JP2002298865A - 燃料電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

燃料電池用セパレータ及びその製造方法

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剛 稲垣
Toru Segawa
透 瀬川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融混合方式を用いても、導電性を低下させ
ることなく製造できる燃料電池用セパレータを提供す
る。 【解決手段】 溶融した熱可塑性樹脂材料に、黒鉛とカ
ーボンブラックとを混入させて溶融混合し、得られた混
練物を所定形状に成形することを特徴とする燃料電池用
セパレータの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は燃料電池用セパレー
タ及びその製造方法に関し、特に導電特性を改善するた
めの技術に関する。
【０００２】
【従来の技術】例えば図１に概略斜視図で示すように、
燃料電池用セパレータ１０は、平板部１１の両面に所定
間隔で複数の隔壁１２を立設して形成されている。燃料
電池とするには、多数の燃料電池用セパレータ１０を、
隔壁１２の突出方法（図中、上下方向）に積層する。そ
して、この積層により、隣接する一対の隔壁１２で形成
されるチャネル１３に反応ガス（水素や酸素）を流通さ
せる構成となっている。
【０００３】ところで、燃料電池用セパレータは、樹脂
材料と、黒鉛等の導電性材料とを混練した混練物を上記
したような形状に成形して製造されるのが一般的であ
る。こうした樹脂材料と導電性材料との混合方式には、
樹脂材料の粉末と導電性材料の粉末とを混合する乾式混
合方式と、熱を加えて溶融した樹脂材料に導電性材料の
粉末を混合する溶融混合方式とがある。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】溶融混合方式は乾式混
合方式に比べて、分散状態が均一になるため、安定した
成形体を得られるという利点を有する。しかし、その一
方で、樹脂材料と導電性材料とが必要以上に良く混ざり
合ってしまい、導電性材料の間に絶縁物である樹脂材料
が入り込んで導電性材料同士による導電パスが形成され
にくくなり、導電性が低下するという問題を抱えてい
る。
【０００５】本発明はこのような状況に鑑みてなされた
ものであり、溶融混合方式を用いても、導電性を低下さ
せることなく製造できる燃料電池用セパレータを提供す
ることを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、樹脂材料
及び導電性材料の種類と配合を検討した結果、樹脂材料
に熱可塑性樹脂を用いるとともに、比較的大径の黒鉛
と、比較的小径のカーボンブラックとを併用することに
よって、溶融混合方式でこれらの原料を混合しても、混
合体の導電性が低下しないことを見出し、本発明を完成
するに至った。
【０００７】即ち、上記目的を達成するために、本発明
は、熱可塑性樹脂と、黒鉛とカーボンブラックとの混合
物からなる導電性材料とを含有することを特徴とする燃
料電池用セパレータを提供する。
【０００８】同様の目的を達成するために、本発明はま
た、溶融した熱可塑性樹脂材料に、黒鉛とカーボンブラ
ックとを混入させて溶融混合し、得られた混練物を所定
形状に成形することを特徴とする燃料電池用セパレータ
の製造方法を提供する。
【０００９】
【発明の実施の形態】以下、本発明に関して詳細に説明
する。
【００１０】本発明の燃料電池用セパレータは、熱可塑
性樹脂と、黒鉛とカーボンブラックとの混合物からなる
導電性材料とを含有する。
【００１１】熱可塑性樹脂の種類には制限はないが、ポ
リプロピレン、ポリカーボネート、ＡＢＳ、ポリエチレ
ンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
アミド等の一種または複数種類を混合したものを用いる
ことができる。
【００１２】黒鉛としては、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛や
人造黒鉛を用いてもよいが、鱗片状黒鉛を濃硫酸等で処
理し、加熱して得られる膨張黒鉛を用いることが好まし
い。また、カーボンブラックとしては、アセチレンブラ
ックまたはケッチェンブラックを用いることが好まし
い。
【００１３】従来の溶融混合方式では、導電性材料の間
に樹脂材料が入り込んで導電性材料間の導電パスを形成
し難くしていたが、本発明においては粒径の大きい黒鉛
と粒径の小さいカーボンブラックとを併用したことによ
り、熱可塑性樹脂が黒鉛同士の隙間に存在しても、カー
ボンブラックがそれらの隙間に入り込んで導電パスの形
成を補うため、燃料電池用セパレータ全体としての導電
性の低下が抑えられる。このような作用を効果的に発現
させるには、黒鉛とカーボンブラックとの配合比を１：
１〜４：１の範囲とすることが好ましい。尚、導電性を
一層追求する場合は、黒鉛とカーボンブラックとの配合
比は３：２〜７：２の範囲内とすることが好ましい。
【００１４】また、黒鉛及びカーボンブラックの配合量
は、その合計量で４０〜８５重量％とする。４０重量％
以上とするのは燃料電池用セパレータの低抵抗性（高導
電性）を確保するためである。尚、導電性を一層追求す
る場合は、これらの配合量を７０〜８２重量％の範囲と
することが好ましい。
【００１５】導電性材料の配合量に対応して、熱可塑性
樹脂の配合量を１５〜６０重量％の範囲で調製する。こ
れは、成形性、形状保持性、製造時に使用する圧縮成形
型からの良好な離型性、得られた燃料電池用セパレータ
のガス遮断性といった事項を満足させるためである。即
ち、熱可塑性樹脂の配合量が１５重量％未満であると。
原料混練物の流動性が低下して成形性に劣るようにな
る。一方、熱可塑性樹脂の配合量が６０重量％を越える
と、相対的に導電性材料の配合量が少なくなり、得られ
る燃料電池用セパレータの導電性が低くなる。
【００１６】尚、コスト的に許容されるのであれば、燃
料電池用セパレータとしての特性を低下させない範囲で
無機繊維質材料や黒鉛繊維質材料、炭素繊維質材料等を
混合し、強度の一層の増強を図ってもよい。
【００１７】本発明の燃料電池用セパレータを作製する
には、先ず、熱可塑性樹脂をその融点以上に加熱（例え
ばポリプロピレンでは１８０〜２２０℃）して溶融状態
とし、そこに黒鉛とカーボンブラックとを所定量添加
し、公知の混練手段を用いて混練する。次いで、この混
練物を離型剤（黒鉛粉）を散布した型に充填し、１８０
℃〜２２０℃の条件で圧縮成形を行う。その後、１００
℃以下に冷却し、型から取り出して燃料電池セパレータ
を得る。
【００１８】上記製法において、溶融混合方式を用いる
ため、熱可塑性樹脂に黒鉛やカーボンブラックを容易に
混合することができる。また、樹脂の流動性を高めて混
合するため、黒鉛やカーボンブラックと、熱可塑性樹脂
とが均一に混ざり合う。その結果、得られる混練物の安
定性が高まる。
【００１９】尚、成形方法は、上記の圧縮成形方法に限
らず、例えば射出成形または押出成形といった成形方法
などを適用することができる。
【００２０】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明に更
に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるもの
ではない。
【００２１】（実施例１〜４、比較例１〜８）下記導電
性材料及び熱可塑性樹脂を用い、表１に示す配合割合に
て溶融混合方式で混合し、さらに混練して混練物とし、
下記に示す方法にしたがって燃料電池用セパレータを製
造した。
【００２２】〈導電性材料〉 膨張黒鉛（粒径約４００〜８００μｍ） アセチレンブラック（粒径約５〜１０μｍ） 〈熱可塑性樹脂〉 ポリプロピレン 〈製造方法〉混練機を用い、１８０〜２２０℃に加熱し
て溶融したポリプロピレンに、膨張黒鉛及びアセチレン
ブラックを混入し、混練する。この混練物を、内壁に粒
径５００μｍの黒鉛粉を付着させた成形型内に流し込
み、温度１８０〜２２０℃、圧力９８ＭＰａで圧縮成形
を行い、厚さ０．７ｍｍのシート状に成形して試験片を
得た。
【００２３】〈体積固有抵抗〉得られた試験片の体積固
有抵抗を、ＪＩＳ Ｋ７１９４導電性プラスチックの４
深針法による抵抗率試験方法に準じて求めた。即ち、４
深針式導電計ロレスタＣＰを用いて、試験片の中央部分
の表面抵抗値を測定し、その値にサンプル厚、ＪＩＳ
Ｋ７１９４に従う補正係数を乗じて体積固有抵抗とし
た。結果を表１に示した。
【００２４】
【表１】
【００２５】図２に示すように、膨張黒鉛単体またはカ
ーボンブラック単体を用いたものに比べて、膨張黒鉛と
カーボンブラックとを併用したもののほうが低い体積固
有抵抗を示している。
【００２６】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
溶融混合方式を用いても、導電性を低下させることなく
燃料電池用セパレータを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明及び従来の燃料電池用セパレータの一例
を示す概略斜視図である。
【符号の説明】 １０ 燃料電池用セパレータ １１ 平板部 １２ 隔壁 １３ チャネル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永井 幸治 静岡県浜松市上島５−５−７ Ｆターム(参考） 5H026 AA02 BB01 BB08 CC03 EE05 EE06 EE18 HH05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 熱可塑性樹脂と、黒鉛とカーボンブラッ
    クとの混合物からなる導電性材料とを含有することを特
    徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. 【請求項２】 黒鉛とカーボンブラックとが、重量比で
    １：１〜４：１の割合であることを特徴とする請求項１
    記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 【請求項３】 熱可塑性樹脂が１５〜６０重量％、導電
    性材料が４０〜８５重量％の割合であることを特徴とす
    る請求項１または２記載の燃料電池用セパレータ。
  4. 【請求項４】 溶融した熱可塑性樹脂材料に、黒鉛とカ
    ーボンブラックとを混入させて溶融混合し、得られた混
    練物を所定形状に成形することを特徴とする燃料電池用
    セパレータの製造方法。
  5. 【請求項５】 黒鉛とカーボンブラックとを、重量比で
    １：１〜４：１の割合で使用することを特徴とする請求
    項４記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
  6. 【請求項６】 熱可塑性樹脂を１５〜６０重量％、黒鉛
    とカーボンブラックとを合計で４０〜８５重量％の割合
    で溶融混合することを特徴とする請求項４または５に記
    載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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