JP2002332516A - 溶鋼中微細酸化物の多量分散方法 - Google Patents

溶鋼中微細酸化物の多量分散方法

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JP2002332516A JP2001138588A JP2001138588A JP2002332516A JP 2002332516 A JP2002332516 A JP 2002332516A JP 2001138588 A JP2001138588 A JP 2001138588A JP 2001138588 A JP2001138588 A JP 2001138588A JP 2002332516 A JP2002332516 A JP 2002332516A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶鋼内の酸化物を微細に、かつ多量に分散さ
せる。 【解決手段】 溶鋼中に脱酸剤を添加し、次に溶鋼1tあ
たり5×10-3〜1×10-1kgの酸素分を供給する処理をこの
順序で2回以上行うことを特徴とする溶鋼内微細酸化物
の多量分散方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細な酸化物を含
有する鋼材の製造に関し、特に、溶鋼内に、酸化物を微
細に、かつ多量に分散させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、溶接における熱影響部(以下、HA
Z部と記す。)の靭性の更なる向上を目的として、溶鋼
中で生成する微細な酸化物などの非金属介在物を積極的
に用いて鋼材特性を向上させる試みがなされている。例
えば、特開昭62-170459号公報に示される溶接用高張力
鋼板では、低Al化による脱酸生成物上へのフェライト析
出促進効果と、Ti、Bの複合添加、N量の制御とを組み合
わせて溶接熱影響部の靭性の改善を行うことが提案され
ている。また、特開平8-246026号公報では、一旦脱酸剤
を添加してキルド状態にした溶鋼中に酸素分を供給する
ことにより、溶鋼中に微細な2次晶出の非金属介在物を
生成する方法が提案されている。
【0003】しかしながら、従来知られている方法で
は、溶接入熱量が20kJ/mmを超えるような大入熱溶接時
においては加熱オーステナイト(γ)粒が著しく粗大化
するため、HAZ部の靭性の劣化が避けられない。これを
回避するためには微細な非金属介在物の量を増すことが
有効と考えられるが、供給する酸素分の量が過剰になる
と、粒径の大きい粗大介在物が発生しやすくなり、鋼材
の特性が損われる。鋼材の特性を損ねることなく抜本的
なHAZ部の靭性の向上を図るために、大入熱溶接時でも
旧γ粒の成長抑制効果(ピニング効果)が期待できるよ
うな、高温でも溶解しにくい酸化物粒子などを微細かつ
多量に分散できるような技術の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術が
持つ、微細な非金属介在物を多量に生成させるために多
量の元素や酸素分を添加すると、有害な介在物が生成す
るので、非金属介在物生成に寄与する添加元素及び/又
は酸素分の供給量を閾値以内で操業制限せざるを得ない
という問題を解決し、生成する酸化物を粗大化すること
なく微細な酸化物を鋼中で多量に生成させようとするも
のである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために種々の検討を行った結果、酸化物の分
散する溶鋼中へ適正量の脱酸剤、酸素分をこの順序で供
給した場合、既存の酸化物が最終製品の特性に悪影響を
及ぼす程には粗大化することなく、改めて微細な一次の
酸化物が晶出するという事実を見出した。この知見に基
づき、脱酸剤の添加後に酸素分供給するという一連の操
作を2回以上繰り返すことにより、微細な酸化物が従来
以上に高密度に鋼材中に分散させることができることを
見出した。すなわち、本発明は、溶鋼中に脱酸剤を添加
し、次に溶鋼1tあたり5×10-3〜1×10-1kgの酸素分を供
給する処理を、この順序で2回以上行うことを特徴とす
る溶鋼内微細酸化物の多量分散方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の方法を用いて脱酸剤と酸
素分を交互に溶鋼中へ供給することにより、溶鋼中の脱
酸元素を酸化して微細酸化物とし、かつ多量に分散する
ことができる。ここで脱酸剤とはSi、Ti、Al等が知られ
ているが、これらの元素に限定されない。また、溶鋼と
は、例えば転炉出鋼直後の未脱酸溶鋼、あるいは何らか
の脱酸処理を行った脱酸溶鋼の両方を指すものとする。
なお、1回目の脱酸剤添加、酸素分の供給処理は未脱酸
溶鋼に、2回目以降の処理は脱酸溶鋼に添加するのが、
好ましい。
【0007】溶鋼中に脱酸剤を添加すると、その一部が
各元素もしくは複合の脱酸平衡で規定される溶存酸素分
を捕捉して脱酸生成物となり、残部が溶鋼中の溶質とな
る。この溶質を含む溶鋼中に酸素分を供給することによ
り、溶質元素を改めて酸化物として晶出させることがで
きる。すなわち、鋼中に溶質として溶存する脱酸元素
(以下、単に溶質と記す。)と溶存酸素の濃度を、脱酸
平衡で規定される値より大きい状態を保つことにより、
酸化物を晶出させ続けることができる。
【0008】ここで、脱酸平衡で規定される値は溶質及
び溶存酸素の積の形で表されるため、脱酸元素のみを供
給し続けることによって、あるいは酸素分のみを供給し
続けることによって、それぞれの濃度を脱酸平衡で規定
される値より大きい状態を保つことが可能である。しか
し、いずれの方法においても一次酸化物の晶出効率は悪
くなり、コストの増大、鋼材特性の悪化、さらに酸素分
を供給し続けた場合には溶鋼自身の酸化を招き好ましく
ない。
【0009】本発明は、脱酸剤と酸素分をこの順序で交
互に2回以上供給することを特徴としている。すなわ
ち、脱酸剤を添加した後は溶質濃度が比較的高く、溶存
酸素濃度は比較的低い。この状態においては溶鋼中に酸
素分を供給することにより効率よく酸化物を晶出させる
ことができる。逆に、酸素分を供給した後は溶質濃度が
比較的低く、溶存酸素濃度は比較的高い。この状態にお
いては溶鋼中に脱酸剤を供給することにより効率よく酸
化物を晶出させることができる。このように、脱酸剤と
酸素分を交互に供給することにより、常に効率良く酸化
物を晶出させ続けることができる。
【0010】脱酸剤及び酸素分の供給を交互に2回以上
行う方法が、これらの供給を一度だけ行う方法と比較し
て優れている理由は以下のとおりである。溶鋼中で酸化
物が生成する時、いわゆる脱酸過飽和度が大きいと酸化
物生成反応の駆動力が大きくなり、急速に粗大な脱酸生
成物が形成される傾向にあることが知られている。脱酸
過飽和度は脱酸平衡で規定される値からの偏倚を表す
が、同じ量の脱酸元素及び酸素分を一度に供給する場合
は、これらを2回以上に分割して投入する場合と比較し
て脱酸過飽和度が大きくなるため、径の比較的大きな酸
化物が少数生成することになる。以上の観点から、微細
な酸化物を多数生成させるには、脱酸剤及び酸素分の供
給は交互に2回以上行う方法が望ましいことがわかる。
【0011】なお、微細な酸化物を晶出させるために
は、適切な酸素供給条件が存在する。酸素供給量が過剰
になると脱酸過飽和度が過大となるため、生成する酸化
物は粗大なものとなり、最終的な鋼材の特性を損なう。
また、酸素供給量が少なすぎると酸化物生成速度が極め
て遅くなり、操業の遅延を招き望ましくない。酸素分供
給量の下限値を溶鋼1tあたり0.005kgとした理由は、表1
に示すように0.2〜3μmの微細な酸化物の個数あるいは
増加量を効率よく増やすことができるからである。ま
た、上限を0.1kgとした理由は、これを超えると酸素供
給量が過剰になり、粒径の大きい粗大な酸化物が晶出し
やすくなるからである。
【0012】酸素分を溶鋼中へ供給する方法としては、
例えばガスを供給する方法、酸素分を含む固体を供給す
る方法が考えられる。前者としては、酸素ガスやその他
の酸化性ガスを溶鋼上から吹き付ける方法、溶鋼中に吹
き込む方法などがある。後者としては、Fe2O3等の酸化
鉄やFe-O(酸素)合金を溶鋼中に投入、あるいは不活性
ガスとともにインジェクションする方法などがある。さ
らに、上記の酸素分供給方法を2種類以上併用してもよ
い。なお、均質な微細酸化物の生成を促す観点から、酸
素分はできるだけ溶鋼全体から均一に供給される形態と
するのが望ましい。
【0013】なお、本発明において酸素分供給後に添加
する脱酸剤の量は、酸化物の効率的な生成及びコスト抑
制の観点から、直前に供給した酸素分をすべて酸化に利
用する理論量、すなわちモル比で、生成する1次の酸化
物組成にできるだけ近い量とするのが望ましい。例え
ば、酸素分を溶鋼1tあたり0.01kg添加した後にAlを添加
する場合は、生成する酸化物はAl2O3であるから、O(酸
素)とのモル比で2:3になる値、すなわち、0.112kgのAl
を添加するのが望ましい。
【0014】また、添加する脱酸剤の種類は任意であ
り、脱酸元素投入時においてそれぞれ同じ脱酸元素を添
加してもよいし、異なる脱酸元素を添加してもよい。さ
らに、同時に2種類以上の脱酸元素を添加してもよい。
また、最後の酸素分供給後、最終酸素濃度を調整する目
的で脱酸元素を投入してもよい。さらに、鋼材製品の性
質が要求を満たすものとするため、最後の酸素分添加後
に鋼の組成を調整するために少量の成分を添加してもよ
い。
【0015】
【実施例】以下、添付の表および図を参照しながら実施
例にもとづいて本発明を説明する。 (実施例1)高周波誘導加熱により1tの電解鉄を真空溶
融し、1600℃で成分調整を行った後、脱酸元素としてTi
を0.3kg添加した。溶鋼の組成は質量%で、C: 0.10〜0.1
5%、Si: 0.1%〜0.3%、Mn: 1.0〜1.5%、P: 0.01%以下、
S: 0.005%以下、Ti: 0.026〜0.033%、トータルO: 0.002
〜0.003%、残りがFe及び不可避不純物である。但しTi、
Si等の濃度は溶鋼中に溶存しているものと非金属化合物
として存在しているものの合計である。以後、この溶鋼
を溶鋼Aとする。
【0016】この溶鋼Aに、試薬の酸化鉄(Fe2O3)0.015
〜0.25kg(酸素分0.0045〜0.075kg)をArガスとともにイ
ンジェクションランスを用いて吹き込み、微細な酸化物
を生成、分散させた。以後、この溶鋼を溶鋼Bとする。
次に、この溶鋼B中に、0.3kgのTiあるいはAlを添加し、
3分間静置した。続いて、インジェクションランスを用
いて、Arガスとともに再び試薬の酸化鉄(Fe2O3)を0〜0.
6kg(酸素分0〜0.18kg)の範囲で種々変えて吹込み、その
後金型内に鋳造し、凝固させた。この試料の上部、中央
部についてそれぞれ2個以上のサンプルを切り出し、切
断面を研磨、光学顕微鏡により介在物の粒径及び母相1m
m2あたりの介在物の個数を、微細(0.2〜3μm)、粗大(3
μm以上)に分けて測定した。
【0017】結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】表1から明らかなように、2回目の酸素分供
給に際して、溶鋼1tあたり0.005〜0.1kgのときに微細酸
化物の個数が多くなる結果を得た(実験No.1〜6)。一
方、本発明の範囲外の量の酸素分を供給したもの(実験
No.11〜14)では、微細酸化物の個数が少なく、また、
平均粒径も大きいものが多かった。また、脱酸元素添加
と酸素分供給を1回だけ行った比較例として溶鋼Bを鋳造
し、同様の分析を行った(実験No. 21)。さらに、本発明
範囲の実施例で投入した脱酸元素及び酸素分を一括で添
加、供給した場合の比較例として、脱酸溶鋼A中にさら
に0.3kgのTiあるいはAlを添加し、続いて0.5kg〜0.6kg
(酸素分0.15〜0.18kg)の酸化鉄を吹き込む実験を行った
(実験No.22〜24)。
【0020】結果を表1に示す。実験No.21は、1回あた
り溶鋼中に供給した脱酸元素と酸素分の供給量は本発明
の範囲内であるが、処理操作を1回しか行っていないた
め、十分微細酸化物が生成していない。また、実験No.
22〜24は、本発明では交互に2回行うべき脱酸剤及び酸
素分の添加、供給を1回にまとめて行ったものである
が、生成した酸化物は、本発明と比較して粗大なものが
増え、微細酸化物の量は少なくなった。すなわち、本発
明によって製造される鋼材が明らかに良い特性を持つと
いえる。 (実施例2)上記の実施例1に引き続き、溶鋼中の微細酸
化物密度のさらなる増大を目的とした実験を行った。溶
鋼B中に0.3kgのTiを投入し、3分間静置した。続いてイ
ンジェクションランスを用いて、Arガスとともに試薬の
酸化鉄(Fe2O3)を0.08kg(酸素分0.024kg)吹き込んだ。こ
のTi投入〜静置〜酸化鉄吹込みの一連の操作を1〜3回行
い、その後金型内に鋳造し、凝固させた後、実施例1と
同様の分析を行った。
【0021】その結果を図1に示す。図1は、横軸に脱酸
剤添加−酸素分供給処理の回数を、縦軸に観察された0.
2〜3μmの微細酸化物の個数および、観察された全酸化
物の平均粒径をとって、脱酸剤添加−酸素分供給処理の
回数が試料中の酸化物個数、平均粒径に及ぼす影響につ
いて表したものである。また、比較のため、脱酸剤添加
−酸素分供給処理回数が0回及び1回の場合のデータを同
じ図上に示している。図1より、3回以上の脱酸剤添加−
酸素分供給処理を行った鋼中において、これを2回行っ
た鋼中と比較してさらに微細酸化物の分散密度が増大す
ることが確認された。
【0022】
【発明の効果】本発明方法によれば、溶鋼中に脱酸元素
を添加し、その後に酸素分を供給する処理をこの順序で
2回以上繰り返すことにより、溶鋼中の非金属介在物を
効率的かつ多量に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱酸剤添加−酸素分供給処理の回数と、試料1m
m2中に観察された0.2〜3μmの微細酸化物数及び観察さ
れた全酸化物の平均粒径との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植森 龍治 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4K013 BA08 BA14 CA02 CA12 EA02 EA18 EA19

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶鋼中に脱酸剤を添加し、次に溶鋼1tあ
    たり5×10-3〜1×10 -1kgの酸素分を供給する処理を、こ
    の順序で2回以上行うことを特徴とする溶鋼内微細酸化
    物の多量分散方法。
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