JP2002336310A - 移動用介護着 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 寝たきりの病人や老人等が常時着用でき、便
所や入浴に際しても介護者の手を煩わすことが少ない移
動用介護着を提供すること。 【解決手段】 胸の周り装着される胸支持部と、該胸支
持部の胸側及び背側との間に配置され、胸側で互いに交
叉する交叉部が形成された２本の肩支持部と、背側に位
置する２本の肩支持部間を連結する背支持部とからなる
胸部用着と、臀部の周りに装着される臀支持部と、両足
の腿の周りにそれぞれ装着される腿支持部と、臀支持部
と各腿支持部の間を、それぞれ互いに交叉状に連結する
と第１、第２連結部材とからなる臀部用着とからなり、
胸支持部、臀支持部、及び各交叉部には吊り上げ用の吊
持部を形成する。肌触りが良くて水切りの良い抗菌処理
が施された合成樹脂製の繊維素材で作製する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、寝たきりの病人や
老人のように、身体が不自由で介護が必要な人、いわゆ
る被介護者が常時着用でき、便所や入浴に際しても介護
者の手を煩わすことが少ない移動用介護着に関する。

【０００２】

【従来の技術】下肢の不自由な人や寝たきり病人や老人
等の身体の不自由な人は、在宅介護を希望する場合が多
くまたこれに応えることは家族にとっても本人にとって
も幸福である。しかし、在宅介護の場合、介護者である
家族の負担は著しい。例えば、便所や浴槽に移動させる
場合、ベットに起こした後、抱きかかえて車椅子に座ら
せたり、あるいは抱きかかえた状態で移動しなくてはな
らない。特に、介護者が握力、腕力のない女性の場合に
は、このような介護作業は重労働であり、介護者の負担
を軽減する介護用具の開発が求められている。

【０００３】このような介護者の負担を軽減するため、
ベット本体又は浴槽を囲んで柱部と天部とからなるフレ
ームを設け、このフレームの天部に昇降装置を走行可能
に支持したガイドレールを配置し、この昇降装置によっ
て昇降される索条に、被介護者の身体を支持するネット
を吊持するための吊り具を取り付けた介助装置が開発さ
れている（特開平１１−３１９００４号公報）。

【０００４】この介護装置によると、被介護者を移動さ
せる場合には、ベット本体上に敷かれたハンモック状の
ネット上に移し替えた後、ネットに設けられた吊り具に
索条を係止させ、被介護者を乗せた状態で吊り上げて便
所や浴槽上まで移動させ、入浴させる場合には、ネット
と共に被介護人を浴槽内の温湯に配置して身体の洗浄を
行うものである。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、この介護装置
は、被介護人を移動させる場合には、被介護人をハンモ
ック状のネットに移し替えたりしなくてはならないた
め、介護者の手を煩わすと言う問題があった。また、移
動する場合、被介護人は単にネット上に乗った状態であ
るため、被介護者は不安定であり、著しい場合には被介
護者がネットからずり落ちる虞があった。

【０００６】また、被介護者の入浴に当たっては、ネッ
トと共に浴槽内に配置されるため、介護人が被介護人を
洗浄する場合、ネットが邪魔になり充分に洗浄できない
と言う問題があった。また、便所に移動する場合も、そ
のままでは排泄ができないため、ネットから便器に移し
替えなくてはならず、やはり介護者の手を煩わすと言う
問題があった。そこで、本発明は、被介護者を浴槽や便
所に移動させるときや、入浴させる時に介護者の負担を
軽減することができる移動用介護着の提供を目的とす
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明者等は、鋭意研究したところ、肌触りが良く
水切れの良い抗菌処理が施された合成樹脂製の繊維素材
を用いて被介護者の胸部と臀部とを吊り下げ可能な介護
着を作製すると、便所や浴槽に移動する場合には、被介
護者をネット等に移し替えることなく移動させることが
でき、また被介護者が介護着を着用した状態で洗浄でき
ることを見出し本発明を完成した。具体的には、本発明
は、複数の吊持部を有し、人体排泄部を露出して素肌に
着用する移動用介護着を特徴とする。

【０００８】更に詳細に述べれば、本発明に係る移動用
介護着は、被介護者の素肌に直接着用され、被介護者の
胸部と両肩とを支持する胸部用着と、臀部と両腿とを支
持する臀部用着とで構成される。胸部用着、臀部用着に
は、被介護者を昇降装置の索条に係止するための吊持部
が被介護者の身体の中心線に沿って複数設けられてい
る。また本発明に係る移動用介護着は、被介護者が着用
した状態で入浴可能とするため、肌触りが良くて水切り
の良い抗菌処理が施された合成樹脂製の繊維素材、例え
ばナイロン等を用いてメッシュ状に作製される。

【０００９】

【発明の実施の態様】以下、本発明の実施の形態を図面
に沿って説明する。図１は本発明に係る移動用介護着の
胸部用着の胸側概要を示す斜視図、図２は、同背側概要
を示す斜視図、図３は臀部用着の下腹部側概要を示す斜
視図、図４は、同臀部側概要を示す斜視図である。先
ず、胸部用着１０は、胸部を支持する筒状の胸支持部１
１と、胸支持部１１の胸側と背側との間に配置された帯
紐状の左肩支持部１２，右肩支持部１３とを有する。

【００１０】胸支持部１１は、被介護人が着用したとき
に、胸側と対応する背側とを幅広状で覆うように筒状に
作製され、胸側の中央部には昇降装置Ｄの索条５０を係
止するための吊持部１５が設けられている。該吊持部１
５は、ループ状に形成した紐体で構成されている。

【００１１】左右の肩支持部１２、１３は、いずれも幅
広な帯状に形成された紐状体であり、左肩支持部１２の
一端部１２’は、胸支持部１１の右胸側の上縁部に固着
され、他端部１２”は、胸支持部１１の左背側の上縁部
に固着されている。また右肩支持部１３の一端部１３’
は、胸支持部１１の左胸側の上縁部に固着され、他端部
１３”は、胸支持部１１の右背側の上縁部に固着されて
いる。

【００１２】このように、左右の肩支持部１２，１３
は、胸側の中央で交叉した交叉部１４が形成されたたす
き掛け状に配置されている。この構成により、該交叉部
１４の背側に背開口部Ｓが、また該交叉部１４の左右の
両側には左開口部Ｌ、右開口部Ｒが形成され、背開口部
Ｓから被介護人の頭を、左右開口部Ｌ、Ｒから、それぞ
れ被介護人の左腕、右腕を挿入することにより、被介護
人の左肩、右肩に該左肩支持部１２、該右肩支持部１３
を配置する。

【００１３】また左右の肩支持部１２，１３は、この交
叉部１４で互いに固着されると共に、該交叉部１４に
は、ループ状に形成した紐体からなる吊持部１５が設け
られている。また、背側に位置する左右の肩支持部１
２、１３の間には、被介護者を吊り上げた時に背側を支
持すると共に、被介護者の左右の肩が左右の肩支持部１
２、１３から外れないようにするための幅広の帯状の紐
状体で構成された背支持部１６が配置されている。

【００１４】胸部用着１０は、後述する臀部用着３０と
同様に、被介護者が素肌に直接着用するものであるか
ら、肌触りが良く水切りの良い抗菌処理が施された合成
樹脂製繊維素材、例えばナイロン等を用いて弾性の有る
メッシュ状に作製され、被介護者が着用した場合には、
隙間なく密着する構造になっている。

【００１５】次に図３に沿って臀部用着２０を説明す
る。臀部用着２０は、臀部の周りに配置され臀部及び下
腹部を支持する臀支持部２１と、左右の腿部をそれぞれ
支持する左腿支持部２２及び右腿支持部２３と、臀支持
部２１の下腹部側と左右の腿支持部２２、２３の表面側
とを連結する第１連結部材３０と、臀支持部２１の臀側
と左右の腿支持部２２、２３の裏面側とを連結する第２
連結部材４０とで構成され、人体排泄部を露出するよう
にされている。

【００１６】臀支持部２１は、被介護人が着用したとき
に、臀部とこれに対応する下腹部とを幅広状で覆うよう
に筒状に作製され、下腹部側の中央部には昇降装置Ｄの
索条５０を係止するための吊持部１５が設けられてい
る。なお、該吊持部１５は、ループ状に形成した紐体で
構成されている。また、左右の腿支持部２２、２３も腿
の外周に装着される幅広な帯状体で筒状に形成されてい
る。

【００１７】該第１連結部材３０と該第２連結部材４０
とは、ほぼ同一の構成である。第１連結部材３０は、幅
広な２本の帯状体３１、３２を互いに交叉するように配
置した交叉部３４を有し、各帯状体３１、３２のそれぞ
れの端部３１’、３２’は臀支持部２１の下腹部側に、
また各帯状体３１、３２のそれぞれの他端部３１”、３
２”は、左右の腿支持部２２、２３それぞれの表面側に
連結している。該交叉部３４で各帯状体３１、３２は互
いに固着されており、該交叉部３４には、昇降装置Ｄの
索条５０を係止するための吊持部１５が設けられてい
る。該吊持部１５は、ループ状に形成した紐状体で構成
されている。

【００１８】次に、第２連結部材４０は、幅広な２本の
帯状体４１、４２を互いに交叉するように配置した交叉
部４４を有し、各帯状体４１、４２のそれぞれの端部４
１’、４２’は臀支持部２１の臀部側に、また各帯状体
４１、４２のそれぞれの他端部４１”、４２”は左右の
腿支持部２２、２３の裏面側に連結している。そして、
該交叉部４４で各帯状体４１、４１は互いに固着されて
いる（図４）。

【００１９】臀部用着２０は、胸部用着１０と同様に、
被介護者が素肌に直接着用するものであるから、肌触り
が良く水切りの良い抗菌処理が施された合成樹脂製の繊
維素材、例えばナイロン等を用いて弾性の有るメッシュ
状に作製され、被介護者が着用した場合には、隙間なく
密着する構造になっている。

【００２０】図５〜図７に沿って本発明に係る移動用介
護着の使用法を説明する。図５は胸部用着１０、臀部用
着２０を装着した被介護人Ｍの正面図、図６は同背面図
である。先ず被介護人Ｍは、胸部用着１０の胸支持部１
１を頭部からかぶり、頭部を背開口部Ｓより引き出して
胸支持部１１を被介護人Ｍの胸の周りに装着する。次い
で、交叉部１４の左右両側の開口部Ｌ、Ｒを通してそれ
ぞれ被介護人の左腕、右腕を引き出して、被介護人の左
肩、右肩にそれぞれ該左肩支持部１２、該右肩支持部１
３を装着する。

【００２１】次に、被介護者Ｍの両脚を臀部用着２０の
筒状の臀支持部２１内に挿入し、左右の脚をそれぞれ左
腿支持部２２内、右腿支持部２３内に挿入した後、臀部
用着２０を引き上げて、左右の腿支持部２２、２３を左
右の腿の外周に密着させると共に、臀支持部２１を臀の
周りに装着する。なお、移動用介護着は素肌に着用す
る。被介護人は、胸部用着１０，臀部用着２０を着用し
た状態で生活する。本発明に係る移動用介護着は、肌触
りが良く水切りの良い抗菌処理が施された合成樹脂製の
繊維素材で作製されたメッシュ状に構成されているので
常時着用しても被介護者に影響を与えることがない。

【００２２】図７は、被介護者Ｍが従来周知な昇降装置
Ｄによって吊り上げられた状態の概要を示す概要図であ
る。該昇降装置Ｄは、ベットと便所及び浴室間を走行可
能に配置されると共に、昇降装置Ｄにはそれぞれ独立し
て昇降可能な複数の索条５０が設けれており、各索条５
０の先端には吊持部１５に係止する図示されていない係
止具が設けれられている。

【００２３】本発明に係る移動用介護着によると、被介
護人Ｍは胸部と臀部とがそれぞれ吊り上げられる。胸部
は、胸部用着１０の胸支持部１１の中央部と、左右の肩
支持部１２、１３の交叉部１４とに設けた吊持部１５で
被介護人の中心線に沿って、また被介護人の臀部は、臀
部用着２０の臀支持部２１の下腹部の中央部と、第１連
結部材３０の交叉部３４に設けられ吊持部１５で被介護
人の中心線に沿って吊り上げられる。このよう被介護人
Ｍは身体の中心線に沿って、胸部と両肩、及び臀部と両
足とが吊り上げられるため安定性が良い。また、各索条
５０の巻き上げ長さを調整することにより、被介護者に
無理がかからない姿勢で保って便所や浴室に移動するこ
とができる。

【００２４】

【発明の効果】請求項１に係る発明によると、被介護者
が素肌に着用している状態で吊持部を介して吊り上げ
て、便所や浴室に移動し、そのままは排泄や洗浄を行う
ことができるため、被介護者から移動用介護着を脱がし
たり、あるいは移動用のネット等に移し替える必要がな
いので介護者の手を煩わすことが少ない。

【００２５】請求項２に係る発明によると、被介護者の
荷重が最も加わる胸部と臀部とを吊り上げるため、被介
護者に無理が加わらない安定な状態で吊り上げることが
できる。また移動用介護着は、吊り上げ移動するに必要
な部分のみ装着されているので、浴槽での洗浄が容易で
ある。

【００２６】請求項３に係る発明によると、被介護人の
胸部は中心線に沿って配置された２つの吊持部で胸部と
両肩とが吊り上げられるので無理のない安定した状態で
吊り上げることができる。また背支持体が設けられてい
るので、吊り上げた時に被介護者の左右の肩が左右の肩
支持部１２、１３から外れない。

【００２７】請求項４に係る発明によると、被介護人の
臀部は中心線に沿って配置された２つの吊持部で臀部と
両腿とが吊り上げられるので無理のない安定した状態で
吊り上げることができる。また臀部用着には、股を覆う
部材がないので臀部用着を装着した状態で便所を使用す
ることができる。また下腹部の洗浄が容易である。

【００２８】請求項５に係る発明によると、被介護人の
身体の中心線に沿って、胸部と両肩、及び臀部と両足と
が４つの吊持部で吊り上げられるため安定性が良い。ま
た吊持部が４つであるため吊り上げる各索条の長さをき
め細か調整することができるため、被介護人の状況に対
応した状態での吊り上げが可能になる。

【００２９】請求項６に係る発明によると、水切りの良
い繊維素材で作製されているので着用した状態で入浴す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る移動用介護着の胸部用着の胸側概
要を示す斜視図。

【図２】本発明に係る移動用介護着の胸部用着の背側概
要を示す斜視図。

【図３】本発明に係る移動用介護着の臀部用着の下腹部
概要を示す斜視図。

【図４】本発明に係る移動用介護着の臀部用着の臀側概
要を示す斜視図。

【図５】本発明に係る移動用介護着を装着した状態を示
す正面図。

【図６】本発明に係る移動用介護着を装着した状態を示
す背側図。

【図７】本発明に係る移動用介護着で吊り上げられた状
態を示す概要図。

【符号の説明】

１０ 胸部用着 １１ 胸支持部 １２ 左肩支持部 １３ 右肩支持部 １２’、１２”、１３’、１３” 端部 １４、３４、４４ 交叉部 １５ 吊持部 １６ 背支持部 ２０ 臀部用着 ２１ 臀支持部 ２２ 左腿支持部 ２３ 右腿支持部 ３０ 第１連結部材 ３１、３２ 帯状体 ３１’、３１”、３２’、３２” 端部 ４０ 第２連結部材 ４１、４２ 帯状体 ４１’、４１”、４２’、４２” 端部 ５０ 索条 Ｌ 左開口部 Ｒ 右開口部 Ｓ 背開口部 Ｍ 被介護人 Ｄ 昇降装置

フロントページの続き (72)発明者 吉原 正一郎 東京都八王子市椚田町1220−２ 国立東京 工業高等専門学校内 (72)発明者 渡辺 章 東京都大田区山王２−30−８ (72)発明者 片山 裕 東京都港区三田２−３−34−1608 Ｆターム(参考） 3B011 AA01 AA05 AB08 AC00 AC22 4C040 AA08 HH01 JJ02 JJ07

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の吊持部を有し、人体排泄部を露出
   して素肌に着用することを特徴とする移動用介護着。
2. 【請求項２】 胸部用着と臀部用着との組合せからなる
   ことを特徴とする請求項１に記載の移動用介護着。
3. 【請求項３】 該胸部用着が、胸の周りに装着される胸
   支持部と、該胸支持部の胸側及び背側との間に配置さ
   れ、胸側で互いに交叉する交叉部が形成された２本の肩
   支持部と、背側に位置する２本の肩支持部間を連結する
   背支持部と、該胸支持部の胸側中央部と該交叉部に設け
   た吊持部とからなることを特徴とする請求項２に記載の
   移動用介護着。
4. 【請求項４】 該臀部用着が、臀部の周りに装着される
   臀支持部と、両足の腿の周りにそれぞれ装着される腿支
   持部と、臀支持部と各腿支持部の、それぞれの表面の間
   及びそれぞれの裏面の間を、それぞれ互いに交叉状に連
   結すると第１連結部材及び第２連結部材と、臀支持部の
   中央部と第１連結部材の交叉部に設けた吊持部とからな
   ることを特徴とする請求項２に記載の移動用介護着。
5. 【請求項５】 胸の周りに装着される胸支持部と、該胸
   支持部の胸側及び背側との間に配置され、胸側で互いに
   交叉する交叉部が形成された２本の肩支持部と、背側に
   位置する２本の肩支持部間を連結する背支持部と、該胸
   支持部の胸側中央部と該交叉部に設けた吊持部とからな
   る前記胸部用着と、臀の周りに装着される臀支持部と、
   両足の腿の周りにそれぞれ装着される腿支持部と、臀支
   持部と各腿支持部の、それぞれの表面の間及びそれぞれ
   の裏面の間を、それぞれ互いに交叉状に連結すると第１
   連結部材及び第２連結部材と、臀支持部の中央部と第１
   連結部材の交叉部に設けた吊持部とからなる前記臀部用
   着とからなることを特徴とことを特徴とする請求項２に
   記載の移動用介護着。
6. 【請求項６】 水切りの良い繊維素材で作製されたこと
   を特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれかに記載の
   移動用介護着。