JP2002178446A - 耐熱接着性に優れた樹脂被覆金属板 - Google Patents
耐熱接着性に優れた樹脂被覆金属板Info
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Abstract
着材との接着性に優れると共に、素地金属板と樹脂皮膜
との接着性にも優れた感熱接着型のクロムフリー樹脂被
覆金属板を提供する。 【解決手段】 クロメート処理されていない金属板の表
面に、樹脂皮膜層が形成された樹脂被覆金属板におい
て、該樹脂皮膜は、感熱型架橋剤を含有すると共に、該
樹脂自体で形成したフィルムのフィルム強度は29.4
MPa以上である樹脂被覆金属板である。
Description
れていない金属板の表面に、樹脂皮膜が被覆された樹脂
被覆金属板であって、熱をかけると、被着材との間に優
れた接着性を発揮し得る感熱接着型の樹脂被覆金属板に
関するものである。本発明の樹脂被覆金属板は、自動車
や家庭電気製品、金属製家具等の外板材若しくは建築材
料等として適用することができ、成形・組立て時に金属
板同士、或いは金属と非金属板(ベニヤ板、プラスチッ
ク板、ゴム板、布等を含む)を強固に接着することがで
きる点で極めて有用である。
外板若しくは建築材料等には、金属板として、特に亜鉛
めっき鋼板が利用されており、なかでも、亜鉛めっきの
上にクロメート処理した後、樹脂皮膜を被覆したクロメ
ート処理樹脂被覆めっき鋼板が汎用されている。クロメ
ート処理すると、耐食性が高められるのみならず、亜鉛
めっきと樹脂皮膜の接着性が向上するからである。
から、有害なクロムの使用を規制する動きが活発になる
につれ、クロメート処理しない樹脂被覆金属板への要求
が益々高くなっている。
ベニヤ板、プラスチック板、ゴム板、布等)を貼り合わ
せ、接合された部材を使用するケースが少なくない。こ
れらの貼り合わせ材料に要求される性能としては、被着
材と金属板の接着性に優れることが第一に挙げられ、特
に、被着材に対する金属板の接合性能が良好であること
が要求される。
施さない樹脂被覆金属板は、樹脂皮膜と素地金属板の接
着性に劣る為、たとえ、樹脂皮膜と被着材の間に優れた
接着力が得られたとしても、素地金属板と樹脂皮膜の界
面で剥離(界面剥離)が発生することがある。従って、
クロメート処理を使用しないクロムフリー樹脂被覆金属
板であって、樹脂皮膜と被着材との接着性に優れるのみ
ならず、素地金属板と樹脂皮膜との接着性にも優れた樹
脂被覆金属板を提供することは極めて困難であった。
みてなされたものであり、その目的は、クロムフリー樹
脂被覆金属板において、樹脂皮膜と被着材との接着性に
優れるのみならず、素地金属板と樹脂皮膜との接着性に
も優れた感熱接着型の樹脂被覆金属板を提供することに
ある。
発明に係る耐熱接着性に優れた樹脂被覆金属板は、クロ
メート処理されていない金属板の表面に、樹脂皮膜層が
形成された樹脂被覆金属板において、該樹脂皮膜は、感
熱型架橋剤を含有すると共に、該樹脂自体で形成したフ
ィルムのフィルム強度は29.4MPa(300kgf
/cm2)以上であるところに要旨を有するものであ
る。
上効果を更に高める目的で、上記樹脂皮膜中に占める
感熱型架橋剤の含有比率を、固形分換算で、5〜40質
量%に制御したり、更に、樹脂皮膜中に、該樹脂の官
能基と架橋反応する官能基を有する架橋剤を添加した
り、熱架橋開始温度の異なる感熱型架橋剤を2種類以
上添加することは、いずれも本発明の好ましい態様であ
る。
するに当たっては、乾燥造膜温度を下式を満足する様制
御することが推奨される。 TB≦T0<TA 式中、TAは、感熱型架橋剤Aの熱架橋開始温度、T
Bは、感熱型架橋剤Bの熱架橋開始温度、T0は、乾燥造
膜温度を、夫々意味する。
接合するときの接合温度は下式を満足する様に制御する
ことが推奨される。 TB<TA≦T 式中、TAは、感熱型架橋剤Aの熱架橋開始温度、T
Bは、感熱型架橋剤Bの熱架橋開始温度、Tは、 接着温
度を、夫々意味する。
被覆金属板であって、樹脂皮膜と被着材との接着性に優
れると共に、素地金属板と樹脂皮膜との接着性にも優れ
た感熱接着型の樹脂被覆金属板を提供すべく検討した。
従来のクロムフリー樹脂被覆金属板は、主として、耐食
性の向上を目的として提案されたものであり、素地金属
板と樹脂皮膜との接着力については考慮されていなかっ
た為、満足し得る特性が得られていなかったからであ
る。
属板を提供するに当たり、本発明者らは、先に開示した
感熱接着性樹脂塗装金属板をベースに研究を重ねた(特
開平8−290521)。上記公報は、溶接や接着剤等
の接合手段を施さなくとも、金属板同士、若しくは金属
板と非金属板(被着材)を互いに貼り合わせて加熱・加
圧することにより、自己接着性を発揮し得る樹脂塗装金
属板を提供すべく提案されたものである。具体的には、
熱可塑性樹脂を用い、当該樹脂と熱架橋し得る感熱型架
橋剤を塗膜に添加することにより、塗膜面同士及び塗膜
面と被着材面との間で感熱型架橋剤が架橋反応し、高い
接着強度を確保しようというものである。
接着性樹脂塗装金属板をそのまま、本発明の目的に適用
しようとすると、以下の不具合を有することが分かっ
た。
被覆金属板を提供することまでは全く意図しておらず、
当該クロムフリー樹脂被覆金属板に特有の課題について
は全く留意していない為、所望の接着強度が確保できな
いという問題があることが分かった。前述した通り、ク
ロメート処理すると、耐食性が向上するのみならず、金
属板と樹脂皮膜の接着性が向上するという利点がある。
クロメート処理しないときには上記利点は得られない
為、クロムフリー樹脂被覆金属板を被着材と貼り合わせ
た貼り合わせ材を恒温恒湿の環境下に保管すると、樹脂
皮膜内部を水分が浸透し、特に、めっき層と樹脂皮膜の
界面での接着力が低下したり、或いは、樹脂皮膜の凝集
力が低下する等して、皮膜強度が著しく低下することが
分かった。クロムフリー樹脂被覆金属板を恒温恒湿環境
下に保管したときの剥離状況を詳細に観察すると、樹脂
皮膜と被着材とが充分接着されている場合であっても、
樹脂皮膜と素地金属板の界面で剥離したり、或いは樹脂
皮膜内部で凝集破壊する等の現象が見られた。
℃以上(最高でも200℃以下)の温度で可塑化し、且
つ、当該可塑化温度以上で架橋反応性を示す熱可塑性樹
脂を必須成分として使用しているが、これでは、接着温
度が約250℃以上と極めて高温になると、当該樹脂に
よる耐熱性不良が顕著に見られ、充分な接着強度が得ら
れないことが分かった。上記公報において、熱可塑性樹
脂の熱可塑化温度を80〜200℃の温度範囲に設定し
たのは、各種家電製品及び建材の接着剤焼付け工程にお
いて金属板自身は通常100℃以上、より一般的には1
00〜250℃程度に加熱されるが、樹脂塗装金属板の
塗膜面同士若しくは塗膜面と被着材面を密着させた後に
加熱焼付けすることにより充分な接着強度を得る為に
は、この加熱焼付け時の温度範囲で樹脂塗膜がいったん
軟化し、塗膜面と被着材面の接触面積を増加させる必要
があるからである。
い場合には、樹脂の可塑化温度に留意して接着強度を確
保する必要はなく、むしろ、耐熱性を制御することが所
望の接着強度を確保する為には不可欠であることが分か
った。接着温度が高温の場合、特に被着材である接着剤
やプラスチック等が熱可塑性であるときは、被着材自身
が接着温度で軟化して接着面積が増大する為、樹脂の熱
可塑化温度を低く制御する必要はなく、それよりもむし
ろ、高温時の耐熱性が必要になるのである。
いて、樹脂皮膜と被着材との接着性のみならず素地金属
板と樹脂皮膜との接着性に優れており、しかも、恒温恒
湿環境下に保管したとしても、或いは接着温度が高温で
あっても強固な接着力を確保し得る感熱接着型の樹脂被
覆金属板を提供する為には、上記公報に開示された金属
板では、未だ不充分であることから、本発明者らは更な
る改善を目指して検討を重ねた。その結果、感熱型架橋
剤の添加による塗膜面同士及び塗膜面と被着材面の間に
おける架橋反応による接着力向上効果を有効に発揮させ
つつ、更に、樹脂自体で形成したフィルムのフィルム強
度を所定範囲に設定してやれば、所期の目的を達成し得
ることを見出し、本発明を完成した。
する。
金属板は、表面がクロメート処理されていない金属板の
表面に、樹脂皮膜層が形成された樹脂被覆金属板におい
て、該樹脂皮膜は、感熱型架橋剤を含有すると共に、該
樹脂自体で形成したフィルムのフィルム強度は29.4
MPa(300kgf/cm2)以上を満足するもので
ある。
クロメート処理されていない金属板の表面に、樹脂皮膜
が被覆されたクロムフリー樹脂被覆金属板を対象とする
ものである。
架橋剤を含有するものである。本発明の樹脂被覆金属板
は、樹脂被覆金属板の塗膜面同士或いは塗膜面と被着材
面を密着させた後に加熱焼付け(加熱接合)して接着強
度を確保するものであるから、かかる観点からすれば、
感熱型架橋剤の使用が最も有効である。感熱型架橋剤
は、樹脂皮膜面と被着材面との間、及び素地金属板と樹
脂皮膜面との間の双方に対し、接着効果を発揮するもの
であるが、その為には、これらの間で架橋反応する為に
必要な架橋点、即ち、官能基が樹脂中に存在しなければ
ならない。当該官能基と反応する感熱型架橋剤として
は、ブロック化イソシアネート基含有化合物、エポキシ
基含有有機化合物、アジリジニル基含有有機化合物、メ
ラミン樹脂等が挙げられる。
が経時的に高温となる場合には、ブロック化イソシアネ
ートの使用が推奨される。ブロック化イソシアネート
は、イソシアネート基の官能基が予めフェノール、アル
コール、オキシム、活性メチレン等のブロック剤でブロ
ックされ、常温での樹脂との架橋反応は抑制されている
が、貼り合わせ時等の高温環境下では、上記ブロック剤
が解離し、架橋反応が開始されるからである。
の含有比率は、固形分質量換算で5質量%以上、40質
量%以下に制御することが推奨される。
させる為には、5質量%以上添加することが好ましい。
感熱型架橋剤を5質量%以上添加すると、当該架橋剤が
樹脂皮膜内部及び表面に均一に分布し、接着面(塗膜面
同士及び塗膜面と被着材面との間)で、樹脂または被着
材の有する官能基との間に強固な架橋反応を起こすと考
えられるからである。更に、樹脂皮膜と、クロメート処
理を施していない金属板との密着性も高められるという
効果がある。より好ましくは10質量%以上である。
%を超えると、特に恒温恒湿環境下における接着強度が
著しく低下する。例えば本発明の樹脂被覆金属板と被着
材を貼り合わせた貼り合わせ材の経時的接着性を評価す
る為、当該貼り合わせ材を恒温恒湿環境下に保管する
と、水分が皮膜内部を浸透し、特にめっき層と樹脂皮膜
の界面での接着力を弱めたり、或いは樹脂皮膜の凝集力
が低下して皮膜強度が著しく弱くなる。これは、樹脂皮
膜中に未架橋の架橋剤が多量に含まれると、そこが通り
道となって水分が浸透し易くなる結果、樹脂皮膜と素地
金属板の界面で剥離し易くなったり、樹脂皮膜自体が膨
潤する等して、充分満足のいく接着力が得られなくなる
と考えられる。かかる観点から、感熱型架橋剤含有比率
の上限は40質量%以下、より好ましくは30質量%以
下に制御することが推奨される。
ルムのフィルム強度(以下、単に樹脂のフィルム強度と
呼ぶ場合がある)は29.4MPa(300kgf/c
m2)以上を満足するものである。この様に樹脂皮膜強
度を高く設定することにより、恒温恒湿環境下において
も優れた接着強度を確保することができるのであり、こ
の様な樹脂皮膜強度と接着強度との関係を明らかにした
ところに本発明の技術的意義が存在するものである。
リー樹脂被覆金属板の剥離界面を観察すると、被着材と
樹脂皮膜が充分接着されている場合であっても、クロメ
ート処理による接着効果が得られない為、樹脂皮膜と素
地金属板との界面密着力が充分確保できず、その結果、
樹脂皮膜と素地金属の界面で剥離するか、或いは、樹脂
皮膜内部で凝集破壊するという現象が生じることが分か
った。更に剥離状況を詳細に検討すると、これら界面剥
離または凝集破壊をする際の最大接着強度は、樹脂皮膜
が破断する際に見られることが明らかになった。換言す
れば、この様な場合においても最大接着力を確保する為
には、樹脂皮膜の強度を高く設定することが必要なので
ある。かかる観点から、本発明では、樹脂のフィルム強
度を29.4MPa以上(300kgf/cm2以
上)、好ましくは39.2MPa以上(400kgf/
cm2以上)に定めた。尚、その上限は特に限定されな
いが、フィルム強度を高くし過ぎると塗膜が固くなり、
加工後における樹脂皮膜と金属板との密着性が劣ること
等を考慮すると、68.6MPa以下(700kgf/
cm2以下)、より好ましくは58.8MPa以下(6
00kgf/cm2以下)に制御することが推奨され
る。
強度」とは、樹脂溶液をテフロン(登録商標)板上に塗
布し、60℃で乾燥して得られたフィルム(乾燥膜厚約
500μm)における引張強度を引張試験機で測定した
ものである。
よって測定される樹脂のフィルム強度が29.4MPa
以上(300kgf/cm2以上)を満足するものであ
れば特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の種
類を問わない。例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタ
ン系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化
性樹脂は、所望のフィルム強度に制御することができる
ので、この様なものはすべて本発明の範囲内に包含され
る。
法としては特に限定されず、通常用いられる方法を採用
することができる。例えば、樹脂の重合度を高める目
的で、架橋密度を増加させる方法;結晶性を高める目
的で、立体障害となるような側鎖を導入せず、始めから
長い直鎖状の分子構造とする方法;分子間の凝集力を
高める目的で、極性の大きい官能基を導入する方法等が
挙げられ、その結果、フィルム強度を所定範囲に制御す
ることが可能になる。
て、適宜好適な種類の樹脂を選択すれば良いが、なかで
もポリウレタン系樹脂は、ウレタン結合のもととなるポ
リオール化合物やポリイソシアネート化合物の種類や官
能基によって、樹脂のフィルム強度を調整し易いことか
ら、特に推奨される。このうちポリオール化合物として
は、エーテル及びエステルの双方を含むポリエーテル・
エステルポリオールの使用が好ましい。
以上の通りであるが、更に、接着温度が高温で、被着材
が熱軟化してレベリングする場合には、樹脂の熱溶融温
度は200℃を超えて制御することが好ましい。耐熱性
に劣ると、接着時の熱によって樹脂皮膜が劣化する為、
所望の接着強度が充分得られないからである。より好ま
しくは250℃以上であるが、その上限は特に限定され
るものではない。
度」とは、樹脂溶液をテフロン板上に塗布し、60℃で
乾燥して得られたフィルム(乾燥膜厚約500μm)の
熱溶融温度を、ピューア式の微量融点測定法により測定
したものである。
化してレベリングする様な高温環境下では、樹脂の熱溶
融温度を制御すれば良いのであって、前述した公報に記
載の如く、樹脂の熱可塑化温度を細かく制御する必要は
ない。この場合には、被着材自身が接着温度で軟化し
て、接着面の面積が増加するからである。換言すれば、
接着温度が低く、被着材が熱軟化せずレベリングしない
様な環境下で使用する樹脂の種類については、前述した
樹脂のフィルム強度設定に加え、前記公報に記載の態様
(即ち、可塑化温度が80〜200℃で、可塑化温度以
上で且つ100〜200℃の温度範囲で架橋反応性を示
す熱可塑性樹脂と;可塑化温度以上で且つ100〜20
0℃の温度範囲で架橋反応性を示す感熱型架橋剤を主成
分とする態様)とすることが推奨される。
めたり、樹脂を架橋させて耐食性を向上させる目的で、
樹脂皮膜中に、熱架橋開始温度の異なる2種類以上の
感熱型架橋剤を添加したり、上記感熱型架橋剤に加
え、更に樹脂の官能基と架橋反応する官能基を有する架
橋剤を添加することは好ましい態様である。
類以上の感熱型架橋剤を添加する態様」について説明す
る。例えば、感熱型架橋剤A(熱架橋開始温度TA)、
および感熱型架橋剤B(熱架橋開始温度TB)であっ
て、TB<TAを満足する二種類の感熱型架橋剤を使用す
る場合について考えてみる。この場合は、まず、より低
温側に熱架橋開始温度を有する架橋剤Bの一部または全
てを、塗布・乾燥による造膜段階(乾燥温度が充分取れ
ない場合にはその後の低温加熱処理段階)で樹脂と反応
させ、該樹脂を部分的に架橋させることによって、加熱
焼付け前の有機溶剤脱脂や各種成形工程の際に求められ
る耐溶剤性と耐疵付き性を確保する。この造膜段階で
は、樹脂は、熱可塑性を消失しない程度で部分的にしか
架橋されていないため、接合の為の加熱焼付けの初期段
階では可塑性を示して塗膜の流動化・レベリング作用が
発揮され、均一で且つ密着した接合界面を確保し得るこ
とになる。しかもその後は、上記架橋剤Bの残り(塗布
・乾燥工程で全て消費されている場合には残っていない
場合もある)と、より高温側に熱架橋開始温度TAを有
する架橋剤Aによる接合界面での熱架橋反応が進行する
為、極めて高レベルの接合強度が発揮されることになる
のである。
を満足することが好ましい。接着温度Tに比べてTAが
高いと、接着時に、感熱型架橋剤Aによる接着性向上効
果が発揮されず、満足のいく接着性が得られないからで
ある。
官能基が他の官能基と架橋反応し始める温度を意味する
が、具体的には、樹脂皮膜が形成される際の塗膜焼付け
時の温度を意味する。尚、塗膜焼付け時の温度と接着時
の温度との差が近い場合には、樹脂皮膜の焼付け時に、
感熱型架橋剤の官能基同士、または当該官能基と樹脂中
の官能基若しくは大気中の水分等と部分的に反応する結
果、接着時において架橋剤が充分架橋反応できなくなる
恐れがある。その様な場合には、感熱架橋剤として、低
温で架橋反応が終了するか、若しくは樹脂皮膜形成後に
おいても徐々に反応が進行する様なものを選択して使用
することが推奨される。
官能基を有する架橋剤を添加する態様」について説明す
る。この様な架橋剤としては、樹脂中の官能基の種類に
応じて、適宜適切なものを選択することができるが、エ
ポキシ系樹脂、オキサゾリン系有機化合物、カルボジイ
ミド系有機化合物、イソシアネート架橋剤等が挙げられ
る。この様な架橋剤を更に添加することにより、樹脂の
架橋点が増加し、樹脂皮膜は強固で且つ緻密なものとな
る結果、恒温恒湿環境下の如く塗膜中に水分が浸透し易
い条件下であっても、水分が樹脂皮膜と素地金属板の界
面に浸透することが有効に防止され、当該界面での接着
力が向上すると共に、樹脂皮膜の破断強度が高められる
結果、優れた接着強度を確保できるのである。
使用する架橋剤の官能基と樹脂の官能基が当量比で存在
することが好ましい。具体的には、上記当量比の前後の
添加比率で、所望の効果が得られる様、適宜好適な範囲
を選択することができるが、概ね、固形分換算で、ベー
ス樹脂100部に対し、1〜10質量部の範囲に制御す
ることが推奨される。
方法について説明する。
する樹脂を使用することを除けば、上記公報に記載され
た製造方法を実質的にそのまま採用することができる。
以下、上記公報に記載の如く、可塑化温度が80〜20
0℃の熱可塑性樹脂を用いたときの製造方法を代表的に
取上げて、説明する。
に応じて他の架橋剤を含有する塗料を金属板表面に均一
に塗布し、これらが架橋反応を起こすことのない温度条
件、通常は30〜100℃、好ましくは60〜80℃で
乾燥することによって、金属板表面で造膜させる。
類や、金属板及び被着材の表面状態等によっても影響し
一義的に定めることは困難であるが、概ね、乾燥後の固
形分換算で0.1g/m2 以上、好ましくは0.3g/
m2 以上とすることが推奨される。塗膜付着量が0.1
g/m2 未満の場合は、該塗膜で金属板表面を十分に被
覆できなくなるため、部分的に接合不良を生じ易くなる
からである。
は、特に接着強度の観点からは何ら限定されないが、付
着量が厚くなり過ぎると、単位面積当たりの塗膜原料コ
ストが高くなるばかりでなく、金属板に樹脂塗布液を塗
布して樹脂皮膜を形成する場合には、塗布後の乾燥時間
も長くなり、特に連続塗装ラインにおける連続製造工程
でライン速度が遅くなって生産性が低下し、結果として
製造コストが高くなる。従って、樹脂塗膜の付着量は1
0g/m2 以下、より好ましくは5g/m2 以下に制御
することが推奨される。
り、本発明では、上述した樹脂と感熱型架橋剤、必要に
応じて添加される他の架橋剤に加え、これらによって発
現される感熱型接着性能を阻害しない範囲で、部分架橋
剤、希釈溶媒、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、
浸透剤、造膜助剤、着色顔料、増粘剤等の各種添加剤、
あるいは密着性や耐食性向上のための微粉シリカ、コロ
イダルシリカ、シランカップリング剤等を必要に応じて
適量添加し、塗膜性能を更に高めることも可能である。
高めるため、上記樹脂の一部をアクリル変性やエポキシ
変性したり、更には樹脂の低コスト化等を目的として、
ポリビニルアルコール樹脂、SBR樹脂、クロロプレン
樹脂、NBR樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢
酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等の各種樹脂
を、感熱接着性能を損なわない範囲で適量混合すること
も可能である。
発現温度未満(ブロック剤の離脱温度あるいはメラミン
樹脂の熱架橋温度未満)とすることによって、樹脂塗膜
乾燥後の塗膜表面にべとつきやブロッキングを生じるこ
となく、しかもスリッターや打ち抜き等の加工時に疵が
殆んどつかない程度の硬い皮膜となり、且つ熱架橋反応
性を備えた塗膜を形成することができる。
状に加工してから接合すべき部位を重ね合わせて接合す
る際には、加熱温度(焼付け温度)を、該熱可塑性樹脂
の熱可塑化温度以上で、且つ該樹脂と架橋剤が架橋反応
性を発現する温度以上、250℃以下に設定してやれ
ば、高い接着強度を得ることができる。
0℃以下の場合に、特に有効な方法である。焼付け温度
が250℃を超える高温になると、樹脂の熱分解が進行
して塗膜成分の変質が起こり、接着強度等が却って低下
傾向を示す様になるばかりでなく、樹脂の分解による黄
変が進行して外観も悪くなる恐れがでてくるからであ
る。
温下で実施するときには、上記公報に記載の如く、80
℃以上(最高でも200℃以下)の温度で可塑化し、且
つ、当該可塑化温度以上で架橋反応性を示す熱可塑性樹
脂を使用するのではなく、熱溶融温度が200℃を超え
る樹脂を使用することが推奨される。250℃を超える
高温下で接着するときには、特に被着材である接着剤や
プラスチック等が熱可塑性であるときは、被着材自身が
接着温度で軟化して接着面積が増大する為、樹脂の熱可
塑化温度を低く制御する必要はなく、それよりもむし
ろ、高温時の耐熱性が必要になるからである。勿論、こ
の様な耐熱性樹脂を用いれば、焼付け温度が200℃を
超える様な高温下で実施する場合のみならず、200℃
以下の焼付け温度で実施する場合においても、極めて優
れた接着効果が得られるので、非常に有用である(後記
する実施例を参照)。
は、塗膜構成樹脂を水分散性または水溶性の塗布液とし
て使用することが推奨される。水性樹脂であれば、樹脂
塗装ラインにおいて溶剤系樹脂液を用いる場合に生じる
揮発有機溶剤を除去するための特別な排気処理設備を設
ける必要がなく、設備コストの上昇を回避することがで
きるからである。更に、本発明を実施する際に用いられ
る樹脂液塗装設備としては、例えば原板としてめっき金
属板や化成処理金属板を使用する場合は、既設のめっき
処理あるいは化成処理ラインの中に樹脂塗装設備を設け
るだけでよく、特別な排気処理設備を設けた専用の樹脂
塗装ラインで製造する場合に比べて、生産性が高められ
るといった利点も享受できる。
剤の揮発によって塗布液の固形分濃度や粘度が経時的に
変化し易く、塗膜の付着量制御が困難になるばかりでな
く塗装むらも生じ易い。しかしながら塗布液が水分散性
または水溶性であると、塗布液からの蒸発は極少量であ
るため固形分濃度や粘度の経時変化が少なく、安定した
塗装性が得られると共に付着量制御も容易となる。
液の塗装方法は一切制限されないが、一般的な方法とし
ては、例えば表面を清浄化し、あるいは塗装前処理(例
えばリン酸塩処理、クロメート処理)等を施した金属板
あるいは長尺金属帯の表面に、ロールコーター法、スプ
レー法、カーテンフローコーター法等を用いて樹脂希釈
液を塗布する方法が挙げられる。しかし、塗膜厚さの均
一性や処理コスト、塗装効率等を総合的に考慮して最も
好ましいのは、ロールコーターで塗布する方法である。
尚上記樹脂塗膜は、金属板の片面のみあるいは両面に形
成することができる。
いても、クロメート処理を施していない金属板であれば
一切制限がなく、最も一般的な軟鋼板やステンレス鋼板
をはじめとする各種合金鋼板のほか、AlおよびAl合
金板、CuおよびCu合金板、TiおよびTi合金板、
めっき金属板(亜鉛および亜鉛合金系めっき鋼板、Al
およびAl合金系めっき鋼板、銅系めっき鋼板、Ni系
めっき鋼板、亜鉛系めっきAlおよびAl系合金板等の
各種めっき金属板)、りん酸塩処理等の実質的にCrを
含有しない化成処理金属板、更には塗装金属板等に広く
活用できる。
被覆金属板は、前述の如く自動車や家庭電気製品、金属
製家具用の外板材等や建築用材料等と広く利用される
が、その実用化に当たっては、積層接合の前または後の
任意の時期に、接合面以外の部位に例えばアクリル系樹
脂塗料、メラミン系樹脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料
などをスプレー法、静電塗装法、電着法等の各種塗装方
法によって塗装することも可能である。
状に打ち抜き加工し、2枚をかしめ合わせた後に、上記
の塗布液を表面に塗布して不完全焼付け処理を行い、上
塗り塗料を焼付ける時の熱を利用して、前記感熱型接着
性樹脂塗膜の架橋反応を同時に起こさせ、接合部に高度
な接着強度を発現させることもできる。即ち、この様な
方法を採用すれば、上塗り塗膜の焼付けと感熱接着性塗
膜の架橋反応による接合を同時に行えるという利点も享
受できる。
説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制
限されるものでは決してなく、前・後記の主旨に適合し
得る範囲で適切に変更して実施することも勿論可能であ
り、いずれも本発明の技術的範囲内に包含される。
表1に示す樹脂と、表2に示す感熱型架橋剤、更には必
要に応じて表4に示す架橋剤を使用した。
度及び熱架橋開始温度は夫々、前述した方法で測定し
た。
質量比率が表3〜5に示す比率となる様に配合すること
により種々の樹脂塗布液を作製した。
(めっき付着量:20g/m2 、板厚0.8mm)の表
面に、ロールコーターにて乾燥膜厚で2g/m2 になる
様に塗布した後、100℃で1分間乾燥し、樹脂塗膜の
乾燥・造膜を行なった。この様にして得られた各種樹脂
被覆鋼板について、下記の方法で、塗膜乾燥前(焼付け
前)及び塗膜乾燥後(焼付け後)の性能評価試験を行な
った。
mのサイズに切断し、端面および裏面をテープシールし
た後、JIS−Z2371に示される5質量%塩水噴霧
試験に供し、耐白錆性による耐食性を評価した。即ち、
塗膜の下層にある電気純Znめっき層の腐食による1%
白錆発生時間によって評価した。評価基準は、下記の通
りである。 〈耐白錆性〉 ◎ 優れる : 240h以上で白錆発生 ○ 良好 : 120〜240hで白錆発生 △ やや劣る: 48〜120hで白錆発生 × 劣る : 48h以内で白錆発生。
を用い、これを介して,樹脂液塗布−乾燥後の塗装金属
板とウレタンゴムシートを、以下の要領で貼り合わせ
た。まず、予備加熱として、130℃で塗装金属板を加
熱し、接着剤を予備乾燥させた後、直ちにウレタンゴム
シートを貼り合わせた。次いで、熱プレス装置を用い、
180℃で30秒間、3kgf/cm2 の圧力をかけて
上記ゴムシートと樹脂塗装金属板を加熱・加圧した後、
冷却した。
に、1cm幅で、塗装金属板に至るまでの疵をカッター
等で入れ、該塗装金属板に対してゴムシートを90°で
剥離できる様にし、1cm幅当たりの90°剥離強度を
測定した。評価基準は以下の通りである。 ◎ 優れる : 接着強度 4kgf/cm2 以上 ○ 良好 : 〃 3〜4kgf/cm2 △ やや劣る: 〃 1〜3kgf/cm2 × 劣る : 〃 1kgf/cm2 未満。
6857に準じて、下記に示す条件の恒温恒湿試験に供
し、その後上記(2)と同様の90°剥離試験を行なう
ことにより、接着強度の耐久性(接着性の耐経時劣化)
を調査した。 〔恒温恒湿試験条件〕 温度:40℃、相対湿度:98%RH、試験時間:24
h評価基準は、下記の通りである ◎ 優れる : 接着強度 3kgf/cm2 ○ 良好 : 〃 2〜3kgf/cm2 △ やや劣る: 〃 0.5〜2kgf/cm2 × 劣る : 〃 0.5kgf/cm2 未満 上記性能評価試験の結果を表3〜5に併記する。
とができる。
塗布液として、樹脂と感熱型架橋剤1種類のみを使用し
た結果を示す。
〜20、25〜27、29〜31はいずれも、本発明で
規定する樹脂のフィルム強度を満足し、且つ、感熱型架
橋剤の添加量も好ましい範囲に制御されているので、耐
食性に優れると共に、焼付け後の常態接着性及び耐熱接
着性の双方に優れている。尚、樹脂の種類及びフィルム
強度は同じであるが熱溶融温度の異なるNo.1(熱溶
融温度180℃)とNo.3(熱溶融温度260℃)を
対比すると、熱溶融温度が高いNo.3は、熱溶融温度
の低いNo.1に比べ、接着耐久性が格段に向上するこ
とが分かる。
21、22、28及び32は、樹脂のフィルム強度が本
発明の要件を満足しない為、接着強度、特に接着耐久性
に劣っている。
感熱型架橋剤の添加量が好ましい範囲を外れている為、
当該添加剤による接着力向上効果が得られず、特に接着
耐久性に劣っている。
脂塗布液として、樹脂と感熱型架橋剤に加え、更に、該
樹脂と架橋反応する官能基を有する他の架橋剤を使用し
た結果を示す。参考までに、上記他の架橋剤を添加した
もの(表3のNo.1、11、14、及び25)の結果
を表4に併記する。
接着強度、特に接着耐久性が高められることが分かる。
液として、樹脂と、熱架橋開始温度の異なる2種類の感
熱型架橋剤A及びBを使用した結果を示す。尚、表5
中、No.7及び11は、感熱型架橋剤Bを添加しない
参考例であり、同様に、表3のNo.1、14、及び2
5の結果も参考例として表5に併記する。
の感熱型架橋剤を使用すると、接着強度、特に接着耐久
性が向上することが分かる。
で、クロメート処理をしなくとも、樹脂皮膜と被着材と
の接着性に優れると共に、素地金属板と樹脂皮膜との接
着性にも優れた感熱接着型のクロムフリー樹脂被覆金属
板を提供することができた。
Claims (5)
- 【請求項1】 クロメート処理されていない金属板の表
面に、樹脂皮膜層が形成された樹脂被覆金属板におい
て、 該樹脂皮膜は、感熱型架橋剤を含有すると共に、 該樹脂自体で形成したフィルムのフィルム強度は29.
4MPa以上であることを特徴とする耐熱接着性に優れ
た樹脂被覆金属板。 - 【請求項2】 前記樹脂皮膜中に占める感熱型架橋剤の
含有比率は固形分換算で、5〜40質量%である請求項
1に記載の樹脂被覆金属板。 - 【請求項3】 前記樹脂の熱溶融温度は200℃を超え
るものである請求項1または2に記載の樹脂被覆金属
板。 - 【請求項4】 前記樹脂皮膜は更に、該樹脂の官能基と
架橋反応する官能基を有する架橋剤を含有するものであ
る請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆金属板。 - 【請求項5】 熱架橋開始温度の異なる感熱型架橋剤を
含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の樹
脂被覆金属板。
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