JP3819398B2 - 半導体発光素子およびその製造方法 - Google Patents
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上記背景から、紫外線を発し得る組成のInGaNを発光層(井戸層)に用いる場合、キャリアの閉じ込めを考えると発光層を挟むクラッド層(量子井戸構造ではクラッド層だけでなく障壁層をも含む)にはバンドギャップの大きなAlGaNが用いられている。
また、量子井戸構造において障壁層厚みを薄くすると、その上に設けるp型層からMgが発光層まで拡散し、非発光中心を形成する為、高出力の紫外発光素子が得られないという問題があった。
(1)段差にて区画された凹部底面および凸部上面を有する凹凸が表面に加工された結晶基板の該表面上に、GaN結晶層を気相成長させる工程と、
前記GaN結晶層の上に、InGaN結晶層を井戸層として含む量子井戸構造の発光層を気相成長させる工程とを有し、
前記GaN結晶層を気相成長させる工程においては、アンドープのGaN結晶層を成長させて前記凹凸の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んだ上に、n型GaN結晶層を成長させ、該アンドープのGaN結晶層の成長においては、成長初期に、上記凹部底面および凸部上面の両方から凸状を呈するGaN結晶を成長させた後、続けて、該GaN結晶を、上記凹凸を埋め込むまで成長させることを特徴とする、半導体発光素子の製造方法。
(2)前記凸状を呈する結晶が、ファセット面が頂部で交差する山形の結晶である、上記(1)記載の製造方法。
(3)上記GaN結晶層を気相成長させる工程において、上記結晶基板の表面上に、GaN系半導体からなる低温バッファ層を介して、上記アンドープのGaN結晶層を成長させる、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)上記InGaN結晶層が波長420nm以下の光を発生し得るInGaN結晶層である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)段差にて区画された凹部底面および凸部上面を有する凹凸が表面に加工された結晶基板の該表面上に、GaN結晶層を気相成長させる工程と、
前記GaN結晶層の上に、InGaN結晶層を井戸層として含む量子井戸構造の発光層を気相成長させる工程とを有し、
前記GaN結晶層を気相成長させる工程において、上記結晶基板の表面上に、GaN系半導体からなる低温バッファ層を介して、アンドープのGaN結晶層を成長させて前記凹凸の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んだ上に、n型GaN結晶層を成長させることを特徴とする、半導体発光素子の製造方法。
(6)上記InGaN結晶層が波長420nm以下の光を発生し得るInGaN結晶層である、上記(5)記載の製造方法。
(7)段差にて区画された凹部底面および凸部上面を有する凹凸が表面に加工された結晶基板の、前記表面上に気相成長したGaN結晶層と、
該GaN結晶層の上に成長した、InGaN結晶層を井戸層として含む量子井戸構造の発光層とを有する半導体発光素子であって、
前記GaN結晶層が、前記凹凸の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んで成長したアンドープのGaN結晶層と、その上に成長したn型のGaN結晶層とからなり、かつ、該アンドープのGaN結晶層は、上記結晶基板の表面上にGaN系半導体からなる低温バッファ層を介して成長したものである、半導体発光素子。
(8)上記アンドープのGaN結晶層は、その表面近傍が基板からの転位の伝搬が低減された低転位密度領域となるように気相成長したものである、上記(7)記載の半導体発光素子。
(9)上記InGaN結晶層が波長420nm以下の光を発生し得るInGaN結晶層である、上記(7)または(8)記載の半導体発光素子。
図1は、本発明による発光素子の構造の一例を示す図であって、
結晶基板Sの表面に凹凸S1が加工され、該凹凸S1に、GaN系半導体からなる低温バッファ層1を介してまたは直接的に、GaN系結晶層2が気相成長している。同図の例では、GaN系結晶層2は、GaN結晶からなる層であって、先ず、アンドープのGaN結晶層2aが、基板表面の凹凸S1の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んで平坦化するまで成長し、その上に、n型GaN層2bが成長してなる態様である。また、同図の例では、n型GaN層2bは、n型コンタクト層でありかつMQW構造の障壁層をも兼ねている。MQW構造は、InGaN井戸層、GaN障壁層、InGaN井戸層、GaN障壁層の順に成長してなり、続いてp型AlGaNクラッド層4、p型GaNコンタクト層5となっている。さらに、n型電極P1、p型電極P2が形成されて、本発明による紫外線発光が可能なGaN系LEDとなっている。
即ち、マスクを用いたELO法では、下地にGaN膜を成長させた後、いったん成長装置から外部に取出してマスクを形成し、再び成長装置に戻して再成長を行っている。これに対して、結晶基板に凹凸を形成して行う成長法では、凹凸加工された結晶基板を成長装置内にセットしたあとは成長を止める必要がなく、これにより再成長界面が存在せずに良好な結晶性のものが作製できる。
またさらに、本発明による上記の構成では、マスクを用いずにGaN系結晶層を成長させているため、マスクの分解による結晶品質低下の問題が無い。
これらの作用効果によって転位が少なく良好な結晶のものが出来る結果、発光出力が格段に向上する。また、劣化の原因となる転位密度が低減する結果、長寿命化が図れる。
この方法では、結晶基板の表面に凹凸を加工し、GaN系低温バッファ層を介して、該凹凸の凸部および/または凹部からGaN系結晶を気相成長させる。このとき、凹部は空洞として残しても、GaN結晶によって充填してもよいが、後述のように、好ましい低転位化のためには、凸部、凹部の両方からファセット構造を形成しながら成長し、実質的に凹部が充填される態様が好ましい。
上記のようなファセット構造を形成しながらの凹凸埋め込み法によれば、ファセット構造部分において転位線の伝搬方向が制御され、結晶基板上に転位密度の低いGaN系結晶を成長させることが可能であり、本発明に独自の成長法である。この本発明に独自の成長法を、「当該埋め込み成長法」と呼んで、以下に説明する。また、凹凸を埋め込む材料は、GaN系結晶であってよいが、後述のように、素子として最も好ましいGaNで埋め込む場合を例として説明する。
以下の説明では、低転位化のために最も好ましい態様として、凹面、凸面の両方からGaN結晶のファセット構造成長を生じさせる場合について説明する。
これら種々の凹凸の態様の中でも、直線状の凹溝(または凸尾根)が一定間隔で配列された、ストライプ状の凹凸パターン(断面矩形波状)は、その作製工程を簡略化できると共に、パターンの作製が容易であり好ましい。
GaN系低温バッファ層の材料、形成条件は、公知技術を参照すればよいが、例えば、バッファ層材料としては、GaN、AlN、InNなどが例示され、成長温度としては、300℃〜600℃が挙げられる。バッファ層の厚さは10nm〜50nm、特に20nm〜40nmが好ましく、基板の凹凸断面が矩形波状である場合には、図2(b)に示すように、主として、凹部の底面、凸部の上面に形成することが好ましい。成長装置は、その上のGaN結晶層を成長させるための装置を用いてよい。
なお、結晶基板としてGaN結晶からなる基板を用いる場合には、低温バッファ層は必須では無い。
この結果、結晶基板からC軸方向に伸びる転位線がファセット面(図2(c)に示すGaN系結晶21、22の斜面)で横方向に曲げられ、上方に伝搬しなくなる。その後、成長を続け、各凸状を呈する結晶21、22は、図2(c)に一点鎖線で示すように互いに合体し、さらに、図2(d)に示すように、成長面を平坦化してGaN結晶層2a(=図1の素子における層2a)が得られる。該GaN結晶層の表面近傍は基板からの転位の伝搬が低減された低転位密度領域となっている。
なお、凹凸の幅の組み合せだけでなく、凹部の深さ(凸部の高さ)を変化させる事でもファセット面形成領域の制御が可能である。
また成長温度を上げると横方向成長が促進されるが、低温成長すると横方向成長よりもC軸方向の成長が速くなり、ファセット面が形成されやすくなる。
以上成長条件によってファセット形状の制御が可能である事を示したが、本発明の効果が出る範囲内であれば、目的に応じ使い分ければよい。
先ず、本発明の好ましい第1の態様では、基板の凹凸上に形成されるGaN系結晶層2の材料をGaN結晶に限定する。このGaN結晶層の上に、紫外線を発生し得る組成のInGaN結晶層を井戸層とするMQW構造を構成し発光層とする。付言すると、n型クラッド層はGaNからなり、発光層と低温バッファ層との間にはAlGaN層が存在しない構成となる。
しかしこれらの組み合せでは、結晶成長条件の最適値がAlGaNとInGaNとでは大きく異なる事から次の問題がある。AlNはGaNに比べ高融点であり、InNはGaNに比べ低融点である。その為、最適温度はGaNを1000℃とすると、InGaNは1000℃以下、好ましくは600〜800℃程度、AlGaNはGaN以上である。AlGaNを障壁層に用いた場合、AlGaN障壁層とInGaN井戸層の成長温度を変化させないとそれぞれの最適結晶成長条件とはならず、結晶品質が低下する問題がある。一方、成長温度を変化させることは成長中断を設ける事となり、3nm程度の薄膜である井戸層では、この成長中断中にエッチング作用により厚みが変動する、表面に結晶欠陥が入る等の問題が生じる。これらトレードオフの関係が有る為、AlGaN障壁層、InGaN井戸層のくみ合わせで高品質な物を得るのは困難である。また、障壁層をAlGaNとする事で井戸層へ歪みがかかる問題もあり、高出力化の妨げになる。そこで、本発明では、障壁層の材料としてGaNを用い、上記トレードオフの問題を軽減する試みを行ったところ、結晶品質が改善された。また、歪みを軽減する為にn型クラッド層としてGaNを用いた所、歪みの軽減により高出力化が可能となった。GaNをクラッド層にするとキャリアの閉じ込めが、紫外線発光可能な組成のInGaNに対して、不充分となることが懸念されたが、キャリア(特に正孔)の閉じ込めはできていることが判明した。
障壁層をこのように厚くすると、波動関数の重なりが無くなり、MQW構造というよりも、SQW構造を多重に積み重ねたような状態となるが、充分に高出力化が達成される。障壁層が30nmを超えると、p型層から注入された正孔が井戸層へ到達するまでにGaN障壁層中に存在する非発光中心となる転位欠陥などにトラップされ、発光効率が低下するので好ましくない。
本実施例では、図1に示すように、DH構造を有するGaN系LEDを製作し、発光層と結晶基板との間の層をGaNだけからなる態様とした。
C面サファイア基板上にフォトレジストによるストライプ状のパターニング(幅2μm、周期4μm、ストライプ方位:ストライプの長手方向が、基板上に成長するGaN系結晶にとって〈11−20〉方向)を行い、RIE装置で2μmの深さまで断面方形となるようエッチングし、図2(a)に示すように、表面がストライプ状パターンの凹凸となった基板を得た。この時のストライプ溝断面のアスペクト比は1であった。
また、通常のELO用基材(平坦なサファイア基板上に一旦GaN層を形成した後、マスク層を形成したもの)の上に、上記と同様の条件にて、紫外線LEDチップ(比較例2)を形成し、その出力を測定した。
本実施例では、実施例1におけるn型GaNコンタクト層2bと、InGaN井戸層との間に、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層を設けたこと以外は、実施例1と同様の条件にて、紫外線LEDチップを形成し、その出力を測定した。
上記表1のとおり、実施例1の素子の出力は10mWであったのに対して、本実施例の素子の出力は7mWであった。この結果から、本実施例の素子は比較例1、2に比べて出力は向上しているが、実施例1のように、InGaN井戸層と結晶基板との間からAlGaN層を排除することによって、出力がさらに向上することが明らかになった。
本実施例では、MQW構造の障壁層の厚さに関する限定の作用効果を調べる実験を行った。
実施例1におけるMQW構造の各障壁層の厚さを、サンプル1;3nm、サンプル2;6nm、サンプル3;10nm、サンプル4;15nm、サンプル5;30nmとしたこと以外は、上記実施例1と同様にGaN系LEDを製作した。これらは、全て本発明による発光素子に属する。
上記と同様の条件にて、紫外LEDチップの出力を測定した。
サンプル1;2mW、
サンプル2;7mW、
サンプル3;10mW、
サンプル4;8mW、
サンプル5;5mW
上記の結果から明らかなとおり、障壁層の厚さが6nm〜30nmにおいて、高出力化がより改善されることがわかった。
S1 凹凸
1 GaN系半導体低温バッファ層
2 GaN系結晶層(特にGaN結晶層)
3 紫外線発光可能な組成のInGaN結晶層
4 p型クラッド層
5 p型コンタクト層
Claims (9)
- 段差にて区画された凹部底面および凸部上面を有する凹凸が表面に加工された結晶基板の該表面上に、GaN結晶層を気相成長させる工程と、
前記GaN結晶層の上に、InGaN結晶層を井戸層として含む量子井戸構造の発光層を気相成長させる工程とを有し、
前記GaN結晶層を気相成長させる工程においては、アンドープのGaN結晶層を成長させて前記凹凸の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んだ上に、n型GaN結晶層を成長させ、該アンドープのGaN結晶層の成長においては、成長初期に、上記凹部底面および凸部上面の両方から凸状を呈するGaN結晶を成長させた後、続けて、該GaN結晶を、上記凹凸を埋め込むまで成長させることを特徴とする、半導体発光素子の製造方法。 - 前記凸状を呈する結晶が、ファセット面が頂部で交差する山形の結晶である、請求項1記載の製造方法。
- 上記GaN結晶層を気相成長させる工程において、上記結晶基板の表面上に、GaN系半導体からなる低温バッファ層を介して、上記アンドープのGaN結晶層を成長させる、請求項1または2記載の製造方法。
- 上記InGaN結晶層が波長420nm以下の光を発生し得るInGaN結晶層である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 段差にて区画された凹部底面および凸部上面を有する凹凸が表面に加工された結晶基板の該表面上に、GaN結晶層を気相成長させる工程と、
前記GaN結晶層の上に、InGaN結晶層を井戸層として含む量子井戸構造の発光層を気相成長させる工程とを有し、
前記GaN結晶層を気相成長させる工程において、上記結晶基板の表面上に、GaN系半導体からなる低温バッファ層を介して、アンドープのGaN結晶層を成長させて前記凹凸の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んだ上に、n型GaN結晶層を成長させることを特徴とする、半導体発光素子の製造方法。 - 上記InGaN結晶層が波長420nm以下の光を発生し得るInGaN結晶層である、請求項5記載の製造方法。
- 段差にて区画された凹部底面および凸部上面を有する凹凸が表面に加工された結晶基板の、前記表面上に気相成長したGaN結晶層と、
該GaN結晶層の上に成長した、InGaN結晶層を井戸層として含む量子井戸構造の発光層とを有する半導体発光素子であって、
前記GaN結晶層が、前記凹凸の凹部内を充填しかつ該凹凸を埋め込んで成長したアンドープのGaN結晶層と、その上に成長したn型のGaN結晶層とからなり、かつ、該アンドープのGaN結晶層は、上記結晶基板の表面上にGaN系半導体からなる低温バッファ層を介して成長したものである、半導体発光素子。 - 上記アンドープのGaN結晶層は、その表面近傍が基板からの転位の伝搬が低減された低転位密度領域となるように気相成長したものである、請求項7記載の半導体発光素子。
- 上記InGaN結晶層が波長420nm以下の光を発生し得るInGaN結晶層である、請求項7または8記載の半導体発光素子。
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