JP2002202401A - 反射防止膜およびそれを備えたプラスチック光学部品 - Google Patents

反射防止膜およびそれを備えたプラスチック光学部品

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JP2002202401A
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antireflection film
sio
reflection preventing
surface hardness
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Masaru Okumura
勝 奥村
Iwao Usui
巌 臼井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック基体上に形成する反射防止膜の
反射防止性能を向上させると同時に、密着性、表面硬
度、耐湿度性も維持・向上させる。 【解決手段】 反射防止膜の最外層をSiO2又はSi
Oを主成分とする層とし、その次の層をMgF2、Na3
AlF6、Na5Al314、AlF3、BaF2、CaF2
及びSrF2からなる群から選ばれた1つのフッ化物を
主成分とする層とする。ここで取り扱いが容易なことか
ら前記フッ化物としてはMgF2が好ましい。また、表
面硬度および耐湿度性の一層の向上を図る観点から、最
外層の層厚を20〜60nmの範囲とするのが好まし
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラや複写機、
ファクシミリ、プリンターなどの光学機器、携帯電話な
どの表示部に用いられるプラスチック部品に形成する反
射防止膜およびそれを備えたプラスチック光学部品に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】プラスチックは、ガラスに比べて軽量
で、加工性および耐衝撃性に優れ、プラスチック成形技
術の進歩も相まって、近年では様々な用途に広く使用さ
れている。光学の分野でも小型・軽量化の市場動向に合
わせて、レンズやプリズム、携帯電話や携帯端末の表示
画面の保護板などの光学部品にプラスチックが用いられ
るようになってきた。例えばプロジェクターの投影レン
ズといった従来はガラス製であった光学部品に、最近で
はプラスチック製のものが用いられるようになってき
た。またプラスチック材料には、ガラスでは作製が困難
であった曲率の大きいレンズでも容易に作製できるとい
う特長もある。
【0003】ところで、光学部品では反射を防止するた
めに部品の基体表面に反射防止膜を形成することがあ
る。この反射防止膜の最外層を屈折率の低い層にすると
優れた反射防止効果が得られるため、従来のガラス製の
光学部品では最外層を屈折率の低いMgF2で一般的に
形成していた。このような反射防止膜の形成は通常、基
体を300℃程度の高温に加熱して真空蒸着により行っ
ていた。
【0004】ところがプラスチックはガラスに比べて耐
熱性に劣るため前記温度まで加熱することができず、無
加熱又は低温加熱で成膜しなければならない。このよう
な成膜条件でMgF2層を形成すると、層の密着性や表
面硬度、耐湿度性が低下し実使用に耐えなかった。そこ
で、プラスチック光学部品の場合には、無加熱または低
温加熱での成膜でも優れた密着性、表面硬度、耐湿度性
が得られるSiO2を、MgF2に代えて最外層の材料と
して用いていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、SiO
2とMgF2の屈折率を比較すると、SiO2が1.47
〜1.47であるのに対して、MgF2は1.38〜
1.39と低く、反射防止性能の点では屈折率の低いM
gF2が優れている。
【0006】そこで本発明はこのような従来の問題に鑑
みてなされたものであり、プラスチック基体上に形成す
る反射防止膜において、反射防止性能に優れると同時
に、密着性、表面硬度、耐湿度性にも優れたものを提供
することをその目的とするものである。また本発明の目
的は、反射防止性能が優れると同時に、表面硬度、耐湿
度性にも優れたプラスチック光学部品を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、プラス
チック基体に形成する反射防止膜であって、最外層をS
iO2又はSiOを主成分とする層(以下「SiOX層」
と記すことがある)とし、その次の層をMgF2、Na3
AlF6、Na5Al314、AlF3、BaF2、CaF2
及びSrF2からなる群から選ばれた1つのフッ化物を
主成分とする層(以下「フッ化物層」と記すことがあ
る)としたことを特徴とする反射防止膜が提供される。
【0008】ここで、取り扱いが容易であることから前
記フッ化物の中でもMgF2が特に好ましい。また、表
面硬度および耐湿度性の一層の向上を図る観点から、S
iO 2又はSiOを主成分とする前記最外層の層厚を2
0〜60nmの範囲とするのが好ましい。
【0009】また本発明によれば、前記の反射防止膜を
プラスチック基体上に形成したことを特徴とするプラス
チック光学部品が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者等はプラスチック基体上
に形成する反射防止膜において、反射防止性能が優れる
と同時に、密着性、表面硬度、耐湿度性にも優れたもの
が得られないか鋭意検討を重ねた結果、無加熱又は低温
加熱の成膜条件でも優れた表面硬度、耐湿度性を示すS
iOX層を最外層とし、屈折率が低く優れた反射防止性
能を有するフッ化物層をその次の層とすればよいことを
見出し本発明をなすに至った。
【0011】すなわち、屈折率の低いフッ化物層を基体
に形成することにより反射防止性能を向上させる一方、
無加熱又は低温加熱の成膜条件に起因する当該層の密着
性、表面硬度、耐湿度性の低下という欠点を、前記成膜
条件でも優れた密着性や表面硬度、耐湿度性を示すSi
X層を最外層として形成することにより解消したので
ある。
【0012】本発明の反射防止膜は、少なくとも最外層
としてSiOX層と、その次の層としてフッ化物層とを
有すればよい。もちろん広帯域の光反射を防止するため
に、低屈折率層および高屈折率層を基体との間にさらに
順次積層させた構造としても構わない。またSiOX
とフッ化物層のそれぞれの層には、本発明の効果を害さ
ない範囲において従来公知の添加物を添加しても構わな
い。
【0013】ここで基体と反射防止膜との密着性を向上
させるために、基体と反射防止膜との間にいわゆる介在
層を形成してもよい。ポリメチルメタクリレート(PM
MA)やポリカーボネート(PC)などを基体材料とし
て用いる場合、高温高湿など環境下では反射防止膜の基
体との密着性が落ちることがある。そこで、SiO層や
SiO2層のケイ素酸化物層またはTiO層やTiO
2層、Ti23層のチタン酸化物層を介在層として基体
上に形成し、反射防止膜と基体との密着性を向上させて
もよい。なおチタン酸化物層は介在層としての役割を果
たすと同時に高屈折率層として反射防止の役割をも果た
す。
【0014】また基体と反射防止膜との密着性を一層向
上させるために、エネルギー線照射処理や薬品処理など
で基体表面を表面改質処理してもよい。エネルギー線照
射処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子
線照射処理、紫外線照射処理などが挙げられる。
【0015】基体上にSiOX層およびフッ化物層を形
成する方法に特に限定はなく、真空蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティングといった物理的蒸着など従来
公知の薄膜形成方法を用いることができる。これらの中
でもフッ化物が分解しにくい真空蒸着が推奨される。真
空蒸着は、真空中で蒸着材料を加熱し、発生した蒸気を
基体上に凝縮・付着させて薄膜を形成する方法である。
蒸着材料の加熱方法には、抵抗加熱、外熱ルツボ、電子
ビーム、高周波、レーザーなどの各種方法があるが、本
発明の反射防止膜に用いる材料の場合には、電子ビーム
による加熱が好ましい。具体的な蒸着条件として、真空
度は1×10-3〜5×10-3Pa程度である。蒸着中は
真空度が一定となるように電磁弁を制御して導入酸素量
を調整する。そして層厚モニターにより所定層厚となっ
たところでシャターを閉じて蒸着を終了する。
【0016】SiOX層の層厚としては特に限定はない
が20〜60nmの範囲が好ましい。SiOX層の層厚
が20nm未満であると基体全体を均一に被覆できない
おそれがある。他方、層厚が60nmを超えると反射防
止性能が低下するからである。
【0017】またフッ化物層の層厚としては特に限定は
ないが、反射防止性能を高める観点から、SiOX層と
フッ化物層との光学的層厚が0.2λ〜0.25λの範
囲となるようにするのが好ましい。
【0018】本発明で使用できるプラスチックとして
は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカー
ボネート、ポリスチレン、非晶質ポリオレフィンなどが
挙げられる。またプラスチック基体の成形方法としては
特に限定はなく、従来公知の成形方法、例えば注型法、
射出成形法、プレス成形法などを用いることができる。
【0019】本発明のプラスチック光学部品の用途とし
ては、例えばレンズやプリズム、携帯電話・携帯端末機
の表示部の保護板などが挙げられる。
【0020】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細
に述べる。なお、下記実施例は本発明を何ら制限するも
のではなく、前後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施
することは本発明の技術的範囲に包含される。
【0021】実施例1 PMMA(屈折率:1.49)からなる板状基体を真空
蒸着器内に配設し、真空度を1×10-3Paとした後、
表1に示す材料を基体上に常温で順に蒸着し、反射防止
膜を形成した。形成した反射防止膜の概略構成図を図1
に示す。なお、各層の蒸着材料の加熱・蒸発は電子ビー
ムで行い、真空槽内部の真空度が常に1×10-3Paと
なるように、真空計と連動させて電磁弁を制御し導入酸
素量を調整した。作製したサンプルの反射防止膜の分光
反射特性を測定した。測定結果を図2に示す。なお、λ
0:550nm、入射角:0°である。また作製したサ
ンプルの物性を下記試験方法で評価した。評価結果を表
4に示す。なお、この物性試験はサンプルを20枚作製
して各サンプルについて評価したものである。
【0022】(耐久性試験)作製したサンプルを温度7
0℃、湿度80%に設定された恒温槽に500時間放置
した後、反射防止膜の外観を目視で観察し、試験前後で
の状態変化を調べた。
【0023】(密着性試験)反射防止膜の表面にテープ
(「Lパック」ニチバン社製)を指の腹でしっかりと貼
り付けた後、膜面に対して垂直方向にテープを瞬時に引
き剥がし、膜が剥離していないかどうかを目視で調べ
た。
【0024】(耐熱性試験)作製したサンプルを温度8
5℃のオーブンの中に250時間放置した後、反射防止
膜の外観を目視で観察し、試験前後での状態変化を調べ
た。
【0025】(表面硬度試験)溶剤を付けたさらし布に
約5Nの加重をかけて反射防止膜上を20往復こすった
後、反射防止膜の外観を目視で観察し、試験前後での状
態変化を調べた。
【0026】
【表1】
【0027】実施例2 蒸着材料として表2に示したものを使用した以外、実施
例1と同様にしてサンプルを作製した。形成した反射防
止膜の概略構成図を図3に示す。作製したサンプルの反
射防止膜の分光反射特性を図4に示す。また、作製した
サンプルの物性を実施例1と同様の試験方法で評価し
た。評価結果を表4に示す。
【0028】
【表2】
【0029】実施例3 蒸着材料として表3に示したものを使用した以外、実施
例1と同様にしてサンプルを作製した。形成した反射防
止膜の概略構成図を図5に示す。作製したサンプルの反
射防止膜の分光反射特性を図6に示す。また、作製した
サンプルの物性を実施例1と同様の試験方法で評価し
た。評価結果を表4に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】比較例1 蒸着材料として表5に示したものを使用した以外、実施
例1と同様にしてサンプルを作製した。形成した反射防
止膜の概略構成図を図7に示す。作製したサンプルの反
射防止膜の分光反射特性を図8に示す。
【0033】
【表5】
【0034】比較例2 蒸着材料として表6に示したものを使用した以外、実施
例1と同様にしてサンプルを作製した。形成した反射防
止膜の概略構成図を図9に示す。作製したサンプルの反
射防止膜の分光反射特性を図10に示す。
【0035】
【表6】
【0036】比較例3 蒸着材料として表7に示したものを使用した以外、実施
例1と同様にしてサンプルを作製した。形成した反射防
止膜の概略構成図を図11に示す。作製したサンプルの
反射防止膜の分光反射特性を図12に示す。
【0037】
【表7】
【0038】
【表8】
【0039】表4から明らかなように、実施例1〜3の
反射防止膜では耐久性、密着性、耐熱性、表面硬度のい
ずれの特性についても優れた結果が得られた。
【0040】また実施例1〜3と比較例1〜3の反射防
止膜はそれぞれ対応しており、その層構成の違いは、最
外層の次の層としてMgF2の層があるかないかの違い
である。波長450〜650nmの範囲でのそれぞれの
反射防止膜の平均反射率を示した表8をみると、最外層
にSiO2層、その次の層にMgF2層を形成した実施例
1〜3の反射防止膜の平均反射率は、MgF2層を形成
しなかった比較例1〜3のそれに比べ半分以下と格段に
低い値であった。
【0041】
【発明の効果】本発明の反射防止膜では、最外層をSi
X層とし、その次の層をフッ化物層としたので、反射
防止性能に優れると同時に、密着性、表面硬度、耐湿度
性にも優れる。またフッ化物の中でもMgF2を用いる
と物質の取り扱いが容易となり、作業がしやすくなる。
また、SiOX層の層厚を20〜60nmの範囲とする
と、表面硬度および耐湿度性の一層の向上が図れる。
【0042】また本発明のプラスチック光学部品では、
前記の反射防止膜をプラスチック基体上に形成したの
で、反射防止性能が優れると同時に、表面硬度、耐湿度
性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の反射防止膜の概略構成図である。
【図2】 実施例1の反射防止膜の分光反射特性図であ
る。
【図3】 実施例2の反射防止膜の概略構成図である。
【図4】 実施例2の反射防止膜の分光反射特性図であ
る。
【図5】 実施例3の反射防止膜の概略構成図である。
【図6】 実施例3の反射防止膜の分光反射特性図であ
る。
【図7】 比較例1の反射防止膜の概略構成図である。
【図8】 比較例1の反射防止膜の分光反射特性図であ
る。
【図9】 比較例2の反射防止膜の概略構成図である。
【図10】 比較例2の反射防止膜の分光反射特性図で
ある。
【図11】 比較例3の反射防止膜の概略構成図であ
る。
【図12】 比較例3の反射防止膜の分光反射特性図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2K009 AA02 AA07 AA08 AA09 BB13 BB14 BB24 CC03 CC06 DD03 DD04 DD07 4F100 AA05C AA06C AA20B AA25 AA27 AA34 AK01A AT00A BA03 BA07 BA10B EH66 GB41 JB07 JK12 JN06 4K029 AA11 BA42 BA46 BB02 BC07 BD00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチック基体に形成する反射防止膜
    であって、最外層をSiO2又はSiOを主成分とする
    層とし、その次の層をMgF2、Na3AlF6、Na5
    314、AlF3、BaF2、CaF2及びSrF2から
    なる群から選ばれた1つのフッ化物を主成分とする層と
    することを特徴とする反射防止膜。
  2. 【請求項2】 前記フッ化物がMgF2である請求項1
    記載の反射防止膜。
  3. 【請求項3】 SiO2又はSiOを主成分とする前記
    最外層の層厚が20〜60nmの範囲である請求項1又
    は2記載の反射防止膜。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の反射防
    止膜をプラスチック基体上に形成したことを特徴とする
    プラスチック光学部品。
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