JP2003342269A - タキサン類の還元方法 - Google Patents

タキサン類の還元方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 10−デアセチルバッカチン(III)などのタ
キサン類の9位オキソ基を還元して9β−ヒドロキシ基
を有する10−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−デ
オキソバッカチン(III)などの化合物を効率的に製造す
る方法を提供する。 【解決手段】 タキサン類の9位オキソ基を還元して9
β−ヒドロキシ基に変換する方法であって、マロン酸な
どの有機酸の存在下でアルカリ金属ボロハイドライド又
はテトラアルキルアンモニウムボロハイドライドなどの
金属水素化ホウ素化合物により還元を行うことを特徴と
する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタキサン類の9位オ
キソ基を還元して9β−ヒドロキシ基に変換する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】タキソール(taxol)はイチイの樹皮から
抽出される特異な4環構造を有する抗腫瘍性化合物であ
り、卵巣癌、乳癌などに対して非常に有効な抗腫瘍剤と
して注目されている。また、タキソテル(taxotere)など
のタキサン類はタキソールよりもさらに高い活性を有す
ると報告されている(米国特許第4814470号明細
書)。これらのタキソールの4環構造の9位のオキソ基
を還元して得られる9β−ヒドロキシ化合物も水溶性が
高められた抗腫瘍剤として有望である。
【0003】タキソール、タキソテール、バッカチンな
どのタキサン類の9位オキソ基を還元して9β−ヒドロ
キシ基に変換する方法としては国際公開WO94/20
485に記載された方法が知られている。この公報に
は、バッカチン(III)とn−Bu4NBH4とを塩化メチ
レン中で反応させることにより9−デスオキソ−9β−
ヒドロキシバッカチン(III)が得られることが記載され
ており、同公報の実施例1には10−デアセチルバッカ
チン(III)を塩化メチレン中でn−Bu4NBH4で還元
することにより10−デアセチル−9β−ヒドロキシ−
9−デオキソバッカチン(III)が得られることが記載さ
れている(n−Buはノルマルブチル基を示す)。この
実施例で得られる目的物の収率は85%であることが示
されているが、本発明者らが追試を行ったところ、この
方法で得られる目的物には多量の不純物が含有されてお
り、工業的な利用には適しない低品質なものであること
が判明した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、タキ
サン類の9位オキソ基を効率的に9β−ヒドロキシ基に
変換して高純度の9β−ヒドロキシ化合物を製造する方
法を提供することにある。本発明の課題の一例は、例え
ば、タキサン類の製造用中間体として有用な高純度の1
0−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−デオキソバッ
カチン(III)を10−デアセチルバッカチン(III)から高
純度かつ高収率に製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく鋭意研究を行った結果、タキサン類の9位
オキソ基をn−Bu4NBH4などの還元剤で処理して9
β−ヒドロキシ基に変換するにあたり、反応混合物に有
機酸類を添加することにより不純物の生成を顕著に抑制
でき、還元生成物を高純度かつ高収率に製造できること
を見出した。また、10−デアセチルバッカチン(III)
の9位オキソ基を還元して10−デアセチル−9β−ヒ
ドロキシ−9−デオキソバッカチン(III)を製造するに
際して上記の方法を適用することにより、極めて高純度
な目的物を高収率に製造できることを見出した。本発明
は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0006】すなわち、本発明は、タキサン類の9位オ
キソ基を還元して9β−ヒドロキシ基に変換する方法で
あって、有機酸の存在下で金属水素化ホウ素化合物によ
り還元を行うことを特徴とする方法を提供するものであ
る。本発明の好ましい態様によれば、タキサン類が10
−デアセチルバッカチン(III)であり、還元生成物が1
0−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−デオキソバッ
カチン(III)である上記方法が提供される。また、別の
観点からは、9β−ヒドロキシ基を有するタキサン類の
製造方法であって、タキサン類の9位オキソ基を有機酸
の存在下で金属水素化ホウ素化合物により還元を行う工
程を含む方法が本発明により提供される。この発明の好
ましい態様によれば、タキサン類が10−デアセチルバ
ッカチン(III)であり、9β−ヒドロキシ基を有するタ
キサン類が10−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−
デオキソバッカチン(III)である上記方法が提供され
る。
【0007】本発明の好ましい態様によれば、金属水素
化ホウ素化合物がアルカリ金属ボロハイドライド及びテ
トラアルキルアンモニウムボロハイドライドからなる群
から選ばれる金属水素化ホウ素化合物である上記の方
法;金属水素化ホウ素化合物がNaBH4、(n−C
49)4NBH4、(CH3)4NBH4、及び(C25)4NB
4からなる群から選ばれる金属水素化ホウ素化合物で
ある上記の方法;金属水素化ホウ素化合物が(n−C4
9)4NBH4である上記の方法;溶媒としてエステル系溶
媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒、エ
ーテル系溶媒、芳香族炭化水素類、及びアルカン類から
なる群から選ばれる溶媒を用いる上記の方法;溶媒がエ
ステル系溶媒である上記の方法;溶媒が酢酸アルキル類
である上記の方法;溶媒が酢酸メチルである上記の方
法;有機酸がマロン酸、クエン酸、アスパラギン酸、及
びp−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)か
らなる群から選ばれる酸である上記の方法;及び有機酸
がマロン酸である上記の方法が提供される。
【0008】本発明の特に好ましい態様によれば、還元
剤の溶液を、有機酸の一部を含む反応混合物内に滴下し
た後、有機酸の残部を溶液の状態で反応系に滴下する工
程を含む上記方法が提供される。また、別の好ましい態
様によれば、タキサン類が10−デアセチルバッカチン
(III)であり、還元生成物が10−デアセチル−9β−
ヒドロキシ−9−デオキソバッカチン(III)であり、金
属水素化ホウ素化合物が(n−C49)4NBH4であり、
溶媒が酢酸メチルであり、有機酸がマロン酸である上記
方法;並びに、酢酸メチル中に10−デアセチルバッカ
チン(III)及びマロン酸を含む混合物に(n−C49)4
BH4の酢酸メチル溶液を滴下し、該滴下終了後、さら
にマロン酸の酢酸メチル溶液を滴下する工程を含む10
−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−デオキソバッカ
チン(III)の製造方法が提供される。
【0009】さらに本発明により、タキサン類の9位オ
キソ基が9β−ヒドロキシ基に変換された化合物の製造
方法であって、有機酸の存在下で金属水素化ホウ素化合
物により還元を行うことを特徴とする方法が提供され
る。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の方法は、タキサン類の9
位オキソ基を還元して9β−ヒドロキシ基に変換するに
あたり、有機酸の存在下で金属水素化ホウ素化合物によ
り還元を行うことを特徴としている。
【0011】本明細書において「タキサン類」とは、タ
キソール、タキソテール、及びバッカチンなどを含め、
これらに共通する4環構造を有する化合物を包含する意
味で用いる。タキソールの構造式は下記に示す通りであ
り(式中、Phはフェニル基、Acはアセチル基を意味
する)、本明細書において「9位オキソ基」という用語
は、下記に示す4環構造に存在するオキソ基のことであ
る。この番号付けは当業界で通常用いられるものであ
り、タキソール、タキソテール、及びバッカチンなどの
タキサン類について共通する番号付けとして当業者に理
解されている(例えば国際公開WO94/20485を
参照)。もっとも、他の番号付けによるタキサン類につ
いては上記の番号付けに読み替えて本発明を適用するこ
とができ、当業者にはこのような番号付けの読み替えは
自明である。
【0012】
【化1】
【0013】本発明の方法に適用可能なタキサン類とし
ては9位にオキソ基を有するものであれば特に限定され
ず、天然由来の化合物のほか、半合成的又は合成的に得
られる化合物なども適用対象である。タキサン類は、目
的の反応時において不活性な官能基である限り、いかな
る官能基を有するものであってもよい。また、反応時に
おいて活性な官能基については、適宜の保護基を用いて
保護しておくことにより、本発明の方法を提供すること
ができる。保護基の種類は反応時において不活性であ
り、反応後に適宜の手段で脱離させることができるもの
であれば特に限定されないが、例えば、プロテクティブ
・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Prot
ective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T.
W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・
インコーポレイテッド(John Wiley &Sons Inc.)(198
1)などを参照することにより当業者は適宜の保護基を
容易に選択することが可能である。
【0014】発明の方法では、タキサン類の9位オキソ
基が9β−ヒドロキシ基に変換されるが、その方法の一
例として、タキサン類が10−デアセチルバッカチン(I
II)であり、その9位オキソ基を9β−ヒドロキシ基に
変換して10−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−デ
オキソバッカチン(III)を製造する工程を下記に示す。
反応原料として用いる10−デアセチルバッカチン(II
I)は容易に入手できる。もっとも、本発明の方法は10
−デアセチルバッカチン(III)を用いる特定の方法に限
定されることはない。スキーム中、Acはアセチル基、
Bzはベンジル基を示す。
【0015】
【化2】
【0016】還元剤として用いられる金属水素化ホウ素
化合物の種類は特に限定されないが、例えば、NaBH
4、(n−C49)4NBH4、(CH3)4NBH4、(C25)
4NBH4、(CH3)4NBH(OOCCH3)3、NaBH
(OOCCH3)3など好ましく用いることができるが、こ
れらに限定されることはない。好ましくは、アルカリ金
属ボロハイドライド及びテトラアルキルアンモニウムボ
ロハイドライドからなる群から選ばれる金属水素化ホウ
素化合物を用いることが好ましい。より具体的には、N
aBH4、(n−C49)4NBH4、(CH3)4NBH4
(C25)4NBH4からなる群から選ばれる金属水素化ホ
ウ素化合物が好ましい。有機溶媒、特に本発明の方法に
おいて好ましく用いられる酢酸エステル系有機溶媒への
溶解度及び収率などの観点から、(n−C49)4NBH4
を用いることが好ましい。還元剤の量は溶媒の種類や反
応温度などの条件に応じて適宜選択でき、特に限定され
ることはないが、例えばタキサン類に対して1〜10倍
モル、好ましくは2〜6倍モル程度である。
【0017】本発明の方法は、溶媒の存在下に行うこと
ができる。溶媒の種類は特に限定されず、例えば、エス
テル系溶媒(ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢
酸プロピル、酢酸n−ブチル、炭酸ジエチルなど)、ケ
トン系溶媒(ジエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、メチルイソプロピルケトン、ジシクロプロピルケト
ン、アセトンなど)、アルカン類(n−ヘキサンな
ど)、アルコール類(メタノール、n−プロピルアルコ
ール、シクロヘキサノールなど)、ニトリル系溶媒(プ
ロピオニトリル、アジポニトリル、n−ブチロニトリ
ル、n−カプロニトリル、アセトニトリルなど)、アミ
ド系溶媒(ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエ
チルプロピオンアミド、N,N−ジエチルホルムアミ
ド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチル
メタクリルアミドなど)、アルデヒド類(プロピオンア
ルデヒド、n−ブチルアルデヒドなど)、ジオール類
(1,4−ブタンジオールなど)、エーテル系溶媒(ジ
メトキシメタン、ジメトキシエタン、イソプロピルエー
テル、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン系溶媒
(1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタンなど)、芳
香族炭化水素系溶媒(トルエンなど)、ジメチルスルホ
キシドなどを用いることができるが、これらのうち、エ
ステル系溶媒、アミド系溶媒、及びハロゲン系溶媒が好
ましい。2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0018】これらのうち、環境汚染防止の観点からハ
ロゲン含有溶媒よりエステル系溶媒又はアミド系溶媒を
用いることが好ましく、より好ましくは酢酸メチルなど
の酢酸アルキル類、N,N−ジエチルホルムアミド又は
N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒を用
いることができる。特に好ましいのは酢酸メチルであ
る。溶媒の量は特に限定されず、タキサン類の種類や還
元剤の種類及び使用量などに応じて当業者が適宜選択可
能であるが、通常はタキサン類1gに対して10ml〜
100ml程度である。
【0019】有機酸の種類は目的の反応を阻害しないか
又は不活性であれば特に限定されず、一塩基酸又は多塩
基酸のいずれを用いてもよい。光学活性の有機酸又はそ
の任意の混合物、あるいはラセミ体である有機酸を用い
てもよい。例えば、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、グ
ルタミン酸、コハク酸、アジピン酸などのほか、アスパ
ラギン酸やグリシンなどのアミノ酸又はp−アミノベン
ゼンスルホン酸などを用いてもよい。本明細書において
用いられる「有機酸」という用語は1又は2以上の同一
又は異なる酸性官能基、好ましくはカルボキシル基を有
する低分子有機化合物を意味しているが、いかなる意味
においてもこの用語を限定的に解釈してはならず、最も
広義に解釈する必要がある。有機酸として、好ましく
は、マロン酸、クエン酸、アスパラギン酸、及びスルフ
ァニル酸からなる群から選ばれる有機酸を用いることが
でき、特に好ましくはマロン酸を用いることができる。
有機酸の使用量は特に限定されないが、一般的には、例
えば還元剤と当倍モル程度を用いることができるが、タ
キサン類に対して1〜5倍モル程度を用いることが好ま
しい。必要以上に多量の有機酸を反応系に添加したり、
一時に大量の有機酸を反応系に添加すると、反応速度の
低下や不純物の増加などが認められる場合がある。な
お、有機酸は、反応終了後は必要に応じて塩基水溶液で
除去することができる。
【0020】本発明の方法を行うにあたり、溶媒へのタ
キサン類、有機酸、及び還元剤の添加順序、反応温度、
反応時間などは特に限定されず、当業者が適宜選択可能
である。反応温度及び反応時間は、通常は室温〜溶媒の
還流温度、好ましくは室温〜60℃程度、より好ましく
は30〜50℃程度の反応温度で数分〜数日程度、好ま
しくは30分〜15時間程度の間で適宜選択できる。
【0021】反応種の反応系への導入についても特に限
定されず、例えば、タキサン類、有機酸、及び還元剤を
溶媒に一時に添加して反応を行ってもよく、又はタキサ
ン類及び有機酸を溶媒に溶解しておき、その溶液に還元
剤を一時に、又は徐々に添加してもよい。あるいは、タ
キサン類と還元剤とを溶媒中に添加しておき、有機酸を
反応の進行に合わせて徐々に添加してもよい。還元剤又
は有機酸を反応系に添加するに際しては、そのままで添
加してもよいが、溶媒に溶解して滴下してもよい。例え
ば、タキサン類及び1倍モル程度の有機酸を溶媒中に添
加した後、還元剤を添加し、さらに1ないし数倍モルの
有機酸を反応混合物に添加する方法を採用することがで
きる。この方法は不純物の生成を抑制するために好まし
く用いられるが、還元剤の添加及びその後に行う有機酸
の添加は、それぞれ反応溶媒と同じ有機溶媒に溶解した
溶液を滴下することにより行うことが望ましい。好まし
くは、反応混合物のpHが6、好ましくは7を下回らな
いように反応の進行に合わせて有機酸を徐々に添加する
ことができる。反応液のpHが5.5を下回ると転位体
の生成が増加し、目的物の収率及び純度が低下する場合
がある。
【0022】本発明の方法で得られた9β−ヒドロキシ
基を有する化合物の精製は、有機合成化学で常用される
方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、
各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うこと
ができる。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定される
ことはない。 例1(比較例) ジクロルメタン(50ml)、10−デアセチルバッカ
チン(III)(300mg、0.55ミリモル)およびn
−Bu4NBH4(709mg、2.76ミリモル)の混
合物を室温で12時間攪拌した。得られた混合物を酢酸
エチルで希釈し、NaHCO3水溶液と共に20分間攪
拌して反応を停止した。有機相をNaHCO3水溶液お
よび塩水で洗い、Na2SO4で乾燥した。この有機相を
濃縮して得た残渣をフラッシュクロマトグラフィーによ
り精製し、酢酸エチル−メタノール(50:1)で溶出
して10−デアセチル−9β−ヒドロキシ−9−デオキ
ソバッカチン(III)260mg(収率87%、純度2
2.6%)を得た。
【0024】例2(実施例) ジクロルメタン(50ml)、10−デアセチルバッカ
チン(III)(300mg、0.55ミリモル)、および
マロン酸(114.7mg、1.10ミリモル)の混合
物を40℃で攪拌し、n−Bu4NBH4(709mg、
2.76ミリモル)をCH2Cl2(10ml)に溶解し
て滴下した、次いでマロン酸(172.1mg、1.6
5ミリモル)を2時間かけて滴下した。得られた混合物
を酢酸エチルで希釈し、NaHCO3水溶液と共に20
分間攪拌することによって反応を停止した。有機相をN
aHCO3水溶液および塩水で洗い、Na2SO4で乾燥
した。有機相を濃縮して得た残渣をフラッシュクロマト
グラフィーにより精製し、酢酸エチル−メタノール(5
0:1)で溶出して10−デアセチル−9β−ヒドロキ
シ−9−デオキソバッカチン(III)270mg(収率9
0%、純度89.9%)を得た。
【0025】例3(実施例) 酢酸メチル(100ml)、10−デアセチルバッカチ
ン(III)(10g、10.82ミリモル)、およびマロ
ン酸(1.9g、18.26ミリモル)の混合物を40
℃で攪拌し、n−Bu4NBH4(11.7g、45.5
7ミリモル)を酢酸メチル(30ml)に溶解して滴下
した。次いでマロン酸(2.85g、27.39ミリモ
ル)を酢酸メチル(30ml)に溶解して2時間かけて
滴下し、さらに水(10ml)を加えて反応を停止し
た。反応液を濃縮した後に、酢酸エチル(200ml)
を加え析出してくる固形物を濾去した。濾液を水(80
ml)で6回洗浄し、さらに0.2N塩酸とNaHCO
3水溶液で洗浄してMgSO4で乾燥した。有機相を濃縮
して、得られた濃縮物をメタノール(18ml)と酢酸
エチル(18ml)の混合物に溶解し、この溶液にアセ
トニトリル(54ml)を加えることにより結晶を析出
させた。析出した結晶をろ過して10−デアセチル−9
β−ヒドロキシ−9−デオキソバッカチン(III)7.0
g(収率70%、純度91.5%)を得た。
【0026】
【発明の効果】本発明の方法によりタキサン類の9位オ
キソ基を効率的に9β−ヒドロキシ基に変換して高純度
の目的物を製造することができる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タキサン類の9位オキソ基を還元して9
    β−ヒドロキシ基に変換する方法であって、有機酸の存
    在下で金属水素化ホウ素化合物により還元を行うことを
    特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 タキサン類が10−デアセチルバッカチ
    ン(III)であり、還元生成物が10−デアセチル−9β
    −ヒドロキシ−9−デオキソバッカチン(III)である請
    求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 金属水素化ホウ素化合物がアルカリ金属
    ボロハイドライド及びテトラアルキルアンモニウムボロ
    ハイドライドからなる群から選ばれる金属水素化ホウ素
    化合物である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 金属水素化ホウ素化合物が(n−C49)
    4NBH4である請求項1又は2に記載の方法。
  5. 【請求項5】 エステル系溶媒中で還元を行う請求項1
    ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 エステル系溶媒が酢酸メチルである請求
    項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 有機酸がマロン酸、クエン酸、アスパラ
    ギン酸、及びp−アミノベンゼンスルホン酸からなる群
    から選ばれる有機酸である請求項1ないし6のいずれか
    1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 有機酸がマロン酸である請求項1ないし
    6のいずれか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 タキサン類が10−デアセチルバッカチ
    ン(III)であり、還元生成物が10−デアセチル−9β
    −ヒドロキシ−9−デオキソバッカチン(III)であり、
    金属水素化ホウ素化合物が(n−C49)4NBH4であ
    り、溶媒が酢酸メチルであり、有機酸がマロン酸である
    請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 タキサン類の9位オキソ基が9β−ヒ
    ドロキシ基に変換された化合物の製造方法であって、有
    機酸の存在下で金属水素化ホウ素化合物により還元を行
    うことを特徴とする方法。
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