JP2002191188A - 位置センサレスモータ制御方法及び制御装置 - Google Patents

位置センサレスモータ制御方法及び制御装置

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JP2002191188A JP2001306752A JP2001306752A JP2002191188A JP 2002191188 A JP2002191188 A JP 2002191188A JP 2001306752 A JP2001306752 A JP 2001306752A JP 2001306752 A JP2001306752 A JP 2001306752A JP 2002191188 A JP2002191188 A JP 2002191188A
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Tomokuni Iijima
友邦 飯島
Kazunari Narasaki
和成 楢崎
Toru Tazawa
徹 田澤
Ichiro Oyama
一朗 大山
Yukinori Maruyama
幸紀 丸山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特にロータの静止時及び低速回転時でのモー
タの駆動制御で、騒音を従来より低減し、かつ、制御の
遅れなしにロータ角度推定用信号に対する応答電流の検
出のSN比を従来より大きくできる、位置センサレスモ
ータ制御方法及び制御装置を提供する。 【解決手段】 ステータ巻線の目標電流を表す目標電流
ベクトルのγ軸方向成分にロータ角度推定用電流信号を
重畳する。ロータ角度推定用電流信号の周期はPWMの
キャリア周期の偶数倍でかつランダムに変化し、振幅は
目標電流の振幅と共に増減する。検出されたステータ巻
線の電流を表す電流ベクトルのδ軸方向成分から一周期
当たり偶数個のサンプルを求め、それらに対する離散フ
ーリエ積分により、ロータ角度推定用電流信号に対する
応答電流のδ軸方向での振幅を求める。応答電流がδ軸
方向で実質的に0になるようにγ軸方向を補正する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、位置センサなしで
ロータの角度を検知してモータの駆動を制御する位置セ
ンサレスモータ制御方法及び制御装置に関する。特に、
ロータの停止時又は低速回転時、モータの駆動を制御す
るものに関する。
【0002】
【従来の技術】ブラシレスモータはブラシのような機械
的な転流機構を持たない。その代わり、電気的に転流を
行うための電気回路を持つ。その電気回路はステータ巻
線を流れる電流を、ロータの回転周期に同期して制御す
る。
【0003】ブラシレスモータのロータは永久磁石を含
み、それにより少なくとも二つの磁極を有する。ロータ
の磁極の中心軸方向(d軸方向)とステータに固定され
た基準方向(α軸方向)との間のロータの中心軸周りの
角度をロータの角度という。
【0004】電気的な転流ではロータの角度を検知する
必要がある。ブラシレスモータに対する従来のモータ制
御装置は、ホール素子、レゾルバ、磁気エンコーダ又は
光エンコーダ等の位置センサを通して、ロータの角度に
ついての情報を得ていた。しかし、位置センサを有する
ので、従来のブラシレスモータのコストは高く、モータ
のサイズが大きい。
【0005】特開平10−323099号公報に開示された位置
センサレスモータ制御装置(以下、従来例という)は、
ロータの角度を上記の位置センサなしで検知する。それ
により、ブラシレスモータのコストが低く、かつ、サイ
ズが小さい。
【0006】従来例では、特にロータの停止時又は低速
回転時、次のように、位置センサなしでロータの角度を
検知してモータの駆動を制御する: (1)ロータの角度を推定し、推定された角度(以下、ロ
ータの推定角度という)に基づいてロータのd軸方向及
びq軸方向を推定する(以下、それぞれγ軸方向及びδ
軸方向という)。ここで、q軸方向とは、d軸方向から
ロータの回転方向に電気角で90°進んだ方向をいう。
【0007】(2)ステータ巻線の目標電流ベクトル又は
目標電圧ベクトルのγ軸方向成分に所定のロータ角度推
定用の電流信号又は電圧信号(以下、ロータ角度推定用
電流信号又はロータ角度推定用電圧信号という)を重畳
する。ここで、ステータ巻線の目標電流ベクトルとは、
ステータ巻線を流れる電流の制御での目標電流を表すベ
クトルをいう。ステータ巻線の目標電圧ベクトルとは、
ステータ巻線に印加される電圧の制御での目標電圧を表
すベクトルをいう。本発明では、重畳波付目標電流ベク
トルは、ロータ角度推定用電流信号を重畳された目標電
流を表すベクトルである。重畳波付目標電圧ベクトル
は、ロータ角度推定用電圧信号を重畳された目標電圧を
表すベクトルである。
【0008】(3)重畳波付目標電流ベクトルを対応する
ステータ巻線の目標電圧ベクトルへ変換する。モータ駆
動装置はその目標電圧ベクトル又は重畳波付目標電圧ベ
クトルに基づいて、ステータ巻線へ電力を供給する。特
に、ステータ巻線の電流に対するパルス幅変調(PWM)
制御では、モータ駆動装置はステータ巻線の目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルで表される目標電
圧をPWMで変調し、ステータ巻線へ印加する。
【0009】モータ駆動装置によるステータ巻線への電
力供給を通して、ロータ角度推定用電流信号又はロータ
角度推定用電圧信号に対応する電力がステータ巻線に印
加される。ここで、ロータ角度推定用電流信号又はロー
タ角度推定用電圧信号は例えば交流信号であり、PWM
のキャリア周期の整数倍と等しい一定の周期と一定の振
幅とを有する。以下、ロータ角度推定用電流信号及びロ
ータ角度推定用電圧信号を区別しなくても良い時、両信
号をロータ角度推定用信号と総称する。上記のPWM制
御ではロータ角度推定用信号に対応する一定の交流電力
がステータ巻線に印加される。その時、その交流電力に
対する応答電流がステータ巻線に生じる。
【0010】(4)δ軸方向での上記の応答電流を所定の
位相で検知する。例えば、応答電流のサンプリングはロ
ータ角度推定用信号のピークごとに、すなわち、ロータ
角度推定用信号の半周期ごとに行われる。 (5)検知された応答電流がδ軸方向で0に近づくよう
に、ロータの推定角度を補正する。 以上の(1)から(5)までの操作が、モータの駆動制御の間
繰り返される。
【0011】γ軸方向のd軸方向からのずれ(δ軸方向
のq軸方向からのずれでもあり、以下、角度推定誤差と
いう)をΔθとおく。上記の応答電流の振幅はδ軸方向
で実質上sin(2Δθ)に比例する。 従って、δ軸方向で
の応答電流が所定の誤差の範囲内で0に収束する時、ロ
ータの推定角度と実際の角度とが所定の誤差の範囲内で
実質的に等しい。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来の位置センサレス
モータ制御では、ロータ角度推定用信号の周波数が一定
であった。特に、その一定の周波数値は数十〜数百Hz程
度、すなわち、可聴周波数帯域に属した。その結果、ス
テータの歯等がロータ角度推定用信号と同期して振動
し、騒音を発生した。その騒音は、特にロータ角度推定
用信号の周波数の近傍で大きい。
【0013】従来の位置センサレスモータ制御では、ロ
ータ角度推定用信号の振幅が一定であった。従って、ロ
ータ角度推定用信号に対する応答電流の振幅が実質的に
一定であった。一方、ステータ巻線に流れる電流の振幅
が大きいほど、δ軸方向に現れる電気的ノイズ(以下、
単にノイズという)は一般に大きいので、ノイズに対す
る応答電流の振幅の比(SN比)が小さかった。SN比
が小さい時、ノイズと応答電流とが識別されにくいの
で、角度推定誤差が大きかった。
【0014】従来の位置センサレスモータ制御では更
に、応答電流に対するサンプリングがロータ角度推定用
信号の半周期ごとに行われるので、そのサンプル数が少
なかった。従って、応答電流のサンプルの一つ一つにお
けるSN比が小さい時、角度推定誤差が更に大きかっ
た。
【0015】角度推定誤差を小さく抑えるには、応答電
流のSN比を大きくしなければならなかった。それに
は、ロータ角度推定用信号の振幅を大きくし、又は、ノ
イズを低減すれば良い。しかし、上記の騒音が更に大き
くなるので、ロータ角度推定用信号の振幅を大きくする
ことは困難であった。
【0016】一方、応答電流に含まれるノイズを低減す
る目的で、LPFにより応答電流を十分に減衰する。又
は、角度推定誤差から推定角度の補正量を求めるときの
ゲインを低減する。その時、ロータの角度の推定に遅れ
が生じ、モータの駆動制御の応答速度が減少した。こう
して、従来の位置センサレスモータ制御はノイズの低減
と共に制御能力を低下させた。すなわち、ノイズに弱か
った。
【0017】本発明の目的は、特にロータの静止時及び
低速回転時、騒音を低減しかつ制御の遅れなしにロータ
角度推定用信号に対する応答電流の検出のSN比を大き
くでき、いわゆるノイズに強い位置センサレスモータ制
御方法及び制御装置の提供にある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の一つの観点によ
る位置センサレスモータ制御方法は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するステ
ップ; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号を、その周期を変化させて設定するステップ; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するステップ; (D) (a) ロータの推定角度方向(以下、γ軸方向とい
う)に基づく第一の方向での目標電流ベクトルの成分に
ロータ角度推定用電流信号を重畳して重畳波付目標電流
ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクトルに対応
する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分にロータ角
度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトル
を求めるステップ; (E) 重畳波付目標電流ベクトル又は重畳波付目標電圧
ベクトルに基づいて、モータ駆動装置によりステータ巻
線へ電力を供給するステップ; (F) 検出ステップで検出された電流を表す電流ベクト
ルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方向での成
分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定
用電圧信号に対する応答電流を求めるステップ;及び、 (G) 応答電流に基づいてγ軸方向を補正するステッ
プ;を有する。
【0019】以下、ロータ角度推定用電流信号又はロー
タ角度推定用電圧信号のそれぞれを特に区別しなくても
良い時、両信号をロータ角度推定用信号と総称する。
【0020】上記の位置センサレスモータ制御方法(以
下、センサレス制御方法という)では、ロータ角度推定
用信号の周期が一定ではなく、変化する。従って、ロー
タ角度推定用信号と同期したステータの歯等の振動、及
び、その振動により発生する音が一定の周波数を持たな
い。それ故、振動及び音が周波数の変化により増幅され
ないので、大きな騒音が発生しない。こうして、センサ
レス制御はロータ角度推定用信号の重畳によって生じる
騒音を低減する。更に、大きな騒音なしに、ロータ角度
推定用信号の振幅を従来より増大できる。
【0021】上記のセンサレス制御方法において、ロー
タ角度推定用信号の周期をランダムに変化させても良
い。その時、ロータ角度推定用信号の周期が変化前後で
相関を持たないので、上記の騒音を更に低減できる。
【0022】上記のセンサレス制御方法において、ロー
タ角度推定用信号の周期を所定のテーブルに基づいて変
化させても良い。ロータ角度推定用信号の周期の変化順
にテーブルの値を設定する場合、それぞれの値をランダ
ムに選択しても、変化前後の差が一定の大きさ以上にな
るように選択しても良い。その他に、テーブルを乱数表
又は所定のパラメータのリストとし、そのテーブルの値
を用いた簡単な演算により周期がランダムに又は一定の
大きさ以上の差で変化しても良い。上記のいずれのよう
にテーブルの値を設定しても、ロータ角度推定用信号の
周期は、上記の騒音を低減するように変化する。
【0023】しかも、ロータ角度推定用信号の周期の決
定はテーブルの参照により複雑な演算を要しないので、
演算時間を短縮できる。その結果、制御回路に含まれる
CPU等の負担を軽くできる。
【0024】本発明の別の観点による位置センサレスモ
ータ制御方法は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するステ
ップ; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号を、その振幅を変化させて設定するステップ; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するステップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又は、(b)
目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクトルの第一の
方向での成分にロータ角度推定用電圧信号を重畳して重
畳波付目標電圧ベクトルを求めるステップ; (E) 重畳波付目標電流ベクトル又は重畳波付目標電圧
ベクトルに基づいて、モータ駆動装置によりステータ巻
線へ電力を供給するステップ; (F) 検出ステップで検出された電流を表す電流ベクト
ルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方向での成
分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定
用電圧信号に対する応答電流を求めるステップ;及び、 (G) 応答電流に基づいてγ軸方向を補正するステッ
プ;を有する。
【0025】上記のセンサレス制御方法では、ロータ角
度推定用信号の振幅を変化させる。その時、その振幅の
変化が特に、ステータ巻線を流れる電流の振幅の変化に
対応しても良い。それにより、ステータ巻線の電流に含
まれるノイズの大きさに合わせてロータ角度推定用信号
の振幅を抑え、応答電流の検出のSN比を損なわない程
度に調節できる。従って、ロータ角度推定用信号に対す
る応答電流の振幅がステータ巻線の電流に比べて過大に
ならない。その結果、ロータ角度推定用信号の重畳によ
って生じる騒音を従来より低減できる。
【0026】上記のセンサレス制御方法では、ステータ
巻線の電流の振幅が大きい時、ロータ角度推定用信号の
振幅が大きいようにしても良い。その理由は次の通りで
ある: ステータ巻線の電流の振幅が大きいほど、応答
電流に含まれるノイズは一般に大きい。従って、ステー
タ巻線の電流の振幅が大きい時に、ロータ角度推定用信
号の振幅を増大させる。それにより、ロータ角度推定用
信号に対する応答電流の振幅がステータ巻線の電流に比
べて過大にならない。その結果、モータの駆動制御全体
では、ロータ角度推定用信号の重畳によって発生する騒
音を従来より低減できる。それと共に、応答電流の検出
のSN比を十分に大きく維持できる。
【0027】上記のセンサレス制御方法では、ステータ
巻線の電流の振幅の増大が、検出されたステータ巻線の
電流又は目標電流の値のいずれによって判断されても良
い。
【0028】本発明の更に別の観点による位置センサレ
スモータ制御方法は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するステ
ップ; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
ロータ角度推定用電圧信号を設定するステップ; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するステップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又は、(b)
目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクトルの第一の
方向での成分にロータ角度推定用電圧信号を重畳して重
畳波付目標電圧ベクトルを求めるステップ; (E) 重畳波付目標電流ベクトル又は重畳波付目標電圧
ベクトルに従って、モータ駆動装置によりステータ巻線
へ電力を供給するステップ; (F) 検出ステップで検出された電流を表す電流ベクト
ルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方向での成
分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定
用電圧信号に対する応答電流を、ロータ角度推定用電流
信号又はロータ角度推定用電圧信号の一周期当たり少な
くとも三回サンプリングして求めるステップ;及び、 (G) 応答電流に基づいてγ軸方向を補正するステッ
プ;を有する。
【0029】上記のセンサレス制御方法では、ロータ角
度推定用信号の半周期ごとに応答電流をサンプリングし
ていた従来の方法に比べて、応答電流のサンプル数が多
い。従って、応答電流の検出において従来よりSN比を
増大できる。
【0030】応答電流のサンプリングが、ロータ角度推
定用信号の半周期当たり複数回行われても良い。その
時、応答電流のサンプルがより多く得られる。それに加
えて、特にロータ角度推定用信号の波形が周期の前半と
後半との中間点について対称な時、応答電流のサンプリ
ングの位置を応答電流の周期の前半と後半との中間点に
ついて対称にできる。その対称性を利用して、互いに対
応する応答電流のサンプル同士で、例えば平均等によ
り、それらに含まれるノイズを相殺できる。その結果、
応答電流の検出のSN比を増大できる。
【0031】本発明の他の観点による位置センサレスモ
ータ制御方法は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するステ
ップ; (B) (a) 周期がPWMのキャリア周期の偶数倍であ
り、(b) 波形が周期の前半と後半との中間点について
対称であるロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推
定用電圧信号を設定するステップ; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するステップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又は、(b)
目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクトルの第一の
方向での成分にロータ角度推定用電圧信号を重畳して重
畳波付目標電圧ベクトルを求めるステップ; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルで表される電圧を
PWMにより変調し、変調された電圧をモータ駆動装置
によりステータ巻線へ印加するステップ; (F) 検出ステップで検出された電流を表す電流ベクト
ルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方向での成
分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定
用電圧信号に対する応答電流を、ロータ角度推定用電流
信号又はロータ角度推定用電圧信号の対称な波形に基づ
いて求めるステップ;及び、 (G) 応答電流に基づいてγ軸方向を補正するステッ
プ;を有する。
【0032】モータ駆動装置がPWM制御を行う場合、
ステータ巻線を流れる電流の波形は理想的に滑らかな波
形に比べ、一般にPWMのキャリア周期と実質的に同じ
周期で歪む。同様に、ロータ角度推定用信号に対する応
答電流の波形も、PWMのキャリア周期と実質的に同じ
周期で歪む。
【0033】上記のセンサレス制御方法では、ロータ角
度推定用信号の周期がPWMのキャリア周期の偶数倍で
あり、波形が周期の前半と後半との中間点について対称
である。従って、ロータ角度推定用信号の波形が一周期
の前半と後半との中間点について実質上対称に歪む。そ
れ故、応答電流の波形が、PWMによって生じる歪みも
含めて、同様な対称性を有する。その対称性を利用し
て、上記の歪みによる応答電流の検出誤差を低減でき
る。
【0034】例えば、応答電流に対して、その周期の前
半と後半との中間点について対称にサンプリングを行
う。具体的には、サンプリング周波数が一定の場合、ロ
ータ角度推定用信号の周波数をサンプリング周波数の偶
数倍に設定し、かつ、サンプリングの位置をロータ角度
推定用信号の一周期の中間点について対称にする。その
時、互いに対称なサンプリングの位置でのサンプル同士
で、例えばそれらの平均を求める等により、それらのサ
ンプルに含まれるノイズを相殺できる。
【0035】モータ駆動装置によるPWM制御は、本発
明の既に述べた観点によるセンサレス制御方法において
次のようにすれば可能である: (A) (a) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推
定用電圧信号の周期をパルス幅変調(PWM)のキャリア
周期の偶数倍に設定し、(b) ロータ角度推定用電流信
号又はロータ角度推定用電圧信号の波形を周期の前半と
後半との中間点について対称に設定し; (B) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルで表される電圧を
PWMにより変調し、変調された電圧をモータ駆動装置
によりステータ巻線へ印加し; (C) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号の対称な波形に基づいて応答電流を求める。 こうして、モータ駆動装置がPWM制御を行う場合で
も、本発明の既に述べた観点によるセンサレス制御方法
を適用できる。
【0036】本発明の更に他の観点によるセンサレス制
御方法は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するステ
ップ; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
ロータ角度推定用電圧信号を設定するステップ; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するステップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又は、(b)
目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクトルの第一の
方向での成分にロータ角度推定用電圧信号を重畳して重
畳波付目標電圧ベクトルを求めるステップ; (E) 重畳波付目標電流ベクトル又は重畳波付目標電圧
ベクトルに基づいて、モータ駆動装置によりステータ巻
線へ電力を供給するステップ; (F) (a) 検出ステップで検出された電流を表す電流ベ
クトルの、第一の方向と電気角で直交する第二の方向で
の成分に、(1) ロータ角度推定用電流信号又はロータ
角度推定用電圧信号と実質的に同じ周期と、(2) ロー
タ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用電圧信号か
ら実質的に90°(電気角)ずれた位相と、を持つ信号を乗
じ、(b) その乗算結果からロータ角度推定用電流信号
又はロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を求め
るステップ;及び、 (G) 応答電流に基づいてγ軸方向を補正するステッ
プ;を有する。
【0037】第二の方向、すなわち、ロータ角度推定用
信号を重畳した方向と電気角で直交する方向では、応答
電流がロータ角度推定用信号と同じ周期とそれより90°
ずれた位相とを持つ。従って、ステータ巻線を流れる電
流を検出し、検出された電流を表す電流ベクトルの第二
の方向での成分に上記の信号を乗じ、その乗算結果から
応答電流を求めることができる。
【0038】例えば、ロータ角度推定用信号が正弦波の
場合、上記の乗算結果をロータ角度推定用信号の一周期
の範囲で積分する。ステータ巻線を流れる電流として検
出された電流をベクトル表示した時、その電流ベクトル
の第二の方向での成分に含まれるフーリエ係数の内、ロ
ータ角度推定用信号の周期に対応するものが上記の積分
により求まる。そのフーリエ係数は応答電流の振幅に実
質的に等しい。更に、検出されたステータ巻線の電流に
含まれるノイズが上記の積分によって抑えられるので、
応答電流の振幅の誤差が従来より低減する。
【0039】本発明の上記の観点とは異なる観点による
センサレス制御方法は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するステ
ップ; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号を設定するステップ; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するステップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又は、(b)
目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクトルの第一の
方向での成分にロータ角度推定用電圧信号を重畳して重
畳波付目標電圧ベクトルを求めるステップ; (E) 重畳波付目標電流ベクトル又は重畳波付目標電圧
ベクトルに基づいて、モータ駆動装置によりステータ巻
線へ電力を供給するステップ; (F) 検出された電流を表す電流ベクトルの、第一の方
向と一定の関係にある第二の方向での成分から、ロータ
角度推定用電流信号又はロータ角度推定用電圧信号に対
する応答電流を求めるステップ; (G) 応答電流の値をリミットするステップ;及び、 (H) リミットするステップでリミットされた値を持つ
応答電流に基づいてγ軸方向を補正するステップ; を有する。
【0040】応答電流は、ノイズの影響で突発的に大き
くなり得る。その時、リミッタが応答電流の大きさをリ
ミットするので、モータの駆動制御を狂わせる程極端に
大きな応答電流の検出を回避できる。応答電流が大きい
ほどその検出誤差も大きい。従って、応答電流がある程
度大きい時、検出値に基づいたロータの推定角度の補正
をせず、ロータの推定角度を一定値に置き換える。それ
により、結果的に推定誤差を低減できる。
【0041】上記の本発明によるセンサレス制御方法に
おいて好ましくは、(a) 第一の方向をγ軸方向又はγ
軸方向に対して実質的に90°(電気角)の方向とし、(b)
第二の方向を第一の方向に対して実質的に90°(電気
角)の方向とし、(c) 第二の方向での応答電流(ε)が実
質的に0に収束するようにγ軸方向を補正する。例え
ば、ロータ角度推定用電流信号を目標電流ベクトルのγ
軸方向成分に重畳し、又は、ロータ角度推定用電圧信号
を目標電圧ベクトルのγ軸方向成分に重畳した時、検出
されたステータ巻線の電流を表す電流ベクトルのδ軸方
向成分に含まれる応答電流の振幅は実質上sin(2Δθ)に
比例する。ここで、Δθはロータのd軸方向の角度推定
誤差、すなわち、γ軸方向のd軸方向からのずれであ
る。従って、δ軸方向で応答電流の振幅を0にするよう
に制御すれば、γ軸方向をd軸方向に一致させるように
制御できる。
【0042】本発明の一つの観点による位置センサレス
モータ制御装置は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するため
のモータ制御部; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号を、その周期を変化させて設定するための重畳
波作成部; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するための電流
検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に対応する
目標電圧ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクト
ルに対応する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分に
ロータ角度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧
ベクトルを求める、ための電流制御部; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルに基づいて、ステ
ータ巻線へ電力を供給するためのモータ駆動装置;及
び、 (F) (a) 電流検出器によって検出された電流を表す電
流ベクトルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方
向での成分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ
角度推定用電圧信号に対する応答電流を求め、(b) 応
答電流に基づいてγ軸方向を補正する、ためのロータ角
度推定部;を有する。
【0043】上記の位置センサレスモータ制御装置(以
下、センサレス制御装置という)では、ロータ角度推定
用信号の周期が一定ではなく、変化する。従って、ロー
タ角度推定用信号と同期したステータの歯等の振動、及
び、その振動により発生する音が一定の周波数を持たな
い。それ故、振動及び音が周期の変化により増幅されな
いので、大きな騒音が発生しない。こうして、ロータ角
度推定用信号の重畳によって生じる騒音が低減する。更
に、大きな騒音なしに、ロータ角度推定用信号の振幅を
従来より増大できる。
【0044】上記のセンサレス制御装置では、重畳波作
成部がロータ角度推定用信号の周期をランダムに変化さ
せても良い。その時、ロータ角度推定用信号の周期が変
化前後で相関を持たないので、上記の騒音を更に低減で
きる。
【0045】上記のセンサレス制御装置では、所定のテ
ーブルを記憶した記憶部を重畳波作成部が含み、ロータ
角度推定用信号の周期をそのテーブルに基づいて変化さ
せても良い。ロータ角度推定用信号の周期の変化順にテ
ーブルの値を設定する時、それぞれの値をランダムに選
択しても、変化前後の差が一定の大きさ以上になるよう
に選択しても良い。その他に、テーブルを乱数表又は所
定のパラメータのリストとし、そのテーブルの値を用い
た簡単な演算により周期がランダムに又は一定の大きさ
以上の差で変化しても良い。上記のいずれのようにテー
ブルの値を設定しても、ロータ角度推定用信号の周期は
上記の騒音を低減するように変化する。
【0046】しかも、ロータ角度推定用信号の周期の決
定はテーブルの参照により複雑な演算を要しないので、
演算時間を短縮できる。その結果、制御回路に含まれる
CPU等の負担を軽くできる。
【0047】本発明の別の観点によるセンサレス制御装
置は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するため
のモータ制御部; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号を、その振幅を変化させて設定するための重畳
波作成部; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するための電流
検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に対応する
目標電圧ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクト
ルに対応する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分に
ロータ角度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧
ベクトルを求める、ための電流制御部; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルに基づいて、ステ
ータ巻線へ電力を供給するためのモータ駆動装置;及
び、 (F) (a) 電流検出器によって検出された電流を表す電
流ベクトルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方
向での成分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ
角度推定用電圧信号に対する応答電流を求め、(b) 応
答電流に基づいてγ軸方向を補正する、ためのロータ角
度推定部; を有する。
【0048】上記のセンサレス制御装置では、ロータ角
度推定用信号の振幅を変化させる。特に、その振幅の変
化が、ステータ巻線を流れる電流の振幅の変化に対応し
ても良い。それにより、ステータ巻線の電流に含まれる
ノイズの大きさに合わせてロータ角度推定用信号の振幅
を抑え、応答電流の検出のSN比を損なわない程度に調
節できる。その結果、ロータ角度推定用信号に対する応
答電流の振幅がステータ巻線の電流に比べて過大になら
ないので、ロータ角度推定用信号の重畳によって生じる
騒音を従来より低減できる。
【0049】上記のセンサレス制御装置において、重畳
波作成部がステータ巻線の電流の振幅の増大に従って、
ロータ角度推定用信号の振幅を増大しても良い。その理
由は次の通りである: ステータ巻線の電流の振幅が大
きいほど、応答電流に含まれるノイズは一般に大きい。
従って、ステータ巻線の電流の振幅が大きい時、ロータ
角度推定用信号の振幅を増大させる。その結果、モータ
の駆動制御全体では、ロータ角度推定用信号の重畳によ
って発生する騒音を従来より低減できる。それと共に、
応答電流の検出のSN比を十分に大きく維持できる。
【0050】上記のセンサレス制御装置では、ステータ
巻線の電流の振幅の増大が、検出されたステータ巻線の
電流又は目標電流の値のいずれによって判断されても良
い。
【0051】本発明の更に別の観点によるセンサレス制
御装置は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するため
のモータ制御部; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
ロータ角度推定用電圧信号を設定するための重畳波作成
部; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するための電流
検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に対応する
目標電圧ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクト
ルに対応する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分に
ロータ角度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧
ベクトルを求める、ための電流制御部; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルに基づいて、ステ
ータ巻線へ電力を供給するためのモータ駆動装置;及
び、 (F) (a) 電流検出器によって検出された電流を表す電
流ベクトルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方
向での成分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ
角度推定用電圧信号に対する応答電流を、ロータ角度推
定用電流信号又はロータ角度推定用電圧信号の一周期当
たり少なくとも三回サンプリングして求め、(b) 応答
電流に基づいてγ軸方向を補正する、ためのロータ角度
推定部; を有する。
【0052】上記のセンサレス制御装置では、ロータ角
度推定用信号の半周期ごとに応答電流をサンプリングし
ていた従来の装置に比べて、応答電流のサンプル数が多
い。従って、応答電流の検出において従来よりSN比を
増大できる。
【0053】ロータ角度推定部が応答電流のサンプリン
グを、ロータ角度推定用信号の半周期当たり複数回行っ
ても良い。その時、応答電流のサンプル数が、より多く
得られる。それに加えて、特にロータ角度推定用信号の
波形が周期の前半と後半との中間点について対称な場
合、応答電流のサンプリングの位置を応答電流の周期の
前半と後半との中間点について対称にできる。その対称
性を利用して、互いに対応する応答電流のサンプル同士
で、例えば平均等により、それらに含まれるノイズを相
殺できる。その結果、応答電流の検出のSN比を増大で
きる。
【0054】本発明の他の観点によるセンサレス制御装
置は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するため
のモータ制御部; (B) 周期がPWMのキャリア周期の偶数倍であり、波
形が周期の前半と後半との中間点について対称であるロ
ータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用電圧信号
を設定するための重畳波作成部; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するための電流
検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に対応する
目標電圧ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクト
ルに対応する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分に
ロータ角度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧
ベクトルを求める、ための電流制御部; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルで表される電圧を
PWMにより変調し、変調された電圧をステータ巻線へ
印加するためのモータ駆動装置;及び、 (F) (a) 電流検出器によって検出された電流を表す電
流ベクトルの、第一の方向と一定の関係にある第二の方
向での成分から、ロータ角度推定用電流信号又はロータ
角度推定用電圧信号に対する応答電流を、ロータ角度推
定用電流信号又はロータ角度推定用電圧信号の対称な波
形に基づいて求め、(b) 応答電流に基づいてγ軸方向
を補正する、ためのロータ角度推定部; を有する。
【0055】モータ駆動装置がPWM制御を行う場合、
ステータ巻線を流れる電流の波形は理想的に滑らかな波
形に比べ、一般にPWMのキャリア周期と実質的に同じ
周期で歪む。同様に、ロータ角度推定用信号に対する応
答電流の波形も、PWMのキャリア周期と実質的に同じ
周期で歪む。
【0056】上記のセンサレス制御装置では重畳波作成
部がロータ角度推定用信号の周期をPWMのキャリア周
期の偶数倍に、波形を周期の前半と後半との中間点につ
いて対称に、それぞれ設定する。従って、ロータ角度推
定用信号の波形が、周期の前半と後半との中間点につい
て実質上対称に歪む。それ故、応答電流の波形がPWM
による歪みを含めて、同様な対称性を有する。その対称
性を利用して、ロータ角度推定部は上記の歪みによる応
答電流の検出誤差を低減できる。例えば、応答電流に対
して、その周期の前半と後半との中間点について対称に
サンプリングを行う。具体的には、サンプリング周波数
が一定の場合、ロータ角度推定用信号の周波数をサンプ
リング周波数の偶数倍に設定し、かつ、サンプリングの
位置をロータ角度推定用信号の一周期の中間点について
対称にする。その時、互いに対称なサンプリングの位置
でのサンプル同士で、例えばそれらの平均を求める等に
より、それらに含まれるノイズを相殺できる。
【0057】モータ駆動装置によるPWM制御は、本発
明の既に述べた観点によるセンサレス制御装置において
次のようにすれば可能である: (A) 重畳波作成部が、(a) ロータ角度推定用電流信号
又はロータ角度推定用電圧信号の周期をPWMのキャリ
ア周期の偶数倍に設定し、(b) その波形を周期の前半
と後半との中間点について対称に設定し; (B) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルで表される電圧を
モータ駆動装置がPWMにより変調し、変調された電圧
をステータ巻線へ印加し; (C) ロータ角度推定部がロータ角度推定用電流信号又
はロータ角度推定用電圧信号の対称な波形に基づいて応
答電流を求める。こうして、本発明の既に述べた観点に
よるセンサレス制御装置においても、モータ駆動装置が
PWM制御を行い得る。
【0058】本発明の更に他の観点によるセンサレス制
御装置は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するため
のモータ制御部; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
ロータ角度推定用電圧信号を設定するための重畳波作成
部; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するための電流
検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に対応する
目標電圧ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクト
ルに対応する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分に
ロータ角度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧
ベクトルを求める、ための電流制御部; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルに基づいて、ステ
ータ巻線へ電力を供給するためのモータ駆動装置;及
び、 (F) (a) 電流検出器によって検出された電流を表す電
流ベクトルの、第一の方向と電気角で直交する第二の方
向での成分に、(1) ロータ角度推定用電流信号又はロ
ータ角度推定用電圧信号と同じ周期と、(2) ロータ角
度推定用電流信号又はロータ角度推定用電圧信号から実
質的に90°(電気角)ずれた位相と、を持つ信号を乗じ、
(b) その乗算結果からロータ角度推定用電流信号又は
ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を求め、
(c) 応答電流に基づいてγ軸方向を補正する、ための
ロータ角度推定部; を有する。
【0059】第二の方向、すなわち、ロータ角度推定用
信号を重畳した方向と電気角で直交する方向では、応答
電流はロータ角度推定用信号と同じ周期とそれより90°
遅れた位相とを持つ。従って、ステータ巻線を流れる電
流を検出し、検出された電流を表す電流ベクトルの第二
の方向での成分に上記の信号を乗じ、その乗算結果から
応答電流を求めることができる。
【0060】例えば、ロータ角度推定用信号が正弦波の
場合、上記の乗算結果をロータ角度推定用信号の一周期
の範囲で積分する。ステータ巻線を流れる電流として検
出された電流をベクトル表示した時、その電流ベクトル
の第二の方向での成分に含まれるフーリエ係数の内、ロ
ータ角度推定用信号の周期に対応するものが上記の積分
により求まる。そのフーリエ係数は応答電流の振幅に実
質的に等しい。更に、検出されたステータ巻線の電流に
含まれるノイズが上記の積分によって抑えられるので、
応答電流の振幅の誤差が従来より低減する。
【0061】本発明の別な観点によるセンサレス制御装
置は、 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトルを決定するため
のモータ制御部; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
電圧信号を設定するための重畳波作成部; (C) ステータ巻線を流れる電流を検出するための電流
検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での目
標電流ベクトルの成分にロータ角度推定用電流信号を重
畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に対応する
目標電圧ベクトルを求め、又は、(b) 目標電流ベクト
ルに対応する目標電圧ベクトルの第一の方向での成分に
ロータ角度推定用電圧信号を重畳して重畳波付目標電圧
ベクトルを求める、ための電流制御部; (E) 重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベ
クトル又は重畳波付目標電圧ベクトルに基づいて、ステ
ータ巻線へ電力を供給するためのモータ駆動装置;及
び、 (F) リミッタを含み、(a) 電流検出器によって検出さ
れた電流を表す電流ベクトルの、第一の方向と一定の関
係にある第二の方向での成分からロータ角度推定用電流
信号又はロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を
求め、(b) 応答電流の値をリミッタによりリミット
し、(c) リミッタによりリミットされた値を持つ応答
電流に基づいてγ軸方向を補正する、ためのロータ角度
推定部; を有する。
【0062】応答電流はノイズの影響で突発的に大きく
なり得る。その時、リミッタが応答電流の大きさをリミ
ットするので、モータの駆動制御を狂わせる程極端に大
きな応答電流の検出が回避できる。応答電流が大きいほ
ど、その検出誤差も大きい。従って、応答電流がある程
度大きい時、検出値に基づいたロータの推定角度の補正
をせず、ロータの推定角度を一定値に置き換える。それ
により、結果的に推定誤差を低減できる。
【0063】上記の本発明によるセンサレス制御装置に
おいて好ましくは: (A) 電流制御部が第一の方向を、γ軸方向又はγ軸方
向に対して実質的に90°(電気角)の方向とし; (B) ロータ角度推定部が第二の方向を、第一の方向に
対して実質的に90°(電気角)の方向とし、応答電流を第
二の方向で実質的に0に収束させるようにγ軸方向を補
正する。
【0064】例えば、ロータ角度推定用電流信号を目標
電流ベクトルのγ軸方向成分に重畳し、又は、ロータ角
度推定用電圧信号を目標電圧ベクトルのγ軸方向成分に
重畳した場合、検出されたステータ巻線の電流を表す電
流ベクトルのδ軸方向成分に含まれる応答電流の振幅は
実質上sin(2Δθ)に比例する。ここで、Δθはロータの
d軸方向の角度推定誤差、すなわち、γ軸方向のd軸方
向からのずれである。従って、応答電流の振幅をδ軸方
向では0にするように制御すれば、γ軸方向をd軸方向
に一致させるように制御できる。
【0065】本発明による電気自動車は、上記の本発明
による位置センサレスモータ制御装置を含む車輪駆動モ
ータを有する。電気自動車の車輪駆動モータによる大き
な騒音の発生は乗員を不快にさせるので好ましくない。
更に、車輪駆動モータの駆動制御の遅れは電気自動車の
走行性能を低下させるので好ましくない。本発明による
センサレス制御装置は上記のように、特に車輪駆動モー
タの起動時及び低速回転時、駆動制御能力を維持しつつ
騒音を低減させ得る。従って、上記の電気自動車では、
発進時及び徐行時、車輪駆動モータの駆動制御がスムー
ズで、かつ、その騒音が小さい。それ故、乗員に快適な
走行感を与える。
【0066】本発明によるファンは、上記の本発明によ
る位置センサレスモータ制御装置を含むファン駆動モー
タを有する。例えば、換気装置のファンによる大きな騒
音の発生はその換気対象の室内の滞在者を不快にさせる
ので好ましくない。更に、ファン駆動モータの駆動制御
の遅れは換気性能を低下させるので好ましくない。本発
明によるセンサレス制御装置は上記のように、特にファ
ン駆動モータの起動時及び低速回転時、駆動制御能力を
維持しつつ騒音を低減させ得る。従って、上記のファン
では、ファン駆動モータの駆動制御がスムーズで、か
つ、その騒音が小さい。それ故、例えば換気装置に利用
される時、換気対象の室内の滞在者へ不快感を与えな
い。
【0067】本発明による冷蔵庫は、上記の本発明によ
る位置センサレスモータ制御装置を含むコンプレッサを
有する。冷蔵庫のコンプレッサによる大きな騒音の発生
は、特に就寝時には好ましくない。更に、コンプレッサ
の駆動制御の遅れは冷蔵庫の冷却性能を低下させるので
好ましくない。本発明によるセンサレス制御装置は上記
のように、特にコンプレッサの起動時及び低速回転時、
駆動制御能力を維持しつつ騒音を低減させ得る。従っ
て、上記の冷蔵庫では、起動時及び定常駆動時、コンプ
レッサの駆動制御がスムーズで、かつ、その騒音が小さ
い。それ故、例えば夜間、家庭内での安眠を妨げない。
【0068】本発明によるエアコンは、上記の本発明に
よる位置センサレスモータ制御装置を含むコンプレッサ
を有する。エアコンのコンプレッサによる大きな騒音の
発生は室内の滞在者及び室外周辺の住民を不快にさせる
ので好ましくない。更に、コンプレッサの駆動制御の遅
れはエアコンの空調性能を低下させるので好ましくな
い。本発明によるセンサレス制御装置は上記のように、
特にコンプレッサの起動時及び低速回転時、駆動制御能
力を維持しつつ騒音を低減させ得る。従って、上記のエ
アコンでは、起動時及び定常駆動時、コンプレッサの駆
動制御がスムーズでかつその騒音が小さい。それ故、室
内の滞在者及び室外周辺の住民に不快感を与えない。
【0069】
【発明の実施の形態】以下、本発明の最適な実施の形態
について、好ましい実施例を説明する。 《実施例1》 [実施例1の装置の構成]図1は、実施例1における位
置センサレスモータ制御装置の構成を示すブロック図で
ある。
【0070】実施例1による位置センサレスモータ制御
装置の制御対象はIPMSM(Interior Permanent Magn
et Synchronous Motor)10である。IPMSM10は、ス
テータ(図示せず)、ステータ巻線、及び、ロータ12を有
する。ステータは電磁鋼製の実質的な円筒を含む。ステ
ータ巻線はu相巻線11uとv相巻線11vとw相巻線11wと
を含み、ステータに巻回された被覆銅線である。ロータ
12は円柱形状を有し、ステータの内部に同軸に配置され
る。
【0071】ステータ巻線11u、11v及び11wは、それぞ
れの片端を共有端Yで接続してY結線を構成する。ステ
ータ巻線11u、11v及び11wへ電流を流す時、ステータに
は磁極が四つ形成される。ここで、電流によって形成さ
れる磁極とは、電流によって生成される磁界が特に集中
する部分をいう。以下、この磁極をステータの磁極とい
い、ステータの磁極の数をステータ巻線の極数という。
ステータの磁極は複数のN極とS極との対から成るの
で、ステータ巻線の極数は自明に偶数となる。IPMS
M10では、ステータの磁極がロータ12の中心軸に対して
垂直な平面内で、ロータ12の中心軸の周りに等間隔で生
じる。
【0072】ロータ12は、円柱状の電磁鋼から成るロー
タヨーク13、その内部に埋め込まれた四つの永久磁石1
4、及び、ロータヨーク13へ同軸に固定されたシャフト1
5を含む。ロータ12はシャフト15の両側で支持され、中
心軸の周りに回転できる。四つの永久磁石14はロータヨ
ーク13内部の軸方向の溝に挿入されて固定される。永久
磁石14の磁極の中心軸方向は、ロータヨーク13の横断面
内でシャフト15の中心軸上を通り、ロータヨーク13の横
断面の円周方向に沿って実質的に等間隔に配置される。
更に、ロータ12の表面側の磁極が互いに隣り合うもの同
士で反対の極性であるように、永久磁石14の向きが設定
される。一般に、ロータの表面に現れる磁極の数をロー
タの磁極数という。ロータの磁極数は偶数であり、同期
モータの場合ステータ巻線の極数と等しく設定される。
【0073】ステータ巻線11u、11v及び11wに電流が流
れると、ステータ内部及びその周辺に磁界が生成され、
その磁界と永久磁石14の磁界とが相互作用する。その相
互作用によりロータ12がトルクを受けて回転する。電流
を周期的に変化させて、ステータの磁極をロータ12の中
心軸周りに所定の回転速度で回転させる。その時、上記
のトルクによってロータ12は、ステータ巻線を流れる電
流によって発生する回転磁界と同じ回転速度で回転す
る。
【0074】実施例1の位置センサレスモータ制御装置
は、二つの電流センサ21u、21vと、マイコン(マイクロ
コンピュータ又はマイクロプロセッサ)22と、モータ駆
動部30と、を含む。
【0075】u相電流センサ21u及びv相電流センサ21v
はいずれも、ホール電流検出器を含む。ホール電流検出
器はホール素子(半導体磁電変換素子の一種)を内蔵す
る。それにより、外部磁界の強弱についての情報を電気
信号に変換して出力する。u相電流センサ21uはu相電
流によりステータ巻線11uの周囲に発生する磁界の強さ
を検出する。検出された磁界の強さについての情報は一
旦電圧信号に変換される。その電圧信号はu相電流セン
サ21u内の電気回路で更に処理されて、アナログu相電
流値信号[iua]として出力される。ここで、アナログu
相電流値信号[iua]は、u相電流のアナログ値iuaを示す
アナログ信号である。本明細書では、ある信号により示
される値を表す変数(例えばA)に対してその信号を、そ
の変数に角括弧を付けたもの(例えば[A])で表す。同様
に、v相電流センサ21vはアナログv相電流値信号[iva]
を出力する。アナログv相電流値信号[iva]は、v相電
流のアナログ値ivaを示すアナログ信号である。u相電
流センサ21u及びv相電流センサ21vの検出誤差は約1%
である。
【0076】マイコン22は、アナログu相電流値信号[i
ua]、アナログv相電流値信号[iva]、及び、アナログ回
転速度指令[ω a]を入力し、それらを後述するように
処理し、標u相電圧vu 、目標v相電圧vv 及び目標w
相電圧vw を出力する。
【0077】モータ駆動部30は上記の目標u相電圧
vu 、目標v相電圧vv 及び目標w相電圧vw を入力
し、それに従ってステータ巻線11u、11v及び11wに印加
される電圧を制御する。それにより、ステータ巻線11
u、11v及び11wを流れる電流を制御する。
【0078】以下、実施例1の構成要素ごとに、その構
成及び動作を説明する。 [モータ駆動部30の構成]図2は、実施例1におけるモ
ータ駆動部30の構成を示す回路図である。モータ駆動部
30は、直流電源31、上側IGBT(Insulated Gate Bipo
lar Transistor)32u、32v、32w、上側フライホイールダ
イオード33u、33v、33w、下側IGBT34u、34v、34w、
下側フライホイールダイオード35u、35v、35w、プリド
ライブ器36、及び、PWM制御器37、を有する。
【0079】上側IGBT32u、32v、32w、及び、下側
IGBT34u、34v、34wは、好ましくはいずれも同じn
チャネル型IGBTである。その他に、MOSFET又
はバイポーラトランジスタであっても良い。上側IGB
T32u、32v、32w、及び、下側IGBT34u、34v、34w
は、一つずつ対となって直列に接続される。具体的に
は、u相上側IGBT32uのエミッタとu相下側IGB
T34uのコレクタとがu相接続点Puで、v相上側IGB
T32vのエミッタとv相下側IGBT34vのコレクタとが
v相接続点Pvで、w相上側IGBT32wのエミッタとw
相下側IGBT34wのコレクタとがw相接続点Pwで、そ
れぞれ接続される。上側IGBT32u、32v及び32wのコ
レクタは直流電源31の正極に接続される。一方、下側I
GBT34u、34v及び34wのエミッタは直流電源31の負極
に接続される。
【0080】上側フライホイールダイオード33u、33v及
び33wのカソードは上側IGBT32u、32v及び32wのエミ
ッタへ、アノードはコレクタへ、それぞれ接続される。
下側フライホイールダイオード35u、35v及び35wのカソ
ードは下側IGBT34u、34v及び34wのエミッタへ、ア
ノードはコレクタへ、それぞれ接続される。上側フライ
ホイールダイオード33u、33v、33w、及び、下側フライ
ホイールダイオード35u、35v、35wは、好ましくはそれ
ぞれ接続するIGBTの寄生ダイオードである。その他
に、IGBTとは独立な素子であっても良い。
【0081】ステータ巻線11u、11v及び11wの共有端Yと
は逆側の端はそれぞれ、接続点Pu、Pv及びPwへ接続され
る。
【0082】プリドライブ器36は、上側IGBT32u、3
2v、32w、及び、下側IGBT34u、34v、34wのそれぞれ
のゲートへ接続される。プリドライブ器36は外部からの
スイッチング信号guh、gul、gvh、gvl、gwh及びgwlに従
って、それぞれのIGBTのゲート電圧を次のように制
御する:スイッチング信号guh、gul、gvh、gvl、gwh
及びgwlはそれぞれ矩形パルス波列であり、高電位H又は
低電位Lの二種類の電位を取り得る。更に、一定のスイ
ッチング周波数を有する。例えば上側u相IGBT用ス
イッチング信号guhが高電位Hの時、プリドライブ器36は
上側IGBT32uのゲート電圧を上げ、上側IGBT32u
をオンにする。逆に、上側u相IGBT用スイッチング
信号guhが低電位Lの時、プリドライブ器36は上側IGB
T32uのゲート電圧を下げ、上側IGBT32uをオフにす
る。
【0083】同様に、上側v相IGBT用スイッチング
信号gvhと上側v相IGBT32v、上側w相IGBT用ス
イッチング信号gwhと上側w相IGBT32w、下側u相I
GBT用スイッチング信号gulと下側u相IGBT34u、
下側v相IGBT用スイッチング信号gvlと下側v相I
GBT34v、下側w相IGBT用スイッチング信号gwl
下側w相IGBT34w、のそれぞれを対応させて、プリ
ドライブ器36はそれぞれのゲート電圧を制御する。すな
わち、スイッチング信号が高電位Hの時、対応するIG
BTのゲート電圧を上げ、そのIGBTをオンにする。
逆に、スイッチング信号が低電位Lの時、対応するIG
BTのゲート電圧を下げ、そのIGBTをオフにする。
【0084】プリドライブ器36は、同相の上側IGBT
と下側IGBTとのゲート電圧を同時に上げないように
構成される。それにより、同相の上側IGBTと下側I
GBTとは同時にはオンしない。
【0085】PWM制御器37は論理回路であり、目標u
相電圧vu 、目標v相電圧vv 及び目標w相電圧v
w を、以下に述べるパルス幅変調(PWM)により変調
し、上記のスイッチング信号guh、gul、gvh、gvl
gwh、及びgwlを出力する: PWM制御器37は、約15kH
zの周波数、及び、直流電圧31と等しい振幅、を持つ三
角波の電圧信号をPWMのキャリアとして発生する。こ
こで、その周波数をキャリア周波数という。キャリア周
波数はスイッチング信号guh、gul、gvh、gvl、gwh及びg
wlのスイッチング周波数に相当する。PWM制御器37は
その三角波と目標u相電圧vu とを比較する。目標u相
電圧vu が三角波より大きい時、PWM制御器37はu相
上側IGBT32u用スイッチング信号guhを高電位Hに、
u相下側IGBT34u用スイッチング信号gulを低電位L
に、それぞれ決定する。逆に、目標u相電圧vu が三角
波より小さい時、PWM制御器37はu相上側IGBT32
u用スイッチング信号guhを低電位Lに、u相下側IGB
T34u用スイッチング信号gulを高電位Hに、それぞれ決
定する。
【0086】u相上側IGBT32u用スイッチング信号g
uh又はu相下側IGBT34u用スイッチング信号gulのい
ずれかの電位を切り替える時、PWM制御器37はその切
り替え期間に所定時間、スイッチング信号guh及びgul
双方とも低電位Lに設定する。上記の時間をデッドタイ
ムといい、実施例1では約4μsに設定される。PWM制
御器37はv相及びw相についても同様に、目標v相電圧
vv 及び目標w相電圧vw に基づいて、v相及びw相に
対するスイッチング信号gvh、gvl、gw h、及びgwlを決定
する。
【0087】[モータ駆動部30の動作]次に、モータ駆
動部30の動作を説明する。モータ駆動部30は目標u相電
圧vu 、目標v相電圧vv 及び目標w相電圧vw に従っ
て、以下に述べるようにステータ巻線11u、11v、11wを
流れる電流を制御する:まず、PWM制御器37が上記の
ように、目標u相電圧vu 、目標v相電圧vv 及び目標
w相電圧vw をPWMによって変調し、スイッチング信
号guh、gul、gv h、gvl、gwh、及びgwlとして出力する。
【0088】プリドライブ器36はPWM制御器37からの
スイッチング信号guh、gul、 gvh、gvl、gwh、及びgwl
に従って、上側IGBT32u、32v、32w、下側IGBT3
4u、34v、及び34w、をそれぞれオン又はオフする。例え
ば、上側IGBT用スイッチング信号guh、gvh、及びg
whが順にH、L、及びLの時、上側IGBT32u、32v、及
び32wが順にオン、オフ、及びオフとなる。それと同時
に、下側IGBT用スイッチング信号gul、gvl、及びg
wlが順にL、H、及びHである時、下側IGBT34u、34
v、34wが順にオフ、オン、及びオンとなる。こうして、
上側IGBT32u、32v、32w、下側IGBT34u、34v、
及び34w、のそれぞれのオン又はオフの切り替えによ
り、プリドライブ器36はステータ巻線11u、11v、及び11
wのそれぞれに印加される電圧を矩形波状に変化させ
る。
【0089】その時、モータ駆動部30に含まれるIGB
Tのオンオフの時間比率(デューティ)を調節して、上記
電圧の矩形波の幅を変化させる。IGBTのオンオフの
デューティは、対応するスイッチング信号のパルス幅を
調節し、すなわち、高電位Hと低電位Lとの時間比率を調
節することにより、調節できる。
【0090】ステータ巻線11u、11v及び11wは誘導性の
インピーダンスを有する。それ故、上記の矩形波状の電
圧をステータ巻線11u、11v、及び11wに印加した時、各
ステータ巻線を流れる電流は矩形波状ではなく、滑らか
な波形を示す。但し、ここでいう「滑らかさ」は、IG
BTのスイッチングに伴う歪みを無視する近似の下で成
り立つ程度を意味する。モータ駆動部30は例えば、u相
上側IGBT32uのデューティを高くし、u相上側IG
BT32u用スイッチング信号guhが高電位Hである時間を
延長する。その時、u相電流が増大する。逆に、u相上
側IGBT32uのデューティを低くし、u相上側IGB
T32u用スイッチング信号guhが高電位Hである時間を短
縮する。その時、u相電流が減少する。こうして、モー
タ駆動部30はu相電流を、上記の意味で「滑らかな」波
形に制御できる。v相電流及びw相電流についても同様
に制御できる。
【0091】上記の電流制御においてPWM制御器37
は、同相の上側IGBT又は下側IGBTのいずれかを
オン又はオフさせる時、オン又はオフの切り換え期間に
上記のデッドタイムだけ両方のIGBTを共にオフさせ
る。それにより、いずれかのIGBTをオフした瞬間で
の過電流の発生を防止できる。その結果、過電流による
IGBTの破壊を防ぐことができる。
【0092】[座標系]マイコン22の構成及び動作を説
明する前に、電流を表現するための座標系について説明
する。図6は、本発明の実施例における電流を表現する
ための座標系、の模式図である。以下の説明を簡単にす
るために、図6では、二つの永久磁石14がロータ12に埋
め込まれる。すなわち、図6では、ロータの磁極数及び
ステータ巻線の極数がいずれも2である。以下の説明で
はロータの角度を電気角で表す。それ故、ロータの磁極
数及びステータ巻線の極数が4以上の場合でも、以下の
説明は全く同様に当てはまる。
【0093】ロータ12の横断面において、ロータ12の中
心軸Oに対するロータ12の磁極中心軸の方向をd軸方向
という。特に、永久磁石14の磁束の向きをd軸の正方向
とする。d軸方向と直交する方向をq軸方向という。q
軸の正方向は、d軸の正方向をロータ12の回転方向に+
90°回転させた向きとする。ここで、ロータ12の回転方
向は図6において反時計回りを正転とする。言い換える
と、ステータ巻線11u、11v、及び11wを流れる電流が、
u相電流iu、v相電流iv、及びw相電流iwの順に反転す
るように制御される。
【0094】u相巻線11uを流れるu相電流iuにより生
成される磁束の中心方向を、ステータに固定された基準
方向とし、その方向をα軸方向という。特に、図6に示
した矢印の向きにu相電流iuが流れる時、そのu相電流
iuにより生成される磁束の向きをα軸の正方向とする。
【0095】ロータの角度とは、d軸方向とα軸方向と
がロータの中心軸O周りになす角度θをいう。ここで、
図6にα軸からd軸へと向かう矢印で示される向き、す
なわち、ロータ12の正転方向をロータ12の角度θの正方
向とする。ロータ12の中心軸O周りの一回転を360°とし
てロータ12の角度を表した時、その値を機械角で表した
角度という。一方、ステータ巻線を流れる電流によって
形成されるステータの磁極の内、互いに隣り合うもの同
士のなす角度を180°としてロータ12の角度θを表した
時、その値を電気角で表した角度という。つまり、電気
角は機械角と次式の関係を持つ: (電気角)=(ロータ
の磁極数)/2×(機械角)。
【0096】実施例1は、ステータ巻線を流れる電流を
検出し、その検出結果からd軸方向を推定し、すなわ
ち、ロータ12の角度θを推定する。その時推定されたd
軸方向及びq軸方向をそれぞれ、γ軸方向及びδ軸方向
という。推定されたロータ12の角度θを推定角度θm
いい、ロータ12の角度θと推定角度θmとの差θ−θm
角度推定誤差Δθという。図6では、角度推定誤差Δθ
が正の場合、すなわち、ロータ12の角度θが推定角度θ
mより大きい(θ>θm)場合が示される。ここで、図6に
α軸からγ軸へと向かう矢印で示される向き、すなわ
ち、ロータ12の正転方向を、推定角度θmの正方向とす
る。推定角度θmが実質的な誤差を含まず、すなわち、
角度推定誤差Δθが実質的に0に等しい時、推定角度θ
mとロータ12の角度θとが一致する。その時、d軸とγ
軸、q軸とδ軸がそれぞれ一致する。
【0097】以下、ロータ12の角度θ、推定角度θm
び角度推定誤差Δθを電気角で表す。更に、特に明記し
ない限り、ロータ12の角度θに関する値を電気角で表
す。
【0098】ステータ巻線を流れる電流による磁界がロ
ータに及ぼす作用は、電気的にはステータ巻線の等価イ
ンダクタンスとして表現される。ロータの透磁率がその
中心軸周りに等方的ではない場合、すなわち、IPMS
Mが突極性を有する場合、その等価インダクタンスはロ
ータの中心軸周りの方向に依存する。
【0099】実施例1では、IPMSM10の等価回路に
おける等価インダクタンスを、d軸方向についてはd軸
インダクタンスLdと、q軸方向についてはq軸インダク
タンスLqとする。d軸及びq軸はロータ12に固定された
座標軸であるので、等価インダクタンスLd及びLqはロー
タ12の角度θに実質上依存しない。等価インダクタンス
は等方的ではなく、Ld<Lqである。具体的には、d軸イ
ンダクタンスLdが約10mH、q軸インダクタンスLqが約20
mHである。このように、IPMSM10は突極性を有す
る。
【0100】[マイコン22の構成]マイコン22は好まし
くはマイクロコンピュータであって、CPU、ROM、
RAM、タイマ、ポート、及び、これらをつなぐバス等
を含む。その他に、それらが集積回路として単一の半導
体素子、すなわち、マイクロプロセッサを形成していて
も良い。その場合、以下に述べる構成要素は好ましくは
ソフトウエアとして構成される。その他に、それぞれの
構成要素が電子回路又は集積回路としてハードウエア的
に構成されても良い。
【0101】マイコン22は、回転速度制御部40、電流制
御部50、ロータ角度/回転速度推定部60、及び、重畳波
作成部70を機能的に構成する。回転速度制御部40は、外
部からアナログ回転速度指令[ω a]を、ロータ角度/
回転速度推定部60から推定回転速度値信号[ωm]を、そ
れぞれ入力する。ここで、推定回転速度値信号[ωm]は
推定回転速度ωmを示す。回転速度制御部40は入力され
た値から、電流振幅指令[i ]、γ軸電流指令[iγ ]
及びδ軸電流指令[iδ ]を後述のように決定する。更
に、電流制御部50へγ軸電流指令[iγ ]とδ軸電流指
令[iδ ]とを、重畳波作成部70へ電流振幅指令[i ]
を出力する。
【0102】重畳波作成部70は、回転速度制御部40から
電流振幅指令[i ]を入力し、それに基づいて重畳波
電流指令[is ]及び重畳波直交信号[hs⊥ ]を設定す
る。重畳波電流指令[is ]は電流制御部50へ、重畳波直
交信号[hs⊥ ]はロータ角度/回転速度推定部60へ、そ
れぞれ出力される。
【0103】電流制御部50は、u相電流センサ21uから
アナログu相電流値信号[iua]を、v相電流センサ21vか
らアナログv相電流値信号[iva]を、ロータ角度/回転
速度推定部60から推定角度θmを示す推定角度値信号[θ
m]を入力し、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを後述のよう
に検出する。検出されたδ軸電流iδを表すδ軸電流値
信号[iδ]はロータ角度/回転速度推定部60へ出力され
る。電流制御部50は更に、回転速度制御部40からγ軸電
流指令[iγ ]とδ軸電流指令[iδ ]とを、ロータ角度
/回転速度推定部60から推定回転速度値信号[ωm]を、
重畳波作成部70から重畳波電流指令[is ]を、それぞれ
入力する。それらの入力により示される値、先に入力し
た推定角度θm、検出されたγ軸電流iγ及びδ軸電流i
δに基づいて、電流制御部50は目標u相電圧vu 、目標
v相電圧vv 及び目標w相電圧vw を後述のように決定
し、モータ駆動部30へ出力する。
【0104】ロータ角度/回転速度推定部60は、重畳波
作成部70から重畳波直交信号[hs⊥ ]を、電流制御部50
からδ軸電流値信号[iδ]を入力し、推定誤差εを後述
のように決定する。その推定誤差εに基づいて、推定角
度θm及び推定回転速度ωmを補正する。その補正後、推
定角度値信号[θm]は電流制御部50へ、推定回転速度値
信号[ωm]は回転速度制御部40及び電流制御部50へ出力
される。
【0105】以下、上記のマイコン22の各構成要素の構
成及び動作を説明する。 [回転速度制御部40の構成]図3の(a)は、実施例1にお
ける回転速度制御部40の構成を示すブロック図である。
図3の(b)は、図3の(a)に示されるPI制御部42のブロッ
ク図である。
【0106】回転速度制御部40は、ADC(Analog Digt
al Converter)41、PI制御部42、及び、トルク/電流
変換部43から成る。ADC41は、外部からのアナログ信
号であるアナログ回転速度指令[ω a]を、ディジタル
信号である回転速度指令[ω]へ変換する。ADC41は
回転速度指令[ω]をPI制御部42へ出力する。
【0107】PI制御部42はADC41からの回転速度指
令[ω]により示される目標回転速度ωと、外部から
の推定回転速度値信号[ωm]により示される推定回転速
度ωmとに対して演算処理を行う。その演算処理は図3の
(b)にブロック図で示される。PI制御部42は、以下の
動作を行うように構成される: まず、第一の加算器42
aが目標回転速度ωから推定回転速度ωmを減算する。
その減算結果は比例ゲイン42d及び積分ゲイン42eへ出力
される。比例ゲイン42dは入力信号により示される値に
第一の定数KPW(以下、第一の定数KPWを単に比例ゲインK
PWと呼ぶ)を乗算し、第三の加算器42cへ出力する。一
方、積分ゲイン42eは第二の定数KIW(以下、第二の定数K
IWを単に積分ゲインKIWと呼ぶ)を入力信号により示され
る値へ乗算し、第二の加算器42bへ出力する。第二の加
算器42bは、入力信号により示される値と、1サンプル
遅れ42fからフィードバックされた値と、を加算し、1
サンプル遅れ42f及び第三の加算器42cへ出力する。第二
の加算器42bへ次のサンプルが入力されるまで、1サン
プル遅れ42fは入力信号を保持する。こうして、第二の
加算器42b及び1サンプル遅れ42fはディジタル積分器を
構成する。第三の加算器42cは、比例ゲイン42d及び第二
の加算器42bの出力を加算し、トルク指令[T]としてト
ルク/電流変換部43へ出力する。こうして、PI制御部
42は、比例ゲイン42dによる比例制御(P制御)とディジ
タル積分器による積分制御(I制御)とを行う制御部とし
て構成される。
【0108】トルク/電流変換部43は、入力されたトル
ク指令[T]に対して後述の演算を行い、その演算結果
を、電流振幅指令[ia ]、γ軸電流指令[iγ ]、及び
δ軸電流指令[iδ ]として外部へ出力する。
【0109】[回転速度制御部40の動作]次に、回転速
度制御部40の動作を説明する。回転速度制御部40は、好
ましくは後述のロータ角度推定用電流信号is の周期
(実施例1では最大約3m秒)ごとに、アナログ回転速度
指令[ω a]及び推定回転速度値信号[ωm]を外部から入
力する。その他に、それらの信号の入力がロータ角度推
定用電流信号is の最大周期より長い一定の周期で行わ
れても良い。入力されたそれらの信号はADC41、PI
制御部42、及びトルク/電流変換部43の順に下記の処理
を施される。その結果、γ軸電流指令[iγ ]とδ軸電
流指令[iδ ]とが決定される。
【0110】アナログ回転速度指令[ω a]はADC41
により、回転速度指令[ω]へ変換される。アナログ回
転速度指令[ω a]が示す目標回転速度ω aは、約0〜2
000π/60[rad/秒](1000回転/分)程度である。回転
速度指令[ω]はPI制御部42へ出力される。
【0111】PI制御部42は、推定回転速度ωmと目標
回転速度ωとを一致させるように比例積分制御(PI
制御)を行う。具体的には、PI制御部42はロータ12へ
及ぼすべきトルク指令[T]を操作量として出力する。
【0112】トルク指令[T]は図3の(b)のブロック図
に従って、目標回転速度ωと推定回転速度ωmとの
差、比例ゲインKPW、及び積分ゲインKIWにより、式(1)
で表される。
【0113】 T=KPW(ω−ωm)+ΣKIW(ω−ωm) (1)
【0114】ここで、総和記号Σは、制御開始からトル
ク指令[T]を出力するまでの全てのサンプルについて
の和を示す。式(1)の第一項が比例制御項であり、第二
項が積分制御項である。
【0115】トルク/電流変換部43はγ軸電流指令[iγ
]とδ軸電流指令[iδ ]とを以下のように決定する。
それにより、ステータ巻線を流れる電流によって生成さ
れる磁界が目標トルクTと等しいトルクをIPMSM1
0に出力させる:まず、トルク/電流変換部43は式(2)に
従って目標トルクTを係数KTで除算し、目標電流振幅i
a へ変換する。
【0116】 ia =T/KT (2)
【0117】実施例1では、目標電流振幅ia は最大約
15Aである。次に、トルク/電流変換部43は目標電流位
相βを式(3)に従って決定する。電流の振幅が目標電
流振幅ia と等しい時、目標電流位相βはIPMSM
10の最大出力トルク時での電流の位相を示す。但し、位
相の基準をq軸方向とする。
【0118】 sinβ={−ψ+√(ψ2+8(Lq−Ld)2ia *2)}/{4(Lq−Ld)ia } (3)
【0119】ここで、ψはdq軸巻線鎖交磁束実効値で
あり、ステータ巻線に鎖交する永久磁石14の磁束の実効
値を示す。Lqはq軸インダクタンスであり、Ldはd軸イ
ンダクタンスである。
【0120】トルク/電流変換部43は最後に、式(4a)に
従って目標電流振幅ia に−sinβ を乗じて目標γ軸
電流iγ とし、式(4b)に従って目標電流振幅ia にcos
βを乗じて目標δ軸電流iδ とする。それにより、
γ軸がd軸に、δ軸がq軸に、それぞれ一致する時、目
標γ軸電流iγ 及び目標δ軸電流iδ に等しい電流に
より、目標トルクTと等しいトルクをIPMSM10は
出力できる。
【0121】 iγ =−ia sinβ (4a) iδ = ia cosβ (4b)
【0122】実施例1ではロータ12へのトルクが最大と
なる位相を目標電流位相βとして決定した。しかし、
本発明はその決定だけに限られるわけではない。その他
に、モータの出力効率が最大となる位相を目標電流位相
βとして決定しても良い。
【0123】[電流制御部50の構成]図4は、実施例1
における電流制御部50の構成を示すブロック図である。
電流制御部50は、u相電流値信号用ADC51u、v相電
流値信号用ADC51v、三相二相変換部52、電圧指令作
成部53、及び、二相三相変換部54を含む。
【0124】u相電流値信号用ADC51uは、アナログ
u相電流値信号[iua]をデジタル信号であるu相電流値
信号[iu]へ変換し、三相二相変換部52へ出力する。同様
に、v相電流値信号用ADC51vは、アナログv相電流
値信号[iva]をデジタル信号であるv相電流値信号[iv]
へ変換し、三相二相変換部52へ出力する。
【0125】三相二相変換部52は、u相電流値信号
[iu]、v相電流値信号[iv]及び推定角度値信号[θm]を
入力し、それらに基づいて後述のようにγ軸電流iγ
δ軸電流i δとを検出する。γ軸電流値信号[iγ]は検出
されたγ軸電流iγを示し、電圧指令作成部53へ出力さ
れる。δ軸電流値信号[iδ]は検出されたδ軸電流iδ
示し、電圧指令作成部53及び外部へ出力される。
【0126】電圧指令作成部53は、三相二相変換部52か
らγ軸電流値信号[iγ]とδ軸電流値信号[iδ]とを、外
部からγ軸電流指令[iγ ]、δ軸電流指令[iδ ]、推
定回転速度値信号[ωm]及び重畳波電流指令[is ]を入
力する。電圧指令作成部53は論理回路であり、それらの
入力により示される値に基づいて、目標γ軸電圧v γ
と目標δ軸電圧vδ とを後述のように演算する。その
演算結果はそれぞれγ軸電圧指令[vγ ]及びδ軸電圧
指令[vδ ]として、二相三相変換部54へ出力される。
【0127】二相三相変換部54は論理回路であり、入力
された目標γ軸電圧vγ 、目標δ軸電圧vδ 及び推定
角度θmに基づいて、目標u相電圧vu 、目標v相電圧v
v 、及び目標w相電圧vw を後述のように演算する。
その演算結果はそれぞれu相電圧指令[vu ]、v相電圧
指令[vv ]及びw相電圧指令[vw ]としてモータ駆動部
30へ出力される。
【0128】[電流制御部50の動作]次に、電流制御部
50の動作を説明する。電流センサ21u及び21vからのアナ
ログ電流値信号[iua]及び[iva]はADC51u及び51vによ
り電流値信号[iu]及び[iv]へ変換される。検出された電
流iu及びivは三相電流である。そこで、後の処理の便宜
上、それらの値は三相二相変換部52によりγ軸電流iγ
及びδ軸電流iδへ、式(5)及び(6)に従って変換され
る。
【0129】 iγ=(√2)×{iusin(θm+60°)+ivsinθm} (5) iδ=(√2)×{iucos(θm+60°)+ivcosθm} (6)
【0130】電圧指令作成部53は式(7)に従って、比例
積分制御(PI制御)と非干渉制御とを用いて目標γ軸電
圧vγ を制御する。それにより、γ軸電流iγが目標γ
軸電流iγ へ目標重畳波電流is を重畳したもの、す
なわち重畳波付目標γ軸電流(iγ +is )と一致する
ように制御される。
【0131】 vγ =KPd{(iγ +is )−iγ}+ΣKId{(iγ +is )−iγ} +R×iγ −ωem×Lq×iδ (7)
【0132】式(7)の第一項は比例ゲインKPdによる比例
制御項を、第二項は積分ゲインKIdによる積分制御項
を、第三項及び第四項は非干渉制御項を、それぞれ示
す。ここで、ステータ巻線11u、11v、及び11wの抵抗をR
とし、推定回転速度ωmを角速度に換算したものを推定
角速度ωemとする。更に、q軸インダクタンスをLqとす
る。総和記号Σは、制御開始からγ軸電圧指令[vγ ]
を出力するまでの全てのサンプルについての和を示す。
【0133】式(7)の第三項及び第四項は次のように設
定される: γ軸電流iγが目標γ軸電流iγ に、δ軸
電流iδが目標δ軸電流iδ にそれぞれ一致し、更に、
γ軸及びδ軸がd軸及びq軸にそれぞれ一致した時、式
(7)の関係と、d軸電圧、d軸電流及びq軸電流の満た
す関係と、が、ロータ角度推定用電流信号is を含む項
を除いて一致する。
【0134】一方、電圧指令作成部53は、式(8)に従っ
て、比例積分制御(PI制御)と非干渉制御とを用いて目
標δ軸電圧vδ を制御する。それにより、δ軸電流iδ
が目標δ軸電流iδ と一致するように制御される。
【0135】 vδ =KPq{iδ −iδ}+ΣKIq{iδ −iδ} +R×iδ +ωem×Ld×iγ +ωem×ψ (8)
【0136】式(8)の第一項は比例ゲインKPqによる比例
制御項を、第二項は積分ゲインKIqによる積分制御項
を、第三項から第五項までは非干渉制御項を、それぞれ
示す。ここで抵抗Rと推定角速度ωemとは式(7)のものと
同じである。Ldはd軸インダクタンスである。ψはdq
軸巻線鎖交磁束実効値である。総和記号Σは、制御開始
からδ軸電圧指令[vδ ]を出力するまでの全てのサン
プルについての和を示す。
【0137】式(8)の第三項、第四項及び第五項は次の
ように設定される: γ軸電流iγが目標γ軸電流iγ
に、δ軸電流iδが目標δ軸電流iδ にそれぞれ一致
し、更に、γ軸及びδ軸がd軸及びq軸にそれぞれ一致
した時、式(8)の関係と、d軸電圧、d軸電流及びq軸
電流の満たす関係とが、ロータ角度推定用電流信号is
を含む項を除いて一致する。
【0138】目標γ軸電圧vγ 及び目標δ軸電圧vδ
は電圧指令作成部53により決定される。更に、二相三相
変換部54により、ステータ巻線11u、11v、及び11wに印
加される三相電圧、すなわち、目標u相電圧vu 、目標
v相電圧vv 、及び、目標w相電圧vw へ、式(9)、(1
0)及び(11)に従って変換される。それらの変換は三相二
相変換部52の変換(式(5)及び(6))に対する逆変換に相当
する。
【0139】 vu =√(2/3){vγ cosθm−vδ sinθm} (9) vv =√(2/3){vγ cos(θm−120°)−vδ sin(θm−120°)} (10) vw =√(2/3){vγ cos(θm+120°)−vδ sin(θm+120°)} (11)
【0140】[ロータ角度/回転速度推定部60の構成]
図5の(a)は、実施例1におけるロータ角度/回転速度推
定部60の構成を示すブロック図である。ロータ角度/回
転速度推定部60は、推定誤差検出部61、推定誤差リミッ
タ62、角度進み量作成部63、推定回転速度補正部64、推
定誤差リセット部65及び推定角度補正部66を含む。
【0141】推定誤差検出部61はディジタル演算回路で
あり、後述のようにδ軸電流iδと重畳波直交成分hs⊥
とを乗算し、その乗算結果を所定の時間積分する。そ
の演算結果が推定誤差εとして決定される。推定誤差リ
ミッタ62は推定誤差εに対するリミッタである。リミッ
トされた推定誤差εを第二の推定誤差ε1とする。
【0142】角度進み量作成部63は、第二の推定誤差ε
1に対する比例積分制御を行う制御回路であり、第二の
推定誤差ε1に比例ゲインKTPPを乗算する比例制御部
と、第二の推定誤差ε1を積分ゲインKTPIで積分するデ
ィジタル積分器とを含む。その構成は図3の(b)に示され
るものと同様である。角度進み量作成部63の出力は角度
進み量θpとして決定される。
【0143】推定回転速度補正部64は角度進み量θp
対するディジタルローパスフィルタ(LPF)を含む。角
度進み量θpをLPFで処理した値に基づいて、推定回
転速度ωmが後述のように補正される。推定誤差リセッ
ト部65は所定の時間ごとに、推定誤差検出部61内部に記
憶された推定誤差εの値を0に置き換える。推定角度補
正部66は、推定角度θmを角度進み量θpだけ補正するた
めの演算回路である。
【0144】[重畳波作成部70の構成]図5の(b)は実施
例1における重畳波作成部70の構成を示すブロック図で
ある。重畳波作成部70は、カウンタ71、重畳波位相設定
部72、重畳波電流指令作成部73、重畳波直交成分作成部
74、重畳波周期設定部75、カウンタリセット部76及び重
畳波電流振幅設定部77を含む。
【0145】カウンタ71は、整数値であるカウントζを
記憶するためのレジスタを含み、PWM制御器37のPW
Mのキャリア周期ごとにカウントζを1ずつ増加させ、
その値を重畳波位相設定部72へ出力する。
【0146】重畳波位相設定部72は論理回路であり、重
畳波周期設定部75により設定された分割数ηとカウント
ζとに基づいて、重畳波位相θsを後述のように設定す
る。重畳波電流指令作成部73は論理回路であり、重畳波
電流振幅設定部77により設定された重畳波電流振幅α
と、重畳波位相設定部72により設定された重畳波位相θ
sと、に基づいて、目標重畳波電流is を後述のように
設定する。
【0147】重畳波直交成分作成部74は論理回路であ
り、重畳波位相θsに基づいて重畳波直交成分hs⊥
後述のように設定する。重畳波周期設定部75は論理回路
であり、0から1までの擬似乱数を発生するための回路を
含み、その擬似乱数に基づいて分割数ηを後述のように
設定する。
【0148】カウンタリセット部76は、カウンタ71のレ
ジスタをリセットするための回路である。重畳波電流振
幅設定部77は論理回路であって、後述の振幅テーブル
(図12)を記憶したROM又はRAMを含む。重畳波電流
振幅設定部77は外部から電流振幅指令[ia ]を入力し、
それにより示される目標電流振幅ia に対応する重畳波
電流振幅αを振幅テーブルから求めて出力する。
【0149】ロータ角度/回転速度推定部60及び重畳波
作成部70は、好ましくはソフトウエアとして構成され
る。その他に、上記の各構成要素がそれぞれ論理素子と
して構成されていても良い。
【0150】[重畳波作成部70の動作]次に、実施例1
の特徴である重畳波作成部70の動作を説明する。重畳波
作成部70の動作は以下の三つの特徴を有する: 第1
に、目標重畳波電流すなわちロータ角度推定用電流信号
is の周期を一周期ごとにランダムに変化させる。第2
に、ロータ角度推定用電流信号is の振幅を一周期ごと
に変化させる。第3に、ロータ角度推定用電流信号is
の周期をPWMのキャリア周期の偶数倍にする。
【0151】最初に、重畳波周期設定部75が式(12)に従
って、分割数ηをランダムな正の偶数に設定する。
【0152】 η=ηmin+2×round{(ηmax−ηmin)M/2} (12)
【0153】ここで、分割数ηの最小値をηmin、最大
値をηmaxとする。最小値ηmin及び最大値ηmaxはいず
れも偶数であり、実施例1ではηmin=20、ηmax=40で
ある。擬似乱数Mは0以上1未満の数であり、重畳波周期
設定部75内の擬似乱数発生回路によって設定される。演
算子round(.)は小数部を丸めて整数部のみを残す演算を
示す。
【0154】次に、カウンタ71により出力されるカウン
トζを用いて、重畳波位相設定部72が重畳波位相θs
式(13)に従って設定する。カウントζが1から分割数η
まで1ずつ増加するごとに、重畳波位相θsが(360/η)
°から360°まで(360/η)°ずつ進む。
【0155】 θs=360°ζ/η (13)
【0156】図10は実施例1における重畳波位相θs
分布図である。図10に黒丸で表される点が出力ごとの重
畳波位相θsを示す。例えば、分割数ηが32、40、20、
・・・のように変化する時、重畳波位相θsはまず、P
WMのキャリア周期の32倍の時間で11.25°から360°ま
で変化する。続いて、PWMのキャリア周期の40倍の時
間で再び9°から360°まで変化する。更に続いて、PW
Mのキャリア周期の20倍の時間で18°から360°まで変
化する。・・・ 重畳波位相θsは以上のような変化を
繰り返す。
【0157】重畳波電流振幅設定部77は回転速度推定部
60から入力した電流振幅指令[ia ]により示される目標
電流振幅ia に基づいて、重畳波電流振幅αを設定す
る。図12は実施例1における目標電流振幅ia と重畳波
電流振幅αとの対応関係を示す振幅テーブルである。重
畳波電流振幅設定部77は、この振幅テーブルに従って、
目標電流振幅ia に対応する重畳波電流振幅αの値を以
下のように設定する:
【0158】目標電流振幅ia が下限値ia 1より小さ
い時、重畳波電流振幅設定部77は重畳波電流振幅αを下
限値α1に設定する。目標電流振幅ia が上限値ia 2よ
り大きい時、重畳波電流振幅設定部77は重畳波電流振幅
αを上限値α2に設定する。目標電流振幅ia が下限値i
a 1以上でかつ上限値ia 2以下である時、重畳波電流
振幅設定部77は重畳波電流振幅αを、点(ia 1,α1)と
点(ia 2,α2)とを直線的に補間した値に設定する。
【0159】こうして、重畳波電流振幅αは目標電流振
幅ia と共に増大するように設定される。実施例1で
は、重畳波電流振幅αの下限値α1が約3A、上限値α2が
約5Aであり、目標電流振幅ia の下限値ia 1が約0A、
上限値ia 2が約15Aである。すなわち、電流の基本波と
重畳波との振幅比が数十%程度に設定される。ここで、
電流の基本波とはIPMSM10の出力トルクの主要部分
を与える電流の成分を指し、その語は特に、電流への重
畳波であるロータ角度推定用電流信号と区別する目的で
用いられる。電流の基本波は、同期モータでは通常、ロ
ータの回転速度と等しい周波数の正弦波である。
【0160】目標重畳波電流すなわちロータ角度推定用
電流信号is は重畳波電流指令作成部73により、重畳波
位相θs及び重畳波電流振幅αに基づいて、式(14)に従
って正弦波として設定される。
【0161】 is =αsinθs=αsin(ωes・ζTc) (14)
【0162】ここで、PWM制御器37によるPWMのキ
ャリア周期をTcとし、カウントζとキャリア周期Tcとの
積で重畳波位相θsを割った値を重畳波角周波数ωes
する。
【0163】図11は、実施例1において、32、40、20の
分割数ηについてのロータ角度推定用電流信号is を示
す図である。カウントζはPWMのキャリア周期ごとに
1ずつ増える。従って、図11の各点の時間間隔は、PW
Mのキャリア周期Tcに等しい。言い換えると、ロータ角
度推定用電流信号is の周期はηTcに等しい。分割数η
はランダムに変化するので、ロータ角度推定用電流信号
is は一周期ごとにその周期をランダムに変化させる。
実施例1では、ロータ角度推定用電流信号is の周期は
約1.3〜2.6m秒程度(周波数は約375〜750Hz程度)の範囲
内にある。分割数ηは偶数であるので、ロータ角度推定
用電流信号is の周期ηTcはPWMのキャリア周期Tcの
偶数倍である。
【0164】重畳波直交成分作成部74は式(15)に従っ
て、重畳波直交成分hs⊥ をロータ角度推定用電流信号
is と直交するように、すなわち、重畳波直交成分hs⊥
の位相をロータ角度推定用電流信号is の位相θs
対して90°遅れるように設定する。重畳波直交成分hs⊥
は無次元量の信号であって、その振幅は1に正規化さ
れる。
【0165】 hs⊥ =sin(θs−90°)=−cosθs (15)
【0166】[ロータ角度/回転速度推定部60の動作]
以下、実施例1によるロータ角度/回転速度推定部60の
動作を説明する。ロータ角度/回転速度推定部60の動作
は次の三つの特徴を有する: 第一に、電流制御部50に
よって検出されたδ軸電流iδに対して、PWMのキャ
リア周期Tcごとにサンプリングを行う。それにより、サ
ンプリングの回数はロータ角度推定用電流信号is の一
周期ηTc当たりη回である。第二に、サンプリングされ
たδ軸電流iδと重畳波直交成分hs⊥ との積をロータ
角度推定用電流信号is の一周期の範囲でディジタル積
分し、推定誤差εを求める。第三に、推定誤差εのリミ
ット後、推定回転速度ωm及び推定角度θmを補正する。
【0167】まず、検出されたδ軸電流iδ内に現れる
ロータ角度推定用電流信号is に対する応答電流につい
て説明する。図7は実施例1における目標u相電圧
vu 、及び、その印加によってu相巻線11uを流れるu
相電流iuの波形図である。図7の(a)は目標u相電圧vu
の波形図であり、図7の(b)はu相電流iuの波形図であ
る。
【0168】重畳波作成部70によって作成されたロータ
角度推定用電流信号is は、電流制御部50により目標γ
軸電流iγ へ重畳される。ロータ角度推定用電流信号i
s を重畳された目標γ軸電流iγ は目標電圧へ変換さ
れる。実施例1では、目標電流の基本波及び対応する目
標電圧の成分は数十Hz程度以下の周波数を持つ。ロータ
角度推定用電流信号is の周波数は最小でも400Hz程度
である。一方、ロータ角度推定用電流信号is の振幅は
目標電流の基本波に対して数十%程度である。従って、
目標u相電圧vu はロータ角度推定用電流信号is の重
畳により、u相電流iuはロータ角度推定用電流信号is
に対する応答電流の重畳により、それぞれ図7に示され
るように細かく波打った正弦波となる。
【0169】図8は、実施例1における目標γ軸電圧vγ
、その印加によって流れるγ軸電流iγ、及びδ軸電
流iδの波形図である。図8の(a)は目標γ軸電圧vγ
波形図であり、図8の(b)はγ軸電流iγの波形図であ
る。角度推定誤差Δθが有限値である時δ軸電流iδ
波形図は図8の(c)である。角度推定誤差Δθが実質的に
0に等しい時、δ軸電流iδの波形図は図8の(d)である。
【0170】角度推定誤差Δθが一定である時、γ軸及
びδ軸は図6に示されるように、ロータ12に対する固定
軸である。それ故、目標γ軸電圧vγ 、γ軸電流iγ
びδ軸電流iδの基本波成分がいずれも直流である。従
って、ロータ角度推定用電流信号is の重畳時、それと
実質的に同じ周期の重畳波成分が図8のようにそれぞれ
の交流成分として現れる。特に、δ軸電流iδに現れる
重畳波成分、すなわち、ロータ角度推定用電流信号is
に対する応答電流、の振幅は角度推定誤差Δθに依存
し、正確には後述の理由により、sin(2Δθ)に比例す
る。従って、角度推定誤差Δθが実質的に有限値である
時、図8の(c)のようにδ軸電流iδは重畳波成分を持
つ。しかし、角度推定誤差Δθが実質的に0°に等しい
時、図8の(d)のようにδ軸電流iδは重畳波成分を持た
ない。
【0171】以下、δ軸電流iδの重畳波成分の振幅がs
in(2Δθ)に比例する理由を説明する: IPMSM10
の電圧方程式は、d軸及びq軸成分による表現では式(1
6)及び(17)である。
【0172】 vd=(R+p・Ld)id−ωe・Lq・iq (16) vq=(R+p・Lq)iq+ωe・Ld・id+ωe・ψ (17)
【0173】ここで、pは微分演算子である。電圧ベク
トルのd軸成分とq軸成分とをそれぞれd軸電圧vdとq
軸電圧vqとで表し、電流ベクトルのd軸成分とq軸成分
とをそれぞれd軸電流idとq軸電流iqとで表す。ステー
タ巻線の抵抗をRとし、d軸インダクタンスをLd、q軸
インダクタンスをLqとする。dq軸巻線鎖交磁束実効値
をψとし、ロータ12の実際の角速度をωeとする。
【0174】ロータ12の回転制御時、実際のロータ12の
角度θは分からないので、推定角度θmを用いて制御を
行う。それに合わせて、IPMSM10の電圧方程式を、
d軸及びq軸成分での表現(式(16)及び(17))から推定d
軸及び推定δ軸、すなわち、γ軸及びδ軸成分での表現
へ、以下のように変換する: 図6より、γ軸はd軸か
ら(δ軸はq軸から)角度推定誤差Δθ=θ−θmだけず
れる。従って、電圧方程式(16)及び(17)はγ軸及びδ軸
成分によると、式(18)及び(19)で表現される。
【0175】 vγ=(R+ωem・Lγδ+p・Lγ)iγ+(−ωem・Lδ−p・Lγδ)iδ +ωem・ψ(−sinΔθ) (18) vδ=(R−ωem・Lγδ+p・Lδ)iδ+( ωem・Lγ−p・Lγδ)iγ +ωem・ψcosΔθ (19)
【0176】ここで、ロータ12の推定角速度をωemとす
る。推定角速度ωemは推定回転速度ω mから演算され
る。式(18)及び(19)では、推定角速度ωemと実際の角速
度ωeとの差を無視する。
【0177】d軸インダクタンスLd及びq軸インダクタ
ンスLqは、γ軸インダクタンスLγ、δ軸インダクタン
スLδ、及び両方向間の相互インダクタンスLγδへ、式
(20)、(21)及び(22)に従ってそれぞれ変換される。
【0178】 Lγ ={(Ld+Lq)−(Lq−Ld)cos(2Δθ)}/2 (20) Lδ ={(Ld+Lq)+(Lq−Ld)cos(2Δθ)}/2 (21) Lγδ={(Lq−Ld)sin(2Δθ)}/2 (22)
【0179】式(20)及び(21)より、γ軸インダクタンス
Lγ及びδ軸インダクタンスLδはいずれも、角度推定誤
差Δθに関わらず正である。γ軸電流iγ及びδ軸電流i
δの重畳波成分は重ね合わせの原理により、式(18)及び
(19)中の重畳波成分を含む項を通してγ軸電圧vγ及び
δ軸電圧vδへ寄与する。すなわち、γ軸電圧vγ及びδ
軸電圧vδの重畳波成分vγs及びvδsは式(23)及び(24)
で表される。
【0180】 vγs=(R+ωem・Lγδ+p・Lγ)iγs+(−ωem・Lδ−p・Lγδ)iδs (23) vδs=(R−ωem・Lγδ+p・Lδ)iδs+( ωem・Lγ−p・Lγδ)iγs (24)
【0181】次に、以下の近似を行い、式(23)及び(24)
を簡略化する: 実施例1はロータ12の静止時又は低速
駆動時における回転制御を対象とするので、ロータ12の
回転速度が比較的小さい時を以下では考慮すれば良い。
【0182】既に述べたように、重畳波成分の周波数は
最小でも約400Hzであり、基本波成分の周波数(最大数十
Hz程度)より十分高い。従って、重畳波成分の角周波
数、すなわち重畳波角周波数ωesは、基本波成分の角周
波数、すなわちロータ12の推定角速度ωemより十分大き
い。実施例1では、重畳波角周波数ωesと等価インダク
タンスLγ、Lδ又はLγδ(いずれも10mH程度)との積
で表されるインピーダンスが約25Ωであり、ステータ巻
線の抵抗R(約1Ω)より十分大きい。従って、式(23)及
び(24)では、推定角速度ωem及び抵抗Rを含む項を他の
項に対して無視する。こうして、式(23)及び(24)は式(2
5)及び(26)でそれぞれ近似される。
【0183】 vγs=p・Lγ・iγs−p・Lγδ・iδs (25) vδs=p・Lδ・iδs−p・Lγδ・iγs (26)
【0184】更に、角度推定誤差Δθの時間変化を無視
する近似、すなわち等価インダクタンスLγ、Lδ、及び
Lγδを一定とみなす近似の下で、式(25)及び(26)をγ
軸電流iγ及びδ軸電流iδの重畳波成分iγs及びiδs
ついて解く。その時、重畳波成分iγs及びiδsについ
て、式(27)及び(28)が得られる。
【0185】 p・iγs=(Lδ・vγs+Lγδ・vδs)/Λ (27) p・iδs=(Lγ・vδs+Lγδ・vγs)/Λ (28) Λ=Lγ・Lδ−Lγδ・Lγδ (29)
【0186】言い換えると、ロータ12の回転制御時、γ
軸電圧vγ及びδ軸電圧vδへ重畳波成分vγs及びvδs
それぞれ重畳すると、それに対する応答電流iγs及びi
δsが、式(27)及び(28)に従って、γ軸電流iγ及びδ軸
電流iδへそれぞれ重畳される。特に、重畳波電圧をγ
軸成分vγsへのみ印加する時、すなわち、δ軸成分vδs
を0とする時、応答電流iγs及びiδsは式(30)及び(31)
で表される。
【0187】 p・iγs=Lδ ・vγs/Λ (30) p・iδs=Lγδ・vγs/Λ (31)
【0188】実施例1では、電流制御部50が、目標重畳
波電流としてロータ角度推定用電流信号is を目標γ軸
電流iγ に重畳する。そのロータ角度推定用電流信号i
s は式(14)で与えられる。一方、目標δ軸電流iδ
はロータ角度推定用電流信号を重畳しない。
【0189】 is =αsinθs=αsin(ωes・ζTc) (14)
【0190】ここで、PWM制御器37によるPWMでの
キャリア周期をTcとし、カウントζとキャリア周期Tcと
の積で重畳波位相θsを割った値を重畳波角周波数ωes
とする。
【0191】PWMのキャリア周波数は約15kHzであ
り、重畳波周波数(最大約750Hz)に比べて十分大きい。
言い換えると、PWMのキャリア周期Tcは重畳波の周期
に比べて十分小さい。一方、PWMのキャリア周期Tc
は、ディジタル信号であるロータ角度推定用電流信号is
のサンプルの時間間隔に等しい。従って、そのサンプ
ルの時間間隔を無視し、ロータ角度推定用電流信号is
をアナログ信号とみなす。その近似の下では、PWMの
キャリア周期Tcのカウントζ倍、すなわち、ζTcを連続
的な時間変数tに置き換えることができる。従って、ロ
ータ角度推定用電流信号is を式(32)のアナログ信号と
して表すことができる。
【0192】 is =αsin(ωes・t) (32)
【0193】電流制御部50の電圧指令作成部53は既に述
べたように、目標γ軸電流iγ 及びロータ角度推定用
電流信号is に基づく比例積分制御及び非干渉制御(式
(7))により、目標γ軸電圧vγ を制御する。それによ
り、ロータ角度推定用電流信号is に対応する電圧成分
vγs が、式(33)に従って目標γ軸電圧vγ に重畳さ
れる。但し、その重畳波はγ軸成分vγs のみを持ち、
δ軸成分vδs は式(34)の通り0である。
【0194】 vγs =KPd・is =KPd・αsinθs=KPd・αsin(ωes・t) (33) vδs =0 (34)
【0195】ここで、比例係数KPdは式(7)における比例
ゲインである。式(33)及び(34)を式(30)及び(31)に代入
すると、γ軸電流iγの重畳波成分iγ s及びδ軸電流iδ
の重畳波成分iδsは式(35)及び(36)で表される。
【0196】 iγs=Lδ・KPd・α{−cos(ωes・t)}/(ωes・Λ) =Lδ・KPd・α{−cosθs}/(ωes・Λ) (35) iδs=Lγδ・KPd・α{−cos(ωes・t)}/(ωes・Λ) =Lγδ・KPd・α{−cosθs}/(ωes・Λ) (36)
【0197】式(35)及び(36)から明らかなように、重畳
波成分iγs及びiδsの振幅はそれぞれLδ及びLγδに比
例する。
【0198】図9は実施例1での角度推定誤差Δθに対
するLδ、Lγδの変化を示す図である。図9の(a)はδ軸
インダクタンスLδの変化を、図9の(b)はγ軸及びδ軸
間の相互インダクタンスLγδの変化を、それぞれ示す
図である。式(21)より、δ軸インダクタンスLδは角度
推定誤差Δθに関わらず正である。それ故、γ軸電流i
γの重畳波成分iγsの振幅は角度推定誤差Δθに関わら
ず正である。一方、式(22)により、γ軸及びδ軸間相互
インダクタンスLγδはsin(2Δθ)に比例する。更に、
式(36)により、δ軸電流iδの重畳波成分iδsの振幅は
相互インダクタンスLγδに比例する。それ故、δ軸電
流iδの重畳波成分iδsの振幅はsin(2Δθ)に比例す
る。特に、角度推定誤差Δθが0°の時、図8の(d)のよ
うに、重畳波成分iδsの振幅が0に等しい。一方、角度
推定誤差Δθが有限値である時、図8の(c)のように、重
畳波成分iδsの振幅は有限値である。
【0199】上記のようにδ軸電流iδの重畳波成分i
δsの振幅はsin(2Δθ)に比例する。従って、ロータ角
度/回転速度推定部60は、既に述べた構成により、δ軸
電流i δの重畳波成分iδsの振幅を実質的に0に等しくな
るように、推定角度θmを補正する。以下、その動作を
説明する。
【0200】まず、推定誤差検出部61により、検出され
たδ軸電流iδから推定誤差εを以下のように計算す
る:式(36)により、δ軸電流iδの重畳波成分iδsは(−
cosθs)に比例して振動する。一方、式(14)により、ロ
ータ角度推定用電流信号is はsinθsに比例して振動す
る。既に述べたように、目標γ軸電圧vγ の位相はロ
ータ角度推定用電流信号is の位相と実質的に一致す
る。それ故、図8の(a)及び(c)に示されるように、目標
γ軸電圧vγ とδ軸電流iδとは互いに約90°だけずれ
た位相で振動する。従って、推定誤差検出部61はフーリ
エ解析によりδ軸電流iδから重畳波成分iδsを抽出
し、その振幅を推定誤差εとして決定する。具体的に
は、δ軸電流iδに(−cosθs)を乗じ、重畳波成分iδs
の一周期の範囲で積分する。その積分結果はδ軸電流i
δのcosθsに対応するフーリエ係数であり、すなわち、
δ軸電流iδの重畳波成分iδsの振幅である。
【0201】上記のフーリエ積分は以下に述べるような
離散フーリエ積分により行われる:式(13)及び(15)によ
り、δ軸電流iδの重畳波成分iδsの一周期の範囲で
は、重畳波直交成分hs⊥ は分割数ηと同数のサンプル
で表される。そのサンプルはPWMのキャリア周期Tcご
とに、重畳波作成部70の重畳波直交成分作成部74から推
定誤差検出部61へ入力される。
【0202】 θs=360°ζ/η (13) hs⊥ =sin(θs−90°)=−cosθs (15)
【0203】その入力と同期して、電流制御部50の三相
二相変換部52から推定誤差検出部61へ、δ軸電流iδ
サンプルが入力される。推定誤差検出部61は、入力され
たδ軸電流iδと重畳波直交成分hs⊥ とのサンプル同
士を乗算し、内部のレジスタに記憶する。この乗算処理
はPWMのキャリア周期Tcごとに、その時入力されたサ
ンプルに対して行われる。それぞれの乗算結果は、推定
誤差検出部61内部のレジスタで互いに加算されながら記
憶される。
【0204】上記の演算処理がδ軸電流iδの重畳波成
分iδsの一周期、すなわち、PWMのキャリア周期Tcの
分割数η倍ηTcの間繰り返される。それにより、上記の
レジスタに記憶された値が推定誤差εとして決定され
る。つまり、推定誤差εは式(37)に従って計算される。
【0205】 ε=Σ(iδ・hs⊥ ) (37)
【0206】ここで、総和記号Σはδ軸電流iδの重畳
波成分iδsの一周期の範囲内での全サンプルについての
和を表す。
【0207】式(37)へ式(15)及び(36)を代入すると、推
定誤差εは式(38)によりLγδに比例する。更に、式(3
8)へ式(22)を代入すると、推定誤差εは式(39)によりsi
n(2Δθ)に比例する。特に角度推定誤差Δθが十分小さ
い時、式(40)により、推定誤差εは角度推定誤差Δθに
実質上比例する。従って、推定誤差εを0へ収束させる
ようにすれば、角度推定誤差Δθを実質的に0に等しく
できる。
【0208】 ε≒(η/2)Lγδ・KPd・α/(ωes・Λ) (38) =sin(2Δθ){(Lq−Ld)/2}・(η/2)・KPd・α/(ωes・Λ) (39) ≒2Δθ{(Lq−Ld)/2}・(η/2)・KPd・α/(ωes・Λ) (40)
【0209】推定誤差εを記憶するための推定誤差検出
部61内部のレジスタは、推定誤差リセット部65により、
δ軸電流iδの重畳波成分iδsの一周期ごとにリセット
される。こうして、δ軸電流iδの重畳波成分iδsの各
周期ごとに推定誤差εが作成される。
【0210】作成された推定誤差εは推定角度θmの補
正前に、推定誤差リミッタ62により、式(41)に従って以
下のようにリミットされる。ここで、リミット後の推定
誤差εを有効推定誤差ε1とする:推定誤差εがある正
の閾値εlimより大きい時、有効推定誤差ε1をεlim
置換する;推定誤差εが負の閾値(−εlim)より小さい
時、有効推定誤差ε1を(−εlim)に置換する;推定誤差
εが(−εlim)以上でεlim以下の時、有効推定誤差ε1
を推定誤差εと一致させる。
【0211】 ε1=−εlim (ε<−εlim) ε1=ε (−εlim≦ε≦εlim) ε1=εlim (ε>εlim) (41)
【0212】次に、角度進み量θpが角度進み量作成部6
3により、有効推定誤差ε1に基づいて式(42)に従って決
定される。角度進み量θpは有効推定誤差ε1に対する比
例積分制御の操作量に相当する。
【0213】 θp=KTPP・ε1+ΣKTPIε1 (42)
【0214】ここで、比例ゲインをKTPP、積分ゲインを
KTPIとする。総和記号Σは、制御開始から角度進み量θ
pの出力までの全サンプルについての和を示す。
【0215】更に、角度進み量θpに基づいて、推定回
転速度補正部64が推定回転速度ωmを、推定角度補正部6
6が推定角度θmを、それぞれ以下のように補正する:
推定回転速度補正部64はディジタルLPFを通して、角
度進み量θpから推定回転速度ωmを決定する。具体的に
は、式(43)による演算処理を行う。
【0216】 ωm(n)=KW・KTPW・θp+(1−KW)ωm(n−1) (43)
【0217】ここで、LPFの係数をKWとする。係数KW
は0より大きく1以下の定数である。係数KWが小さいほ
ど、LPFの作用が一般に大きい。角度進み量θpから
推定回転速度ωmへの変換係数をKTPWとする。更に、ロ
ータ12の回転制御開始から数えて(n−1)番目及びn番目
の推定回転速度ωmのサンプルをそれぞれ、ωm(n−1)及
びω m(n)とする。式(43)により、推定回転速度ωmの(n
−1)番目のサンプルωm(n−1)が角度進み量θpに基づい
て補正され、n番目のサンプルωm(n)を決定する。
【0218】推定角度補正部66は推定角度θmを、式(4
4)により角度進み量θpだけ補正する。
【0219】 θm(n)=θm(n−1)+θp (44)
【0220】ここでロータ12の回転制御開始から数えて
(n−1)番目及びn番目の推定角度θmのサンプルをそれぞ
れθm(n−1)及びθm(n)とする。式(44)により、角度進
み量θpが補正量として推定角度θmの(n−1)番目のサン
プルθm(n−1)へ加えられ、n番目のサンプルθm(n)を決
定する。
【0221】以上のように決定されたn番目のサンプル
ωm(n)及びθm(n)に基づいて、制御開始からn回目のロ
ータ12の回転制御動作が行われる。
【0222】[実施例1の動作]実施例1は、上記のそ
れぞれの構成の動作を以下のように組み合わせて、ロー
タ12の回転速度を目標回転速度ωと一致するように制
御する: 図13及び図14は、実施例1によるロータ12の
回転速度の制御を示すフローチャートである。図13の
(a)は、実施例1によるロータ12の回転速度の制御全体
の概略的フローチャートである。図13の(b)は、回転速
度制御部40の動作を示すフローチャートである。図13の
(c)は、重畳波作成部70の動作を示すフローチャートで
ある。図14の(a)は、電流制御部50の動作を示すフロー
チャートである。図14の(b)は、ロータ角度/回転速度
推定部60の動作を示すフローチャートである。
【0223】まず、図13の(a)により、実施例1による
ロータ12の回転速度の制御全体の流れについて説明す
る。 〈ステップS1〉回転速度制御部40により、目標回転速度
ω aと推定回転速度ωmとに基づいて、目標γ軸電流i
γ 及び目標δ軸電流iδ の基本波成分が決定され
る。 〈ステップS2〉重畳波作成部70により、目標重畳波電
流、すなわち、ロータ角度推定用電流信号is が設定さ
れる。
【0224】〈ステップS3〉電流制御部50により、実際
の電流が検出される。検出されたγ軸電流は、目標γ軸
電流iγ にロータ角度推定用電流信号is を重畳した
重畳波付目標γ軸電流(iγ +is )と比較される。検
出されたδ軸電流は目標δ軸電流iδ と比較される。
それらの差に基づく比例積分制御により目標電圧vu
vv 、及びvw が決定され、モータ駆動部30へ出力され
る。目標電圧vu 、vv 、及びvw はモータ駆動部30内
でPWMにより変調され、スイッチング信号guh、gul
gvh、gvl、gwh、及びgwlとなる。モータ駆動部30はスイ
ッチング信号guh、gul、gvh、gvl、gwh、及びgwlに従っ
て、ステータ巻線11u、11v、及び11wへの印加電圧を制
御する。その印加電圧の制御の結果、ステータ巻線11
u、11v、及び11wを流れる電流により、ロータ12はトル
クを受けて回転する。
【0225】〈ステップS4〉ロータ角度/回転速度推定
部60により、検出されたδ軸電流から推定誤差εがロー
タ角度推定用電流信号is の一周期ごとに、後述のよう
に求められる。その推定誤差εに基づいて、角度推定誤
差Δθを0へ収束させるように推定角度θmが補正され
る。
【0226】〈ステップS5〉重畳波作成部70で、カウン
タ71により設定されたカウントζを0と比較する。カウ
ントζが0と等しい時はステップS1から、それ以外の時
はステップS2から再び動作を繰り返す。その時、ステッ
プS2からステップS4までの周期が実質的にPWMのキャ
リア周期Tcに等しいので、ステップS1の繰り返し周期が
PWMのキャリア周期Tcの分割数η倍ηTcに実質的に等
しい。すなわち、ロータ角度推定用電流信号is の周期
と実質的に等しい。更に、分割数ηは重畳波周期設定部
75によりランダムに設定されるので、ステップS1の繰り
返し周期ηTcはランダムに変化する。
【0227】次に、図13の(b)により、回転速度制御部4
0の動作の流れについて説明する。 〈ステップS11〉外部、好ましくは上位コンピュータ、
からの回転速度指令[ω a]により示されるアナログ目
標回転速度ω aを、ADC41により目標回転速度ω
へ変換する。 〈ステップS12〉目標回転速度ωに基づく比例積分制
御での操作量に対応する目標トルクTをPI制御部42に
より決定する。 〈ステップS13〉トルク/電流変換部43により、目標ト
ルクTを目標γ軸電流iγ 、目標δ軸電流iδ 及び
目標電流振幅ia へ変換する。
【0228】続いて、図13の(c)により、重畳波作成部7
0の動作の流れについて説明する。 〈ステップS21〉カウンタ71により、カウントζを1だ
け進める。 〈ステップS22〉重畳波位相設定部72により、重畳波位
相θsを更新する。 〈ステップS23〉重畳波電流指令作成部73により、重畳
波電流指令[is ]を作成する。 〈ステップS24〉重畳波直交成分作成部74により、重畳
波直交成分hs⊥ を作成する。
【0229】図14の(a)により、電流制御部50の動作の
流れについて説明する。 〈ステップS31〉相電流センサ21u及び21vにより、実際
にステータ巻線を流れる電流すなわちアナログu相電流
iua及びアナログv相電流ivaを検出する。 〈ステップS32〉ADC51u及び51vにより、検出された
アナログu相電流iua及びアナログv相電流ivaをu相電
流iu及びv相電流ivへアナログ/ディジタル変換する。 〈ステップS33〉三相二相変換部52により、u相電流iu
及びv相電流ivをγ軸電流iγ及びδ軸電流iδへ変換す
る。
【0230】〈ステップS34〉電圧指令作成部53は、γ
軸電流iγと、目標γ軸電流iγ にロータ角度推定用電
流信号is を重畳した重畳波付目標γ軸電流(iγ +is
)とを、δ軸電流iδと目標δ軸電流iδ とを、それ
ぞれ比較する。それらの差に基づく比例積分制御によ
り、目標γ軸電圧vγ 及び目標δ軸電圧vδ を決定す
る。 〈ステップS35〉二相三相変換部54により、目標γ軸電
圧vγ 、及び目標δ軸電圧vδ を目標電圧vu
vv 、及びvw へ変換する。 〈ステップS36〉PWM制御部37のPWMにより、目標
電圧vu 、vv 、及びvw を変調し、スイッチング信号
guh、gul、gvh、gvl、gwh、及びgwlを決定する。 〈ステップS37〉モータ駆動部30は、スイッチング信号g
uh、gul、gvh、gvl、gwh、及びgwlに従ってステータ巻
線11u、11v、及び11wへ電圧を印加する。その結果、ス
テータ巻線11u、11v、及び11wを流れる電流により、ロ
ータ12はトルクを受けて回転する。
【0231】図14の(b)により、ロータ角度/回転速度
推定部60の動作の流れについて説明する。 〈ステップS41〉推定誤差検出部61により、推定誤差ε
を計算する。 〈ステップS42〉カウンタ71のカウントζと分割数ηと
を比較し、比較結果により後の処理を分岐する。カウン
トζと分割数ηとが異なる時、ステップS43からステッ
プS49までの処理をスキップして、ステップS410へ処理
をジャンプさせる。カウントζと分割数ηとが等しい
時、ステップS43へ処理を進める。従って、ステップS43
からステップS49までは、ステップS1(図13の(a))の繰
り返し周期と同じ周期で繰り返される。
【0232】〈ステップS43〉推定誤差リミッタ62によ
り推定誤差εをリミットし、有効推定誤差ε1を決定す
る。 〈ステップS44〉角度進み量作成部63により、有効推定
誤差ε1に基づいて角度進み量θpを作成する。 〈ステップS45〉推定回転速度補正部64により、角度進
み量θpをLPFに通し、その後その角度進み量θpに基
づいて推定回転速度ωmを補正する。
【0233】〈ステップS46〉推定誤差リセット部65に
より、推定誤差検出部61内部のレジスタに記憶された推
定誤差εをリセットする。 〈ステップS47〉重畳波作成部70の重畳波周期設定部75
により、分割数ηを新たに設定し直す。これにより、次
回のステップS1の繰り返し周期ηTcが更新される。 〈ステップS48〉重畳波作成部70のカウンタリセット部7
6により、カウンタ71のカウントζをリセットし、すな
わち、ζ=0とする。 〈ステップS49〉重畳波作成部70の重畳波電流振幅設定
部77により、重畳波電流振幅αを設定する。 〈ステップS410〉推定角度補正部66により、推定角度θ
mを角度進み量θpだけ進める。ステップS410はPWMの
キャリア周期Tcごとに繰り返される。
【0234】[実施例1の効果]実施例1のロータ12の
回転制御による効果を以下説明する: 実施例1では、
ロータ角度推定用電流信号is の周期をランダムに変化
させる。それにより、ロータ角度推定用電流信号is
重畳に伴って発生する騒音が、特定の周波数成分だけに
偏らず、様々な周波数成分を含む。その結果、騒音のエ
ネルギーが様々な周波数成分に分配されるので、それぞ
れの周波数成分の大きさは従来より小さい。従って、従
来のモータ制御装置に比べて、重畳波による騒音を低減
できる。
【0235】実施例1では図12の振幅テーブルに従っ
て、目標電流振幅ia が大きいほど重畳波電流振幅αが
大きく設定される。逆に、目標電流振幅ia が小さいほ
ど重畳波電流振幅αが小さく設定される。こうして、目
標電流の振幅に合わせてロータ角度推定用電流信号is
の振幅が調節される。それにより、応答電流の検出での
SN比を大きく保ったまま、ロータ角度推定用電流信号
is の振幅を必要最小限に抑えることができる。従っ
て、従来の制御装置より、重畳波による騒音を低減でき
る。
【0236】IPMSM10の出力トルクが小さい時、シ
ャフト15へ接続された外部の機械的構造物は比較的小さ
い騒音(メカ騒音)しか出さない。従って、出力トルクが
小さい時は特に、IPMSM10の重畳波成分による騒音
を抑えなければならない。ステータ巻線の電流が小さい
時、IPMSM10の出力トルクは小さい。実施例1で
は、図12の振幅テーブルに従って、目標電流振幅ia
小さい時は重畳波電流振幅αを小さく設定する。その結
果、IPMSM10の出力トルクが小さい時に、重畳波成
分による騒音を小さく抑えることができる。
【0237】実施例1では、ロータ角度推定用電流信号
is の一周期がPWMのキャリア周期Tcの分割数η倍で
ある。一方、応答電流に対するサンプリングタイムはP
WMのキャリア周期Tcに実質的に等しい。従って、応答
電流のサンプルがロータ角度推定用電流信号is の一周
期当たり分割数ηと等しい個数だけある。推定誤差ε
は、それらの複数個のサンプルから離散フーリエ積分に
より計算される。複数個のサンプルに基づく積分演算で
あるので、一つ一つのサンプルに含まれるノイズを平均
化できる。その結果、推定誤差εに含まれるノイズは一
つ一つのサンプルに含まれるものより小さい。従って、
推定誤差εのSN比を十分大きく維持できる。更に、推
定誤差εのSN比が十分大きいので、推定誤差εをLP
Fにより大きく減衰させなくても良い。その上、角度進
み量θpの計算(式(42))に用いる比例ゲインKTPP及び
積分ゲインKTPIを小さく抑えなくても良い。従って、ロ
ータ12の回転制御の応答速度を大きく維持できる。
【0238】実施例1では、推定誤差εをリミットし、
有効推定誤差ε1を決定する。その結果、検出されたδ
軸電流iδへ極端に大きいノイズが混入し得る時でも、
有効推定誤差ε1の大きさは閾値εlimを超えない。それ
故、推定誤差εをLPFにより大きく減衰させ、又は、
比例ゲインKTPP及び積分ゲインKTPIを小さく抑える等、
推定誤差εの範囲を制限しなくても良い。従って、ロー
タ12の回転制御の応答速度を大きく維持できる。
【0239】実施例1では、ロータ角度推定用電流信号
is の周期ηTcがPWMのキャリア周期Tcの偶数倍であ
る。その結果、以下の理由により、推定誤差εの検出精
度が良い:実施例1では、検出されたδ軸電流iδから
ロータ角度推定用電流信号is に対する応答電流iδs
求める。ロータ角度推定用電流信号is に対する応答電
流iδsの波形はモータ駆動部30のPWM制御により一般
に歪む。その歪みは、ロータ角度推定用電流信号is
周期を大きくすれば、小さく抑えることができる。
【0240】しかし、ロータ角度推定用電流信号is
周期はある程度小さくなければならない。何故なら、重
畳波成分と基本波成分とを十分明確に区別するためであ
る。従って、分割数ηを極端には大きくできない。その
結果、ロータ角度推定用電流信号is の一周期に含まれ
るPWMのキャリア(三角波)の数、すなわち、分割数η
の上限が制限される。すなわち、応答電流iδsの波形の
歪みをある程度より小さく抑えることができない。
【0241】そこで、実施例1では、ロータ角度推定用
電流信号is の周期をPWMのキャリア周期Tcの偶数倍
とする。その時、応答電流iδsの偶数個のサンプルは実
質的に正負対称である。それ故、推定誤差εを離散フー
リエ積分によって求める時、互いに対称なサンプル同士
でPWMによる歪みの誤差を相殺できる。その結果、推
定誤差εの検出精度が良い。
【0242】《実施例2》以下、本発明の実施例2によ
る位置センサレスモータ制御装置を説明する。実施例2
の位置センサレスモータ制御装置は、実施例1の好まし
い変形の一例である。実施例2は実施例1と次の二つの
点で異なる: 第一に、ロータ角度推定用信号が電圧信
号である。すなわち重畳波作成部2070が重畳波電圧指令
[vs ]を設定する。電流制御部2050が目標γ軸電流iγ
及び目標δ軸電流iδ を目標γ軸電圧vγ 及び目標
δ軸電圧vδ へ変換する。その後、目標γ軸電圧vγ
にロータ角度推定用電圧信号vs が重畳され、重畳波付
目標γ軸電圧(vγ +vs )が決定される。第二に、重
畳波作成部2070内の重畳波周期設定部2075が分割数ηを
所定のテーブルに従って設定する。
【0243】図15は、実施例2における位置センサレス
モータ制御装置の構成を示すブロック図である。実施例
2では、実施例1と比べて、重畳波作成部2070及び電流
制御部2050が異なる。実施例2のその他の構成について
は実施例1と同様である。それ故、それらの同様な構成
に対しては実施例1と同じ符号を付し、その説明は実施
例1のものを援用する。
【0244】電流制御部2050は、u相電流センサ21uか
らアナログu相電流値信号[iua]を、v相電流センサ21v
からアナログv相電流値信号[iva]を、ロータ角度/回
転速度推定部60から推定角度θmを示す信号[θm]を、そ
れぞれ入力する。更に、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδ
後述のように求める。その後、δ軸電流iδを示す信号
[iδ]がロータ角度/回転速度推定部60へ出力される。
【0245】電流制御部2050は更に回転速度制御部40か
らγ軸電流指令[iγ ]とδ軸電流指令[iδ ]とを、ロ
ータ角度/回転速度推定部60から推定回転速度値信号
m]を、重畳波作成部2070から重畳波電圧指令[vs ]
を、それぞれ入力する。それらの入力により示される
値、先に入力された推定角度θm、γ軸電流iγ、及びδ
軸電流iδに基づいて、電流制御部2050は目標u相電圧v
u 、目標v相電圧vv 及び目標w相電圧vw を後述の
ように決定し、モータ駆動部30へ出力する。
【0246】重畳波作成部2070は、回転速度制御部40か
ら電流振幅指令[i ]を入力し、それに基づいて重畳
波電圧指令[vs ]及び重畳波直交信号[hs⊥ ]を設定す
る。重畳波電圧指令[vs ]は電流制御部2050へ、重畳波
直交信号[hs⊥ ]はロータ角度/回転速度推定部60へ出
力される。
【0247】[電流制御部2050の構成]図16は、実施例
2における電流制御部2050の構成を示すブロック図であ
る。電流制御部2050では、実施例1のもの(図4)と比
べ、電圧指令作成部2053及び二相三相変換部2054が異な
る。その他の構成については実施例1と同様である。従
って、それらに対しては実施例1と同じ符号を付し、そ
の説明は実施例1のものを援用する。
【0248】電圧指令作成部2053は、三相二相変換部52
からγ軸電流値信号[iγ]とδ軸電流値信号[iδ]とを、
外部からγ軸電流指令[iγ ]と、δ軸電流指令[iδ ]
と、推定回転速度ωmを示す信号[ωm]と、を入力する。
電圧指令作成部2053は、それらの入力により示される値
に基づいて、目標γ軸電圧vγ と目標δ軸電圧vδ
を後述のように演算する。演算結果はそれぞれγ軸電圧
指令[vγ ]及びδ軸電圧指令[vδ ]として、二相三相
変換部2054へ出力される。
【0249】二相三相変換部2054は、入力された目標γ
軸電圧vγ 、目標δ軸電圧vδ 、推定角度θm、及び
重畳波電圧指令[vs ]に基づいて、目標u相電圧vu
目標v相電圧vv 、及び目標w相電圧vw を後述のよう
に演算する。演算結果はそれぞれu相電圧指令[vu ]、
v相電圧指令[vv ]、及びw相電圧指令[vw ]としてモ
ータ駆動部30へ出力される。実施例2ではこうして、重
畳波作成部2070からの重畳波電圧指令[vs ]が二相三相
変換部2054へ入力される。
【0250】[電流制御部2050の動作]次に、電流制御
部2050の動作を説明する。実施例2では実施例1とは異
なり、重畳波がロータ角度推定用電圧信号vs 、すなわ
ち、電圧信号である。従って、モータ駆動部30への制御
信号に対するロータ角度推定用電圧信号vs の重畳のた
めの動作が、以下のように実施例1とは異なる。
【0251】電流センサ21u及び21vからのアナログ電流
値信号[iua]及び[iva]は、ADC51u及び51vにより電流
値信号[iu]及び[iv]へ変換される。それらの値は三相二
相変換部52によりγ軸電流iγ及びδ軸電流iδへ、式
(5)及び(6)に従って変換される。
【0252】 iγ=(√2)×{iusin(θm+60°)+ivsinθm} (5) iδ=(√2)×{iucos(θm+60°)+ivcosθm} (6)
【0253】電圧指令作成部2053は、比例積分制御(P
I制御)と非干渉制御とにより目標γ軸電圧vγ 及び
目標δ軸電圧vδ を、式(45)及び(46)に従って制御す
る。それにより、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを、目標
γ軸電流iγ 及び目標δ軸電流iδ とそれぞれ一致す
るように制御する。
【0254】 vγ =KPd{iγ −iγ}+KIdΣ{iγ −iγ} +R×iγ −ωem×Lq×iδ (45) vδ =KPq{iδ −iδ}+KIqΣ{iδ −iδ} +R×iδ +ωem×Ld×iγ +ωem×ψ (46)
【0255】ここで、式(45)及び(46)で用いられる定
数、変数及び記号は全て式(7)及び(8)と共通である。更
に、目標γ軸電圧vγ と目標δ軸電圧vδ との基本波
成分の大きさ及び制御対象の推定回転速度ωmの値はい
ずれも、実施例1と同程度である。
【0256】電圧指令作成部2053により決定された目標
γ軸電圧vγ 、及び、目標δ軸電圧vδ は、ステータ
巻線11u、11v、及び11wに印加される目標u相電圧
vu 、目標v相電圧vv 、及び目標w相電圧vw へ、二
相三相変換部54により式(47)、(48)及び(49)に従って変
換される。その時、重畳波作成部2070からのロータ角度
推定用電圧信号vs が目標γ軸電圧vγ へ重畳され
る。それにより、重畳波付目標γ軸電圧(vγ +vs )
が決定される。
【0257】 vu =√(2/3){(vγ +vs )cosθm−vδ sinθm} (47) vv =√(2/3){(vγ +vs )cos(θm−120°)−vδ sin(θm−120°)} (48) vw =√(2/3){(vγ +vs )cos(θm+120°)−vδ sin(θm+120°)} (49)
【0258】それらの目標u相電圧vu 、目標v相電圧
vv 、及び目標w相電圧vw がモータ駆動部30へ出力さ
れる。
【0259】[重畳波作成部2070の構成]図17は、実施
例2における重畳波作成部2070の構成を示すブロック図
である。重畳波作成部2070を実施例1の重畳波作成部70
(図5の(b))と比べると、重畳波電圧指令作成部2073、重
畳波周期設定部2075、及び重畳波電圧振幅設定部2077が
異なる。その他の構成は実施例1と同様であるので、同
じ符号を付してその説明は実施例1のものを援用する。
【0260】重畳波電圧指令作成部2073は、重畳波位相
設定部72により設定された重畳波位相θsと、重畳波振
幅設定部2077により設定された重畳波電圧振幅αvと、
に基づいて、重畳波電圧指令[vs ]を後述のように設定
する。重畳波周期設定部2075は論理回路であり、所定の
分割数テーブルを記憶したROM又はRAMを含む。そ
の分割数テーブルに基づいて分割数ηを後述のように設
定する。重畳波電圧振幅設定部2077は論理回路であっ
て、後述の振幅テーブル(図18)を記憶したROM又はR
AMを含む。重畳波電圧振幅設定部2077は、外部から電
流振幅指令[ia ]を入力し、それにより示される目標電
流振幅ia に対応する重畳波電圧振幅αvを振幅テーブ
ルから求めて出力する。
【0261】重畳波作成部2070は好ましくはソフトウエ
アとして構成される。その他に、上記の各構成要素がそ
れぞれ論理素子として構成されていても良い。
【0262】[重畳波作成部2070の動作]次に、重畳波
作成部2070の動作のうち、実施例2の特徴部分を説明す
る。その他の動作については実施例1と同様であるの
で、その説明は実施例1のものを援用する。
【0263】重畳波作成部2070の動作は、実施例1とは
以下の二つの点で異なる:第一に、重畳波として電圧信
号であるロータ角度推定用電圧信号vs が設定される。
重畳波電圧振幅設定部2077は、回転速度推定部60からの
電流振幅指令[ia ]により示される目標電流振幅ia
基づいて、重畳波電圧振幅αvを以下のように設定す
る。図18は、実施例2における目標電流振幅ia と重畳
波電圧振幅α vとの対応関係を示す振幅テーブルであ
る。重畳波電圧振幅設定部2077はその振幅テーブルに従
って、目標電流振幅ia に対応する重畳波電圧振幅αv
の値を以下のように設定する。
【0264】目標電流振幅ia が下限値ia 1より小さ
い時、重畳波電圧振幅αvが下限値α v1に設定される。
目標電流振幅ia が上限値ia 2より大きい時、重畳波
電圧振幅αvが上限値α v2に設定される。目標電流振幅i
a が下限値ia 1以上かつ上限値ia 2以下である時、
重畳波電圧振幅αvが点(ia 1,αv1)と点(ia 2,α
v2)とを直線的に補間した値に設定される。こうして、
目標電流振幅ia が大きいほど、重畳波電圧振幅αv
大きく設定される。実施例2では、重畳波電圧振幅αv
の下限値αv1が約75V、上限値αv2が約125Vであり、目
標電流振幅ia の下限値ia 1が約0A、上限値ia 2が約
15Aである。これらの値は、電流の基本波と重畳波との
振幅比が数十%程度になるように設定される。
【0265】ロータ角度推定用電圧信号vs は重畳波電
圧指令作成部2073により、重畳波位相θs及び重畳波電
圧振幅αvに基づいて、式(50)に従って正弦波として設
定される。
【0266】 vs =αvsinθs=αvsin(ωes・ζTc) (50)
【0267】ここで、PWM制御器37によるPWMのキ
ャリア周期をTcとし、カウントζとキャリア周期Tcとの
積で重畳波位相θsを割った値を重畳波角周波数ωes
する。
【0268】式(50)を式(14)及び(33)と比較すれば明ら
かなように、重畳波電圧振幅αvは実施例1の重畳波電
流振幅αに比例係数KPdを乗じたものに対応する。従っ
て、上記の重畳波電圧振幅設定部2077による重畳波電圧
振幅αvの設定に代えて、重畳波電圧指令作成部2073
が、実施例1の重畳波電流振幅設定部77と同様な構成に
より設定された重畳波電流振幅αに比例係数KPdを乗じ
て重畳波電圧振幅αvを設定しても良い。更に、式(33)
と式(50)との対応から明らかなように、実施例2でのγ
軸電流及びδ軸電流に含まれるロータ角度推定用電圧信
号vs に対する応答電流は、実施例1での応答電流iγs
及びiδs(式(35)及び(36))と同様である。従って、実施
例2においても実施例1と全く同様に、ロータの角度及
び回転速度を推定できる。
【0269】第二に、ロータ角度推定用電圧信号vs
周期が所定の分割数テーブルに従って変化する。表1
は、重畳波周期設定部2075内部に記憶された分割数テー
ブルである。重畳波周期設定部2075は、表1の左欄に示
された番号順に右欄に示された値を分割数ηとして設定
する。分割数ηの設定値はいずれも正の偶数であって、
実施例2では20〜40の範囲からランダムに選ばれる。設
定順はNo.16まで設定される。重畳波周期設定部2075は
分割数ηを表1に従ってランダムな正の偶数に設定す
る。表1の最下欄の値の設定後、分割数ηの設定は最上
欄であるNo.1の値から繰り返される。
【0270】
【表1】
【0271】こうして、実施例2では、予め分割数ηが
計算され、分割数テーブルとして記憶される。それによ
り、実施例1とは異なり、制御動作ごとに分割数ηを計
算し直す必要がない。従って、分割数ηの演算時間を短
縮できるので、例えばマイコン2022に含まれるCPU等
の負担を軽くできる。
【0272】表1では分割数ηがランダムに設定され
る。分割数ηが完全にランダムである時、同じ値又は互
いに近似した値が多数回連続して設定され得る。その場
合、重畳波による騒音が増幅されて大きくなり得る。そ
れを防ぐ目的で、分割数ηの設定値がランダムである表
1に代えて、前回の出力時の値と必ず所定の大きさ以上
異なる値が設定された分割数テーブルを用いるようにし
ても良い。
【0273】実施例1及び実施例2はIPMSM10を制
御対象とした。しかし、本発明はIPMSMの駆動制御
に限定されるのではなく、突極性を有する同期モータで
あればその種類を問わずに成立する。例えば、実施例1
及び実施例2において、IPMSM10をSynRM(Sy
nchronous Reluctance Motor)に置き換えても良い。S
PMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Mot
or)でも、ロータのd軸インダクタンスとq軸インダク
タンスとの相違がδ軸電流の交流成分の振幅から検出可
能な程度に大きければ、本発明を実施できる。
【0274】実施例1では、式(40)より推定誤差εが、
更に式(42)より角度進み量θpが共に重畳波電流振幅α
及び比例ゲインKPdに比例する。一方、実施例2では、
推定誤差εが重畳波電圧振幅αvに比例する。これは、
重畳波電圧振幅αvが実施例1の重畳波電流振幅α及び
比例ゲインKPdと対応することから明らかであろう。従
って、実施例1では重畳波電流振幅α及び/又は比例ゲ
インKPd、実施例2では重畳波電圧振幅αvがそれぞれあ
る程度大きい時、式(42)で用いられる比例ゲインKTPP
び積分ゲインKTPIを小さく調整する。逆に、重畳波電流
振幅α、比例ゲインKPd又は重畳波電圧振幅αvがある程
度小さい時、比例ゲインKTPP及び積分ゲインKTPIを大き
く調整する。これらの調整により、角度進み量θpのゲ
インを実質的に一定に保つようにしても良い。それによ
り、角度進み量θpに基づく制御を安定化できる。
【0275】上記の実施例において、ロータ12の推定回
転速度ωmの増大に合わせて、角度進み量θpの計算(式
(42))に用いる比例ゲインKTPP及び積分ゲインKTPIを大
きく変化させても良い。その時、以下の理由により、角
度進み量θpに基づく制御を安定化できる: 推定誤差
εの大きさが同一であれば、角度進み量θpの変化量は
同一である。従って、式(43)により、ロータ12の回転速
度が大きい時(高速時)より小さい時(低速時)、推定回転
速度ωmに対する角度進み量θpの割合が大きい。つま
り、低速時の方が一定の推定誤差εに対する推定回転速
度ωmの補正量が大きい。その結果、比例ゲインKTPP
び積分ゲインKTPIの低速時での最適値は高速時での最適
値より小さい。そこで、推定推定回転速度ωmの増大に
合わせて、比例ゲインKTPP及び積分ゲインKTPIを増大さ
せ、それらが回転速度に依らず最適値を保つように調整
する。それにより、角度進み量θpに基づく制御が安定
化する。
【0276】上記と同様の理由により、推定誤差リミッ
タ62において、式(41)で用いた閾値εlimの値を推定回
転速度ωmの増大に合わせて増大させても良い。
【0277】上記の実施例では、推定誤差リミッタ62が
推定誤差εを直接リミットした。しかし、本発明はその
方法に限定されない。δ軸電流に含まれるロータ角度推
定用信号に対する応答電流をリミットできる他の方法が
用いられても良い。例えば、推定誤差εに所定のゲイン
を乗じたものをリミットし、式(42)において有効推定誤
差ε1の代わりに用いても良い。
【0278】上記の実施例では、重畳波直交成分hs⊥
(式(15))を用いて式(37)に従ってδ軸電流iδを離散
フーリエ積分し、推定誤差εを定義した。その他に、角
度推定誤差Δθに比例する任意の量を推定誤差εとして
定義しても良い。例えば、検出されたδ軸電流iδのサ
ンプルの絶対値の総和を推定誤差εとして定義しても良
い。その時、一つ一つのサンプルに含まれるノイズが総
和によって相殺されるとは限らない。従って、推定誤差
εの精度の点では、上記の実施例の定義の方が好まし
い。
【0279】上記の実施例では、γ軸方向にロータ角度
推定用信号を重畳し、δ軸方向の応答電流を検出した。
その他に、重畳波の重畳方向と応答電流の検出方向とを
交換しても良い。すなわち、ロータ角度推定用電流信号
is を目標δ軸電流iδ に、又はロータ角度推定用電
圧信号vs を目標δ軸電圧指令値vδ に、それぞれ重
畳し、検出されたγ軸電流iγに現れる応答電流の振幅
を検出する。その振幅が実質的に0に収束するように、
推定誤差εを制御しても良い。
【0280】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、ロータ
角度推定用信号の周期をランダムに変化させることによ
り、重畳波による騒音を従来より低減できる。更に、ロ
ータ角度推定用信号の振幅を変化させることにより、制
御能力を維持するのに最低限必要な程度に振幅を抑える
ことができる。それにより、従来の制御装置に比べて推
定精度を低減することなく、かつ、制御の応答速度を遅
くすることなく、騒音を抑えることができる。
【0281】本発明によれば、応答電流をロータ角度推
定用信号の一周期当たり複数回サンプリングし、その複
数個のサンプルにより離散フーリエ積分して推定誤差ε
を定義する。それにより、一つ一つのサンプルに含まれ
るノイズを統計的に抑えて、角度推定誤差Δθを精度良
く求めることができる。
【0282】特に、同期モータに対してPWM制御をす
る時、ロータ角度推定用信号の波形を正負対称にし、そ
の周期をPWMのキャリア周期の偶数倍にする。すなわ
ち、その一周期当たりのサンプル数を偶数にする。それ
により、互いに対称な位置でのサンプルに含まれるノイ
ズ同士が相殺するので、角度推定誤差Δθをより精度良
く求めることができる。
【0283】本発明によれば、ロータ角度推定用信号に
対する応答電流をリミットし、リミットされた応答電流
に基づき推定角度を求める。それにより、検出された電
流に含まれるノイズが極端に大きい時でも、ロータの回
転制御が安定化できる。
【0284】上記の実施例による位置センサレスモータ
制御装置は、電気自動車の車輪駆動モータに含まれても
良い。その時、上記の実施例による位置センサレスモー
タ制御装置は、特に車輪駆動モータの起動時及び低速回
転時、駆動制御能力を維持しつつ騒音を低減させ得る。
従って、上記の電気自動車では、発進時及び徐行時、車
輪駆動モータの駆動がスムーズで、かつ、騒音が小さ
い。それ故、乗員に快適な走行感を与える。
【0285】上記の実施例による位置センサレスモータ
制御装置は、換気装置のファン駆動モータに含まれても
良い。その時、上記の実施例による位置センサレスモー
タ制御装置は、特にファン駆動モータの起動時及び低速
回転時、駆動制御能力を維持しつつ騒音を低減させ得
る。従って、上記のファンでは、ファン駆動モータの駆
動制御がスムーズで、かつ、その騒音が小さい。それ
故、換気がスムーズに行われると共に、換気対象の室内
の滞在者へ不快感を与えない。
【0286】上記の実施例による位置センサレスモータ
制御装置は、冷蔵庫のコンプレッサに含まれても良い。
その時、上記の実施例による位置センサレスモータ制御
装置は、特にコンプレッサの起動時及び低速回転時、駆
動制御能力を維持しつつ騒音を低減させ得る。従って、
上記の冷蔵庫では、起動時及び定常駆動時、コンプレッ
サの駆動制御がスムーズで、かつ、その騒音が小さい。
それ故、例えば夜間、家庭内での安眠を妨げない。
【0287】上記の実施例による位置センサレスモータ
制御装置は、エアコンのコンプレッサに含まれても良
い。上記の実施例による位置センサレスモータ制御装置
は、特にコンプレッサの起動時及び低速回転時、駆動制
御能力を維持しつつ騒音を低減させ得る。従って、上記
のエアコン用室外機では、起動時及び定常駆動時、コン
プレッサの駆動制御がスムーズで、かつ、その騒音が小
さい。それ故、室内の滞在者及び室外周辺の住民に不快
感を与えない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による位置センサレスモータ
制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1によるモータ駆動部30の構成
を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1による回転速度制御部40の構
成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1による電流制御部50の構成を
示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例1によるロータ角度/回転速度
推定部60及び重畳波作成部70の構成を示すブロック図で
ある。
【図6】本発明の実施例における電流を表現する座標系
を模式的に表す図である。
【図7】本発明の実施例1における目標u相電圧vu
びu相電流iuの波形図である。
【図8】本発明の実施例1における目標γ軸電圧vγ
γ軸電流iγ及びδ軸電流iδの波形図である。
【図9】本発明の実施例1において、δ軸インダクタン
スLδとγ軸及びδ軸間相互インダクタンスLγδとの角
度推定誤差Δθによる変化を示す図である。
【図10】本発明の実施例1における重畳波位相θsの出
力ごとの変化を示す図である。
【図11】本発明の実施例1におけるロータ角度推定用電
流信号is の波形図である。
【図12】本発明の実施例1における目標電流振幅ia
重畳波電流振幅αとの対応を表す振幅テーブルを示す図
である。
【図13】本発明の実施例1全体、回転速度制御部40及び
重畳波作成部70の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施例1における電流制御部50及びロ
ータ角度/回転速度推定部60の動作を示すフローチャー
トである。
【図15】本発明の実施例2による位置センサレスモータ
制御装置の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施例2による電流制御部2050の構成
を示すブロック図である。
【図17】本発明の実施例2による重畳波作成部2070の構
成を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施例2における目標電流振幅ia
重畳波電圧振幅αvとの対応を表す振幅テーブルを示す
図である。
【符号の説明】 10 IPMSM 11u、11v、11w ステータ巻線 12 ロータ 13 ロータヨーク 14 永久磁石 15 シャフト 21u、21v 電流センサ 22 マイコン 30 モータ駆動部 40 回転速度制御部 50 電流制御部 60 ロータ角度・回転速度推定部 70 重畳波作成部
フロントページの続き (72)発明者 田澤 徹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 大山 一朗 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 丸山 幸紀 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5H560 BB04 BB07 BB17 DA14 DA18 DB14 DC01 DC12 EB01 GG04 SS02 TT02 TT15 UA06 XA02 XA04 XA12 XA13 5H576 CC02 DD02 DD07 EE01 EE11 GG02 GG04 HA04 HB01 JJ03 JJ12 KK05 LL14 LL22

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトル
    を決定するステップ; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
    電圧信号を、その周期を変化させて設定するステップ; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するステ
    ップ; (D) (a) ロータの推定角度方向(以下、γ軸方向とい
    う)に基づく第一の方向での前記目標電流ベクトルの成
    分に前記ロータ角度推定用電流信号を重畳して重畳波付
    目標電流ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求めるス
    テップ; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトル又は前記重畳波付
    目標電圧ベクトルに基づいて、モータ駆動装置により前
    記ステータ巻線へ電力を供給するステップ; (F) 前記検出ステップで検出された前記電流を表す電
    流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係にある第二
    の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電流信号又
    は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を求
    めるステップ;及び、 (G) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正する
    ステップ; を有する位置センサレスモータ制御方法。
  2. 【請求項2】 前記ロータ角度推定用電流信号又は前記
    ロータ角度推定用電圧信号の周期をランダムに変化させ
    る、請求項1記載の位置センサレスモータ制御方法。
  3. 【請求項3】 前記ロータ角度推定用電流信号又は前記
    ロータ角度推定用電圧信号の周期を所定のテーブルに基
    づいて変化させる、請求項1記載の位置センサレスモー
    タ制御方法。
  4. 【請求項4】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトル
    を決定するステップ; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
    電圧信号を、その振幅を変化させて設定するステップ; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するステ
    ップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又
    は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求めるス
    テップ; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトル又は前記重畳波付
    目標電圧ベクトルに基づいて、モータ駆動装置により前
    記ステータ巻線へ電力を供給するステップ; (F) 前記検出ステップで検出された前記電流を表す電
    流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係にある第二
    の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電流信号又
    は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を求
    めるステップ;及び、 (G) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正する
    ステップ; を有する位置センサレスモータ制御方法。
  5. 【請求項5】 前記電流ベクトルの振幅が大きいほど、
    前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度推定
    用電圧信号の振幅を大きく設定する、請求項4記載の位
    置センサレスモータ制御方法。
  6. 【請求項6】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトル
    を決定するステップ; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
    ロータ角度推定用電圧信号、を設定するステップ; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するステ
    ップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又
    は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求めるス
    テップ; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトル又は前記重畳波付
    目標電圧ベクトルに従って、モータ駆動装置により前記
    ステータ巻線へ電力を供給するステップ; (F) 前記検出ステップで検出された前記電流を表す電
    流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係にある第二
    の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電流信号又
    は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を、
    前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度推定
    用電圧信号の一周期当たり少なくとも三回サンプリング
    して求めるステップ;及び、 (G) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正する
    ステップ; を有する位置センサレスモータ制御方法。
  7. 【請求項7】 前記応答電流のサンプリングが前記ロー
    タ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信
    号の半周期当たり複数回行われる、請求項6記載の位置
    センサレスモータ制御方法。
  8. 【請求項8】 (A) (a) 前記ロータ角度推定用電流信
    号又は前記ロータ角度推定用電圧信号の周期をパルス幅
    変調(PWM)のキャリア周期の偶数倍に設定し、(b)
    前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度推
    定用電圧信号の波形を前記周期の前半と後半との中間点
    について対称に設定し; (B) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電
    圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルで表され
    る電圧を前記PWMにより変調し、変調された前記電圧
    を前記モータ駆動装置により前記ステータ巻線へ印加
    し; (C) 前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角
    度推定用電圧信号 の対称な波形に基づいて前記応答電
    流を求める;請求項7記載の位置センサレスモータ制御
    方法。
  9. 【請求項9】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクトル
    を決定するステップ; (B) (a) 周期がPWMのキャリア周期の偶数倍であ
    り、(b) 波形が前記周期の前半と後半との中間点につ
    いて対称であるロータ角度推定用電流信号又はロータ角
    度推定用電圧信号、を設定するステップ; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するステ
    ップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又
    は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求めるス
    テップ; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する目標電
    圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルで表され
    る電圧を前記PWMにより変調し、変調された前記電圧
    を前記モータ駆動装置により前記ステータ巻線へ印加す
    るステップ; (F) 前記検出ステップで検出された前記電流を表す電
    流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係にある第二
    の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電流信号又
    は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を、
    前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度推定
    用電圧信号の対称な波形に基づいて求めるステップ;及
    び、 (G) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正する
    ステップ; を有する位置センサレスモータ制御方法。
  10. 【請求項10】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するステップ; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
    ロータ角度推定用電圧信号、を設定するステップ; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するステ
    ップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又
    は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求めるス
    テップ; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトル又は前記重畳波付
    目標電圧ベクトルに基づいて、モータ駆動装置により前
    記ステータ巻線へ電力を供給するステップ; (F) (a) 前記検出ステップで検出された前記電流を表
    す電流ベクトルの、前記第一の方向と電気角で直交する
    第二の方向での成分に、(1) 前記ロータ角度推定用電
    流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号と実質的に同
    じ周期と、(2)前記ロータ角度推定用電流信号又は前記
    ロータ角度推定用電圧信号から実質的に90°(電気角)ず
    れた位相と、を持つ信号を乗じ、 (b) その乗算結果から前記ロータ角度推定用電流信号
    又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を
    求めるステップ;及び、 (G) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正する
    ステップ; を有する位置センサレスモータ制御方法。
  11. 【請求項11】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するステップ; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
    電圧信号を設定するステップ; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するステ
    ップ; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、又
    は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求めるス
    テップ; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトル又は前記重畳波付
    目標電圧ベクトルに基づいて、モータ駆動装置により前
    記ステータ巻線へ電力を供給するステップ; (F) 検出された前記電流を表す電流ベクトルの、前記
    第一の方向と一定の関係にある第二の方向での成分か
    ら、前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度
    推定用電圧信号に対する応答電流を求めるステップ; (G) 前記応答電流の値をリミットするステップ;及
    び、 (H) 前記リミットするステップでリミットされた前記
    値を持つ前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正す
    るステップ; を有する位置センサレスモータ制御方法。
  12. 【請求項12】 (a) 前記第一の方向を前記γ軸方向
    又は前記γ軸方向に対して実質的に90°(電気角)の方向
    とし、(b) 前記第二の方向を前記第一の方向に対して
    実質的に90°(電気角)の方向とし、(c) 前記第二の方
    向での前記応答電流が実質的に0に収束するように前記
    γ軸方向を補正する、請求項1から請求項11までのい
    ずれか一項記載の位置センサレスモータ制御方法。
  13. 【請求項13】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するためのモータ制御部; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
    電圧信号を、その周期を変化させて設定するための重畳
    波作成部; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するため
    の電流検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に
    対応する目標電圧ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求める、 ための電流制御部; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルに基
    づいて、前記ステータ巻線へ電力を供給するためのモー
    タ駆動装置;及び、 (F) (a) 前記電流検出器によって検出された前記電流
    を表す電流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係に
    ある第二の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電
    流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答
    電流を求め、 (b) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正す
    る、 ためのロータ角度推定部;を有する位置センサレスモー
    タ制御装置。
  14. 【請求項14】 前記重畳波作成部が前記ロータ角度推
    定用電流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号の周期
    をランダムに変化させる、請求項13記載の位置センサ
    レスモータ制御装置。
  15. 【請求項15】 前記重畳波作成部が所定のテーブルを
    記憶した記憶部を含み、前記ロータ角度推定用電流信号
    又は前記ロータ角度推定用電圧信号の周期を前記テーブ
    ルに基づいて変化させる、請求項13記載の位置センサ
    レスモータ制御装置。
  16. 【請求項16】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するためのモータ制御部; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
    電圧信号を、その振幅を変化させて設定するための重畳
    波作成部; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するため
    の電流検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に
    対応する目標電圧ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求める、 ための電流制御部; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルに基
    づいて、前記ステータ巻線へ電力を供給するためのモー
    タ駆動装置;及び、 (F) (a) 前記電流検出器によって検出された前記電流
    を表す電流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係に
    ある第二の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電
    流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答
    電流を求め、 (b) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正す
    る、 ためのロータ角度推定部;を有する位置センサレスモー
    タ制御装置。
  17. 【請求項17】 前記重畳波作成部が、前記電流の振幅
    の増大に合わせて前記ロータ角度推定用電流信号又はロ
    ータ角度推定用電圧信号の振幅を大きく設定する、請求
    項16記載の位置センサレスモータ制御装置。
  18. 【請求項18】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するためのモータ制御部; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
    ロータ角度推定用電圧信号、を設定するための重畳波作
    成部; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するため
    の電流検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に
    対応する目標電圧ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求める、 ための電流制御部; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルに基
    づいて、前記ステータ巻線へ電力を供給するためのモー
    タ駆動装置;及び、 (F) (a) 前記電流検出器によって検出された前記電流
    を表す電流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係に
    ある第二の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電
    流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答
    電流を、前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ
    角度推定用電圧信号の一周期当たり少なくとも三回サン
    プリングして求め、 (b) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正す
    る、 ためのロータ角度推定部;を有する位置センサレスモー
    タ制御装置。
  19. 【請求項19】 前記ロータ角度推定部が、前記応答電
    流のサンプリングを前記ロータ角度推定用電流信号又は
    前記ロータ角度推定用電圧信号の半周期当たり複数回行
    う、請求項18記載の位置センサレスモータ制御装置。
  20. 【請求項20】 (A) 前記重畳波作成部が、(a) 前記
    ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ角度推定用電
    圧信号の周期をPWMのキャリア周期の偶数倍に設定
    し、(b) その波形を前記周期の前半と後半との中間点
    について対称に設定し; (B) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルで表
    される電圧を前記モータ駆動装置が前記PWMにより変
    調し、変調された前記電圧を前記ステータ巻線へ印加
    し; (C) 前記ロータ角度推定部が前記ロータ角度推定用電
    流信号又はロータ角度推定用電圧信号の対称な波形に基
    づいて前記応答電流を求める; 請求項18記載の位置センサレスモータ制御装置。
  21. 【請求項21】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するためのモータ制御部; (B) 周期がPWMのキャリア周期の偶数倍であり、波
    形が前記周期の前半と後半との中間点について対称であ
    るロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用電圧
    信号、を設定するための重畳波作成部; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流を、検出するため
    の電流検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に
    対応する目標電圧ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求める、 ための電流制御部; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルで表
    される電圧を前記PWMにより変調し、変調された前記
    電圧を前記ステータ巻線へ印加するためのモータ駆動装
    置;及び、 (F) (a) 前記電流検出器によって検出された前記電流
    を表す電流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係に
    ある第二の方向での成分から、前記ロータ角度推定用電
    流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答
    電流を、前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロータ
    角度推定用電圧信号の対称な波形に基づいて求め、 (b) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正す
    る、 ためのロータ角度推定部;を有する位置センサレスモー
    タ制御装置。
  22. 【請求項22】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するためのモータ制御部; (B) 所定の周期を持つロータ角度推定用電流信号又は
    ロータ角度推定用電圧信号、を設定するための重畳波作
    成部; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するため
    の電流検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に
    対応する目標電圧ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求める、 ための電流制御部; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルに基
    づいて、前記ステータ巻線へ電力を供給するためのモー
    タ駆動装置;及び、 (F) (a) 前記電流検出器によって検出された前記電流
    を表す電流ベクトルの、前記第一の方向と電気角で直交
    する第二の方向での成分に、(1) 前記ロータ角度推定
    用電流信号又は前記ロータ角度推定用電圧信号と同じ周
    期と、(2) 前記ロータ角度推定用電流信号又は前記ロ
    ータ角度推定用電圧信号から実質的に90°(電気角)ずれ
    た位相と、を持つ信号を乗じ、 (b) その乗算結果から前記ロータ角度推定用電流信号
    又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を
    求め、 (c) 前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正す
    る、 ためのロータ角度推定部;を有する位置センサレスモー
    タ制御装置。
  23. 【請求項23】 (A) ステータ巻線の目標電流ベクト
    ルを決定するためのモータ制御部; (B) ロータ角度推定用電流信号又はロータ角度推定用
    電圧信号を設定するための重畳波作成部; (C) 前記ステータ巻線を流れる電流、を検出するため
    の電流検出器; (D) (a) ロータのγ軸方向に基づく第一の方向での前
    記目標電流ベクトルの成分に前記ロータ角度推定用電流
    信号を重畳して重畳波付目標電流ベクトルを求め、更に
    対応する目標電圧ベクトルを求め、又は、 (b) 前記目標電流ベクトルに対応する目標電圧ベクト
    ルの前記第一の方向での成分に前記ロータ角度推定用電
    圧信号を重畳して重畳波付目標電圧ベクトルを求める、 ための電流制御部; (E) 前記重畳波付目標電流ベクトルに対応する前記目
    標電圧ベクトル又は前記重畳波付目標電圧ベクトルに基
    づいて、前記ステータ巻線へ電力を供給するためのモー
    タ駆動装置;及び、 (F) リミッタを含み、 (a) 前記電流検出器によって検出された前記電流を表
    す電流ベクトルの、前記第一の方向と一定の関係にある
    第二の方向での成分から前記ロータ角度推定用電流信号
    又は前記ロータ角度推定用電圧信号に対する応答電流を
    求め、 (b) 前記応答電流の値を前記リミッタによりリミット
    し、 (c) 前記リミッタによりリミットされた前記値を持つ
    前記応答電流に基づいて前記γ軸方向を補正する、 ためのロータ角度推定部;を有する位置センサレスモー
    タ制御装置。
  24. 【請求項24】 (A) 前記電流制御部が前記第一の方
    向を、前記γ軸方向又は前記γ軸方向に対して実質的に
    90°(電気角)の方向とし; (B) 前記ロータ角度推定部が前記第二の方向を、前記
    第一の方向に対して実質的に90°(電気角)の方向とし、
    前記応答電流を前記第二の方向で実質的に0に収束させ
    るように前記γ軸方向を補正する;請求項13から請求
    項23までのいずれか一項記載の位置センサレスモータ
    制御装置。
  25. 【請求項25】 請求項13から請求項23までのいず
    れか一項に記載の位置センサレスモータ制御装置を含む
    車輪駆動モータ、を有する電気自動車。
  26. 【請求項26】 請求項13から請求項23までのいず
    れか一項に記載の位置センサレスモータ制御装置を含む
    ファン駆動モータ、を有するファン。
  27. 【請求項27】 請求項13から請求項23までのいず
    れか一項に記載の位置センサレスモータ制御装置を含む
    コンプレッサ、を有する冷蔵庫。
  28. 【請求項28】 請求項13から請求項23までのいず
    れか一項に記載の位置センサレスモータ制御装置を含む
    コンプレッサ、を有するエアコン。
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