JP2002298723A - 回路しゃ断器の過負荷・欠相引外し装置 - Google Patents

回路しゃ断器の過負荷・欠相引外し装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】主バイメタルの信号(湾曲)を開閉機構に伝達
する差動シフタ機構の伝達ロス,ばらつきを低減して過
負荷・欠相引外し特性の向上化を図る。 【解決手段】押しシフタ15および引きシフタ16と、
押しシフタと引きシフタに跨がって揺動自在に連結した
シフタ連動板17からなる差動シフタ機構13を介して
主バイメタル12で検出した過負荷・欠相信号(バイメ
タルの湾曲量)を補償バイメタル14に伝達して開閉機
構部を引外し動作させるようにした過負荷・欠相引外し
装置において、差動シフタ機構を構成する押しシフタ,
引きシフタおよびシフタ連動板に対し、そのピン連結摺
動部A,Bおよびしゃ断器ケースの相間隔壁1aとの間
の摺動面部Cに固体潤滑剤のコーティング処理面20を
形成し、主バイメタルと補償バイメタルとの間の信号伝
達経路での伝達ロスおよびそのばらつきを低く抑えて引
外し特性の向上,および安定化を図る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オートブレーカな
どを実施対象とする回路しゃ断器に装備したバイメタル
式の過負荷・欠相引外し装置に関する。
【0002】
【従来の技術】まず、頭記したオートブレーカを例に、
本発明の実施対象となる回路しゃ断器の構成を図4(a),
(b) で説明する。図において、1は回路しゃ断器の本体
ケース(図示はカバーを外した状態を表している)、2
は電源側主回路端子、3は負荷側主回路端子、4は開閉
操作用のハンドル、5は後記する熱動形過負荷/欠相引
外し装置の定格電流を調整する調整ダイヤルであり、ケ
ース1内には可動接触子8a,固定接触子8b,消弧室
8cからなるしゃ断部8、しゃ断部8の可動接触子8a
を開閉位置に駆動する開閉機構部9,熱動形過負荷・欠
相引外し装置10,電磁形瞬時引外し装置11などを内
装して回路しゃ断器を構成している。
【0003】ここで、熱動形過負荷・欠相引外し装置1
0は、主回路の各相に接続したヒータ付きの主バイメタ
ル12と、各相(3相)の主バイメタルの動作端(先
端)に連繋させてバイメタルの作動変位を検出する差動
シフタ機構13と、差動シフタ機構13と開閉機構部9
に組み込んだラッチ受けとの間に介装して差動シフタ機
構の出力信号をラッチ受けに伝達し、開閉機構部9をト
リップ動作させる引外しレバーを兼ねた補償バイメタル
14との組合せからなる。
【0004】また、差動シフタ機構13は、各相の主バ
イメタル12の配列に沿ってその左右両側に配した押し
シフタ15および引きシフタ16と、押しシフタ15と
引きシフタ16の上面側に跨がって揺動可能にピン結合
したシフタ連動板17との組合せからなり、かつ押しシ
フタ15および引きシフタ16はケース1の相間隔壁1
bの上縁に形成した凹溝に嵌入してスライド可能に案内
支持し、この位置で押しシフタ15,引きシフタ16か
ら側方に突き出した腕部が各相の主バイメタル12を挟
んでその両面に対峙している。
【0005】また、図示例の補償バイメタル14はバイ
メタル片をヘアピン状に折り曲げた形状で、その一端が
調整ダイヤル5に連繋した軸受18に軸支されており、
他端側を前記した差動シフタ機構13のシフタ連動板1
7に対峙させ、さらに軸受側近くから開閉機構部9に向
けて延在する動作片17aを開閉機構部のラッチ受けに
対峙させている。
【0006】かかる構成になる過負荷引外し装置の動作
は周知であり、主回路に過負荷電流が流れて各相の主バ
イメタル12が定方向に湾曲し、これに従動して差動シ
フタ機構13の押しシフタ15,引きシフタ16が矢印
方向に変位すると、これに連動してシフタ連動板17が
補償バイメタル14の先端を押す。これにより、補償バ
イメタル14が軸受18の軸支点を中心に時計方向に回
動してその動作片がラッチ受けを釈放位置に押し、これ
に連動して開閉機構部9がトリップ動作し、しゃ断部8
の可動接触子8aが開極して主回路電流をしゃ断する。
また、主回路に欠相が発生した場合は、差動シフタ機構
13の押しシフタ15と引きシフタ16とが差動的に動
作し、これによりシフタ連動板17が引きシフタとの連
結ピンを支点に反時計方向に回動して補償バイメタル1
4を押し、前記と同様に回路しゃ断器をトリップ動作さ
せる。
【0007】なお、主バイメタル自身の湾曲で補償バイ
メタル14を揺動させる駆動力,変位量は小さいことか
ら、この変位,駆動力で開閉機構部9のラッチ受けを釈
放させるために、ラッチ受けは軽い駆動力で釈放位置に
移動するような構造としている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記の構成で、差動シ
フタ機構13を構成している押しシフタ15,引きシフ
タ16およびシフタ連動板17は、しゃ断器内部の充電
部近くに配備されるものであることから、所定の絶縁距
離を確保するために絶縁物で作られており、かつ機械的
な強度も確保するために、エポキシ樹脂,フェノール樹
脂などに補強材としてガラス繊維を混入して成形した樹
脂積層板を所定の形状にプレス打ち抜きして製作したも
のが採用されている。
【0009】ところで、回路しゃ断器の差動シフタ機構
13に前記した樹脂積層板のシフタ部品を採用すると、
その引外し特性にばらつきが生じて製品によっては仕様
通りの性能が発揮できないといった問題があり、その原
因について発明者等が究明したところ次の点が明らかに
なった。すなわち、前記の樹脂積層板からシフタ部品を
打ち抜き加工すると、その切断面に補強材として混入し
たガラス繊維が露呈し、ミクロ的には歯ブラシ状の凹凸
な破断面を呈するようになる。このために、差動シフタ
機構13の動作時には、押しシフタ15,引きシフタ1
6に穿孔したピン穴とシフタ連動板17の連結ピンとの
間の摺動面、および押しシフタ15,引きシフタ16と
該部品を案内支持するしゃ断器ケース相間隔壁1aの凹
溝との間の摺動面には前記の凹凸による齧りが生じ、そ
の結果として、主バイメタル12と補償バイメタル14
との間の機械的な信号伝達経路に大きな伝達ロス,およ
び伝達ロスのばらつきが生じて回路しゃ断器の引外し特
性に悪影響を及ぼす。
【0010】かかる問題の対策として、シフタ部品を打
ち抜いた後にその切断面を精密研磨して平滑面に仕上げ
ることも考えられるが、その研磨加工のコストが高くて
実用的でない。また、シフタ機構の摺動面(ピン連結
部,摺動案内部)に潤滑材としてグリースを塗布するこ
とも試みたが、グリースは経年変化,低温(マイナス温
度)での使用環境,および回路しゃ断器の電流しゃ断時
に発生するアークの熱などで固化変質して潤滑機能が低
下し、実用には供し得ないことか判った。
【0011】本発明は上記の点に鑑みなされたものであ
り、その目的は簡易な手段で前記課題を解決して、引外
し特性の向上,安定化が図れるように改良した回路しゃ
断器の過負荷・欠相引外し装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、主回路の各相に対応する主バイメ
タルと、該主バイメタルに連繋させた差動シフタ機構
と、該差動シフタ機構の出力を開閉機構部に伝達する引
外しレバー兼用の補償バイメタルとからなり、前記差動
シフタ機構は、主バイメタルの動作端を挟んでその両側
に配した押しシフタおよび引きシフタと、押しシフタと
引きシフタに跨がって揺動自在に軸支連結したシフタ連
動板とを組合せ、かつ押しシフタ, 引きシフタをしゃ断
器ケースの相間隔壁に案内支持した回路しゃ断器の過負
荷・欠相引外し装置において、前記の差動シフタ機構を
構成する押しシフタ,引きシフタおよびシフタ連動板に
対し、その摺動面部の一部ないし全部の領域に固体潤滑
剤のコーティング処理面を形成する(請求項1)。
【0013】上記のように差動シフタ機構の摺動面部に
固体潤滑剤をコーティングして処理することにより、樹
脂積層板のプレス打ち抜きによって生じた凹凸破断面が
固体潤滑剤に覆われてその表面が平滑面を呈し、かつ固
体潤滑剤の機能でその摺動摩擦係数も小となる。しか
も、固体潤滑剤はグリースなどのように経年変化,周囲
温度などで潤滑機能低下のおそれも殆どなく、これによ
り回路しゃ断器として伝達ロスを低く抑えて安定した引
外し特性を確保できる。
【0014】また、樹脂積層板の打ち抜き加工品になる
差動シフタ機構の押しシフタ,引きシフタに対して、固
体潤滑剤は前記樹脂積層板と同種の樹脂をバインダに用
いてコーティング処理面を形成する(請求項2)のがよ
く、これにより差動シフタ機構のシフタ部品と固体潤滑
剤との間で強固な接着強度が確保できて信頼性が向上す
る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図示
実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図4
に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略す
る。 〔実施例1〕図1(a) の差動シフタ機構13において、
押しシフタ15,引きシフタ16とシフタ連動板17と
の間のピン結合部A,Bでは、(b) 図で示すように押し
シフタ15にプレス打ち抜きで穿孔したした長穴15
a,および引きシフタ16に穿孔した軸穴16aにシフ
タ連結板17から突出したピン17aが嵌合している。
また、押しシフタ15,引きシフタ16とこの部材をス
ライド可能に案内支持するしゃ断器ケースの相間隔壁1
aとの間の摺動部Cでは、(c) 図で示すように相間隔壁
1aの上縁に形成した凹溝に押しシフタ15が遊嵌して
いる。なお、引きシフタ16についても(c) 図と同様な
構造で案内支持されている。
【0016】そして、かかる構成に対して、実施例では
(d) 図で示すように、プレス打ち抜きによって各シフタ
部品(押しシフタ15,引きシフタ17,シフタ連結板
17)の基材19の加工面に生じた凹凸破断面19aを
覆ってここに固体潤滑剤のコーティング処理面20が形
成されている。すなわち、この固体潤滑剤のコーティン
グ処理面20は、4フッ化エチレン,2硫化モリブデ
ン,グラファイトなどの固体潤滑剤(粉末)にバイン
ダ,溶剤を加え、これをスプレー,刷毛塗り,デッピン
グ,タンブリング法などによりシフタ部品の摺動面部に
コーティングした後、常温硬化あるいは加熱硬化により
形成する。ここで、前記シフタ部品の基材19がエポキ
シ樹脂積層板,あるいはフェノール樹脂積層板である場
合には、固体潤滑剤のバインダとして同種なエポキシ樹
脂,あるいはフェノール樹脂を使用して固体潤滑剤と基
材との接着性を高めるようにするのがよい。なお、デッ
ピング法ではシフタ部品の全面に固体潤滑剤がコーティ
ングされるが、スプレー法では前記した摺動部A,B,
Cを選択して局部的にコーティングできるので固体潤滑
剤の消費量を節約できる。
【0017】これにより、(d) 図で表すようにプレス打
ち抜き加工によりその破断面に生じた凹凸面が固体潤滑
剤のコーティング処理面20で覆われて平滑な面を呈す
るようになり、かつ固体潤滑剤の性状でその表面摩擦係
数が小さくなる。したがって、図4で述べた回路しゃ断
器の過負荷・欠相引外し装置について、その差動シフタ
機構13の摺動面部A,B,Cの一部あるいは全部に固
体潤滑剤のコーティング処理面を形成することにより、
主バイメタル12と補償バイメタル14との間の信号伝
達経路での伝達ロス,ばらつきが減少し、回路しゃ断器
としての過負荷・欠相引外し特性が向上,安定する。
【0018】ここで、主回路に欠相電流が流れた際の引
外し動作を図2で説明する。図2において、3相(R,
S,T)回路でR相が欠相状態になると、主バイメタル
12Rと他の相の主バイメタル12S,12Tとの間に
湾曲量の不平衡が生じ、欠相相の主バイメタル12Rは
殆ど湾曲せずに、他相の主バイメタル12S,12Tが
湾曲する。これにより、引きシフタ16は主バイメタル
12Rに拘束されたまま、押しシフタ15が主バイメタ
ル12S,12Tに押されて左方向に移動する。これに
より、シフタ連動板17は引きシフタ16とのピン連結
部を回転中心として、押しシフタ15とのピン連結部を
介して反時計方向に揺動し、主バイメタルの変位量を補
償バイメタル14に伝達する。
【0019】したがって、図1で述べたように差動シフ
タ機構13の摺動面部に固体潤滑剤のコーティング処理
を施すことにより、信号伝達経路での伝達ロスを低く抑
えて主バイメタルの信号(湾曲量)を的確に補償バイメ
タル14に伝達し、しゃ断器の開閉機構を引外し動作さ
せることができる。 〔実施例2〕図3は差動シフタ機構の応用実施例を示す
ものである。この実施例では、押しシフタ15,引きシ
フタ16にシフタのスライド方向に沿って長溝15b,
16bをプレス打ち抜き加工して形成しておき、この長
溝にしゃ断器ケースの相間隔壁1aに形成したガイドピ
ン1a-1を嵌入して案内支持するようにしている。そし
て、前記長溝15b,16bとガイドピン1a-1との間
の摺動面部Dに対して、実施例1で述べたと同様に固体
潤滑剤のコーティング処理面を形成するものとする。こ
れにより、差動シフタ機構の伝達ロス,ばらつきを軽減
できる。
【0020】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、押
しシフタおよび引きシフタと、押しシフタと引きシフタ
に跨がって揺動自在に連結したシフタ連動板からなる差
動シフタ機構を介して主バイメタルで検出した過負荷・
欠相の信号(バイメタルの湾曲量)を補償バイメタルに
伝達して開閉機構部を引外し動作させるようにした回路
しゃ断器の過負荷・欠相引外し装置において、前記差動
シフタ機構を構成する押しシフタ,引きシフタおよびシ
フタ連動板に対し、その摺動面部の一部ないし全部の領
域に固体潤滑剤のコーティング処理面を形成したことに
より、差動シフタ機構の各部品のプレス打ち抜き加工に
よって生じた凹凸な破断面の影響を受けることなしに、
主バイメタルと補償バイメタルとの間の信号伝達経路で
の伝達ロスおよびそのばらつきを低く抑えることがで
き、これにより回路しゃ断器の過負荷・欠相引外し特性
の向上,および安定化が図れる。
【0021】また、絶縁材である樹脂積層板の打ち抜き
加工品で作られた差動シフタ機構の押しシフタ,引きシ
フタに対して、固体潤滑剤は前記樹脂積層板と同種の樹
脂をバインダとしてコーティング処理面を形成すること
により、差動シフタ機構のシフタ部品と固体潤滑剤との
間で強固な接着強度が確保できて耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による過負荷・欠相引外し装置
の構成図を示し、(a) は機構全体の平面図、(b),(c) は
それぞれ(a) 図における矢視X−X,Y−Y断面図、
(d) は(a) 図の摺動面部に形成した固体潤滑剤コーティ
ング処理面の断面図
【図2】図1の装置による欠相引外し動作の説明図
【図3】図1の応用実施例を示す差動シフタ機構の平面
【図4】本発明の実施対象となる回路しゃ断器の構成図
で、(a) は上蓋を外した状態の内部機構を示す平面図、
(b) は(a) 図の断面側視図
【符号の説明】
1 しゃ断器ケース 1a 相間隔壁 8 しゃ断部 9 開閉機構部 12 主バイメタル 13 差動シフタ機構 14 補償バイメタル 15 押しシフタ 16 引きシフタ 17 シフタ連動板 20 固体潤滑剤のコーティング処理面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 志塚 隆 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 Fターム(参考) 5G030 FC02 XX01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主回路の各相に対応する主バイメタルと、
    該主バイメタルに連繋させた差動シフタ機構と、該差動
    シフタ機構の出力を開閉機構部に伝達する引外しレバー
    兼用の補償バイメタルとからなり、前記差動シフタ機構
    は、主バイメタルの動作端を挟んでその両側に配した押
    しシフタおよび引きシフタと、押しシフタと引きシフタ
    に跨がって揺動自在に連結したシフタ連動板とを組合
    せ、かつ押しシフタ, 引きシフタをしゃ断器ケースの相
    間隔壁に案内支持した回路しゃ断器の過負荷・欠相引外
    し装置において、前記差動シフタ機構を構成する押しシ
    フタ,引きシフタおよびシフタ連動板に対し、その摺動
    面部の一部ないし全部に固体潤滑剤のコーティング処理
    面を形成したことを特徴とする回路しゃ断器の過負荷・
    欠相引外し装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の過負荷・欠相引外し装置に
    おいて、差動シフタ機構の押しシフタ,引きシフタが樹
    脂積層板であり、かつ固体潤滑剤は前記樹脂積層板と同
    種の樹脂をバインダに用いてコーティング処理面を形成
    したことを特徴とする回路しゃ断器の過負荷・欠相引外
    し装置。
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