、合成や転写を含む任意の
方法で作り出すことができる。この相補的ヌクレオチドは、一度細胞内に導入さ
れると、細胞によって作られた天然の配列と結合して2重鎖を形成し、転写や翻 訳を妨げる。「マイナス(−)」なる表現がアンチセンス鎖を指し、「プラス(
+)」なる表現がセンス鎖を指すことがある。
【0039】 ここで用いる用語「生物学的に活性」は、自然発生の分子の構造的機能、調節
機能、又は生化学的機能を有するタンパク質を指す。同様に「免疫学的に活性」
は、天然の、組換え体の、又は合成のTRANP、若しくはその任意のオリゴペプチ ドの能力を指し、適当な動物や細胞における特定の免疫応答を誘発し、特定の抗
体に結合する。
【0040】 ここで用いる用語「相補的」または「相補性」は、許容的な塩類(permissive
salt)及び温度条件の下での塩基対によるポリヌクレオチド同士の自然な結合で ある。例えば、配列「A-G-T」は相補的配列「T-C-A」に結合する。2つの1本鎖分
子間の相補性は、幾つかの核酸のみが結合しているような「部分的」なものも、
或いは1本鎖分子間に完全な相補性が存在するような「完全」なものもある。核酸 鎖同士の相補性の程度は、核酸鎖同士のハイブリダイゼーションの効率及び強さ
に大きな影響を与える。このことは、核酸鎖同士の結合によって左右される増幅
反応や、ペプチド核酸(PNA)分子の設計及び使用において特に重要である。
【0041】 ここで用いる「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のア ミノ酸配列を含む組成物」とは、概して所定のポリヌクレオチド配列またはアミ ノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥した製剤、水溶液、
または無菌の組成物が含まれ得る。TRANPまたはTRANPの断片をコードするポリヌ
クレオチドを含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして利用できる
。このプローブは凍結乾燥した形態で保存することができ、糖質のような安定化
剤と結合させることができる。ハイブリダイゼーションにおいて、このプローブ
は、塩(例えば、NaCl)、界面活性剤(例えば、SDS)及び他の物質(例えば、 デンハート液、乾燥ミルク、サケ精子DNA等)を含む水溶液に分散させることが できる。
【0042】 ここで用いる用語「コンセンサス配列」は、再度配列決定して不要な塩基が分
離された核酸配列か、XL-PCRTM(Perkin Elmer, Norwalk, CT)を用いて5’方向及
び/又は3’方向に伸長して再度配列決定した核酸配列か、或いはフラグメント の組み合わせのためのコンピュータプログラム(例えば、GELVIEWTM Fragment A
ssembly system, GCG, Madison WI)を用いて2種以上のインサイト社クローンの
重複した配列から組み合わせて作られた核酸配列である。いくつかの配列が伸長
され、かつ組み合わされてコンセンサス配列が作られる。
【0043】 ここで用いる用語「ポリヌクレオチドの発現と相関性を有する」とは、ノーザ
ン解析によるTRANPをコードする核酸配列と同一か又は関連する核酸の存在の検 出が、サンプル内のTRANPをコードする核酸の存在を示しており、従ってTRANPを
コードするポリヌクレオチドからの転写産物の発現と相関性を有している、とい
うことを表している。
【0044】 ここで用いる「欠失」は、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列における変化
であり、結果的に1個またはそれ以上のヌクレオチド若しくはアミノ酸残基が欠
けることである。
【0045】 ここで用いる用語「誘導体」は、TRANP、TRANPをコードするポリヌクレオチド
配列、またはTRANPをコードするポリヌクレオチド配列と相補的なポリヌクレオ チド配列を化学修飾したものを指す。ポリヌクレオチド配列の化学修飾には、例
えば、水素からアルキル基、アシル基、又はアミノ基への置換が含まれる。ポリ
ヌクレオチド誘導体は、自然発生の分子の生物学的又は免疫学的機能を保持して
いるポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドは、グリコシル化、ポリエ
チレングリコール化(pegylation)、または元のポリペプチドの生物学的又は免疫
学的機能を保持する別の任意のプロセスで修飾されたものである。
【0046】 ここで用いる用語「相同性」は、或る程度の相補性を意味する。部分的な相同
性と、完全な相同性の場合がある。用語「相同性」の代わりに「同一性」を用いるこ
とができる。同一の配列が標的の核酸とハイブリダイズするのを少なくとも部分
的に阻害する部分的に相補的な配列は、「実質的に相同な」ことを指す。完全に
相補的な配列と標的配列とのハイブリダイゼーションの阻害は、緩やかな厳密性
のもとで、ハイブリダイゼーションアッセイ(サザン法またはノーザン法、溶液
ハイブリダイゼーション等)を用いて検定可能である。実質的に相同な配列また
はハイブリダイゼーションプローブは、緩やかな厳密性の下で完全に相同な配列
との結合について標的の配列と競合し、それを阻害する。このことは、緩やかな
厳密性の条件が、非特異的な結合を許容するようなものであるということを意味
するわけではなく、緩やかな厳密性の条件では2つの配列の相互の結合が特異的 (即ち選択的)相互作用であることが必要である。非特異的結合が存在しないこ
とを、部分的な程度の相補性(即ち約30%未満の同一性)さえも有していない第2
の標的配列を用いることにより検査することができる。非特異的結合が存在しな
い場合、概ね相同な配列またはプローブは第2の非相補的な標的配列とハイブリ ダイズしない。
【0047】 ここで用いる用語「同一性のパーセント」又は「同一性の%」は、2以上のアミノ酸
または核酸配列の比較において見出された配列の類似性の百分率を指す。同一性
のパーセントは、例えばMegAlignプログラム(DNASTAR,Inc.,Madison WI)を用 いることによって電子的に決定できる。MegAlignプログラムは、例えばClustal
Method.(Higgins,D.G.及びSharp,P.M.(1988)Gene 73:237-244)のような種々の
方法に従い、2以上の配列の間のアライメントを作成することができる。Clustal
アルゴリズムは、全てのペアの間の距離を調べることによって配列をクラスター
に分類する。クラスターはペアでアライメントされ、次にグループにおいてアラ
イメントされる。2つのアミノ酸配列(例えば、配列A及び配列B)の間の類似性 のパーセンテージは、(配列Aと配列Bとの間で一致する残基の総数)/(配列A の長さ−配列Aにおけるギャップ残基(gap residues)の数−配列Bにおけるギャッ
プ残基の数)×100によって計算する。2つのアミノ酸の間の低い相同性または非
相同性のギャップは、類似性のパーセンテージの測定に含まれない。また、核酸
配列の間の同一性のパーセントは、Clustal Methodや当業者に周知のJotun Hein
Method(例えばHein,J.(1990)Methods in Enzymology 183:626-645参照)等に より計算、即ちカウントできる。更に配列間の同一性は、例えばハイブリダイゼ
ーション条件を変更することによる当業者に周知の別の方法によって測定可能で
ある。
【0048】 「ヒト人工染色体」(HACs)は6kb〜10MbのサイズのDNA配列を含んでおり、安定
した有糸分裂染色体の分離及び維持に必要な全ての要素を含む直鎖状の小染色体
である(Harrington, J.J.ら (1997) Nat Genet. 15:345-355参照)。
【0049】 ここで用いる用語「ヒト化抗体」は、抗体が本来の結合能力をそのまま保持し
ながらヒト抗体により近づくように、非抗体結合領域におけるアミノ酸配列配列
を置換した抗体分子を指す。
【0050】 ここで用いる用語「ハイブリダイゼーション」は、核酸の鎖が塩基対合を介し
て相補鎖と結合する任意の過程を指す。
【0051】 ここで用いる用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基の間の
水素結合形成の効力によって、2つの核酸配列で形成された複合体を指す。ハイ ブリダイゼーション複合体は、溶液中で形成されるか(例えば、C0t又はR0t解析
)、或いは核酸は溶液中に存在する一方の核酸と固体支持体(例えば、紙、メン
ブラン、フィルタ、ピン、またはスライドガラス、ポリマー、または細胞やその
核酸が固定される他の適切な基板)に固定されたもう一方の核酸との間で形成さ
れ得る。
【0052】 ここで用いる「挿入」或いは「付加」は、自然発生の分子にみられる配列に対
して、1個または2個以上のヌクレオチド、アミノ酸残基が各々加わるような、ヌ
クレオチド配列或いはアミノ酸配列の変化を指す。
【0053】 「免疫応答」は、炎症、心的外傷、免疫不全、又は伝染性もしくは遺伝性の疾患
に関連する容態を指す。これらの容態は、細胞および全身の防御系に作用する種
々の因子(例えばサイトカイン、ケモカイン、及び他のシグナル伝達分子)の発
現によって特徴づけられる。
【0054】 「マイクロアレイ」とは、例えば紙、ナイロン、又は他のタイプのメンブラン
、フィルタ、チップ、スライドガラス、又は他の任意の適切な固体支持体のよう
な基板上に配列された個々のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを配列し
たものを指す。
【0055】 ここで用いる用語「調節(modulate)」は、TRANPの活性の変化を指す。例えば 、調節によって、タンパク質活性の向上や低下、結合特性の変化、又はTRANPの 生物学的、機能的、免疫学的特性等の他の変化がもたらされる。
【0056】 ここで用いる「核酸」または「核酸配列」は、1本鎖または2本鎖の、センス鎖又
はアンチセンス鎖である、ゲノム起源又は合成起源のDNA、RNAや、ヌクレオチド
、オリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチド、及びその任意の断片や、ペプチ
ド核酸(PNA)や、任意のDNA様もしくはRNA様材料を指す。「フラグメント(断 片)」は、長さが60ヌクレオチド以上の核酸配列であり、最も好ましくは、長さ
が100ヌクレオチド以上、又は1000ヌクレオチド以上、更には10,000ヌクレオチ ド以上の断片を指す。
【0057】 ここで用いる用語「操作可能に関連する」、即ち「操作可能に連結する」は、機能
的に関係した核酸配列を指す。プロモーターがコードされたポリペプチドの転写
を制御する場合、プロモーターはコード配列と操作可能に関連する、即ち操作可
能に連結する。操作可能に関連した、即ち操作可能に連結した核酸配列が、読み
枠に存在あるいは近接する際に、所定の遺伝因子(例えば、リプレッサー遺伝子
)は、コードされたポリペプチドには連続的に連結せずに、それでもポリペプチ
ドの発現を制御するオペレーター配列に結合する。
【0058】 ここで用いる「オリゴヌクレオチド」は、PCR増幅又はハイブリダイゼーショ ンアッセイ、またはマイクロアレイで用いることができる核酸配列であって、長
さが少なくとも約6ヌクレオチドから約60ヌクレオチド程度のもので、好適には1
5〜30ヌクレオチド、より好適には20〜25ヌクレオチドであるものを指す。ここ で用いる「オリゴヌクレオチド」は、当技術分野において一般に定義されている用
語「アンプライマー」、「プライマー」、「オリゴマー」、及び「プローブ」と
概ね同義である。
【0059】 ここで用いる「ペプチド核酸」(PNA)は、リジンを末端とするアミノ酸残基 のペプチドバックボーンに結合した5ヌクレオチド以上の長さのオリゴヌクレオ チドを含むアンチセンス分子又は抗遺伝子剤(anti-gene agent)を指す。末端の リジンがその組成に溶解性を賦与している。PNAは相補的な1本鎖DNAやRNAに優先
的に結合して転写物の伸長を止め、またPNAをポリエチレングリコール化して細 胞におけるPNAの寿命を延ばすことが可能である。(Nielsen, P.E.ら(1993) Ant
icancer Drug Des. 8:53-63)。
【0060】 ここで用いる用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられる。TRANPを コードする核酸、若しくはその断片、またTRANP自体を含む疑いのある生物学的 サンプルは、体液や、細胞から分離された染色体、細胞小器官、又は細胞膜から
の抽出物や、細胞や、(溶液中の、或いは固体支持体に結合した)ゲノムのDNA 、RNA、またはcDNAや、組織や、組織プリントその他を含み得る。
【0061】 ここで用いる用語「特異的結合」または「特異的に結合する」は、抗体ならび
にタンパク質もしくはペプチド、抗体及びアンタゴニストの相互作用を指す。こ
の相互作用は、結合する分子が認識するタンパク質の特定の構造(即ち、抗原決
定基、つまりエピトープ)の存在に左右されることを意味している。例えば、抗
体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、標識された遊離した「A」及び
その抗体を含む反応において、エピトープA(つまり遊離し、標識されていないA
)を含むポリヌクレオチドが存在することにより、抗体に結合した標識されたA の量が低下する。
【0062】 ここで用いる用語「厳密(ストリンジェント)な条件」は、ポリヌクレオチド
配列と要求されたポリヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションが可能な条
件を指す。適切な厳密な条件は、例えば、プレハイブリダイゼーションにおける
塩類またはホルムアミドの濃度、ハイブリダイゼーション溶液、ハイブリダイゼ
ーション温度によって定義することが可能であり、これらの条件は当技術分野で
周知である。特に、塩類の濃度を低下させることや、ホルムアミドの濃度を上昇
させることや、ハイブリダイゼーション温度を上昇させることによって厳密性が
増す。
【0063】 例えば、高い厳密性の条件の下でのハイブリダイゼーションは、約37℃〜42℃
の約50%のホルムアミド中において起こり得る。またハイブリダイゼーションは 、約30℃〜35℃の約35%〜25%のホルムアミド中の緩やかな厳密性の条件下で起こ
り得る。特に、ハイブリダイゼーションは、42℃の50%のホルムアミド中、5X SS
PE、0.3%SDS、および200μg/mlの切断され変性したサケの精液DNA、という高い 厳密性の条件下で起こり得る。また、ハイブリダイゼーションは、温度を35℃に
低下させた35%のホルムアミド中において、前述のような緩やかな厳密性の条件 下で起こり得る。特定のレベルの厳密性に対応する温度範囲は、対象物の核酸の
ピリミジンに対するプリンの割合を算出して、温度を調節することによってさら
に狭めることができる。上述の温度範囲および条件の変更例は、当業者には周知
である。
【0064】 ここで用いる用語「実質的に精製」は、天然の環境から取り除かれた核酸配列
又はアミノ酸配列であって、天然にはそれが結合して存在する他の構成成分から
単離又は分離されて、その構成要素が60%以上、好ましくは75%以上、最も好まし
くは90%以上除去された核酸配列又はアミノ酸配列である。
【0065】 ここで用いる「置換」は、それぞれ1個または2個以上のヌクレオチド或いはア
ミノ酸を、別のヌクレオチド或いはアミノ酸に各々置換することを指す。
【0066】 ここで用いる「形質転換」の定義は、外来性のDNAが入り込みレシピエント細 胞を変化させるプロセスを意味する。形質転換は、当業者に周知の種々の方法を
用いた天然または人工の条件の下で起こり、また外来性の核酸配列を原核細胞ま
たは真核細胞の宿主細胞に導入するための任意の既知の方法に基づき得る。形質
転換の方法は、形質転換される宿主細胞のタイプによって選択され、以下に限定
はされないが、ウイルス感染、熱ショック、電気穿孔法(エレクトロポレーショ
ン)、リポフェクション、及び微粒子銃を用いる方法が含まれる。このような「
形質転換された」細胞には、挿入されたDNAを自律的に複製するプラスミドとし て、または宿主の染色体の一部として複製が可能な安定的に形質転換された細胞
が含まれ、またそれは限られた時間で導入されたDNAやRNAを一過性に発現する細
胞を指す。
【0067】 ここで用いるTRANPの「変異体」は、1又は2以上のアミノ酸が変異したアミノ 酸配列である。この変異体は「保存的」変化を含むものであり得、この場合、例
えばロイシンをイソロイシンで置き換えるように、置換されるアミノ酸が類似な
構造的及び化学的特性を有する。稀にではあるが、例えばグリシンがトリプトフ
ァンで置換されるように、変異体が「非保存的」に変化する場合もある。類似し
た小さい変化には、アミノ酸の欠失または挿入、或いはその両方が含まれる。例
えばDNASTARソフトウエアのような周知のコンピュータプログラムを用いて、何 れのアミノ酸残基が生物学的或いは免疫学的活性を損なわずに置換、挿入、又は
除去可能であるということを決定するガイダンスを提供することができる。
【0068】 発明 本発明は、新規のヒト輸送関連分子(TRANP)、TRANPをコードするポリヌクレ
オチド、並びに癌および輸送障害の診断、予防、又は治療のためのこれらの物質
の使用法の発見に基づくものである。表1には本発明で開示する各ヒト輸送関連
分子の配列番号、インサイト社クローンID、及びcDNAライブラリーが示されてい
る。
【0069】
【表1】
【0070】 本発明のTRANP-1をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、単核細胞cDNAライブラリー(TLYMNOR01)からのインサイ ト社クローン144861に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID NO:
10は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クローン14
4861(TLYMNOR01)及び156223(THP1PLB02)から導出された。
【0071】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-1は、383のアミノ酸の長さであり、残基L42からR67まで及び
残基A230からS246までの2つの潜在的糖輸送タンパク質のサイン(signatures)を 有する。TRANP-1は、テンサイからの糖輸送体(GI 1209756)と化学的および構 造的相同性を有する。詳述すると、TRANP及びGI 1209756は30%の同一性を共有す
る。約ヌクレオチド442からヌクレオチド483までのSEQ ID NO:10の断片は、ハイ
ブリダイゼーションに有用である。ノーザン分析は、造血/免疫、心血管、及び
泌尿器のcDNAライブラリーにおいてこの配列の発現を示す。これらのライブラリ
ーの約60%が胎児の組織および増殖細胞系に、また40%が炎症に関係するものであ
る。
【0072】 本発明のTRANP-2をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、結腸組織cDNAライブラリー(COLNNOT01)からのインサイ ト社クローン607812に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID NO:
11は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クローン60
7812 (COLNNOT01), 3176117 (UTRSTUT04)、及びショットガン配列SAEA02352及び
SAEC 10448から導出された。
【0073】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-2は、272のアミノ酸の長さであり、残基N96の潜在的Nグルコ
シル化部位と、残基T48の潜在的カゼインキナーゼIIリン酸化部位と、残基T158 、S163、T251、及びS265の4つの潜在的プロテインキナーゼCリン酸化部位と、更
に残基L62からL83までのロイシンジッパー型を有する。TRANP-2は、C.elegans
ンモニウム輸送体(GI 1125753)と化学的および構造的相同性を有する。詳述す
ると、TRANP-2及びGI 1125753は47%の同一性を共有する。約ヌクレオチド251か らヌクレオチド274までのSEQ ID NO:11の断片は、ハイブリダイゼーションに有 用である。ノーザン分析は、生殖、心血管、胃腸、神経、及び泌尿器のcDNAライ
ブラリーにおいてこの配列の発現を示す。これらのライブラリーの約67%が癌に 、また28%が胎児の組織および増殖細胞系に関係するものである。
【0074】 本発明のTRANP-3をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、髄膜腫cDNAライブラリー(MENITUT03)からのインサイト 社クローン1259384に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID NO:1
2は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クローン125
9384 (MENITUT03)及び2946062 (BRAITUT23)から導出された。
【0075】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-3は、210のアミノ酸の長さであり、残基D55の潜在的アミド 化部位と、残基N83の潜在的Nグルコシル化部位と、残基S70、S86、T88、S115、 及びS199の5つの潜在的カゼインキナーゼIIリン酸化部位と、残基T45、S70、T85 、及びS199の4つの潜在的プロテインキナーゼCリン酸化部位と、残基Y44、Y111 の2つのチロシンリン酸化部位とを有する。TRANP-3は、雌ウシからのζ−COP co
atomerタンパク質(GI 441486)と化学的および構造的相同性を有する。詳述す ると、TRANP-3及びGI 441486は63%の同一性を共有する。約ヌクレオチド63から ヌクレオチド125までのSEQ ID NO:12の断片は、ハイブリダイゼーションに有用 である。ノーザン分析は、生殖、神経、心血管、胃腸、発生、内分泌、筋骨格、
及び造血/免疫のcDNAライブラリーにおいてこの配列の発現を示す。これらのラ
イブラリーの約59%が癌に、また18%が胎児の組織および増殖細胞系に関係するも
のである。 本発明のTRANP-4をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコン ピュータ検索を用い、結腸腫瘍cDNAライブラリー(COLNTUT03)からのインサイト 社クローン1340813に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID NO:1
3は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クローン134
0813及び1343253 (COLNTUT03)、1515390 (PANCTUT01)、758110 (BRAITUT02)、15
73508 (LNODNOT03)、1855515 (HNT3AZT01)、並びに1971226 (UCMCL5T01)から導 出された。
【0076】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-4は、465のアミノ酸の長さであり、ラットのモノカルボキシ
レート輸送体(GI 2463651)と化学的および構造的相同性を有する。詳述すると
、TRANP-4及びGI 2463651は90%の同一性を共有する。約ヌクレオチド674からヌ クレオチド694までのSEQ ID NO:13の断片は、ハイブリダイゼーションに有用で ある。ノーザン分析は、造血/免疫、胃腸、生殖、心血管、神経、筋骨格、発生
、泌尿器、及び皮膚科学的なcDNAライブラリーにおいてこの配列の発現を示す。
これらのライブラリーの約41%が癌に、また32%が炎症に、更に23%が胎児の組織 および増殖細胞系に関係するものである。
【0077】 本発明のTRANP-5をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、前立腺腫瘍cDNAライブラリー(PROSTUT10)からのインサ イト社クローン1689731に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID
NO:14は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クロー ン1689731 (PROSTUT10)、1572293 (UTRSNOT05)、1807228 (SINTNOT13)、1556505
(BLADTUT04)、1295734 (PGANNOT03) 、1721666 (BLADNOT06)、並びにショットガ
ン配列 SAEA02030、SAEA00859、及びSAEA02913から導出された。
【0078】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-5は、273のアミノ酸の長さであり、残基G16からS23までの潜
在的ATP/GTP-結合部位モチーフと、残基G234からP237までの潜在的プレニル化(p
renylation)部位とを有する。TRANP-5は、マウスrab23(GI 438162)と化学的お
よび構造的相同性を有する。詳述すると、TRANP-5及びGI 438162は93%の同一性 を共有する。約ヌクレオチド721からヌクレオチド759までのSEQ ID NO:14の断片
は、ハイブリダイゼーションに有用である。ノーザン分析は、生殖、心血管、神
経、胃腸、泌尿器、発生、内分泌、及び皮膚科学的なcDNAライブラリーにおいて
この配列の発現を示す。これらのライブラリーの約53%が癌に、また13%が炎症に
、更に13%が胎児の組織および増殖細胞系に関係するものである。
【0079】 本発明のTRANP-6をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、単核細胞cDNAライブラリー(THP1AZSO8)からのインサイ ト社クローン2751730に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID NO
:15は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クローン2
751730及び2754090 (THP1AZS08)、2174086 (ENDCNOT03)、並びに342996 (BRSTNO
R01)から導出された。
【0080】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-6は、208のアミノ酸の長さであり、残基G20からT27までの潜
在的ATP/GTP-結合部位モチーフを有する。TRANP-6は、ヒトGTP結合タンパク質(
GI 550072)と化学的および構造的相同性を有する。詳述すると、TRANP-6及びGI
550072は90%の同一性を共有する。約ヌクレオチド551からヌクレオチド577まで
のSEQ ID NO:15の断片は、ハイブリダイゼーションに有用である。ノーザン分析
は、神経、生殖、造血/免疫、発生、及び皮膚科学的なcDNAライブラリーにおい
てこの配列の発現を示す。これらのライブラリーの約43%が胎児の組織および増 殖細胞系に、また28%が癌に関係するものである。
【0081】 本発明のTRANP-7をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、鼻のポリープ組織cDNAライブラリー(NPOLNOT01)からの インサイト社クローン2794975に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、S
EQ ID NO:16は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社 クローン2794975 (NPOLNOT01)、3722893 (BRSTNOT23)、2922316 (SININOT04)、2
624003 (KERANOT02)、1394517 (THYRNOT03)、1416892 (BRAINOT12)、1418058 (K
IDNNOT09)、008439 (HMC1NOT01)、1873165 (LEUKNOT02)、並びに1370761 (BSTMN
ON02)から導出された。
【0082】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-7は、709のアミノ酸の長さであり、残基F328からL339まで及
び残基L611からT625までの2つの潜在的ABC輸送体ファミリーのサインと、残基G2 10 からT217まで及び残基G525からS532までの2つの潜在的ATP/GTP-結合部位モチ ーフとを有する。TRANP-7は、C.elegansの推定上のATP結合輸送タンパク質(GI
500734)と化学的および構造的相同性を有する。詳述すると、TRANP-7及びGI 50
0734は47%の同一性を共有する。約ヌクレオチド192からヌクレオチド227までのS
EQ ID NO:16の断片は、ハイブリダイゼーションに有用である。ノーザン分析は 、神経、生殖、造血/免疫、胃腸、及び心血管のcDNAライブラリーにおいてこの
配列の発現を示す。これらのライブラリーの約38%が癌に、また24%が炎症に、更
に22%が胎児の組織および増殖細胞系に関係するものである。
【0083】 本発明のTRANP-8をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、鼻のポリープ組織cDNAライブラリー(NPOLNOT01)からの インサイト社クローン2797710に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、S
EQ ID NO:17は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社 クローン2797710 (NPOLNOT01)、879491 (THYRNOT02)、234596 (SINTNOT02)、251
188 (PANCDIT01)、036294 (HUVENOB01)、2939073 (THYMFET02)、2019482 (CONNN
OT01)、2171995 (ENDCNOT03)、517825 (MMLR1DT01)、1714811 (UCMCNOT02)、371
259 (LUNGNOT02)、1995866 (BRSTTUT03)、2642178 (LUNGTUT08)、並びにショッ トガン配列SADA01064及びSADA00379から導出された。
【0084】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-8は、962のアミノ酸の長さであり、残基N101、N123、N243
N451、及びN882の5つの潜在的Nグルコシル化部位と、残基Y81の1つの潜在的チロ
シンキナーゼリン酸化部位と、残基T18、T34、T74、S91、S129、T336、T410、T4 53 、S585、S631、S632、S717、T754、S758、S780、T844、T890、及びS902の18の
潜在的カゼインキナーゼIIリン酸化部位とを有する。TRANP-8は、小胞の輸送因 子(GI 538153)と化学的および構造的相同性を有する。詳述すると、TRANP-8及
びGI 538153は93%の同一性を共有する。約ヌクレオチド2688からヌクレオチド27
23までのSEQ ID NO:17の断片は、ハイブリダイゼーションに有用である。ノーザ
ン分析は、生殖、神経、胃腸、造血/免疫、及び心血管のcDNAライブラリーにお
いてこの配列の発現を示す。これらのライブラリーの約45%が癌に、また30%が炎
症に、更に17%が胎児の組織および増殖細胞系に関係するものである。
【0085】 本発明のTRANP-9をコードする核酸は、アミノ酸配列アライメントのためのコ ンピュータ検索を用い、胎児の胸腺cDNAライブラリー(THYMFET03)からのインサ イト社クローン2914719に於いて初めて同定された。コンセンサス配列、SEQ ID
NO:18は、次に挙げる重複且つ/又は伸長された核酸配列、インサイト社クロー ン2914719 (THYMFET03)、264268 (HNT2AGT01 )、1553167 (BLADTUT04)、550095
(BEPINOT01)、2148915 (BRAINOT09)、 及び588157 (UTRSNOT01)から導出された 。
【0086】 一実施例において、本発明はSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むポリペプチド を包含する。TRANP-9は、368のアミノ酸の長さであり、残基V101からL115まで及
び残基V144からT158まの2つの潜在的βトランスデューシンファミリーTrp−Asp (WD-40)の繰返しを有する。TRANP-9は、C.elegans polyA RNA搬出タンパク質 (GI 1546734)と化学的および構造的相同性を有する。詳述すると、TRANP-9及 びGI 1546734は47%の同一性を共有する。約ヌクレオチド203からヌクレオチド26
5までのSEQ ID NO:18の断片は、ハイブリダイゼーションに有用である。ノーザ ン分析は、生殖、神経、造血/免疫、及び胃腸のcDNAライブラリーにおいてこの
配列の発現を示す。これらのライブラリーの約39%が癌に、また33%が炎症に、さ
らに23%が胎児の組織および増殖細胞系に関係するものである。
【0087】 また、本発明はTRANPの変異体を含む。TRANP変異体は、TRANP アミノ酸配列に
対して好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましく
は少なくとも95%以上のアミノ酸配列の同一性を有し、またTRANPの機能的もしく
は構造的特徴の少なくとも1つを含むアミノ酸配列である。
【0088】 さらに、本発明はTRANPをコードするポリヌクレオチドを包含する。特定の実 施例において、本発明はSEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID N
O:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID
NO:18からなるグループから選択された核酸配列からなるポリヌクレオチドを包
含する。
【0089】 さらに、本発明はTRANPをコードするポリヌクレオチドの変異配列を含む。特 に、そのようなポリヌクレオチドの変異配列は、TRANPをコードするポリヌクレ オチド配列に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好まし
くは少なくとも95%以上のポリヌクレオチド配列の同一性を有する。本発明の特 定の態様には、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SE
Q ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18か
らなるグループから選択されたポリヌクレオチド配列の変異配列が含まれ、それ
らはTRANPをコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、より好ま
しくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%以上のポリヌクレオチド配
列の同一性を有する。上記のポリヌクレオチドの変異配列は何れもTRANPの機能 的または構造的特徴の少なくとも1つを含むアミノ酸配列をコードすることが可 能である。
【0090】 遺伝暗号の縮重の結果、既知のの遺伝子及び自然発生の遺伝子のポリヌクレオ
チド配列に対する最小の相同性を有する幾つかのものを含め、多数のTRANPをコ ードするポリヌクレオチド配列が作り出されることが、当業者には理解されるで
あろう。従って、本発明は、可能なコドン選択に基づく組合せの選択により作り
出され得るポリヌクレオチド配列の可能な全ての変異を考慮している。これらの
組合せは自然発生のTRANPのヌクレオチド配列に対し適用されるような標準のト リプレット遺伝暗号に従い作り出されるものであり、また全てのそのような変異
はここに明確に開示されると考えられたい。
【0091】 TRANPをコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は、適切に選択された 厳密性の条件下に於いて、好ましくは自然発生のTRANPのヌクレオチド配列に対 しハイブリダイズ可能であり、それは実質的に異なるコドンの用法を有するTRAN
P又はその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作り出すのに有利である。特 定のコドンが宿主により利用される頻度に従い、真核生物又は原核生物の宿主に
於いてペプチドの発現が起こる割合を高めるようにコドンを選択することができ
る。コードされるアミノ酸配列を変化させることなしにTRANP及びその誘導体を コードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、自然発生の配列か
ら作り出された転写物よりも長い半減期のようなより望ましい特性を有するRNA 転写物を作り出すためである。
【0092】 また本発明は、TRANP及びその誘導体をコードするDNA配列、またはその断片を
専ら合成化学によって作り出すことを含む。作製の後に、合成配列を当業者によ
って周知の試薬を用いて任意の多数の利用可能な発現ベクター及び細胞系に挿入
することが可能である。更に、合成化学を利用してTRANPをコードする配列又は それらの任意のフラグメントに突然変異を導入しうる。
【0093】 また本発明に包含されるものには、種々の厳密な条件の下で、特に以下の請求
されたポリヌクレオチド配列、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SE
Q ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及び
SEQ ID NO:18並びにそれらの断片に対してハイブリダイズ可能なポリヌクレオチ
ド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger(1987) Methods Enzymo
l.152:399-407;Kimmel, A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507-511参照)。
【0094】 DNA塩基配列決定方法は周知のものであり、一般に先行技術に於いても利用さ れ、本発明の任意の実施例においても利用されうる。その方法は、DNAポリメラ ーゼIのクレノウフラグメント、Sequenase (US Biochemical Corp,Cleveland ,OH)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、耐熱性T7ポリメラーゼ(Amersham,
Chicago,IL)、或いはELONGASE増幅システム(GIBCO/BRL,Gaithersburg,MD)に 於いて発見されたようなプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ及びポリメラ
ーゼの組合せのような酵素を使用する。そのプロセスは、Hamilton Micro Lab 2
200(Hamilton,Reno,NV)、Peltier Thermal Cycler(PTC200; MJ Research,Wat
ertown,MA)及びABI Catalyst及び373及び377 DNA sequencers(Perkin Elmer)
のような装置によって自動化することが好ましい。
【0095】 TRANPをコードする核酸配列は、部分的なヌクレオチド配列を用いて先行技術 に於いて周知の種々の方法で伸長し、プロモータ及び調節エレメントのような上
流の配列を検出することができる。例えば、用いられる方法の1つである制限部
位PCR法は、一般的なプライマーを使用し、既知の位置に隣接する未知の配列を 検索する(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic.2:318-322参照)。
特にゲノムDNAは、ベクターの中のリンカーシークエンスに対して相補的なプラ イマー及び遺伝子をコードすることが予定された領域に対して特異的なプライマ
ーの存在下に於いてまず増幅される。次に増幅された配列は、同様なリンカープ
ライマー及び最初のものの内に含まれる別の特異的プライマのを用いて、2ラウ ンドのPCRを受ける。各ラウンドのPCRの生成物は、適切なRNAポリメラーゼを用 いて転写され、逆転写酵素を用い配列決定される。
【0096】 また逆PCR法(inverse PCR)を用いて、既知領域に基づく多様なプライマーを用
いた配列の増幅、または伸長を行なうこともできる。(例えば、Triglia,T.ら(
1988)Nucleic Acids Res 16:8186参照)。プライマーは、市販のOLIGO 4.06プ ライマー分析ソフトウエア(National Biosciences Inc.,Plymouth MN)や他の 適切なプログラムを用いて、長さが22〜30ヌクレオチドで、50%以上のGC含量を 有し、約68〜72℃の温度で標的配列をアニーリングするように設計する。その方
法により、いくつかの制限酵素を用いて遺伝子の既知領域における適当な断片を
作り出す。そこで、この断片を分子内連結反応により環状にし、PCR用の鋳型と して使用する。
【0097】 使用できる別の方法には捕獲PCR法(capture PCR)があり、この方法には、ヒト
及び酵母菌人工染色体DNA内の既知の配列に隣接するDNA断片のPCR増幅が含まれ る(例えば、Lagerstrom, M.ら(1991)PCR Methods Applic 1:111-119参照)。
またこの方法では、PCRの前に、複数の制限酵素による消化及びライゲーション を用いて、DNA分子の未知の断片に操作された2本鎖配列を配置することもできる
。未知の配列を引き出すために用いることができる別の方法が長業者に周知であ
る(例えば、Parker, J.D.ら(1991) Nucleic Acids Res.19:3055-3060)。更に 、PCR、入れ子状態のプライマー、PromoterFinderTMライブラリーを用いて、ゲ ノムDNA歩行を行うことができる(Clontech, Palo Alto CA)。このプロセスは 、ライブラリーのスクリーニングが不要で、イントロン/エクソン接合部の発見
に有用である。
【0098】 完全長cDNAをスクリーニングするとき、大きなcDNAを含むようにサイズ選択さ
れたライブラリーを用いることが好ましい。またランダムに準備刺激された(ran
dom primed)ライブラリーは、遺伝子の5’領域を含む配列をより多く含むという
点で好適である。ランダムに準備刺激されたライブラリーは、oligo d(T)ライブ
ラリーで完全長cDNAが得られない場合には特に好適である。またゲノムライブラ
リーは、5’非転写領域における配列の伸長のために役立ち得る。
【0099】 配列決定やPCRの産物のヌクレオチド配列のサイズ分析または確認のために、 市販のキャピラリー電気泳動法システムを用いることができる。特に、キャピラ
リーシークエンシングでは、電気泳動分離のための流動性ポリマー、レーザーで
活性化される4つの異なる蛍光色素(各ヌクレオチドに対して1つ)、放射された
波長の検出を行うCCDカメラを使用する。出力/光強度は適切なソフトウエア( 例えば、Perkin Elmer製のGenotyperTM及びSequence NavigatorTM)を用いて電 気信号に変換され、サンプルのローディングからコンピュータ解析及び電子デー
タ表示までの全過程がコンピュータ制御され得る。キャピラリー電気泳動法は、
特定のサンプル内に限られた量だけ存在するDNAの小片の配列決定に特に好適で ある。
【0100】 本発明の別の実施例では、TRANPをコードするポリヌクレオチド配列またはそ の断片を組換えDNA分子に用いて、TRANP、その断片またはその機能的等価物の適
切な宿主細胞内における発現を指向することができる。遺伝暗号の固有の縮重に
よって、実質的に同一、即ち機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA 配列が作り出され、これらの配列はTRANPのクローニングや発現のために用いる ことができる。
【0101】 当業者に理解されるように、非自然発生コドンを有するTRANPをコード化する ヌクレオチド配列を作り出すことは有益であり得る。例えば、特定の原核生物或
いは真核生物の宿主において選好されるコドンを選択することにより、タンパク
質の発現率を増大させたり、或いは自然発生配列から生成された転写物よりも長
い半減期であるような望ましい特性を有するRNA転写物を作製することが可能で ある。
【0102】 限定はしないが遺伝子産物のクローニング、プロセシング及び/又は発現を改
変すること等の種々の理由により、TRANPをコードする配列を改変するために、 本発明のヌクレオチド配列を当業者に周知の方法を用いて操作可能である。ラン
ダムな断片化によるDNA混合や、遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再
構成を用いて、ヌクレオチド配列を操作できる。例えば、特異的部位の突然変異
誘発により、新しい制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドン選好
の変化、スプライシングバリアントの生成、及び突然変異の導入等をもたらすこ
とができる。
【0103】 本発明の別の実施例では、TRANPをコードする自然な、改変された、或いは組 換え型の核酸配列を、融合タンパク質をコードするために、非相同的な配列に結
合させうる。例えば、TRANP活性のインヒビターに対してペプチドライブラリー をスクリーニングするために、市販の抗体により認識されるキメラTRANPタンパ ク質をコードすることが有用である。また、融合タンパク質はTRANPコーディン グ配列と非相同的なタンパク質配列との間の位置に切断部位を有するように操作
可能であり、これによってTRANPを切断して非相同的な部分から分けて精製する ことが可能となる。
【0104】 本発明の別の実施例では、当業者に周知の化学的手法を用いて、TRANPをコー ドする配列の全体、或いはその一部を合成することができる(例えば、Caruther
s.M.H.ら(1980)Nucl.Acids Res.Symp.Ser.215-223;Horn,T.ら(1980)Nucl.Acids
Res.Symp.Ser.225-232参照)。或いは、化学的手法を用いてタンパク質自体を 作り出し、TRANPのアミノ酸配列又はその一部を合成することができる。例えば 、種々の固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(例えば、Roberge,
J.Y.ら(1995) Science 269:202-204参照)。また、ABI 431Aペプチドシンセサ イザ(Perkin Elmer)を用いて合成の自動化を行なうことができる。
【0105】 この新たに合成されたペプチドは、分離用の高速液体クロマトグラフィにより
実質的に精製することができる(例えば、Chiez, R.M.およびRegnier. F.Z. (19
90) Methods Enzymol. 182:392-421参照)。合成されたペプチドの組成は、アミ
ノ酸解析或いはシークエンシングにより確認することができる(Creighton,T.(1
983) Proteins. Structures avd Molecular Properties,WH Freeman and Co.,Ne
w York,NY)。更に、TRANPのアミノ酸配列もしくはその任意の部分を、直接の合
成において改変することにより、並びに/又は他のタンパク質もしくはその任意
の部分に由来する配列と結合させることにより、変異体ポリペプチドを生成可能
である。
【0106】 生物学的に活性なTRANPを発現させるために、TRANPまたはその誘導体をコード
するヌクレオチド配列またはその機能的等価物を、適切な発現ベクター(即ち、
挿入されたコーディング配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクター)に
挿入する。
【0107】 TRANPをコードする配列および適切な転写や翻訳の調節領域を含む発現ベクタ ーを作製するために、当業者に周知の方法が用いられる。これらの方法には、in vitro 組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝的組換え技術が含まれる(例
えば、Sambrook, J.ら(1989)Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Cold Sp
ring Harbor Press,Plainview,NY,ch.4,8,及び16-17;Ausubel,F.M.ら(1995,and
periodic supplements)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley
& Sons,New York,NY,ch.9,13,及び16参照)。
【0108】 TRANPをコードする配列を包含し、発現するために、種々の発現ベクター/宿 主系が利用できる。これらには、以下に限定しないが、組換え型のバクテリオフ
ァージ、プラスミド或いはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌のよう な微生物や、酵母菌発現ベクターで形質転換した酵母菌や、ウイルス発現ベクタ
ー(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクタ
ー(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMVまたはタバコモザイクウイルス
TMV)或いは細菌の発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質 転換した植物細胞系や、或いは動物細胞系が含まれる。本発明は、利用される宿
主細胞によって限定されるものではない。
【0109】 これらの系の「制御エレメント」或いは「調節配列」は、転写及び翻訳を実行
するために宿主細胞のタンパク質と相互作用するTRANPをコードするポリヌクレ オチド配列及びベクターの非翻訳領域(例えば、エンハンサー、プロモーター並
びに5’及び3’非翻訳領域)である。このようなエレメントの強さ及び特異性は
様々である。利用されるベクター及び宿主に応じて、構成的及び誘導的プロモー
ターを含む任意の数の適切な転写及び翻訳エレメントを用いることができる。例
えば、細菌系にクローニングする場合、誘導性のプロモーター(例えば、Bluesc
riptョ ファージミド(Stratagene, LaJolla,CA)またはpSport1TMプラスミド(Gibc o BRL)のハイブリッドlacZプロモーター)を用いることができる。昆虫細胞にお
いてバキュロウイルスポリヘドリンプロモーターを用いることができる。植物細
胞のゲノムに由来するプロモーター或いはエンハンサ(例えば、熱ショック, RU
BISCO及び貯蔵タンパク質遺伝子)、若しくは植物ウイルスに由来するプロモー ター或いはエンハンサ(例えば、ウイルス性プロモータまたはリーダー配列)を
ベクターにクローンニングできる。哺乳類細胞系においては、哺乳類の遺伝子或
いは哺乳類ウイルス由来のプロモーターが好ましい。TRANPをコードする配列の 多数の複製を含む細胞株を作る必要がある場合、SV40或いはEBVに基づくベクタ ーを適切な選択マーカーと共に用いることができる。
【0110】 細菌系では、TRANPの用途に応じて多数の発現ベクターを選択することができ る。例えば、抗体の誘発のために大量のTRANPが必要な場合は、容易に精製され る融合タンパク質を高レベルで発現するベクターを用いることができる。そのよ
うなベクターには、以下に限定しないが、TRANPをコードする配列を、アミノ末 端メチオニン及び後続のβ-ガラクトシダーゼの7残基の配列を備えたフレーム内
においてベクターに結合してハイブリッドタンパク質を生成できるBluescriptョ
(Stratagene)のような、多機能の大腸菌クローニング、発現ベクター等が含ま
れる(例えば、Van Heeke, G.及びS.M. Schuster(1989)J. Biol. Chem. 264:5
503-5509参照)。またpGEXベクター(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)も、
グルタチオンS-トランスファーゼ(GST)を伴う融合タンパク質として異種ポリ ペプチドを発現するため用いることができる。一般的に、そのような融合タンパ
ク質は可溶性であり、グルタチオンアガロースビーズへ吸着させた後に遊離グル
タチオンの存在下で溶出させることによって、溶解した細胞から容易に精製でき
る。そのような系において生成されるタンパク質は、ヘパリン、トロンビン又は
XA因子プロテアーゼ切断部位を含み、目的のクローン化ポリペプチドをGST部分 から随意に放出させることができるように設計できる。
【0111】 酵母菌、Saccharomyces cerevisiaeでは、α因子、アルコールオキシダーゼ及
びPGHのような構成的或いは誘導的プロモーターを含む多数のベクターを用いる ことができる(例えばAusubelら(前出);及びGrantら(1987)Methods Enzymol.1
53:516-544参照)。
【0112】 植物発現ベクターを用いる場合には、TRANPをコードする配列の発現は、多数 のプロモータの何れかで行なわれ得る。例えばCaMVの35S及び19Sプロモーターの
ようなウイルスのプロモーターを単独で用いるか、或いはTMV(Takamatsu,N.ら(
1987)EMBO J.6:307-311)由来のオメガリーダー配列と併用することができる。 或いは、RUBISCOの小サブユニットまたは熱ショックプロモーターのような植物 プロモーターを用いてもよい(例えば、Coruzzi,G.ら(1984)EMBO J.3:1671-16
80); Broglie,R.ら(1984)Science 224:838-843; 及びWinter,J.ら(1991)Result
s Probl.Cell Differ.17:85-105参照)。これらの作製物は、直接のDNA形質転換
または病原体が媒介した形質移入により植物細胞内に導入できる。このような技
術は一般に入手可能な多くの文献に記載されている(例えば、Hobbs, S.又はMur
ry, L.E. in McGraw Hill Yearbook of Science and Technology(1992)McGraw
Hill New York,NY; pp.191-196を参照)。
【0113】 昆虫系もTRANPの発現に用いることができる。例えば、そのような系の一つに おいては、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼生において外来 遺伝子を発現するためのベクターとして、Autographa californica多核角体病ウ
イルス(AcNPV)を用いる。TRANPをコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子のよ
うなウイルスの非必須な領域にクローン化され、ポリヘドリンプロモーターの制
御下に置くことができる。TRANPをコードする配列の挿入の成功により、ポリヘ ドリン遺伝子が不活性になり、コートタンパク質膜が欠如した組換え型のウイル
スが生成される。そこで、この組換え型のウイルスを用いて、例えばS.frugiper da 細胞またはTrichoplusiaの幼生へ感染させ、その中でTRANPを発現させること ができる(例えば、Engelhard, E.K.ら(1994) Proc. Nat. Acad. Sci. 91:3224-
3227参照)。
【0114】 哺乳類の宿主細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用すること
ができる。発現ベクターとしてアデノウイルスが用いられる場合、TRANPをコー ドする配列が、後発のプロモータ及び三連のリーダー配列からなるアデノウイル
ス転写/翻訳複合体の中に結合され得る。ウイルスのゲノムの非必須E1又はE3領
域における挿入により、感染した宿主細胞においてTRANPを発現可能である生存 可能なウイルスが得られる(例えば、Logan,J.及びShenk,T.(1984)Proc.Natl.Ac
ad.Sci.81:3655-3659参照)。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー
のような転写エンハンサーを、哺乳類の宿主細胞内の発現を増大させるために用
いることができる。
【0115】 また、ヒト人工染色体(HAC)を用いることにより、プラスミドに含まれ発現 され得るものに比べてより大きなDNAの断片を供給することもできる。治療を目 的とし、6kb〜10MbのHACを構築して従来のデリバリー方法(リポソーム、ポリカ
チオンのアミノポリマー、又は小胞)を介して供給することができる。
【0116】 また、特定の開始シグナルを用いて、TRANPをコードする配列のより効率的な 翻訳を行なうことができる。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接す る配列が含まれる。TRANPをコードする配列、その開始コドンおよび上流配列が 適切な発現ベクター内に挿入された場合、追加の転写または翻訳の制御シグナル
は不要である。しかし、コーディング配列又はその一部のみが挿入される場合に
は、ATG開始コドンを含む外来性の翻訳制御シグナルを与えなければならない。 さらに、全てのインサートの転写を確実にするために、開始コドンは正しい読み
枠に存在しなければならない。外来性の翻訳エレメント及び開始コドンは、天然
及び合成の両方の種々の起源に由来するものであり得る。用いられる特定の細胞
系に適切なエンハンサーを含めることで、発現の効率を高めることができる(例
えば、Scharf,D.ら(1994)Results Probl.Cell Differ.20:125-162参照)。
【0117】 さらに宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節する能力や、発現したタン
パク質を望ましい形にプロセシングする能力によって選択可能である。このよう
なポリペプチドの修飾には、以下に限定しないが、アセチル化、カルボキシル化
、グリコシル化、リン酸化、リピド化(lipidation)及びアシル化が含まれる。ま
たタンパク質の「プレプロ」形を切り離す翻訳後のプロセシングを用いて、正し
い挿入、折り畳み、及び/又は機能することを促進できる。翻訳後の活性のため
の特定の細胞器械及び特徴的な機構を有している種々の宿主細胞(例えば、CHO 、HeLa、MDCK293、WI38)は、American Type Culture Collection(ATCC; Bethe
sda, MD)より入手可能であり、これらを外来タンパク質の正しい修飾やプロセ シングを確実に行なうために選択してもよい。
【0118】 組換え型タンパク質の高収率の産生を長期間にわたり確保するためには安定し
た発現が好ましい。例えば、ウイルス起源の複製及び/若しくは内在性発現エレ
メント並びに選択可能なマーカー遺伝子を同一のベクター上、又は別々のベクタ
ー上に含む発現ベクターを用いて、TRANPを安定的に発現可能な株化細胞を形質 転換することができる。ベクターの導入の後、選択培地に切り替える前に濃縮培
地内で細胞を1〜2日間増殖させる。選択可能なマーカーの目的は、選択のための
耐性を与えることであり、またその存在によって導入された配列をうまく発現す
る細胞の増殖および回収が可能とすることである。安定的に形質転換された細胞
の耐性クローンは、その細胞の型に適した組織培養技術を用いて増殖することが
できる。
【0119】 形質転換された細胞株を回収するために任意の数の選択系を用いることができ
る。これらには、以下に限定しないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ
遺伝子及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれ、それぞ
れは、tk-及びapr-細胞において用いられる(例えば、Wigler,M.ら(1977)Cell 1
1:223-32;Lowy,I.ら(1980)Cell 22:817-23参照)。また代謝拮抗剤、抗生剤或 いは除草剤への耐性を選択の基礎として用いることが可能で、例えばdhfrはメト
トレキセートに対する耐性を与え、nptはアミノグリコシドネオマイシン及びG-4
18に対する耐性を与え、als或いはpatはクロルスルフロン(chlorsulfuron)、ホ スフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(phosphinotricin acetyltransfe
rase)に対する耐性を与える(例えば、Wigler, M.ら(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.
77:3567-70;Colberre-Garapin,F. ら(1981)J.Mol.Biol.150:1-14;Murry,前出 参照)。さらに選択可能な遺伝子として、例えば、細胞がトリプトファンの代わ
りにインドールを利用できるようにするtrpB、細胞がヒスチジンの代わりにヒス
チノール(histinol)を利用できるようにするhisDが文献に記載されている(例え
ば、Hartman,S.C.及びR.C.Mulligan(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:8047-8051参 照)。最近では、例えば、アントシアニン、β-グルクロニダーゼ及びその基質G
US、及びルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリンのようなマーカーと共に可視
マーカーがよく利用されるようになった。また緑色蛍光タンパク質(GFP)(Clo
ntech,Palo Alto,CA)も用いられる(例えば、Chalfie,M.ら(1994) Science 263
:802-805参照)。これらのマーカーは形質転換体を同定するだけでなく、特定の
ベクター系による一過性の或いは安定的なタンパク質発現の量を定量するために
広く用いられる(例えば、Rhodes,C.A.ら(1995)Methods Mol. Biol.55:121-131 参照)。
【0120】 マーカー遺伝子発現の存在/非存在によって目的の遺伝子の存在も示唆される
が、その遺伝子の存在及び発現の確認を必要とすることもある。例えばTRANPを コードする配列がマーカー遺伝子配列内に挿入された場合、TRANPをコードする 配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子の機能が存在しないことによ
り同定できる。或いは、単一のプロモータの制御下において、マーカー遺伝子を
TRANPをコードする配列と直列に配置することができる。選択または誘導に応じ た標識遺伝子の発現は、通常直列に配置された配列の発現も同様に示す。
【0121】 或いは、当業者に周知の様々な方法により、TRANPをコードする核酸配列を含 みTRANPを発現する宿主細胞を同定できる。このような方法には、以下に限定し ないが、DNA−DNA或いはDNA−RNAハイブリダイゼーション並びに、核酸とタンパ
ク質配列を検出及び/若しくは定量するための技術に基づく膜、溶液、若しくは
チップを含むタンパク質バイオアッセイ又はイムノアッセイが含まれる。
【0122】 TRANPをコードするポリヌクレオチドの断片またはプローブ若しくは断片を用 いるDNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーション又は増幅により、TRANPをコ ードするポリヌクレオチド配列の存在を検出できる。TRANPをコードするDNA或い
はRNAを含む形質転換体を検出するために、核酸増幅に基づくアッセイは、TRANP
をコードする核酸配列に基づくオリゴヌクレオチド或いはオリゴマーの使用を含
む。
【0123】 TRANPの発現を検出・測定するための種々のプロトコルは、このタンパク質に 特異的なポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれかを用い、また当
業者に周知のものである。そのような技術の例には、酵素結合免疫検定法(ELIS
A)、ラジオイムノアッセイ(RIAs)及び蛍光細胞分析分離(FACS)が含まれる 。TRANP上において2つの非干渉エピトープに対して反応するモノクローナル抗 体を利用する二部位のモノクローナルベースのイムノアッセイ(two-site, mono
clonal-based immunoassay)が好ましいが、競合的結合実験も用いられうる。こ
れらアッセイおよび他のアッセイは、当業者によって開示されている(例えばHa
mpton,R.ら(1990);Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press,St
Paul,MN Section IV;及びMaddox, D.E.ら(1983); J.Exp.Med.158:1211-1216参 照)。
【0124】 多様なラベル及び結合技術が当業者には周知であり、そして種々の核酸及びア
ミノ酸のアッセイにおいて用いることができる。TRANPをコードするポリヌクレ オチドに関係する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプ
ローブやPCRプローブを作製するための手段には、オリゴ標識(oligolabeling)
、ニックトランスレーション法、末端標識(end-labeling)、或いは標識ヌクレ
オチドを用いるPCR増幅などが含まれる。或いは、TRANPをコードする配列、又は
その任意の断片を、mRNAプローブの作製のためのベクターにクローン化できる。
そのようなベクターは当業者に周知で、また市販されており、これを用いて、例
えばT7、T3或いはSP6のような適切なRNAポリメラーゼ及び標識したヌクレオチド
を加えることによってin vitroでRNAプローブを合成することができる。これら の方法は、種々の市販のキット(Pharmacia & Upjohn(Kalamazoo, MI);Prome
ga(Madison WI);及びU.S. Biochemical Corp.,Cleveland, OH提供)を用いて
実施することができる。検出を容易にするために用いる適切なレポーター分子、
即ち標識には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤或いは色素生産剤や、基
質、コファクター、インヒビター、磁性粒子等が含まれる。
【0125】 細胞培養からのタンパク質の回収および発現に適した条件下において、TRANP をコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞を培養することができ
る。形質転換された細胞により産生されるタンパク質は、用いられる配列及び/
またはベクターに応じて分泌される、つまり細胞内に含まれるようにすることが
できる。当業者に理解されるように、TRANPをコードするポリヌクレオチドを含 む発現ベクターは、原核生物か真核生物の細胞膜を通してTRANP分泌を指向する シグナル配列を含むように設計することができる。また他の作製物を用いること
により、TRANPをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製を促進するポリペ プチドドメインをコードするヌクレオチド配列に結合することができる。そのよ
うな精製を容易にするドメインには、以下に限定しないが、固定化金属上での精
製を可能にするヒスチジントリプトファンモジュールのような金属キレート化ペ
プチド類、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン 、及びFLAGS延長/アフィニティー精製システムにおいて用いられるドメイン(I
mmunex Corp., Seattle WA)が含まれる。精製ドメインとTRANPコーディング配 列の間におけるXA因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego CA)に
対して特異的な配列のような切断可能なリンカー配列の包含により、精製が容易
になる。このような発現ベクターの1つは、TRANPおよびチオレドキシン及びエ ンテロキナーゼ切断部位に先行する6個のヒスチジン残基をコードする核酸を含 む融合タンパク質を発現する。ヒスチジン残基が固定化金属イオンアフィニティ
クロマトグラフィー(IMAC)での精製を促進する(例えば、Porath,Jら (1992)P
rot.Exp.Purif.3:263-281参照)。エンテロキナーゼ切断部位が融合タンパク質 からのTRANPの精製のための手段を与える(例えば、Kroll,D.J.ら(1993)DNA Cel
l Biol.12:441-453参照)。
【0126】 組換え体の生成だけでなく、固相技術を用いた直接のペプチド合成によって、
TRANPの断片を作り出すことができる(Merrifield J. (1963) J. Am. Chem. Soc
. 85:2149-2154参照)。タンパク質合成は手作業または自動で行なうことができ
る。自動化された合成は、例えば、Applied Biosystem 431Aペプチドシンセサイ
ザ(Perkin Elmer)を用いて行うことができる。TRANPの種々の断片を個別に合 成して、次に結合させて完全長分子を作り出すことも可能である。
【0127】 治療 本発明のヒト輸送関連タンパク質の間には化学的および構造的相同性が存在す
る。さらに、TRANPは癌において発現される。従って、TRANPは癌および輸送障害
において一定の役割を果たしていると考えられる。TRANPの発現が増大する、即 ちTRANPの発現によって促進される癌および輸送障害においては、TRANPの発現を
低下させることが望ましい。TRANPの発現が低下した輸送障害においては、タン パク質を供給するか、又はTRANPの発現を増大させることが望ましい。
【0128】 従って、一実施例においては、TRANPの活性または発現の低下に関連する輸送 障害の治療または予防のためにTRANP又はフラグメント若しくはその誘導体を被 験者に投与することができる。そのような輸送障害には、以下に限定しないが、
副腎白質萎縮症、嚢胞性線維症、シスチン尿症、シスチン腎結石症、デュービン
‐ジョンソン症候群、グルコース−ガラクトース吸収不良症候群、糖尿病、尿崩
症、ディアストロフィー性異形成症、デュービン‐ジョンソン症候群、ファンコ
ニ病、ファンコニ−ビッケル症候群、Hartup病、高ビリルビン血症、高コレステ
ロール血症、高インスリン血症、高血糖及び低血糖、イミノグリシン尿症、グレ
ーブス病、甲状腺腫、クッシング病、アジソン病、フォンギールケ病、ツェルヴ
ェーガー症候群や、潰瘍性大腸炎、胃潰瘍、及び十二指腸潰瘍を含む胃腸の障害
や、AIDSを含む異常な小胞輸送に関連する他の状態や、枯草熱、喘息、及びじん
ま疹(hives)を含むアレルギーや、自己免疫性の溶血性貧血、増殖性の糸球体 腎炎や、炎症性の腸疾患、多剤耐性、多発性硬化症や、重症筋無力症、心筋の虚
血、リウマトイド及び骨関節炎、パーキンソン病、ペンドレッド症候群、強皮症
、Bartter及びGitelman症候群、チェディアック‐東症候群、シェーグレン症候 群、シュタルガルト病、全身性エリテマトーデス、及びウィルソン病が含まれる
【0129】 別の実施例においては、限定はしないが上述のものを含む輸送障害の治療また
は予防のために、TRANP又はフラグメント若しくはその誘導体を発現可能なベク ターを被験者に投与してもよい。
【0130】 また別の実施例においては、限定はしないが上述のものを含む輸送障害の治療
または予防のために、適切な医薬用担体と共に実質的に精製されたTRANPを含む 医薬品組成物を用いてもよい。
【0131】 更に別の実施例においては、TRANPの活性または発現の増大に関連する輸送障 害の治療または予防のために、TRANPの活性を調節するアゴニストを被験者に投 与してもよい。
【0132】 一実施例においては、TRANPの活性または発現の増大に関連する癌の治療また は予防のためにTRANPの活性を調節するアンタゴニストを被験者に投与すること ができる。そのような癌には、以下に限定しないが、腺癌、白血病、リンパ腫、
黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌腫や、特に、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、
頚、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状
腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌が
含まれる。一態様では、TRANPと特異的に結合する抗体をアンタゴニストとして 直接用いるか、或いはTRANPを発現する細胞や組織に薬剤をもたらす送達機構ま たはターゲティングとして間接的に用いることができる。
【0133】 別の実施例においては、限定はしないが上述のものを含む癌の治療または予防
のために、TRANPをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクター を被験者に投与してもよい。
【0134】 また別の実施例においては、TRANPの活性または発現の増大に関連する輸送障 害の治療または予防のために、TRANPの活性を調節するアンタゴニストを被験者 に投与してもよい。そのような輸送障害には、限定しないが前述のものが含まれ
る。一態様では、TRANPと特異的に結合する抗体をアンタゴニストとして直接用 いるか、或いはTRANPを発現する細胞や組織に薬剤をもたらす送達機構またはタ ーゲティングとして間接的に用いることができる。 更に別の実施例においては、限定はしないが上述のものを含む輸送障害の治療ま
たは予防のために、TRANPをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現する ベクターを被験者に投与してもよい。
【0135】 他の実施例においては、本発明のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニ
スト、相補的配列またはベクターの何れかを、他の適切な治療薬と組合せて投与
することもできる。当業者は従来の製薬の原理に基づいて併用療法で使用するた
めの適切な薬剤を選択することができるであろう。治療薬を組み合わせることに
より、上述の種々の反応の治療又は予防に効果を与えるように相乗剤的に機能し
得る。この方法を用いることにより、より少ない各薬剤の投与量で治療効果を上
げることができ、従って副作用の可能性を低下させることができる。
【0136】 TRANPのアンタゴニストは、当業者に周知の方法を用いて製造することができ る。詳細には、精製されたTRANPを用いて抗体を作り出したり、或いはTRANPに特
異的に結合するものを同定するために、薬剤のライブラリーをスクリーニングす
ることができる。TRANPに対する抗体は、当業者によく知られた方法を用いて産 生することができる。このような抗体には、以下に限定されないが、ポリクロー
ナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、及 びFab発現ライブラリーにより作られたフラグメントが含まれる。中和抗体(即 ち、二量体形成を阻害するもの)は治療の用途に特に好適である。
【0137】 抗体を産生するために、TRANPか、免疫学的特性を有するその任意の断片或い はそのオリゴペプチドを注射することによって、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス
、ヒト等を含む種々の宿主を免疫化することができる。宿主の種に応じて、免疫
学的反応を増強するために種々のアジュバントを用いることができる。そのよう
なアジュバントには、以下に限定しないが、フロイントのアジュバント、アルミ
ニウムの水酸化物ようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性剤、プル
ロニックポリオール(pluronic polyols)、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマ
ルジョン、KLH及びジニトロフェノールが含まれる。ヒトで使用するアジュバン トの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びCorynebacterium parvumが特 に好ましい。
【0138】 TRANPに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、 またはその断片は、好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、より好ましくは少な くとも10個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有する。またこれらのオリゴペプ
チド、ペプチド、または断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一
で、小形の自然発生の分子の全アミノ酸配列を含んでいることが好ましい。TRAN
Pアミノ酸の短い伸展部が、KLHのような別のタンパク質の伸展部と融合し、キメ
ラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0139】 TRANPのモノクローナル抗体は、培養における持続的な細胞株によって抗体分 子を産生させる任意の技術を用いて調製できる。このような技術には、以下に限
定しないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV-ハ イブリドーマ技術が含まれる(例えば、Kohler, G.ら(1975) Nature 256:495-49
7;Kozbor, D. ら(1985) Immunol. Methods 81 :31-42;Cote, R.J. ら(1983) P
roc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030;Cole, S.P. ら(1984) Mol. Cell Biol.
62:109-120参照)。
【0140】 さらに、適切な抗原特異性および生物活性を備えた分子を得るために、ヒト抗
体遺伝子へのマウス抗体遺伝子のスプライシングする技術のような「キメラ抗体
」の産生のために開発された技術を用いることができる(例えば、Morrison,S.L
.ら(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855;Neuberger, M.S. ら(1984)Nat
ure 312:604-608;Takeda, S. ら(1985)Nature 314:452-454参照)。或いは、当 業者に周知の方法を用いて単鎖の抗体の生成のための技術を適用して、TRANPに 特異的な単鎖抗体を産生することができる。関連する特異性を有するがイディオ
タイプ組成が異なる抗体は、ランダムな組み合わせの免疫グロブリンライブラリ
ーからの鎖混合(chain shuffling)によって産生することができる(例えば、Bur
ton D.R.(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88:10134-10137参照)。
【0141】 抗体は、免疫グロブリンライブラリーまたは高度に特異的な結合試薬のパネル
をスクリーニングすることにより、或いはリンパ球集団でのin vivoの産生を誘 導することにより産生することができる(例えば、Orlandi,R.ら(1989), Proc.
Natl. Acad. Sci. 86:3833-3837;Winter, G.ら(1991) Nature 349:293-299参照
)。
【0142】 またTRANPに対する特異的な結合部位を含む抗体フラグメントも作り出すこと ができる。例えばこのような断片には、以下に限定はしないが、抗体分子のペプ
シン消化により生成することができるF(ab’)2フラグメントや、F(ab’)2フラグ
メントのジスルフィド架橋を減らすことにより生成することができるFabフラグ メントが含まれる。或いは、所望の特異性を備えたモノクローナルFabフラグメ ントを迅速かつ容易に同定可能なように、Fab発現ライブラリーを構成し得る( 例えば、Huse,W.D.ら(1989) Science 246:1275-1281参照)。
【0143】 種々のイムノアッセイを、所望の特異性を有する抗体を同定するためのスクリ
ーニングに用いることができる。確立された特異性を有するモノクローナル抗体
またはポリクローナル抗体の何れかを用いる競合的結合アッセイ或いは免疫放射
線測定法の多数のプロトコルが、当技術分野で周知である。このようなイムノア
ッセイには、一般にTRANPとその特異的な抗体との間の複合体の形成の測定が含 まれる。2つの非干渉TRANPエピトープに対して反応するモノクローナル抗体を用
いる2部位のモノクローナル抗体ベースのイムノアッセイ(two sites monoclona
l based immunoassay)が好適であるが、競合的結合アッセイも用いられ得る(M
addox , 前出)。
【0144】 本発明の別の実施例では、TRANPをコードするポリヌクレオチド、またはその 任意の断片や相補配列を、治療を目的として用いることができる。一態様では、
mRNAの転写を阻害することが望ましい状況において、TRANPをコードするポリヌ クレオチドに対する相補配列を用いることができる。詳細には、TRANPをコード するポリヌクレオチドに相補的な配列で細胞を形質転換することができる。従っ
て、TRANPの活性を調節する、或いは遺伝子の機能を調節するために、相補的な 分子または断片を用いることができる。現在このような技術は周知であり、セン
ス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、或いはより大きな断片を、TRANPをコ ードする配列のコード領域や調節領域に従って様々な位置から設計可能である。
【0145】 レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスまたはワクシニアウイルスに由来
する、或いは種々の細菌性プラスミドに由来する発現ベクターは、標的の器官、
組織、即ち細胞群へのヌクレオチド配列の送達のために用いられ得る。当業者に
周知の方法を用いて、TRANPをコードする遺伝子のポリヌクレオチドに相補的な 核酸配列を発現するベクターを産生することができる(例えば、Sambrook,前出 、及びAusubel,前出 参照)。
【0146】 TRANPをコードするポリヌクレオチドまたはその断片を高レベルで発現する発 現ベクターで細胞または組織を形質転換させることによって、TRANPをコードす る遺伝子を作り出すことができる。このような作製物は、翻訳不能なセンス配列
或いはアンチセンス配列を細胞に導入するために用いることができる。DNAへ組 み込みが存在しない場合でも、このようなベクターは、それらが内在性のヌクレ
アーゼにより無能となるまで、RNA分子を転写し続けうる。一過性の発現は、非 複製ベクターでも1ヶ月以上、適切な複製エレメントがベクター系の一部である 場合にはさらに長い期間持続し得る。
【0147】 前述のように、TRANPをコードする遺伝子の制御、5’、又は調節領域に対する
相補配列、つまりアンチセンス分子(DNA、RNAまたはPNA)を設計することによ って、遺伝子発現を変更することができる。転写開始点(例えば、開始部位から
+10〜-10の位置)に由来するオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、三重らせ
ん体の塩基対形成方法論を用いて、阻害を達成することができる。ポリメラーゼ
、転写制御因子、或いは調節分子の結合のために二重らせんが十分にほどける能
力を阻害するので、三重らせん対合は有用である(例えば、Gee, J.E.ら(1994)I
n: Huber, B.E.及びB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futur
a Publishing Co.,Mt.Kisco,NY,pp.163-177参照)。転写物のリボソームへの結 合を阻止することによりmRNAの転写を阻害するために、相補的配列、即ちアンチ
センス分子を設計し得る。
【0148】 リボザイム、つまり酵素RNA分子を用いてRNAの特異的切断を触媒することがで
きる。リボザイム作用機構は、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列の特異 的ハイブリダイゼーションに関与し、その後のヌクレオチド鎖切断が行なわれる
。例えば、操作されたハンマーヘッド(hammerhead)モチーフリボザイム分子は、
TRANPをコードする配列のヌクレオチド鎖切断を特異的かつ効果的に触媒し得る 。
【0149】 任意の潜在的なRNA標的物内の特異的なリボザイム切断部位は、最初、後続す る配列GUA、GUU並びにGUCを含むリボザイム切断部位に対する標的分子を走査す ることによって同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領
域に対応する15〜20個のリボヌクレオチドの間の短いRNA配列は、そのオリゴヌ クレオチドを動作不能(inoperable)とする2次の構造的特徴について評価するこ とができる。また候補の標的の適合性は、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(ribon
uclease protection assay)を用い、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリ ダイゼーションに対する接触性(accessibility)の検査により評価することがで きる。
【0150】 本発明の相補的リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子を合成するのための
当技術分野で周知の方法により作り出すことができる。これらには、固相ホスホ
ラミダイト化学合成のようなオリゴヌクレオチドの化学的合成のための技術が含
まれる。或いは、RNA分子は、TRANPをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo の転写により作り出すことができる。このようなDNA配列は、T7或いはSP6のよう
な適切なRNAポリメラーゼプロモーターを伴う多様なベクターに取り込むことが できる。或いは、構成的または誘導的に相補的なRNAを合成するこれらのcDNA作 製物は、株化細胞、細胞または組織内に導入することができる。
【0151】 細胞内の安定性を高め、また半減期を長くするために、RNA分子は修飾するこ とができる。可能な修飾としては、以下に限定しないが、その分子の5′末端及 び/又は3′末端でのフランキング配列の付加や、分子のバックボーン内におけ るホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオネート或いは2′O-メチルを 使用を含む。この概念はPNA生成において固有のものであり、内在性エンドヌク レアーゼにより容易に認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及
びウリジンの、アセチル−、メチル−、チオ−、及び類似の修飾形態だけでなく
、イノシン、クエオシン(queosine)、及びワイブトシン(wybutosine)のような従
来よりあまり用いられない塩基を含めることにより、これら全ての分子にに拡張
可能である。
【0152】 細胞或いは組織内にベクターを導入するための多くの方法が利用可能で、同様
in vivoin vitro、及びex vivoでの使用にも適している。ex vivoでの治療 法のに対し、ベクターを患者から採取された幹細胞に導入し、自己移植して同じ
患者に戻すためにクローンとして増殖させることができる。トランスフェクショ
ンによるデリバリー、或いはリポソーム注入またはポリカチオンアミノポリマー
によるデリバリーは、当技術分野でよく知られた方法を用いて実施することがで
きる(例えば、Goldman, C.K.ら(1997) Nature Biotechnology 15:462-466参照 )。
【0153】 前述の治療法は何れも、例えばイヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ウサギ、サル、及
び最も好ましくはヒトのような哺乳類を含む治療が必要な任意の対象に適用する
ことができる。
【0154】 本発明の更なる実施例では、前述の任意の治療効果のために、医薬成分を薬剤
上受け入れられる担体とともに投与する。このような医薬成分は、TRANP、TRANP
の抗体、TRANPの擬態(mimetics)、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビ ターからなるものでありうる。この成分は、単体或いは例えば安定化する配合よ
うな1以上の他の薬剤とともに、任意の無菌の生体適合性の医薬用担体に投与さ れ、その担体には、以下に限定しないが、生理食塩水、バッファー食塩水、ブド
ウ糖或いは水が含まれる。このような組成物は、単体或いは他の薬剤、ドラッグ
やホルモンと結合した形で患者に投与されうる。
【0155】 本発明で用いられる医薬品組成物の投与経路には、以下に限定されないが、経
口投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、髄内投与、くも膜下腔内投与、
脳室内投与、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、経腸投与、局所的
投与、舌下投与、或いは直腸投与が含まれうる。
【0156】 活性成分に加えて、これらの医薬成分は、活性化合物を医薬上使用できる製剤
にするための処理を容易にする医薬品添加物及び補助剤を含む、適切な医薬上認
められる担体を含みうる。更に、製剤或いは投与に関する技術の詳細は、Reming ton's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton,PA)の最新版
に記載されている。
【0157】 経口投与のための医薬成分は、当技術分野でよく知られる医薬上認められる担
体を用いて、経口投与に適当な投与量に配合される。このような担体により、医
薬成分を、患者に摂取させるための錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液体剤、
ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液等に処方できる。
【0158】 経口投与に用いるための製剤は、活性化合物と固形の賦形剤とを配合すること
によって得られるが、必要に応じて適切な補助剤を添加した後に、また(所望に
より、得られた混合物を粉砕した後に)顆粒の混合物を処理し、錠剤或いは糖衣
丸コア(dragee core)を作ることができる。必要ならば、適切な添加物が加えら れる。適切な医薬品添加物には、ラクトース、スクロース、マンニトール或いは
ソルビトールを含む砂糖のような糖質またはタンパク質賦形剤、トウモロコシ、
コムギ、コメ、ジャガイモ等からのデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース或いはカルボキシルメチルセルロースナトリウムのよう
なセルロース、アラビアゴム或いはトラガカントゴムのようなゴム、並びにゼラ
チン或いはコラーゲンのようなタンパク質が含まれる。必要ならば、クロスリン
クしたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸
、又はその塩のような、崩壊剤(disintegrating agents)或いは可溶化剤が加え られる。
【0159】 糖衣丸コアは、濃縮糖液のような適切なコーティングと結合するが、溶液には
アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル剤(carbopol ge
l)、ポリエチレングリコール及び/又はチタンの二酸化物、ラッカー溶液及び適
切な有機溶剤或いは溶剤の混合物を含みうる。錠剤の識別のため、或いは活性化
合物の量(即ち投与量)を特徴づけるために、染料或いは色素を錠剤或いは糖衣
錠皮に加えることができる。
【0160】 経口投与できる製剤には、ゼラチンからなるプッシュフィット(push-fit)カプ
セル、ゼラチンからなる柔らかくシールされたカプセル及びグリセロール或いは
ソルビトールのようなコーティングが含まれる。プッシュフィットカプセルは、
ラクトース或いはデンプンのような賦形剤または結合剤、タルク或いはステアリ
ン酸マグネシウムのような潤滑剤、及び所望により安定剤と混合された活性成分
を含みうる。柔らかいカプセルにおいて、活性化合物は、安定剤とともに或いは
安定剤なしに、脂肪性の油、液体、または液状ポリエチレングリコールのような
適切な液体に溶解或いは懸濁される。
【0161】 非経口投与用の製剤は、水溶液中、好適にはハンク溶液(Hanks's solution)、
リンゲル溶液或いは生理緩衝食塩水のような生理学的に適合するバッファーの中
で配合することができる。水性の注射懸濁液は、カルボキシルメチルセルロース
ナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような懸濁液の粘性を高める物
質を含みうる。更に、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液として調製
される。適切な親油性の溶媒或いは媒介物は、胡麻油のような脂肪性の油や、オ
レイン酸エチル、トリグリセリド或いはリポソームのような合成脂肪酸エステル
を含む。また非脂質ポリカチオンアミノポリマーが、送達のために用いられる。
所望により、懸濁液は化合物の溶解度を増加させて濃縮度の高い溶液の調製を可
能にする適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。
【0162】 局所または経鼻投与用には、浸透する特定の障壁に対して適切な浸透剤が調合
に用いられる。このような浸透剤は、当技術分野において周知のものである。
【0163】 本発明の医薬組成物は周知の方法、例えば通常の混合処理、溶解処理、顆粒化
処理、糖衣形成処理、湿式粉砕処理(levigating)、乳化処理、カプセル化処理、
エントラップ処理(entrapping)或いは凍結乾燥処理により製造される。
【0164】 この医薬組成物は塩類として提供されることもあり、以下に限定しないが、塩
酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含む多くの酸とともに
形成することができる。塩は水性或いはプロトニック溶剤において、対応する遊
離塩基形態であるよりも溶解性が高くなる傾向がある。別のケースにおいて、好
適な製剤としては、1mM〜50mMのヒスチジン、0.1%〜2%のショ糖、使用前に緩衝 剤と結合させたpH4.5〜5.5の範囲にある2%〜7%のマンニトールの何れか、或いは
全てを含む凍結乾燥粉末でもよい。
【0165】 医薬組成物は、調製された後に適切な容器内に入れられて、示された状態の治
療のためにラベル付けされうる。TRANPの投与の場合では、このようなラベルに は、投与量、投与頻度、投与方法が表示される。
【0166】 本発明において使用するのに適切な医薬組成物は、所望の目的を達成するため
に、活性成分を効果的な量だけ含む成分を含んでいる。有効量の決定は、当業者
の能力の範囲内で十分行うことができる。
【0167】 任意の化合物の場合、治療に有効な量は、例えば最初はどちらかの細胞培養の
アッセイ(マウス、ウサギ、イヌ、ブタのような動物モデルまたは腫瘍性細胞)
において見積もられる。適切な濃度範囲および投与経路を決定するために動物モ
デルを用いることができる。次にこのような情報を利用して、ヒトにおける投与
量や投与経路を決定することができる。
【0168】 治療的に有効な量とは、例えば、症状や状態を回復させるTRANPまたはその断 片、TRANPの抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターの活性成分 の量である。治療的な効力および毒性は、細胞培養或いは実験動物における標準
的な製薬方法により、例えばED50(母集団の50%における治療的な有効投与量)ま
たはLD50(母集団の50%の致死投与量)統計量を計算することによって決定するこ とができる。毒性に対する治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比 として表すことができる。医薬組成物は大きな治療指数を示すことが好ましい。
細胞培養のアッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトの使用のための投
与量の範囲をまとめるのに用いることができる。そのような成分の用量は、毒性
少ないか或いは全く毒性がなく、ED50を含む循環する濃度の範囲内にあることが
好ましい。使用する剤形、患者の感受性並びに投与経路に応じて、投与量はこの
範囲内で変化する。
【0169】 正確な用量は、治療が必要な被験者に関連する要因の観点から医師が決定する
。投与及び投薬量は、十分なレベルの活性成分を与える、即ち所定の効果を維持
するために調節される。考慮すべき要因としては、疾病状態の重症度、被験者の
通常の健康、年齢、体重、性別、食餌、投与の時間及び頻度、併用する薬剤、反
応感受性、および治療への反応が含まれる。長時間作用性の医薬組成物は3〜4
日毎に、1週間毎に、或いは半減期及び特定の製剤のクリアランス速度に応じて
2週間に1度投与してもよい。
【0170】 通常の投与量は0.1〜100,000μgの範囲であり、最大約1gの総投与量まで、投 与経路に応じて変化する。特定の投与量或いは送達の方法のガイダンスは文献に
おいて提供され、通常当技術分野の医師に利用可能である。当業者は、ヌクレオ
チドに対しては、タンパク質やインヒビター用の製剤とは異なる製剤を採用する
ことができる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の
細胞、状態、位置等に対して特異的でありうる。
【0171】 診断 別の実施例においては、TRANPに特異的に結合する抗体を、TRANPの発現によっ
て特徴づけられる状態や疾病の診断や、TRANP又はTRANPのアゴニスト、アンタゴ
ニスト、インヒビターで治療を受けている患者のモニタリングのためのアッセイ
に用いることができる。診断目的に対し有用な抗体は、前述の治療のためのもの
と同様の方法で作製することができる。TRANPの診断のアッセイには、ヒトの体 液、細胞或いは組織の抽出物においてTRANPを検出するために抗体および標識を 用いる方法が含まれる。抗体は修飾しても、修飾なしでも用いることができ、ま
た共有結合或いは非共有結合かのいずれかによりリポーター分子と結合させて標
識することができる。当業者に周知の多様なリポーター分子が用いられ、その幾
つかについては前述の通りである。
【0172】 ELISA、RIA及びFACSを含む、TRANPを測定するための種々のプロトコルが当技術
分野では周知であり、またこれによりTRANP発現の変化や異常性のレベルを診断 するための基礎が得られる。TRANPの発現の正常値、即ち標準値は、複合体形成 に適した条件下で、哺乳類、好ましくはヒトの正常な被験者から得られる体液或
いは細胞抽出物とTRANPに対する抗体を結合させることによって確立できる。標 準の複合体形成量は、種々の方法、好ましくは測光の手段を用いて定量化できる
。被験者の生検組織からの調節及び疾病サンプルにおいて発現されたTRANPの量 を、標準値と比較する。標準値と被験者の値との偏差から、疾病診断のためのパ
ラメータが確立される。
【0173】 本発明の別の実施例において、TRANPをコードするポリヌクレオチドを、診断 目的で用いることができる。用いられるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオ
チド配列、相補的RNA及びDNA分子、及びPNAが含まれる。このポリヌクレオチド は、TRANPの発現が疾病と関連するような生検組織における遺伝子発現を検出お よび定量するために用いられる。診断アッセイは、TRANPが存在、非存在、過剰 発現のいずれの状態かを識別したり、治療の処置の際にTRANPレベルの調節をモ ニタリングするために用いることができる。
【0174】 一態様では、TRANPまたは近い関連の分子をコードする、ゲノム配列を含むポ リヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブとのハイブリダイゼーションを用 いて、TRANPをコードする核酸配列を同定することができる。そのプローブの特 異性、つまりそのプローブが非常に高度に特異的な領域(例えば、5′調節領域 )に由来するか、或いはより特異性の度合いの低い領域(例えば、特に3′コー ディング領域)の何れに由来するかによって、またハイブリダイゼーション或い
は増幅(最大の、高い、中程度の或いは低い)の厳密性によって、そのプローブ
がTRANPをコードする自然発生の配列のみを同定するか、或いはアレルや関連す る配列も同定するかということが決定される。
【0175】 プローブは関連する配列を検出するためにも用いることができ、また好ましく
はTRANPをコードする任意の配列からのヌクレオチドを少なくとも50%含むべきで
ある。本発明のハイブリダイゼーションプローブは、DNAやRNAか、またSEQ ID N
O:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:
15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、若しくはSEQ ID NO:18の配列に由来するもの
か、或いはTRANP遺伝子のイントロン、エンハンサー、及びプロモータを含むゲ ノムの配列に由来するものでもよい。
【0176】 TRANPをコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブを作
製するための手段には、mRNAプローブを作り出すために、TRANP又はTRANP誘導体
をコードするポリヌクレオチド配列をベクターにクローンニングする方法がある
。このようなベクターは当業者に周知であり、また市販されており、適切なRNA ポリメラーゼや適切な標識されたヌクレオチドを付加することにより、in vitro でRNAプローブを合成するために用いることができる。ハイブリダイゼーション プローブは種々のリポータグループにより標識され、例えば、この標識には、32 Pや35Sのような放射性核種によるものや、アビジン/ビオチン結合系を介してプ
ローブに結合するアルカリホスファターゼのような酵素による標識等が含まれる
【0177】 TRANPをコードするポリヌクレオチド配列を、TRANPの発現に関連する疾患の診
断のために用いることができる。そのような疾患の例には、以下に限定はしない
が、副腎白質萎縮症、嚢胞性線維症、シスチン尿症、シスチン腎結石症、デュー
ビン‐ジョンソン症候群、グルコース−ガラクトース吸収不良症候群、糖尿病、
尿崩症、ディアストロフィー性異形成症、デュービン‐ジョンソン症候群、ファ
ンコニ病、ファンコニ−ビッケル症候群、Hartup病、高ビリルビン血症、高コレ
ステロール血症、高インスリン血症、高血糖及び低血糖、イミノグリシン尿症、
グレーブス病、甲状腺腫、クッシング病、アジソン病、フォンギールケ病、ツェ
ルヴェーガー症候群や、潰瘍性大腸炎、胃潰瘍、及び十二指腸潰瘍を含む胃腸の
障害や、AIDSを含む異常な小胞輸送に関連する他の状態や、枯草熱、喘息、及び
じんま疹(hives)を含むアレルギーや、自己免疫性の溶血性貧血、増殖性の糸 球体腎炎や、炎症性の腸疾患、多剤耐性、多発性硬化症や、重症筋無力症、心筋
の虚血、リウマトイド及び骨関節炎、パーキンソン病、ペンドレッド症候群、強
皮症、Bartter及びGitelman症候群、チェディアック‐東症候群、シェーグレン 症候群、シュタルガルト病、全身性エリテマトーデス、及びウィルソン病などの
輸送障害と、並びに腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌腫
や、特に、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚、胆嚢、神経節、消化管、心臓
、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚
、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮の癌などの癌とが含まれる。TRANPをコ ードするポリヌクレオチド配列を、患者の生検組織や体液を利用するサザンブロ
ットまたはノーザン分析、ドットブロット法或いは他の膜ベース(membrane-base
d)技術や、PCR技術や、ディップスティック試験法(dipstick)、ピン、ELISAアッ
セイまたはマイクロアレイにおいて用いて、TRANP発現の変化を検出することが できる。このような定性的または定量的試験法は当業者に周知のものである。
【0178】 特定の態様では、特に上述のような関連する疾患の存在を検出するアッセイに
おいて、TRANPをコードするヌクレオチド配列は有用であり得る。TRANPをコード
するヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識され、またハイブリダイゼーショ
ン複合体の形成に適した条件下で、患者からの体液や組織サンプルに加えること
ができる。適当なインキュベーション期間の後、そのサンプルは洗浄され、シグ
ナルが定量されて標準値と比較される。患者のサンプルにおけるシグナルの量が
、対照サンプルに比べて有意に変化している場合、サンプルのなかのTRANPをコ ードするヌクレオチド配列のレベルの変化は、関連する疾患の存在を示している
。また、このようなアッセイを用いて、動物実験、臨床試験、または個々の患者
の治療のモニタリングにおける特定の治療学的な処置法の有効性を評価すること
もできる。
【0179】 TRANPの発現に関連する疾病の診断のための基礎を提供するために、正常な、 即ち標準の発現のプロフィールを確立する。これは、ハイブリダイゼーション或
いは増幅に適した条件下で、動物またはヒト何れかの正常な被験者から採取され
た体液或いは細胞抽出物を、TRANPをコードする配列又はその断片と結合させる ことにより達成される。標準のハイブリダイゼーションは、正常な被験者から得
られる値と、既知の量の実質的に精製されたポリヌクレオチドが用いられる実験
から得られる値とを比較することにより定量し得る。このように正常なサンプル
から得られた標準値は、疾病の徴候がある患者のサンプルから得られる値と比較
することができる。標準値からの偏差を用いて疾病の存在を証明する。
【0180】 一旦疾患の存在が確認され、治療プロトコルが開始されると、ハイブリダイゼ
ーションアッセイが定期的に繰り返され、患者の発現のレベルが正常な患者にお
いて観察されるレベルに近づき始めたか否かを評価することができる。連続的な
アッセイから得られる結果を用いて、数日から数ヶ月にわたる治療の効果を示す
ことができる。
【0181】 癌に関しては、個体からの生検組織における比較的多量の転写物の存在が、疾
病の発生の素因を示し、つまり実際の臨床的症状が現れる前に疾病を検出するた
めの手段となり得る。このタイプのより決定的な診断により、健康の専門家が予
防的処置を講じたり、より早期に積極的な治療を行なうことが可能となり、故に
癌の発生や更なる進行を予防することができる。
【0182】 TRANPをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドの付加的な診断の ための使用法には、PCR法の利用が含まれる。これらのオリゴマーは化学的に合 成され、酵素を用いて作製され、またはin vitroで作製されてもよい。オリゴマ
ーは、好ましくはTRANPをコードするポリヌクレオチドの断片、またはTRANPをコ
ードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、特定の遺
伝子或いは状態を識別するための最適化された条件の下で用いられる。また深く
関わるDNAまたはRNA配列の検出及び/又は定量のために、オリゴマーは緩やかな
厳密性の条件で用いることができる。
【0183】 またTRANP発現を定量するために用いられる方法には、放射標識或いはビオチ ン化したヌクレオチドの利用、対照核酸の同時増幅(coamplification)の利用、 及び標準の検量線で補間する実験結果の利用が含まれる(例えば、Melby, P.C. ら(1993) J. Immunol. Methods, 159:235-244;Duplaa, C. ら(1993) Anal. Bio
chem. 229-236参照)。多数のサンプルの定量の速度は、目的のオリゴマーが様 々な希釈溶液中に存在し、分光光度法または比色定量応答により迅速に定量する
ELISA形式においてアッセイを実施することによって加速することができる。
【0184】 別の実施例においては、ここに開示した任意のポリヌクレオチド配列に由来す
るオリゴヌクレオチド又はより長い断片を、マイクロアレイにおける標的として
用いることができる。マイクロアレイを用いて、同時に多くの遺伝子の発現レベ
ルをモニタし、また遺伝子の変異配列、変異及び多形性を同定することができる
。この情報は、遺伝子機能の決定、疾病の遺伝的基礎の理解、疾病の診断、並び
に治療薬の開発およびその活性のモニタリングにおいて有用である。 マイクロアレイが準備され、当業者に周知の方法を用いて分析される(例えば 、Brennan, T.M.ら(1995) U.S. Patent NO. 5,474,796; Schena, M.ら(1996) Pr
oc. Natl. Acad. Sci. 93:10614-10619; Baldeschweilerら(1995) PCT applicat
ion WO95/251116; Shalom D.ら(1995) PCT application WO95/35505: Heller.
R.A. ら(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150-2155; 並びにHeller. M.J.ら(
1997) U.S. Patent No.5,605,662)。
【0185】 本発明の別の実施例においては、TRANPをコードする核酸配列を用いて、自然 発生のゲノム配列をマッピングするために有用なハイブリダイゼーションプロー
ブを作り出すこともできる。この配列は、特定の染色体、染色体の特定の領域、
又は人工染色体作製物にマッピングすることができ、その人工染色体作製物には
、例えば、ヒト人工染色体(HACs)、酵母菌人工染色体(YACs)、細菌人工染色
体(BACs)、細菌性P1作製物又は1本鎖染色体cDNAライブラリーがある(例えば 、Price, C.M.(1993) Blood Rev.7:127-134);及びTrask, B. J. (1991) Trend
s Genet.7:149-154参照)。
【0186】 蛍光性インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)は、他の物理的な染色
体マッピング技術及び遺伝地図データと関連し得る(例えば、Heinz-Ulrichら(1
995)in Meyers,R.A.(ed.)Molecular Biology and Biotechnology,VCH Publisher
s New York,NY,pp.965-968参照)。遺伝地図データの例は、種々の科学誌、また
はOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)部位に見られる。物理的な染 色体地図上のTRANPをコードする配列の位置および特定の疾病、もしくは特定の 疾病の素因との関連性の助けにより、疾患に関係するDNAの領域の範囲を定める ことができる。本発明のヌクレオチド配列を用いて、正常者とキャリア、及び発
症した個体の間の遺伝子配列の違いを検出することができる。
【0187】 遺伝地図を広げるために、染色体作製物のin situハイブリダイゼーション及 び確立された染色体マーカーを用いる連鎖解析のような物理的なマッピング技術
を用いることができる。場合によっては、特定のヒト染色体の数やアームが未知
であっても、マウスのような別の哺乳類の染色体上の遺伝子配置によって関連す
るマーカーが明らかになる。物理的なマッピングによって、新たな配列を染色体
のアーム、或いはその一部へ割当てることができる。これにより、位置クローニ
ングまたは別の遺伝子発見技術を用いて、疾病遺伝子を検索する研究者に価値あ
る情報を提供できる。ひとたび疾患或いは症候群が、特定のゲノム領域、例えば
AT to 11q22-23への遺伝連鎖によって不完全な局所化がなされると、その領域に
マッピングされる任意の配列は、さらなる研究のための関連する遺伝子または調
節遺伝子を表し得る(例えば、Gatti, R.A.ら(1988)Nature 336:577-580参照 )。また、本発明のヌクレオチド配列を用いて、正常者の染色体の位置と、キャ
リア、即ち発症した個体の、転座、逆位等によって生じた染色体の位置との違い
を検出することもできる。
【0188】 本発明の別の実施例においては、TRANPや、その触媒作用性または免疫原性断 片、即ちそれらのオリゴペプチドを、種々の薬剤スクリーニング技術における化
合物のライブラリーのスクリーニングのために用いることができる。そのような
スクリーニングにおいて用いられる断片は、溶液中で遊離しているか、固体支持
体へ付着しているか、細胞表面へ付着しているか、或いは細胞内に位置している
ものでありうる。TRANPと検定する薬剤との結合複合体の形成を測定することが できる。
【0189】 別の薬物スクリーニング技術として、目的のタンパク質に対する適切な結合親
和性を有する化合物の高スループットスクリーニングが提供される(例えば、Ge
ysenら(1984) PCT出願WO84/03564参照)。この方法において、多くの異なる小形
の試験化合物が、プラスチックピン或いは別の表面のような固体基質において合
成される。試験化合物をTRANP又はその断片と反応させ、そして洗浄する。次に 、当技術分野で周知の方法で結合TRANPを検出する。また、前述の薬剤スクリー ニング技術において使用するために、精製されたTRANPをプレート上に直接コー ティングすることもできる。或いは、非中和性抗体を用いて、ペプチドを捕捉し
て固体支持体上に固定することができる。
【0190】 別の実施例においては、TRANP結合のためにTRANPと結合可能な中和抗体が試験
化合物と特異的に競合する競合的薬物スクリーニングアッセイを用いることがで
きる。この方法において、抗体を用いて、1またはそれ以上の抗原決定基をTRANP
と共有する任意のペプチドの存在を検出することができる。
【0191】 さらに別の実施例においては、その新技術が、以下に限らないが、トリプレッ
ト遺伝暗号及び特異的な塩基対相互作用のようなものを含む特性の現在周知のヌ
クレオチド配列の特性に基づくものであれば、TRANPをコードするヌクレオチド 配列を、未だ開発されていない分子生物学的技術に用いることができる。
【0192】 以下に示す実施例は本発明の例示であって、本発明を限定しようとするもので
はない。
【0193】
【実施例】
例示を目的として、インサイト社クローン1689731が単離されたPROSTUT10 cDN
Aライブラリーの準備ならびに配列決定について以下で説明する。LIFESEQTMデー
タベースのライブラリーにおけるcDNAの調製および配列決定は時を経て変化して
きており、ライブラリーが作製され解析された特定の時期におけるその段階的な
変化には利用可能なキット、プラスミド、及び機器の使用が含まれる。
【0194】 1 PROSTUT10 cDNAライブラリーの作製 PROSTUT10 cDNAライブラリーは、66歳の白人男性から得られた前立腺の腫瘍組
織から作製された。組織は、患者が根治的前立腺切除および局所性リンパ節切除
を受けた際に切除された。病理学報告は、左右の中枢系(centrally)に関連する 前立腺腫瘍Gleason grade(2+3)を示していた。腫瘍は限られており、被膜には関
与していない。神経周囲の浸潤は存在しなかった。最初に患者は前立腺の特異的
抗原(PSA)の上昇を呈した。患者の病歴には、良性の高血圧症および飲酒が含 まれていた。患者の家族歴には、患者の父親の前立腺の悪性腫瘍並びに骨および
関節軟骨の悪性腫瘍、患者の同胞の良性の高血圧症が含まれていた。
【0195】 グアニジニウムイソチオシアネート溶液中で凍結組織をBrinkmann Homogenize
r Polytron PT-3000(Brinkmann Instruments,Westbury,NJ)を用いて均質化お よび溶解した。溶解産物は、Beckman L8-70M超遠心機のBeckman SW28ローター(
Beckman Instruments)を用いて、室温において25,000rpmで18時間、5.7MのCsCl
クッションで遠心分離した。RNAを酸性フェノール(pH4.7)で抽出し、0.3Mの酢
酸ナトリウム及び2.5倍量のエタノールを用いて沈殿させ、RNAseフリーの水に再
懸濁させ、37℃においてDNaseで処理した。RNAを抽出および沈殿を前述のように
繰返した。mRNAをQiagen Oligotex kit(QIAGEN, Inc., Chatsworth, CA)を用 いて単離してcDNAライブラリーの作製に使用した。
【0196】 mRNAは、SuperScript Plasmid Systemの推奨プロトコル(Cat. #18248-013, GI
BCO/BRL, Gaithersburg, MD)に従って取扱った。PROSTUT10 cDNAをセファロース
CL4Bカラム(Cat. #275105-01, Pharmacia)において分別し、400bpを超えるこれ らのcDNAをpINCYと結びつけた。続いてプラスミドpINCY 1をDH5αTMコンピテン ト細胞(Cat. #18258-012, GIBCO/BRL)に形質転換した。 2 cDNAクローンの 単離および配列決定 プラスミドDNAを細胞から遊離し、REAL Prep 96 Plasmid(Catalog #26173, Q
IAGEN, Inc)を用いて精製した。推奨プロトコルを用いたが、以下の点を変更し
た。1)細菌は、25mg/Lのカルベニシリン及び0.4%のグリセロールと共に1mlの 滅菌Terrific Broth(Catalog #22711,GIBCO/BRL)において培養した。2)接種の
後、培養株を19時間インキュベートし、インキュベーションの終了時に細胞を0.
3mlの溶解バッファーで溶解した。3)イソプロパノール沈殿の後に、プラスミ ドDNAペレッを0.1mlの蒸留水中に再懸濁した。プロトコルの最終ステップの終了
後に、サンプルを96穴ブロックに移して4℃で保管した。
【0197】 Peltier Thermal Cyclers(PTC200 from MJ Research, Watertown, MA)、並 びにApplied Biosystems 377 DNA Sequencing SystemsとHamilton Micro Lab 22
00 (Hamilton, Reno, NV)とを組み合わせて用いて、Sangerら(1975, J. Mol.
Biol. 94:441f)の方法によってcDNAの配列決定を行ない、読み枠を画定した。
【0198】 3 cDNAクローン及びそれらの類推されるタンパク質の相同性検索 GenBank、SwissProt、BLOCKS、及びPima IIデータベースにおいて、配列表の ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いた。
これらのデータベースには既に同定された注釈付きの配列が含まれており、BLAS
T(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて相同性を有する領域をこのデー
タベースの中から検索した(例えば、Altschul. S.F.(1993) J. Mol. Evol. 36:
290-300;及びAltschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403-410参照)。
【0199】 BLASTはヌクレオチド及びアミノ酸配列の両方のアライメントを生成し、配列 類似性を判定する。そのアライメントの局部的性質のため、BLASTは厳密な一致 を判定する、即ち原核生物(細菌)又は真核生物(動物、真菌、植物)起源のホ
モログを同定する際に特に有効である。他のアルゴリズムを、一次配列パターン
及び二次的な構造ギャップペナルティを取り扱う際に用いることができる(例え
ば、Smith,Tら(1992) Protein Engineering 5:35-51参照)。本明細書に開示さ れた配列は、少なくとも49ヌクレオチドの長さであり、不要な塩基は12%未満で ある(ここでは、A、C、G、TではなくNが記録される)。
【0200】 BLASTアプローチは、問い合わせ配列とデータベースの配列の一致を検索する 。また、BLASTは、発見されたあらゆる配列の一致の統計的有意性を評価して、 ユーザが選択した有意性のしきい値を満たすそれらの一致のみを報告する。本出
願でのしきい値は、ヌクレオチドで10-25、ペプチドで10-8に設定した。
【0201】 インサイト社のヌクレオチド配列を、霊長類(pri)、げっ歯類(rod)、及び
他の哺乳類配列(mam)のGenBankデータベースで検索し、そして同じクローンか
ら類推されたアミノ酸配列を、GenBankの機能性タンパク質データベース、哺乳 類(mamp)、脊椎動物(vrtp)、及び真核生物(eukp)で、相同性について検索
した。
【0202】 更に、cDNAライブラリーから同定された配列は、保存されたタンパク質モチー
フをコードするそれらの遺伝子の配列を、例えばBlock 2 Bioanalysis Program (Incyte, Palo Alto, CA)のような適切な分析プログラムを用いて同定するた めに分析され得る。このモチーフ分析プログラムは、Swiss-Protデータベース及
びPROSITEに含まれる配列情報に基づき遺伝子またはcDNA配列から翻訳された特 性を決定されていないタンパク質の機能を決定する方法の1つである(例えば、B
airoch, A.ら(1997) Nucleic Acids Res. 25:217-221; 及びAttwood, T. K.ら(1
997) J. Chem. Inf. Comput. Sci. 37:417-424)。PROSITEは、互いに異なるタ ンパク質の共通の機能的および構造的ドメインを同定するのに用いられ得る。そ
の方法は荷重行列に基づいている。次にこの方法で同定されたモチーフは、突合
わせの偶然の分布の程度を得るためにSWISS-PROTデータベースに対して較正され
る。
【0203】 或いは、共通の生物学的機能を有することが知られているタンパク質のデータ
セットによって各々定義されたタンパク質ドメインの発見にHidden Markovモデ ル(HMM)を用いてもよい(例えば、Pearson, W.R.及びD.J. Lipman (1988) Pro
c. Natl. Acad. Sci.85:2444-2448; 並びにSmith, T.F.及びM.S. Waterman (198
1) J. Mol. Biol. 147:195-197参照)。最初HMMはスピーチ認識パターンの調査 のために発達したが、現在はモデルタンパク質構造だけでなくタンパク質や核酸
配列の分析のための生物学的なコンテキストに用いられてい(例えば、Krogh, A
.ら(1994) J. Mol. Biol. 235:1501-1531; 並びにCollin, M.ら(1993) Protein
Sci. 2:305-314)。HMMは形式的な確立的基礎を有し、アミノ酸またはヌクレオ チドに対する位置特異性スコアを用いる。そのアルゴリズムは、モチーフ分析性
能を向上させるために、新規に同定された配列から情報を取込み続ける。
【0204】 4 ノーザン分析 ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技
術であり、特定の細胞種或いは組織に由来するRNAが結合されている膜への標識 されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(例えば、Sambrookら
前出, ch.7;並びにAusubel, F.M.ら前出, ch.4および16.参照)。
【0205】 BLAST(Altschul,S.F.(1993)J.Mol.Evol.36:290-300; Altschul,S.F.ら(1990)
J.Mol.Evol. 215:403-410)を使用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenB
ank或いはLIFESEQTM データベース(インサイト社)のようなヌクレオチドデー
タベース内の同一或いは関連する分子を検索する。この分析は多くの膜系ハイブ
リダイゼーションより非常に速度が速い。さらにコンピュータ検索の感度を変更
して、任意の特定の一致が、厳密な一致或いは相同的一致の何れとして分類され
るかを決定することができる。検索の基準は、以下で定義される積スコア(prod
uct score)である。 (%配列同一性×%最大BLASTスコア)/100 積スコアは、2つの配列間の類似度及び配列一致の長さの両方を考慮に入れる。 例えば、積スコア40の場合、その一致は1〜2%誤差の範囲内の正確さであり、積ス
コア70の場合は正確な一致となる。相同性分子は通常、15〜40間の積スコアを示す
分子を選択することにより同定されるが、それより低いスコアでも関連した分子
が同定される場合もある。
【0206】 ノーザン分析の結果は、TRANPをコードする転写物が発生するライブラリのリ ストとして報告される。また存在量及び存在比も報告される。存在量は、特定の
転写物がcDNAライブラリ内に現れる回数を正に表すものであり、存在率は、存在
量をcDNAライブラリ内で試験された配列の全数で割った値である。
【0207】 5 TRANPをコードするポリヌクレオチドの伸長 本発明の1つのポリヌクレオチドの配列を用いて、部分ヌクレオチド配列を完 全長まで伸長するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。一方のプラ
イマーを合成してアンチセンスポリヌクレオチドの伸長を開始し、他方のプライ
マーを合成してセンスポリヌクレオチドの配列を伸長を開始した。プライマーを
用いることにより、対象の領域に対する新たな未知のヌクレオチド配列を含むア
ンプリコンを「外側に」発生させる既知の配列の伸長を容易にした。初期のプラ
イマーを、OLIGO4.06 (National Biosciences,Plymouth,MN)或いは他の適切なプ
ログラムを用いて、約22〜30ヌクレオチドからなる長さで、50%以上のGC含有物 を有し、且つ約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするようにcDNAから設
計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー2量体を生ずるようなヌクレ オチドの如何なる伸展も避けた。
【0208】 選択されたヒトcDNAライブラリ(Gibco/BRL)を用いて配列を伸長した。2つ以 上の伸長が必要である、もしくは望まれる場合には、さらに別のプライマの組を
設計して既知領域をさらに伸長させる。
【0209】 XL-PCR kit (Perkin Elmer)の取扱説明書に従って、酵素及び反応混合物を完 全に混合することにより、高い忠実度の増幅が得られた。PCRはPeltier Thermal
Cycler (PTC200; M.J.Research, Watertown,MA)を用いて実施され、以下のパラ
メータで、40pmolの各プライマおよびキットの他の全ての成分を推奨された濃度
で開始した。 ステップ1 94℃で1分間(初期変性) ステップ2 65℃で1分間 ステップ3 68℃で6分間 ステップ4 94℃で15秒間 ステップ5 65℃で1分間 ステップ6 68℃で7分間 ステップ7 ステップ4〜6をさらに15サイクル繰返す ステップ8 94℃で15秒間 ステップ9 65℃で1分間 ステップ10 68℃で7分15秒間 ステップ11 ステップ8〜10を12サイクル繰返す ステップ12 72℃で8分間 ステップ13 4℃(保持する) 反応混合物の5〜10μlのアリコットを低濃度(約0.6〜0.8%)アガロースミニ ゲル上で電気泳動法により分析し、どの反応物が配列の伸長に成功したかを判定
した。最も大きな生成物を含むと考えられるバンドをゲルから切出し、QIA Quic
kTM (QIAGEN Inc.,Chatsworth,CA)を用いて精製し、クレノウ酵素を用いてオ ーバーハングを切除して、再連結及びクローニングを容易にした。
【0210】 エタノール沈殿の後、その生成物を13μlの連結緩衝液中に再溶解し、1μlT4-
DNAリガーゼ(15単位)及び1μlT4ポリヌクレオチドキナーゼが加えて、その混合
物を2〜3時間室温で、或いは16℃で一晩インキュベートした。コンピテントE.col i 細胞(40μlの適切な培養液中の)を3μlの連結混合物を用いて形質転換し、80μ
lのSOC培養液で培養した(例えば、Sambrook、前出,Appendix A, p.2参照)。37
℃で1時間インキュベートした後、E.coli混合物を、2x Carbを含むLuria Bertan
i (LB)-agar (例えば、Sambrook、前出,Appendix A, p.1参照)上で培養した(pl
ated)。翌日、いくつかのコロニーを各プレートから無作為に選択して、適切な
市販の滅菌96穴マイクロタイタープレートの個々のウエル内に置かれた150μlの
液体LB/2xCarb培地で培養した。その翌日、終夜培養した各5μlの培養物を非滅 菌の96穴プレートに移し、水で1:10に希釈した後、各サンプルから5μlをのPCRア
レイに移した。
【0211】 PCR増幅の場合、4単位のrTthDNAポリメラーゼ、ベクタプライマー、及び伸長 反応のために用いられる1つ或いは両方の遺伝子特異的プライマーを含む18μl の濃縮PCR反応混合物(3.3x)が各ウエルに加えられた。増幅は、以下の条件で実 施した。 ステップ1 94℃で60秒間 ステップ2 94℃で20秒間 ステップ3 55℃で30秒間 ステップ4 72℃で90秒間 ステップ5 ステップ2〜4をさらに29サイクル繰返す ステップ6 72℃で180秒間 ステップ7 4℃(保持する) PCR反応物のアリコットを、分子量マーカと共にアガロースゲル上で移動させ た。PCR生成物の大きさを元の部分cDNAと比較し、適切なクローンを選択し、プ ラスミドに結合させて、配列決定した。
【0212】 SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、
SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18のヌクレオチド配列を用いて、
上記手順、5’伸長用に設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブ ラリを用いる5’調節配列を得る。
【0213】 6 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用 SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、
SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18に由来するハイ
ブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、ゲノムDNA、又はmRNAをスクリー ニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識化について特に記載
するが、より大きなヌクレオチドフラグメントにも概ね同じ手順を用いる。オリ
ゴヌクレオチドを、OLIGO 4.06 (National Biosciences)のような現状の技術 分野のソフトウエアを用いて設計し、50pmolの各オリゴマーと250μCiの[γ-32P
]アデノシン三リン酸 (Amersham,Chicago,IL)及びT4ポリヌクレオチドキナー ゼ(DuPont NEN, Boston MA)とを組み合わせることにより標識する。標識された オリゴヌクレオチドを、Sephadex G-25超精細樹脂カラム(Pharmacia&Upjohn,K
alamazoo,MI)を用いて実質的に精製する。毎分107カウントの標識されたプロー
ブを含むアリコットを、エンドヌクレアーゼ(Ase I, Bgl II, Eco RI, Pst I,
Xba 1.或いは Pvu II(DuPont NEN,Boston,MA))の1つで消化されたヒトゲノムD NAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析に用いる。
【0214】 各消化物からのDNAを、0.7%アガロースゲルに上で分画して、ナイロン膜(Nytr
an Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に転写する。ハイブリダイゼーシ ョンは40℃で16時間実施する。非特異的シグナルを除去するために、0.1×クエ ン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムまでの徐々に厳密性を増
す条件下で、ブロットを室温にて連続的に洗浄する。XOMAT ARTMフィルム (Koda
k, Rochester,NY)を数時間ブロットに対して露光した後、ハイブリダイゼーショ
ンパターンを視覚的に比較する。
【0215】 7 マイクロアレイ 化学的結合プロシージャ及びインクジェット装置を用いることにより、基板の
表面上でアレイエレメントを合成することができる。(例えば、Baldeschweiler
, 前出 参照)。また、ドットブロット又はスロットブロット法に類似の所定の アレイを用いて、熱、UV、機械的もしくは化学的結合プロシージャを利用して、
基板の表面にエレメントを配列及び結合させることができる。標準的なアレイは
手動で或いは市販の道具及び装置を用いて、任意の適切な数のエレメントを含む
ように製造できる。ハイブリダイゼーション後、ハイブリダイズしていないプロ
ーブを除去し、スキャナーを用いて蛍光のレベル及びパターンを判定する。マイ
クロアレイ上のエレメントとハイブリダイズする各プローブの相補性の度合及び
相対的な存在量は、スキャナーで読取られた画像を解析することによって評価す
る。
【0216】 完全長cDNA、発現された配列タグ(EST)、又はそれらのフラグメントは、マ イクロアレイのエレメントを含む。ハイブリダイゼーションに適切なフラグメン
トは、LASERGENETMのような当業者に周知のソフトウェアを用いて選択可能であ る。本発明のヌクレオチド配列の1つに対応する、即ち本発明に関連するcDNAラ イブラリーから無作為に選択された完全長cDNA、EST、若しくはそれらのフラグ メントを、例えばスライドガラスのような適切な支持体に配列させる。例えばUV
クロスリンクの後の熱的および化学的処置に続いて乾燥を行なうことによって、
cDNAはスライドガラスに固定される(例えば、Schena, M.ら (1995) Science 27
0:467-470; 並びにShalon, D.ら(1996) Genome Res. 6:639-645参照)。蛍光プ ローブが準備され、支持体上のエレメントとのハイブリダイゼーションに用いら
れる。支持体は前述の方法によって分析される。
【0217】 8 相補的ポリヌクレオチド TRANPをコードする配列に相補的な配列或いはその任意の一部を用いて、自然 発生TRANPの発現を検出して低下させ、即ち抑制する。約15〜約30塩基対を含む オリゴヌクレオチドの使用について記載するが、より小さな、或いはより大きな
配列フラグメントの場合でも概ね同じ方法が用いられる。Oligo4.06ソフトウエア
及びTRANPコーディング配列を用いて適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転 写を抑制するために、相補オリゴヌクレオチドを最も独特の5´配列から設計し 、プロモーターのコーディング配列への結合を防止するために用いる。翻訳を抑
制するために、相補的なオリゴヌクレオチドを、リボソームのTRANPをコードす る転写物への結合を防ぐように設計する。
【0218】 9 TRANPの発現 TRANPの発現は、cDNAを適切なベクタにサブクローニングし、ベクターを宿主 細胞に形質転換することにより行われる。このベクターは、cDNAに操作可能に連
結する、例えばクローニング部位の上流のβガラクトシダーゼのような、適切な
プロモーターを含む(例えば、Sambrook,前出,pp.404-433;及びRosenberg,M.ら
(1983) Methods Enzymol.101:123-138参照)。
【0219】 単離され、標準的な方法を用いてIPTG (isopropyil beta -D-thiogalactopyra
noside)と転換された菌種の誘発により、β-ガラクトシダーゼの最初の8残基、 リンカーの約5〜15残基及び完全長タンパク質からなる融合タンパク質を生成す る。このシグナル残基により細菌増殖培地へのTRANPの分泌が促され、この培地 を後述の活性のためのアッセイにおいて直接用いることができる。
【0220】 10 TRANP活性の実証 TRANP輸送活性は、X.laevis卵母細胞における早期から遅発のエンドソームコ ンパートメントの主な輸送に用いられるリガンド混合アッセイを用いて実証可能
である。卵巣は氷水中の3-アミノ安息香酸エチルエステル(1g/リットル)で麻 酔された成体の雌のX.laevisから解剖され、卵母細胞が単離される(Mukhopadhy
ay A,ら(1997) J. Cell. Biol. 136(6): 1227-1237)。卵母細胞に2mg/mlのアビ
ジンを18℃で5時間適用し、洗浄し、次に遅発のコンパートメントに対してアビ ジンの輸送を可能にするために16時間インキュベートする。次に卵母細胞を1mg/
mlのビオチン西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)で18℃で30分間インキュベー トし、早期のエンドサイトーシスのコンパートメントを標識する。異なる量のTR
ANPを卵母細胞に注入し、18℃でインキュベートする。卵母細胞をTRANP注入の後
の時点で何度か回収し、洗浄し、スカベンジャーとしての400μg/mlのBSA-ビオ チン、0.3% のトリトンX-100、及び0.2% のmethylbenzethorium chlorideを含む
100μlのリン酸緩衝食塩水中で溶解する。最終的に溶解産物を微量遠心管中で30
秒間遠心分離し、アビジン−ビオチン複合体を、アンチアビジン抗体コーティン
グしたプレートを用い4℃で終夜インキュベーションすることにより免疫沈降さ せる。そこでそのプレートを少なくとも5回洗浄し、非結合性のタンパク質を除 去する。初期のエンドソームから遅発のコンパートメントへの輸送は、免疫沈降
したHRPの量を測定することによって定量化され、TRANPによる輸送の増加は照査
規準卵母細胞(control oocytes)と比較することによって定量化される。
【0221】 11 TRANP特異的抗体の産生 PAGE電気泳動法(例えば、Harrington,M.G.(1990)Methods Enzymol. 182:488-
495参照)、或いは他の精製技術を用いて実質的に精製されたTRANPを用いて、ウ
サギを免疫化し、標準的なプロトコルを使用して抗体を生成する。アミノ酸配列
を、DNASTAR software (DNASTAR Inc)を用いて分析して、免疫原性の高い領域
を判定し、対応するオリゴポリペプチドを合成し、これを用いて当業者に知られ
た方法により抗体を作り出す。C-末端付近、或いは親水性領域内のエピトープの
ような適切なエピトープの選択方法の詳細については当業者の文献に記載されて
いる(例えば、Ausubelら 前出,ch.11参照)。
【0222】 通常、オリゴペプチドは15残基の長さであり、fmoc法の化学作用を利用するApp
lied Biosystems Peptide Synthesizer Model 431Aを用いて合成し、MBS(N-mal
eimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester)を用いた反応によりKLH(Sigma, S
t.Louis, MO)に結合させて免疫抗原性を増強させる(例えば、Ausubelら 前出 参照)。ウサギは、完全なフロイントのアジュバントにおけるオリゴペプチド-K
LH複合体で免疫化する。その結果生じる抗血清は、例えば、プラスチックにペプ
チドを結合させ、1%BSAでブロッキングし、ウサギ抗血清と反応させ、洗浄し、 さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させることにより、抗ペ プチド活性に対して検査される。
【0223】 12 特異的抗体を用いる自然発生TRANPの精製 TRANPに対して特異な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィに より、自然発生或いは組換えTRANPを実質的に精製する。イムノアフィニティー カラムは、TRANP抗体を、CnBr-activated Sepharose (Pharmacia&Upjohn)のよ うな活性化されたクロマトグラフィー用樹脂に共有結合させることにより作製す
る。結合の後、製造者の取扱説明書に従って樹脂をブロック及び洗浄する。
【0224】 TRANPを含む培養液を免疫親和性カラムに通し、そのカラムをTRANPを優先的に
吸着させる条件下(例えば、界面活性剤の存在下における高イオン強度のバッフ
ァー)で洗浄する。抗体/TRANP結合を分裂させる条件下(例えば、pH2〜3のバ ッファー、又は尿素もしくはチオシアン酸塩イオンのような高濃度のカオトロー
プ(chaotrope))でカラムを溶出させ、TRANPを回収する。
【0225】 13 TRANPと相互作用する分子の同定 125I Bolton-Hunter試薬を用いて、TRANP或いはその生物学的に活性な断片を 標識する(例えば、Boltonら(1973) Biochem.J.133:529参照)。マルチウエルプ
レートのウエル内に予め配列した候補分子を、標識されたTRANPでインキュベー トし、洗浄し、標識されたTRANP複合体を有する任意のウエルを検定する。種々 のTRANP濃度で得られたデータを用いて、数、親和性及びTRANPと候補分子との会
合についての値を計算する。
【0226】 上記の刊行物および特許出願の全ては、ここで言及することにより本明細書の
一部とする。当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本明細書に
記載した方法及びシステムの種々の改変を行うことができるであろう。本発明を
特定の好適実施例に関して説明してきたが、請求する発明がそのような特定の実
施例に過度に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、記載した本
発明の実施のための方法の種々の改変は、分子生物学或いは関連する分野の当業
者には明らかであり、請求の範囲内に含まれることを意図するものである。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 35/00 C07K 14/47 4C085 43/00 111 16/18 4H045 C07K 14/47 C12N 1/15 16/18 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 C12P 21/02 C 1/21 C12Q 1/68 5/10 A C12P 21/02 C12N 15/00 ZNAA C12Q 1/68 A61K 37/02 C12N 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U S,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ヒルマン、ジェニファー・エル アメリカ合衆国カリフォルニア州94040・ マウンテンビュー・#12・モンロードライ ブ 230 (72)発明者 ラル、プリーティ アメリカ合衆国カリフォルニア州95054・ サンタクララ・ラスドライブ 2382 (72)発明者 ゲグラー、カール・ジェイ アメリカ合衆国カリフォルニア州94025・ メンロパーク・オークランドアベニュー 1048 (72)発明者 コーレイ、ニール・シー アメリカ合衆国カリフォルニア州94040・ マウンテンビュー・#30・デールアベニュ ー 1240 (72)発明者 ユエ、ヘンリー アメリカ合衆国カリフォルニア州94087・ サニーベイル・ルイスアベニュー 826 (72)発明者 バンドマン、オルガ アメリカ合衆国カリフォルニア州94043・ マウンテンビュー・アンナアベニュー 366 (72)発明者 ボーグン、マライア・アール アメリカ合衆国カリフォルニア州94577・ サンレアンドロ・サンティアゴロード 14244 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 AA12 BA53 BA80 CA04 CA09 GA11 GA19 HA03 HA12 4B063 QA01 QA13 QA19 QQ42 QQ52 QR32 QR36 QR56 QR62 QS25 QS34 4B064 AG01 AG27 CA01 CA19 DA01 DA13 4B065 AA26X AA80X AA88X AA90X AA93Y AB01 BA02 CA24 CA25 CA44 CA46 4C084 AA02 AA07 AA17 BA22 CA18 NA14 ZB262 4C085 AA13 AA14 BB11 CC02 GG01 GG08 GG10 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA41 DA75 DA76 EA20 EA28 EA50 FA72 FA73 FA74 HA05 HA06

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、
    SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、及びSEQ ID NO:9、並 びにそれらの断片からなる一群より選択されたアミノ酸配列を有する実質的に精
    製されたポリペプチド。
  2. 【請求項2】 請求項1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%以上のア ミノ酸同一性を有する実質的に精製された変異体。
  3. 【請求項3】 請求項1のポリペプチドをコードする単離され精製された
    ポリヌクレオチド。
  4. 【請求項4】 請求項3のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90% 以上のポリヌクレオチド同一性を有する単離され精製されたポリヌクレオチドの
    変異配列。
  5. 【請求項5】 厳密な条件の下で請求項3のポリヌクレオチド配列とハイ
    ブリダイズする単離され精製されたポリヌクレオチド。
  6. 【請求項6】 請求項3のポリヌクレオチドに対して相補的な単離され精
    製されたポリヌクレオチド。
  7. 【請求項7】 SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:
    13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID N
    O:18、並びにそれらの断片からなる一群より選択されたポリヌクレオチド配列を
    有する単離され精製されたポリヌクレオチド。
  8. 【請求項8】 請求項7のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90% 以上のポリヌクレオチド同一性を有する単離され精製されたポリヌクレオチドの
    変異配列。
  9. 【請求項9】 請求項7のポリヌクレオチドに対して相補的な単離され精
    製されたポリヌクレオチド。
  10. 【請求項10】 請求項3のポリヌクレオチドの少なくとも断片を含む発
    現ベクター。
  11. 【請求項11】 請求項10の発現ベクターを含む宿主細胞。
  12. 【請求項12】 SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID N
    O:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID
    NO:18、並びにそれらの断片のアミノ酸配列を有するポリペプチドの製造方法で
    あって、 (a)前記ポリペプチドの発現に適した条件の下で、請求項11の宿主細胞を
    培養する過程と、 (b)前記宿主細胞の培地から前記ポリペプチドを回収する過程とを含むこと
    を特徴とする製造方法。
  13. 【請求項13】 適切な医薬用担体と共に請求項1のポリペプチドを含む
    医薬品組成物。
  14. 【請求項14】 請求項1のポリペプチドに特異的に結合する精製された
    抗体。
  15. 【請求項15】 請求項1のポリペプチドの精製されたアゴニスト。
  16. 【請求項16】 請求項1のポリペプチドの精製されたアンタゴニスト。
  17. 【請求項17】 輸送障害の治療方法または予防方法であって、そのよう
    な治療が必要な患者に対して、有効な量の請求項13の医薬品組成物を投与する
    過程を含む方法。
  18. 【請求項18】 癌の治療方法または予防方法であって、そのような治療
    が必要な患者に対して、有効な量の請求項16のアンタゴニストを投与する過程
    を含む方法。
  19. 【請求項19】 輸送障害の治療方法または予防方法であって、そのよう
    な治療が必要な患者に対して、有効な量の請求項16のアンタゴニストを投与す
    る過程を含む方法。
  20. 【請求項20】 核酸を含む生物学的サンプルにおいて、SEQ ID NO:10、
    SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SE
    Q ID NO:16、SEQ ID NO:17、及びSEQ ID NO:18、並びにそれらの断片の一群から
    選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの
    検出方法であって、 (a)請求項6のポリヌクレオチドを前記生物学的サンプルの少なくとも1つ の核酸とハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション複合体を形成する過程と
    、 (b)前記ハイブリダイゼーション複合体を検出する過程であって、該複合体
    の存在が、前記生物学的サンプルにおける前記ポリペプチドをコードするポリヌ
    クレオチドの存在と相関性を有する検出過程とを含むことを特徴とする検出方法
  21. 【請求項21】 ハイブリダイゼーションの前に、前記生物学的サンプル
    の核酸をポリメラーゼ連鎖反応法によって増幅することを特徴とする請求項20
    に記載の方法。
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