JP2002351004A - ハロゲン化銀写真乳剤 - Google Patents

ハロゲン化銀写真乳剤

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JP2002351004A
JP2002351004A JP2001154024A JP2001154024A JP2002351004A JP 2002351004 A JP2002351004 A JP 2002351004A JP 2001154024 A JP2001154024 A JP 2001154024A JP 2001154024 A JP2001154024 A JP 2001154024A JP 2002351004 A JP2002351004 A JP 2002351004A
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Katsuhiro Yamashita
克宏 山下
Hiroyuki Watanabe
裕幸 渡邊
Hiroo Takizawa
裕雄 滝沢
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Abstract

(57)【要約】 【課題】光吸収性能を向上させ、効率的に写真感度を高
めたハロゲン化銀写真乳剤を提供する。 【解決手段】 ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多
層吸着しているハロゲン化銀写真乳剤において、(1)
二層目色素の分光吸収遷移双極子モーメントと粒子表面
とのなす角が60°以下であるか、又は(2)一層目お
よび二層目を合わせた色素吸収の平均の遷移双極子モー
メントと粒子表面とのなす角が45°以下であることを
特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光吸収性能を向上さ
せ、効率的に写真感度に結び付けたハロゲン化銀写真乳
剤に関するものであり、さらにはこれを用いたハロゲン
化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、ハロゲン化銀写真感光材料の
高感度化のために多大な努力がなされてきた。ハロゲン
化銀写真乳剤においては、ハロゲン化銀粒子表面に吸着
した増感色素が感材に入射した光を吸収し、その光エネ
ルギーをハロゲン化銀粒子に伝達することによって感光
性が得られる。したがって、ハロゲン化銀の分光増感に
おいては、ハロゲン化銀粒子単位粒子表面積あたりの光
吸収率を増加させることによってハロゲン化銀へ伝達さ
れる光エネルギ−を増大させることが出来、分光感度の
高感度化が達成されると考えられる。ハロゲン化銀粒子
表面の光吸収率を向上させるためには、単位粒子表面積
あたりの分光増感色素の吸着量を増加させればよい。し
かし、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着量には
限界があり、単層飽和吸着(すなわち一層吸着)より多
くの色素発色団を吸着させるのは困難である。従って、
分光増感領域における個々のハロゲン化銀粒子の入射光
量子の吸収率は未だ低いのが現状である。
【0003】これらの点を解決する方法として提案され
たものを以下に述べる。ピー・ビー・ギルマン・ジュニ
アー(P.B.Gilman,Jr.)らは、フォトグ
ラフィック・サイエンス・アンド・エンジンニアリング
(Photographic Science and
Engineering)第20巻3号、第97頁
(1976年)において、一層目にカチオン色素を吸着
させ、さらに二層目にアニオン色素を静電力を用いて吸
着させた。ジー・ビー・バード(G.B.Bird)ら
は米国特許3,622,316号において、複数の色素
をハロゲン化銀に多層吸着させ、フェルスター(For
ster)型励起エネルギ−移動の寄与によって増感さ
せた。
【0004】杉本らは、特開昭63ー138、341
号、及び同64ー84、244号において、発光性色素
からのエネルギ−移動による分光増感を行った。アール
・スタイガー(R.Steiger)らは、フォトグラ
フィック・サイエンス・アンド・エンジンニアリング
(Photographic Science and
Engineering)第27巻2号、第59頁
(1983年)において、ゼラチン置換シアニン色素か
らの、エネルギ−移動による分光増感を試みた。池川ら
は、特開昭61ー251842号において、シクロデキ
ストリン置換色素からのエネルギ−移動による分光増感
を行った。
【0005】2つの別々に共役しておらず、共有結合で
連結された発色団をもつ、いわゆる連結色素について
は、例えば米国特許2,393,351号、同2,42
5,772号、同2,518,732号、同2,52
1,944号、同2,592,196号、欧州特許56
5,083号などに記載されている。しかし、これらは
光吸収率向上を狙ったものではなかった。積極的に光吸
収率向上を狙ったものとして、ジー・ビー・バード
(G.B.Bird)、エー・エル・ボロアー(A.
L.Borror)らは米国特許3,622,317号
及び同3,976,493号において、複数のシアニン
発色団を有する連結型増感色素分子を吸着させて光吸収
率を増やし、エネルギ−移動の寄与によって増感を図っ
た。鵜飼、岡崎、杉本は特開昭64ー91134号にお
いて、少なくとも2個のスルホ基及び/又はカルボキシ
ル基を含む実質的に非吸着性のシアニン、メロシアニ
ン、およびヘミシアニン色素のうち少なくとも1つを、
ハロゲン化銀に吸着されうる分光増感色素に結合させる
ことを提案した。
【0006】また、エル・シー・ビシュワカルマ(L.
C.Vishwakarma)は特開平6ー57235
号において、2つの色素の脱水縮合反応によって、連結
色素を合成する方法を示した。さらに、特開平6ー27
578号において、モノメチンシアニンとペンタメチン
オキソノールの連結色素が赤感性を有することを示した
が、この場合オキソノールの発光とシアニンの吸収の重
なりがなく、色素間でのフェルスター型の励起エネルギ
−移動による分光増感はおこらず、連結されたオキソノ
ールの集光作用による高感度化は望めない。
【0007】また、リチャード・パートンらは、欧州特
許0985964A1、欧州特許0985965A1、
欧州特許0985966A1、欧州特許0985965
A1において、カチオン性の色素とアニオン性の色素の
組み合わせによって多層吸着せしめ、二層目色素から一
層目色素へのエネルギー移動による高感化を試みた。
【0008】山下らは、特開平10−239789、同
8−269009、同10−123650号、特開平8
−328189号に記載されている芳香族基を持つ色
素、又は芳香族基を持つカチオン色素とアニオン色素を
併用する方法、特開平10−171058号に記載され
ている多価電荷を持つ色素を用いる方法、特開平10−
104774号に記載されているピリジニウム基を持つ
色素を用いる方法、特開平10−186559号に記載
されている疎水性基を持つ色素を用いる方法、特開平1
0−197980号に記載されている配位結合基を持つ
色素を用いる方法を開示している。
【0009】しかし、上記のいずれも増感色素を多層吸
着させる方法を開示するのみであり、二層目色素の配向
およびそれを制御するための方法に関する記載はなかっ
た。粒子表面に直接吸着する一層目色素の場合、例えば
シアニン色素では、通常分子の長軸方向を粒子表面と平
行にして吸着することが知られている。このため多層吸
着の場合にも二層目色素が粒子表面に対して角度をなし
て吸着するということについてはほとんど注意が払われ
ておらず、その重要性に関する認識がされていなかっ
た。しかしながら、多層吸着系の場合には通常の単層吸
着の場合とは大きく異なる配向をとることが初めて見出
された。これは二層目以降に吸着する色素は、粒子との
相互作用以外の力で吸着することになるため、二層目以
降の色素分子の長軸が粒子表面と平行に配向する理由は
ないことに由来する。色素分子の遷移双極子モーメント
は粒子の長軸方向にあるが、二層目以降の色素が粒子表
面と角度をなして吸着した場合、二層目以降の遷移双極
子モーメントと一層目色素の遷移双極子モーメントとが
角度を持つことになる。本発明において、二層目以降の
色素の励起エネルギーを有効に分光感度に結び付けるに
は、二層目以降の遷移双極子モーメントと一層目色素の
遷移双極子モーメントのなす角度が重要なパラメータで
あり、それらが平行に近いほど効率が良いことが見出さ
れた。従来の多層吸着技術を本観点で見直したところ、
二層目色素が粒子表面と実質的に平行に吸着している系
はなく、従来の多層吸着技術が不十分な技術であること
が認識されるに至った。
【0010】さらに平板状粒子の場合、主平面が感光材
料のフィルム面と平行になりやすい性質がある。光はフ
ィルムに垂直に入射するため、入射する光の電場の振動
面はフィルム面と平行、すなわち平板状粒子主平面と平
行になる。平板状粒子主平面に吸着した一層目色素の遷
移双極子モーメントは主平面と平行であり、入射光の電
場振動面と一致するため、光吸収効率が高いことが明ら
かとなった。そして、粒子表面と大きな角度をなして吸
着した二層目色素は、光吸収率の観点でも非効率である
ことが見出された。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、光吸
収性能を向上させ、効率的に写真感度を高めたハロゲン
化銀写真乳剤およびこれを用いたハロゲン化銀写真感光
材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、下記の
手段により達成された。 (1) ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多層吸着
しているハロゲン化銀写真乳剤において、二層目色素の
分光吸収遷移双極子モーメントと粒子表面とのなす角が
60°以下であることを特徴とするハロゲン化銀写真乳
剤。 (2) ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多層吸着
しているハロゲン化銀写真乳剤において、一層目および
二層目を合わせた色素吸収の平均の遷移双極子モーメン
トと粒子表面とのなす角が45°以下であることを特徴
とするハロゲン化銀写真乳剤。 (3) ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多層吸着
しているハロゲン化銀写真乳剤において、二層目色素の
分光吸収遷移双極子モーメントと粒子表面とのなす角が
55°以下であり、かつ一層目および二層目を合わせた
色素吸収の平均の遷移双極子モーメントと粒子表面との
なす角が40°以下であることを特徴とするハロゲン化
銀写真乳剤。 (4) 前記多層吸着する増感色素の少なくとも1つが
複数の色素発色団を有する化合物であることを特徴とす
る上記(1)、(2)または(3)に記載のハロゲン化
銀写真乳剤。 (5) 前記複数の色素発色団を有する化合物が下記一
般式(I)で表されることを特徴とする上記(4)に記
載のハロゲン化銀写真乳剤。 一般式(I)
【0013】
【化2】
【0014】式中、D1及びD2は色素発色団を表わす。
Laは連結基、又は単結合を表す。q1及びr1は各々1
から100までの整数を表わす。M1は電荷均衡対イオ
ンを表し、m1は分子の電荷を中和するのに必要な数を
表す。 (6) 前記D2がハロゲン化銀に直接吸着せず、二層
目の色素層を形成していることを特徴とする上記(5)
に記載のハロゲン化銀写真乳剤。 (7) 前記D2発色団が親水性部分を有し、Laが該
親水性部分に結合していることを特徴とする上記(5)
または(6)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。 (8) 上記(1)〜(7)に記載のハロゲン化銀写真
乳剤において、 a)二層目色素の分光吸収極大波長が一層目色素と同じ
か短波長であること b)二層目色素の光励起エネルギーが30%以上の効率
で一層目色素に移動することのいずれかを満足すること
を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。 (9) 上記(1)〜(8)に記載のハロゲン化銀写真
乳剤において、アスペクト比2以上の平板状粒子が該乳
剤中の全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上を占
めることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。 (10) 上記(1)〜(9)に記載のハロゲン化銀写
真乳剤において、該乳剤がセレン増感されていることを
特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。 (11) 上記(1)〜(10)に記載のハロゲン化銀
写真乳剤において、該乳剤が増感色素以外のハロゲン化
銀吸着性化合物を含有することを特徴とするハロゲン化
銀写真乳剤。 (12) 上記(1)〜(11)のいずれかに記載のハ
ロゲン化銀写真乳剤を含有する感光層を有することを特
徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明において二層目色素の遷移双極子モーメン
トとは、二層目色素の分光増感波長域での光吸収に伴う
遷移双極子モーメントを指す。本発明において二層目色
素と二層目以降の色素とは同義で用いる。二層目以降の
色素の吸収は、乳剤の吸収スペクトルから固有吸収と一
層目色素部の吸収を差し引いて求めることが出来る。固
有吸収は色素を吸着していない粒子の吸収を、固有およ
び一層目色素部の吸収は一層目色素部分のみを吸着させ
た粒子の吸収を測定することによって求めることが出来
る。固有吸収を除いた色素吸収を求めるには、乳剤吸収
から固有吸収を除いて求めることが出来る。また別法と
して、色素および固有吸収の両方を含む吸収スペクトル
を測定し、波長に対して吸光度を微分することにより色
素吸収成分のみを抽出することが出来る。すなわち、固
有吸収の波長変化は単調であり、波長に対して吸収を積
分すると定数になると考えられるため、色素および固有
の両方を含む吸収の一次微分の波長変化成分を積分する
ことによって色素のみの吸収を求めることが出来る。
【0016】二層目以降の色素の遷移双極子モーメント
は例えば以下の方法で求めることが出来る。実験物理学
講座14、木下是雄編 共立出版1986年の偏光解析法
に示されるような、45度反射光学系と偏光子を有する
紫外可視分光計を用いて色素を吸着した乳剤フィルムの
反射スペクトルを測定する。p偏光およびs偏光それぞ
れの光による反射強度(Ig(ν))を色素の吸収波長を含
む前後200nmの範囲で測定する。また、同様な方法によ
り、標準物質である石英の反射強度Iq(ν)を測定する。
石英の屈折率nは次に示す式により各波数(cm-1)に対し
て求められ、 n2 = 1+ 1.2409×1010/(1063592 − ν2) これより、石英の反射率(Rq(ν))は、 Rq(ν) = |(n − 1) / (n + 1)|2 で計算でき、色素を多層吸着した粒子の反射率(Rg
(ν))は、 Rg(ν) = Rq(ν) × Ig(ν) / Iq(ν) より求めることができる。上記の反射率測定をp偏光、s
偏光それぞれについて行い、それらの反射スペクトルに
クラマース−クローニッヒ変換(以下K-K変換)を行う
ことによって固有および多層吸着した色素の全吸収のp
偏光成分およびs偏光成分に対する吸収スペクトルAp
(ν)およびAs(ν)を得ることが出来る。K-K変換につい
ては、第4版実験化学講座7 分光II 井口洋夫編 丸
善株式会社1992年 P 320に記載されている。上記の測
定を一層目色素のみを吸着させた乳剤で行うことによ
り、固有および一層目色素の吸収のp偏光成分およびs偏
光成分に対する吸収スペクトルA1p(ν)およびA1s(ν)も
同様に求めることが出来る。二層目以降の色素のみの吸
収スペクトルは p偏光成分 A2p(ν) = Ap(ν) − A1p(ν) s偏光成分 A2s(ν) = As(ν) − A1s(ν) と求めることが出来る。これらの測定より、粒子表面と
二層目以降の色素の遷移双極子モーメントのなす角度は θ2ps(ν) = tan-1 ( A2p(ν) / A2s(ν) −
1/√2 ) となる。本発明においては粒子表面と二層目以降の色素
の遷移双極子モーメントがなす角は、二層目色素の吸収
極大波長におけるθ2ps(ν)と定義する。粒子表面と二
層目以降の色素の遷移双極子モーメントがなす角は、6
0°以下で本発明の効果を奏し、55°以下が好まし
く、40°以下がより好ましく、30°以下がさらに好
ましく、15°以下が特に好ましく、最も好ましくは5
°以下である。また、一層目および二層目を合わせた色
素吸収も粒子のみの吸収を差し引くことで求めることが
出来る。一層目および二層目を合わせた色素の吸収スペ
クトルは p偏光成分 A12p(ν) = Ap(ν) − Agp(ν) s偏光成分 A12s(ν) = As(ν) − Ags(ν) である。ここで、 A12p(ν)、 A12s(ν)はそれぞれ一、
二層目を合わせた色素の吸収スペクトルのpおよびs偏光
成分であり、 Agp(ν)およびAgs(ν)はそれぞれ粒子の
みの吸収スペクトルのpおよびs偏光成分である。別法と
して、Ap(ν)およびAs(ν)を波長についての一次微分の
波長変化成分を積分することによってA12p(ν)、 A12s
(ν)を求めることも出来る。一、二層目を合わせた色素
吸収の平均の遷移双極子モーメントとのなす角もA12p
(ν)、 A12s(ν)を用いて上述の方法と同様に求められ
る。 θ12ps(ν) = tan-1( A12p(ν) / A12s(ν) −
1/√2 ) となる。一層目と二層目の吸収比率に波長依存性がある
ため、粒子表面と一、二層目を合わせた色素吸収の平均
の遷移双極子モーメントがなす角θ12ps(ν)は波長依存
性をもつが、本発明においてはθ12ps(ν)の最大値を粒
子表面と一、二層目を合わせた色素吸収の平均の遷移双
極子モーメントがなす角と定義する。粒子表面と一二層
目を合わせた色素吸収の平均の遷移双極子モーメントが
なす角は、45°以下であることが必要であり、30°
以下が好ましく、20°以下がより好ましく、15°以
下がさらに好ましく、5°以下が特に好ましく、最も好
ましくは2°以下である。
【0017】本発明においてハロゲン化銀粒子表面上に
増感色素が多層吸着しているハロゲン化銀乳剤とは、ハ
ロゲン化銀粒子表面に色素発色団が一層より多く吸着し
た乳剤を指し、該乳剤に添加される増感色素のうち、ハ
ロゲン化銀粒子表面の色素占有面積が最も小さい色素に
よって到達する単位表面積あたりの飽和吸着量を一層飽
和被覆量とし、この一層飽和被覆量に対して色素発色団
の単位面積当たりの吸着量が多い状態をいう。また、吸
着層数は一層飽和被覆量を基準とした時の吸着量を意味
する。ここで、共有結合で色素発色団が連結された色素
の場合には、連結しない状態の個々の色素の色素占有面
積を基準とすることが出来る。
【0018】ここで述べた発色団とは、理化学辞典(第
四版、岩波書店、1987年)、985〜986頁に記載さ
れている分子の吸収帯の主な原因となる原子団を意味
し、例えばC=C、N=Nなどの不飽和結合を持つ原子
団など、いかなる原子団も可能である。
【0019】例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘ
ミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン
色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コン
プレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン
色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキ
ソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、
アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、ア
ントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色
素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、
フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェ
ナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジ
ゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリ
ジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、
キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン
色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロ
フィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げ
られる。好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘ
ミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン
色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コン
プレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン
色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキ
ソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、
アザメチン色素などのポリメチン発色団であり、さらに
好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロ
シアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色
素であり、特に好ましくはシアニン色素、メロシアニン
色素、ロダシアニン色素であり、最も好ましくはシアニ
ン色素である。
【0020】これらの色素の詳細については、エフ・エ
ム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コ
ンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・
コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes a
nd Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド
・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロン
ドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Stu
rmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシ
ャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミス
トリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in he
terocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第4
82から515頁などに記載されている。好ましい色素
の一般式としては、米国特許第5,994,051号第
32〜36頁記載の一般式、および米国特許5,74
7,236号第30〜34頁記載の一般式が挙げられ
る。また、好ましいシアニン色素、メロシアニン色素、
ロダシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,
694号第21〜22欄の(XI)、(XII)、(XIII) に
示されているもの(ただし、n12、n15、n17、n18の数は
限定せず、0以上の整数(好ましくは4以下))が挙げ
られる。
【0021】ハロゲン化銀粒子への色素発色団の吸着
は、好ましくは1.3層以上、さらに好ましくは1.5
層以上、特に好ましくは1.7層以上である。なお、上
限は特にないが、10層以下が好ましく、さらに好まし
くは5層以下であり、特に好ましくは3層以下である。
【0022】色素占有面積は、遊離色素濃度と吸着色素
量の関係を示す吸着等温線、および粒子表面積から求め
ることが出来る。吸着等温線は、例えばエー・ハーツ
(A.Herz)らのアドソープション フロム アク
エアス ソリューション(Adsorption fr
om Aqueous Solution)アドバンシ
ーズ イン ケミストリー シリーズ(Advance
s in Chemistry Series)No.
17、173ページ(1968年)などを参考にして求
めることが出来る。
【0023】増感色素の乳剤粒子への吸着量は、色素を
吸着させた乳剤を遠心分離器にかけて乳剤粒子と上澄み
のゼラチン水溶液に分離し、上澄み液の分光吸収測定か
ら未吸着色素濃度を求めて添加色素量から差し引くこと
で吸着色素量を求める方法と、沈殿した乳剤粒子を乾燥
し、一定質量の沈殿をチオ硫酸ナトリウム水溶液とメタ
ノールの1:1混合液に溶解し、分光吸収測定すること
で吸着色素量を求める方法の2つの方法を用いることが
出来る。複数種の増感色素を用いている場合には高速液
体クロマトグラフィーなどの手法で個々の色素について
吸着量を求めることも出来る。上澄み液中の色素量を定
量することで色素吸着量を求める方法は、例えばダブリ
ュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ
フィジカル ケミストリー(Journal of
Physical Chemistry)第56巻、1
054ページ(1952年)などを参考にすることがで
きる。しかし、色素添加量の多い条件では未吸着色素ま
でも沈降することがあり、上澄み中の色素濃度を定量す
る方法では必ずしも正しい吸着量を得られないことがあ
った。一方沈降したハロゲン化銀粒子を溶解して色素吸
着量を測定する方法であれば乳剤粒子の方が圧倒的に沈
降速度が速いため粒子と沈降した色素は容易に分離で
き、粒子に吸着した色素量だけを正確に測定できる。こ
の方法が色素吸着量を求める方法として最も信頼性が高
い。写真性有用化合物の粒子への吸着量も増感色素と同
様に測定できるが、可視光域に吸収が小さいため、分光
吸収による定量方法よりも高速液体クロマトグラフィー
による定量方法が好ましい。
【0024】ハロゲン化銀粒子表面積の測定方法の一例
としては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影
して、個々の粒子の形状とサイズを求め算出する方法が
ある。この場合、平板状粒子において厚みはレプリカの
影(シャドー)の長さから算出する。透過型電子顕微鏡
写真の撮影方法としては、例えば、日本電子顕微鏡学会
関東支部編「電子顕微鏡試料技術集」誠分堂新光社19
70年刊、バターワーズ社(Buttwrworth
s)、ロンドン、1965刊、ピー・ビー・ヒルシュ
(P.B.Hirsch)らのエレクトロン マイクロ
スコープ オブ チン クリスタル(Electron
Microscopy of ThinCrysta
ls)を参考にすることができる。
【0025】他の方法としては、例えばエイ・エム・ク
ラギン(A.M.Kragin)らのジャーナル オブ
フォトグラフィック サイエンス(The Jour
nal of Photographic Scien
ce)第14巻、185ページ(1966年)、ジェイ
・エフ・パディ(J.F.Paddy)のトランスアク
ションズ オブ ザ ファラデ− ソサイアティ(Tr
ansactionsof the Faraday
Society)第60巻1325ページ(1964
年)、エス・ボヤー(S.Boyer)らのジュナル
デ シミフィジク エ デ フィジコシミ ビジョロジ
ク(Journal de Chimie Physi
que et de Physicochimie b
iologique)第63巻、1123ページ(19
63年)、ダブリュー・ウエスト(W.West)らの
ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Jou
rnal of Physical Chemistr
y)第56巻、1054ページ(1952年)、エイチ
・ソーヴエニアー(H.Sauvenier)編集、イ
ー・クライン(E.Klein)らのインターナショナ
ル・コロキウム(International Col
oquium)、リエージュ(Liege)、1959
年、「サイエンティフィック フォトグラフィー(Sc
ientific Photography)」などを
参考にすることができる。
【0026】色素占有面積は上記の方法で個々の場合に
ついて実験的に求められるが、通常用いられる増感色素
の分子占有面積はほぼ80Å2付近であるので、簡易的
にすべての色素について色素占有面積を80Å2として
おおよその吸着層数を見積もることも出来る。
【0027】本発明にかかわるハロゲン化銀写真乳剤
は、分光吸収極大波長が500nm以上の粒子の場合に
は光吸収強度が100以上、分光吸収極大波長が500
nm未満の粒子の場合には光吸収強度が60以上のハロ
ゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子投影面積の1/2以
上含むことが好ましい。また、分光吸収極大波長が50
0nm以上の粒子の場合には、光吸収強度は好ましくは
150以上、さらに好ましくは170以上、特に好まし
くは200以上、であり、分光吸収極大波長が500n
m未満の粒子の場合には、光吸収強度は好ましくは90
以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは1
20以上である。上限は特にないが、好ましくは200
0以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましく
は500以下である。また分光吸収極大波長が500n
m未満の粒子に関しては、分光吸収極大波長は350n
m以上であることが好ましい。
【0028】本発明において光吸収強度とは、単位粒子
表面積あたりの増感色素による光吸収面積強度であり、
粒子の単位表面積に入射する光量をI0 、該表面で増感
色素に吸収された光量をIとしたときの光学濃度Log
(I0 /(I0 −I))を波数(cm-1)に対して積分
した値と定義する。積分範囲は5000cm-1から35
000cm-1までである。
【0029】光吸収強度を測定する方法の一例として
は、顕微分光光度計を用いる方法を挙げることができ
る。顕微分光光度計は微小面積の吸収スペクトルが測定
できる装置であり、一粒子の透過スペクトルの測定が可
能である。顕微分光法による一粒子の吸収スペクトルの
測定については、山下らの報告(日本写真学会、199
6年度年次大会講演要旨集、15ページ)を参照するこ
とができる。この吸収スペクトルから一粒子あたりの吸
収強度が求められるが、粒子を透過する光は上部面と下
部面の二面で吸収されるため、粒子表面の単位面積あた
りの吸収強度は前述の方法で得られた一粒子あたりの吸
収強度の1/2として求めることができる。このとき、
吸収スペクトルを積分する区間は光吸収強度の定義上は
5000cm -1から35000cm-1であるが、実験上
は増感色素による吸収のある区間の前後500cm-1
度を含む区間の積分で構わない。
【0030】また、光吸収強度は増感色素の振動子強度
と単位面積当たりの吸着分子数で一義的に決定される値
であり、増感色素の振動子強度、色素吸着量および粒子
表面積を求めれば光吸収強度に換算することが出来る。
増感色素の振動子強度は、増感色素溶液の吸収面積強度
(光学濃度×cm-1)に比例する値として実験的に求め
ることが出来るので、1Mあたりの色素の吸収面積強度
をA(光学濃度×cm-1)、増感色素の吸着量をB(m
ol/molAg)、粒子表面積をC(m2/molA
g)とすれば、次の式により光吸収強度を誤差10%程
度の範囲で求めることが出来る。 0.156 ×A×B/C この式から光吸収強度を算出しても、前述の定義に基づ
いて測定された光吸収強度(Log(I0 /(I0
I)))を波数(cm-1)に対して積分した値)と実質
的に同じ値が得られる。
【0031】本発明において、二層目以降の色素の吸収
極大波長は一層目色素の吸収極大波長と同じか短波長で
あることが好ましく、両者の波長の間隔は好ましくは0n
mから50nm、さらに好ましくは0nmから30nm、特に好まし
くは0nmから20nmである。
【0032】本発明において、一層目色素と二層目以降
の色素の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良
いが、一層目色素の還元電位が二層目以降の色素の還元
電位の値から0.2Vを引いた値よりも、貴であること
が好ましく、さらに好ましくは0.1Vを引いた値よりも
貴であり、特に好ましくは一層目色素の還元電位が二層
目以降の色素の還元電位よりも貴であることである。
【0033】還元電位、及び酸化電位の測定は、種々の
方法が可能であるが、好ましくは、位相弁別式第二高調
波交流ポーラログラフィーで行う場合であり、正確な値
を求めることができる。なお、以上の位相弁別式第二高
調波交流ポーラログラフィーによる電位の測定法はジャ
ーナル・オブ・イメージング・サイエンス(Journ
al of Imaging Science)、第3
0巻、第27頁(1986年)に記載されている。
【0034】また、二層目以降の色素は、ゼラチン乾膜
中では発光性であることが好ましい。発光性色素の種類
としては色素レーザー用に使用される色素の骨格構造を
持つものが好ましい。これらは例えば、前田三男、レー
ザー研究、第8巻、694頁、803頁、958頁(1
980年)及び第9巻、85頁(1981年)、及びF.
Sehaefer著、「Dye Lasers」、Springer(1973
年)の中に整理されている。二層目色素部分のみの色素
のゼラチン乾膜中での発光収率は、好ましくは0.05以上
であり、より好ましくは、0.1以上であり、さらに好ま
しくは0.2以上であり、特に好ましくは0.5以上である。
【0035】非平衡励起エネルギー移動機構で二層目以
降の色素から一層目色素へのエネルギー伝達が起こる場
合には、二層目色素部分のみのゼラチン乾膜中の励起寿
命は長い方が好ましい。この場合には二層目色素部分の
発光収率は高くても低くても構わない。二層目色素部分
のみゼラチン乾膜中の蛍光寿命は、好ましくは10ps以
上、より好ましくは40ps以上、さらに好ましくは160ps
以上である。二層目以降の色素の蛍光寿命に特に上限は
ないが、好ましくは1ms以下である。二層目以降の色素
の発光と一層目色素の吸収の重なりは大きいことが好ま
しい。二層目以降の色素の発光スペクトルをl(ν)、一
層目色素の吸収スペクトルをa(ν)としたとき、それら
の積l(ν)・ a(ν)は好ましくは0.001以上であり、より
好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.1以上
であり、特に好ましくは0.5以上である。ここでνは波
数)cm-1)で、それぞれのスペクトルはスペクトル面積を
1に規格化している。
【0036】二層目色素の励起エネルギーの一層目色素
へのエネルギー移動効率は、好ましくは30%以上、さ
らに好ましくは60%、特に好ましくは90%以上であ
る。ここで二層目色素の励起エネルギーとは、二層目色
素が光エネルギーを吸収して生成した励起状態の色素が
有するエネルギーを指す。ある分子の持つ励起エネルギ
ーが他の分子に移動する場合には励起電子移動機構、フ
ェルスター型エネルギー移動機構(Forster M
odel)、デクスターエネルギー移動機構(Dext
or Model)等を経て励起エネルギーが移動する
と考えられているため、本研究の多層吸着系において
も、これらの機構から考えられる効率よい励起エネルギ
ー移動を起こすための条件を満たすことが好ましい。さ
らに、フェルスター型エネルギー移動機構を起こすため
の条件を満たすことが特に好ましい。フェルスター型の
エネルギー移動効率を高めるためには、乳剤粒子表面近
傍の屈折率を低下させることも有効である。二層目色素
の蛍光減衰速度解析や一層目色素の蛍光の立ち上がり速
度等の光励起状態のダイナミクス解析によって二層目色
素から一層目色素へのエネルギー移動の効率を求めるこ
とができる。また、二層目色素から一層目色素へのエネ
ルギー移動の効率は、二層目色素励起時の分光増感効率
/一層目色素励起時の分光増感効率としても求めること
が出来る。
【0037】本発明においては、一層目に吸着している
色素はJ会合体を形成していることが好ましい。また二
層目以降の色素は単量体で吸着してもH会合体のような
短波長会合を形成しても良いが、特に好ましくはJ会合
体を形成して吸着することである。J会合体は吸光係数
が高く、吸収も鋭いため好ましいため通常の単層吸着で
の分光増感においても非常に有用であるが、二層目色素
としても上記分光特性を持つことは非常に好ましい。し
かも蛍光収率が高く、ストークスシフトも小さいため、
光吸収波長の接近した一層目色素へ二層目色素の吸収し
た光エネルギーをフェルスター型のエネルギー移動で伝
達するのにも好ましい。
【0038】本発明において、二層目以降の色素とは、
ハロゲン化銀粒子には吸着しているが、ハロゲン化銀に
直接は吸着していない色素のことである。本発明におい
て二層目以降の色素のJ会合体とは、二層目以降に吸着
した色素の示す吸収の長波長側の吸収幅が、色素発色団
間の相互作用のない単量体状態の色素溶液が示す吸収の
長波長側の吸収幅の2倍以下であると定義する。ここで
長波長側の吸収幅とは、吸収極大波長と、吸収極大波長
より長波長で吸収極大の1/2の吸収を示す波長とのエ
ネルギー幅を表す。一般にJ会合体を形成すると単量体
状態と比較して長波長側の吸収幅は小さくなることが知
られている。単量体状態で二層目に吸着した場合には、
吸着位置および状態の不均一性があるため、色素溶液の
単量体状態の長波長側の吸収幅の2倍以上に大きくな
る。したがって、上記定義により二層目以上の色素のJ
会合体を定義することが出来る。
【0039】二層目以降に吸着した色素の分光吸収は、
該乳剤の全体の分光吸収から一層目色素による分光吸収
を引いて求めることが出来る。一層目色素による分光吸
収は、一層目色素のみを添加したときの吸収スペクトル
を測定すれば求められる。また、増感色素が多層吸着し
た乳剤に色素脱着剤を添加して二層目以降の色素を脱着
させることで、一層目色素による分光吸収スペクトルを
測定することも出来る。色素脱着剤を用いて粒子表面か
ら色素を脱着させる実験では、通常一層目色素は二層目
以降の色素が脱着した後に脱着されるので、適切な脱着
条件を選べば、一層目色素による分光吸収を求めること
が出来る。これにより、二層目以降の色素の分光吸収を
求めることが可能となる。色素脱着剤を用いる方法は、
浅沼らの報告(ジャーナル オブ フィジカル ケミス
トリーB、第101巻2149頁から2153頁(19
97年))を参考にすることが出来る。
【0040】光吸収強度60、又は100以上のハロゲ
ン化銀写真乳剤粒子を含有する乳剤の増感色素による分
光吸収率の最大値Amax、および分光感度の最大値Smaxの
それぞれ50%を示す最も短波長と最も長波長の間隔
は、好ましくは120nm以下であり、さらに好ましく
は100nm以下である。またAmaxおよびSmaxの80%
を示す最も短波長と最も長波長の間隔は好ましくは20
nm以上で、好ましくは100nm以下、さらに好まし
くは80nm以下、特に好ましくは50nm以下であ
る。またAmaxおよびSmaxの20%を示す最も短波長と最
も長波長の間隔は、好ましくは180nm以下、さらに
好ましくは150nm以下、特に好ましくは120nm
以下、最も好ましくは100nm以下である。Amaxまた
はSmaxの50%の分光吸収率を示す最も長波長は好まし
くは460nmから510nm、または560nmから
610nm、または640nmから730nmである。
【0041】本発明において、増感色素を多層吸着させ
るための第一の方法は複数の発色団を有する化合物(以
下連結色素)を用いることである。好ましい連結色素と
しては、下記一般式(I)で表される化合物である。 一般式(I)
【0042】
【化3】
【0043】式中、D1及びD2は色素発色団を表わす。
Laは連結基、又は単結合を表す。q1及びr1は各々1
から100までの整数を表わす。M1は電荷均衡対イオ
ンを表し、m1は分子の電荷を中和するのに必要な数を
表す。
【0044】まず、本発明に用いられる基などについ
て、詳細に説明する。
【0045】本発明において、特定の部分を「基」と称
した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなく
ても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換
されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル
基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。ま
た、本発明における化合物に使用できる置換基は、どの
ような置換基でもよい。
【0046】このような置換基をWとすると、Wで示さ
れる置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限
は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基{(シク
ロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキ
ル基を含む)、また、アルケニル基(シクロアルケニル
基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、も
含むこととする}、アリール基、複素環基(ヘテロ環基
と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ
基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ
基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ
基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキ
シ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基
(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ
基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル
アミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルフ
ァモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルア
ミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ
基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、ア
ルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリ
ールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニ
ル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリ
ール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホ
スフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルア
ミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイ
ド基、ボロン酸基、ホスファト基、スルファト基、その
他の公知の置換基、が例として挙げられる。
【0047】更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例え
ば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
アルキル基{〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換
のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましく
は炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチ
ル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オ
クチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエ
チル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ま
しくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロ
アルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチ
ル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアル
キル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは
無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から3
0のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一
価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタ
ン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−
イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含す
るものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基
(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概
念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキ
ニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分
岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。
それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30
の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、
アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアル
ケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしく
は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から
30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価
の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、
2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル
基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ま
しくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシ
クロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロ
アルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。
例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1
−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4
−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好
ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアル
キニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチ
ルシリルエチニル基)}、アリール基(好ましくは炭素
数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例え
ばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニ
ル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基
(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳
香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原
子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素
数3から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基であ
る。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジ
ニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−
ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチ
オン性の複素環基でも良い。)、シアノ基、ヒドロキシ
ル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ま
しくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアル
コキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキ
シ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシ
エトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6
から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例
えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブ
チルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデ
カノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好まし
くは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、ト
リメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキ
シ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から3
0の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェ
ニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラ
ニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオ
キシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアル
キルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もし
くは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホ
ルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ス
テアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフ
ェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好
ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカ
ルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバ
モイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、
モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチ
ルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモ
イルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好まし
くは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキ
シカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキ
シ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニ
ルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリール
オキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から
30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル
オキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−
メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサ
デシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基
(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もし
くは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置
換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチ
ルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニ
リノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくは
アンモニオ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換
のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ
基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモ
ニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基
(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の
置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭
素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボ
ニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミ
ノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイル
アミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニ
ルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好
ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のア
ミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、
N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジ
エチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニル
アミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは
炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカル
ボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、
エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルア
ミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−
メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシ
カルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の
置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ
基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフ
ェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェ
ノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基
(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換
のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルア
ミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−
n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及び
アリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から
30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミ
ノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール
スルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、
ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、
2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p
−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換
もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、
エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基
(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換の
アリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェ
ニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ
基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換の
ヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、
1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファ
モイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは
無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルフ
ァモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルフ
ァモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセ
チルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、
N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイ
ル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基
(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換の
アルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置
換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィ
ニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p
−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリー
ルスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換
または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置
換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチ
ルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニ
ル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ま
しくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置
換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換も
しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から3
0の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結
合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、
ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベン
ゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、
2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、ア
リールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から
30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル
基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノ
キシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p
−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカル
ボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしく
は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカ
ルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニ
ル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイ
ル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無
置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチ
ルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,
N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスル
ホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基
(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換の
アリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置
換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロ
ロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジ
アゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N
−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基
(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換
のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェ
ニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホス
フィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もし
くは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、
ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニ
ル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2か
ら30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、
例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチル
オキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基
(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換
のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィ
ニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホ
スフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の
置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシ
リル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシ
リル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0から30の
置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチ
ルヒドラジノ)、ウレイド基(好ましくは炭素数0から
30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N
−ジメチルウレイド)、を表わす。
【0048】また、2つのWが共同して環(芳香族、非
芳香族の炭化水素環、複素環のいずれでもよく、これら
がさらに組み合わされた多環縮合環でもよい。環の例と
して、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、キ
ノリン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェ
ニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、
フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾー
ル環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミ
ジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール
環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾ
フラン環、キノリジン環、イソキノリン環、フタラジン
環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン
環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン
環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン
環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジ
ン環、フェナジン環などが挙げられる。)を形成するこ
ともできる。
【0049】上記の置換基Wの中で、水素原子を有する
ものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていて
も良い。そのような置換基の例としては、−CONHS
2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスル
ファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカル
バモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルス
ルファモイル基)、が挙げられる。より具体的には、ア
ルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチ
ルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスル
ホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、
アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチ
ルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニル
アミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスル
ホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0050】次に、色素発色団、D1、D2、及びLaに
ついて述べる。色素発色団、D1 及びD2で表わされる
色素発色団としてはいかなるものでも良いが、例えば、
シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロ
シアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニ
ン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色
素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色
素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクア
リウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマ
リン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、ト
リフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、ス
ピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フル
ギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチア
ジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタ
ン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン
色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノ
フタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色
素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシア
ニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
【0051】好ましくは、シアニン色素、スチリル色
素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシ
アニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色
素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロ
シアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、
ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウ
ム色素、アザメチン色素などのポリメチン発色団であ
り、より好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、
3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、オキソ
ノール色素、ロダシアニン色素であり、さらに好ましく
はシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素
であり、特に好ましくはシアニン色素、メロシアニン色
素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
【0052】本発明における、複数の色素発色団を有す
る化合物としては、共有結合で複数の色素発色団が連結
された化合物であればいかなるものでも良いが、好まし
くは一般式(I)で表される化合物である。
【0053】本発明の一般式(I)のD1とD2は同一で
あっても良いが、好ましくは異なる場合である。D1
2は異なる場合の方が、以下に示すように多層吸着す
るために好ましい。
【0054】本発明において、一般式(I)で表される
連結色素がハロゲン化銀粒子に吸着した場合には、D1
はハロゲン化銀に吸着し、D2はハロゲン化銀に直接吸
着していない発色団であることが好ましい。
【0055】すなわち、D2のハロゲン化銀粒子への吸
着力はD1よりも弱い方が好ましい。さらに、ハロゲン
化銀粒子への吸着力の序列は、D1>La>D2となって
いる場合が最も好ましい。D1またはD2のハロゲン化銀
への吸着力は、D1またはD2に相当する化合物のハロゲ
ン化銀粒子への吸着量から推定することが出来る。D1
またはD2に相当する化合物としては、一般式(I)で表
される化合物において、連結基Laをそれぞれアルキル
スルホン酸基に変更した化合物を挙げることが出来る。
1に相当する化合物の吸着量はD2に相当する化合物の
吸着量の好ましくは30%未満、さらに好ましくは10
%未満、特に好ましくは5%未満である。
【0056】上記のように、D1はハロゲン化銀粒子へ
の吸着性を持つ増感色素部分であることが好ましいが、
物理吸着、または化学吸着いずれによって吸着させても
構わない。D2はハロゲン化銀粒子への吸着性が弱く、
また発光性色素の場合が好ましい。
【0057】さらに、D1のハロゲン化銀写真感光材料
中における吸収極大波長がD2の吸収極大波長よりも長
波長であることが好ましい。さらに、D2の発光がD1
吸収と重なることが好ましい。また、D1はJ-会合体を
形成した方が好ましい。さらに、一般式(I)で表され
る連結色素が所望の波長範囲に吸収および分光感度を有
するためには、D2もJ会合体を形成していることが好
ましい。
【0058】D1とD2の還元電位、及び酸化電位はいか
なるものでも良いが、D1の還元電位がD2の還元電位の
値から0.2Vを引いた値よりも、貴であることが好ま
しい。
【0059】Laは連結基(好ましくは2価の連結基)
または単結合を表す。この連結基は、好ましくは炭素原
子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のうち、少なくとも
1種を含む原子又は原子団からなる。好ましくはアルキ
レン基(例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テ
トラメチレン、ペンタメチレン)、アリーレン基(例え
ばフェニレン、ナフチレン)、アルケニレン基(例え
ば、エテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(例
えば、エチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステ
ル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイ
ド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル
基、エーテル基、カルボニル基、−N(Ra)−(Ra
は水素原子、又は一価の置換基を表わす。一価の置換基
としては前述のWが挙げられる。)、複素環2価基(例
えば、6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−
ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリ
ン−2,3−ジイル基)を1つまたはそれ以上組み合わ
せて構成される炭素数0以上100以下、好ましくは炭
素数1以上20以下の連結基を表す。
【0060】上記の連結基は、更に前述のWで表される
置換基を有しても良い。また、これらの連結基は環(芳
香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を含有
しても良い。
【0061】更に好ましくは炭素数1以上10以下のア
ルキレン基(例えばメチレン、エチレン、トリメチレ
ン、テトラメチレン、ペンタメチレン)、炭素数6以上
10以下のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレ
ン)、炭素数2以上10以下のアルケニレン基(例え
ば)例えば、エテニレン、プロペニレン)、炭素数2以
上10以下のアルキニレン基(例えば、エチニレン、プ
ロピニレン)、エーテル基、アミド基、エステル基、ス
ルホアミド基、スルホン酸エステル基を1つ又はそれ以
上組み合わせて構成される炭素数1以上10以下の2価
の連結基である。これらは、前述のWで置換されていて
も良い。
【0062】Laはスルーボンド(through −bond)相
互作用によりエネルギー移動または電子移動を行っても
良い連結基である。スルーボンド相互作用にはトンネル
相互作用、超交換(super-exchange)相互作用などがあ
るが、中でも超交換相互作用に基づくスルーボンド相互
作用が好ましい。スルーボンド相互作用及び超交換相互
作用は、シャマイ・スペイサー(Shammai Speiser)
著、ケミカル・レビュー(Chem. Rev.)第96巻、第1960
−1963頁、1996年で定義されており、このような相互作
用によりエネルギー移動または電子移動する連結基とし
ては、同文献の第1967−1969頁に記載のものが好まし
い。
【0063】q1及びr1は1から100までの整数を表
わす。好ましくは1から5の整数であり、さらに好まし
くは1から2の整数であり、特に好ましくは共に1であ
る。q1及びr1が2以上の場合は含まれる複数のLa及
びD2はそれぞれ相異なる連結基及び色素発色団であっ
ても良い。Laは、D1およびD2のどの部位で結合して
もよいが、メチン鎖部分でないことが好ましい。
【0064】一般式(I)の色素は、全体で−1以下の
電荷を持つ場合が好ましく、さらに好ましくは−1の電
荷を持つ場合である。
【0065】さらに好ましくは、一般式(I)におい
て、D1及びD2がそれぞれ独立に下記一般式(II)、
(III)、(IV)、又は(V)で表されるメチン色
素である時である。 一般式(II)
【0066】
【化4】
【0067】式(II)中、L11、L12、L13、L14
15、L16、及びL17はメチン基を表す。p11、及びp
12は0または1を表す。n11は0、1、2、3または4
を表す。Z11及びZ12は含窒素複素環を形成するために
必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環してい
ても良い。M11は電荷均衡対イオンを表し、m11は分子
の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R11
びR12は水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素
環基を表す。 一般式(III)
【0068】
【化5】
【0069】式(II)中、L18、L19、L20、及びL
21はメチン基を表す。p13は0又は1を表す。q11は0
又は1を表す。n12は0、1、2、3又は4を表す。Z
13は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表
す。Z14とZ14’は(N−R14)q11と一緒になって複
素環、又は非環式の酸性末端基を形成するために必要な
原子群を表す。ただし、Z13、及びZ14とZ14’に環が
縮環していても良い。M 12は電荷均衡対イオンを表し、
12は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表
す。R13、及びR14は水素原子、アルキル基、アリール
基、又は複素環基を表す。 一般式(IV)
【0070】
【化6】
【0071】式(IV)中、L22、L23、L24、L25
26、L27、L28、L29及びL30はメチン基を表す。p
14及びp15は0又は1を表す。q12は0又は1を表わ
す。n 13及びn14は0、1、2、3又は4を表す。
15、及びZ17は含窒素複素環を形成するために必要な
原子群を表す。Z16とZ16’は(N−R16)q12と一緒
になって複素環を形成するために必要な原子群を表す。
ただし、Z15、Z16とZ16’、及びZ17に環が縮環して
いても良い。M13は電荷均衡対イオンを表し、m13は分
子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。
15、R16、及びR17は水素原子、アルキル基、アリー
ル基、又は複素環基を表す。 一般式(V)
【0072】
【化7】
【0073】式(V) 中、L31、L32、及びL33はメチ
ン基を表す。q13及びq14は0又は1を表す。n15
0、1、2、3又は4を表す。Z18とZ18’は(N−R
18)q 13と一緒になって、及び、Z19とZ19’は(N−
19)q14と一緒になって、複素環、又は非環式の酸性
末端基を形成するために必要な原子群を表す。ただし、
18とZ18’、及びZ19とZ19’に環が縮環していても
良い。M14は電荷均衡対イオンを表し、m14は分子の電
荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R18、及び
19は水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環
基を表す。
【0074】一般式(I)のD1として好ましくは、上記
の一般式(II)、(III)、(IV)で表わされるメ
チン色素の場合であり、さらに好ましくは一般式(I
I)で表わされるメチン色素の場合である。一般式
(I)のD2として好ましくは、上記の一般式(II)、
(III)、(V)で表わされるメチン色素の場合であ
り、さらに好ましくは一般式(II) 、(III)で表
わされるメチン色素の場合であり、特に好ましくは一般
式(II)で表わされるメチン色素の場合である。
【0075】以下、一般式(I)、(II)、(II
I)、(IV)、及び(V)で表されるメチン化合物に
ついて詳細に述べる。
【0076】一般式(II)、(III)、(IV)、
及び(V)中、Z11、Z12、Z13、Z15、及びZ17は含
窒素複素環、好ましくは5又は6員の含窒素複素環を形
成するのに必要な原子群を表す。ただし、これらに環が
縮環していても良い。環としては、芳香族環、又は非芳
香族環いずれでも良い。好ましくは芳香族環であり、例
えばベンゼン環、ナフタレン環などの炭化水素芳香族環
や、ピラジン環、チオフェン環などの複素芳香族環が挙
げられる。
【0077】含窒素複素環としてはチアゾリン核、チア
ゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキ
サゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、
セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、テルラゾリン
核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、3,3−
ジアルキルインドレニン核(例えば3,3−ジメチルイ
ンドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベン
ゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、
2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン
核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノ
キザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、
テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができ
るが、好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾ
ール核、3,3−ジアルキルインドレニン核(例えば
3,3−ジメチルインドレニン)、ベンゾイミダゾール
核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン
核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキ
ノリン核であり、さらに好ましくはベンゾチアゾール
核、ベンゾオキサゾール核、3,3−ジアルキルインド
レニン核(例えば3,3−ジメチルインドレニン)、ベ
ンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはベンゾオキ
サゾール核、ベンゾチアゾール核、ベンゾイミダゾール
核であり、最も好ましくはベンゾオキサゾール核、ベン
ゾチアゾール核である。
【0078】これらには、前述のWで表される置換基、
及び環が置換していても縮合していても良い。好ましい
ものは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロ
ゲン原子、芳香環縮合、スルホ基、カルボキシル基、ヒ
ドロキシル基である。
【0079】Z11、Z12、Z13、Z15、及びZ17によっ
て形成される複素環の具体例としては、米国特許第5,
340,694号第23〜24欄のZ11、Z12、Z13
14、及びZ16の例として挙げられているものと同様な
ものが挙げられる。
【0080】一般式(II)、(III)、または(I
V)で表されるメチン色素が、一般式(I)中のD1
表される発色団を表すとき、Z11、Z12、Z13、Z15
及びZ17上の置換基Wとして、さらに好ましくはハロゲ
ン原子、芳香族基、芳香環縮合である。
【0081】一般式(II)、(III)、または(I
V)で表されるメチン色素が、一般式(I)中のD2
表される発色団を表すとき、Z11、Z12、Z13、Z15
及びZ17上の置換基Wとして、さらに好ましくは酸基で
ある。
【0082】ここで、酸基について説明する。酸基と
は、解離性プロトンを有する基である。具体的には、例
えばスルホ基、カルボキシル基、スルファト基、−CO
NHSO2−基、−CONHCO−基、−SO2NHSO
2−基、スルホンアミド基、スルファモイル基、ホスフ
ァト基、ホスホノ基、ボロン酸基、フェノール性水酸
基、など、これらのpkaと周りのpHによっては、プ
ロトンが解離する基が挙げられる。例えばpH5〜11の間
で90%以上解離することが可能なプロトン解離性酸性基
が好ましい。
【0083】さらに好ましくはスルホ基、カルボキシル
基、−CONHSO2−基、−CONHCO−基、−S
2NHSO2−基であり、特に好ましくは、スルホ基、
カルボキシル基であり、最も好ましくはスルホ基であ
る。
【0084】上記の酸基は連結基Laに近接する位置に存
在することが好ましい。ここで連結基Laに近接する位置
とは、例えば連結基LaがR11に存在する場合には、Z11
るいはR11に酸基が存在することを示す。
【0085】Z14とZ14’と(N−R14)q11、Z18
18’と(N−R18)q13、及びZ 19とZ19’と(N−
19)q14はそれぞれ一緒になって、複素環、又は非環
式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表す。
複素環(好ましくは5又は6員の複素環)としてはいか
なるものでも良いが、酸性核が好ましい。次に、酸性核
及び非環式の酸性末端基について説明する。酸性核及び
非環式の酸性末端基は、いかなる一般のメロシアニン色
素の酸性核及び非環式の酸性末端基の形をとることもで
きる。好ましい形においてZ14、Z18、Z19はチオカル
ボニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カル
バモイル基、シアノ基、スルホニル基であり、さらに好
ましくはチオカルボニル基、カルボニル基である。
14’、Z18’、Z19’は酸性核及び非環式の酸性末端
基を形成するために必要な残りの原子群を表す。非環式
の酸性末端基を形成する場合は、好ましくはチオカルボ
ニル基、カルボニル基、エステル基、アシル基、カルバ
モイル基、シアノ基、スルホニル基などである。
【0086】q11、q13、及びq14は0又は1である
が、好ましくは1である。
【0087】ここでいう酸性核及び非環式の酸性末端基
は、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー
・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The
Theory of the Photograph
ic Process)第4版、マクミラン出版社、1
977年、198〜200頁に記載されている。ここで
は、非環式の酸性末端基とは、酸性すなわち電子受容性
の末端基のうち、環を形成しないものを意味することと
する。酸性核及び非環式の酸性末端基は、具体的には、
米国特許第3、567、719号、第3、575、86
9号、第3、804、634号、第3、837、862
号、第4、002、480号、第4、925、777
号、特開平3ー167546号、米国特許第5,99
4,051号、米国特許5,747,236号などに記
載されているものが挙げられる。
【0088】酸性核は、炭素、窒素、及び/又はカルコ
ゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原
子からなる複素環(好ましくは5員又は6員の含窒素複
素環)を形成するとき好ましく、さらに好ましくは炭
素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫
黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の
含窒素複素環を形成するときである。具体的には、例え
ば次の核が挙げられる。
【0089】2ーピラゾリンー5ーオン、ピラゾリジン
ー3、5ージオン、イミダゾリンー5ーオン、ヒダント
イン、2または4ーチオヒダントイン、2ーイミノオキ
サゾリジンー4ーオン、2ーオキサゾリンー5ーオン、
2―チオオキサゾリジンー2、5―ジオン、2ーチオオ
キサゾリンー2、4ージオン、イソオキサゾリンー5ー
オン、2ーチアゾリンー4ーオン、チアゾリジンー4ー
オン、チアゾリジンー2、4ージオン、ローダニン、チ
アゾリジンー2、4ージチオン、イソローダニン、イン
ダンー1、3ージオン、チオフェンー3ーオン、チオフ
ェンー3ーオンー1、1ージオキシド、インドリンー2
ーオン、インドリンー3ーオン、2ーオキソインダゾリ
ニウム、3ーオキソインダゾリニウム、5、7ージオキ
ソー6、7ージヒドロチアゾロ[3,2-a]ピリミジン、シ
クロヘキサンー1、3ージオン、3、4ージヒドロイソ
キノリンー4ーオン、1、3ージオキサンー4、6ージ
オン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸、クロ
マンー2、4ージオン、インダゾリンー2ーオン、ピリ
ド[1,2−a]ピリミジンー1、3ージオン、ピラゾ
ロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]
ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1、2、3、
4ーテトラヒドロキノリンー2、4ージオン、3ーオキ
ソー2、3ージヒドロベンゾ[d]チオフェンー1、1
ージオキサイド、3ージシアノメチンー2、3ージヒド
ロベンゾ[d]チオフェンー1、1ージオキサイドの
核。
【0090】さらに、これらの核を形成しているカルボ
ニル基もしくはチオカルボニル基を、酸性核の活性メチ
レン位で置換したエキソメチレン構造を有する核、及
び、非環式の酸性末端基の原料となるケトメチレンやシ
アノメチレンなどの構造を有する活性メチレン化合物の
活性メチレン位で置換したエキソメチレン構造を有する
核などである。
【0091】これらの酸性核、及び非環式の酸性末端基
には、前述の置換基Wで示した置換基又は環が、置換し
ていても、縮環していても良い。
【0092】Z14とZ14’と(N−R14)q11、Z18
18’と(N−R18)q13、及びZ19とZ19’と(N−
19)q14として好ましくは、ヒダントイン、2または
4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、
2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、チアゾリジン
ー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4
ージチオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸
であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4
ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ロ
ーダニン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸で
ある。
【0093】一般式(III)、または(V)で表され
るメチン色素が、一般式(I)中のD1で表される発色
団を表す場合は、特に好ましくは2または4ーチオヒダ
ントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニンで
ある。
【0094】一般式(III)、または(V)で表され
るメチン色素が、一般式(I)中のD2で表される発色
団を表す場合は、特に好ましくはバルビツール酸であ
る。
【0095】Z16とZ16’と(N−R16)q12によって
形成される複素環としては、前述のZ14とZ14’と(N
−R14)q11、Z18とZ18’と(N−R18)q13、及び
19とZ19’と(N−R19)q14の複素環の説明で述べ
たものと同じものが挙げられる。好ましくは前述のZ14
とZ14’と(N−R14)q11、Z18とZ18’と(N−R
18)q13、及びZ19とZ19’と(N−R19)q14の複素
環の説明で述べた酸性核からオキソ基、又はチオキソ基
を除いたものである。
【0096】さらに好ましくは、前述のZ14とZ14’と
(N−R14)q11、Z18とZ18’と(N−R18)q13
及びZ19とZ19’と(N−R19)q14の具体的として挙
げた酸性核からオキソ基、又はチオキソ基を除いたもの
であり、
【0097】さらに好ましくはヒダントイン、2または
4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、
2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、チアゾリジン
ー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4
ージチオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸
からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものであり、特
に好ましくは、ヒダントイン、2または4ーチオヒダン
トイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニン、バ
ルビツール酸、2ーチオバルビツール酸からオキソ基、
又はチオキソ基を除いたものであり、最も好ましくは2
または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ー
オン、ローダニンからオキソ基、又はチオキソ基を除い
たものである。
【0098】q12は0又は1であるが、好ましくは1で
ある。
【0099】R11、R12、R13、R14、R15、R16、R
17、R18、及びR19は水素原子、アルキル基、アリール
基、及び複素環基であり、好ましくはアルキル基、アリ
ール基、及び複素環基である。R11、R12、R13
14、R15、R16、R17、R18、及びR19として表され
るアルキル基、アリール基、及び複素環基として、具体
的には、例えば、炭素原子1から18、好ましくは1か
ら7、特に好ましくは1から4の無置換アルキル基(例
えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチ
ル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、オク
タデシル)、炭素原子1から18、好ましくは1から
7、特に好ましくは1から4の置換アルキル基{例えば
置換基として前述のWが置換したアルキル基が挙げられ
る。特に、上述した酸基を持つアルキル基が好ましい。
好ましくはアラルキル基(例えばベンジル、2−フェニ
ルエチル)、不飽和炭化水素基(例えばアリル基、ビニ
ル基、すなわち、ここでは置換アルキル基にアルケニル
基、アルキニル基も含まれることとする。)、ヒドロキ
シアルキル基(例えば、2−ヒドロキシエチル、3−ヒ
ドロキシプロピル)、カルボキシアルキル基(例えば、
2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−
カルボキシブチル、カルボキシメチル)、アルコキシア
ルキル基(例えば、2−メトキシエチル、2−(2−メ
トキシエトキシ)エチル)、アリーロキシアルキル基
(例えば2ーフェノキシエチル、2ー(1ーナフトキ
シ)エチル)、アルコキシカルボニルアルキル基(例え
ばエトキシカルボニルメチル、2ーベンジルオキシカル
ボニルエチル)、アリーロキシカルボニルアルキル基
(例えば3ーフェノキシカルボニルプロピル)、アシル
オキシアルキル基(例えば2ーアセチルオキシエチ
ル)、アシルアルキル基(例えば2ーアセチルエチ
ル)、カルバモイルアルキル基(例えば2ーモルホリノ
カルボニルエチル)、スルファモイルアルキル基(例え
ばN,Nージメチルスルファモイルメチル)、スルホア
ルキル基(例えば、2−スルホエチル、3−スルホプロ
ピル、3−スルホブチル、4−スルホブチル、2−[3
−スルホプロポキシ]エチル、2−ヒドロキシ−3−ス
ルホプロピル、3−スルホプロポキシエトキシエチ
ル)、スルホアルケニル基、スルファトアルキル基(例
えば、2ースルファトエチル基、3−スルファトプロピ
ル、4−スルファトブチル)、複素環置換アルキル基
(例えば2−(ピロリジン−2−オン−1−イル)エチ
ル、テトラヒドロフルフリル)、アルキルスルホニルカ
ルバモイルアルキル基(例えばメタンスルホニルカルバ
モイルメチル基)、アシルカルバモイルアルキル基(例
えばアセチルカルバモイルメチル基)、アシルスルファ
モイルアルキル基(例えばアセチルスルファモイルメチ
ル基)、アルキルスルフォニルスルファモイルアルキル
基(例えばメタンスルフォニルスルファモイルメチル
基)}、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から1
0、さらに好ましくは炭素数6から8の無置換アリール
基(例えばフェニル基、1ーナフチル基)、炭素数6か
ら20、好ましくは炭素数6から10、さらに好ましく
は炭素数6から8の置換アリール基(例えば置換基の例
として挙げた前述のWが置換したアリール基が挙げられ
る。具体的にはp−メトキシフェニル基、p−メチルフ
ェニル基、p−クロロフェニル基などが挙げられ
る。)、炭素数1から20、好ましくは炭素数3から1
0、さらに好ましくは炭素数4から8の無置換複素環基
(例えば2ーフリル基、2ーチエニル基、2ーピリジル
基、3ーピラゾリル、3ーイソオキサゾリル、3ーイソ
チアゾリル、2ーイミダゾリル、2ーオキサゾリル、2
ーチアゾリル、2ーピリダジル、2ーピリミジル、3ー
ピラジル、2ー(1,3,5-トリアゾリル)、3ー(1,2,4-
トリアゾリル)、5ーテトラゾリル)、炭素数1から2
0、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭
素数4から8の置換複素環基(例えば置換基の例として
挙げた前述のWが置換した複素環基が挙げられる。具体
的には5ーメチルー2ーチエニル基、4ーメトキシー2
ーピリジル基などが挙げられる。)が挙げられる。
【0100】一般式(II)、(III) 、(IV)、
または(V)で表されるメチン色素が、一般式(I)中
のD1で表される発色団を表すとき、R11、R12
13、R1 4、R15、R16、R17、R18、及びR19で表さ
れる置換基として好ましくは無置換アルキル基、置換ア
ルキル基であり、置換アルキル基として好ましくは上述
の酸基を持つアルキル基である。酸基として、好ましく
はスルホ基、カルボキシル基、−CONHSO2−基、
−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基であり、特
に好ましくは、スルホ基、カルボキシル基であり、最も
好ましくはスルホ基である。
【0101】一般式(II)、(III) 、(IV)、
または(V)で表されるメチン色素が、一般式(I)中
のD2で表される発色団を表すとき、R11、R12
13、R1 4、R15、R16、R17、R18、及びR19で表さ
れる置換基として好ましくは、無置換アルキル基、置換
アルキル基であり、さらに好ましくは上述の酸基を持つ
アルキル基である。酸基として、好ましくはスルホ基、
カルボキシル基、−CONHSO2−基、−CONHC
O−基、−SO2NHSO2−基であり、特に好ましく
は、スルホ基、カルボキシル基であり、最も好ましくは
スルホ基である。
【0102】L11、L12、L13、L14、L15、L16、L
17、L18、L19、L20、L21、L22、L23、L24
25、L26、L27、L28、L29、L30、L31、L32、及
びL33はそれぞれ独立にメチン基を表す。L1〜L33
表されるメチン基は置換基を有していても良く、置換基
としては前述のWが挙げられる。例えば置換又は無置換
の炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、特
に好ましくは炭素数1から5のアルキル基(例えば、メ
チル、エチル、2−カルボキシエチル)、置換または無
置換の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から1
5、更に好ましくは炭素数6から10のアリール基(例
えばフェニル、o−カルボキシフェニル)、置換または
無置換の炭素数3から20、好ましくは炭素数4から1
5、更に好ましくは炭素数6から10の複素環基(例え
ばN,N−ジメチルバルビツール酸基)、ハロゲン原
子、(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、炭素数1か
ら15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは
炭素数1から5のアルコキシ基(例えばメトキシ、エト
キシ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数2から1
0、更に好ましくは炭素数4から10のアミノ基(例え
ばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−メチル
−N−フェニルアミノ、N−メチルピペラジノ)、炭素
数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ま
しくは炭素数1から5のアルキルチオ基(例えばメチル
チオ、エチルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭
素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のア
リールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニ
ルチオ)などが挙げられる。また他のメチン基と環を形
成してもよく、もしくはZ11〜Z19、R11〜R19と共に
環を形成することもできる。
【0103】L11、L12、L16、L17、L18、L19、L
22、L23、L29、及びL30として好ましくは、無置換メ
チン基である。
【0104】n11、n12、n13、n14、及びn15はそれ
ぞれ独立に0、1、2、3または4を表す。好ましくは
0、1、2、3であり、更に好ましくは0、1、2であ
り、特に好ましくは0、1である。n11、n12、n13
14、及びn15が2以上の時、メチン基が繰り返される
が同一である必要はない。
【0105】p11、p12、p13、p14、及びp15はそれ
ぞれ独立に0または1を表す。好ましくは0である。
【0106】M1、M11、M12、M13、及びM14は色素
のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イ
オン又は陰イオンの存在を示すために式の中に含められ
ている。典型的な陽イオンとしては水素イオン
(H+)、アルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオ
ン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類
金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イ
オン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオ
ン、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルア
ンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジ
ニウムイオン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−
7−ウンデセニウムイオン)などの有機イオンが挙げら
れる。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンの
いずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えばフッ
素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン)、置換アリ−ル
スルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオ
ン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ル
ジスルホン酸イオン(例えば1、3−ベンゼンスルホン
酸イオン、1、5−ナフタレンジスルホン酸イオン、
2、6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫
酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チ
オシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホ
ウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフル
オロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イ
オン性ポリマー又は色素と逆電荷を有する他の色素を用
いても良い。また、CO2 -、SO3 -は、対イオンとして
水素イオンを持つときはCO2H、SO3Hと表記するこ
とも可能である。
【0107】m1、m11、m12、m13、及びm14は電荷
を均衡させるのに必要な0以上の数を表し、好ましくは
0〜4の数であり、さらに好ましくは0〜1の数であ
り、分子内で塩を形成する場合には0である。
【0108】次に、発明の実施の形態の説明で詳細に述
べた、特に好ましい技術で使われる色素の具体例だけを
以下に示す。もちろん、本発明はこれらに限定されるも
のではない。まず、本発明のD1−の具体例を示す。
【0109】
【化8】
【0110】
【化9】
【0111】
【化10】
【0112】
【化11】
【0113】次に、本発明の−D2の具体例を示す。
【0114】
【化12】
【0115】
【化13】
【0116】
【化14】
【0117】
【化15】
【0118】
【化16】
【0119】次に、本発明のLaの具体例を示す。
【0120】
【化17】
【0121】
【化18】
【0122】次に、本発明の一般式(I)で表される色素
の具体例を示す。
【0123】
【化19】
【0124】
【化20】
【0125】本発明において、一般式(I)の連結色素の
2部分を遷移双極子モーメント方向に半分に分けて見
た場合に親疎水性が非対称であり、かつ親水性側に連結
基Laが連結されていることが好ましい。遷移双極子モー
メント方向の親疎水性の比較は、連結基部分をエチル基
で置き換えたD2の分子を遷移双極子モーメント方向に
半分に分け、それぞれについての対称形分子のLogPを比
較することにより行うことが出来る。例えばD-1では連
結基部分をエチル基で置き換えたD2はExD-1 で表され
る。遷移双極子モーメントの方向は、共役二重結合の方
向であり、ExD-1を半分に分けた場合のそれぞれの部分
の対称形はExD-2およびExD-3と表せる。
【0126】
【化21】
【0127】このときExD-2とExD-3のLogPを比較すると
ExD-2の方が小さく、親水性であることがわかるが、D-1
では連結基Laが親水性側に連結されていることが確認で
きる。
【0128】二層目色素が粒子表面と平行になり難い理
由の一つは、二層目色素のアニオン性置換基と一層目色
素のアニオン性置換基の静電反発である。本発明におい
ては、二層目色素の分光吸収遷移双極子モーメントと粒
子表面とのなす角を60°以下するために、静電反発を
弱めることが有効であり、そのために乳剤のイオン強度
を高めることが好ましい。イオン強度を増加させるため
に好ましいカチオンとしては、カリウム、ナトリウム、
カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属カチ
オンが挙げられるが、最も好ましくはカルシウムイオン
である。カルシウムイオンの対イオンはいかなるもので
も構わないが、好ましくは塩素イオン、硝酸イオンであ
る。カチオン(好ましくはカルシウムイオン)の好まし
い添加量は、乳剤中のゼラチン含有量に左右される。好
ましくはゼラチンの質量に対して500ppm以上、さ
らに好ましくは1500ppm以上、最も好ましくは3
000ppm以上である。また好ましくは100000
ppm以下、さらに好ましくは50000ppm以下、
特に好ましくは10000ppm以下である。
【0129】本発明において、乳剤粒子表面上に増感色
素を多層吸着させるための第二の方法は、連結されてい
ない増感色素の分子間相互作用を用いる方法である。例
えば、特開平10−239789、同8−26900
9、同10−123650号、特開平8−328189
号に記載されている芳香族基を持つ色素、又は芳香族基
を持つカチオン色素とアニオン色素を併用する方法、特
開平10−171058号に記載されている多価電荷を
持つ色素を用いる方法、特開平10−104774号に
記載されているピリジニウム基を持つ色素を用いる方
法、特開平10−186559号に記載されている疎水
性基を持つ色素を用いる方法、特開平10−19798
0号に記載されている配位結合基を持つ色素を用いる方
法、及び、特願平11−63588、同11−8014
1号、同11−159731号、同11−159730
号、同11−171324号、同11−221479
号、同11−265769号、同11−260643
号、同11−331571号、同11−331570
号、同11−311039号、同11−331567
号、同11−347781号、特願2000−1896
6号記載の特定の色素を用いる方法、などが好ましい。
【0130】特に好ましい方法は、芳香族基を少なくと
も一つ持つ色素を用いる方法である。その中で、好まし
くは正に荷電した色素、分子内で荷電が相殺されている
色素、又は荷電を持たない色素のみ用いる方法、又は正
と負に荷電した色素を併用し、かつ、正及び負に荷電し
た色素のうち少なくとも一方が少なくとも一つの芳香族
基を置換基として持つ色素を用いる方法である。
【0131】芳香族基について、詳細に説明する。芳香
族基としては、炭化水素芳香族基、及び複素芳香族基が
ある。これらは、さらに炭化水素芳香族環、及び複素芳
香族環同士が縮合した多環縮合環、又は芳香族炭化水素
環と芳香族複素環が組み合わされた多環縮合環構造を持
つ基であっても良く、前述の置換基W等で置換されてい
ても良い。芳香族基に含まれる芳香族環として好ましく
は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナント
レン、フルオレン、トリフェニレン、ナフタセン、ビフ
ェニル、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾー
ル、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、
ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、インドール、
ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾフラン、
キノリジン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キ
ノキサリン、キノキサゾリン、イソキノリン、カルバゾ
ール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリ
ン、チアントレン、クロメン、キサンテン、フェノキサ
チイン、フェノチアジン、フェナジン等が挙げられる。
【0132】さらに好ましくは、上述の炭化水素芳香族
環であり、特に好ましくはベンゼン、ナフタレンであ
り、最も好ましくはベンゼンである。
【0133】色素としては、例えば前述の色素発色団の
例として示した色素が挙げられる。好ましくは、前述の
ポリメチン色素発色団の例として示した色素が挙げられ
る。より好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘ
ミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン
色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コン
プレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン
色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキ
ソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、
アザメチン色素であり、さらに好ましくはシアニン色
素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メ
ロシアニン色素、ロダシアニン色素であり、特に好まし
くはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色
素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
【0134】特に好ましい方法について、構造式を示し
て詳細に説明する。
【0135】すなわち、次の(1)、(2)の場合が好
ましい。(1)と(2)では、(2)がより好ましい。 (1)下記一般式(VI)で表されるカチオン性、ベタ
イン性、又はノニオン性のメチン色素のうち少なくとも
一種を用いる方法。 (2)下記一般式(VI)で表されるカチオン性のメチ
ン色素のうち少なくとも一種と下記一般式(VII)で
表されるアニオン性のメチン色素のうち少なくとも一種
を同時に用いる方法。 一般式(VI)
【0136】
【化22】
【0137】式中、B1は含窒素複素環を形成するのに
必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環してい
ても良い。A1はアルキル基、アリール基、又は複素環
基である。Q1は一般式(VI)で表される化合物がメ
チン色素を形成するのに必要な基を表す。T1及びT2
メチン基を表す。p1は0または1を表す。ただしB1
1、Q1、T1、及びT2は一般式(VI)で表されるメ
チン色素が全体としてカチオン色素、ベタイン色素、又
はノニオン色素となる置換基を持つものとする。ただ
し、一般式(VI)がシアニン色素、又はロダシアニン
色素の場合は、好ましくはカチオン色素となる置換基を
持つ場合である。M1は電荷均衡のための対イオンを表
し、m1は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数
を表す。 一般式(VII)
【0138】
【化23】
【0139】式中、B2は含窒素複素環を形成するのに
必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環してい
ても良い。A2はアルキル基、アリール基、又は複素環
基である。Q2は一般式(VII)で表される化合物がメ
チン色素を形成するのに必要な基を表す。T3及びT4
メチン基を表す。p2は0または1を表す。ただしB2
2、Q2、T3、及びT4は一般式(VII)で表される
メチン色素が全体としてアニオン色素となる置換基を持
つものとする。M2は電荷均衡のための対イオンを表
し、m2は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数
を表す。A1及びA2で表されるアルキル基、アリール
基、又は複素環基はR11で記載したものが適用され、T
1、T2、T3及びT4はL11で記載したものが適用され、
1、m1は一般式(I)におけると同義である。p1
2は好ましくは0である。
【0140】ここで、一般式(VI)の化合物を単独で
用いる場合、A1は芳香族環を持つ基であることが好ま
しい。
【0141】また、一般式(VI)の化合物と一般式
(VII)の化合物を併用する場合は、A1、及びA2
うち少なくとも一方は、芳香族環を持つ基であることが
好ましい。さらに、好ましくは、A1、及びA2とも、芳
香族環を持つ基である場合である。
【0142】本発明のカチオン色素とは、対イオンを除
いた色素の電荷がカチオン性である色素ならばいずれで
も良いが、好ましくはアニオン性の置換基を持たない色
素である。また、本発明のアニオン色素とは、対イオン
を除いた色素の電荷がアニオン性である色素ならばいず
れでも良いが、好ましくはアニオン性の置換基を1つ以
上持つ色素である。本発明のベタイン色素とは、分子内
に電荷を持つが分子内塩を形成し、分子が全体として電
荷を持たない色素である。本発明のノニオン色素とは、
分子内に電荷を全く持たない色素である。
【0143】ここで言うアニオン性置換基とは、負電荷
を有した置換基であり、例えばpH5〜8の間で90%以上
解離したプロトン解離性酸性基が挙げられる。具体的に
は、例えばスルホ基、カルボキシル基、スルファト基、
リン酸基、ボロン酸基などが挙げられる。その他に、−
CONHSO2−基、−CONHCO−基、−SO2NH
SO2−基、フェノール性水酸基、など、これらのpk
aと周りのpHによっては、プロトンが解離する基が挙
げられる。さらに好ましくはスルホ基、カルボキシル
基、−CONHSO2−基、−CONHCO−基、−S
2NHSO2 −基である。なお、−CONHSO2
基、−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基は、こ
れらのpkaと周りのpHにより、プロトンが解離しな
い場合もあり、この場合は、ここでは言うアニオン性置
換基には含めない。すなわち、プロトンが解離しない場
合は、例えば一般式(II)で表わされる色素に、これ
らの基が2つ置換していても、カチオン色素と見なすこ
とができる。カチオン性置換基としては、置換又は無置
換のアンモニウム基、ピリジニウム基などが挙げられ
る。
【0144】一般式(VI)で表わされる色素として、
さらに好ましくは前記一般式(II)、(III)また
は(IV)で表されるときである。但し、式(II)の
色素がカチオン色素の場合はアニオン性の置換基を持た
ず、ベタイン色素の場合はアニオン性の置換基を1つ持
つのが好ましい。また、式(III)の色素がカチオン
色素の場合はカチオン性の置換基を持ち、ベタイン色素
の場合はカチオン性の置換基1つとアニオン性の置換基
1つを持ち、ノニオン色素の場合はカチオン性の置換基
とアニオン性の置換基を持たないのが好ましい。さら
に、式(IV)の色素がカチオン色素の場合はアニオン
性の置換基を持たず、ベタイン色素の場合はアニオン性
の置換基を1つ持つのが好ましい。
【0145】また、一般式(VI)で表されるアニオン
色素として、さらに好ましくは、R 11およびR12がアニ
オン性の置換基を有する一般式(II)の色素、R13
よびR14のうち少なくとも1つはアニオン性の置換基を
有する一般式(III)の色素、またはR15、R16およ
びR17のうち少なくとも2つはアニオン性の置換基を有
する一般式(IV)の色素である。
【0146】但し、一般式(II)、(III)または
(IV)の化合物を単独で用いる場合、R11及びR12
うち少なくとも一つ、好ましくは両方とも芳香族環を有
する基、R13及びR14のうち少なくとも一つ、好ましく
は両方とも芳香族環を有する基、あるいは、R15、R16
及びR17のうち少なくとも一つ、好ましくは2つ、さら
に好ましくは3つとも芳香族環を有する基、であること
が好ましい。
【0147】一般式(II)、(III)または(I
V)で表されるベタイン色素、カチオン色素またはノニ
オン色素と一般式(II)、(III)または(IV)
で表されるアニオン色素とを併用する場合は、組み合わ
せた色素のR11〜R17のうち、少なくとも1つは芳香族
環を有する基であり、好ましくは2つが芳香族環を有す
る基であり、さらに好ましくは3つが芳香族環を有する
基であり、特に好ましくは4つ以上が芳香族環を有する
基である。
【0148】一般式(VI)で表されるカチオン色素、
ベタイン色素、又はノニオン色素と、一般式(VII)
で表されるアニオン色素とを用いて、二層目色素のJ会
合体を形成させるためには、一層目として吸着させる色
素と二層目以降に吸着させる色素を分離して添加するの
が好ましく、一層目色素と二層目以上の色素は異なる色
素を用いることがより好ましい。二層目以上の色素はカ
チオン性の色素、ベタイン性の色素、ノニオン性の色素
を単独、又はカチオン性の色素とアニオン性の色素を併
用して添加することが好ましい。
【0149】一層目色素はいかなる色素を用いることも
出来るが、好ましくは一般式(VI)または一般式(V
II)で表される色素であり、さらに好ましくは一般式
(VI)で表わされる色素である。二層目色素は、一般
式(VI)のカチオン色素、ベタイン色素、又はノニオ
ン色素を単独で用いる場合が好ましい。また、これと同
列に好ましい二層目色素としてカチオン色素とアニオン
色素を併用する場合は、いずれか一方が一般式(VI)
のカチオン色素または一般式(VII)のアニオン色素
である場合が好ましく、さらに一般式(VI)のカチオ
ン色素と一般式(VII)のアニオン色素を両方とも含
むことが好ましい。二層目色素としてのカチオン性色素
/アニオン性色素の比率は、好ましくは0.5〜2、さ
らに好ましくは0.75〜1.33、最も好ましくは
0.9から1.11の範囲である。
【0150】本発明では一般式(VI)あるいは一般式
(VII)で表される色素以外を添加しても構わない
が、一般式(VI)あるいは一般式(VII)で表され
る色素は、好ましくは全色素添加量の50%以上、さら
に好ましくは70%以上、最も好ましくは90%以上で
ある。二層目色素はこのようにして添加することによ
り、二層目色素の再配列を促進しつつ、二層目色素間の
相互作用を高めることができるためJ会合体形成が実現
できる。
【0151】また一般式(VI)または一般式(VI
I)の色素において、一層目色素として使用する場合
は、B1、B2は芳香族基が置換した塩基性核、又は3環
以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。また、二
層目以上の色素として使用する場合、B1、B2は3環以
上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
【0152】ここで、塩基性核の縮環数は、例えばベン
ゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は
3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で
置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩
基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩
基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3
環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられ
る。3環式縮環型複素環として好ましくはナフト[2,3-
d]オキサゾール、ナフト[1,2-d]オキサゾール、ナフト
[2,1-d]オキサゾール、ナフト[2,3-d]チアゾール、ナフ
ト[1,2-d] チアゾール、ナフト[2,1-d] チアゾール、ナ
フト[2,3-d]イミダゾール、ナフト[1,2-d]イミダゾー
ル、ナフト[2,1-d] イミダゾール、ナフト[2,3-d]セレ
ナゾール、ナフト[1,2-d] セレナゾール、ナフト[2,1-
d] セレナゾール、インドロ[5,6-d]オキサゾール、イン
ドロ[6,5-d]オキサゾール、インドロ[2,3-d]オキサゾー
ル、インドロ[5,6-d]チアゾール、インドロ[6,5-d]チア
ゾール、インドロ[2,3-d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6-
d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5-d]オキサゾール、ベ
ンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6-d]チア
ゾール、ベンゾフロ[6,5-d]チアゾール、ベンゾフロ[2,
3-d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6-d]オキサゾール、
ベンゾチエノ[6,5-d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3-
d]オキサゾール等が挙げられる。また、4環式縮環型複
素環として好ましくは、アントラ[2,3-d]オキサゾー
ル、アントラ[1,2-d]オキサゾール、アントラ[2,1-d]オ
キサゾール、アントラ[2,3-d]チアゾール、アントラ[1,
2-d] チアゾール、フェナントロ[2,1-d] チアゾール、
フェナントロ[2,3-d]イミダゾール、アントラ[1,2-d]
イミダゾール、アントラ[2,1-d] イミダゾール、アント
ラ[2,3-d]セレナゾール、フェナントロ[1,2-d] セレナ
ゾール、フェナントロ[2,1-d] セレナゾール、カルバゾ
ロ[2,3-d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d]オキサゾー
ル、ジベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾフロ
[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]チアゾール、
カルバゾロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]チ
アゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]チアゾール、ベンゾフ
ロ[5,6-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3-d]オキサ
ゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]オキサゾール、テトラ
ヒドロカルバゾロ[6,7-d]オキサゾール、テトラヒドロ
カルバゾロ[7,6-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3-
d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]チアゾール、テ
トラヒドロカルバゾロ[6,7-d]チアゾール等が挙げられ
る。3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、
ナフト[2,3-d]オキサゾール、ナフト[1,2-d]オキサゾー
ル、ナフト[2,1-d]オキサゾール、ナフト[2,3-d]チアゾ
ール、ナフト[1,2-d] チアゾール、ナフト[2,1-d] チア
ゾール、インドロ[5,6-d]オキサゾール、インドロ[6,5-
d]オキサゾール、インドロ[2,3-d]オキサゾール、イン
ドロ[5,6-d]チアゾール、インドロ[2,3-d]チアゾール、
ベンゾフロ[5,6-d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5-d]オ
キサゾール、ベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ベンゾ
フロ[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d]チアゾー
ル、ベンゾチエノ[5,6-d]オキサゾール、アントラ[2,3-
d]オキサゾール、アントラ[1,2-d]オキサゾール、アン
トラ[2,3-d]チアゾール、アントラ[1,2-d] チアゾー
ル、カルバゾロ[2,3-d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2-
d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、
ジベンゾフロ[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]
チアゾール、カルバゾロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾ
フロ[2,3-d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]チアゾー
ル、ジベンゾチエノ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾチ
エノ[3,2-d]オキサゾール、が挙げられ、特に好ましく
は、ナフト[2,3-d]オキサゾール、ナフト[1,2-d]オキサ
ゾール、ナフト[2,3-d]チアゾール、インドロ[5,6-d]オ
キサゾール、インドロ[6,5-d] オキサゾール、インドロ
[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6-d]オキサゾール、
ベンゾフロ[5,6-d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3-d]チア
ゾール、ベンゾチエノ[5,6-d]オキサゾール、カルバゾ
ロ[2,3-d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2-d]オキサゾー
ル、ジベンゾフロ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾフロ
[3,2-d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3-d]チアゾール、
カルバゾロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3-d]チ
アゾール、ジベンゾフロ[3,2-d]チアゾール、ジベンゾ
チエノ[2,3-d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2-d]オ
キサゾールである。
【0153】本発明の一般式(VI)で表される色素の
具体例を示す。
【0154】
【化24】
【0155】
【化25】
【0156】次に、本発明の一般式(VII)で表され
る色素の具体例を示す。
【0157】
【化26】
【0158】
【化27】
【0159】本発明において、連結色素以外の色素を用
いて多層吸着させ、かつ二層目(二層目以降をも含む意
味で以降「二層目以降」と表示する)の色素の遷移双極
子モーメントと粒子表面との角を60°以下にする(好
ましくは遷移双極子モーメントを粒子表面と平行にす
る)には、二層目以降の色素と乳剤媒体の親和性を調節
することが重要であることが明らかとなった。本発明に
おいて乳剤媒体とは乳剤からハロゲン化銀粒子を遠心分
離等で除いた上澄み液を指す。二層目以降の色素と乳剤
媒体との親和性は、乳剤媒体への二層目以降の色素の溶
解度を目安とすることが出来る。乳剤媒体への二層目以
降の色素の溶解度は好ましくは0.0001g/100
ml以上、さらに好ましくは0.0005g/100m
l以上、特に好ましくは0.002g/100ml以上
である。また乳剤媒体への二層目以降の色素の溶解度は
好ましくは1g/100ml以下、さらに好ましくは
0.1g/100ml以下、特に好ましくは0.01g
/100ml以下である。乳剤媒体と二層目以降の色素
の親和性を制御する方法としては、LogP等の色素の
性質を最適化する方法と乳剤媒体中の色素溶媒含量等の
乳剤媒体の性質を最適化する方法があるが、好ましくは
乳剤媒体の性質を最適化することが好ましい。本発明に
おいて色素溶媒とは、増感色素を0.01g/100m
l以上溶解させることの可能な溶媒を指す。色素溶媒は
いかなるものも用いることが出来るが、好ましくはメタ
ノール、エタノール等のアルコール、テトラヒドロフラ
ン等のエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミドである。色素添加時の乳剤媒体中の色素溶媒含
量は、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10
質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。ま
た好ましくは、50質量%以下、より好ましくは40質
量%以下である。二層目以降の色素と乳剤媒体の親和性
を高めるためには、乳剤媒体中のゼラチンの分子量を高
めることも有効である。ゼラチンは分子量の増加に伴っ
て疎水性が高まることが知られている。乳剤媒体中に含
まれるゼラチンのうち10質量%以上のゼラチンが好ま
しくは分子量120000以上、さらに好ましくは分子
量280000以上である。また分子量280000以
上のゼラチンを好ましくは20質量%以上、さらに好ま
しくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上
含有することである。
【0160】本発明におけるハロゲン化銀乳剤は、臭化
銀、塩化銀、沃臭化銀、沃塩臭化銀、塩臭化銀、塩沃臭
化銀、沃塩化銀等が好ましい。ハロゲン化銀粒子の形態
としては、八面体、立方体、十四面体の如き正常晶でも
良いが、平板状粒子がより好ましい。
【0161】まず本発明に関する第1の乳剤であるハロ
ゲン化銀粒子が平行な主平面が(111)面である塩化
銀含有率が10モル%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀
よりなる平板状ハロゲン化銀粒子について説明する。
【0162】この乳剤は対向する(111)主平面と該
主平面を連結する側面からなる。平板粒子乳剤は沃臭化
銀もしくは塩沃臭化銀より成る。塩化銀を含んでも良い
が、好ましくは塩化銀含率は8モル%以下、より好まし
くは3モル%以下、さらに好ましくは0モル%である。
沃化銀含有率については、40モル%以下、好ましくは
20モル%以下である。沃化銀含有率に拘わらず、粒子
間の沃化銀含量の分布の変動係数は20%以下が好まし
く、特に10%以下が好ましい。
【0163】平板状ハロゲン化銀粒子とは、アスペクト
比2以上の粒子を言う。粒子の投影面積と等しい面積の
円の直径(円相当径)を粒子の厚みで割った値がアスペ
クト比である。ここで平板粒子の投影面積、厚み、なら
びにアスペクト比は参照用のラテックス球とともにシャ
ドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真
から測定することができる。平板粒子は上から見た時
に、通常6角形、3角形もしくは円形状の形態をしてい
る。平板粒子の形状は6角形の比率が高い程好ましく、
また、6角形の各隣接する辺の長さの比(長辺/短辺)
は2以下であることが好ましい。
【0164】平板粒子は、平均円相当径で0.1μm以
上20.0μm以下が好ましく、0.2μm以上10.
0μm以下がさらに好ましい。また、平板粒子の平均厚
みは、0.01μm以上0.5μm以下、好ましくは
0.02μm以上0.4μm以下が好ましい。平均球相
当径では0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、
0.2μm以上3μm以下がさらに好ましい。球相当径
とは、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径
である。また、平均アスペクト比は、1.5以上200
以下が好ましく、2以上100以下がさらに好ましい。
【0165】上記平板粒子は単分散性であることが好ま
しい。全ハロゲン化銀粒子の球相当径の変動係数は30
%以下であるのが好ましく、より好ましくは25%以下
である。また、円相当径の変動係数も重要であり、全ハ
ロゲン化銀粒子の円相当径の変動係数は30%以下であ
ることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、
更に好ましくは20%以下である。また、厚みの変動係
数は、30%以下が好ましく、より好ましくは25%以
下であり、更に好ましくは20%以下である。
【0166】平板粒子の双晶面間隔は米国特許第521
9720号に記載のように0.012μm以下にした
り、特開平5−249585号に記載のように(11
1)主平面間距離/双晶面間隔を15以上にしても良
く、目的に応じて選んで良い。
【0167】アスペクト比が高い程、好ましい効果が得
られるので、平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上が
アスペクト比2以上の粒子で占められるのが好ましく、
より好ましくは5以上、さらに好ましくはアスペクト比
8以上である。アスペクト比があまり大きくなりすぎる
と、前述した粒子サイズ分布の変動係数が大きくなる方
向になるために、通常アスペクト比は200以下が好ま
しい。
【0168】平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Ha
milton,Phot.Sci.Eng.,11、5
7、(1967)やT.Shiozawa,J.So
c.Phot.Sci.Japan,35、213、
(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用
いた直接的な方法により観察することができる。すなわ
ち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけな
いよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微
鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリン
トアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法
により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線
が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの
粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方
がより鮮明に観察することができる。このような方法に
より得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向
から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数
を求めることができる。
【0169】転位線の数は、好ましくは1粒子当り平均
10本以上である。より好ましくは1粒子当り平均20
本以上である。転位線が密集して存在する場合、または
転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当
りの転位線の数は明確には数えることができない場合が
ある。しかしながら、これらの場合においても、おおよ
そ10本、20本、30本という程度には数えることが
可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区
別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については
100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均と
して求める。
【0170】転位線は、例えば平板粒子の外周近傍に導
入することができる。この場合転位は外周にほぼ垂直で
あり、平板状粒子の中心から辺(外周)までの距離の長
さのx%の位置から始まり外周に至るように転位線が発
生している。このxの値は好ましくは10以上100未
満であり、より好ましくは30以上99未満であり、最
も好ましくは50以上98未満である。この時、この転
位線の開始する位置を結んでつくられる形状は粒子形と
相似に近いが、完全な相似形ではなく、ゆがむことがあ
る。この型の転位数は粒子の中心領域には見られない。
転位線の方向は結晶学的におおよそ(211)方向であ
るがしばしば蛇行しており、また互いに交わっているこ
ともある。
【0171】また平板粒子の外周上の全域に渡ってほぼ
均一に転位線を有していても、外周上の局所的な位置に
転位線を有していてもよい。すなわち六角形平板ハロゲ
ン化銀粒子を例にとると、6つの頂点の近傍のみに転位
線が限定されていてもよいし、そのうちの1つの頂点近
傍のみに転位線が限定されていてもよい。逆に6つの頂
点近傍を除く辺のみに転位線が限定されていることも可
能である。
【0172】また平板粒子の平行な2つの主平面の中心
を含む領域に渡って転位線が形成されていてもよい。主
平面の全域に渡って転位線が形成されている場合には転
位線の方向は主平面に垂直な方向から見ると結晶学的に
おおよそ(211)方向の場合もあるが(110)方向
またはランダムに形成されている場合もあり、さらに各
転位線の長さもランダムであり、主平面上に短い線とし
て観察される場合と、長い線として辺(外周)まで到達
して観察される場合がある。この場合の転位線は直線の
こともあれば蛇行していることも多い。また、多くの場
合互いに交わっている。
【0173】転位線の位置は以上のように外周上または
主平面上または局所的な位置に限定されていても良い
し、これらが組み合わされて、形成されていても良い。
すなわち、外周上と主平面上に同時に存在していても良
い。
【0174】平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一で
あることが望ましい。乳剤は1粒子当たり10本以上の
転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100ないし
50%(個数)を占めることが好ましく、より好ましく
は100ないし70%を、特に好ましくは100ないし
90%を占める。
【0175】この平板粒子乳剤の粒子表面のヨウ化銀含
有量は、好ましくは10モル%以下で、特に好ましくは
5モル%以下である。粒子表面のヨウ化銀含有量はXP
S(X−ray Photoelectron Spe
ctroscopy)を用いて測定される。XPSの標
準的な測定法は、励起X線としてMg−Kαを使用し、
適当な試料形態としたハロゲン化銀から放出される沃素
(I)と銀(Ag)の光電子(通常はI−3d5/2、
Ag−3d5/2)の強度を観測する方法である。沃素
の含量を求めるには、沃素の含量が既知である数種類の
標準試料を用いて沃素(I)と銀(Ag)の光電子の強
度比(強度(I)/強度(Ag))の検量線を作成し、
この検量線からもとめることができる。ハロゲン化銀乳
剤ではハロゲン化銀粒子表面に吸着したゼラチンを蛋白
質分解酵素などで分解、除去した後にXPSの測定をお
こなわなければならない。粒子表面のヨウ化銀含有量が
10モル%以下の平板粒子乳剤とは、1つの乳剤に含ま
れる乳剤粒子を、XPSで分析したときにヨウ化銀含量
が10モル%以下であるものをさす。この場合、明瞭に
2種以上の乳剤が混合されているときには、遠心分離
法、濾別法など適当な前処理を施した上で同一種類の乳
剤につき分析を行なう必要がある。
【0176】沃化銀分布について粒子内で構造を有して
いることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2
重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造が
あり得る。また、粒子内部で沃化銀含有量が連続的に変
化していても良い。例えば臭化銀/沃臭化銀/臭化銀か
らなる3重構造粒子ならびにそれ以上の高次構造も好ま
しいが、内側の層の沃化銀含有率が表面の沃化銀含有率
よりも高いことが好ましく、好ましくは5モル%以上、
より好ましくは7モル%以上高い。構造間の沃化銀含有
率の境界は明確なものであっても、連続的になだらかに
変化しているものであっても、いずれでも良い。通常、
粉末X線回折法を用いた沃化銀含有量の測定では沃化銀
含有量の異なる明確な2山を示す様なことはなく、高沃
化銀含有率の方向にすそをひいたようなX線回折プロフ
ィールを示す。
【0177】次に、本発明に関する第2の乳剤である平
行な主平面が(111)面であり、最小の長さを有する
辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が2
以下である六角形ハロゲン化銀粒子の頂点部、および/
または側面部、および/または主平面部に1粒子当り少
なくとも一個以上のエピタキシャル接合を有する粒子に
ついて説明する。エピタキシャル接合した粒子とは、ハ
ロゲン化銀粒子本体の他に該粒子と接合した結晶部(す
なわち、エピタキシャル部)を持つ粒子であり、接合し
た結晶部は通常ハロゲン化銀粒子本体から突出してい
る。接合した結晶部(エピタキシャル部)の粒子全銀量
に対する割合は2%以上30%以下が好ましく、5%以
上15%以下がより好ましい。エピタキシャル部は粒子
本体のどの部分に存在しても良いが、粒子主平面部、粒
子エッジ部、粒子コーナー部が好ましい。エピタキシャ
ルの個数は、少なくとも一つ以上が好ましい。また、エ
ピタキシャル部の組成は、AgCl、AgBrCl、A
gBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好
ましい。エピタキシャル部が存在する場合、粒子内部に
は転位線が存在しても良いが、存在しなくても良い。
【0178】次に、本発明に関する、第1の乳剤および
第2の乳剤ハロゲン化銀粒子の調製方法について説明す
る。
【0179】本発明の調製工程としては、(a)基盤粒
子形成工程と、それに引き続く(b)構造導入工程から
成る。基本的に(a)工程に引き続き(b)工程を行う
ことがより好ましいが、(a)工程のみでもよい。
(b)工程は、(b1)転位線導入工程、(b2)コー
ナー部転位線限定導入工程、または(b3)エピタキシ
ャル接合工程、のいずれでも良く、少なくとも一つでも
よければ、二つ以上組み合わせても良い。
【0180】まず、(a)基盤粒子形成工程について説
明する。基盤部は、粒子形成に使用した全銀量に対して
少なくとも50%以上が好ましく、さらに好ましくは6
0%以上である。また、基盤部の銀量に対するヨードの
平均含有率は0mol%以上30%mol以下が好まし
く、0mol%以上15mol%以下がさらに好まし
い。また、基盤部は必要に応じてコアシェル構造を取っ
ても良い。この際、基盤部のコア部は基盤部の全銀量に
対して50%以上70%以下であることが好ましく、コア
部の平均ヨード組成は0mol%以上30mol%以下
が好ましく、0mol%以上15mol%以下が更に好
ましい。シェル部のヨード組成は0mol%以上3mo
l%以下が好ましい。
【0181】(a)工程は、ハロゲン化銀核を形成した
後、更にハロゲン化銀粒子を成長させて所望のサイズの
粒子を得る方法が一般的であり、平板状粒子の形成のた
めには、少なくとも核形成、熟成、成長の工程が含まれ
る。この工程は、米国特許第4945037号に詳細に記載さ
れている。
【0182】1.核形成 平板粒子の核形成は、一般にはゼラチンの水溶液を保持
する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン化アルカリ水溶
液を添加して行われるダブルジェット法、あるいはハロ
ゲン化アルカリを含むゼラチン溶液に銀塩水溶液を添加
するシングルジェット法が用いられる。また、必要に応
じて銀塩を含むゼラチン溶液にハロゲン化アルカリ水溶
液を添加する方法も用いることができる。さらに、必要
に応じて特開昭2-44335号に開示されている混合器にゼ
ラチン溶液と銀塩溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添
加し、ただちにそれを反応容器に移すことによって平板
粒子の核形成を行うこともできる。また、米国特許第51
04786号に開示されているように、ハロゲン化アルカリ
と保護コロイド溶液を含む水溶液をパイプに通しそこに
銀塩水溶液を添加することにより核形成を行うこともで
きる。また、米国特許第6022681号記載の塩素含
有量が核形成に使用した銀量に対して10モル%以上で
あるような核形成を用いても良い。核形成は、ゼラチン
を分散媒とし、pBrが1〜4の条件で分散媒形成する
ことが好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処
理ゼラチン、低分子量ゼラチン(分子量:3000〜4
万)、米国特許第4,713,320号および同第4,
942,120号に記載の酸化処理ゼラチン、および低
分子量の酸化処理ゼラチンを用いても良い。特に低分子
量の酸化処理ゼラチンを用いることは好ましい。分散媒
の濃度は、10質量%以下が好ましく、さらに1質量%
以下がより好ましい。核形成時の温度は、5〜60℃が
好ましいが、平均粒径が0.5μm以下の微粒子平板粒
子を作る場合は5〜48℃がより好ましい。分散媒のp
Hは、1以上10以下が好ましいが、1.5以上9以下
がさらに好ましい。また、米国特許第5,147,77
1号、同第5,147,772号、同第5,147,7
73号、同第5,171,659号、同第5,210,
013号、同第5,252,453号、および特許第3
089578号に記載のポリアルキレンオキサイド化合
物を核形成工程、もしくは後の熟成工程、および成長工
程で添加することが可能である。
【0183】2.熟成 1.における核形成では、平板粒子となりうる核以外の
微粒子(特に、八面体および一重双晶粒子)も形成され
る。次に述べる成長過程に入る前に平板粒子以外の粒子
を消滅せしめ、平板粒子となるべき形状でかつ単分散性
の良い核を得る必要がある。これを可能とするために、
核形成に引き続いてオストワルド熟成を行うことがよく
知られている。核形成後直ちにpBrを調節した後、温
度を上昇させ六角平板粒子比率が最高となるまで熟成を
行う。この時に、ゼラチン溶液を追添加しても良い。そ
の際の分散媒溶液に対するゼラチンの濃度は、10質量
%以下であることが好ましい。この時使用する追添加ゼ
ラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以
上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチ
ンのような特開平11−143002号記載のアミノ基
修飾ゼラチン、特開平11−143003号記載のイミ
ダゾール基修飾ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用
いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチ
ンを用いることが好ましい。熟成の温度は、40〜80
℃、好ましくは50〜80℃であり、pBrは1.2〜
3.0である。また、pHは1.5以上9以下が好まし
い。また、この時平板粒子以外の粒子を速やかに消失せ
しめるために、ハロゲン化銀溶剤を添加しても良い。こ
の場合のハロゲン化銀溶剤の濃度としては、0.3mol/リッ
トル以下が好ましく、0.2mol/リットル以下がより好ましい。
直接反転用乳剤として用いる場合は、ハロゲン化銀溶剤
として、アルカリ性側で用いられるNH3より、中性、
酸性側で用いられるチオエーテル化合物等のハロゲン化
銀溶剤の方が好ましい。このように熟成して、ほぼ〜1
00%平板状粒子のみとする。熟成が終わった後、次の
成長過程でハロゲン化銀溶剤が不要の場合は次のように
してハロゲン化銀溶剤を除去する。 NH3のようなアルカリ性ハロゲン化銀溶剤の場合
は、HNO3のようなAg+との溶解度積の大きな酸を加
えて無効化する。 チオエーテル系ハロゲン化銀溶剤の場合は、特開昭
60-136736号に記載のごとくH22等の酸化剤を添加し
て無効化する。
【0184】3.成長 熟成過程に続く結晶成長期のpBrは1.4〜3.5に
保つことが好ましい。成長過程に入る前の分散媒溶液中
のゼラチン濃度が低い場合(1質量%以下)に、ゼラチ
ンを追添加する場合がある。その際、分散媒溶液中のゼ
ラチン濃度は、1〜10質量%にすることが好ましい。
この時使用するゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、ア
ミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリ
メリット化ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用い
る。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチン
を用いることが好ましい。成長中のpHは、2以上10
以下、好ましくは4以上8以下である。ただし、コハク
化ゼラチンおよびトリメリット化ゼラチン存在時には5
以上8以下が好ましい。結晶成長期におけるAg+、お
よびハロゲンイオンの添加速度は、結晶臨界成長速度の
20〜100%、好ましくは30〜100%の結晶成長
速度になるようにする事が好ましい。この場合、結晶成
長とともに銀イオンおよびハロゲンイオンの添加速度を
増加させていくが、その場合、特公昭48-36890号、同52
-16364号記載のように、銀塩およびハロゲン塩水溶液の
添加速度を上昇させても良く、水溶液の濃度を増加させ
ても良い。銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液を同時に添加
するダブルジェット法で行ってもよいが、米国特許第
4,672,027号および同第4,693,964号
に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と
沃化銀微粒子乳剤を同時に添加することが好ましい。こ
の際、成長の温度は、50℃以上90℃以下が好まし
く、60℃以上85℃以下が更に好ましい。また、添加
するAgI微粒子乳剤は、あらかじめ調製したものでも
良く、連続的に調製しながら添加しても良い。この際の
調製方法は特開平10−43570号を参考に出来る。
添加するAgI乳剤の平均粒子サイズは0.005μm以上
0.1μm以下、好ましくは0.007μm以上0.08
μm以下である。基盤粒子のヨード組成は、添加するA
gI乳剤の量により変化させることが出来る。
【0185】さらに、銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液の
添加の代わりに、ヨウ臭化銀微粒子を添加することは好
ましい。この際、微粒子のヨード量を所望する基盤粒子
のヨード量と等しくすることで、所望のヨード組成の基
盤粒子が得られる。ヨウ臭化銀微粒子はあらかじめ調製
したものでも良いが、連続的に調製しながら添加する方
が好ましい。添加するヨウ臭化銀微粒子サイズは、0.
005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.01μm
以上0.08μm以下である。成長時の温度は50℃以
上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下であ
る。
【0186】次に、(b)工程について説明する。ま
ず、(b1)工程について説明する。(b1)工程は第
1シェル工程と第2シェル工程から成る。上述した基盤
に第1シェルを設ける。第1シェルの比率は好ましくは
全銀量に対して1%以上30%以下であって、その平均
沃化銀含有率20モル%以上100モル%以下である。
より好ましくは第1シェルの比率は全銀量に対して1%
以上20%以下であって、その平均沃化銀含有率25モ
ル%以上100モル%以下である。基盤への第1シェル
の成長は基本的には硝酸銀水溶液と沃化物と臭化物を含
むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もし
くは硝酸銀水溶液と沃化物を含むハロゲン水溶液をダブ
ルジェット法で添加する。もしくは沃化物を含むハロゲ
ン水溶液をシングルジェット法で添加する。
【0187】以上のいずれの方法でも、それらの組み合
わせでも良い。第1シェルの平均沃化銀含有率から明ら
かなように、第1シェル形成時には沃臭化銀混晶の他に
沃化銀が析出しうる。いずれの場合でも通常は、次の第
2シェルの形成時に、沃化銀は消失し、すべて沃臭化銀
混晶に変化する。
【0188】第1シェルの形成の好ましい方法として沃
臭化銀もしくは沃化銀微粒子乳剤を添加して熟成し溶解
する方法がある。さらに、好ましい方法として沃化銀微
粒子乳剤を添加して、その後硝酸銀水溶液の添加もしく
は硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を添加する方法があ
る。この場合、沃化銀微粒子乳剤の溶解は、硝酸銀水溶
液の添加により促進されるが、添加した沃化銀微粒子乳
剤の銀量を用いて第1シェルとし、沃化銀含有率100
モル%とする。そして添加した硝酸銀水溶液を第2シェ
ルの銀量として計算する。沃化銀微粒子乳剤は急激に添
加されることが好ましい。
【0189】沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するとは、
好ましくは10分以内にその全沃化銀微粒子乳剤を添加
することをいう。より好ましくは7分以内に添加するこ
とをいう。この条件は添加する系の温度、pBr、p
H、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲ
ン化銀溶剤の有無、種類、濃度等により変化しうるが、
上述したように短い方が好ましい。添加する時には実質
的に硝酸銀等の銀塩水溶液の添加は行なわれない方が好
ましい。添加時の系の温度は40℃以上90℃以下が好
ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0190】沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であれ
ば良く、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/ま
たは塩化銀を含有していても良い。好ましくは100%
沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ
体ならびに米国特許第4,672,026号に記載され
ているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。本
発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、
β体とγ体の混合物さらに好ましくはβ体が用いられ
る。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679
号等に記載の添加する直前に形成したものでも良いし、
通常の水洗工程を経たものでもいずれでも良いが、本発
明においては好ましくは通常の水洗工程を経たものが用
いられる。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,67
2,026号等に記載の方法で容易に形成できうる。粒
子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水
溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好まし
い。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数であ
る。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の
種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に
特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、よ
り好ましくは0.07μm以下が本発明に都合が良い。
微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが
粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましく、
特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。こ
こで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃
化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カー
ボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して
求め、粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を
有する円の直径と定義する。本発明において最も有効な
沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02
μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以
下である。
【0191】沃化銀微粒子乳剤は上述の粒子形成後、好
ましくは米国特許第2,614,929号等に記載の通
常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド
剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われ
る。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の
溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いp
I値に設定することが好ましい。保護コロイド剤として
は、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく
用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも
好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチ
ンを混合して用いると都合が良い場合がある。乳剤1k
gあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g
以下である。より好ましくは20g以上80g以下であ
る。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは
10g以上100g以下である。より好ましくは20g
以上80g以下である。ゼラチン量および/または銀量
は沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するのに適した値を選
択することが好ましい。
【0192】沃化銀微粒子乳剤を添加する際には、系の
撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回
転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発
生を防ぐために消泡剤の添加は効果的である。具体的に
は、米国特許第5,275,929号の実施例等に記述
されている消泡剤が用いられる。
【0193】第1シェル形成のさらに好ましい方法とし
て、従来の沃化物イオン供給法(フリーな沃化物イオン
を添加する方法)のかわりに米国特許第5、496、6
94号に記載の沃化物イオン放出剤を用いて、沃化物イ
オンを急激に生成せしめながら沃化銀を含むハロゲン化
銀相を形成することができる。
【0194】沃化物イオン放出剤は沃化物イオン放出調
節剤(塩基および/または求核試薬)との反応により沃
化物イオンを放出するが、この際に用いる求核試薬とし
ては好ましくは以下の化学種が挙げられる。例えば、水
酸化物イオン、亜硫酸イオン、ヒドロキシルアミン、チ
オ硫酸イオン、メタ重亜硫酸イオン、ヒドロキサム酸
類、オキシム類、ジヒドムキシベンゼン類、メルカプタ
ン類、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、アンモニア、ア
ミン類、アルコール類、尿素類、チオ尿素類、フェノー
ル類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、セミカルバジド
類、ホスフィン類、スルフィド類が挙げられる。塩基や
求核試薬の濃度、添加方法、また反応液の温度をコント
ロールすることにより沃化物イオンの放出速度、タイミ
ングをコントロールすることができる。塩基として好ま
しくは水酸化アルカリが挙げられる。沃化物イオンを急
激に生成せしめるのに用いる沃化物イオン放出剤及び沃
化物イオン放出調節剤の好ましい濃度範囲は1×10-7
〜20Mであり、より好ましくは1×10-5〜10M、
さらに好ましくは1×10-4〜5M、特に好ましくは1
×10-3〜2Mである。濃度が20Mを上回ると、分子
量の大きい沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出剤
の添加量が粒子形成容器の容量に対して多くなり過ぎる
ため好ましくない。また、1×10-7Mを下回ると沃化
物イオン放出反応速度が遅くなり、沃化物イオン放出剤
を急激に生成せしめるのが困難になるため好ましくな
い。
【0195】好ましい温度範囲は30〜80℃であり、
より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜6
0℃である。温度が80℃を上回る高温では一般に沃化
物イオン放出反応速度が極めて速くなり、また30℃を
下回る低温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極め
て遅くなるため、それぞれ使用条件が限られ好ましくな
い。
【0196】沃化物イオンの放出の際に塩基を用いる場
合、液pHの変化を用いても良い。この時、沃化物イオ
ンの放出速度、タイミングをコントロールするのに好ま
しいpHの範囲は2〜12であり、より好ましくは3〜
11、特に好ましくは5〜10、最も好ましくは調節後
のpHが7.5〜10.0である。pH7の中性条件下
でも水のイオン積により定まる水酸化物イオンが調節剤
として作用する。
【0197】また、求核試薬と塩基を併用しても良く、
この時もpHを上記の範囲でコントロールし、沃化物イ
オンの放出速度、タイミングをコントロールしても良
い。
【0198】上述した基盤および第1シェルを有する平
板粒子上に第2シェルを設ける。第2シェルの比率は好
ましくは全銀量に対して10モル%以上40モル%以下
であって、その平均沃化銀含有率が0モル%以上5モル
%以下である。より好ましくは第2シェルの比率は全銀
量に対して15モル%以上30モル%以下であって、そ
の平均沃化銀含有率が0モル%以上3モル%以下であ
る。基盤および第1シェルを有する平板粒子上への第2
シェルの成長は該平板粒子のアスペクト比を上げる方向
でも下げる方向でも良い。基本的には硝酸銀水溶液と臭
化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加す
ることにより第2シェルの成長は行なわれる。もしくは
臭化物を含むハロゲン水溶液を添加した後、硝酸銀水溶
液をシングルジェット法で添加しても良い。系の温度、
pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロ
ゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等は広範に変化しう
る。pBrについては、本発明においては該層の形成終
了時のpBrが該層の形成初期時のpBrよりも高くな
ることが好ましい。好ましくは該層の形成初期のpBr
が2.9以下であり該層の形成終了時のpBrが1.7
以上である。さらに好ましくは該層の形成初期のpBr
が2.5以下であり該層の形成終了時のpBrが1.9
以上である。最も好ましくは該層の形成初期のpBrが
2.3以下1以上である。最も好ましくは該層の終了時
のpBrが2.1以上4.5以下である。
【0199】(b1)工程で形成される部分には前述の
転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子の
エッジ部近傍に存在することが好ましい。エッジ部近傍
とは、平板粒子の六辺の外周部(エッジ部)とその内側
部分、すなわち(b1)工程で成長させた部分のことで
ある。
【0200】次に、(b2)工程について説明する。一
つ目の態様としては、頂点近傍のみをヨウ化物イオンに
より溶解する方法、二つ目の態様としては、銀塩溶液と
ヨウ化物塩溶液を同時に添加する方法、三つ目の態様と
しては、ハロゲン化銀溶剤を用いて頂点近傍のみを実質
的に溶解する方法、四つ目の態様としてはハロゲン変換
を介する方法がある。
【0201】一つ目の態様であるヨウ化物イオンにより
溶解する方法について説明する。基盤粒子にヨウ化物イ
オンを添加することで基盤粒子の各頂点部近傍が溶解し
て丸みを帯びる。続けて、硝酸銀溶液と臭化物溶液、ま
たは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液
を同時に添加すると粒子は更に成長して頂点近傍に転位
が導入される。この方法に関しては、特開平4−149
541号、および特開平9−189974号を参考に出
来る。
【0202】本態様において添加されるヨウ化物イオン
の総量は、該ヨウ化物イオン総モル数を基盤粒子の総銀
量モル数で除した値に100を掛けた値をI2(モル
%)とした時、基盤粒子のヨウ化銀含有率I1(モル
%)に対して、(I2−I1)が0以上8以下を満たすこ
とが本発明に従う効果的な溶解を得る上で好ましく、よ
り好ましくは0以上4以下である。本態様において添加
される溶液のヨウ化物イオンの濃度は低い方が好まし
く、具体的には0.2モル/リットル以下の濃度である
ことが好ましく、更に好ましくは0.1モル/リット
ル。また、ヨウ化物イオン添加時のpAgは8.0以上
が好ましく、更に好ましくは8.5以上である。
【0203】ヨウ化物イオンの添加による基盤粒子の頂
点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、
硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化
物とヨウ化物の混合液を同時に添加して粒子を更に成長
させ、頂点近傍に転位線を導入させることができる。
【0204】二つ目の態様である銀塩溶液とヨウ化物塩
溶液との同時添加による方法について説明する。基盤粒
子に対して銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を急速に添加する
ことで粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の
高いハロゲン化銀をエピタキシャル生成させることが出
来る。この際、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液の好ましい添
加速度は0.2分〜0.5分であり、更に好ましくは
0.5分から2分である。この方法に関しては、特開平
4−149541号に詳細に記載されているので、参考
にすることが出来る。
【0205】上記基盤粒子の頂点部へのエピタキシャル
生成に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸
銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶
液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に
成長させ、頂点近傍に転位線を導入させることができ
る。
【0206】三つ目の態様であるハロゲン化銀溶剤を用
いる方法について説明する。基盤粒子を含む分散媒にハ
ロゲン化銀溶剤を加えた後、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液
を同時添加すると、ハロゲン化銀溶剤により溶解した基
盤粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高い
ハロゲン化銀が優先的に成長することになる。この際、
銀塩溶液およびヨウ化物塩溶液は急速に添加する必要は
ない。この方法に関しては、特開平4−149541号
に詳細に記載されているので、これを参考に出来る。
【0207】上記の基盤粒子の頂点部へのヨウ化銀成長
に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶
液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液と
ヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長
させ、頂点近傍に転位線を導入させることができる。
【0208】次に、四つ目の態様であるハロゲン変換を
介する方法について説明する。基盤粒子にエピタキシャ
ル成長部位支持剤(以下、サイトダイレクターと呼
ぶ)、例えば特開昭58−108526号記載の増感色
素や、水溶性ヨウ化物の存在下で、硝酸銀溶液と塩化物
溶液を添加することにより、基盤粒子の頂点部に塩化銀
のエピタキシャルを形成した後、ヨウ化物イオンを添加
することで塩化銀をヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高
いハロゲン化銀へハロゲン変換する方法である。サイト
ダイレクターは増感色素、水溶性チオシアン酸イオン、
および水溶性ヨウ化物イオンが使用できるが、沃化物イ
オンが好ましい。ヨウ化物イオンの添加量は基盤粒子に
対して0.0005〜1モル%、さらには0.001〜
0.5モル%が好ましい。
【0209】ハロゲン変換については、例えば米国特許
第4142900号に記載されており、基盤の頂点部に
エピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンにより
選択的にハロゲン変換する詳細は、特開平4−1495
41号に記載されている。
【0210】上記の基盤粒子の頂点部のヨウ化銀相への
ハロゲン変換に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、また
は、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と
臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒
子を更に成長させ、頂点近傍に転位線を導入することが
できる。
【0211】(b2)工程により導入した転位線は平板
粒子のコーナー部近傍に存在することが好ましい。
【0212】次に、(b3)工程について説明する。基
盤粒子へのハロゲン化銀のエピタキシャル形成に関して
は、米国特許第4435501号に記載されているよう
に、基盤粒子表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノア
ザインデン、もしくは分光増感色素等のサイトダイレク
ターによって銀塩エピタキシャルを選択された部位、例
えば基盤粒子のエッジ、もしくはコーナーに形成するこ
とができる。また、特開平8−69069号では極薄平
板粒子基盤の選択された部位に銀塩エピタキシャルを形
成させ、このエピタキシャル相を最適な化学増感するこ
とで高感化を達成している。本発明においても、これら
の方法を用いて本発明の基盤粒子を高感化することは非
常に好ましい。サイトダイレクターは、アミノアザイン
デン、もしくは分光増感色素を用いても良いし、ヨウ化
物イオン、もしくはチオシアン酸イオンを用いることが
でき、目的に応じて使い分けることも出来るし、組み合
わせても良い。増感色素量、ヨウ化物イオン、およびチ
オシアン酸イオンの添加量を変化させることで、銀塩エ
ピタキシャルの形成部位を、基盤粒子のエッジ、あるい
はコーナーに限定させることが出来る。添加するヨウ化
物イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して0.0005
〜1.0モル%、好ましくは、0.001〜0.5モル
%である。また、チオシアン酸イオンの量は、基盤粒子
の銀量に対して、0.01〜0.2モル%、好ましく
は、0.02〜0.1モル%である。これらサイトダイ
レクター添加後に、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を添加し
て銀塩エピタキシャルを形成する。この際の、温度は、
40〜70℃が好ましく、45〜60℃が更に好まし
い。また、この際のpAgは7.5以下が好ましく、
6.5以下が更に好ましい。サイトダイレクターを用い
ることで、基盤粒子のコーナー部、もしくはエッジ部に
銀塩のエピタキシャルが形成される。こうして得た乳剤
を、特開平8−69069号のようにエピタキシャル相
に選択的に化学増感を施して高感化させても良いが、銀
塩エピタキシャル形成に引き続き、銀塩溶液とハロゲン
塩溶液を同時添加して更に成長させても良い。この際添
加するハロゲン塩水溶液は、臭化物塩溶液、もしくは、
臭化物塩溶液とヨウ化物塩溶液との混合液が好ましい。
またこの際の温度は、40〜80℃が好ましく、45〜
70℃が更に好ましい。また、この際のpAgは5.5
以上9.5以下が好ましく、6.0以上9.0以下が好
ましい。
【0213】(b3)工程において形成されるエピタキ
シャルは、基本的に(a)工程で形成した基盤粒子の外
部に基盤粒子とは異なる組成相が形成されていることを
特徴とする。エピタキシャルの組成は、AgCl、Ag
BrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、Ag
SCN等が好ましい。また、エピタキシャル層に特開平
8−69069号に記載されているような「ドーパント
(金属錯体)」を導入することはさらに好ましい。エピ
タキシャル成長の位置は、基盤粒子のコーナー部、エッ
ジ部、主平面部の少なくとも一部分でも良く、複数の個
所にまたがっても良い。コーナー部のみ、もしくは、エ
ッジ部のみ、もしくは、コーナー部とエッジ部の形態を
取ることが好ましい。
【0214】(b3)工程で形成されるエピタキシャル
部分には転位線が存在しなくても良いが、転位線が存在
することはさらに好ましい。転位線は基盤粒子とエピタ
キシャル成長部との接合部、もしくはエピタキシャル部
に存在することが好ましい。好ましい転位線の本数は、
前述の通りである。
【0215】エピタキシャル部には6シアノ金属錯体が
ドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のう
ち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウ
ム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。
金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-9
乃至10-2モルの範囲であることが好ましく、ハロゲン
化銀1モル当たり10-8乃至10-4モルの範囲であるこ
とがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に
溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性
を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコー
ル類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル
類、及びアミド類が含まれる。
【0216】金属錯体としては、下記式(A)で表され
る6シアノ金属錯体が特に好ましい。6シアノ金属錯体
は、高感度の感光材料が得られ、しかも生感光材料を長
期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果
を有する。
【0217】(A)[M(CN)6n- (式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、
ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3また
は4である。) 6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
【0218】 (A-1 ) [Fe(CN)64- (A-2 ) [Fe(CN)63- (A-3 ) [Ru(CN)64- (A-4 ) [Os(CN)64- (A-5 ) [Co(CN)63- (A-6 ) [Rh(CN)63- (A-7 ) [Ir(CN)63- (A-8 ) [Cr(CN)64-
【0219】6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和し
やすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイ
オンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アル
カリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオ
ン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオ
ン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウム
イオンが含まれる。
【0220】本発明に関する第3の乳剤、すなわち平行
な主平面が(100)面であり、塩化銀含有率が10モ
ル%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる平板状ハ
ロゲン化銀粒子について以下説明する。
【0221】本発明の第3の乳剤は全投影面積の50〜10
0%、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%が主
平面が(100)面である平均アスペクト比が2以上の
平板状粒子からなる。粒子厚みは0.01〜0.10μm、好ま
しくは0.02〜0.08μm、より好ましくは0.03〜0.07μmで
あり、アスペクト比は2〜100、好ましくは3〜50、より
好ましくは5〜30である。粒子厚みの変動係数は30%以
下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下であ
る。この変動係数が小さいほど、粒子厚みの単分散度が
高いことを示している。また、乳剤粒子の平均球相当径
は、好ましくは0.35μm未満である。
【0222】本発明の(100)平板状粒子の組成は塩
化銀含有率10モル%未満の塩沃臭化銀あるいは沃臭化
銀である。また、その他の銀塩、例えばロダン銀、硫化
銀、セレン化銀、テルル化銀、炭酸銀、リン酸銀、有機
酸銀等が別粒子として、あるいはハロゲン化銀粒子の一
部分として含まれていても良い。
【0223】AgX結晶中のハロゲン組成を調べる方法
としては、X線回折法が知られている。X線回折法につい
ては基礎分析化学講座24「X線回折」等に詳しく記載さ
れている。標準的には、CuのKβ線を線源としてAgX
(420)面の回折角度を粉末法により求める。
【0224】本発明の(100)平板状粒子のハロゲン
組成構造は、どのようなものでも良い。例えばコアとシ
ェルのハロゲン組成の異なる(コア/シェル)2構造を
有する粒子やコアと2つ以上のシェルを有する多重構造
の粒子が例として挙げられる。コアの組成としては臭化
銀が好ましいがこれに限られるものではない。また、シ
ェルの組成はコアよりも沃化銀含有率が高い方が好まし
い。
【0225】本発明の(100)平板状粒子は、平均沃
化銀含有率2.3モル%以上、かつ表面の平均沃化銀含
有率は8モル%以上であることが好ましい。また、沃化
銀含有率の粒子間の変動係数は20%未満であることが
より好ましい。表面沃化銀含有率は先述したXPSを用い
て測定することができる。
【0226】本発明の(100)平板状粒子は、一般的
には主平面が長方形であるが、角が欠落していたり、丸
みを帯びていてもよく、また粒子の側面が(111)面
であってもよい。
【0227】本発明の(100)平板状粒子の表面の晶
癖に占める(100)面比率は、80%以上、好ましくは9
0%以上であるが、それについては粒子の電子顕微鏡写真
を用いて統計的に見積もることができる。乳剤中のAg
X粒子における(100)平板比率が100%にほぼ近い場
合には、日本化学会紙1984、No.6、p942に記載の方法に
て上記見積もりを確認することもできる。
【0228】本発明の(100)平板状粒子は粒子形成
中に多価金属イオンのドープにより電子捕獲ゾーンが導
入されていることが好ましい。電子捕獲ゾーンは、多価
金属イオン含有濃度が該多価金属イオンをドープした部
分の銀に対して1×10-5モル/モルから1×10-3
ル/モルで、粒子体積の5%以上30%以下を占める部
分のことを言い、多価金属イオン含有濃度が5×10-5
モル/モルから5×10-4モル/モルであるとより好ま
しい。
【0229】多価金属イオン含有濃度は均一であること
が必要である。均一であるとは該金属イオンの粒子内へ
の導入を単位銀量当たり一定量で行い、かつ粒子形成に
用いる硝酸銀と同時期に多価金属イオンを粒子形成用反
応容器に導入することをいう。このときハロゲン溶液も
同時に添加されて良い。本発明の多価金属イオンを含む
化合物を水溶液として添加しても良いし、多価金属イオ
ンとなる化合物をドープまたは吸着させた微粒子を調製
し添加しても良い。
【0230】電子捕獲ゾーンは粒子内のどの部分にあっ
ても良い。また電子捕獲ゾーンが粒子内に2カ所以上あ
っても良い。
【0231】本発明に関する第4の乳剤、すなわちハロ
ゲン化銀粒子が平行な主平面が(111)面あるいは
(100)面であり、平均アスペクト比が2以上であっ
て、少なくとも80モル%以上の塩化銀を含有する(高
塩化銀と呼ぶ)平板状粒子について以下説明する。
【0232】高塩化銀で(111)粒子を製造するため
には特別の工夫が必要である。Weyの米国特許第43
99215号でアンモニアを用いて高塩化銀平板粒子を
製造する方法を用いてもよい。Maskaskyの米国
特許第5061617号明細書でチオシアン酸塩を用い
て高塩化銀平板粒子を製造する方法を用いてもよい。さ
らには以下に示した添加剤(晶相制御剤)を添加する方
法を用いてもよい。 特許番号 晶相制御剤 発明者 米国特許第4400463号 アザインデン類+ マスカスキー チオエーテルペプタイザ− 米国特許第4783398号 2−4−ジチアゾリジノン 御舩等 米国特許第4713323号 アミノピラゾロピリミジン マスカスキー 米国特許第4983508号 ビスピリジニウム塩 石黒等 米国特許第5185239号 トリアミノピリミジン マスカスキー 米国特許第5178997号 7−アザインドール系化合物 マスカスキー 米国特許第5178998号 キサンチン マスカスキー 特開昭64−70741号 色素 西川等 特開平3−212639号 アミノチオエーテル 石黒 特開平4−283742号 チオ尿素誘導体 石黒 特開平4−335632号 トリアゾリウム塩 石黒 特開平2−32号 ビスピリジニウム塩 石黒等 特願平7−146891号 モノピリジニウム塩 大関等 (111)平板粒子形成に関しては、前記表中に記載さ
れているように種々の晶相制御剤を用いることができる
が、特開平2−32号に記載された化合物(化合物例1
〜42)が好ましく、特願平6−333780号に記載
されている晶相制御剤1〜29が特に好ましい。
【0233】高塩化銀(111)平板粒子は2つの平行
な双晶面を形成することにより得られるが、双晶面の形
成は温度、分散媒(ゼラチン)、ハロゲン濃度等により
左右されるのでこれらの適当な条件を設定しなければな
らない。晶相制御剤を核形成時に存在させる場合にはゼ
ラチン濃度は0.1〜10質量%が好ましい。塩化物濃
度は0.01モル/リットル以上、好ましくは0.03
モル/リットル以上である。また、粒子を単分散化する
ためには、核形成に際して晶相制御剤を用いないのが好
ましいことが特開平8−184931号に開示されてい
る。晶相制御剤を核形成時に用いない場合にはゼラチン
濃度は0.03%〜10%、好ましくは0.05%〜
1.0%である。塩化物濃度は0.001モル/リット
ル〜1モル/リットル、好ましくは0.003モル/リ
ットル〜0.1モル/リットルである。核形成温度は2
℃〜90℃まで任意の温度を選べるが5℃〜80℃が好
ましく、特に5℃〜40℃が好ましい。
【0234】最初の核形成段階で平板粒子の核が形成さ
れるが、核形成直後には反応容器内には平板粒子以外の
核も多数含まれる。そのため、核形成後、熟成を行い、
平板粒子のみを残存させ他を消滅させる技術が必要とな
る。通常のオストワルド熟成を行うと、平板粒子核も溶
解消滅するため、平板粒子核が減少し、結果として得ら
れる平板粒子のサイズが増大してしまう。これを防止す
るために、晶相制御剤を添加する。特にフタル化ゼラチ
ンを併用することで、晶相制御剤の効果を高め、平板粒
子の溶解を防止できる。熟成中のpAgは特に重要であ
り、銀塩化銀電極に対して60〜130mVが好まし
い。次に、形成した核を物理熟成及び銀塩とハロゲン化
物の添加により、晶相制御剤存在下に成長させる。この
際には、塩化物濃度は5モル/リットル以下、好ましく
は0.05〜1モル/リットルである。粒子成長時の温
度は10℃〜90℃の範囲で選択できるが、30℃〜8
0℃の範囲が好ましい。晶相制御剤の全使用量は完成乳
剤中のハロゲン化銀1モルあたり、6×10-5モル以
上、特に3×10-4モル〜6×10-2モルが好ましい。
晶相制御剤は、ハロゲン化銀粒子の核形成時から物理熟
成、粒子成長途中のどの時期に添加してもよい。添加後
より(111)面が形成を開始する。晶相制御剤は予め
反応容器内に添加してもよいが、小サイズ平板粒子形成
する場合には、粒子成長とともに反応容器内に添加し、
その濃度を増大させるのが好ましい。
【0235】核形成時に使用した分散媒量が成長にとっ
て不足の場合には添加により補う必要がある。成長には
10g/リットル〜100g/リットルのゼラチンが存
在するのが好ましい。補うゼラチンとしてはフタル化ゼ
ラチンあるいはトリメリットゼラチンが好ましい。粒子
形成時のpHは任意であるが中性から酸性領域が好まし
い。
【0236】次に高塩化銀(100)平板粒子について
説明する。高塩化銀(100)平板粒子は(100)面
を主平面とした平板状粒子であり、該主平面の形状は、
角が欠落していても、丸みを帯びていてもよい。また、
粒子側面は(111)面であってもよい。
【0237】(100)主平面を有する平板状高塩化銀
乳剤粒子の形成法としては、ゼラチン水溶液のような分
散媒中に銀塩水溶液とハロゲン化物塩水溶液を攪拌しな
がら添加、混合することにより行うが、この時、例え
ば、特開平6−301129号、同6−347929
号、同9−34045号、同9−96881号では、ヨ
ウ化銀またはヨウ化物イオンを、あるいは、臭化銀また
は臭化物イオンを存在させ、塩化銀との結晶格子の大き
さの違いから核に歪みを生じさせ、螺旋転位の様な異方
成長性を付与する結晶欠陥を導入する方法が開示されて
いる。該螺旋転位が導入されると、低過飽和条件ではそ
の面での2次元核の形成が律速ではなくなるため、この
面での結晶化が進み、螺旋転位を導入することによって
平板状の粒子が形成される。ここで低過飽和条件とは臨
界添加時の好ましくは35%以下、より好ましくは2〜
20%を示す。該結晶欠陥が螺旋転位であると確定され
たわけでは無いが、転位の導入された方向、あるいは粒
子に異方成長性が付与される事から螺旋転位である可能
性が高いと考えられている。平板粒子をより薄くする為
には、導入された該転位保持が好ましい事が特開平8−
122954号、同9−189977号に開示されてい
る。
【0238】また、特開平6−347928号ではイミ
ダゾール類、3,5−ジアミノトリアゾール類を用いた
り、特開平8−339044号ではポリビニルアルコー
ル類を用いるなどして、(100)面形成促進剤を添加
して(100)平板粒子を形成する方法が開示されてい
る。
【0239】上記の(111)または(100)面を主
平面とする高塩化銀粒子の塩化銀含有量は、90モル%以
上が好ましく、95モル%以上が塩化銀であることが好
ましい。本発明の粒子はコア部とコア部を取り巻くシェ
ル部よりなる、いわゆるコア/シェル構造をしているこ
とが好ましい。コア部は90モル%以上が塩化銀である
ことが好ましい。コア部はさらに、ハロゲン組成の異な
る二つ以上の部分からなっていてもよい。シェル部は全
粒子体積の50%以下であることが好ましく、20%以
下であることが特に好ましい。シェル部はヨウ塩化銀も
しくは沃臭塩化銀であることが好ましい。シェル部は
0.5モル%から13モル%のヨードを含有することが
好ましく、1モル%から13モル%で含有することが特
に好ましい。ヨウ化銀の全粒子中の含有量は5モル%以
下が好ましく、1モル%以下が特に好ましい。臭化銀含
有率もコア部よりもシェル部が高いことが好ましい。臭
化銀含有率は20モル%以下が好ましく、5モル%以下
が特に好ましい。
【0240】上記高塩化銀粒子の平均粒子サイズ(平均
球相当直径)に特に制限はないが、好ましくは0.1μ
m〜0.8μm、特に好ましくは0.1μm〜0.6μ
mである。平均円相当直径は好ましくは0.2〜1.0
μmである。また、平均厚みは0.2μm以下、好まし
くは0.1μm以下、特に好ましくは0.06μm以下
である。全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、
平均アスペクト比2以上が好ましく、5以上20以下が
より好ましい。本発明のハロゲン化銀粒子の粒子サイズ
の分布は、多分散でも単分散でもよいが、単分散である
ことがより好ましい。特に全投影面積の50%以上を占
める平板粒子の円相当直径の変動係数が20%以下が好
ましい。
【0241】晶相制御剤が粒子形成後も粒子表面に存在
すると、増感色素の吸着や現像に影響を与える。そのた
め、晶相制御剤は粒子形成後に除去することが好まし
い。ただし、晶相制御剤を除去した場合、高塩化銀(1
11)平板粒子は、通常の条件では(111)面を維持
するのが困難である。したがって、増感色素等写真的に
有用な化合物で置換して粒子形態を保持することが好ま
しい。この方法については、特開平9−80656号、
特開平9−106026号、米国特許第5,221,6
02号明細書、同第5,286,452号、同第5,2
98,387号、同第5,298,388号、同第5,
176,992号等に記載されている。
【0242】上記方法により晶相制御剤は粒子から脱着
するが、脱着した晶相制御剤を水洗により乳剤外へ除去
するのが好ましい。水洗温度としては、保護コロイドと
して通常用いられるゼラチンが凝固しない温度で行うこ
とができる。水洗方法としては、フロキュレーション法
や限外ろ過法等の種々の公知技術を用いることができ
る。水洗温度は40℃以上が好ましい。また、晶相制御
剤は低pHで粒子より脱着が促進される。従って、水洗
工程のpHは粒子が過度に凝集しない限りの低いpHが
好ましい。
【0243】上記高塩化銀粒子には周期律表VIII属金
属、即ちオスミウム、イリジウム、ロジウム、白金、ル
テニウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、鉄から選
ばれた金属のイオンまたはその錯イオンを単独または組
み合わせて用いることができる。更にこれらの金属は、
複数種用いてもよい。
【0244】上記金属イオン提供化合物は、ハロゲン化
銀粒子形成時に分散媒になるゼラチン水溶液中、ハロゲ
ン化物水溶液中、銀塩水溶液中、またはその他の水溶液
中に添加するか、あるいは予め、金属イオンを含有させ
たハロゲン化銀微粒子の形でハロゲン化銀乳剤に添加
し、この乳剤を溶解させる等の手段によって本発明のハ
ロゲン化銀粒子に含有させることができる。また、金属
イオンを該粒子中に含有させるには、粒子形成前、粒子
形成、粒子形成直後のいずれかで行うことができるが、
この添加時期は、金属イオンを粒子のどの位置にどれだ
けの量含有させるかによって変えることができる。好ま
しくは、用いる全金属イオンの提供化合物のうち50モ
ル%以上、より好ましくは80モル%以上が、さらに好
ましくは100モル%がハロゲン化銀粒子表面から粒子
体積の50%以下に相当するまでの表面層に局在してい
るのが好ましい。この表面層の体積は好ましくは30%
以下である。金属イオンを表面層に局在させることは、
内部感度の上昇を抑制し、高感度を得るのに有利であ
る。こうしたハロゲン化銀粒子の表面層に集中させて金
属イオン提供化合物を含有せしめるには、例えば表面層
を除いた部分のハロゲン化銀粒子(コア)を形成した
後、表面層を形成するための水溶性銀塩溶液とハロゲン
化物水溶液の添加にあわせて金属イオン提供化合物を供
給することで行うことができる。
【0245】高塩化銀乳剤では、第VIII族金属以外に、
その乳剤粒子形成もしくは物理熟成の過程において種々
の多価金属イオン不純物を導入することができる。これ
らの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、
ハロゲン化銀1モルに対して、10-9〜10-2モルが好
ましい。
【0246】以下に、本発明の乳剤全般に関わる内容に
ついて説明する。
【0247】以上の本発明の乳剤の調製時に用いられる
保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層の
バインターとしては、ゼラチンを用いるのが有利である
が、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグ
ラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白
質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロー
ス誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘
導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部
分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアク
リル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ
ビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単
一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質
を用いることができる。ゼラチンとしては石灰処理ゼラ
チンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sc
i.Photo.Japan.No.16.P30(19
66)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いても
よく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用い
ることができる。好ましくは、アミノ基が95%以上修
飾されたコハク化ゼラチン、およびトリメリット化ゼラ
チン、または酸化処理ゼラチンである、また低分子量ゼ
ラチン、および低分子量酸化処理ゼラチンを用いること
も好ましい。さらに、分子量分布が28万以上の成分を
30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチン
を用いても良い。石灰処理ゼラチンは、その分子量に基
づいてサブα(低分子量)、α(分子量約10万)、β
(分子量約20万)、γ(分子量約30万)および大高
分子部分(ボイド:分子量30万より大)からなる。そ
れぞれの成分の比率、すなわち分子量分布は、国際的に
定められたPAGI法により測定される。更に詳しい説
明および製法は、特開平11−237704号に詳細に
記載されている。
【0248】本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新し
く用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。こ
の際の保護コロイドは上述した親水性コロイドおよびゼ
ラチンを用いることができる。この際、分子量分布が2
8万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含
んでいるゼラチンを用いることは好ましい。水洗の温度
は目的に応じて選べるが、5°C〜50℃の範囲で選ぶ
ことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2
〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3
〜8の範囲である。水洗時のpAg も目的に応じて選べる
が5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法とし
てヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離
法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いる
ことができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方
法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方
法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことがで
きる。
【0249】本発明で好ましく用いられる還元増感と
は、ハロゲン化銀に対して還元増感剤を添加する方法、
銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAg雰囲気下でハ
ロゲン化銀粒子を成長あるいは熟成させる方法、高pH
熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気下で成長
あるいは熟成させる方法のいずれかを選ぶこともでき
る。また、これらのうち2つ以上の方法を併用すること
もできる。これらの中では、特に、還元増感剤を添加す
る方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ま
しい方法である。
【0250】還元増感剤として第一錫塩、アスコルビン
酸およびその誘導体、ハイドロキノンおよびその誘導
体、カテコールおよびその誘導体、ヒドロキシルアミン
およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラ
ジンおよびその誘導体、パラフェニレンジアミンおよび
その誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸(二酸化チオ
尿素)、シラン化合物、ボラン化合物を挙げることがで
きる。本発明の還元増感にはこれら還元増感剤を選んで
用いることができ、また2種以上の化合物を併用するこ
ともできる。還元増感の方法に関しては米国特許第2,
518,698号、同第3,201,254号、同第
3,411,917号、同第3,779,777号、同
第3,930,867号に開示された方法や、還元剤の
使用方法に関しては、特公昭57−33572、同58
−1410、特開昭57−179835に開示された方
法を使用することができる。還元増感剤としてカテコー
ルおよびその誘導体、ヒドロキシルアミンおよびその誘
導体、ホルムアミジンスルフィン酸(二酸化チオ尿
素)、が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は
乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要がある
が、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-1モルの範囲
が適当である。
【0251】還元増感剤は水あるいはアルコール類、グ
リコール類、ケトン類、エステル類、アミド類などの溶
媒に溶かし粒子成長中に添加される。
【0252】本発明で用いることができるハロゲン化銀
溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第
3,531,289号、同3,574,628号、特開
昭54−1019号、同54−158917号等に記載
された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−824
08号、同55−77737号、同55−2982号等
に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−14
4319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒
素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲ
ン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された
(d)イミダゾール類、(e)アンモニア、(f)チオ
シアネート等があげられる。
【0253】特に好ましい溶剤としては、チオシアネー
ト、アンモニアおよびテトラメチルチオ尿素がある。ま
た用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例え
ばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1
モル当り1×10-4モル以上1×10-2モル以下であ
る。
【0254】本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、
脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在
させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする
場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感
剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加
することが好ましい。先述したように、粒子全体にドー
プする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部の
み、あるいはエピタキシャル部のみにドープする方法も
選べる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、S
c、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、
Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、P
t、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Bi
を用いることができる。これらの金属はアンモニウム
塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは
6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させるこ
とができる塩の形であれば添加できる。例えば、CdB
2 、CdCl2、Cd(NO32、Pb(NO
32、Pb(CH3 COO)2、K3[Fe(C
N)6]、(NH44[Fe(CN)6]、K3 IrCl
6、(NH43RhCl6、K4Ru(CN)6があげられ
る。配位化合物のリガンドとしてハロ、アコ、シアノ、
シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロ
シル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができ
る。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2
種あるいは3種以上を組み合せて用いてよい。
【0255】金属化合物は水またはメタノール、アセト
ンのような適当な有機溶媒に溶かして添加するのが好ま
しい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液
(例えば、HCl、HBr)あるいはハロゲン化アルカ
リ(例えば、KCl、NaCl、KBr、NaBr)を
添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸
・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成
前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えること
もできる。また水溶性銀塩(例えば、AgNO3)ある
いはハロゲン化アルカリ水溶液(例えば、NaCl、K
Br、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して
添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化
アルカリとは独立の溶液を用意し、粒子形成中の適切な
時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法
を組み合せるのも好ましい。
【0256】米国特許第3,772,031号に記載さ
れているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に添加す
る方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシ
アン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン
酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
【0257】本発明のハロゲン化銀粒子は硫黄増感、セ
レン増感、テルル増感、金増感、パラジウム増感又は貴
金属増感、還元増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳
剤の製造工程の任意の工程で施こすことができる。2種
以上の増感法を組み合せることは好ましい。どの工程で
化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製する
ことができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイ
プ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは
表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明の乳剤は
目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができるが、
一般に好ましいのは表面近傍に少なくとも一種の化学増
感核を作った場合である。
【0258】本発明で好ましく実施しうる化学増感の一
つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであ
り、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォト
グラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1
977年、(T.H.James、The Theor
y of the Photographic Pro
cess,4th ed,Macmillan,197
7)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用
いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロー
ジャー、120巻、1974年4月、12008;リサ
ーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、
13452、米国特許第2,642,361号、同第
3,297,446号、同第3,772,031号、同
第3,857,711、同第3,901,714号、同
第4,266,018号、および同第3,904,41
5号、並びに英国特許第1,315,755号に記載さ
れるようにpAg 5〜10、pH5〜8および温度30〜8
0℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジ
ウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せと
することができる。貴金属増感においては、金、白金、
パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることがで
き、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併
用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウム
クロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫
化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いること
ができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または
4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R
2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水
素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わ
す。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原
子を表わす。
【0259】具体的には、K2PdCl4 、(NH42
PdCl6、Na2PdCl4、(NH 42PdCl4、L
2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好
ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン
酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好まし
い。硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロ
ダニン系化合物および米国特許第3,857,711
号、同第4,266,018号および同第4,054,
457号に記載されている硫黄含有化合物を用いること
ができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感す
ることもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデ
ン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増
感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものと
して知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤
の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,4
11,914号、同第3,554,757号、特開昭5
8−126526号および前述ダフィン著「写真乳剤化
学」、138〜143頁に記載されている。本発明の乳
剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ま
しい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10-4〜1×
10-7モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5
×10-7モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲
は1×10-3から5×10-7である。チオシアン化合物
あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲は5×10
-2から1×10-6である。本発明のハロゲン化銀粒子に
対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1
モル当り1×10-4〜1×10-7モルであり、さらに好
ましいのは1×10-5〜5×10-7モルである。本発明
の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感があ
る。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物
を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレ
ノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,
N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノア
ミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セ
レン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両
方と組み合せて用いた方が好ましい場合がある。
【0260】本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸
化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、
金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する
化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および
化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子
を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここ
で生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化
銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよ
く、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよ
い。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物で
あってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾ
ン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2
・H22・3H2O、2NaCO3・3H22、Na42
7・2H22、2Na2SO4・H22・2H2O)、ペ
ルオキシ酸塩(例えば、K228、K 226、K22
8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O
2)C24]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH
・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C242
・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、
クロム酸塩(例えば、K2Cr27)のような酸素酸
塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩
(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩
(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオ
スルフォン酸塩がある。
【0261】また、有機の酸化剤としては、p−キノン
のようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過
酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−
ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)
が例として挙げられる。
【0262】本発明の好ましい酸化剤は、オゾン、過酸
化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォ
ン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。
前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ま
しい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす
方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法
のなかから選んで用いることができる。これらの方法は
粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることが
できる。
【0263】本発明に用いられる写真乳剤には、感光材
料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防
止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の
化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール
類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾー
ル類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミ
ダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプト
チアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカ
プトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール
類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニ
トロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類
(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);
メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例
えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;ア
ザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラア
ザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3
a,7)チトラアザインデン類)、ペンタアザインデン
類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、
多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許
第3,954,474号、同第3,982,947号、
特公昭52−28660号に記載されたものを用いるこ
とができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−21
2932号に記載された化合物がある。かぶり防止剤お
よび安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水
洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化
学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加
することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり
防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を
制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減
少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御する
など多目的に用いることができる。ハロゲン化銀吸着性
化合物としては上記かぶり防止剤等が好ましい。
【0264】米国特許第5747235、同57472
36、欧州特許第786692A1、同893731A
1、同893732A1、およびWO99/05570
に記載されたような、電子供与基と脱離基からなる有機
電子供与化合物を用いて増感することも好ましい。
【0265】本発明の感光性層は、支持体上に一層もし
くはそれ以上設けることができる。また、支持体の片側
に限らず両面に設けることができる。本発明の感光性層
は、黒白ハロゲン化銀写真感光材料(例えば、Xレイ感
材、リス型感材、黒白撮影用ネガフィルムなど)やカラ
ー写真感光材料(例えば、カラーネガフィルム、カラー
反転フィルム、カラーペーパー等)に用いることができ
る。さらに、拡散転写用感光材料(例えば、カラー拡散
転写要素、銀塩拡散転写要素)、熱現像感光材料(黒
白、カラー)等にも用いることができる。
【0266】以下、カラー写真感光材料について詳細に
説明するが、これらに限定されるものではない。
【0267】感光材料は、支持体上に青感色性層、緑感
色性層、赤感色性層のハロゲン化銀乳剤層の少なくとも
1層が設けられていればよく、ハロゲン化銀乳剤層およ
び非感光性層の層数および層順に特に制限はない。典型
的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じで
あるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成
る感色性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感
光材料であり、該感光性層は青色光、緑色光、および赤
色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多
層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に
単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、
緑感色性層、青感色性層の順に設置される。しかし、目
的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性
層中に異なる感光性層が挾まれたような設置順をもとり
得る。
【0268】上記のハロゲン化銀感光性層の間および最
上層、最下層には各層の中間層等の非感光性層を設けて
もよい。
【0269】該中間層には、特開昭61−43748
号、同59−113438号、同59−113440
号、同61−20037号、同61−20038号に記
載されるようなカプラー、DIR化合物が含まれていて
もよく、通常用いられるように混色防止剤を含んでいて
もよい。
【0270】各単位感光性層を構成する複数のハロゲン
化銀乳剤層は、西独特許第1,121,470号あるい
は英国特許第923,045号に記載されるように高感
度乳剤層、低感度乳剤層の2層構成を好ましく用いるこ
とができる。通常は、支持体に向かって順次感光度が低
くなる様に配列するのが好ましく、また各ハロゲン乳剤
層の間には非感光性層が設けられていてもよい。また、
特開昭57−112751号、同62−200350
号、同62−206541号、同62−206543号
に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳
剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよ
い。
【0271】具体例として支持体から最も遠い側から、
例えば低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層
(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性
層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光
性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/R
H/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/
RHの順等に設置することができる。
【0272】また特公昭55−34932号公報に記載
されているように、支持体から最も遠い側から青感光性
層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもでき
る。また特開昭56−25738号、同62−6393
6号明細書に記載されているように、支持体から最も遠
い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に設
置することもできる。
【0273】また特公昭49−15495号に記載され
ているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤
層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤
層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳
剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められ
た感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられ
る。このような感光度の異なる3層から構成される場合
でも、特開昭59−202464号に記載されているよ
うに、同一感色性層中において支持体より離れた側から
中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置
されてもよい。
【0274】その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中
感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高
感度乳剤層などの順に配置されていてもよい。
【0275】また、4層以上の場合にも、上記の如く配
列を変えてよい。
【0276】上記のように、それぞれの感光材料の目的
に応じて種々の層構成、配列を選択することができる。
【0277】本発明に関する感光材料には、前記の種々
の添加剤が用いられるが、それ以外にも目的に応じて種
々の添加剤を用いることができる。
【0278】これらの添加剤は、より詳しくはリサーチ
・ディスクロージャー Item17643(1978
年12月)、同 Item 18716(1979年1
1月)および同 Item 308119(1989年
12月)に記載されており、その該当個所を後掲の表に
まとめて示した。
【0279】 添加剤種類 RD17643 RD18716 RD308119 1 化学増感剤 23頁 648 頁右欄 996 頁 2 感度上昇剤 同 上 3 分光増感剤、 23〜24頁 648 頁右欄〜 996 右〜998 右 強色増感剤 649 頁右欄 4 増 白 剤 24頁 647 頁右欄 998 右 5 かぶり防止剤、 24〜25頁 649 頁右欄 998 右〜1000右 および安定剤 6 光吸収剤、 25〜26頁 649 頁右欄〜 1003左〜1003右 フィルター染料、 650 頁左欄 紫外線吸収剤 7 ステイン防止剤 25頁右欄 650 左〜右欄 1002右 8 色素画像安定剤 25頁 1002右 9 硬 膜 剤 26頁 651 頁左欄 1004右〜1005左 10 バインダー 26頁 同 上 1003右〜1004右 11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650 頁右欄 1006左〜1006右 12 塗布助剤、 26〜27頁 同 上 1005左〜1006左 表面活性剤 13 スタチック 27頁 同 上 1006右〜1007左 防 止 剤 14 マット剤 1008左〜1009左 また、ホルムアルデヒドガスによる写真性能の劣化を防
止するために、米国特許4,411,987号や同第
4,435,503号に記載されたホルムアルデヒドと
反応して、固定化できる化合物を感光材料に添加するこ
とが好ましい。
【0280】本発明には種々のカラーカプラーを使用す
ることができ、その具体例は前出のリサーチ・ディスク
ロージャーNo.17643、VII −C〜G、および同N
o.307105、VII −C〜Gに記載された特許に記
載されている。
【0281】イエローカプラーとしては、例えば米国特
許第3,933,501号、同第4,022,620
号、同第4,326,024号、同第4,401,75
2号、同第4,248,961号、特公昭58−107
39号、英国特許第1,425,020号、同第1,4
76,760号、米国特許第3,973,968号、同
第4,314,023号、同第4,511,649号、
欧州特許第249,473A号、等に記載のものが好ま
しい。
【0282】マゼンタカプラーとしては5−ピラゾロン
系及びピラゾロアゾール系の化合物が好ましく、米国特
許第4,310,619号、同第4,351,897
号、欧州特許第73,636号、米国特許第3,06
1,432号、同第3,725,067号、リサーチ・
ディスクロージャーNo.24220(1984年6
月)、特開昭60−33552号、リサーチ・ディスク
ロージャーNo.24230(1984年6月)、特開昭
60−43659号、同61−72238号、同60−
35730号、同55−118034号、同60−18
5951号、米国特許第4,500,630号、同第
4,540,654号、同第4,556,630号、国
際公開WO88/04795号に記載のものが特に好ま
しい。
【0283】シアンカプラーとしては、フェノール系及
びナフトール系カプラーが挙げられ、米国特許第4,0
52,212号、同第4,146,396号、同第4,
228,233号、同第4,296,200号、同第
2,369,929号、同第2,801,171号、同
第2,772,162号、同第2,895,826号、
同第3,772,002号、同第3,758,308
号、同第4,334,011号、同第4,327,17
3号、西独特許公開第3,329,729号、欧州特許
第121,365A号、同第249,453A号、米国
特許第3,446,622号、同第4,333,999
号、同第4,775,616号、同第4,451,55
9号、同第4,427,767号、同第4,690,8
89号、同第4,254,212号、同第4,296,
199号、特開昭61−42658号等に記載のものが
好ましい。
【0284】ポリマー化された色素形成カプラーの典型
例は、米国特許第3,451,820号、同第4,08
0,211号、同第4,367,282号、同第4,4
09,320号、同第4,576,910号、英国特許
第2,102,137号、欧州特許第341,188A
号に記載されている。
【0285】発色色素が適度な拡散性を有するカプラー
としては、米国特許第4,366,237号、英国特許
第2,125,570号、欧州特許第96,570号、
西独特許(公開)第3,234,533号に記載のもの
が好ましい。
【0286】発色色素の不要吸収を補正するためのカラ
ード・カプラーは、リサーチ・ディスクロージャーNo.
17643のVII −G項、同No.307105のVII −
G項、米国特許第4,163,670号、特公昭57−
39413号、米国特許第4,004,929号、同第
4,138,258号、英国特許第1,146,368
号に記載のものが好ましい。また、米国特許第4,77
4,181号に記載のカップリング時に放出された蛍光
色素により発色色素の不要吸収を補正するカプラーや、
米国特許第4,777,120号に記載の現像主薬と反
応して色素を形成しうる色素プレカーサー基を離脱基と
して有するカプラーを用いることも好ましい。
【0287】カップリングに伴って写真的に有用な残基
を放出する化合物もまた本発明で好ましく使用できる。
現像抑制剤を放出するDIRカプラーは、前述のRD1
7643、VII −F項及び同No.307105、VII −
F項に記載された特許、特開昭57−151944号、
同57−154234号、同60−184248号、同
63−37346号、同63−37350号、米国特許
第4,248,962号、同第4,782,012号に
記載されたものが好ましい。
【0288】現像時に画像状に造核剤もしくは現像促進
剤を放出するカプラーとしては、英国特許第2,09
7,140号、同第2,131,188号、特開昭59
−157638号、同59−170840号に記載のも
のが好ましい。また、特開昭60−107029号、同
60−252340号、特開平1−44940号、同1
−45687号に記載の現像主薬の酸化体との酸化還元
反応により、かぶらせ剤、現像促進剤、ハロゲン化銀溶
剤等を放出する化合物も好ましい。
【0289】その他、本発明の感光材料に用いることの
できる化合物としては、米国特許第4,130,427
号等に記載の競争カプラー、米国特許第4,283,4
72号、同第4,338,393号、同第4,310,
618号等に記載の多当量カプラー、特開昭60−18
5950号、特開昭62−24252号等に記載のDI
Rレドックス化合物放出カプラー、DIRカプラー放出
カプラー、DIRカプラー放出レドックス化合物もしく
はDIRレドックス放出レドックス化合物、欧州特許第
173,302A号、同第313,308A号に記載の
離脱後復色する色素を放出するカプラー、RD.No.1
1449、同24241、特開昭61−201247号
等に記載の漂白促進剤放出カプラー、米国特許第4,5
55,477号等に記載のリガンド放出カプラー、特開
昭63−75747号に記載のロイコ色素を放出するカ
プラー、米国特許第4,774,181号に記載の蛍光
色素を放出するカプラーが挙げられる。
【0290】本発明に使用するカプラーは、種々の公知
の分散方法により感光材料に導入できる。水中油滴分散
法に用いられる高沸点溶媒の例は、例えば、米国特許第
2,322,027号に記載されている。水中油滴分散
法に用いられる常圧での沸点が175℃以上の高沸点有
機溶剤の具体例としては、フタル酸エステル類(例え
ば、ジブチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレー
ト、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、デシルフタレ
ート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)
フタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェ
ニル)イソフタレート、ビス(1,1−ジエチルプロピ
ル)フタレート);リン酸またはホスホン酸のエステル
類(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジル
ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェ
ート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリ−2−エ
チルヘキシルホスフェート、トリドデシルホスフェー
ト、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロプロ
ピルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフェニルホ
スホネート);安息香酸エステル類(例えば、2−エチ
ルヘキシルベンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−
エチルヘキシル−p−ヒドロキシベンゾエート);アミ
ド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,
N−ジエチルラウリルアミド、N−テトラデシルピロリ
ドン);アルコール類またはフェノール類(例えば、イ
ソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミ
ルフェノール);脂肪族カルボン酸エステル類(例え
ば、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチ
ルアゼレート、グリセロールトリブチレート、イソステ
アリルラクテート、トリオクチルシトレート);アニリ
ン誘導体(例えば、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−
5−tert−オクチルアニリン);炭化水素類(例え
ば、パラフィン、ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナ
フタレン)を例示することができる。また補助溶剤とし
ては、例えば、沸点が約30℃以上、好ましくは50℃
以上かつ約160℃以下の有機溶剤が使用でき、典型例
としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオ
ン酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、
2−エトキシエチルアセテート、ジメチルホルムアミド
が挙げられる。
【0291】ラテックス分散法の工程、効果および含浸
用ラテックスの具体例は、例えば、米国特許第4,19
9,363号、西独特許出願(OLS)第2,541,
274号および、同第2,541,230号に記載され
ている。
【0292】本発明のカラー感光材料中には、フェネチ
ルアルコールや特開昭63−257747号、同62−
272248号、および特開平1−80941号に記載
の、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オ
ン、n−ブチル−p−ヒドロキシベンゾエート、フェノ
ール、4−クロル−3,5−ジメチルフェノール、2−
フェノキシエタノール、2−(4−チアゾリル)ベンゾ
イミダゾールのような各種の防腐剤もしくは防黴剤を添
加することが好ましい。
【0293】本発明は種々のカラー感光材料に適用する
ことができる。例えば、一般用もしくは映画用のカラー
ネガフィルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反
転フィルム、カラーペーパー、カラーポジフィルムおよ
びカラー反転ペーパーを代表例として挙げることができ
る。本発明は、カラーデュープ用フィルムにも特に好ま
しく使用できる。
【0294】本発明に使用できる適当な支持体は、例え
ば、前述のRD.No.17643の28頁、同No.
18716の647頁右欄から648頁左欄、および同
No.307105の879頁に記載されている。
【0295】本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の
全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下である
ことが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μ
m以下が更に好ましく、16μm以下が特に好ましい。
また膜膨潤速度T1/2が30秒以下が好ましく、20秒
以下がより好ましい。ここでの膜厚は、25℃相対湿度
55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味する。ま
た、膜膨潤速度T1/2は当該技術分野において公知の手
法に従って測定することができ、例えばエー・グリーン
(A.Green)らによりフォトグラフィック・サイ
エンス・アンド・エンジニアリング(Photogr.
Sci.Eng.)、19巻、2号、124〜129頁
に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用すること
により測定できる。なお、T1/2は発色現像液で30
℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の9
0%を飽和膜厚とし、飽和膜厚の1/2に到達するまで
の時間と定義する。
【0296】膜膨潤速度T1/2 は、バインダーとしての
ゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時
条件を変えることによって調整することができる。
【0297】本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の
反対側に、乾燥膜厚の総和が2μm〜20μmの親水性
コロイド層(バック層と称す)を設けることが好まし
い。このバック層には、例えば、前述の光吸収剤、フィ
ルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜
剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性
剤を含有させることが好ましい。このバック層の膨潤率
は150〜500%が好ましい。
【0298】本発明に従ったカラー写真感光材料は、前
述のRD.No.17643の28〜29頁、同No.
18716の651頁左欄〜右欄、および同No.30
7105の880〜881頁に記載された通常の方法に
よって現像処理することができる。
【0299】本発明の感光材料の現像処理に用いる発色
現像液は、好ましくは芳香族第一級アミン系発色現像主
薬を主成分とするアルカリ性水溶液である。この発色現
像主薬としては、アミノフェノール系化合物も有用であ
るが、p−フェニレンジアミン系化合物が好ましく使用
され、その代表例としては3−メチル−4−アミノ−
N,Nジエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N
−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、3−メ
チル−4−アミノ−N−エチル−N−β−メタンスルホ
ンアミドエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N
−エチル−β−メトキシエチルアニリン、及びこれらの
硫酸塩、塩酸塩もしくはp−トルエンスルホン酸塩など
が挙げられる。これらの中で、特に、3−メチル−4−
アミノ−N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリ
ンの硫酸塩が好ましい。これらの化合物は目的に応じ2
種以上併用することもできる。
【0300】発色現像液は、例えば、アルカリ金属の炭
酸塩、ホウ酸塩もしくはリン酸塩のようなpH緩衝剤、
塩化物塩、臭化物塩、沃化物塩、ベンズイミダゾール
類、ベンゾチアゾール類もしくはメルカプト化合物のよ
うな現像抑制剤またはかぶり防止剤を含むのが一般的で
ある。また必要に応じて、ヒドロキシルアミン、ジエチ
ルヒドロキシルアミン、亜硫酸塩、N,N−ビスカルボ
キシメチルヒドラジンの如きヒドラジン類、フェニルセ
ミカルバジド類、トリエタノールアミン、カテコールス
ルホン酸類の如き各種保恒剤;エチレングリコール、ジ
エチレングリコールのような有機溶剤;ベンジルアルコ
ール、ポリエチレングリコール、四級アンモニウム塩、
アミン類のような現像促進剤;色素形成カプラー、競争
カプラー、1−フェニル−3−ピラゾリドンのような補
助現像主薬;粘性付与剤;アミノポリカルボン酸、アミ
ノポリホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホノカル
ボン酸に代表されるような各種キレート剤を用いること
ができる。キレート剤としては、例えば、エチレンジア
ミン四酢酸、ニトリル三酢酸、ジエチレントリアミン五
酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチ
ルイミノジ酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−
ジホスホン酸、ニトリロ−N,N,N−トリメチレンホ
スホン酸、エチレンジアミン−N,N,N,N−テトラ
メチレンホスホン酸、エチレンジアミン−ジ(o−ヒド
ロキシフェニル酢酸)及びそれらの塩を代表例として挙
げることができる。
【0301】また、反転処理を実施する場合は、通常黒
白現像を行なってから発色現像する。この黒白現像液に
は、例えば、ハイドロキノンのようなジヒドロキシベン
ゼン類、例えば、1−フェニル−3−ピラゾリドンのよ
うな3−ピラゾリドン類、または例えば、N−メチル−
p−アミノフェノールのようなアミノフェノール類の公
知の黒白現像主薬を単独であるいは組み合わせて用いる
ことができる。これらの発色現像液及び黒白現像液のp
Hは、9〜12であることが一般的である。また、これ
らの現像液の補充量は、処理するカラー写真感光材料に
もよるが、一般に感光材料1平方メートル当たり3リッ
トル以下であり、補充液中の臭化物イオン濃度を低減さ
せておくことにより500ml以下にすることもでき
る。補充量を低減する場合には、処理液の空気との接触
面積を小さくすることによって液の蒸発、空気酸化を防
止することが好ましい。
【0302】処理槽での写真処理液と空気との接触面積
は、以下に定義する開口率で表わすことができる。即
ち、開口率=[処理液と空気との接触面積(cm2)]÷
[処理液の容量(cm3)]上記の開口率は0.1以下で
あることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.
05である。このように開口率を低減させる方法として
は、処理槽の写真処理液面に、例えば浮き蓋のような遮
蔽物を設ける方法に加えて、特開平1−82033号に
記載された可動蓋を用いる方法、特開昭63−2160
50号に記載されたスリット現像処理方法を挙げること
ができる。開口率を低減させることは、発色現像及び黒
白現像の両工程のみならず、後続の諸工程、例えば、漂
白、漂白定着、定着、水洗、安定化の全ての工程におい
て適用することが好ましい。また、現像液中の臭化物イ
オンの蓄積を抑える手段を用いることにより、補充量を
低減することもできる。
【0303】発色現像処理の時間は通常2〜5分の間で
設定されるが、高温高pHとし、かつ発色現像主薬を高
濃度に使用することにより、更に処理時間の短縮を図る
こともできる。
【0304】発色現像後の写真乳剤層は通常漂白処理さ
れる。漂白処理は定着処理と同時に行なわれてもよいし
(漂白定着処理)、個別に行なわれてもよい。更に処理
の迅速化を図るため、漂白処理後に漂白定着処理する処
理方法でもよい。さらに、二槽の連続した漂白定着浴で
処理すること、漂白定着処理の前に定着処理すること、
又は漂白定着処理後に漂白処理することも目的に応じ任
意に実施できる。漂白剤としては、例えば、鉄(III)の
ような多価金属の化合物、過酸類(特に、過硫酸ソーダ
は映画用カラーネガフィルムに適する)、キノン類、ニ
トロ化合物が用いられる。代表的漂白剤としては、鉄
(III)の有機錯塩、例えば、エチレンジアミン四酢酸、
ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン
四酢酸、メチルイミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパ
ン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸のような
アミノポリカルボン酸類との錯塩、または、例えば、ク
エン酸、酒石酸、リンゴ酸との錯塩を用いることができ
る。これらのうち、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)錯
塩、及び1,3−ジアミノプロパン四酢酸鉄(III)錯塩
をはじめとするアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩は、
迅速処理と環境汚染防止の観点から好ましい。さらに、
アミノボリカルボン酸鉄(III)錯塩は、漂白液において
も、漂白定着液においても特に有用である。これらのア
ミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩を用いた漂白液又は漂
白定着液のpHは通常4.0〜8であるが、処理の迅速
化のためにさらに低いpHで処理することもできる。
【0305】漂白液、漂白定着液及びそれらの前浴に
は、必要に応じて漂白促進剤を使用することができる。
有用な漂白促進剤の具体例は、次の明細書に記載されて
いる:例えば、米国特許第3,893,858号、西独
特許第1,290,812号、同第2,059,988
号、特開昭53−32736号、同53−57831
号、同53−37418号、同53−72623号、同
53−95630号、同53−95631号、同53−
104232号、同53−124424号、同53−1
41623号、同53−18426号、リサーチ・ディ
スクロージャーNo.17129号(1978号7月)
に記載のメルカプト基またはジスルフィド基を有する化
合物;特開昭51−140129号に記載のチアゾリジ
ン誘導体;特公昭45−8506号、特開昭52−20
832号、同53−32735号、米国特許第3,70
6,561号に記載のチオ尿素誘導体、西独特許第1,
127,715号、特開昭58−16235号に記載の
沃化物塩;西独特許第966,410号、同第2,74
8,430号に記載のポリオキシエチレン化合物類;特
公昭45−8836号に記載のポリアミン化合物;その
他特開昭49−40943号、同49−59644号、
同53−94927号、同54−35727号、同55
−26506号、同58−163940号記載の化合
物;臭化物イオン等が使用できる。なかでも、メルカプ
ト基またはジスルフィド基を有する化合物が促進効果が
大きい観点で好ましく、特に米国特許第3,893,8
58号、西独特許第1,290,812号、特開昭53
−95630号に記載の化合物が好ましい。更に、米国
特許第4,552,884号に記載の化合物も好まし
い。これらの漂白促進剤は感材中に添加してもよい。撮
影用のカラー感光材料を漂白定着するときに、これらの
漂白促進剤は特に有効である。
【0306】漂白液や漂白定着液には上記の化合物の他
に、漂白ステインを防止する目的で有機酸を含有させる
ことが好ましい。特に好ましい有機酸は、酸解離定数
(pKa)が2〜5である化合物で、具体的には、例え
ば、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸を挙げること
ができる。
【0307】定着液や漂白定着液に用いられる定着剤と
しては、例えば、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオエ
ーテル系化合物、チオ尿素類、多量の沃化物塩を挙げる
ことができる。このなかではチオ硫酸塩の使用が一般的
であり、特にチオ硫酸アンモニウムが最も広範に使用で
きる。また、チオ硫酸塩と、例えば、チオシアン酸塩、
チオエーテル系化合物、チオ尿素の併用も好ましい。定
着液や漂白定着液の保恒剤としては、亜硫酸塩、重亜硫
酸塩、カルボニル重亜硫酸付加物あるいは欧州特許第2
94,769A号に記載のスルフィン酸化合物が好まし
い。更に、定着液や漂白定着液には、液の安定化の目的
で、各種アミノポリカルボン酸類や有機ホスホン酸類の
添加が好ましい。
【0308】本発明において、定着液または漂白定着液
には、pH調整のためにpKaが6.0〜9.0の化合
物、好ましくはイミダゾール、1−メチルイミダゾー
ル、1−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール
の如きイミダゾール類を0.1〜10モル/リットル添
加することが好ましい。
【0309】脱銀工程の時間の合計は、脱銀不良が生じ
ない範囲で短い方が好ましい。好ましい時間は1分〜3
分、更に好ましくは1分〜2分である。また、処理温度
は25℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃である。
好ましい温度範囲においては脱銀速度が向上し、かつ処
理後のステイン発生が有効に防止される。
【0310】脱銀工程においては、撹拌ができるだけ強
化されていることが好ましい。撹拌強化の具体的な方法
としては、特開昭62−183460号に記載の感光材
料の乳剤面に処理液の噴流を衝突させる方法や、特開昭
62−183461号に回転手段を用いて撹拌効果を上
げる方法が挙げられる。更には、液中に設けられたワイ
パーブレードと乳剤面を接触させながら感光材料を移動
させ、乳剤表面を乱流化することによってより撹拌効果
を向上させる方法や、処理液全体の循環流量を増加させ
る方法が挙げられる。このような撹拌向上手段は、漂白
液、漂白定着液、定着液のいずれにおいても有効であ
る。撹拌の向上は、乳剤膜中への漂白剤および、定着剤
の供給を速め、結果として脱銀速度を高めるものと考え
られる。また、前記の撹拌向上手段は漂白促進剤を使用
した場合により有効であり、促進効果を著しく増加させ
たり、漂白促進剤により定着阻害作用を解消させること
ができる。
【0311】本発明の感光材料の現像に用いられる自動
現像機は、特開昭60−191257号、同60−19
1258号、同60−191259号に記載の感光材料
搬送手段を有していることが好ましい。前記の特開昭6
0−191257号に記載のとおり、このような搬送手
段は前浴から後浴への処理液の持込みを著しく削減で
き、処理液の性能劣化を防止する効果が高い。このよう
な効果は、各工程における処理時間の短縮や処理液補充
量の低減に特に有効である。
【0312】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料
は、脱銀処理後、水洗及び/又は安定工程を経るのが一
般的である。水洗工程での水洗水量は、感光材料の特性
(例えば、カプラーのような使用素材による)、用途、
更には、例えば、水洗水温、水洗タンクの数(段数)、
向流、順流のような補充方式、その他種々の条件に応じ
て広範囲に設定し得る。このうち、多段向流方式におけ
る水洗タンク数と水量の関係は、Journal of
the Society of Motion Pi
cture and Television Engi
neers 第64巻、P.248〜253(1955
年5月号)に記載の方法で求めることができる。
【0313】前記文献に記載の多段向流方式によれば、
水洗水量を大幅に減少し得るが、タンク内における水の
滞留時間の増加によりバクテリアが繁殖し、生成した浮
遊物が感光材料に付着するというような問題が生じる。
本発明のカラー感光材料の処理おいては、このような問
題の解決策として、特開昭62−288838号に記載
のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる
方法を極めて有効に用いることができる。また、特開昭
57−8542号に記載の、例えば、イソチアゾロン化
合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸
ナトリウムのような塩素系殺菌剤、その他、例えば、ベ
ンゾトリアゾールのような、堀口博著「防菌防黴剤の化
学」(1986年)三共出版、衛生技術会編「微生物の
滅菌、殺菌、防黴技術」(1982年)工業技術会、日
本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」(1986年)に
記載の殺菌剤を用いることもできる。
【0314】本発明の感光材料の処理おける水洗水のp
Hは、4〜9、好ましくは5〜8である。水洗水温およ
び水洗時間も、例えば感光材料の特性、用途に応じて種
々設定し得るが、一般には、15〜45℃で20秒〜1
0分、好ましくは25〜40℃で30秒〜5分の範囲が
選択される。更に、本発明の感光材料は、上記水洗に代
えて、直接安定液によって処理することもできる。この
ような安定化処理においては、特開昭57−8543
号、同58−14834号、同60−220345号に
記載の公知の方法はすべて用いることができる。
【0315】また、前記水洗処理に続いて、更に安定化
処理する場合もある。その例として、撮影用カラー感光
材料の最終浴として使用される、色素安定化剤と界面活
性剤を含有する安定浴を挙げることができる。色素安定
化剤としては、例えば、ホルマリンやグルタルアルデヒ
ドのようなアルデヒド類、N−メチロール化合物、ヘキ
サメチレンテトラミンあるいはアルデヒド亜硫酸酸付加
物を挙げることができる。この安定浴にも、各種キレー
ト剤や防黴剤を加えることができる。
【0316】上記水洗及び/又は安定液の補充に伴うオ
ーバーフロー液は脱銀工程のような他の工程において再
利用することもできる。
【0317】例えば自動現像機を用いた処理において、
上記の各処理液が蒸発により濃縮化する場合には、水を
加えて濃縮補正することが好ましい。
【0318】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料
には、処理の簡略化及び迅速化の目的で発色現像主薬を
内蔵させても良い。内蔵させるためには、発色現像主薬
の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば、米
国特許第3,342,597号記載のインドアニリン系
化合物、例えば、同第3,342,599号、リサーチ
・ディスクロージャーNo.14,850及び同No.
15,159に記載のシッフ塩基型化合物、同No.1
3,924に記載のアルドール化合物、米国特許第3,
719,492号に記載の金属塩錯体、特開昭53−1
35628号に記載のウレタン系化合物を挙げることが
できる。
【0319】本発明のハロゲン化銀カラー感光材料は、
必要に応じて、発色現像を促進する目的で、各種の1−
フェニル−3−ピラゾリドン類を内蔵しても良い。典型
的な化合物は、例えば、特開昭56−64339号、同
57−144547号、および同58−115438号
に記載されている。
【0320】本発明における各種処理液は、10℃〜5
0℃において使用される。通常は33℃〜38℃の温度
が標準的であるが、より高温にして処理を促進し処理時
間を短縮したり、逆により低温にして画質の向上や処理
液の安定性の改良を達成することができる。
【0321】また、本発明のハロゲン化銀感光材料は、
米国特許第4,500,626号、特開昭60−133
449号、同59−218443号、同61−2380
56号、欧州特許第210,660A2号などに記載さ
れている熱現像感光材料にも適用できる。
【0322】また、本発明のハロゲン化銀カラー写真感
光材料は、特公平2−32615号、実公平3−397
84号などに記載されているレンズ付きフィルムユニッ
トに適用した場合に、より効果を発現しやすく有効であ
る。
【0323】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。但し、本発明
はこの実施例に限定されるものではない。
【0324】(実施例1)以下の製法によりハロゲン化
銀乳剤Em―Aを調製した。 (Em―A)(高感度青感性層用乳剤) フタル化率97%のフタル化した分子量15000の低
分子量ゼラチン31.7g、KBr31.7gを含む水
溶液42.2Lを35℃に保ち激しく攪拌した。AgN
3、316.7gを含む水溶液1583mlとKB
r、221.5g、分子量15000の低分子量ゼラチ
ン52.7gを含む水溶液1583mlをダブルジェッ
ト法で1分間に渡り添加した。添加終了後、直ちにKB
r52.8gを加えて、AgNO3、398.2gを含
む水溶液2485mlとKBr、291.1gを含む水
溶液2581mlをダブルジェット法で2分間に渡り添
加した。添加終了後、直ちにKBr、47.8gを添加
した。その後、40℃に昇温し、充分熟成した。熟成終
了後、フタル化率97%のフタル化した分子量1000
00のゼラチン923gとKBr、79.2gを添加
し、AgNO3、5103gを含む水溶液15947m
lとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期
流量の1.4倍になるように流量加速して12分間に渡
り添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対し
て−60mVに保った。水洗した後、ゼラチンを加えp
H、5.7、pAg、8.8、乳剤1kg当たりの銀換
算の質量131.8g、ゼラチン質量64.1gに調整
し、種乳剤とした。フタル化率97%のフタル化ゼラチ
ン46g、KBr1.7gを含む水溶液1211mlを
75℃に保ち激しく攪拌した。前述した種乳剤を9.9
g加えた後、変成シリコンオイル(日本ユニカ−株式会
社製品、L7602)を0.3g添加した。H2SO4
添加してpHを5.5に調整した後、AgNO3、7.
0gを含む水溶液67.6mlとKBr水溶液をダブル
ジェット法で最終流量が初期流量の5.1倍になるよう
に流量加速して6分間に渡り添加した。この時、銀電位
を飽和カロメル電極に対して−20mVに保った。ベン
ゼンチオスルホン酸ナトリウム、2mgと二酸化チオ尿
素2mgを添加した後、AgNO3、144.5gを含
む水溶液、410mlとKIを7mol%含むKBrと
KIの混合水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期
流量の3.7倍になるように流量加速して56分間に渡
り添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対し
て−30mVに保った。AgNO3、45.6gを含む
水溶液121.3mlとKBr水溶液をダブルジェット
法で22分間に渡り添加した。この時、銀電位を飽和カ
ロメル電極に対して+20mVに保った。82℃に昇温
し、KBrを添加して銀電位を−80mVに調整した
後、0.037μmの粒子サイズのAgI微粒子乳剤を
KI質量換算で6.33g添加した。添加終了後、直ち
に、AgNO3、66.4gを含む水溶液206.2m
lを16分間に渡り添加した。添加初期の5分間はKB
r水溶液で銀電位を−80mVに保った。水洗した後、
PAGI法に従って測定した際に分子量28万以上の成分を
30%含むゼラチンを添加し40℃でpH、5.8、p
Ag、8.7に調整した。化合物11および12を添加
した後、60℃に昇温した。表2で示す増感色素を添加
した後に、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸
ナトリウム、N,N−ヂメチルセレノウレアおよび硝酸
カルシウムを添加し最適に化学増感した。化学増感終了
時に化合物13および化合物14を添加した。ここで、
最適に化学増感するとは、増感色素および各化合物をハ
ロゲン化銀1molあたり10-1から10-8molの添
加量範囲から選択したことを意味する。
【0325】
【化28】
【0326】
【化29】
【0327】
【化30】
【0328】
【化31】
【0329】得られた粒子を液体窒素で冷却しながら透
過電子顕微鏡で観察した結果、粒子周辺部には一粒子当
たり10本以上の転位線が観察された。本発明で用いた
ハロゲン化銀乳剤Em-A〜Pの特性を(表1)に示す。
【0330】
【表1】
【0331】表2に示した増感色素を含むEm-Aの一二層
目以降の色素の遷移双極子モーメントは以下の方法で求
めた。透明支持体上にEm-Aを塗布銀量0.5g/m2で塗布し
た試料の日立U−4000分光光度計と偏光子を用いて
p偏光およびs偏光の45度正反射強度(Ig(ν))を200n
m〜800nmの範囲で測定した。また石英の反射強度Iq(ν)
をも同様に測定した。石英の屈折率は次に示す式により
各波数(cm-1)に対して求められ、 n2 = 1+ 1.2409×1010/(1063592 −ν2) これより、石英の反射率(Rq(ν))は、 Rq(ν) = |(n − 1) / (n + 1)|2 で計算できるので、色素を吸着した粒子の反射率(Rg
(ν))は、 Rg(ν) = Rq(ν) × Ig(ν) / Iq(ν) より求めた。上記の反射率測定をp偏光、s偏光それぞれ
について行い、それらの反射スペクトルにクラマースー
クローニッヒ変換(以下K-K変換)を行うことによってp
偏光成分およびs偏光成分に対する吸収スペクトルAp
(ν)およびAs(ν)を得た。上記の測定を一層目色素のみ
を吸着させた乳剤(Em-1)で行うことにより、固有/一層
目色素のp偏光成分およびs偏光成分に対する吸収スペク
トルA1p(ν)およびA1s(ν)も同様に求めることが出来
る。二層目以降の色素のみの吸収スペクトルは p偏光成分 A2p(ν) = Ap(ν) − A1p(ν) s偏光成分 A2s(ν) = As(ν) − A1s(ν) と求めることが出来る。粒子表面と二層目以降の色素の
吸収極大波長における遷移双極子モーメントのなす角度
は θ2ps(ν) = tan-1( A2p(ν) / A2s(ν) − 1
/√2 ) として求めた。結果を表2に示した。また、一二層目を
合わせた色素吸収も粒子のみの吸収を差し引いて同様の
方法で求めた。一二層目を合わせた色素の吸収スペクト
ルは p偏光成分 A12p(ν) = Ap(ν) − Agp(ν) s偏光成分 A12s(ν) = As(ν) − Ags(ν) として表される。ここで、 A12p(ν)、 A12s(ν)はそれ
ぞれ一二層目を合わせた色素の吸収スペクトルのpおよ
びs偏光成分であり、 Agp(ν)およびAgs(ν)はそれぞれ
粒子のみの吸収スペクトルのpおよびs偏光成分である。
一二層目を合わせた色素吸収の平均の遷移双極子モーメ
ントとのなす角もA12p(ν)、 A12s(ν)を用いて上述の
方法と同様に求め、θ12ps(ν) の最大値を一二層目を
合わせた色素吸収の平均の遷移双極子モーメントとして
表2に示した。 θ12ps(ν) = tan -1( A12p(ν) / A12s(ν) −
1/√2 ) また、本発明の乳化物の調製処方の概略を以下に示す。
【0332】10%のゼラチン溶液に、カプラーを酢酸
エチルに溶解した溶液、高沸点有機溶媒、および界面活
性剤を添加し、混合したホモジナイザー(日本精機)を
用いて乳化し、乳化物を得る。
【0333】1)支持体 本実施例で用いた支持体は、下記の方法により作成し
た。ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー10
0質量部と紫外線吸収剤としてTinuvin P.3
26(チバ・ガイギーCiba−Geigy社製)2質
量部とを乾燥した後、300℃にて溶融後、T型ダイか
ら押し出し、140℃で3.3倍の縦延伸を行い、続い
て130℃で3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃
で6秒間熱固定して厚さ90μmのPEN(ポリエチレ
ンナフタレート)フィルムを得た。なおこのPENフィ
ルムにはブルー染料、マゼンタ染料及びイエロー染料
(公開技法:公技番号94−6023号記載のI−1、
I−4、I−6、I−24、I−26、I−27、II−
5)を適当量添加した。さらに、直径20cmのステン
レス巻き芯に巻き付けて、110℃、48時間の熱履歴
を与え、巻き癖のつきにくい支持体とした。 2)下塗層の塗設 上記支持体は、その両面にコロナ放電処理、UV放電処
理、さらにグロー放電処理をした後、それぞれの面にゼ
ラチン0.1g/m2、ソウジウムα−スルホジ−2−
エチルヘキシルサクシネート0.01g/m2、サリチ
ル酸0.04g/m2、p−クロロフェノール0.2g
/m2、(CH2=CHSO2CH2CH2NHCO)2CH
20.012g/m2、ポリアミド−エピクロルヒドリン
重縮合物0.02g/m2の下塗液を塗布して(10m
l/m2、バーコーター使用)、下塗層を延伸時高温面
側に設けた。乾燥は115℃、6分実施した(乾燥ゾー
ンのローラーや搬送装置はすべて115℃となってい
る)。
【0334】3)バック層の塗設 下塗後の上記支持体の片方の面にバック層として下記組
成の帯電防止層、磁気記録層さらに滑り層を塗設した。 3−1)帯電防止層の塗設 平均粒径0.005μmの酸化スズ−酸化アンチモン複
合物の比抵抗は5Ω・cmの微粒子粉末の分散物(2次
凝集粒子径約0.08μm)を0.2g/m2、ゼラチ
ン0.05g/m2、(CH2=CHSO2CH2CH2
HCO)2CH20.02g/m2、ポリ(重合度10)
オキシエチレン−p−ノニルフェノール0.005g/
2及びレゾルシンと塗布した。 3−2)磁気記録層の塗設 3−ポリ(重合度15)オキシエチレン−プロピルオキ
シトリメトキシシラン(15質量%)で被覆処理された
コバルト−γ−酸化鉄(比表面積43m2/g、長軸
0.14μm、単軸0.03μm、飽和磁化89emu
/g、Fe+2/Fe+3=6/94、表面は酸化アルミ酸
化珪素で酸化鉄の2質量%で処理されている)0.06
g/m2をジアセチルセルロース1.2g/m2(酸化鉄
の分散はオープンニーダーとサンドミルで実施した)、
硬化剤としてC25C(CH2 OCONH−C63(C
3)NCO)30.3g/m2を、溶媒としてアセト
ン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンを用いてバ
ーコーターで塗布し、膜厚1.2μmの磁気記録層を得
た。マット剤としてシリカ粒子(0.3μm)と3−ポ
リ(重合度15)オキシエチレン−プロピルオキシトリ
メトキシシラン(15質量%)で処理被覆された研磨剤
の酸化アルミ(0.15μm)をそれぞれ10mg/m
2となるように添加した。乾燥は115℃、6分実施し
た(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115
℃)。X−ライト(ブルーフィルター)での磁気記録層
のDB の色濃度増加分は約0.1、また磁気記録層の
飽和磁化モーメントは4.2A・m2/kg(emu/
g)、保磁力7.3×104A/m、角形比は65%で
あった。
【0335】3−3)滑り層の調製 ジアセチルセルロース(25mg/m2)、C613CH
(OH)C1020COOC4081(化合物a、6mg/
2)/C50101O(CH2CH2O)16H(化合物b、
9mg/m2)混合物を塗布した。なお、この混合物
は、キシレン/プロピレンモノメチルエーテル(1/
1)中で105℃で溶融し、常温のプロピレンモノメチ
ルエーテル(10倍量)に注加分散して作製した後、ア
セトン中で分散物(平均粒径0.01μm)にしてから
添加した。マット剤としてシリカ粒子(0.3μm)と
研磨剤の3−ポリ(重合度15)オキシエチレンプロピ
ルオキシトリメトキシシラン(15質量%)で被覆され
た酸化アルミ(0.15μm)をそれぞれ15mg/m
2となるように添加した。乾燥は115℃、6分行った
(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115
℃)。滑り層は、動摩擦係数0.06(5mmφのステ
ンレス硬球、荷重100g、スピード6cm/分)、静
摩擦係数0.07(クリップ法)、また後述する乳剤面
と滑り層の動摩擦係数も0.12と優れた特性であっ
た。 4)感光層の塗設 次に、前記で得られたバック層の反対側に、下記の組成
の各層を重層塗布し、カラーネガ感光材料である試料を
作成した。試料は(表1)、および(表2)に示すよう
な乳剤、増感色素等を使用して作成した。
【0336】(感光層の組成)各層に使用する素材の主
なものは下記のように分類されている; ExC:シアンカプラー UV :紫外線吸収剤 ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤 ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤 (具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付
けられ、後ろに化学式が挙げられている) 各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量
を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示
す。 第1層(第1ハレーション防止層) 黒色コロイド銀 銀 0.155 0.07μの表面かぶらせAgBrI(2) 銀 0.01 ゼラチン 0.87 ExC−1 0.002 ExC−3 0.002 Cpd−2 0.001 HBS−1 0.004 HBS−2 0.002 第2層(第2ハレーション防止層) 黒色コロイド銀 銀 0.066 ゼラチン 0.407 ExM−1 0.050 ExF−1 2.0×10-3 HBS−1 0.074 固体分散染料 ExF−2 0.015 固体分散染料 ExF−3 0.020 第3層(中間層) 0.07μのAgBrI(2) 0.020 ExC−2 0.022 ポリエチルアクリレートラテックス 0.085 ゼラチン 0.294
【0337】 第4層(低感度赤感乳剤層) 沃臭化銀乳剤M 銀 0.065 沃臭化銀乳剤N 銀 0.100 沃臭化銀乳剤O 銀 0.158 ExC−1 0.109 ExC−3 0.044 ExC−4 0.072 ExC−5 0.011 ExC−6 0.003 Cpd−2 0.025 Cpd−4 0.025 HBS−1 0.17 ゼラチン 0.80 第5層(中感度赤感乳剤層) 沃臭化銀乳剤K 銀 0.21 沃臭化銀乳剤L 銀 0.62 ExC−1 0.14 ExC−2 0.026 ExC−3 0.020 ExC−4 0.12 ExC−5 0.016 ExC−6 0.007 Cpd−2 0.036 Cpd−4 0.028 HBS−1 0.16 ゼラチン 1.18 第6層(高感度赤感乳剤層) 沃臭化銀乳剤P 銀 1.67 ExC−1 0.18 ExC−3 0.07 ExC−6 0.047 Cpd−2 0.046 Cpd−4 0.077 HBS−1 0.25 HBS−2 0.12 ゼラチン 2.12
【0338】 第7層(中間層) Cpd−1 0.089 固体分散染料ExF−4 0.030 HBS−1 0.050 ポリエチルアクリレートラテックス 0.83 ゼラチン 0.84 第8層(重層効果ドナー層(赤感層へ重層効果を与える層)) 沃臭化銀乳剤E 銀 0.560 Cpd−4 0.030 ExM−2 0.096 ExM−3 0.028 ExY−1 0.031 ExG−1 0.006 HBS−1 0.085 HBS−3 0.003 ゼラチン 0.58 第9層(低感度緑感乳剤層) 沃臭化銀乳剤G 銀 0.39 沃臭化銀乳剤H 銀 0.28 沃臭化銀乳剤I 銀 0.35 ExM−2 0.36 ExM−3 0.045 ExG−1 0.005 HBS−1 0.28 HBS−3 0.01 HSB−4 0.27 ゼラチン 1.39 第10層(中感度緑感乳剤層) 沃臭化銀乳剤F 銀 0.20 沃臭化銀乳剤G 銀 0.25 ExC−6 0.009 ExM−2 0.031 ExM−3 0.029 ExY−1 0.006 ExM−4 0.028 ExG−1 0.005 HBS−1 0.064 HBS−3 2.1×10-3 ゼラチン 0.44
【0339】 第11層(高感度緑感乳剤層) 沃臭化銀乳剤J 銀 1.200 ExC−6 0.004 ExM−1 0.016 ExM−3 0.036 ExM−4 0.020 ExM−5 0.004 ExY−5 0.008 ExM−2 0.013 Cpd−4 0.007 HBS−1 0.18 ポリエチルアクリレートラテックス 0.099 ゼラチン 1.11 第12層(イエローフィルター層) 黄色コロイド銀 銀 0.047 Cpd−1 0.16 固体分散染料ExF−5 0.010 固体分散染料ExF−6 0.010 HBS−1 0.082 ゼラチン 1.057 第13層(低感度青感乳剤層) 沃臭化銀乳剤B 銀 0.18 沃臭化銀乳剤C 銀 0.20 沃臭化銀乳剤D 銀 0.07 ExC−1 0.041 ExC−8 0.012 ExY−1 0.035 ExY−2 0.71 ExY−3 0.10 ExY−4 0.005 Cpd−2 0.10 Cpd−3 4.0×10-3 HBS−1 0.24 ゼラチン 1.41 第14層(高感度青感乳剤層) 表2記載の乳剤A 銀 0.75 ExC−1 0.013 ExY−2 0.31 ExY−3 0.05 ExY−6 0.062 Cpd−2 0.075 Cpd−3 1.0×10-3 HBS−1 0.10 ゼラチン 0.91 第15層(第1保護層) 0.07μのAgBrI(2) 銀 0.30 UV−1 0.21 UV−2 0.13 UV−3 0.20 UV−4 0.025 F−18 0.009 F−19 0.005 F−20 0.005 HBS−1 0.12 HBS−4 5.0×10-2 ゼラチン 2.3
【0340】 第16層(第2保護層) H−1 0.40 B−1(直径1.7μm) 5.0×10-2 B−2(直径1.7μm) 0.15 B−3 0.05 S−1 0.20 ゼラチン 0.75 更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・
防菌性、B−4ないしB−6、F−1ないしF−18及
び、鉄塩、鉛塩、金塩、白金塩、パラジウム塩、イリジ
ウム塩、ルテニウム塩、ロジウム塩が含有されている。
また、第8層の塗布液にハロゲン化銀1モル当たり8.
5×10-3グラム、第11層に7.9×10-3グラムの
カルシウムを硝酸カルシウム水溶液で添加し、試料を作
製した。更に帯電防止性を良くするためにW−1、W−
6、W−7、W−8を少なくとも1種含有しており、塗
布性を良くするためW−2、W−5を少なくとも1種含
有している。
【0341】有機固体分散染料の分散物の調製 下記、ExF−3を次の方法で分散した。即ち、水2
1.7ミリリットル及び5%水溶液のp−オクチルフェ
ノキシエトキシエトキシエタンスルホン酸ソーダ3ミリ
リットル並びに5%水溶液のp−オクチルフェノキシポ
リオキシエチレンエーテル(重合度10)0.5gとを
700ミリリットルのポットミルに入れ、染料ExF−
3を5.0gと酸化ジルコニウムビーズ(直径1mm)
500ミリリットルを添加して内容物を2時間分散し
た。この分散には中央工機製のBO型振動ボールミルを
用いた。分散後、内容物を取り出し、12.5%ゼラチ
ン水溶液8gに添加し、ビーズを濾過して除き、染料の
ゼラチン分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.4
4μmであった。同様にして、ExF−4、−5の固体
分散物を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.
24μm、0.52μmであった。ExF−2は欧州特
許出願公開(EP)第549,489A号明細書の実施
例1に記載の微小析出(Microprecipita
tion)分散方法により分散した。平均粒径は0.0
6μmであった。ExF−6の固体分散物を以下の方法
で分散した。水を18%含むExF−6のウェットケー
キ2800gに4000gの水及びW−2の3%溶液を
376g加えて攪拌し、ExF−6の濃度32%のスラ
リーとした。次にアイメックス(株)製ウルトラビスコ
ミル(UVM−2)に平均粒径0.5mmのジルコニア
ビーズを1700ml充填し、スラリーを通して周速約
10m/sec、吐出量0.5リットル/minで8時
間粉砕した。上記各層の形成に用いた化合物は、以下に
示すとおりである。
【0342】
【化32】
【0343】
【化33】
【0344】
【化34】
【0345】
【化35】
【0346】
【化36】
【0347】
【化37】
【0348】
【化38】
【0349】
【化39】
【0350】
【化40】
【0351】
【化41】
【0352】
【化42】
【0353】
【化43】
【0354】
【化44】
【0355】
【化45】
【0356】試料の評価法は以下の通り。富士フイルム
(株)製ゼラチンフィルターSC−39(カットオフ波
長が390nmである長波長光透過フィルター)と連続
ウェッジを通して1/100秒間露光した。現像は富士写真
フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下に
より行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流
さず、全て廃液タンクへ排出する様に改造を行った。こ
のFP−360Bは発明協会公開技法94−4992号
に記載の蒸発補正手段を搭載している。処理工程及び処
理液組成を以下に示す。 (処理工程) 工程 処理時間 処理温度 補充量* タンク容量 発色現像 3分 5秒 37.8 ℃ 20 ミリリットル 11.5リットル 漂 白 50秒 38.0 ℃ 5 ミリリットル 5リットル 定着 (1) 50秒 38.0 ℃ ── 5リットル 定着 (2) 50秒 38.0 ℃ 8 ミリリットル 5リットル 水 洗 30秒 38.0 ℃ 17 ミリリットル 3リットル 安定 (1) 20秒 38.0 ℃ ── 3リットル 安定 (2) 20秒 38.0 ℃ 15 ミリリットル 3リットル 乾 燥 1分30秒 60.0 ℃ *補充量は感光材料35mm幅1.1m当たり(24Ex.1本相当) 安定液及び定着液は(2)から(1)への向流方式であ
り、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導
入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液
の定着工程への持ち込み量、及び定着液の水洗工程への
持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たりそれぞ
れ2.5ミリリットル、2.0ミリリットル、2.0ミ
リリットルであった。また、クロスオーバーの時間はい
ずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含
される。上記処理機の開口面積は発色現像液で100c
2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100
cm2であった。以下に処理液の組成を示す。 (発色現像液) タンク液(g) 補充液(g) ジエチレントリアミン五酢酸 3.0 3.0 カテコール−3,5−ジスルホン酸 ジナトリウム 0.3 0.3 亜硫酸ナトリウム 3.9 5.3 炭酸カリウム 39.0 39.0 ジナトリウム−N,N−ビス(2−スル ホナートエチル)ヒドロキシルアミン 1.5 2.0 臭化カリウム 1.3 0.3 沃化カリウム 1.3mg − 4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3, 3a,7−テトラザインデン 0.05 − ヒドロキシルアミン硫酸塩 2.4 3.3 2−メチル−4−〔N−エチル−N− (β−ヒドロキシエチル)アミノ〕 アニリン硫酸塩 4.5 6.5 水を加えて 1.0リットル 1.0リットル pH(水酸化カリウムと硫酸にて調整) 10.05 10.18 (漂白液) タンク液(g) 補充液(g) 1,3−ジアミノプロパン四酢酸第二 鉄アンモニウム一水塩 113 170 臭化アンモニウム 70 105 硝酸アンモニウム 14 21 コハク酸 34 51 マレイン酸 28 42 水を加えて 1.0リットル 1.0リットル pH〔アンモニア水で調整〕 4.6 4.0 (定着(1)タンク液) 上記漂白タンク液と下記定着タンク液の5対95(容量比)混合液。
【0357】 (pH6.8) (定着(2)) タンク液(g) 補充液(g) チオ硫酸アンモニウム水溶液 240ミリリットル 720 ミリリットル (750g/リットル) イミダゾール 7 21 メタンチオスルホン酸アンモニウム 5 15 メタンスルフィン酸アンモニウム 10 30 エチレンジアミン四酢酸 13 39 水を加えて 1.0リットル 1.0リットル pH〔アンモニア水、酢酸で調整〕 7.4 7.45 (水洗水)水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロー
ムアンドハース社製アンバーライトIR−120B)
と、OH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライ
トIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカ
ルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/リット
ル以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリ
ウム20mg/リットルと硫酸ナトリウム150mg/
リットルを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の
範囲にあった。 (安定液) タンク液、補充液共通 (単位g) p−トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03 ポリオキシエチレン−p−モノノニルフェニルエーテル 0.2 (平均重合度10) 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン・ナトリウム 0.10 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05 1,2,4−トリアゾール 1.3 1,4−ビス(1,2,4−トリアゾール−1− イルメチル)ピペラジン 0.75 水を加えて 1.0リットル pH 8.5
【0358】試料101〜106に対して前記処理を施
した。処理済の試料を青色フィルターで濃度測定するこ
とにより写真性能の評価を行った。得られた結果を(表
2)に示す。
【0359】
【表2】
【0360】
【化46】
【0361】以上の結果から、本発明の化合物の組み合
わせにより高感度なハロゲン化銀写真感光材料が得られ
ることが分かる。 (実施例2) Em―Zの調製 フタル化率97%の分子量100000のフタル化ゼラ
チン、0.38g、KBr、0.99gを含む水溶液1
200mlを60℃に保ち、pHを2に調整し激しく攪
拌した。AgNO3、1.96gを含む水溶液とKB
r、1.97g、KI、0.172gを含む水溶液をダ
ブルジェット法で30秒間に渡り添加した。熟成終了
後、1g当たり35μmolのメチオニンを含有する分
子量100000のアミノ基をトリメリット酸で化学修
飾したトリメリット化ゼラチン12.8gを添加した。
pHを5.9に調整した後、KBr、2.99g、Na
Cl、6.2gを添加した。AgNO3、27.3gを
含む水溶液60.7mlとKBr水溶液をダブルジェッ
ト法で35分間に渡り添加した。この時、銀電位を飽和
カロメル電極に対して−50mVに保った。AgN
3、65.6gを含む水溶液とKBr水溶液をダブル
ジェット法で最終流量が初期流量の2.1倍になるよう
に流量加速して37分間に渡り添加した。この時、Em
−Aの調製で使用したAgI微粒子乳剤をヨウ化銀含有
量が6.5mol%になるように同時に流量加速して添
加し、かつ銀電位を−50mVに保った。二酸化チオ尿
素、1.5mgを添加した後、AgNO3、41.8g
を含む水溶液132mlとKBr水溶液をダブルジェッ
ト法で13分間に渡り添加した。添加終了時の銀電位を
+40mVになるようにKBr水溶液の添加を調整し
た。ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム、2mgを添加
した後、KBrを添加して銀電位を−100mVに調整
した。上述のAgI微粒子乳剤をKI質量換算で6.2
g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3、88.5
gを含む水溶液300mlを8分間に渡り添加した。添
加終了時の電位が+60mVになるようにKBr水溶液
の添加で調整した。水洗した後、ゼラチンを添加し40
℃でpH6.5、pAg、8.2に調整した。調製され
た乳剤粒子は、投影面積径3.18μm、アスペクト比
22の平板状粒子であった。化合物11および12を添
加した後、61℃に昇温した。表3に示した増感色素を
添加した後、K2IrCl6、チオシアン酸カリウム、塩
化金酸、チオ硫酸ナトリウム、N、N−ジメチルセレノ
ウレアを添加し最適に化学増感した。化学増感終了時に
化合物13および14を添加した。実施例1と同様の方
法で二層目色素のみおよび一二層目色素平均の遷移双極
子モーメント求め、表3に示した。表3の乳剤を実施例
1のEm-Jと置き換えて試料201〜205として塗布
し、緑色フィルター露光したこと以外は実施例1と同様
に写真感度を比較した。高感青感層は表2の試料101
のEm−Aを用いた。結果を(表3)に示す。なお、表
3中、「メタノール含量」は乳剤媒体に対する質量%で
ある。
【0362】
【表3】
【0363】以上の結果から、本発明の化合物の組み合
わせにより高感度なハロゲン化銀写真感光材料が得られ
ることが分かる。
【0364】
【発明の効果】本発明では、光吸収性能を向上させ、効
率的に写真感度を高めた、ハロゲン化銀写真乳剤及びハ
ロゲン化銀写真感光材料が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 滝沢 裕雄 神奈川県南足柄市中沼210番地 富士写真 フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2H023 CA06

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多
    層吸着しているハロゲン化銀写真乳剤において、二層目
    色素の分光吸収遷移双極子モーメントと粒子表面とのな
    す角が60°以下であることを特徴とするハロゲン化銀
    写真乳剤。
  2. 【請求項2】 ハロゲン化銀粒子表面上に増感色素が多
    層吸着しているハロゲン化銀写真乳剤において、一層目
    および二層目を合わせた色素吸収の平均の遷移双極子モ
    ーメントと粒子表面とのなす角が45°以下であること
    を特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
  3. 【請求項3】 前記多層吸着する増感色素の少なくとも
    1つが複数の色素発色団を有する化合物であることを特
    徴とする請求項1または2のハロゲン化銀写真乳剤。
  4. 【請求項4】 前記複数の色素発色団を有する化合物が
    下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項3
    に記載のハロゲン化銀写真乳剤。一般式(I) 【化1】 式中、D1及びD2は色素発色団を表わす。Laは連結
    基、又は単結合を表す。q1及びr1は各々1から100
    までの整数を表わす。M1は電荷均衡対イオンを表し、
    1は分子の電荷を中和するのに必要な数を表す。
  5. 【請求項5】 前記D2がハロゲン化銀に直接吸着せ
    ず、二層目の色素層を形成していることを特徴とする請
    求項4記載のハロゲン化銀写真乳剤。
  6. 【請求項6】 前記D2発色団が親水性部分を有し、L
    aが該親水性部分に結合していることを特徴とする請求
    項4または5に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のハロゲン化銀写真乳剤に
    おいて、a)二層目色素の分光吸収極大波長が一層目色
    素と同じか短波長であることb)二層目色素の光励起エ
    ネルギーが30%以上の効率で一層目色素に移動するこ
    とのいずれかを満足することを特徴とするハロゲン化銀
    写真乳剤。
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