JP3947433B2 - 鍛造用金型、閉塞鍛造生産システム、アルミニウム合金製ローターの鍛造方法および鍛造製アルミニウム合金ローター - Google Patents

鍛造用金型、閉塞鍛造生産システム、アルミニウム合金製ローターの鍛造方法および鍛造製アルミニウム合金ローター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円柱形状で外周から内部に向かって細長いベーン収納の働きを持つ溝を有するローターの鍛造用金型、閉塞鍛造生産システム、アルミニウム合金製ローターの鍛造方法および鍛造製アルミニウム合金ローターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ロータリー式のコンプレッサーやベーン方式のポンプなどにはローターが用いられてきている。従来、ローターは、アルミニウム合金粉末またはアルミニウム合金鋳造品またはそれらの押出し材料を図15に示すようなベーン収納溝成形のためのベーン収納溝形成部(151)が付けられている押出しダイスで押出した後、該押し出した素材を切断加工する方法または、たとえば特開平3−165948号公報などに示されているようにアルミニウム合金素材を図16に示す金型を用いて外周円筒部とベーン収納溝部とを鍛造する方法によって成形されてきた。この場合金型の図17に示すように、通常ベーン収納溝形成部のうちベーン収納溝の底部にあたる個所には、応力集中係数を低減させる目的、加工時の工具の逃げ部を形成して加工を容易にする目的及びベーンに背圧をかけてシール性を向上させる目的で円筒状の形状(171)が設けられる場合が多い。
【0003】
前者の押出し素材を切断加工する方法は、押し出されるローター素材が捻れやすいために曲がりやそりが発生しやすく、ベーン収納溝の直角度(軸方向へのベーン収納溝の直進性)などの寸法精度を確保できないので、直角度などの寸法精度を得るための余分な加工が必要となり製造コストが増加する問題がある。さらに、押出しダイスとアルミニウム合金素材との間に潤滑効果が得られず、表面に焼き付きやカジリなどが発生し、表面精度が悪いという問題があり、高い表面精度を得るための余分な加工が必要となるために製造コストが増加する問題がある。また溝底部に発生した焼き付きやカジリの箇所は、使用時にかかる応力により、そこを起点とした割れが発生するために金型の耐久性を低下させる。さらに、ベーン収納溝部を形成するベーン収納溝形成部の付け根にベーン収納溝形成部の倒れや折れを防止する目的で付与された角取り形状(152)が押し出されたローターの形状となるため、角取り形状を後の工程で切削除去する加工が必要となる。
【0004】
一方鍛造による製造方法は、金型ベーン収納溝形成部の付け根に押出しダイスと同様の目的で付与された角取りの形状(172)が鍛造製品に転写されるために、鍛造製品の該角取り形状を切削除去する加工が必要となる。そのため鍛造されたローターは加工工程が必要となりその為のコストが必要となり、また角取り形状の加工に必要な図18に示ような余肉(181)を設けて削除するために材料歩留まりが悪く、製造コストが増加する問題がある。
【0005】
別の従来例の図19に示すベーン収納溝形成部の付け根(191)に角取りがない金型形状では、素材成型時の応力が金型ベーン収納溝形成部の付け根にかかり、金型ベーン収納溝形成部の倒れが生じてベーン収納溝の直角度などの寸法精度が悪く、寸法精度を得るための切削加工が必要となり製造コストが増加する。また鍛造する際に金型ベーン収納溝形成部にかかる応力によっては、金型ベーン収納溝形成部が付け根で破損するために金型費用が多くかかり製造コストが増加する問題がある。
【0006】
上記鍛造による方法における寸法精度の問題を解決する為に特許第3127587号公報では、ベーン収納溝成形のためのベーン収納溝形成部を円筒部成形のための金型と別に作り焼き嵌めしているが、一つのベーン収納溝形成部の支持がその基部だけによるために成型時のベーン収納溝形成部の振られが大く、鍛造製品のベーン収納溝の精度が低い問題がある。
【0007】
同問題を解決するための方法として特開2000−220588号公報に示される、ベーン収納溝形成部をパンチ側に設けてベーン収納溝形成部の振られをダイス側に設けたベーン収納溝形成部通過溝で抑える機構があるが、加圧途中で素材がベーン収納溝形成部通過溝に入り込みローターの収納溝部にパンチの抜き打ちによるバリ状の余肉が残るために、その余肉を除去する為に製造コストが増加する問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、押出しによる方法では高い精度のベーン収納溝の精度を確保するために加工が必要なために製造コストが高くなる問題、鍛造による方法ではベーン収納溝の角取り形状を除去するために必要な余肉とその加工によって製造コストが増加する問題及びベーン収納溝の精度が低い問題及びローター外周にバリ状の余肉が発生する問題を解決するためになされたもので、ベーン収納溝の精度が高くかつベーン収納溝の角取り加工が不要か又は低減できるために、寸法精度が良好なローターを安価に製造できるローターの鍛造用金型、閉塞鍛造生産システム、アルミニウム合金製ローターの製造方法および鍛造製アルミニウム合金ローターを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鍛造されたローター製品のベーン収納溝の加工精度と金型の関係について鋭意研究をおこないその知見に基づいて本発明を完成するに至った。
1)上記課題を解決するための第1の発明は、軸方向に複数のベーン収納溝を有するローターを鍛造するための下型上型の組み合わせからなる金型において、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出している下型と、下型の成形孔に配設され、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有し、ベーン収納溝形成部を挿入する貫通溝を形成するように配置されるとともに、ベーン収納溝形成部の軸方向と直交する方向でベーン収納溝形成部を挟むベーン収納溝の数と同数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有しているスペーサーとを含むことを特徴とする鍛造用金型である。
2)上記課題を解決するための第2の発明は、スペーサーの円筒部の軸方向の長さが、ローターの軸方向の長さ以上、ローターの軸方向の長さの2倍以下であることを特徴とする1)に記載の鍛造用金型である。
3)上記課題を解決するための第3の発明は、スペーサーの円筒部が成形孔の壁面から内方側に、ベーン収納溝形成部長さの1/10〜1/2の厚みを有していることを特徴とする1)または2)に記載の鍛造用金型である。
4)上記課題を解決するための第4の発明は、下型のベーン収納溝形成部の付け根部と成形孔の壁面との間に角取り部が設けられており、スペーサーの円筒部が成形孔の内壁面から内方側に該角取り部の角取り半径のうちの最大半径の1〜20倍の厚みを有していることを特徴とする1)乃至3)のいずれか1に記載の鍛造用金型である。
5)上記課題を解決するための第5の発明は、下型の成形孔の底面の中心に、成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離未満を最大半径とする円柱形状の突出部が設けられていることを特徴とする1)乃至4)のいずれか1に記載の鍛造用金型である。
6)上記課題を解決するための第6の発明は、下型の成形孔に向かった上型の面において、下型の成形孔の底面の中心に対応した位置に成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離未満を最大半径とする円柱形状の突出部が設けられていることを特徴とする1)乃至4)のいずれか1に記載の鍛造用金型である。
7)上記課題を解決するための第7の発明は、上型において、上型の動作方向軸の上方からみてベーン収納溝形成部に対応する位置に上型の動作方向と逆向きの凹みを有した形状部を有することを特徴とする1)乃至6)のいずれか1に記載の鍛造用金型である。
8)上記課題を解決するための第8の発明は、素材切断装置と、鍛造機械とを含む閉塞鍛造生産システムにおいて、鍛造機械が1)乃至7)のいずれか1に記載の鍛造用金型を有する鍛造機械であることを特徴とする閉塞鍛造生産システムである。
9)上記課題を解決するための第9の発明は、アルミニウム合金鋳造棒、アルミニウム合金鋳造棒の押し出し材および粉末アルミニウム合金の押し出し材のいずれかを鍛造用素材とし1)乃至7)のいずれか1に記載の下型の成形孔の中に収納し、上型で挟み込んで鍛造用素材を鍛造加工した後、鍛造用素材を鍛造加工した鍛造製品を下型から取り出すことを特徴とするアルミニウム合金製ローターの製造方法である。
10)上記課題を解決するための第10の発明は、軸方向に複数のベーン収納溝を有するローターにおいて、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の表面およびベーン収納溝部にバリ取り痕が無く、外周円筒部とベーン収納溝とが作る角部の曲率半径が0.5mm以下であることを特徴とする鍛造製アルミニウム合金ローターである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の金型について説明する。
【0011】
本発明で製造するローターは図9に示すように、外周円筒部(91)軸方向の複数のベーン収納溝(92)を有したものである。
【0012】
軸方向に複数のベーン収納溝を設けるローターの鍛造に用いられる金型は、下型上型の組み合わせで構成されている。下型はローターの形状を成形する成形孔を有しており成形孔の中に鍛造用素材を収納し上型をプレス機にて挟みこむことにより素材を鍛造加工する。
【0013】
本発明の金型の下型は、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型である。さらに、本発明の金型は下型の成形孔の内側にスペーサーを配設している。そのスペーサーの内側に鍛造用素材を収納する。スペーサーは、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有している。
【0014】
本発明の金型の一例の垂直方向の断面図を図2に、図4に下型付近の拡大図を示す。また、図2中のA−Bの断面図を図1に示す。
【0015】
この金型は、加圧パンチからなる上型(21)、成形孔(22)の内方側に突出したベーン収納溝を形成するためのベーン収納溝形成部(23)を5個有した下型(24)、ローター外周形状部を形成するスペーサー(25)、スペーサーを下型に固定するブッシュ(26)及び製品を型内から取り出すためのノックアウトピン(27)を含んで構成される。図1に示した下型付近の一例は、成形孔(22)の内方側に突出したベーン収納溝を形成するためのベーン収納溝形成部(23)を5個有した下型およびスペーサー(25)である。従来の金型構造では、ベーン収納溝形成部に応力がかかる為にベーン収納溝形成部の付け根部と成形孔の内壁面との間に付根に強度を補強するための角取り部が必要であったが、本発明ではスペーサーを配設することによってベーン収納溝形成部付根(1)への応力集中が低下する為ベーン収納溝形成部付け根部に角取り部を不用若しくは角取り半径を従来より小さくすることができる。従来は2〜3mmの角とり半径が必要であったが、図1の符号Bに示したように、角取り部を不要若しくは角取り半径をより小さくすることができる。
【0016】
下型のベーン収納溝形成部の付け根部と成形孔の内壁面との間にスペーサーとの擦りあわせ状態を良好にするための角取り部が設けられているのが好ましい。
【0017】
本発明に用いられるスペーサーの一例を図3で具体的に説明する。ベーン収納溝を形成するために成形孔の内方側に突出したベーン収納溝形成部の貫通溝(31)により、円筒部(32)は分離されている。各分離した円筒部の壁面(33)は、ローターの外周円筒部のベーン収納溝によって区分けられた範囲の形状に対応する壁面となっている。分離されている各円筒部は上部でフランジ部(34)につながっている。
【0018】
各円筒部とフランジ部をつなげるために、その接合面がローターの外周円筒部と接する面にならないような方向で機械的に結合することができる。機械的結合としてカシメ、溶接、焼きバメ、ねじ止め(締結)を挙げることができる。それぞれ異なった壁面の形状を有する円筒部をフランジ部に取り付けることによりベーン収納溝で区分けされた外周円筒部の表面形状がそれぞれ異なったローターを容易に製造することができる。
【0019】
各円筒部とフランジ部をつなげるために、各円筒部とフランジ部はつながった形状で一体に成形されているものが好ましい。機械的強度が強まるからである。
【0020】
図4に示すスペーサーの円筒部の成形孔の内壁面から内方側への厚さ(A)はベーン収納溝形成部長さの1/2〜1/10(より好ましくは1/4〜1/5。)であることが好ましい。1/10以上であれば下型ベーン収納溝形成部の振られをより充分に抑えることができるからである。1/2を超えた場合には下型ベーン収納溝形成部のスペーサーによって隠される実際の加工には使用されない長さが実際加工に使用されるベーン収納溝形成部の長さ以上となるために下型の径が大きくなってしまう。その結果、鍛造に用いるプレス機械も大きなものを必要とするために設備に多額の費用がかかる。上記の範囲であれば、大きなプレス機械を用いることなく、下型ベーン収納溝形成部の振られを十分抑えてベーン収納溝部の精度を高くすることが出来る。
【0021】
図4に示すスペーサーの円筒部の成形孔の内壁面から内方側への厚さ(A)は、該角取り部の角取り半径のうちの最大半径の1〜20倍の厚さであることが好ましい。例えば、図4に示すスペーサー円筒部の厚さ(A)は、下型ベーン収納溝形成部の付け根に付与された面取りのベーン収納溝形成部方向長さ(図1の符号(B))の1〜20倍であることが好ましい。1倍よりも小さい場合には面取り形状がローター外周部に転写されることになり、鍛造後に角取り形状部を別工程で削除しなくてはならない。また下型ベーン収納溝形成部の押さえが十分でないためにベーン収納溝形成部が鍛造加工時に振られやすくなり、ベーン収納溝部の加工精度が不安定になりやすい。20倍を超えた場合には下型ベーン収納溝形成部のスペーサーに隠れた実際の加工に使用されない長さが大きくなるために、実際の下型の径が大きくなってしまう。その結果、鍛造に用いるプレス機械も大きなものを必要とするために設備に多額の費用がかかる。1〜20倍の間であれば大きなプレス機械を用いることなく、下型ベーン収納溝形成部の振られを十分抑えてベーン溝収納部の精度を高くすることが出来る。
【0022】
スペーサーの円筒部のローター軸方向の長さについて図5(a)を基に説明する。本発明ではスペーサーの円筒部の軸方向の長さ(D)を、鍛造製品であるローターの軸方向の長さ(E)以上、ローターの軸方向の長さ(E)の2倍以下にすることが好ましい。その結果スペーサーにより製品が金型分割面(H)に接触することが発生しない為に分割面によるバリが発生しない。スペーサーの長さ(D)がローターの軸方向の長さ(E)とベーン収納溝形成部のローター軸方向の長さ(F)の差未満の場合は、分割面によるバリの発生が起きるおそれがある。ローターの軸方向の長さ(E)の2倍を超える場合は製品長さに対して3倍を超える長さがプレス機に必要となる為、大きいプレス機を使用しなければならず、経済的でない。
【0023】
バリの発生が無いので本発明のローターは次のような効果を得ることができる。
1)発生したバリが金型内に残る為、次の鍛造時に製品の表面がそのバリによって凹むという、不良の発生を抑えることができる。
2)後工程の切削加工時にチャックにおいてバリによるチャックミスを低減させ、または斜めチャック(チャッキングが斜めの状態)の発生を抑えることができる。
3)後工程においてバリ除去作業の工数を削減できる。
【0024】
フランジ部の厚さ(J)は、ローターの軸方向の長さ(E)とローター軸方向の長さ(F)との差以上、ローターの軸方向の長さ(E)の2倍以下(より好ましくはローターの軸方向の長さ(E)とローター軸方向の長さ(F)の差以上、ローターの軸方向の長さ(E)の1.5倍以下。)であるのが好ましい。ローターの軸方向の長さ(E)とローター軸方向の長さ(F)の差以上あればバリが出ず、ローターの軸方向の長さ(E)の2倍以下ではプレス機械がさほど大きくならずに済むからである。
【0025】
図5(b)に示す従来の金型では、金型分割面(G)においてバリの発生するおそれがあったが本発明では金型分割面に素材が接することが無いのでバリの発生を抑えることができる。
【0026】
フランジ部の円筒部内面の表面粗さRaは、0.05〜25μm(より好ましくは0.05〜1.6μm。)であるのが好ましい。0.05μm未満ではフランジ加工時の精度を確保するのが困難であり、25μmを越えると鍛造時にローターとの焼き付きが起こるためである。
【0027】
フランジ部の形状はドーナツ円板状だけでなく、下型、ブッシュへの組み込みに適した形を設計することができる。
【0028】
図2、図4、図6を用いて、本発明の下型とスペーサーを組み合わせた一例を説明する。図6に示すように、下型のベーン収納溝形成部へスペーサーの貫通溝の位置を合わせて下型の上部からスペーサーを差し込み一体化する。一体化したものを強固にするために下型とスペーサーを焼き嵌めしてもよい。図4に示すように一体化した下型とスペーサーをブッシュに挿入する。さらに図2に示すようにプレス機のアンビル上にセットする。尚、下型のベーン収納溝形成部とスペーサーの貫通溝との隙間精度はベーン収納溝形成部の厚さの1/1000〜1/10(より好ましくは1/250〜1/100。)とするのが好ましい。1/1000未満では下型のベーン収納溝形成部の、スペーサーの貫通溝への挿入が困難となる。1/10を超える場合には、下型のベーン収納溝形成部のタオレを抑える効果が不十分となり下型のベーン収納溝形成部とスペーサー分割位置にバリが発生するおそれがある。下型のベーン収納溝形成部の表面粗さRaは、0.05〜25μm(より好ましくは0.05〜1.6μm。)であるのが好ましい。この範囲であれば充分な加工の精度が確保でき、またローターとの間に焼き付きが起こきるのを抑えることができるからである。スペーサーの貫通溝の表面粗さRaは、0.2〜6.3μm(より好ましくは0.2〜1.6μm。)であるのが好ましい。0.2μm未満では加工精度を確保するのが困難であり、6.3μmを越えると下型へのセットが困難である。
【0029】
下型の成形孔の内壁とスペーサーの円筒部との隙間精度は、スペーサー円筒部厚さ(A)の1/1000〜1/10(より好ましくは1/250〜1/100。)とするのが好ましい。1/1000未満では、ベーン収納溝形成部セットが困難である。1/10を超える場合は、スペーサー円筒部が鍛造時の応力により変形する。下型の成形孔の内壁の表面粗さRaは、0.2〜6.3μm(より好ましくは0.2〜1.6μm。)であるのが好ましい。0.2μm未満は加工精度を確保するのが困難であり、6.3μmを越えるとスペーサーのセットが困難であるからである。スペーサーの円筒部の成形孔の壁面と接する面の表面粗さRaは、0.2〜6.3μm(より好ましくは0.2〜1.6μm。)であるのが好ましい。0.2μm未満では加工精度の確保が困難であり、6.3μmを超えると下型へのセットが困難であるからである。
【0030】
本発明に用いられるスペーサーの製造方法の一例を説明する。素材としてはダイス鋼(JIS SKD11)を挙げることができる。素材に切削加工と放電加工を施し円筒部、フランジ部の形状を加工してスペーサーを作製する。例えば、スペーサーの円周方向(スペーサーの外周側と内周側)の加工を切削加工で行った後、径方向の加工つまりベーン収納溝形成部の入る貫通溝を放電加工にて行う。前述のとおり円筒部の円周方向の壁面とベーン収納溝形成部との間には所定の寸法精度を有するのが好ましい。そこで、2種類の加工方法を組み合わせて充分な加工精度を得られるようにすることができる。円周方向は切削加工で高い精度が得られるが、径方向は切削加工では精度が低い。そのため円周方向は切削加工、径方向は放電加工を行うことで高い寸法精度を確保している。
【0031】
次に、本発明での鍛造方法に用いる鍛造生産システムを説明する。鍛造生産システムの構成例の一例の概略を図7をもとに説明する。
【0032】
鍛造生産システムは、素材切断装置(71)と、鍛造機械(75)とをふくむものである。素材を再結晶温度以上に加熱してから鍛造する熱間鍛造の場合であれば、素材加熱装置(73)を含ませることが鍛造加工性を高めるために好ましい。さらに、素材供給装置(72)と、素材搬送装置(74)と、鍛造製品搬出装置(76)とを含ませた一貫自動生産システムがより好ましいシステムである。鍛造済品が最終製品の形状になっている場合は鍛造製品熱処置炉(77)を含ませるのが好ましい。
【0033】
素材切断装置(71)は、連続鋳造丸棒を所定の長さに切断するためのものである。素材供給装置(72)は一定量の鍛造用素材をホッパー内に保留し、次工程へ素材を供給するためのものである。素材搬送装置(74)は鍛造用素材を金型へ搬送するためのものである。鍛造機械(75)は鍛造用素材を鍛造するためのものである。鍛造製品搬出装置(76)はノックアウト機構により鍛造製品を金型内から排出し次工程に搬送するためのものである。素材加熱装置(73)は素材を再結晶温度以上に加熱して鍛造加工性を高めるためのものでる。鍛造製品熱処置炉(77)は取り出した鍛造製品を連続的に溶体化・時効処理を実施する熱処理のためのものである。
【0034】
図2に示すように、鍛造機械には、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型と、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有して下型の成形孔の内側に配設されるスペーサーとを含むことを特徴とする金型を取りつける。
【0035】
また、必要に応じて、例えば素材を再結晶温度以上に加熱してから鍛造を行う熱間鍛造の場合、金型への潤滑剤噴霧装置を鍛造用金型あるいは鍛造機械に取りつけることが好ましい。また、潤滑剤噴霧装置は、潤滑装置単体として設置しその動作を鍛造機械と連動させたものでも良い。
【0036】
本発明による製造方法では、鍛造素材の材料として金属材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、鉄、マグネシウム、およびこれらを主成分とする合金を挙げることができる。アルミニウム合金であれば例えば、AA規格A390、JIS6061合金等を用いることができる。
【0037】
本発明に用いる素材の製法は、連続鋳造、押出、圧延等いずれであっても良い。素材としては、アルミニウム合金鋳造棒、アルミニウム合金鋳造棒の押し出し材および粉末アルミニウム合金の押し出し材を挙げることができる。アルミニウムやアルミニウム合金の場合、連造鋳造された丸棒材が安価で好ましい。アルミニウム合金においては、気体加圧式ホットトップ鋳造法(例えば、SHOTIC材(昭和電工(株)製))で連続鋳造された丸棒材が、優れた内部健全性を持ち、結晶粒が微細であり、かつ、塑性加工による結晶粒の異方性がない為より好ましい。本発明の鍛造方法において鍛造素材が鍛造製品枝部により均一に層状に塑性流動し、欠肉等の鍛造欠陥が発生せず、また、製品の機械的強度を向上させる面からより好ましいからである。
【0038】
つぎに、図7の鍛造生産システムおよび図2の鍛造機械を用いた本発明の製造方法の一実施形態を説明する。
【0039】
本発明の鍛造方法は、1)連続鋳造丸棒を鍛造製品を所定の長さに切断する工程と、2)鍛造用素材を金型へ搬送する工程と3)鍛造用素材を鍛造する工程と4)ノックアウト機構により鍛造製品を金型内から排出する工程と5)鍛造製品をベーン収納溝の軸方向長さ以下に切断してベーン収納溝を軸方向に貫通させるる工程と6)取り出した鍛造製品を連続的に溶体化・時効処理を実施する熱処理工程とを含む製造方法である。
【0040】
また、鍛造製品の形状が安易であり、常温にて鍛造用素材を鍛造する冷間鍛造の場合、必要に応じて、鍛造前に、鍛造用素材に化成皮膜処理を施すボンデ処理を実施する工程を追加する事が、鍛造荷重の減少、鍛造製品と金型との焼きつき防止の点から好ましい。
【0041】
また、鍛造製品形状が複雑であり、鍛造用素材を再結晶温度以上まで加熱してから鍛造する熱間鍛造の場合、必要に応じて鍛造用素材を再結晶温度以上までに予備加熱を行う工程、鍛造用素材を鍛造前に例えば、鍛造用素材に水溶性黒鉛潤滑処理を施す工程、鍛造用金型を所定の温度に予備加熱する工程、鍛造用金型に、例えば、鍛造用金型の鍛造成形部位に水溶性黒鉛潤滑剤をスプレーで噴霧する工程、から選ばれる工程を追加することが鍛造荷重を減少させる点、または鍛造製品と金型との焼きつきを防止する点から好ましい。
【0042】
金型の温度はヒーター(図示せず)によって100℃〜400℃に加熱保持されているのが好ましい。鍛造用素材は300℃〜450℃の間に加熱するのが好ましい。
【0043】
成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型と、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有して下型の成形孔の内側に配設されるスペーサーとを含むことを特徴とする金型をブッシュ(26)で押さえつけた中に、鍛造用素材(28)を装填する(図2)。上型(パンチ)(21)によって鍛造荷重40〜170tで鍛造加工を完了した後、ノックアウトピン(27)で下型内から上方へ製品(ローター)を送り取り出す。
【0044】
本製造方法は、素材を上型と、複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型と、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有して下型の成形孔の内側に配設されるスペーサーとで囲まれた空間内に塑性流動させて加工するので、金型の外部にバリを出して塑性加工するバリ出し加工とは異なり、閉塞鍛造となっている。ベーン収納溝の周囲に発生するバリをプレス加工で抜き取る工程を用いることなく外周部にバリがないローターを作成することができる。成形加工工程として、バリ取り工程、プレス抜き工程を必要としないので工程を簡略化できる。また成形加工工程で材料の廃棄が発生しないので材料歩留まりが向上する。本発明によって製造されたローターの断面形状の一例を第8図、外観図を図9に示す。
【0045】
本発明の鍛造生産システムは、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型と、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有して下型の成形孔の内側に配設されるスペーサーとを含むことを特徴とする金型を有している鍛造機械を有しているので、ベーン収納溝の精度が高くかつベーン収納溝の角取り加工が不要か又は低減でき、寸法精度が良好なローターを安価に製造できる。
【0046】
本発明の製造方法は、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型と、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有して下型の成形孔の内側に配設されるスペーサーとを含むことを特徴とする金型を用いているので、ベーン収納溝の精度が高くかつベーン収納溝の角取り加工が不要か又は低減でき、寸法精度が良好なローターを安価に製造できる。
【0047】
本発明の金型のベーン収納溝形成部は外周円筒成形部と一体加工するので加工精度がベーン収納溝形成部の精度に反映される為精度が高い。ベーン収納溝形成部毎に各々を外周円筒成形部と焼きバメしてから加工する必要が無く、焼きバメ工程が不要となり、ベーン収納溝形成部金型製造時の寸法精度の管理が容易である。また、ベーン収納溝形成部の数が増えた場合、焼きバメ数が増え焼きバメ時の温度管理と焼きバメ代の寸法管理の管理項目が増え精度管理が大変だが、本発明においてはスペーサーの貫通溝を増やしそれとフィン部(ベーン収納溝形成部)の寸法を管理するのみで良い本発明の金型を用いた製造方法では、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出した下型と、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有する複数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有して下型の成形孔の内側に配設されるスペーサーとを含むことを特徴とする金型内に配置したアルミニウム合金素材にプレス圧力によってベーン収納溝を成型するので、押出し方法のようなベーン収納溝のねじれや倒れの発生を抑えることができる。
【0048】
また、スペーサーがアルミニウム合金素材と金型との間に存在することで金型ベーン収納溝形成部の角取り形状が成型品に転写されないために、当該角取り形状を除去するための余肉が小さいか又は不要であり、加工工程が短縮できるか又は不要とすることができる。ベーン収納溝形成部とスペーサーの円筒部の壁面との間には角取り形状が存在しないから実質的に角Rが存在しないものを成形できるので、除去する対象の余肉を小さくできるからである。例えば、本発明の製造方法で得られたローターは角Rの半径は0.5mm以下である。鍛造加工条件、鍛造用素材材質を調整することにより、角Rの半径はより好ましくは0.1mm以下となる。
【0049】
また、金型ベーン収納溝形成部を金型と一体とした場合は、ベーン収納溝形成部が大きく振られることがない。
【0050】
また、スペーサーと金型ベーン収納溝形成部との隙間を十分小さくした場合はローター外周にバリ状の余肉発生を抑えることができる。
【0051】
本発明の製造方法で製造されたローターは、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の表面およびベーン収納溝部にバリ取り痕が無く、外周円筒部とベーン収納溝とが作る角部の曲率半径が0.5mm以下であることを特徴とする鍛造製アルミニウム合金ローターとなる。
【0052】
本発明のローターは、ローターの外周円筒部の表面および軸方向外周部にバリ取り痕が無く、外周円筒部とベーン収納溝とが作る角部の曲率半径が0.5mm以下であるので、バリ取り加工、角取り加工が不要であるので加工工数が低減され、材料歩留まりが向上したものである。
【0053】
本発明の別の好ましい実施形態について図10を用いて説明する。
【0054】
ローターにはその用途の為に、ベーン収納溝と平行な穴加工、例えばその中心にシャフトを貫通させるためのシャフト穴の加工などが求められる場合がある。鍛造の金型に突出部を設けることにより鍛造成形時に穴加工を施すことができる。このような成形を行う場合の本発明の金型は以下のようなものを用いるのが好ましい。図2に示す金型の特徴に加えて、図10に示すように、センター穴を付けるための突出部として、下型の成形孔の底面の中心に、成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離未満を最大半径とする円柱形状の突出部(101)が設けられている鍛造用金型が好ましい。図22に示すように、図2に示す金型の特徴に加えて、センター穴を付けるための突出部(221)として、下型の成形孔に向かった上型の面において、下型の成形孔の底面の中心に対応した位置に成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離未満を最大半径とする円柱形状の突出部が設けられていることが好ましい。
【0055】
センター穴を付ける時の突出部を設けた場合の、本発明のスペーサーの効果は以下である。従来の鍛造用金型で円筒空洞部を鍛造工程で成形した場合、ベーン収納溝形成部にかかる応力が高い為、ベーン収納溝形成部が曲がり位置精度が悪いくなるおそれがあった。本発明の金型は、ベーン収納溝形成部にかかる応力をスペーサーでより充分に抑える為、円筒空洞部を鍛造工程で成形した場合でもベーン収納溝形成部の曲がりも少なく位置精度が良い。本発明の方法でプレスすることによって、ローター外周部、ベーン収納溝部及びローター中心軸に入るシャフトの軸孔を同時に成型すると精度が良く製造コストが低減できる。
【0056】
本発明のさらに別の好ましい実施形態について図11を用いて説明する。図2に示す金型の特徴に加えて、図11に示すように、上型において、上型の動作方向軸の上方からみてベーン収納溝形成部に対応する位置に上型の動作方向と逆向きの凹みを有した形状部(111)を有する鍛造用金型が好ましい。このような形状を有することにより、外周円筒面にバリの無い状態で「ダボ」を設けることができる。従来の「ダボ」では、パンチ凸部の圧力が高いため、金型分割面でバリが大きく発生するおそれがあった。本発明では、スペーサーによって製品が金型分割面に接触することが無いためバリを発生させること無く、「ダボ」を設けた場合でも材料に対する歩留りを向上させることができる。ここで「ダボ」とは、パンチ加圧方向と逆向きの凹みを有した形状部(111)位に対応した部位のことである。
【0057】
本発明の下型、スペーサー、および上記「ダボ」を有した型を用いてプレスすることによって、プレスによって素材が下型のベーン収納溝形成部に及ぼす応力を低減することが出来、下型のベーン収納溝形成部の摩耗を少なくすることが可能であるため金型あたりの成形個数を増加させることが出来るので製造コスト低減する。また加圧パンチの凹んでいる箇所を基準に見た場合、凸となっている箇所は実質的に余肉を削減する効果を持つ。
【0058】
図13にセンター穴と「ダボ」を設けた場合の鍛造品、図12に「ダボ」を設けた場合の鍛造品の一例の外観を示す。
【0059】
図14に、図13の鍛造品を機械加工により「ダボ」を除去した後のローター製品の外観を示す。
【0060】
なお、本発明の各実施形態では加圧パンチを上部に設け下型を下方に配置したが、上下を逆にしてもまたは横方向に加圧パンチが動作する方向の構造にしても良い。
【0061】
【実施例】
以下に本発明の実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもではない。
[実施例1]
図4に示したスペーサーを有して、断面図が図2に示した金型を用いて、図8に示した断面図を有し図9に示した外観のローターを製造した。金型はヒーターによって180℃に加熱保持した。鍛造用素材としては、連続鋳造方法で製造されたAA規格A390アルミニウム合金を熱間押出しによって直径57.2mmの柱状にしたものを、さらに長さ44mmに切断し用いた。鍛造用素材は420℃に加熱した。金型には水溶性黒鉛系の潤滑処理を施した。外周円筒部の直径が57.7mm、円筒部の厚さが9mm、ベーン収納溝形成部が入る貫通溝の溝幅が3mmのスペーサーと、厚さが2.995mm、長さが18.7mmであって先端円筒部の直径が5.5mmであるベーン収納溝形成部を72°間隔で5本有する下型とを組み合わせたものをブッシュで押さえつけた。なお、下型の角取り部の半径は2mmとした。下型の成形孔におけるローターの軸方向の長さは45mmであったので、60mmであるスペーサーの円筒部の軸方向の長さは、ローターの軸方向の長さの1.3倍であった。前述したように、スペーサーの円筒部の厚みは成形孔の壁面から内方側に9mmであったので、18.7mmであるベーン収納溝形成部の長さの約0.48倍であった。前述したように、下型のベーン収納溝形成部の付け根部と成形孔の壁面との間に最大半径2mmの角取り部が設けられており、スペーサーの円筒部の厚み(9mm)は該角取り部の角取りの最大半径の4.5倍の厚みを有していた。その中に素材を装填し、パンチによって鍛造を完了した。鍛造荷重は51tとした。鍛造後、ノックアウトピンで鍛造したローターを下型内から上方へ送り取り出した。
【0062】
比較のため図17に示す従来の金型を用いる方法で鍛造したローターの断面形状を図20に示す。下型の角取り部の半径は2mmとした。図8と図20とを比較すると斜線で示す外径余肉部断面において本発明による鍛造品の方が半径を1.5mm(製品の角R大きさが2→0.5mmになったので、半径は1.5mm小さくなったことになります)小さくすることができ、余肉が小さくなったことが明白である。すなわち製品の角Rの半径の大きさが、図20に示した比較例では2mmとなって余肉部を含めて半径が30.35mm(直径60.7mm)であったものが、本発明による鍛造品である実施例では角Rの半径の大きさが0.5mmになったことにより、余肉部を小さくすることができたので、ローターの半径を1.5mm小さく、即ち28.85mm(直径57.7mm)にすることができた。図8と図20とを比較した場合、図8では図20で示した斜線で示す外径余肉部断面に対応する部分(図18に拡大図を示す。)が無くなっていることになるので、後工程(ローターの最終形状に機械加工する工程。)で除去すべき余肉部が小さく、もしくは除去工程を省略できるので材料歩留りが向上することが明白である。図21の符号Cに示すベーン収納溝底部の円筒部の位置の精度に関しても本発明による図8の鍛造製品ではCのバラツキ、最大値と最小値との差は0.12mmであったのに対して、従来の方法によるものはその差は0.2mmであった。本発明の効果を明らかに確認できた。なお、試料数は各30個とした。さらに、鍛造荷重を85tとすることにより、角Rの半径の大きさが0.05mmのローターが得られた。
[実施例2]
図3に示したスペーサーを有して、図10に示した金型(下型)、11に示した金型(上型)を用いて、図13、14に示したローターを製造した。鍛造装置、鍛造条件は実施例1と同じとした。図10に示した金型(下型)は、成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離が20mmであって、下型の成形孔の底面の中心に、最大半径12mmとする円柱形状の突出部が設けられている。この円柱形状の突出部で「センター穴」を形成した。図11に示した金型(上型)は、上型の動作方向軸の上方からみてベーン収納溝形成部に対応する位置に上型の動作方向と逆向きの凹みを有した形状部が設けられている。この凹みを有した形状部で「ダボ」を形成した。
【0063】
比較のため従来の図17に示す金型において、「ダボ」「センター穴」を設けた金型を用いる方法で鍛造したローターと比較すると、実施例1と同様に外径の余肉部断面において、本発明による方が径が小さく、余肉が小さくなった。また、ベーン収納溝底部の円筒部の位置精度、センター穴の位置の精度に関しても本発明による鍛造製品では最大値と最小値との差は0.12mmであったのに対して、従来の方法によるものはその差は0.2mmであった。本発明の効果を明らかに確認できた。なお、試料数は各30個とした。
【0064】
【発明の効果】
本発明の金型は、軸方向に複数のベーン収納溝を有するローターを鍛造するための基本構成が下型上型の組み合わせからなる金型において、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部の内方側に突出している下型と、下型の成形孔に配設され、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有し、ベーン収納溝形成部を挿入する貫通溝を形成するように配置されるとともに、ベーン収納溝形成部の軸方向と直交する方向でベーン収納溝形成部を挟むベーン収納溝の数と同数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有しているスペーサーとを含むことを特徴とする鍛造用金型であるので、ローター断面において、ベーン収納溝の角取り形状の加工工程及び余肉を低減しあるいは無くすことができ、またスペーサーによる固定により、鍛造加工時のベーン収納溝の精度を高くすることができる。
【0065】
その結果、本発明の金型を用いることにより、寸法精度が良好なローターを安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる下型の一例の水平方向の断面図である。(a)は全体図である。(b)はベーン収納溝形成部付根部の拡大図である。
【図2】 本発明に用いる鍛造機械の一例の垂直方向の断面図である。
【図3】 本発明に用いるスペーサーの一例の側面図、平面図である。
【図4】 本発明に用いる金型の一例の一部の垂直方向の断面図である。
【図5】 金型の垂直方法の断面の説明図である。(a)は本発明のスペーサーの一例の円筒部の長さの説明図である。(b)は従来の金型の断面の説明図である。
【図6】 本発明に用いる下型、スペーサーの組み合わせの説明図である。
【図7】 本発明に用いる鍛造生産システムの概略図である。
【図8】 本発明で鍛造されたローターの一例の水平方向の断面図である。
【図9】 本発明のローター製品の一例の外観図である。
【図10】 本発明に用いる下型の別の例の図である。
【図11】 本発明に用いる上型の別の例の図である。
【図12】 本発明で鍛造された鍛造品の図である。(a)は平面図である。(b)は、(a)のA−Bの断面図である。
【図13】 本発明で鍛造された他の鍛造品の図である。(a)は平面図である。(b)は、(a)のA−Bの断面図である。
【図14】 本発明のローター製品の別の例の外観図である。
【図15】 従来の押し出しダイスの一例の図である。
【図16】 従来の鍛造用金型の一例の図である。
【図17】 従来の鍛造用金型の下型の一例である。
【図18】 従来の鍛造されたローターの一部の図である。
【図19】 従来の鍛造用金型の下型の別の一例である。
【図20】 従来法で鍛造されたローターの一例の一部の図である。
【図21】 従来法で鍛造されたローターの一例の水平方向の断面図である。
【図22】 本発明に用いる上型の別の例の図である。
【符号の説明】
1:ベーン収納溝形成部付根、21:上型、22:成形孔、23:ベーン収納溝形成部、24:下型、25:スペーサー、26:ブッシュ、27:ノックアウトピン、28:素材、31:貫通溝、32:円筒部、33:円筒部の壁面、34:フランジ部、71:素材切断装置、72:素材供給装置、73:素材加熱装置、74:素材搬送装置、75:鍛造機械、76:鍛造製品搬出装置、77:鍛造製品熱処置炉、91:外周円筒部、92:ベーン収納溝、101:円柱形状の突出部、111:凹みを有した形状部、141:センター穴、151:ベーン収納溝形成部、152:角取り形状、171:円筒状の形状、172:角取りの形状、181:余肉、191:ベーン収納溝形成部の付け根、221:センター穴を付けるための突出部、A:スペーサー円筒部の厚さ

Claims (10)

  1. 軸方向に複数のベーン収納溝を有するローターを鍛造するための下型上型の組み合わせからなる金型において、成形孔が中央部に設けられこの成形孔の内壁面から羽根状の複数のベーン収納溝形成部が成形孔の内方側に突出している下型と、下型の成形孔に配設され、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の形状を定める壁面を有し、ベーン収納溝形成部を挿入する貫通溝を形成するように配置されるとともに、ベーン収納溝形成部の軸方向と直交する方向でベーン収納溝形成部を挟むベーン収納溝の数と同数の円筒部および各円筒部をつなぐフランジ部を有しているスペーサーとを含むことを特徴とする鍛造用金型。
  2. スペーサーの円筒部の軸方向の長さが、ローターの軸方向の長さ以上、ローターの軸方向の長さの2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の鍛造用金型。
  3. スペーサーの円筒部が成形孔の壁面から内方側に、ベーン収納溝形成部長さの1/10〜1/2の厚みを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の鍛造用金型。
  4. 下型のベーン収納溝形成部の付け根部と成形孔の壁面との間に角取り部が設けられており、スペーサーの円筒部が成形孔の内壁面から内方側に該角取り部の角取り半径のうちの最大半径の1〜20倍の厚みを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鍛造用金型。
  5. 下型の成形孔の底面の中心に、成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離未満を最大半径とする円柱形状の突出部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鍛造用金型。
  6. 下型の成形孔に向かった上型の面において、下型の成形孔の底面の中心に対応した位置に成形孔の中心からベーン収納溝形成部までの距離未満を最大半径とする円柱形状の突出部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鍛造用金型。
  7. 上型において、上型の動作方向軸の上方からみてベーン収納溝形成部に対応する位置に上型の動作方向と逆向きの凹みを有した形状部を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鍛造用金型。
  8. 素材切断装置と、鍛造機械とを含む閉塞鍛造生産システムにおいて、鍛造機械が請求項1乃至7のいずれか1項に記載の鍛造用金型を有する鍛造機械であることを特徴とする閉塞鍛造生産システム。
  9. アルミニウム合金鋳造棒、アルミニウム合金鋳造棒の押し出し材および粉末アルミニウム合金の押し出し材のいずれかを鍛造用素材とし請求項1乃至7のいずれか1項に記載の下型の成形孔の中に収納し、上型で挟み込んで鍛造用素材を鍛造加工した後、鍛造用素材を鍛造加工した鍛造製品を下型から取り出すことを特徴とするアルミニウム合金製ローターの製造方法。
  10. 軸方向に複数のベーン収納溝を有するローターにおいて、ベーン収納溝によって区分けられたローターの外周円筒部の表面およびベーン収納溝部にバリ取り痕が無く、外周円筒部とベーン収納溝とが作る角部の曲率半径が0.5mm以下であることを特徴とする鍛造製アルミニウム合金ローター。
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