JP2002343136A - 透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネル - Google Patents

透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネル

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JP2002343136A
JP2002343136A JP2001149613A JP2001149613A JP2002343136A JP 2002343136 A JP2002343136 A JP 2002343136A JP 2001149613 A JP2001149613 A JP 2001149613A JP 2001149613 A JP2001149613 A JP 2001149613A JP 2002343136 A JP2002343136 A JP 2002343136A
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film
thin film
conductive thin
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Toshiyuki Otani
寿幸 大谷
Hideo Murakami
英生 村上
Hidenori Sugihara
秀紀 杉原
Chikao Morishige
地加男 森重
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Toyobo Co Ltd
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 タッチパネルに用いた際のペン入力耐久性に
優れ、特に後述の摺動耐久試験に記載のポリアセタール
製のペンを使用し、5.0Nの荷重で10万回の摺動試
験でも透明導電性薄膜が破壊されない、透明導電性フィ
ルムまたは透明導電性シート、及びこれらを用いたタッ
チパネルを提供する。 【解決手段】 透明プラスチックフィルム基材上に、硬
化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導
電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムであっ
て、前記透明導電性薄膜は貫通孔を有し、該貫通孔の平
均最短距離が0.2〜3.0μmであることを特徴とす
る透明導電性フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は透明プラスチックフ
ィルム基材上に硬化物層及び透明導電性薄膜をこの順に
積層した透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、
及びこれらを用いたタッチパネルに関するものであり、
特にペン入力用タッチパネルに用いた際にペン摺動耐久
性に優れる透明導電性フィルムまたは透明導電性シー
ト、及びこれらを用いたタッチパネルに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】透明プラスチックフィルム基材上に、透
明でかつ抵抗が小さい導電性薄膜を積層した透明導電性
フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶
ディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイ
などのようなフラットパネルディスプレイや、タッチパ
ネルの透明電極など、電気、電子分野の用途に広く使用
されている。
【0003】近年、携帯情報端末やタッチパネル付きノ
ートパソコンの普及により、従来以上に耐ペン摺動性に
優れたタッチパネルが要求されるようになってきた。
【0004】タッチパネルにペン入力する際、固定電極
側の透明導電性薄膜と可動電極(フィルム電極)側の透
明導電性薄膜同士が接触するが、この際にペン入力時の
荷重で透明導電性薄膜にクラック、剥離などの破壊が生
じない、優れた耐ペン摺動性を有する透明導電性フィル
ムが必要とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
透明導電性フィルムは次のような課題を有していた。
【0006】厚さが120μm以下の透明プラスチック
フィルム基材上に透明導電性薄膜を形成し、粘着剤層で
他の透明基体と貼りあわせた透明導電性フィルムが、例
えば特開平2−66809号公報に開示されている。と
ころが、前記従来の透明導電性フィルムは、後述の摺動
耐久試験に記載のような、ポリアセタール製ペンを用い
て5.0Nの荷重で10万回の直線摺動試験を行った際
に、透明導電性薄膜に剥離が生じ、ペン入力に対する耐
久性が十分ではなかった。そのため、この剥離部の白化
により、タッチパネル付きディスプレイ用に使用した際
に表示品位が低下するという問題があった。
【0007】また、透明プラスチックフィルム基材上
に、有機ケイ素化合物の加水分解により形成させた下地
層を設け、さらに結晶質の透明導電性薄膜を積層した透
明導電性フィルムが、例えば特開昭60−131711
号公報、特開昭61−79647号公報、特開昭61−
183809号公報、特開平2−194943号公報、
特開平2−276630号公報、特開平8−64034
号公報などに提案されている。
【0008】しかしながら、これらの透明導電性フィル
ムは、結晶性の透明導電性薄膜であるため非常に脆く、
ポリアセタール製ペンを用いて5.0Nの荷重で10万
回の直線摺動試験を行った際に、透明導電性薄膜にクラ
ックが発生する。また、透明導電性薄膜をスパッタリン
グした後に200℃を超える温度で加熱処理を行う必要
があるため、加工コストが高くなるという欠点がある。
【0009】本発明の目的は、上記の従来の問題点に鑑
み、タッチパネルに用いた際のペン入力耐久性に優れ、
特にポリアセタール製のペンを用いて5.0Nの荷重で
10万回の摺動試験を行っても透明導電性薄膜が破壊さ
れない、透明導電性フィルムまたは透明導電性シート、
及びこれらを用いたタッチパネルを提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】タッチパネルにおいて、
ポリアセタール製のペンで5.0Nの荷重で10万回の
直線摺動試験を行うと、可動電極(例えば、透明導電性
フィルム)の透明導電性薄膜面と固定電極(例えば、透
明導電性ガラス)の透明導電性薄膜面とが激しく摩耗
し、透明導電性薄膜にクラックなどの欠陥が生じる。そ
のため、文字や記号などの入力形状を正しく認識できな
くなる。
【0011】そこで、このペン荷重による透明導電性薄
膜に印加される衝撃力を緩和する方法を鋭意検討した結
果、透明導電性薄膜に微小な孔を適切な距離で存在させ
ることで、5.0Nの荷重で10万回の直線摺動試験を
行った後でも劣化がないことを見出した。これは、摺動
試験により極めて微小なクラックが透明導電性薄膜に発
生したとしても、特定の距離に存在させた透明導電性薄
膜の孔のところでクラックの成長が止まり、これ以上ク
ラックが成長することがないためである。
【0012】本発明は、上記のような技術的思想に基づ
いてなされたものであって、前記の課題を解決すること
ができた透明導電性フィルム、透明導電性シートおよび
タッチパネルとは、以下の通りである。
【0013】すなわち、本発明の第1の発明は、透明プ
ラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成
成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積
層した透明導電性フィルムであって、前記透明導電性薄
膜は貫通孔を有し、該貫通孔間の平均最短距離が0.2
〜3.0μmであることを特徴とする透明導電性フィル
ムである。
【0014】第2の発明は、前記透明導電性薄膜がイン
ジウム−スズ複合酸化物からなることを特徴とする第1
の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0015】第3の発明は、前記透明導電性薄膜がスズ
−アンチモン複合酸化物からなることを特徴とする第1
の発明に記載の透明導電性フィルムである。
【0016】第4の発明は、前記透明導電性フィルムの
透明導電性薄膜面とは反対面に、ハードコート層が積層
されていることを特徴とする第1乃至3の発明に記載の
透明導電性フィルムである。
【0017】第5の発明は、前記ハードコート層が防眩
効果を有することを特徴とする第4の発明に記載の透明
導電性フィルムである。
【0018】第6の発明は、前記ハードコート層に低反
射処理を施したことを特徴とする第4または5の発明に
記載の透明導電性フィルムである。
【0019】第7の発明は、第1乃至6の発明に記載の
透明導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面に、
粘着剤を介して透明樹脂シートを貼り合わせることを特
徴とする透明導電性シートである。
【0020】第8の発明は、前記透明導電性薄膜を有す
る一対のパネル板を透明導電性薄膜が対向するようにス
ペーサーを介して配置してなるタッチパネルにおいて、
少なくとも一方のパネル板が第1乃至7の発明のいずれ
かに記載の透明導電性フィルムもしくは透明導電性シー
トからなることを特徴とするタッチパネルである。
【0021】
【作用】本発明の透明導電性フィルムにおいて、透明導
電性薄膜は貫通孔を有し、該貫通孔間の平均最短距離が
0.2〜3.0μmであることが必要である。貫通孔間
の平均最短距離の下限は0.3μmが好ましく、0.4
μmが特に好ましい。貫通孔間の平均最短距離が0.2
μm未満の場合には、クラックの成長抑制効果はある
が、透明導電性薄膜に多数の孔が存在するため、表面抵
抗率が高くなり好ましくない。一方、貫通孔間の平均最
短距離の上限は2.5μmが好ましく、2.0μmが特
に好ましい。貫通孔の平均最短距離が3.0μmを超え
る場合には、クラックの成長抑制効果が十分でないた
め、ペン入力耐久性が不十分となる。
【0022】また、前記透明導電性薄膜の貫通孔は、直
径が0.02〜0.50μmの円状の孔で、2〜500
個/25μm2の密度で存在させることが好ましい。直
径が0.02μm未満の孔では、クラックの成長抑制効
果が十分でない場合がある。一方、直径が0.50μm
を超える孔では、透明導電性フィルムが白濁しやすくな
るため好ましくない。また、孔の密度が2個/25μm
2未満では、クラックの成長抑制効果が十分でない場合
がある。孔の密度が500個/25μm2を超える場合
には、透明導電性薄膜面の多くの部分が貫通孔となり、
表面抵抗率が高くなる場合があり好ましくない。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の透明導電性フィルムは、
透明プラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主た
る構成成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの
順に積層した積層構成を有する。各構成部材について、
以下に詳しく説明する。
【0024】(透明プラスチックフィルム基材)本発明
で用いる透明プラスチックフィルム基材とは、有機高分
子を溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長
手方向及び/又は幅方向に延伸し、冷却、熱固定を施し
たフィルムであり、有機高分子としては、(1)ポリエ
チレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィル
ム、(2)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン
−2,6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレー
トなどのポリエステルフィルム、(3)ナイロン6、ナ
イロン4、ナイロン66、ナイロン12、芳香族ポリア
ミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサ
ルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネ
ート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポ
リ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアル
コール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィ
ド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジ
オタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマーな
どが挙げられる。
【0025】これらの有機高分子のなかで、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポ
リエチレン−2,6−ナフタレート、シンジオタクチッ
クポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボ
ネート、ポリアリレートなどが好適である。また、これ
らの有機高分子は他の有機重合体の単量体を少量共重合
したり、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
【0026】本発明で用いる透明プラスチックフィルム
基材の厚みは、10μmを越え、300μm以下の範囲
であることが好ましく、70〜260μmの範囲が特に
好ましい。プラスチックフィルムの厚みが10μm以下
では機械的強度が不足し、特にタッチパネルに用いた際
にペン入力に対する変形が大きくなり過ぎ、耐久性が不
十分となる。一方、厚みが300μmを越えると、タッ
チパネルに用いた際に、フィルムを変形させるためのペ
ン荷重が大きくなり、好ましくない。
【0027】本発明で用いる透明プラスチックフィルム
基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィル
ムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外
線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理などの表面活
性化処理を施してもよい。
【0028】(硬化物層)本発明において、透明プラスチ
ックフィルム基材上に積層する硬化物層は、硬化型樹脂
を主たる構成成分とする。前記硬化型樹脂は、加熱、紫
外線照射、電子線照射などのエネルギー印加により硬化
する樹脂であれば特に制限はなく、シリコーン樹脂、ア
クリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン
樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられ
る。また、生産性の観点から紫外線硬化型樹脂を主成分
とすることが好ましい。
【0029】本発明の紫外線硬化型樹脂としては、例え
ば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エス
テルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシア
ネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル
酸のヒドロキシアルキルエステルなどから合成されるよ
うな多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げる
ことができる。必要に応じてこれらの多官能性の樹脂に
単官能性の単量体、例えば、ビニルピロリドン、メチル
メタクリレート、スチレンなどを加えて共重合させるこ
とができる。
【0030】紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤
を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線
を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に制限
なく使用することができ、このような光重合開始剤とし
ては、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、
ベンゾフェノン類などを挙げることができる。光重合開
始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100重量部当たり
通常1〜5重量部である。
【0031】また、本発明で使用する硬化物層は、主た
る構成成分である硬化型樹脂のほかに、硬化型樹脂に非
相溶な樹脂を併用することが好ましい。マトリックスの
硬化型樹脂に非相溶な樹脂を少量併用することで、硬化
型樹脂中で相分離が起こり非相溶樹脂を粒子状に分散さ
せることができる。この非相溶樹脂の分散粒子により、
硬化物表面に凹凸を形成させることができる。
【0032】硬化型樹脂が前記の紫外線硬化型樹脂の場
合、非相溶樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリオレフ
ィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが例
示される。
【0033】前記の高分子量のポリエステル樹脂は、二
価アルコールと二価カルボン酸を重合することにより得
られる非結晶性の飽和ポリエステル樹脂であり、上記の
紫外線硬化型樹脂と共通の溶媒に溶解することができる
ものである。
【0034】前記の二価アルコールとしては、例えば、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−
ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘ
キサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチル
グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水
素化ビスフェノールAなどを挙げることができる。
【0035】また、前記の二価カルボン酸としては、例
えば、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、無水
フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無
水フタル酸などを挙げることができる。
【0036】溶媒に対する溶解性が不十分とならない範
囲で、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトール
のような三価以上のアルコール、及び、無水トリメリッ
ト酸や無水ピロメリット酸のような三価以上のカルボン
酸を共重合することができる。
【0037】本発明において硬化物層の主たる構成成分
である紫外線硬化型樹脂と高分子量のポリエステル樹脂
との配合割合は、紫外線硬化型樹脂100重量部当たり
ポリエステル樹脂0.1〜20重量部であることが好ま
しく、さらに好ましくは0.2〜10重量部、特に好ま
しくは0.5〜5重量部である。
【0038】前記ポリエステル樹脂の配合量が紫外線硬
化型樹脂100重量部当たり0.1重量部未満である
と、硬化物層表面に形成される突起数が少なくなり好ま
しくない。一方、前記ポリエステル樹脂の配合量が紫外
線硬化型樹脂100重量部当たり20重量部を超える
と、この硬化物層の強度が低下しやすくなる。さらに、
ポリエステル樹脂は紫外線硬化型樹脂と屈折率に差異が
あるため、硬化物層のヘーズ値が上昇し透明性を悪化さ
せる傾向があるので好ましくない。しかしながら、高分
子量のポリエステル樹脂の分散粒子による透明性の悪化
を積極的に利用し、ヘーズ値の高いフィルムを防眩フイ
ルムとして使用することができる。
【0039】前記の紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤及
び高分子量のポリエステル樹脂を、それぞれに共通の溶
剤に溶解して塗布液を調製する。使用する溶剤には特に
制限はなく、例えば、エチルアルコール、イソプロピル
アルコールなどのようなアルコール系溶剤、酢酸エチ
ル、酢酸ブチルなどのようなエステル系溶剤、ジブチル
エーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど
のようなエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シ
クロヘキサノンなどのようなケトン系溶剤、トルエン、
キシレン、ソルベントナフサなどのような芳香族炭化水
素系溶剤などを単独に、あるいは混合して使用すること
ができる。
【0040】塗布液中の樹脂成分の濃度は、コーティン
グ法に応じた粘度などを考慮して適切に選択することが
できる。通常は、塗布液中に紫外線硬化型樹脂、光重合
開始剤及び高分子量のポリエステル樹脂の合計量が占め
る割合は20〜80重量%である。また、この塗布液に
は、必要に応じてその他の公知の添加剤、例えば、シリ
コーン系レベリング剤などを添加することができる。
【0041】前記硬化物層用塗布液は、透明プラスチッ
クフイルム基材上にコーティングされる。コーティング
法には特に制限はなく、バーコート法、グラビアコート
法、リバースコート法などの従来から知られている方法
を使用することができる。コーティングされた塗布液
は、次の乾燥工程で溶剤が蒸発除去される。この工程
で、塗布液中で均一に溶解していた高分子量のポリエス
テル樹脂は微粒子状分散体となって紫外線硬化型樹脂中
に析出する。塗膜が乾燥した後、プラスチックフイルム
には、さらに紫外線が照射され、紫外線硬化型樹脂が架
橋・硬化して硬化物層を形成する。この硬化の工程で、
高分子量のポリエステル樹脂の微粒子状分散体は硬化物
層中に固定され、また、硬化物層の表面に前記微粒子状
分散体に起因する突起を形成する。
【0042】また、硬化物層の厚みは0.1〜15μm
の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜
10μmの範囲であり、特に好ましくは1〜8μmの範
囲である。硬化物層の厚みが0.1μmよりも薄い場合
には、後述する突起が十分に形成されず、一方15μm
よりも厚い場合には生産性の観点から好ましくない。
【0043】(透明導電性薄膜)本発明で用いる透明導
電性薄膜としては、透明性及び導電性をあわせもつ材料
であれば特に制限はないが、酸化インジウム、酸化ス
ズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−ア
ンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、
インジウム−亜鉛複合酸化物、銀および銀合金、銅およ
び銅合金、金等が単層もしくは2層以上の積層構造した
ものが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加
工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物もしくは
スズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0044】また、これらの透明導電性薄膜の抵抗率や
透明性を調整するために、他の構成成分として、酸化チ
タン、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化ニオブ、
酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、
酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アン
チモン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化サマリウ
ムなどを含有させてもよい。但し、これらの金属酸化物
の含有量は主成分に対して合計で10重量%以下にする
ことが好ましい。
【0045】透明導電性薄膜の膜厚は4〜800nmの
範囲が好ましく、特に好ましくは5〜500nmであ
る。透明導電性薄膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連
続した薄膜になりにくく良好な導電性を示しにくくな
る。一方、800nmよりも厚い場合、透明性が低下し
やすくなる。
【0046】本発明における透明導電性薄膜の成膜方法
としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、
イオンプレーティング法、スプレー法などが知られてお
り、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いる
ことが出来る。
【0047】例えば、スパッタリング法の場合、酸化物
ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるい
は、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等
が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒
素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照
射、イオンアシスト等の手段を併用してもよい。また、
必要に応じて、基板に直流、交流、高周波などのバイア
スを印加してもよい。
【0048】また、透明プラスチックフィルムに透明導
電性薄膜を成膜する際の温度は、150℃以下とするこ
とが好ましい。成膜時の温度が150℃を越えるように
するためには、プラスチックフィルムの送り速度を極端
に遅くする必要があり、生産性が低下し工業的に好まし
くない。
【0049】また、スパッタリングを行う際の真空度
は、0.01〜10Paの範囲で行うのが好ましい。真
空度が0.01Paを超える高真空下では、安定な放電
が出来ないため、スパッタリングが安定しない。一方、
10Pa未満の低真空下でも、やはり安定な放電が出来
ないため、スパッタリングが安定しない。また、蒸着
法、CVD法などの他の方法においても同様である。
【0050】透明導電性フィルムの透明導電性薄膜表面
での光の反射率を低減させ、光線透過率を向上させるた
めに、透明導電性薄膜の屈折率とは異なる屈折率を有す
る材料を、透明導電性薄膜とプラスチックフィルムの間
に単層もしくは2層以上に積層することが好ましい。単
層構造の場合、透明導電性薄膜よりも小さな屈折率を有
する材料を用いるのが好ましい。また、2層以上の多層
構造とする場合は、ハードコート層と隣接する層は、ハ
ードコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用い、
透明導電性薄膜の下の層にはこれよりも小さな屈折率を
有する材料を選ぶのがよい。このような低反射処理を構
成する材料としては、有機材料でも無機材料でも上記の
屈折率の関係を満足すれば特に限定されない。例えば、
CaF2、MgF2、NaAlF4、SiO2、ThF4
ZrO2、Nd23、SnO2、TiO2、CeO2、Zn
S、In23、などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0051】(透明導電性薄膜への貫通孔の形成)透明
導電性薄膜に上記の貫通孔を設ける方法は特に限定され
ないが、例えば、(1)公知の方法で作製した透明導電
性フィルムと金属電極との間に電圧を印加し、微弱放電
により透明導電性薄膜に孔を設ける方法、(2)微細な
レーザーを透明導電性薄膜面に照射し該薄膜面に孔を設
ける方法、(3)揮発成分を含有する硬化物層上に透明
導電性薄膜を成膜した後、加熱処理を行い硬化物層中の
揮発成分を蒸発させ、その際の蒸気圧により透明導電性
薄膜に孔を設ける方法、などが挙げられる。これらの方
法のうち、工業的な観点から、上記(3)の方法が好ま
しい。
【0052】上記(3)の方法において、硬化物層中の
揮発成分としては、前記の硬化物層を塗工する際に用い
た塗工液の溶剤や紫外線硬化反応に寄与しなかった残留
の光重合開始剤およびその副生成物などが挙げられる。
【0053】硬化物層中の揮発成分を蒸発させるために
は、加熱処理を行うことが好ましい。加熱方式として
は、熱風加熱、赤外線ヒーターによる加熱、高周波誘導
加熱、マイクロ波加熱などの方式を用いるのが好まし
い。
【0054】また、加熱処理温度は、150〜200℃
とするのが好ましい。150℃未満の温度では、揮発成
分の蒸発が十分でないために、透明導電性薄膜に形成さ
れる孔が十分でなくなる。また、200℃を超える温度
では孔の平均最短距離が短くなりやすい。すなわち、揮
発成分の蒸発量が多くなり、透明導電性薄膜における孔
全体の面積比率が増加するため、表面抵抗率が高くなり
やすくなる。さらに、プラスチックフィルムの平面性を
維持するのが困難となる傾向がある。
【0055】(その他の好適な実施形態)透明導電性薄
膜と硬化物層の付着力を向上するために、硬化物層を表
面処理することが有効である。具体的な手法としては、
カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加するため
にグローまたはコロナ放電を照射する放電処理法、アミ
ノ基、水酸基、カルボニル基などの極性基を増加させる
ために酸またはアルカリで処理する化学薬品処理法など
が挙げられる。
【0056】また、タッチパネルとした際の最外層(ペ
ン入力面)の耐擦傷性をさらに向上させるために、透明
導電性フィルムの透明導電性薄膜面とは反対面(タッチ
パネルとした際の最外層のペン入力面)に、ハードコー
ト層を設けることが好ましい。前記ハードコート層の硬
度は、鉛筆硬度で2H以上とすることが好ましい。2H
よりも低い硬度では、透明導電性フィルムのハードコー
ト層としては耐擦傷性の点で不十分である。
【0057】前記ハードコート層の厚みは0.5〜10
μmであることが好ましい。厚みが0.5μm未満で
は、耐擦傷性が不十分となりやすく、10μmよりも厚
い場合には生産性の観点から好ましくない。
【0058】前記ハードコート層に用いられる硬化型樹
脂組成物の皮膜形成成分は、好ましくは、アクリレート
系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポ
リエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エ
ポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロア
セタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリ
エン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)
アクリート等のオリゴマーまたはプレポリマー、及び反
応性希釈剤として、エチル(メタ)アクリート、エチル
ヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチ
レン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに
多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ
(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アク
リレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネ
オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較
的多量に含有するものが使用できる。
【0059】これらの中でも、ポリエステルアクリレー
トとポリウレタンアクリレートの混合物が特に好適であ
る。ポリエステルアクリレートは塗膜が非常に硬くてハ
ードコート層として適しているが、ポリエステルアクリ
レートのみで構成された塗膜では耐衝撃性が低く脆くな
りやすい。そのため、ハードコート層に耐衝撃性及び柔
軟性を与えるために、ポリウレタンアクリレートを併用
する。ポリウレタンアクリレートの配合割合は、ポリエ
ステルアクリレート100重量部に対して30重量部以
下とすることが好ましい。この配合割合が30重量部を
超えると、塗膜が柔らかくなりすぎて耐擦傷性が不十分
となる傾向がある。
【0060】前記の硬化型樹脂組成物の硬化方法は、通
常の硬化方法、即ち、加熱、電子線または紫外線の照射
によって硬化する方法を用いることができる。例えば、
電子線硬化方法の場合は、コックロフトワルトン型、ハ
ンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線
型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器
から放出される50〜1000keV、好ましくは10
0〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用
される。また、紫外線硬化方法の場合には、超高圧水銀
灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノ
ンアーク、メタルハイライドランプ等の光線から発する
紫外線等が利用できる。
【0061】さらに、電離放射線硬化方法の場合には、
前記の硬化型樹脂組成物中に光重合開始剤として、アセ
トフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイル
ベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチ
ルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光
増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ト
リ−n−ブチルホスフィン等を混合することが好まし
い。本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレー
ト、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メ
タ)アクリレート等を混合することが特に好ましい。
【0062】ハードコート層に防眩性を付与するために
は、硬化型樹脂中にCaCO3やSiO2などの無機粒子
を分散させたり、ハードコート層の表面に凹凸形状を形
成させることが有効である。例えば、凹凸を形成するた
めには、硬化型樹脂組成物を含む塗液を塗工後、表面に
凸形状を有する賦型フィルムをラミネートし、この賦形
フィルム上から紫外線を照射し硬化型樹脂を硬化させた
後に、賦型フィルムのみを剥離することにより得られ
る。
【0063】前記の賦型フィルムには、離型性を有する
ポリエチレンテレフタレート(以後、PETと略す)等
の基材フィルム上に所望の凸形状を設けたもの、或い
は、PET等の基材フィルム上に繊細な凸層を形成した
もの等を用いることができる。その凸層の形成は、例え
ば、無機粒子とバインダー樹脂からなる樹脂組成物を用
いて基材フィルム上に塗工することにより得ることがで
きる。前記バインダー樹脂は、例えば、ポリイソシアネ
ートで架橋されたアクリルポリオールを用い、無機粒子
としては、CaCO3やSiO2などを用いることができ
る。また、この他にPET製造時にSiO2等の無機粒
子を練込んだマットタイプのPETも用いることができ
る。
【0064】この賦型フィルムを紫外線硬化型樹脂の塗
膜にラミネートした後、紫外線を照射して塗膜を硬化す
る際に、賦型フィルムがPETを基材としたフィルムの
場合、該フィルムに紫外線の短波長側が吸収され、紫外
線硬化型樹脂の硬化が不足するという欠点がある。した
がって、紫外線硬化型樹脂の塗膜にラミネートする賦型
フィルムの透過率が20%以上のものを使用することが
必要である。
【0065】また、タッチパネルに用いた際に可視光線
の透過率をさらに向上させるためにハードコート層上
に、低反射処理を施してもよい。この低反射処理は、ハ
ードコート層の屈折率とは異なる屈折率を有する材料を
単層もしくは2層以上に積層することが好ましい。単層
構造の場合、ハードコート層よりも小さな屈折率を有す
る材料を用いるのが好ましい。また、2層以上の多層構
造とする場合は、ハードコート層と隣接する層は、ハー
ドコート層よりも大きな屈折率を有する材料を用い、こ
の上の層にはこれよりも小さな屈折率を有する材料を選
ぶのがよい。このような低反射処理を構成する材料とし
ては、有機材料でも無機材料でも上記の屈折率の関係を
満足すれば特に限定されない。例えば、CaF2、Mg
2、NaAlF4、SiO2、ThF4、ZrO2、Nd2
3、SnO2、TiO2、CeO2、ZnS、In23
などの誘電体を用いるのが好ましい。
【0066】この低反射処理は、真空蒸着法、スパッタ
リング法、CVD法、イオンプレーティング法などのド
ライコーティングプロセスでも、グラビア方式、リバー
ス方式、ダイ方式などのウェットコーティングプロセス
でもよい。
【0067】さらに、この低反射処理層の積層に先立っ
て、前処理として、コロナ放電処理、プラズマ処理、ス
パッタエッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処
理、プライマ処理、易接着処理などの公知の表面処理を
ハードコート層に施してもよい。
【0068】本発明の透明導電性フィルムを用い、透明
導電性薄膜を形成していない面と粘着剤を介して透明樹
脂シートと積層することで、タッチパネルの固定電極に
用いる透明導電性積層シートが得られる。すなわち、固
定電極の支持体をガラスから樹脂シートにすることで、
軽量かつ割れにくいタッチパネルを作製することができ
る。
【0069】前記粘着剤は透明性を有するものであれば
特に制限はないが、例えばアクリル系粘着剤、シリコー
ン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが好適である。この粘着
剤の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μmの範
囲に設定するのが望ましい。粘着剤の厚みが1μm未満
の厚さの場合、実用上問題のない接着性を得るのが難し
く、100μmを越える厚さでは生産性の観点から好ま
しくない。
【0070】この粘着剤を介して貼合わせる透明樹脂シ
ートは、ガラスと同等の機械的強度を付与するために使
用するものであり、厚さは0.05〜5mmの範囲が好
ましい。前記透明樹脂シートの厚みが0.05mm未満
では、機械的強度がガラスに比べ不足する。一方、厚さ
が5mmを越える場合には、厚すぎてタッチパネルに用
いるには不適当である。また、この透明樹脂シートの材
質は、前記の透明プラスチックフィルムと同様のものを
使用することができる。
【0071】図11に、本発明の透明導電性フィルムを
用いた、タッチパネルの例を示す。これは、透明導電性
薄膜を有する一対のパネル板を、透明導電性薄膜が対向
するようにスペーサーを介して配置してなるタッチパネ
ルにおいて、一方のパネル板に本発明の透明導電性フィ
ルムを用いたものである。
【0072】このタッチパネルは、ペンにより文字を入
力した時に、ペンからの押圧により、対向した透明導電
性薄膜同士が接触し、電気的にONの状態になり、タッ
チパネル上でのペンの位置を検出することができる。さ
らに、このペン位置を連続的かつ正確に検出すること
で、ペンの軌跡から文字を認識することができる。この
際、ペン接触側の可動電極が本発明の透明導電性フィル
ムを用いると、ペン入力耐久性に優れるため、長期にわ
たって安定なタッチパネルとすることができる。
【0073】なお、本発明の透明導電性フィルム及び透
明導電性シートを使用して得た、ガラス基板を用いない
プラスチック製のタッチパネルの断面図を図12に示し
た。このプラスチック製のタッチパネルは、ガラスを用
いていないため、非常に軽量であり、かつ、衝撃により
割れたりすることがない。
【0074】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定さ
れるものではない。なお、透明導電性フィルムの性能お
よびタッチパネルのペン入力耐久性試験は、下記の方法
により測定した。
【0075】<光線透過率及びヘイズ>JIS−K71
05に準拠し、日本電色工業(株)製NDH−1001
DPを用いて、光線透過率及びヘイズを測定した。
【0076】<表面抵抗率>JIS−K7194に準拠
し、4端子法にて測定した。測定機は、三菱油化(株)
製 Lotest AMCP−T400を用いた。
【0077】<透明導電性薄膜の孔の平均最短距離、孔
径および孔密度測定>走査型プローブ顕微鏡(Seiko In
struments社製、SPA300)を用いて行った。5μm
×5μmの大きさの10視野を測定し、この視野内の孔の
平均最短距離、孔径および孔密度測定行い、これらの平
均値をとった。スキャナーは100ミクロンスキャナー
を用い、以下の条件により原子間力顕微鏡観察を行っ
た。 カンチレバー:SI−DF3(シリコン製バネ定数:2
N/m程度のもの) 走査モード:DFMモード スキャン速度:0.5〜2.0Hz 画素数:512ピクセル×256ピクセル 測定環境:大気中(温度20℃×湿度65%RH)
【0078】<ペン入力耐久性試験>ポリアセタール製
のペン(先端の形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重
をかけ、10万回(往復5万回)の摺動試験をタッチパ
ネルに行った。この時の摺動距離は30mm、摺動速度
は60mm/秒とした。この摺動耐久試験後に、まず、
摺動部が白化しているかを目視によって観察した。さら
に、ペン荷重0.5Nで上記の摺動部にかかるように2
0mmφの記号○印を筆記し、タッチパネルがこれを正
確に読みとれるかを評価した。さらに、ペン荷重0.5
Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィ
ルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定
した。
【0079】実施例1 光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業(株)
製、セイカビームEXF−01J)を、トルエン/ME
K(8/2;重量比)の混合溶媒を用いて、固形分濃度
が50重量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し
塗布液を調製した。両面に易接着層を有する二軸配向ポ
リエチレンテレフタレートフイルム(東洋紡績(株)
製、A4340、厚み188μm)に、塗膜の厚みが5
μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用
いて塗布し、80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照
射装置(アイグラフィックス(株)製、UB042−5
AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ
/cm2)した。
【0080】次に、この硬化物層上にスズ−アンチモン
複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このと
き、ターゲットには酸化アンチモン5重量%含有した酸
化スズをターゲット(三井金属鉱業(株)製、密度5.
7g/cm3)として用いて、2W/cm2のDC電力を
印加した。また、Arガスを130sccm、O2ガス
を15sccmの流速で流し、0.4Paの雰囲気下で
DCマグネトロンスパッタリング法で成膜した。ただ
し、通常のDCではなく、アーク放電を防止するため
に、日本イーエヌアイ製RPG−100を用いて3μs
幅のパルスを50kHz周期で印加した。
【0081】また、センターロールの温度を20℃と
し、スパッタリングを行った。また、雰囲気の酸素分圧
をスパッタプロセスモニター(伯東(株)製、SPM2
00)にて常時観測しながら、スズ−アンチモン複合酸
化物薄膜中の酸化度が一定になるように酸素ガスの流量
計およびDC電源にフィートバックした。以上のように
して、厚さ27nmのスズ−アンチモン複合酸化物から
なる透明導電性薄膜を堆積した。この透明導電性薄膜に
微小な孔を生じさせるために、180℃で1分間の加熱
処理を施した。
【0082】さらに、この透明導電性フィルムを一方の
パネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基
板上にプラズマCVD法で厚みが20nmのインジウム
ースズ複合酸化物薄膜(酸化スズ:10重量%)からな
る透明導電性薄膜(日本曹達製:S500)を用いた。
この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するよう
に、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタ
ッチパネルを作製した。
【0083】実施例2〜4 光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業(株)
製、セイカビームEXF−01J)100重量部に、共
重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロン2
00、重量平均分子量18,000)を3重量部配合
し、溶剤としてトルエン/MEK(8/2;重量比)の
混合溶媒を、固形分濃度が50重量%になるように加
え、撹拌して均一に溶解し塗布液を調製した。二軸配向
ポリエチレンテレフタレートフイルム(東洋紡績(株)
製、A4340、厚み188μm)に、塗膜の厚みが5
μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用
いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線
照射装置(アイグラフィックス(株)製、UB042−
5AM−W型)を用いて紫外線を照射(光量:300m
J/cm2)し、塗膜を硬化させた。
【0084】また、この硬化物層を積層したプラスチッ
クフィルムを真空暴露するために、真空チェンバー中で
巻き返し処理を行なった。このときの圧力は0.002
Paであり、暴露時間は10分とした。また、センター
ロールの温度は40℃とした。
【0085】次に、この硬化物層上にインジウム−スズ
複合酸化物からなる透明導電性薄膜を成膜した。このと
き、ターゲットとして酸化スズを5重量%含有した酸化
インジウム(三井金属鉱業(株)製、密度7.1g/c
3)に用いて、2W/cm2のDC電力を印加した。ま
た、Arガスを130sccm、O2ガスを10scc
mの流速で流し、0.4Paの雰囲気下でDCマグネト
ロンスパッタリング法で成膜した。ただし、通常のDC
ではなく、アーク放電を防止するために、日本イーエヌ
アイ製RPG−100を用いて5μs幅のパルスを50
kHz周期で印加した。また、センターロール温度は4
0℃として、スパッタリングを行った。
【0086】また、雰囲気の酸素分圧をスパッタプロセ
スモニター(伯東(株)製、SPM200)にて常時観
測しながら、インジウム−スズ複合酸化物薄膜中の酸化
度が一定になるように酸素ガスの流量計およびDC電源
にフィートバックした。以上のようにして、厚さ22n
mのインジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電性薄
膜を堆積した。
【0087】この透明導電性薄膜に微小な孔を生じさせ
るために、150、170、190℃(実施例2、3、
4)で1分間の加熱処理を施した。さらに、この透明導
電性フィルムを用いて、実施例1と同様にしてタッチパ
ネルを作製した。
【0088】実施例5 実施例3の透明プラスチックフィルム基材/硬化物層か
らなる積層体の、硬化物層面とは反対面にハードコート
層樹脂としてポリエステルアクリレートとポリウレタン
アクリレートとの混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大
日精化工業(株)製、EXG)を乾燥後の膜厚が5μm
になるようにグラビアリバース法により塗布し、溶剤を
乾燥させた。この後、160Wの紫外線照射装置の下を
10m/分の速度で通過させ、紫外線硬化型樹脂を硬化
させ、ハードコート層を形成させた。
【0089】このハードコート層/透明プラスチックフ
ィルム基材/硬化物層からなる積層体の硬化物層上に、
実施例2と同様にしてインジウム−スズ複合酸化物薄膜
を成膜した。この透明導電性薄膜に微小な孔を生じさせ
るために、170℃で1分間の加熱処理を施した。さら
に、この透明導電性フィルムを用いて、実施例1と同様
にしてタッチパネルを作製した。
【0090】実施例6 実施例3と同様にして、透明プラスチックフィルム基材
/硬化物層からなる積層体を作製した。この積層体の硬
化物層面とは反対面に、ハードコート層樹脂としてポリ
エステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの
混合物からなる紫外線硬化型樹脂(大日精化工業(株)
製、EXG)を乾燥後の膜厚が5μmになるようにグラ
ビアリバース法により塗布し、溶剤を乾燥した。その
後、表面に微細な凸形状が形成されたポリエチレンテレ
フタレートフィルムのマット賦形フィルム(東レ(株)
製、X)をマット面が紫外線硬化型樹脂と接するように
ラミネートした。このマット賦形フィルムの表面形状
は、平均表面粗さ0.40μm、山の平均間隔160μ
m、最大表面粗さ25μmである。
【0091】このようにラミネートしたフィルムを16
0Wの紫外線照射装置の下を10m/分の速度で通過さ
せ、紫外線硬化型樹脂を硬化させた。次いで、マット賦
形フィルムを剥離して、表面に凹形状加工が施され防眩
効果のあるハードコート層を形成させた。
【0092】この防眩性ハードコート層/透明プラスチ
ックフィルム基材/硬化物層からなる積層体の硬化物層
上に、実施例2と同様にしてインジウムースズ複合酸化
物薄膜を透明導電性薄膜として成膜した。この透明導電
性薄膜に微小な孔を生じさせるために、170℃で1分
間の加熱処理を施した。さらに、この透明導電性フィル
ムを一方のパネル板として用い、実施例1と同様にして
タッチパネルを作製した。
【0093】実施例7 実施例6と同様にして防眩性ハードコート層/透明プラ
スチックフィルム基材/硬化物層/透明導電性薄膜層か
らなる積層体を作製し、次いで、この防眩性ハードコー
ト層上に順次TiO2(屈折率:2.30、膜厚15n
m)、SiO2(屈折率:1.46、膜厚29nm)、
TiO2(屈折率:2.30、膜厚109nm)、Si
2(屈折率:1.46、膜厚87nm)を積層するこ
とで反射防止処理層を形成した。TiO2薄膜を形成す
るには、チタンをターゲットに用いて、直流マグネトロ
ンスパッタリング法で、真空度を0.27Paとし、ガ
スとしてArガスを500sccm、O2ガスを80s
ccmの流速で流した。また、基板の背面には0℃の冷
却ロールを設けて、透明プラスチックフィルムを冷却し
た。このときのターゲットには7.8W/cm2の電力
を供給し、ダイナミックレートは23nm・m/分であ
った。
【0094】SiO2薄膜を形成するには、シリコンを
ターゲットに用いて、直流マグネトロンスパッタリング
法で、真空度を0.27Pa、ガスとしてArガスを5
00sccm、O2ガスを80sccmの流速で流し
た。また、基板の背面には0℃の冷却ロールを設けて、
透明プラスチックフィルムを冷却した。このときのター
ゲットには7.8W/cm2の電力を供給し、ダイナミ
ックレートは23nm・m/分であった。さらに、この
透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、実施
例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0095】実施例8 実施例3と同様にして作製した透明導電性フィルムをア
クリル系粘着剤を介して、厚みが1.0mmのポリカー
ボネート製のシートに貼り付けて、透明導電性積層シー
トを作製した。この透明導電性積層シートを固定電極と
して用い、実施例7の透明導電性フィルムを可動電極に
用いて、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した
【0096】比較例1 170℃で1分間の揮発成分低減のプロセスを行わなか
った以外は、実施例3と同様にして透明導電性フィルム
を作製した。さらに、この透明導電性フィルムを用い
て、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0097】比較例2及び3 透明導電性薄膜の成膜後に、130℃で1分間(比較例
2)、210℃で1分間(比較例3)の加熱処理を施し
た以外は実施例3と同様にして透明導電性フィルムを作
製した。さらに、この透明導電性フィルムを用いて、実
施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0098】以上の実施例及び比較例の測定結果を表1
及び図1〜9に示す。
【0099】表1の結果より、実施例1〜8記載の透明
導電性フィルムは、透明導電性薄膜に微小な孔があいて
いるため、これを用いたタッチパネルは、ポリアセター
ル製ペン(先端形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重
をかけ10万回の摺動試験を行った後でも白化もなく、
ON抵抗にも異常がなかった。また、入力した記号○印
も正確に認識していた。
【0100】これに対して、比較例1及び2は透明導電
性薄膜に微小な孔があいていない、または小さいため、
タッチパネルに用いた際に、ポリアセタール製ペン(先
端形状:0.8mmR)に5.0Nの荷重をかけ10万
回の摺動試験を行った後に摺動部が白化し、ON抵抗も
上昇した。また、入力した記号○印も摺動部で正確に認
識していなかった。
【0101】これに対して、比較例3は透明導電性薄膜
にあいている孔が非常に多いため、これを用いたタッチ
パネルはポリアセタール製ペン(先端形状:0.8mm
R)に5.0Nの荷重をかけ10万回の摺動試験を行っ
た後でも白化もなかった。しかしながら、孔が非常に多
すぎるため、表面抵抗が非常に高い透明導電性フィルム
になってしまい、タッチパネルに用いた際のON抵抗が
非常に高くなってしまった。
【0102】
【表1】
【0103】
【発明の効果】本発明の透明導電性フィルムは、透明プ
ラスチックフィルム基材上に、硬化型樹脂を主たる構成
成分とする硬化物層、及び透明導電性薄膜をこの順に積
層し、前記透明導電性薄膜に貫通する孔があいており、
該孔の平均最短距離が0.2〜3.0μmであるため、
前記透明導電性フィルムを用いたペン入力用タッチパネ
ルは、ペンの押圧で対向の透明導電性薄同士が接触して
も、剥離、クラック等を生じることがないなどペン入力
耐久性に優れており、かつ位置検出精度や表示品位にも
優れている。したがって、ペン入力タッチパネルとして
好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図2】実施例2のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図3】実施例3のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図4】実施例4のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図5】実施例5のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図6】実施例6のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図7】実施例7のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図8】実施例8のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図9】比較例1のタッチパネルからの出力形状を示し
た説明図である。
【図10】比較例2のタッチパネルからの出力形状を示
した説明図である。
【図11】比較例3のタッチパネルからの出力形状を示
した説明図である
【図12】本発明の透明導電性フィルムを使用して得た
タッチパネルの断面図である。
【図13】本発明の透明導電性フィルム及び透明導電性
シートを使用して得た、ガラス基板を用いないプラスチ
ック製のタッチパネルの断面図である。
【符号の説明】
1 摺動試験部 2 タッチパネル出力形状 10 透明導電性フィルム 11 透明プラスチックフィルム基材 12 硬化物層 13 透明導電性薄膜 14 ハードコート層 20 ビーズ 30 ガラス板 40 透明導電性シート 41 粘着剤 42 透明樹脂シート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉原 秀紀 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 森重 地加男 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社フィルム開発研究所堅田フィル ムセンター内 Fターム(参考) 4F100 AA33C AK01A AK01B AK25 AK42 BA03 BA04 BA07 BA10A BA10C BA10D CA30 CB05 DD40C EC18 EH46 EH66 EJ08 EJ54 GB41 JB12B JG01C JK12D JL00 JN01A JN01C JN30D 5B068 AA33 BB01 BB06 BD02 5B087 AA04 CC14 CC37 5G307 FA02 FB01 FC02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明プラスチックフィルム基材上に、硬
    化型樹脂を主たる構成成分とする硬化物層、及び透明導
    電性薄膜をこの順に積層した透明導電性フィルムであっ
    て、前記透明導電性薄膜は貫通孔を有し、該貫通孔間の
    平均最短距離が0.2〜3.0μmであることを特徴と
    する透明導電性フィルム。
  2. 【請求項2】 前記透明導電性薄膜がインジウム−スズ
    複合酸化物からなることを特徴とする請求項1記載の透
    明導電性フィルム。
  3. 【請求項3】 前記透明導電性薄膜がスズ−アンチモン
    複合酸化物からなることを特徴とする請求項1記載の透
    明導電性フィルム。
  4. 【請求項4】 前記透明導電性フィルムの透明導電性薄
    膜面とは反対面に、ハードコート層が積層されているこ
    とを特徴とする請求項1乃至3記載の透明導電性フィル
    ム。
  5. 【請求項5】 前記ハードコート層が防眩効果を有する
    ことを特徴とする請求項4記載の透明導電性フィルム。
  6. 【請求項6】 前記ハードコート層に低反射処理を施し
    たことを特徴とする請求項4または5記載の透明導電性
    フィルム。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6記載の透明導電性フィル
    ムの透明導電性薄膜面とは反対面に、粘着剤を介して透
    明樹脂シートを貼り合わせることを特徴とする透明導電
    性シート。
  8. 【請求項8】 前記透明導電性薄膜を有する一対のパネ
    ル板を透明導電性薄膜が対向するようにスペーサーを介
    して配置してなるタッチパネルにおいて、少なくとも一
    方のパネル板が請求項1乃至7のいずれかに記載の透明
    導電性フィルムもしくは透明導電性シートからなること
    を特徴とするタッチパネル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005205903A (ja) * 2003-12-25 2005-08-04 Toyobo Co Ltd 透明導電性フィルム、透明導電性シートおよびタッチパネル
JP2016216804A (ja) * 2015-05-26 2016-12-22 プロマティック株式会社 積層体及びその製造方法並びにdcスパッタリング用ターゲット

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