JP2002248415A - 塗装鋼板およびその製造方法 - Google Patents

塗装鋼板およびその製造方法

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JP2002248415A JP2001023860A JP2001023860A JP2002248415A JP 2002248415 A JP2002248415 A JP 2002248415A JP 2001023860 A JP2001023860 A JP 2001023860A JP 2001023860 A JP2001023860 A JP 2001023860A JP 2002248415 A JP2002248415 A JP 2002248415A
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淳一 稲垣
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康弘 間島
Nobuyuki Ishida
信之 石田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】この発明は、溶融亜鉛めっきを下地とし、加工
性および加工部の耐食性に優れた塗装鋼板およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 Alを質量%で、20〜95%含有し、
塗装前に130℃以上、250℃以下、好ましくは20
0℃以下に加熱保持された溶融めっき層を下地とし、塗
装前処理用の化成処理皮膜上に、塗膜厚が2μm以上、
15μm以下の下塗り塗膜、更に塗膜厚が5μm以上、
30μm以下でガラス転移温度:30℃以上、90℃以
下の上塗り塗膜を塗布する。 但し、溶融めっき層の
加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜が完全に凝固
している温度より式(1)を満足する時間、保持時間:
t2(hr)は30時間以内、且つ式(2)または式
(3)を満足する時間とする。 t1≦(T−30)/10・・・・(1) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(280−T)/3・・・・(2) t2≦(200−T)/2・・・・(3) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、折り曲げ等の加工
部においてもクラックが発生しない加工性に優れた塗装
鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Alを20〜95質量%含有する溶融亜
鉛めっき鋼板を下地とした塗装鋼板は、特公昭46−7
161号公報に記載されているように、下地のめっき鋼
板が溶融亜鉛めっき鋼板に比べて高耐食性を有するた
め、優れた耐食性を示し、特にAlを55質量%含有す
る溶融亜鉛めっき鋼板表面に塗装を施した塗装鋼板を中
心に、近年建材分野で需要が伸びている。
【0003】Alを20〜95質量%含有する溶融亜鉛
めっき鋼板は、熱間圧延後酸洗脱スケールした熱延鋼
板、または冷延鋼板を連続式溶融めっき設備に装入して
製造される。
【0004】連続式溶融めっき設備において、鋼板は先
ず還元性雰囲気に保持された焼鈍炉に入り、所定温度に
加熱後、焼鈍と同時に鋼板表面に付着する圧延油等の除
去、酸化膜の還元除去が行われた後、下端がめっき浴に
浸漬されたスナウト内を通って、所定量のAlを含有し
た溶融亜鉛が入っているめっき浴内に浸漬される。
【0005】めっき浴で所定のめっきを施された鋼板
は、シンクロールを経由し、めっき浴の上方に引き上げ
られ、次いでめっき浴上に配置されたワイピングノズル
から加圧した気体の噴射により、めっき付着量が調整さ
れ、その後、冷却されて所定のめっき皮膜を有する溶融
めっき鋼板となる。
【0006】通常、連続式溶融めっき設備では、焼鈍炉
での熱処理条件、焼鈍炉の雰囲気条件、めっき浴組成や
めっき後の冷却速度等の操業条件が所有のめっき品質や
材質を確保するため、精度良く管理されている。
【0007】このように製造されたAlを20〜95質
量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板のめっき皮膜は,めっ
き皮膜の膜厚方向に積層し、主としてZnを過飽和に含
有したAlがデンドライト凝固した部分と、デンドライ
ト間隙の部分からなっており、優れた耐食性が得られ
る。
【0008】また、めっき浴に通常1.5質量%程度添
加されているSiの働きにより、めっき皮膜/下地鋼板
界面の合金相成長が抑制され、合金相の厚さは約1〜2
μmと薄く、優れた耐食性を示す特徴的な皮膜構造の部
分が多い。
【0009】更に、合金相はめっき皮膜よりも硬く、加
工時にクラック起点として作用するので、合金相の成長
抑制はクラック発生を減じ、加工性向上効果をもたらす
ことが知られている。
【0010】尚、めっき浴には不可避的不純物、鋼板や
めっき浴中機器等から溶出するFe,合金相抑制のため
のSiが含まれるが、それら以外にも何らかの元素が添
加され、合金相やめっき皮膜中にはそれらの元素が合金
あるいは単体として存在している。
【0011】一方、塗装鋼板は、塗装後、成形加工して
用いられ、加工時にクラック(塗膜の割れ)の発生を防
止することが非常に重要となっている。上述したAlを
20〜95質量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板を下地と
した塗装鋼板は、優れた耐食性を有する反面、めっきの
加工性の影響を大きく受け、他のめっき、例えばAlを
5質量%含有する亜鉛めっきを下地とした塗装鋼板(以
下、5%Al−Zn塗装鋼板)に比べ、加工時にクラッ
クが容易に発生し、加工強度が制限される場合が多い。
【0012】クラックは、めっき皮膜/下地鋼板界面に
存在する約1〜2μm厚の合金相を起点とするものであ
るが、めっき皮膜のデンドライト間隙部を伝播経路とす
るため、同一加工条件においても同一めっき皮膜厚の5
%Al−Zn塗装鋼板と比し、開口部が大きく、肉眼で
視認され、外観不良とされやすい傾向がある。
【0013】この為、塗膜の柔軟化による加工性の改善
や、特公昭61−28748号公報に開示されているよ
うに、めっき鋼板に所定の熱処理を施し、めっき鋼板自
体の延性を改善することが提案されている。
【0014】しかし、前者では、表面傷の発生が容易と
なるなど、他の特性が低下するため、厳しい加工を伴う
用途には用いられず、後者では、めっき皮膜の延性が改
善されたとしても、塗装を行った塗装鋼板としての加工
性やクラックが発生することにより低下する加工部の耐
食性が直接改善されるものではない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、5%
Al−Zn塗装鋼板は、加工時にクラックの発生はない
ものの、耐食性に劣り、一方、Alを20〜95質量%
含有する溶融亜鉛めっき鋼板を下地とした塗装鋼板は、
折り曲げなどの加工の程度によって被加工部にクラック
が発生するため、加工性の向上が望まれている。
【0016】そこで本発明は、耐食性に優れたAlを2
0〜95質量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板を下地と
し、5%Al−Zn塗装鋼板を凌ぐ加工性に優れた塗装
鋼板及びその製造方法を提供することを目的とすること
にある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成するため、Alを20〜95質量%含有する溶融
亜鉛めっき鋼板を下地とする塗装鋼板としての加工性、
加工部の耐食性を向上させる手段について鋭意検討を行
い、最適なめっき皮膜と塗膜の構成を見出した。
【0018】本発明はこれらの知見を基に更に検討を加
えてなされたものであり、すなわち、本発明は、 1.溶融めっき鋼板の表面を塗装する塗装鋼板であっ
て、 Alを質量%で、20〜95%含有し、塗装前に13
0℃以上、250℃以下に加熱保持された溶融めっき
層、但し、加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜が
完全に凝固している温度より式(1)を満足する時間、
保持時間:t2(hr)は30時間以内、且つ式(2)
を満足する時間とする。
【0019】t1≦(T−30)/10・・・・(1) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(280−T)/3・・・・(2) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度 .塗装前処理用化成処理皮膜、 .塗膜厚が2μm以上、15μm以下の下塗り塗膜、 .塗膜厚が5μm以上、30μm以下でガラス転移温
度:30℃以上、90℃以下の上塗り塗膜、 を具備したことを特徴とする塗装鋼板。
【0020】2. 下塗り塗膜がポリエステル系樹脂及
び/又はエポキシ系樹脂を含むことを特徴とする1記載
の塗装鋼板。
【0021】3. 上塗り塗膜がポリエステル系樹脂を
含むことを特徴とする1又は2記載の塗装鋼板。
【0022】4. 上塗り塗膜にポリフッ化ビニリデン
樹脂とアクリル樹脂を含むことを特徴とする1又は2記
載の塗装鋼板。
【0023】5. 塗装前の溶融めっき層の加熱保持が
130℃以上、200℃以下で、加熱保持時間が式
(3)、式(4)を満足することを特徴とする1乃至4
の何れか一つに記載の塗装鋼板。
【0024】加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜
が完全に凝固している温度より式(3)を満足する時
間、保持時間:t2(hr)は30時間以内、且つ式
(4)を満足する時間とする。
【0025】t1≦(T−30)/10・・・・(3) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(200−T)/2・・・・(4) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度6. 下
塗り塗膜にクロム酸系化合物を塗膜の乾燥重量の1〜5
0重量%含むことを特徴とする1乃至5の何れか一つに
記載の塗装鋼板。
【0026】7. 以下の工程を備えたことを特徴とす
る塗装鋼板の製造方法。
【0027】.Alを質量%で、20〜95%含有す
る溶融めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板を、塗装前
に130℃以上、250℃以下に加熱保持する工程、但
し、加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜が完全に
凝固している温度より最高加熱温度まで式(1)を満足
する時間、保持時間:t2(hr)は30時間以内、且
つ式(2)を満足する時間とする。
【0028】t1≦(T−30)/10・・・・(1) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(280−T)/3・・・・(2) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度 .塗装前処理用化成処理を行なう工程、 .下塗り塗料を塗布し、焼付けし、塗膜厚が2μm以
上、15μm以下の下塗り塗膜を形成する工程、 .上塗り塗料を塗布し、焼付けし、塗膜厚が5μm以
上、30μm以下、ガラス転移温度が30℃以上、90
℃以下の上塗り塗膜を形成する工程。
【0029】8. ポリエステル系樹脂及び/またはエ
ポキシ系樹脂を含有する塗料を最高到達温度150℃以
上270℃以下で焼付けて下塗り塗膜を形成し、ポリエ
ステル系樹脂またはポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリ
ル樹脂を含有する塗料を最高到達温度150℃以上28
0℃以下で焼付けて上塗り塗膜を形成することを特徴と
する7記載の塗装鋼板の製造方法。
【0030】9. 塗装前の溶融めっき層の加熱保持が
130℃以上、200℃以下で、加熱保持時間が式
(3)、式(4)を満足することを特徴とする7又は8
に記載の塗装鋼板の製造方法。
【0031】加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜
が完全に凝固している温度より式(3)を満足する時
間、保持時間:t2(hr)は30時間以内、且つ式
(4)を満足する時間とする。
【0032】t1≦(T−30)/10・・・・(3) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(200−T)/2・・・・(4) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度
【0033】
【発明の実施の形態】本発明では、Alを質量%で、2
0〜95%含有する溶融めっき層を有する溶融亜鉛めっ
き鋼板を対象とし、溶融亜鉛めっき鋼板におけるめっき
層、及び該鋼板を下地とする塗装膜を規定する。
【0034】特に優れた加工部の耐食性を目的とする場
合は、めっき皮膜が、45〜65質量%のAlと、0.
7〜2.0質量%のSi,10質量%未満のFe,残部
が不可避不純物を含む実質的なZnから構成される溶融
めっき鋼板とすることが好ましい。
【0035】1.溶融亜鉛めっき鋼板 本発明では、めっき皮膜の加工性を向上させるため、め
っき皮膜を完全に凝固している温度から加熱し、一定時
間保持する。
【0036】加熱条件 めっき皮膜が完全に凝固している温度から、130℃以
上、250℃以下の温度に加熱する。加熱温度は、めっ
き皮膜の加工性を十分向上させるため、130℃以上と
し、250℃を超えると、めっき皮膜/下地鋼板界面の
合金相が早く成長し、加工性を低下させるため、250
℃以下とする。望ましくは200℃以下とする。
【0037】加熱は、生産性の観点から加熱時間t1
(hr)が、式1(式3)を満足し、該温度における保
持時間t2が30時間以内、且つ式2を、望ましくは式
4を満足するように行う。保持時間は30時間よりも長
い場合、生産性を著しく低下させ、t2よりも長い場
合、めっき皮膜/下地鋼板界面の合金相が成長し、加工
性が低下する。
【0038】尚、加熱処理方法は特に限定するものでは
ないが、連続式溶融めっき設備内に加熱機構を設けイン
ラインで行う方法と、コイルに巻き取ったものをオフラ
インでバッチ焼鈍設備によりコイル毎加熱する方法とが
代表的なものとしてある。バッチ焼鈍設備の場合、大気
雰囲気、窒素などの不活性ガス雰囲気のいずれでも良
く、特に規定しない。
【0039】但し、後者はコイルのハンドリング、セッ
テイング、昇温加熱等に時間を要し、生産性を低下さ
せ、工業的原価を上昇させる場合がある。
【0040】2.塗装前処理用化成処理 塗装前処理用化成処理法については、特に規定せず、ク
ロメート処理、リン酸亜鉛処理、及び有機樹脂を主成分
とする処理等を用いることができる。一般的に、環境を
重視した場合は、有機樹脂を主成分とする処理、耐食性
を重視した場合は、クロメート処理が用いられる。但
し、リン酸亜鉛処理は工程が煩雑で、また、20〜70
%質量%のアルミを含む亜鉛系めっき鋼板ではリン酸が
反応が十分でない場合もあり得るので使用する場合には
その点を考慮する必要がある。
【0041】3.下塗り塗膜 下塗り塗膜は厚さ2μm〜15μmとする。膜厚が2μ
mを下回ると十分な防錆性が得られず、一方、15μm
を超えると耐傷付き性が低下し、工業的原価が上昇する
ため、2μm〜15μm(2μm以上、15μm以下)
とする。
【0042】下塗り塗膜の主樹脂は、本発明の作用効果
を十分なものとする場合、ポリエステル系樹脂及び/又
はエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
【0043】ポリエステル系樹脂として、ビスフェノー
ルA付加ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂として一部
をウレタン樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂など変性
したものが含まれる。
【0044】ポリエステル系樹脂は、数平均分子量が1
000〜30000、より好ましくは3000〜200
00のものが好ましい。数平均分子量が1000未満で
は、塗膜の伸びが不十分で、十分な加工性が得られず、
塗膜性能が不十分となる場合がある。
【0045】一方、数平均分子量が30000を超える
と主樹脂が高粘度となるため、過剰の希釈溶剤が必要
で、塗料中に占める樹脂の比率が低下し、適正な塗膜が
得られなくなり、他の配合成分との相溶性も低下する場
合がある。
【0046】また、主樹脂して、ビスフェノールA付加
ポリエステル樹脂を使用する場合、樹脂中のビスフェノ
ールAの含有量は、樹脂固形分中、1〜70質量%、よ
り好ましくは3〜60質量%、特に好ましくは5〜50
質量%とするのが好ましい。
【0047】尚、それぞれの限定範囲において、下限は
塗膜強度を確保し、上限は塗膜の伸びの観点から、規定
される。
【0048】上記ポリエステル樹脂を得るための多価ア
ルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、プロピレングリコール、ジプロピレン、グリ
コール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチレング
リコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタン
ジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
【0049】更に1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプ
ロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、ア
ンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプ
ロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが
挙げられ、また、これらの多価アルコールを2種類以上
組合わせて用いることもできる。
【0050】又、ポリエステル樹脂を得るための多価塩
基としては、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフ
タル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタ
ル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、
トリメリット酸が挙げられる。
【0051】更に、無水トリメリット酸、ピロメリット
酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル
酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン
酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク
酸、無水コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン
酸などが挙げられ、これらの多価塩基酸成分を2種類以
上組合わせて用いることもできる。
【0052】エポキシ樹脂としては、ビスフェノール
A,ビスフェノールF,ビスフェノールS等のビスフェ
ノール類とエピハロヒドリンあるいはβメチルエピハロ
ヒドリンとからなるエポキシ化合物、またはこれらの共
重合物が挙げられる。
【0053】更に、これらのエポキシ化合物のモノカル
ボン酸あるいはジカルボン酸変性物、モノ、ジもしくは
ポリアルコール変性物、モノもしくはジアミン変性物、
モノ、ジもしくはポリフェノール変性物もエポキシ樹脂
として使用できる。
【0054】また、硬化剤としては、ポリイソシアネー
ト化合物または/及びアミノ樹脂を用いることができ
る。
【0055】ポリイソシアネート化合物としては、一般
的製法で得られるイソシアネート化合物を用いることが
できるが、特に1液型塗料としての使用が可能である、
フェノール、クレゾール、芳香族第二アミン、第三級ア
ルコール、ラクタム、オキシム等のブロック剤でブロッ
ク化されたポリイソシアネート化合物が好ましい。この
ブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることによ
り1液での保存が可能となり、塗料としての使用が容易
となる。
【0056】また、更に好ましいポリイソシアネート化
合物としては、非黄変性のヘキサメチレンジイソシアネ
ート(以下、HDI)及びその誘導体、トリレンジイソ
シアネート(以下、TDI)及びその誘導体、4、4´
−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDI)
及びその誘導体、キシリレンジイソシアネート(以下、
XDI)及びその誘導体、イソホロンジイソシアネート
(以下、IPDI)及びその誘導体、トリメチルヘキサ
メチレンジイソシアネート(以下、TMDI)及びその
誘導体、水添TDI及びその誘導体、水添MDI及びそ
の誘導体、水添XDI及びその誘導体が挙げられる。
【0057】さらに、スミジュール(商品名、住友バイ
エルウレタン(株)製)、デスモジュール(商品名、住
友バイエルウレタン(株)製)、コロネード(商品名、
日本ポリウレタン(株)製)などの市販のイソシアネー
ト化合物も使用できる。
【0058】硬化剤としてポリイソシアネート化合物を
用いる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネー
ト基とベース樹脂中の水酸基との配合比[NCO/O
H]はモル比で0.8〜1.2、より好ましくは0.9
0〜1.10の範囲とすることが望ましい。
【0059】[NCO/OH]のモル比が0.8未満で
は塗膜の硬化が不十分であり、所望の塗膜硬度及び強度
が得られない。
【0060】一方、[NCO/OH]のモル比が1.2
を超えると、過剰のイソシアネート基同士の或いはイソ
シアネート基とウレタン配合との副反応が生じて、塗膜
の加工性が低下する。
【0061】硬化剤であるアミノ樹脂としては、尿素、
ベンゾグアナミン、メラミンなどとホルムアルデヒドと
の反応で得られる樹脂、及びこれらをメタノール、ブタ
ノールなどのアルコールによりアルキルエーテル化した
ものが使用できる。
【0062】具体的には、メチル化尿素樹脂、n−ブチ
ル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、n
−ブチル化メラミン樹脂、iso−ブチル化メラミン樹
脂などを挙げることができる。
【0063】さらに、サイメル(商品名、三井サイアナ
ミッド(株)製)、ユーバン(商品名、三井化学(株)
製)、スミマール(商品名、住友化学工業(株)製)、
メラン(商品名、日立化成工業(株)製)等の市販のア
ミノ樹脂も使用できる。
【0064】硬化剤としてアミノ樹脂を用いる場合、ア
ミノ樹脂とベース樹脂との配合比(固形分の重量比)
は、ベース樹脂/アミノ樹脂で(95/5)〜(65/
35),望ましくは(90/10)〜(75/25)と
することが好ましい。
【0065】硬化剤の配合量は、樹脂固形分中での割合
で、9〜50質量%とするのが好ましい。9質量%未満
では、塗膜硬度が十分でなく、50質量%を超えると加
工性が不十分となる。
【0066】また、このようにして得られた下塗り塗膜
樹脂組成物には、目的、用途に応じてp−トルエンスル
ホン酸、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジラウレートなどの
硬化触媒、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、酸化チ
タン、弁柄、マイカ、カーボンブラック、アルミニウム
粉などの顔料、クロム酸塩、リン酸塩など防錆顔料、そ
の他消泡剤、流れ止め剤などの各種添加剤を添加するこ
とができる。
【0067】前記、防錆顔料としてはクロム酸塩が含ま
れることが好ましい。これはクロム酸塩を含有すること
で、耐食性を向上させる効果があるためである。
【0068】クロム酸塩としては、クロム酸ストロンチ
ウム、クロム酸カリウム、クロム酸亜鉛、クロム酸カル
シウム、クロム酸バリウム等が挙げられ、中でもクロム
酸ストロンチウムが好適である。
【0069】クロム酸塩の含有量は、下塗り塗膜の重量
に対し、1重量%以下であると十分な防錆が得られず、
50重量%以上であれば上塗り塗膜との十分な密着性が
得られない。このためクロム酸塩の含有量は1〜50重
量%とするのが好ましく、さらに好ましくは10〜45
重量%である。
【0070】4.上塗り塗膜 上塗り塗膜は、厚さ5μm〜30μmとする。膜厚が5
μmを下回ると十分な加工性、加工部耐食性が得られ
ず、一方、30μmを超えると加工性が低下し、工業的
原価が上昇するため5μm〜30μm(5μm以上、3
0μm以下)とする。
【0071】更に、上塗り塗膜は、ガラス転移点を30
℃以上、90℃以下とする。ガラス転移点が、30℃以
下では耐傷付き性が低下し、一方、90℃を超えると加
工性が低下し、めっき鋼板の加工性が向上しても、塗装
鋼板としての加工性は低下するため、30℃以上、90
℃以下とする。
【0072】上塗り塗膜の主樹脂は、本発明の作用効果
を十分なものとする場合、ポリエステル系樹脂、アクリ
ル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることが
好ましい。加工性の観点からはポリエステル系樹脂また
はポリフッ化ビニリデン系樹脂がより好ましく、さらに
コストを考慮するとポリエステル系樹脂が好ましい。
【0073】ポリエステル系樹脂は、ポリエステル樹
脂、シリコン変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリ
エステル樹脂を含み、主剤樹脂の硬化剤としては、プラ
イマーと同様にポリイソシアネート化合物又は/及びア
ミノ樹脂などを用いることが可能である。
【0074】ポリエステル樹脂は、1分子中に少なくと
も2個の水酸基を有し、且つ数平均分子量が1000〜
20000の化合物であれば特に限定されるものではな
いが、2000〜20000が特に好ましい。
【0075】2000未満では加工性が著しく低下する
場合がある。一方、20000を超えると耐候性が低下
し、高粘度になるため過剰の希釈溶剤が必要となり、塗
料中の樹脂の比率が低下するため、適切な塗膜が得られ
なくなり、他の配合成分との相溶性も低下する場合があ
る。
【0076】尚、ポリエステル樹脂の分子中の水酸基
は、分子中の末端または側鎖のいずれにあってもよい。
数平均分子量は、GPCにより測定したポリスチレン換
算分子量とする。
【0077】ポリエステル樹脂は、多塩基と多価アルコ
ールを常法で加熱反応させて得られる共重合体である。
【0078】多塩基酸成分としては例えば、無水フタル
酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット
酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸等を用いること
ができる。
【0079】また、多価アルコールとしては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチ
レングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタ
ンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチル
グリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ペ
ンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメ
チロールエタンなどを用いることができる。
【0080】市販されているポリエステル樹脂として
は、アルマテックス(商品名、三井化学(株)製)、ア
ルキノール(商品名、住友バイエルウレタン(株)
製)、デスモフェン(商品名、住友バイエルウレタン
(株)製)、バイロン(商品名、東洋紡績(株)製)等
がある。
【0081】ポリフッ化ビニリデン系樹脂は上塗り塗膜
成分として配合する場合、ポリフッ化ビニリデン樹脂と
アクリル樹脂とを混合して使用する。
【0082】ポリフッ化ビニリデン樹脂としては重量平
均分子量が300000〜700000、融点150〜
180℃のものが好ましい。例えば、日本ペンウオルト
(株)製の「カイナー500(重量平均分子量:350
000、融点:160〜165℃)」等が例示できる。
【0083】ポリフッ化ビニリデン樹脂と混合するアク
リル樹脂としては数平均分子量が1000〜2000の
ものが好ましい。またアクリル樹脂は以下のようなモノ
マーの少なくとも一種(但、少なくとも一種のアクリル
モノマーを含む)を通常の方法により重合(または共重
合)させることにより得ることができる。
【0084】(1)(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチ
ル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)ア
クリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒド
ロキシブチル等のヒドロキシル基を有するエチレン性モ
ノマー。
【0085】(2)(メタ)アクリル酸、クロトン酸、
イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等のカルボキシル
基を有するエチレン性モノマー。
【0086】(3)(メタ)アクリル酸メチル、(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、
アクリン酸ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル
酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−
エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、(メタ)ア
クリル酸アルキルエステル等の、上述のモノマー(1)
及び(2)と共重合可能なエチレン性モノマー。
【0087】(4)スチレン、αーメチルスチレン、o
−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルス
チレン等のスチレン誘導体。
【0088】これらのモノマーのうち、水酸基やカルボ
キシル基などの官能基を有するモノマーを使用すること
により、他の反応可能な成分との架橋反応が可能であ
る。
【0089】本発明に用いるアクリル樹脂は自己架橋性
である必要はないが、自己架橋性とする場合には、分子
中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するいわ
ゆる架橋性モノマーを含有させる。ラジカル重合可能な
モノマーとしては、エチレングリコールジアクリレー
ト、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレ
ングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコ
ールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジ
メタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレ
ート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、
1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチル
グリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール
ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレー
ト、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタ
エリエスリトールテトラメタクリレート、グリセロール
ジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ジア
リルテレフタレート、ジアリルフタレート、グリシジル
アクリレート、グリシジルメタクリレート等の重合性不
飽和化合物が挙げられる。架橋性モノマーはアクリル樹
脂の20重量%まで添加することができる。
【0090】ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂
との重量比(樹脂固形分の重量比)は[ポリフッ化ビニ
リデン樹脂]:[アクリル樹脂]=90:10〜50:
50とすることが好ましい。アクリル樹脂に対するポリ
フッ化ビニリデン樹脂の重量比が90:10を超えると
チクソトロピー性が高まり、ロールコーターでの塗装が
困難になるため仕上がりが不均一な塗膜となり塗装外観
が劣る。一方、50:50を下回ると塗膜密着性の経時
劣化が著しく、また耐候性も大きく低下するので好まし
くない。
【0091】さらに、ポリフッ化ビニリデン樹脂、アク
リル樹脂を混合する場合、合計が塗膜の40重量部以上
となるように配合することが好ましい。合計が40重量
部未満では目的とする塗膜性能が十分に得られない。
【0092】また、主樹脂であるポリエステル樹脂また
はアクリル樹脂は硬化剤と組み合わせて使用される。こ
こで用いられる硬化剤としては、ポリイソシアネート化
合物または/及びアミノ樹脂を用いることができる。
【0093】ポリイソシアネート化合物としては、一般
的製法で得られるイソシアネート化合物を用いることが
できるが、特に1液型塗料としての使用が可能である、
フェノール、クレゾール、芳香族第二アミン、第三級ア
ルコール、ラクタム、オキシム等のブロック剤でブロッ
ク化されたポリイソシアネート化合物が好ましい。この
ブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることによ
り1液での保存が可能となり、塗料としての使用が容易
となる。
【0094】また、更に好ましいポリイソシアネート化
合物としては、HDI及びその誘導体、TDI及びその
誘導体、MDI及びその誘導体、XDI及びその誘導
体、IPDI及びその誘導体、TMDI及びその誘導
体、水添TDI及びその誘導体、水添MDI及びその誘
導体、水添XDI及びその誘導体が挙げられる。
【0095】さらに、スミジュール(商品名、住友バイ
エルウレタン(株)製)、デスモジュール(商品名、住
友バイエルウレタン(株)製)、コロネード(商品名、
日本ポリウレタン(株)製)などの市販のイソシアネー
ト化合物も使用できる。
【0096】硬化剤としてポリイソシアネート化合物を
用いる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネー
ト基とベース樹脂中の水酸基との配合比[NCO/O
H]はモル比で0.8〜1.2、より好ましくは0.9
0〜1.10の範囲とすることが望ましい。
【0097】[NCO/OH]のモル比が0.8未満で
は塗膜の硬化が不十分であり、所望の塗膜硬度及び強度
が得られない。
【0098】一方、[NCO/OH]のモル比が1.2
を超えると、過剰のイソシアネート基同士の或いはイソ
シアネート基とウレタン配合との副反応が生じて、塗膜
の加工性が低下する。
【0099】硬化剤であるアミノ樹脂としては、尿素、
ベンゾグアナミン、メラミンなどとホルムアルデヒドと
の反応で得られる樹脂、及びこれらをメタノール、ブタ
ノールなどのアルコールによりアルキルエーテル化した
ものが使用できる。
【0100】具体的には、メチル化尿素樹脂、n−ブチ
ル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、n
−ブチル化メラミン樹脂、iso−ブチル化メラミン樹
脂などを挙げることができる。
【0101】さらに、サイメル(商品名、三井サイアナ
ミッド(株)製)、ユーバン(商品名、三井化学(株)
製)、スミマール(商品名、住友化学工業(株)製)、
メラン(商品名、日立化成工業(株)製)等の市販のア
ミノ樹脂も使用できる。
【0102】硬化剤としてアミノ樹脂を用いる場合、ア
ミノ樹脂とベース樹脂との配合比(固形分の重量比)
は、ベース樹脂/アミノ樹脂で(95/5)〜(65/
35),望ましくは(90/10)〜(75/25)と
することが好ましい。
【0103】硬化剤の配合量は、樹脂固形分中での割合
で、9〜50質量%とするのが好ましい。9質量%未満
では、塗膜硬度が十分でなく、50質量%を超えると加
工性が不十分となる。
【0104】上塗り塗料についても、下塗り塗料と同様
の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0105】5.製造方法 樹脂層を形成するための塗料組成物の塗装方法に特に規
定しないが、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装
などが好ましい。塗料組成物を塗装後、熱風加熱、赤外
線加熱、誘導加熱などにより、塗膜を焼き付け、樹脂を
架橋させて樹脂層を形成する。
【0106】塗膜を加熱硬化させる焼付処理は、下塗り
(プライマー)では最高到達温度を150℃以上、27
0℃以下とし、30秒〜3分間保持するのが好ましい。
150℃未満では樹脂の重合反応が不十分で、溶剤に溶
け出したり、耐食性が低下する。一方、270℃を超え
ると、反応が過剰となり、上塗り塗料との密着性が低下
する場合がある。
【0107】上塗りは、最高到達温度を150℃以上、
280℃以下とし、30秒〜3分間保持するのが好まし
い。150℃未満では樹脂の重合反応が不十分で、溶剤
に溶け出したり、耐傷つき性が低下する。一方、280
℃を超えると、反応が過剰となり、加工性が低下する場
合がある。より好ましくは、200℃以上、280℃以
下とする。
【0108】
【実施例】本発明の効果を実施例により説明する。
【0109】常法により製造した冷延鋼板(板厚0.5
mm)を連続式溶融めっき設備に通板し、55%Al−
Zn−1.5%Siめっき浴を用いて、溶融めっき鋼板
を製造した。ラインスピードは、160m/secと
し、片面めっき付着量は、75〜90g/m2とした。
尚、比較例として、5%アルミー亜鉛溶融めっきによる
溶融めっき鋼板も製造した。
【0110】その後、バッチ焼鈍設備により熱処理条件
(最高加熱温度、昇温加熱時間、保持時間)、及び下塗
り、上塗り塗膜の条件を種々変化させて、塗装鋼板を製
造した。
【0111】次に、得られた塗装鋼板の加工性、加工部
密着性、加工部耐食性および鉛筆硬度について評価を行
った。
【0112】加工性は、20℃の室内にて、180°の
折り曲げを行い、目視評価でクラックなしの最小板はさ
み枚数(T)を評価した。
【0113】加工部密着性は、20℃の室内にて180
°の6T折り曲げを行い、粘着テープを粘着・剥離し、
折り曲げ部の塗膜の剥離率(面積率%)を測定した。
【0114】加工部耐食性は、塗装鋼板を160mm×
70mmに切断し、20℃の室内にて3T折り曲げを行
い、4端部をタールエポキシ塗料でシールした試験片を
用いて、JIS K 5621に規定される乾湿繰り返
し条件を導入した促進試験(以下、CCT試験)を30
0サイクル実施した後、塗膜の膨れ率(面積率)を測定
した。
【0115】JIS K 5621によるCCT試験の
条件は、「5%塩水噴霧、30℃、0.5時間→湿潤9
5%RH,30℃、1.5時間→乾燥20%RH、50
℃、2時間→乾燥20%RH、30℃、2時間」を1サ
イクル(6時間)とし、これを所定の回数になるまで繰
り返すというものである。
【0116】鉛筆硬度はJIS K5400の8.4に
基づいて、鉛筆硬度がHの鉛筆を用い、塗膜に傷が生じ
るか否かで判断した。
【0117】表1、2に、供試鋼板の製造条件、評価結
果を示す。表中、Tgはガラス転移温度を示す。尚、C
CT試験を300サイクル行った場合の本発明の実施例
を表1(但し、実施例2、4は、請求項5、9に対して
は比較例となる)、比較例の結果を表2に示す。また、
表3、4にプライマー塗膜成分、上塗り塗膜成分を示
す。
【0118】表1中、実施例1は、溶融めっき鋼板(め
っき付着量は片面75g/mm2)に通常のクロメート
処理を施した後、下塗り、上塗りした塗装鋼板の性能を
評価したものである。
【0119】下塗り塗料は、固形分換算で主樹脂として
ブロックウレタン変性エポキシ樹脂(エポキー830、
三井化学製)125重量部、顔料としてクロム酸ストロ
ンチウム75重量部と酸化チタン25重量部とクレー2
5重量部を配合し、サンドミルで1時間攪拌して樹脂層
用の塗料組成物を調整したものとし、乾燥塗膜厚が4μ
mになるようにバーコーターで塗布し、鋼板の到達温度
220℃、焼付け時間38秒で焼付けた。
【0120】上塗り塗料は、固形分換算で主樹脂として
ポリエステル樹脂(アルマテックスP645,三井化学
製):100重量部、硬化剤としてメチル化メラミン
(サイメル303、三井化学製)25重量部、硬化触媒
としてp−トルエンスルホン酸を0.2重量部と顔料と
して酸化チタンを100重量部配合し、サンドミルで1
時間攪拌して樹脂層用の塗料組成物を調整したものと
し、乾燥塗膜厚が13μmになるようにバーコーターで
塗布し、鋼板の到達温度230℃、焼付け時間53秒で
焼付けた。
【0121】その後、TMA(セイコーインスツルメン
ツ製SS6100)にて0℃から150℃まで昇温スピ
ード10℃/min,荷重10gでガラス転移点を測定
したところ60℃であった。
【0122】さらに、裏面にはポリエステル樹脂系裏面
塗料を乾燥塗膜厚が6μmになるようにバーコーターで
塗布し、鋼板の到達温度220℃、焼付け時間38秒で
焼き付け、塗装鋼板を得た。
【0123】表1から明らかなように、得られた塗装鋼
板は加工性、加工部密着性、加工部耐食性、鉛筆硬度の
いずれの評価試験でも良好な特性が得られた。
【0124】実施例2〜5は、実施例1において、めっ
きの熱処理条件を、実施例6、7は、下塗り(プライマ
ー)の塗膜厚を本発明の範囲内で変化させたものであ
り、良好な特性が得られている。尚、実施例2の熱処理
条件は保持時間が、実施例4の熱処理条件は、最高加熱
温度が240℃で、請求項4、請求項7の発明範囲外と
なっている。
【0125】実施例8は、実施例1において、下塗り
(プライマー)の主樹脂としてポリエステル樹脂(アル
マテックスHMP27,三井化学製)を100重量部、
硬化剤としてメチル化メラミン(サイメル303、三井
化学製)25重量部、硬化触媒としてp−トルエンスル
ホン酸を0.2重量部に変更したもので、良好な特性が
得られている。
【0126】実施例9は、実施例1において、下塗り
(プライマー)の主樹脂をウレタン変性エポキシ樹脂
(エポキー802−302CX,三井化学製)に変更し
たもので、良好な特性が得られている。
【0127】実施例10,11は、実施例1において上
塗りの膜厚を本発明の範囲内で変化させたものであり、
良好な特性が得られている。実施例12は、上塗りの主
樹脂をアクリル樹脂(アルマテックス745−5M、三
井化学製),実施例13は、ポリフッ化ビニリデン樹脂
(カイナー500、日本ペンウォルト(株)製)とアク
リル樹脂(パロライト、ロームアンドハース(株)製)
とをフッ素樹脂/アクリル樹脂=70:30の比率で混
合したもの、実施例14はポリエステル樹脂(アルマテ
ックスP647BC)に変更したものであり、何れも良
好な特性が得られている。
【0128】実施例15は、実施例1において上塗りの
硬化剤を主樹脂100重量部に対し、40重量部配合し
たものであり、良好な特性が得られている。
【0129】一方、表2に示す比較例は何れかの条件が
本発明範囲外であり、加工性等の特性が本発明実施例と
比較して劣っている。
【0130】比較例1は、めっきの熱処理条件、比較例
2、3は、下塗り(プライマー)の塗膜厚、比較例4、
5は、上塗りの塗膜厚、比較例6、7は、上塗りのガラ
ス転移点が、本発明範囲外となっている。比較例8は、
めっきの熱処理を行わず、比較例9は、下塗り(プライ
マー)が省略され、比較例11は、めっき下地が5%ア
ルミー亜鉛溶融めっき鋼板で熱処理が省略となってい
る。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
【発明の効果】本発明によれば、溶融亜鉛めっきを下地
とし、折り曲げなどの加工部においても、耐食性が劣化
しない加工性に優れた塗装鋼板およびその製造方法が得
られ、産業上極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B05D 7/24 302 B05D 7/24 302V 302P B32B 15/08 B32B 15/08 G C09D 5/00 C09D 5/00 D 127/16 127/16 133/00 133/00 163/00 163/00 167/00 167/00 C23C 2/12 C23C 2/12 2/28 2/28 2/40 2/40 28/00 28/00 C (72)発明者 大居 利彦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 吉田 啓二 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 間島 康弘 神奈川県川崎市川崎区水江町6−1 エヌ ケーケー鋼板株式会社内 (72)発明者 石田 信之 神奈川県川崎市川崎区水江町6−1 エヌ ケーケー鋼板株式会社内 (72)発明者 堀 伸次 神奈川県川崎市川崎区水江町6−1 エヌ ケーケー鋼板株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE08 AE16 BB92Z BB93Z BB95X CA03 DA06 DB02 DB07 EB20 EB33 EB35 4F100 AB03A AB10A AB13A AB18A AK19C AK25C AK41B AK41C AK53B AL05C BA03 BA10A BA10C BA25B BA25C CC00B CC00C EH71A EJ42A EJ68A GB07 JA05C JL01 YY00A YY00B YY00C 4J038 CD111 CD112 CG141 CG142 CG161 CJ291 DA142 DB061 DB062 DB461 DB462 DB481 DB482 DD061 DD062 DD191 DD192 DD241 DD242 DG162 DL131 KA03 MA13 NA11 PA08 PA19 PC02 4K027 AA02 AA05 AA22 AB44 AB48 AC72 AC82 AE03 AE21 4K044 AA02 AB02 BA10 BA15 BA17 BA21 BB04 BC02 BC04 CA02 CA11 CA16 CA53 CA62

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融めっき鋼板の表面を塗装する塗装鋼
    板であって、 1.Alを質量%で、20〜95%含有し、塗装前に1
    30℃以上、250℃以下に加熱保持された溶融めっき
    層、 但し、加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜が完全
    に凝固している温度より式(1)を満足する時間、保持
    時間:t2(hr)は30時間以内、且つ式(2)を満
    足する時間とする。 t1≦(T−30)/10・・・・(1) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(280−T)/3・・・・(2) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度 2.塗装前処理用化成処理皮膜、 3.塗膜厚が2μm以上、15μm以下の下塗り塗膜、 4.塗膜厚が5μm以上、30μm以下でガラス転移温
    度:30℃以上、90℃以下の上塗り塗膜、 を具備したことを特徴とする塗装鋼板。
  2. 【請求項2】 下塗り塗膜がポリエステル系樹脂及び/
    又はエポキシ系樹脂を含むことを特徴とする請求項1記
    載の塗装鋼板。
  3. 【請求項3】 上塗り塗膜がポリエステル系樹脂を含む
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の塗装鋼板。
  4. 【請求項4】 上塗り塗膜にポリフッ化ビニリデン樹脂
    とアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2
    記載の塗装鋼板。
  5. 【請求項5】 塗装前の溶融めっき層の加熱保持が13
    0℃以上、200℃以下で、加熱保持時間が式(3)、
    式(4)を満足することを特徴とする請求項1乃至4の
    何れか一つに記載の塗装鋼板。 加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜が完全に凝固
    している温度より式(3)を満足する時間、保持時間:
    t2(hr)は30時間以内、且つ式(4)を満足する
    時間とする。 t1≦(T−30)/10・・・・(3) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(200−T)/2・・・・(4) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度
  6. 【請求項6】 下塗り塗膜にクロム酸系化合物を塗膜の
    乾燥重量の1〜50重量%含むことを特徴とする請求項
    1乃至5の何れか一つに記載の塗装鋼板。
  7. 【請求項7】 以下の工程を備えたことを特徴とする塗
    装鋼板の製造方法。 1.Alを質量%で、20〜95%含有する溶融めっき
    層を有する溶融亜鉛めっき鋼板を、塗装前に130℃以
    上、250℃以下に加熱保持する工程、但し、加熱昇温
    時間:t1(hr)はめっき皮膜が完全に凝固している
    温度より最高加熱温度まで式(1)を満足する時間、保
    持時間:t2(hr)は30時間以内、且つ式(2)を
    満足する時間とする。 t1≦(T−30)/10・・・・(1) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(280−T)/3・・・・(2) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度 2.塗装前処理用化成処理を行なう工程、 3.下塗り塗料を塗布し、焼付けし、塗膜厚が2μm以
    上、15μm以下の下塗り塗膜を形成する工程、 4.上塗り塗料を塗布し、焼付けし、塗膜厚が5μm以
    上、30μm以下、ガラス転移温度が30℃以上、90
    ℃以下の上塗り塗膜を形成する工程。
  8. 【請求項8】 ポリエステル系樹脂及び/またはエポキ
    シ系樹脂を含有する塗料を最高到達温度150℃以上2
    70℃以下で焼付けて下塗り塗膜を形成し、ポリエステ
    ル系樹脂またはポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹
    脂を含有する塗料を最高到達温度150℃以上280℃
    以下で焼付けて上塗り塗膜を形成することを特徴とする
    請求項7記載の塗装鋼板の製造方法。
  9. 【請求項9】 塗装前の溶融めっき層の加熱保持が13
    0℃以上、200℃以下で、加熱保持時間が式(3)、
    式(4)を満足することを特徴とする請求項7又は8に
    記載の塗装鋼板の製造方法。 加熱昇温時間:t1(hr)はめっき皮膜が完全に凝固
    している温度より式(3)を満足する時間、保持時間:
    t2(hr)は30時間以内、且つ式(4)を満足する
    時間とする。 t1≦(T−30)/10・・・・(3) ここでt1(hr),T(℃):最高加熱温度 t2≦(200−T)/2・・・・(4) ここでt2(hr)、T(℃):最高加熱温度
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