JP2002208482A - 有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法

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JP2002208482A
JP2002208482A JP2001003821A JP2001003821A JP2002208482A JP 2002208482 A JP2002208482 A JP 2002208482A JP 2001003821 A JP2001003821 A JP 2001003821A JP 2001003821 A JP2001003821 A JP 2001003821A JP 2002208482 A JP2002208482 A JP 2002208482A
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JP2001003821A
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Tomonori Akai
伴教 赤井
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Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造時に熱などのダメージを受けずに有機物
層上に転写法で形成された十分な膜厚の透明電極を有す
る有機EL素子およびその製造方法を提供することを課
題とする。 【解決手段】 素子構成が基板/第一電極/少なくとも
発光層を含む有機物層/発光層からの発光波長領域にお
いて少なくとも透明である第二電極からなる有機EL素
子を製造するに当り、第二電極となる透明電極層を転写
法で形成する際に、転写用ドナー基板と透明電極層との
間に転写補助層を設けることを特徴とする有機エレクト
ロルミネッセンス素子の製造方法により、上記の課題を
解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、素子構成が基板/
第一電極/少なくとも発光層を含む有機物層/第二電極
からなる、第二電極側より発光を取り出す有機エレクト
ロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と称す
る)およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本
発明は、製造時に熱などのダメージを受けない十分な膜
厚の第二電極を有する有機EL素子およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、素子構成が基板/第一
電極/少なくとも発光層を含む有機物層/第二電極から
なる発光素子である。薄型、全固体型、面状自発光、高
速応答といった特長を有し、ディスプレイパネルへの応
用が期待されることから近年各方面で盛んに研究が行わ
れている。
【0003】この有機EL素子の電極間に電圧を印加す
ると、発光層に一方の電極から電子が注入されるととも
に、他方の電極からホールが注入され、これらの電子と
ホールが再結合して発光層より面状発光が得られる。し
たがって、面状発光を得るためには、どちらか一方の電
極は透明であることが望ましく、多くの場合は基板上に
設ける第一電極に透明導電膜を用いて発光を取り出して
いる。このとき、基板についても透明でなければならな
い。すなわち、素子構成は、透明な基板/透明な第一電
極/少なくとも発光層を含む有機物層/透明でなくても
構わない第二電極というものであった。
【0004】図1は、第一電極側より発光を取り出す従
来の有機EL素子の構成を示す概略断面図である。透明
な基板(101)上に、透明な第一電極(102)が形
成され、さらにその上に少なくとも発光層を含む有機物
層(103)と透明でなくてもかまわない第二電極(1
04)が形成されている。そして、発光(105)は透
明な基板(101)と透明な第一電極(102)を通し
て得られる。
【0005】従来の有機EL素子において、第一電極側
より発光を取り出す素子が多かった理由は、第一電極に
ITO(酸化インジウム錫)が用いられてきたからであ
る。すなわち、ITOは液晶ディスプレイパネルなどで
広く用いられている材料で、配線形成が容易であるた
め、その技術を有機EL素子に転用したことによる。ま
た、基板としてガラスを用いることが多かったことにも
よる。このとき、有機物層上の第二電極は透明である必
要はなく、多くの場合は金属薄膜が利用されてきた。
【0006】有機EL素子の各層の形成において、第一
電極は、ITOを用いて公知のフォトリソグラフィ法で
形成され、有機物層は、低分子系材料を用いる場合には
蒸着法で、高分子材料を用いる場合にはスピンコート法
で形成されるのが一般的である。有機EL素子を画素発
光部に用いたディスプレイパネルを作製する場合には発
光層の塗り分けが必要であり、シャドウマスク法やイン
クジェット法などが用いられる。また、第二電極には、
電子ビーム法、スパッタ法または蒸着法などにより形成
した金属薄膜が用いられる。
【0007】一方、近年、発光特性や生産性の向上にむ
けて、第二電極側より発光を取り出す有機EL素子が考
案されている。すなわち、透明でなくても構わない基板
/透明でなくても構わない第一電極/少なくとも発光層
を含む有機物層/透明な第二電極から構成される素子で
ある。このような構成であれば、従来の第一電極側より
発光を取り出す素子で問題となった基板の反射などによ
る発光のロスを防ぐことができ、基板に用いる材料の選
択が広がる。また、有機EL素子を画素発光部に用いた
ディスプレイパネルでは、開口率が向上するなどのメリ
ットを持つことになる。
【0008】図2は、第二電極側より発光を取り出す有
機EL素子の構成を示す概略断面図である。基板(20
1)と第一電極(202)は透明である必要はなく、有
機物層(203)上に形成される第二電極(「第二電極
層」ともいう、204)が透明である。したがって、発
光(205)は第二電極(204)側より取り出され
る。このように、第二電極(204)が透明である場合
には、発光層からの発光スペクトルと同一の発光が得ら
れる。
【0009】第二電極側より発光を取り出す有機EL素
子は、第二電極層(204)の形成方法に問題を抱えて
いる。第二電極層(204)として透明導電膜を用いる
場合には、透明導電膜は、電子ビーム法やスパッタリン
グ法で形成される。このような方法で基板上に透明導電
膜を形成して、第一電極として用いる場合には問題はな
い。
【0010】しかしながら、第二電極として、電子ビー
ム法やスパッタリング法で耐性の低い有機物層上に透明
導電膜を形成すると、下地の有機物層がダメージを受
け、良好な素子とならないという問題がある。例えば、
スパッタリングによる温度の上昇によって耐熱性の低い
有機物層がダメージを受けたり、蒸発した材料の衝撃に
よって有機物層が損傷を受ける。
【0011】このような問題を解決する方法として、有
機物層上に透明導電膜を形成するときの成膜速度を遅く
する方法が考えられる。具体的には、成膜速度を毎秒
0.05Å程度にすれば、スパッタリング時の有機物層
へのダメージはかなり改善される。しかし、通常の有機
EL素子における透明導電膜の膜厚は1000Å程度で
あるため、このような成膜速度では成膜に5時間以上を
要することになり、生産効率が大幅に低下してしまう。
【0012】また、前記の問題を解決する方法として、
完全に透明ではないが、ごく薄い金属薄膜を第二電極に
用いる方法が考えられる。金属薄膜であれば、透明導電
膜を形成する場合に比べて、耐性の低い有機物層に与え
る影響は小さい。しかし、第二電極としての抵抗を考慮
すると、その膜厚は1000Å以上必要であるため、金
属薄膜の膜厚が50〜300Å程度では、有機EL素子
の第二電極としては不十分である。
【0013】一方、有機EL素子の新たな製造方法とし
て、転写法が注目されている。転写法は、例えば、特開
平9−167684号公報、特開平10−208881
号公報などに開示されている。具体的には、ポリエチレ
ンテレフタレート(PET)フィルムなどから構成され
るドナー基板上に、蒸着法、スピンコート法、スパッタ
法などにより転写すべき薄膜層を形成し、これを成膜す
べき基板に取付け、ドナー基板側よりレーザー光や熱な
どのエネルギーを加えて、ドナー基板側に形成されてい
る薄膜層を基板側に転写するというものである。
【0014】転写法に用いるドナー基板の構成としては
特に限定されるものではないが、エネルギー源としてレ
ーザー光を用いる場合には、熱伝播層や光−熱変換層な
どが形成されたフィルムが好適に用いられる。転写法の
利点は、ドナー基板上に積層形成された薄膜が、そのま
ま逆構成で基板に形成されるので、一括して基板上に成
膜できることにある。また、ドナー基板上に薄膜層を形
成するときには特にパターンニングの必要がなく、転写
時にレーザー光や熱源の照射された部分だけがドナー基
板から基板に転写される。したがって、シャドウマスク
を用いずに高精細なパターンを形成することができる。
【0015】転写法での成膜原理は、レーザー光または
熱が照射された領域の温度が瞬間的に上昇し、薄膜層が
融けることによる。これは瞬間的な現象であり、有機物
層や電極層薄膜には影響を与えずにドナー基板上に構成
された積層構造が基板上に逆になって形成される。
【0016】したがって、第二電極側より発光を取り出
す有機EL素子を転写法で作製する場合には、第二電極
としてドナー基板上に透明導電膜をスパッタリング法な
どにより形成しておき、これを透明でなくてもよい第一
電極と有機物層が形成された基板上にレーザー光などを
用いて転写することが考えられる。また、ドナー基板上
に透明導電膜と有機物層を形成しておき、これを透明で
なくてもよい第一電極が形成された基板上に転写する方
法も考えられる。このように転写法を用いれば、有機物
層にダメージを与えることなく、透明な第二電極を形成
でき、第二電極側より発光を取り出す有機EL素子を得
ることができる。
【0017】しかしながら、実際に上記の転写法を試し
てみると、十分な膜厚の透明な第二電極を形成できな
い。すなわち、転写法は瞬間的に薄膜層が融ける現象を
用いたものであるために、融点の高い電極材料を転写す
ることが難しい。また、転写法で形成した透明電極のエ
ッジ部を光学顕微鏡で観察したところ、良好な線にはな
らず、歪な部分がみられた。融点の低い有機物層の場合
には、転写が容易であり、膜厚や積層数などの制限は全
くないが、電極材料、特に透明電極材料は高融点である
ために熱を瞬間的に加えても簡単に転写できない。
【0018】そこで、熱やレーザー光の強度を必要以上
に高めると、PETなどで構成されるドナー基板の耐久
性が低く、ダメージを受けることになる。そのため、電
極層は膜厚の制限を受けてしまう。本発明の発明者が行
なった実験においては、透明電極材料としてITOを用
いた場合、転写できる膜厚は100Å程度であった。I
TOを有機EL素子の電極として用いる場合には、膜厚
は1000Å以上必要であり、100Å程度の膜厚では
抵抗が大きくなり、良好な発光素子を得ることができな
い。
【0019】特開平11−260549号公報には、有
機物層上の透明電極を転写法で形成する有機EL素子の
製造方法が開示されている。しかしながら、高融点の透
明電極を転写法で形成するだけでは、十分な膜厚の透明
な透明電極は得られない。また、前記の公報において
は、透明電極の膜厚について言及していない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造時に熱
などのダメージを受けずに有機物層上に転写法で形成さ
れた十分な膜厚の透明電極を有する有機EL素子および
その製造方法を提供することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、素子構成が基
板/第一電極/少なくとも発光層を含む有機物層/第二
電極であり、発光層からの発光波長領域において少なく
とも透明である第二電極を転写法で形成し、第二電極側
より発光を取り出す有機EL素子の製造方法において、
転写用ドナー基板と第二電極となる透明電極層との間
に、転写補助層を挿入することにより、透明電極層の転
写が容易になることを見出した。また、透明電極層と共
に転写補助層を転写することにより、転写補助層を素子
の保護層として機能させることができることを見出し、
本発明を完成するに到った。
【0022】本発明によれば、素子構成が基板/第一電
極/少なくとも発光層を含む有機物層/発光層からの発
光波長領域において少なくとも透明である第二電極から
なる有機EL素子を製造するに当り、(A)基板上に第
一電極とその上に有機物層を予め形成し、転写補助層と
その上に第二電極となる透明電極層を形成した転写用ド
ナー基板を用いて、転写法によって前記有機物層上に透
明電極層/転写補助層を形成するか、(B)基板上に第
一電極を予め形成し、転写補助層とその上に第二電極と
なる透明電極層とさらにその上に有機物層を形成した転
写用ドナー基板を用いて、転写法によって前記第一電極
上に有機物層/透明電極層/転写補助層を形成するか、
または(C)基板上に第一電極とその上に複数層の有機
物層の内、一部の有機物層を予め形成し、転写補助層と
その上に第二電極となる透明電極層とさらにその上に前
記有機物層の内、残る有機物層を形成した転写用ドナー
基板を用いて、転写法によって前記の一部の有機物層上
に残る有機物層/透明電極層/転写補助層を形成するこ
とを特徴とする有機EL素子の製造方法が提供される。
【0023】また、本発明によれば、上記の有機EL素
子の製造方法により形成された有機EL素子およびそれ
を画素発光部に用いたディスプレイパネルが提供され
る。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の有機EL素子は、第二電
極側より発光を取り出す方式であり、図2に示すよう
に、基本的に基板(201)、第一電極(202)、少
なくとも発光層を含む有機物層(203)および複数層
の透明な第二電極層(204)からなる。図中の(20
5)は発光を表す。以下、本発明の有機EL素子の製造
方法について、より具体化した実施の形態を用いて説明
するが、本発明はこの実施の形態により限定されるもの
ではない。
【0025】(その1)転写用ドナー基板を作製する。
転写用ドナー基板(ベース基板)としては、多くの場合
フィルム状のものが用いられる。その材料としては、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。PE
Tフィルムは、フィルムの中では耐熱性が良好で、また
適度の柔軟性を有するので好ましい。また、フィルムの
厚さは特に限定されないが、耐久性と転写の容易性を考
慮すれば、厚さ50μm〜1mm程度が好ましい。
【0026】また、転写効率を向上させるために、公知
の材料を用いて熱伝播層や光−熱変換層をフィルム上に
適宜形成してもよい。転写用ドナー基板としてPETフ
ィルムを用い、転写法のエネルギー源としてレーザー
光、特にYAGレーザー光を用いる場合に、PETフィ
ルムだけでは透明であるために転写性に劣る。このよう
な場合に熱伝播層や光−熱変換層を設けるのが好まし
い。
【0027】(その2)転写用ドナー基板上に転写補助
層を形成する。転写用ドナー基板上に転写補助層を形成
する最大の目的は、透明な第二電極となる透明電極層の
転写を容易にすることである。したがって、転写補助層
に用いる材料としては、透明電極層を形成する透明電極
材料よりも低融点の材料が好ましく、有機材料(低分子
系材料、ポリマー系材料)および無機材料のいずれであ
ってもよい。また、このような材料は、発光層からの発
光波長領域において有色であっても無色であってもよ
く、混合材料であってもよい。
【0028】転写補助層の構成は、単層および積層のい
ずれであってもよく、その膜厚は、用いる材料により異
なるが、50Å程度〜5mm程度の範囲で適宜選択すれ
ばよい。転写補助層の形成(成膜)方法としては、公知
の手法が適用可能であり、蒸着法、スピンコート法、イ
ンクジェット法、印刷法、電子ビーム法、スパッタ法、
スプレー法などが挙げられる。なお、転写後に転写補助
層を透明電極層上に残す場合と残さない場合があるが、
これについては後で述べる。
【0029】(その3)転写補助層上に透明な第二電極
(「透明電極層」ともいう)を形成する。転写補助層上
に形成する第二電極の材料としては、公知の透明電極材
料を使用することが可能である。つまり、後述する発光
層の発光波長領域において透明である材料が好ましく、
具体的には、ITO(酸化インジウム錫)、酸化錫、I
DIXO(In23−ZnO系材料)などが挙げられ
る。透明電極層の形成(成膜)方法としては、公知の手
法が適用可能であり、蒸着法、電子ビーム法、スパッタ
法、スプレー法などが挙げられる。
【0030】透明電極層は、一般的な有機EL素子に必
要な膜厚で形成すればよい。転写用ドナー基板上に、直
接、透明電極層を形成する従来の方法では、フィルムや
有機物層の熱的なダメージや転写後のエッジ部歪の発生
を考慮して、透明電極層の膜厚は制限されるが、転写補
助層を設ける本発明の方法では、前記の制限がなくな
る。ただし、一般的に有機EL素子において、軟らかく
剛性の低い有機物層上に、硬く剛性の高い透明電極材料
を厚く形成すると、応力発生により良好な素子が得られ
ない場合がある。したがって、透明電極層の膜厚は、用
いる材料の抵抗率を考慮しつつ適宜決定すればよい。例
えば、ITOを用いる場合には、2000Å程度が好ま
しい。
【0031】(その4)基板に第一電極を形成する。用
いる基板は透明である必要はなく、材質に関しても有機
EL素子を維持できる程度の剛性が有れば特に限定され
るものではない。例えば、シリコン基板、ポリイミドフ
ィルム、PETなどのプラスチックフィルム、セラミッ
ク基板、ガラス基板、絶縁処理した金属基板などが挙げ
られる
【0032】次に、基板上に第一電極を形成する。第一
電極についても透明である必要はない。金属薄膜が好ま
しく、用いる有機物材料との相性を考慮して適宜選択す
ればよい。一般的な有機EL素子においては、金属薄膜
は電子注入電極として機能する場合が多いので、電子注
入を容易にするような仕事関数の小さな金属が望まし
い。具体的には、アルミニウム、マグネシウム、銀、リ
チウム、セシウム、カルシウムなどが挙げられる。
【0033】第一電極の成膜方法としても、公知の手法
が適用可能であり、蒸着法、電子ビーム法、スパッタ
法、メッキ法などが挙げられる。また、パターンニング
に関しても、特に限定されるものではなく、公知のシャ
ドウマスク法、フォトリソグラフィ法などが適用可能で
ある。
【0034】本発明の有機EL素子では第一電極側より
発光を取り出さないので、十分な膜厚の第一電極を形成
することができる。しかし、あまりに厚くすると、第一
電極エッジにおける段差の問題が新たに発生するので、
好ましくない。第一電極の膜厚は、用いる金属材料にも
よるが、通常3000Å程度である。
【0035】(その5)少なくとも発光層を含む有機物
層を形成する。有機物層の形成方法としては、公知の手
法が適用可能であり、蒸着法、スピンコート法、印刷
法、インクジェット法などが挙げられる。用いる有機材
料についてもこれまでに有機EL素子に用いられてきた
材料を使用することができる。膜厚についても特に制限
はなく、一般的な有機EL素子で採用されている程度の
膜厚とすることができる。通常、10〜1000nm程
度である。
【0036】有機物層の形成は、後述する転写法で転写
する層の構成により、次の(A)〜(C)の3通りが挙
げられる。 (A)工程(その4)において、基板上に形成した第一
電極層上に、有機物層を形成する。 (B)工程(その3)において、転写補助層上に形成し
た透明電極層上に、有機物層を形成する。
【0037】(C)一般に有機物層は、発光層や電荷輸
送層などの積層構造であるので、これらの有機物層を分
割して、工程(その3)において、転写補助層上に形成
した透明電極層上と、工程(その4)において、基板上
に形成した第一電極上とに形成する。有機EL素子を画
素発光部に用いたフルカラーのディスプレイパネルを作
製する場合などには、発光層をR、G、Bに塗り分ける
必要がある。このような場合には、上記の(B)や
(C)の方法が有効である。
【0038】本発明の有機EL素子の製造方法において
は、最終的に第二電極側より発光を取り出す素子構成に
なるように形成すればよく、具体的には、その素子構成
が、透明でなくても構わない基板/透明でなくても構わ
ない第一電極/少なくとも発光層を含む有機物層/透明
な薄い第二電極層(透明電極層)になるように形成すれ
ばよい。次の工程で転写用ドナー基板と基板とを転写法
にて貼り合わせる前段階を、図3〜5を用いて説明す
る。
【0039】図3は、前記の工程(A)を示す概略断面
図であり、透明でなくても構わない基板(301)上に
形成された透明でなくても構わない第一電極(302)
と少なくとも発光層を含む有機物層(303)、および
転写用ドナー基板(307)上に形成された転写補助層
(306)と透明な第二電極層(304、透明電極層)
からなる。
【0040】図4は、前記の工程(B)を示す概略断面
図であり、透明でなくても構わない基板(401)上に
形成された透明でなくても構わない第一電極(40
2)、および転写用ドナー基板(407)上に形成され
た転写補助層(406)と透明な第二電極層(404、
透明電極層)と少なくとも発光層を含む有機物層(40
3)からなる。
【0041】図5は、前記の工程(C)を示す概略断面
図であり、積層構成である有機物層を適当な箇所で分割
して形成する場合である。すなわち、透明でなくても構
わない基板(501)上に形成された透明でなくても構
わない第一電極(502)と分割した一方の有機物層
(503、複数層の有機物層の内、一部の有機物層)、
および転写用ドナー基板(506)上に形成された転写
補助層(506)と透明な第二電極層(504、透明電
極層)と分割した他方の有機物層(503’、有機物層
の内、残る有機物層)からなる。なお、このような場合
には、発光層は分割した一方の有機物層(503)と分
割した他方の有機物層(503’)のいずれか一方、も
しくは両方に形成されていればよい。
【0042】(その6)転写用ドナー基板と基板とを貼
り合わせ転写し、転写用ドナー基板を剥離する。すなわ
ち、転写用ドナー基板と基板とを両基板が外側になるよ
うに貼り合わせ、基板側に形成した最上層上に、転写用
ドナー基板上に形成した層を転写し、ドナー基板を剥離
する。本発明においては、転写補助層の存在により、透
明電極層の転写性が大幅に向上する。
【0043】転写法のエネルギー源としては、転写用ド
ナー基板側に形成された透明な第二電極(透明電極層)
と、場合によっては有機物層とを、基板側に転写できる
ものであれば特に限定されない。しかし、高精細なパタ
ーンを得るために局所的に強いエネルギーを与えるのが
好ましく、レーザー光、特にYAGレーザー光を効果的
に用いることができる。
【0044】転写後に転写用ドナー基板を剥離すること
により、基板側に透明電極層や有機物層が転写され、透
明でなくても構わない基板/透明でなくても構わない第
一電極/少なくとも発光層を含む有機物層/透明な第二
電極層(透明電極層)という素子構成が得られる。
【0045】次に、転写後に転写補助層を透明電極層上
に残す場合と残さない場合について述べる。図3〜5に
おける転写補助層(306)、(406)および(50
6)を形成する材料が、発光層からの発光波長領域にお
いて透明でない場合には、有機EL素子が完成した状態
で、転写補助層を透明電極層上に残さないように処理す
る。具体的には、工程(その6)において、転写用ドナ
ー基板と共に転写補助層を剥離する。このような透明で
ない転写補助層が透明電極層上に残ると、発光層からの
発光が転写補助層により遮断され、有機EL素子として
の機能が得られない。
【0046】図6は、転写後に転写補助層を透明電極層
上に残さない場合の有機EL素子の概略断面図である。
基板(601)上に第一電極(602)と、少なくとも
発光層を含む有機物層(603)と、透明な第二電極層
(604、透明電極層)とが積層構成されている。第一
電極と透明な第二電極層との間に電圧を印加すると、透
明な第二電極層(604)を通して発光(605)が得
られる。この発光は、基本的に発光層から発せられるも
のと同一である。
【0047】転写補助層を形成する材料が、発光層から
の発光波長領域において透明でなくても、その膜厚が薄
い場合には、発光層から発せられる発光が完全に遮断
(吸収)さないことがある。図7は、転写後に転写補助
層を透明電極層上に残す場合の有機EL素子の概略断面
図である。基板(701)上に第一電極(702)と、
少なくとも発光層を含む有機物層(703)と、透明な
第二電極層(704、透明電極層)と、透明でない転写
補助層(706)とが積層構成されている。第一電極と
透明な第二電極層との間に電圧を印加すると、透明な第
二電極層(704)および透明でない転写補助層(70
6)を通して発光(705)が得られる。この発光は、
透明でない転写補助層から何らかの影響を受けたもので
ある。
【0048】例えば、転写補助層が、発光層からの発光
波長全般を吸収する場合には、発光強度が低下した状態
の発光が得られる。また、転写補助層が特定の波長領域
を吸収する傾向のある金属薄膜(例えば、アルミニウム
薄膜では、500nm以下の波長を吸収)で形成された
場合には、発光層からの発光とは異なるスペクトルが得
られる。
【0049】転写補助層の構成は、単層および積層のい
ずれであってもよく、転写補助以外の機能を有する材料
を含む層を導入してもよい。例えば、電気導電性の高い
(導電率の高い)材料、例えば導電性高分子を含む層を
導入すれば、第二電極の抵抗が低下し、素子の駆動電圧
を低下できるので好ましい。
【0050】また、色変換機能を有する材料(例えば、
CCM)を含む層を転写補助層に導入すれば、発光層か
らの発光を任意に変換させ、大幅にスペクトルの異なる
発光を得ることができる。偏光性を有する材料(例え
ば、ヨウ素系材料)を含む層を転写補助層に導入すれ
ば、偏光板の機能を発揮し、第一電極での反射を抑制し
た見栄えのよい有機EL素子を得ることができる。さら
に、水分および/または酸素のシール能の高い材料(シ
ール性材料)を含む層を転写補助層、特に最外層に導入
すれば、この層が有機EL素子の保護層として機能し、
素子の信頼性が向上するので好ましい。
【0051】転写補助層を形成する材料が、発光層から
の発光波長領域において透明である場合には、有機EL
素子が完成した段階において、転写補助層が残っていて
も、残っていなくても、基本的に発光層から発せられる
ものと同一の発光が得られる。
【0052】図8は、転写後に転写補助層を透明電極層
上に残す場合の有機EL素子の概略断面図である。基板
(801)上に第一電極(802)と、少なくとも発光
層を含む有機物層(803)と、透明な第二電極層(8
04、透明電極層)と、透明でない転写補助層(80
6)とが積層構成されている。第一電極と透明な第二電
極層との間に電圧を印加すると、透明な第二電極層(8
04)および透明でない転写補助層(806)を通して
発光(805)が得られる。
【0053】前記の工程(A)〜(C)を整理すると次
のようになる。 工程(A) (a)転写用ドナー基板上に、転写補助層とその上に透
明電極層を形成する工程、(b)基板上に、第一電極と
その上に有機物層を形成する工程、および(c)転写用
ドナー基板と基板とを両基板が外側になるように貼り合
わせ、透明電極層/転写補助層を転写法で転写し、転写
用ドナー基板を剥離する工程
【0054】工程(B) (a)転写用ドナー基板上に、転写補助層とその上に透
明電極層とさらにその上に有機物層を形成する工程、
(b)基板上に、第一電極を形成する工程、および
(c)転写用ドナー基板と基板とを両基板が外側になる
ように貼り合わせ、有機物層/透明電極層/転写補助層
を転写法で転写し、転写用ドナー基板を剥離する工程
【0055】工程(3) (A)転写用ドナー基板上に、転写補助層とその上に透
明電極層とさらにその上に分割した一方の有機物層を形
成する工程、(B)基板上に、第一電極とその上に分割
した他方の有機物層を形成する工程、および(C)転写
用ドナー基板と基板とを両基板が外側になるように貼り
合わせ、有機物層/透明電極層/転写補助層を転写法で
転写し、転写用ドナー基板を剥離する工程
【0056】本発明の有機EL素子の製造方法によれ
ば、高精細で、かつ信頼性の高い有機EL素子を得るこ
とができる。したがって、このような有機EL素子を画
素発光部に用いたディスプレイパネルは産業上有用であ
る。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、素子構成が基板/第一
電極/少なくとも発光層を含む有機物層/発光層からの
発光波長領域において少なくとも透明である第二電極か
らなる有機EL素子を製造するに当り、第二電極となる
透明電極層を転写法で形成する際に、転写用ドナー基板
と透明電極層との間に転写補助層を設けるので、透明電
極層の形成が容易になり、製造時に熱などのダメージを
受けない、十分な膜厚の透明な第二電極を有する良好な
有機EL素子を得ることができる。また、転写補助層に
特別な機能を持たせることにより、有機EL素子の特性
および信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一電極側より発光を取り出す従来の有機EL
素子の構成を示す概略断面図である。
【図2】第二電極側より発光を取り出す有機EL素子の
構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子の製造プロセス(工程
(A))における転写ドナー基板と基板を転写法にて貼
り合わせる前段階を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機EL素子の製造プロセス(工程
(B))における転写ドナー基板と基板を転写法にて貼
り合わせる前段階を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機EL素子の製造プロセス(工程
(C))における転写ドナー基板と基板を転写法にて貼
り合わせる前段階を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子の製造プロセスにおける
転写後に転写補助層を透明電極層上に残さない場合の有
機EL素子の概略断面図である。
【図7】本発明の有機EL素子の製造プロセスにおける
転写後に透明でない転写補助層を透明電極層上に残す場
合の有機EL素子の概略断面図である。
【図8】本発明の有機EL素子の製造プロセスにおける
転写後に透明である転写補助層を透明電極層上に残す場
合の有機EL素子の概略断面図である。
【符号の説明】
101、201、301、401、501、601、7
01、801 基板 102、202、302、402、502、602、7
02、802 第一電極 103、203、303、403、603、703、8
03 有機物層 104 第二電極 105、205、605、705、805 発光 204、304、404、504、604、704、8
04 透明な第二電極層(透明電極層) 306、406、506、706、806 転写補助層 307、407、507、 ドナー基板(転写用ドナー
基板) 503 分割した一方の有機物層 503’ 分割した他方の有機物層

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 素子構成が基板/第一電極/少なくとも
    発光層を含む有機物層/発光層からの発光波長領域にお
    いて少なくとも透明である第二電極からなる有機エレク
    トロルミネッセンス素子を製造するに当り、(A)基板
    上に第一電極とその上に有機物層を予め形成し、転写補
    助層とその上に第二電極となる透明電極層を形成した転
    写用ドナー基板を用いて、転写法によって前記有機物層
    上に透明電極層/転写補助層を形成するか、(B)基板
    上に第一電極を予め形成し、転写補助層とその上に第二
    電極となる透明電極層とさらにその上に有機物層を形成
    した転写用ドナー基板を用いて、転写法によって前記第
    一電極上に有機物層/透明電極層/転写補助層を形成す
    るか、または(C)基板上に第一電極とその上に複数層
    の有機物層の内、一部の有機物層を予め形成し、転写補
    助層とその上に第二電極となる透明電極層とさらにその
    上に前記有機物層の内、残る有機物層を形成した転写用
    ドナー基板を用いて、転写法によって前記の一部の有機
    物層上に残る有機物層/透明電極層/転写補助層を形成
    することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素
    子の製造方法。
  2. 【請求項2】 転写補助層が、発光層からの発光波長領
    域において有色であってもよく、かつ透明電極層を形成
    する透明電極材料よりも低融点の材料で形成された層で
    ある請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素
    子の製造方法。
  3. 【請求項3】 転写補助層が、発光層からの発光波長領
    域において有色であり、かつ色変換機能および/または
    偏光性機能を有する材料を含む層である請求項1または
    2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 転写補助層が、発光層からの発光波長領
    域において有色であり、かつ電気伝導性の高い材料を含
    む層である請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機エ
    レクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 電気伝導性の高い材料が、導電性高分子
    である請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス
    素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 転写補助層が、水分および/または酸素
    のシール能の高い材料を含む層である請求項1〜5のい
    ずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 転写法が、レーザー光をエネルギー源と
    して行われる請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機
    エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 レーザー光が、YAGレーザー光である
    請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 転写後に転写補助層を透明電極層上に残
    さない請求項1〜8に記載の有機エレクトロルミネッセ
    ンス素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1つに記載の
    有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により形
    成された有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 【請求項11】 請求項1〜9のいずれか1つに記載の
    有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により形
    成された有機エレクトロルミネッセンス素子を画素発光
    部に用いたディスプレイパネル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100752375B1 (ko) 2005-12-07 2007-08-27 삼성에스디아이 주식회사 레이저 전사용 도너 기판과 그의 제조 방법 및 그를 이용한유기전계발광소자의 제조 방법
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