JP2002250801A - 大きな入射角度における紫外線反射防止コーティング - Google Patents

大きな入射角度における紫外線反射防止コーティング

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JP2002250801A JP2001379453A JP2001379453A JP2002250801A JP 2002250801 A JP2002250801 A JP 2002250801A JP 2001379453 A JP2001379453 A JP 2001379453A JP 2001379453 A JP2001379453 A JP 2001379453A JP 2002250801 A JP2002250801 A JP 2002250801A
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クシュネライト ラルフ
Hans-Jochen Paul
パウル ハンス・ヨーヘン
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 わずか3または4層の反射防止多層コーティ
ングをレーザ抵抗性の光学的構成要素の製造のために提
案し、約70°から約80°の範囲、特に約72°と約
76°の間の範囲の大きな入射角度で、約150nmか
ら約250nmの波長範囲における紫外線に対し、最小
の残留反射および高い透明性を可能にする。 【解決手段】 p−偏光した紫外線の入射のために3層
システムが用いられ、低屈折性の物質、特にフッ化マグ
ネシウムの層は、高屈折性の物質、特定の波長の場合に
おいて、最小の吸収性物質の、特に酸化ハフニウムまた
は酸化アルミニウム、の2層の間に配置される。例え
ば、このことは、残留反射が、約72°と約76°の間
の範囲の入射角度における248nmの波長の場合にお
いて、1%よりもかなり小さいことが達成されることを
許容する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、大きな入射角度、特に約70°
と約80°の間における、約150nmと約250nm
の間の波長範囲の紫外線に対して低反射率である光学的
構成要素に関する。
【0002】多くの分野で、約150nmと約250n
mの間の波長範囲の紫外線に対し、低反射率で且つ高い
透明度または透過率を持つ、強力な光学的構成要素に対
する必要性が増加している。この波長範囲からの光は、
例えば、ウェーハステッパまたはウェーハスキャナを用
いて高度に集積化された半導体構成要素を製造するため
のマイクロリソグラフ露光システムにおいて用いられ
る。その工程においては、照明システムを通して、光源
がマスク(レチクル)を照明し、像は投影システムを用
いることにより、半導体ウェーハにコートされたフォト
レジストの上に再生される。この工程により達成される
小型化が、使用される光線の波長λの短縮化を増加させ
ることは既知の事実であるが、最も近代的なデバイスに
おいては、深い紫外範囲(Deep Ultravio
let,DUV)からの波長が用いられる。このための
光源は、作動波長λ=248nmのフッ化クリプトン
(KrF)エキシマレーザ、および作動波長λ=約19
3nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザであ
る。これらのレーザは直線的な偏光を発生させ、これ
は、光学的構成要素の表面上へ斜めに入射した場合は、
個々の表面の配置に従って、s−偏光またはp−偏光の
いずれかとして生じる。
【0003】よく知られているように、透明な光学的構
成要素の表面は、いわゆる反射防止層すなわち光に対す
るそれらの透明度を増加させるための反射防止層(AR
層)により被覆されている。通常、その工程において
は、異なった屈折率の誘電性物質がいくつか積み重ねら
れた層から成る多層システムが用いられ、高い屈折性物
質の層と比較的低い屈折性物質の層とが、通常お互いの
上に交互に積み重ねられている。
【0004】このため、効果的な反射の低下にとって、
垂直方向の入射光の場合は、もし適当な層物質が選択さ
れるならば数層で十分であるが、経験から、必要とされ
る層の数は入射角度θ、すなわち入射光の方向と基準の
表面との間の角度、が大きくなるにつれて増加する。こ
の効果は、例えばヨーロッパ特許公報第0855604
号において示されており、そこでは、70°と80°の
間の大きな入射角度における、150nmと250nm
の間の波長範囲の紫外線に対する反射防止層が明らかに
されている。そこで提案された多層システムは、高屈折
性物質の層の光学的厚さが常に同一であり、また低屈折
性物質の中間層の光学的厚さも常に同一であり、そのた
め周期的な層の配列となることで特徴づけられる。λ=
193nmの波長のp−偏光についての実施例が示され
ており、それによれば、θ=72°の入射角度において
残留反射を約0.5%を下回る値にまで最小化するため
には7層が必要とされ、θ=74°の入射角度において
は9層が必要とされ、θ=76°の入射角度においては
さらに11層が必要とされる。λ=248nmの波長の
p−偏光の場合は、対応する入射角度に対し、各々2層
の追加が必要とされる。
【0005】反射防止多層を備えた光学的構成要素の実
用的な用途は、しばしば、この種の多層システムが、集
中的な高エネルギーの紫外線放射を受けたときに限られ
た抵抗性しか示さないという事実に影響される。結果と
して、レーザの抵抗性不足の問題は、入射光のエネルギ
ー密度が増大すればするほど目立ってくる。高エネルギ
ー密度のレーザ光は、例えばデバイスの分野では、エキ
シマレーザの帯域幅を狭くするために用いられる。米国
特許公報第5,978,409号において、そのような
デバイスが例として示されており、そこでは、階段格子
へ入射する前にレーザ光線の幅を広げるために、3つま
たは4つのプリズムの配置が提供され、その斜めの表面
にはレーザ光が常に大きな入射角度で入射する。達成可
能な光線拡大に関して最適な形態である場合には、3つ
のプリズムが提供され、その斜めの表面には常にθ=約
74°の入射角度で紫外線が衝突する。この形態に関し
て言えば、193nmの波長の場合には十分なレーザ抵
抗性のある反射防止層が得られず、被覆されていないプ
リズムが用いられるが、そのことは、利用できる基板物
質(CaF2または合成水晶)あるいはプリズムの2重
通過の場合には、反射のために全体で40%よりも大き
な損失をもたらす。それ故に、代替として、4つのプリ
ズムの斜めの表面に約67°と約71°の間のより小さ
な入射角度でレーザ光が入射する実施形態が提案されて
いる。反射を低下させるために、Al 23の単層が常に
表面に適用されており、その単層は十分なレーザ抵抗性
を有し、また反射の十分な低下をもたらすよう意図され
ている。しかしながら、約74°の入射角度に対して
は、そのような単層を通して残留反射が約3%を下回っ
て低下することはあり得ない。
【0006】本発明の目的は、光学的構成要素のための
反射防止コーティングを提案することであり、それは約
70°と約80°の範囲の大きな入射角度における、約
150nmと約250nmの間の波長範囲の紫外線に対
して効果的な反射防止コーティングを可能にし、そして
高いレーザ抵抗性によって特徴づけられる。
【0007】この目的の解決策として、本発明は請求項
1または請求項15の特徴を含む光学的構成要素を提案
する。さらに都合のよい実施態様は、従属請求項に明記
されている。全請求項の一語一句が、参照によって、詳
細な説明の主題へ取り込まれている。
【0008】本発明によると、紫外線に対して低反射率
の光学的構成要素は、多層システム、すなわち、常に紫
外線に対して透明な誘電物質から成るいくつかの積み重
ねられた層を有する多層コーティングを、大きな入射角
度における特定の波長範囲で、反射の低下のために光学
的基板の少なくとも一つの表面に適用することによっ
て、作られる。層物質は高屈折性または低屈折性であ
り、その中で高屈折性物質は他の層物質の屈折率と比較
してより高い屈折率を有し、低屈折性物質は他の層物質
と比較してより低い屈折率を有する。しばしば、基板物
質の屈折率は、それらの層物質の屈折率の中間に位置す
る。多層システムは5層未満である。好ましくは3層ま
たは4層のみが提供される。
【0009】既知の多層システムと比較して、層の数が
少ないため、コーティングのレーザ抵抗性は改善され、
エラーの発生確立は層の劣化を導くが、多層システムに
おいては層の劣化はたいていより低く、適用される層の
数もより少ない。レーザ抵抗性を減少させるエラーのタ
イプは、特に、不純物、欠陥、または混入物である場合
が考えられ、それらは局部的吸収を増加させ、それ故に
層に不均一な放射負荷をもたらす。層の数の減少は、工
程の簡素化をもたらし、本発明による被覆された光学的
構成要素の提供にかかるコストを低下させる。
【0010】基板に隣接する層は、第1層として以下に
も述べられており、好ましくは高屈折性物質から成り、
そのため3層システムの場合、高屈折性層と低屈折性層
とが交互になっており、外側の第3層も高屈折性物質か
ら成るが、一方高および低屈折性物質が交互になった4
層システムの場合は、低屈折性物質である外側の層は光
学的構成要素を取り囲む媒体に隣接する。
【0011】約150nmと250nmの間の考慮され
た波長範囲において十分に高い屈折率を有し、効果的な
多層コーティングのために十分に大きな屈折係数比率を
可能にする物質は、利用できる低屈折性層物質と比較す
ると、わずか少数の物質しか無いことは、既知の事実で
ある。与えられた波長での高屈折性物質の屈折率または
屈折係数nは、好ましくは、n≧1.7の値、特にn≧
2.0の値である。優先されるものとしては、高い屈折
性の物質として金属酸化物が用いられ、それは比較的高
い特有のレーザ抵抗性を有する強力な化合物であるため
である。
【0012】本発明の特有の見地は、透過性を増加させ
る働きをする反射防止コーティングの好ましい実施態様
の場合、1つまたはそれ以上の層、特に高屈折層が、わ
ずかな範囲で入射光を吸収する物質から成る場合がある
ということである。そのような物質は便宜的に、複合屈
折率n=n−ikを用いて説明され、ここでのnは真の
屈折率であり、kは考慮された作動波長における吸収率
または消光係数である。これは通常、いわゆる非吸収性
物質の場合、10-6を下回る。吸収の負の効果を避ける
ためには通常、吸収係数kが10-6または10-5より大
きく、しかし0.01未満、特に0.005未満である
物質を選択すれば十分であることが示されており、その
中でもkが0.001より著しく大きくない物質が好ま
しい。
【0013】わずかに吸収性のある物質が、透過率が反
射防止コーティングを増加させる場合は、有利に利用も
され得るという知識は、利用できる物質、特に高屈折率
の物質の範囲が拡大しているように、層の設計における
新しい次元を開いてきた。これらの利点は、3層または
4層以上の、および/または列挙されたもの以外の入射
角度における多層システムでも用いられることである。
熱望されているレーザ破壊限界の拡大に関して言えば、
これは確かに物質の吸収係数に影響されるが、干渉効果
に影響するコーティング構造および製造工程もコーティ
ングの吸収係数に影響を与えるということを考慮に入れ
るべきである。
【0014】本発明による248nmの波長でのコーテ
ィングの好ましい実施態様において、酸化ハフニウム
(HfO2)は高屈折性物質として用いられる。酸化ハ
フニウムはこの波長範囲において約2.1の真の屈折率
nを有するが、しかしながらそれは、この波長範囲にお
いて吸収性も有しており、特にこの理由によって、以前
は反射防止コーティングとして用いられなかった。吸収
係数kは約0.001である。その実施態様では、24
8nmの波長の斜めに入射する紫外線に対し高屈折性物
質として酸化ハフニウムを用いる場合は、反射を0.5
%の残留反射よりはるかに下回ることが可能であり、そ
の点で入射角度θ=74°での残留反射は事実上消失す
る。吸収は約0.2%に及び、そのためそのように被覆
された透明な構成要素は、99%より大きなまたは9
9.5%より大きな透過係数を有することができる。
【0015】例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2
は、約2.2の真の屈折係数nの場合、k=0.01の
大きさに及ぶ吸収係数を有しており、1つの代替物とし
て用いることが可能である。
【0016】193nmの波長に対する多層システムの
場合には、酸化アルミニウム(Al 23)が高屈折性層
物質として好適に用いられており、それはこの波長にお
いて、約n=1.7の大きさに及ぶ真の屈折率および約
k=0.001の吸収係数を有する。類似した光学的特
性を備えた他の物質も適している。
【0017】吸収の影響、特に透過性および層加熱につ
いては、高屈折性層の全体の厚さを保つことによって、
最小に保つことが可能となり、そして必要であれば、例
えば、高屈折性層の全体の層の厚さを100nm未満に
することによって、吸収性物質を最小に保つことが可能
となる。全体の厚さは、例えば、酸化ハフニウムを使用
する時は50nm未満で、または酸化アルミニウムを使
用する時は70nm未満にできる。
【0018】層厚さを使用することも可能であり、その
光学的厚さは4分の1波長の層厚さ(「4分の1波長」
層厚さ)から逸脱する。必要であれば、多層システムの
全ての層が、異なる物理的厚さを有することができる。
しかしながら、多層システムは、同一物質の層が同様に
同一の光学的厚さを有しているときにも可能となる。
【0019】フッ化物、特にフッ化マグネシウム(Mg
2)は、低屈折性物質として好適に使用される。適当
な物質の屈折率が高屈折性物質の屈折率および、必要で
あれば基板物質の屈折率より低い限りにおいては、フッ
化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウムまた
はフッ化アルミニウムのような選択の可能性が考えられ
る。透明な光学的構成要素のために適当な基板物質は、
中でも、ガラス(合成水晶)のような酸化ケイ素、また
はフッ化カルシウムまたはフッ化マグネシウムのような
単結晶物質、そして必要であれば、フッ化バリウムも同
様である。
【0020】これらおよび他の特徴は、特許請求の範囲
からと同様に、詳細な説明および図からも由来し、そこ
では個々の特徴のそれぞれが、本発明の実施態様におい
ておよび他の範囲において、個々にまたは下位の組み合
わせの形態において共に、常に実現され、そして、保護
される実施態様と同様に、有利性を表すことができる。
【0021】本発明の実施態様は、以下において、図に
描写され、そして更に詳細に記述されている。
【0022】図1は、248nmの波長の紫外線に対し
て透過性のある物質から作られた基板2を有する光学的
構成要素1の表面領域の中の概略断面図を含む。そこで
示される基板の平たい表面3は、例えばプリズムの斜め
の表面であり、3つの積み重ねられた層5,6,7を有
する多層反射防止コーティング4が適用されている。
【0023】基板は、n=1.47の屈折率である単結
晶のフッ化カルシウム(CaF2)から構成され、すな
わち選択的に使用することのできる物質に屈折率が似て
おり、そのようなものとして例えばn=1.5の合成水
晶ガラス(SiO2)がある。第1層5は、基板の表面
3に直接適用され、本質的に酸化ハフニウム(Hf
2)から成り、これはλ=248nmの波長において
n=2.1という比較的高い屈折率を有する。基板に隣
接する高屈折性層5は、約10nmの物理的層厚さで、
通常反射防止コーティングとして使用される「4分の1
波長の層厚さ」と比較すると非常に薄く、またこの「4
分の1波長の層厚さ」のわずか約3分の1である。その
上の第2層6は、本質的にフッ化マグネシウム(MgF
2)から成り、それは基板2と比較すると、約n=1.
41の低屈折率を有する。低屈折性物質から成る層6の
層厚さは94.4nmで、薄い第1層5の厚さのほぼ1
0倍であり、その中でこの層厚さは対応する「4分の1
波長の層厚さ」(43.7nmMgF2)の2倍以上に
等しい。外側の第3層7は、通常大気や他の気体または
真空と隣接しており、約n=1の屈折率で、やはり酸化
ハフニウムから成るが、基板に隣接する層5と比較する
と約3倍の層厚さ(28.8nm)を有しており、これ
は248nmでの酸化ハフニウムに対する「4分の1波
長の層厚さ」に等しい。
【0024】示された実施例の層および以下の全ての層
は、真空化での物理的蒸着(PVD)の通常の方法によ
って、基板2に適用される。コーティングを適用するた
めには、他の適当な技術はいかなるものも利用され得
る。
【0025】ここに典型的に示された3層システムは、
酸化ハフニウムを伴うコーティング物質が用いられる他
のものの中で、反射防止コーティングの目的として従来
より知られるシステムと比較して特性を与えられてお
り、与えられた波長範囲(λ=248nm)において、
最小ではあるが測定可能な吸収を示す。従来の非吸収性
物質の場合、吸収係数kは10-6を下回る典型的な値を
有するが、酸化ハフニウムの吸収係数はλ=248nm
で約k=10-3である。この欠点は実際的には少しも影
響がなく、物質の高屈折率という利点の方がかなり重要
であることが示されている。加えて、吸収性物質から成
る層全体の厚さが最小に保たれれば、全体の吸収は最小
に保たれる。実施例では、この層5および7の全体の層
厚さは40nm未満であり、このことは、層の激しい加
熱や関連した層の劣化のような吸収性物質に対して予想
される不利益が実際には起こらないことを意味する。レ
ーザ抵抗性を完成させるための耐久テストでは、同様の
層構造を有する層が約30mJ/cm2のエネルギー密
度を有するレーザパルスにさらされ、その結果数10億
パルスにさらされた後でも、層の劣化や分解またはその
他の劣化がなにも無いことを示しており、それはこれら
の層のレーザ抵抗性を証明する。
【0026】示されている3層反射防止コーティングの
重要な光学的性質は、図2中の測定グラフを用いて説明
されている。その中で、図1に示される層システムの反
射率Rは(パーセンテージとして)、入射角度θに依存
することが示されており、そのときp−偏光の紫外線は
λ=248nmの波長で入射する。慣習に従って、入射
角度θは通常の表面8と入射方向9との間の角度を表
し、両方で入射の水平面を示しており、そこでは入射紫
外線の電気的分野のベクトルが振動する。約70.5°
と約75.5°の間の入射角度範囲における、3層の反
射防止コーティング4に被覆された表面の反射率は1%
を下回り、また約72°と約74.5°の間の範囲では
0.5%をかなり下回ることが認識できる。約72.5
°と約74°の間の角度範囲ではほぼ完全な反射防止コ
ーティングが達成され、残留反射は約0.3%を下回
る。吸収の影響は約0.2%と非常に低く、そのため約
72.5°と74°の間の角度範囲では99.5%また
はそれ以上の透過係数が達成され得る。
【0027】図1を用いて典型的に説明される層設計
は、コーティング中の工程変動によって生じるような小
さな層厚さの変化に関しては、比較的耐性がある。それ
故に、例えば、約±5%の厚さ変化は、約0.3%とい
う問題にならない程度でしか反射率を変化させない。本
質的に、高屈折性物質の等しい層厚さも同様に可能であ
る。第1層として21.5nmのHfO2、第2層とし
て99.7nmのMgF2、および第3層として21.
5nmのHfO2を持つ3重層は、同様の光学的性質を
有する。酸化ハフニウムの代替物としては、他の誘電性
物質または同様の光学的性質を持つ物質の組み合わせ、
例えば酸化ジルコニウムなどが使用可能である。必要で
あれば、フッ化マグネシウム層の代わりに、基板と比較
して屈折性の低い他の物質層が使用可能である。利点は
高屈折性物質と低屈折性物質が交互に並んでいることで
あり、その点で、基板と隣接する層は基板物質より高い
屈折率を有しているのが望ましい。
【0028】193nmの波長においては、酸化ハフニ
ウムまたは同様の物質の吸収が非常に高いため、これら
の物質は使用できないか、または反射防止コーティング
のための例外的な場合に限って使用可能である。これら
の波長において、他の3層システム(図示せず)はそれを
証明しており、そこでは高屈折性物質として酸化アルミ
ニウムが用いられている。
【0029】この層システムも同様にわずか3層から成
り、そこにおいて高屈折性の酸化アルミニウム層はCa
2の基板に直接隣接し、より厚い酸化マグネシウム層
はそれとその外側の酸化アルミニウム層との間に配置さ
れる。光学的性質が図3の測定グラフを用いて説明され
ている実施態様において、45nmの厚さのフッ化マグ
ネシウム層は、それぞれ31.5nmの層厚さを持つ同
一厚さの酸化アルミニウムの2つの層の間に配置されて
いる。図3から、この層システムおよびλ=193nm
の波長を持つ入射p−偏光の場合、最小残留反射は約6
9°から70°の入射角度においてであり、その時の残
留反射は0.1%未満であることが認識できる。また、
この最適な入射角度から±2°の偏差の場合にも、0.
5%未満の残留反射が達成され、例えばθ=72°の入
射角度における残留反射はやはり1%未満である。
【0030】本発明による3重層システムの場合、最小
の残留反射は、入射光の波長が短くなるにつれて、より
小さい入射角度へとそれ自体が移動することが認識でき
る。しかしながら、193nmの波長および74°の入
射角度であっても、やはり非被覆基板と比較すれば十分
な反射防止コーティングが達成され、図3に示される3
層コーティングの場合の残留反射は、非被覆のCaF2
基板の場合が約R=8%であるのに対し、約1.8%で
ある。
【0031】典型的に説明された3重層を基礎として、
特定の波長および入射角度範囲に対して効果的な反射防
止コーティングは、低屈折性物質の1つの付加的な層を
適用することによりs−偏光に対しても同様に発生し得
ることが、図4から図6を用いてここで典型的に説明さ
れている。さらに、図4は光学的構成要素10の表面領
域の中の概略断面図を示しており、それは、4つの積み
重ねられた層5,6,7,12を持つ反射防止コーティ
ング11が基板2の表面3に適用されているという点
で、光学的構成要素1とは本質的に相違する。基板に隣
接する3層5,6,7は、層物質に関しては図1からの
層5,6,7と同一であり、わずかに厚さにおける最小
の差異のために、それらと相違するのみである。基板に
隣接する酸化ハフニウム層5の層厚さは約14nmであ
り、フッ化マグネシウム層6の層厚さは約109nmを
超え、また酸化ハフニウム層7の厚さは約30nmを超
えている。この上には、約53nmの層厚さのフッ化マ
グネシウム層12が、外側の層として適用されている。
【0032】4層の反射防止コーティング11の光学的
性質は図5を用いて説明され、それは248nmの波長
の入射紫外線に対する入射角度θの関数としての反射率
Rを示している。図2における曲線の連続的な線は、図
1における3重層のp−偏光に対する反射率の適切な計
算値を示しており、図4における破線は、図4に示され
る4重層のs−偏光に対する適切な値を示している。4
重層コーティング11は、約71°と約78°の間の入
射角度での残留反射を1%を下回る値にまで低下させる
ことが認識されており、約73.5°と約76°の間の
範囲における残留反射は0.3%を下回り、そして約7
5°で最小の0.1%になる。
【0033】図6はλ=193nmの紫外線についての
適切なグラフを示しており、ここでは、連続的な線は図
3からの測定曲線に該当し、そして、約45nmの厚さ
のフッ化マグネシウム層が常に、それぞれ約31.5n
mの酸化アルミニウムでできた基板に隣接する層および
外層との間に配置されている。この層システムでは、約
45nmの層厚さを持つ付加的なフッ化マグネシウム層
が、s−偏光の場合の反射率低下を向上させるために適
用されている。この周期的な構造は、ほんの少しだけ吸
収性のある高屈折性物質(酸化アルミニウム)および低
屈折性物質(酸化マグネシウム)の層厚さが同じであ
り、約71°と約75°の間の角度範囲におけるs−偏
光の場合には残留反射を1%を下回る値まで低下させ、
約72°と約76°の間では残留反射は0.5%未満で
あり、そして約74°では本質的に消失する。
【0034】わずか3層または4層の反射低下性多層コ
ーティングは、約70°から約80°までの範囲、特に
約72°と76°の間の範囲の大きな入射角度で、約1
50nmから約250nmまでの波長範囲の時に紫外線
に対して最小の残留反射を持つ、レーザ抵抗性光学的構
成要素の製造のために提案されたものである。p―偏光
された入射紫外線に対しては、低屈折性物質、特にフッ
化マグネシウムの層が、高屈折性物質、特に酸化ハフニ
ウムまたは酸化アルミニウムの2層の間に配置された3
層システムが有利に使用される。s−偏光に対する反射
低下の最適化は、低屈折性物質の付加的な層の適用によ
って達成される。
【0035】本発明に特有の見地は、多層反射防止コー
ティングにおいて、いわゆる非吸収性物質(典型的吸収
係数kが10-6を下回るもの)ばかりでなく、吸収係数
kが0.01の値、特に0.001の値を著しく超えな
い程度の低吸収性を示す物質もまた使用可能であるとい
う知識に基づいている。特に、酸化ハフニウムまたは必
要であれば酸化ジルコニウムのような物質は、約λ=2
48nmの波長に対して使用可能であり、ここで100
nmよりもかなり小さい最小の全層厚さをただ熱望する
ことは、吸収の負の効果を避けるために都合がよい。こ
れらの状態は、どの場合も特にごく少数の、例えば3つ
または4つの層を持つ多層システムの場合において固守
され得る。
【0036】テストは、外側に位置する酸化アルミニウ
ム層を持つ反射防止多層コーティングがまた、汚染効果
の回避または低下に関しても有利であることを示してい
る。フッ化マグネシウムのような従来のコーティング物
質への短い波長の紫外線照射の影響下では、ある期間の
時間が経過すると表面堆積物が形成され、その堆積物
が、使用された光学的要素の寿命を低下させ拡散した光
の量の増加をもたらすことは既知の事実である。例え
ば、アンモニウム塩および他の不純物の堆積物形成が、
米国特許公報第5,685,895号から知られてい
る。外側の酸化アルミニウム層を持つ反射防止多層コー
ティングが、適当な多層コーティングおよび他の物質か
ら成る外側の層と比較される放射試験において、酸化ア
ルミニウムから成る外側の堆積物保護層が、充分測定で
きる程度の汚染の遅延をもたらすことが明らかになっ
た。このことは、酸化アルミニウム(Al23)から成
る上部層が、UV放射下での光学的表面上の塩との化合
速度を著しく低下させることができるという証明を供給
可能にした。それ故に本発明は、被覆された光学的構成
要素を堆積物形成から保護するための過程をも包含して
おり、その過程は酸化アルミニウムから成る外側の層が
多層コーティングに適用されるという点に特徴がある。
加えて、多層コーティング上の堆積物形成に対する外側
の保護層として酸化アルミニウムを使用することが提案
されている。堆積物形成に対するこの驚くべき且つ有利
な効果は、光学的多層システムの層の数とは関係が無
く、特に5層またはそれ以上の層を持つ反射防止多層シ
ステムにおいても有利に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】248nmの波長および約74°の範囲におけ
る大きな入射角度での、反射低下のための透明性基板に
適用された3層の反射防止層の中の概略断面図である。
【図2】入射角度θの関数として、図1に描写された層
の反射率の測定値を示すグラフである。
【図3】高屈折性物質として酸化アルミニウムを用いた
3層システムに対する、λ=193nmの波長の入射角
度θの関数として、反射率の測定値を示すグラフであ
る。
【図4】透過性基板の上に4層を有する反射防止層の中
の概略断面図である。
【図5】λ=248nmにおける入射角度の関数とし
て、多層の反射率に対する計算値の比較を示すグラフで
あり、その中で、p−偏光に対しては3重層が用いら
れ、s−偏光に対しては4重層が用いられる。
【図6】λ=193nmにおける入射角度の関数とし
て、多層の反射率に対する計算値の比較を示すグラフで
あり、その中で、p−偏光に対しては3重層が用いら
れ、s−偏光に対しては4重層が用いられる。
【符号の説明】
1,10 光学的構成要素 3 表面 2 基板 4,11 反射防止コーティング 5,6,7,12 層 8 表面 9 入射方向
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ハンス・ヨーヘン パウル ドイツ連邦共和国、 73431 アアレン、 シュペングラーストラッセ 23 Fターム(参考) 2H095 BA06 BA07 BC13 2K009 AA06 AA07 BB02 BB04 CC03 CC06 DD03 EE00 4K029 AA04 AA08 AA09 AA24 BA42 BA43 BA44 BB02 BC07 BD00 5F046 CA04 CB01 CB27

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学的構成要素(1,10)であって、
    大きな入射角度、特に約70°と約80°の間で、約1
    50nmと約250nmの間の範囲の波長の紫外線に対
    し低反射率であり、基板(2)を有し、その上に反射防
    止の目的で、いくつかの積み重ねられた層(5,6,
    7,12)から構成される多層システム(4,11)
    が、少なくとも1つの表面(3)に適用され、その中で
    層は高屈折性または低屈折性の誘電性物質から成り、多
    層システム(4,11)が5層(5,6,7,12)未
    満であるを特徴とする光学的構成要素。
  2. 【請求項2】 多層システム(4,11)が3層または
    4層(5,6,7,12)であることを特徴とする請求
    項1に記載の光学的構成要素。
  3. 【請求項3】 基板(2)と隣接する第1層(5)が高
    屈折性物質から成ることを特徴とする請求項1または2
    に記載の光学的構成要素。
  4. 【請求項4】 多層システム(4,11)の層(5,
    6,7,12)は、高屈折性物質と低屈折性物質が交互
    に成っていることを特徴とする先行する請求項の1つに
    記載の光学的構成要素。
  5. 【請求項5】 特定の波長に対し、高屈折性の物質は
    1.7以上の屈折率で、その中で屈折率は、好ましくは
    1.9または2.0よりも大きいことを特徴とする先行
    する請求項のいずれか1つに記載の光学的構成要素。
  6. 【請求項6】 高屈折性物質が本質的に金属酸化物、特
    に本質的に酸化ハフニウム、酸化ジルコニウムまたは酸
    化アルミニウムから成ることを特徴とする先行する請求
    項の1つに記載の光学的構成要素。
  7. 【請求項7】 少なくとも一つの物質、特に高屈折性物
    質は、特定の波長の紫外線に対しわずかに吸収性があ
    り、その中で高屈折性物質の吸収係数kが、好ましくは
    約10-6以上0.01未満、特に0.005未満、好ま
    しくは約0.001であることを特徴とする先行する請
    求項の1つに記載の光学的構成要素。
  8. 【請求項8】 わずかに吸収性のある物質で作られた層
    (5,7)の全体の厚さが約100nm未満、好ましく
    は70nm未満、そして特に、50nm未満であること
    を特徴とする先行する請求項の1つに記載の光学的構成
    要素。
  9. 【請求項9】 低屈折性物質が本質的にフッ化物から成
    り、そして特に、本質的にフッ化マグネシウムから成る
    ことを特徴とする先行する請求項の1つに記載の光学的
    構成要素。
  10. 【請求項10】 基板が好ましくはガラス様の二酸化ケ
    イ素から成ることを特徴とする先行する請求項の1つに
    記載の光学的構成要素。
  11. 【請求項11】 基板(2)が好ましくは結晶のフッ化
    物から成り、特に、フッ化カルシウムまたはフッ化マグ
    ネシウムから成ることを特徴とする請求項1〜9の1つ
    に記載の光学的構成要素。
  12. 【請求項12】 入射角度の範囲が74±2°で、波長
    が248nmの紫外線に対し1%未満の残留反射であ
    り、その中で約73°と約75°の間の範囲における残
    留反射が0.5%未満であることを特徴とする先行する
    請求項の1つに記載の光学的構成要素。
  13. 【請求項13】 入射角度が約70°と約75°の間で
    波長が193nmの紫外線に対し2%未満の残留反射で
    あり、その中で、入射角度70±2°のp−偏光の場
    合、または入射角度74±2°のs−偏光の場合の残留
    反射は0.5%未満であることを特徴とする請求項1〜
    12の1つに記載の光学的構成要素。
  14. 【請求項14】 多層システムによって起こる吸収係数
    が1%未満、そして特に0.5%未満であることを特徴
    とする先行する請求項の1つに記載の光学的構成要素。
  15. 【請求項15】 光学的構成要素(1,10)であっ
    て、大きな入射角度、特に約70°と約80°の間で、
    約150nmと約250nmの間の波長範囲の紫外線に
    対し低反射率であり、基板(2)を有し、その上に反射
    防止の目的で、いくつかの積み重ねられた層(5,6,
    7,12)から構成される多層システム(4,11)
    が、少なくとも1つの表面(3)に適用され、その中で
    層は高屈折性または低屈折性の誘電性物質から成り、多
    層システム(4,11)が、入射紫外線の波長における
    吸収係数kが10-6よりも大きいわずかに吸収性のある
    物質から成る少なくとも1つの層を有することを特徴と
    する光学的構成要素。
  16. 【請求項16】 吸収係数kが0.01未満、そして特
    に0.005未満であり、その中で吸収係数が好ましく
    は0.001よりも著しく大きくないことを特徴とする
    請求項14に記載の光学的構成要素。
  17. 【請求項17】 わずかに吸収性のある物質が金属酸化
    物、好ましくは本質的に酸化ハフニウムまたは酸化アル
    ミニウムから成ることを特徴とする請求項14または1
    5に記載の光学的構成要素。
  18. 【請求項18】 約150nmと約250nmの間の波
    長範囲の紫外線の反射防止の目的のために、光学的基板
    の表面に対し適用される多層システムの少なくとも一つ
    の層を形成するために、わずかに吸収性のある誘電物質
    を少なくとも一つ使用することであって、その中でわず
    かに吸収性のある物質は入射紫外線に対し10-6よりも
    大きな吸収係数kを有する。
  19. 【請求項19】 光学的構成要素であって、特に約70
    °と約80°の間の大きな入射角度で、約150nmと
    約250nmの間の波長範囲の紫外線に対し低反射率で
    あり、基板を有し、反射を低下させるために、いくつか
    の積み重ねられた層を有する多層システムが、少なくと
    も1つの表面に適用される場合には、その中で層は高屈
    折性または低屈折性の誘電性物質から成り、多層システ
    ムが酸化アルミニウム(Al23)の層を基板と離れた
    外側の層として有することを特徴とする光学的構成要
    素。
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