JP2002336797A - 無細胞タンパク質合成用胚芽の選別方法 - Google Patents

無細胞タンパク質合成用胚芽の選別方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 合成効率の高い無細胞タンパク質合成用胚芽
抽出物を効率よく製造するための胚芽の選別方法を提供
する。 【解決手段】 植物種子に機械的な力を加えることによ
り得られる胚芽及び胚乳破砕物を含む混合物から、色彩
選別機を用いて胚芽を選別する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質合成用
胚芽の選別方法に関し、更に詳しくは、合成効率の高い
無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物を効率よく製造する
ための胚芽の選別方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】細胞内でおこなわれているタンパク質の
合成反応は、まず遺伝情報をもつDNAからその情報が
mRNAに転写され、そしてリボソームがそのmRNA
の情報を翻訳して、タンパク質を合成するという工程で
進行している。現在、この細胞内におけるタンパク質合
成を試験管等の生体外で行う方法としては、例えばリボ
ソームを生物体から抽出し、これらを用いて試験管内で
無細胞タンパク質合成法の研究が盛んに行われている
(特開平6−98790号公報、特開平6−22578
3号公報、特開平7−194号公報、特開平9−291
号公報、特開平7−147992号公報等)。これらの
方法には、リボソームの原料として、大腸菌、胚芽、家
兎網状赤血球などが用いられてきた。
【0003】無細胞タンパク質合成系は、ペプチド合成
反応速度と翻訳反応の正確性において生細胞に匹敵する
性能を保持し、かつ目的とするタンパク質を複雑な精製
工程を実施することなく得ることができる有用な方法で
ある。そのため、該合成系をより有用に産業上に適用す
るため、合成効率の向上に関するいくつかの発明が開示
されてきた。しかし、産業上の有用性向上のためには、
合成効率のみならず、合成系に使用する各種の物質を安
定に高品質を保持して大量に供給することが必要であ
る。
【0004】従来、無細胞系におけるタンパク質の合成
効率低下現象については、主に次の三つの原因が考えら
れている。すなわち、(1)生物体からの細胞液抽出操
作に伴うタンパク質合成因子の活性低下、(2)in vit
ro合成反応中に、タンパク質合成に関与する種々因子の
活性や基質濃度の低下、(3)上記(1)と(2)で生
じる結果が複合して翻訳活性が低下する等である。
【0005】スピリン(A. S. Spirin)らは、従来の方
法で調製した無細胞タンパク合成系に、原料であるアミ
ノ酸とATP、GTPを限外ろ過膜を介して連続的に供
給することによって(連続式無細胞系)、反応時間を2
0時間以上にわたって持続させることに成功し、従来の
20倍を越えるタンパク質合成収量を達成したと報告し
ている(A. S. Spirin et al. (1988), Science, 242,
1162-1164 )。また、横山らは、濃縮した大腸菌抽出液
を含む反応液を透析膜を用いる連続式無細胞合成を試
み、CATやRasなど比較的小分子のタンパク質を反
応系1ml当たり3〜5mgの高収量で合成することに
成功している(木川ら、第21回日本分子生物学会、W
ID6)。
【0006】これらの成果は、上記(2)の基質濃度の
低下が無細胞系におけるタンパク質合成効率低下現象の
一因であることを示している。言い換えると、アミノ酸
やエネルギー源の低下を防ぐ(反応中の基質濃度低下に
は混在するそれら基質の代謝酵素群も関与すると考えら
れる)と同時に、AMPやGMPなどの代謝産物の蓄積
を排除ることによって、タンパク質合成効率が上昇した
ものと説明できる。
【0007】一方、ヒマ種子に含まれる細胞毒素タンパ
ク質であるライシンのリボソーム不活性化機構の研究か
ら、植物の産生している一群の抗ウイルスタンパク質が
ライシンA鎖と同一のRNA N−グリコシダーゼであ
ることが判明している(Y. Endo et al. (1988) Biochi
m. Biophys. Acta, 954, 224-226)。この酵素は、リボ
ソームに作用し、そのRNA(大腸菌では23S rRNA、真
核生物では28S rRNA)のペプチド鎖伸長因子が結合する
特定部位に存在する1個のN−グリコシド結合の加水分
解を触媒するリボソーム不活性化酵素(RIP)で、こ
の反応の結果、リボソームは1分子のアデニンの解離に
よってペプチド鎖伸長機能を消失する(Y. Endo et al.
(1992), TIBS, 17, 266-269)。コムギ種子の胚乳には
トリチンと名付けられたRNA N−グリコシダーゼが
大量に存在している(W. K. Roberts et al.(1989) Bio
chemistry, 18, 2615-2621 )。また、抗菌物質として
単離されたチオニンと呼ばれるタンパク質がムギをはじ
め植物界に広く分布することが知られていたが、最近コ
ムギチオニンが胚乳に局在すること、このタンパク質が
翻訳開始反応を阻害することによって、タンパク質合成
を強く阻害することが明らかにされた(J. Brummer et
al. (1994) Eur. J. Biochem., 219, 425-433, P. Hugh
es et al. (1997) Plant Physiol., 114, 1568)。更
に、小麦種子の胚乳には、RNA分解酵素、DNA分解
酵素やタンパク質分解酵素等が高濃度に含まれている。
【0008】従来、無細胞タンパク質合成用のコムギ胚
芽の調製は、エリクソンとブローベルら(A. H. Erikso
n and G. Blobel(1983), Methods in Enzymol., 96, 38
-50)の方法によって行われていたが、この方法では、
タンパク質合成阻害物質を含む胚乳の混入が不可避であ
った。そこで、上記(1)の改善手段として、特開平7
−203984号公報には、無細胞タンパク質合成系に
おいて、細胞破壊に伴って誘発される活性阻害因子であ
って、核酸合成及び/又はタンパク質合成の活性を阻害
する因子である活性阻害因子の活性化を抑制することに
より、反応効率を上昇させたタンパク質の合成方法が記
載されている。この公報では、活性阻害因子の活性化を
抑制する方法として、それをタンパク質合成系から除去
する手段、タンパク質合成系内でその活性化を阻害する
手段が例示されているが、一般にタンパク質合成系から
活性阻害因子を選択的に除去することは困難であること
から、特異的阻害剤を使用する手段を推奨している。具
体的には、コムギ胚芽に存在するトリチンと呼ばれる阻
害因子をトリチン抗体によって抑制している。
【0009】また、特開2000−236896号公報
には、コムギ種子の胚乳に局在するタンパク質合成反応
を阻害する上記の様な内因性の特異的阻害物質を、機械
的、化学的処理により排除することが記載されている。
この方法では、胚乳を含まない胚芽を得るために、水溶
液中で超音波処理を行っている。植物種子から無細胞タ
ンパク質合成用細胞抽出物を得る方法としては、通常、
植物種子を粉砕し、篩、浮選、目視等により種皮、胚乳
画分を取り除いて粗胚芽画分を取得し、洗浄により胚乳
成分を除去した後、粉砕、抽出分離する方法が行われて
いる。
【0010】しかしながら、植物種子粉砕物には胚芽や
細かく粉砕された種皮や胚乳が混在しているため、目視
等により胚芽のみを選別することは難しく、また時間が
かかり、大量の胚芽を短時間で大量に取得することは困
難である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、無細胞タン
パク質合成系に使用する細胞抽出物を工業的に効率的に
製造するために、植物種子から胚芽を短時間で大量に取
得する方法の提供を目的としてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を達成すべく鋭意検討した結果、色彩選別機を用いるこ
とにより、植物種子の胚芽が効率的に選別できることを
見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明
の要旨は、植物種子に機械的な力を加えることにより得
られる胚芽及び胚乳破砕物を含む混合物から、色彩選別
機を用いて胚芽を選別することを特徴とする無細胞タン
パク質合成用胚芽の選別方法に存する。
【0013】この発明の好ましい態様により、色彩選別
機が、少なくとも、粗胚芽画分に光を照射する手段、粗
胚芽画分からの反射光及び/又は透過光を検出する手
段、検出値と基準値とを比較する手段、基準値より外れ
たもの又は基準値内のものを選別排除する手段を有する
装置である上記方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明す
る。本発明に使用することができる植物種子としては、
その胚芽が得られるものであれば特に制限されないが、
通常コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物
及びホウレンソウから選択される植物の種子が挙げられ
る。これらの中でも、本発明に好適な植物種子として、
コムギ、オオムギまたはイネが挙げられ、特に好適なも
のとしてコムギが挙げられる。
【0015】本発明においては、植物種子から無傷の胚
芽を主成分とする胚芽画分を取得する。ここで、無傷の
胚芽とは、少なくとも発芽能を有する胚芽を意味し、胚
芽画分とは、無傷の胚芽を主要成分とするものであり、
これを用いて無細胞タンパク質合成に使用しうる細胞抽
出物が調製可能なものを意味する。植物種子に含まれる
胚芽の量は少なく、種子から胚芽を効率的に取得するた
めには、胚芽以外の部分をできるだけ除去しておくこと
が好ましい。通常、まず、植物種子に機械的な力を加え
ることにより、胚芽、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む混
合物を得、該混合物から、胚乳破砕物、種皮破砕物等を
取り除いて粗胚芽画分を得る。ここで、粗胚芽画分と
は、胚芽を主成分とし、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む
混合物を意味する。植物種子に加える力は、植物種子か
ら胚芽を分離することができる程度の強さであればよ
い。
【0016】通常は、公知の粉砕装置を用いて、植物種
子を粉砕することにより、胚芽、胚乳破砕物、種皮破砕
物を含む混合物を得る。植物種子の粉砕は、通常公知の
粉砕装置を用いて行うことができるが、ピンミル、ハン
マーミル等の被粉砕物に対して衝撃力を加えるタイプの
粉砕装置を用いることが好ましい。粉砕の程度は、使用
する植物種子胚芽の大きさに応じて適宜選択すればよ
い。例えばコムギ種子の場合は、通常、最大長さ4mm
以下、好ましくは最大長さ2mm以下の大きさに粉砕す
る。また、乾式粉砕が好ましい。
【0017】次いで、得られた植物種子粉砕物から、通
常公知の分級装置、例えば、篩を用いて粗胚芽画分を取
得する。例えば、コムギ種子の場合、通常、メッシュサ
イズ0.5mm〜2.0mm、好ましくは0.7mm〜
1.4mmの粗胚芽画分を取得する。さらに、必要に応
じて、得られた粗胚芽画分に含まれる種皮、胚乳、ゴミ
等を風力、静電気力を利用して除去してもよい。
【0018】また、胚芽と種皮、胚乳の比重の違いを利
用する方法、例えば浮選により、粗胚芽画分を得ること
もできる。より多くの胚芽を含有する粗胚芽画分を得る
ために、上記の方法を複数組み合わせてもよい。本発明
においては、上記のようにして得られた粗胚芽画分か
ら、色彩選別機を用いて胚芽を選別する。種子粉砕物か
ら胚芽を選別することもできるが、種子粉砕物は胚芽以
外の成分を大量含んでいるため、効率的ではない。
【0019】粗胚芽画分、例えばコムギ種子粗胚芽画分
の場合、図1に示すように、例えば胚乳(a)と胚芽
(b)ではRGB輝度の頻度分布が異なっているため、
この違いを利用して、胚芽と胚乳を分別することができ
る。ここで、RGBは、それぞれ光の3原色である赤
(Red)、緑(Green)、青(Blue)に対応する。RGB
輝度とは、色情報の表現方式でRGBカラーモデルとい
うものがある通り、カラービデオカメラやコンピュータ
グラフィックスシステムで採用されている方式あり、色
情報をR、G、Bの各成分に分解したときのそれぞれを
輝度で表現したものである。輝度は一般に8ビット、つ
まり0から255までの256階調で表される。図1の
(a)は胚乳を、図1(b)は胚芽を、それぞれカラー
CCDカメラで撮影し、適当な撮影エリア内の各画素に
ついてRGB各成分に分解し、輝度の頻度分布をとった
ものである。胚芽(b)は胚乳(a)に比べて青色の輝
度が低い分布になっている。これは青色光が多く胚芽に
吸収されていることを意味する。結果として胚芽は青色
の補色に近い黄色に見える。この様に、例えば胚芽と胚
乳との色彩の違いを、例えばRGB輝度の頻度分布の違
いより検出し、それに基づき胚芽と胚乳とを選別するこ
とができる。
【0020】本発明において使用することのできる色彩
選別機としては、色彩の違いを利用して胚芽を選別する
機能を有するものであれば如何なるものであってもよ
い。例えば、少なくとも、粗胚芽画分に光を照射する手
段、粗胚芽画分からの反射光及び/又は透過光を検出す
る手段、検出値と基準値とを比較する手段、基準値より
外れたもの又は基準値内のものを選別排除する手段を有
する装置を挙げることができる。
【0021】照射する光としては、可視光または近赤外
光を使用することができる。光源としては、白熱灯、蛍
光灯、ハロゲンランプ等を使用することができる。反射
光及び/又は透過光を検出する手段としては、CCDセ
ンサー、シリコンフォトセンサー、ゲルマニウムフォト
センサー、InGaAsアレイセンサー等の受光センサ
ーを用いることができる。
【0022】例えば、粗胚芽画分をベルト上に供給し、
ベルトによって搬送されている粗胚芽画分あるいはベル
ト端部から放出されている粗胚芽画分に対して光を照射
してもよいし、供給口から落下している粗胚芽画分に対
して光を照射してもよい。光源の種類、背景色(ベルト
を使用する場合はベルトの色、バックグラウンドを使用
する場合はバックグラウンドの色)、受光センサーの種
類等は、選別しようとする種子の種類または排除しよう
とするもの(胚芽またはそれ以外のもの)に応じて、適
宜選択することができる。例えば、種皮を排除する場合
は、胚芽と同程度の輝度、色彩の背景色(例えばベージ
ュ)とし、黄色系(例えば電球色)の光源を用いるとよ
い。また、胚乳を排除する場合は、胚芽よりも濃い色の
背景色とし、青色系の光源を用いるとよい。
【0023】検出された粗胚芽画分からの反射光及び/
又は透過光に基づき、検出値と基準値とを比較する手段
にて、対象物が選別排除されるべきものか否かが判断さ
れる。この判断に基づき、粗胚芽画分が選別排除を受
け、胚芽以外の部分が除去された胚芽画分を取得するこ
とができる。検出値と基準値とを比較する手段として
は、それ自体公知のものを用いることができる。
【0024】基準値より外れたもの又は基準値内のもの
を選別排除する手段としては、例えば空気等の流体の噴
射または吸引により選別排除を実施する手段を用いるこ
とができる。図2は、粗胚芽画分から胚芽を選別する装
置の一例を模式的に示した概略図である。図2におい
て、1は粗胚芽画分供給手段、2は粗胚芽画分、3はベ
ルト、4は光源、5はCCDセンサー、6は吸引ノズル
を示す。例えば、粗胚芽画分供給手段1からベルト3上
に供給され、ベルト3によって搬送されている粗胚芽画
分2に対して光を照射し、CCDセンサー5によって反
射光を検出し、検出値と基準値とを比較して基準値より
外れたものを吸引ノズル6によって吸引排除することに
より、胚芽を選別することができる。
【0025】コムギ胚芽は、縦約2mm、横約1mm、
厚み約0.5mm、重さ約0.5〜0.6mg程度と非
常に小さくて軽量である。従って、選別精度を向上する
ために、粗胚芽画分をベルト上に供給し、ベルトによっ
て5〜100m/分、好ましくは10〜90m/分の速
度で搬送されている粗胚芽画分に対して光を照射し、選
別する方法が好ましい。また、ベルト上に供給する粗胚
芽画分の量は、10〜10000粒/cm2、好ましく
は50〜1000粒/cm2程度とすることが好まし
い。これににより、選別精度を向上することができる。
【0026】胚芽を選別する方法としては、例えば、ま
ず、粗胚芽画分から種皮等の胚芽より色の濃いものを排
除し、次いで胚乳等の胚芽よりも色の薄いものを排除す
る。これらの操作は逆の順序で行ってもよいし、これら
の操作を複数回繰り返してもよい。また、胚芽のみを選
別回収してもよい。以上のように、色彩選別機を用いる
ことにより、効率的に大量に胚芽を選別することができ
る。
【0027】このようにして得られた胚芽画分には、胚
乳成分が付着している場合があるため、通常、胚芽純化
のために更に洗浄処理することが好ましい。洗浄処理と
しては、通常10℃以下、好ましくは4℃以下に冷却し
た水又は水溶液に胚芽画分を分散・懸濁させ、洗浄液が
白濁しなくなるまで洗浄することが好ましい。また、通
常10℃以下、好ましくは4℃以下で、界面活性剤に胚
芽画分を分散・懸濁させて、洗浄液が白濁しなくなるま
で洗浄することがより好ましい。用いられる界面活性剤
としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、それら
の中で、好適なものとして、例えばポリオキシエチレン
誘導体であるブリッジ(Brij)、トリトン(Tri
ton)、ノニデット(Nonidet)P40、ツイ
−ン(Tween)等が例示される。なかでも、ノニデ
ット(Nonidet)P40が最適である。これらの
非イオン性界面活性剤は、例えば0.5%程度の濃度で
使用することができる。
【0028】水又は水溶液による洗浄処理および界面活
性剤による洗浄処理は、どちらか一方でもよいし、両方
実施してもよい。また、これらの洗浄処理は、超音波処
理との組み合わせで実施してもよい。以上のようにして
得られた胚芽を、洗浄、微粉砕及び抽出処理することに
より胚芽抽出物を得る。胚芽抽出物を得る方法は、従来
公知の方法で行うことができる。例えば、液体窒素で凍
結した胚芽を微粉砕し、抽出溶媒を加えて攪拌した後、
胚芽抽出物含有液を遠心分離等により回収し、ゲルろ過
等により精製する。抽出溶媒としては、緩衝液、カリウ
ムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、チ
オール基の酸化防止剤、L型アミノ酸等を含む溶液を用
いることができる。例えば、Pattersonらの方
法を一部改変した抽出溶媒(N−2−ヒドロキシエチル
ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES
−KOH)、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、塩化カ
ルシウム、ジチオスレイトール又はL型アミノ酸を含む
溶液)を使用することができる。ゲルろ過としては、例
えば予め溶液(HEPES−KOH、酢酸カリウム、酢
酸マグネシウム、ジチオスレイトール又はL型アミノ酸
を含む溶媒)で平衡化しておいたゲルろ過装置を用いて
行うことができる。
【0029】このようにして得られた細胞抽出物は、原
料細胞自身が含有する又は保持するタンパク質合成機能
を抑制する物質、即ちトリチン、チオニン、RNA分解
酵素、DNA分解酵素、タンパク質分解酵素等のリボソ
ームに作用してその機能を抑制する物質を含む胚乳成分
がほぼ完全に取り除かれ純化されている胚乳成分を含ま
ない細胞抽出物である。ここで、胚乳成分を含まない細
胞抽出物とは、胚乳部分を取り除いた胚芽抽出物のこと
であり、これはリボソームがトリチンによって実質的に
脱アデニン化されないことから判別できる。また、「リ
ボソームが実質的に脱アデニン化されない」とは、リボ
ソームの脱アデニン化率が7%未満、好ましくは1%以
下、より好ましくは0.1%以下、最も好ましくは脱ア
デニン化率が検出限界以下になっていることをいう。
【0030】無細胞タンパク質合成系によるタンパク質
の合成は、上記のようにして得られた胚芽抽出物を使用
する点を除き、従来と同様の方法で行うことができる。
この方法は、公知のバッチ法であってもよいし、前記し
たスピリンらの連続式無細胞系タンパク質合成システム
のようなアミノ酸、エネルギー源の連続供給系であって
もよい。
【0031】バッチ法ではタンパク質合成を長時間行う
と反応が停止することがあるため、後者のアミノ酸、エ
ネルギー源の連続供給系を使用することにより、反応を
長時間維持させることができ、更なる効率化が可能とな
る。また、連続供給系でタンパク質を合成する場合に
は、透析法を使用することもできる。例えば、本発明の
胚芽抽出物を透析内液に、エネルギー源やアミノ酸を含
む混合液を透析外液に用いた限外濾過膜透析系では、タ
ンパク質を連続的に大量調製することが可能である。透
析法においては、透析膜を介して、エネルギー源やアミ
ノ酸などの合成基質が透析内液に供給され、反応副生物
等が透析外液へ排除される。透析膜は、それ自体公知の
通常用いられるものを使用することができる。透析膜の
分子量限界は、合成するタンパク質の分子量に応じて、
適当なものを用いれば良い。
【0032】ここで、エネルギー源としては、アデノシ
ン5’−三リン酸(ATP)、グアノシン5’−三リン
酸(GTP)、クレアチンリン酸等が挙げられ、アミノ
酸としては20種類のL型アミノ酸が挙げられる。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識
を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下
記の実施例により何ら限定されるものではない。
【0034】実施例1 色彩選別機による胚芽の選別 岡山産のシラサギコムギ種子(未消毒)を1分間に10
0gの割合でミル(Fritsch社製Rotor S
peed Mill pulverisette14型)
に添加し、回転数8,000rpmで種子を温和に破砕
した。篩いで発芽能を有する胚芽を含む画分(メッシュ
サイズ0.71mm〜1.00mm)を回収した後、四
塩化炭素とシクロヘキサンの混合液(容量比=四塩化炭
素:シクロヘキサン=2.4:1)を用いた浮選によっ
て、発芽能を有する胚芽を含む浮上画分を回収し、室温
乾燥によって有機溶媒を除去した後、室温送風によって
混在する種皮等の不純物を除去して粗胚芽画分を得た。
【0035】次に、ベルト式色彩選別機BLM−300
(製造元:株式会社安西製作所、発売元:株式会社安西
総業)を用いて、次の通り、色彩の違いを利用して粗胚
芽画分から胚芽を選別した。この色彩選別機の概要は、
図2に示した装置と同様である。ベージュ色のベルトの
上に粗胚芽画分を約100粒/cm2となるように供給
し、ベルト上の粗胚芽画分に蛍光灯で光を照射して反射
光を検出した。ベルトの搬送速度は、50m/分とし
た。受光センサーとして、モノクロのCCDラインセン
サー(2048画素)を用いた。
【0036】まず、胚芽より色の黒い成分(種皮等)を
排除するために、胚芽の輝度と種皮の輝度の間に基準値
を設定し、基準値から外れるものを吸引により取り除い
た。次いで、胚乳を選別するために、胚芽の輝度と胚乳
の輝度の間に基準値を設定し、基準値から外れるものを
吸引により取り除いた。吸引は、搬送ベルト上方1cm
位置に設置した吸引ノズル30個(長さ1cm当たり吸
引ノズル1個並べたもの)を用いて行った。
【0037】以上の方法により、60分間でコムギ胚芽
20gを得ることができた。
【0038】比較例1 目視による胚芽の選別 実施例1と同様にして得られた粗胚芽画分から、目視に
より判別し、竹串を使ってコムギ胚芽を選別した。60
分間でコムギ胚芽1gを得ることができた。
【0039】参考例1 コムギ胚芽抽出物含有液の調製 実施例1で得られたコムギ胚芽画分を4℃の蒸留水中に
懸濁し、超音波洗浄器を用いて洗浄液が白濁しなくなる
まで洗浄した。次いで、ノニデット(Nonidet)
P40の0.5容量%溶液に懸濁し、超音波洗浄器を用
いて洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄してコムギ胚芽を
得た。
【0040】コムギ胚芽抽出物含有液の調製は常法(Er
ickson, A. H. et al.(1996) Meth.in Enzymol., 96, 3
8-50)に準じた。以下の操作は4度摂氏で行った。ま
ず、液体窒素で凍結したコムギ胚芽を乳鉢中で微粉砕し
た。得られた粉体1g当たり1mlのPatterso
nらの方法を一部改変した抽出溶媒(HEPES−KO
H(pH7.6)80ミリモル/リットル、酢酸カリウ
ム200ミリモル/リットル、酢酸マグネシウム2ミリ
モル/リットル、塩化カルシウム4ミリモル/リット
ル、L型アミノ酸20種類各0.6ミリモル/リットル
及びジチオスレイトール8ミリモル/リットル)を加え
て、泡が発生しないように注意しながら攪拌した。3
0,000g、15分間の遠心によって得られる上清を
胚芽抽出液として回収し、あらかじめ溶液(HEPES
−KOH(pH7.6)40ミリモル/リットル、酢酸
カリウム100ミリモル/リットル、酢酸マグネシウム
5ミリモル/リットル、L型アミノ酸20種類各0.3
ミリモル/リットル及びジチオスレイトール4ミリモル
/リットル)で平衡化しておいたセファデックスG−2
5カラムでゲルろ過を行った。試料の濃度は、260n
mにおける光学密度(O.D.)(A260)が170〜
250(A260/A280=1.5)になるように調製し
た。
【0041】参考例2 透析法による連続式コムギ胚芽
無細胞タンパク質合成 連続式コムギ胚芽無細胞タンパク質合成をEndo, Y. et
al., (1992) J. Biotech., 25, 221-230に記載の方法に
準じて行った。
【0042】参考例1で得られたコムギ胚芽抽出物含有
液をデスポダイアライザー(Spectra/PorRCE, MWCO:25
k, volume: 0.5 ml)に入れ、反応液の10倍容量の透
析外液(HEPES−KOH(pH7.6)20ミリモ
ル/リットル、酢酸カリウム95ミリモル/リットル、
酢酸マグネシウム2.65ミリモル/リットル、ジチオ
スレイトール4ミリモル/リットル、ATP1.2ミリ
モル/リットル、GTP0.25ミリモル/リットル、
クレアチンリン酸16ミリモル/リットル、スペルミジ
ン0.380ミリモル/リットル、L型アミノ酸20種
類各0.3ミリモル/リットル及び0.005%NaN
31ミリモル/リットル)に対しての透析系で、反応は
20℃で行った。
【0043】以上の方法で得た条件の下に、Green fluo
rescent Protein(GFP)の合成を試みたところ、4
90nmの励起波長で510nmの蛍光が観察され、G
FPが合成されていることが確認できた。
【0044】
【発明の効果】本発明の方法によれば、効率的に大量に
胚芽を選別することができるので、タンパク質の無細胞
系での調製、たとえば、遺伝子機能解析におけるタンパ
ク質の発現や進化分子工学の分野での新しい酵素や抗体
の調製等で用いられ無細胞タンパク質合成用の細胞抽出
物の製造に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コムギ種子の胚乳(a)と胚芽(b)のRG
B輝度の頻度分布(蛍光灯照明下)を示した図である。
図中、縦軸は度数を示し、横軸は輝度を示す。
【図2】 粗胚芽画分から胚芽を選別する装置の一例を
模式的に示した概略図である。
【符号の説明】
1 粗胚芽画分供給手段 2 粗胚芽画分 3 ベルト 4 光源 5 CCDセンサー 6 吸引ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3F079 AC13 BA28 CA32 CA44 CB05 CB25 CB29 CB35 CC01 CC03 DA12 4B024 AA20 FA01 HA06 HA20 4B064 AG01 CA21 CC24 CD24 DA20

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 植物種子に機械的な力を加えることによ
    り得られる胚芽及び胚乳破砕物を含む混合物から、色彩
    選別機を用いて胚芽を選別することを特徴とする無細胞
    タンパク質合成用胚芽の選別方法。
  2. 【請求項2】 色彩選別機が、少なくとも、粗胚芽画分
    に光を照射する手段、粗胚芽画分からの反射光及び/又
    は透過光を検出する手段、検出値と基準値とを比較する
    手段、基準値より外れたもの又は基準値内のものを選別
    排除する手段を有する装置である請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 植物種子が、コムギ、オオムギ、イネ、
    コーン又はホウレンソウの種子である請求項1又は2に
    記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113414123A (zh) * 2021-06-10 2021-09-21 云南永昌硅业股份有限公司 一种提高工业硅冶炼原料质量的脉石英色选方法及装置
CN113426707A (zh) * 2021-06-10 2021-09-24 云南永昌硅业股份有限公司 一种有效提高硅金属回收率的硅渣色选方法及装置

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