JP2002220646A - Fe基非晶質合金薄帯とそれを用いて製造した鉄心 - Google Patents
Fe基非晶質合金薄帯とそれを用いて製造した鉄心Info
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Abstract
ても、優れた軟磁気特性を有する鉄心を製造することが
可能なFe基非晶質合金薄帯を提供する。 【解決手段】 Fe、Si、B、C、Pの主要元素およ
び不可避不純物で構成される非晶質合金薄帯であって、
組成が、原子%で、78≦Fe≦86、2≦Si<4、
5<B≦16、0.02≦C≦4 、0.2≦P≦12
である交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合
金薄帯。前記薄帯の軟磁気特性は、アニール温度の最大
値をTmax、その最小値をTminとし、ΔT=Tmax−Tm
inとした場合、ΔTが少なくとも80℃となるアニール
温度範囲において、B80が1.35T以上であり、か
つ、B80の標準偏差が0.1未満である。また、ΔTが
少なくとも60℃となるアニール温度範囲において、鉄
損が0.12W/kg以下である。また、曲げ破壊ひず
みεf が0.01の優れた耐脆化特性を有する。
Description
周波トランスなどの巻鉄心に用いられる非晶質合金薄帯
に関するものである。
て、連続的に薄帯や線を製造する方法として、遠心急冷
法、単ロ−ル法、双ロ−ル法などが知られている。これ
らの方法は、高速回転する金属製ドラムの内周面または
外周面に、溶融金属をオリフィスなどから噴出させるこ
とにより、溶融金属を急速に凝固させて、薄帯や線を製
造するものである。さらに、合金組成を適正に選ぶこと
によって、液体金属に類似した非晶質合金を製造するこ
とができ、磁気的性質あるいは機械的性質に優れた材料
を得ることができる。
多くの用途における工業材料として有望視されている。
その中でも、電力トランスや高周波トランスなどの鉄心
材料の用途として、鉄損が低く、かつ、飽和磁束密度や
透磁率が高いなどの理由から、Fe系非晶質合金薄帯、
例えば、Fe−Si−B系の非晶質合金薄帯が採用され
ている。
ランスあるいは積鉄心トランスを組み立てる場合には、
通常、薄帯を多数枚重ね合わせて鉄心とした後、磁気回
路方向に直流磁場を印加しながらアニールを施す処理を
行う。アニ−ルの目的は、印加磁場方向に磁気異方性を
出現させて磁束密度を上げること、および、薄帯内に存
在しているひずみを低減させて鉄損を下げることにあ
る。しかし、アニ−ル温度が低い場合には、磁気異方性
が生じ難く磁束密度が大きくならないばかりか、ひずみ
も取り除かれないため鉄損も低くならない。しかし、ア
ニ−ル温度が低い場合にはアニ−ルによって生じる薄帯
の脆化は軽減される。
密度が大きくなるとともに、十分にひずみが取り除かれ
るため鉄損も低減するが、薄帯の脆化が大きくなってし
まう。このアニ−ルによって生じる脆化の原因は明確に
はなっていないが、急冷凝固によって比較的ランダムに
配置していた各原子が局部的な秩序構造をとる結果生じ
るものと考えられる。さらに、アニール温度が高すぎる
場合には、薄帯が結晶化してしまい、もはや非晶質特有
の優れた軟磁気特性が消失してしまう。したがって、鉄
心のアニールには最適温度が存在する。このアニール処
理は、鉄心の重量が重く体積が大きくなる程、熱処理炉
に挿入後の加熱中、鉄心の各部位に温度むらが生じ易く
なる。この温度むらを低減するには、昇温過程および降
温過程において十分な時間をかければよいが、時間をか
ければ、生産性が低下してしまう。
る方法として、鉄心の内・外周面に断熱材を取り付け、
冷却時における鉄心内の温度差を極力低減する方法(特
開昭63−45318号公報)、アニール温度に保定さ
れた超耐熱性絶縁油中に鉄心を浸漬する方法(特開昭6
0−255934号公報)、ガラス転移温度以下の適性
温度の溶融スズ中に浸漬した後、冷却用流体中に浸漬す
る方法(特開昭62−294154号公報)等が開示さ
れている。
ものであって、薄帯そのものを改善し、鉄心の各部位に
温度むらが生じた場合でも、磁気特性の劣化の防止を可
能にするものではない。一方、薄帯を改善する技術とし
ては、特開昭57−185957号公報に、B1〜5原
子およびSi4〜14原子%を含む非晶質合金薄帯に、
Pを、高価なBの代替で、1〜10原子%添加すること
が開示されている。上記公報記載の薄帯において、P
は、B、Si、Cと同じく、非晶質形成能を向上させる
元素である。
は、高価なBの低減が目的の“6〜10原子%のB、1
0〜17原子%のSi、0.02〜5原子%のP、およ
び、残部Fe”からなる組成の合金が開示されている。
上記公報記載の合金組成において、Pは、表面粗度を改
善するものである。また、特開平9−202951号公
報には、高Si%、B10原子%以下において、磁気特
性および加工性を改善することを目的とした“76〜8
0原子%のFe、6〜10原子%のB、8〜17原子%
のSi、0.02〜2原子%のP、および、0.2〜
1.0原子%のMn”の組成からなる合金が開示されて
いる。上記公報記載の合金組成において、Pの効果は非
晶質形成能の向上のみであり、また、多元化による結晶
化を抑制するため、Mnの添加は必須である。
は、10原子%以下の低B領域においても、表面粗さを
適正化することにより磁気特性を改善することを目的と
した“6〜10原子%のB、好適範囲として10〜17
原子%のSi、0.1〜2原子%のC、0.2〜1.0
原子%のMn、0.02〜2原子%のP”からなる組成
の合金が開示されている。上記公報記載の合金組成にお
いて、Pの効果は、非晶質形成能の向上と表面粗度の改
善のみである。
には、Bの低減による軟磁気特性の劣化を効果的に抑制
することを目的とした“75.0〜77.0原子%のF
e、2.5〜3.5原子%のC、0.5〜6.5原子%
のB、該Bに対して0〜12.0原子%のP、および、
残部Si”からなる組成の合金が開示されている。上記
合金組成においても、Pの効果は、非晶質形成能の向上
である。
る技術は、いずれも、Pの添加により、非晶質形成能を
高めるか、および/または、表面粗度を改善するもので
ある。そして、Fe基非晶質合金薄帯をトロイダルに巻
回した巻鉄心、または、該合金薄帯片を積層した積鉄心
をアニールする場合において、加熱中の鉄心各部位にお
ける“温度むら”に起因する性能劣化を低減すること
は、これまで実現していない。
は、低鉄損を維持した状態で脆化改善を狙った技術が開
示されている。上記公報では、原子百分率でFeX BY
Si(1 00-X-Y) 、76≦X≦81、97≦2X−5Y≦
112なる組成の合金を規定している。この合金におい
ては、合金組成をFe-Si-B三元系の三元共晶線に近
い組成に規定しているが、この組成規定によって、所定
の温度でアニ−ルしても、脆化が開始する時間よりも短
時間でアニ−ルが完了できるため、低鉄損となって、か
つ、脆化しない薄帯が得られるとしている。
報には、脆性の定量的評価に関する記載が全くない。磁
束密度に関しては、実施例に、1000A/mの磁場を
印加したときの磁束密度B10が記載されているが、Fe
−Si−B系の非晶質薄帯に1000A/mの磁場をか
けた場合には、アニ−ルが不十分であっても、ほぼ飽和
磁束密度に近い高い磁束密度が得られる。しかし、アニ
−ルが不十分であると、磁気ヒステリシス曲線の立ち上
がりは小さくなる結果、B80(80A/mの磁場を印加
した時の磁束密度)が低くなり、その結果、励磁電力が
増加してしまう。
は、材料の脆化を招くことなしに鉄損特性を改善した薄
帯およびその製造方法が開示されている。上記公報で
は、原子百分率で、FexBySizMna、75≦x≦8
2、7≦y≦15、7≦z≦17、0.2≦a<0.5
で示される組成から成り、中心線平均粗さRa が0.6
μm以下である磁気特性と耐脆化特性に優れた非晶質薄
帯が開示されている。しかし、Mnは鉄損改善には効果
的であるが、Mnの増加に伴って磁束密度の低下と脆化
を招く。そこで、上記組成の合金を急冷凝固させる際の
雰囲気を1〜4%H2を含むCO2雰囲気にすることによ
って薄帯の表面凹凸を減らし、その結果、反磁界の低減
による磁束密度の向上、および、クラックの起点の減少
による脆化改善の実現に至ったものである。
開示されている脆化改善は急冷凝固直後の薄帯に関する
ものであって、軟磁気特性の改善のために施すアニ−ル
後の脆化改善に関するものではない。さらに、特開平8
−144029号公報には、上記特開平7−33139
6号公報記載の薄帯およびその製造方法と同じ目的で、
薄帯の表面粗度Ra を0.8μm以下に規定した薄帯お
よびその製造方法が開示されている。しかし、この特開
平8−144029号公報記載の薄帯およびその製造方
法においても、脆化改善は急冷凝固直後の薄帯に関する
ものであって、軟磁気特性の改善のために施すアニ−ル
後の脆化改善に関するものではない。このように、磁束
密度、鉄損などの優れた軟磁気特性を得るための磁場中
アニ−ル後においても優れた耐脆化特性を有するFe基
非晶質合金薄帯は従来にはなかった。
基非晶質合金薄帯をトロイダルに巻回した巻鉄心、また
は、該合金薄帯片を積層した積鉄心をアニールする場合
において、加熱中の鉄心各部位における“温度むら”に
起因する性能劣化を低減したFe基非晶質合金薄帯は、
これまでのところ存在しない。
において、その組成を特定の範囲に限定することによ
り、優れた軟磁気特性を発現する最適アニール温度範囲
を、従来の合金薄帯のアニール温度範囲よりも大幅に拡
大し、この拡大効果により、アニール時、鉄心各部位に
“温度むら”が生じた場合でも、優れた軟磁気特性を有
する鉄心を製造することを可能にするFe基非晶質合金
薄帯を提供することを目的とする。
帯に磁場中アニ−ルを施した後において、磁束密度、鉄
損の優れた軟磁気特性、および優れた耐脆化特性を同時
に兼ね備えた薄帯は、これまでのところ存在しない。そ
こで、本発明は、Fe基非晶質合金薄帯において、その
組成を特定の範囲に限定することによって、軟磁気特性
を発現させる磁場中アニ−ル温度を従来よりも低温側に
設定することを可能にし、その結果、薄帯の脆化が増大
するアニ−ル温度よりも低温側でアニ−ルできることを
可能にした薄帯を提供することを目的とする。
合金薄帯の成分組成を特定の範囲に限定すると、該薄帯
を広い温度範囲でアニールした場合でも、優れた磁気特
性が発現することを見いだした。また、本発明者は、F
e基非晶質薄帯の成分範囲を特定の範囲に限定すると、
該薄帯が脆化開始する温度よりも低温側でアニ−ルした
場合でも、優れた軟磁気特性が発現することを見出し
た。
り、アニール中に鉄心の各部位において“温度むら”が
生じた場合でも、優れた磁気特性を発現することが可能
なFe基非晶質合金薄帯、および、優れた軟磁気特性と
優れた耐脆化特性を同時に有することが可能なFe基非
晶質合金薄帯であって、Fe、Si、BおよびCの限ら
れた組成範囲において、特定範囲のPを添加することに
より達成されるものである。
技術〕の項で述べたように、非晶質形成能の向上効果お
よび/または表面粗度の改善効果が知られているが、本
発明者が見いだした“アニール最適温度範囲を拡大する
効果”は、〔従来の技術〕の項で例示した、特開昭57
−185957号公報、特開平8−193252号公
報、特開平9−202951号公報、特開平9−268
354号公報、特開平11−293427号公報のいず
れにも記載されていない。
Fe、Si、BおよびCの限定された組成範囲におい
て、所定量のPを添加し、該薄帯をアニールする際のア
ニール温度の最大値をTmax、最小値をTminとし、ΔT
=Tmax−Tminとした場合において、ΔTが少なくとも
80℃の幅広いアニール温度範囲で、交流における軟磁
気特性が優れたFe基非晶質合金薄帯を製造することを
可能にしたことにある。
が結晶化せず、周波数50Hz、最大印加磁場80A/
mの交流磁場を印加した場合の最大磁束密度B80が1.
35T以上を維持できる最大のアニール温度である。即
ち、Tmax を超える温度で、Fe基非晶質合金薄帯をア
ニールすると、該薄帯が結晶化し磁気特性が劣化し、上
記最大磁束密度B80が1.35T未満となってしまう。
Tmin は、Fe基非晶質合金薄帯のひずみが低減し、ア
ニール中の印加磁場方向に磁気異方性が生じて、B80が
1.35T以上となるアニール温度の最小の温度であ
る。
薄帯のFe、Si、BおよびCの限定された組成範囲に
おいて、所定量のPを添加し、アニ−ル後、B80が1.
35T以上の交流における優れた軟磁気特性、および、
薄帯の曲げ破壊ひずみεf が0.01以上の優れた耐脆
化特性を同時に有する交流における軟磁気特性および耐
脆化特性に優れたFe基非晶質合金薄帯を製造すること
を可能にしたことにある。ここで、εf =t/(Df −
t)であり、tは板厚、Df は破壊した時の曲げ直径で
ある。
とおりである。 (1)Fe、Si、B、C、Pの主要元素および不可避
不純物で構成される非晶質合金薄帯であって、組成が、
原子%で、78≦Fe≦86、2≦Si<4、5<B≦
16、0.02≦C≦4、0.2≦P≦12であること
を特徴とする交流における軟磁気特性に優れたFe基非
晶質合金薄帯。
<Fe≦82であることを特徴とする前記(1)記載の
交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄
帯。 (3)前記Pの組成が、原子%で、1≦P≦12である
ことを特徴とする前記(1)または(2)記載の交流に
おける軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯。
<14であることを特徴とする前記(1)、(2)また
は(3)記載の交流における軟磁気特性に優れたFe基
非晶質合金薄帯。 (5)前記(1)、(2)、(3)または(4)記載の
交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯
であって、アニール後、B80が1.35T以上で、か
つ、B80の標準偏差が0.1未満の軟磁気特性を有する
ことを特徴とする交流における軟磁気特性に優れたFe
基非晶質合金薄帯。
気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯であって、アニー
ル後、さらに、鉄損が0.12W/kg以下の鉄損特性
を有することを特徴とする交流における軟磁気特性に優
れたFe基非晶質合金薄帯。 (7)前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)ま
たは(6)記載の交流における軟磁気特性に優れたFe
基非晶質合金薄帯であって、該薄帯においてB 80が1.
35T以上で、かつ、B80の標準偏差が0.1未満の軟
磁気特性を確保するアニールにおけるアニール温度の最
大値をTmax 、アニール温度の最小値をTmin とし、Δ
T=Tmax −Tmin としたとき、該ΔTが少なくとも8
0℃であるアニール温度特性を有することを特徴とする
交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄
帯。
気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯であって、該薄帯
において前記軟磁気特性に加え、鉄損が0.12W/k
g以下の鉄損特性を確保するアニールにおけるアニール
温度の最大値をTmax 、アニール温度の最小値をTmin
とし、ΔT=Tmax −Tmin としたとき、該ΔTが少な
くとも60℃であるアニール温度特性を有することを特
徴とする交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質
合金薄帯。
(4)記載の交流における軟磁気特性に優れたFe基非
晶質合金薄帯であって、アニ−ル後、B80が1.35T
以上の優れた軟磁気特性、および、薄帯の曲げ破壊ひず
みεf(=t/(Df −t)、tは板厚、Df は破壊した
時の曲げ直径)が0.01以上の優れた耐脆化特性を同
時に有することを特徴とする交流における軟磁気特性に
優れたFe基非晶質合金薄帯。 (10)前記(9)記載の交流における軟磁気特性に優
れたFe基非晶質合金薄帯であって、アニ−ル後、鉄損
が0.12W/kg以下の鉄損特性を有することを特徴
とする交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合
金薄帯。
(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)また
は(10)記載の交流における軟磁気特性に優れたFe
基非晶質合金薄帯をトロイダルに巻回し、アニールした
ことを特徴とする交流における軟磁気特性に優れた巻鉄
心。 (12)前記(1)、(2)、(3)、(4)、
(5)、(6)、(7)、(8)、(9)または(1
0)記載の交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶
質合金薄帯を所定形状に打ち抜き積層し、アニールした
ことを特徴とする交流における軟磁気特性に優れた積鉄
心。
は、Fe基非晶質合金薄帯のFe、Si、BおよびCを
限定した組成範囲において、所定量のPを添加し、該薄
帯をアニールする際のアニール温度の最大値をTmax 、
最小値をTmin とし、ΔT=Tmax −Tmin とした場合
において、ΔTが少なくとも80℃の幅広いアニール温
度範囲で、交流における軟磁気特性が優れたFe基非晶
質合金薄帯を製造することを可能にしたことにある。
Fe、Si、BおよびCの限られた組成範囲において特
定範囲のPを添加することにより、該薄帯が脆化開始す
る温度よりも低温側でアニ−ルした場合においても、交
流における優れた軟磁気特性が発現することを可能にし
たことである。すなわち、本発明によって、優れた軟磁
気特性と優れた耐脆化特性を同時に満足する薄帯を製造
することが可能になったことである。
波数50Hz、最大印加磁場80A/mの交流磁場を印
加した場合の最大磁束密度B80が“1.35T以上”で
あることの他、ΔTが少なくとも80℃のアニール温度
範囲において、B80の標準偏差が“0.1未満”である
ことである。Fe基非晶質合金薄帯をトロイダルに巻回
した巻鉄心、または、Fe基非晶質合金薄帯の打ち抜き
片を積層した積鉄心等を、ひずみの低減および磁気異方
性の付与を目的としてアニールする場合、通常、加熱中
に、鉄心各部位に“温度むら”が生じてしまう。B80の
値が少なくとも1.35T以上であれば、非晶質合金薄
帯の性能を、トランスの性能に反映させることができる
が、アニール温度のばらつきによりB80の値にばらつき
が生じたのでは、鉄心内で局部的に軟磁気特性の劣化部
が生じたりして、トランスとしての性能に問題が生じる
場合がある。
未満であれば、動作中の鉄心内における磁束密度が均一
になり、Fe基非晶質薄帯の優れた磁気性能を最大限に
引き出すことが可能になるばかりか、トランスの設計も
容易になる。さらに、“優れた軟磁気特性”とは、ΔT
が少なくとも60℃の幅広いアニール温度範囲におい
て、周波数50Hz、磁束密度1.3Tでの単板測定に
よる鉄損が“0.12W/kg以下”であることであ
る。
Tminまでのアニール温度範囲において、鉄損が0.1
2W/kg以下であれば、Fe基非晶質合金薄帯として
の優れた性能を得ることができる。この場合も、ΔTが
少なくとも60℃という幅広い温度範囲で鉄損が優れて
いるので、鉄心各部位に温度むらが生じても、鉄心全体
としての軟磁気特性が低下することはない。
先する場合と、鉄損を優先する場合の両者が考えられる
ので、B80が1.35T以上となるアニール温度範囲
と、鉄損が0.12W/kg以下となるアニール温度範
囲が全て重なる必要はないが、両者の温度範囲が同じで
あれば、Fe基非晶質合金薄帯の性能を最大限にトラン
スの性能に反映させることができる。
は、周波数50Hz、最大印加磁場80A/mの交流磁
場を印加した場合の最大磁束密度B80が1.35T以上
を有し、および/または、周波数50Hz、磁束密度
1.3Tでの単板測定による鉄損W13/50が0.12W
/kg以下であることである。さらに、これらの優れた
軟磁気特性と同時に、薄帯の曲げ破壊ひずみεf が0.
01以上の優れた耐脆化特性を有する薄帯である。ただ
し、εf =t/(D−t)であり、tは板厚、Dは破壊
した時の曲げ直径である。
折り曲げ、さらに、曲げられてできた二つの対向する薄
帯の距離を序々に狭めていった時に薄帯が破壊する距離
D(破壊した時の曲げ直径に相当)で示した。この時の
薄帯の外側の面間の距離を曲げ破壊直径Df で定義す
る。薄帯厚をtとすると、曲げられた薄帯の外側には、
ε=t/(D−t)のひずみが生じていることになる。
したがって、破壊した時のひずみは、εf=t/(Df−
t)で定義される。
は軟磁気特性を発現させるためのアニ−ルを施すと、薄
帯は必ず脆化したが、本発明の組成の合金を用いること
によって、優れた軟磁気特性が発現するアニ−ル後にお
いても、薄帯の脆性をかなり抑制できることが明らかに
なった。B80の値は、少なくとも1.35T以上あれ
ば、非晶質合金薄帯の性能をトランスに反映させること
ができるとともに、トランスの設計も容易になる効果が
ある。さらに、周波数50Hz、磁束密度1.3Tでの
単板測定による鉄損が0.12W/kg以下であれば、
非晶質合金薄帯としての優れた性能が得られる。
いては、磁束密度を優先する場合、あるいは、鉄損を優
先する場合が考えられるので、B80が1.35T以上の
高磁束密度特性とW13/50 が0.12W/kg以下の低
鉄損特性が同時に達成される必要はないが、両者を同時
に達成できれば、非晶質合金薄帯の性能を最大限にトラ
ンスの性能に反映させることができる。
性に加えて、優れた耐脆化特性を兼ね備えていることに
ある。元々、Fe-Si-B系を主体とする非晶質合金薄
帯はアニ−ルによって脆化してしまう。この脆化はアニ
−ル温度が高くなる程大きくなる傾向を示している。本
発明者は、Fe−Si−B−C系の狭い範囲において、
特定量のPを添加することによって、脆化が抑制される
低温度範囲でアニ−ルしても、優れた軟磁気特性を発現
することを見出し、本発明を完成するに至った。ここ
で、前記した曲げ破壊ひずみεf が0.01以上である
場合には、薄帯の脆化をほとんど考慮しなくても、通常
のトランスの製造が可能になる。εf が0.015以上
であれば、さらに製造し易くなるので好ましい。
が、本発明の基本的な特徴は、2≦Si<4原子%の低
Si領域において、所要量のPを添加したことにある。
以下に順を追って、各元素の組成範囲の限定理由を説明
する。Feは78原子%以上、86原子%以下の範囲に
する。Feが78原子%未満の場合には、鉄心としての
十分な磁束密度が得られなくなり、86原子%超の場合
には、非晶質形成が困難になって、良好な磁気特性が得
られなくなる。より幅広いアニール温度範囲で、また
は、低温側でのアニ−ルで、1.35T以上のB 80をよ
り安定的に得るためには、Feを80原子%超にする必
要がある。さらに、非晶質をより安定的にし、εf が
0.01以上の薄帯を得るためには、Feを82原子%
以下にすればよい。Feが80原子%超、82原子%以
下の範囲において、より優れた非晶質薄帯を得ることが
できる。
囲に限定する。Siが2原子%未満の場合には、非晶質
が安定して形成され難くなり、また、Siが4原子%以
上の場合には、本発明の特徴である“P添加による最適
アニール温度範囲の拡大効果”または“P添加によるア
ニ−ル温度範囲の低温側への拡大効果”が得られなくな
る。
にする。Bが5原子%以下では非晶質が安定して形成さ
れ難くなり、16原子%超としても更なる非晶質形成能
の向上は認められなくなる。P添加による“最適アニー
ル温度範囲の拡大効果”、または、“アニ−ル温度範囲
の低温側への拡大効果”をより有効に発現させるために
は、Bを14原子%未満にする。すなわち、Bが5原子
%超、14原子%未満の範囲において、B80のばらつき
が少ない優れた軟磁気特性と曲げ破壊ひずみε f が0.
01以上の耐脆化特性を有する非晶質合金薄帯が得られ
る。
る。Cを含有させることによって、溶湯と冷却基板の濡
性が向上して、良好な薄帯を形成させることができる。
Cが0.02原子%未満の場合は、この効果が得られな
い。また、Cを4原子%超含有させても、この効果の更
なる向上は認められない。したがって、Cの組成範囲
は、0.02原子%以上4原子%以下に限定した。
る。本発明者らは、既に、特開平9−202946号公
報において、0.008重量%以上、0.1重量%
(0.16原子%)以下のPは、MnとSの許容含有量
を増加させて、安価な鉄源の使用を可能にする効果があ
ることを開示したが、本発明は、鉄心のアニール工程に
おいて、鉄心の各部位に“温度むら”が生じた場合にお
いても、その“温度むら”による軟磁気特性の劣化を防
止することを目的として、または、鉄心の脆化を生じさ
せる温度よりも低温度側におけるアニ−ルを可能にする
ことを目的として、P量、および、Fe、Si、B、C
の各量を種々変化させた実験を積み重ね、その結果、成
し得た発明である。
の範囲で含有させる。Pが0.2原子%未満では、最適
アニール温度範囲を拡大する効果、または、アニ−ル温
度範囲を低温側へ拡大する効果が得られなくなり、ま
た、Pを12原子%超含有させても、Pによるそれ以上
の効果が得られないばかりか、磁束密度が低下してしま
う。Pが1原子%以上12原子%以下であれば、Pの効
果によって磁束密度B80のばらつきが、より一層抑制さ
れるとともに、1.35T以上のB80と、0.01以上
のεfがより安定して得られる。Pが1原子%以上10
原子%以下であれば、磁束密度の低下も抑制され、より
一層のPの添加効果が発現する。
は、不可避不純物として、特開平9−202946号公
報に示されているレベルのMn、S、等の元素を含有し
ていても、特段の問題を生じない。組成範囲の特定に関
して重要なことは、本発明におけるPの効果は、Fe、
Si、B、C系の限定された組成範囲に、所定量のPを
添加することによって、成し得たものであり、特に、2
≦Si<4原子%の低Siの範囲において、初めて、P
の添加効果が発現するということである。
をトランス用鉄心の素材として用いることにより、優れ
た軟磁気特性を維持しつつ、鉄心のアニ−ルの際に生じ
る鉄心の脆化を抑制すること、または、鉄心各部位に生
じる“温度むら”に起因する特性劣化を防止することが
可能になる。
合金成分を溶解し、溶湯を、移動している冷却基板上
に、スロットノズルを通して噴出させて、該溶湯を急冷
凝固させる方法、例えば、単ロ−ル法、双ロ−ル法によ
って製造することができる。単ロ−ル装置には、ドラム
の内壁を使う遠心急冷装置、エンドレスタイプのベルト
を使う装置、および、これらの改良型である補助ロ−ル
を付属させた装置、減圧下真空中または、不活性ガス中
での鋳造装置も含まれる。本発明のFe基非晶質合金薄
帯において、薄帯の板厚、板幅等の寸法は、特に規定さ
れないが、薄帯の板厚は、例えば、10μm以上100
μm以下が好ましい。また、上記薄帯の板幅は、20m
m以上が好ましい。
て、例えば、鉄鉱石を原料とした製鉄プロセスで生産さ
れる一部の鋼種を鉄源に使用することが可能である。F
e基非晶質合金薄帯の合金組成として、例えば、Fe
80.5Si3B15C1P0. 5、Fe79Si3B16C1P1、Fe
80.2Si2.3B13C0.5P4、Fe79.4Si3.8B 10C0.8
P6、Fe81.5Si2.2B6.3C1P9等を挙げることがで
きるが、本発明の合金組成は、これら例示の合金組成に
限られるものではない。
および0.2原子%のMn、S等の不純物を含む組成の
合金を使用した。ただし、X=0.5、1.1、3.
2、6.4、9.5とした。比較材として、X=0、
0.05、13.5、16なる組成の合金も使用した。
ボ中で高周波溶解し、溶湯を、ルツボ先端に取り付けた
開口形状0.4mm×25mmの矩形状スロットノズル
を通して、Cu合金製冷却ロ−ルの上に噴出した。冷却
ロ−ルの直径は580mm、回転数は800rpmであ
る。この鋳造によって、厚さ約27μm、幅約25mm
の薄帯を得ることができた。
て、320℃、340℃、360℃、380℃、400
℃の各温度で、窒素雰囲気中で1時間、磁場中でアニー
ルした。その後、SST(単板磁気測定器)を用いて交
流磁気特性を評価した。評価項目は、測定の最大印加磁
場が80A/mの時の最大磁束密度B80、および、最大
磁束密度1.3Tにおける鉄損である。なお、測定周波
数は50Hzである。結果を表1および表2に示す。
ニールも追加実施した。その結果、B80=1.29Tで
あった。この結果および表1から明らかなように、Pが
0.2原子%以上12原子%以下の試料No.3〜8
(発明例)においては、アニール温度がTmin=320
℃からTmax=400℃の範囲、すなわち、ΔT=80℃
の幅広いアニール温度範囲において、B80が1.35T
以上の高い磁束密度が発現し、かつ、そのアニール温度
範囲において、B80の標準偏差が0.1未満となり、磁
束密度のばらつきの低減が可能であることがわかる。
2原子%以下のPの範囲においては、B80の標準偏差が
0.07以下となって、磁束密度のばらつきがより抑制
された薄帯が得られていることがわかる。さらに、試料
No.5〜8のBが5原子%超14原子%未満の範囲に
おいては、B80の標準偏差が0.05以下となって、磁
束密度のばらつきがより一層少ない薄帯が得られている
ことがわかる。
試料No.3〜8(発明例)において、Tmin=320
℃からTmax=380℃の範囲、すなわち、ΔT=60
℃の幅広いアニール温度範囲において、0.12W/k
g以下の低鉄損を示すことがわかる。試料No.9は、
鉄損が60℃の幅広いアニール温度範囲で0.12W/
kg以下であるが、B80が比較材レベルであったので比
較例とした。試料No.10の400℃アニール材で
は、1.3Tの磁束密度まで励磁できなかった。
15.2-YP3.3C1および0.2原子%のMn、S等の不純物
を含む組成の合金を使用した。ただし、Y=1.7、
2.2、2.9、3.4、3.8、4.3、5.5とし
た。これらの合金を実施例1に示した方法で薄帯に鋳造
した。薄帯の磁気特性も実施例1と同様の方法で評価し
た。結果を表3および表4に示す。
は、420℃でのアニールを追加実施した。その結果、
B80は、それぞれ、1.34T、1.31T、および、
1.27Tであった。これらの結果および表3から明ら
かなように、Siが2原子%以上4原子%未満の試料N
o.12〜15(発明例)において、アニール温度がT
min=320℃からTmax=400℃の範囲、すなわち、
ΔT=80℃の幅広いアニール温度範囲において、B80
が1.35T以上の高い磁束密度が発現し、かつ、その
アニール温度範囲において、B80の標準偏差が0.1未
満となり、磁束密度のばらつきの低減が可能であること
がわかる。
が0.1未満であるが、ΔTが少なくとも80℃となる
アニール温度範囲において、B80が1.35T以上を満
たしていない。また、表4から、試料No.12〜15
(発明例)においては、Tmin=320℃からTmax =
380℃の範囲、すなわち、ΔT=60℃の幅広いアニ
ール温度範囲において、0.12W/kg以下の低鉄損
を示していることがわかる。試料No.11は、鉄損が
ΔT=60℃のアニール温度範囲で、0.12W/kg
であるが、B80が比較材のレベルであったので比較例と
した。以上のことから、Siが4原子%以上になると、
本発明のPの添加効果が発現しないことがわかる。
2.5原子%として、Fe、B、Cの割合を種々変えた
合金を用いて、実施例1と同様の方法で薄帯を鋳造し
た。ただし、この薄帯は、不純物として、0.2原子%
のMn、S等を含んでいる。上記薄帯の磁気特性につい
ても、実施例1と同様の方法で評価した。この時のアニ
ール温度は280〜400℃の範囲とした。結果を表5
および表6に示す。
さくなる80℃幅のアニール温度範囲(表5中、太線で
挟む範囲)で得られた値で計算した。試料No.25に
ついて420℃アニールを追加実施した結果、B80=
1.33Tであった。この結果および表5からわかるよ
うに、Feが78原子%以上86原子%以下である試料
No.19〜24(発明例)では、ΔTが少なくとも8
0℃の幅広いアニール温度範囲において、B80が1.3
5T以上の高い磁束密度が発現し、かつ、そのアニール
温度範囲において、B80の標準偏差が0.1未満とな
り、磁束密度のばらつきが低減していることがわかる。
例)では、標準偏差が0.1未満であるが、非晶質状態
が得られず、B80も1T以下の低いものしか得られなか
った。また、比較例の試料No.25および26では、
同様に、標準偏差が0.1未満であるが、ΔTが少なく
とも80℃以上の幅広いアニール温度範囲において、
1.35T以上のB80を得ることができなかった。
試料No.21および22(発明例)では、標準偏差も
低く、また、Tmin=280℃からTmax=400℃とい
うより幅広い範囲で、B80が1.35T以上であり、優
れた薄帯が形成されていることがわかる。表6の結果か
ら、試料No.19〜24(発明例)、25(比較例)
および26(比較例)においては、従来技術には存在し
ない、ΔTが少なくとも60℃以上の幅広いアニール温
度範囲において、鉄損が0.12W/kg以下であるこ
とがわかる。ただし、No.25および26(比較例)
では、ΔTが少なくとも80℃の広い温度範囲で、B80
が1.35T以上を満たさなかったので、これらを比較
例とした。試料No.18(比較例)においては、非晶
質が得られなかったので、鉄損も大きくなっている。
て、幅50mmの非晶質薄帯を鋳造した。鋳造方法は、
実施例1と同様であるが、ノズルの開口形状を0.4m
m×50mmの矩形状スロットノズルに変えた。得られ
た薄帯の厚みは26μmである。この薄帯を、巻き厚み
が約50mmのトロイダル鉄心に巻回した。この鉄心
を、室温から種々の昇温速度で400℃まで加熱し、そ
の温度で2時間保定し、その後、炉冷した。加熱中、鉄
心の周方向に磁場を印加した。温度制御は、炉の雰囲気
温度で行い、実際の試料の温度は、鉄心各部位に接触さ
せた熱電対で測定した。
温度と鉄心との温度差が大きくなり、かつ、鉄心各部位
の温度差も大きくなる傾向を示した。ただし、鉄心の温
度は炉の雰囲気温度以下であった。アニール後の鉄心に
1次コイルおよび2次コイルを巻いて、B80を測定し
た。その結果、鉄心各部位の温度差が80〜100℃と
大きくなっても、B80は、1.43Tと高い値を示すこ
とを確認した。比較例として、試料No.17の合金を
用いて同様な試験を実施した。この場合、鉄心各部位の
温度差が80〜100℃まで大きくなると、B80が、
1.32Tと低くなってしまうことがわかった。
16-XPXC0.8 および0.2原子%のMn、S等の不純
物を含む組成の合金を使用した。ただし、X=1.3、
3.5、6.2、9.4とした。比較材として、X=
0、14.5なる組成の合金も使用した。先ず、所定の
組成からなる合金を石英ルツボ中で高周波溶解し、ルツ
ボ先端に取り付けた開口形状が0.4mm×25mmの
矩形状スロットノズルを通してCu合金製冷却ロ−ルの
上に溶湯を噴出した。冷却ロ−ルの直径は580mm、
回転数は800rpmである。この鋳造によって、厚さ
約26μm、幅約25mmの薄帯を得た。
て、320℃、340℃、360℃、380℃、400
℃の各温度で、窒素雰囲気中で1時間、磁場中でアニ−
ルした後、SST(単板磁気測定器)を用いて交流磁気
特性を評価した。評価項目は、測定の最大印加磁場が8
0A/mの時の最大磁束密度B80、および、最大磁束密
度が1.3Tにおける鉄損W13/50である。なお、測定
周波数は50Hzである。また、前記の各温度でアニ−
ルした薄帯の曲げ破壊ひずみεf を測定した。曲げる際
にはR面(鋳造時にロ−ルと接触する面)を外側にして
曲げた。結果を表7に示す。
は、曲げ破壊ひずみεf が0.01以上の優れた耐脆化
特性と、B80が1.35T以上、W13/50が0.12W/
kg以下の優れた軟磁気特性を兼ね備えた範囲である。
No.27〜No.30では、εfが0.01以上となる
アニ−ル温度は360℃以下の温度範囲であるが、N
o.27(比較例)では、320℃アニ−ルでB8 0が
1.35T以下となってしまう。
のアニ−ル温度範囲でW13/50を0.12W/kg以下
にすることはできない。これに対して、No.28〜N
o.30(発明例)では、360℃以下の低温アニ−ル
を施してεf をさらに大きくして脆性を改善した場合に
おいても、B80が1.35T以上、かつ、W13/50 が
0.12W/kg以下の優れた軟磁気特性を維持してい
る。No.31(発明例)では、340℃以下のアニ−
ルによって、優れた耐脆化特性と優れた軟磁気特性が発
現している。No.32(比較例)では、320℃以下
のアニ−ルでεf が0.01以上となるが、B80が1.
35T以下となっている。
合金薄帯を用いて鉄心に巻回した巻鉄心、または、該薄
帯の打ち抜き片を積層した積鉄心をアニ−ルする場合、
鉄心各部位に“温度むら”が生じた場合においても、ま
た低温度でアニ−ルした場合においても、優れた軟磁気
特性が発現し、薄帯の脆化を抑制することが可能とな
る。したがって、本発明のFe基非晶質合金薄帯は、ト
ランスとしての性能を高めることができるのみならず、
トランスの製造においても、アニール時の昇温速度およ
び降温速度を上げることは可能となりさらに薄帯の割れ
などを防止できるので、生産性の向上にも大きく貢献す
る効果がある。
Claims (12)
- 【請求項1】 Fe、Si、B、C、Pの主要元素およ
び不可避不純物で構成される非晶質合金薄帯であって、
組成が、原子%で、78≦Fe≦86、2≦Si<4、
5<B≦16、0.02≦C≦4、0.2≦P≦12で
あることを特徴とする交流における軟磁気特性に優れた
Fe基非晶質合金薄帯。 - 【請求項2】 前記Feの組成が、原子%で、80<F
e≦82であることを特徴とする請求項1記載の交流に
おける軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯。 - 【請求項3】 前記Pの組成が、原子%で、1≦P≦1
2であることを特徴とする請求項1または2記載の交流
における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯。 - 【請求項4】 前記Bの組成が、原子%で、5<B<1
4であることを特徴とする請求項1、2または3記載の
交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄
帯。 - 【請求項5】 請求項1、2、3または4記載の交流に
おける軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯であっ
て、アニール後、B80が1.35T以上で、かつ、B80
の標準偏差が0.1未満の軟磁気特性を有することを特
徴とする交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質
合金薄帯。 - 【請求項6】 請求項5記載の交流における軟磁気特性
に優れたFe基非晶質合金薄帯であって、アニール後、
さらに、鉄損が0.12W/kg以下の鉄損特性を有す
ることを特徴とする交流における軟磁気特性に優れたF
e基非晶質合金薄帯。 - 【請求項7】 請求項1、2、3、4、5または6記載
の交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄
帯であって、該薄帯においてB80が1.35T以上で、
かつ、B80の標準偏差が0.1未満の軟磁気特性を確保
するアニールにおけるアニール温度の最大値をTmax、
アニール温度の最小値をTminとし、ΔT=Tmax−Tmi
nとしたとき、該ΔTが少なくとも80℃であるアニー
ル温度特性を有することを特徴とする交流における軟磁
気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯。 - 【請求項8】 請求項7記載の交流における軟磁気特性
に優れたFe基非晶質合金薄帯であって、該薄帯におい
て前記軟磁気特性に加え、鉄損が0.12W/kg以下
の鉄損特性を確保するアニールにおけるアニール温度の
最大値をTmax 、アニール温度の最小値をTmin とし、
ΔT=Tmax −Tmin としたとき、該ΔTが少なくとも
60℃であるアニール温度特性を有することを特徴とす
る交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄
帯。 - 【請求項9】 請求項1、2、3または4記載の交流に
おける軟磁気特性に優れたFe基非晶質合金薄帯であっ
て、アニ−ル後、B80が1.35T以上の優れた軟磁気
特性、および、薄帯の曲げ破壊ひずみεf(=t/(Df
−t)、tは板厚、Df は破壊した時の曲げ直径)が
0.01以上の優れた耐脆化特性を同時に有することを
特徴とする交流における軟磁気特性に優れたFe基非晶
質合金薄帯。 - 【請求項10】 請求項9記載の交流における軟磁気特
性に優れたFe基非晶質合金薄帯であって、アニ−ル
後、鉄損が0.12W/kg以下の鉄損特性を有するこ
とを特徴とする交流における軟磁気特性に優れたFe基
非晶質合金薄帯。 - 【請求項11】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
8、9または10記載の交流における軟磁気特性に優れ
たFe基非晶質合金薄帯をトロイダルに巻回し、アニー
ルしたことを特徴とする交流における軟磁気特性に優れ
た巻鉄心。 - 【請求項12】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
8、9または10記載の交流における軟磁気特性に優れ
たFe基非晶質合金薄帯を所定形状に打ち抜き積層し、
アニールしたことを特徴とする交流における軟磁気特性
に優れた積鉄心。
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