JP2002304767A - 相変化型光情報記録媒体 - Google Patents

相変化型光情報記録媒体

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JP2002304767A JP2002003814A JP2002003814A JP2002304767A JP 2002304767 A JP2002304767 A JP 2002304767A JP 2002003814 A JP2002003814 A JP 2002003814A JP 2002003814 A JP2002003814 A JP 2002003814A JP 2002304767 A JP2002304767 A JP 2002304767A
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Masato Harigai
眞人 針谷
Yuji Miura
裕司 三浦
Yasutomo Aman
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    • G11B7/00Recording or reproducing by optical means, e.g. recording using a thermal beam of optical radiation by modifying optical properties or the physical structure, reproducing using an optical beam at lower power by sensing optical properties; Record carriers therefor
    • G11B7/24Record carriers characterised by shape, structure or physical properties, or by the selection of the material
    • G11B7/2403Layers; Shape, structure or physical properties thereof
    • G11B7/24035Recording layers
    • G11B7/24038Multiple laminated recording layers

Abstract

(57)【要約】 【課題】 準安定Sb3Te系材料を用いた相変化型光
情報記録媒体において、基板品質と記録特性及び保存信
頼性とを満足し、初期化プロセスを不要とした相変化型
光情報記録媒体を提供する。 【解決手段】 アンチモン及びテルルを主成分とする合
金からなる記録層を有する相変化型光情報記録媒体にお
いて、結晶化促進層と不純物層を含有し、該結晶化促進
層は該記録層に隣接して配置され、該不純物層は該記録
層に隣接して配置されるか又は該結晶化促進層に隣接し
て配置され、かつ該不純物層は記録操作時に該記録層と
該結晶化促進層と溶融混合することを特徴とする相変化
型光情報記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相変化型光情報記
録媒体、その製造方法及び該媒体を用いる光情報記録装
置に関し、さらに詳しくは、初期化操作が不要で、基板
のチルト特性、記録特性及び保存信頼性に優れた相変化
型光情報記録媒体、その製造方法及び該媒体を用いる光
情報記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】レーザビーム照射による情報の記録、再
生及び消去が可能な光情報記録媒体として、結晶状態と
非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用した
相変化型光情報記録媒体が知られている。これらのう
ち、実用化レベルで広く知られている記録材料として
は、GeTe−Sb2Te3擬似2元系組成を有してい
て、Ge2Sb2Te5等の化合物組成に代表されるGe
−Sb−Te3元系合金材料(以下、GeSbTe系材
料という)と、Sb−Sb2Te3の2元系組成を主成
分とし、Ag−In−Sb−Teに代表されるAgIn
SbTe系材料とがある。前者のGeSbTe系材料
は、DVD−RAMとして実用化され、一方、後者のA
gInSbTe系材料は、CD−RW、DVD−RW及
びDVD+RWとして実用化されている。
【0003】さらに、近年、AgInSbTe系材料に
関しては、Sb−Te組成上は共晶組成近傍であって、
従来のAgInSbTe系材料と変わらないものの、空
間群Fm3mに属する準安定Sb3Te相を有するとい
う結晶構造上の新たな特徴を有するもの(以下、準安定
Sb3Te系材料と言う)が、高密度記録、繰り返し特
性に優れたものとして開発されている(特開2000−
43415号公報等)。すなわち、準安定Sb3Te相
を基本骨格として、特性向上の必要に応じて、Ag、I
n、Ge、Si、Sn、Cu等の添加元素が、少なくと
も1種添加されたものであって、AgInSbTe、A
gInSbTeGe、InSbTeGe、SbTeGe
等に代表されるものである。
【0004】GeSbTe系材料と準安定Sb3Te系
材料とを比較した場合、両者は一見すると、構成元素が
同一又は類似のように見える。例えば、準安定Sb3
e系材料に対する添加元素がGeである場合には、構成
元素がGe、Sb、Teの3元素となって、構成元素の
上ではGeSbTe系材料と全く同一となる。しかしな
がら、実際には後記するように、各元素の組成比や機能
が大きく異なること等から、物性やそれに基づく記録特
性の相違点がきわめて大きく、これまでは、根本的に異
なる材料系として、異なったアプローチにより開発が行
なわれてきた。すなわち、GeSbTe系材料と準安定
Sb3Te系材料には、以下に挙げる相違点があり、両
者は本質的には異った系統の材料である。
【0005】まず、第一に、前者は、GeTe−Sb2
Te3擬似2元系合金として、Teを50〜60原子%
含むTe系材料として捉えられるの対し、後者は、Sb
−Sb 2Te3の2元系合金、特に共晶点(Sb−30原
子%Te)近傍のSb系材料として捉えることができ
る。Ge量に関しては、前者が、実用的には10〜20
原子%のGeを含み、10原子%未満では記録層として
の役割を果たさないのに対し、後者は、Geを含む添加
元素の総量が、準安定Sb3Te相の出現を妨げないよ
うに、好ましくは10原子%未満、より好ましくは8原
子%程度以下でなくてはならない。すなわち、準安定S
3Te系材料では、10原子%以上のGeを含むこと
ができない。
【0006】第二に、結晶と非晶質の間の相変化におい
て、前者は、Ge、Sb、Teの3元素が結晶構造の基
本骨格をなし、また、良好な記録再生動作には、これら
3元素の上記比率が必須であるのに対し、後者は、S
b、Teの2元素が結晶構造の基本骨格をなし、基本的
には2元素のみで記録再生動作が可能である。後者にお
いて、記録層には、周期律表第I族から第VII族に属す
る少なくとも1種類の元素、例えば、Ag、Al、I
n、Ge、Si、N、Sn、Cu等を含むことができる
が、これらの元素は特性改善のための補助元素として作
用する。特に、Geは保存信頼性を向上させる働きがあ
る。このように、上記した2つの材料においては、その
Ge原子の役割が全く異なるものである。
【0007】第三に、溶融再結晶時(消去時)の結晶化
においては、前者が、非晶質マーク内で核形成が生じる
均一核形成に基づくといわれているのに対して、後者
は、消去部(結晶部)と非晶質マークとの界面で起こる
不均一核形成に基づくといわれている(例えば、ODS
1999発表WA2)。このような相変化メカニズムの
違いから、準安定Sb3Te系材料は、溶融・再結晶に
より消去を行うのに対し、GeSbTe系材料は固相消
去である。この消去法の相違に起因して、準安定Sb3
Te系材料は、記録のレーザビーム径を小さく絞ること
により、記録密度を際限なく高くすることが可能である
が、これに対し、GeSbTe系材料では、マーク長で
0.35μm程度が実用上の限界とされている。このよ
うな違いから、両材料を用いた光情報記録媒体には互換
性はない。
【0008】第四に、非晶質状態の記録層薄膜を加熱し
た際の結晶構造変化において、前者は、面心立方格子系
結晶構造、六方晶系結晶構造の順に、2度の相変化を起
こすのに対し、後者は、1度の相変化(面心立方格子系
結晶構造又は菱面体晶系結晶構造のいずれか一方にな
る)しか起こさず、結晶学的にも温度に対する挙動が異
なっている。
【0009】現在実用化されている上記2相変化型光情
報記録媒体では、記録層はスパッタリング等の真空成膜
法により成膜され、成膜工程直後の膜は、非晶質状態
(アモルファス)となっており、媒体の反射率は5%未
満である。一方、製品化された光情報記録媒体の記録層
の初期状態は、駆動装置側のサーボを安定かつ容易に行
うために、反射率の高い結晶状態でなければならない
(規格では18%以上)。このため、成膜工程終了後
に、媒体半径方向に100〜200μm幅のレーザビー
ムを順次照射して記録層を結晶化させる、いわゆる初期
化プロセスが必要であった。しかしながら、上記初期化
プロセスには、1枚あたり30秒以上の時間が必要であ
るため、スループットを他工程と合わせるためには初期
化装置が多数台必要となり、設備費が高くなって、製造
コストの上昇を招くという不都合があった。
【0010】さらに、情報記録の高密度化に伴い、初期
化に適したレーザ強度の許容範囲は狭くなる傾向にある
ため、初期化用半導体レーザの強度プロファイル管理や
その経時変化の管理等がより厳しくかつ煩雑になり、安
定して良賀品を得ることが困難になっている。これによ
って、一層の製造コストの上昇を招いてしまうという不
都合があった。
【0011】こうした状況下、初期化プロセスの改善に
ついて種々工夫がなされてきた。その一つとして、Ge
SbTe系材料を用いる記録媒体においては、記録層の
結晶化を促進する結晶化促進層を、あらかじめ記録層の
直下に設けておくことにより、記録媒体を製造する際の
成膜段階で記録層を結晶化させ、初期化プロセスを不要
化又は短時間化する方法(特許第3185890号)が
知られている。この方法は、初期化プロセスを基本的に
は不要にできる点で注目される。
【0012】前記特許第3185890号公報の記載に
よると、Ge、Sb及びTeを主成分とする材料からな
る記録層を有する光情報記録媒体の製造方法において、
ある一定の結晶構造からなる結晶化促進層(例えば、S
b、Bi、Sb化合物及びBi化合物の中から選ばれる
少なくとも1つを含む材料等からなる層)を設け、この
直上に記録層を成膜することにより、成膜段階で記録層
の結晶化をすることができ、これにより初期化プロセス
が不要な光情報記録媒体を実現できるとされている。そ
して、CNR、消去比についてのみであるが、安定した
記録特性が得られることが開示されている。
【0013】また、この特許第3185890号公報に
よれば、Ge、Sb及びTeを主成分とする材料からな
る記録層とは、非晶質状態から温度を上げていくと、面
心立方格子系結晶構造、六方晶系結晶構造の順に相変化
を起こす材料で、この記録層合金は、その実施例等から
も、いわゆるGeSbTe系材料であることが確認でき
る。
【0014】したがって、前記特許第3185890号
は、準安定Sb3Te系材料を記録層に有する光情報記
録媒体の初期化工程を不要とする方法まで開示したもの
ではない。
【0015】本発明者らの知見によると、一般的に、記
録層とともに、結晶化促進層を用いる媒体は、結晶化促
進層の材料が及ぼすメディア特性への悪影響が大きいた
め品質の確保がままならず、結果的に製造コストを削減
できないという問題を有している。特に、保存信頼性の
低下が深刻な問題となる。これは、結晶化促進層が記録
時に溶融して層としては存在しなくなるものの、依然と
し、非晶質記録マーク中になんらかの形で分散して残存
し、保存時に結晶化核等として働き、非晶質記録マーク
の結晶化を促進するためと考えられる。そのため、結晶
化促進層を用いる方法においては、成膜段階での結晶化
を容易とするという観点からは、結晶化しやすい記録層
材料を用いることが望ましいのであるが、その場合には
信頼性の確保が困難となり、また、逆に、結晶化しにく
く信頼性の高い記録材料を用いた場合には、保存信頼性
の確保はできたとしても、成膜段階での結晶化が困難と
なってしまうのである。すなわち、結晶化促進層を用い
る方法は、成膜段階における記録材料の結晶化促進と、
非晶質記録マークの信頼性確保(結晶化の阻害)という
相反する要件を両立しなければならないという困難性を
有する。
【0016】この点に関して、特許第3185890号
公報では、CNR、消去比について安定した記録特性が
得られるということを実施例として開示しているもの
の、保存信頼性に関しては全く開示されておらず、唯
一、記録層におけるGeの原子比率が10原子%未満の
場合は、信頼性の点で好ましくないと言及しているのみ
である。GeSbTe系材料の場合、保存信頼性の観点
から、Ge添加量は10原子%以上であることが好まし
いものであるが、本発明者らの知見では、準安定Sb3
Te系材料の場合、上記のように、Ge添加量は10原
子%未満である必要がある。なぜならば、Geを含む添
加元素の総量が10原子%以上になると、準安定Sb3
Te相の形成が困難となり、また、たとえ準安定Sb3
Te相の形成がされたとしても、高密度記録が良好に行
なえないという実験事実があるからである。つまり、準
安定Sb3Te系材料においては、Geの添加量は最大
でも10原子%未満とならざるを得ないのである。
【0017】これは、GeSbTe系材料では、Ge自
身が結晶と非晶質間で相変化を起こす際に基本骨格をな
すのに対して、準安定Sb3Te系材料では、Geはあ
くまでも不純物元素(補助元素)として作用するに過ぎ
ないという、両材料系における根本的な相違によるもの
と考えられるが、いずれにせよ、上記のことから、準安
定Sb3Te系材料を用いる記録媒体において結晶化促
進層を用いるとすれば、成膜時の結晶化と信頼性の維持
との両立を図ることはきわめて困難なことが予想され
る。
【0018】このようなことから、準安定Sb3Te系
材料において、初期化プロセス不要な光情報記録媒体に
最適な層構成の記録材料を見出すには、膨大な組み合わ
せについて検討する必要があり、多大な労力と時間が必
要とされることが予想される。以上のような事情を鑑み
た場合、前記特許第3185890号公報の記載を基に
しても、準安定Sb3Te系材料に関して初期化プロセ
スを不要とする技術を開発することは容易でない。準安
定Sb3Te系材料の初期化プロセスを不要にするに
は、その材料に応じた新しい技術の開発が必要である。
【0019】これまでに、本出願人は、先に、準安定S
3Te系材料を用いる光情報記録媒体において、「基
板上に、少なくとも第一の保護層、結晶化促進層、記録
層、第二の保護層、反射層を積層した光情報記録媒体に
おいて、結晶化促進層がBi原子を含む材料であり、記
録層がSb及びTeを主成分とした空間群Fm3mから
なる準安定Sb3Te相を有していて、該記録層にGe
及び/又はInが添加されたものであって、結晶化温度
Tcが145℃≦Tc≦185℃の範囲にあるものであ
り、かつ該記録層と該結晶化促進層との平均組成におけ
るGe原子組成(α原子%)及びIn原子組成(β原子
%)並びにBi原子組成(γ原子%)の間にα+0.7
β≧γの関係が成り立つものであることを特徴とする光
情報記録媒体」について提案している。
【0020】ここで、結晶化転移温度又は単に結晶化温
度Tcとは、スパッタ成膜されたアモルファス記録材料
を10℃/minの昇温速度で加熱したときに結晶化す
る温度のことを言い、記録材料の結晶化のしやすさの目
安になるものである。具体的には、膜厚200nm程度
の記録材料薄膜をガラス基板上に成膜し、これを機械的
に粉末状に削り落としたものを示差走査熱量分析法(D
SC)によって測定したものである。
【0021】しかしながら、上記の媒体では、基板品質
(チルト特性)と記録特性の両立化が困難であり、実用
化までには未だ至っていなかった。すなわち、媒体製造
に際しての成膜時での結晶化を容易にするという点では
Tcは低い方が望ましいが、本発明者らの知見では、準
安定Sb3Te系材料においては、Bi等の結晶化促進
材料を用いた場合、保存信頼性を確保するために、少な
くとも145℃以上、望ましくは155℃以上という高
い結晶化温度(Tc)が必要となる。また、記録層の結
晶化は熱活性化反応であり、Bi等の結晶化促進材料を
用いた場合、記録層成膜時の基板温度を高めるほど結晶
化度合いの高い記録膜が得られる。しかしながら、結晶
化温度(Tc)が高くなると、保存信頼性の点では好ま
しいものの、逆に基板品質の点からは好ましくない。基
板品質の点から見ると、Tcが高くなると、記録層の成
膜時での基板温度が高くなるため、その基板材料が大き
く制限されてしまい、基板として最も一般的に用いられ
ているポリカーボネート樹脂基板の使用が困難になる。
【0022】本発明者らが、赤外線放射温度計で基板温
度を測定したところによると、Tc=155℃の記録材
料、例えば、Sb68Te28−Ge4の結晶記録膜形
成のために必要な基板温度は約90℃であった。しかし
ながら、このような基板温度で記録膜を形成しようとす
ると、光情報記録媒体で用いられるポリカーボネート基
板は熱変形を起こしてしまい、得られる光情報記録媒体
は実用に適しないものとなる。なお、ここでいう基板温
度とは、前工程の誘電体成膜による自然昇温(プラズマ
による加熱)又は赤外線ランプ等による加熱後、基板が
記録層成膜室に搬送されてきた時の温度であり、前工程
での加熱ピーク温度はこれよりも10〜20℃程度高く
なると考えられる。ポリカーボネート基板の熱変形は、
記録層の成膜形成工程の前工程の誘電体成膜時の加熱ピ
ーク温度又は赤外線ランプ等による加熱工程でのピーク
温度で生じるものと考えられる。以下、基板温度とは、
前記記録層成膜室で測定したときの基板温度をいうもの
とする。このように、前工程での加熱によって、基板温
度90℃を得ようとする場合には、前工程での加熱ピー
ク温度(基板温度)が高くなり、このために基板に熱変
形が生じてしまうことになる。
【0023】逆に、基板変形が問題とならないポリカー
ボネート基板温度(記録層成膜直前の温度)は約80℃
であったが、Tc=155℃の記録材料をこの温度で成
膜した場合、その反射率は、記録時に形成される溶融再
結晶の反射率と比して70%程度となり、不満足のもの
となる。以下、記録時に形成される溶融再結晶の反射率
と比較した成膜直後の記録材料の反射率の値を相対反射
率という。
【0024】記録前の媒体(メディア)の相対反射率が
70%の場合、反射率の記録回数依存性が大きくなり、
RWメディアとしては使用不可能である。反射率の異な
る部分が記録媒体面内に分布すると、反射率差による光
吸収率の違いによって、記録時にアモルファス−結晶間
の境界の反射率勾配に差を生じさせ、記録マークの時間
的な揺らぎ、すなわち記録ジッターが悪くなる。特に反
射率変動が大きいのは、初回記録とダイレクトオーバー
ライト1回目であり、ダイレクトオーバーライト1回目
のジッター上昇が問題となる。上記相対反射率が70%
の場合、ダイレクトオーバーライト1回目の記録ジッタ
ーが10%を超えてしまい実用に適さない。RWメディ
アとして使用するには、記録前メディアの相対反射率が
最低でも80%必要である。記録前メディアの相対反射
率が80%以上の場合は、1回目の記録により相対反射
率が90%以上に上昇し、ダイレクトオーバーライト1
回目以降の反射率変動が10%以内となるため、ジッタ
ー9%以下の規格を満足することが可能となる。従っ
て、その相対反射率が80%以上の媒体の開発が実用的
観点からは必要となる。
【0025】このような理由により、準安定Sb3Te
系材料を用いた光情報記録媒体の初期化レス技術は、基
板品質と記録ジッター特性の両立が困難なことから、い
まだ実用化に至っていないのである。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、準安定Sb
3Te系材料を用いた相変化型光情報記録媒体におい
て、基板品質と記録特性及び保存信頼性とを満足し、初
期化プロセスを不要とした相変化型光情報記録媒体、そ
の製造方法及び該媒体を用いる光情報記録装置を提供す
ることをその課題とするものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成する
に到った。
【0028】すなわち、本発明によれば、以下に示す相
変化型光情報記録媒体、その製造方法及び光情報記録装
置が提供される。 (1)アンチモン及びテルルを主成分とする合金からな
る記録層を有する相変化型光情報記録媒体において、結
晶化促進層と不純物層を含有し、該結晶化促進層は該記
録層に隣接して配置され、該不純物層は該記録層に隣接
して配置されるか又は該結晶化促進層に隣接して配置さ
れ、かつ該不純物層は記録操作時に該記録層と該結晶化
促進層と溶融混合することを特徴とする相変化型光情報
記録媒体。 (2)2つの不純物層を含有し、その1つの不純物層は
該記録層に隣接して配置され、その他方の不純物層は該
結晶化促進層に隣接して配置されていることを特徴とす
る前記(1)に記載の相変化型光情報記録媒体。 (3)該記録層が、銅を含むことを特徴とする前記
(1)又は(2)に記載の相変化型光情報記録媒体。 (4)該記録層が、アンチモン及びテルル以外に他の元
素を実質的に含まないことを特徴とする前記(1)〜
(2)のいずれかに記載の相変化型光情報記録媒体。 (5)該記録層の結晶化転移温度が、120℃以下であ
ることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記
載の相変化型光情報記録媒体。 (6)該結晶化促進層が、ビスマス又はビスマス含有合
金からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいず
れかに記載の相変化型光情報記録媒体。 (7)該結晶化促進層が、(i)ビスマスと、(ii)ゲ
ルマニウム、銅及びインジウムの中から選ばれる少なく
とも1種の元素とを含む合金からなることを特徴とする
前記(1)〜(6)のいずれかに記載の相変化型光情報
記録媒体。 (8)該不純物層が、融点600℃以下の合金からなる
ことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載
の相変化型光情報記録媒体。 (9)該不純物層が、(i)ゲルマニウムと、(ii)銅
及び/又はインジウムとを含む合金からなることを特徴
とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の相変化型
光情報記録媒体。 (10)該不純物層が、記録層に対して、記録再生のレ
ーザービームの入射側でない側に隣接して配置されてい
ることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記
載の相変化型光情報記録媒体。 (11)アンチモン及びテルルを主成分とする合金から
なる記録層を有する相変化型光情報記録媒体の製造方法
において、結晶化促進層を形成する工程と不純物層を形
成する工程とを含み、該結晶化促進層は該記録層に隣接
して配設させ、該不純物層は該記録層に隣接して配設さ
せるか又は該結晶化促進層に隣接して配設させることを
特徴とする相変化型光情報記録媒体の製造方法。 (12)2つの不純物層形成工程を含み、その1つの不
純物層は該記録層に隣接して配設させ、その他方の不純
物層は該結晶化促進層に隣接して配設させることを特徴
とする前記(11)に記載の相変化型光情報記録媒体の
製造方法。 (13)相変化型光情報記録媒体を用いる光情報記録装
置において、該相変化型光情報記録媒体として前記
(1)〜(9)のいずれかに記載の相変化型光情報記録
媒体を用いることを特徴とする光情報記録装置。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明は、Sb及びTeを主成分
とする準安定Sb3Te系材料からなる記録層を有する
相変化型光情報記録媒体(以下、単に媒体とも言う)に
おいて、結晶化速度や記録・再生特性及び保存信頼性等
を改善するために、結晶化促進層とともに不純物層を配
設し、かつ該結晶化促進層を、該記録層に隣接して配置
し、該不純物層を、該記録層及び/又は該結晶化促進層
と隣接して配置し、記録操作時にこれら3層を混合し
て、不純物元素の機能を発現させるものである。
【0030】本発明の場合、前記記録層、結晶化促進層
及び不純物層の溶融混合により得られる混合物の成分組
成は、準安定Sb3Teの結晶相の出現を妨げない範囲
の成分組成である。本発明の場合、前記混合物は、Sb
3Te及び不純物元素(補助元素とも言う)Mからな
り、その不純物元素Mの割合は、記録層、結晶化促進層
及び不純物層に含まれる総和元素数Zに対して、10原
子%未満、好ましくは8原子%以下である。本発明で言
う不純物元素(補助元素)Mとは、Sb3Te系材料に
おけるその結晶構造の基本骨格の構成には参加しない元
素を意味するものであり、結晶構造元素からは見ると不
純物とされる元素である。Sb3Te系材料の場合は、
Sb及びTe以外の元素である。
【0031】不純物元素Mとしては、Ib族元素、II族
元素、III族元素、IV族元素、V族元素、VI族元素、希
土類元素及び遷移金属元素の中から選ばれる少なくとも
1種の元素が用いられる。これらの不純物元素Mは、記
録層の結晶化速度の調整、記録情報の保存特性、記録層
の繰り返し記録特性等を向上させる効果を示す。
【0032】前記不純物元素Mのうち、記録データの保
存信頼性を向上させる記録状態安定化元素としては、4
族元素、1B族元素、3族元素が有効である。Geが最
も有効であるほか、Cu、In、Bも有効である。加え
て、5族のNも記録状態安定化に有効である。
【0033】本発明の媒体においては、記録層の他、結
晶化促進層及び不純物層を含有するが、この場合の結晶
化促進層は、記録層を形成する準安定Sb3Te系材料
の成膜時の結晶化を促進させる作用を示す層を意味す
る。一方、不純物層は、媒体の各種特性を向上させるた
めの層を意味する。
【0034】本発明によれば、結晶化促進層及び不純物
層の配設により、記録層中に含まれるべき不純物元素M
の量を減らすことができ、その結果、記録層の結晶化転
移温度が下げられ、特別な加熱機構を有することなく、
媒体を製造する際の成膜時の自然昇温と結晶化促進層の
作用とによって、相対反射率80%以上のアズデポ結晶
化(成膜したままの状態での結晶化)が可能となる。
【0035】本発明者らが鋭意検討したところによる
と、ポリカーボネート基板に、後工程の貼り合わせ工程
で矯正できない著しい熱変形が生じるときの基板温度
(上記のとおり、記録層成膜室で測定した温度)は約8
0℃であった。
【0036】一方、上市されている一般的な相変化型光
情報記録媒体製造用枚葉スパッタ装置では、第1の誘電
体層及び反射放熱層における基板温度上昇が著しく、こ
の間に基板冷却用ステーションを設けることが一般的で
あるが、第1の誘電体層成膜後の基板温度は50〜80
℃であった。
【0037】本発明によれば、結晶化促進層と不純物層
を設けたことにより、特別な加熱機構を必要とせず、第
1の誘電体層成膜による自然昇温と結晶化促進層の作用
とによって、基板のチルト特性を満たしながら、相対反
射率80%以上と記録特性及び保存信頼性の全てを満た
す媒体を得ることが可能となる。即ち、記録層とともに
結晶化促進層と不純物層を配設する本発明の媒体の場
合、不純物元素Mが不純物層に含有され、記録層中の不
純物元素Mの濃度は大幅に低下されていることから、そ
の記録層のTcを大幅に低下、通常、120℃以下の温
度にまで低下させることができる。そして、このことに
より、第1の誘電体層成膜による自然昇温(前記、上市
装置における50〜80℃)で、記録層の結晶化に十分
な基板温度が得られるようになる。本発明においては、
記録層の結晶化は、結晶化促進層により促進されるが、
これは、記録層の成膜に際しては、前記第1の誘電体層
の成膜により上昇した基板温度による熱作用と、その結
晶化促進層に含まれる結晶化促進元素MBが、その記録
層に対して、結晶核生成や結晶成長等の作用を促進する
ことによるものと考えられる。
【0038】本発明によれば、結晶化促進層と不純物層
を配設したことから、前記のように、記録層の結晶化転
移温度Tcを低くすることができ、このTcを低く設定
することにより、特別な加熱機構を有さなくても、第1
の誘電体層成膜時の自然加熱と結晶化促進層の作用のみ
で、実用レベルの相対反射率80%の記録層を得ること
ができる。さらに、本発明によれば、結晶化促進層とと
もに不純物層を設けたことにより、他の結晶化転移温度
の高い材料に比べ、同じ基板温度におけるアズデポ結晶
化に必要な結晶化促進層の厚さを薄くすることができ
る。
【0039】本発明者らの知見では、準安定Sb3Te
系材料をアズデポで結晶化させるためには、不純物層が
存在しない場合には、ある一定膜厚以上の比較的厚膜の
結晶化促進層が必要である。そして、該膜厚は成膜時の
基板温度及び記録層のTcとそれぞれ負の相関及び正の
相関を有する。例えば、基板温度50℃で、準安定Sb
3Te系材料であるSb(77)・Te(23)合金
(Tc=115℃)を相対反射率80%以上にアズデポ
結晶化させるためには、厚さ0.4nm以上の純Bi結
晶化促進層が必要となるが、一方基板温度70℃では、
純Bi結晶化促進層の膜厚を0.3nm程度まで減らす
ことができる。また、上記準安定Sb3Te系材料とし
て、2原子%のGeを含むSb(75.5)・Te(2
2.5)−Ge(2)合金(Tc=138℃)を用いる
場合には、同様に基板温度70℃でアズデポ結晶化させ
るためには、純Bi結晶化促進層膜厚は0.8nm以上
となる。
【0040】本発明の場合、不純物層の配設により、結
晶化促進層の厚さを薄くできることによる利点は3点あ
る。第1に、記録層、結晶化促進層及び不純物層を溶融
混合したときに、保存信頼性低下等の副作用を及ぼす結
晶化促進元素MBの結晶化促進層中の含有量を最小限に
減らすことができる。これにより、記録層中の準安定S
3Te系材料におけるアモルファス状態安定化元素M
Aのうち、高融点材料であるGeやCuの不純物層濃度
を低くしたり、不純物層の膜厚を薄くすることができ、
1回の記録で前記各層が十分均一に混合され、不純物元
素Mの機能を安定的に発現させることが可能となる。
【0041】第2に、結晶化促進層の副作用を補償する
ための結晶状態安定化元素MAの結晶化促進層中の含有
量を減らすことができ、他に添加できる特性改善元素の
量的マージンが拡げられる。上記のように、記録層、結
晶化促進層及び不純物層を1回の記録で溶融混合した混
合物からの準安定Sb3Te結晶相の出現を妨げないた
めには、結晶化促進元素MBと結晶状態安定化元素MA
の総和は、記録層、結晶化促進層及び不純物層中に含ま
れる全元素数Zに対して、10原子%未満にすることが
必要である。両元素MA、MBの総和を減らせること
は、反射率を改善するためのAgや、変調度を改善する
ためのIn又は高速記録や記録感度波長を変化させるた
めの不純物元素Mを、不純物層、記録層及び/又は結晶
化促進層に含有させることのできる量的マージンが取れ
ることにつながる。特に、これは、記録・再生レーザー
ビームの短波長化(青色化)に伴い、記録層自体の膜厚
が薄くなる(結晶化促進元素MBの全元素数Zに対する
割合が相対的に高くなる)際に有利である。
【0042】第3に、結晶化促進元素MBは、保存信頼
性低下以外に変調度の低下を副作用としてもたらすが、
これに対する悪影響を最小限に抑えることができる。変
調度とは、記録マーク(アモルファス)とスペース(結
晶相)の反射率差を結晶相の反射率に対する比で表した
もので、14T信号について60%以上の規格が定めら
れている。例えば、結晶化促進元素MBがBiの場合、
このBiの記録層中濃度が5原子%を超えると、レーザ
ーパワーが低い領域で変調度の規格割れが生じ、パワー
マージンの狭い記録媒体となってしまう。このため、B
iの記録層中原子濃度は、5原子%未満が望ましく、よ
り好ましくは2原子%以下である。これは、記録層と不
純物層の膜厚和=15nmに対して、純Bi結晶化促進
層膜厚で約0.4nmに相当する厚さである。
【0043】次に、本発明の媒体の層構成について詳述
する。
【0044】本発明で用いる記録層は、空間群Fm3m
に属する準安定Sb3Te系材料からなるもので、Sb
とTeを主成分とする合金(記録層合金)からなるもの
である。この記録層合金は、SbとTeからなる実質的
に他の元素を含まない合金であることができる。この合
金において、Teに対するSbの原子比[Sb]/[T
e]は2.5〜4で、特に共晶組成の3付近が繰返し特
性上好ましい。前記記録層合金は、SbとTeの他に不
純物元素Mを含む合金であることができる。不純物元素
Mの含有割合は、2原子%以下、好ましくは1原子%以
下である。この記録層合金に加える不純物元素Mとして
は、Ib族元素、II族元素、III族元素、IV族元素、V
族元素、VI族元素、希土類元素及び遷移金属元素の中か
ら選ばれる少なくとも1種の元素が用いられる。
【0045】本発明において、記録層(合金)の結晶化
転移温度Tcは、結晶化促進層Biの膜厚を0.4nm
以下に薄くできる120℃以下であることが望ましい。
そのために、前記のように記録層が他元素を実質的に含
まないSb−Te系2元合金からなることが望ましい。
ここで、他元素を実質的に含まないとは、他元素の濃度
が準安定Sb3Te相の結晶化転移温度約115℃を大
きく変化させない0.5原子%未満の濃度をいう。
【0046】本発明において、記録層にはCuを含むこ
とが望ましい。Cuは、記録層の結晶化転移温度Tcを
高めずにアモルファス状態を安定化させる特異な元素で
ある。Cuは、結晶状態安定化に最も有効なGeを等量
で置換することが可能である。ただし、多量のCuは記
録ジッターを悪化させるため、記録層中濃度は3原子%
以下、好ましくは2原子%以下である。また、記録層に
は、記録層の結晶化転移温度Tcを過度に高めない範囲
(115〜125℃程度)において、アモルファス状態
安定化元素(MA)であるGe、In、B及び/又はN
を含むことができる。
【0047】本発明によれば、高融点材料であるCuを
記録層に添加することにより、不純物層の融点を下げた
り、不純物層の膜厚を薄くできるため、1回の記録で記
録層、結晶化促進層及び不純物層が十分均一に混合さ
れ、不純物元素Mの機能を安定的に発現させることが可
能となる。また、Cuが添加された記録層はTcが上が
らないため、結晶化促進層の膜厚も薄くでき、結晶化促
進元素(MB)の副作用を最小限に抑えることができ
る。
【0048】本発明においては、結晶化促進層は、通
常、Bi又はその合金からなる。ここで合金とは、広く
解釈され、固溶体や金属間化合物及びこれらとBi単体
との混合物をいう。本発明において使用可能なBiの合
金としては、(i)Biと、(ii)Ag、Ca、Cd、
Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、H、H
g、In、Ir、K、La、Li、Mg、Mn、Mo、
N、Na、Ni、O、P、Pb、Pd、Po、Pr、P
t、Pu、Rb、Rh、Ru、S、Sb、Se、Si、
Sn、Sr、Te、Th、Ti、Tl、U、Cl及びB
rの中から選ばれた少なくとも1種の元素とからなる合
金を挙げることができる。この場合、Bi合金中におけ
るBiの組成比は、原子数濃度で、通常は5〜100原
子%、好ましくは50〜100原子%、より好ましくは
70〜100原子%である。
【0049】本発明によれば、準安定Sb3Te系材料
からなる記録層に隣接して結晶化促進層を設けたことに
より、媒体の製造に際しての成膜時に記録層の結晶化が
促進され、記録層のTcが十分に低い場合には、特別な
加熱機構を有さなくても、スパッタ成膜時の温度上昇の
みで実用レベルのアズデポ結晶化が可能となる。
【0050】本発明において、結晶化促進層には、結晶
化促進元素MBの効果を大きく損ねない範囲で、Ge、
Cu、In、B及び/又はN等のアモルファス状態安定
化元素MAを含有させることが望ましい。結晶化促進元
素MBがBiの場合、結晶化促進層中におけるBi組成
比は、50〜100原子%、好ましくは70〜100原
子%である。本発明によれば、高融点材料であるGeや
Cuを結晶化促進層中に低濃度で添加することにより、
不純物層の融点を下げたり、不純物層の膜厚を薄くでき
るため、1回の記録で記録層、結晶化促進層及び不純物
層が十分均一に混合され、不純物元素Mの機能を安定的
に発現させることが可能となる。また、アモルファス状
態安定化元素MAは、結晶化促進元素MBの効果を大き
く損ねない範囲で添加されるため、結晶化促進層の膜厚
も薄くて十分であり、結晶化促進元素MBの副作用を最
小限に抑えられる。
【0051】本発明において、不純物層は、不純物元素
Mを含む合金からなる。この場合、不純物元素Mには、
記録層合金に対して不純物として作用する各種のもの、
好ましくは、Ag、In、Sn、Si、Ge、Al、A
u、Cu、Ga、Mn、Mg、B、Dy等が包含され
る。不純物層を構成する合金(不純物層合金)の具体例
を示すと、例えば、Ag−In、Ag−Sb、Ag−S
n、Ag−Te、Ag−Ge、Al−Ge、Al−S
n、Al−Te、Au−Ge、Cu−In、Cu−S
b、Cu−Sn、Cu−Te、In−Te、In−S
n、In−Sb、Ge−In、Ge−Sb、Ge−S
n、Ge−Te、Ga−In、Ga−Ge、Ga−S
b、Ga−Sn、Ga−Te等の2元合金及びこれらの
構成元素から成る3元合金等があげられる。この不純物
層合金としては、所望するその不純物層の機能に応じて
適宜のものが用いられる。
【0052】各層に含まれる不純物元素Mの総量は、準
安定Sb3Te相の出現を妨げないように、記録層と結
晶化促進層と不純物層の混合時の平均組成で10原子%
未満、好ましくは8原子%以下であることが望ましい。
また、これらの不純物層は、その融点が600℃以下で
あることが望ましい。ここで言う不純物層の融点とは、
スパッタ成膜された不純物層材料を10℃/minの昇
温速度で加熱したときに溶融ピークが出現する時の温度
のことをいい、相図上の液相線の温度とは異なる。
【0053】本発明によれば、不純物層の融点を600
℃以下とするときには、これは準安定Sb3Te系材料
の融点である500〜600℃と同等となるため、初回
記録時に不純物層と記録層とが完全に溶け合い、繰り返
し記録による諸特性の変動がなくなるという利点が得ら
れる。
【0054】本発明において、不純物層には、Ge、C
u、In、B及び/又はN等のアモルファス状態安定化
元素MAを含むことが望ましい。記録層の結晶化転移温
度が120℃以下の場合、又は、記録層が他元素を実質
的に含まないSb−Te系2元合金である場合、準安定
Sb3Te系記録材料は、80℃、85%RHの保存条
件によって容易に結晶化してしまう。すなわち、アモル
ファス記録マークが容易に消失してしまう。このため、
不純物層には、アモルファス状態を安定化させるGe、
Cu、In、B及び/又はN等の元素を含有させるのが
好ましい。単位濃度あたりの保存効果が高いGeの場合
では、Geを、少なくとも3原子%の割合で含むのが好
ましい。加えて、本発明のように、結晶化促進層を含む
層構成の場合は、結晶化促進層、記録層及び不純物層の
平均組成にGe、In及びBiが含まれる場合には、そ
の平均組成におけるGe原子組成(α原子%)及びIn
原子組成(β原子%)並びにBi原子組成(γ原子%)
の間に、α+0.7β≧γの関係が成立するように各元
素を配合するのがよい。
【0055】本発明によれば、記録操作によって、不純
物層からGe、Cu、In、B及び/又はN等のアモル
ファス状態安定化元素MAが記録層に供給されるため、
基板のチルト特性を満たしながら、相対反射率80%以
上と記録特性及び保存信頼性の全てを満たす初期化レス
光情報記録媒体が実現できる。
【0056】本発明における不純物層は、不純物元素M
と、記録層構成元素であるSb又はTeとからなり、そ
のSb又はTeを主成分とする合金であることが望まし
い。不純物層がSb又はTeを主成分とした合金である
場合は、その融点が600℃以上であっても、溶融した
記録層のSb及びTeの侵食作用によって、初回記録で
あっても不純物層と記録層とが完全に溶け合い、繰り返
し記録による諸特性の変動がないので好ましい。このた
め、不純物層には比較的多量の不純物元素を導入できる
と共に、記録層側では、Sb/Te比を調整するのみ
で、目的以外の不純物元素が入らないため、設計の自由
度を圧迫することがない。
【0057】本発明において、不純物層が融点が600
℃を超える高融点の材料からなる場合は、不純物層を2
層に分離し、例えば、第1の不純物層、結晶化促進層、
記録層及び第2の不純物層の4層構成とするのが好まし
い。本発明によれば、融点が600℃を越える高融点不
純物層であっても、2層に分離して薄膜化し、十分な島
状構造にして、記録層との接触表面積を拡げることによ
り、混合性を改善することができる。高融点不純物層の
融点の上限値は、通常850℃程度である。したがっ
て、初回記録であっても不純物層と記録層とが完全に溶
け合い、低融点不純物層の場合と同様に、繰り返し記録
による諸特性の変動のない光情報記録媒体を得ることが
可能となる。
【0058】また、不純物層の合金組成を低融点組成と
するときには、不純物層の低融点組成と記録層に導入す
べき不純物元素Mの化学量論組成とが必ずしも一致しな
くなる場合がある。この場合には、本発明により、第1
の不純物層を低融点組成とし、第2の不純物層を記録層
構成元素であるSb及びTeとの化合物層としてその不
足分を補えばよい。このように不純物層を2層化するこ
とにより、記録層を結晶化転移温度の低いSb−Te系
2元合金層としたままで、より自由度の高い組成設計が
可能となる。
【0059】本発明において、不純物層は、記録層に対
して、記録再生のレーザービームの入射側でない側に接
して形成されることが望ましい。逆に、不純物層が記録
層に接してレーザービームの入射側に形成されると、不
純物層の膜厚が厚い場合、不純物層界面での反射成分が
無視できなくなり、初回記録時のジッターが安定しなく
なる。一般に、不純物層と記録層の屈折率は同一でない
ため、不純物層は、より光学的な影響の少ないレーザー
ビームの入射側でない側に形成されることが望ましい。
本発明によれば、不純物層の光学的な悪影響を最小限に
抑えられるので、安定した初回記録が可能である。
【0060】本発明による光情報記録媒体の例を、図1
及び図2に示す。1が基板、2が第1の誘電体層、3が
結晶化促進層、4が記録層、5が不純物層、6が第2の
誘電体層、7が反射放熱層、8は必要に応じて反射放熱
層の上に設けられる有機保護層である。不純物層5は、
図1のように記録層4の直上でも、図2のように結晶化
促進層3の直下でもよい。また、図3のように、記録層
4の直上と結晶化促進層3の直下の両方に、第1及び第
2の不純物層5a、5bとして設けてもよい。なお、図
では、光情報記録媒体の情報基板側のみを示している。
DVD+RW等の書き換え型DVDの場合は、情報基板
の積層膜側に0.6mm厚のカバー基板を紫外線硬化樹
脂等で貼り合わせて1。2mm厚とする。
【0061】なお、本発明は、図1〜図3の構造に限定
されるものではない。例えば、表面記録方式の相変化型
光情報記録媒体の場合は、基板側から反射放熱層、第1
の誘電体層、不純物層、結晶化促進層、記録層、第2の
誘電体層、カバーフィルム層等の構成を採ることができ
る。すなわち、不純物層は、記録層と結晶化促進層の2
層構造に対し、該記録層及び/又は該結晶化促進層に接
して設けることができる。
【0062】本発明において、第1及び第2の誘電体層
としては、SiO2、ZnO、SnO2、Al23、Ti
2、In23、MgO、ZrO2、Ta25等の金属酸
化物、Si34、AlN、TiN、BN、ZrN等の窒
化物、ZnS、TaS4等の硫化物、SiC、TaC、
4C、WC、TiC、ZrC等の炭化物が挙げられ
る。これらの材料は、単体で保護層として用いることが
でき、また、混合物として用いることもできる。例え
ば、混合物としては、ZnSとSiOx、Ta25とS
iOxが挙げられる。
【0063】第1の誘電体層の膜厚は、50〜250n
mが好ましく、より好ましくは60〜85nmである。
50nmより薄くなると、耐環境性保護機能の低下、耐
熱性低下、畜熱効果の低下となり好ましくない。250
nmより厚くなると、スパッタ法等による製膜過程にお
いて、膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じた
り、記録時の感度の低下をもたらすので好ましくない。
第2の誘導体層の膜厚は15〜50nmが好ましく、1
5〜20nmがより好ましい。第2の誘電体層の場合、
10nmより薄いと耐熱性が低下し好ましくない。逆
に、100nmを越えると、記録感度の低下、温度上昇
による膜剥離、変形、放熱性の低下により、繰り返しオ
ーバーライト特性が悪くなる。
【0064】反射放熱層7としては、Al、Au、C
u、Ag、Cr、Sn、Zn、In、Pd、Zr、F
e、Co、Ni、Si、Ge、Sb、Ta、W、Ti、
Pb等の金属を主とした材料の単体又は合金を用いるこ
とができる。この層は、熱を効率的に放散させることが
重要であり、膜厚は50〜160nmが好ましく、10
0〜150nmがより好ましい。膜厚が厚すぎると、放
熱効率が大きすぎて感度が悪くなり、薄すぎると感度は
良好であるが、繰り返しオーバーライト特性が悪くな
る。特性としては、熱伝導率が高く、高融点で保護層材
料との密着性がよいこと等が要求される。記録層4の膜
厚は50〜30nm、好ましくは10〜20nmであ
る。
【0065】基板1としては、従来の各種のもの、例え
ば、ガラス、セラミックス、あるいは樹脂が用いられ
る。なかでも、樹脂基体が成形性、コスト、軽量といっ
た点で好適である。樹脂の代表例としては、ポリカーボ
ネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレ
ン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ
エチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、
フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などがあげられ
るが、加工性、光学特性、耐熱特性等から、ポリカーボ
ネート樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。基板の厚さは
1.2mm、0.6mm、0.3mm等の任意のものが
使用できるが、製膜上の困難や歩留り等を考慮すると
0.5〜1.2mmくらいが好ましい。樹脂基板の場
合、該樹脂のガラス転移温度Tgは、100℃以上が好
ましく、120℃以上が更に好ましく、200℃以下が
好ましく、180℃以下が更に好ましい。基体の樹脂の
ガラス転移温度Tgが、この温度より低くなると基体が
変形しやすくなるという不具合があり、この温度より高
くなると成形しにくくなるという不具合がある。
【0066】基板に対する記録層等の各層の成膜方法と
しては、従来公知の方法、例えば、スパッタリング法、
イオンプレーティング法、真空蒸着法、プラズマCVD
法等を用いることができる。
【0067】本発明によれば、従来公知の相変化型光情
報記録装置において、それに用いる記録媒体として、本
発明による相変化型光情報記録媒体を用いることによ
り、初期化プロセスが不要でしかも記録特性及び保存信
頼性にすぐれた情報記録を可能とした光情報記録装置を
提供することができる。
【0068】上記材料及び構成による光情報記録媒体
は、例えば、波長が635又は650nmの半導体レー
ザーにより、NA0.6のピックアップを用い記録再生
することができる。記録方法としては、例えば、Pul
se Width Modulationで変調コード
がEFM又はEFM+[8/16RLL(2、10)]
方式等を用いることができる。この場合、パルスは先頭
パルスとその後のマルチパルス部に分かれる。マルチパ
ルス部は、加熱、冷却を繰り返し行うためのものであ
る。この場合、各パワーの関係は、加熱(記録)パワー
>消去パワー>冷却パワーとなっていて、冷却パワーは
読み出しパワー程度まで下げる。書き換え型DVDの場
合、通常、線速は3.5〜8.5m/s、読み出しパワ
ーは1mW以下で行う。
【0069】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、これら実施例によって、本発明はなんら
限定されるものではない。表1に示す実施例及び比較例
では、第1及び第2の誘電体層をいずれもZnS・Si
2(ターゲットのmol%比で79.5:20.
5)、膜厚をそれぞれ80及び16nmとした。記録層
には、表中組成の準安定Sb3Te系材料を用いた。結
晶化促進層には、Bi及びBiIn、BiGe、BiC
uGe等を用いた。反射放熱層には、膜厚140nmの
Al膜を用いた。それぞれ、第1の誘電体層、結晶化促
進層、記録層、不純物層、第2の誘電体層、反射放熱層
の順にスパッタ成膜を行い、その後、有機保護層3μm
をスピンコートし、UV光照射により硬化形成させた。
【0070】実施例1〜10は、結晶化促進層、記録層
及び不純物層の記録後平均組成におけるGe原子組成
(α原子%)及びIn原子組成(β原子%)並びにBi
原子組成(γ原子%)の間に、α+0.7β≧γの関係
が成り立つような層構成である。いずれも、Bi系合金
からなる結晶化促進層を有し、アズデポ反射率が18%
以上なので、初期化プロセス無しで情報の記録再生を行
うことができ、変調度、保存信頼性も良好であった。ま
た、X線回折装置により、これらの記録層の結晶構造を
調べたところ、いずれも空間群Fm3mに属するもので
あった。
【0071】実施例1〜4では、記録層がSb−Te系
2元合金からなるため、Tcが120℃以下と低く、結
晶化促進層の膜厚を、例えば、後記の比較例3〜5等に
比べ、薄くすることができた。その結果、結晶化促進元
素の平均組成が少なく、変調度のマージンは全く問題な
かった。さらに、結晶化促進元素を含む記録層中の不純
物元素量を8原子%程度に抑えることができた。これに
よって、例えば、実施例5のように、実施例4の反射率
改善のために、不純物層に新たにAgを加え、反射率増
加による変調度低下を補償するためにIn量を増やすこ
とが可能となった。
【0072】一方、結晶化促進層を有しない比較例1及
び2は、記録層がSb−Te系2元合金であっても、ア
ズデポでは全く結晶化せず、従来の初期化プロセスなし
では記録再生ができなかった。加えて、比較例2では、
保存安定化元素の平均組成が少ないため、保存信頼性が
満足できなかった。
【0073】比較例3は、Ge及びInに関して、実施
例1〜4と同等の平均組成を、不純物層を設けることな
く結晶化促進層と記録層のみで構成した例である。比較
例3では、記録層のTcが175℃と高いため、基板品
質が保てる基板温度80℃以下では、アズデポ反射率が
18%に及ばず、初期化プロセスなしでは記録再生を行
うことができなかった。また、実施例1〜4に比べ、平
均組成で2倍以上の約5原子%のBiを含むため、初期
化後の変調度マージンもぎりぎりであった。
【0074】比較例3では、最適記録パワーを15mW
で規格を12.8〜15mWとしたときに、変調度60
%以上をぎりぎり満足できる状態であった。なお、表1
中の変調度及び保存信頼性については、初期化プロセス
後の評価について示している。以下、比較例における変
調度及び保存信頼性については、初期化プロセス後に問
題がなかった場合に(○)で表記するものとする。
【0075】比較例4は、Tc=166℃の記録層にお
いて、α+0.7β≧γの関係が成り立つような層構成
である。比較例3に比べ、アズデポ反射率はやや向上し
たが、規格の18%には及ばず、基板温度80℃以下で
は、同様に初期化プロセスをなくすことはできなかっ
た。変調度のパワーマージンも、ぎりぎり満足できる状
態であった。
【0076】比較例5は、比較例4に比べ、結晶化促進
層を厚くしたが、アズデポ反射率の改善が見られない
上、Biの平均組成が高くなったため、変調度及び保存
信頼性まで満足できなくなってしまった。すなわち、比
較例4及び5の記録材料の場合、基板温度80℃でのB
i結晶化促進層の膜厚効果は、比較例4の膜厚で既に飽
和しており、基板温度を上げない限り、アズデポ反射率
は改善されないものと考えられるが、上記のように、基
板温度が80℃を超えると、今度は基板のチルト特性が
満足できなくなってしまう。さらに、比較例3〜5で
は、記録層中の不純物元素量が約10原子%であり、こ
れ以上の不純物添加は不可能であった。言い換えれば、
これ以上不純物を添加すると、準安定Sb3Te相の発
現が妨げられ、高密度記録ができなくなってしまう。
【0077】比較例6〜8は、基板温度が80℃で、ア
ズデポ反射率18%を達成しうる記録材料の例である。
比較例6〜8は、記録層中の不純物元素量が比較例3〜
5よりもやや少なく、Tc=150〜155℃の記録材
料である。しかしながら、これらの層構成では、初期化
プロセスなしで記録再生はできても、保存条件が満足で
きず、保存信頼性は維持できなかった。また、この温度
でアズデポ結晶化に必要なBi結晶化促進層の膜厚は、
Biの平均組成にして約5原子%であるため、上記が解
決されても変調度のマージンが狭い記録媒体になってし
まう。
【0078】実施例6〜8は、記録層中にCu等のアモ
ルファス状態安定化元素を含む層構成の例である。記録
層のTcは115〜125℃であった。このように、C
uは記録層の結晶化転移温度を高めないので、結晶化促
進層の膜厚を厚くすることなく良好なアズデポ反射率が
得られ、初期化プロセスなしで記録再生が可能であっ
た。実施例6〜10は、記録層中に添加されたCuによ
って、不純物層の膜厚を薄くできたため、記録操作によ
る混合性が良好で、1回の記録操作でも保存信頼性がき
わめて良好であった。具体的には、80℃、85%R
H、100時間の保存試験において、ジッターの上昇は
全く見られなかった。
【0079】実施例9及び10は、記録層及び結晶化促
進層に、アモルファス状態安定化元素を含んだ層構成の
例である。記録層中の不純物量は、実施例6〜8と同程
度で、Tcはいずれも125℃であった。結晶化促進層
中におけるBi組成比はいずれも75原子%なので、結
晶化促進効果はBi単体膜と大差なく、結晶化促進層の
膜厚もBi単体のそれと同等とすることができた。この
ように、アモルファス状態安定化元素を記録層と結晶化
促進層とに分散して添加することにより、不純物層の膜
厚を薄くできた。また、不純物組成もInベースの低融
点化合物とすることができた。これにより、記録操作に
よる混合性が良好で、1回の記録操作でも保存信頼性が
きわめて良好であった。具体的には、80℃、85%R
H、100時間の保存試験において、ジッターの上昇は
全く見られなかった。
【0080】表2に、別の実施例を示す。表2に示す実
施例及び比較例では、第1及び第2の誘電体層をいずれ
もZnS・SiO2(ターゲットのmol%比で79.
5:20.5)、膜厚をそれぞれ190及び20nmと
した。結晶化促進層には、Bi及びBi2Te3、BiS
b、BiIn等を用いた。記録層には表中組成の準安定
Sb3Te系材料を用いた。反射放熱層には、膜厚14
0nmのAl膜を用いた。有機保護層は、3μmをスピ
ンコートし、紫外線照射により硬化形成させた。
【0081】実施例11〜27及び29の相変化型光情
報記録媒体は、アズデポの反射率が18%以上であり、
記録層が結晶膜であることが分かる。X線回折装置によ
り記録層の結晶構造を調べたところ、いずれも空間群F
m3mに属するものであった。さらに、初期化プロセス
を行わずに、これらのディスクに情報の記録再生を行っ
たところ、問題なく記録再生を行うことができ、変調
度、繰り返し記録特性(表2中、DOWと表記)及び保
存信頼性も良好であった。
【0082】一方、結晶化促進層を有しない比較例9〜
14、18及び22の相変化型光情報記録媒体は、アズ
デポ反射率が5%以下で、初期化プロセスなしでは情報
の記録再生を行うことができなかった。なお、表2中、
比較例の保存信頼性については、初期化プロセス後に良
好であったものについて(○)で示している。
【0083】以上により、結晶化促進層にBi及びその
合金を用いた相変化型光情報記録媒体では、記録層が成
膜完了時にすでに結晶化しており、初期化プロセスが不
要であることが確認された。これは、不純物元素を不純
物層として記録層と別に設けたことにより、記録層の結
晶化転移温度が115℃程度にまで下がるため、結晶化
促進層の作用と第1の誘電体層成膜時の基板昇温だけ
で、記録層の実用レベルのアズデポ結晶化(成膜したま
まの状態で結晶化)が可能となったものである。
【0084】次に、実施例11〜17、22及び23の
相変化型光情報記録媒体は、第1及び第2いずれの不純
物層も融点が600℃以下である。このため、不純物層
が1回目の記録で記録層と完全に混合するため、不純物
効果の繰り返し記録回数依存性がない。不純物層の溶け
混みが1回で行われない場合は、例えば、結晶化速度に
繰り返し記録依存性が現れ、これは同時に媒体の面内分
布として現れジッター増大を招く。すなわち、繰り返し
記録特性が満足できなくなる。また、保存特性に関与す
るGeやInの溶け混みが1回で行われない場合、記録
回数が少ない領域で記録マークの消失等が起こり易くな
り、保存信頼性が満足できなくなる。実施例11〜1
7、22及び23の相変化型光情報記録媒体は、このよ
うな不具合がなく、繰り返し記録特性及び保存信頼性が
良好であった。
【0085】一方、比較例19〜21、23及び24の
相変化型光情報記録媒体は、いずれも不純物層の融点が
600℃以上であるため、アズデポ結晶化はできたが、
繰り返し記録特性及び保存信頼性が満足できなかった。
次に、実施例11〜23の相変化型光情報記録媒体は、
不純物層にGeを含むため、保存信頼性が良好であっ
た。具体的には、記録線速7.0m/s、記録パワー1
3mWで記録した後に、80℃、85%RH雰囲気下に
100時間保存後、再生線速3.5m/s、再生パワー
0.8mWで3T信号のジッタ評価を行ったが、いずれ
も規格を満足できた。
【0086】一方、不純物層にGeを含まない比較例1
5〜17の相変化型光情報記録媒体は、保存十数時間で
ジッタの著しい増加が見られ、100時間後にはマーク
が消失してしまった。このように、Geは保存信頼性を
飛躍的に向上させる作用がある。Ge量は記録層への混
合時の原子数密度で1〜10at%、望ましくは1〜5
at%が好ましい。
【0087】次に、実施例19〜21の相変化型光情報
記録媒体は、融点600℃以上のSb又はTe合金を不
純物層とした。不純物層がSb又はTe合金である場
合、実施例19のように、融点が600℃以上であって
も、1回目の記録で記録層と不純物層とが完全に混合す
るため、繰り返し記録特性及び保存信頼性が良好であっ
た。これは、溶融した記録層のSb及びTeの侵食作用
によるものと考えられる。さらに、実施例20では、不
純物元素Geを実施例19よりも多く含み、融点も70
0℃と高いが、不純物層を2層に分割することにより、
繰り返し記録特性及び保存信頼性が満足できた。比較例
23では、実施例20と同じ組成、膜厚の不純物層を第
2の不純物層のみの1層として供給しているため、不純
物層がSb合金であっても、記録層への溶け混みが1回
記録だけではスムーズに行われなかった。不純物層がT
e合金である実施例21及び比較例24の場合も同様で
ある。
【0088】このように、不純物層の分割効果は、より
多くの不純物元素を導入したい場合、特に不純物量によ
ってその合金の融点が高くなってしまうような場合に有
効である。これは、実施例18及び比較例19に示すよ
うに、不純物層がSb又はTe合金である場合に限定さ
れない。以上のように、不純物層をSb又はTe合金と
する場合、溶融したSb及びTeの浸食作用と不純物層
の分割効果とを利用して、比較的多量の不純物元素を導
入できると共に、記録層側でSb/Te比を調整するの
みで、目的以外の不純物元素が入らないため、設計の自
由度が広げられるものとなった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】表1において、CAは結晶化促進層を示
し、PLは記録層を示し、ILは不純物層を示す。
【0092】
【発明の効果】本発明によれば、準安定Sb3Te系材
料を用いた相変化型光情報記録媒体において、基板品質
と記録特性及び保存信頼性とを満足し、初期化プロセス
を不要とした相変化型光情報記録媒体が提供され、レー
ザービーム照射による情報の記録、再生及び消去を行う
光情報記録分野に寄与するところはきわめて大きいもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の相変化型光情報記録媒体の一例を示す
断面図である。
【図2】本発明の相変化型光情報記録媒体の他の例を示
す断面図である。
【図3】本発明の相変化型光情報記録媒体のさらに他の
例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板 2 第1の誘導体層 3 結晶化促進層 4 記録層 5 不純物層 6 第2の誘電体層 7 反射放熱層 8 有機保護層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B41M 5/26 G11B 7/004 Z G11B 7/004 7/26 531 7/26 531 B41M 5/26 X (72)発明者 真貝 勝 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 針谷 眞人 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 三浦 裕司 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 阿萬 康知 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 2H111 EA03 EA04 EA23 EA40 FB02 FB05 FB09 FB10 FB12 FB17 FB21 5D029 NA07 NA08 NA13 NA14 NA15 NA23 NA24 5D090 BB05 BB16 CC14 CC16 DD02 5D121 AA01 EE27

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンチモン及びテルルを主成分とする合
    金からなる記録層を有する相変化型光情報記録媒体にお
    いて、結晶化促進層と不純物層を含有し、該結晶化促進
    層は該記録層に隣接して配置され、該不純物層は該記録
    層に隣接して配置されるか又は該結晶化促進層に隣接し
    て配置され、かつ該不純物層は記録操作時に該記録層と
    該結晶化促進層と溶融混合することを特徴とする相変化
    型光情報記録媒体。
  2. 【請求項2】 2つの不純物層を含有し、その1つの不
    純物層は該記録層に隣接して配置され、その他方の不純
    物層は該結晶化促進層に隣接して配置されていることを
    特徴とする請求項1に記載の相変化型光情報記録媒体。
  3. 【請求項3】 該記録層が、銅を含むことを特徴とする
    請求項1又は2に記載の相変化型光情報記録媒体。
  4. 【請求項4】 該記録層が、アンチモン及びテルル以外
    に他の元素を実質的に含まないことを特徴とする請求項
    1〜2のいずれかに記載の相変化型光情報記録媒体。
  5. 【請求項5】 該記録層の結晶化転移温度が、120℃
    以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに
    記載の相変化型光情報記録媒体。
  6. 【請求項6】 該結晶化促進層が、ビスマス又はビスマ
    ス含有合金からなることを特徴とする請求項1〜5のい
    ずれかに記載の相変化型光情報記録媒体。
  7. 【請求項7】 該結晶化促進層が、(i)ビスマスと、
    (ii)ゲルマニウム、銅及びインジウムの中から選ばれ
    る少なくとも1種の元素とを含む合金からなることを特
    徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の相変化型光情
    報記録媒体。
  8. 【請求項8】 該不純物層が、融点600℃以下の合金
    からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記
    載の相変化型光情報記録媒体。
  9. 【請求項9】 該不純物層が、(i)ゲルマニウムと、
    (ii)銅及び/又はインジウムとを含む合金からなるこ
    とを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の相変化
    型光情報記録媒体。
  10. 【請求項10】 該不純物層が、記録層に対して、記録
    再生のレーザービームの入射側でない側に隣接して配置
    されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに
    記載の相変化型光情報記録媒体。
  11. 【請求項11】 アンチモン及びテルルを主成分とする
    合金からなる記録層を有する相変化型光情報記録媒体の
    製造方法において、結晶化促進層を形成する工程と不純
    物層を形成する工程とを含み、該結晶化促進層は該記録
    層に隣接して配設させ、該不純物層は該記録層に隣接し
    て配設させるか又は該結晶化促進層に隣接して配設させ
    ることを特徴とする相変化型光情報記録媒体の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 2つの不純物層形成工程を含み、その
    1つの不純物層は該記録層に隣接して配設させ、その他
    方の不純物層は該結晶化促進層に隣接して配設させるこ
    とを特徴とする請求項11に記載の相変化型光情報記録
    媒体の製造方法。
  13. 【請求項13】 相変化型光情報記録媒体を用いる光情
    報記録装置において、該相変化型光情報記録媒体として
    請求項1〜9のいずれかに記載の相変化型光情報記録媒
    体を用いることを特徴とする光情報記録装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004085167A1 (ja) * 2003-03-24 2004-10-07 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 情報記録媒体およびその製造方法
WO2013080489A1 (ja) * 2011-11-28 2013-06-06 パナソニック株式会社 情報記録媒体及びその製造方法

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