JP2002249836A - 高弾性変形能を有するチタン合金およびその製造方法 - Google Patents
高弾性変形能を有するチタン合金およびその製造方法Info
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Abstract
なるチタン合金原材に10%以上の冷間加工を加える冷
間加工工程と、冷間加工工程後に得られた冷間加工材に
処理温度が150℃〜600℃の範囲でラルソン・ミラ
ー・パラメータPが8.0〜18.5となる時効処理を
施す時効処理工程とを施すことにより得られる引張弾性
限強度が950MPa以上で弾性変形能が1.6%以上
であることを特徴とするチタン合金。このチタン合金
は、高弾性変形能で高引張弾性限強度を有するため、各
種製品に幅広く利用できる。
Description
その製造方法に関するものである。詳しくは、各種製品
に利用できる、弾性限強度と弾性変形能に優れるチタン
合金とその製造方法に関するものである。
空、軍事、宇宙、深海探査等の分野で従来から使用され
てきた。自動車分野でも、レーシングエンジンのバルブ
リテーナやコネクテング・ロッド等にチタン合金が使用
されている。また、チタン合金は耐食性にも優れるた
め、腐食環境下で使用されることも多い。例えば、化学
プラントや海洋建築物等の資材に、また、凍結防止剤に
よる腐食防止等を目的として自動車のフロント・バンパ
・ロウアーやリア・バンパ・ロウアー等に使用されてい
る。さらに、その軽量性(比強度)と耐アレルギー性
(耐食性)に着目して、腕時計等の装身具にチタン合金
が使用されている。このように、多種多様な分野でチタ
ン合金が使用されており、代表的なチタン合金として、
例えば、Ti−5Al−2.5Sn(α合金)、Ti−
6Al−4V(α−β合金)、Ti−13V−11Cr
−3Al(β合金)等がある。
強度や耐食性が注目されていたが、最近では、その優れ
た弾性も注目されつつある。例えば、生体適合品(例え
ば、人工骨等)、装身具(例えば、眼鏡のフレーム
等)、スポーツ用品(例えば、ゴルフクラブ等)、スプ
リングなどに、弾性に優れたチタン合金が使用されつつ
ある。具体的には、高弾性のチタン合金を人工骨に使用
した場合、その人工骨は、人骨に近い弾性をもち、比強
度、耐食性と併せて生体適合性に優れたものとなる。
レームは、頭部に柔軟にフィットし、装着者に圧迫感を
与えないし、衝撃吸収性にも優れる。また、ゴルフクラ
ブのシャフトやヘッドに高弾性のチタン合金を使用する
と、しなやかなシャフトや固有振動数の低いヘッドが得
られ、ゴルフボールの飛距離が伸びると言われている。
また、高弾性のチタン合金をスプリングに使用すれば、
軽量で弾性限度の大きなバネが得られる。このような事
情の下、本発明者は、各種分野で利用拡大を一層図れ
る、従来レベルを超越した高弾性(高弾性変形能)かつ
高強度(高引張弾性限強度)のチタン合金を開発するこ
とを考えた。そして、先ず、弾性に優れたチタン合金に
関する従来技術を調査したところ、次のような公報が発
見された。
チタン合金が開示されている。このチタン合金は、その
組成の原料を溶解し、ボタンインゴットを鋳造し、その
ボタンインゴットに冷間圧延、溶体化処理、時効処理を
順次行って製造され、75GPa以下という低ヤング率
を得ている。そして、このチタン合金は、低ヤング率で
あるため、弾性に富むとも思われる。しかし、その公報
に開示された実施例からも解るように、低ヤング率と共
に引張強度も低下している。このため、そのチタン合金
は、弾性限内での変形能力(弾性変形能)が小さく、チ
タン合金の用途拡大を図れる程の十分な弾性をもつもの
ではない。
%、Al:2〜8%、Fe、Cr、Mn:各1%以下、
Zr:3%以下、O:0.05〜0.3%、残部がTi
からなる冷間加工性に優れたチタン合金」が開示されて
いる。このチタン合金も、組成となる原料をプラズマ溶
解、真空アーク溶解、熱間鍛造、固溶化処理して製造さ
れる。こうして、冷間加工性に優れたチタン合金が得ら
れるとその公報にはある。しかし、その公報では、その
弾性や強度について具体的な記載が何らされていない。
Taと2.5〜13%のZrと残部が実質的にTiとか
らなり、ヤング率が65GPa以下のチタン合金で形成
された医療器具が開示されている。しかし、このチタン
合金も、低ヤング率であると共に低強度であるため、弾
性に優れたものではない。
−233811号公報および特表平10−501719
号公報 これらの公報には、ヤング率が75GPa以下で引張強
度が700MPa以上のチタン合金(Ti−13Nb−
13Zr)が開示されているが、高弾性には強度的に不
十分である。なお、それらの公報の請求の範囲には、N
b:35〜50%とあるが、それに相当する具体的な実
施例は開示されていない。
質上Nbよりなる金属装飾品」が開示されている。その
金属装飾品は、Ti−45Nbの組成原料をアーク溶解
後、鋳造、鍛造圧延し、そのNb合金を冷間深絞加工し
て製造される。しかし、その公報には、具体的な弾性や
強度について何ら記載されていない。
含み、酸素含有量を0.25%以下とし、そして残部が
チタンおよび不可避的不純物からなるゴルフドライバー
ヘッド用材料」が開示されている。しかし、その公報に
は、その弾性に関して何ら記載されていない。
トワックス精密鋳造法により製作したゴルフクラブのヘ
ッド」が開示されている。そして、Nb、V等を若干添
加しても良い旨も、その公報には記載されている。しか
し、それらの具体的な組成や弾性について何ら記載がな
い。
重量%以下、酸素0.13〜0.35重量%、窒素0.
1重量%以下、残部ニオブからなる耐食性強力ニオブ合
金」が開示されている。さらに、その組成をもつ合金の
溶解鋳造後に、熱間鍛造、冷間加工および時効処理を施
すことにより、さらに高強度で冷間加工性に優れるニオ
ブ合金が得られる旨が開示されている。しかし、その公
報中には、具体的なヤング率や弾性について何ら記載さ
れていない。
事情に鑑みて為されたものである。つまり、各種分野で
一層の利用拡大を図れる、従来レベルを超越した弾性に
富むチタン合金を提供することを目的とする。さらに、
そのチタン合金の製造に適した製造方法を提供すること
を目的とする。
課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、
Va族元素とTiとからなる、高弾性変形能かつ高引張
弾性限強度のチタン合金およびその製造方法を開発する
に至ったものである。 (チタン合金)すなわち、本発明のチタン合金は、Va
族元素と残部が実質的にチタン(Ti)とからなり、引
張弾性限強度が950MPa以上で、弾性変形能が1.
6%以上であることを特徴とする。TiとVa族元素と
の組合わせにより、従来になく高弾性変形能かつ高引張
弾性限強度のチタン合金が得られたものである。そし
て、このチタン合金は各種製品に幅広く利用することが
でき、それらの機能向上や設計自由度の拡大を図れる。
なお、Va族元素は、バナジウム、ニオブ、タンタルの
一種でも複数種でも良い。これらの元素はいずれもβ相
安定化元素であるが、必ずしも、本発明のチタン合金が
従来のβ合金であることを意味するものではない。
変形能と引張弾性限強度に加えて、優れた冷間加工性を
も備えることを本発明者は確認している。しかし、この
チタン合金が、何故、弾性変形能、引張弾性限強度に優
れるのか、未だ定かではない。もっとも、これまでに為
された本発明者による懸命な調査研究から、それらの特
性について、次のように考えることができる。つまり、
本発明者が本発明のチタン合金に係る一試料を調査した
結果、このチタン合金に冷間加工を施しても、転位がほ
とんど導入されず、一部の方向に(110)面が非常に
強く配向した組織を呈していることが明らかになった。
しかも、TEM(透過電子顕微鏡)で観察した111回
折点を用いた暗視野像において、試料の傾斜と共に像の
コントラストが移動していくのが観察された。これは観
察している(111)面が湾曲していることを示唆して
おり、同様のことが高倍率の格子像直接観察によっても
確認された。そして、この(111)面の湾曲の曲率半
径は500〜600nm程度と極めて小さなものであっ
た。
は、転位の導入ではなく、結晶面の湾曲によって加工の
影響を緩和すると言う、従来の金属材料では全く知られ
ていない性質を有することを意味していると考えられ
る。また、転位は、110回折点を強く励起した状態
で、極一部に観察されたが、110回折点の励起をなく
すとほとんど観察されなかった。これは、転位周辺の変
位成分が著しく<110>方向に偏っていることを示し
ており、本発明のチタン合金は非常に強い弾性異方性を
有することを示唆している。理由は定かではないが、こ
の弾性異方性も、本発明に係るチタン合金の高弾性変形
能、高引張弾性限強度、優れた冷間加工性の発現等と密
接に関係していると考えられる。
への荷重の負荷と除荷とを徐々に繰り返して行う引張試
験において、永久伸び(歪み)が0.2%に到達したと
きに負荷していた応力を言う(詳しくは、後述する)。
また「弾性変形能」とは、前記引張弾性限強度内におけ
る試験片の伸びを意味し、高弾性変形能とは、その伸び
が大きいことを示す。この引張弾性限強度は、順に、9
50MPa以上、1200MPa以上、1400MPa
以上となるほど好ましい。また、弾性変形能は、順に、
1.6%以上、1.7%以上、1.8%、1.9%、
2.0%、2.1%、2.2%以上となるほど好まし
い。なお、以降、単に「強度」と言うときは、「引張弾
性限強度」または試験片が破断するときの「引張強度」
のいずれか一方または両方を指す。
有する合金を意味し、Tiの含有量を特定するものでは
ない。従って、Ti以外の成分(例えば、Nb等)が合
金全体の50質量%以上を占める場合でも、Tiを含む
合金である限り、本明細書ではそれを「チタン合金」と
便宜的に称する。また、その「チタン合金」は、種々の
形態を含むものであり、素材(例えば、鋳塊、スラブ、
ビレット、焼結体、圧延品、鍛造品、線材、板材、棒材
等)に限らず、それを加工したチタン合金部材(例え
ば、中間加工品、最終製品、それらの一部等)も包含す
るものである(以下同様)。
変形能で高引張弾性限強度のチタン合金は、例えば、次
に述べる本発明の製造方法により得ることができる。 すなわち、本発明のチタン合金の製造方法は、Va族
元素と残部が実質的にチタンとからなるチタン合金原材
に10%以上の冷間加工を加える冷間加工工程と、該冷
間加工工程後に得られた冷間加工材に処理温度が150
℃〜600℃の範囲でパラメータP(ラルソン・ミラー
・パラメータP:詳細は後述する。)が8.0〜18.
5となる時効処理を施す時効処理工程とからなり、引張
弾性限強度が950MPa以上で弾性変形能が1.6%
以上となるチタン合金を製造することを特徴とする。こ
の製造方法により、高弾性変形能で高引張弾性限強度の
チタン合金が得られる理由は必ずしも定かではないが、
チタン合金原材に所定量の冷間加工を施した後、適切な
条件下で時効処理を施すことにより、弾性異方性が維持
されると共に、ヤング率の急激な上昇が回避され、高弾
性変形能で高引張弾性限強度のチタン合金が得られると
考えられる。
うに製造することができる。すなわち、前記チタン合金
原材は、チタンとVa族元素とを含む少なくとも二種以
上の原料粉末を混合する混合工程と、該混合工程後に得
られた混合粉末を所定形状の成形体に成形する成形工程
と、該成形工程後に得られた成形体を加熱して焼結させ
る焼結工程と、により製造されると好適である。(以
下、適宜、この製造方法を「混合法」と略称する。)
Va族元素とを含む原料粉末を所定形状の容器に充填す
る充填工程と、該充填工程後に熱間静水圧法(HIP
法)を用いて該容器中の該原料粉末を焼結させる焼結工
程と、により製造されると好適である。(以下、適宜、
この製造方法を「HIP法」と略称する。) 上述した製造方法は、本発明のチタン合金を得るために
好ましい製造方法である。もっとも、本発明のチタン合
金は、それらの製造方法によって得られたものに限定さ
れるものでない。例えば、チタン合金原材は溶解法によ
り製造されても良い。
明をさらに詳しく説明する。なお、以降に列挙する材料
特性、合金組成、製造工程等からなる各項目の内容は、
適宜組合わせが可能であり、例示した組合わせに限られ
るものではない。 (チタン合金) (1)弾性変形能、引張弾性限強度および平均ヤング率 本発明のチタン合金に関する弾性変形能と引張弾性限強
度とについて、図1A、Bを用いて以下に詳述する。図
1Aは、本発明に係るチタン合金の応力−歪み線図を模
式的に示した図であり、図1Bは、従来のチタン合金
(Ti−6Al−4V合金)の応力−歪み線図を模式的
に示した図である。
は、引張応力の増加に比例して伸びが直線的に増加する
(’−間)。そして、その直線の傾きによって従来
の金属材料のヤング率は求められる。換言すれば、その
ヤング率は、引張応力(公称応力)をそれと比例関係に
ある歪み(公称歪み)で除した値となる。このように応
力と歪みとが比例関係にある直線域(’−間)で
は、変形が弾性的であり、例えば、応力を除荷すれば、
試験片の変形である伸びは0に戻る。しかし、さらにそ
の直線域を超えて引張応力を加えると、従来の金属材料
は塑性変形を始め、応力を除荷しても、試験片の伸びは
0に戻らず、永久伸びを生じる。
を0.2%耐力と称している(JIS Z 224
1)。この0.2%耐力は、応力−歪み線図上で、弾性
変形域の直線(’−:立ち上がり部の接線)を0.
2%伸び分だけ平行移動した直線(’−)と応力―
歪み曲線との交点(位置)における応力でもある。従
来の金属材料の場合、通常、「伸びが0.2%程度を超
えると、永久伸びになる」という経験則に基づき、0.
2%耐力≒引張弾性限強度と考えれられている。逆に、
この0.2%耐力内であれば、応力と歪みとの関係は概
ね直線的または弾性的であると考えられる。
も解るように、このような従来の概念は、本発明のチタ
ン合金には当てはまらない。理由は定かではないが、本
発明のチタン合金の場合、弾性変形域において応力―歪
み線図が直線とはならず、上に凸な曲線(’−)と
なり、除荷すると同曲線−’に沿って伸びが0に戻
ったり、−’に沿って永久伸びを生じたりする。こ
のように本発明のチタン合金では、弾性変形域(’−
)ですら、応力と歪みとが直線的な関係になく、応力
が増加すれば、急激に伸び(歪み)が増加する。また、
除荷した場合も同様であり、応力と歪みとが直線的な関
係になく、応力が減少すれば、急激に歪みが減少する。
このような特徴が本発明のチタン合金の優れた高弾性変
形能として発現していると思われる。
1Aからも解るように、応力が増加するほど応力−歪み
線図上の接線の傾きが減少している。このように、弾性
変形域において、応力と歪みとが直線的に変化しないた
め、従来と同様に本発明のチタン合金の弾性変形能を定
義することはできない。また、従来と同様の方法で0.
2%耐力(σp’)≒引張弾性限強度と評価することも
適切ではない。つまり、本発明のチタン合金の場合、従
来の方法で引張弾性限強度(≒0.2%耐力)を求める
と、本来の引張弾性限強度よりも著しく小さい値となっ
てしまう。従って、本発明のチタン合金では、もはや、
0.2%耐力≒引張弾性限強度と定義することはできな
い。そこで、引張弾性限強度の本来の定義に戻って、本
発明のチタン合金の引張弾性限強度(σe)を前述した
ように求め(図1A中の位置)、その引張弾性限強度
内における試験片の最大の伸びを弾性変形能(εe)と
した。
とが直線的な関係にないため、従来のヤング率の概念を
そのまま本発明のチタン合金に適用することは好ましく
ない。そこで、「平均ヤング率」という概念を導入し、
本発明に係るチタン合金の一特性を指標することとし
た。そして、この平均ヤング率を、引張試験により得ら
れた応力−歪み線図上において、引張弾性限強度の1/
2に相当する応力位置での傾き(曲線の接線の傾き)と
定義した。従って、この平均ヤング率は、厳密な意味で
のヤング率の「平均」を指すものではない。なお、図1
Aおよび図1B中、σtは引張強度であり、εeは本発
明のチタン合金の引張弾性限強度(σe)における伸び
(弾性変形能)であり、εpは従来の金属材料の0.2
%耐力(σp)における伸び(歪み)である。
にない特異な応力−歪み関係を有し、これに加えて相応
の引張弾性限強度を有するため、非常に優れた弾性変形
能、つまり高弾性が得られたものである。この特性に基
づき、本発明は、引張試験で真に永久歪みが0.2%に
到達したときの応力として定義される引張弾性限強度が
950MPa以上であり、加える応力が0から該引張弾
性限強度までの範囲にある弾性変形域内で、該引張試験
により得られた応力−歪み線図上の接線の傾きが応力の
増加に伴って減少する特性を示し、該応力−歪み線図上
の接線の傾きから求まるヤング率の代表値として、該引
張弾性限強度の1/2に相当する応力位置での接線の傾
きから求めた平均ヤング率が90GPa以下であり、弾
性変形能が1.6%以上である高弾性変形能を有するチ
タン合金とも把握できる。なお、平均ヤング率が85G
Pa、80GPa、75GPa、70GPa、65GP
a、60GPa、55GPa、50GPaと低下する
と、本発明のチタン合金はより優れた弾性変形能を示
す。
成に限らず、チタン合金原材および原料粉末の組成にも
共通する。以降では、主に、チタン合金を例にとり説明
するが、その内容(含有元素、数値範囲、限定理由等)
をチタン合金原材または原料粉末にも援用できる。ま
た、元素の組成範囲を「x〜y%」という形式で示した
が、これは特に断らない限り、下限値(x%)および上
限値(y%)も含むものである(以下、同様)。
たは原料粉末、以下同様)は、全体を100%(質量百
分率:以下同様)とした場合に、Va族元素を30〜6
0%含むと好適である。Va族元素が30%未満では十
分な弾性変形能が得られず、また、60%を超えると十
分な引張弾性限強度が得られず、チタン合金の密度が上
昇して比強度の低下を招くからである。さらに、60%
を越えると、材料偏析が生じ易くなり、材料の均質性が
損われて、靱性や延性の低下も招き易くなるため好まし
くない。Va族元素は、V、NbまたはTaのいずれか
であるが、それらの1種を含有する場合に限らない。す
なわち、それらを2種以上含む場合でも良く、NbとT
a、NbとVとNb、TaとVまたはNbとTaとVと
を、上記範囲でそれぞれ適量づつ含んでも良い。特に、
Nbは10〜45%、Taは0〜30%、Vは0〜7%
であると良い。
とした場合に、ZrとHfとScとからなる金属元素群
中の1種以上の元素を合計で20%以下含むと好適であ
る。Scは、チタンに固溶した場合、Va族元素と共に
チタン原子間の結合エネルギーを特異的に低下させ、弾
性変形能を向上させる(つまり、ヤング率を低下させ
る)有効な元素である(参考資料:Proc.9th
World Conf.on Titanium、(1
999)、to be published)。Zrと
Hfとは、チタン合金の弾性変形能と引張弾性限強度と
の向上に有効である。これらの元素は、チタンと同族
(IVa族)元素であり、全率固溶型の中性的元素であ
るため、Va族元素によるチタン合金の高弾性変形能を
妨げることもない。
材料偏析による強度、靱性の低下やコスト上昇を招くた
め好ましくない。弾性変形能(または、平均ヤング
率)、強度、靱性等のバランスを図る上で、それらの元
素を合計で、1%以上、さらには、5〜15%とする
と、より好ましい。特に、Zrは1〜15%、Hfは1
〜15%であると良い。さらに、本発明のチタン合金
は、IVa族元素(Ti以外)の1種以上とVa族元素
の1種以上とを、上記各範囲で任意に組合わせて含んで
も良い。例えば、ZrとNb、TaまたはVの1種以上
とを共に含む場合でも、本発明のチタン合金は優れた冷
間加工性を損うこともなく、高強度、高弾性を発揮し得
る。
元素と作用上共通する部分が多いため、所定の範囲内で
Va族元素と置換することもできる。つまり、本発明の
チタン合金は、全体を100%とした場合に、ZrとH
fとScとからなる金属元素群中の1種以上の元素を合
計で20%以下と、前記Va族元素を該金属元素群中の
1種以上の元素との合計が30〜60%となるように含
むようにしても良い。Zr等を合計で20%以下とした
のは、前述したとおりである。また、同様に、それらの
元素を合計で1%以上、さらには、5〜15%とする
と、より好ましい。
nとFeとCoとNiとからなる金属元素群中の1種類
以上の元素を含むと好適である。より具体的には、全体
を100%とした場合に、CrとMoとはそれぞれ20
%以下であり、MnとFeとCoとNiとはそれぞれ1
0%以下であると好適である。CrとMoとは、チタン
合金の強度と熱間鍛造性とを向上させる上で有効な元素
である。熱間鍛造性が向上すると、チタン合金の生産性
や歩留まりの向上が図れる。ここで、CrやMoが、2
0%を越えると、材料偏析が生じ易くなり、均質な材料
を得ることが困難となる。それらの元素を1%以上とす
ると、固溶強化により強度向上を図れ、3〜15%とす
ると、一層好ましい。
様、チタン合金の強度と熱間鍛造性を向上させる上で有
効な元素である。従って、Mo、Cr等の代わりに、ま
たはMo、Cr等と共にそれらの元素を含有させても良
い。但し、それらの元素が10%を越えると、チタンと
の間で金属間化合物を形成し、延性が低下してしまうた
め好ましくない。それらの元素を1%以上とすると、固
溶強化により強度向上を図れ、2〜7%とすると一層好
ましい。
加えると好適である。すなわち、本発明のチタン合金
は、CrとMoとMnとFeとCoとNiとSnとから
なる金属元素群中の1種類以上の元素を含むと好適であ
る。より具体的には、全体を100%とした場合に、C
rとMoとはそれぞれ20%以下であり、MnとFeと
CoとNiとSnとはそれぞれ10%以下であると好適
である。
強度を向上させる上で有効な元素である。従って、10
%以下のSnを、Mo等の元素と共に含有させると良
い。Snが10%を越えると、チタン合金の延性が低下
して加工性の低下を招く。Snを1%以上、さらには、
2〜8%とすると、高弾性変形能化と高引張弾性限強度
化との両立を図る上でより好ましい。なお、Mo等の元
素については、前述と同様である。
適である。具体的には、Alが、全体を100%とした
場合に0.3〜5%であると、一層好適である。Al
は、チタン合金の強度を向上させる上で有効な元素であ
る。従って、本発明のチタン合金が、0.3〜5%のA
lを、MoやFe等の代りに、またはそれらの元素と共
に含有すると良い。Alが0.3%未満では固溶強化作
用が不十分で、十分な強度の向上が図れない。また、5
%を越えると、チタン合金の延性を低下させる。Alを
0.5〜3%とすると、強度が安定してより好ましい。
なお、AlをSnと共に添加すると、チタン合金の靱性
を低下させることなく、強度を向上させることができて
より好ましい。
とした場合に、0.08〜0.6%のOを含むと好適で
ある。また、全体を100%とした場合に、0.05〜
1.0%のCを含むと好適である。また、全体を100
%とした場合に、0.05〜0.8%のNを含むと好適
である。まとめると、全体を100%とした場合に、
0.08〜0.6%のOと0.05〜1.0%のCと
0.05〜0.8%のNとからなる元素群中の1種類以
上の元素を含むと好適である。
強化元素であり、チタン合金のα相を安定にし、強度向
上に有効な元素である。Oが0.08%未満、Cまたは
Nが0.05%未満では、チタン合金の強度向上が十分
ではない。また、Oが0.6%を超え、Cが1.0%を
超え、またはNが0.8%を超えると、チタン合金の脆
化を招き、好ましくない。Oを0.1%以上、さらには
0.15〜0.45%とし、または、Cを0.1〜0.
8%、Nを0.1〜0.6%とすると、チタン合金の強
度と延性とのバランスを図れてより好ましい。
とした場合に、0.01〜1.0%のBを含むと好適で
ある。Bは、チタン合金の機械的な材料特性と熱間加工
性とを向上させる上で有効な元素である。Bは、チタン
合金に殆ど固溶せず、そのほぼ全量がチタン化合物粒子
(TiB粒子等)として析出する。この析出粒子が、チ
タン合金の結晶粒成長を著しく抑制して、チタン合金の
組織を微細に維持するからである。Bが0.01%未満
では、その効果が十分ではなく、1.0%を超えると、
高剛性の析出粒子が増えることにより、チタン合金の弾
性変形能と冷間加工性との低下を招いてしまう。
と、0.01%のBは、0.055体積%のTiB粒子
となり、1%のBは、5.5体積%のTiB粒子とな
る。従って、本発明のチタン合金は、0.055体積%
〜5.5体積%のホウ化チタン粒子を含むものでも良
い。ところで、上述の各組成元素は、所定の範囲内で、
任意に組合わせることができる。具体的には、前記Z
r、Hf、Sc、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、N
i、Sn、Al、O、C、N、Bを、適宜、前記範囲内
で選択的に組合わせ、本発明のチタン合金とすることが
できる。勿論、本発明のチタン合金の趣旨を逸脱しない
範囲内で、別の元素をさらに配合しても良い。
金 上述したチタン合金は、その製造方法が特に限定される
ものではなく、溶解法や後述の焼結法を用いても製造す
ることができる。また、製造途中の各段階で、冷間加
工、熱間加工、熱処理等を施すことにより、得られるチ
タン合金の材料特性を調整することも可能である。例え
ば、本発明のチタン合金が次のようなものであると好ま
しい。すなわち、本発明のチタン合金は、Va族元素と
残部が実質的にチタンとからなるチタン合金原材に10
%以上の冷間加工を加える冷間加工工程と、該冷間加工
工程後に得られた冷間加工材に処理温度が150℃〜6
00℃の範囲でラルソン・ミラー・パラメータPが8.
0〜18.5となる時効処理を施す時効処理工程とを経
て製造されるものであると好適である。
が150℃〜300℃の範囲でパラメータPが8.0〜
12.0であり、前記引張弾性限強度が1000MPa
以上で前記弾性変形能が2.0%以上であるチタン合金
が得られると好適である。また、この時効処理工程は、
前記処理温度が300℃〜450℃の範囲でパラメータ
Pが12.0〜14.5であり、前記引張弾性限強度が
1400MPa以上で弾性変形能が1.6%以上である
チタン合金が得られると好適である。冷間加工工程およ
び時効処理工程の詳細は後述する。
タン合金を得る上で有効な工程である。本発明者の研究
によれば、このような冷間加工がチタン合金内に加工歪
みを付与し、この加工歪みが原子レベルでのミクロ的な
構造変化を組織内にもたらして、チタン合金の弾性変形
能の向上に寄与すると考えられる。また、この冷間加工
を加えることにより、原子レベルでのミクロ的な構造変
化を生じる。この構造変化に伴う弾性歪みの蓄積が、チ
タン合金の引張弾性限強度の向上に寄与していると考え
られる。
率を10%以上とする工程であると好適であり、さらに
は、冷間加工率を50%以上、70%以上、90%以
上、95%以上、99%以上以上としても良い。そし
て、この冷間加工工程は、時効工程の前処理として別途
行われても、または、素材または製品の成形(例えば、
仕上げ加工)を目的として行われても良い。なお、冷間
加工率は、S0:冷間加工前の断面積、S:冷間加工後
の断面積として、 冷間加工率 X=(S0−S)/S0 ×100(%) で定義される。
温度(再結晶を起す最低温度)よりも十分低温であるこ
とを意味する。再結晶温度は、組成により変化するが、
概ね600℃程度であり、本発明の製造方法では、常温
〜300℃の範囲で冷間加工を行うと良い。このように
本発明に係るチタン合金は、冷間加工性に優れ、冷間加
工を施すことで、その材料特性や機械的特性が改善され
る傾向にある。従って、本発明に係るチタン合金は、冷
間加工製品に適する材料である。また、本発明の製造方
法は、冷間加工製品に適する製造方法である。
る。この時効処理工程を施すとにより、高弾性変形能で
高引張弾性限強度のチタン合金が得られることを本発明
者は新たに見出した。但し、時効処理を施す前に、再結
晶温度以上での溶体化処理を行うと、冷間加工によりチ
タン合金内に付与された加工歪の影響が喪失されるた
め、好ましくない。
時効処理(150〜300℃)と、(b)高温長時間時
効処理(300〜600℃)がある。前者の場合、引張
弾性限強度を向上させつつ、平均ヤング率を維持または
低下させることができる。その結果、高弾性変形能のチ
タン合金を得ることができる。後者の場合、平均ヤング
率が引張弾性限強度の上昇に伴って多少上昇し得るが、
それでも95GPa以下であり、その上昇レベルは非常
に低い。従って、この場合でも、高弾性変形能のチタン
合金が得られる。
返すことにより、その時効処理工程が、処理温度150
〜600℃の範囲で、次式に基づいて処理温度(T℃)
と処理時間(t時間)とから決定されるパラメータ
(P)が8.0〜18.5となる工程であると、好まし
いことを見出した。 P=(T+273)・(20+log10t)/100
0 このパラメータPは、ラルソン・ミラー(Larson
−Miller)パラメータであり、熱処理温度と熱処
理時間との組合せで決まり、本発明の時効処理(熱処
理)条件を指標するものである。
処理を施しても、好ましい材料特性の向上が得られず、
パラメータPが18.5を超えると、引張弾性限強度の
低下、平均ヤング率の上昇または弾性変形能の低下を招
き得る。さらに、時効処理工程は、前記処理温度が15
0℃〜300℃の範囲でパラメータPが8.0〜12.
0であり、得られたチタン合金の引張弾性限強度が10
00MPa以上、弾性変形能が2.0%以上、平均ヤン
グ率が75GPa以下であると好適である。
00℃〜450℃の範囲でパラメータPが12.0〜1
4.5であり、前記チタン合金の引張弾性限強度が14
00MPa以上、弾性変形能が1.6%以上、平均ヤン
グ率が95GPa以下であると好適である。パラメータ
Pをより適切な範囲とする処理温度と処理時間とを選定
することにより、一層高弾性変形能で高引張弾性限強度
のチタン合金が得られる。なお、特に断らない限り、
「x〜y」という数値範囲は、下限値xと上限値yとを
含むものである(以下、同様)。
とVa族元素とを含む原料粉末が必要である。所望する
チタン合金の組成や特性に応じて、前述した種々の元素
を含有する原料粉末を使用できる。前述したように、原
料粉末は、チタンとVa族元素とに加えて、Zr、H
f、Scまたは、Cr、Mn、Co、Ni、Mo、F
e、Sn、Al、O、C、NおよびBの少なくとも一種
以上の元素を含むと好適である。
金粉末でも良い。原料粉末には、例えば、スポンジ粉
末、水素化脱水素粉末、水素化粉末、アトマイズ粉末な
どを使用できる。粉末の粒子形状や粒径(粒径分布)な
どは、特に限定されるものではなく、市販の粉末をその
まま用いることができる。もっとも、原料粉末は、コス
トや焼結体の緻密性の観点から、平均粒径が100μm
以下であると、好ましい。さらに、粉末の粒径が45μ
m(#325)以下であれば、より緻密な焼結体を得や
すい。
合法と同様に素粉末からなる混合粉末を利用しても良い
が、所望の合金組成を有する合金粉末そのものを原料粉
末として使用しても良い。そして、本発明に係るチタン
合金の組成をもつ原料粉末は、例えば、ガスアトマイズ
法や、REP法(回転電極法)、PREP法(プラズマ
回転電極法)、あるいは溶解法により製造されたインゴ
ットを水素粉砕やMA法(機械的合金化法)等により製
造できる。
工程により、原料粉末が均一に混合され、マクロ的に均
一なチタン合金が得られる。原料粉末の混合には、V型
混合機、ボールミル及び振動ミル、高エネルギーボール
ミル(例えば、アトライター)等を使用できる。
の成形体に成形する工程である。所定形状の成形体が得
られるため、その後の加工工数低減を図れる。なお、成
形体は、板材や棒材等の素材形状をしていても、最終製
品の形状をしていても、また、それらに至る前の中間品
の形状をしていても良い。また、焼結工程後にさらに加
工を施す場合はビレット形状等でもよい。成形工程に
は、例えば、金型成形、CIP成形(冷間静水圧プレス
成形)、RIP成形(ゴム静水圧プレス成形)等を用い
ることができる。特に、CIP成形を行う場合、例え
ば、その成形圧力を200〜400MPaとすると良
い。
る工程であり、熱間静水圧法(HIP法)を用いるため
に必要となる。その容器の内側形状は、所望の製品形状
に対応させても良い。また、容器は、例えば、金属製で
も、セラミック製でも、ガラス製でもよい。また、真空
脱気して、原料粉末を容器に充填、封入するとよい。
せるか、または、充填工程後の容器中の該原料粉末を、
熱間静水圧法により焼結させる工程である。このときの
処理温度(焼結温度)は、チタン合金の融点よりもかな
り低いため、本発明の製造方法によれば、溶解法のよう
な特殊な装置を必要とせず、経済的にチタン合金を製造
できる。
囲気中で成形体を焼結させることが好ましい。また、処
理温度は、合金の融点以下で、各成分元素が十分に拡散
する温度域で行われることが好ましい。例えば、その処
理温度を1200℃〜1600℃とすると、好ましい。
また、チタン合金の緻密化と生産性の効率化を図る上
で、処理温度を1200〜1600℃とし処理時間を
0.5〜16時間とすると、一層好適である。
の変形抵抗が小さく、かつ容器と反応しにくい温度領域
で行われることが好ましい。例えば、その温度範囲を9
00℃〜1300℃とすると良い。また、成形圧力は、
充填粉末が十分にクリープ変形できる圧力であると好ま
しく、例えば、その圧力範囲を50〜200MPa(5
00〜2000気圧)とすると良い。HIPの処理時間
は、原料粉末が十分にクリープ変形して緻密化し、か
つ、合金成分が粉末間で拡散できる時間が好ましい。例
えば、その時間を1時間〜10時間とすると良い。
合工程、成形工程を必ずしも必要とせず、いわゆる合金
粉末法も可能となる。従って、この場合、前述したよう
に、使用できる原料粉末の種類も広がり、二種以上の純
金属粉末や合金粉末を混合した混合粉末のみならず、所
望の合金組成そのものをもつ合金粉末を原料粉末として
使用することができる。また、HIP法を用いると、緻
密な焼結チタン合金を得ることもでき、製品形状が複雑
であってもネットシェイプが可能となる。
の組織を緻密化させる工程である。焼結工程後の焼結体
のままでは、空孔等が多い。熱間加工を施すことによ
り、この空孔の低減等を図れ、緻密な焼結体とすること
ができる。そして、熱間加工工程を行うことにより、チ
タン合金の引張弾性限強度の向上を図れる。従って、前
記チタン合金原材は、さらに、前記焼結工程後に得られ
る焼結体へ熱間加工を加える熱間加工工程を経て製造さ
れると好適である。
工を意味し、例えば、熱間鍛造、熱間圧延、熱間スエー
ジ、熱間コイニング等がある。熱間加工工程は、加工温
度を600〜1100℃とする工程であると好適であ
る。この温度は、加工する焼結体自体の温度である。6
00℃未満では、変形抵抗が高く、熱間加工工程が困難
であって歩留まりの低下を招く。一方、1100℃を超
えて熱間加工を行うと、結晶粒が粗大化して好ましくな
い。この熱間加工工程により、製品の形状を概略的に形
成することもできる。また、焼結体の組織中の空孔量を
調整して、チタン合金のヤング率、強度、密度等を調整
することもできる。
は、高弾性、高強度であるため、その特性にマッチする
製品に幅広く利用できる。また、優れた冷間加工性も備
えるため、冷間加工製品に本発明のチタン合金を利用す
ると好適である。中間焼鈍等を介在させずに加工割れ等
を著しく低減させて、歩留り向上を図れるからである。
形状的に切削加工等が必要と考えられていた従来の製品
に、本発明のチタン合金を用いて冷間成形等を行うと、
そのチタン製品の量産化、低コスト化を図り易い。そし
て、その際に本発明の製造方法が有効となる。
挙げると、産業機械、自動車、バイク、自転車、家電
品、航空宇宙機器、船舶、装身具、スポーツ・レジャ用
品、生体関連品、医療器材、玩具等がある。例えば、自
動車の(コイル)スプリングに本発明のチタン合金を用
いると、高弾性変形能(低ヤング率)故に、従来のバネ
鋼製スプリングに比較して、巻き数を著しく低下させる
ことができる。さらに、その巻数低減に加え、本発明の
チタン合金は比重がバネ鋼の70%程度であるために、
大幅な軽量化が実現できる。
本発明のチタン合金を用いると、その高弾性変形能によ
り、蔓部分等が撓み易くなり、顔によくフィットする。
さらに、その眼鏡は、衝撃吸収性や形状の復元性にも優
れたものとなる。さらに、本発明のチタン合金は、冷間
加工性に優れるため、細線材から眼鏡フレーム等への成
形が容易であり、歩留り向上も図れる。また、スポーツ
・レジャ用品の一つであるゴルフクラブに本発明のチタ
ン合金を用いると、そのシャフトはしなり易くなり、ゴ
ルフボールへ伝達される弾性エネルギーが増して、ゴル
フボールの飛距離の向上が期待できる。
ス部分が本発明のチタン合金からなると、その高弾性変
形能(低ヤング率)と高引張弾性限強度に伴う薄肉化と
により、ヘッドの固有振動数を従来のチタン合金に比べ
て著しく低減できる。従って、そのヘッドを備えるゴル
フクラブは、ゴルフボールの飛距離を相当伸ばすことと
なる。なお、ゴルフクラブに関する理論は、例えば、特
公平7−98077号公報や国際公開WO98/463
12号公報等に開示されている。その他、ゴルフクラブ
に本発明のチタン合金を用いれば、ゴルフクラブの打感
等も向上させることが可能であり、ゴルフクラブの設計
自由度を著しく拡大させることができる。
人工移植片、骨の固定具等の生体内に配設されるものや
医療器械の機能部材(カテーテル、鉗子、弁等)等に本
発明のチタン合金を利用できる。例えば、人工骨が本発
明のチタン合金からなると、その人工骨は人骨に近い高
弾性変形能をもち、人骨との均衡が図られて生体適合性
に優れると共に、骨として十分な高引張弾性限強度も有
する。また、本発明のチタン合金は、制振材にも適す
る。E=ρV2 (E:ヤング率、ρ:材料密度、V:材
料内を伝わる音速)の関係式から解るように、ヤング率
を低下(弾性変形能を向上)させることにより、その材
料内を伝わる音速を低減できるからである。
箔材、繊維、織物等)、携帯品(時計(腕時計)、バレ
ッタ(髪飾り)、ネックレス、ブレスレット、イアリン
グ、ピアス、指輪、ネクタイピン、ブローチ、カフスボ
タン、バックル付きベルト、ライター、万年筆のペン
先、万年筆用クリップ、キーホルダー、鍵、ボールペ
ン、シャープペンシル等)、携帯情報端末(携帯電話、
携帯レコーダ、モバイルパソコン等のケース等)、エン
ジンバルブ用のスプリング、サスペンションスプリン
グ、バンパー、ガスケット、ダイアフラム、ベローズ、
ホース、ホースバンド、ピンセット、釣り竿、釣り針、
縫い針、ミシン針、注射針、スパイク、金属ブラシ、椅
子、ソファー、ベッド、クラッチ、バット、各種ワイヤ
類、各種バインダ類、書類等クリップ、クッション材、
各種メタルシール、エキスパンダー、トランポリン、各
種健康運動機器、車椅子、介護機器、リハビリ機器、ブ
ラジャー、コルセット、カメラボディー、シャッター部
品、暗幕、カーテン、ブラインド、気球、飛行船、テン
ト、各種メンブラン、ヘルメット、魚網、茶濾し、傘、
消防服、防弾チョッキ、燃料タンク等の各種容器類、タ
イヤの内張り、タイヤの補強材、自転車のシャシー、ボ
ルト、定規、各種トーションバー、ゼンマイ、動力伝動
ベルト(CVTのフープ等)等の、各種分野の各種製品
に本発明のチタン合金は利用され得る。なお、本発明に
係るチタン合金およびその製品は、前述した本発明の製
造方法に限らず、鋳造、鍛造、超塑性成形、熱間加工、
冷間加工、焼結、HIP等、種々の製造方法により製造
され得る。
方法に係る種々の実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明する。 (試料の製造)第1〜4実施例(試料No.1〜19)
のチタン合金は、表1に示すように、30〜60%のV
a族元素とTiとを組成にもち、冷間加工工程と時効処
理工程とを施して、次にように製造されたものである。 原料粉末として、市販の水素化・脱水素Ti粉末(−
#325、−#100)、ニオブ(Nb)粉末(−#3
25)、バナジウム(V)粉末(−#325)、タンタ
ル(Ta)粉末(−#325)を用意した。これらの各
粉末を表1の組成割合となるように配合し、アトライタ
またはボールミルを用いて混合した(混合工程)。な
お、表1に示した合金組成の単位は質量百分率(%)で
あり、残部はチタンである。
P成形(冷間静水圧成形)して、φ40×80mmの円
柱形状の成形体を得た(成形工程)。 成形工程後に得られた成形体を、5×10-3Paの真
空中で、表1に示す処理温度と処理時間(焼結工程条
件)の下で焼結させて焼結体を得た(焼結工程)。 この焼結体を700〜1150℃の大気中で熱間鍛造
してφ15mmの丸棒とした(熱間加工工程)。
エージ加工を施して冷間加工材(供試材)を得た(冷間
加工工程)。 さらに、この冷間加工材に、Arガス雰囲気の加熱炉
中で時効処理を施した(時効処理工程)。
各試料ごとの具体的な製造条件を説明する。 (1)第1実施例(試料No.1〜7) 本実施例は、表1に示すように、Ti−30Nb−10
Ta−5Zr(%は省略:以下同様)の組成をもつ混合
粉末からなる成形体に、1300℃×16時間の焼結工
程を施して焼結体とし、この焼結体に上記熱間加工工程
と冷間加工率87%の冷間加工工程を施した後、得られ
た冷間加工材に、表1に示す種々の条件の時効処理工程
を加えたものである。
に示す異なる条件の焼結工程と冷間加工工程とを施した
後、各試料に同条件の時効処理工程を加えたものであ
る。
7) 本実施例は、表1に示す異なる組成をもつ合金に、表1
に示す異なる条件の焼結工程と冷間加工工程とを施した
後、各試料毎に異なる条件の時効処理工程を加えたもの
である。
9) 本実施例は、第1実施例または第2実施例の各試料に対
して、含有酸素量を表1に示すように変更したものであ
る。焼結工程、冷間加工工程および時効処理工程の条件
は、第1実施例または第2実施例とほぼ同様である。こ
の第4実施例の結果から、酸素が低ヤング率と高強度
(高弾性)とを図る上で有効な元素であることが解る。
なる試料No.C1〜C4を製造した。試料No.C1
は、熱間加工材のままで、冷間加工工程および時効処理
工程を加えなかったものである。試料No.C2は、熱
間加工材に冷間加工を施さずにパラメータPの値が低い
時効処理工程を加えたものである。試料No.C3は、
冷間加工材にパラメータPの値が高い時効処理工程を加
えたものである。試料No.C4は、溶解法により製造
したVa族元素が30%未満のインゴットに、時効処理
工程を加えたものである。
特性を以下に示す方法で求めた。各試料について、イン
ストロン試験機を用いて引張試験を行い、荷重と伸びと
を測定して、応力−歪み線図を求めた。インストロン試
験機とは、インストロン(メーカ名)製の万能引張試験
機であり、駆動方式は電気モータ制御式である。伸びは
試験片の側面に貼り付けたひずみゲージの出力から測定
した。
−歪み線図に基づいて前述した方法により求めた。弾性
変形能は、引張弾性限強度に対応する伸びを応力−歪み
線図から求めた。平均ヤング率は、前述したように、そ
の応力−歪み線図に基づいて得られる、引張弾性限強度
の1/2に相当する応力位置での傾き(曲線の接線の傾
き)として求めた。伸びは、その応力−歪み線図から求
めた破断伸びである。前述の各試料について求めたこれ
らの測定結果を表1に併せて示した。
処理を施すことにより、引張弾性限強度または引張強度
が250〜800MPa程度上昇していることが解る。
上昇を伴う場合もあるが、いずれの場合も平均ヤング率
が90GPa以下であり、時効処理条件を適切に選択す
ることで、平均ヤング率を抑制できることが解った。ま
た、強度の向上と平均ヤング率の抑制とにより、弾性変
形能も1.6%以上の大きな値を示し、高弾性変形能で
高引張弾性限強度のチタン合金が得られることが確認で
きた。
ば、高弾性変形能で高引張弾性限強度であるため各種製
品に幅広く利用でき、冷間加工性にも優れるためそれら
の生産性向上も図れる。また、本発明のチタン合金の製
造方法によれば、そのようなチタン合金を容易に得るこ
とができる。
図Aは本発明に係るチタン合金のものであり、同図Bは
従来のチタン合金のものである。
Claims (38)
- 【請求項1】Va族(バナジウム族)元素と残部が実質
的にチタン(Ti)とからなり、 引張弾性限強度が950MPa以上で、弾性変形能が
1.6%以上であることを特徴とする高弾性変形能を有
するチタン合金。 - 【請求項2】全体を100%(質量百分率:以下同様)
とした場合に、前記Va族元素を30〜60%含む請求
項1に記載のチタン合金。 - 【請求項3】全体を100%とした場合に、ジルコニウ
ム(Zr)とハフニウム(Hf)とスカンジウム(S
c)とからなる金属元素群中の1種以上の元素を合計で
20%以下含む請求項1または2に記載のチタン合金。 - 【請求項4】全体を100%とした場合に、ZrとHf
とScとからなる金属元素群中の1種以上の元素を合計
で20%以下と、前記Va族元素を該金属元素群中の1
種以上の元素との合計が30〜60%となるように含む
請求項1に記載のチタン合金。 - 【請求項5】クロム(Cr)とモリブデン(Mo)とマ
ンガン(Mn)と鉄(Fe)とコバルト(Co)とニッ
ケル(Ni)とからなる金属元素群中の1種類以上の元
素を含む請求項1〜4のいずれかに記載のチタン合金。 - 【請求項6】全体を100%とした場合に、前記Crと
前記Moとはそれぞれ20%以下であり、前記Mnと前
記Feと前記Coと前記Niとはそれぞれ10%以下で
ある請求項5に記載のチタン合金。 - 【請求項7】アルミニウム(Al)を含む請求項1〜6
のいずれかに記載のチタン合金。 - 【請求項8】全体を100%とした場合に、前記Al
は、0.3〜5%である請求項7に記載のチタン合金。 - 【請求項9】全体を100%とした場合に、0.08〜
0.6%の酸素(O)を含む請求項1〜8のいずれかに
記載のチタン合金。 - 【請求項10】全体を100%とした場合に、0.05
〜1.0%の炭素(C)を含む請求項1〜9のいずれか
に記載のチタン合金。 - 【請求項11】全体を100%とした場合に、0.05
〜0.8%の窒素(N)を含む請求項1〜10のいずれ
かに記載のチタン合金。 - 【請求項12】全体を100%とした場合に、0.01
〜1.0%のホウ素(B)を含む請求項1〜11のいず
れかに記載のチタン合金。 - 【請求項13】Va族元素と残部が実質的にチタンとか
らなるチタン合金原材に10%以上の冷間加工を加える
冷間加工工程と、該冷間加工工程後に得られた冷間加工
材に処理温度が150℃〜600℃の範囲でラルソン・
ミラー(Larson−Miller)パラメータP
(以降、単に「パラメータP」と称する。)が8.0〜
18.5となる時効処理を施す時効処理工程とを経て製
造さる請求項1〜12のいずれかに記載のチタン合金。 - 【請求項14】前記時効処理工程は前記処理温度が15
0℃〜300℃の範囲で前記パラメータPが8.0〜1
2.0であり、前記引張弾性限強度は1000MPa以
上、前記弾性変形能は2.0%以上で、平均ヤング率が
75GPa以下である請求項13に記載のチタン合金。 - 【請求項15】前記時効処理工程は前記処理温度が30
0℃〜450℃の範囲で前記パラメータPが12.0〜
14.5であり、前記引張弾性限強度は1400MPa
以上、平均ヤング率が95GPa以下である請求項13
に記載のチタン合金。 - 【請求項16】Va族元素と残部が実質的にチタンとか
らなるチタン合金原材に10%以上の冷間加工を加える
冷間加工工程と、 該冷間加工工程後に得られた冷間加工材に処理温度が1
50℃〜600℃の範囲でパラメータPが8.0〜1
8.5となる時効処理を施す時効処理工程とからなり、
引張弾性限強度が950MPa以上で弾性変形能が1.
6%以上となるチタン合金を製造することを特徴とする
高弾性変形能を有するチタン合金の製造方法。 - 【請求項17】前記時効処理工程は前記処理温度が15
0℃〜300℃の範囲で前記パラメータPが8.0〜1
2.0であり、 前記チタン合金は前記引張弾性限強度が1000MPa
以上、前記弾性変形能が2.0%以上で、平均ヤング率
が75GPa以下である請求項16に記載のチタン合金
の製造方法。 - 【請求項18】前記時効処理工程は前記処理温度が30
0℃〜450℃の範囲で前記パラメータPが12.0〜
14.5であり、 前記チタン合金は前記引張弾性限強度が1400MPa
以上、平均ヤング率が95GPa以下である請求項16
に記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項19】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、前記Va族元素を30〜60%含む請求
項16〜18のいずれかに記載のチタン合金の製造方
法。 - 【請求項20】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、ZrとHfとScとからなる金属元素群
中の1種以上の元素を合計で20%以下含む請求項16
〜19のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項21】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、ZrとHfとScとからなる金属元素群
中の1種以上の元素を合計で20%以下と、前記Va族
元素を該金属元素群中の1種以上の元素との合計が30
〜60%となるように含む請求項16〜18のいずれか
に記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項22】前記チタン合金原材は、CrとMoとM
nとFeとCoとNiとからなる金属元素群中の1種類
以上の元素を含む請求項16〜21のいずれかに記載の
チタン合金の製造方法。 - 【請求項23】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、前記Crと前記Moとをそれぞれ20%
以下、前記Mnと前記Feと前記Coと前記Niとをそ
れぞれ10%以下含む請求項22に記載のチタン合金の
製造方法。 - 【請求項24】前記チタン合金原材は、Alを含む請求
項16〜23のいずれかに記載のチタン合金の製造方
法。 - 【請求項25】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、前記Alを0.3〜5%含む請求項24
に記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項26】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、0.08〜0.6%のOを含む請求項1
6〜25のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項27】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、0.05〜1.0%のCを含む請求項1
6〜26のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項28】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、0.05〜0.8%のNを含む請求項1
6〜27のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項29】前記チタン合金原材は、全体を100%
とした場合に、0.01〜1.0%のBを含む請求項1
6〜28のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項30】前記チタン合金原材は、チタンとVa族
元素とを含む少なくとも二種以上の原料粉末を混合する
混合工程と、該混合工程後に得られた混合粉末を所定形
状の成形体に成形する成形工程と、該成形工程後に得ら
れた成形体を加熱して焼結させる焼結工程と、により製
造される請求項16〜29のいずれかに記載のチタン合
金の製造方法。 - 【請求項31】前記焼結工程は、処理温度を1200℃
〜1600℃とし処理時間を0.5〜16時間とする工
程である請求項30に記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項32】前記チタン合金原材は、さらに、前記焼
結工程後に得られる焼結体へ熱間加工を加える熱間加工
工程を経て製造される請求項30に記載のチタン合金の
製造方法。 - 【請求項33】前記熱間加工工程は、加工温度を600
〜1100℃とする工程である請求項32に記載のチタ
ン合金の製造方法。 - 【請求項34】前記チタン合金原材は、チタンとVa族
元素とを含む原料粉末を所定形状の容器に充填する充填
工程と、該充填工程後に熱間静水圧法(HIP法)を用
いて該容器中の該原料粉末を焼結させる焼結工程と、に
より製造される請求項16〜29のいずれかに記載のチ
タン合金の製造方法。 - 【請求項35】前記原料粉末は、全体を100%とした
場合に、前記Va族元素を30〜60%含む請求項30
〜34のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項36】前記原料粉末は、全体を100%とした
場合に、ZrとHfとScとからなる金属元素群中の1
種以上の元素を合計で20%以下含む請求項30〜35
のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。 - 【請求項37】前記原料粉末は、全体を100%とした
場合に、合計で20%以下のZrとHfとScとからな
る金属元素群中の1種以上の元素と、該金属元素群中の
1種以上の元素との合計が30〜60%となる前記Va
族元素とを含む請求項30〜34のいずれかに記載のチ
タン合金の製造方法。 - 【請求項38】前記原料粉末は、Cr、Mn、Co、N
i、Mo、Fe、錫(Sn)、Al、O、C、Nおよび
Bの少なくとも一種以上の元素を含む請求項30〜37
のいずれかに記載のチタン合金の製造方法。
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