JP2002285306A - アルミニウム合金製ロータ材の製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金製ロータ材の製造方法

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JP2002285306A
JP2002285306A JP2001089016A JP2001089016A JP2002285306A JP 2002285306 A JP2002285306 A JP 2002285306A JP 2001089016 A JP2001089016 A JP 2001089016A JP 2001089016 A JP2001089016 A JP 2001089016A JP 2002285306 A JP2002285306 A JP 2002285306A
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molecular pump
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Yasuki Kamitakahara
廉樹 上高原
Toshihiro Katsura
俊弘 桂
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、冷間圧縮により残留応力を低減す
るアルミニウム合金製ロータ材の製造方法を提供するこ
とを課題とする。 【解決手段】 本発明は、未調質のJIS2000系ア
ルミニウム合金からなる円柱状素材の両端面に凹部を形
成し、次いで前記円柱状素材に溶体化処理、焼入れ処理
を行い、前記焼入れ処理の後に、前記円柱状素材の両端
面を圧縮面として常温で冷間圧縮処理を行い、その後に
人工時効処理を行うことを特徴とするアルミニウム合金
製ロータ材の製造方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速回転するロー
タを形成するために用いられるアルミニウム合金製ロー
タ材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、圧縮機、ポンプ等のロータは鉄鋼
材が多用されていたが、ロータの高周速化の要求が高ま
り、これに伴い軽量化が進んでいる。例えば、特公平5
−47614号公報、特開2000−254754号公
報に見られるように、ロータとしてアルミニウム合金が
用いられるようになってきた。特に、高真空や超高真空
が求められる分野で用いられる真空ポンプにおいてはア
ルミニウム合金製ロータが標準的である。
【0003】その好例がターボ分子ポンプである。ター
ボ分子ポンプとは薄い金属の羽根(ロータ翼)を、気体
分子の運動速度程度になるように高速で回転させて、吸
気側から通り抜ける気体分子の数よりも、排気側から通
り抜ける気体分子の数を多くすることによって排気を行
う真空ポンプであり、清浄な真空が得られるのでクリー
ン度が要求される半導体製造装置等において、高真空か
ら超高真空を得るために広く用いられている。
【0004】ターボ分子ポンプ用のロータには、例えば
特許第3099475号公報に開示されるようにロータ
を切削加工により削り出す一体型のタイプと、例えば特
開平5−106588号公報に開示されるように、予め
形成された翼リングをロータに嵌着して形成される嵌め
込み型のタイプが存在する。
【0005】ここで一体型タイプのターボ分子ポンプの
模式図を図3に示す。ターボ分子ポンプ111は、ロー
タ翼104aと固定翼105とが交互に積層され、ロー
タ翼104aと一体に形成されたロータ104をロータ
軸103に設けた構成としている。なお、図3において
は、ロータ104及びロータ翼104aに斜線を施して
ある。このロータ104はロータ軸103に取付用下穴
となる凹部115内部で固定され、高周波モータ101
により高速回転する構造となっている。なお、ロータ軸
103はアキシャル磁気軸受108、ラジアル磁気軸受
107等で支持されている。
【0006】このロータ104は、1torr(=10
1325/760Pa)以下の真空下で20000〜9
0000rpmで回転し、ロータ翼104a先端部にお
ける周速度が分子の運動速度と同等の200〜1400
m/sと高速となり、ロータ104の温度が100〜1
50℃にも達する。
【0007】このため、ターボ分子ポンプ用のロータ1
04としては、前記タイプに関わらず、軽量であること
と十分な機械的強度に加えて高温クリープ強度が求めら
れるため、JIS2000系アルミニウム合金が用いら
れる。
【0008】JIS2000系アルミニウム合金を材料
とした前記した一体型タイプのロータ104は以下の処
理工程により製造される。 (処理1)押出又は鍛伸加工により所定外径としたアル
ミニウム合金丸棒素材を所定長さの円柱状素材に切断す
る。
【0009】(処理2)最終処理(処理6)であるロー
タ104の切削加工時間の短縮、材料の歩留まり向上の
ために、ロータ軸103への取付用下穴となる凹部11
5を円柱状素材に切削加工又は型打鍛造により形成し、
円柱状素材を凹型形状とする。
【0010】ここで、図4に(処理2)を経た段階にお
ける円柱状素材の断面図を示す。図中の仮想線は最終処
理(処理6)で削り出されるロータ104の完成品の形
状を示している。図4に示すように円柱状素材116
は、底面に取付用下穴となる凹部115を有している。
【0011】(処理3)ロータ104に求められる機械
的性質が得られるように円柱状素材116に所定の温度
で溶体化処理を行うとともに焼入れ処理を施す。
【0012】(処理4)残留応力を除くために常温で凹
部115を有する円柱状素材116の両端面を圧縮面と
して所定の圧縮率で圧縮を行う(以下冷間圧縮とい
う)。冷間圧縮の圧縮方法としては、凹部115を有す
る円柱状素材116の外周面から圧縮を行う方法も考え
られるが、ロータ104はターボ分子ポンプの排気能力
に応じて直径が変化するので、外周面方向から加圧を行
う場合にはロータ104の直径に合わせた種々の大きさ
の金型を準備する必要が生じる。そこで、(処理4)で
は円柱状素材116の両端面から加圧を行う。
【0013】(処理5)ロータ104に求められる機械
的性質が得られるように円柱状素材116に所定温度で
人工時効処理を施すことでアルミニウム合金製ロータ材
を形成する。 (処理6)このアルミニウム合金製ロータ材に切削加工
を行い、ロータ翼104aを削り出しターボ分子ポンプ
用のロータ104を得る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の(処理
1)〜(処理5)により得られたターボ分子ポンプ用ロ
ータ材では、(処理6)の切削加工において加工歪が発
生し、ターボ分子ポンプ用のロータとして要求される寸
法精度が得られないという問題が発生した。これは、タ
ーボ分子ポンプ用のロータにとっては致命的な問題であ
る。なぜなら、ターボ分子ポンプは、高速回転するロー
タ翼と固定翼とが非常に僅かな間隙で交互に組み合わさ
れた構造を有し、ロータの寸法精度の僅かな狂いもロー
タ翼と固定翼との接触事故を引き起こすからである。
【0015】この加工歪の発生原因は、前記(処理4)
の冷間圧縮処理において、円柱状素材の残留応力が十分
に低減されず、アルミニウム合金製ロータ材にこの残留
応力が持ち越しているためと推測された。
【0016】そこで、本発明者らは、アルミニウム合金
製ロータ材の残留応力を低減すべく、冷間圧縮によら
ず、前記(処理3)において、円柱状素材の焼入れ温度
を上げる方法を試みた。この方法を用いることで確かに
アルミニウム合金製ロータ材の残留応力を低減すること
はできた。しかし、JIS2000系アルミニウム合金
は焼入れ温度に対する感受性が強いために、今度はロー
タとして要求される機械的強度を得ることができないと
いう、より本質的な問題が発生した。
【0017】この問題に直面して本発明者らは、焼入れ
温度を上げることで残留応力を低減するという選択肢を
捨て、前記(処理6)において発生した加工歪の性質の
検討を進めた結果、アルミニウム合金製ロータ材の残留
応力が、取付用下穴となる凹部115(図4)が存在す
る端面付近では小さく、凹部115の存在しない端面付
近では大きいことを見出した。
【0018】本発明は、ターボ分子ポンプ用ロータの製
造過程で発生した加工歪に関する前記の知見に基づくも
のであり、円柱状素材を冷間圧縮することでアルミニウ
ム合金製ロータ材の残留応力を低減するアルミニウム合
金製ロータ材の製造方法を提供することを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するために、以下のように構成した。本発明は、未調質
のJIS2000系アルミニウム合金からなる円柱状素
材の両端面に凹部を形成し、次いで前記円柱状素材に溶
体化処理、焼入れ処理を行い、前記焼入れ処理の後に、
前記円柱状素材の両端面を圧縮面として常温で冷間圧縮
処理を行い、その後に人工時効処理を行うことを特徴と
するアルミニウム合金製ロータ材の製造方法という構成
を有する。
【0020】本発明はこのように構成し、円柱状素材の
両端面(圧縮面)に凹部を形成し、冷間圧縮に用いるプ
レス装置のプラテンの押圧面と円柱状素材の端面との接
触面積を減少させたので、前記プラテンと円柱状素材と
の接触摩擦を減少させることが可能になった。
【0021】これにより、冷間圧縮処理の際に円柱状素
材の両端面付近において結晶粒の塑性変形が容易に促進
されるので、この円柱状素材より得られるアルミニウム
合金製ロータ材の残留応力を従来法以上に低減すること
が可能となった。また、このようにアルミニウム合金製
ロータ材が有する残留応力が小さくなったので、切削加
工時に発生する加工歪が小さくなり、寸法精度に優れた
アルミニウム合金製ロータを得ることが可能になった。
ここで「凹部」とは、円柱状の素材とプレス装置のプラ
テンの押圧面との接触面積を減少させるために円柱状素
材の前記プラテンとの接触面(圧縮面)の一部に形成し
た窪みを言う。また、「アルミニウム合金製ロータ材」
とは、円柱状素材に溶体化処理、焼入れ処理、冷間圧縮
処理及び人工時効処理を施して得られるものである。
【0022】更に、本発明は、前記冷間圧縮処理におい
て高さ方向の圧縮率を1.5〜2%とすることを特徴と
する請求項1に記載のアルミニウム合金製ロータ材の製
造方法という構成を有する。本発明はこのような構成を
有し、冷間圧縮処理の際の圧縮率を前記の範囲とするこ
とで、アルミニウム合金製ロータ材の耐力値の低下を避
けつつ実用上十分な程度に残留応力を低減することが可
能となる。
【0023】また、本発明は、前記アルミニウム合金製
ロータ材をターボ分子ポンプ用ロータの製造に用いるこ
とを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合
金製ロータ材の製造方法という構成を有する。本発明は
このように構成したので、前記アルミニウム合金製ロー
タ材の残留応力を、加工歪が発生しない程度の残留応力
とすることが可能となった。また、前記のアルミニウム
合金製ロータ材をターボ分子ポンプ用ロータの製造に用
いることで、従来以上に加工歪が小さく寸法精度の高い
ターボ分子ポンプ用ロータを得ることが可能となった。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に、図面を用いて本発明の実
施の形態の説明を行う。なお、本発明は、この実施の形
態のみに限定されるものではなく、本発明の思想を具現
化する種々の変更が加えられうる。
【0025】図1は、本発明のアルミニウム合金製ロー
タ材の製造方法を応用したターボ分子ポンプ用ロータの
製造方法の処理工程図であり、図2は、このターボ分子
ポンプ用ロータの製造に用いる円柱状素材の断面図であ
る。
【0026】図1の処理工程図に沿って説明を行う。 (1)溶製された未調質のJIS2000系アルミニウ
ム合金鋳片(ビレット,スラブ等)を得る(S1)。 (2)このアルミニウム合金鋳片を押出加工又は鍛伸加
工して所定の直径を有するアルミニウム合金丸棒素材を
得る。このとき、鍛伸加工を行う際は、自由鍛造法によ
り角棒としてその後上下金型により延伸鍛造してアルミ
ニウム合金丸棒素材を得る(S2)。 (3)このアルミニウム合金丸棒素材を所定の長さに切
断して円柱状素材を得る(S3)。
【0027】(4)(S3)で得られた円柱状素材の一
方の端面に、ロータ軸への取付用下穴となる凹部5(図
2参照)を公知の型打ち鍛造又は切削加工により形成す
る。さらに、他方の端面にもロータの軽量化を目的とす
る小凹部2(図2)を同様の方法で形成する(S4)。
【0028】このように両端面に凹部5及び小凹部2を
形成した円柱状素材の断面図を図2に示した。図2中で
仮想線は切削加工終了後に得られるターボ分子ポンプ用
ロータ4及び、ロータ翼4aの完成品の形状を示してい
る。また、円柱状素材1の一方の端面には取付用下穴と
なる凹部5が、他方の端面には前記した小凹部2が設け
られている。
【0029】円柱状素材1の両端面にこの段階で凹部5
及び小凹部2を設けることは、単にターボ分子ポンプ用
ロータ4の切削加工時間を短縮するためだけではなく、
後述の冷間圧縮処理において、冷間圧縮用プラテンの押
圧面と円柱状素材1との接触摩擦を低減し、円柱状素材
1の両端面付近において、結晶粒の変形を容易にし、ア
ルミニウム合金製ロータ材の残留応力を低減するためで
あり、ロータ形状として本来必要な凹部に兼用させたこ
とは、特筆すべき点である。
【0030】このように、円柱状素材1の両端面に凹部
を設けることで、冷間圧縮処理において、円柱状素材1
が有する残留応力を効果的に解消し、残留応力の少ない
アルミニウム合金製ロータ材を得ることが可能となる。
さらに、アルミニウム合金製ロータ材の残留応力が解消
することで、最終製品であるターボ分子ポンプ用ロータ
4の寸法精度を許容公差以内とすることが可能となる。
【0031】また、未調質のJIS2000系合金製の
円柱状素材1を加工する際に圧縮面に凹部5及び小凹部
2を設けて冷間圧縮を行うという本発明のアルミニウム
合金製ロータ材の製造方法は、ターボ分子ポンプ用ロー
タ4のみに応用が限定されるものではなく、他の種類の
ポンプや圧縮機、膨張機等のロータの他、寸法精度が要
求されるアルミニウム合金製精密部品の製造に応用する
ことが可能である。
【0032】つまり、残留応力を有するアルミニウム合
金素材の所定の圧縮面をプレス装置のプラテンにより冷
間圧縮することで残留応力を低減するアルミニウム合金
素材の製造方法において、前記冷間圧縮の前に前記所定
の圧縮面に凹部を形成し、前記冷間圧縮における圧縮方
向の圧縮率を所定範囲とすることで、アルミニウム合金
素材の残留応力を解消することが可能となる。
【0033】ここで、冷間圧縮における圧縮率及び圧縮
面に設ける凹部の凹部面積比率(凹部面積/圧縮面面
積)は、アルミニウム合金の種類により異なり、一概に
決定することは難しいため、用いるアルミニウム合金素
材において加工歪との関係を考慮して決定することが望
ましい。
【0034】本実施の形態においては円柱状素材1の各
端面に1個ずつ凹部を設けているが(凹部5及び小凹部
2)、これは、ターボ分子ポンプ用ロータ4の最終形状
により制限されているものであるので、他のアルミニウ
ム合金製の精密部品製造では、この精密部品の最終形状
を損なわない範囲で、圧縮面に対して複数個の凹部を設
けても構わない。
【0035】(5)続いて凹部5及び小凹部2を形成し
た円柱状素材1を所定の温度まで昇温することで、溶体
化処理を行う(S5)。 (6)(S5)の溶体化処理に連続して、所定温度まで
加温された円柱状素材1を所定の温度まで急冷する焼入
れ処理を行う(S6)。
【0036】(7)(S6)で焼入れ処理された円柱状
素材1は、この工程までに生じた残留応力が蓄積されて
おり、この残留応力を低減するために、常温にて冷間圧
縮を行う(S7)。
【0037】ここで、冷間圧縮を行う圧縮面は、前記
(S4)において凹部5及び小凹部2を形成した円柱状
素材1の両端面である。また、冷間圧縮の圧縮率は圧縮
方向における高さの圧縮率が1.5〜2%であることが
望ましい。圧縮率が1.5%以上であれば、実用上十分
な残留応力低減効果が得られる。また、圧縮率が2%以
下であれば、特にST方向における耐力値の低下を避け
ることができる。
【0038】前記のような圧縮率で冷間圧縮を実施する
ことにより、円柱状素材1の残留応力が十分に低減さ
れ、後記の(S9)においてターボ分子ポンプ用ロータ
4を削り出した際に加工歪を許容公差以内に収めること
が可能となる。
【0039】(8)冷間圧縮を施された円柱状素材1を
所定温度に所定時間静置して人工時効処理を行い、所望
の強度を有するアルミニウム合金製ロータ材を得る(S
8)。 (9)処理(8)を経て得られたアルミニウム合金製ロ
ータ材を切削加工してターボ分子ポンプ用ロータ4を得
る(S9)。本発明の製造方法により得られたターボ分
子ポンプ用ロータ4は、アルミニウム合金製ロータ材の
残留応力が十分に低減されているので切削加工で発生す
る加工歪を許容公差以内とすることが可能となり、寸法
精度が優れている。
【0040】
【実施例】以下、実施例及び比較例をもちいて本発明の
詳細な説明を行うが、本発明はこれらの実施例に限定さ
れるものではない。本発明における実施の形態の項に記
載した手順に従い、ターボ分子ポンプ用ロータの作成を
行った。
【0041】
【表1】
【0042】アルミニウム合金の種類、溶体化温度、焼
入れ条件、冷間圧縮率、人工時効処理条件は表1に示し
たとおりである。また、人工時効処理が終了した円柱状
素材について残留応力の評価を行った。残留応力の測定
は小孔明け法(ASTM E837)に準拠し、使用測
定器はFRS−2−23(株式会社東京測器研究所製)
である。なお、表1に示した応力値において、マイナス
の値は引張応力を示し、プラスの値は圧縮応力を示して
いる。
【0043】さらに、アルミニウム合金製ロータ材に切
削加工を施し、ターボ分子ポンプ用ロータを完成した後
に、このターボ分子ポンプ用ロータの加工歪の評価を行
った。
【0044】なお、表1において「○」とは、加工歪が
許容公差以内であることを示し、「×」とは、加工歪が
許容公差を超えたことを示している。
【0045】(実施例)表1に示した素材番号1,2の
試料が実施例に相当する。素材番号1,2の試料は溶体
化処理前に円柱状素材の両端面に凹部を設けたもの(表
1の「H型」に対応)を用いてアルミニウム合金製ロー
タ材を製造している。素材番号1,2に対応する円柱状
素材の形状は図2に示したとおりである。
【0046】また、素材番号1,2においては残留応力
の測定は、図2の点Aにおいて実施した。素材番号1,
2においては表1に示したとおり、残留応力は比較例よ
りも若干小さい値を示した。また、切削加工後のターボ
分子ポンプ用ロータの加工歪は許容公差以内に収まって
いた。このことより、両端面に凹部を設けたアルミニウ
ム合金製ロータ材を所定の圧縮率で冷間圧縮することで
残留応力が低減され、そのため、切削加工後の加工歪が
小さくなったことがわかる。
【0047】(比較例)表1に示した素材番号3,4の
試料が比較例に相当する。素材番号3,4は溶体化処理
前に円柱状素材の片端面にのみ凹部を設けたもの(表1
の「凹型」に対応)を用いてアルミニウム合金製ロータ
材を製造した以外は実施例と同様にしてターボ分子ポン
プ用ロータの製造を行った。素材番号3,4に対応した
円柱状素材の形状は図4に示したとおりである。
【0048】また、素材番号3,4において残留応力の
測定は、凹部が設けられていない端面である図4の点
A’で実施した。
【0049】素材番号3,4では、切削加工後のターボ
分子ポンプ用ロータの加工歪は許容公差を超えていた。
これは、素材番号3,4では、冷間圧縮前に円柱状の素
材の片端面にしか凹部を設けなかったために、冷間圧縮
において凹部が存在しない端面付近において残留応力が
十分に低減されず、許容公差を超える加工歪が発生した
ものである。
【0050】
【発明の効果】本発明は前記のように構成したので以下
に示すような顕著な効果を奏することができる。 (1)未調質であるJIS2000系アルミニウム合金
製の円柱状素材の両端面に凹部を形成した後に、この両
端面を圧縮面として冷間圧縮を行うことにより、冷間圧
縮用プラテンの押圧面と円柱状素材の圧縮面との接触摩
擦が減少し、円柱状素材の圧縮面付近において結晶粒の
塑性変形が促進され、円柱状素材の残留応力を低減する
ことが可能となる。これにより、この円柱状素材より得
られるアルミニウム合金製ロータ材の残留応力を低減す
ることが可能となり、このアルミニウム合金製ロータ材
を切削加工することにより得られるアルミニウム合金製
ロータの寸法精度を高めることが可能となった(請求項
1)。
【0051】(2)冷間圧縮処理の際の圧縮率を1.5
〜2%とすることで、円柱状素材の機械的強度の低下を
避けつつ結晶粒の塑性変形を促進することが可能となる
ので、円柱状素材の耐力値を維持しつつ残留応力を低減
することが可能となった(請求項2)。
【0052】(3)前記アルミニウム合金製ロータ材の
製造方法をターボ分子ポンプ用ロータ製造に応用するこ
とにより、従来以上に寸法精度の優れたターボ分子ポン
プ用ロータを得ることが可能となった。また、ターボ分
子ポンプ用ロータ製造の歩留まりを向上することに成功
した(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ターボ分子ポンプ用ロータの製造方法の処理
工程図である。
【図2】 本発明の円柱状素材の断面図である。
【図3】 ターボ分子ポンプの断面図である。
【図4】 従来の円柱状素材の断面図である。
【符号の説明】
1,116 円柱状素材 2 小凹部 4 ターボ分子ポンプ用ロータ 5,115 凹部 101 高周波モータ 103 ロータ軸 104 ロータ 105 固定翼 107 ラジアル磁気軸受 108 アキシャル磁気軸受 111 ターボ分子ポンプ A,A’ 残留応力の測定点
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 694 C22F 1/00 694A Fターム(参考) 3H031 EA01 EA06 FA03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 未調質のJIS2000系アルミニウム
    合金からなる円柱状素材の両端面に凹部を形成し、次い
    で前記円柱状素材に溶体化処理、焼入れ処理を行い、前
    記焼入れ処理の後に、前記円柱状素材の両端面を圧縮面
    として常温で冷間圧縮処理を行い、その後に人工時効処
    理を行うことを特徴とするアルミニウム合金製ロータ材
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記冷間圧縮処理において高さ方向の圧
    縮率を1.5〜2%とすることを特徴とする請求項1に
    記載のアルミニウム合金製ロータ材の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金製ロータ材をター
    ボ分子ポンプ用ロータの製造に用いることを特徴とする
    請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製ロータ材の
    製造方法。
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