JP2002249865A - チタン酸化被膜の形成方法およびチタン電解コンデンサ - Google Patents

チタン酸化被膜の形成方法およびチタン電解コンデンサ

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JP2002249865A
JP2002249865A JP2001381376A JP2001381376A JP2002249865A JP 2002249865 A JP2002249865 A JP 2002249865A JP 2001381376 A JP2001381376 A JP 2001381376A JP 2001381376 A JP2001381376 A JP 2001381376A JP 2002249865 A JP2002249865 A JP 2002249865A
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Yoshiyuki Arai
良幸 新井
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Toho Titanium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 誘電率が大きく安定な酸化被膜をチタン表面
に形成する方法を通して小型で大容量でかつ漏洩電流の
小さいチタン電解コンデンサの提供。 【解決手段】 金属チタン基体を酸素存在下で加熱処理
して酸化被膜を形成し、さらに真空中で焼成し、その後
電解質含有溶液中で陽極酸化することにより該金属チタ
ン基体表面に酸化被膜を再形成することを特徴とする金
属チタン基体上への酸化被膜の形成方法。これを利用し
て、再形成された酸化被膜を有する金属チタン基体を陽
極として使用するチタン電解コンデンサ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化被膜の形成方
法およびコンデンサに関し、詳しくは、大きな静電容量
を持ちかつ優れた絶縁性を有する緻密な酸化被膜を金属
チタン基体に形成する方法およびこれを利用して緻密な
酸化被膜を有する金属チタン基体を陽極として使用する
チタン電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の固体電解コンデンサを代表とする
小型大容量電解コンデンサとしては、タンタル電解コン
デンサおよびアルミニウム電解コンデンサが代表的に実
用化されている。
【0003】タンタル電解コンデンサは、金属タンタル
の多孔質焼結体を電極とし、これを陽極酸化して誘電体
酸化被膜を形成して製造される。このように形成された
タンタルの酸化被膜は非常に安定であることから誘電特
性が良好でかつ寿命が長いという特徴を有している。ま
た、アルミニウム電解コンデンサは、同様に金属アルミ
ニウム箔あるいは焼結体に誘電体として酸化アルミニウ
ムを陽極酸化により形成して製造される。
【0004】図4は、タンタル電解コンデンサおよびア
ルミニウム電解コンデンサの一例を便宜上併せて示す模
式図である。ここでは、陽極として、絶縁体層としてタ
ンタル酸化物(Ta25)を有するTa粉末多孔質焼結
体あるいは絶縁体層としてアルミニウム酸化物(Al2
3)を有するAl粉末多孔質焼結体を示し、陽極リー
ド線として、Ta線あるいはAl線が焼結体中にそれぞ
れ埋め込まれる。陰極としては、二酸化マンガン(Mn
2)固体電解質とカーボン+Ag陰極(陰極導電層)
とを例示してある。
【0005】タンタル電解コンデンサの場合、例えば、
粒径10〜20μmのタンタル粉末をプレスで圧縮成型
し、焼結して多孔質焼結体を形成する。これを陽極酸化
して酸化被膜を得る。この多孔質焼結体は表面積が極め
て大きいので、大きな静電容量が得られる。この後、酸
化被膜上に硫酸マンガンなどのマンガン化合物を加熱処
理して酸化マンガンを陰極とするか、あるいは、多孔質
焼結体を硝酸マンガンの水溶液に浸漬し、これを電気炉
で熱分解して二酸化マンガンとする工程を繰り返して二
酸化マンガン層を成長せしめ、十分な電解質層を形成す
る。多孔質焼結体の細孔の隅々まで二酸化マンガンが充
填被覆される。あるいは導電性高分子化合物を陰極とし
てコンデンサを作成することができる。その上にカーボ
ン層を付着させて導電抵抗を下げ、更に銀ペーストを塗
布して外部リード線(図示無し)がはんだ付けされる。
二酸化マンガン形成後に、導電性ポリマを形成した2重
構造とすることもできる。液体電解質の使用も可能であ
る。アルミニウム電解コンデンサの場合もこれに準じ
る。
【0006】しかしながら、タンタル電解コンデンサに
おいては、タンタルが高価という問題がある。他方、ア
ルミニウム電解コンデンサにおいては、アルミニウムは
安価であるが、図4のアルミニウム電解コンデンサの場
合の一部の拡大図に示すように、コンデンサを形成した
際、アルミニウム酸化膜中に酸素欠陥が生じ、半導体化
することによる発生する漏洩電流が大きいために寿命が
短く、またアルミニウムは単位面積当たりの誘電率がタ
ンタルより小さく小型で大容量のコンデンサを作ること
が難しいという問題があった。
【0007】上記のような従来の問題を解決するため、
陽極に金属チタンを使用し、これに酸化チタンあるいは
複合酸化チタンなどの酸化被膜を形成したチタン電解コ
ンデンサの開発が多く試みられてきた。つまり、チタン
はタンタルより安価であり、さらに酸化チタンは酸化タ
ンタルあるいは酸化アルミニウムに比べて誘電率が非常
に高いため、チタン電解コンデンサは、従来技術の課題
であった安価で大容量の電解コンデンサの開発への大き
な可能性を有するものである。
【0008】図1は、チタン電解コンデンサの概念図を
示す(図4において、Ta、Al粉末をTi粉末に、T
a、Al酸化物をTi酸化物にそしてTa、Al線をT
i線にそれぞれ置き換えたものである)。チタン基体陽
極1にはチタン酸化被膜2が形成されて、陽極を構成す
る。陽極にはチタン線が付設される。図3と同様に、固
体電解質3としてMnO2を例示し、その上にカーボン
層4を付着させて導電抵抗を下げ、更に銀ペースト5を
塗布して外部リード線(図示無し)がはんだ付けされた
構造が例示される。仕上がった素子は外部の湿気や汚染
から保護するためにケース6に封入される。このような
チタン電解コンデンサを開発するため、誘電体膜として
のチタン酸化被膜の誘電率の向上を中心として種々の試
みがなされている。
【0009】例えば、特開平5−121275号公報で
は、チタン金属板の陽極酸化を電解質含有水溶液中で定
電圧での陽極酸化中に電流が上昇を始める時点より前に
陽極酸化を終了し、次いで水分含量60重量%以下の有
機溶媒よりなる電解液を用いて温度60℃以下で陽極酸
化を行い、チタン板上に酸化被膜を形成し、これを16
0〜350℃の温度で熱処理を行い、得られたチタンを
陽極とし、酸化被膜上に陰極として固体電極(二酸化マ
ンガンなど)または電解質溶液(リン酸アンモニウム4
重量%−水36重量%−エチレングリコール60重量
%)を介して電極(白金箔)を形成してチタン電解コン
デンサを製造する方法が開示されている。水溶液中での
陽極酸化により得られた酸化被膜を有するチタン板を再
度水分含量60重量%以下の有機溶媒よりなる電解液を
用いて陽極酸化を行い、チタン上に酸化被膜を形成する
ことを特徴とする。
【0010】特開平9−17684号公報では、チタン
を主成分とする金属よりなる多孔性の焼結体と、該焼結
体の表面に形成されたチタン酸ストロンチウムなどのペ
ロブスカイト型複合酸化物を主成分とする誘電体膜と、
該誘電体膜の表面に形成された導体または半導体からな
る電極と、誘電体または半導体電極と導通し、前記焼結
体と対向する対向電極(グラファイト層、銀電極層)と
を備え、前記導体または半導体は、マンガン、ニッケル
などの金属酸化物と導電性高分子化合物(ポリピロー
ル)の2層構造からなることを特徴とするコンデンサが
開示されている。誘電体膜上に導体または半導体からな
る電極が形成されているため、コンデンサ全体を大型化
することなく大きな静電容量を実現することができると
する。
【0011】さらに、特開2000−77274号公報
では、チタンを主成分とする金属よりなる多孔性の焼結
体を、Aイオン(AはBa、SrまたはPbのうち少な
くとも一つ)、Bイオン(BはZrまたはTiのうち少
なくとも一つ)を含むアルカリ水溶液中で加熱処理し、
多孔性の焼結体表面にABO3被膜を形成し、さらに、
ABO被膜が形成された多孔性焼結体をCイオン(C
はBaまたはSrのうち少なくとも1つ)とPbイオン
を含むアルカリ水溶液中で加熱処理し、導電性のCPb
3薄膜を対向電極として形成し、その後グラファイト
層および銀電極層を形成することにより得られるコンデ
ンサとその製造方法が開示されている。小型で大きな静
電容量を持ち、製造が容易なコンデンサを製造すると記
載する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は誘電体
膜の誘電率を向上させ、容量の大きいコンデンサを作成
している。しかしながら、上記従来技術で作成した金属
チタン表面のチタン系の酸化被膜は、誘電率は高いもの
の、その緻密性、安定性に欠け、コンデンサとして使用
した際の漏洩電流が非常に大きく、実用化するには未だ
不十分であった。
【0013】従って、本発明の課題は、誘電率が大きく
安定な酸化被膜を金属チタン基体表面に形成する方法を
開発し、このような酸化被膜を利用することによって小
型で大容量でかつ漏洩電流の小さい寿命の長いチタン電
解コンデンサを提供するところにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来
技術の問題点に鑑み、金属チタン基体表面への酸化チタ
ンを主とする酸化被膜の形成方法について鋭意検討した
結果、再酸化法という新たな手法によって高誘電率でか
つ漏洩電流の少ない安定した酸化被膜を形成する方法を
見い出し、本発明に至った。即ち、金属チタン基体を酸
素存在下で加熱処理して酸化被膜を形成し、さらに真空
中で焼成して酸化被膜を見かけ上消失させてチタン表面
を実質上金属状態に戻した後、電解質含有溶液中で陽極
酸化により再酸化処理するという再酸化法により酸化被
膜を形成することによって、非常に緻密な酸化被膜が得
られることが見い出されたものである。
【0015】以上の知見に基づいて、本発明の酸化被膜
の形成方法は、金属チタン基体を酸素存在下で加熱処理
して酸化被膜を形成し、さらに真空中で焼成し、その後
電解質含有溶液中で陽極酸化することにより該金属チタ
ン基体表面に酸化被膜を再形成することを特徴とする。
前記酸素存在下での酸化処理および真空中の焼成をいず
れも500〜900℃の温度において行うことが好まし
い。
【0016】また、この酸化被膜の形成方法を利用し
て、本発明は、金属チタン基体を酸素存在下で加熱処理
して酸化被膜を形成し、さらに真空中で焼成し、その後
電解質含有溶液中で陽極酸化することにより再形成され
た酸化被膜を有する金属チタン基体を陽極として使用す
ることを特徴とするチタン電解コンデンサを提供する。
【0017】本発明において、用語「酸化被膜」は、酸
化チタン被膜のみならず、ストロンチウムやバリウムな
どの他元素を含むチタン酸ストロンチウムやチタン酸バ
リウムのような酸化チタンの複合酸化物も含むものとす
る。
【0018】
【発明の実施の形態】既に図1において説明したよう
に、チタン陽極基体1にはチタン酸化被膜2が形成され
て、陽極を構成する。陽極にはチタン線が付設される。
固体電解質3としてMnO2を例示し、その上にカーボ
ン層4を付着させて導電抵抗を下げ、更に銀ペースト5
を塗布して外部リード線(図示無し)をはんだ付けする
構造が例示される。仕上がった素子は外部の湿気や汚染
から保護するためにケース6に封入される。
【0019】本発明で用いられる金属チタン基体は、金
属チタン板あるいは金属チタン粉末を焼結した多孔質焼
結体であるが、通常、チタン電解コンデンサを作成する
場合は、陽極として、後者の金属チタン粉末を焼結した
多孔質焼結体が用いられる。この多孔質焼結体を作成す
る際、原料として金属チタン粉末を使用してもよいが、
脆化された水素化チタン粉末も使用することができる。
水素化チタン粉末を使用した場合、焼結前、焼結時ある
いは焼結後に減圧下で加熱処理し脱水素処理を行う。
【0020】上記の金属チタン粉末の多孔質焼結体を作
成する際、用いる金属チタン粉末は通常、粒径が1〜1
50μm、平均粒径5〜100μmである。多孔質焼結
体の作成方法については公知の方法を採用し得るが、例
えば先ずチタン粉末をプレス成形機により加圧成形す
る。このとき、必要に応じてスチレン樹脂、アクリル樹
脂、樟脳などのバインダーをチタン粉末に混合する。こ
のように成形したものを真空中にて600〜900℃で
焼成する。このようにして作成した多孔質焼結体をコン
デンサに使用する場合、チタン線を加圧成形時あるいは
焼成後に取り付ける。コンデンサを作成した際の静電容
量を大きくするために、多孔質焼結体は、できるだけ比
表面積が大きくなるように作成することが必要である。
具体的には、多孔質焼結体の焼結密度(金属チタンの真
比重に対する多孔質焼結体の密度の割合)は30〜70
%になるように作成することが好ましい。焼結密度を高
くすると、比表面積は小さくなる。焼結密度を低くし過
ぎると、比表面積は大きくなるが多孔質焼結体の強度が
小さくなりコンデンサとして使用できなくなる。
【0021】以下、本発明工程を順を追って説明する: A.金属チタン基体上への酸素存在下での加熱処理によ
る酸化被膜の形成:本発明で用いられる金属チタン基体
表面に厚さ50nm以上、好ましくは50〜500n
m、より好ましくは100〜200nmの酸化被膜を形
成する。尚、本発明においては、酸化被膜厚さ測定は、
金属チタン板表面近傍の酸素濃度分布をオージェ電子分
光法により測定し、その酸素濃度分布より酸化被膜の厚
さを測定した。オージェ電子分光法による測定は、PH
ISICAL ELECTRONICS社製PHI−6
80型装置を用い、電子銃の加速電圧を5kV、資料電
流を約10nAとし、イオン銃のイオン種をAr+、ビ
ーム電圧を5kV、スパッタ速度を約43nm/min
として、資料の測定領域を約3μm角とした。本発明に
おいて、酸化被膜は、酸化チタン被膜のみならず、スト
ロンチウムやバリウムなどの他元素を含むチタン酸スト
ロンチウムやチタン酸バリウムのような酸化チタンの複
合酸化物も含む。
【0022】酸化被膜の形成には、例えばチタン酸ある
いは有機チタン化合物による金属チタンの表面処理、四
塩化チタンによる表面処理、あるいは電気化学的処理な
ども考慮しうるが、酸素存在下での加熱処理が本発明目
的には好適であることが判明した。
【0023】本発明では先ず上記金属チタン基体を酸素
存在下で加熱するが、そのときの温度は、通常500〜
800℃、好ましくは550〜750℃で10分〜5時
間、好ましくは30分〜3時間である。また酸素濃度は
大気中でもよく、通常20〜100%である。
【0024】また、特に金属チタン基体がチタン板であ
る場合、上記処理操作の前に、金属チタン基体の表面に
付着している汚れを除去し、併せて基体表面の比表面積
を向上させるための表面処理を行うことが望ましい。具
体的には弗化水素などの酸あるいは他の酸化剤などで処
理する。
【0025】B.焼成(アニール)処理:上記のように
酸素存在中で焼成した金属チタン基体をさらに真空中で
焼成するが、そのときの温度および時間は、通常500
〜800℃、好ましくは550〜750℃で10分〜5
時間、好ましくは30分〜3時間である。また真空度は
通常1×10-2Pa〜1×10-4Paである。
【0026】また焼成後の酸化被膜の厚さは好ましくは
10nm以下、より好ましくは5nm〜0nmである。
特には、酸化被膜を消失させることが好ましい。金属チ
タン基体表面上に形成された酸化被膜を上記のように焼
成することにより、酸化被膜中の酸素成分が金属チタン
中に拡散浸透せしめられる。通常酸化被膜が形成された
状態では金属チタン基体表面から内部にかけて酸素濃度
の勾配が見られるが(表面から内部にかけて金属チタン
中の酸素濃度が減少)、本発明においては、上記焼成工
程後の金属チタン表面は酸素濃度が減少し、表面近傍で
の酸素濃度勾配がなくなるような状態にすることが望ま
しい。
【0027】C.陽極酸化による再酸化処理:その後、
前記金属チタン基体の表面を酸化処理して酸化被膜を再
度形成する。厚さ50nm以上の酸化被膜を再形成する
ことが好ましい。酸化被膜は薄いほど静電容量を大きく
しうるが、薄すぎると緻密性、強固性に欠け、漏れ電流
が生じやすいので通常100〜500nmの厚さとされ
る。この再酸化処理の方法としては、例えば、酸素若し
くは酸素含有雰囲気下での焼成も考慮しうるが、本発明
目的では陽極酸化法が好適であることが見い出された。
【0028】チタン酸または有機チタン化合物を塗布し
焼成した金属チタン基体を、電解質含有溶液中で陽極酸
化するが、この時用いられる電解質としては公知のもの
が用いられ、例えば水溶液系ではリン酸、アジピン酸
塩、ホウ酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸
塩、クエン酸塩などのアルカリ金属塩またはアンモニウ
ム塩、硫酸などが挙げられ、非水溶液中では、ホウ酸ア
ンモン、酢酸ナトウム、リン酸のエチレングリコール溶
液、溶融塩中では、NaNO3、KNO3などが挙げられ
る。
【0029】陽極酸化方法としては、上記のように処理
した金属チタン基体を陽極とし、これを上記電解質含有
溶液中で電圧を印加し陽極酸化する。このとき印加する
電圧は、5〜600V、好ましくは10〜50V、特に
好ましくは20〜40Vであり、そして電圧印加時間
は、1分〜10時間、好ましくは1〜30分、特に好ま
しくは1〜10分である。また温度は通常室温で行われ
る。陽極酸化後、基体表面を十分に水洗した後に乾燥を
して酸化被膜を形成した金属チタン基体を得る。
【0030】D.焼成−再酸化機構:以上のように金属
チタン基体を酸素存在下で加熱処理して酸化被膜を形成
し、さらに真空中で焼成して、酸化被膜の酸素を金属チ
タン中に拡散させる処理を施し、その後改めて電解質含
有溶液中で陽極酸化することにより再酸化処理して形成
された酸化被膜は均一で強固であり、これを用いて固体
電解コンデンサを作成した際、高誘電率でかつ漏洩電流
の少ないコンデンサを得ることが出来る。
【0031】図2は、Ti板、酸化後、焼成後および再
酸化後の各状態でのチタン表面からチタン内部への酸素
濃度の状況を模式的に示すグラフである。酸素濃度はオ
ージェ分析により測定した。酸化被膜が形成された状態
では金属チタン基体表面から内部にかけて酸素濃度の勾
配が見られるが(表面から内部にかけて金属チタン中の
酸素濃度が減少)、焼成工程後の金属チタン表面は酸素
濃度が減少し、表面近傍での酸素濃度勾配がなくなるこ
とがわかる。
【0032】図3において、(a)は酸化状態でのTi
板表面の酸化被膜を示しそして(b)は、焼成後のTi
板の表面状態である。酸化被膜が消失していることがわ
かる。この場合、酸化被膜の酸素成分はチタン内部に拡
散浸透せしめられている。この後、再酸化することによ
り、解明されていないが、内部に浸透した酸素が何らか
の作用を及ぼしているか、もしくは再酸化により基体の
表面状態が改善され、均一で強固な、緻密な酸化被膜を
形成する。
【0033】酸化膜断面の反射電子像により、通常の3
0V陽極酸化膜と再酸化法による30V陽極酸化膜を比
較観察したところ、通常の30V陽極酸化膜では膜と基
体との界面に異相(カーボンと推定される)が強く生
じ、そして再酸化法の方が膜が厚く成長していることが
確認された。
【0034】こうした緻密な酸化被膜を有する金属チタ
ン基体は、電解コンデンサのみならず、光触媒機能を表
面に有する金属チタン材といった用途に使用することが
できる。
【0035】E.電解コンデンサ:上記のようにして得
た酸化被膜を有する金属チタン基体を陽極として固体電
解コンデンサを作成することができる。このとき、陰極
としては、タンタル電解コンデンサと同様に、酸化被膜
上に硫酸マンガンなどのマンガン化合物を加熱処理して
酸化マンガンを陰極とするか、多孔質焼結体を硝酸マン
ガンの水溶液に浸漬し、これを電気炉で熱分解して二酸
化マンガンとする工程を繰り返して二酸化マンガン層を
成長せしめるか、あるいは導電性高分子化合物を陰極と
してコンデンサを作成することができる。その上にカー
ボン層を付着させて導電抵抗を下げ、更に銀ペーストを
塗布して外部リード線(図示無し)がはんだ付けされ
る。二酸化マンガン形成後に、導電性ポリマを形成した
2重構造とすることもできる。液体電解質の使用も可能
である。固体電解質および液体電解質を含め、従来技術
として先に例示したような任意の公知陰極構造を採用す
ることができる。
【0036】
【実施例】以下、実施例および比較例を示して本発明の
効果を具体的に説明する。ここで、形成した酸化被膜の
絶縁性の評価および電気容量の測定は以下の方法で実施
した。
【0037】1)絶縁性の評価(漏れ電流の測定) チタン板の試験サンプルを絶縁テープによりマスキング
し約1cm2の電極面積を残した。これを正極とし、対
極(負極)にメッシュ状のPt板(50mm×50m
m)、そして電解液に150g/Lアジピン酸アンモニ
ウム水溶液を用い、印加電圧を5V、10V、15V、
20V、30Vとしたときのそれぞれの1分後に正極と
対極間に流れる電流値(漏れ電流)を測定した。電圧を
印加する順序により漏れ電流の測定値が変化するため、
必ず低電圧側から測定を行い、また電極表面に気泡が発
生した場合は、電圧を切った後に気泡が無くなるまで十
分に液を攪拌することが必要である。
【0038】2)電気容量測定 漏れ電流を測定した試験サンプルを正極とし、対極とし
てチタン板(20mm×100mm)を用いて、以下の
条件でLCR(インダクタンス・キャパシタンス・抵
抗)メーターにより直接膜の電気容量を測定した。 ・測定条件 電解液:150g/Lアジピン酸アンモニウム水溶液 周波数:120Hz 振幅 :1V (註)この測定方法では対極の表面の容量が直列に加算
されるが、Ti板の容量は試験極に比べ十分に大きいた
め無視できる(1/合計容量=1/サンプル容量+1/
Ti板容量で表されるので、Ti板の容量はそれがサン
プル容量に比べ十分に大きい場合には無視できる)。
【0039】<実施例1>金属チタン板を酸素中で70
0℃において2時間加熱し、酸化被膜を形成した金属チ
タン板を得た。次いで、酸化被膜を形成した金属チタン
板をおよそ1×10-3Paの真空中で800℃、2時間
焼成して酸化被膜を消失させた。その後、この金属チタ
ン板を電極化し、150g/Lアジピン酸アンモニウム
水溶液中で30V、5分間電圧を印加する陽極酸化によ
り再酸化を行い、酸化被膜を形成した。この酸化被膜に
ついて、絶縁性の評価および電気容量を測定した。得ら
れた結果を表1に示した。
【0040】<実施例2>金属チタン板を酸素中で60
0℃において2時間加熱した以外は、実施例1と同様に
実験を行い、酸化被膜を形成した。この酸化被膜につい
て、絶縁性の評価および電気容量を測定した。得られた
結果を表1に示した。
【0041】<実施例3>金属チタン板を真空中で80
0℃において4時間加熱した以外は、実施例1と同様に
実験を行い、酸化被膜を形成した。この酸化被膜につい
て、絶縁性の評価および電気容量を測定した。得られた
結果を表1に示した。
【0042】<実施例4>金属チタン板を酸素中で60
0℃において2時間加熱し、酸化被膜を形成した金属チ
タン板を得た。次いで、酸化被膜を形成した金属チタン
板をおよそ1×10-3Paの真空中で700℃、2時間
焼成して酸化被膜を消失させた。その後、この焼成後の
金属チタン板を電極化し、150g/Lアジピン酸アン
モニウム水溶液中で30V、5分間電圧を印加する陽極
酸化により再酸化を行い、酸化被膜を形成した。この酸
化被膜について、絶縁性の評価および電気容量を測定し
た。得られた結果を表1に示した。
【0043】<実施例5>金属チタン板を酸素中で60
0℃において2時間焼成し、酸化被膜を形成した金属チ
タン板を得た。次いで、酸化被膜を形成した金属チタン
板をおよそ3×10-4Paの真空中で800℃、2時間
焼成して酸化被膜を消失させた。その後、この焼成後の
金属チタン板を電極化し、1wt%リン酸水溶液中で3
0V、5分間電圧を印加し、酸化被膜を形成した。さら
に、真空中で90℃、5時間乾燥を行った。この酸化被
膜について、絶縁性の評価及び電気容量を測定した。得
られた結果を表1に示した。
【0044】<実施例6>金属チタン板を酸素中で70
0℃において2時間焼成し、酸化被膜を形成した金属チ
タン板を得た。次いで、酸化被膜を形成した金属チタン
板をおよそ3×10-4Paの真空中で850℃、2時間
焼成して酸化被膜を消失させた。その後、この焼成後の
金属チタン板を電極化し、1wt%リン酸水溶液中で3
0V、5分間電圧を印加し、酸化被膜を形成した。さら
に、真空中で90℃5時間乾燥を行った。この酸化被膜
について、絶縁性の評価及び電気容量を測定した。得ら
れた結果を表1に示した。
【0045】<比較例1>金属チタン板を電極化し、1
50g/Lアジピン酸アンモニウム水溶液中で30V、
5分間電圧を印加する陽極酸化により酸化被膜を形成し
た。この酸化被膜について、絶縁性の評価および電気容
量を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0046】<比較例2>電圧を50Vにした以外は比
較例1と同様に実験を行い酸化被膜を形成した。この酸
化被膜について、絶縁性の評価および電気容量を測定
し、得られた結果を表1に示した。
【0047】<比較例3>金属チタン板を大気中700
℃、2時間焼成し酸化被膜を形成した。この酸化被膜に
ついて、絶縁性の評価および電気容量を測定し、得られ
た結果を表1に示した。
【0048】<比較例4>真空中で焼成を行わなかった
以外は、実施例1と同様に実験を行い、酸化被膜を形成
した。この酸化被膜について、絶縁性の評価および電気
容量を測定し、得られた結果を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】表1より、本発明により漏れ電流が小さ
く、且つ電気容量の大きなチタン電解コンデンサが得ら
れることがわかる。
【0051】
【発明の効果】誘電率が大きく安定で緻密な酸化被膜を
金属チタン基体表面に形成する方法を提供し、このよう
な酸化被膜を利用することによって小型で大容量でかつ
漏洩電流の小さい寿命の長いチタン電解コンデンサの開
発に成功した。
【図面の簡単な説明】
【図1】チタン電解コンデンサの概念図を示す。
【図2】Ti板、酸化後、焼成後および再酸化後の各状
態でのチタン表面からチタン内部への酸素濃度の状況を
模式的に示すグラフである。
【図3】(a)は酸化状態でのTi板表面の酸化被膜を
示し、そして(b)は焼成後のTi板の表面状態をそれ
ぞれ示す電子顕微鏡写真である(15kV、20,00
0倍)。
【図4】タンタル電解コンデンサおよびアルミニウム電
解コンデンサを併せて示す模式図である。
【符号の説明】
1 チタン基体陽極 2 チタン酸化被膜 3 固体電解質 4 カーボン層 5 銀ペースト 6 ケース

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属チタン基体を酸素存在下で加熱処理
    して酸化被膜を形成し、さらに真空中で焼成し、その後
    電解質含有溶液中で陽極酸化することにより該金属チタ
    ン基体表面に酸化被膜を再形成することを特徴とする金
    属チタン基体上への酸化被膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記酸素存在下での加熱処理および真空
    中の焼成をいずれも500〜900℃の温度において行
    うことを特徴とする請求項1に記載の酸化被膜の形成方
    法。
  3. 【請求項3】 金属チタン基体を酸素存在下で加熱処理
    して酸化被膜を形成し、さらに真空中で焼成し、その後
    電解質含有溶液中で陽極酸化することにより再形成され
    た酸化被膜を有する金属チタン基体を陽極として使用す
    ることを特徴とするチタン電解コンデンサ。
JP2001381376A 2000-12-19 2001-12-14 チタン酸化被膜の形成方法およびチタン電解コンデンサ Withdrawn JP2002249865A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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