JP2002273764A - 樹脂成形品の分子配向除去方法と装置 - Google Patents

樹脂成形品の分子配向除去方法と装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】樹脂成形品において加熱による残留分子配向の
除去を短時間で行い、高い処理効率で製品の表面平坦度
を向上させる。 【解決手段】成形品金型1の一部に少なくとも1個の赤
外線透過窓3を形成し、該透過窓3にその表面が対面す
るごとくに樹脂成形品Pを金型1内に挿入してその姿勢
を固定し、該透過窓を指向するごとくに少なくとも1個
の赤外線照射源を配置して、該照射源から透過窓を介し
て成形品の表面に赤外線を照射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は樹脂成形品の分子配向
除去方法と装置に関するものであり、より詳しくは高い
寸法精度が要求される電子デバイス、光学部品、マイク
ロマシン部品などの精密部品として用いられる樹脂成形
品の分子配向除去のための加熱処理の改良に関するもの
である。
【0002】
【従来技術】コンピューターのCPUと直接接触するベ
ースハウジングなどの電子デバイスや光電送のデバイス
などに用いられる樹脂成形品には一般に非常に高い寸法
精度が要求される。これらの樹脂成形品は通常高融点の
熱可塑性樹脂の射出成形により製造される。
【0003】この射出成形に際しては、高温・高粘度の
熔融樹脂を金型内に高圧射出して急冷するが、このとき
に成形品の表面付近に表面固化層という分子配向が不可
避的に形成されて製品中に残留する。このように分子配
向が製品中に残留すると残留歪み、複屈折および反りな
どが発生して、特に上記のように高精度が要求される製
品の場合には望ましくない。
【0004】なぜならばそのような電子デバイス製品に
あっては、成形後にコンタクトピンなどを圧入するが故
に反りが増大されるのである。またCPUの実装過程で
は、はんだ溶着のために約210℃まで再加熱する熱処
理が成形品に施される。この際に残留応力が解放されて
反りが増大する。
【0005】したがって成形品を最終的に電子デバイス
に組み込む前になんらかの方法で表面付近における残留
分子配向の影響を矯正してやる必要がある。
【0006】従来はこのために、熱処理を施す前に成形
品を金型内に封入して金型に組み込んだヒーターで加熱
している。すなわち加熱によるある程度の可塑化により
発現している反りを矯正してやるのである。つまり成形
品を矯正用金型に封入し、ヒーターにより加熱し、型締
め保持し、冷却してから成形品を金型から取り出すもの
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのような従来
のヒーター加熱方式にあっては、同じ金型内で加熱、冷
却するが故に、処理時間を多く要すると言う大きな問題
がある。
【0008】すなわち加熱から冷却への過程において、
先に加えた熱量を排出して、金型と成形品との間の相対
的温度勾配を逆転させる必要があり、これに多大な時間
を要し、処理効率が大きく損なわれるのである。
【0009】かかる従来技術の現状に鑑みてこの発明の
目的は、樹脂成形品において残留分子配向の除去を短時
間で行い、高い処理効率で製品の表面平坦度を向上させ
ることならびに内部の残留歪みを除去することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】このためこの発明におい
ては、成形品金型の一部に少なくとも1個の赤外線透過
窓を形成し、該透過窓にその表面が対面するごとくに樹
脂成形品を金型内に挿入してその姿勢を固定し、該透過
窓を指向するごとくに少なくとも1個の赤外線照射源を
配置して、該照射源から透過窓を介して成形品の表面に
赤外線を照射することを要旨とする。
【0011】
【作用】図3に示すのは加熱による成形品内部での温度
分布を示すものである。図中実線で示すのがこの発明の
場合であって、図中左側が赤外線透過窓であり、右側が
成形品である。図示のように、成形品の表面から僅か内
部に入った領域、すなわち分子配向ひいては表面固化層
の存在する部位において赤外線輻射加熱により温度が上
昇している。この温度上昇により分子配向の緩和が行わ
れるのである。
【0012】図3中点線で示すのが従来のヒーター加熱
の場合であって、図中左側が加熱ヒーターを付設した金
属板であり、右側が成形品である。図示のように成形品
内の温度分布は表面から降下し、この発明のように表面
近傍の内部での温度の上昇は認められない。
【0013】
【実施例】この発明の概念を図4に示す。赤外線透過窓
を具えた金型に封入された成形品に外部の赤外線源から
赤外線輻射加熱が行われる。この輻射加熱には片面赤外
線照射と両面赤外線照射の2方式がある。
【0014】片面赤外線照射の実施例を図1に示す。金
型1内に樹脂成形品Pを挿入して姿勢を固定し、その対
象表面(例えば成形品の電子デバイス搭載面)に赤外線
透過窓3を密着した状態で、該透過窓3を指向して図示
しない赤外線照射源から矢印で示すように赤外線を照射
する。赤外線照射は対象表面の中心が一定温度に到達す
るまで行う。なおより具体的な構成を図6に示す。
【0015】両面赤外線照射の実施例を図2に示す。金
型1内に樹脂成形品Pを挿入して姿勢を固定し、その対
象両表面(例えば成形品の電子デバイス搭載面)に赤外
線透過窓3を密着した状態で、該透過窓3を指向して図
示しない赤外線照射源から矢印で示すように赤外線を照
射する。前記の片面照射の場合に比べて、表裏の温度差
がないこと、および両面から照射するため成形品の温度
上昇が早いという利点があり。なおより具体的な構成を
図7に示す。
【0016】以下種々の実験例を説明するに当たり、使
用材料や使用赤外線について具体的な例を挙げる。成形
品の使用材料としては液晶ポリマーを用い、赤外線分光
光度計により光学特性を確認した。材料の透過スペクト
ルを図5に示す。図から明らかなようにこの材料は近赤
外線から遠赤外線に至る帯域において全んど透過が見ら
れない、すなわち吸収がよい。したがって全んどの赤外
線源を使用することができるので、安価で高出力が得ら
れる近赤外線源である赤外線ランプが用いられた。
【0017】また赤外線透過窓には近赤外線領域での透
過特性に秀れたPYREX(登録商標)ガラスを用い
た。この透過スペクトルも図5に示してある。
【0018】実験は基本的に「反り測定 ⇒照射加熱⇒
反り測定⇒リフロー⇒反り測定」の順序で行われた。始
めはなにも手を加えられていない状態で成形品の反りを
測定するため、20個の成形品を無作為に選んでその平
均値を採って、成形品の初期値とした。リフローは約2
20℃で行った。
【0019】反り測定に当たっては、成形品を測定台上
に固定し、その表面上の厚肉部においてそれぞれ2本の
対角線(X、Y)を5mm間隔で9点、それぞれ測定台
ごと成形品をスライドさせて反り量(Z)を測定した。
【0020】ついで成形品を金型に配置し、成形品の表
面最高温度が所定値に達するまで赤外線輻射加熱を行っ
た。成形品の表面最大温度としては250℃、300℃
および330℃を選び、ボルト締めによる荷重は1.5
kgf、11kgfおよび40kgfを選んだ。片面照
射の場合には80kgfの荷重も加えた。
【0021】図8に赤外線輻射加熱を行っていない成形
品についてのリフロー前後における反り測定の結果を示
す。横軸は前記の対角線の位置(mm)であり、縦軸は
成形品の反り量Z(μm)である。図から明らかなよう
にリフロー処理により反りが3倍以上に増えている。こ
れらリフロー処理中に加えられた熱により射出成形時に
生じた内部の残留応力が解放される結果と考えられる。
【0022】まず片面赤外線照射の場合について考察す
る。成形品から9cm離れた位置から出力を最大にして
赤外線照射したときの成形品の経時温度上昇を図9に示
す。またその測定点を図10に示す。
【0023】成形品のCPU搭載面中心の温度が250
℃に達したときの反り状態を図11に、300℃に達し
たときの反り状態を図12に、330℃に達したときの
反り状態を図13に、それぞれ示す。
【0024】これらの図から明らかなように、250℃
のときには赤外線照射後に成形品の反り量は小さくなる
が、リフローすると反りが増大し、赤外線照射なしの状
態でリフローした場合と同じ反り量となった。これは2
50℃の赤外線照射では残留応力が除去されなかった故
に、リフロー後に反りが元に戻ったものと考えられる。
【0025】これに対して300℃での赤外線照射で
は、リフロー後の反りの戻りが少なく、さらに330℃
まで赤外線照射温度を上げると、反りが小さくなってい
る。これはこの温度が樹脂の溶融温度に近づいているが
故に、成形品内部の残留応力が除去されたものと考えら
れる。すなわち一層赤外線照射の効果が現れていること
が観察される。
【0026】つぎに成形品のCPU搭載面とはんだボー
ル搭載面の双方に赤外線照射を行った。赤外線ランプは
成形品から12cmとし、ハロゲンランプを1.5cm
として、出力を最大にして照射した。このときの成形品
の経時温度変化を図14に示す。測定点は片面照射の場
合と同様に4点とした。型締力は10kgfとした。
【0027】両面照射の場合には、照射距離を調節する
ことによりそれぞれの面での照射差をなくすることによ
り、両面の温度差は小さく、また片面照射の場合に比べ
て温度上昇を早くすることができる。
【0028】両面赤外線照射の場合において、電子デバ
イス搭載面の中心温度が250℃での反りの状態の一例
を図15に、300℃での状態の一例を図16に、また
330℃での状態の一例を図17に、それぞれ示す。
【0029】いずれの照射条件の場合でも照射後の反り
量はほぼ同じであった。これは成形品の変形温度が25
0℃より低い故と考えられる。しかし低い温度での照射
では照射後のリフローにおける反りの戻りが大きくなっ
ている。表面温度を300℃、330℃と上げて樹脂の
溶融温度に近づけてゆくと、残留応力が除去されて、リ
フロー後も照射後の形状を保っていることが分かる。
【0030】またX方向に着目すると、いずれの照射条
件においても照射後とリフロー後とで反りが変わってい
ないことが分かる。これは、照射を施さない状態の反り
に対して照射により逆向きの反りを与えたが故に、リフ
ロー後も変形しなかったものと考えられる。
【0031】
【発明の効果】一般にプラスチック材料は赤外線に対し
て不透明で投射エネルギーをよく吸収するので、効率よ
く加熱が行われる。金型自体は熱を発生しないので、成
形品と金型との間の温度勾配は常に冷却する方向にあ
る。故に従来のヒーター加熱において温度勾配逆転に要
した時間が必要なくなり、大幅な処理時間短縮が可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】成形品の片面に赤外線を照射するこの発明の装
置の構成を示す模型図である。
【図2】成形品の両面に赤外線を照射するこの発明の装
置の構成を示す模型図である。
【図3】加熱時の成形品内での温度勾配を示す模型図で
ある。
【図4】この発明による赤外線照射加熱の概念を示す説
明図である。
【図5】使用した成形品材料の透過スペクトル図であ
る。
【図6】図1の装置のより具体的な構成を示す側面図で
ある。
【図7】図2の装置のより具体的な構成を示す側面図で
ある。
【図8】赤外線輻射加熱を行っていない成形品について
のリフロー前後における反り測定の結果を示すグラフで
ある。
【図9】片面照射時の成形品の経時温度変化を示すグラ
フ図である。
【図10】図9の場合の側定点を示す平面図である。
【図11】片面赤外線照射で250℃まで加熱した場合
の成形品反り量を示すグラフである。
【図12】片面赤外線照射で300℃まで加熱した場合
の成形品反り量を示すグラフである。
【図13】片面赤外線照射で330℃まで加熱した場合
の成形品反り量を示すグラフである。
【図14】両面照射時の成形品の経時温度変化を示すグ
ラフである。
【図15】両面赤外線照射で250℃まで加熱した場合
の反り量を示すグラフである。
【図16】両面赤外線照射で300℃まで加熱した場合
の反り量を示すグラフである。
【図17】両面赤外線照射で330℃まで加熱した場合
の反り量を示すグラフである。
【符号の説明】
1 金型 3 赤外線透過窓 P 樹脂成形品
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F201 AJ06 AK04 AM32 AP05 BA07 BC01 BC02 BC12 BC15 BR01 BR12 BR34 4F202 CA11 CB01 CK25 CL42 CN01 CN24

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一部に少なくとも1個の赤外線透過窓を
    形成した成形品金型を用意し、該透過窓にその表面が対
    面するごとくに樹脂成形品を金型内に挿入してその姿勢
    を固定し、該透過窓を介して成形品の表面に赤外線を照
    射することを特徴とする樹脂成形品の分子配向除去方
    法。
  2. 【請求項2】 樹脂成形品の片面に赤外線を照射するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 樹脂成形品の両面に赤外線を照射するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 被照射面中心が成形品材料の変形温度以
    上となる温度まで赤外線照射を行うことを特徴とする請
    求項1〜3のいずれかひとつに記載の方法。
  5. 【請求項5】 挿入されるべき成形品の表面に対応する
    部位に形成された少なくとも1個の赤外線透過材料から
    なる透過窓を有した金型と該透過窓を指向する少なくと
    も1個の赤外線照射源を有することを特徴とする樹脂成
    形品の分子配向除去装置。
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