JP2002294226A - 滑雪氷性被覆物 - Google Patents

滑雪氷性被覆物

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JP2002294226A
JP2002294226A JP2001103031A JP2001103031A JP2002294226A JP 2002294226 A JP2002294226 A JP 2002294226A JP 2001103031 A JP2001103031 A JP 2001103031A JP 2001103031 A JP2001103031 A JP 2001103031A JP 2002294226 A JP2002294226 A JP 2002294226A
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ice
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coating layer
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Katsumi Yasui
勝美 安井
Shintaro Itakura
信太郎 板倉
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Sekisui Jushi Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】基材上に比較的安価且つ簡便な方法で、付着し
た雪氷を速やかに滑落させ、雪氷の付着している時間を
極力短時間とすることで着雪氷防止効果を発現し、且つ
長期間に亘り着雪氷防止効果を発現できる滑雪氷性被覆
物を提供する。 【解決手段】着雪氷した際においても被覆層外面の滑雪
氷性により被覆物外面に付着した雪氷を速やかに滑落さ
せることで着雪氷防止効果を発現することができる。従
って着雪氷の防止に超撥水レベルの撥水性を必要とする
ことなく、比較的安価且つ簡便な方法で形成した被覆層
により付着した雪氷を速やかに滑落させることができる
ようにし、雪氷の付着している時間を極力短時間として
雪氷の付着を抑制することが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は積雪寒冷地域の着
雪、着氷を防止する滑雪氷性被覆物に関するもので、例
えば構造用、構築用材料の外面に広く適用されるもので
ある。
【0002】
【従来の技術】積雪寒冷地域において発生する着雪氷は
一般生活や産業活動に様々な被害、障害をもたらす。例
えば電線に着雪することにより電線の断裂や鉄塔が倒壊
することにより広い地域において停電事故が生じたり、
列車が走行中に巻き上げる雪がパンタグラフや車両下面
に付着して列車の運行に障害を起こす等である。また外
界の状況の認識に係わる箇所であれば人間の視野を遮蔽
若しくは制限し、例えば車両の窓に着雪氷することで運
転者の視野が妨げられた場合、構造物への衝突や交通事
故を引き起こす原因ともなり得る。
【0003】また道路標識や橋梁等に着雪氷すると、付
着した雪氷は徐々に成長してその重量を増して行き、重
量が付着力を上回った時点で雪氷の塊となって落下す
る。雪氷が微量の水分を含んでいる状態では、水分に由
来する水素結合力、ファンデルワールス力等により雪氷
は相当に大きな重量まで成長する。その雪氷の塊が道路
標識や橋梁等から剥離して落下した時に、その下方を車
両や歩行者が通行していれば、場合によっては大惨事に
なりかねない。
【0004】その他橋桁、鉄塔、車両、航空機、電気通
信施設、道路交通標識、遮音壁、建築物の屋根、側壁、
信号機の着雪氷、流雪溝の内壁や投雪口の着氷による閉
塞等による事故や障害は人命に関わることもあり、性能
及び信頼性の高い着雪氷防止技術が各方面から望まれて
いる。
【0005】着雪氷防止の対策としてヒーター等の発熱
体を用いるのは有効な手段ではあるが、設備の付加は決
して安価なものとは言えず、電力等のエネルギー及び設
備の維持に要する費用や手間は極めて大きくなり、また
熱に対し脆弱な合成樹脂等を用いた場合には熱による変
形等の不具合の発生も考えられる。また物理的に着雪氷
を払拭する方法では強固に付着した雪氷を十分に払拭す
ることはできず、また払拭子が消耗することで取り替え
の手間、費用等がかかり、かような手段を用いることは
設置及び維持が非常に煩瑣であるという問題がある。更
に融雪により発生する水が氷柱を形成し、その氷柱に雪
が付着する等で、必要箇所のみならず構造物周辺に亘り
発熱体を設置しないことには十分な効果が期待できない
ことから、かような手段を用いることは設置及び維持が
非常に煩瑣であるという問題があった。
【0006】そこで着雪、着氷を防止する方法として基
材をフッ素樹脂等を主成分とする撥水塗料により被覆す
る発明が種々提案されており、例えば、特開平7−33
1122、特開平9−279056、特開平10−88
061、特開平11−29722等においては塗料の撥
水性能を極限まで向上させる手法にて基材の外面に超撥
水膜を形成する着雪氷を防止する被覆物が提案されてい
る。これらは雪及び氷と被覆層外面との間に発生し、着
雪氷の原因となっている水素結合やファンデルワールス
力等をできる限り小さくすること、すなわち被覆層の外
面を超撥水性とすることで着雪氷を防止しようとするも
のである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記の如
き着雪防止被覆物は、屋外に設置すると設置当初は良好
な着雪防止効果が得られるものの、設置してからおおよ
そ数週間後には被覆層外面への汚染物質の付着及び塗膜
自体の劣化等によりその撥水性能が低下し着雪氷防止効
果は失われる。
【0008】また特開平10−237431については
撥水性を有する被覆層に光触媒微粒子を配合し、その酸
化還元反応により被覆層外面に付着した汚染物を分解す
ることで超撥水性を維持し着雪防止効果を維持する方法
が提案されている。しかしながら、光触媒粒子の酸化還
元反応により汚染物と同時に撥水性被覆層自体も分解さ
れることから塗膜自身の早期の劣化を招き、更には被覆
層外面に露出した光触媒微粒子は親水化し、逆に着雪氷
に繋がる。
【0009】また被覆層外面がある程度の平滑性を有し
ていれば、着雪氷が融雪し始めた際に雪氷と被覆層外面
との間に水膜が形成され雪氷が被覆層外面を滑り落ちる
こと、すなわち滑雪氷により付着した雪氷が被覆層外面
から除かれることが期待できるが、超撥水膜ではその撥
水性により外面に水膜が形成されず、且つ外面に多数の
微小凹凸を有する不連続な膜であるため滑雪氷が円滑に
行われない。更にかような外面を形成するために微細粒
子等を塗料に配合する必要もあることから塗装時の取り
扱いが難しく、また塗料のポットライフも短い等様々な
問題点があり、工程が煩雑でコストも非常に高いものと
なる。
【0010】そこで本発明は基材上に比較的安価且つ簡
便な方法で、付着した雪氷を速やかに滑落させ、雪氷の
付着している時間を極力短時間とすることで着雪氷防止
効果を発現し、且つ長期間に亘り着雪氷防止効果を発現
できる滑雪氷性被覆物を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らは鋭意研究の結
果、基材の上に、外面の表面張力が35dyne/cm
以下の撥水性で、且つ水滴の滑落角度が40度以下の滑
水性を有する被覆層を形成することで被覆物の外面に滑
雪氷性を具備させ、着雪氷を軽減し且つ付着した雪氷を
滑落させられることを知得し、本発明を完成するに至っ
たのである。
【0012】すなわち本発明は、表面張力が35dyn
e/cm以下であり、且つ水滴の滑落角度が約40度以
下の滑水性である外面は滑雪氷性を有していることを見
いだしたものである。
【0013】滑雪氷性とは、雪氷の被覆層外面に接触し
ている部分が一定に保持された状態で滑落する、すなわ
ち雪氷を橇、被覆層外面を雪面と見なした場合に、橇が
雪面を滑走するが如き状態で雪氷が滑落する性質であ
る。滑雪氷性を有する外面に付着した雪氷は、雪氷の表
面に存在する微量の水分が前記外面と雪氷との間に介在
することによって自重により外面から滑落する。
【0014】本発明において、被覆層外面の表面張力が
35dyne/cm以下とすることで雪氷が被覆層外面
に付着しようとする力、すなわち雪氷の表面に存在する
微量の水分に起因する被覆層外面と雪氷との間に発生す
る水素結合力、ファンデルワールス力等を低減し、雪氷
の付着を軽減すると共に付着した雪氷を被覆物外面から
浮き上がらせるに近い状態とする。また水滴の滑落角
度、すなわち被覆層外面に水滴を落とし水滴を静止させ
た後に被覆物を徐々に傾斜させ、水滴が動き出した時の
傾斜角度が40度以下であれば、被覆層外面に付着した
雪氷はそれ自体が含有する微量の水分により、その自重
で滑落することができる。
【0015】本発明により、着雪氷した際においても被
覆層外面の滑雪氷性により被覆物外面に付着した雪氷を
速やかに滑落させることで着雪氷防止効果を発現するこ
とができる。従って着雪氷の防止に超撥水レベルの撥水
性を必要とすることなく、比較的安価且つ簡便な方法で
形成した被覆層により付着した雪氷を速やかに滑落させ
ることができるようにし、雪氷の付着している時間を極
力短時間として雪氷の付着を抑制することが可能とな
る。
【0016】更に汚染物質が被覆物外面に付着したとし
ても、汚染物質の粒子が被覆層外面の全体に均一に分布
することはありえず、微視的に見て滑雪氷性を有する部
分は露出した状態にあるため滑雪氷性はそれ程損なわれ
るものではない。また汚染物質は被覆物外面を滑落する
雪氷と共に除去され、被覆物外面に蓄積することなく滑
雪氷性を維持することができる。更には、塗膜が劣化し
たとしても、滑雪氷に係わる表面張力、滑水性等の性能
の低下は、超撥水性の撥水性の低下よりはるかに緩やか
なものであり、超撥水性塗膜等と較べはるかに長い期間
着雪氷の防止効果を維持することができる。
【0017】本発明に係わる滑雪氷性を有する被覆層
は、その外面は表面張力が35dyne/cm以下で且
つ水滴の滑落角度が40度以上である。表面張力が35
dyne/cmを超えるものとなると、雪氷に含有され
る微量の水分と被覆層外面との間に強い水素結合力、フ
ァンデルワールス力等の付着力が発生し、その付着力が
雪氷の自重で滑落できるレベルを超えることから雪氷は
滑落し辛くなる。表面張力が35dyne/cm以下で
あっても、水滴の滑落角度が40度を超えるものであれ
ば、被覆層外面に付着した着雪氷がその自重のみにより
滑落することが困難となる。
【0018】また表面張力が35dyne/cm以下で
水滴が動き出す傾斜角度が40度以下である場合におい
ても、被覆層外面は水滴が滑落する性質、すなわち水滴
が被覆層外面を動く際に水滴と被覆物外面が接触してい
る部分が一定に保持された状態で水滴が動くことが必要
である。雪氷の表面に存在する水分は非常に微量で雪氷
から離れることができない状態にあり、且つ雪氷と被覆
物との界面は隙間がほとんど存在しないことから、水分
は水滴状態となることができず、転落すなわち外面上を
水滴が転がる状態の表面においては自重による滑雪氷性
は期待できない。また表面張力は、より好ましくは20
dyne/cm以下であり、水滴の滑落角度は、より好
ましくは30度以下とすることで、より高い滑雪氷性を
発現することができる。
【0019】また被覆層は、水滴の滑落時において、水
滴の前進接触角は90度以上、後退接触角は50度以上
前進接触角以下であることが好ましい。水滴の滑落時に
おける前進接触角及び後退接触角は被覆層外面の撥水性
と水滴が有する分子間の結合力とのバランスを表すもの
であり、前進接触角が90度を下回ると被覆物外面と水
滴との付着力が水滴内の分子間の結合力を上回り、着雪
氷が起こりやすくなる。また、後退接触角が50度を下
回ると前進接触角の場合と同様の理由で着雪氷が起こり
やすくなり、後退接触角が前進接触角を上回ると水滴は
転落し易くなり滑落しにくくなることから、滑雪氷性は
低下する。また前進接触角はより好ましくは100度以
上、後退接触角はより好ましくは60度以上前進接触角
以下とすることで、より優れた滑雪氷性を発現すること
ができる。
【0020】また、被覆層は水滴の滑落初期角度におい
て、滑落初期地点から10cm滑落するまでの水滴滑落
速度が10cm/分以下であることが好ましい。滑雪氷
性を発現させるには、雪氷表面に存在する微量の水分が
安定して雪氷と被覆層外面との界面に接触し続けること
が必要であり、被覆層外面上で水滴が物理的に不安定な
状態で存在するのであれば、雪氷の表面に存在する水分
と被覆層外面との接触が不十分となり円滑な滑雪氷性が
発現されない。水分が被覆層外面で不安定な状態であれ
ば水滴は安定して被覆層外面に留まっていることができ
ず、水滴の滑落速度は速いものとなる。従って水滴滑落
速度は10cm/分以下であることが好ましく、より好
ましくは5cm/分以下である。
【0021】本発明に係わる滑雪氷性を有する被覆層外
面の最大表面粗さは10μm以下であることが好まし
い。最大表面粗さとは、被覆層外面における微視的に見
た凹凸の高さの差であり、被覆層外面においてその差の
最大を10μm以下とすることで滑雪氷性を優れたもの
とすることができる。外面に10μmを超える微視的に
見た凹凸の高さの差が存在すると、その凹凸により雪氷
の滑りが滑らかでなくなることや、凹部に空気が滞留
し、その空気により雪氷表面に存在する微量な水分は、
空気の撥水性により雪氷中に吸収されることで滑雪氷性
の発現は阻害される。最大表面粗さを10μm以下とす
ればそのような滑雪氷性への影響はほとんどなくするこ
とができる。
【0022】また被覆層は、−2度から−5度の温度域
で外面に凍着させた氷が被覆層と水平方向からの荷重に
より定荷重非破断的滑動を起こすことが好ましい。実際
の設置環境下において着雪氷する場合、雪氷の付着力が
最大となるのが前記温度領域においてであり、前記温度
領域においては雪氷に微量ではあるが含まれる水分量が
最大となり、その水分に由来する水素結合力、ファンデ
ルワールス力等の付着力も最大となることで着雪氷が起
こりやすくなる。前記温度域より低い外気温では雪氷の
表面に存在する水分量が少なくなり、それに伴って水素
結合力、ファンデルワールス力等が小さくなることで、
着雪氷したとしても風圧、振動等により被覆層外面より
容易に脱落する。前記温度域より高い外気温では雪氷の
状態にはなく、外面に付着することなく水滴となって滑
落する。
【0023】定荷重非破断的滑動とは、凍着した雪氷
が、それ自体に作用する重力又は外力により被覆物外面
との界面において凍着接合の破断を起こすことなく被覆
物外面を滑ることである。すなわち重力又は外力がかか
った場合に、ある時点で突如として凍着接合が破断して
被覆物外面から脱落するのではなく、ある時点の重力又
は外力がかかった時点から、おおよそ前記重力又は外力
を保った状態で雪氷が被覆物外面を滑るように動くこと
を表すものである。雪氷が定荷重非破断的滑動すること
で凍着接合の破断より小さい重力又は外力により滑雪氷
させることができ、雪氷それ自体の自重により滑落させ
ることが容易となる。
【0024】従って降雪時において滑雪氷性を有さない
表面に雪氷が付着すると、付着した雪氷は徐々に成長
し、表面と雪氷との付着力を雪氷の自重が上回った時点
で破断的に表面から剥離することで大きな雪氷の塊とし
て落下し、歩行者や車両等に衝突する等によって被害を
及ぼすが、本発明における被覆層外面の如き表面におい
ては、雪氷は比較的小さい状態でその自重により破断的
に剥離することなく滑落することで、前記の如き被害を
未然に防止することができる。
【0025】また、被覆層は基材の上に無機系ベース膜
を形成し、その無機系ベース膜上に形成してもよい。基
材の上に無機系ベース膜を形成することで、どのような
基材に対しても、また基材上に塗装、めっき等の表面処
理が施されている場合においても、それらの表面処理被
膜上に無機系ベース膜を形成し、その無機系ベース膜上
に被覆層を形成することで、種々の基材の上に容易に滑
雪氷性の被覆層を形成することができる。更には無機系
ベース膜がハードコート層として働くことで、基材に傷
をつきにくくできる。
【0026】無機系ベース膜は透明な被膜であってもよ
く、かような無機系ベース膜とすることで塗装、めっき
等の表面処理被膜の色彩、光沢等の外観を損なうことな
く被覆層を形成することができる。無機系ベース膜は有
機系、無機系いずれの被膜に対しても良好な密着性を有
し、またその有する官能基により撥水性物質と化学的に
結合しやすいものであって、その結合により撥水性物質
が強固に固定されることで滑雪氷性の耐久性の高い被覆
層を形成することができる。
【0027】本発明に係わる基材の外面に形成される無
機系ベース膜は、ガラスや酸化チタン、アルミナ等の金
属酸化物それ自体であってもよく、またそれらを用いて
形成してもよいが、シリコーンを用いて形成されること
が好ましく、シリコーンコーティング剤により形成され
ることが好ましい。シリコーンコーティング剤の主成分
となるシリコーンは前記の如き基材との密着性及び撥水
性物質との結合が比較的高くできると共に、無機系ベー
ス膜を形成することが容易である。またシリコーンコー
ティング剤により形成された被膜は、シリコーン物質同
士がガラスと同様のシロキサン結合により結合しており
被膜として極めて強固なものとなる。更にはシリコーン
の官能基の存在量の高さにより、撥水性物質を容易に且
つ強固に固定することができる。
【0028】シリコーンを主成分とする無機系ベース膜
を形成するシリコーンコーティング剤は公知のものを用
いてよく、その塗布方法としては例えば、ディッピング
法、スピンコート法、ノズルフローコート法、スプレー
法、フローコート法、刷毛塗り法、ローラーコート法、
ワイピングコート法等またはこれらの併用法等により塗
布できるが、膜の均一性、膜厚の制御等が容易であり、
平滑性が得られるスプレー法、ディッピング法が好適で
ある。
【0029】また、被覆層は、5Å(オングストロー
ム)以上の長さ、より好ましくは10Å以上の長さの直
鎖構造を有する撥水性物質を、その末端が被覆層外面に
配向させて、基材の上の面に固定するのが好ましい。直
鎖構造を有する撥水性物質を固定化することで、被覆層
外面における水滴の滑落角度を低下させると共に水滴の
滑水性を発現させることができる。
【0030】直鎖構造を有する撥水性物質を末端を外面
に配向させて固定化することで、被覆層外面は微視的に
見ると毛足の長い絨毯の如き状態になっているが、被覆
層を絨毯、直鎖構造を有する撥水性物質を絨毯の毛足と
して見ると、絨毯の表面に水滴が載ると毛足は撥水性で
あり水滴は毛足の間に浸透せず直立している毛足の上に
載った状態となる。その状態で絨毯全体が傾いたとき
に、直立していた毛足は水滴の重みで傾斜方向に傾き、
水滴が動きだそうとするのを助長し水滴の滑落角度を低
下させる。また水滴が傾斜した絨毯の表面を滑落して行
くときに、その軌跡上の毛足が次々に傾斜方向に傾くこ
とで、水滴の滑落を維持すると共に水滴は転落する必要
なく絨毯の表面を滑落することができる。
【0031】また、水滴の場合のみならず、汚染物質が
付着した場合においても、直鎖構造を有する撥水性物質
は汚染物質の粒子よりはるかに小さく、汚染物質が被覆
層に浸透することなく外面に載った状態となり一旦付着
しても水滴や雪氷と共に容易に滑落する。また汚染物質
は外面に載ったのみであることから前記直鎖構造を有す
る撥水性物質が傾くことを阻害せず、従って滑雪氷性の
低下に繋がらない。直鎖構造を有する撥水性物質の長さ
は、5Åを下回ると滑雪氷性を発現するまでに十分に傾
くことができず、5Å以上が好ましく、10Å以上であ
れば、直鎖構造を有する撥水性物質が更に傾きやすくな
りより好ましい。
【0032】また、被覆層は基材の上の面に5Å以上の
長さ、より好ましくは10Å以上の長さで末端にトリフ
ルオロメチル基又はメチル基が配置された直鎖構造を有
する撥水性物質を、被覆層外面に前記末端が配向するよ
うに固定するのが好ましい。トリフルオロメチル基及び
メチル基はそれぞれ撥水性の官能基であり撥水性を発現
する。
【0033】トリフルオロメチル基が末端に配置された
直鎖構造を有する撥水性物質は、トリフルオロメチル基
が撥水性であると共に、官能基として極性が高くまた官
能基自体が大きいことから、固定された直鎖構造を有す
る撥水性物質が末端が反発し合うことで直立されやすく
なり、滑雪氷性に有利に働く。また直鎖構造を有する撥
水性物質の末端が反発し合うことで、経時による劣化等
により固定された直鎖構造を有する撥水性物質の密度が
低下した場合においても直鎖構造を有する撥水性物質が
倒れにくくなるから滑雪氷性を発現する期間を長くでき
耐久性は高いものとなる。
【0034】また、メチル基が末端に配置された直鎖構
造を有する撥水性物質は、メチル基が撥水性であると共
に、官能基が比較的小さく、直鎖構造を有する撥水性物
質を基材の上の面に稠密に固定することができ、また末
端の官能基が小さいことから直鎖構造が動きやすく、初
期段階で高い滑雪氷性を発現させることができる。末端
にトリフルオロメチル基又はメチル基が配置される直鎖
構造を有する撥水性物質は、それぞれの単独で用いても
よく、また適宜混合して用いてもよい。
【0035】また、請求項8又は9に記載の被覆層につ
いて、その基材の上の面に固定された直鎖構造を有する
撥水性物質は、20平方Åに1物質以上、略均一に分布
していることが好ましい。1分子当たりの面積が20平
方Åを上回ると、前記の、被覆層を絨毯とその毛足に例
えた場合の毛足の本数が少なくなり、被覆層外面は前記
の如き滑雪氷性に係わる効果が十分に発現できなくな
る。
【0036】また請求項8〜10のいずれか1項に記載
の被覆層については、直鎖構造を有する撥水性物質を、
基材の上の面上において固定が飽和状態となる密度に対
し、10〜95%の密度で略均一に分布させるのが好ま
しい。固定が飽和状態となる密度とは、撥水性物質が分
子の大きさや分子間エネルギー等により、微視的には固
定される密度に限界があるが、その最大固定状態での密
度を言うものである。前記直鎖構造を有する撥水性物質
は撥水性であり、その物質を面上で飽和状態となる密度
にて固定すると、水分子の大きさレベルで考えると被覆
層外面は全て撥水性の物質により覆われた状態となる。
水は分子間に微小な結合力を有しその場に留まろうとす
る性質を持つが、撥水性の物質のみが配置された面上で
は、雪氷に含まれる微量の水分はその面上に留まろうと
することで被覆層外面に付着した雪氷は滑雪氷しづらく
なる。
【0037】従って撥水性の部分の他に撥水性ではない
部分を設けておくことで、前記2つの部分の間で雪氷に
含まれる微量の水分に起因して発生する雪氷と被覆層外
面との間の水素結合力、ファンデルワールス力等に差が
発生し、その差が雪氷と被覆層外面との間の付着しよう
とする力のバランスを崩し、水分を動かす発端となるこ
とで滑雪氷をより助長することができる。直鎖構造を有
する撥水性物質の分布が10%を下回る部位にしか固定
できないと表面張力を35dyne/cm以下とするの
が困難であり、95%を上回ると前記着雪氷の付着しよ
うとする力のバランスを崩すまでには至らず滑雪氷を助
長する効果が発現されにくい。
【0038】更に前記の撥水性物質が分布する部分以外
に親水性物質を分布させることで、より大きな水素結合
力、ファンデルワールス力等の差を発生させることがで
き、滑雪氷性を向上させることができる。更に前記の親
水性により被覆層外面に付着する汚染物質等が降雨等に
より容易に洗い流され汚染物質が除去されるようにな
り、着雪氷の防止効果の低下を防ぐことにも繋がる。
【0039】本発明に係わる撥水性を発現させる物質は
任意の撥水剤により形成できるが、基材が熱に対し脆弱
な合成樹脂等の高分子からなる場合には、基材に悪影響
を与えない80度以下の低温下で成膜でき、且つ水酸基
と固定化できる撥水性物質を用いるのが好ましく、また
以下に挙げる例より選ばれた1種あるいは2種以上の混
合物を主成分として用いるのがよい。例えばフッ化ピッ
チ(CF m:1.1〜1.6 大阪ガス社製)、或
いはフッ素樹脂、具体的にはポリテトラフルオロエチレ
ン(PTFE)、テトラエチレン−ヘキサフルオロプロ
ピレン共重合体(PFEP)、エチレン−テトラフルオ
ロエチレン共重合体(PETFE)、テトラフルオロエ
チレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
(PFA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVd
F)、ポリフッ化ビニル(PVF)等、それらをベース
としたフッ素樹脂コーティング剤などが、フルオロカー
ボン基を有するフッ素含有化合物、またはそれらをベー
スとしたフッ素樹脂コーティング剤を用いることができ
る。
【0040】また請求項8〜12のいずれか1項に記載
の被覆層は、フッ素含有シラン化合物、フッ素非含有シ
ラン化合物フルオロカーボン基を有するフッ素含有化合
物から選ばれた1種あるいは2種以上の混合物を主成分
とするのが好ましく、被覆層の形成においては、これら
を塗膜形成用塗布液として調整したものを塗布し、乾燥
硬化されることにより形成することが好ましい。前記の
化合物は直鎖構造を有する撥水性物質であり、且つ結合
力の高い官能基を有することから被覆層に良好な滑雪氷
の耐久性を具備することができる。更に、シリコーンを
主成分とする無機系ベース膜上にこれらの塗布液を塗布
すると、シリコーンと前記3種類の撥水性物質との間は
シロキサン結合により結合し、極めて強固な結合力が発
現され高い滑雪氷の耐久性を具備させることができ好ま
しい。
【0041】また請求項13に記載のフッ素非含有シラ
ン化合物は、メチル基を有するフッ素非含有シラン化合
物であってもよい。前記した如く、メチル基が末端に配
置された直鎖構造を有する撥水性物質はメチル基の官能
基が比較的小さく、直鎖構造を有する撥水性物質を基材
の上の面に稠密に固定することができ、また末端の官能
基が小さいことから直鎖構造が動きやすく、初期段階で
高い滑雪氷性を発現させることができる。
【0042】被覆層の形成に係わる塗布方法としては、
前記の如き撥水性物質を塗布液とし、例えば、ディッピ
ング法、スピンコート法、ノズルフローコート法、スプ
レー法、フローコート法、刷毛塗り法、ローラーコート
法、ワイピングコート法等またはこれらの併用法等によ
り塗布できるが、膜の均一性、膜厚の制御等が容易であ
り、且つ滑水性を発現するために平滑性が得られるスプ
レー法、ディッピング法が好適である。スプレー法によ
り塗装する場合は、塗装する撥水性物質にもよるが塗料
の吐出量及び吐出圧力等をできうる限り小さくするのが
好ましい。吐出量を多くすると、撥水性物質同士で硬化
反応が進行することから均一な塗膜が形成され辛くな
る。
【0043】また撥水性物質を分布させた部分の他の部
分に分布させる物質は、前記の理由から親水性のものが
好ましく親水化の発現させる物質も任意の親水化剤によ
り形成してよい。また基材自体がガラス、金属酸化物等
の親水性物質であればそれ自体が外面に露出している部
分を親水性物質としてもよい。
【0044】前記の親水化を発現させる物質を形成する
親水化剤としては、例えばRaR bRcSiX4
−a−b−c〔R,R,R:脂肪族炭化水素基お
よび/あるいは芳香族炭化水素基。a,b,c:0〜
3。a+b+c:0〜3。X:水酸基または加水分解性
官能基(ハロゲン元素、アルコキシ基、イソシアネート
基)〕で表される化合物であり、例えばa+b+c=0
の4官能性シランの場合は、室温または/および焼成に
よりシリカ系薄膜となり、また例えばa+b+c=1,
2,3(Rがメチル基、エチル基、フェニル基等)の場
合は膜を高温で焼成することにより炭化水素基:Rを焼
成・酸化させることで、シリカ系薄膜とすることができ
る。
【0045】さらに例えば、上記のシラン化合物をベー
スとしたシリコーンコーティング剤からなる塗布液によ
り塗布することで、親水性シリカ系薄膜とすることがで
きる。具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テト
ラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テ
トラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキ
シシラン、テトラ−iso−ブトキシシラン、テトラ−
sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシ
シランなど。またテトラクロロシラン、テトライソシア
ネートシラン、エトキシシラントリイソシアネートなど
が挙げられる。さらに例えば、メチルトリメトキシシラ
ン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラ
ン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラ
ン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキ
シシラン、フェニルトリクロロシシラン、プロピルトリ
メトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピ
ルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチ
ルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ヘキ
シルトリメトキシシラン、メチルシリルトリイソシアネ
ート、ジメチルシリルジイソシアネート、ビニルシリル
トリイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】さらに例えば、ジメチルジメトキシシラ
ン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキ
シシラン、ジメチルビニルクロロシランなど。また3−
クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピ
ルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3
−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキ
シプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピ
ルトリメトキシシラン等。さらにポリシラザンおよびシ
ラザン系等が挙げられる。さらに上記のシラン化合物を
ベースとしたシリコーンコーティング剤等が挙げられ
る。
【0047】親水性を発現する物質の形成に係わる塗布
方法としては、前記の如き親水性物質を塗布液とし、例
えば、ディッピング法、スピンコート法、ノズルフロー
コート法、スプレー法、フローコート法、刷毛塗り法、
ローラーコート法、ワイピングコート法等またはこれら
の併用法等により塗布できるが、撥水性物質の塗装と同
様に、膜の均一性、膜厚の制御等が容易であり、平滑性
が得られるスプレー法、ディッピング法が好適で、スプ
レー法を用いる場合には吐出量、吐出圧力をできうる限
り低くして親水化剤の硬化の進行を抑えて均一な塗膜を
形成するのが好ましい。
【0048】基材の材質は特に限定されるものではな
く、無機系、有機系を問わず使用でき、鉄鋼、ステンレ
ス、アルミニウム、亜鉛等の金属、合成樹脂、紙、木
材、石材、ガラス、煉瓦、陶器、瓦材等を用いてもよ
く、それらにポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウ
レタン樹脂系等による塗装、亜鉛、アルミニウム等によ
るめっき、アルマイト処理、クロメート処理その他の表
面処理を施したものを用いてもよい。前記の如き80度
以下で成膜可能である撥水性物質を用いるのであれば、
ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
メタクリレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、A
BS樹脂等の熱に対して脆弱な合成樹脂を用いることも
できる。
【0049】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、以
下の実施例により具体的に説明する。
【0050】(実施例1)まず100mm×100m
m、厚さ3.0mmのシリコン系ベース膜被覆ポリカー
ボネート板を充分にコロナ放電処理し、外面を活性化状
態(親水化)にして基材とする。次にフッ素シリコーン
コーティング剤X−24−7890(信越化学工業社
製)を固形分比率を約2.0%になるように希釈し、被
覆層形成用塗布液とした。そして基材を前記被覆層形成
用塗布液を満たした槽内に浸漬し、約5mm/分の速度
で引き上げ、室温で溶媒を乾燥させた後、約80度で約
30分熱処理して、実施例1の本発明に係る被覆物を得
た。
【0051】(実施例2)実施例1と異なり、フッ素シ
リコーンコーティング剤X−24−9270(信越化学
工業社製)を固形分比率を約1.0%になるように希釈
し、被覆層形成用塗布液とした以外は実施例1と同様に
して、実施例2の本発明に係る被覆物を得た。
【0052】(実施例3)次に前記と異なり、オクタデ
シルトリエトキシシラン〔ODTES〕であるLS69
70(信越化学工業社製)を主成分とする塗布液を用
い、その被覆層形成用塗布液の混合割合として、 C
1837Si(OC):エチルアルコール〔E
tOH〕:水〔0.01N HNO〕=1:150:
8前後とし、室温で5時間攪拌し、被覆層形成用塗布液
とした。そして相対湿度が約10%以下の雰囲気で、前
記被覆層形成用塗布液を満たした槽内に、実施例1で用
いたものと同一の基材を浸漬し、約10mm/分の速度
で引き上げ、室温で溶媒を乾燥させた後、約60度で約
30分熱処理して、実施例3の本発明に係る被覆物を得
た。
【0053】(実施例4)さらに前記と異なり、被覆層
形成用塗布液として、ヘプタデカフロロデシルトリエト
キシシラン〔FAS〕であるTSL8233(東芝シリ
コーン社製)を主成分とする塗布液を用い、その被覆層
形成用塗布液の混合割合として、C
i(OC):エチルアルコール〔EtOH〕:水
〔0.01N,HNO〕=1:30:2前後とし、室
温で5時間攪拌し、被覆層形成用塗布液とした。そして
相対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記被覆層形成用
塗布液を満たした槽内に、実施例1で用いたものと同一
の基材を浸漬し、約10mm/分の速度で引き上げ、室
温で溶媒を乾燥させた後、約80度で約30分熱処理し
て、実施例4の本発明に係る被覆物を得た。
【0054】(実施例5)さらに前記と異なり、被覆層
形成用塗布液として、ヘプタデカフロロデシルトリクロ
ロシラン〔HDFDTCS〕であるKBM7803(信
越化学工業社製)を主成分とする塗布液を用い、その被
覆層形成用塗布液の混合割合は、C
iCl:シリコーンオイル(KF994 信越化学工
業社製)=1:99前後とした。そして相対湿度が約1
0%以下の雰囲気で、前記被覆層形成用塗布液を満たし
た槽内に、実施例1で用いたものと同一の基材を約45
分浸漬し、室温で溶媒を乾燥させた後、約60度で約3
0分熱処理して、実施例5の本発明に係る被覆物を得
た。
【0055】(実施例6)被覆層形成用塗布液を満たし
た槽内に、基材を約20分浸漬する以外は実施例5と同
様にして、実施例6の本発明に係る被覆物を得た。
【0056】(実施例7)被覆層形成用塗布液を満たし
た槽内に、基材を約10分浸漬する以外は実施例5と同
様にして、実施例7の本発明に係る被覆物を得た。
【0057】(実施例8)100mm×100mm、厚
さ1.5mmのガラス板を基材とし、ガラス板は被覆層
形成用塗布液を満たした槽内に浸漬する前に十分に超音
波による洗浄を行う以外は実施例5と同様にして、実施
例8の本発明に係る被覆物を得た。
【0058】(実施例9)親水性被膜形成用塗布液とし
て、テトラエトキシシラン〔TEOS〕であるLS23
40(信越化学工業社製)を主成分とする塗布液を用
い、その親水膜用塗布液の混合割合として、Si(OC
:エチルアルコール〔EtOH〕:水〔0.
01N,HCl〕=1:20:8前後とし、室温で5時
間攪拌し、親水膜用塗布液とした。そして相対湿度約1
0%程度以下の雰囲気で、この親水性被膜形成用塗布液
を満たした槽内に、実施例1で用いたものと同一の基材
を浸漬し、約10mm/分の速度で引き上げ、室温で乾
燥後、約60度で約30分熱処理して外面に親水性被膜
を形成したポリカーボネート板を得た。さらに次に、被
覆層形成用塗布液として、ヘプタデカフロロデシルトリ
クロロシラン〔HDFDTCS〕であるKBM7803
(信越化学工業社製)を主成分とする塗布液を用い、そ
の被覆層形成用塗布液の混合割合は、C17
SiCl:シリコーンオイル(KF994 信越化
学工業社製)=1:99前後とした。そして相対湿度が
約10%以下の雰囲気で、前記被覆層形成用塗布液を満
たした槽内に、前記の親水性被膜を形成したポリカーボ
ネート板を実施例6と同様に約20分浸漬し、室温で溶
媒を乾燥させた後、約60度で約30分熱処理して、実
施例9の本発明に係る被覆物を得た。
【0059】(実施例10)クロロトリフルオロエチレ
ン系フッ素樹脂(東亞合成社製 ザフロンFC110)
40重量部を、キシレン:トルエン:酢酸エチル:メチ
ルイソブチルケトンを3:1:1:1で配合した混合溶
剤に溶解後、室温で20分間撹拌した。その後イソシア
ネート硬化剤(東亞合成社製 コロネート2515)を
5重量部添加し、さらに10分間撹拌し、被覆層形成用
塗布液とした。そして実施例1で用いたものと同一の基
材を、前記被覆層形成用塗布液を満たした槽内に浸漬
し、約5mm/分の速度で引き上げ、室温で溶媒を乾燥
させた後、約100度で約30分熱処理して、実施例1
0の本発明に係る被覆物を得た。
【0060】(実施例11)まず100mm×100m
m、厚さ0.8mmのアルミ板をクロメート処理し、そ
の外面にエポキシ樹脂系プライマーをスプレー塗装して
約150度で30分加熱硬化させ、更にその外面にウレ
タン樹脂系塗料をスプレー塗装して約150度で30分
加熱硬化させ、更にその外面にシリコーンコーティング
剤KP854(信越化学工業社製)をスプレー塗装して
室温で溶媒を乾燥後約100度で30分加熱硬化させ
て、ウレタン塗装アルミ板上に無機系ベース膜を形成し
たものを基材とする。前記無機系ベース膜上に、実施例
1で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を吐出量、
吐出圧力をできうる限り低くしてスプレー塗装し、室温
で溶媒を乾燥させた後、約80度で30分熱処理して、
実施例11の本発明に係わる被覆物を得た。
【0061】(実施例12)実施例11と異なり、実施
例2で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を用いた
以外は実施例11と同様にして実施例12の本発明に係
わる被覆物を得た。
【0062】(実施例13)次に前記と異なり、実施例
3で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を用い、相
対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記塗布液を吐出
量、吐出圧力をできうる限り低くして、実施例11で用
いたものと同一の基材上の無機系ベース膜上にスプレー
塗装し、室温で溶媒を乾燥させた後、約60度で30分
熱処理して、実施例13の本発明に係わる被覆物を得
た。
【0063】(実施例14)更に前記と異なり、実施例
4で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を用い、相
対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記塗布液を吐出
量、吐出圧力をできうる限り低くして実施例11で用い
たものと同一の基材上の無機系ベース膜上にスプレー塗
装し、室温で溶媒を乾燥させた後、約60度で30分熱
処理して、実施例14の本発明に係わる被覆物を得た。
【0064】(実施例15)更に前記と異なり、実施例
5で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を用い、相
対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記塗布液を吐出
量、吐出圧力をできうる限り低くして実施例11で用い
たものと同一の基材上の無機系ベース膜上にスプレー塗
装し、室温で溶媒を乾燥させることを5回繰り返した
後、約60度で30分熱処理して、実施例15の本発明
に係わる被覆物を得た。
【0065】(実施例16)実施例15において、塗布
液を吐出量、吐出圧力をできうる限り低くして実施例1
1で用いたものと同一の基材上の無機系ベース膜上にス
プレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させることを3回繰り
返す以外は同様にして、実施例16の本発明に係わる被
覆物を得た。
【0066】(実施例17)実施例15において、塗布
液を吐出量、吐出圧力をできうる限り低くして実施例1
1で用いたものと同一の基材上の無機系ベース膜上にス
プレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させることを2回繰り
返す以外は同様にして、実施例16の本発明に係わる被
覆物を得た。
【0067】(実施例18)親水性被膜形成用塗布液と
して、実施例9で用いたものと同一の親水性被膜形成用
塗布液を用い、相対湿度が約10%以下の雰囲気で、前
記塗布液を吐出量、吐出圧力をできうる限り低くして実
施例11で用いたものと同一の基材上の無機系ベース膜
上にスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させた後、約6
0度で30分熱処理して外面に親水性被膜を形成した塗
装板を得た。さらに次に、被覆層形成用塗布液として、
実施例9で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を相
対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記塗布液を吐出
量、吐出圧力をできうる限り低くして前記塗装板の外面
にスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させることを5回
繰り返した後、約60度で30分熱処理して、実施例1
8の本発明に係わる被覆物を得た。
【0068】(実施例19)更に前記と異なり、被覆層
形成用塗布液として、アルキルシランであるKBM−7
103(信越化学工業社製)を主成分とする塗布液を用
い、前記被覆層形成用塗布液の混合割合は、CF
Si(OCH):エチルアルコール〔EtO
H〕:水〔0.01N HNO〕=1:150:8前
後とし、室温で5時間攪拌し、被覆層形成用塗布液とし
た。相対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記塗布液を
吐出量、吐出圧力をできうる限り低くして実施例11で
用いたものと同一の基材上の無機系ベース膜上にスプレ
ー塗装し、室温で溶媒を乾燥させた後、約60度で30
分熱処理して、実施例19の本発明に係わる被覆物を得
た。
【0069】(比較例1)アルミニウム−sec−ブト
キシド〔Al(O−sec−Bu)〕とイソプロピル
アルコール〔IPA〕とを、室温で約1時間攪拌した
後、アセト酢酸エチル〔EAcAc〕を添加し、約1時
間攪拌した後、水〔0.01N,HNO〕とイソプロ
ピルアルコール〔IPA〕を加え、モル比で、Al(O
−sec−Bu):IPA:EAcAc:0.01
N,HNO=1:30:1:2の割合とし、約5時間
攪拌してアルミナゾル液である透明アルミナ膜形成用の
塗布液を調整した。次いで、この調整した透明アルミナ
膜形成用の塗布液に、実施例1で用いたものと同一の基
材を浸漬した後、約300mm/分の速度で引き上げ、
ポリカーボネート板に塗布膜を形成した。そしてこれを
室温で約30分養生した後、約80度の温水に、約30
分浸漬し、浸漬漕から引き上げ後、約60分室温で乾燥
させ、透明アルミナ薄膜付きポリカーボネート板を得
た。次に、フッ素シリコーンコーティング剤KP−80
1M(信越化学工業社製)を固形分比率を約0.5%に
なるように希釈し、被覆層形成用塗布液を得た。そして
前記透明アルミナ薄膜付きポリカーボネート板を十分に
コロナ放電処理し、水への接触角が約3度となった時点
で、前記被覆層形成用塗布液を満たした槽内に浸漬し、
約5mm/分で引き上げ、室温で乾燥後、約60度で約
30分熱処理して花弁状透明アルミナ膜上に撥水性被膜
を形成し、比較例1の被覆物を得た。
【0070】(比較例2)フッ素シリコーンコーティン
グ剤KP−801M(信越化学工業社製)を固形分比率
を約0.5%になるように希釈し、被覆層形成用塗布液
を得た。そして実施例1で用いたものと同一の基材を、
前記被覆層形成用塗布液を満たした槽内に浸漬し、約5
mm/分の速度で引き上げ、室温で乾燥後、約60度で
約30分熱処理して、比較例2の被覆物を得た。
【0071】(比較例3)基材を100mm×100m
m、厚さ1.5mmのガラス板とし、ガラス板は、被覆
層形成用塗布液を満たした槽内に浸漬する前に十分に超
音波による洗浄を行う以外は比較例2と同様にして、比
較例3の被覆物を得た。
【0072】(比較例4)被覆層形成用塗布液として、
フッ化ピッチ(C)1gに対し、1,1,2−ト
リクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(Cl
CCClF)66gを加え、室温で24時間攪拌し、
被覆層形成用塗布液とした。そして実施例1で用いたも
のと同一の基材を前記被覆層形成用塗布液を満たした槽
内に浸漬し、約1mm/秒で引き上げ、室温で乾燥して
比較例4の被覆物を得た。
【0073】(比較例5)未結合フッ素含有量が3重量
%以下で且つ平均粒径が5μmのフッ化グラファイト粉
末を、揮発成分揮発後の体積分率が60%となるように
アクリルシリコーンと混合し、スプレーにより塗布が適
正となるよう好適な有機溶剤により希釈し被覆層形成用
塗布液とした。そして実施例1で用いたものと同一の基
材に前記被覆層形成用塗布液をスプレーにより塗布し、
室温で乾燥して比較例5の被覆物を得た。
【0074】(比較例6)比較例2で用いたものと同一
の被覆層形成用塗布液を、相対湿度が約10%以下の雰
囲気で、前記塗布液を吐出量、吐出圧力をできうる限り
低くして実施例11で用いたものと同一の基材上の無機
系ベース膜上にスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させ
た後、約60度で30分熱処理して、比較例6の被覆物
を得た。
【0075】(比較例7)まず100mm×100m
m、厚さ0.8mmのアルミ板をクロメート処理し、そ
の外面にエポキシ樹脂系プライマーをスプレー塗装して
約150度で30分加熱硬化させ、更にその外面にウレ
タン樹脂系塗料をスプレー塗装して約150度で30分
加熱硬化させたウレタン塗装アルミ板を基材とする。次
に実施例5で用いたものと同一の被覆層形成用塗布液を
用い、相対湿度が約10%以下の雰囲気で、前記塗布液
を吐出量、吐出圧力をできうる限り低くして前記基材上
にスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させることを5回
繰り返した後、約60度で30分熱処理して、比較例7
の被覆物を得た。
【0076】(比較例8)実施例11で用いたものと同
一の基材上の無機系ベース膜上に、比較例4で用いたも
のと同一の被覆層形成用塗布液を吐出量、吐出圧力をで
きうる限り低くしてスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥
させて比較例8の被覆物を得た。
【0077】(比較例9)実施例11で用いたものと同
一の基材上の無機系ベース膜上に、比較例5で用いたも
のと同一の被覆層形成用塗布液を吐出量、吐出圧力をで
きうる限り低くしてスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥
させて比較例9の被覆物を得た。
【0078】(比較例10)実施例11で用いたものと
同一の基材上の無機系ベース膜上に、実施例10で用い
たものと同一の被覆層形成用塗布液を吐出量、吐出圧力
をできうる限り低くしてスプレー塗装し、室温で溶媒を
乾燥させた後、約100度で約30分熱処理を行い比較
例10の被覆物を得た。
【0079】(比較例11)実施例15において、実施
例11で用いたものと同一の基材上の無機系ベース膜上
にスプレー塗装し、室温で溶媒を乾燥させることを1回
のみとした以外は同様にして、比較例11の被覆物を得
た。
【0080】(比較例12)100mm×100mm、
厚さ0.8mmのアルミ板をクロメート処理し、その外
面にエポキシ樹脂系プライマーをスプレー塗装して約1
50度で30分加熱硬化させ、更にその外面にウレタン
樹脂系塗料をスプレー塗装して約150度で30分加熱
硬化させたウレタン塗装アルミ板を用いる。
【0081】(比較例13)外面を超音波により十分に
洗浄した他は、特に処理を施していない100mm×1
00mm、厚さ1.5mmのガラス板を用いる。
【0082】まず前記にて得られた実施例及び比較例の
それぞれについて、外面の物性を測定する。
【0083】外面の表面張力については、JIS K6
768に記載されている方法により、各被覆物外面の大
気中での試薬の濡れ指数を測定することで行った。尚、
表面張力は北海道における着雪氷試験の前後について行
う。
【0084】また滑水性については、各被覆物の外面に
水滴を落とし、水滴を静止させた後に該被覆物を徐々に
傾斜させ、その被覆物外面において水滴が動き出したと
きの被覆物外面と水平面との角度を測定し滑落角度とし
ている。水滴が被覆物外面を動いてゆく際の状態を観察
し、水滴の被覆層外面に接触している部分が一定に保持
された状態で水滴が動く場合を滑落、外面上を転がる状
態で水滴が動く場合を転落として表す。
【0085】また前進接触角及び後退接触角は、水滴が
被覆物外面を動く際の状況をビデオカメラにて記録し、
その録画画像より水滴が動き出す直前の状態を観察する
ことにより測定する。また滑落速度は、水滴が被覆物外
面を動き出した後の任意の地点間を移動する距離及び時
間を測定して算出する。
【0086】また前記にて得られた実施例及び比較例の
それぞれについて、氷の剥離又は滑りに要する荷重の測
定及び氷の剥離、滑りの状態の確認を行った。前記試験
の斜視図を図1、その断面を図2に示す。恒温槽内にお
いて被覆物1を水平試験台3上に固定して設置し、テフ
ロン(登録商標)リング2を被覆物1上に置きテフロン
リング2内に水を満たした状態で恒温槽内を−5度に冷
却し被覆物1上に氷21を凍着させる。一定時間放置し
たのち、−5度の雰囲気内で被覆物1上の氷21をテフ
ロンリング2ごと被覆物1外面と平行の方向4にロープ
41によって引っ張り、荷重の推移を観察する。荷重の
推移の例が図3に示すものであり、着氷が動き出した時
点51に一気に荷重52がなくなる場合が破断的剥離
5、着氷が動き出した時点61の荷重62が以後も同程
度で推移する場合が定荷重非破断的滑動6として表され
る荷重の推移である。
【0087】また前記にて得られた実施例及び比較例の
それぞれについて表面粗さ測定器を用いて最大表面粗さ
を測定した。
【0088】また前記にて得られた実施例及び比較例の
それぞれについての直鎖構造を有する撥水性物質長さ
は、被覆層形成用塗布液中の被覆層を形成する主成分の
分子量より推定している。
【0089】また前記にて得られた実施例及び比較例の
それぞれについて、X線光電子分光器(アルバック−フ
ァイ社製 ESCA5400)により撥水性物質のモル
比を測定してその数値を基に撥水性物質の面積占有率を
算出し、面上において固定された直鎖構造を有する撥水
性物質の密度を、その飽和状態となる密度に対する割合
として求めた。
【0090】次に前記にて得られた実施例及び比較例の
それぞれの被覆物を冬期の北海道の同地点及び同時期に
設置し、実際の着雪氷の度合いを確認する着雪氷性試験
を行っている。被覆物は、その外面が地表面と垂直にな
るように設置している。その着雪氷の度合いを着雪氷率
にて表し、その数値が低いほど優れた難着雪性を有する
と判断できる。着雪氷率は、それぞれの測定材におい
て、雪氷の付着が観測されている時間を着雪氷時間、
雪、雨等の降水が観測されている時間を総降水時間とし
て、着雪氷率=(着雪氷時間/総降水時間)×100と
して算出しており、数値の小さいもの程優れた難着雪氷
性を有していると判断できる。今回の設置における総降
水時間は約1000時間で、そのほとんどが降雪による
ものである。また着雪氷試験後の表面張力を測定し、試
験前の表面張力と比較することで滑雪氷性の耐久性を確
認している。
【0091】実施例及び比較例のそれぞれについての測
定結果及び着雪氷率を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】前記の着雪氷性試験においては、着雪氷率
が10%以下であれば優れた難着雪氷性の被覆物として
評価できるが、表1において、本発明の表面張力が35
dyne/cm以下で、且つ水滴の滑落角度が40度以
下の外面を有する被覆物は着雪氷率が低くなる結果が示
されている。従って、本発明における滑雪氷性を有する
被覆層外面は、優れた滑雪氷性を有し、着雪氷の防止効
果に優れていることが表されている。
【0094】比較例1は高レベルの撥水性を有してお
り、現に設置当初は高い難着雪氷性を示していたが、時
間の経過と共に着雪氷が見られるようになり、最終的な
着雪氷率は実施例のいずれより高くなっている。前記の
如く、汚染物質の付着等により高レベルの撥水性が失わ
れることにより着雪氷の防止効果が維持できていないこ
とが表されている。また被覆物外面は水滴が転落するも
のであることから、高レベルの撥水性が失われた後では
滑雪氷性も期待できないことがわかる。
【0095】また高い難着雪性を示した実施例1〜19
については、いずれも被覆物外面において水滴が滑落す
るものであり、転落するものはいずれも30%〜60%
と言った高い着雪氷率となっている。最大表面粗さが1
2μmである比較例5の着雪氷率は35%と高く、被覆
層外面は10μm以下の最大表面粗さであることで更に
優れた着雪氷の防止効果を発現することが判る。表1に
おいては−5度において凍着させた氷にて評価試験を行
ったが、評価試験における結果は実際の設置状況におけ
る着氷雪性と整合しており、雰囲気温度が−2度から−
5度、好ましくは−5度で凍着した雪氷に対する滑雪氷
性により、被覆層の着雪氷の防止効果を判断できること
が判る。
【0096】また、滑落する水滴の前進接触角90度以
上、後退接触角50度以上前進接触角以下については、
実施例1〜19全てがこの範囲に含まれ、実際の設置状
況における着氷雪性と整合している。また水滴の滑落速
度10cm/分についても同様に実際の設置状況におけ
る着氷雪性と整合している。
【0097】また直鎖構造を有する撥水性物質の長さに
ついて、実施例1〜19はいずれも5Å以上であるが、
比較例10は3Åで着雪氷率は15%となっており、比
較例10は他の比較例と比較すると良好な難着雪性では
あるものの、各実施例と比較してはやや高い結果となっ
ており、5Å以上が好ましいことが判る。
【0098】また撥水性物質の面積占有率について、比
較例11は8%、表面張力は39dyne/cmであ
り、撥水性物質の面積占有率、すなわち直鎖構造を有す
る撥水性物質の、その飽和状態となる固定密度に対する
割合が10%を下回ると表面張力が十分に下がらないこ
とが示されている。着雪氷率も比較例11は15%とや
や高い結果となっている。
【0099】比較例7はウレタン樹脂系塗装上に直接滑
雪氷性を有する被覆層を被覆したものであり、当初は実
施例5と同程度の難着雪氷性を示したものの、劣化が早
く最終的な着雪氷率は15%とやや高いものとなってい
る。また着雪氷試験1000時間後の表面張力は、試験
前の20dyne/cmから45dyne/cmまで上
昇しており、被覆層の劣化による早期の難着雪氷性の低
下が顕著に見られる。
【0100】実施例1〜19については、着雪氷試験1
000時間後の表面張力は初期のものとほとんど変化が
なく若干上昇している程度であり、汚染物質の付着、被
覆層の劣化等による滑雪氷性の低下度合いが小さく、長
期に亘って難着雪氷性を維持できることが示されてい
る。
【0101】
【発明の効果】本発明により、着雪氷した際においても
被覆層外面の滑雪氷性により被覆物外面に付着した雪氷
を速やかに滑落させることができる。従って着雪氷の防
止に超撥水レベルの撥水性を必要とすることなく、比較
的安価且つ簡便な方法で形成した被覆層により付着した
雪氷を速やかに滑落させることができるようにし、雪氷
の付着している時間を極力短時間として雪氷の付着を抑
制することが可能となる。
【0102】更に汚染物質が被覆物外面に付着したとし
ても、汚染物質の粒子が被覆層外面の全体に均一に分布
することはありえず、微視的に見て滑雪氷性を有する部
分は露出した状態にあるため滑雪氷性はそれ程損なわれ
るものではない。また汚染物質は被覆物外面を滑落する
雪氷と共に除去され、被覆物外面に蓄積することなく滑
雪氷性を維持することができる。更には、塗膜が劣化し
たとしても、滑雪氷に係わる表面張力、滑水性等の性能
の低下は、超撥水性の撥水性の低下よりはるかに緩やか
なものであり、超撥水性塗膜等と較べはるかに長い期間
着雪氷の防止効果を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】滑氷に要する荷重の測定及び滑氷の状態の確認
試験の斜視図を示すものである。
【図2】図1のA−A’断面図を示すものである。
【図3】滑氷に要する荷重の推移による剥離状態の違い
を示すグラフである。
【符号の説明】
1 被覆物 2 テフロンリング 21 氷 3 水平試験台 4 引っ張り方向 41 ロープ 5 破断的剥離における荷重の推移 6 定荷重非破断的滑動における荷重の推移 51,61 着氷の動き出した時点 52,62 着氷の動き出した荷重
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 183/00 C09D 183/00 201/00 201/00

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材の上に、外面の表面張力が35dy
    ne/cm以下の撥水性で、且つ水滴の滑落角度が40
    度以下の滑水性を有する被覆層を形成したことを特徴と
    する滑雪氷性被覆物。
  2. 【請求項2】 被覆層は、外面を水滴が前進接触角90
    度以上、後退接触角が50度以上で前進接触角以下で滑
    落することを特徴とする請求項1に記載の滑雪氷性被覆
    物。
  3. 【請求項3】 被覆層は、外面が水滴の滑落初期角度に
    おいて、滑落初期地点から10cm滑落するまでの水滴
    滑落速度が10cm/分以下であることを特徴とする請
    求項1又は2に記載の滑雪氷性被覆物。
  4. 【請求項4】 被覆層は、外面の最大表面粗さが10μ
    m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    1項に記載の滑雪氷性被覆物。
  5. 【請求項5】 被覆層は、外面に−2度から−5度の温
    度領域で凍着した氷が、被覆層と水平方向からの荷重に
    より定荷重非破断的滑動することを特徴とする請求項1
    〜4のいずれか1項に記載の滑雪氷性被覆物。
  6. 【請求項6】 被覆層は、基材の上に形成された無機系
    ベース膜上に形成されていることを特徴とする請求項1
    〜5のいずれか1項に記載の滑雪氷性被覆物。
  7. 【請求項7】 無機系ベース膜は、シリコーンを主成分
    とするシリコーンコーティング剤を用いて形成されたも
    のであることを特徴とする請求項6に記載の滑雪氷性被
    覆物。
  8. 【請求項8】 被覆層は、5Å(オングストローム)以
    上の長さの直鎖構造を有する撥水性物質を、その末端が
    被覆層外面に配向されて、基材の上の面に固定したもの
    であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に
    記載の滑雪氷性被覆物。
  9. 【請求項9】 直鎖構造を有する撥水性物質は、末端に
    トリフルオロメチル基及び/又はメチル基が配置され、
    該トリフルオロメチル基及び/又はメチル基が外面とな
    るように配向されたことを特徴とする請求項8に記載の
    滑雪氷性被覆物。
  10. 【請求項10】 直鎖構造を有する撥水性物質は、20
    平方Åに1物質以上が略均一に分布していることを特徴
    とする請求項8又は9に記載の滑雪氷性被覆物。
  11. 【請求項11】 直鎖構造を有する撥水性物質は、基材
    の上の面上において該物質の固定が飽和状態となる密度
    に対し、10〜95%の密度で略均一に固定されている
    ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載
    の滑雪氷性被覆物。
  12. 【請求項12】 直鎖構造を有する撥水性物質は、基材
    の上の面上において該物質の固定が飽和状態となる密度
    に対し、10〜95%の密度で略均一に固定され、その
    他の部分に親水性の物質が存在していることを特徴とす
    る請求項8〜11のいずれか1項に記載の滑雪氷性被覆
    物。
  13. 【請求項13】 被覆層は、フッ素含有シラン化合物、
    フッ素非含有シラン化合物、フルオロカーボン基を有す
    るフッ素含有化合物から選ばれた1種あるいは2種以上
    の混合物を主成分とすることを特徴とする請求項8〜1
    2のいずれか1項に記載の滑雪氷性被覆物。
  14. 【請求項14】 フッ素非含有シラン化合物は、メチル
    基を有するフッ素非含有シラン化合物であることを特徴
    とする請求項13に記載の滑雪氷性被覆物。
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