JP3879143B2 - レンズ素材の製造方法と成形レンズの製造方法およびレンズ素材の製造装置 - Google Patents

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  • Re-Forming, After-Treatment, Cutting And Transporting Of Glass Products (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学機器に使用される光学部品の作成に関するものであり、光ディスク装置のピックアップ光学系やカメラレンズに使用されるガラス成形レンズのレンズ素材の製造方法および成形レンズの製造方法と前記レンズ素材の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来ガラスレンズの成形方法として、例えば特公昭60ー127122号公報で提案されているごとく、所定温度に加熱したレンズ素材を一対の成形型で押圧成形する場合、特に、凸レンズを成形する場合のレンズ素材としては、成形金型が有するレンズ成形面形状の曲率よりも小さい曲率を有する、例えば半球状や、完成レンズとほぼ同一形状に造形されたレンズ素材を供給するほうが望ましい。
【0003】
しかし上述したレンズ素材は一般的に機械加工、化学的な加工法、さらに熱的な加工法によって造形される。上述した形状と表面粗さの両方を満足する方法として例えば機械加工によるポリッシング法や、化学加工によるエッチング等で行われる。光ディスク装置等のピックアップ光学系に用いられる短焦点でかつ小形レンズの場合、レンズ素材も曲率半径が小さい関係で、同時に多数個の加工が困難であり、個々の寸法バラツキも大きく、また加工時間がかかる等、コスト高となり産業上好ましくない。またエッチング法では比較的、短時間で加工は可能であるが、エッチング液の濃度、温度、時間等、加工条件の管理が難しいなどの課題を有していた。
【0004】
上述した課題対策として熱的な加工法が開示されている。例えば特公平7ー12940号公報での提案では所定の体積に加工研磨されたガラスを受け皿に載置し、これら全体を窒素ガス雰囲気中の電気炉に投入し、ガラス物性のもつ表面張力と重力の範囲内で所望の疑似曲率の形状を得るように連続的に熱加工するものである。しかし、この方法ではガラス材料全体が加熱されるため加工後の形状を選択する巾が少ないこと、加工するガラス材料よりも受け皿の熱膨張係数が小さくなければならない制約があること、受け皿の酸化対策として窒素ガス中での処理が必要なこと、粘度の温度依存性が敏感なガラス材料では加工が困難なこと、また電気炉中での処理のため多くの電力を必要としエネルギー対策上等、数多くの課題を有していた。
【0005】
一方、成形レンズの高精度化と低価格化といった相反する課題を解決するための提案が数多くなされている。特開平5ー221664号公報では円柱状のガラス素材を用いてレンズ成形する方法が開示されている。その方法とは図7に示すように一対の上下型231、232とで構成される金型にセットされた円柱状からなるレンズ素材235の全体を加熱しガラス素材の変形が可能な温度で複数回の加圧と減圧とを断続的に行う。その理由はガラス素材235と上下型231、232とに存在する密閉空間236、237のガス抜きをおこない良好な転写性を得ようとするものである。しかしガス抜きのために成形時間の多くを要し、成形タクトを短縮することが難しく、また成形中にレンズ素材のエッジがチッピングし、成形金型を損傷してレンズ外観も損なうといった課題を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はレンズ成形中にレンズ素材のエッジがチッピングして成形金型を損傷することを防止し、またレンズ素材と成形金型との間の密閉空間の発生を小さくしてガス抜き工程を不要とすることができるレンズ素材の製造方法及びその製造装置の提供により、レンズ成形時間の短縮と成形レンズの量産性を向上するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のレンズ素材の製造方法は、ガラス素材の一方の鏡面部を冷却しつつ、他方の鏡面部に、加熱板を近接させて熱軟化により疑似曲率を形成するもので、この熱加工されたレンズ素材を用いることでレンズ成形における性能安定性と成形時間の短縮を大幅に改善して歩留まり向上を達成する。さらにレンズ素材の量産性に優れた装置を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の熱加工法は図1の正断面図に示すような構成である。まず両端面を鏡面研磨し体積管理され、通常行われるレンズの洗浄方法できれいに洗浄された円柱形状のガラス素材11を受け皿12上に載置する。受け皿は冷却板13と接しており受け皿上のガラス素材の下面は間接的に冷却されている。鏡面研磨された面は最終的に成形レンズの光学面に相当するものである。ガラス素材11の上方には所定の間隙tを設けて、それ自身が発熱する加熱板14が配置されている。加熱板として平板状のセラミックスヒータを用いた。上記の状態で加熱板に通電し所定の温度まで加熱する。加熱板の表面温度を放射温度計で測定し850℃で保持した。加熱板とガラス素材との間隙tは軟化して加工されるにしたがってガラス素材に盛り上がりが起こり加熱板との接触を防止するため2mmに設定した。
【0009】
また冷却板には15℃の冷却水を2リットル/分の流量で流した。ガラス素材11には硼珪酸ガラス(屈伏点:549℃、ガラス転移点:501℃)を用い、成形するレンズ形状の関係から外径5.7mm、高さ8.42mmとした。載置したガラス素材とともに受け皿を加熱板の下方にセットして後、20秒前後からガラス素材のエッジ部分から徐々に軟化し始め、時間と共にその加工部分は球状化されレンズ素材となる。図2は加工されたレンズ素材21を示し、(A),(B),(C)は加工時間と共に変化する形状状態を示す。加工されたレンズ素材の冷却面側はいずれも原形寸法を維持されていた。(B)においては所望するレンズ素材として最適な形状に加工されており、形状測定したところ疑似曲率半径で約4.5mmR、高さ9mmのものを得ることができた。また図2に示す(A)および(C)の形状において、前者は加工不足であり所望するレンズ形状の成形において不向きであったが、エッジ部分は滑らかな面取りがされていた。後者は加工部の外径が大きくなり後述する胴型内に入らないため使用できなかったが、ガラス素材の外径をあらかじめ小さくすることで疑似曲率半径も小さく胴型内に収納できるレンズ素材を加工することが説明しない実験で確認された。
【0010】
本実施例では平面を有したガラス素材と平面形状の加熱板を使用したが、加熱板の形状を工夫する、すなわちガラス素材に積極的に熱分布を加えることで局部的な加工を施すことができる。
【0011】
(実施の形態2)
図3は熱加工法の実施の形態2を示す正断面図であり、ガラス素材31、受け皿32、冷却板33は符号は異なるが実施の形態1と同様である。ガラス素材の上方には集熱器34(サセプタ)がガラス素材31の上面と間隙tを設けて配置されている。さらにサセプタの上方には所定の焦点距離を有し、近赤外線を照射する出力750wのハロゲンランプ35およびリフレクター36が配置されている。サセプタには赤外線の吸収が良好な黒色セラミックスである1mm厚の窒化珪素を用いた。ハロゲンランプを電流制御しながらサセプタの表面温度が850℃になるように保持した。近赤外線をサセプタ近傍に集光させると、その吸収特性の良さから高温に発熱する。このサセプタを熱源として、該サセプタ近傍にガラス素材を置くとサセプタからの輻射熱によってガラスの軟化が始まり、やがては流動するくらいの温度に達する。したがってサセプタ温度は加工するガラス素材の熱特性によって最適温度に保持するのが効率的である。
【0012】
実施の形態1と同様の手順で熱加工したところ、30秒程度から軟化し始め45〜50秒で図2(B)に示すものと同様のレンズ素材21を得ることができ同様の効果を確認することができた。
【0013】
(実施の形態3)
実施の形態1および2で得られたレンズ素材21を図4に示す上型41、下型42、胴型43からなる光ディスク装置のピックアップ光学系に用いる検出レンズの金型内にセットし、これら全体を590℃に加熱して後、押圧力を180kgfとしてレンズ成形を行ない冷却した後、図5に示す成形レンズ51(検出レンズ)を金型内より取り出した。熱加工を行うまえにガラス素材は洗浄されているので成形前には行わない。成形されたレンズをフィゾー型干渉計(He-Neレーサ゛ー)で測定したところ0.07λrmsの波面収差であり検出系のレンズとしては充分な性能を安定して得ることができた。また成形に要する時間は図7に示した従来例のようなレンズ素材を用いたものに較べ50%以上短縮することができた。その理由は、従来例では密閉空間のガス抜きを行うために多くの時間を要するからである。また成形されたレンズは温度と圧力条件によってバリが発生するのに対し、本発明におけるレンズ素材では下型42の曲率半径3.4Rに対してレンズ素材の疑似曲率半径が4.5Rであるにもかかわらずガス抜きの量が少ないため成形時間を短縮することが確認された。バリの発生も皆無となり、疑似曲率を所定に制御することで、バリが発生する箇所の形状をも精密に制御できることも併せて確認した。
【0014】
成形されたレンズ51は外径6mm、長さ約8.5mmでありロッド状をしており、レンズの外径と厚みの比率が一般的なレンズとは逆である。レンズ成形において本実施の形態のような特殊な形状のレンズではレンズ素材の形状がレンズ形状に近似していなければ胴型内にレンズ素材を収納できない理由から成形は困難である。レンズ素材の寸法を実施の形態1、2のように決定した理由は、外径寸法をより小さくすれば熱加工される疑似曲率半径は成形型の曲率半径よりも小さくでき、成形型との間に密閉空間を存在させないが、成型時に胴型とのクリアランスの大きさから生じる偏芯およびバリなどの問題が残るからである。本実施例では成形レンズがメニス形状のため片面のみに熱加工して残りの面は平面である。
【0015】
(実施の形態4)
本実施の形態は上述した実施の形態1および2における成形レンズに用いるレンズ素材の製造装置に関するものである。図6はその構成を示す。平面が精度良く研磨された冷却板121の四方側面には搬送のためのシリンダー取り付け板122が取り付けられている。また冷却板121の内部には冷却回路123が設けられており冷却水の入り口124、出口125と連接されており、冷却水は別途チラー(図示せず)で温度制御されている。シリンダー取り付け板122には圧縮空気を駆動源とした搬送シリンダ126が四方側面に取り付けられている。冷却板121の上面にはガイドブロック127および128が固定され、かつ搬送パレット129がスライド可能なクリアランスで平行に取り付けられている。セラミックス製からなる平板状の加熱板131は断熱材130を介してガイドブロック127、128上に載置されている。加熱板131は図示しない温度制御盤でその表面が850℃になるように制御されている。また加熱板の保温と雰囲気の安定性を得るため加熱板の上方には保温カバー132がガイドブロックに固定されている。冷却板上に図示した記号A、B、C、D、Eはそれぞれ投入ステージ133、加熱ステージ143、冷却ステージ134、パレットの交換ステージ135、待機ステージ136を示している。図中において熱加工を完了したレンズ素材137は搬送パレット129の段部に複数個が整列配置されているものである。
【0016】
次に本実施の形態の動きについて説明する。まず複数個のガラス素材138を搬送パレット129にセットし、待機ステージ136に載置する。載置された搬送パレットをフォトセンサ139が感知した後、待機ステージから投入ステージ133までは搬送シリンダ126によって移送されシリンダは後退する。
【0017】
搬送パレット129には両端面が鏡面研磨され、かつ成形レンズに等しい体積を有するガラス素材138は硼珪酸ガラス(屈服点:549℃、ガラス転移点:501℃)からなり、その寸法は外径5.7mm,高さ8.42mmのものを用いた。投入ステージ133にはフォトセンサ140が感知し、直ちに搬送シリンダ126で加熱板131で構成された加熱ステージ143に投入されシリンダは後退する。加熱中を含み、各ステージの搬送中においてガラス素材138の片側端面は搬送パレット129を介して冷却板121より間接的に冷却されたまま、もう一方の端面は加熱ステージ143の加熱板131によって急速に加熱され軟化状態となる。本実施の形態では3分間加熱した後、投入したシリンダによって加熱ステージから排出され冷却ステージ134まで移送して、停止したままでレンズ素材137を冷却する。次にパレットの交換ステージ135まで移送され一定時間(3分以内)停止して、さらに冷却された後、ガラス素材がセットされたパレットと交換した後、待機ステージ136まで搬送され一連の動作を完了する。
【0018】
量産する場合には一連の動作を連続的に行えばよい。一連の動作の制御方法については詳しく述べなかったがシリンダとセンサーとのやりとりは通常のシーケンサーを用いれば行うことができる。またガラス素材を加熱ステージに一定時間だけ保持し搬送手段により間欠的搬送を行ったが、一定速度で連続送りすることも可能である。
【0019】
さらに、本実施の形態ではガラス素材の片側端面のみを熱加工したが、必要によって他方の端面を同じ要領で加工すればよい。またガラス素材に硼珪酸ガラスを用いたが、ガラスの熱特性と加熱温度、加熱板とガラス素材との距離、加熱時間等所望の形状が得られる最適条件で加工すればよい。また加工装置は、ガラス素材の一方を熱的に軟化させて疑似曲率を形成し、他方は冷却する条件が満足されれば大気中において問題なく熱加工が成し得るものであり、パレット形状、搬送手段、装置の構成などは任意に選択すればよいものである。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明は、所望するレンズ形状に近似する形状のレンズ素材を短時間で、かつ大気中の熱加工により安定して行えるようにし、安価なものを実現した。また、このレンズ素材を用いたレンズ成形では成形タクトを著しく短縮し性能の安定性を実現し、かつ、成形中に発生していたチッピングを皆無にして成形レンズの外観歩留まりの向上を実現した。さらに量産性よく供給でき設備コストの安価な熱加工装置を実現したもので産業上利用価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1における熱加工法を説明する正面図
【図2】 実施の形態1及び2で得られたレンズ素材を説明する正面図
【図3】 実施の形態2における熱加工法を説明する正面図
【図4】 実施の形態1及び2で得られたレンズ素材を用いてレンズ成形方法を説明する断面図
【図5】 成形された成形レンズの断面図
【図6】 実施の形態4におけるレンズ素材の製造装置を示す上面図及び側面図
【図7】 従来例の成形を説明する断面図
【符号の説明】
11、31、138 ガラス素材
14、131 加熱板
13、33、121 冷却板
21、137 レンズ素材
12、32 受け皿
41 上型
42 下型
43 胴型
51 成形レンズ
129 搬送パレット
123 冷却回路
126 搬送シリンダ
130 断熱材
139、140、141、142 センサー

Claims (4)

  1. レンズ光学面に相当する両面が鏡面であるガラス素材を準備する工程、前記一方の鏡面部を冷却しつつ、前記他方の鏡面部に加熱板を近接させ、その他方の鏡面部を熱軟化して疑似曲率を形成する工程とが具備されたことを特徴とするレンズ素材の製造方法。
  2. 前記加熱板として自己発熱が可能なヒータもしくは赤外線を集光させた集熱器を用いることを特徴とする請求項1記載のレンズ素材の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の製造方法により製造されたレンズ素材を上下型と胴型とで構成される金型内に投入する工程、該金型全体を加熱する工程、前記レンズ素材を加圧、変形、冷却してなることを特徴とする成形レンズの製造方法。
  4. 待機、投入、加熱、冷却、交換の各ステージを備えた冷却板からなる冷却手段と、レンズ光学面に相当する両面が鏡面であるガラス素材を整列して配置可能にしたパレットと、該パレットを前記待機、投入、加熱、冷却、交換の各ステージ上に搬送させる搬送手段と、前記冷却手段の加熱ステージに設けられた加熱板を具備し、複数個のガラス素材が配置されたパレットを前記搬送手段により順次前記待機、投入、加熱、冷却、交換の各ステージへの搬送において、前記加熱ステージでガラス素材の一方の鏡面部を前記冷却手段により冷却しつつ、その他方の鏡面部を前記加熱板により熱軟化して疑似曲率を形成するように構成したことを特徴とするレンズ素材の製造装置。
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