JP2002255862A - t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法 - Google Patents

t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法

Info

Publication number
JP2002255862A
JP2002255862A JP2001051941A JP2001051941A JP2002255862A JP 2002255862 A JP2002255862 A JP 2002255862A JP 2001051941 A JP2001051941 A JP 2001051941A JP 2001051941 A JP2001051941 A JP 2001051941A JP 2002255862 A JP2002255862 A JP 2002255862A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
phenolic hydroxyl
hydroxyl group
butoxycarbonyl
protected
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001051941A
Other languages
English (en)
Inventor
Kozo Nakamura
浩蔵 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Wakayama Prefecture
Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Wakayama Prefecture
Japan Science and Technology Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Wakayama Prefecture, Japan Science and Technology Corp filed Critical Wakayama Prefecture
Priority to JP2001051941A priority Critical patent/JP2002255862A/ja
Publication of JP2002255862A publication Critical patent/JP2002255862A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ
ル基など反応性の高い官能基は保護されたまま、フェノ
ール性水酸基だけが遊離したフェノール類を効率よく得
ること。 【解決手段】 本発明は、t−ブトキシカルボニル基を
フェノール性水酸基と結合させた後、塩基を作用させる
ことにより、前記フェノール性水酸基を遊離させること
を特徴とするt−ブトキシカルボニル基で保護したフェ
ノール性水酸基の脱保護方法である。更には、フェノー
ル類のフェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ
基、アルコール性水酸基などに、t−ブトキシカルボニ
ル基を同時に結合させた後、前記フェノール性水酸基を
遊離させることもある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、t−ブトキシカル
ボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ポリフェノール類が健康維持にき
わめて重要な役割を果たしていることが解明されるにつ
れ、天然物化学研究分野においてフェノール類への注目
度が高まりつつある。天然物由来のフェノール類を化学
変換し、より有用な化合物を創り出す有機合成的研究
は、社会的に極めて意義のある重要なものである。フェ
ノール類では、フェノール性水酸基が有用な活性の中心
的役割を果たしていることが数多く報告されている。そ
こで、より有効なフェノール物質を創り出すためには、
しばしばフェノール性水酸基だけを合成反応に用いる必
要がある。しかしながら、フェノール類には一分子内に
反応性の高い官能基が共存するものが数多く見受けられ
る。目的とするフェノール性水酸基の反応だけを進行さ
せるためには、フェノール性水酸基だけを遊離させ、共
存する反応性の高い官能基には適当な化合物を結合させ
不活性化して反応に関与させないようにする必要があ
る。この操作を「保護」という。
【0003】有機合成研究分野において、活性の高い官
能基を保護することは重要な課題であり、これまでに膨
大な知識、技術が蓄積されている。近年刊行された「P
ROTECTIVE GROUPS in ORGAN
IC SYNTHESIS(3rd ed.)」ではそ
れらが効率よくまとめられており、その概略を知ること
ができる。通常、「保護」は、不活性化したい官能基
に、保護基と総称される化合物を直接結合させることに
より行われる。フェノール類において、他の官能基を保
護する段階でフェノール性水酸基だけを遊離させておく
ことは困難であり、全て、または、一部のフェノール性
水酸基も保護されてしまう場合が多い。そこで、保護さ
れたフェノール性水酸基が元通りの状態で遊離され、目
的物にダメージを与えないような条件で、フェノール性
水酸基上の保護基を除去する必要がある。この操作が
「脱保護」である。
【0004】近年、t−ブトキシカルボニル基をフェノ
ール性水酸基の保護基として利用する報告がなされてい
る(Hansen, M. M.; Riggis, J. R. Tetrahedron Lett.
1998, 39, 2705-2706.参照)。t−ブトキシカルボニ
ル基は、有機合成、特に、ペプチド合成では多用され、
自動合成機へ応用されている利用頻度の高い保護基であ
る(Bodanszky, M. In Principles of Peptide Chemist
ry; Springer-Verlag;New York, 1984.参照)。保護で
きる官能基は、フェノール性水酸基に加え、アミノ基、
アルコール性水酸基などがある。t−ブトキシカルボニ
ル基は、ジ−t−ブチルジカーボネイト、2−t−ブト
キシカルボニルオキシイミノ−2−フェニルアセトニト
リル等を用い、非プロトン性溶媒中、ジメチルアミノピ
リジンを触媒として、フェノール性水酸基、アミノ基、
アルコール性水酸基とそれぞれ結合させることができ
る。
【0005】これまで、t−ブトキシカルボニル基の脱
保護は、専ら「酸性条件下」で行われてきた。例えば、
t−ブトキシカルボニル基が主たる保護基として用いら
れるペプチド自動合成機での脱保護には、90〜100
%トリフルオロ酢酸が用いられてきた。有機合成では、
100%トリフルオロ酢酸、1〜4M塩酸/非プロトン
性溶媒、希塩酸中での環流等による脱保護例が見られ
る。1994年、上記t−ブトキシカルボニル基と同様
の導入条件で、カルボキシル基をt−ブチルエステルと
して保護することが報告された(Takada, K.; Akiyama,
A.; Nakamura, H.; Takizawa, S.-i.; Mizuno, Y.; Ta
kayanagi, H.; Harigaya, Y. Synthesis,1994, 1063-10
66.参照)。t−ブチルエステルは、t−ブトキシカル
ボニル基と同じ条件で脱保護される。最終的な脱保護
が、酸によってのみ好結果が得られる合成において、t
−ブトキシカルボニル基、t−ブチルエステルは、非常
に有用な保護基である。しかしながら、酸に不安定な部
分を含む化合物においては、酸によるこれらの保護基の
脱保護条件によって、その部分のダメージが避けられな
いという欠点を持つ。
【0006】フェノール類におけるフェノール性水酸基
以外の高反応性の官能基は、主にアミノ基、アルコール
性水酸基、カルボキシル基である。これらの官能基を同
一条件で保護・脱保護ができる可能性を持つt−ブトキ
シカルボニル基、t−ブチルエステルの使用は、合成反
応段階、分離精製過程の大幅な簡略化を可能にする有効
な手段となると期待される。しかし、共存する反応性の
高い官能基が保護された化合物を得る反応過程で、保護
を目的とする官能基と共に、全て、または、一部のフェ
ノール性水酸基が保護されてしまう。従って、フェノー
ル性水酸基が遊離しており、分子内にt−ブトキシカル
ボニル基、t−ブチルエステルなどのように、酸に不安
定な部分が存在する保護フェノール類を効率よく合成す
るためには、以下の手順が必要となる。酸に不安定な
部分をわざわざ酸に安定なものに変換。酸によるフェ
ノール性水酸基の脱保護。フェノール性水酸基を遊離
させたままで、酸に安定な部分の再現。このように煩雑
で困難な合成が要求される。酸に不安定な部分を温存し
たままでフェノール性水酸基上のt−ブトキシカルボニ
ル基を有効に脱保護する方法はこれまでになく、かかる
問題は解決されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、フ
ェノール性水酸基の新しい脱保護法を開発し、従来は困
難であった酸に不安定な部分を持つフェノール類におけ
る選択的なフェノール性水酸基の脱保護を可能すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者は誠意研究を行った結果、t−ブトキシカ
ルボニル基を用いたフェノール性水酸基などの保護、脱
保護に関する下記の構成による発明を完成したのであ
る。
【0009】すなわち、本発明は、t−ブトキシカルボ
ニル基をフェノール性水酸基と結合させた後、塩基を作
用させることにより、前記フェノール性水酸基を遊離さ
せることを特徴とするt−ブトキシカルボニル基で保護
したフェノール性水酸基の脱保護方法を提供する。
【0010】
【化1】 化学式中、Arはアリール基を示し、Bocはt−ブト
キシカルボニル基を示している。
【0011】または、フェノール性水酸基およびカルボ
キシル基を有するフェノール類の、フェノール性水酸基
にt−ブトキシカルボニル基を結合させるとともに、カ
ルボキシル基にt−ブトキシカルボニル基由来のt−ブ
チル基を結合させた後、前記フェノール性水酸基を遊離
させる脱保護方法である。
【0012】あるいは、フェノール性水酸基と、アミノ
基および/またはアルコール性水酸基とを有するフェノ
ール類の、フェノール性水酸基にt−ブトキシカルボニ
ル基を結合させるとともに、アミノ基および/またはア
ルコール性水酸基にt−ブトキシカルボニル基を結合さ
せた後、塩基を作用させることにより、前記フェノール
性水酸基を遊離させる脱保護方法である。
【0013】塩基を作用させて脱保護する場合において
は、塩基がピペリジン、ジエチルアミン、1,8−ジア
ザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、金属アル
コキシドから選ばれた少なくとも1種であり、非水溶媒
中で前記塩基を作用させてフェノール性水酸基を遊離さ
せる方法もある。
【0014】また、塩基を作用させて脱保護する方法に
おいて、塩基がアンモニア、金属水酸化物から選ばれた
少なくとも1種であり、水または含水極性溶媒中で前記
塩基を作用させてフェノール性水酸基を遊離させる方法
もある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の脱保護に用いられるフェノール性水酸基を有す
るフェノール類(出発物質)は、例えば、1−t−ブト
キシカルボニルオキシベンゼン、1−t−ブトキシカル
ボニルオキシ−2−メトキシベンゼン、1−t−ブトキ
シカルボニルオキシ−4−t−ブチルベンゼンなどがあ
る。
【0016】また、フェノール性水酸基およびカルボキ
シル基を併有する出発物質としては、4−t−ブトキシ
カルボニルオキシ−3−メトキシケイ皮酸−t−ブチル
などが挙げられる。フェノール性水酸基とアミノ基を併
有する出発物質としては、例えば、N−t−ブトキシカ
ルボニル−3−O−t−ブトキシカルボニル−ドーパミ
ンなどが挙げられる。フェノール性水酸基とアルコール
性水酸基を併有する出発物質としては、例えば、O−t
−ブトキシカルボニル−2−(4−t−ブトキシカルボ
ニルオキシフェニル)−1−プロパノールなどが挙げら
れる。フェノール性水酸基、アミノ基、およびアルコー
ル性水酸基を併有する出発物質としては、例えば、N−
t−ブトキシカルボニル−ジ−O−t−ブトキシカルボ
ニル−L−チロシンオールなどが挙げられる。そして、
フェノール性水酸基、アミノ基、およびカルボキシル基
を併有する出発物質としては、例えば、N−t−ブトキ
シカルボニル−O−t−ブトキシカルボニル−L−チロ
シン−t−ブチルエステルなどが挙げられる。
【0017】本発明の脱保護に用いられる塩基としては
特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、水酸化リチウムなどの金属水酸化物、アン
モニア、ピペリジン、ジエチルアミン、テトラメチルア
ンモニウムヒドロキシド、1,8−ジアザビシクロ
[5.4.0]−7−ウンデセンなどのアミン類、ナト
リウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルコ
キシドなどが挙げられる。
【0018】本発明に用いる溶媒としては特に限定され
ないが、出発物質や塩基の性質、あるいは反応条件に応
じて、非水溶媒や含水極性溶媒を適宜選択することがで
きる。そのうちで、非水溶媒としては、例えば、塩化メ
チレン、クロロホルム、エーテルなどが挙げられ、含水
極性溶媒としては、例えば、水、メタノール水溶液、i
−プロパノール水溶液、t−ブチルアルコール水溶液、
ジメチルホルムアミド(DMF)水溶液などが挙げられ
る。
【0019】本発明の脱保護方法により得られるフェノ
ール類の例としては、フェノール、o(またはm,p)
−クレゾール、o(またはm,p)−t−ブチルフェノ
ール、o(またはm,p)−ヒドロキシ安息香酸、2,
5−ジ−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、
4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸−t−ブチル、
2,6−ジ−メトキシフェノール、シナモン酸、コーヒ
ー酸、フェルラ酸、o(またはm,p)−ニトロフェノ
ール、o(またはm,p)−クロロフェノール、o(ま
たはm,p)−ヒドロキシビフェニル、6−ヒドロキシ
フラボン、α,β−ナフトール、7−ヒドロキシクマリ
ン、カテコール、o(またはm,p)−アミノフェノー
ル、ケルセチン、p−t−ブチルカテコール、カテコー
ルアミン、ゲニステイン、チロシン、ドーパミンなど、
またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0020】本発明者は、フェノール性水酸基に結合し
たt−ブトキシカルボニル基が求核試薬の攻撃を受け易
くなり、「塩基」による脱保護が可能であることを見い
だした。かかる塩基を用いたフェノール性水酸基の脱保
護により、酸に不安定なアミノ基やアルコール性水酸基
上のt−ブトキシカルボニル基、トリチル基やカルボキ
シル基上のt−ブチル基などは保護されたままであっ
た。他方、フェノール性水酸基などの保護にあたって
は、t−ブトキシカルボニル化剤を用いたので、フェノ
ール類が有するフェノール性水酸基、アミノ基、アルコ
ール性水酸基、カルボキシル基が1段階で同時に保護さ
れる。これにより、保護反応における反応ステップが省
略される。
【0021】ところで、上記した塩基のうち、ピペリジ
ン、ジエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.
4.0]−7−ウンデセン、金属アルコキシドは、水が
存在するとそれ自身の塩基としての効果が得られない。
そこで、非水溶媒中でこれらの塩基を用いることによ
り、フェノール性水酸基上のt−ブトキシカルボニル基
が選択的に脱保護される。かかる塩基の使用は、水に溶
けにくい生成物が得られる場合にも有利である。
【0022】特に、ピペリジンは非水溶媒中で用いる
と、脱保護反応の活性が高いことがわかった。すなわ
ち、脱保護反応の反応時間が短くてすみ収率も良好とな
る。一方で、t−ブチルエステルやフェナシルエステル
といった一部のエステルを除き、一般にエステル結合は
塩基によって加水分解される。しかし、塩基としてピペ
リジンを用いると、フェノール類のメチルエステル結合
やエチルエステル結合を切ることなく残せる。すなわ
ち、エステル結合を残したままで、フェノール性水酸基
上のt−ブトキシカルボニル基だけが選択的に脱保護さ
れるのである。
【0023】また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化リチウムなどの金属水酸化物、またはアンモ
ニアは、水または含水極性溶媒の存在によってOH-
生成し、これが塩基として働く。これにより、フェノー
ル性水酸基上のt−ブトキシカルボニル基が選択的に脱
保護される。
【0024】尚、フェノール性水酸基およびカルボキシ
ル基を併せ持つフェノール類に、ジ−t−ブチルジカー
ボネイトなどのt−ブトキシカルボニル化剤を反応させ
ると、当該フェノール類のフェノール性水酸基はt−ブ
トキシカルボニル基が結合して保護され、同時にカルボ
キシル基も、t−ブトキシカルボニル化剤から副生した
t−ブチルアルコールのt−ブチル基が結合して保護さ
れる。すなわち、t−ブトキシカルボニル化剤を用いれ
ば、フェノール性水酸基およびカルボキシル基があたか
も1段階で効率よく保護される。この場合、保護された
フェノール類に対し、適当な脱保護手段を用いると、フ
ェノール性水酸基からのみ前記t−ブトキシカルボニル
基が遊離する。この反応で用いる脱保護手段としては、
上述した各種の塩基であってもよいがそれ以外に、硫
酸、塩酸、トリフルオロ酢酸などの酸、あるいは、酵素
などを用いることも可能である。また、反応系の溶媒と
してt−ブチルアルコールを用いた場合、フェノール類
のカルボキシル基は、溶媒であるt−ブチルアルコール
のt−ブチル基によっても保護される。因みに、従来法
で4−t−ブトキシカルボニルオキシ安息香酸を得る場
合、まずp−オキシ安息香酸のフェノール性水酸基をア
セチル化する反応ステップと、得られたアセチル化物の
カルボキシル基をt−ブチル化する反応ステップとが必
要であり、製造が煩雑で収率低下につながっていた。
【0025】これまでに述べた本発明方法の保護と脱保
護はいずれも、常温・常圧において短時間、高収率で反
応させることができる。尚、これらの反応温度、反応圧
力は、用いる原料、脱保護剤、または溶媒の種類に応じ
て適宜の条件を選択すればよい。また、必要であれば、
4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの触媒を
適量加えても構わない。
【0026】
【実施例】引続き、本発明の実施例を述べる。 [実施例1]フェノール性水酸基が保護されている1−
t−ブトキシカルボニルオキシベンゼン(脱保護用の出
発物質、19 mg, 100 μmol)を塩化メチレン(溶媒、1
ml)に溶解させ、28%ナトリウムメトキシド−メタノー
ル溶液(塩基、23 mg, 120 μmol(1.2当量))を室温
で加える。1時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫
酸水素カリウム水溶液(30 ml)を加える。反応液の有
機層を分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)、
水(30 ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄
後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮
する。シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル
=1:0〜10:1)で精製すると、常温で無色固体の
フェノール(生成物)が得られた。収量8.3 mg (88 μm
ol)、収率88%。生成物の物性は次の通りであった。mp =
40.5 °C; Rf (TLC)= 0.22 (hexane: ethyl acetate
= 5 : 1); IR (neat); 3333, 3047, 1595, 1499, 147
4, 1231, 752, 691 cm-1; 400 MHz 1H NMR (CDCl3) d
7.27-7.23 (2H, m, ArH), 6.97-6.92 (1H, m, ArH), 6.
86-6.83 (2H, m, ArH), 5.23 (1H, bs, OH); 100 MHz
1 3C NMR (CDCl3) d 155.3 (C), 129.7 (CH), 120.9 (C
H), 115.3 (CH).
【0027】[実施例2]1−t−ブトキシカルボニル
オキシベンゼン(19 mg, 100 μmol)を25%ピペリジン
−塩化メチレン溶液(3 ml)に、室温で溶解させる。3
時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素カリウ
ム水溶液(30 ml)を加える。反応液の有機層を分別
し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30 ml、
1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無水硫
酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮する。シリ
カゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=1:0〜
10:1)で精製すると、常温で無色固体のフェノール
が得られた。収量8.1 mg (86 μmol)、収率86%。
【0028】[実施例3]1−t−ブトキシカルボニル
オキシベンゼン(19 mg, 100 μmol)を10% 1,8−ジ
アザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン−塩化メ
チレン溶液(3 ml)に、室温で溶解させる。6時間撹拌
後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素カリウム水溶液
(30 ml)を加える。反応液の有機層を分別し、4%硫酸
水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30 ml、1回)、飽
和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無水硫酸マグネシ
ウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮する。シリカゲルカラ
ム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=1:0〜10:1)
で精製すると、常温で無色固体のフェノールが得られ
た。収量7.8 mg (83 μmol)、収率83%。
【0029】[実施例4]1−t−ブトキシカルボニル
オキシベンゼン(19 mg, 100 μmol)をメタノール(0.
5 ml)に溶解させ、1N−水酸化ナトリウム溶液(1 m
l)を室温で加える。8時間撹拌後、酢酸エチル(30 m
l)と4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)を加える。反
応液の有機層を分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30
ml)、水(30 ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1
回)で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減
圧下、濃縮する。シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:
酢酸エチル=1:0〜10:1)で精製すると、常温で
無色固体のフェノールが得られた。収量7.1 mg (75 μm
ol)、収率75%。
【0030】[実施例5]1−t−ブトキシカルボニル
オキシベンゼン(19 mg, 100 μmol)をメタノール(0.
5 ml)に溶解させ、15Nアンモニア水溶液(1.0 ml)を
室温で加える。5時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4
%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)を加える。反応液の
有機層を分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 m
l)、水(30 ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)
で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧
下、濃縮する。シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢
酸エチル=1:0〜10:1)で精製すると、常温で無
色固体のフェノールが得られた。収量8.8 mg (94 μmo
l)、収率94%。
【0031】[比較例1]1−t−ブトキシカルボニル
オキシベンゼン(19 mg, 100 μmol)を10%トリエチル
アミン−塩化メチレン溶液(3.0 ml)に室温で溶解させ
る。48時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素
カリウム水溶液(30 ml)を加える。反応液の有機層を
分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30
ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無
水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮した。
しかしながら、目的物は生成しなかった。
【0032】[実施例6]1−t−ブトキシカルボニル
オキシ−2−メトキシベンゼン(22 mg, 100 μmol)を
25%ピペリジン−塩化メチレン溶液(3 ml)に溶解させ
る。6時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素
カリウム水溶液(30 ml)を加える。反応液の有機層を
分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30
ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無
水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮する。
シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=1:
0〜10:1)で精製すると、常温で無色油状の2−メ
トキシフェノールが得られた。収量12 mg (97 μmol)、
収率97%。 Rf (TLC)= 0.033 (hexane : ethyl acetate = 5 : 1);
IR (neat); 3508, 3053, 1504, 1259, 1225, 1109, 10
40, 1024, 745 cm-1; 400 MHz 1H NMR (CDCl3)d 6.94-
6.91 (1H, m, ArH), 6.89-6.84 (3H, m, ArH), 5.62 (1
H, s, OH), 3.87 (3H, s, CH3); 100 MHz 13C NMR (CD
Cl3) d 146.5 (C), 145.6 (C), 121.4 (CH), 120.1 (C
H), 114.5 (CH), 110.7 (CH), 55.8 (CH3).
【0033】[実施例7]1−t−ブトキシカルボニル
オキシ−4−t−ブチルベンゼン(25 mg, 100 μmol)
を50%ピペリジン−塩化メチレン溶液(3 ml)に溶解さ
せる。6時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水
素カリウム水溶液(30 ml)を加える。反応液の有機層
を分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)、水(3
0 ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、
無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮す
る。シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=
1:0〜10:1)で精製すると、常温で白色粉末の4
−t−ブチルフェノールが得られた。収量15 mg (99 μ
mol)、収率99%。 mp = 99 - 100 °C; Rf(TLC) = 0.22 (hexane : ethyl
acetate = 5 : 1); IR (KBr); 3247, 3067, 2963, 15
14, 1242, 1184 cm-1; 400 MHz 1H NMR (CDCl3) d 7.2
7-7.23 (2H, m, ArH), 6.78-6.75 (2H, m, ArH), 4.81
(1H, s, OH), 1.29 (9H, s, CH3); 100 MHz 13C NMR (C
DCl3) d 153.0 (C), 143.5 (C), 126.4 (CH), 114.7 (C
H), 34.1 (C), 31.5 (CH3).
【0034】[実施例8]1−t−ブトキシカルボニル
オキシ−4−t−ブチルベンゼン(25 mg, 100 μmol)
をメタノール(0.5 ml)に溶解させ、1N−水酸化ナト
リウム溶液(1 ml)を室温で加える。24時間撹拌後、酢
酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素カリウム水溶液(30 m
l)を加える。反応液の有機層を分別し、4%硫酸水素カ
リウム水溶液(30 ml)、水(30 ml、1回)、飽和食塩
水(30 ml、1回)で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上
で乾燥させ、減圧下、濃縮する。シリカゲルカラム(溶
離液ヘキサン:酢酸エチル=1:0〜10:1)で精製
すると、常温で白色粉末の4-t-ブチルフェノールが得
られた。収量13 mg (87 μmol)、収率87%。
【0035】[実施例9]4−t−ブトキシカルボニル
オキシ-安息香酸(24 mg, 100 μmol)を10%ピペリジン
−塩化メチレン溶液(3 ml)に溶解させる。6時間撹拌
後、反応溶液を減圧下、濃縮し、シリカゲルカラム(溶
離液ヘキサン:酢酸エチル=5:1〜2:1)で精製す
ると、常温で白色粉末のp−ヒドロキシ-安息香酸が得
られた。収量13 mg (94 μmol)、収率94%。 mp = 216 - 217 °C; IR (KBr); 3391, 2550, 1678, 1
609, 1595, 1317, 1290, 1244, 1169 cm-1; 400 MHz 1
H NMR (DMSO-d6) d 12.40 (1H, bs, COOH), 10.22 (1H,
bs, OH), 7.79-7.76 (2H, m, ArH), 6.83-6.79 (2H,
m, ArH); 100 MHz 13C NMR (DMSO-d6) d 167.4 (C), 1
61.8 (C), 131.8 (CH), 121.6 (C), 115.3(CH).
【0036】[実施例10]4-t−ブトキシカルボニ
ルオキシ-安息香酸(24 mg, 100 μmol)をメタノール
(0.5 ml)に溶解させ、1N−水酸化ナトリウム溶液(1
ml)を加える。3時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と
4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)を加える。反応液
の有機層を分別し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 m
l)、水(30 ml、1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)
で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧
下、濃縮する。シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢
酸エチル=5:1〜2:1)で精製すると、常温で白色
固体のp−ヒドロキシ-安息香酸が得られた。収量11.5
mg (83 μmol)、収率83%。
【0037】天然に存在するポリフェノール類には、フ
ェノール性水酸基とカルボキシル基を併せ持つ化合物が
多数見受けられる。フェノール性水酸基のみを反応させ
る場合、カルボキシル基を保護する必要がある。t−ブ
チルエステルでカルボキシル基だけを保護したフェノー
ル類を得るためには、まず両官能基をそれぞれt−ブト
キシカルボニル基、t−ブチルエステルで同時に保護
し、引き続く塩基処理によりフェノール性水酸基上のt
−ブトキシカルボニル基のみを選択的に脱保護するのが
効率のよい方法である。
【0038】[実施例11a(保護)]そこで、フェノ
ール性水酸基およびカルボキシル基を併せ持つフェノー
ル類の、フェノール性水酸基を保護する例を下記の式に
示す。
【化2】 上式中で、Bocはt−ブトキシカルボニル基を示し、
DMAPは4−ジメチルアミノピリジンを示す。
【0039】すなわち、4−ヒドロキシ−3−メトキシケ
イ皮酸(0.39 g, 2.0 mmol)、4−ジメチルアミノピリ
ジン(24 mg, 0.2 mmol)、トリエチルアミン(0.28 m
l, 2.0 mmol)とをt−ブチルアルコール(3 ml)−ジメ
チルホルムアミド(0.5 ml)混合溶液に溶解させ、ジ−
t−ブチルジカーボネート(1.1 g, 5.0 mmol)を室温で
加える。6時間撹拌後、酢酸エチル(50 ml)を加え、
反応液の有機層を分別し10%クエン酸水溶液(50 ml、2
回)、水(50 ml、1回)、飽和食塩水(50 ml、1回)
で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧
下、濃縮する。シリカゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢
酸エチル=1:0〜5:1)で精製すると、常温で無色
油状の4−t−ブトキシカルボニルオキシ−3−メトキシ
ケイ皮酸−t−ブチル(脱保護用の出発物質)が得られ
た。収量0.65 g (1.9 mmol)、収率95%。 Rf(TLC) = 0.41 (hexane : ethyl acetate = 2 : 1);
IR (neat);3062,2980,1763, 1709, 1638, 1510, 1256,
1144, 1124 cm-1; 400 MHz 1H NMR (CDCl3)d 7.50 (1
H, d, J = 16.0 Hz, ArCH=), 7.11-7.04 (3H, m, ArH),
6.28 (1H, d,J = 15.6 Hz, =CH-), 3.85 (3H, s, OC
H3), 1.53 (9H, s, CH3), 1.51(9H,s,CH 3); 100 MHz
13C NMR (CDCl3) d 161.1 (C),151.5 (C), 151.2 (C),
142.8(CH),141.6 (C), 133.5 (C), 122.8 (CH), 121.1
(CH), 120.4 (CH), 111.2 (CH), 83.6 (C), 80.6 (C),
55.9 (CH3), 28.2 (CH3), 27.6 (CH3).
【0040】[実施例11]実施例11aで保護した4
−t−ブトキシカルボニルオキシ−3−メトキシケイ皮
酸−t−ブチル(35 mg, 100 μmol、出発物質)を10%
ピペリジン−塩化メチレン溶液(3 ml)に溶解させる。
1時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素カリ
ウム水溶液(20 ml)を加える。反応液の有機層を分別
し、4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30 ml、
1回)、飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無水硫
酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮する。シリ
カゲルカラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=1:0〜
5:1)で精製すると、常温で白色粉末の4−ヒドロキ
シ−3−メトキシケイ皮酸−t−ブチル(脱保護生成物)
が得られた。収量24.5 mg (98 μmol)、収率98%。 mp = 84.5 - 85 °C; Rf (TLC)= 0.27 (hexane : ethy
l acetate = 2 : 1);IR (KBr); 3395, 3067, 2980, 169
3, 1634, 1605, 1591, 1510, 1466, 1279, 1161 cm-1;
400 MHz 1H NMR (CDCl3) d 7.49 (1H, d, J = 16.0 H
z, ArCH=), 7.06-6.99 (2H, m, ArH), 6.88 (1H, d, J
= 8.0 Hz, ArH), 6.20 (1H, d, J =16.0 Hz, =CH-), 5.
84 (1H, s, OH), 3.90 (3H, s, OCH3), 1.51 (9H, s, C
H3);100MHz 13C NMR (CDCl3) d 166.6 (C), 147.6 (C),
146.7(C),143.6(CH),127.2(C), 122.9 (C), 117.6 (C
H), 114.6 (CH), 109.1 (CH), 80.3 (C), 56.9 (CH3),
28.2 (CH3).
【0041】[実施例12]4−t−ブトキシカルボニ
ルオキシ−3−メトキシケイ皮酸−t−ブチル(35mg,
100 μmol)をメタノール(0.5 ml)に溶解させ、1N−
水酸化ナトリウム溶液(1 ml)を加える。3時間撹拌
後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素カリウム水溶液
(30 ml)を加える。反応液の有機層を分別し、4%硫酸
水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30 ml、1回)、飽
和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無水硫酸マグネシ
ウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮する。シリカゲルカラ
ム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=5:1〜2:1)で
精製すると、常温で白色粉末の4-ヒドロキシ−3−メ
トキシケイ皮酸−t−ブチルが得られた。収量23 mg (9
2μmol)、収率92%。
【0042】[比較例2]4−t−ブトキシカルボニル
オキシ−3−メトキシケイ皮酸−t−ブチル(35mg, 10
0 μmol)を10%トリエチルアミン−塩化メチレン溶液
(3.0 ml)に室温で溶解させる。48時間撹拌後、酢酸エ
チル(30 ml)と4%硫酸水素カリウム水溶液(30 ml)を
加える。反応液の有機層を分別し、4%硫酸水素カリウム
水溶液(30 ml)、水(30 ml、1回)、飽和食塩水(30
ml、1回)で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上で乾燥
させ、減圧下、濃縮した。しかしながら、目的物は生成
しなかった。
【0043】本発明の理解を容易にするため、以上に述
べた実施例1〜13、比較例1,2の概要を次の表1に
まとめた。
【0044】
【表1】
【0045】上記の表1に示したように、フェノール、
2−メトキシフェノールのフェノール性水酸基に結合し
ているt−ブトキシカルボニル基は、25%ピペリジン−
塩化メチレン溶液や15Nアンモニア水−メタノール混合
溶媒といった弱い塩基でも脱離できている。尚、求核性
の弱い塩基であるトリエチルアミンを用いた場合は脱保
護の効率が著しく制限された。電子吸引基であるカルボ
キシル基を持つp−ヒドロキシ安息香酸や3−メトキシ
−4−ヒドロキシケイ皮酸のフェノール性水酸基に導入
されたt−ブトキシカルボニル基は、10%ピペリジン−
塩化メチレン溶液といったように、フェノールの場合よ
り更に弱い塩基性条件下で容易に脱保護された。電子供
与基であるt−ブチル基を持つ4−t−ブチルフェノー
ルにおけるt−ブトキシカルボニル基の脱保護には、50
%ピペリジン−塩化メチレン溶液といったように、フェ
ノールの場合よりも強い塩基性条件を必要とする。
【0046】[実施例13]更には、4−ジメチルアミ
ノピリジン(DMAP)を触媒量添加することで、より
効率的にフェノール性水酸基上のt−ブトキシカルボニ
ル基を塩基により脱保護できる場合がある。すなわち、
4−t−ブトキシカルボニルオキシ−3−メトキシケイ
皮酸−t−ブチル(35 mg, 100 μmol、出発物質)と4
−ジメチルアミノピリジン(1.2 mg, 10 μmol)を5%ピ
ペリジン−塩化メチレン溶液(3 ml)に溶解させる。1
時間撹拌後、酢酸エチル(30 ml)と4%硫酸水素カリウ
ム水溶液(20 ml)を加える。反応液の有機層を、4%硫
酸水素カリウム水溶液(30 ml)、水(30 ml、1回)、
飽和食塩水(30 ml、1回)で洗浄後、無水硫酸マグネ
シウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮する。シリカゲルカ
ラム(溶離液ヘキサン:酢酸エチル=1:0〜5:1)
で精製すると、常温で白色粉末の4−ヒドロキシ−3−
メトキシケイ皮酸−t−ブチル(脱保護生成物)が得られ
た。収量23.8 mg (95 μmol)、収率95%。
【0047】以上に述べた実施例1〜13の実験結果か
ら、フェノール性水酸基上のt−ブトキシカルボニル基
の脱保護が「塩基」により可能であることが示された。
【0048】[実施例14]一方で、同一分子内にt−
ブトキシカルボニル基とt−ブチルエステル基を含むフ
ェノール類から、「酸」を用いてt−ブトキシカルボニ
ル基のみを選択的に除去する試みも本発明により可能で
ある。すなわち、4−t−ブトキシカルボニルオキシ−
3−メトキシケイ皮酸−t−ブチル(35 mg, 100 μmo
l)をエーテル(1 ml)に溶かし、-10℃に冷却する。p
−トルエンスルホン酸(17 mg, 100 μmol)のエーテル
溶液(1 ml)を30分かけて滴下する。-10℃で3時間攪
拌後、徐々に室温にもどし、飽和炭酸水素ナトリウム水
溶液で中和する。エーテル層を集め、減圧濃縮する。分
取用薄層クロマトグラフィーで精製すると、収率21%で
4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸−t−ブチルが
得られた。尚、塩基によるt−ブトキシカルボニル基の
除去の場合と比べると、収率が劣っている。
【0049】本発明の脱保護に関するその他の実施例も
いくつか簡単に説明する。 [実施例15]t−ブトキシカルボニル基で保護された
1−t−ブトキシカルボニルオキシ−2,6−ジ−メト
キシベンゼンを出発物質とし、25%ピペリジン−塩化メ
チレン溶液で溶解、脱保護することにより、2,6−ジ
−メトキシフェノールが収率97%で得られた。
【0050】[実施例16]また、t−ブトキシカルボ
ニル基で保護された1,2−ジ−t−ブトキシカルボニ
ルオキシ−4−t−ブチルベンゼンを出発物質とし、25
%ピペリジン−塩化メチレン溶液で溶解、脱保護するこ
とにより、p−t−ブチルカテコールが収率92%で得ら
れた。 [実施例17]t−ブトキシカルボニル基で保護された
1−t−ブトキシカルボニルオキシ-4-メチルベンゼン
を出発物質とし、25%ピペリジン−塩化メチレン溶液で
溶解、脱保護することにより、p−クレゾールが収率92
%で得られた。 [実施例18]t−ブトキシカルボニル基で保護された
1−t−ブトキシカルボニルオキシ−2,5−ジメチル
ベンゼンを出発物質とし、25%ピペリジン−塩化メチレ
ン溶液で溶解、脱保護することにより、2,5−ジ−メ
チルフェノールが収率86%で得られた。
【0051】[実施例19]天然アミノ酸のL−チロシ
ンは、フェノール性水酸基、カルボキシル基、およびア
ミノ基を併せ持つ。フェノール性水酸基が遊離し、カル
ボキシル基とアミノ基が保護されたフェノール類を得る
には、まず3種類全ての官能基を同時に保護し、引き続
く塩基処理によりフェノール性水酸基上のt−ブトキシ
カルボニル基のみを選択的に脱保護するのが効率よい。
【0052】すなわち、L−チロシンは次のように保護
される。L−チロシン(1.8 g, 10mmol)をジオキサン
−水(2:1)混合溶媒(30 ml)に懸濁し、トリエチ
ルアミン(1.7 ml, 12 mmol)を加える。氷冷下、ジ−
t−ブチルジカーボネイト(2.6 g, 12 mmol)を加え、
室温で一夜攪拌反応させる。減圧下溶媒を溜去し、油状
残査をt−ブチルアルコール(10 ml)−テトラヒドロ
フラン(1 ml)に溶解させ、トリエチルアミン(1.4 m
l, 10 mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.24 g,
0.2 mmol)を加える。室温でジ−t−ブチルジカーボネ
イト(5.2 g, 24mmol)を加え3時間攪拌反応させた
後、ピペリジン(10 ml)を加え、室温で一夜放置す
る。減圧下溶媒を溜去し、残査を酢酸エチルに溶かす。
反応液の有機層を分別し4%炭酸水素ナトリウム、4%硫酸
水素カリウム、イオン交換水、飽和食塩水で洗浄し、無
水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、フラッシュ
カラムクロマトグラフィーで精製すると、N−t−ブト
キシカルボニル−L−チロシン−t−ブチルエステル
(フェノール性水酸基が脱保護されたフェノール類)が
88%の収率で白色粉末として得られた。
【0053】[実施例20]フェノール性水酸基が遊離
しており、アミノ基をt−ブトキシカルボニル基で保護
し、カルボキシル基をアルコールエステルとして保護し
たチロシン誘導体を合成する場合は、安価で大量に供給
できるチロシンアルコールエステルを原料とし、フェノ
ール性水酸基とアミノ基を同時に保護し、引き続く塩基
処理によりフェノール性水酸基上のt−ブトキシカルボ
ニル基のみを選択的に脱保護するのが効率よい。塩基性
条件下で切断されるカルボン酸エステルは、非極性溶媒
中でピペリジンによりフェノール性水酸基上のt−ブト
キシカルボニル基を脱保護する条件下では、安全であ
る。
【0054】すなわち、L−チロシンメチルエステル塩
酸塩(0.23 g, 1.0 mmol)をDMF−ジクロロメタン
(2:1)混合溶媒(6 ml)に溶解し、トリエチルアミ
ン(0.14 ml,1.0 mmol)、4−ジメチルアミノピリジン
(0.024 g, 0.02 mmol)を加える。室温でジ−t−ブチ
ルジカーボネイト(0.5 g, 2.4 mmol)を加え3時間攪
拌反応させた後、ピペリジン(3 ml)を加え、室温で一
夜放置する。酢酸エチルを50 ml加え、4%炭酸水素ナト
リウム、4%硫酸水素カリウム、イオン交換水、飽和食塩
水で洗浄しする。反応液の有機層を分別し無水硫酸マグ
ネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、フラッシュカラムクロ
マトグラフィーで精製すると、N−t−ブトキシカルボ
ニル−L−チロシン−メチルエステル(フェノール性水
酸基が脱保護されたフェノール類)が92%の収率で得られ
た。
【0055】[実施例21]天然アミノ酸チロシンの還
元体であるL−チロシンオールは、一分子内にフェノー
ル性水酸基、アルコール性水酸基、およびアミノ基を併
せ持っている。フェノール性水酸基が遊離し、アルコー
ル性水酸基とアミノ基が保護されたフェノール類を得る
には、まず3種類全ての官能基を同時に保護し、引き続
く塩基処理によりフェノール性水酸基上のt−ブトキシ
カルボニル基のみを選択的に脱保護するのが効率よい。
【0056】すなわち、L−チロシンオール塩酸塩(2.
0 g, 10 mmol)をテトラヒドロフラン(20 ml)に溶解
させ、トリエチルアミン(1.4 ml, 10 mmol)、4−ジ
メチルアミノピリジン(0.37 g, 0.3 mmol)を加える。
室温でジ−t−ブチルジカーボネイト(7.9 g, 36 mmo
l)を加え3時間攪拌して反応させた後、ピペリジン(1
0ml)を加え、室温で一夜放置する。減圧下溶媒を溜去
し、残査を酢酸エチルに溶かす。有機層を4%炭酸水素ナ
トリウム、4%硫酸水素カリウム、イオン交換水、飽和食
塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃
縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製する
と、N−t−ブトキシカルボニル−L−チロシンオール
−O−t−ブトキシカルボニル(フェノール性水酸基が
脱保護されたフェノール類)が92%の収率で白色粉末とし
て得られた。
【0057】[実施例22]ドーパミンは、一分子内に
フェノール性水酸基とアミノ基を併せ持つ。フェノール
性水酸基が遊離し、アミノ基が保護されたフェノール類
を得るには、過剰の塩基存在下でジ−t−ブチルジカー
ボネイトを作用させ、アミノ基のみをt−ブトキシカル
ボニル基で保護できる。しかしながら、副反応としてフ
ェノール性水酸基もt−ブトキシカルボニル化される。
そこで、副生成物として生じたフェノール性水酸基上の
t−ブトキシカルボニル基のみを塩基で選択的に脱保護
することにより、収率が向上する。
【0058】すなわち、ドーパミン塩酸塩(1.9 g, 10
mmol)をジオキサン(30 ml)に溶解し、1N NaOH
(12 ml, 12 mmol)を加える。氷冷下、ジ−t−ブチル
ジカーボネイト(3.3 g, 15 mmol)を加え、室温で一夜
攪拌反応させる。反応終了後、6N NaOH(10 ml)
を加え、3時間攪拌する。反応液の酢酸エチル(100 ml
× 2 )抽出液を減圧濃縮し、油状残査をフラッシュカ
ラムクロマトグラフィーで精製すると、N−t−ブトキ
シカルボニル−ドーパミン(フェノール性水酸基が脱保
護されたフェノール類)が98%の収率で得られた。尚、反
応終了後に塩基処理(ここでは、6N NaOHを用い
た)をしない場合は、収率が78%であった。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
t−ブトキシカルボニル基で保護されているフェノール
類のフェノール性水酸基を、酸以外で効率よく脱保護す
ることができたのである。すなわち、これまで合成が困
難であった、フェノール性水酸基が遊離した保護フェノ
ール類を収率よく得られるようになった。また、フェノ
ール性水酸基上以外に、酸に不安定な基を併有するフェ
ノール類であっても、酸に不安定な基は保護したままフ
ェノール性水酸基だけを選択的に遊離させることができ
る。その場合、酸に不安定な基がカルボキシル基上にあ
れば、塩基のみならず、酸または酵素などによっても、
カルボキシル基を保護したままでフェノール性水酸基だ
けを選択的に脱保護できる。更には、フェノール性水酸
基を含む複数の官能基を有するフェノール類の保護にあ
たり、t−ブトキシカルボニル化剤を用いたことによっ
て、複数の官能基が同時にt−ブトキシカルボニル基に
より保護される。従って、保護フェノール類を得るため
の合成ステップが少なくてすみ、収率の向上にもつなが
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 39/08 C07C 39/08 51/377 51/377 65/03 65/03 B 65/05 65/05 213/06 213/06 215/76 215/76

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 t−ブトキシカルボニル基をフェノール
    性水酸基と結合させた後、塩基を作用させることによ
    り、前記フェノール性水酸基を遊離させることを特徴と
    するt−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性
    水酸基の脱保護方法。
  2. 【請求項2】 フェノール性水酸基およびカルボキシル
    基を有するフェノール類の、フェノール性水酸基にt−
    ブトキシカルボニル基を結合させるとともに、カルボキ
    シル基に、t−ブトキシカルボニル基から副生するt−
    ブチルアルコールのt−ブチル基、または溶媒として用
    いたt−ブチルアルコールのt−ブチル基を結合させた
    後、前記フェノール性水酸基を遊離させることを特徴と
    するt−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性
    水酸基の脱保護方法。
  3. 【請求項3】 フェノール性水酸基と、アミノ基および
    /またはアルコール性水酸基とを有するフェノール類
    の、フェノール性水酸基にt−ブトキシカルボニル基を
    結合させるとともに、アミノ基および/またはアルコー
    ル性水酸基にt−ブトキシカルボニル基を結合させた
    後、塩基を作用させることにより、前記フェノール性水
    酸基を遊離させることを特徴とするt−ブトキシカルボ
    ニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法。
  4. 【請求項4】 塩基がピペリジン、ジエチルアミン、
    1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセ
    ン、金属アルコキシドから選ばれた少なくとも1種であ
    り、非水溶媒中で前記塩基を作用させてフェノール性水
    酸基を遊離させることを特徴とする請求項1または請求
    項3に記載のt−ブトキシカルボニル基で保護したフェ
    ノール性水酸基の脱保護方法。
  5. 【請求項5】 塩基がアンモニア、金属水酸化物から選
    ばれた少なくとも1種であり、水または含水極性溶媒中
    で前記塩基を作用させてフェノール性水酸基を遊離させ
    ることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のt
    −ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基
    の脱保護方法。
JP2001051941A 2001-02-27 2001-02-27 t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法 Pending JP2002255862A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001051941A JP2002255862A (ja) 2001-02-27 2001-02-27 t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001051941A JP2002255862A (ja) 2001-02-27 2001-02-27 t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002255862A true JP2002255862A (ja) 2002-09-11

Family

ID=18912648

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001051941A Pending JP2002255862A (ja) 2001-02-27 2001-02-27 t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002255862A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1375463A4 (en) * 2001-03-29 2009-09-02 Osaka Gas Co Ltd OPTICALLY ACTIVE COMPOUND AND PHOTOSENSITIVE RESIN COMPOSITION
CN115286783A (zh) * 2021-12-29 2022-11-04 常熟耐素生物材料科技有限公司 一种间十五烯基酚聚醚的制备方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1375463A4 (en) * 2001-03-29 2009-09-02 Osaka Gas Co Ltd OPTICALLY ACTIVE COMPOUND AND PHOTOSENSITIVE RESIN COMPOSITION
CN115286783A (zh) * 2021-12-29 2022-11-04 常熟耐素生物材料科技有限公司 一种间十五烯基酚聚醚的制备方法
CN115286783B (zh) * 2021-12-29 2023-10-17 常熟耐素生物材料科技有限公司 一种间十五烯基酚聚醚的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3826208B2 (ja) 光学純正アルブテロールの異性体選択性製剤
WO2005105826A1 (ja) チロペプチンa類縁体
EP2487152A1 (en) Process for the preparation of Lacosamide including resolution of O-methyl-DL-serine
KR101308258B1 (ko) 엔독시펜의 신규한 제조 방법
JP5238822B2 (ja) ドセタキセル(Docetaxel)の合成プロセス、その中間体及びその合成法
JP2002255862A (ja) t−ブトキシカルボニル基で保護したフェノール性水酸基の脱保護方法
WO1997032874A1 (fr) Nouveaux derives soufres comportant une liaison amide, leur procede de preparation, leur application a titre de medicaments et les compositions pharmaceutiques les renfermant
JP3347189B2 (ja) キナ酸誘導体およびその製造方法
JP2012524044A (ja) 2,4,6−オクタトリエン−1−酸及び2,4,6−オクタトリエン−1−オールの調製方法
JP2003342269A (ja) タキサン類の還元方法
JP2003221369A (ja) スフィンゴシンの合成方法
WO2008116387A1 (fr) Procédé de fabrication de taxol et de dérivés de taxol
CN113651715B (zh) 一种一锅法合成香豆酰多巴胺的方法
TW201722982A (zh) 一種胺己基乳糖-三氮壬烷三醋酸鍵結物之合成方法
KR101087498B1 (ko) 바이나프톨 알데히드 유도체 및 그의 제조방법
KR100915175B1 (ko) 이미다프릴의 제조 방법
JP2825608B2 (ja) 光学活性トレオ―3―アミノ―2―ヒドロキシペンタン酸及びその製造法
US5684168A (en) β-phenylisoserine-(2R,3S), salts, preparation and use thereof
JP2011520876A (ja) HMG−CoA還元阻害剤の製造のためのキラル中間体の製造方法
JP4463515B2 (ja) L−アンセリンの合成法
JP4302974B2 (ja) オキサゾール化合物の製造方法
EP0906901B1 (en) Process for producing propionic acid derivatives
JP2002308864A (ja) 5−プロパルギルフルフリルアルコールの製造法
CN113636949A (zh) 一种一锅法合成咖啡酰多巴胺的方法
JP2005298337A (ja) β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法およびその中間体

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20031031

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20040129