JP2002295644A - ディファレンシャル構造 - Google Patents

ディファレンシャル構造

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JP2002295644A JP2001092120A JP2001092120A JP2002295644A JP 2002295644 A JP2002295644 A JP 2002295644A JP 2001092120 A JP2001092120 A JP 2001092120A JP 2001092120 A JP2001092120 A JP 2001092120A JP 2002295644 A JP2002295644 A JP 2002295644A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡明な構成でブリーザ性能とディファレンシ
ャル機構の潤滑性とをともに向上させたディファレンシ
ャル構造を提供する。 【解決手段】 ディファレンシャルキャリア21とキャ
リアカバー22とからなるハウジング内にドライブピニ
オン4aとリングギヤ45とから構成される終減速機構
と、ディファレンシャル機構40とが設けられている。
ディファレンシャルキャリア21の上部にはブリーザポ
ート25が形成され、このブリーザポート25の下部近
傍を取り囲むように壁面部23が形成されている。壁面
部23の端面を覆ってブリーザ室24を形成する潤滑プ
レート31は、その前端部がドライブピニオン4aの上
部に延びて配設され、リングギヤ45が掻き上げた潤滑
油をドライブピニオン4aに滴下させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は終減速機構とディフ
ァレンシャル機構とを有する車両用のディファレンシャ
ル構造に関し、なお詳細には、ディファレンシャル内の
各部に潤滑油を導く誘導部材としての機能と、ブリーザ
への潤滑油の進入を防止する遮断壁としての機能とを兼
ね備える潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術】車両用ディファレンシャルにおいては、
一般に終減速機構とディファレンシャル機構とがディフ
ァレンシャルのハウジング(デフハウジングとも称され
る)内に配設されており、終減速機構を構成するリング
ギヤの回転を利用してハウジング内に貯留された潤滑油
を掻き上げて潤滑するように構成されている。ハウジン
グの内壁面にはリブが設けられ、掻き上げられて内壁面
に衝突した潤滑油をギアやベアリング等に導いて潤滑す
るように構成される。
【0003】また、ディファレンシャルには内部温度の
変化に伴う気体の膨張や収縮によりハウジング内部が加
圧状態や負圧状態にならないように気体を流通させるブ
リーザが設けられている。ブリーザは気体の流通を許容
し、かつ気体の流通時(息つき時)に潤滑油が噴き出さ
ないようにする必要がある。このため、ブリーザはリン
グギヤの歯面の裏側等のように掻き上げられて飛散する
潤滑油がかかりにくい位置に設けられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように、潤滑油を
各部に導くリブと、気体の流通を図るブリーザとは、そ
れぞれの作用に起因して好ましい配設位置の条件が相反
するため、従来ではそれぞれが別個独立して設けられて
いた。例えば、ハウジングにおけるリングギヤの歯面と
対峙する側の内壁面上部(例えばディファレンシャルキ
ャリアの内壁面上部)にリブが設けられ、リングギヤ裏
面側の壁面上部(例えばキャリアカバーの壁面上部)に
ブリーザが設けられていた。このため、ハウジングの構
造が複雑化するという問題があった。
【0005】一方、実公平4−51239号公報には、
潤滑油を導く誘導部材としての機能とブリーザへの潤滑
油の進入を防止する遮断壁としての機能とを兼ね備える
ディファレンシャル構造が開示されている。これは、キ
ャリアカバーに設けられたブリーザポートの近傍に潤滑
油を遮蔽する遮蔽板を設け、この遮蔽板の下端部をブリ
ーザポートと反対側に折り曲げて遮蔽板に衝突する潤滑
油をサイドギヤシャフトのベアリングやシール部に導く
というものである。
【0006】しかしながら、この技術では、ブリーザお
よび上記遮蔽板がサイドギヤシャフトを挟んでドライブ
ピニオンと反対側に配設されるため、ドライブピニオン
やディファレンシャル機構の潤滑を充分に行うことがで
きないという問題があった。また、ブリーザをキャリア
カバー側に設ける構成では、キャリアカバーとディファ
レンシャルキャリアとをフランジ接合させる関係上、ブ
リーザをハウジングの中央かつ最上部(機能上の最適位
置)に設けることが難しいという問題があった。
【0007】本発明は、上記のような問題に鑑みて成さ
れたものであり、簡明な構成でブリーザ性能の向上とド
ライブピニオンおよびディファレンシャル機構の潤滑性
の向上とを両立させるディファレンシャル構造を提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、終減速機構と
ディファレンシャル機構とを液密的に収納するハウジン
グと、このハウジングに回動自在に軸支されケース内部
にディファレンシャル機構を備えるディファレンシャル
ギヤケースと、このディファレンシャルギヤケースの外
周部に配設されたリングギヤと、ハウジングに回動自在
に軸支されリングギヤと噛合して終減速機構を構成する
ドライブピニオンとを有し、リングギヤの回転によりハ
ウジング内に貯留する潤滑油を掻き上げてハウジング内
の潤滑を行うディファレンシャルである。そのうえで、
上記目的を達成するため、本発明では、ハウジングにお
けるリングギヤの歯面側の上部位置にハウジングの内部
と外部とを連通するブリーザポートを設け、ハウジング
の内部におけるブリーザポートの近傍領域に、ブリーザ
ポートの下部近傍領域を取り囲みリングギヤの歯面方向
に向けて形成された壁面部(例えば実施形態における壁
面部23)と、壁面部に取り囲まれた開口を覆ってブリ
ーザ室を形成しブリーザ室への潤滑油の進入を遮断する
覆い板(例えば実施形態における潤滑プレート31,3
2,33等)とを設けており、この覆い板がリングギヤ
の歯面側に位置するとともに、ドライブピニオンの上方
に延びて配設されるようにディファレンシャル構造を構
成する。
【0009】上記構成では、ハウジングにおけるリング
ギヤの歯面側の上部位置にブリーザポートが設けられ、
このブリーザポートの下部近傍領域を取り囲む壁面部と
その開口を覆う覆い板とからブリーザ室が構成される。
ブリーザ室への潤滑油の進入を遮断する覆い板は、リン
グギヤの歯面側に位置するとともにドライブピニオンの
上方に延びて配設されている。このため、リングギヤの
回転によって掻き上げられた潤滑油は歯面側に位置する
覆い板にぶつかって板面を伝って流れ、下方に位置する
ドライブピニオン上に落下して潤滑を行う。また、覆い
板はブリーザ室の壁面としての機能と潤滑油をドライブ
ピニオンに導く誘導部材としての機能の両方を発揮す
る。
【0010】また、他の本発明は、終減速機構とディフ
ァレンシャル機構とを液密的に収納するハウジングと、
ハウジングに回動自在に軸支されケース内部にディファ
レンシャル機構を構成するディファレンシャルギヤケー
スと、ディファレンシャルギヤケースの外周部に配設さ
れたリングギヤと、ハウジングに回動自在に軸支されリ
ングギヤと噛合して終減速機構を構成するドライブピニ
オンとを有し、リングギヤの回転によりハウジング内に
貯留する潤滑油を掻き上げてハウジング内の潤滑を行う
ディファレンシャルである。そのうえで、本発明では、
ハウジングにおけるリングギヤの歯面側の上部位置にハ
ウジングの内部と外部とを連通するブリーザポートを設
け、ハウジングの内部におけるブリーザポートの近傍部
に、このブリーザポートの下部近傍領域を取り囲みリン
グギヤの歯面方向に向けて形成された壁面部(例えば実
施形態における壁面部23)と、壁面部に取り囲まれた
開口を覆ってブリーザ室を形成しブリーザ室への潤滑油
の進入を遮断する覆い板(例えば実施形態における潤滑
プレート31,32,33等)とを設けており、この覆
い板がリングギヤの歯面側に位置するとともに、ディフ
ァレンシャルギヤケースに形成されてディファレンシャ
ル機構を露出させるケース開口部の回転面に沿ってその
上方に配設されるようにディファレンシャル構造を構成
する。
【0011】上記構成では、ハウジングにおけるリング
ギヤの歯面側の上部位置にブリーザポートが設けられ、
このブリーザポートの下部近傍領域を取り囲む壁面部と
その開口を覆う覆い板とからブリーザ室が構成される。
ブリーザ室への潤滑油の進入を遮断する覆い板は、リン
グギヤの歯面側に位置するとともにディファレンシャル
ギヤケースのケース開口部の帯状の回転面に沿ってその
上方に配設されている。このため、リングギヤの回転に
より掻き上げられた潤滑油は歯面側に位置する覆い板に
ぶつかってその板面を伝って流れ、下方で回転するケー
ス開口部を通って内部のディファレンシャル機構に落下
して潤滑を行う。また、覆い板はブリーザ室の壁面とし
ての機能と潤滑油をディファレンシャル機構に導く誘導
部材としての機能の両方を発揮する。
【0012】なお、ブリーザ室における下側の壁面部に
この壁面部の上下を連通する切り欠き部(例えば実施形
態における切り欠き部23a)を有し、覆い板は切り欠
き部の近傍において上記下側の壁面部よりも下方に延び
て形成されることが好ましい。このような構成によれ
ば、ディファレンシャルの温度変化時に気体流通路とな
る切り欠き部が覆い板の直後に位置し、かつこの切り欠
き部近傍の覆い板が壁面部よりも下方に延びて形成され
ているため、切り欠き部からブリーザ室内に侵入可能な
入射角の角度範囲が極めて小さく、リングギヤで掻き上
げられたオイル飛沫の侵入を効果的に防止することがで
きる。
【0013】また、覆い板はケース開口部の回転面の上
方に位置する縁部がケース開口部の中心に向けて形成さ
れることが好ましい。このような構成によれば覆い板か
ら滴下する潤滑油を、ディファレンシャル機構を構成す
るサイドギヤやピニオン等に均一に滴下させて潤滑する
ことができる。
【0014】また、覆い板にケース開口部およびドライ
ブピニオンのうち少なくともいずれか一方に潤滑油を導
く突起部(例えば実施形態における突起部33c,33
d,33e等)を設けることも好ましい。このような構
成によれば覆い板の板面を流下する潤滑油を効率的にド
ライブピニオンやディファレンシャル機構に導いて潤滑
することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好
ましい実施形態について説明する。なお、以下では本発
明に係るディファレンシャル機構の実施例として、図1
0に示すようにフロントエンジン・リヤドライブの車両
における後輪駆動用のディファレンシャルに適用した場
合について説明する。
【0016】この車両においてエンジン1で発生される
回転駆動力は、トランスミッション2で所定減速比に減
速され、プロペラシャフト3を介してディファレンシャ
ル5のドライブシャフト4に伝達される。ドライブシャ
フト4に伝達された回転駆動力は、ディファレンシャル
5のハウジング20内に設けられる終減速機構およびデ
ィファレンシャル機構を介して左右のサイドシャフト6
a,6bに伝達され、このサイドシャフト6a,6bに
連結されるアクスルシャフト7a,7bを介してタイヤ
車輪に伝達される。
【0017】ディファレンシャル5を、左右に延びるサ
イドシャフト6a,6bの回転軸を含む上下方向断面で
切断して後方から見た断面図を図1に示し、このディフ
ァレンシャル5からディファレンシャル機構やベアリン
グ等を取り外してディファレンシャルキャリア21のフ
ランジ面側(図1における左側)から見た側面図を図2
に示す。
【0018】ディファレンシャル5のハウジング20
は、ディファレンシャルキャリア(以下、デフキャリア
という)21とキャリアカバー22とからなり、デフキ
ャリア21左端の開口部にキャリアカバー22が嵌合締
結されて一体のハウジングを形成する。デフキャリア2
1の前方部にはドライブシャフト4を回転自在に軸支す
るベアリングおよびオイルシールが設けられており(と
もに不図示)、ハウジング20の内部にドライブピニオ
ン4aが位置してドライブシャフト4が回転自在かつ液
密的に支持されている。
【0019】ディファレンシャル機構40は、ディファ
レンシャルギヤケース(以下、デフケースという)4
1、デフケース41内に左右に対向して配設される一対
のサイドギヤ42a,42b、これらのサイドギヤを結
んで噛合するピニオンギヤ44a,44b、ピニオンギ
ヤ44a,44bを回転可能に軸支するピニオンシャフ
ト43などから構成され、デフケース41が左右端部で
デフキャリア21とキャリアカバー22とにそれぞれベ
アリング51a,51bで回転可能に軸支されている。
【0020】デフケース41の外周部にはリングギヤ4
5がボルト締結されており、前述したドライブピニオン
4aと噛合して終減速機構を構成する。
【0021】デフケース41の左右中心部には、ベアリ
ング51a,51bの内輪嵌合面と同軸に軸支部が形成
されており、この軸支部に左右のサイドシャフト6a,
6bを受容して回転可能に軸支する。サイドシャフト6
a,6bの先端部には軸方向に延びるスプラインが形成
されており、サイドギヤ42a,42bの内周に形成さ
れたスプラインと係合してトルク伝達可能に構成されて
いる。また、サイドシャフト6aの外周面とキャリアカ
バー22の内周面との間、サイドシャフト6bの外周面
とデフキャリア21の内周面との間にはオイルシール5
2a,52bが設けられており、回転軸を液密的にシー
ルしてハウジング20内に貯留される潤滑油の流出を防
止している。
【0022】このように構成されるディファレンシャル
5において、エンジン1の回転駆動力がトランスミッシ
ョン2、プロペラシャフト3を介してドライブシャフト
4に伝達されると、ドライブシャフト4先端のドライブ
ピニオン4aがハウジング20内で回転駆動され、この
ドライブピニオン4aと噛合するリングギヤ45および
このリングギヤにボルト締結されたデフケース41が回
動される。
【0023】車両直進走行時のように、左右のタイヤ車
輪が路面から受ける抵抗が略同一の状態では、左右のサ
イドギヤ42a,42bの回転抵抗が略同一になり、サ
イドギヤ42a,42bと噛合するピニオンギヤ44
a,44bはピニオンシャフト43の軸廻りに回転力を
生じない。このため、左右のサイドシャフト6a,6b
はデフケース41に対して相対回転することなく、デフ
ケース41とともに同一回転数で回転駆動される。
【0024】一方、車両旋回走行時のように、左右のタ
イヤ車輪が路面から受ける抵抗が異なるとき、例えば図
における左側の車輪の抵抗が大きいときには、デフケー
ス内における左側のサイドギヤ42aの回転抵抗の方が
右側のサイドギヤ42bの回転抵抗よりも大きくなるた
め、これらのサイドギヤ42a,42bと噛合するピニ
オンギヤ44a,44bには回転抵抗に応じてピニオン
シャフト43の軸廻りに回転力が生じる。このため、左
右のサイドシャフト6a,6bに回転速度差が生じ、例
えば上例では左側のサイドシャフト4aがデフケース4
1の回転速度よりも遅く、右側のサイドシャフト6bが
デフケース41の回転速度よりも速く回転駆動される。
【0025】従って、上記のように左右のタイヤ車輪が
路面から受ける抵抗が異なるときに、デフケース41内
でサイドギヤ42a,42b、ピニオンギヤ44a,4
4bが回動され、ピニオンギヤを軸支する軸支部および
サイドシャフト6a,6bを支持するデフケース41の
軸支部とに相対回転が生じる。このため、ディファレン
シャル機構40の内部に対しても潤滑を行う必要があ
る。
【0026】そこで、以上のように構成されるディファ
レンシャルのハウジング20内には、潤滑油が貯留され
ており、リングギヤ45の回転力によって掻き上げられ
る潤滑油によって終減速機構やディファレンシャル機
構、ベアリング等の潤滑が行われる。ハウジング20の
内部には、リングギヤによって掻き上げられた潤滑油を
効率的に各被潤滑部に導くために種々の潤滑手段が設け
られている。
【0027】また、デフキャリア21の上部かつディフ
ァレンシャルの回転軸直上部には、ディファレンシャル
5の温度変化に伴いハウジング内部の空気が膨張、収縮
したときに、ハウジング20の内部が加圧状態や負圧状
態にならないように気体を流通させるブリーザポート2
5が、デフキャリア21の上下を連通して形成されてお
り、このブリーザポート25にブリーザプラグ26が取
り付けられている。
【0028】ブリーザポート25の近傍部におけるデフ
キャリア内壁面には、このブリーザポート25の下部近
傍領域を取り囲むようにしてリングギヤ45の歯面方向
に突出する壁面部23が形成されている。この壁面部2
3に取り囲まれてリングギヤ45の歯面方向に開口する
開口端面には、その全面を覆うように潤滑プレート31
が取り付けられており、潤滑プレート31の背後に壁面
部で囲まれたブリーザ室24を形成する。このため、潤
滑プレート31は、ブリーザ室24と対向して位置する
リングギヤ45が掻き上げる潤滑油を直接受けて遮断し
ブリーザ室24への潤滑油の侵入を防止する。
【0029】ブリーザ室下方の壁面部23は、ブリーザ
ポート25側から2度〜5度程度の緩い傾斜角をもって
下傾して形成されており、ブリーザポート25の反対側
にあたる傾斜下方(車両後方側)の壁面部には、開口面
から数mm程度の高さの切り欠き部23aが形成されてい
る。このため、潤滑プレート31を取り付けた状態でこ
の切り欠き部23aが空気の通路となり、ハウジング内
部の空気が膨張または収縮したときに切り欠き部23a
およびブリーザ室24を介して空気の排出、吸入が行わ
れる。また、壁面部が緩い傾斜を持ちその下方に切り欠
き部が形成されているため、気化した潤滑油がブリーザ
室24内で凝縮したときに、この壁面部23を伝って下
方に集まり、切り欠き部23aからハウジング内に戻さ
れる。
【0030】ブリーザ室24の前面を覆う潤滑プレート
31は、デフケース41を跨ぐように車両前後方向に延
びて形成されており、後方側の下端部31aが切り欠き
部23aの近傍領域において切り欠き部23aよりも下
方に位置するように形成されている。このため、潤滑油
の飛沫が切り欠き部23aを通ってブリーザ室24に入
射するには、潤滑プレート31と平行に近い角度、かつ
極めて小さな入射角度範囲でなければならず、リングギ
ヤ45によって掻き上げられた潤滑油のほとんどを効果
的に遮断することができる。
【0031】従って、このようなブリーザ機構の構成に
よれば、ブリーザをデフケース41の回転軸直上(前後
方向中心)かつ略最上部に設けており、車体の姿勢変化
や加減速に伴う潤滑油の吹き出し、掻き上げられた潤滑
油の噴き出し等を効果的に防止してブリーザ性能を大幅
に向上させることができる。
【0032】上記のようにしてブリーザ室24への潤滑
油の侵入を防止する潤滑プレート31は、同時にディフ
ァレンシャル機構40およびドライブピニオン4aに潤
滑油を導く誘導手段としての機能を備えている。図4は
図1と同様の断面図について、デフケース41に設けら
れたケース開口部41aを点線で付記したものである。
以下これらの各図を参照して潤滑プレート31の潤滑機
能について説明する。
【0033】ケース開口部41aは、ピニオンシャフト
43を挟みこの軸と直交するデフケースの2カ所に設け
られた開口部であり、デフケース41の内部に配設され
るサイドギヤ42a,42bやピニオンギヤ44a,4
4b等を露出させて、これらの噛合部および軸支部、ス
プライン等に潤滑油を供給するための経路である。前述
したようにデフケース41はリングギヤ45と一体でド
ライブピニオン4aに回転駆動される。このため、ケー
ス開口部41aはデフケース41の回転に伴って回転
し、その開口の大きさに応じた幅を持つ帯状の回転面を
形成する。
【0034】潤滑プレート31は、デフケース41を跨
いで前後に延びており、その位置はケース開口部41a
の回転面に沿ってその上方に位置するように配設されて
いる。また潤滑プレート31は潤滑油を掻き上げるリン
グギヤ45と対峙して配設されているため、リングギヤ
45が掻き上げた潤滑油の飛沫を直接衝突させて凝集さ
せやすい。潤滑プレート31は、このようにして集めた
潤滑油をプレート表面に沿って下方に導き、その下端部
からケース開口部41aの回転周上に滴下させる。従っ
て、デフケース41の内部に配設されるサイドギヤ42
a,42bやピニオンギヤ44a,44b、これらの軸
支部、スプライン等をケース開口部側から効果的に潤滑
することができる。
【0035】また、潤滑プレート31の前端部31bは
ドライブピニオン4aまで延び、その下端がドライブピ
ニオン4aの上方に位置して配設されている。このた
め、潤滑プレート31の前方部に衝突した潤滑油は、ド
ライブピニオン4aの上方に導かれ、ドライブピニオン
4aを効果的に潤滑することができる。
【0036】次に、図5および図6には潤滑プレートの
他の実施形態を示している。この潤滑プレート32は、
以上説明した潤滑プレート31と同様にデフキャリア2
1に取付可能に構成されており、ブリーザ室24の全面
を覆うとともに、前端部がドライブピニオン4aの上方
に位置するように形成されている。この潤滑プレート3
2は、図5中にVI-VI矢を付して示す方向の断面図矢視
図を図6に示すように、デフケース41を跨ぐ領域につ
いて同心円上に折り曲げ成形しており、曲げ端部がケー
ス開口部41aの中心に向くように構成したものであ
る。
【0037】このような構成によれば、潤滑プレート3
2に衝突した潤滑油の飛沫は、このプレート表面に沿っ
て下方に伝って流れ、折り曲げられた下端部32aから
ケース開口部41aの中心部に向けて滴下する。このた
め、ディファレンシャル機構を構成する左右のサイドギ
ヤ42a,42bやピニオンギヤを均等に潤滑すること
ができる。
【0038】図7および図8は、潤滑プレートのさらに
他の実施形態を示している。この潤滑プレート33は、
上述した潤滑プレート31,32と同様にブリーザ室2
4の全面を覆い、前端部がドライブピニオン4aの上方
に位置するように形成されている。この潤滑プレート3
3は、図7中にVIII-VIII矢を付して示す方向の断面図
を図8(a)に例示するように、プレート表面に向けて突
出する突起部33c,33d,33eを形成(エンボス
加工)し、プレート表面を流れる潤滑油をこれらの突起
部33c,33d,33eで所望の方向に導くように構
成したものである。
【0039】このような構成によれば、潤滑プレート3
3に衝突した潤滑油の飛沫は、プレート表面に形成され
た突起部33c,33d,33eに導かれて下方に流下
し、プレートの下端部からケース開口部41aやドライ
ブピニオン4aに滴下する。このため、例示するように
デフケース41の回転軸上から集中的に潤滑油を滴下さ
せたり、ドライブピニオン4aにより多くの潤滑油を導
くなど、潤滑油の供給を適宜に調整することができる。
なお、この実施例では潤滑プレート33にエンボス加工
により突起部を形成する例を示したが、図8(b)に示す
ように、例えば溶接等の手段によりプレートや線材等を
凸状に立てて突起部を設け、あるいは鋳造等により突起
部を一体成形させ、または樹脂材料を用いて射出成形等
により突起部を一体成形させるものであっても良い。
【0040】次に、図9にはキャリアカバー22に設け
られた潤滑機構を示している。この潤滑機構は、リング
ギヤ45の回転によって掻き上げられた潤滑油をリング
ギヤ45の背面に位置するキャリアカバー側のベアリン
グ51aやオイルシール52a、サイドシャフト6aの
軸支部およびスプラインに供給するための潤滑機構であ
る。
【0041】キャリアカバー22の上部位置には、図9
中にに点線で示すように壁面部が形成されており、その
壁面の端面を覆うように貯留プレート35がねじ締結さ
れ、プレートの背後に貯留室27が形成される。貯留室
27の壁面部はブリーザ室24のように閉じておらず、
図における左方向が開いた開放部を有した部屋を形成す
る。貯留室27の底部にはこの底面を貫通しベアリング
51aとオイルシール52aとの間に抜ける導入孔28
が形成されている。
【0042】このように構成される潤滑機構では、リン
グギヤ45の回転で掻き上げられキャリアカバー22の
上部に衝突した潤滑油が、キャリアカバーの内壁面に沿
って流下し、図9において左方に延びる斜面状の壁面部
により導かれて貯留室27内に貯留される。貯留された
潤滑油は導入孔28を通してベアリング51aとオイル
シール52aとの間に供給され、この空間を潤滑油で満
たして両部材を潤滑する。
【0043】また、デフケース41の端部には潤滑油を
受ける切り欠き部53aが形成され、サイドシャフト6
aを支持する軸支部の内面には切り欠き部53aからデ
フケース中心部に延びるスパイラル状のオイル溝54a
が形成されている。このスパイラル状のオイル溝54a
の形成方向はデフケース41の正転時(車両の前進走行
時)にデフケース端部から潤滑油を吸い込んでデフケー
ス中央部に吐出するような回転方向で形成されている。
このため、ベアリング51aとオイルシール52aとの
間の空間に充満された潤滑油は、デフケース41が回転
することにより切り欠き部53aからオイル溝54aを
通してサイドシャフト6aとサイドギヤ42aとのスプ
ライン係合部に供給され、これにより、サイドシャフト
6aの軸支部およびスプライン係合部の潤滑が行われ
る。
【0044】なお、デフキャリア21には、図2に示す
ようにハウジング内面に突出して潤滑油を集めるリブ2
9aと、リブ29aにより集められた潤滑油をベアリン
グ51bとオイルシール52bとの間の空間に導く導入
溝29bとが形成されており、ベアリング51bとオイ
ルシール52bとの間の空間に充満された潤滑油は、上
述したと同様にデフケース41に形成された切り欠き部
53bおよびオイル溝54bを通してサイドシャフト6
bとサイドギヤ42bとのスプライン係合部に供給さ
れ、これにより、サイドシャフト6bの軸支部およびス
プライン係合部の潤滑が行われる。
【0045】なお、以上説明した実施例においては、本
発明に係るディファレンシャル構造をフロントエンジン
・リヤドライブ車(FR車)のディファレンシャルに適
用した例について示したが、本発明はこのような型式の
車両のみならず、ハウジング内に減速機構とディファレ
ンシャル機構とを備えるディファレンシャルであればど
のような型式の車両であっても適用できる。例えば、フ
ロントエンジン・フロントドライブ車(FF車)や、F
F車またはFR車をベースとする四輪駆動車においても
適用することができる。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ハウ
ジング内に終減速機構とディファレンシャル機構とを収
納するディファレンシャルにおいて、ハウジングにおけ
る上部位置にブリーザポートを設け、ハウジング内部に
おけるブリーザポートの近傍領域にブリーザポートの下
部近傍領域を取り囲む壁面部と、この壁面部に取り囲ま
れた開口を覆ってブリーザ室を形成しブリーザ室への潤
滑油の進入を遮断する覆い板とを設け、この覆い板がリ
ングギヤの歯面側に位置するとともに、ドライブピニオ
ンの上方に延びて配設されるようにディファレンシャル
を構成する。
【0047】このような構成によれば、リングギヤの回
転によって掻き上げられた潤滑油が歯面側に位置する覆
い板に衝突して板面を伝って流れ、下方に位置するドラ
イブピニオンに落下するためドライブピニオンに対して
充分な潤滑を行うことができる。また覆い板はブリーザ
室の壁面としての機能と潤滑油をドライブピニオンに導
く誘導部材としての機能の両方を発揮する。従って、簡
明な構成でブリーザ性能の向上とドライブピニオンの潤
滑性の向上とを両立させるディファレンシャル構造を提
供することができる。
【0048】また、ハウジング内に終減速機構とディフ
ァレンシャル機構とを収納するディファレンシャルにお
いて、ハウジングにおける上部位置にブリーザポートを
設け、ハウジング内部におけるブリーザポートの近傍領
域にブリーザポートの下部近傍領域を取り囲む壁面部
と、この壁面部に取り囲まれた開口を覆ってブリーザ室
を形成しブリーザ室への潤滑油の進入を遮断する覆い板
とを設け、この覆い板がリングギヤの歯面側に位置する
とともに、ディファレンシャルギヤケースに形成された
ケース開口部の回転面に沿ってその上方に配設されるよ
うにディファレンシャルを構成する。
【0049】このような構成によれば、リングギヤの回
転により掻き上げられた潤滑油は歯面側に位置する覆い
板にぶつかってその板面を伝って流れ、下方で回転する
ケース開口部を通って内部のディファレンシャル機構に
滴下するためディファレンシャル機構に対して充分な潤
滑を行うことができる。また覆い板はブリーザ室の壁面
としての機能と潤滑油をディファレンシャル機構に導く
誘導部材としての機能の両方を発揮する。従って、簡明
な構成でブリーザ性能の向上とディファレンシャル機構
の潤滑性の向上とを両立させるディファレンシャル構造
を提供することができる。
【0050】また、ブリーザ室における下側の壁面部に
この壁面部の上下を連通する切り欠き部を設け、覆い板
は切り欠き部の近傍において上記下側の壁面部よりも下
方に延びて形成することにより、切り欠き部からブリー
ザ室内に侵入可能な入射角の角度範囲が極めて小さく、
リングギヤで掻き上げられたオイル飛沫のブリーザ室へ
の侵入を効果的に防止することができる。
【0051】また、ケース開口部の回転面の上方に位置
する覆い板の縁部をケース開口部の中心に向けて形成す
ることにより、覆い板から滴下する潤滑油をディファレ
ンシャル機構のサイドギヤやピニオン等に均等に滴下さ
せて潤滑することができる。
【0052】また、覆い板にケース開口部およびドライ
ブピニオンのうち少なくともいずれか一方に潤滑油を導
く突起部を設けることにより、覆い板の板面を流下する
潤滑油を効率的にドライブピニオンやディファレンシャ
ル機構に導いて潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るディファレンシャル構造を備える
ディファレンシャルの断面図である。
【図2】上記ディファレンシャルにおけるデフキャリア
の側面図である。
【図3】上記デフキャリアにおけるブリーザ室近傍部を
拡大して示す側面図である。
【図4】本発明に係るディファレンシャル構造を備える
ディファレンシャルの断面図である。
【図5】本発明に係るディファレンシャル構造における
潤滑プレートの第2実施例を示す正面図である。
【図6】図5中にVI-VI矢を付して示す方向の上記潤滑
プレートの断面図である。
【図7】本発明に係るディファレンシャル構造における
潤滑プレートの第3実施例を示す正面図である。
【図8】図8(a)は図7中にVIII-VIII矢を付して示す方
向の上記潤滑プレートの断面図であり、図8(b)はこの
潤滑プレートの他の実施例である。
【図9】上記ディファレンシャルにおけるキャリアカバ
ーの正面図である。
【図10】本発明に係るディファレンシャル構造を備え
る車両の概略構成図である。
【符号の説明】
4a ドライブピニオン(終減速機構) 5 ディファレンシャル 20 ハウジング 23 壁面部 23a ブリーザ室下部の切り欠き部 24 ブリーザ室 25 ブリーザポート 31,32,33 潤滑プレート(覆い板) 40 ディファレンシャル機構 41 ディファレンシャルギヤケース 41a ケース開口部 45 リングギヤ(終減速機構)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J063 AA01 AB13 AC11 BA13 CA05 CB06 CB13 CD41 CD69 XD03 XD12 XD17 XD33 XD62 XD72 XE15 XF01 XG02 XG14 XG31 XG43 XG53

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 終減速機構とディファレンシャル機構と
    を液密的に収納するハウジングと、 前記ハウジングに回動自在に軸支されケース内部にディ
    ファレンシャル機構を備えるディファレンシャルギヤケ
    ースと、 前記ディファレンシャルギヤケースの外周部に配設され
    たリングギヤと、 前記ハウジングに回動自在に軸支され前記リングギヤと
    噛合して前記終減速機構を構成するドライブピニオンと
    を有し、前記リングギヤの回転により前記ハウジング内
    に貯留する潤滑油を掻き上げて前記ハウジング内の潤滑
    を行うディファレンシャルにおいて、 前記ハウジングにおける前記リングギヤの歯面側の上部
    位置に前記ハウジングの内部と外部とを連通するブリー
    ザポートを有し、 前記ハウジングの内部における前記ブリーザポートの近
    傍部に、前記ブリーザポートの下部近傍領域を取り囲み
    前記リングギヤの歯面方向に向けて形成された壁面部
    と、前記壁面部に取り囲まれた開口を覆ってブリーザ室
    を形成し前記ブリーザ室への前記潤滑油の進入を遮断す
    る覆い板とを有し、 前記覆い板が前記リングギヤの歯面側に位置するととも
    に、前記ドライブピニオンの上方に延びて配設されるこ
    とを特徴とするディファレンシャル構造。
  2. 【請求項2】 終減速機構とディファレンシャル機構と
    を液密的に収納するハウジングと、 前記ハウジングに回動自在に軸支されケース内部にディ
    ファレンシャル機構を備えるディファレンシャルギヤケ
    ースと、 前記ディファレンシャルギヤケースの外周部に配設され
    たリングギヤと、 前記ハウジングに回動自在に軸支され前記リングギヤと
    噛合して前記終減速機構を構成するドライブピニオンと
    を有し、前記リングギヤの回転により前記ハウジング内
    に貯留する潤滑油を掻き上げて前記ハウジング内の潤滑
    を行うディファレンシャルにおいて、 前記ハウジングにおける前記リングギヤの歯面側の上部
    位置に前記ハウジングの内部と外部とを連通するブリー
    ザポートを有し、 前記ハウジングの内部における前記ブリーザポートの近
    傍部に、前記ブリーザポートの下部近傍領域を取り囲み
    前記リングギヤの歯面方向に向けて形成された壁面部
    と、前記壁面部に取り囲まれた開口を覆ってブリーザ室
    を形成し前記ブリーザ室への前記潤滑油の進入を遮断す
    る覆い板とを有し、 前記覆い板は前記リングギヤの歯面側に位置するととも
    に、前記ディファレンシャルギヤケースに形成されて前
    記ディファレンシャル機構を露出させるケース開口部の
    回転面に沿いその上方に配設されることを特徴とするデ
    ィファレンシャル構造。
  3. 【請求項3】 前記ブリーザ室における下側の壁面部に
    この壁面部の上下を連通する切り欠き部を有し、 前記覆い板は前記切り欠き部の近傍において前記下側の
    壁面部よりも下方に延びて形成されていることを特徴と
    する請求項1または請求項2に記載のディファレンシャ
    ル構造。
  4. 【請求項4】 前記覆い板は、前記ケース開口部の回転
    面の上方に位置する縁部が、前記ケース開口部の中心に
    向けて形成されていることを特徴とする請求項2または
    請求項3に記載のディファレンシャル構造。
  5. 【請求項5】 前記覆い板には、前記ケース開口部およ
    び前記ドライブピニオンのうち少なくともいずれか一方
    に潤滑油を導く突起部が設けられていることを特徴とす
    る請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のディフ
    ァレンシャル構造。
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