JP2002280605A - n型GaP単結晶基板、その製造方法、GaP緑色系発光ダイオード用エピタキシャル基板およびGaP緑色系発光ダイオード - Google Patents
n型GaP単結晶基板、その製造方法、GaP緑色系発光ダイオード用エピタキシャル基板およびGaP緑色系発光ダイオードInfo
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Abstract
色系発光ダイオードを作製するために好適に用いること
ができるn型GaP単結晶基板とその製造方法を提供す
る。 【解決手段】n型のドーパントとしてSiとTeが同時
にドープされたn型GaP単結晶基板において、該n型
GaP単結晶基板中のSi濃度とTe濃度の和を2×1
017cm-3以上2×101 8cm-3以下とし、かつSi濃
度が2×1016cm-3以上8×1017cm-3以下とし、
かつTe濃度が1×1017cm-3以上2×1018cm-3
以下とする。
Description
イオード用エピタキシャル基板に使用されるn型GaP
単結晶基板とその製造方法に関するものであり、特に高
輝度で、かつ低い順方向電圧で駆動可能なGaP緑色系
発光ダイオードを作製するために好適に用いられるn型
GaP単結晶基板に関する。
(約2.26eV)を持つ化合物半導体であり、主に緑
色の発光ダイオード(LED)の材料として用いられて
いる。
量子効率が低く、原理的に輝度が低い。これを改善する
方法として、発光層(通常はpn接合を形成するn層)
に窒素(N)を発光中心としてドープすると輝度が飛躍
的に向上することが発見され、実用化に至っている。N
の形成する準位は伝導帯から約7meV下にあるため、
このNをドープしたLEDの発光波長は565〜570
nmとなり、色としては黄緑色になる(黄緑色LE
D)。
層することにより、GaP単結晶基板からその上にエピ
タキシャル成長させたpn接合構造の発光層へ伝搬する
結晶欠陥を低減する技術や、GaP層のエピタキシャル
成長中に主にリン(P)の脱離でGaP層中に発生する
結晶欠陥をエピタキシャル成長雰囲気中のP分圧を制御
して低減する技術などの開発により、発光中心をドープ
しない緑色のLEDについても高輝度化が実現された。
このLEDはNのような発光中心を用いないので、輝度
は黄緑色LEDよりも低いが、発光波長は約555nm
であり、色としては純緑色になる(純緑色LED)。
せて、GaP緑色系発光ダイオード(GaP緑色系LE
D)と呼ぶ。以下にGaP緑色系LEDについて図を用
いてさらに詳細に説明する。
に示す。まず、n型GaP単結晶基板1の上に、必要に
応じてn型GaPバッファ層2を成長する。n型GaP
バッファ層2は、成長させなくともかまわないが、一般
に、成長させた方がその上に形成するGaP層の結晶性
は向上し、より高輝度のLEDが得られる。n型GaP
バッファ層2は複数の層を積層しても良い。次に、その
上に、n型GaPエピタキシャル層3、Nをドープした
n型GaPエピタキシャル層4、およびp型GaPエピ
タキシャル層5を順次成長させる。
に示す。まずn型GaP単結晶基板6の上に、必要に応
じてn型GaPバッファ層7を成長させる。黄緑色LE
Dの場合と同様、n型GaPバッファ層7は、成長させ
なくともかまわないが、一般に、成長させた方がその上
に形成するGaP層の結晶性は向上し、より高輝度のL
EDが得られる。n型GaPバッファ層7は複数の層を
積層しても良い。次に、その上に、Nをドープしないn
型GaPエピタキシャル層8,およびp型GaPエピタ
キシャル層9を順次成長させる。
ピタキシャル層を積層した基板を本明細書ではエピタキ
シャル基板と呼ぶ。上記のようにして作製したLED用
エピタキシャル基板のn型の表面とp型の表面にそれぞ
れAuGe、AuBe等の電極用金属薄膜を蒸着し、熱
処理によりこれらの電極用金属薄膜材料とエピタキシャ
ル基板を合金化する。さらに、フォトリソグラフィーに
よりn電極、p電極を形成して、ダイシングによりLE
Dに分離する。
通常液体封止チョクラルスキー法(LEC法)で育成し
たGaP単結晶インゴットを切断、研磨して作製される
GaP単結晶基板を使用して製造される。また、n型G
aP単結晶基板のドーパントとしてはS、Si、及びT
eが一般的に用いられている。これらのドーパントのう
ち特にSは、特開平11−97740号公報に示されて
いるように、前述の黄緑色LEDの輝度を低下させる原
因となるので、エピタキシャル層が基板起因のSで汚染
されることを回避するために、GaP緑色系発光ダイオ
ード用エピタキシャル基板の作製には使用されていな
い。
エピタキシャル成長法により製造されている。液相エピ
タキシャル法は、結晶性の良い高品質なエピタキシャル
層を大量に安価に製造することができる。
されるGaP緑色系LED用エピタキシャル基板及び発
光ダイオードは、市場の高輝度化への要求に対応するた
めに、前述のようなエピタキシャル層構造の最適化や液
相エピタキシャル成長方法の改良により特性向上を図っ
てきた。
るGaP単結晶基板についても特性改善が図られてき
た。GaP単結晶基板の特性改善の指標としては、結晶
欠陥に対応するEPD(エッチピット密度)の低減とキ
ャリヤ濃度の最適化の2つがある。このうち、EPD低
減のためにはGaP単結晶インゴットの育成技術の改良
が検討されているが本発明の目的とは離れるので詳細は
省略する。
いては、GaP単結晶基板のキャリヤ濃度は低い方が基
板による発光の吸収が小さくなるので、LEDの高輝度
化のためには有効であるが、同時に基板のキャリヤ濃度
が低いと基板自身の電気抵抗が上昇する。そのためLE
Dを作製した場合、基板のキャリヤ濃度が低いと電極と
結晶間の接触抵抗と基板のバルク抵抗が上昇し、LED
に定格電流を流すために必要な順方向電圧(VF)の値
が大きくなるためLEDの寿命特性が低下するという性
質がある。反対に、GaP単結晶基板のキャリヤ濃度が
高いとLEDのVFは低減できるが、基板による発光の
吸収によりLEDの輝度が低下する。
度に関してLEDの輝度とVFにはトレードオフの関係
がある。従って、基板のキャリヤ濃度には最適範囲があ
り、従来一般にはキャリア濃度が1〜20×1017cm
-3程度のGaP単結晶基板が、GaP緑色系LED用エ
ピタキシャル基板の作製に利用されていた。
費電力低減の要求が高まっており、高輝度であり、かつ
低VFのLEDが求められている。前記のように、Ga
P単結晶基板のキャリヤ濃度に対する輝度とVFの関係
はトレードオフにあるため、この市場要求に応じるため
にはGaP単結晶基板のキャリヤ濃度の最適範囲をLE
Dの輝度、VFの目標値に合わせて変更する必要があ
る。
限値を下げ、低VF化のためにキャリヤ濃度の下限値を
上げる必要があり、その結果として新たに求められる最
適キャリヤ濃度範囲は従来と比較して狭くなる。
度の最適範囲を狭めると、Teドープのn型GaP単結
晶インゴットからGaP単結晶基板を作製する場合、一
本のインゴットの中でキャリヤ濃度が新たな最適範囲か
らはずれてLED用の基板として使用できない領域が増
加する。そのため、一本のインゴットからの製造できる
基板の枚数が少なくなる結果、基板のコストアップにつ
ながる。
ゴットの場合は、インゴット内のキャリヤ濃度変化はT
eドープの場合と比較すると小さい。しかし、このイン
ゴットを用いてキャリヤ濃度を限定したSiドープのG
aP単結晶基板を作製し、GaPエピタキシャル層を積
層してLEDを作製してもVFがばらつくという不具合
があった。
い順方向電圧で駆動可能な緑色系発光ダイオードを作製
するために好適に用いることができるn型GaP単結晶
基板とその製造方法を提供することにある。
ドーパントとしてSiとTeが同時にドープされたn型
GaP単結晶基板において、該n型GaP単結晶基板中
のSi濃度とTe濃度の和が2×1017cm-3以上2×
101 8cm-3以下であり、かつSi濃度が2×1016c
m-3以上8×1017cm-3以下であり、かつTe濃度が
1×1017cm-3以上2×1018cm-3以下であること
を特徴とするn型GaP単結晶基板である。
板は、n型キャリヤ濃度が1.5×1017cm-3以上1
0×1017cm-3以下であることが好ましい。
晶基板は、n型キャリヤ濃度が2×1017cm-3以上8
×1017cm-3以下であることが好ましい。
P単結晶基板は、液体封止チョクラルスキー法により育
成されたn型GaP単結晶インゴットから作製されたも
のであることが好ましい。
記載のn型GaP単結晶基板を用いて作製したGaP緑
色系発光ダイオード用エピタキシャル基板である。
タキシャル基板から作製されたGaP緑色系発光ダイオ
ードである。
してSiとTeを同時にドープしてn型GaP単結晶イ
ンゴットを育成し該インゴットからn型GaP単結晶基
板を作製するn型GaP単結晶基板の製造方法におい
て、n型GaP単結晶基板中のSi濃度とTe濃度の和
を2×1017cm-3以上2×101 8cm-3以下とし、か
つSi濃度を2×1016cm-3以上8×1017cm-3以
下とし、かつTe濃度を1×1017cm-3以上2×10
18cm-3以下とするように、GaP単結晶インゴットの
原料にSiとTeを添加することを特徴とするn型Ga
P単結晶基板の製造方法である。
板のキャリヤ濃度は1.5×1017cm-3以上10×1
017cm-3以下とすることが好ましい。
晶基板のキャリヤ濃度は2×1017cm-3以上8×10
17cm-3以下とすることが好ましい。
aP単結晶基板の製造方法は、液体封止チョクラルスキ
ー法によりn型GaP単結晶インゴットを育成すること
が好ましい。
する高輝度化かつ低VF化の市場要求に応えるためのG
aP単結晶基板のキャリヤ濃度の最適範囲を、n型Ga
P単結晶基板を用いて実験的に求めたところ、最適キャ
リヤ濃度範囲は1.5×1017cm-3以上10×1017
cm-3以下、さらに好ましくは2×1017cm-3以上8
×1017cm-3以下であることがわかった。Teドープ
のGaPインゴットの場合、従来の最適キャリヤ濃度範
囲である1.0〜20×1017cm-3に対しては単結晶
領域の95%以上がその範囲に入っていたが、新たな最
適キャリヤ濃度範囲である1.5〜10×1017cm-3
を採用すると、その範囲に入るインゴットの単結晶領域
の割合(合格率)は70%に低下した。
検討しても、新たな最適キャリア濃度範囲である1.5
〜10×1017cm-3に対してTeドープのGaP単結
晶インゴットの合格率は改善できなかった。これはTe
のGaPに対する偏析係数が1より小さいので、インゴ
ット内のキャリヤ濃度が単結晶育成開始部分(以下、ト
ップ部)では低く、単結晶育成終了部分(以下ボトム
部)に向かって高くなるためである。従って、Teドー
プGaP単結晶基板のキャリヤ濃度を前記の最適範囲に
限定すると、一本のインゴット内でキャリヤ濃度の規格
をはずれる領域が大きくなり、基板収率が低下してGa
P単結晶基板のコストアップになる。
インゴットの場合、インゴット内のキャリヤ濃度はトッ
プ部からボトム部に向かって減少するが、その変化率は
Teドープのインゴットの場合よりも小さいので、新た
に定めた最適キャリヤ濃度範囲に適合した基板を単結晶
インゴットからの基板収率低下を招かずに育成すること
ができる。
基板を用いてその上にエピタキシャル層を成長し、Ga
P緑色系LEDを作製したところ、同じキャリヤ濃度の
基板を使用してもLEDのVFがばらつき、VFの規格
値を超えるものが発生した。この現象はインゴットにド
ープするSiの添加量を増量してキャリヤ濃度を前記の
実験で求めた最適値の上限付近に設定しても発生した。
さらにSi添加量を上げると作製したLEDの輝度も低
下した。
プのGaP単結晶基板におけるキャリアの移動度がイン
ゴットのトップ部からボトム部に向かって減少している
ことがわかった。結晶の抵抗率は結晶のキャリヤ濃度と
キャリアの移動度の積に反比例する。前述のようにSi
ドープGaP単結晶ではインゴット全域のキャリヤ濃度
の変化は小さいが、ボトム部側でキャリアの移動度が減
少しているために抵抗率が上昇し、この単結晶基板を使
用したエピタキシャル基板から作製したLEDのVFが
上昇したものと考えられる。
いて、キャリアの移動度がトップ部からボトム部に向か
って減少する原因は、インゴットの育成方向(トップ部
からボトム部)に向かってSiの活性化率が低下するこ
と、即ちキャリヤとして寄与しないSiがインゴットの
ボトム部側で増加することで、GaP単結晶の結晶性が
ボトム部側で悪化するためと推測される。Si添加量を
増量するとこの傾向が更に高まるため、輝度も低下する
ものと考えられる。
についても同様にボトム部側で移動度が減少している
が、減少の割合はSiドープのインゴットの場合よりも
小さく、またTeドープのGaP単結晶インゴットで
は、前述のようにボトム部側でキャリヤ濃度も同時に上
昇しているため抵抗率はあまり上昇しない。
のキャリヤ濃度をインゴットの広い領域で最適範囲に制
御し、高輝度で順方向電圧の低い発光ダイオードを作製
するためのGaP単結晶基板を収率良く製造すること
は、単独のドーパントを用いてn型GaP単結晶インゴ
ットを育成する方法では困難であると考えられる。そこ
で本発明者は、SiとTeを同時にGaP単結晶インゴ
ットの原料に添加してインゴットを育成することによ
り、前述のTeやSiを単独でドープしたGaP単結晶
基板の欠点を補償する方法について検討した。
プするTeとSiの添加量を調整して、GaP単結晶イ
ンゴットの全単結晶領域でキャリヤ濃度を最適範囲内に
納める条件を検討した。また、前述のようにTeやSi
は共に、結晶へのドープ量が増加すると結晶内での活性
化率が減少すると考えられるので、GaP単結晶のキャ
リヤ濃度のみを規定するのではVFを制御できない。そ
のためGaP単結晶基板内に実際に取り込まれたSiと
Teの濃度についても最適範囲を検討した。
晶のインゴット育成の際にドープするSiおよびTeの
添加量を検討し、n型GaP単結晶基板中のSi濃度と
Te濃度を最適化することにより本発明に至った。本発
明では、n型のドーパントとしてSiとTeが同時にド
ープされたn型GaP単結晶基板において、n型GaP
単結晶基板中のSi濃度とTe濃度の和が2×1017c
m-3以上2×101 8cm -3以下とする。
濃度の和が2×1017cm-3より小さいと、この基板を
用いて作製した前記GaP緑色系発光ダイオードのVF
が上昇するため好ましくない。また、n型GaP単結晶
基板中のSi濃度とTe濃度の和が2×101 8cm-3よ
り大きいとこの基板を用いて作製した前記GaP緑色系
発光ダイオードの輝度が低下するため好ましくない。
和が2×1017cm-3以上2×101 8cm-3以下とする
と同時に、n型GaP単結晶基板中のSi濃度を2×1
016cm-3以上8×1017cm-3以下とする。Si濃度
が2×1016cm-3より小さいと、この基板を用いて作
製した前記GaP緑色系発光ダイオードのVFが上昇す
るため好ましくない。また、Si濃度が8×1017cm
-3より大きいと、この基板を用いて作製した前記GaP
緑色系発光ダイオードの輝度が低下するため好ましくな
い。
を制御すると同時に、n型GaP単結晶基板中のTe濃
度を1×1017cm-3以上2×1018cm-3以下とす
る。Te濃度が1×1017cm-3より小さいと、この基
板を用いて作製した前記GaP緑色系発光ダイオードの
VFが上昇するため好ましくない。また、Te濃度が2
×1018cm-3以上であるより大きいと、この基板を用
いて作製した前記GaP緑色系発光ダイオードの輝度が
低下するため好ましくない。
れたn型GaP単結晶基板のキャリヤ濃度範囲を、1.
5×1017cm-3以上10×1017cm-3以下、さらに
好ましくは2×1017cm-3以上8×1017cm-3以下
に制御し、そのGaP単結晶基板を用いてGaP緑色系
発光ダイオード用エピタキシャル基板を作製することに
より、高輝度で、かつ低い順方向電圧で駆動可能なGa
P緑色系発光ダイオードを作製することが出来る。な
お、本発明においてSi濃度やTe濃度あるいはキャリ
ア濃度の測定値の有効数字は大きくて2桁程度であるた
め、3桁目は四捨五入するものとする。例えば、n型G
aP単結晶基板中のSi濃度が2×1016cm-3、Te
濃度が2×10 18cm-3の場合、Si濃度とTe濃度の
和は計算上2.02×1018cm-3となるが、この場合
3桁目は四捨五入してSi濃度とTe濃度の和は2.0
×1018cm-3とみなす。
水平式ブリッジマン法や垂直式ブリッジマン法などがあ
るが、本発明では液体封止チョクラルスキー法によりn
型GaP単結晶インゴットを育成するのが好ましい。液
体封止チョクラルスキー法を用いると、結晶性の良いG
aP単結晶インゴットを再現良く製造することができる
という利点がある。
細に説明する。
aP多結晶1000gに対してSiを100mg及びT
eを500mgの割合で添加したものを原料として、通
常の液体封止チョクラルスキー法によりn型GaP単結
晶インゴットを育成した。育成温度は約1500℃、育
成圧力は約50気圧とした。その他の引き上げ条件は、
例えば特公昭59−12640号に記載されているよう
な公知の方法を用いた。GaP単結晶インゴットの引き
上げ方位は<111>方向とした。
ンゴットの単結晶領域を通常の外周研削工程、切断工
程、研磨工程及びエッチング工程により加工し、n型G
aP単結晶基板を作製した。
て、液相エピタキシャル成長法により、図1に示した黄
緑色LED用エピタキシャル基板を以下のように作製し
た。なお、この黄緑色LED用エピタキシャル基板の作
製には、上記GaP単結晶インゴットのトップ部からボ
トム部までの間でおよそ等間隔の位置から取り出したn
型GaP単結晶基板を計8枚使用した。
常の液相エピタキシャル成長法により、n型GaPバッ
ファ層2を成長させた。このn型GaPバッファ層2は
Siドープとし、キャリヤ濃度は4×1017cm-3、層
厚は100μmとした。
た方法により、n型GaPバッファ層の上にGaPエピ
タキシャル層を成長させた。横型スライドボートの基板
ホルダーに、前記n型GaPバッファ層を成長させた前
記n型GaP単結晶基板をセットし、溶液溜には成長用
溶液となるGaメタルを所定量セットした。基板とメタ
ルを分離した状態のまま、このスライドボートをエピタ
キシャル成長炉にセットし、水素気流下で1000℃ま
で昇温し、基板ホルダーをスライドさせてn型GaPバ
ッファ層とGaメタルを接触させ、1時間保持してGa
メタルにn型GaPバッファ層の一部を飽和するまで溶
解させた。この時、溶解したn型GaPバッファ層にド
ーパントとして含まれるSiと、エピタキシャル成長炉
の反応管の石英が水素により還元されることにより発生
したSiがGaメタル中に溶け込む。
バッファ層上にSiドープn型GaPエピタキシャル層
を成長させた。次に温度を960℃に保持したまま、雰
囲気ガスを水素から所定量のアンモニアガスを添加した
アルゴンガスと水素ガスの混合ガスに切り換える。この
ようにすると、アンモニアガスがGaメタルと反応して
Gaメタル中に窒素(N)が取り込まれる。その後、9
00℃まで徐冷して、Siドープn型GaPエピタキシ
ャル層上にNドープのn型GaPエピタキシャル層を成
長させた。
気ガスに亜鉛(Zn)蒸気を供給してGa溶液中にZn
を所定量取り込ませた。再び温度を800℃まで徐冷し
てNドープのn型GaPエピタキシャル層上にZnドー
プp型GaPエピタキシャル層を成長させた。
成長させたn型GaP単結晶基板1の上に、Siドープ
のn型GaPエピタキシャル層3、Nドープのn型Ga
Pエピタキシャル層4、Znドープのp型GaPエピタ
キシャル層5を順次積層した。
後、基板ホルダーをスライドさせて成長溶液を分離し、
室温まで冷却してGaP黄緑色LED用エピタキシャル
基板を得た。このエピタキシャル基板の一部を劈開によ
り切断し、測定用断片を作製した。この断片を使ってC
V法によりGaP単結晶基板のキャリヤ濃度を測定し
た。また、SIMS法により同じ断片についてGaP単
結晶基板中のSiとTeの濃度を測定した。
黄緑色LED用エピタキシャル基板の両面をラップ加工
およびポリッシュ加工した後、p側表面にAu−Be合
金を、またn側表面にAu−Ge合金を蒸着し、通常の
フォトリソグラフィーにより電極を形成した。また、G
aP単結晶基板のVFへの影響を評価するため、この段
階で基板側(n側表面)の最近接電極間の電気抵抗(以
下、電極間抵抗(Rnn)という)を測定した。
が基板のバルク抵抗を支配するので、このRnnの測定
によりLEDのVFに対する基板の寄与が評価できる。
RnnとVFには正相関があることがわかっている。そ
のためVFを低減する際の目標値に対応するRnnの値
を定め、それと実際の基板のRnnの値と比較すること
により、基板がVFを低減するのに十分なキャリヤ濃度
とキャリアの移動度を持っているか否かを判定できる。
キシャル基板を切断、分離してGaP黄緑色LEDを得
た。このLEDについて輝度を評価した。輝度は前述の
GaP黄緑色LED用エピタキシャル基板の一枚につい
てLEDを100点抽出して測定し、その平均値を代表
値とした。
SiとTeの添加量を変更し、実験例1とSiおよびT
e濃度の異なるGaP単結晶インゴットを育成した。G
aP多結晶1kg当たりに添加するSiとTeの量は、
以下の表1のようにした。これらのGaP単結晶インゴ
ットを用いて、実験例1と同様の手順でエピタキシャル
基板の製造に用いるn型GaP単結晶基板、GaP黄緑
色LED用エピタキシャル基板、及びGaP黄緑色LE
Dを順次作製し、輝度およびRnnについて特性測定を
実施した。
単結晶基板中のSi濃度、Te濃度と、黄緑色LEDの
電極間抵抗および輝度特性の判定結果の関係を図3に示
す。図3において、実験例1で作製したLEDサンプル
の測定値は○、実験例2で作製したLEDサンプルの測
定値は□と■、実験例3で作製したLEDサンプルの測
定値は△と▲でプロットしてある。○、□、△のマーク
は電極間抵抗、輝度ともに目標レベルを満足している点
を示しており、実験例2の■のマークは輝度が目標レベ
ルを下回るサンプル、実験例3の▲のマークは電極間抵
抗が目標値を上回るサンプルを示している。また、図中
にはSiとTe濃度の和が一定の点を結んだ曲線を補助
線として5本、挿入してある。図3でA、B、Cの添え
字のある測定点については後述の図4、5で説明する。
プルは全ての点が電極間抵抗、輝度のいずれも目標レベ
ルを満足していることがわかる。即ち、実験例1の条件
で作製したGaP単結晶インゴットのどの領域から作製
したGaP単結晶基板を使用しても、輝度および電極間
抵抗が目標特性を満たすGaP黄緑色LEDを作製する
ことができることがわかる。
製されたインゴットからサンプリングした基板を使用し
て黄緑色LEDを作製した場合、同じインゴットを使用
しても目標とする輝度および電極間抵抗に到達できるL
EDサンプルと到達できないサンプルがあることがわか
る。また図3より、Si濃度とTe濃度の和が2×10
17cm-3以上2×101 8cm-3以下であり、かつSi濃
度が2×1016cm-3以上8×1017cm-3以下であ
り、かつTe濃度が1×1017cm-3以上2×10 18c
m-3以下のGaP単結晶基板を使用すると電極間抵抗、
輝度特性がいずれも目標レベルを満足することがわか
る。
得られたLEDの輝度の関係を図4に示す。この図のマ
ークは図3と同じである。図4にA、Bの添え字のある
点(■のマーク)は図3のA、Bと同じLEDサンプル
の測定値である。これら2点のキャリヤ濃度は8〜9×
1017cm-3であるが、図3に示したようにSi濃度が
8×1017cm-3以上であるために輝度が低下してい
る。従って図4より、輝度についてはキャリヤ濃度が1
0×1017cm-3以下、より好ましくは8×1017cm
-3以下であれば目標レベルを達成できることがわかる。
電極間抵抗の関係を図5に示す。この図のマークも図3
と同じである。図5にCの添え字のある点(▲のマー
ク)は図3のCと同じLEDサンプルの測定値である。
このLEDサンプルのキャリヤ濃度は1.8×1017c
m-3であるが、図3に示したようにSi濃度が2×10
16cm-3以下であるために電極間抵抗が上昇している。
従って図5より、電極間抵抗についてはキャリヤ濃度が
1.5×1017cm-3以上、より好ましくは2×1017
cm-3以上であれば目標レベルを達成できることがわか
る。
抗(すなわち電極間抵抗に対応するVF)の目標レベル
を同時に満足するためには、エピタキシャル成長に使用
するn型GaP単結晶基板はn型のドーパントとしてS
iとTeが同時にドープされており、前記n型GaP単
結晶基板中のSi濃度とTe濃度の和が2×1017cm
-3以上2×101 8cm-3以下であり、かつ前記n型Ga
P単結晶基板中のSi濃度が2×1016cm-3以上8×
1017cm-3以下であり、かつ前記n型GaP単結晶基
板中のTe濃度が1×1017cm-3以上2×1018cm
-3以下であるとよい。
ヤ濃度が1.5×1017cm-3以上10×1017cm-3
以下、より好ましくは2×1017cm-3以上8×1017
cm-3以下であると、輝度と電極間抵抗の特性に優れた
GaP黄緑色発光ダイオードを作製することができる。
条件でGaP単結晶インゴットを育成すると、インゴッ
トの全領域から上記のSi濃度、Te濃度およびキャリ
ア濃度の最適条件が満たされたGaP単結晶基板を作製
することができ、キャリヤ濃度の最適範囲を狭めてもG
aP単結晶インゴットからの基板の合格率は低下しない
ことがわかる。なお、このようなSiとTeの最適添加
条件は、液体封止チョクラルスキー法等によるGaP単
結晶インゴットの育成条件に合わせて、実験により決め
ることができる。
同様の実験を行い、GaP単結晶基板のSi濃度、Te
濃度およびキャリア濃度の最適値についてGaP黄緑色
LEDと同様の結果が得られた。
系発光ダイオードの高輝度化および低VF化の要求に対
応するために、n型GaP単結晶基板のキャリヤ濃度の
最適範囲を狭めても、基板収率を低下させないGaP単
結晶インゴットを作製することができる。また、そのイ
ンゴットからGaP緑色系LEDの製造に好適に用いる
ことができるGaP単結晶基板を製造することができ
る。
緑色系発光ダイオード用エピタキシャル基板を作製する
と、GaP単結晶基板に起因するVFのばらつきや輝度
低下が発生しない高輝度でかつVFの低減された発光ダ
イオードを作製することができる。
ンプルについて、GaP単結晶基板中のSi濃度及びT
e濃度と輝度、電極間抵抗の判定結果の関係を示す図
結晶基板のキャリヤ濃度と輝度の関係を示す図
結晶基板のキャリヤ濃度と電極間抵抗の関係を示す図
Claims (10)
- 【請求項1】n型のドーパントとしてSiとTeが同時
にドープされたn型GaP単結晶基板において、該n型
GaP単結晶基板中のSi濃度とTe濃度の和が2×1
017cm-3以上2×101 8cm-3以下であり、かつSi
濃度が2×1016cm-3以上8×1017cm-3以下であ
り、かつTe濃度が1×1017cm-3以上2×1018c
m-3以下であることを特徴とするn型GaP単結晶基
板。 - 【請求項2】n型キャリヤ濃度が1.5×1017cm-3
以上10×1017cm-3以下であることを特徴とする請
求項1に記載のn型GaP単結晶基板。 - 【請求項3】n型キャリヤ濃度が2×1017cm-3以上
8×1017cm-3以下であることを特徴とする請求項1
に記載のn型GaP単結晶基板。 - 【請求項4】n型GaP単結晶基板が液体封止チョクラ
ルスキー法により育成されたn型GaP単結晶インゴッ
トから作製されたものであることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項に記載のn型GaP単結晶基板。 - 【請求項5】請求項1乃至4のいずれか1項に記載のn
型GaP単結晶基板を用いて作製したGaP緑色系発光
ダイオード用エピタキシャル基板。 - 【請求項6】請求項5に記載のエピタキシャル基板から
作製されたGaP緑色系発光ダイオード。 - 【請求項7】n型のドーパントとしてSiとTeを同時
にドープしてn型GaP単結晶インゴットを育成し、該
インゴットからn型GaP単結晶基板を作製するn型G
aP単結晶基板の製造方法において、n型GaP単結晶
基板中のSi濃度とTe濃度の和を2×1017cm-3以
上2×101 8cm-3以下とし、かつSi濃度を2×10
16cm-3以上8×1017cm-3以下とし、かつTe濃度
を1×10 17cm-3以上2×1018cm-3以下とするよ
うに、GaP単結晶インゴットの原料にSiとTeを添
加することを特徴とするn型GaP単結晶基板の製造方
法。 - 【請求項8】n型GaP単結晶基板のキャリヤ濃度を
1.5×1017cm-3以上10×1017cm-3以下とす
ることを特徴とする請求項7に記載のn型GaP単結晶
基板の製造方法。 - 【請求項9】n型GaP単結晶基板のキャリヤ濃度を2
×1017cm-3以上8×1017cm-3以下とすることを
特徴とする請求項7に記載のn型GaP単結晶基板の製
造方法。 - 【請求項10】液体封止チョクラルスキー法によりn型
GaP単結晶インゴットを育成することを特徴とする請
求項7乃至9のいずれか1項に記載のn型GaP単結晶
基板の製造方法。
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JP2001074304A JP3797124B2 (ja) | 2001-03-15 | 2001-03-15 | n型GaP単結晶基板、その製造方法、GaP緑色系発光ダイオード用エピタキシャル基板およびGaP緑色系発光ダイオード |
TW91104551A TW578316B (en) | 2001-03-15 | 2002-03-12 | An n type GaP single crystal substrate and its manufacturing method |
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JP2001074304A JP3797124B2 (ja) | 2001-03-15 | 2001-03-15 | n型GaP単結晶基板、その製造方法、GaP緑色系発光ダイオード用エピタキシャル基板およびGaP緑色系発光ダイオード |
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JP2002280605A true JP2002280605A (ja) | 2002-09-27 |
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ID=18931595
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JP2001074304A Expired - Lifetime JP3797124B2 (ja) | 2001-03-15 | 2001-03-15 | n型GaP単結晶基板、その製造方法、GaP緑色系発光ダイオード用エピタキシャル基板およびGaP緑色系発光ダイオード |
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TW (1) | TW578316B (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7351241B2 (ja) | 2020-03-02 | 2023-09-27 | 信越半導体株式会社 | 化合物半導体エピタキシャルウェーハ及びその製造方法 |
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2001
- 2001-03-15 JP JP2001074304A patent/JP3797124B2/ja not_active Expired - Lifetime
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2002
- 2002-03-12 TW TW91104551A patent/TW578316B/zh not_active IP Right Cessation
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