JP2002502871A - マクロファージの活性化を調節する方法 - Google Patents

マクロファージの活性化を調節する方法

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Abstract

(57)【要約】 スルホン酸塩を含む陰イオン化合物は、Aβの誘起するマクロファージの活性化(又はその他のアミロイド生成たんぱく又はペプチドの誘起するマクロファージ活性化)を遮断することができる。このような化合物は、アルツハイマー病など、Aβの沈着を特徴とする疾患の患者の脳内などにおける炎症性プロセスを阻害することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の背景 アミロイド生成たんぱくは、器質化して細胞外原線維たんぱく沈着物になるこ
とのできる一群のたんぱく質である。これらのたんぱく質は性質こそ異なるが、
ひとそろいの特有の構造上の性質を有している。即ち、コンゴ・レッド染料に結
合して、偏光下で観察したときに青リンゴ色に見える複屈折を呈するのである。
【0002】 脳内の特定の領域のAβたんぱくの細胞外沈着が、アルツハイマー病の特徴の
一つである。Aβたんぱくは、前駆たんぱくであるβAPPの異常な蛋白分解に
よる開裂を由来とする。いったん脳内に沈着すると、それは老人性斑紋を形成す
るが、この斑紋はアルツハイマー病患者の脳内により多く観察されてきたもので
ある。さらに、これは脳血管壁に浸潤し血管障害を引き起こすことも判明してい
る。進行性の神経細胞消失には、老人性斑紋へのAβアミロイド原繊維の沈着が
伴う。Aβはニューロンにとって毒性が高いことが複数のグループによってin v
itroで示されている。ラフェルラ氏らは最近、神経細胞をin vitroで可溶性Aに
曝露するとアポトーシスを導けることを示した。Aβたんぱくは、いったん内部
へ移行すると安定し、アポトーシスの特徴である、DNAの断片化を誘発する。
Aβたんぱくの25から35ドメインがこのような毒性誘起活性を担っているこ
とが示されている。これらの結果から、科学者たちは、この疾患の後期に観察さ
れる、Aβ繊維の老人性斑紋への器質化がホストに対して有害であるだけでなく
、可溶性のAβたんぱくですら、この疾患の過程の初期において神経細胞消失を
誘発する場合があると考えるようになった。
【0003】 小グリア細胞の活性化も、アルツハイマー病患者の脳内で観察されている。こ
れらの脳のマクロファージの活性化プロセスが、脳抽出物における炎症媒介物質
の存在の理由であると考えられている。これらの媒介物質、例えば炎症性サイト
カイン、酸化窒素及び反応性酸素中間体など、が神経細胞毒性を誘発する上で大
きな役割を果たしているかも知れない。可溶性Aβたんぱくは、最近、NOなど
の炎症性媒介物質の酸性で調べたところ、小グリア細胞によって内部移行して活
性化プロセスを誘起することができることが示されている(バーガー氏ら)。ギ
リアン氏らもまた、この活性化プロセスの原因はAβの特異的ドメイン、即ち残
基10から16のドメイン、であることを示唆している。この活性化プロセスは
、このたんぱく質(特にAβたんぱくの10から16ドメイン)がマクロファー
ジ細胞表面に付着することが原因である可能性がある。
【0004】 発明の概要 スルホン酸塩を含む特定の陰イオン化合物により、Aβが誘発するマクロファ
ージ活性化(又はその他のアミロイド生成たんぱく又はペプチドが誘発するマク
ロファージ活性化)を遮断することができることが今日発見されている。このよ
うな化合物は、Aβがマクロファージを活性化する能力に干渉することにより、
アルツハイマー病などのAβの沈着を特徴とする疾患に苦しむ患者の脳内などに
おいて、当該炎症性プロセスを阻害することができるのである。
【0005】 従って、ある態様では、本発明は、アミロイド生成たんぱく又はペプチドによ
るマクロファージの活性化を阻害する方法を提供するものである。当該方法は、
マクロファージの活性化が阻害されるよう、マクロファージを、アミロイド生成
たんぱく又はペプチドの存在下で、陰イオン化合物、例えば式I又はIIの陰イオ ン化合物など、に接触させるステップを含む。
【0006】 ある一つの態様では、本発明は、アミロイド生成たんぱく又はペプチドによる
マクロファージの活性化を阻害する方法を提供するものである。当該方法は、マ
クロファージの活性化が阻害されるよう、マクロファージを、アミロイド生成た
んぱく又はペプチドの存在下で、陰イオン化合物、例えば(例えば式I又はIIの )陰イオン化合物など、に接触させるステップを含む。実施例の一つでは、本治
療用化合物は以下の式:(式I): を持つものとしてよいが、ただしこのときYは生理pHにおいて陰イオンの基
であり、Qは担体分子であり、Xは陽イオンの基であり、そしてnは整数であ
る。陰イオンの基の数(「n」)は、当該化合物の活性が維持されながらも、目
的標的部位への当該化合物の生体内分布が妨げられないように選択する。例えば
、陰イオンの基の数は、例えば細胞膜などの解剖学的障壁の通過や、血液脳関門
などの生理学的障壁を横切った進入を、このような性質が好ましい場合にこれを
阻害する程大きくない数字となる。ある一つの実施例では、nは1から10まで
の間の整数である。別の実施例では、nは3から8までの間の整数である。
【0007】 別の実施例では、当該化合物を以下の式(式II): で表すことができるが、ただしこのときZがXR又はRであり、R及びR はそれぞれ個別に、水素、一個の置換された又は置換されていない脂肪族の基
、一個のアリール基、一個のヘテロ環式の基、又は一個の塩を形成する陽イオン
であり、Rは水素、低級アルキル、 アリール、又は一個の塩を形成する陽イ オンであり、Rは水素、低級アルキル、アリール又はアミノであり、Xは、そ
れぞれ個別にO又はSであり、Y及びYはそれぞれ個別に水素、ハロゲン、
アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリールオキシであり、そし
てnは0から12までの間の整数である。
【0008】 好適な化合物には、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボキシレート、及
び、これらの官能基の組合せを含む化合物、が含まれる。特に好適な化合物には
、1,4-ブタンジオールジスルフェート、1,5-ペンタンジスルホン酸ナトリウム、
タウリン(2-アミノ-エタンスルホン酸ナトリウム)、及びホモタウリン(3-ア ミノプロパンスルホン酸)を含む、しかしこれらに限らない)置換された及び置
換されていない低級アルキル硫酸塩及びスルホン酸塩がある。その他の好適な化
合物には、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホネート、4-(2-ヒドロキ
シエチル)-1-ピペラジン-エタンスルホネート、3-(N-モルホリノ)プロパンスル ホン酸、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド-3,4-二硫化ナトリウム3水和
物、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸ナトリウム、 1,3,5-ペンタントリオル三
硫酸ナトリウム、2-硫酸水素アミノエチル、ホスホノギ酸、ホスホノ酢酸、又は
インジゴカルミンが含まれる。好適な化合物は3-アミノプロパンスルホン酸、又
はその塩である(下記の例を参照されたい)。
【0009】 別の態様では、本発明は、炎症性プロセス(例えば、アミロイド生成たんぱく
又はペプチドの存在、又は、アミロイド生成たんぱく又はペプチドによるマクロ
ファージの活性化、を原因とした炎症性プロセスなど)を阻害する方法を提供す
るものである。当該方法は、Aβなどのアミロイド生成たんぱく又はペプチドに
よるマクロファージ活性化を阻害することなどにより、炎症性プロセスが阻害さ
れるよう、治療上有効量の陰イオン化合物を、これを必要とする被験体(例えば
アミロイドの沈着を有する被験体)に投与するステップを含む。好適な実施例で
は、当該被験体は、アルツハイマー病患者である。
【0010】 いくつかの実施例では、当該陰イオン化合物は、式I又はIIで表される化合物 である。好適な化合物には、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボキシレー
ト、及びこれらの官能基の組合せを含む化合物がある。特に好適な化合物には、
(1,4-ブタンジオールジスルフェート、1,5-ペンタンジスルホン酸ナトリウム、
タウリン (2-アミノ-エタンスルホン酸ナトリウム)、及びホモタウリン(3-ア
ミノプロパンスルホン酸)を含め、しかしこれらに限らず)置換された及び置換
されていない低級アルキル硫酸塩及びスルホン酸塩がある。その他の好適な化合
物には、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホネート、4-(2-ヒドロキシ
エチル)-1-ピペラジン-エタンスルホネート, 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホ ン酸、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド-3,4-二硫酸ナトリウム3水和物
、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸ナトリウム、1,3,5-ペンタントリオル三硫 酸ナトリウム、2-硫酸水素アミノエチル、ホスホノギ酸、ホスホノ酢酸、又はイ
ンジゴカルミンが含まれる。好適な化合物は、3-アミノプロパンスルホン酸又は
その塩である。
【0011】 発明の詳細な説明 本発明の方法は、アミロイド生成たんぱく又はペプチドが存在する、アルツハ
イマー病又はその他の疾患の患者など、炎症及び神経細胞の死を含めた状態に罹
患した患者のための治療処置を提供するものである。マクロファージの活性化プ
ロセスを誘発するAβの能力を阻害することにより、脳内炎症状態が原因の神経
細胞の消失を遅延させたり、又は防止することができる。
【0012】 ここで用いられる場合の「マクロファージ活性化を阻害する」又は「炎症プロ
セスを阻害する」という術語は、in vitro又は被験体において、それぞれマクロ
ファージの活性化又は炎症を、減らす、阻害する、遅延させる、改善させる、又
は、経過又は程度を逆行させることを言う。
【0013】 ある態様では、本発明は、アミロイド生成たんぱく又はペプチドによるマクロ
ファージの活性化を阻害する方法を提供するものである。当該方法は、マクロフ
ァージの活性化が阻害されるよう、マクロファージを、アミロイド生成たんぱく
又はペプチドの存在下で、 陰イオン化合物、例えば式I又はIIの陰イオン化合物など、に接触させるステッ プを含む。一実施例では、本化合物は、以下の式(式I): を有していてもよく、ただしこのときYは生理pHで陰イオンの基であり、Q
は担体分子であり、Xは陽イオンの基であり、そしてnは整数である。陰イオ
ンの基の数(「n」)は、当該化合物の活性が維持されながらも、目的標的部位
への当該化合物の生体内分布が妨げられないように選択する。例えば、陰イオン
の基の数は、例えば細胞膜などの解剖学的障壁の通過や、血液脳関門などの生理
学的障壁を横切った進入を、このような性質が好ましい場合には、これを阻害す
る程大きくない数字となる。ある一つの実施例では、nは1から10までの間の
整数である。別の実施例では、nは3から8までの間の整数である。
【0014】 本発明の治療用化合物の陰イオンの基は、担体分子に結び付いたときに、アミ
ロイド生成たんぱく又はペプチド、あるいはそのフラグメント(例えばAβ又は
そのフラグメント)によるマクロファージ活性化を阻害することのできる、負に
帯電した成分である。本発明のこのような目的のためには、当該陰イオンの基は
生理pHにおいて負に帯電している。好ましくは、当該陰イオン性の治療用化合
物は、硫酸化プロテオグリカンの構造を模倣するものであるとよく、即ち、硫酸
化化合物又はその機能上の等価物であるとよい。硫酸塩の「機能上の等価物」に
は、スルファミン酸塩や、生体同配体などの化合物が含まれるものとして意図さ
れている。生体同配体は、伝統的な生体同配体の等価物と非伝統的な生体同配体
の等価物の両方を包含するものである。硫酸塩基の伝統的及び非伝統的な生体同
配体は当業において公知である(例えばSilverman, R.B. The Organic Chemistr
y of Drug Design and Drug Action, Academic Press, Inc.: San Diego, CA, 1
992, pp. 19-23を参照されたい)。従って、本発明の治療用化合物に、スルホン
酸塩、硫酸塩、スルファミン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩, カルボキシレート
、及び以下の式: のヘテロ環式の基を含む、少なくとも一つの陰イオンの基を含めることができる
。担体分子によっては、二つ以上の陰イオンの基がそれに結び付いていてもよい
。二つ以上の陰イオンの基が担体分子に結び付いている場合、複数の陰イオンの
基が同じ構造の基(例えばすべてがスルホン酸塩であるなど)であっても、又は
その代わりに、異なる陰イオンの基の組合せを用いてもよい(例えばスルホン酸
塩及び硫酸塩、等々)。「陰イオンの基」という術語には、陰イオンの基の、例
えば薬学的に容認可能な塩類など、塩類が含まれていることを理解されたい。本
発明において陰イオンの基を有する有用な化合物の例については、例えば米国特
許第5,643,562号(参考文献としてここに編入することとする)を参照
されたい。
【0015】 別の実施例では、本化合物を以下の式(式II): で表すことができるが、ただしこのときZはXR又はRであり、R及びR はそれぞれ個別に水素、一個の置換された又は置換されていない脂肪族の基(
好ましくは、鎖内に1個から24個の炭素原子を有する分岐鎖又は直鎖の脂肪族
成分、又は、脂肪族の環内に4個から7個の炭素原子を有する置換されていない
又は置換された環状の脂肪族成分であり、好適な脂肪族及び環状の脂肪族の基は
アルキル基、より好ましくは低級アルキル)、一個のアリール基、一個のヘテロ
環式の基、又は一個の塩を形成する陽イオンであり、Rは水素、低級アルキル
、アリール、又は一個の塩を形成する陽イオンであり、Rは水素、低級アルキ
ル、アリール又はアミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ(環状のアミノ成
分を含む)、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノ
を含む)であり、Xはそれぞれ個別にO又はSであり、Y及びYはそれぞれ
個別に水素、ハロゲン(例えばF、Cl、Br、又はI)、アルキル(好ましく
は低級アルキル)、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリールオキシであ
り、そしてnは0から12まで(より好ましくは0から6まで、より好ましくは
0又は1)の整数である。
【0016】 本発明の陰イオン化合物は、典型的には、さらに対陽イオン(即ち一般式Q−
[−Y]nのX)を含む。陽イオンの基には、正に帯電した原子及び成
分が含まれる。陽イオンの基には、正に帯電した原子及び成分が含まれる。当該
陽イオンの基が水素、つまりHである場合、この化合物は酸である、例えばエ
タンスルホン酸など、であるとみなされる。水素が金属又はその等価物に置換さ
れた場合、その化合物はその酸の塩である。陰イオン化合物の薬学的に容認可能
な塩は、本発明の範囲内である。例えば、Xは薬学的に容認可能なアルカリ金
属、アルカリ土類、より高い価の陽イオン(例えばアルミニウム塩)、多価の陽
イオン性対イオン又はアンモニアであってもよい。好適な薬学的に容認可能な塩
はナトリウム塩であるが、その他の塩類もまた、それらの薬学的に容認可能な範
囲で考察されるところである。
【0017】 当該陰イオン化合物中では、陰イオンの基は担体分子に共有結合している。適
した担体分子には、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族の
基、脂環式の基、ヘテロ環式の基、芳香族の基又はこれらの組合せが含まれる。
担体分子は、例えば一つ又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又
はヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0018】 ここで用いられる場合の「炭水化物」という術語は、置換された及び置換され
ていないモノ−、オリゴ−、及びポリサッカリドを含むものとして意図されてい
る。モノサッカリドは、組み合わさってオリゴサッカリド又はポリサッカリドを
形成することのできる、通常は式C12からなる単糖類である。モノサ
ッカリドには、モノサッカリドのエナンチオマー、及びD及びLの両方の立体異
性体が含まれる。炭水化物は、複数の陰イオンの基を各モノサッカリド成分に結
合させていてもよい。例えば、八硫酸スクロースでは、四つの硫酸塩の基が二つ
のモノサッカリド成分のそれぞれに付いている。
【0019】 ここで用いられる場合の「ポリマー」という術語には、モノマーと呼ばれる二
つ以上の組み合わさったサブユニットが化学的に一つになることで形成された分
子が含まれるものとして意図されている。モノマーは、通常炭素を含むと共に、
比較的低分子量であり、構造も簡単な分子又は化合物である。モノマーは、それ
自体を組み合わせたり、又はその他の類似の分子又は化合物を組み合わせること
により、ポリマーに転化させることができる。ポリマーは、単一の同一のサブユ
ニットが反復していたり、又は、複数の異なるサブユニットが反復している(コ
ポリマ)ものから構成される場合がある。本発明の範囲内のポリマーには、置換
された及び置換されていないビニル、アクリル、スチレン及び炭水化物誘導ポリ
マー及びコポリマー並びにそれらの塩類が含まれる。実施例の一つでは、当該ポ
リマーは約800から1000ダルトンの分子量を有する。適した陰イオン基(
例えばスルホン酸塩又は硫酸塩)を共有結合させたポリマーの例には、ポリ(2- アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2- メチル-1-プロパンスルホン酸-コ-アクリロニトリル)、ポリ(2-アクリルアミド-
2-メチル-1-プロパンスルホン酸-コ-スチレン)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ
(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)や、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリ
レート)、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリ(ビニルアルコール)から誘導 した硫酸塩及びスルホン酸塩、並びにこれらの薬学的に容認可能な塩類が含まれ
る。適した陰イオン基を共有結合させた炭水化物誘導ポリマーの例には、式: のものが含まれるが、ただしこのとき、RはSO 又はOSO であり、又
は薬学的に容認可能なこれらの塩類である。
【0020】 ペプチド及びペプチド誘導体もまた担体分子として働くことができる。「ペプ
チド」という術語には、ペプチド結合を介して共有結合した二つ以上のアミノ酸
が含まれる。ペプチド担体分子に用いることのできるアミノ酸には、グリシン、
アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン
、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リ
シン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、及び
トリプトファンなど、たんぱく質に見られる天然発生型のアミノ酸が含まれる。
アミノ酸という術語には、さらに、天然発生型のアミノ酸の類似体、誘導体及び
同属体が含まれ、これらのうち一つ又はそれ以上がペプチド誘導体中に存在して
いてもよい。例えば、アミノ酸類似体は、適した官能基を持っていれば、延長し
た又は短縮した側鎖あるいは変異側鎖を有していてもよい。さらに、当該アミノ
酸の構造にとって立体異性体型の形成が可能である場合には、D型及びL型のア
ミノ酸立体異性体も含まれる。「ペプチド誘導体」という術語には、さらに、ペ
プチドの主鎖を模倣する分子を含むがアミノ酸ではないような化合物(いわゆる
ペプチドミメティックス)、例えばベンゾジアゼピン分子(例えば James, G. L
. et al. (1993) Science 260:1937-1942を参照されたい)が含まれる。陰イオ ンの基は、ペプチド又はペプチド誘導体に、特定のアミノ酸の側鎖に付いた官能
基、又はその他の適した官能基を介して結び付いていてもよい。例えば、硫酸塩
又はスルホン酸塩の基が、セリン残基のヒドロキシル側鎖を介して結合していて
もよい。ペプチドを、(上述したように)Ab−ペプチドの基底膜構成成分(例
えばGAG)の結合部位と相互作用するようにデザインしてもよい。従って、あ
る一つの実施例では、当該ペプチドは四つのアミノ酸を含み、陰イオンの基(例
えばスルホン酸塩)が一番目、二番目及び四番目のアミノ酸に結び付いている。
例えば、当該ペプチドはSer-Ser-Y-Serであってもよく、ただしこのとき陰イオ ンの基は各セリン残基の側鎖に結び付いており、Yはいかなるアミノ酸でもよい
。ペプチド及びペプチド誘導体に加え、単一のアミノ酸を本発明の陰イオン化合
物の担体として用いてもよい。例えば、システイン酸、システインのスルホン酸
誘導体、を用いてもよい。
【0021】 「脂肪族の基」という術語には、典型的には1から22個の炭素原子を有する
、直鎖又は分岐鎖を特徴とする有機化合物が含まれるものとして意図されている
。脂肪族の基には、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が含まれる。複
雑な構造では、この鎖は分岐鎖でも又は架橋結合していてもよい。アルキル基に
は、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基を含め、一つ又はそれ以上の炭素原子
を有する飽和炭化水素が含まれる。このような炭化水素成分は、一つ又はそれ以
上の炭素上で、例えば一個のハロゲン、一個のヒドロキシル、一個のチオール、
一個のアミノ、一個のアルコキシ、一個のアルキルカルボキシ、一個のアルキル
チオ、又は一個のニトロ基に置換されていてもよい。炭素数を特に他に明示しな
い限り、ここで用いられる「低級脂肪族の」という術語は、上に定義したような
、しかし1個から6個の炭素原子を有する脂肪族の基(例えば低級アルキル、低
級アルケニル、低級アルキニル)を意味する。このような低級脂肪族の基、例え
ば低級アルキル基、の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-ク
ロロプロピル、n-ブチル、s-ブチル、2-アミノブチル、イソブチル、t-ブチル、
3-チオペンチル、等々である。ここで用いられる「アミノ」という術語は−NH を意味し、「ニトロ」という術語は−NOを意味し、「ハロゲン」という術
語は−F、−Cl、−Br、又は−Iを指し、「チオール」という術語はSHを
意味し、そして「ヒドロキシル」という術語は−OHを意味する。このように、
ここで用いられる「アルキルアミノ」という術語は、一個のアミノ基を結合させ
た、上に定義したようなアルキル基を意味する。「アルキルチオ」という術語は
、一個のスルフヒドリル基を結合させた、上に定義したようなアルキル基を言う
。ここで用いられる「アルキルカルボキシル」という術語は、一個のカルボキシ
ル基を結合させた、上に定義したようなアルキル基を言う。ここで用いられる「
アルコキシ」という術語は、一個の酸素原子を結合させた、上に定義したような
アルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基にはメトキシ、エトキシ、プロポ
キシ、t−ブトキシ、等々が含まれる。「アルケニル」及び「アルキニル」とい
う術語は、アルキルに類似の不飽和脂肪族の基であるが、それぞれ少なくとも一
つの二重又は三重結合を含むものを言う。
【0022】 「脂環式の基」という術語は、三つ又はそれ以上の炭素原子から成る閉環構造
を含むものとして意図されている。脂環式の基には、飽和の環状炭化水素である
シクロパラフィン又はナフテン、二つ又はそれ以上の二重結合を持って不飽和と
なったシクロオレフィン、及び、一個の三重結合を持つシクロアセチレンが含ま
れる。これらは芳香族の基を含まない。シクロパラフィンの例には、シクロプロ
パン、シクロヘキサン、及びシクロペンタンがある。シクロオレフィンの例には
シクロペンタジエン及びシクロオクタテトラエンがある。脂環式の基には、さら
に、アルキル置換された脂環式の基など、縮合環構造及び置換された脂環式の基
が含まれる。脂環の場合には、このような置換基には、さらに低級アルキル、低
級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級
アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF、−CN、等々を含め
ることができる。
【0023】 「ヘテロ環式の基」という術語には、その環内の一つ又はそれ以上の原子が、
例えば窒素、又は酸素など、炭素以外の元素であるような閉環構造が含まれるも
のとして意図されている。ヘテロ環の基は飽和又は不飽和でもよく、ピロール及
びフランなどのヘテロ環の基は芳香族の性質を有していてもよい。これらには、
キノリン及びイソキノリンなどの縮合環構造が含まれる。ヘテロ環の基の例には
他にも、ピリジン及びプリンがある。さらにヘテロ環の基は一つ又はそれ以上の
構成原子が、例えば一個のハロゲン、一個の低級アルキル、一個の低級アルケニ
ル、一個の低級アルコキシ、一個の低級アルキルチオ、一個の低級アルキルアミ
ノ、一個の低級アルキルカルボキシル、一個のニトロ、一個のヒドロキシル、−
CF、−CN、等々に置換されていてもよい。
【0024】 「芳香族の基」という術語は、一つ又はそれ以上の環を含有する不飽和の環状
炭化水素を含むものとして意図されている。芳香族の基には、5−及び6−員環
の単一環の基が含まれ、この基にはゼロから4個のヘテロ原子が含まれていても
よく、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサ
ゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダ
ジン及びピリミジン、等々である。この芳香族の環は、一つ又はそれ以上の環位
置で、例えば一個のハロゲン、一個の低級アルキル、一個の低級アルケニル、一
個の低級アルコキシ、一個の低級アルキルチオ、一個の低級アルキルアミノ、一
個の低級アルキルカルボキシル、一個のニトロ、一個のヒドロキシル、−CF 、−CN、等々に置換されてもよい。
【0025】 本発明の方法の好適な実施例の一つでは、被験体に投与される陰イオン化合物
は、担体分子に共有結合した少なくとも一つのスルホン酸塩の基、又は薬学的に
容認可能なその塩から成る。従って、陰イオン化合物は構造: を有していてよく、ただしこのときQは担体分子であり、X+は陽イオンの基で
あり、そしてnは整数である。適した担体分子及び陽イオンの基は前述したもの
である。スルホン酸塩の基の数(「n」)は、前にも説明したように、当該化合
物の活性が維持されながらも目的の標的部位への化合物の生体内分布が妨げられ
ないよう、選択される。ある一つの実施例では、nは1から10までの間の整数
である。別の実施例では、nは3から8までの間の整数である。前にも説明した
ように、複数のスルホン酸塩の基を持つ陰イオン化合物は、当該化合物がAbペ
プチドのHSPG結合部位と最適に相互作用するように間隔を置いたスルホン酸
塩の基を有していてもよい。
【0026】 好適な実施例では、スルホン酸塩のための担体分子は、低級脂肪族の基(例え
ば低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル)、ヘテロ環式の基、ジサ
ッカリド、ポリマー又はペプチドあるいはペプチド誘導体である。さらに、担体
は、例えば一つ又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロ
キシの基など、で置換されてもよい。特定の実施例では、スルホン酸塩のための
担体分子は一個の芳香族の基である。
【0027】 適したスルホン酸化ポリマーである陰イオン化合物の例には、ポリ(2-アクリ ルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-
1-プロパンスルホン酸-コ-アクリロニトリル)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチ ル-1-プロパンスルホン酸-コ-スチレン)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(4-ス チレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(アクリル酸)のスルホン酸誘導体、ポリ(メ
チルアクリレート)のスルホン酸誘導体、ポリ(メチルメタクリレート)のスルホ
ン酸誘導体、及びポリ(ビニルアルコール)のスルホン酸塩誘導体、並びに薬学的
に容認可能なこれらの塩類が含まれる。
【0028】 好適なスルホン酸化ポリマーは、ポリ(ビニルスルホン酸)(PVS)又は薬
学的に容認可能なその塩、好ましくはそのナトリウム塩である。実施例の一つで
は、分子量が約800から1000ダルトンのPVSを用いる。PVSは立体異
性体の混合したものとして用いても、又は単一の活性な異性体として用いてもよ
い。
【0029】 好適なスルホン酸化ジサッカリドは、例えば八スルホン酸化スクロースなど、
完全に又は部分的にスルホン酸化したスクロース、又はその薬学的に容認可能な
塩である。その他のスルホン酸化サッカリドには、5-デオキシ-1,2-O-イソプロ ピリデン-α-D-キシロフラノース-スルホン酸 (XXIII、ナトリウム塩として示し
た)がある。
【0030】 好適な低級脂肪族のスルホン酸化陰イオン化合物には、エタンスルホン酸、2-
アミノエタンスルホン酸(タウリン)、システイン酸(3-スルホアラニン又はa-
アミノ-b-スルホプロピオン酸)、1-プロパンスルホン酸、1,2-エタンジスルホ ン酸、1,3-プロパンジスルホン酸、1,4-ブタンジスルホン酸、1,5-ペンタンジス
ルホン酸、及び4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、及び薬学的に容認可能なそ れらの塩類がある。その他の脂肪族のスルホン酸化陰イオン化合物には、1-ブタ
ンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、3-ペンタンスルホン酸、4-ヘプタンスル
ホン酸、1-デカンスルホン酸、及び薬学的に容認可能なそれらの塩類がある。ス
ルホン酸化した置換脂肪族の陰イオン化合物には、3-アミノ-1-プロパンスルホ ン酸、3-硫酸ヒドロキシプロパンスルホン酸、1,7-ジヒドロキシ-4-ヘプタンス ルホン酸、及び薬学的に容認可能なそれらの塩類が含まれる。さらに別のスルホ
ン酸化化合物には、2-[(4-ピリジニル)アミド]エタンスルホン酸、及び薬学的に
容認可能なそれらの塩類がある。
【0031】 好適なヘテロ環式のスルホン酸化陰イオン化合物には、3-(N-モルホリノ)プロ
パンスルホン酸、及びテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド-3,4-ジスルホン
酸、及び薬学的に容認可能なそれらの塩類がある。
【0032】 芳香族のスルホン酸化陰イオン化合物には、1,3-ベンゼンジスルホン酸、2,5-
ジメトキシ-1,4-ベンゼンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレン スルホン酸、3,4-ジアミノ-1-ナフタレンスルホン酸、及び薬学的に容認可能な それらの塩類が含まれる。
【0033】 本発明の方法の別の実施例では、被験体に投与される陰イオン化合物は、担体
分子に共有結合した少なくとも一つの硫酸塩の基、又は薬学的に容認可能なその
塩から構成される。従って、当該陰イオン化合物は構造: を有していてもよく、ただしこのときQは担体分子であり、Xは陽イオンの基
であり、そしてnは整数である。適した担体分子及び陽イオンの基は前述したも
のである。硫酸塩の基の数(「n」)は、前にも説明したように、当該陰イオン
化合物の活性が維持されながらも目的の標的部位への化合物の生体内分布が妨げ
られないよう、選択される。ある一つの実施例では、nは1から10までの間の
整数である。別の実施例では、nは3から8までの間の整数である。前にも説明
したように、複数の硫酸塩の基を持つ陰イオン化合物は、当該化合物がAbペプ
チドのGAG結合部位と最適に相互作用するように間隔を置いた硫酸塩の基を有
していてもよい。
【0034】 好適な実施例では、硫酸塩のための担体分子は、低級脂肪族の基(例えば低級
アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル)、芳香族の基、ジサッカリド、
ポリマー又はペプチドあるいはペプチド誘導体である。さらに、担体は、例えば
一つ又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシの基な
ど、で置換されてもよい。
【0035】 適した硫酸化ポリマーの陰イオン化合物の例には、ポリ(2-アクリルアミド-2-
メチル-プロピル硫酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-プロピル硫酸-コ-ア
クリロニトリル)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-プロピル硫酸-コ-スチレ ン)、ポリ(ビニル硫酸)、ポリ(4-スチレン硫酸ナトリウム)、ポリ(アクリル酸
)の硫酸塩誘導体、ポリ(メチルアクリレート)の硫酸塩誘導体、ポリ(メチルメタ
クリレート)の硫酸塩誘導体、及びポリ(ビニルアルコール)の硫酸塩誘導体、及
び薬学的に容認可能なそれらの塩類がある。
【0036】 好適な硫酸化ジサッカリドは、八硫酸スクロース又は薬学的に容認可能なその
塩である。その他の硫酸化サッカリドには、メチル-α-D-グルコピラノシド 2,3
-ジスルフェートの酸型、メチル 4,6-O-ベンジリデン-α-D-グルコピラノシド 2
,3-ジスルフェート、2,3,4,3',4'-五硫酸スクロース、1,3:4,6-ジ-O-ベンジリデ
ン-D-マンニトール 2,5-ジスルフェート、D-マンニトール 2,5-ジスルフェート 、2,5-ジ-O-ベンジル-D-四硫酸マンニトール、及び薬学的に容認可能なそれらの
塩類が含まれる。
【0037】 本発明での利用にとって好適な低級脂肪族硫酸化陰イオン化合物には、エチル
硫酸、2-アミノエタン-1-オル硫酸、1-プロパノール硫酸、1,2-エタンジオール 二硫酸、1,3-プロパンジオール二硫酸、1,4-ブタンジオール二硫酸、1,5-ペンタ
ンジオール二硫酸、及び1,4-ブタンジオールモノ硫酸、及び薬学的に容認可能な
それらの塩類が含まれる。本発明での利用が考察されるその他の硫酸化脂肪族陰
イオン化合物には、1,3-シクロヘキサンジオール ジスルフェートの酸型、1,3,5
-ヘプタントリオールトリスルフェート、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオ
ールトリスルフェート、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオールト
リスルフェート、1,3,5,7-ヘプタンテトラオールテトラスルフェート、1,3,5,7,
9-ノナンペンタスルフェート、及び薬学的に容認可能なそれらの塩類がある。本
発明での利用が考えられるその他の硫酸化陰イオン化合物には、酸型の2-アミノ
-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールトリスルフェート、2-ベンジルオキ
シ-1,3-プロパンジオールジスルフェート、3-ヒドロキシプロピルスルファミン 酸スルフェート、2,2'-イミノエタノールジスルフェート、N,N-ビス(2-ヒドロキ
シエチル)スルファミン酸ジスルフェート、及び薬学的に容認可能なそれらの塩 類がある。
【0038】 好適なヘテロ環式の硫酸化陰イオン化合物には、3-(N-モルホリノ)プロパン硫
酸、及びテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド-3,4-ジオール二硫酸、及び薬
学的に容認可能なそれらの塩類がある。
【0039】 本発明は、さらに、in vivoで本発明の方法で用いられる陰イオン化合物に転 化するプロドラッグの利用を考察するものである(例えば R.B. Silverman, 199
2, "The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action", Academic Pres
s, Chp. 8を参照されたい)。このようなプロドラッグを用いると、当該陰イオ ン化合物の(例えば通常は血液脳関門を通過しないような化合物に血液脳関門を
通過させるなどして)生体内分布を変化させたり、又は当該陰イオン化合物の薬
物動態を変化させたりすることができる。例えば、硫酸塩又はスルホン酸塩など
の陰イオンの基をメチル基又はフェニル基などでエステル化して硫酸エステル又
はスルホン酸エステルにしてもよい。この硫酸エステル又はスルホン酸エステル
を被験体に投与すると、このエステルは酵素的又は非酵素的、還元作用又は加水
分解作用により開裂して当該の陰イオン基を露出させることになる。このような
エステルは環状、例えば環状の硫酸塩又はスルトンなど、でもよく、又は、二つ
以上の陰イオン成分を結合基を介してエステル化してもよい。環状の陰イオン化
合物の例には、例えば、2-スルホ安息香酸、プロパンスルトン、ブタンスルトン
、1,3-ブタンジオール環状スルフェート、α-クロロ-α-ヒドロキシ-o-トルエン
スルホン酸スルトン、及び6-ニトロナフタ-[1,8-cd]-1,2,-オキサチオール2,2- ジオキシドがある。ある好適な実施例では、当該プロドラッグは環状の硫酸塩又
はスルトンである。陰イオン基は、開裂させたときに中間陰イオン化合物を露出
させるような成分(例えばアシルオキシメチルエステルなど)でエステル化して
もよく、次にこの中間陰イオン化合物が分解して活性陰イオン化合物を生成する
こととなる。別の実施例では、このプロドラッグはチオールなどの硫酸塩又はス
ルホン酸塩の還元型であり、これがin vivoで酸化して陰イオン化合物になる。 さらに、陰イオン成分を、in vivoで能動的に輸送される基、又は、標的の臓器 によって選択的に取り込まれるような基にエステル化させてもよい。このエステ
ルを、担体分子について下に記載するように、当該陰イオン化合物を標的の臓器
に向かわせる特異的ターゲッティングが可能であるように選択してもよい。
【0040】 本陰イオン化合物で有用な担体分子には、前に説明したような担体分子、例え
ば炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族の基、脂環式の基、
ヘテロ環式の基、芳香族の基又はこれらの組合せ、がある。適したポリマーには
、置換された及び置換されていないビニル、アクリル、スチレン及び炭水化物誘
導ポリマー及びコポリマー並びにこれらの塩類がある。好適な担体分子には、低
級アルキル基、ヘテロ環式の基、ジサッカリド、ポリマー又はペプチドあるいは
ペプチド誘導体がある。
【0041】 本発明において有用な担体分子には、さらに、本陰イオン化合物が標的の一臓
器又は複数の臓器に特異的に送達されることを可能とする成分を含めてもよい。
例えば、本イオン化合物の脳への送達が好ましい場合、当該担体分子には、本陰
イオン化合物を能動的輸送又は受動的輸送のいずれかにより脳に向かわせること
のできる成分(ターゲティング成分)を含めてもよい。実例を挙げると、当該担
体分子には、例えば、両者ともボドール氏の米国特許第4,540,564号及
び第5,389,623号に説かれたようなレドックス成分を含めてもよい。こ
れらの特許は、脳内に進入し、酸化することで帯電したピリジニウム種になって
脳に捕捉させることのできるジヒドロピリジン成分に結合させた薬剤を開示して
いる。このように、薬剤は脳内に蓄積する。本発明のピリジン/ジヒドロピリジ
ン化合物の例には、1-(3-スルホプロピル)-1,4-ジヒドロピリジンナトリウム、2
-(ニコチニルアミド)-エタンスルホン酸ナトリウム、及び1-(3-スルホプロピル)
-ピリジニウムベタインがある。その他の担体成分には、例えばアミノ酸又はチ ロキシンなど、in vivoで能動的又は受動的に輸送することのできる化合物が含 まれる。実例としての化合物は、タウリン分子がフェニルアラニン(大型の神経
アミノ酸)に結合したフェニルアラニルタウリンである。このような担体成分は
in vivoで代謝により取り除かれるものでも、又は活性陰イオン化合物の一部と してそのまま残るものでもよい。アミノ酸(及びその他の能動的に輸送される成
分)の構造上の擬態も本発明において有用である(例えば1-(アミノメチル)-1-(
スルホメチル)-シクロヘキサン)。その他のアミノ酸擬態の例には、p-(スルホメ
チル)フェニルアラニン, p-(1,3-ジスルホプロピ-2-イル)フェニルアラニン、及
びO-(1,3-ジスルホプロピ-2-イル)チロシンがある。数多くのターゲティング成 分が公知であり、その中には、例えばアシアロ糖たんぱく(例えば、ウー氏の米
国特許第5,166,320号を参照されたい)、及び、レセプター伝達エンド
サイトーシスを介して細胞内に輸送されるその他のリガンドが含まれる(担体分
子に共有又は非共有結合させてもよいターゲティング成分のその他の例について
は以下を参照されたい)。さらに、本発明の陰イオン化合物は血流中でアミロイ
ド生成たんぱく、例えばAbペプチドなど、に結合してもよく、こうして作用部
位に輸送されてもよい。
【0042】 上述のターゲティング及びプロドラッグ戦略を組み合わせることで、所望の作
用部位にプロドラッグとして輸送され、そこで覆いをはがして活性陰イオン化合
物を露出するような陰イオン化合物を生成してもよい。例えば、ボドール氏のジ
ヒドロピリン(上記を参照されたい)戦略を、例えば2-(1-メチル-1,4-ジヒドロ
ニコチニル)アミドメチル-プロパンスルトンなど、の環状のプロドラッグと組み
合わせることができる。
【0043】 一実施例では、本薬剤組成中の陰イオン化合物は、スルホン化ポリマー、例え
ばポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリ(2-アクリル アミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸-コ-アクリロニトリル)、ポリ(2-アクリ
ルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸-コ-スチレン)、ポリ(ビニルスルホン
酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸水素ナトリウム)、ポリ(アクリル酸)のスルホ ン酸誘導体、ポリ(メチルアクリレート)のスルホン酸誘導体、ポリ(メチルメタ クリレート)のスルホン酸誘導体、及びポリ(ビニルアルコール)のスルホン酸誘 導体、並びに薬学的に容認可能なそれらの塩類など、である。
【0044】 別の実施例では、当該薬剤組成中の陰イオン化合物は、硫酸化ポリマー、例え
ばポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパン硫酸)、ポリ(2-アクリルアミド-
2-メチル-1-プロパン硫酸-コ-アクリロニトリル)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メ
チル-1-プロパン硫酸-コ-スチレン)、ポリ(ビニル硫酸)、ポリ(4-スチレン硫酸 ナトリウム)、ポリ(アクリル酸)の硫酸誘導体、ポリ(メチルアクリレート)の硫 酸誘導体、ポリ(メチルメタクリレート)の硫酸誘導体、及びポリ(ビニルアルコ ール)の硫酸誘導体、並びに薬学的に容認可能なそれらの塩類など、である。
【0045】 さらに本陰イオン化合物は構造: を有していてもよく、ただしこのときZはXR又はRであり、R及びR はそれぞれ個別に水素、置換された又は置換されていない脂肪族の基(好ましく
は、鎖内に1から24個の炭素原子を有する分岐鎖又は直鎖の脂肪族成分、又は
脂肪族の環内に4から7個の炭素原子を有する置換されていない又は置換された
環状の脂肪族成分。好適な脂肪族及び環状の脂肪族の基はアルキル基、より好ま
しくは低級アルキルである)、一個のアリール基、一個のヘテロ環式の基、又は
一個の塩を形成する陽イオンであり、Rは水素、低級アルキル、アリール、又
は一個の塩を形成する陽イオンであり、Xはそれぞれ個別にO又はSであり、R は 水素、低級アルキル、アリール又はアミノであり、Y1及びY2はそれぞ れ個別に水素、ハロゲン(例えばF、Cl、Br、又はI)、低級アルキル、ア
ミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ
、及びアルキルアリールアミノを含む)、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリー
ルオキシであり、そしてnは0から12までの間の整数(より好ましくは0から
6まで、より好ましくは0又は1)である。これらの化合物は、その内容を参考
としてここに編入することとする米国出願番号08/912,574号に説かれ
ている。
【0046】 本発明での利用に好適な陰イオン化合物には、R及びRの両方が薬学的に
容認可能な塩を形成する陽イオンであるような化合物が含まれる。陰イオン化合
物の、(存在する場合の)塩を形成する対イオンへの化学量論は、当該化合物の
陰イオン部分(存在する場合)の電荷と、対イオンの電荷に応じて様々であるこ
とは理解されよう。特に好適な実施例では、R、R及びRはそれぞれ個別
にナトリウム、カリウム又はカルシウム陽イオンである。R及びRの少なく
とも一方が一個の脂肪族の基であるいくつかの実施例では、この脂肪族の基は1
から10個の炭素原子をその直鎖又は分岐鎖に有し、そしてより好ましくは一個
の低級アルキル基であるとよい。R及びRの少なくとも一方が一個の脂肪族
の基である別の実施例では、この脂肪族の基は10から24個の炭素原子をその
直鎖又は分岐鎖に有する。いくつかの好適な実施例では、nは0又は1であるが
、より好ましくはnは0であるとよい。当該治療用化合物のいくつかの好適な実
施例では、Y及びYはそれぞれ水素である。
【0047】 いくつかの好適な実施例では、本発明の陰イオン化合物は、構造: を有していてもよく、ただしこのときR,R、R、Y、Y、X及びn
は上に定義した通りである。より好適な実施例では、本発明の陰イオン化合物は
構造: を有していてもよく、ただしこのときR、R、R、Y、Y、及びXは
上に定義した通りであり、R及びRはそれぞれ個別に水素、アルキル、アリ
ール、又はヘテロシクリルであるか、又は、R及びRはこれらが結び付いた
窒素原子と一緒に捉えられると、環内に3から8個の原子を有する環状成分を形
成し、そしてnは0から6までの間の整数である。 いくつかの好適な実施例で は、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの好適な実施例では、本発明
の化合物はα−アミノ酸、(又はα−アミノ酸エステル)、より好ましくはL- α-アミノ酸又はエステルを含むとよい。
【0048】 Z、Q、R、R、R、Y、Y、及びX基は、それぞれ個別に、当該
陰イオン化合物の活性が維持されながらも目的の標的部位への当該陰イオン化合
物の生体内分布が妨げられないように選択される。例えば、陰イオン基の数(及
び、本治療用化合物上の全体の電荷)は、例えば細胞膜などの解剖学的障壁の通
過や、血液脳関門などの生理学的障壁を横切った進入を、このような性質が好ま
しい場合には、これを阻害する程大きくあってはならない。例えば、ホスホノギ
酸塩のエステルの有する生体内分布特性はホスホノギ酸塩の生体内分布特性とは
異なる、そして場合によってはより優れていることが報告されている(例えば、
ヘルグストランド氏らの米国特許第4,386,081号及び第4,591,5
83号、及びホステットラー氏らの米国特許第5,194,654号及び第5,
463,092号を参照されたい)。このように、いくつかの実施例では、R 及びRの少なくとも一方は脂肪族の基(より好ましくはアルキル基)であるが
、このときこの脂肪族の基は10から24個の炭素原子をこの直鎖又は分岐鎖に
有する。脂肪族の鎖の分岐の数、長さ、及び程度は、例えば親油性など、所望の
性質をもたらすように選択してもよい。別の実施例では、R及びRの少なく
とも一方は脂肪族の基(より好ましくはアルキル基)であるが、このときこの脂
肪族の基は1から10個の炭素原子をこの直鎖又は分岐鎖に有する。やはり、脂
肪族の鎖の分岐の数、長さ、及び程度は、例えば親油性、又は酵素によるエステ
ル開裂の容易さなど、所望の性質をもたらすように選択してもよい。いくつかの
実施例では、好適な脂肪族の基はエチル基である。
【0049】 別の実施例では、本発明の陰イオン化合物は構造: を有していてもよく、ただしこのときGはアリール環上の水素又は一つ以上の置
換基(例えばアルキル、アリール、ハロゲン、アミノ、等々)を表し、Lは置換
アルキル基(いくつかの実施例では、好ましくは低級アルキル)、より好ましく
はヒドロキシ置換アルキル又は、ヌクレオシド塩基で置換されたアルキルである
。特定の実施例では、Gは水素又は電子供与基である。Gが電子求引基である実
施例では、Gは好ましくはメタ位置における電子求引基であるとよい。「電子求
引基」という術語は当業において公知であり、ここで用いられる場合、水素より
も電子求引性が大きい基を言う。様々な電子求引基が公知であるが、そのなかに
はハロゲン(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード基など)、ニトロ、
シアノ、等々がある。同様に、ここで用いられる「電子供与基」という術語は、
水素よりも電子求引性が小さい基を言う。Gが電子供与基である実施例では、G
はオルト、メタ又はパラ位置にあってもよい。
【0050】 いくつかの好適な実施例では、Lは: のうちのいずれかから選択される成分である。
【0051】 表1は、従来技術を用いたこれらの化合物の特徴付けに関するデータを挙げた
ものである。
【0052】 本発明の陰イオン化合物のいくつかの構造には非対称の炭素原子が含まれるこ
とに注目されよう。従って、このような非対称性から生ずる異性体(例えばエナ
ンチオマー及びジアステレオマー)は本発明の範囲に包含されることを理解され
たい。このような異性体は、伝統的な分離技術や立体制御された合成により、ほ
ぼ純粋な形で得ることができる。この出願の目的のために、そうでないと特に明
示した場合を除き、陰イオン化合物は各キラル中心でのR又はS立体異性体の両
方を含むものとしてみなされたい。
【0053】 いくつかの実施例では、本発明の陰イオン化合物は陽イオンを含む(即ち、い
くつかの実施例では、R、R又はRの少なくとも一つは陽イオンである)
。陽イオン基が水素、H、である場合、本陰イオン化合物は酸、例えばホスホ
ノギ酸など、であると見なされる。水素が金属イオン又はその等価物に置換され
た場合、当該陰イオン化合物はその酸の塩である。この陰イオン化合物の薬学的
に容認可能な塩類は本発明の範囲内にある。例えば、R、R又はRの少な
くとも一つは、薬学的に容認可能なアルカリ金属(例えばLi、Na、又はK)
、アンモニウム陽イオン、アルカリ土類陽イオン(例えばCa2+、Ba2+
Mg2+)、原子価の高い陽イオン、又はポリカチオン対イオン(例えばポリア
ンモニウム陽イオン)であってもよい。(例えばBerge et al. (1977) "Pharmac
eutical Salts", J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい 。)陰イオン化合物 の、(存在する場合の)塩を形成する対イオンへの化学量論は、当該化合物の陰
イオン部分(存在する場合)の電荷と、対イオンの電荷に応じて様々であること
は理解されよう。好適な薬学的に容認可能な塩類には、ナトリウム、カリウム又
はカルシウム塩があるが、その他の塩類も、それらの薬学的に容認可能な範囲内
で考察されるところである。
【0054】 「薬学的に容認可能なエステル」という術語は、本発明の陰イオン化合物の比
較的無毒性のエステル化生成物を言う。これらのエステルは、当該陰イオン化合
物の最終的な単離及び精製の際にin situで作製しても、又は、精製された陰イ オン化合物をその遊離酸形のまま又はヒドロキシルを、適したエステル化剤に別
々に反応させることにより作製してもよく、これらの方法のいずれも当業者に公
知である。カルボン酸及びホスホン酸を当業に置いて公知の方法、例えば触媒存
在下でアルコール処理するなど、によりエステルに転化させることができる。好
適なエステル基(例えばRが低級アルキルである場合)はエチルエステル基で
ある。
【0055】 「アルキル」という術語は直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキ
ル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アル
キル基を含む、飽和脂肪族の基を言う。好適な実施例では、直鎖又は分岐鎖アル
キルは30以下の炭素原子をその主鎖に(例えば直鎖の場合はC−C30に、
分岐鎖はC−C30に)有し、より好ましくは20以下の炭素原子を有する。
同様に、好適なシクロアルキルは4から10個の炭素原子をそれらの環構造に有
し、より好ましくは4から7個の炭素原子をその環構造に有する。「低級アルキ
ル」という術語は1から6個の炭素を鎖内に有するアルキル基と、3から6個の
炭素を環構造内に有するシクロアルキルとを言う。
【0056】 さらに、本明細書及び請求の範囲を通じて使用される(「低級アルキル」を含
む)「アルキル」という術語は、「置換されていないアルキル」及び「置換され
たアルキル」の両方を含むものとして意図されており、この後者は炭化水素の主
鎖上の一つ又はそれ以上の炭素に付いた水素が置換基に置換されたアルキル成分
を言う。このような置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカ
ルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、ア
リールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アル
コキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル
、リン酸塩、ホスホネート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキル アミ ノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリ
ールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカル
ボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフ
ヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、硫酸塩、スル
ホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シ
アノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、又は、芳香族又はヘテロ芳香族成
分を含めることができる。当業者であれば、炭化水素の鎖上で置換された成分は
、適当であれば、それ自体が置換されてもよいことは理解されよう。シクロアル
キルはさらに、例えば上述したような置換基など、で置換されてもよい。「アラ
ルキル」成分は、アリールで置換されたアルキル(例えばフェニルメチル(ベン
ジル))である。
【0057】 ここで用いられる「アルコキシ」という術語は、アルキル成分が上述したもの
である、構造−O−アルキルを有する成分を言う。
【0058】 ここで用いられる「アリール」という術語は、5−及び6−員環の単一環芳香
族の基を含み、この基にはゼロから4個のヘテロ原子が含まれていてもよく、例
えば、置換されていない又は置換されたベンゼン、ピロール、フラン、チオフェ
ン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピ
リジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン、等々である。アリール基には、
さらに、多環式の縮合芳香族基、例えばナフチル、キノリル、インドリル、等々
が含まれる。芳香族の環は一つ又はそれ以上の環一で、例えばアルキル基につい
て上述したようなものなどの置換基で置換されてもよい。好適なアリール基には
、置換されていない及び置換されたフェニル基が含まれる。
【0059】 ここで用いられる場合の「アリールオキシ」という術語は、アリール成分が上
に定義したようなものである構造−O−アリールを有する基を言う。
【0060】 ここで用いられる「アミノ」という術語は、式−NRの置換されていな
い又は置換された成分を言うが、ただしこのときR及びRはそれぞれ個別に
水素、アルキル、アリール、又はヘテロシクリルであるか、あるいはR及びR は、これらが結び付いた窒素原子と一緒に捉えられると、環内に3から8個の
原子を有する環状成分を形成するものである。このように、「アミノ」という術
語は、特に他に明示しない場合、ピペリジニル又はピロリジニル基などの環状ア
ミノ成分を包含するものとして意図されている。「アミノ置換アミノ基」とは、
及びRの少なくとも一方がさらにアミノ基で置換されたアミノ基を言う。
【0061】 ある好適な実施例では、R又はRは(少なくともその一つについては)長
鎖の脂肪族成分であってもよい。ここで用いられる「長鎖脂肪族成分」という術
語は、10から24個の炭素を脂肪族の鎖に有する直鎖又は分岐鎖脂肪族成分(
例えばアルキル又はアルケニル成分など)、例えば当該長鎖脂肪族成分が脂肪酸
(好ましくは天然発生型脂肪酸)の脂肪族の鎖であるなど、を有する成分を言う
。代表的な長鎖脂肪族成分には、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、等々
の脂肪族の鎖が含まれる。
【0062】 いくつかの実施例では、本発明の陰イオン化合物は構造: を有していてもよく、ただしこのときR及びRはそれぞれ個別に水素、一個
の脂肪族の基(好ましくは1から24個の炭素原子、より好ましくは10から2
4個の炭素原子を鎖内に有する、分岐鎖又は直鎖の脂肪族成分、又は、4から7
個の炭素原子を脂肪族の環に有する置換されていない又は置換された環状の脂肪
族成分)、一個のアリール基、一個のヘテロ環式の基、又は一個の塩を形成する
陽イオンであり、Rは水素、低級アルキル、アリール、又は一個の塩を形成す
る陽イオンであり、Y及びYはそれぞれ個別に水素、ハロゲン(例えばF、
Cl、Br、又はI)、低級アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリール
オキシであり、そしてnは0から12までの間の整数である。本発明での利用に
好適な陰イオン化合物には、R及びRの両方が薬学的に容認可能な塩を形成
する陽イオンである化合物が含まれる。特に好適な実施例では、R、R及び
はそれぞれ個別にナトリウム、カリウム又はカルシウム陽イオンであり、n
は0である。本治療用化合物のいくつかの好適な実施例では、Y及びYはそ
れぞれ水素である。 特に好適な陰イオン化合物はホスホノギ酸塩の塩類である 。(アストラ社から)市販のホスホノギ酸三ナトリウム(ホスカーネットナトリ
ウム又はFoscavirO)を入手可能であり、その臨床学的薬理が研究されている( 例えば"Physician's Desk Reference", 51st Ed., pp. 541-545 (1997)を参照さ
れたい)。
【0063】 別の実施例では、本発明で利用される陰イオン化合物はアミノホスホネート、
ビホスホネート、ホスホノカルボキシレート誘導体、ホスホネート誘導体、又は
ホスホノカルボハイドレートであってもよい。
【0064】 薬学的に容認可能な製剤 本発明の方法においては、本陰イオン化合物を薬学的に容認可能な製剤として
投与することができる。本発明は、例えば巨大分子状の錯体、ナノカプセル、マ
イクロスフィア、又はビードの形状の合成又は天然のポリマー、及び水中油乳濁
液、ミセル、混合ミセル、合成膜ベシクル、及びリシールド・エリスロサイト(
原語:resealed erythrocyte)を含む、脂質を基剤にした製剤など、あらゆる薬
学的に容認可能な製剤に関するものである。
【0065】 ある実施例では、当該の薬学的に容認可能な製剤はポリマーマトリックスを含
む。
【0066】 「ポリマー」又は「ポリマーの」という術語は当業で認識されており、標的の
状態の処置が行われるよう、陰イオン化合物を送達することのできる、モノマー
の単位が反復して成る構造上の枠組みを含むものである。この術語はさらに、合
成又は天然発生型などのコポリマー及びホモポリマーを含む。線状ポリマー、分
岐ポリマー、及び架橋ポリマーも含まれるものと意図されている。
【0067】 例えば、本発明で利用される薬学的に容認可能な製剤を形成するのに適したポ
リマー材料には、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース誘導体、コラーゲン、
フィブリン、ゼラチン、及びポリサッカリドなどの天然由来のポリマーや、ポリ
エステル(PLA、PLGA)、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、多価
無水物、及びプルロニックなどの合成ポリマーが含まれる。これらのポリマーは
、中枢神経系を含む神経系に生体適合性があり、これらは分解によって何ら毒性
の副産物を生じることなく中枢神経系内で生分解可能であり、そしてこれらはポ
リマーの運動特性を操作することにより、陰イオン化合物放出の態様及び時間を
調節できる可能性を有する。ここで用いられる「生分解可能」という術語は、当
該ポリマーが、被験体身体内の酵素作用、加水分解作用及び/又はその他の同様
な機序により経時的に分解していくことを意味する。ここで用いられる「生体適
合性の」という術語は、当該ポリマーが、毒性又は有害性なく、そして免疫学的
拒絶反応を生ずることなく、生体組織又は生命体に適合性があることを意味する
【0068】 ポリマーは当業で公知の方法を用いて作製が可能である (Sandler, S. R.; Ka
ro, W. Polymer Syntheses; Harcourt Brace: Boston, 1994; Shalaby, W.; Ika
da, Y.; Langer, R.; Williams, J. Polymers of Biological and Biomedical S
ignificance (ACS Symposium Series 540; American Chemical Society: Washin
gton, DC, 1994)。ポリマーは柔軟性であるようにデザインすることができ、生 物活性のある側鎖間の距離と、ポリマーの骨格と基との間のリンカーの長さは調
節が可能である。その他の適したポリマー及びそれらの作製法は、米国特許第5
,455,044号及び第5,576,018号に説かれているが、その内容を
参考文献としてここに編入することとする。
【0069】 ポリマー製剤は、好ましくは、その教示を参考としてここに編入することとす
る米国特許第4,883,666号に説かれているように、液化ポリマー内に当
該陰イオン化合物を分散させたり、又は、その内容を参考としてここに編入する
こととするOdian G., Principles of Polymerization and ring opening polyme
rization, 2nd ed., John Wiley & Sons, New York, 1981に説かれているように
バルク重合法、界面重合法、溶液重合法、及びリング重合法などの方法により形
成するとよい。製剤の特性及び性質は、反応温度、ポリマー濃度及び陰イオン化
合物濃度、用いる溶媒の種類、及び反応時間などのパラメータを変更することに
よって制御が可能である。
【0070】 陰イオン化合物及び薬学的に容認可能なポリマーに加え、本発明の方法で用い
られる薬学的に容認可能な製剤には、さらなる薬学的に容認可能な担体及び/又
は賦形剤を含めてもよい。ここで用いられる「薬学的に容認可能な担体」には、
生理学的に適合性のあるあらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤
及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤、等々が含まれる。例えば、担体は脳脊髄
液への注射に適するものでもよい。賦形剤には薬学的に容認可能な安定化剤及び
崩壊剤が含まれる。
【0071】 当該陰イオン化合物は、一つ又はそれ以上の薬学的に容認可能なポリマー内に
封入して、ここでは互換可能に呼ばれるマイクロカプセル、マイクロスフィア、
又はマイクロ粒子を形成してもよい。マイクロカプセル、マイクロスフィア、及
びマイクロ粒子は、従来より、2ミリメートル以下の直径、通常500ミクロン
以下の直径の球形粒子から構成される自由に流れる粉末である。1ミクロン未満
の粒子は通常ナノカプセル、ナノ粒子又はナノスフィアと呼ばれる。多くの場合
、マイクロカプセル及びナノカプセル、マイクロスフィア及びナノスフィア、又
はマイクロ粒子及びナノ粒子、間の違いは大きさであり、これら二者の間に内部
構造の違いは、あったとしてもほとんどない場合が多い。本発明の一態様では、
中間の平均直径は約45μm未満、好ましくは20μm未満、そしてより好まし
くは約0.1から10μmの間、である。
【0072】 別の実施例では、当該の薬学的に容認可能な製剤は脂質を基剤とした製剤を含
む。公知の脂質を基剤とした薬剤送達系のいずれを本発明の実施に用いてもよい
。例えば、多胞体リポソーム(MVL)、多重膜リポソーム(多重膜ベシクル又
は「MLV」としても知られる)、小型の一重膜リポソーム(一重膜ベシクル又
は「SUV」としても知られる)及び大型の一重膜リポソーム(大型一重膜ベシ
クル又は「LUV」としても知られる)を含む一重膜リポソーム、はすべて、封
入された陰イオン化合物の持続的な放出速度が確立可能である限り、利用できる
。実施例の一つでは、脂質を基剤とした本製剤は多胞体リポソーム系であってよ
い。放出が制御された多胞体リポソーム薬剤送達系を作製する方法は、その内容
を参考としてここに編入することとするPCT出願番号US96/11642号
、US94/12957号、及びUS94/04490号に説かれている。
【0073】 合成膜ベシクルの組成は、通常、ホスホリピドを通常ステロイド、特にコレス
テロールと組み合わせたものである。その他のホスホリピド又はその他の脂質を
用いてもよい。
【0074】 合成膜ベシクル作製に有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホ
スファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン
、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシドがある。卵ホスファチジ
ルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジ
ルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジル
グリセロール、及びジオレオイルホスファチジルグリセロールを含むホスホリピ
ドが用いられるのが好ましい。
【0075】 陰イオン化合物を含有する、脂質を基剤としたベシクルを作製する上では、陰
イオン化合物封入の効率、陰イオン化合物の不安定性、ベシクルの最終的集団の
均一性及び大きさ、陰イオン化合物対脂質の割合、透過性、調剤の不安定性、及
び、製剤の薬学的容認可能性といった可変因子を考慮せねばならない(例えばそ
の内容を参考としてここに編入することとするSzoka, et al., Annual Reviews
of Biophysics and Bioengineering, 9:467, 1980; Deamer, et al., in Liposo
mes, Marcel Dekker, New York, 1983, 27; and Hope, et al., Chem. Phys. Li
pids, 40:89, 1986を参照されたい)。
【0076】 薬学的に容認可能な製剤の投与 一実施例では、本陰イオン化合物を、例えば被験体の脳脊髄液内など、被験体
の中枢神経系へ導入することにより投与する。本発明のいくつかの態様では、本
陰イオン化合物は、例えば脳室、腰部又は大槽など、鞘内に導入する。
【0077】 当該の薬学的に容認可能な製剤は、水性の伝播体中に容易に懸濁させることが
でき、また従来の皮下注射針を介して又は輸注ポンプを用いて容易に導入するこ
とができる。導入に先駆けて、本製剤を、好ましくは、その内容を参考としてこ
こに編入することとする米国特許第436,742号に説かれたガンマ線又は電
子ビーム滅菌法によって滅菌することができる。
【0078】 本発明の別の実施例では、本陰イオン化合物製剤を被験体に鞘内投与する。こ
こで用いられる「鞘内投与」という術語は、(その内容を参考文献としてここに
編入することとするLazorthes et al. Advances in Drug Delivery Systems and
Applications in Neurosurgery, 143-192 and Omaya et al., Cancer Drug Del
ivery, 1: 169-179に説かれている)頭蓋骨孔又は脳槽又は腰部穿孔、等々を介 して側頭部脳室注射を用いる技術により、被験体の脳脊髄液へ直接、陰イオン化
合物製剤を送達することを含むものとして意図されている。「腰部領域」という
術語は、第三及び第四腰椎(背面下方)間の領域を含むものとして意図されてい
る。「大槽」という術語は頭部背面において頭蓋骨が終わり脊髄が始まる辺りの
領域を含むものとして意図されている。「脳室」という術語は、脊髄中心管に連
続する脳内の腔を含むものとして意図されている。上述した部位のいずれかへの
陰イオン化合物の投与は、陰イオン化合物製剤の直接の注射、又は、輸注ポンプ
の利用により達成することができる。注射には、本発明の陰イオン化合物製剤は
、液体溶液、好ましくは、ハンクス溶液又はリンガー溶液などの生理学的に適合
性のある緩衝液など、の中に調製することができる。加えて、当該陰イオン化合
物製剤を固体形で調製し、使用直前に再溶解させたり又は懸濁させてもよい。凍
結乾燥形も含まれる。注射は、当該陰イオン化合物製剤の、例えば大量注射の形
でも、又は(輸注ポンプを用いた)連続注射の形でもよい。
【0079】 投与の時間及びレベル 本発明の方法の別の実施例においては、当該の薬学的に容認可能な製剤は、そ
の薬学的に容認可能な製剤を被験体に投与してから少なくとも一、二、三、又は
四週間にわたって、その陰イオン化合物の持続的な送達、例えば「遅延された放
出」を被験体に提供するものである。
【0080】 ここで用いられる「持続的な送達」という術語は、投与後の一定期間、好まし
くは数日間、一週間又は数週間にわたった、陰イオン化合物のin vivoでの継続 的な送達を包含するものとして意図されている。この陰イオン化合物の持続的な
送達は、例えば当該陰イオン化合物の一定期間にわたる継続的な治療効果により
実証することができる(例えば陰イオン化合物の持続的な送達は、神経細胞の死
が一定期間にわたって継続的に阻害されることで実証が可能である)。あるいは
その代わりに、本陰イオン化合物の持続的な送達を、当該陰イオン化合物のin v
ivoでの存在を一定期間にわたって検出することによって実証してもよい。
【0081】 ある一つの実施例では、当該の薬学的に容認可能な製剤は、その陰イオン化合
物を被験体に投与してから30日未満、被験体に対する陰イオン化合物の持続的
な送達を提供するものである。例えば、当該の薬学的に容認可能な製剤、例えば
「遅延放出」製剤は、その陰イオン化合物を被験体に投与してから一、二、三又
は四週間、被験体に対して陰イオン化合物の持続的な送達を提供するものでもよ
い。あるいは、当該の薬学的に容認可能な製剤は、その陰イオン化合物を被験体
に投与してから30日間を越える期間、被験体に対して陰イオン化合物の持続的
な送達を提供するものかも知れない。
【0082】 本発明の方法で用いられる薬学的製剤は、治療上有効量の陰イオン化合物を含
有する。「治療上有効量」とは、所望の結果を達成するのに必要な用量及び期間
で有効な量を言う。本陰イオン化合物の治療上の有効量は、被験体の疾患の状態
、年齢及び体重や、被験体において所望の応答を引き出す上でのその陰イオン化
合物の能力(単独での能力、又は一つ又はそれ以上のその他の薬剤と組み合わせ
たときの能力)などの因子に応じて様々であろう。投与用量計画は最適な治療応
答をもたらすように調節してもよい。さらに治療上の有効量は、当該陰イオン化
合物の毒性の又は有害な作用よりも、治療上の有益な作用の方が高いような量で
ある。陰イオン化合物の治療上の有効濃度の非限定的な範囲は100mMから1
mMである。さらに、特定の被験体に向けて、特定の投与用量計画を、ある一定
期間にわたって、個々のニーズや、また、その陰イオン化合物を投与する又はそ
の投与を監視する人物の職業的判断に応じて調節せねばならず、また、ここで掲
げた投与用量範囲は単なる例であり、請求の範囲に記載された本発明の範囲又は
実施を限定するものとは意図されていないことを理解されたい。
【0083】 本発明の好適な化合物には、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボキシレ
ート、及び、これらの官能基の組合せを含む化合物、が含まれる。特に好適な化
合物には、置換された及び置換されていない低級アルキル硫酸塩及びスルホン酸
塩(1,4-ブタンジオールジスルフェート、1,5-ペンタンジスルホン酸ナトリウム
、タウリン(2-アミノ-エタンスルホン酸ナトリウム)、及びホモタウリン(3- アミノプロパンスルホン酸)を含め、しかしこれらに限らない)がある。その他
の好適な化合物には3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホネート、4-(2-
ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-エタンスルホネート、3-(N-モルホリノ)プロ パンスルホン酸、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド-3,4-二硫酸ナトリウ
ム三水和物、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸ナトリウム, 1,3,5-ペンタント リオール三硫酸ナトリウム、2-硫酸水素アミノエチル、ホスホノギ酸、ホスホノ
酢酸、又はインジゴカルミンがある。好適な化合物は3-アミノプロパンスルホン
酸、又はその塩である(例えば下の例を参照されたい)。
【0084】 別の態様では、本発明は、炎症性プロセス(例えば、アミロイド生成たんぱく
又はペプチドの存在、又はアミロイド生成たんぱく又はペプチドによるマクロフ
ァージの活性化、を原因とする炎症性プロセスなど)を阻害する方法を提供する
ものである。本方法は、例えばAβなどのアミロイド生成たんぱく又はペプチド
によるマクロファージ活性化を阻害するなどにより、炎症性プロセスが阻害され
るよう、治療上有効量の陰イオン化合物を、これを必要とする被験体(例えばア
ミロイド沈着を有する被験体)に投与するステップを含む。好適な実施例では、
この被験体はアルツハイマー病患者である。いくつかの実施例では、この陰イオ
ン化合物は式I又はIIで表される化合物である。好適な治療用化合物には、硫酸 塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボキシレート、及びこれらの官能基の組合せ
を含む化合物、が含まれる。特に好適な化合物には、置換された及び置換されて
いない低級アルキル硫酸塩及びスルホン酸塩 (1,4-ブタンジオールジスルフェ ート、1,5-ペンタンジスルホン酸ナトリウム、タウリン(2-アミノ-エタンスル ホン酸ナトリウム)、及びホモタウリン(3-アミノプロパンスルホン酸)を含め
、しかしこれらに限らない)がある。その他の好適な化合物には3-(シクロヘキ シルアミノ)-1-プロパンスルホネート、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-
エタンスルホネート、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、テトラヒドロチオ
フェン-1,1-ジオキシド-3,4-二硫酸ナトリウム三水和物、4-ヒドロキシブタン-1
-スルホン酸ナトリウム、1,3,5-ペンタントリオール三硫酸ナトリウム、 2-硫酸
水素アミノエチル、ホスホノギ酸、ホスホノ酢酸、又はインジゴカルミンがある
。好適な化合物は3-アミノプロパンスルホン酸、又はその塩である。
【0085】 例 1 マクロファージ(骨髄由来マクロファージ−RAW細胞)をAβ1−40原線
維を加えた無血清媒質中で(Aβ1−40はAβたんぱくの残基1−40に相当
するポリペプチドである)(最終濃度は2.5μM)、活性化の共誘起物質とし
てリポポリサッカリド(LPS)(0.01μg/ml)の存在下又は不在下で
インキュベートした。このマクロファージを一晩インキュベートした。上清を採
取し、炎症性サイトカインTNFα、IL−6や酸化窒素を測定した。TNFα
、IL−6はELISAで測定し、NOはグリース試薬で測定した。
【0086】 陰性コントロールはLPS又はAβのみと一緒にインキュベートした細胞から
構成した。陽性コントロールは、これらの細胞の最適な活性化を誘起することが
判明している濃度のLPS及びIFNγと一緒にインキュベートした細胞から構
成した。
【0087】 図1及び2に示すように、(溶液中に塩の形で存在する)3-アミノプロパンス
ルホン酸がAβ誘起TNFα生成の約60%を遮断することが判明したが、IL
−6生成には影響が見られなかった。NO生成もまた、 3-アミノプロパンスル ホン酸により阻害されたことが示されたが、この化合物はLPS及びIFNγの
存在下でRAW細胞の生成するTNFα及びNOに対して何ら有意な影響は見せ
なかった。
【0088】 背景の項を含め、本出願を通じて引用された全参考文献、発行済み特許、及び
公開済み特許出願の内容は参考としてここに編入されたものである。
【0089】 例 2 以下の例は、Aβの誘起する小グリア細胞の活性化を阻害する、本発明の化合
物の能力を実証するものである。
【0090】 ヒト小グリア細胞THP−1細胞をLPS(リポポリサッカリド)(0.25
μg/ml)で準備刺激し、次に5μMの繊維性Aβペプチドプレパラートと一
緒にインキュベートした。細胞培養液上清中に放出されたIL−1βの量を測定
することで活性化を調べた。細胞を化合物と一緒にインキュベートしたときに上
清中に存在するサイトカイン(ここではIL−β)量を、(Aβと一緒にインキ
ュベートした)コントロール細胞の上清で得られたそれと比較することによって
、化合物が活性化プロセスを遮断/阻害する能力を判定した。
【0091】 細胞をスルホン酸化化合物、ここでは3-アミノプロパンスルホン酸で処置する
と、IL−1β量の有意な減少(図3に示す)が10−7Mから10−3Mの濃
度で見られ、小グリア細胞の阻害が示唆された。
【0092】 当業者であれば、ごく通常の実験を行うのみで、ここに説明した特定の手法の
等価物を数多く、認識され、又は確認できることであろう。このような等価物は
本発明の範囲内にあるとみなされ、また以下の請求の範囲の包含するところであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 細胞培養において、様々な条件がマクロファージによる酸化窒素(
NO)生成に及ぼす作用を示した棒グラフである。
【図2】 細胞培養において、様々な条件が、Aβの誘起する、マクロファー
ジによるTNFα生成に及ぼす作用を示した棒グラフである。
【図3】 本発明の化合物、3-アミノプロパンスルホン酸がマクロファージの
活性化を遮断又は阻害する能力を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 31/495 A61K 31/495 31/5375 31/5375 31/662 31/662 47/48 47/48 A61P 25/28 A61P 25/28 29/00 29/00 37/02 37/02 C12N 5/10 C12N 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE, KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,L T,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE, SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,U A,UG,UZ,VN,YU,ZW Fターム(参考) 4B065 AA93X AA94X BD13 BD32 CA44 4C076 AA95 CC01 EE41 FF34 FF68 4C084 AA17 MA01 NA05 ZA012 ZA162 ZB022 ZB032 ZB112 ZB222 4C086 AA01 AA02 BB02 BC13 BC50 BC73 DA34 MA01 MA04 NA05 ZA01 ZA16 ZB02 ZB03 ZB11 ZB22 4C206 AA01 AA02 JA06 MA01 MA04 NA05 ZA01 ZA16 ZB02 ZB03 ZB11 ZB22

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミロイド生成たんぱく又はペプチドによるマクロファージ活
    性化を阻害する方法であって、 マクロファージの活性化が阻害されるよう、アミロイド生成たんぱく又はペプ
    チドの存在かでマクロファージを陰イオン化合物に接触させるステップ を含む、方法。
  2. 【請求項2】 前記陰イオン化合物が構造 を有し、ただしこのときYが生理pHで陰イオンの基であり、Qが担体分子で
    あり、Xが陽イオン基であり、そしてnが、前記化合物の活性が維持されなが
    らも目的の標的部位への前記化合物の生体内分布が妨げられないよう選択される
    整数である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記陰イオン化合物が構造: を有し、ただしこのときZがXR又はRであり、R及びRはそれぞれ個
    別に、水素、一個の置換された又は置換されていない脂肪族の基、一個のアリー
    ル基、一個のヘテロ環式の基、又は一個の塩を形成する陽イオンであり、R
    水素、低級アルキル、 アリール、又は一個の塩を形成する陽イオンであり、R は水素、低級アルキル、アリール又はアミノであり、Xは、それぞれ個別にO
    又はSであり、Y及びYはそれぞれ個別に水素、ハロゲン、アルキル、アミ
    ノ、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリールオキシであり、そしてnは0から1
    2までの間の整数である、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記陰イオン化合物が、1,4-ブタンジオールジスルフェート、
    1,5-ペンタンジスルホン酸ナトリウム、タウリン(2-アミノ-エタンスルホン酸 ナトリウム)、ホモタウリン(3-アミノプロパンスルホン酸)、3-(シクロヘキ シルアミノ)-1-プロパンスルホネート、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-
    エタンスルホネート、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、テトラヒドロチオ
    フェン-1,1-ジオキシド-3,4-二硫化ナトリウム3水和物、4-ヒドロキシブタン-1
    -スルホン酸ナトリウム、 1,3,5-ペンタントリオル三硫酸ナトリウム、2-硫酸水
    素アミノエチル、ホスホノギ酸、ホスホノ酢酸、インジゴカルミン、及び薬学的
    に容認可能なこれらの塩、のうちのいずれかから選択される、請求項1に記載の
    方法。
  5. 【請求項5】 前記陰イオン化合物が3-アミノプロパンスルホン酸、又は薬学
    的に容認可能なその塩である、請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 炎症性プロセスを阻害する方法であって、 前記炎症性プロセスが阻害されるよう、治療上有効量の陰イオン化合物を、こ
    れを必要とする被験体に投与するステップ を含む、方法。
  7. 【請求項7】 前記陰イオン化合物が構造 を有し、ただしこのときYが生理pHで陰イオンの基であり、Qが担体分子で
    あり、X+が陽イオン基であり、そしてnが、前記化合物の活性が維持されなが
    らも目的の標的部位への前記化合物の生体内分布が妨げられないよう選択される
    整数である、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記陰イオン化合物が構造: を有し、ただしこのときZがXR又はRであり、R及びRはそれぞれ個
    別に、水素、一個の置換された又は置換されていない脂肪族の基、一個のアリー
    ル基、一個のヘテロ環式の基、又は一個の塩を形成する陽イオンであり、R
    水素、低級アルキル、 アリール、又は一個の塩を形成する陽イオンであり、R は水素、低級アルキル、アリール又はアミノであり、Xは、それぞれ個別にO
    又はSであり、Y及びYはそれぞれ個別に水素、ハロゲン、アルキル、アミ
    ノ、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアリールオキシであり、そしてnは0から1
    2までの間の整数である、請求項6に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記陰イオン化合物が、1,4-ブタンジオールジスルフェート、
    1,5-ペンタンジスルホン酸ナトリウム、タウリン(2-アミノ-エタンスルホン酸 ナトリウム)、ホモタウリン(3-アミノプロパンスルホン酸)、3-(シクロヘキ シルアミノ)-1-プロパンスルホネート、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-
    エタンスルホネート、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、テトラヒドロチオ
    フェン-1,1-ジオキシド-3,4-二硫化ナトリウム3水和物、4-ヒドロキシブタン-1
    -スルホン酸ナトリウム、 1,3,5-ペンタントリオル三硫酸ナトリウム、2-硫酸水
    素アミノエチル、ホスホノギ酸、ホスホノ酢酸、インジゴカルミン、及び薬学的
    に容認可能なこれらの塩、のうちのいずれかから選択される、請求項6に記載の
    方法。
  10. 【請求項10】 前記陰イオン化合物が3-アミノプロパンスルホン酸、又はそ
    の塩である、請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記被験体がアルツハイマー病患者である、請求項9に記載
    の方法。
  12. 【請求項12】 前記炎症性プロセスが、アミロイド生成たんぱく又はペプチ
    ド、あるいはその一フラグメントによるマクロファージの活性化を原因とする、
    請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記アミロイド生成たんぱく又はペプチドがAβである、請
    求項12に記載の方法。
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