JP2002173447A - 脳塞栓症治療用医薬組成物 - Google Patents

脳塞栓症治療用医薬組成物

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JP2002173447A
JP2002173447A JP2001300804A JP2001300804A JP2002173447A JP 2002173447 A JP2002173447 A JP 2002173447A JP 2001300804 A JP2001300804 A JP 2001300804A JP 2001300804 A JP2001300804 A JP 2001300804A JP 2002173447 A JP2002173447 A JP 2002173447A
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cerebral
injection
pamiteplase
cerebral embolism
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Masanori Suzuki
雅徳 鈴木
Michihisa Sasamata
理央 笹又
Yoichi Katayama
容一 片山
Tsuneo Kano
恒男 加納
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Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Yamanouchi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 頭蓋内出血を引き起こさずに脳塞栓治療を行
なうことができ、しかも、持続静脈内投与を必要とせ
ず、ボーラス投与が可能な脳塞栓症治療用医薬組成物を
提供する。 【解決手段】 前記医薬組成物は、ヒト組織プラスミノ
ーゲンアクチベーターのアミノ酸配列において、92番
目〜173番目のアミノ酸残基が欠失し、しかも、27
5番目のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換され
ている改変型組織プラスミノーゲンアクチベーターの有
効量と、薬剤学的に許容することのできる添加剤とを含
む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脳塞栓症治療用医
薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】脳卒中は、脳出血、くも膜下出血、及び
脳梗塞(ラクナ梗塞、心原性脳塞栓、アテローム血栓性
脳梗塞、及びその他)に分けられ、更に、脳梗塞は、脳
血栓と脳塞栓とに分けることができる。脳血栓(cer
ebral thrombosis)とは、脳動脈の硬
化病変を基礎として、徐々に血管内腔の狭小化を生じ、
ついには閉塞に至るものであり、一方、脳塞栓(cer
ebral embolism)とは、脳以外(大部分
は心臓や頸部血管)の血管から、血栓化した栓子が血流
に運ばれて脳血管に至り、その脳血管をその場で閉塞し
て循環障害を呈するものである。
【0003】脳梗塞の薬物治療としては、血栓溶解剤を
使用する血栓溶解療法が知られているが、血栓溶解療法
の最大の副作用は、頭蓋内出血である。心筋梗塞又は脳
血栓患者に比べ、特に脳塞栓患者は、再開通により出血
を起こしやすい状態にあるため、心筋梗塞や血栓症治療
において効果がある薬剤であっても、脳塞栓治療剤とし
て使用しうるとは限らない。
【0004】例えば、日本では、脳梗塞急性期の薬物治
療では、血栓溶解剤として低用量ウロキナーゼが血栓症
の適応を持っている。しかし、出血性梗塞を起こしやす
い脳塞栓症に対しては、低用量ウロキナーゼ投与は禁忌
とされている(治療学,33,No.5,125−12
7,1999及びCurrent Therapy,1
7,No.9,92−97,1999)。日本では、脳
塞栓症を適応に持つ薬剤はなく、そのため、脳塞栓症治
療剤が待ち望まれている。また、欧州では血栓溶解剤ス
トレプトキナーゼについて、脳梗塞の臨床試験で、頭蓋
内出血の頻度が有意に増加したため、安全性の点から臨
床試験が中止されている。
【0005】なお、アルテプラーゼ[組換えヒト組織プ
ラスミノーゲンアクチベーター(rt−PA);Gen
entech社]については、米国で、発症3時間以内
の脳梗塞患者を対象とした全身投与の試験において有効
性が示され、適応を取得している(投与量=0.9mg
/kg,投与方法=静脈内ボーラス投与及び持続静脈内
投与)。しかし、発症6時間以内の脳梗塞患者を対象と
した欧州の試験、あるいは、発症後3〜5時間の脳梗塞
患者を対象とした米国での試験では、有用性は確認でき
なかった(治療学,33,No.5,125−127,
1999及びCurrent Therapy,17,
No.9,92−97,1999)。加えて、アルテプ
ラーゼは、血液中の半減期が短く、持続静脈内投与を行
なう必要があるというデメリットがある。なお、アルテ
プラーゼは、日本及び米国において、急性心筋梗塞の適
応を取得している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、頭蓋内出血を引き起こさずに脳塞栓治療を行なうこ
とができ、しかも、持続静脈内投与を必要とせず、静脈
内ボーラス(bolus)投与が可能な脳塞栓症治療用
医薬組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題は、本発明によ
る、ヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターのアミノ
酸配列において、92番目〜173番目のアミノ酸残基
が欠失し、しかも、275番目のアルギニン残基がグル
タミン酸残基に置換されている改変型組織プラスミノー
ゲンアクチベーター(以下、単に「改変型t−PA」又
は「パミテプラーゼ」と称する)の有効量と、薬剤学的
に許容することのできる添加剤とを含むことを特徴とす
る、脳塞栓症治療用医薬組成物により解決することがで
きる。本発明による好ましい態様においては、投薬形態
が、静脈内ボーラス(bolus)投与用である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の医薬組成物において使用
する改変型t−PAは、パミテプラーゼとして公知のタ
ンパク質(例えば、特許第2534332号明細書参
照;特許第2534332号明細書に記載の改良型t−
PA[VI])であり、「ソリナーゼ」の商品名で山之内
製薬から市販されている。なお、ソリナーゼは、急性心
筋梗塞における冠動脈血栓の溶解(発症後6時間以内)
の適応を取得しているが、脳塞栓治療剤として使用可能
であるか否かはこれまで全く知られていない。
【0009】天然型ヒトt−PAは、527アミノ酸残
基からなり、そのN末端からC末端の方向に向かって、
フィンガードメイン、表皮成長因子(EGF)ドメイ
ン、第1及び第2クリングルドメイン、並びにセリンプ
ロテアーゼ部分を含む。本発明の医薬組成物において使
用する改変型t−PA(パミテプラーゼ)は、この天然
型ヒトt−PAのアミノ酸配列において、92番目〜1
73番目のアミノ酸残基が欠失し、しかも、275番目
のアルギニン残基がグルタミン酸残基に置換されてい
る、445アミノ酸残基からなるタンパク質である。
【0010】本発明の医薬組成物において使用する改変
型t−PAの製造方法は、特に限定されるものではない
が、例えば、遺伝子工学的手法(例えば、特許第253
4332号明細書に記載の方法)により製造することが
できる。より具体的には、パミテプラーゼをコードする
遺伝子を組み込んだ適当な形質発現ベクターを、適当な
宿主細胞[例えば、原核細胞(例えば、大腸菌又は枯草
菌)、真核細胞微生物(例えば、酵母)、又は高等動物
細胞]に導入して形質転換体を調製し、その形質転換体
を培養することにより、パミテプラーゼを製造すること
ができる。
【0011】本発明の医薬組成物は、有効量の改変型t
−PA(パミテプラーゼ)と、薬剤学的に許容すること
のできる添加剤とを含むものであり、注射剤(例えば、
凍結乾燥品又は溶液注射液)、特には凍結乾燥品(用時
溶解型製剤)であることが好ましい。本発明の医薬組成
物を溶液注射液とする場合には、改変型t−PA(パミ
テプラーゼ)と薬剤学的に許容することのできる適当な
添加剤とを、例えば、通常、滅菌下、水(注射用水)に
溶解することにより調製することができる。また、本発
明の医薬組成物を凍結乾燥品とする場合には、例えば、
このようにして得られた溶液注射液を、更に、凍結乾燥
などの手段により乾燥することにより調製することがで
きる。
【0012】本発明の医薬組成物において使用する添加
剤は、薬剤学的に許容することのできる添加剤である限
り、特に限定されるものではなく、医薬製剤化において
通常使用される添加剤を適宜選択して用いることができ
る。前記添加剤としては、例えば、可溶化剤(例えば、
クエン酸又はその塩)、安定化剤(例えば、ショ糖)、
等張化剤[例えば、無機塩類(例えば、塩化ナトリウ
ム、塩化カリウム、リン酸一水素ナトリウム、又はリン
酸二水素ナトリウム)の電解質]、界面活性剤[例え
ば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例
えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート
又はポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテー
ト)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタン
モノステアレート又はソルビタンセスキオレート)、ポ
リオキシエチレン硬化ヒマシ油、又はポリオキシエチレ
ンポリオキシプロピレン縮合物]、又は賦形剤(セルロ
ース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキ
シメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、又はヒドロキシメチルエ
チルセルロース)を挙げることができる。
【0013】本発明の医薬組成物においては、これらの
添加剤1又はそれ以上を適宜選択して用いることができ
る。また、本発明の医薬組成物を用時溶解する注射剤と
する場合には、例えば、溶解液の方に可溶化剤などを加
えたり、あるいは、溶解液を緩衝液とすることもでき
る。また、本発明の医薬組成物の浸透圧比は、静脈注射
剤として用いることが可能な範囲である。
【0014】本発明の医薬組成物は、添加剤として、ク
エン酸又はその塩及びショ糖を含むことが好ましい。ク
エン酸又はその塩及びショ糖を含むと、改変型t−PA
(パミテプラーゼ)の溶解度と安定性の両方を高めるこ
とができる。溶液注射液の場合には、クエン酸又はその
塩の濃度は、好ましくは0.05〜0.4mol/L
(より好ましくは0.05〜0.2mol/L)であ
り、ショ糖の濃度は、好ましくは5〜10%である。ま
た、凍結乾燥品の場合には、クエン酸又はその塩の濃度
は、好ましくは0.05〜0.15mol/Lであり、
ショ糖の濃度は、好ましくは約5%である。
【0015】本発明の医薬組成物における改変型t−P
A(パミテプラーゼ)の濃度(注射剤の場合)は、約
0.1mg/mL以上である。本発明の医薬組成物は、
例えば、特開平5−194265号公報に記載の方法に
準じて製造することができ、具体的には、後述の調製実
施例1〜7に記載の方法に従って製造することができ
る。
【0016】本発明の医薬組成物の投与量は、頭蓋内出
血を引き起こさずに脳塞栓治療を行なうことができる
(すなわち、脳塞栓を充分に溶解することができ、しか
も、出血性梗塞を引き起こさない)限り、特に限定され
るものではなく、例えば、患者の年齢、性別、体重、症
状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定すること
ができる。例えば、改変型t−PA(パミテプラーゼ)
量として、1日当たり3.25万IU/kg〜9.3万
IU/kgであることが好ましく、3.25万IU/k
g〜6.5万IU/kgであることがより好ましい。
【0017】なお、この範囲は、後述するラットを用い
た評価例1で得られた具体的な有効投与量と、ラットに
おける有効投与量とヒトにおける有効投与量との間の公
知の相関比率とに基づくものである。例えば、イン・ビ
トロでのラットにおけるパミテプラーゼの血漿塊溶解作
用は、ヒト血漿塊溶解作用の約1/7であること(Cl
inical Pharmacology and T
herapy,6,11,2335−2345,199
6)、そして、ヒト急性心筋梗塞患者では、ラット頚動
脈血栓モデルで効果を示す投与量の1/10で、効果を
示すこと(新薬と臨床,45,12,2175−221
0,1996及びJapanese Journal
of Pharmacology,Vol.63,2,
135−142,1993)が知られている。
【0018】本発明の医薬組成物は、静脈内ボーラス
(bolus)投与することが好ましい。本発明の医薬
組成物で用いる改変型t−PA(パミテプラーゼ)は、
天然型t−PA(例えば、アルテプラーゼ)よりも血液
中の半減期が長いため、持続静脈内投与を行なう必要が
なく、ボーラス投与であっても充分にその活性を維持す
ることができる。静脈内ボーラス投与に要する時間は、
特に限定されるものではないが、0.5分間〜2分間で
静注することが好ましく、1分間で静注することが特に
好ましい。
【0019】本発明の医薬組成物は、脳塞栓症、好まし
くは発症後6時間以内、より好ましくは発症後3時間以
内の脳塞栓症の治療に用いる。
【0020】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。
【調製実施例1】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を1.0mg/mLの濃度で
含む、10%ショ糖及び0.05%ツィーン80含有
0.1mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でp
H7.2に調整)を調製することができる。本調製実施
例1で用いる前記改変型t−PA、あるいは、以下の調
製実施例2〜調製実施例7で用いる改変型t−PAは、
特開平2−167076号公報に記載の方法に従って調
製することができる。
【0021】
【調製実施例2】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を1.0mg/mLの濃度で
含む、5%ショ糖及び0.05%ツィーン80含有0.
05mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でpH
7.2に調整)を調製することができる。
【0022】
【調製実施例3】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を1.0mg/mLの濃度で
含む、5%ショ糖及び0.05%ツィーン80含有0.
2mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でpH
7.2に調整)を調製することができる。
【0023】
【調製実施例4】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を0.5mg/mLの濃度で
含む、5%ショ糖及び0.02%ツィーン80含有0.
1mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でpH
7.2に調整)を調製し、その液をガラス製バイアルに
4mLずつ分注した後、凍結乾燥機(共和真空技術社
製)を用いて用時溶解型の凍結乾燥品を製造することが
できる。
【0024】
【調製実施例5】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を0.5mg/mLの濃度で
含む、5%ショ糖及び0.02%ツィーン80含有0.
05mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でpH
7.2に調整)を調製し、その液をガラス製バイアルに
4mLずつ分注した後、凍結乾燥機(共和真空技術社
製)を用いて用時溶解型の凍結乾燥品を製造することが
できる。
【0025】
【調製実施例6】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を0.5mg/mLの濃度で
含む、10%ショ糖及び0.02%ツィーン80含有
0.1mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でp
H7.2に調整)を調製することができる。
【0026】
【調製実施例7】本発明の医薬組成物として、改変型t
−PA(パミテプラーゼ)を0.5mg/mLの濃度で
含む、5%ショ糖及び0.02%ツィーン80含有0.
1mol/Lクエン酸ナトリウム水溶液(塩酸でpH
7.2に調整)を調製することができる。
【0027】
【評価例1】《ラット脳塞栓モデルを用いた評価
(1)》改変型t−PA(パミテプラーゼ)含有の注射
用凍結乾燥品(商標=ソリナーゼ;山之内製薬)を、改
変型t−PA濃度が1mg/1mLになるように生理食
塩水で溶解し、−80℃以下で凍結保存した。解凍後、
改変型t−PA濃度が1mg/10mLになるように生
理食塩水で希釈することにより、試験用注射液を調製
し、以下の実験に使用した。なお、改変型t−PA1m
gは、65万IUに相当する。
【0028】脳塞栓モデルの作製は、雄性SD(Spr
ague−Dawley)ラット(体重約250〜30
0g)を用いて、Kudoらの方法(Stroke,1
3,505−508,1982)に、一部改変を加えた
方法(Brain Res.,854,245−24
8,2000及びJ.Cereb.Blood Flo
w Metab.,19,1316−1321,199
9)により実施した。
【0029】すなわち、血液採取用のラットを自発呼吸
下で1.5%ハロセン(商品名=フローセン;武田薬品
工業)により麻酔した。大腿動脈に24ゲージの留置針
(サーフロー留置針;テルモ)を留置し、動脈血を1m
L注射用シリンジ(テルモ)に0.1mL採取した。動
脈血を注射用シリンジに入れたまま、室温で48時間放
置し、血塊を形成させた。注射用シリンジに生理食塩水
0.1mLを加え、26ゲージの注射針に2回通すこと
により、血塊を粉砕した。別のラットを自発呼吸下で
1.5%ハロセンにより麻酔した。ラット頸部を正中切
開し、外頸動脈を結紮後切断し、上甲状腺動脈、後頭動
脈、及び翼突口蓋動脈を焼灼切断した。粉砕した前記血
塊を外頸動脈より内頸動脈に注入することにより、脳塞
栓を形成させた。
【0030】実験中は、ランプを用いて動物の直腸温を
約37℃に保った。大腿動脈にカニューレを挿入し、平
均血圧及び心拍数をモニターした。血塊注入から2時間
経過後に、試験用注射液を、改変型t−PA濃度として
1mg/kg(10mL/kg)の投与量で静脈内投与
した。コントロール群では、血塊注入から2時間経過後
に、生理食塩水を10mL/kgの投与量で静脈内投与
した。血塊注入による脳塞栓形成及び被験薬投与後の閉
塞動脈の再開通の評価は、レーザードップラーフローメ
トリー(Omega Flow;Neuroscien
ce)を用い、脳血流量を測定することにより行なっ
た。なお、血流測定用プローブは、ラットの前頭頭頂部
にあてた。
【0031】血塊注入から24時間経過後に、動物を屠
殺し、脳を摘出し、手術用顕微鏡下で出血性変化の有無
の確認をした。摘出した脳を2mm間隔でスライスし、
2%TTC(2,3,5−triphenyltetr
azolium chloride;東京化成)溶液で
30分間浸し、染色させた。TTC染色したスライスか
ら標準コンピュータアシストイメージ分析システムを用
いて、梗塞体積を計算した。梗塞体積の結果は、平均値
±標準誤差で示し、t−検定で評価した。p<0.05
を有意とした。結果を図1に示す。図1において、記号
「*」は群間に有意差があることを示す。
【0032】脳血流量は、血塊の注入直後に、血塊注入
前値の約30%に減少し、脳塞栓が形成された。脳塞栓
形成から2時間経過後に、試験用注射液[1mg/k
g,静注,単回投与(bolus)]を投与したとこ
ろ、減少した脳血流量は、試験用注射液投与の1時間後
に、血塊注入前値の約90%まで回復した。図1に示す
ように、コントロール群(10mL/kg,生理食塩
水)における脳塞栓形成から24時間後の梗塞体積は、
141±35mm3(平均値±標準誤差,n=5)であ
った。一方、試験用注射液投与(1mg/kg,静注,
単回投与)により、梗塞体積は45±5mm3(平均値
±標準誤差,n=5)と有意に減少した。また、出血性
梗塞は、コントロール群においても、試験用注射液投与
群においても認められなかった。
【0033】
【評価例2】《ラット脳塞栓モデルを用いた評価
(2)》脳塞栓モデルの作製は、雄性SDラット(体重
約250〜340g)を用いて、Zhangらの方法
(Zhang RL.ら,Brain Res.,76
6,83−92,1997)に、一部改変を加えた方法
(Asahi M.ら,J.Cerebr.Blood
Flow & Metab.,20,452−45
7,2000)により実施した。すなわち、1.0%ハ
ロセンにより麻酔した血液採取用ラットの大腿動脈から
PE50チューブ[ポリエチレンチュービング(PE5
0)]に動脈血を50cm分採取した。動脈血をPE5
0チューブに入れたまま室温で2時間放置した後、更に
4℃で22時間放置し、血餅(blood clot)
を形成させた。血餅が入ったPE50チューブを5cm
に切り、生理食塩水が入った注射用シリンジに23ゲー
ジの注射針を用いてつないだ。血餅を、生理食塩水が入
ったディッシュに移して洗浄した後、外径を0.3mm
に加工し、且つ生理食塩水を満たしたPE50チューブ
に移した。別のラットの頸部を切開し、外頸動脈、後頭
動脈、及び翼突口蓋動脈を結紮した。外科用クリップを
総頸動脈及び内頸動脈に適用し、外頸動脈を切断した。
5cmの血餅が入った加工したPE50チューブの先
を、遠位内頸動脈まで入れ、血餅を注入し、5分後にチ
ューブを引き抜いた。なお、実験中は、恒温パッドを用
いてラットの直腸温を約37℃に保った。
【0034】動物は、以下のように5群(A群〜E群)
に群分けした。 A群[個体数(n)=8]は、アルテプラーゼ(10m
g/kg)投与群であり、アルテプラーゼを生理食塩水
に2mg/mLの濃度になるように溶解した注射液を、
総投与量の10%を静脈内ボーラス投与し、残りの90
%を20分間で静脈内注入により投与した。 B群(n=8)は、アルテプラーゼ投与群(A群)の生
理食塩水コントロールである。 C群(n=9)は、パミテプラーゼ(0.5mg/k
g)投与群であり、パミテプラーゼを生理食塩水に0.
5mg/mLの濃度になるように溶解した注射液を、3
分間以上かけて静脈内ボーラス投与した。 D群(n=9)は、パミテプラーゼ(1mg/kg)投
与群であり、パミテプラーゼを生理食塩水に1mg/m
Lの濃度になるように溶解した注射液を、3分間以上か
けて静脈内ボーラス投与した。 E群(n=10)は、パミテプラーゼ投与群(C群及び
D群)の生理食塩水コントロールである。 なお、パミテプラーゼとしては、評価例1で用いたのと
同じ、改変型t−PA(パミテプラーゼ)含有の注射用
凍結乾燥品(商標=ソリナーゼ;山之内製薬)を使用
し、アルテプラーゼとしては、t−PA(アルテプラー
ゼ)含有の注射用凍結乾燥品(商標=ACTIVAS
E;Genentech社)を使用した。
【0035】各注射液は、血餅注入から1時間経過後に
静脈内投与を開始した。血餅注入による脳塞栓形成及び
被験薬投与後の閉塞動脈の再開通の評価は、レーザード
ップラーフローメトリー(Perimed AB,Sw
eden)を用い、脳血流量を測定することにより行な
った。なお、血流測定用プローブは前頭頭頂部にあて
た。血餅注入から24時間経過後に動物を屠殺し、脳を
摘出した。摘出した脳を2mm間隔でスライスし、2%
TTC(Sigma)溶液で15分間浸し、染色させ
た。TTC染色したスライスからデジタルイメージング
及び標準コンピュータアシストイメージ分析システムを
用いて、梗塞体積を計算した。梗塞体積の結果は、平均
値±標準誤差で示し、ANOVA及びTukey−Kr
amer検定で評価した。p<0.05を有意とした。
結果を図2に示す。図2において、記号「*」は群間に
有意差があることを示す。また、括弧内の数値は、各群
の個体数(n)を示す。
【0036】脳血流量は、血餅の注入直後に、血餅注入
前値の25%以下に減少し、脳塞栓が形成された。脳塞
栓形成から1時間経過後に、各注射液を投与したとこ
ろ、アルテプラーゼ(10mg/kg)投与群(A群)
では、20.9±2.2%(平均値±標準誤差)まで減
少した脳血流量が、薬物投与により、投与から15分間
経過後では41.5±8.4%まで、投与から30分間
経過後では40.4±8.4%まで回復した。一方、パ
ミテプラーゼ(1mg/kg)投与群(D群)では、1
9±2.5%まで減少した脳血流量が、薬物投与によ
り、投与から15分間経過後では34.2±12.7%
まで、投与から30分間経過後では46.8±17%ま
で回復した。また、図2に示すように、アルテプラーゼ
(10mg/kg)投与した場合の梗塞体積は153±
42mm3(平均値±標準誤差)であり、コントロール
群(B群)の308±17mm3に対して有意に減少し
た。一方、パミテプラーゼ(1mg/kg)投与した場
合の梗塞体積は146±31mm3(平均値±標準誤
差)であり、コントロール群(E群)の267±22m
3に対して有意に減少した。
【0037】
【発明の効果】本発明の医薬組成物によれば、アルテプ
ラーゼの約1/10の投与量で、同等の効果を示し、し
かも、頭蓋内出血を引き起こさずに脳塞栓治療を行なう
ことができる。また、ボーラス投与が可能であるため、
持続静脈内投与を必要とせず、緊急対応性と利便性が高
い。有効性及び緊急対応性が高い脳塞栓症急性期治療薬
として、医師に対して新たな治療手段を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラット脳塞栓モデルにおける梗塞体積に対する
改変型t−PA(パミテプラーゼ)の作用を示すグラフ
である。
【図2】ラット脳塞栓モデルにおける梗塞体積に対する
改変型t−PA(パミテプラーゼ)の作用を示すグラフ
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片山 容一 東京都板橋区大谷口上町30 日本大学医学 部内 (72)発明者 加納 恒男 東京都板橋区大谷口上町30 日本大学医学 部内 Fターム(参考) 4C076 AA12 BB13 DD07F DD43 DD67 FF68 GG46 4C084 AA02 DC01 MA17 MA66 NA10 ZA361 ZA541

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト組織プラスミノーゲンアクチベータ
    ーのアミノ酸配列において、92番目〜173番目のア
    ミノ酸残基が欠失し、しかも、275番目のアルギニン
    残基がグルタミン酸残基に置換されている改変型組織プ
    ラスミノーゲンアクチベーターの有効量と、薬剤学的に
    許容することのできる添加剤とを含むことを特徴とす
    る、脳塞栓症治療用医薬組成物。
  2. 【請求項2】 投薬形態が、静脈内ボーラス投与用であ
    る、請求項1に記載の医薬組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010502629A (ja) * 2006-08-29 2010-01-28 ジェネンテック・インコーポレーテッド 急性虚血性脳卒中を処置するためのテネクテプラーゼの使用

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