JP2002338357A - 摺動体及びメカニカルシール - Google Patents

摺動体及びメカニカルシール

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JP2002338357A JP2001140129A JP2001140129A JP2002338357A JP 2002338357 A JP2002338357 A JP 2002338357A JP 2001140129 A JP2001140129 A JP 2001140129A JP 2001140129 A JP2001140129 A JP 2001140129A JP 2002338357 A JP2002338357 A JP 2002338357A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭化珪素本来の特性を担保しつつ、潤滑性の
大幅な向上を図ることができる摺動体を提供する。 【解決手段】 摺動体は、緻密な炭化珪素組織中に球状
カーボンが散点状に配置された複合炭化珪素焼結体で構
成される。球状カーボンは、これと炭化珪素組織との境
界領域において、球状カーボン周辺の炭化珪素組織部分
から均等若しくは略均等な圧縮力を受けている。球状カ
ーボンの径は5〜100μmであり、球状カーボンの炭
化珪素に対する含有率は2〜30重量%である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メカニカルシール
の密封環や軸受部材等として好適に使用される摺動体及
びこれを密封環として使用したメカニカルシールに関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、メカニカルシールとしては、図
4に示す如く、シールケース2に固定保持された密封環
(以下「固定環」という)1と、回転軸4に軸線方向移
動可能に且つ相対回転不能に保持された密封環(以下
「回転環」という)3と、回転軸4に固定されたスプリ
ングリテーナ5と回転環3との間に介装されて回転環3
を固定環1へと押圧附勢するスプリング6とからなり、
両密封環1,3の対向端面たる密封端面1a,3aの相
対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側
領域たる機内領域Aとその内周側領域たる機外大気領域
Bとをシールするように構成した端面接触型のものが周
知である。
【0003】ところで、炭化珪素は硬質で耐摩耗性に優
れるものであり、熱的,化学的,機械的特性にも優れた
ものであることから、一般に、上記したメカニカルシー
ルの密封環や軸受部材等の摺動体の構成材として使用さ
れている。
【0004】しかし、炭化珪素はカーボン等のような自
己潤滑性を有しないものであることから、炭化珪素製の
摺動体は相手部材との相対摺動による摩耗や発熱が生じ
易いといった問題があった。
【0005】そこで、従来にあっては、摺動性を向上さ
せるために、摺動体を多孔質炭化珪素焼結材で構成し
て、「多孔質炭化珪素焼結材の気孔に油やフッ素樹脂
等の低摩擦材を含浸させたり或いは銀,鉛,アンチモン
等の低摩擦金属材を溶浸させておくこと」又は「微細
な固体潤滑材(カーボン,黒鉛,窒化ホウ素,二硫化モ
リブデン等)を分散させた複合炭化珪素焼結材で摺動体
を構成しておくこと」が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、の場合に
は、多孔質炭化珪素焼結材における炭化珪素同士の結合
力が弱いため耐摩耗性に劣り、摺動体としての耐久性に
問題がある。しかも、摺動面が摩擦熱により高温となる
と、摺動面から含浸材,溶浸材が蒸発分解したり、酸化
により劣化して、摩擦係数が大きくなる。
【0007】また、の場合には、焼結材全体に焼結挙
動を妨げる固体潤滑材が分散しているため、密度,強度
(曲げ強度)が低下して、耐摩耗性に劣る。また、黒鉛
粒子等の潤滑材粒子は炭化珪素粒子と或る程度は結合す
るものの、その結合力(焼結力)は弱い。したがって、
両者の境界部分において炭化珪素粒子が脱粒して、これ
が摺動面間に介在して所謂砥石作用が働き、摺動面を損
傷させる虞れがある。また、十分な潤滑性を確保するた
めには大量の潤滑材を含有させる必要があるが、このよ
うにすると上記した問題がより顕著となる。
【0008】このように、何れの場合にも、潤滑性を高
めることによって炭化珪素本来の特性(耐摩耗性等)が
大幅に低下することになり、摺動体としての機能を向上
させることはできない。
【0009】本発明は、このような点に鑑みてなされた
もので、炭化珪素本来の特性を担保しつつ、潤滑性の大
幅な向上を図ることができる摺動体を提供すると共に、
これを密封環として使用することによって良好なシール
機能を発揮しうるメカニカルシールを提供することを目
的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、第1に、上記
の目的を達成すべく、緻密な炭化珪素組織中に球状カー
ボンが散点状に配置された複合炭化珪素焼結体であっ
て、球状カーボンが、これと炭化珪素組織との境界領域
において、球状カーボン周辺の炭化珪素組織部分から均
等若しくは略均等な圧縮力を受けるように構成されてい
ることを特徴とする摺動体を提案する。球状カーボン
は、例えば、熱硬化樹脂(フェノール樹脂,メラミン樹
脂,尿素樹脂,エポキシ樹脂等)や粘着性を有する半固
体,固体の炭化水素混合物であるれき青物(天然アスフ
ァルト,コールタール・ピッチ,石油系重質油等)を真
球状にしたものを熱処理して得られるものであり、摺動
性に富むものである。
【0011】かかる摺動体にあっては、炭化珪素組織に
おいては、焼成時において、炭化珪素粒子同士の結合及
び自己収縮が生じて、緻密化する。一方、炭化珪素組織
中に配置された球状カーボンについては、炭化珪素粒子
で囲繞されるが、その炭化珪素粒子の結合,収縮挙動を
均等に受けることになる。すなわち、炭化珪素組織をな
す部分は焼結時において大きく収縮する(一般に、炭化
珪素は焼結時において約1/2程度の容積減となる)こ
とから、球状カーボンはこれを囲繞している炭化珪素組
織部分の収縮力によって強力に圧縮されることになる。
そして、その圧縮力は、球状カーボンが球形をなしてい
ることから、球状カーボンの外周面に均等に作用するこ
とになる。その結果、球状カーボンと炭化珪素粒子との
結合力は、上記した炭化珪素組織部分の収縮による外周
側からの圧縮作用によって大幅に増大することになる。
特に、収縮による圧縮力が球状カーボンに均等に作用す
ることから、収縮による球状カーボンの保持力は極めて
強大となり、物理的な結合力は極めて大きくなる。しか
も、球状カーボンと炭化珪素組織部分との境界領域には
SiC−C結合と考えられる中間層が形成されることに
なる。
【0012】これらのことから、球状カーボンは、緻密
な炭化珪素組織中に強固に保持されることになる。その
結果、容易に脱落することなく、ドライ運転のような過
酷な条件下においても良好且つ安定した潤滑機能(摺動
機能)を発揮することができる。すなわち、炭化珪素本
来の特性を損なうことなく、潤滑性を向上させ得るもの
である。
【0013】ところで、球状カーボンの径(以下「カー
ボン径」という)が5μm未満である場合又は球状カー
ボンの炭素珪素に対する含有率(この含有率は、(球状
カーボンの含有量/炭化珪素の含有量)×100で与え
られるものであり、以下「カーボン含有率」という)が
2重量%未満である場合には、球状カーボンによる潤滑
性(摺動性)の向上機能が十分に発揮されない。かかる
球状カーボンによる潤滑性の向上機能が十分に発揮され
るためには、カーボン径が5μm以上であり且つカーボ
ン含有率が2重量%以上であることが必要である。特
に、カーボン径が10μm以上であり且つカーボン含有
率が5重量%以上である場合には、球状カーボンによる
潤滑性の向上機能が顕著に発揮される。しかし、カーボ
ン径が100μmを超える場合又はカーボン含有率が3
0重量%を超える場合には、上記した炭素珪素組織部分
による球状カーボンの保持性や炭化珪素組織の緻密性を
図ることができない。かかる球状カーボンの保持性や炭
化珪素の緻密性を図るためには、カーボン径が100μ
m以下であり且つカーボン含有率が30重量%以下であ
ることが必要である。特に、カーボン径が50μm以下
であり且つカーボン含有率が20重量%以下である場合
には、炭素珪素組織部分による球状カーボンの保持が極
めて強力となり且つ炭化珪素組織を十分に緻密化させる
ことができる。したがって、炭化珪素本来の特性を損な
うことなく潤滑性の向上を図るためにはカーボン径が5
〜100μmであり且つカーボン含有率が2〜30重量
%であることが好ましく、カーボン径が20〜50μm
であり且つカーボン含有率が5〜20重量%であること
がより好ましい。
【0014】また、本発明は、第2に、2つの密封環が
相対回転摺接するように構成されたメカニカルシールに
おいて、少なくとも一方の密封環を上記した摺動体で構
成したことを特徴とするメカニカルシールを提案する。
かかるメカニカルシールによれば、当該摺動体が上記し
た如く炭化珪素本来の特性(耐摩耗性等)に加えて潤滑
性に優れたものであることから、相手密封環の構成材を
シール条件に応じて適宜に選択しておくことにより、如
何なるシール条件下においても良好なシール機能を発揮
させることができる。特に、両密封環を本発明の摺動体
で構成した場合には、ドライ条件下やスラリを扱う場合
等の過酷な条件下でも良好なシール機能を発揮させるこ
とができる。
【0015】
【実施例】実施例1として、図4に示す構成のメカニカ
ルシール(以下「当該メカニカルシール」という)の回
転環3として使用しうる本発明の摺動体A1(カーボン
径:20μm,カーボン含有率10重量%)を、次のよ
うな焼結原料混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成
工程,仕上げ工程により製作した。
【0016】焼結原料混合工程: 平均粒子径0.7μ
mのα型炭化珪素(α−SiC)粉末100gと、焼結
助剤としての炭化ホウ素(B4 C)粉末0.5gと、カ
ーボン源としてのフェノール樹脂(残炭率50%)4g
と、成形助剤としての平均分子量6000のポリエチレ
ングリコール(PEG#6000)2g及びステアリン
酸1gとを基本配合として、この基本配合材料に更に径
20μmの球状カーボン10gを添加し、これらをメタ
ノール溶剤と混合させて、ボールミルにより24時間混
合し、焼結原料(混合スラリ)を得た。なお、球状カー
ボンは、フェノール樹脂を真球状にしたものを熱処理し
て得たものである(以下において同じ)。
【0017】造粒工程:焼結原料混合工程で得られた焼
結原料をスプレードライヤーにより噴霧乾燥することに
よって造粒(顆粒化)し、径20〜100μmの造粒材
(顆粒)を得た。
【0018】予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒
材を所定の金型に充填した上、成形面圧1500kg/
cm2 で冷間プレス成形して、回転環3に対応する環状
形態をなす予備成形体を得た。なお、予備成形体の形状
は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0019】焼成工程: 予備成形工程で得られた予備
成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰
囲気中で焼成して、回転環3に相当する密封環形状をな
す複合炭化珪素焼結材を得た。
【0020】仕上げ工程: 焼成工程で得られた複合炭
化珪素焼結材の端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨
(ラップ)する等により、回転環3として使用しうる摺
動体A1を得た。なお、摺動体A1の鏡面は、回転環3
として使用した場合における摺動面(密封端面3a)と
して機能する。
【0021】また、実施例2として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A2
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例2では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径50μmの
球状カーボン5gを添加することにより、カーボン径:
50μm,カーボン含有率:5重量%の摺動体A2を得
た。
【0022】また、実施例3として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A3
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例3では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径50μmの
球状カーボン10gを添加することにより、カーボン
径:50μm,カーボン含有率:10重量%の摺動体A
3を得た。
【0023】また、実施例4として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A4
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例4では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径50μmの
球状カーボン20gを添加して、カーボン径:50μ
m,カーボン含有量:20重量%の摺動体A4を得た。
【0024】また、実施例5として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A5
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例5では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径10μmの
球状カーボン3gを添加して、カーボン径:10μm,
カーボン含有量:3重量%の摺動体A5を得た。
【0025】また、実施例6として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A6
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例6では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径20μmの
球状カーボン3gを添加して、カーボン径:20μm,
カーボン含有量:3重量%の摺動体A6を得た。
【0026】また、実施例7として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A7
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例7では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径80μmの
球状カーボン5gを添加して、カーボン径:80μm,
カーボン含有量:5重量%の摺動体A7を得た。
【0027】また、実施例8として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A8
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例8では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径80μmの
球状カーボン10gを添加して、カーボン径:80μ
m,カーボン含有量:10重量%の摺動体A8を得た。
【0028】また、実施例9として、当該メカニカルシ
ールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A9
を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原料
混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ
工程)により製作した。すなわち、実施例9では、焼結
原料混合工程において上記基本配合材料に径80μmの
球状カーボン20gを添加して、カーボン径:80μ
m,カーボン含有量:20重量%の摺動体A9を得た。
【0029】また、実施例10として、当該メカニカル
シールの回転環3として使用しうる本発明の摺動体A1
0を、次の点を除いて、実施例1と同一の工程(焼結原
料混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上
げ工程)により製作した。すなわち、実施例10では、
焼結原料混合工程において上記基本配合材料に径100
μmの球状カーボン10gを添加して、カーボン径:1
00μm,カーボン含有量:10重量%の摺動体A10
を得た。
【0030】また、比較例1として、焼結原料混合工程
を除いて、実施例1と同一の工程(造粒工程,予備成形
工程,焼成工程,仕上げ工程)により、当該メカニカル
シールの回転環3として使用しうる摺動体B1を得た。
焼結原料混合工程においては、上記基本配合材料に径5
μmの鱗片状黒鉛10gを添加したものをメタノール溶
剤と混合させた上、これをボールミルにより24時間混
合して、焼結原料を得た。
【0031】また、比較例2として、焼結原料混合工程
を除いて、実施例1と同一の工程(造粒工程,予備成形
工程,焼成工程,仕上げ工程)により、当該メカニカル
シールの回転環3として使用しうる摺動体B2を得た。
焼結原料工程においては、上記基本配合材料に径50μ
mの鱗片状黒鉛10gを添加したものをメタノール溶剤
と混合させた上、これをボールミルにより24時間混合
して、焼結原料を得た。
【0032】また、比較例3として、焼結原料混合工程
を除いて、実施例1と同一の工程(造粒工程,予備成形
工程,焼成工程,仕上げ工程)により、当該メカニカル
シールの回転環3として使用しうる摺動体Iを得た。焼
結原料混合工程においては、平均粒子径0.6μmのβ
型炭化珪素(β−SiC)粉末100gに、B4 C粉末
0.5g及びフェノール樹脂(レゾール型)4gを添加
し、更にPEG(#6000)2g及びステアリン酸1
gを添加し、これらをメタノールと共にボールミルで2
4時間混合して、焼結原料を得た。なお、焼成工程で得
られる炭化珪素焼結材は、一般的な緻密質の炭化珪素焼
結材と同質のものである。
【0033】以上のようにして得られた本発明の摺動体
A1〜A10は、図1及び図2に例示する如く、大径の
球状カーボン(同図において黒色をなす部分)が炭化珪
素粒子同士が結合した緻密な炭化珪素組織中に散点状に
配置されたものであり、球状カーボンと炭化珪素組織部
分との境界領域にSiC−C結合と考えられる中間層が
認められる。なお、図1は摺動体A3の鏡面を200倍
に拡大した顕微鏡写真であり、図2は摺動体A3を構成
する複合炭化珪素焼結材の破面を500倍に拡大した顕
微鏡写真である。
【0034】これに対して、摺動体B1,B2は、摺動
体A1〜A10と同様に固体潤滑材(鱗片状黒鉛)を含
有するものであるが、図3に例示する如く、黒鉛粒子の
近傍に多くの空隙が生じており、この空隙の存在により
冒頭で述べた如く炭化珪素本来の特性が損なわれ、黒鉛
配合による意義が喪失する。すなわち、黒鉛、特に鱗片
状黒鉛は潤滑性に極めて優れるものであるが、焼結時に
おける黒鉛と炭化珪素粒子との結合は少なく、鱗片状黒
鉛の集合組織が炭化珪素組織中に閉じ込められた状態と
なるにすぎないから、ドライ環境下での摺動性はあまり
良好ではなく、発熱のアブレッシブ摩耗を伴う。このこ
とは図3及び後述するシール試験結果(表2)からも明
らかであり、上記した如く空隙を多く含む黒鉛近傍が炭
化珪素焼結体の欠陥源となり、炭化珪素粒子の脱落が助
長される結果、アブレッシブ摩耗を進行させると推察で
きる。なお、図3は摺動体B2を構成する複合炭化珪素
焼結材の破面を500倍に拡大した顕微鏡写真である。
また、摺動体B3は固体潤滑材を含有せず、緻密な炭化
珪素組織をなしている。
【0035】而して、摺動体A1〜A10及び摺動体B
1〜B3の理論密度(g/cm3)焼結密度(g/c
3),相対密度(%)は、夫々、表1に示す通りであ
った。なお、焼結密度は水置換法により求めた。
【0036】表1から明らかなように、本発明の摺動体
A1〜A10は、これと同様に固体潤滑材を含有する比
較例の摺動体B1,B2に比して相対密度が高くなって
おり、球状カーボンを配置しても炭化珪素組織が十分に
緻密化されることが理解される。なお、表1における配
合比率は、摺動体A1〜A10については前記カーボン
含有率であり、摺動体B1,B2については鱗片状黒鉛
の炭素珪素に対する含有率(=(鱗片状黒鉛の含有量/
炭化珪素の含有量)×100)である。
【0037】また、当該メカニカルシールに実施例の摺
動体A1〜A10及び比較例の摺動体B1〜B3を夫々
回転環3として組み込んで、シール試験を行った。な
お、固定環1としては、比較例3において摺動体B3を
得た場合と同一の工程(予備成形工程において、固定環
1に対応する環状形態をなす予備成形体を得ることがで
きる金型を使用した点を除く)により得た緻密質の炭化
珪素焼結材(密度:3.13g/cm3 )からなるもの
を使用した。
【0038】而して、このシール試験は、当該メカニカ
ルシールを負荷圧力:0.1MPa,周速:2m/sの
ドライ条件下で2時間連続運転して、両密封環1,3の
摺動面(密封端面1a,3a)の摩耗速度(μm/H
r)、摩擦係数及び摺動面温度(℃)を求めると共に、
固定密封環3の摺動面状態を判定した。摺動面状態の判
定は、相手密封端面(固定環1の密封端面1a)との相
対回転摺接により発生する環状痕及び摩耗粉の発生程度
を目視観察することにより行った。なお、環状痕につい
ては、表2において、環状痕(レコード溝状の環状溝)
が明瞭に目視観察されたものには「×」を付し、環状痕が
極く僅かに目視観察されたものには「△」を付し、環状
痕が目視によっては全く認められなかったものには「○」
を付した。また、摩耗粉については、表2において、摩
耗粉が発生したものには「×」を付し、摩耗粉が発生して
いないものには「○」を付した。
【0039】表2から理解されるように、実施例の摺動
体A1〜A10を使用した場合には、何れの場合にも、
比較例の摺動体B1〜B3を使用した場合に比して、摩
耗速度,摩擦係数及び摺動面温度(発熱温度)が大幅に
低くなっている。また、摺動面状態についても、比較例
の摺動体B1〜B3は、全て、環状痕又は摩耗粉が顕著
に発生しているのに対し、実施例の摺動体A1〜A10
については摩耗粉が全く発生しておらず、環状痕も全く
発生していないか、発生しても極く僅かである(摺動体
A5,A6については、極く僅かな環状痕が発生した
が、これはカーボン含有量が3重量%と低いため、つま
り5重量%未満であるためであると考えられる)。
【0040】したがって、本発明に係る摺動体A1〜A
10は、微細な固体潤滑材(鱗片状黒鉛)を炭化珪素組
織全体に分散させた摺動体B1,B2及び固体潤滑材を
含有しない緻密質炭化珪素焼結体である摺動体B3に比
して、明らかに摺動特性に優れたものであり、メカニカ
ルシールの密封環として好適するものであるということ
ができる。また、表2に示すシール試験結果から判断し
た場合、カーボン径:20〜50μm,カーボン含有
率:5〜20重量%とした場合、摩耗速度,摩擦係数,
摺動面温度,摺動面状態が頗る良好であり、摺動特性に
極めて優れることが確認される。すなわち、摺動特性を
向上させるためには、20〜50μm,カーボン含有
率:5〜20重量%としておくことがより好ましいこと
が理解される。
【0041】なお、上記したシール試験の結果は、相手
密封環(固定密封環1)として自己潤滑性を有しない緻
密質の炭化珪素焼結材製のものを使用した場合について
ものであるから、相手密封環として自己潤滑性に優れる
カーボン製のものや本発明の摺動体を使用した場合に
は、表2に示す値より優れたシール試験結果が得られる
であろうことは容易に想定される。したがって、一般
に、相手密封環の構成材はシール条件に応じて選択され
る(例えば、ドライ条件下やスラリ流体を扱う等の過酷
なシール条件下では相手密封環を緻密質の炭化珪素焼結
材製のものや本発明の摺動体等の硬質材製密封環が選択
され、一般的なシール条件下ではカーボン等の軟質材製
密封環が選択される)が、何れの場合にも、本発明の摺
動体を使用したメカニカルシールによれば良好なシール
機能を発揮させることができる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解されるよう
に、本発明の摺動体は、耐摩耗性,硬質性等の炭化珪素
本来の特性を損なうことなく、潤滑性を大幅に向上させ
得るものであり、メカニカルシールの密封環や軸受部材
等として好適に使用することができるものである。
【0045】また、本発明のメカニカルシールによれ
ば、シール条件に応じて両密封環又はその一方を上記の
摺動体で構成しておくことにより、如何なるシール条件
下においても良好なシール機能を発揮させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】摺動体A3の鏡面を200倍に拡大して示す顕
微鏡写真である。
【図2】摺動体A3を構成する複合炭化珪素焼結材の破
面を500倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図3】摺動体B2を構成する複合炭化珪素焼結材の破
面を500倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図4】端面接触型メカニカルシールの一例を示す縦断
側面図である。
【符号の説明】
1…固定環、1a…固定環の密封端面、3…回転環(摺
動体)、3a…回転環の密封端面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J041 AA01 BA04 BB01 BC02 DA01 4G001 BA22 BA23 BA75 BA78 BB22 BB23 BB60 BC23 BC34 BC73 BD12 BE02 BE31

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 緻密な炭化珪素組織中に球状カーボンが
    散点状に配置された複合炭化珪素焼結体であって、球状
    カーボンが、これと炭化珪素組織との境界領域におい
    て、球状カーボン周辺の炭化珪素組織部分から均等若し
    くは略均等な圧縮力を受けるように構成されていること
    を特徴とする摺動体。
  2. 【請求項2】 球状カーボンの径が5〜100μmであ
    り且つ球状カーボンの炭化珪素に対する含有率が2〜3
    0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載する
    摺動体。
  3. 【請求項3】 球状カーボンの径が20〜50μmであ
    り且つ球状カーボンの炭化珪素に対する含有率が5〜2
    0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載する
    摺動体。
  4. 【請求項4】 2つの密封環が相対回転摺接するように
    構成されたメカニカルシールにおいて、少なくとも一方
    の密封環を請求項1、請求項2又は請求項3に記載する
    摺動体で構成したことを特徴とするメカニカルシール。
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