JP2002280609A - 紫外線発光素子 - Google Patents
紫外線発光素子Info
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Abstract
素子の構造を最適化することによって、より高出力で長
寿命の紫外線発光素子を提供すること。 【解決手段】 結晶基板Sの表面に凹凸1Sを加工し、
該凹凸に、GaN系半導体低温バッファ層1を介してま
たは直接的に、GaN系結晶層2を気相成長させる。該
GaN系結晶層は、前記凹凸の凹部内を実質的に充填し
かつ該凹凸を埋め込んで平坦化するまで成長させ、その
上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN結晶層を発
光層として成長させて、紫外線発光素子とする。
Description
関し、特に、紫外線を発し得る組成のInGaNが発光
層として用いられた、GaN系の紫外線発光素子に関す
るものである。
では、In組成揺らぎによるキャリアの局在化のため、
発光層に注入されたキャリアの内、非発光中心に捕獲さ
れるものの割合が少なくなり、結果、高効率の発光が得
られると説明されている。GaN系発光ダイオード(L
ED)やGaN系半導体レーザー(LD)において、4
20nm以下の紫外線を発光させようとする場合、一般
には発光層の材料にはInGaN(In組成0.15以
下)が用いられ、発光に係る構造は、単一量子井戸構造
(所謂DH構造は活性層が薄いためにこれに含まれ
る)、多重量子井戸構造とされる。
・緑色発光素子に比べ、紫外線発光素子は短波長である
為、発光層のIn組成を低下させる必要がある。この
為、上述のIn組成揺らぎによる局在化の効果が低減
し、非発光再結合中心に捕獲される割合が増え、結果と
して高出力化の妨げとなっている。このような状況下、
非発光再結合中心の原因となる転位密度の低減が盛んに
行われている。転位密度を低減させる方法としては、E
LO法(ラテラル成長法)が挙げられ、低転位化を図る
ことにより高出力化・長寿命化が行なわれている(文献
(Jpn.J.Appl.Phys.39(2000)pp.L647)等参照)。
戸層)を、それよりも大きなバンドギャップの材料から
なるクラッド層(障壁層)で挟む構成とされる。文献
(米津宏雄著、工学図書株式会社刊、「光通信素子工
学」第72頁)によると、一般にはバンドギャップ差を
「0.3eV」以上とする指針が出ている。上記背景か
ら、紫外線を発し得る組成のInGaNを発光層(井戸
層)に用いる場合、キャリアの閉じ込めを考えると発光
層を挟むクラッド層(量子井戸構造ではクラッド層だけ
でなく障壁層をも含む)にはバンドギャップの大きなA
lGaNが用いられている。
層はトンネル効果を生じる程度の厚みにする必要があ
り、一般的には3〜6nm程度としていた。
層の材料とした、従来の発光ダイオードの一例を示す図
であって、結晶基板S10上に、バッファ層101を介
して、n型GaNコンタクト層102、n型Al0.1G
a0.9Nクラッド層103、In0.05Ga0.95N井戸層
(発光層)104、p型Al0.2Ga0.8Nクラッド層1
05、p型GaNコンタクト層106が順次結晶成長に
よって積み重ねられ、これに下部電極(通常はn型電
極)P10、上部電極(通常はp型電極)P20が設け
られた素子構造となっている。
下地となるGaN層を成長し、マスク層の形成、再成長
といった方法が必要であり、成長が多数回必要であり、
工程が非常に多くなる問題を有していた。また、再成長
界面が存在する事から、転位密度低減はするものの、出
力がなかなか向上しないという問題を有していた。
外線発光素子をより高出力化すべく、本発明者等が従来
の素子構造を検討したところ、AlGaN層はInGa
N発光層に対し格子定数差から生じる歪みを与える基と
なっている事がわかった。また、量子井戸構造において
障壁層厚みを薄くすると、その上に設けるp型層からM
gが発光層まで拡散し、非発光中心を形成する為、高出
力の紫外発光素子が得られないという問題があった。
層の材料をInGaNとした紫外線発光素子の構造を最
適化することによって、より高出力で長寿命の紫外線発
光素子を提供することである。
するものである。 (1)表面に凹凸が加工された結晶基板上に、GaN系
半導体からなる低温バッファ層を介してまたは直接的
に、GaN系結晶層が気相成長しており、該GaN系結
晶の上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN結晶層
が成長し発光層となっている半導体発光素子構造を有す
ることを特徴とする紫外線発光素子。
介して成長しているGaN系結晶層が、上記凹凸の凹部
底面および凸部上面からファセット構造を形成しながら
成長したものである上記(1)記載の紫外線発光素子。
が、ストライプパターンを呈する凹凸であって、該スト
ライプの長手方向が、この上に成長するGaN結晶の
〈11−20〉方向、または〈1−100〉方向である
上記(1)または(2)記載の紫外線発光素子。
層とGaNからなる障壁層とによって構成された量子井
戸構造である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の
紫外線発光素子。
間の層が全てGaN結晶からなるものである、上記
(1)〜(4)のいずれかに記載の紫外線発光素子。
ある上記(1)〜(5)のいずれかに記載の紫外線発光
素子。
LED、LDなどであってよいが、以下では、LEDの
構成を例として挙げて、本発明を説明する。また、発光
に係る部分の構造は、量子井戸構造など、発光可能な構
造であればよい。本明細書において、量子井戸構造と
は、SQW(単一量子井戸)構造、MQW(多重量子井
戸)構造をさし、また、SQW構造が積層されたもので
もよい。
(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1、X+Y+Z=
1)で示される化合物半導体であって、例えば、Al
N、GaN、AlGaN、InGaNなどが重要な化合
物として挙げられる。
場合を例として説明する。図1は、本発明による発光素
子の構造の一例を示す図であって、結晶基板Sの表面に
凹凸S1が加工され、該凹凸S1に、GaN系半導体か
らなる低温バッファ層1を介してまたは直接的に、Ga
N系結晶層2が気相成長している。同図の例では、Ga
N系結晶層2は、GaN結晶からなる層であって、先
ず、アンドープのGaN結晶層2aが、基板表面の凹凸
S1の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んで平坦化す
るまで成長し、その上に、n型GaN層2bが成長して
なる態様である。また、同図の例では、n型GaN層2
bは、n型コンタクト層でありかつMQW構造の障壁層
をも兼ねている。MQW構造は、InGaN井戸層、G
aN障壁層、InGaN井戸層、GaN障壁層の順に成
長してなり、続いてp型AlGaNクラッド層4、p型
GaNコンタクト層5となっている。さらに、n型電極
P1、p型電極P2が形成されて、本発明による紫外線
発光が可能なGaN系LEDとなっている。
るGaN系結晶を好ましく低転位化することが可能とな
る。この構成では、ELO用のマスク層を用いずに一回
の成長で低転位化が達成されている。即ち、マスクを用
いたELO法では、下地にGaN膜を成長させた後、い
ったん成長装置から外部に取出してマスクを形成し、再
び成長装置に戻して再成長を行っている。これに対し
て、結晶基板に凹凸を形成して行う成長法では、凹凸加
工された結晶基板を成長装置内にセットしたあとは成長
を止める必要がなく、これにより再成長界面が存在せず
に良好な結晶性のものが作製できる。またさらに、本発
明による上記の構成では、マスクを用いずにGaN系結
晶層を成長させているため、マスクの分解による結晶品
質低下の問題が無い。これらの作用効果によって転位が
少なく良好な結晶のものが出来る結果、発光出力が格段
に向上する。また、劣化の原因となる転位密度が低減す
る結果、長寿命化が図れる。
法について説明する。この方法では、結晶基板の表面に
凹凸を加工し、GaN系低温バッファ層を介して、該凹
凸の凸部および/または凹部からGaN系結晶を気相成
長させる。このとき、凹部は空洞として残しても、Ga
N結晶によって充填してもよいが、後述のように、好ま
しい低転位化のためには、凸部、凹部の両方からファセ
ット構造を形成しながら成長し、実質的に凹部が充填さ
れる態様が好ましい。上記のようなファセット構造を形
成しながらの凹凸埋め込み法によれば、ファセット構造
部分において転位線の伝搬方向が制御され、結晶基板上
に転位密度の低いGaN系結晶を成長させることが可能
であり、本発明に独自の成長法である。この本発明に独
自の成長法を、「当該埋め込み成長法」と呼んで、以下
に説明する。また、凹凸を埋め込む材料は、GaN系結
晶であってよいが、後述のように、素子として最も好ま
しいGaNで埋め込む場合を例として説明する。
ように、結晶基板Sの表面に凹凸S1を加工し、図2
(b)に示すように、その凹部及び凸部にGaN系低温
バッファ層1を形成し、図2(c)に示すように、その
凹部、凸部からGaN結晶21、22を成長させ、図2
(d)に示すように、凹部を空洞とすることなくGaN
結晶で充填し、該凹凸を埋め込んで成長成させる方法で
ある。このときのGaN結晶の成長は、凹部、凸部の両
方から同時にファセット構造を形成させながら成長する
ことが好ましいが、それに限らず、GaN結晶が凸面か
ら専ら成長するようなものであってもよい。凸部上方部
から専ら結晶成長が行われるような形状とすると有効で
ある。「上方部から専ら結晶成長が行われる」とは、凸
部の頂点ないし頂面及びその近傍での結晶成長が優勢に
行い得る状態をいい、成長初期には凹部での成長が生じ
てもよいが最終的には凸部の結晶成長が優勢となること
を指す。凸部上方部を起点としたラテラル成長により低
転位領域が形成されれば、従来のマスクを要するELO
と同様の効果がある。
とによって、結果として凹部を空洞として残さずGaN
結晶によって充填するものであってもよい。以下の説明
では、低転位化のために最も好ましい態様として、凹
面、凸面の両方からGaN結晶のファセット構造成長を
生じさせる場合について説明する。
すように、バッファ層等すら形成していない状態の結晶
基板Sの表面に凹凸S1を加工することで、結晶成長当
初からファセット面が形成され得る素地面を予め提供し
ておく。結晶基板に凹凸を設けることで、この面にGa
N結晶の気相成長を行うに際し、相互の段差にて区画さ
れた凹面と凸面が、ファセット構造成長が生成される単
位基準面となる。
は、GaN系結晶を成長させるためのベースとなる基板
であって、格子整合のためのバッファ層等も未だ形成さ
れていない状態のものを言う。好ましい結晶基板として
は、サファイア(C面、A面、R面)、SiC(6H、
4H、3C)、GaN、AlN、Si、スピネル、Zn
O,GaAs、NGOなどを用いることができるが、発
明の目的に対応するならばこのほかの材料を用いてもよ
い。なお、基板の面方位は特に限定されなく、更にジャ
スト基板でも良いしオフ角を付与した基板であっても良
い。
の表面自体がなす凹凸である。これは、従来公知のラテ
ラル成長法に用いられているSiO2などからなるマス
ク層が、フラットな表面に付与されて形成された凹凸と
は異なる。
フォトリソグラフイ技術を用いて、目的の凹凸の態様に
応じてパターン化し、RIE技術等を使ってエッチング
加工を施して目的の凹凸を得る方法などが例示される。
置パターンは、ドット状の凹部(または凸部)が配列さ
れたパターン、直線状または曲線状の凹溝(または凸尾
根)が一定間隔・不定の間隔で配列された、ストライプ
状や同心状のパターンなどが挙げられる。凸尾根が格子
状に交差したパターンは、ドット状(角穴状)の凹部が
規則的に配列されたパターンとみることができる。ま
た、凹凸の断面形状は、矩形(台形を含む)波状、三角
波状、サインカーブ状などが挙げられる。これら種々の
凹凸の態様の中でも、直線状の凹溝(または凸尾根)が
一定間隔で配列された、ストライプ状の凹凸パターン
(断面矩形波状)は、その作製工程を簡略化できると共
に、パターンの作製が容易であり好ましい。
合、そのストライプの長手方向は任意であってよいが、
これを埋め込んで成長するGaN系結晶にとって〈11
−20〉方向とした場合、横方向成長が抑制され、{1
−101}面などの斜めファセットが形成され易くな
る。この結果、基板側からC軸方向に伝搬した転位がこ
のファセット面で横方向に曲げられ、上方に伝搬し難く
なり、低転位密度領域を形成できる点で特に好ましい。
0〉方向にした場合であっても、ファセット面が形成さ
れやすい成長条件を選ぶ事により前述と同様の効果を得
ることができる。
波状とする場合の好ましい寸法は次のとおりである。凹
溝の幅W1は、0.1μm〜20μm、特に0.5μm
〜10μmが好ましい。凸部の幅W2は、0.1μm〜
20μm、特に0.5μm〜10μmが好ましい。凹凸
の振幅(凹溝の深さ)dは、凹部、凸部の内、広い方の
20%以上の深さがあれば良い。これらの寸法やそこか
ら計算されるピッチ等は、他の断面形状の凹凸において
も同様である。
及び凸部にGaN系低温バッファ層1を形成する。Ga
N系低温バッファ層の材料、形成条件は、公知技術を参
照すればよいが、例えば、バッファ層材料としては、G
aN、AlN、InNなどが例示され、成長温度として
は、300℃〜600℃が挙げられる。バッファ層の厚
さは10nm〜50nm、特に20nm〜40nmが好
ましく、基板の凹凸断面が矩形波状である場合には、図
2(b)に示すように、主として、凹部の底面、凸部の
上面に形成することが好ましい。成長装置は、その上の
GaN結晶層を成長させるための装置を用いてよい。な
お、結晶基板としてGaN結晶からなる基板を用いる場
合には、低温バッファ層は必須では無い。
晶を高温成長させる。凹面、凸面をファセット構造成長
可能な面とすることによって、同図に示すように、成長
初期には凹面・凸面の両方から凸状を呈するGaN結晶
21、22が成長する。この結果、結晶基板からC軸方
向に伸びる転位線がファセット面(図2(c)に示すG
aN系結晶21、22の斜面)で横方向に曲げられ、上
方に伝搬しなくなる。その後、成長を続け、各凸状を呈
する結晶21、22は、図2(c)に一点鎖線で示すよ
うに互いに合体し、さらに、図2(d)に示すように、
成長面を平坦化してGaN結晶層2a(=図1の素子に
おける層2a)が得られる。該GaN結晶層の表面近傍
は基板からの転位の伝搬が低減された低転位密度領域と
なっている。
込む際には、結晶成長状態を制御する点からは、図1に
示すように、不純物を添加しないアンドープのGaN結
晶層2aで凹凸を埋め込んだ上に、n型GaN結晶層2
bを成長させることが好ましいが、バッファ層上に最初
からn型GaN層を成長させてもよい。また、n型Ga
N層は、キャリア濃度を変えて、n型GaNコンタクト
層、n型GaNクラッド層に区別して設けてもよい。
晶成長法では、平坦なサファイアC面基板上に、MOV
PE法などにより、GaNなどの低温バッファ層を介
し、高温GaN膜を成長させている。低温バッファ層上
に高温GaNを成長させると、バッファ層の密に集合し
た結晶を成長の核として、GaNは横方向成長しながら
合体し、やがて平坦になるというものである。しかしな
がら、従来の方法では、基板面に凹凸が加工されていな
い為、安定であるC面が出るように成長が進むため平坦
化される。これは安定であるC面の成長速度に比べ横方
向の成長速度が速い為である。
成長面に凹凸を加工することで、横方向成長を抑えてお
り、加えてC軸方向の成長速度を上げることによって、
{1−101}などの斜めのファセットが形成し得る。
ように形成されるかは、凹部の幅と凸部の幅との組み合
せによっても、色々と変化し得るが、このファセット面
は転位の伝搬を折曲させ得る程度のものであれば良く、
好ましい態様は、図2(c)に示すように、各々の単位
基準面から成長した結晶単位21、22が、それぞれの
頂部に平坦部を有すること無く完全に両ファセット面が
頂部で交差する山形(三角錐や山脈状に長く連なった屋
根形)の態様である。このようなファセット面であれ
ば、前記ベース面から承継された転位線を概ね全て曲げ
ることができ、その直上の転位密度をより低減できる。
なお、凹凸の幅の組み合せだけでなく、凹部の深さ(凸
部の高さ)を変化させる事でもファセット面形成領域の
制御が可能である。
う時の成長条件(ガス種、成長圧力、成長温度、など)
により制御する事ができる。減圧成長ではNH3分圧が
低い場合{1−101}面のファセットが出易く、常圧
成長では減圧に比べファセット面が出易い。また成長温
度を上げると横方向成長が促進されるが、低温成長する
と横方向成長よりもC軸方向の成長が速くなり、ファセ
ット面が形成されやすくなる。以上成長条件によってフ
ァセット形状の制御が可能である事を示したが、本発明
の効果が出る範囲内であれば、目的に応じ使い分ければ
よい。
法だけでなく、凹部を空洞として残す成長法を用いても
よい。例えば、特開2000−106455号公報で
は、結晶基板に凹凸を設け、凹部を空洞として残すよう
に窒化ガリウム系半導体を成長させる方法が開示されて
いる。ただし、このような成長法では、凹部を充填せず
空洞部として残しているため、該空洞部の存在が、発光
層で生じた熱を基板側に逃がす上で不利であり、熱劣化
を助長する問題がある。また、転位の伝搬を積極的に制
御しておらず、もっぱら凹部の上方領域だけを低転位化
させるラテラル成長の技術思想そのものあって、凸部の
上方領域には転位が伝搬している。よって、上記のよう
な問題点を解消しながらより好ましい転位密度の低減効
果が得られる点からは、当該埋め込み成長法を用いるこ
とがより好ましい。
はHVPE、MOVPE、MBE法などがよい。厚膜を
作製する場合はHVPE法が好ましいが、薄膜を形成す
る場合はMOVPE法やMBE法が好ましい。
る。先ず、本発明の好ましい第1の態様では、基板の凹
凸上に形成されるGaN系結晶層2の材料をGaN結晶
に限定する。このGaN結晶層の上に、紫外線を発生し
得る組成のInGaN結晶層を井戸層とするMQW構造
を構成し発光層とする。付言すると、n型クラッド層は
GaNからなり、発光層と低温バッファ層との間にはA
lGaN層が存在しない構成となる。
組成のInGaNを発光層に用いながらも、n型クラッ
ド層材料としては、従来必須とされているAlGaNを
用いず、GaNを用いている。本発明では、紫外線発光
層に対して、n型クラッド層がGaNであっても、正孔
の閉じ込めは充分に達成できることを見出している。こ
れは、p型層から注入される正孔の有効質量が重いた
め、拡散長が短く、n型クラッド層まで充分には到達し
ないからであると考えられる。よって、本発明の構成に
おいてInGaN発光層の下層として存在するn型Ga
N層は、厳密には、従来でいうクラッド層に相当するも
のではないと言える。結晶基板と発光層との間にクラッ
ド層として存在していたAlGaNを排除し、GaN層
としたことによって、InGaN発光層の歪みが低減さ
れている。
合、歪みによるピエゾ電界の発生により井戸構造が傾斜
し、電子と正孔の波動関数の重なりが少なくなる。この
結果、電子と正孔の再結合確率が減少し発光出力が弱く
なる。これを回避する為に、MQW構造へSiをドーピ
ングする事によりピエゾ電界をキャンセルする試みも行
われているが、ドーピングによる結晶性の低下を引き起
こす為、好ましい方法では無い。上記のように、n型A
lGaN層を排除する事でこのような危惧も無く、高出
力化が得られる。
化と、AlGaNを排除した上記作用効果とがあいまっ
て、InGaN発光層は低転位化されると共に歪みが低
減され、発光出力、素子寿命が十分に向上する。
発光層の量子井戸構造における障壁層の材料をGaNに
限定する。これによって、井戸層と低温バッファ層との
間からAlGaN層が排除され、井戸層の歪みが抑制さ
れ、高出力化、長寿命化が達成される。従来の量子井戸
構造では、井戸層内へのキャリアの閉じ込めを配慮し、
障壁層やクラッド層にはAlGaNが用いられていた。
しかしこれらの組み合せでは、結晶成長条件の最適値が
AlGaNとInGaNとでは大きく異なる事から次の
問題がある。AlNはGaNに比べ高融点であり、In
NはGaNに比べ低融点である。その為、最適温度はG
aNを1000℃とすると、InGaNは1000℃以
下、好ましくは600〜800℃程度、AlGaNはG
aN以上である。AlGaNを障壁層に用いた場合、A
lGaN障壁層とInGaN井戸層の成長温度を変化さ
せないとそれぞれの最適結晶成長条件とはならず、結晶
品質が低下する問題がある。一方、成長温度を変化させ
ることは成長中断を設ける事となり、3nm程度の薄膜
である井戸層では、この成長中断中にエッチング作用に
より厚みが変動する、表面に結晶欠陥が入る等の問題が
生じる。これらトレードオフの関係が有る為、AlGa
N障壁層、InGaN井戸層のくみ合わせで高品質な物
を得るのは困難である。また、障壁層をAlGaNとす
る事で井戸層へ歪みがかかる問題もあり、高出力化の妨
げになる。そこで、本発明では、障壁層の材料としてG
aNを用い、上記トレードオフの問題を軽減する試みを
行ったところ、結晶品質が改善された。また、歪みを軽
減する為にn型クラッド層としてGaNを用いた所、歪
みの軽減により高出力化が可能となった。GaNをクラ
ッド層にするとキャリアの閉じ込めが、紫外線発光可能
な組成のInGaNに対して、不充分となることが懸念
されたが、キャリア(特に正孔)の閉じ込めはできてい
ることが判明した。
は、MQW構造における障壁層の厚さを6nm〜30n
m、好ましくは8nm〜30nm、特に好ましくは9n
m〜15nmに限定する。従来のMQW構造における障
壁層の厚さは3nm〜7nmである。障壁層をこのよう
に厚くすると、波動関数の重なりが無くなり、MQW構
造というよりも、SQW構造を多重に積み重ねたような
状態となるが、充分に高出力化が達成される。障壁層が
30nmを超えると、p型層から注入された正孔が井戸
層へ到達するまでにGaN障壁層中に存在する非発光中
心となる転位欠陥などにトラップされ、発光効率が低下
するので好ましくない。
の上の層を成長させるときの熱や、ガスによる損傷を井
戸層が受け難くなるのでダメージが軽減され、また、p
型層からのドーパント材料(Mgなど)が井戸層に拡散
することが低減され、さらには井戸層にかかる歪みも低
減されるという作用効果が得られる。
aN系LEDを製作し、発光層と結晶基板との間の層を
GaNだけからなる態様とした。C面サファイア基板上
にフォトレジストによるストライプ状のパターニング
(幅2μm、周期4μm、ストライプ方位:ストライプ
の長手方向が、基板上に成長するGaN系結晶にとって
〈11−20〉方向)を行い、RIE装置で2μmの深
さまで断面方形となるようエッチングし、図2(a)に
示すように、表面がストライプ状パターンの凹凸となっ
た基板を得た。この時のストライプ溝断面のアスペクト
比は1であった。
に基板を装着し、水素雰囲気下で1100℃まで昇温
し、サーマルエッチングを行った。温度を500℃まで
下げ、III 族原料としてトリメチルガリウム(以下TM
G)を、N原料としてアンモニアを流し、厚さ30nm
のGaN低温バッファ層を成長させた。該GaN低温バ
ッファ層は、図2(b)に示すように、凸部の上面、凹
部の底面にのみ形成された。
してTMG、アンモニアを流し、アンドープのGaN層
2aを、平坦な基板で2μmに相当する時間成長させた
後、成長温度を1050℃に上げ、平坦な基板で4μm
に相当する時間成長させた。この条件で成長を行った場
合、このときのGaN層2aの成長は、図2(c)に示
すように、凸部の上面、凹部の底面から、断面山形でフ
ァセット面を含む尾根状となる。その後の成長温度変更
により2次元成長が促進され、平坦化する。
ンタクト層(クラッド層)2b、厚さ3nmのInGa
N井戸層(発光波長380nm、In組成はゼロに近い
為測定が困難)、厚さ6nmのGaN障壁層からなる3
周期の多重量子井戸層3、厚さ30nmのp型AlGa
Nクラッド層4、厚さ50nmのp型GaNコンタクト
層を順に形成し、発光波長380nmの紫外線LEDウ
エハとし、さらに、電極形成、素子分離を行い、LED
素子とした。
チップ状態)、波長380nm、通電20mAにて)の
各出力を測定した。
ァイア基板上に、上記と同様の条件にて、紫外線LED
チップ(比較例1)を形成し、その出力を測定した。ま
た、通常のELO用基材(平坦なサファイア基板上に一
旦GaN層を形成した後、マスク層を形成したもの)の
上に、上記と同様の条件にて、紫外線LEDチップ(比
較例2)を形成し、その出力を測定した。
ハ中の転位密度の平均値を測定した結果、および出力の
平均値、80℃、20mAによる加速試験における寿命
(初期出力の80%まで低下する時間)を表1に示す。
位密度が低減し、長寿命化、高出力化が図れている。比
較例2の結果から明らかなように、転位密度低減法の1
つであるELO法によって、同様に転位密度の低減は図
れているが、出力が本実施例に比較し低かった。これは
再成長界面の存在による結晶性の違いと考えられる。ま
た、通常基板上では転位密度も多いため、出力寿命とも
本実施例に比較し悪かった。
層2bと、InGaN井戸層との間に、n型Al0.1G
a0.9Nクラッド層を設けたこと以外は、実施例1と同
様の条件にて、紫外線LEDチップを形成し、その出力
を測定した。上記表1のとおり、実施例1の素子の出力
は10mWであったのに対して、本実施例の素子の出力
は7mWであった。この結果から、本実施例の素子は比
較例1、2に比べて出力は向上しているが、実施例1の
ように、InGaN井戸層と結晶基板との間からAlG
aN層を排除することによって、出力がさらに向上する
ことが明らかになった。
の作用効果を調べる実験を行った。実施例1におけるM
QW構造の各障壁層の厚さを、サンプル1;3nm、サ
ンプル2;6nm、サンプル3;10nm、サンプル
4;15nm、サンプル5;30nmとしたこと以外
は、上記実施例1と同様にGaN系LEDを製作した。
これらは、全て本発明による発光素子に属する。上記と
同様の条件にて、紫外LEDチップの出力を測定した。
ある。 サンプル1;2mW、 サンプル2;7mW、 サンプル3;10mW、 サンプル4;8mW、 サンプル5;5mW
てフォトルミネッセンス測定を行った結果、サンプル1
において3.2eV付近にMgからの発光が観測され
た。これは障壁層が薄い為、p型層からMgが拡散して
きた結果と考えられる。上記の結果から明らかなとお
り、障壁層の厚さが6nm〜30nmにおいて、高出力
化がより改善されることがわかった。
において,凹凸加工した基板上に一回の成長で結晶構造
を作製する事により転位低減を図り、かつ、n型クラッ
ド層(量子井戸構造では障壁層も)の材料をGaNとす
ることによって歪みを低減を図り、更に、MQW構造に
おける好ましい態様として、障壁層の厚さを限定するこ
とで、素子の発光出力を向上させ、長寿命化させること
ができた。
式図である。ハッチングは、領域の境界を示す目的で施
している(以下の図も同様)。
N結晶層を成長させる方法を示す模式図である。
来の発光ダイオードの一例を示す模式図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 表面に凹凸が加工された結晶基板上に、
GaN系半導体からなる低温バッファ層を介してまたは
直接的に、GaN系結晶層が気相成長しており、該Ga
N系結晶の上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN
結晶層が成長し発光層となっている半導体発光素子構造
を有することを特徴とする紫外線発光素子。 - 【請求項2】 結晶基板上に上記低温バッファ層を介し
て成長しているGaN系結晶層が、上記凹凸の凹部底面
および凸部上面からファセット構造を形成しながら成長
したものである請求項1記載の紫外線発光素子。 - 【請求項3】 結晶基板の表面に加工された凹凸が、ス
トライプパターンを呈する凹凸であって、該ストライプ
の長手方向が、この上に成長するGaN結晶の〈11−
20〉方向、または〈1−100〉方向である請求項1
または2記載の紫外線発光素子。 - 【請求項4】 発光層が、InGaNからなる井戸層と
GaNからなる障壁層とによって構成された量子井戸構
造である、請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線発光
素子。 - 【請求項5】 量子井戸構造と低温バッファ層との間の
層が全てGaN結晶からなるものである、請求項1〜4
のいずれかに記載の紫外線発光素子。 - 【請求項6】 障壁層の厚さが6nm〜30nmである
請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線発光素子。
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