JP3822383B2 - 可溶性トロンボモジュリン含有組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1種または2種以上の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を必須成分として含有することを特徴とする組成物およびその組成物の製法に関する。
また、本発明は、1種または2種以上の可溶性トロンボモジュリンと、非イオン性界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とする組成物およびその組成物の製法に関する。
また、本発明は、1種または2種以上の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上と、非イオン性界面活性剤を必須成分として含有することを特徴とする組成物およびその組成物の製法に関する。
また、本発明は、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を含有することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの安定化剤に関する。
また、本発明は、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を添加することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの安定化方法に関する。
また、本発明は、非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの吸着防止剤に関する。
また、本発明は、非イオン性界面活性剤を添加することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの吸着防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トロンボモジュリンはトロンビンを向凝固酵素から抗凝固酵素へと変換せしめるユニークな性質を持つ血管内皮表面に存在する蛋白質として、1981年エスモン(Esmon)ら(プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proceedingsof the National Academy of Sciencesof the USA)78、2249−2254、1981)により報告された。続く論文において、ウサギ肺組織よりの単離精製に成功し、これを報告した(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)257(2),859−864,1982)。さらに、ヒトトロンボモジュリンの全DNA配列およびアミノ酸配列が報告され(エンボ・ジャーナル(EMBO Journal)6,1891−1897,1987;バイオケミストリー(Biochemistry)26(14),4350−4357,1987)、各ドメインの役割が明らかにされつつある。トロンボモジュリンはトロンビンと結合し、トロンビンの持つ血液凝固作用を失わせしめ、トロンビン−トロンボモジュリン複合体はプロテインCを活性化することにより抗凝固作用を示すとされている。すなわち、トロンボモジュリンは血液凝固阻害作用と線溶促進作用の両方の作用を発揮する可能性があり、臨床応用が期待されている。
【0003】
従来、血液凝固能異常に係わる疾患の治療剤としては、抗血液凝固作用をもったアンチトロンビンIIIやヘパリンが、一方、血栓溶解作用をもったウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター等が使用されている。しかしながら、これらの物質は、出血傾向等の副作用を有し、作用が抗血液凝固あるいは血栓溶解のいずれかに偏っている。従って、この両方の作用を発揮する可能性があるトロンボモジュリンあるいは基本的にトロンビンと親和性を有しプロテインCの活性化を促進するというトロンボモジュリン活性を有したトロンボモジュリン様物質の臨床応用に期待が高まっている。
【0004】
ヒトトロンボモジュリンは、溶解性が低く、特に医薬品として利用する場合、精製や製剤化等で問題を生じていた。すなわち、トロンボモジュリンは膜結合性であり、アミノ末端領域、EGF様構造領域、O−グリコシル化部位領域、細胞膜貫通領域および細胞質内領域の5つからなる完全長のアミノ酸配列を持つものは精製過程あるいは製剤化等に際して溶解補助剤を添加する必要がある。このため溶解性の高いトロンボモジュリン様物質(以下可溶性トロンボモジュリンと呼ぶ)が望まれていた。抗原性等の安全性のことを考慮すると、天然型であるヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンなどがより望まれている。このような可溶性トロンボモジュリンの例のうち、遺伝子工学的手法によるものとして、細胞膜貫通領域および細胞質内領域を除去した可溶性トロンボモジュリン(特開平1−6219号公報、特開平2−255699号公報、特開平3−133380号公報、特開平3−259084号公報、特開平4−210700号公報、特表平3−503757号公報、特表平4−505554号公報、EP474273号公報、WO91/04276号公報、WO91/05803号公報、WO91/15514号公報、WO92/00325号公報、WO92/03149号公報、WO93/15755号公報、土肥ら,日本薬学会,第113年会,講演要旨集3,演題番号30EM14−1,1993年)等が挙げられる。あるいは天然型としてヒト尿由来の可溶性トロンボモジュリン(特開昭63−30423号公報、特開昭63−146898号公報、特開平3−86900号公報、特開平3−218399号公報、イシイ(Ishii)ら,ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of ClinicalInvestigation)76,2178−2181,1985、平本ら,日本薬学会,第108年会,講演要旨集,演題番号6F05 11−1,1988年、矢谷ら,血液と脈管,20,197−200,1989、ヤマモト(Yamamoto)ら,ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(The Journal of Biochemistry)113,433−440,1993)等の公知のものがある。
【0005】
具体的には、遺伝子工学的手法によるものとして、特開平1−6219号公報には少なくともアミノ末端から345−462番目のアミノ酸配列を含む可溶性トロンボモジュリンが、特開平2−255699号公報には115のアミノ酸残基からなる可溶性トロンボモジュリンが、特開平3−133380号公報には少なくともアミノ末端から1−497番目のアミノ酸残基を含む可溶性トロンボモジュリンが、特開平3−259084号公報には468のアミノ酸残基からなる可溶性トロンボモジュリンが、特開平4−210700号公報には硫酸化グリコサミノグリカンで修飾されない可溶性トロンボモジュリンが、特表平3−503757号公報にはヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターのアミノ酸配列の一部を含んでいてもよい可溶性トロンボモジュリンが、特表平4−505554号公報にはヒト組織プラスミノーゲンアクチベーター等のアミノ酸配列の一部を含んでいてもよい可溶性トロンボモジュリンが、EP474273号公報には19残基からなるトロンビン結合部位とプロテインC活性化部位とを含んでなる可溶性トロンボモジュリンが、WO91/04276号公報にはコンドロイチン及び/又はコンドロイチン硫酸を含む糖鎖を有する可溶性トロンボモジュリンが、WO91/05803号公報には硫酸化グリコサミノグリカンで修飾された可溶性トロンボモジュリンが、WO91/15514号公報にはメチオニンを他のアミノ酸に置換することによって酸化を防止した可溶性トロンボモジュリンが、WO92/00325号公報には組換ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンおよびその変異型物質が、WO92/03149号公報にはO−グリコシル化部位領域の糖鎖を修飾あるいはO−グリコシル化部位領域を欠失させた可溶性トロンボモジュリンが、WO93/15755号公報にはアミノ酸配列を修飾することによって蛋白分解酵素による分解を防止した可溶性トロンボモジュリンが、WO93/25675号公報にはアミノ酸配列を修飾することによってコファクター活性を修飾した可溶性トロンボモジュリンが、各々開示されている。さらに、土肥らはウシトロンボモジュリン由来の酸性アミノ酸配列を含む配列を付加した可溶性トロンボモジュリンを報告している(日本薬学会,第113年会,講演要旨集3,演題番号30EM14−1,128頁,1993年)。
【0006】
また、ヒト尿由来の該物質として、特開昭63−30423号公報には非還元状態での分子量が200,000、48,000および40,000からなる可溶性トロンボモジュリンの混合物が、特開昭63−146898号公報には非還元状態での分子量が39,000±10,000および31,000±10,000の可溶性トロンボモジュリンが、特開平3−86900号公報には非還元状態での分子量が55,000〜58,000および60,000〜65,000の可溶性トロンボモジュリンが、特開平3−218399号公報には非還元状態での分子量が72,000±3,000および79,000±3,000の可溶性トロンボモジュリンが、各々開示されている。さらに、イシイ(Ishii)らは血漿中および尿中の可溶性トロンボモジュリンを(ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)76,2178−2181,1985)、平本らは血中あるいは尿中の数種の可溶性トロンボモジュリンを(日本薬学会,第108年会,講演要旨集,演題番号6F05 11−1,1988年)、矢谷らは尿中の還元状態での分子量が63,000の可溶性トロンボモジュリンを(血液と脈管,20,197−200,1989)、ヤマモト(Yamamoto)らは468のアミノ酸残基からなる可溶性トロンボモジュリンを(ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(The Journal of Biochemistry)113,433−440,1993)、各々報告している。
【0007】
しかしながら、可溶性トロンボモジュリンは化学的に十分安定とはいえず、例えば凍結乾燥下の状態でも、数ヶ月から数年に渡る長期間室温に放置すると、活性の低下、凝集物の出現等が起こり問題となっている。また、凍結乾燥工程の条件によっては、微量ではあるが変性することがあり問題となっている。可溶性トロンボモジュリンが変性して凝集体を生じ、凝集体が混在したままヒト血中に投与された場合、その凝集体は変性した蛋白質であるため、過敏症等の免疫反応を惹起する、あるいは塞栓症を誘発する危険性がある。従って、医薬品として使用するにあたっては、医療現場で強く求められている品質を長期間に渡り保証できる製剤を調製することは困難な現状である。
【0008】
特定の糖類が特定の蛋白質を安定化することがこれまでにいくつか報告されている。しかしながら特定の蛋白質を不安定化する、あるいは安定化しないといった報告もいくつかある。例えば、蔗糖はチューブリンを不安定化する(バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)532,155−160,1978)、また、グルコース等の糖類はガン壊死因子の活性を安定化するが、ラクトース、マルトース、蔗糖等の糖類は全く安定化効果を示さない(特開昭59−59625号公報)ことなどが報告されている。
【0009】
トロンボモジュリンあるいはトロンボモジュリン様物質の製剤化について、これまでに報告がほとんどない。限られた情報であるが、例えば、特開平1−6219号公報、特開平2−255699号公報およびWO91/04276号公報中の発明の詳細な説明において、注射剤の添加剤として、蔗糖、グリセリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの記載がある。これらの物質は増粘剤として添加されており、安定化効果についての記載はおろか具体的な効果の実証がない。また、特開平1−6219号公報、特開平2−255699号公報、特開平3−218399号公報およびWO92/00325号公報中の発明の詳細な説明において、処方例にアルブミン、精製ゼラチン、あるいはマンニトールを添加した例が記述されているが、その製剤の安定性等、特徴、すなわち添加したことによる効果についての開示がまったくない。
【0010】
そこで、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンについて、アルブミン、精製ゼラチン、グリシン、グルコースおよびマンニトールとの組成物を調製し、さらなる試験を行ったところ、いずれも長期に渡る安定性が不十分であることが判った。このように、可溶性トロンボモジュリンを製剤化するにあたり、長期のしかも室温での保存に耐え得る技術の開示は未だなされていない。
また、可溶性トロンボモジュリンは比活性が非常に高いため、臨床使用時は1回の投与蛋白量が微量であり、更に輸液で非常に低濃度に希釈して持続投与する場合が多い。可溶性トロンボモジュリンについて輸液で低濃度に希釈したときにはガラス容器、プラスチック製容器あるいは輸液セットへの吸着が起こり、特にプラスチック製容器および輸液セットへの吸着が著しいことが判った。従って、実際に投与をするときに、有効投与量が減少してしまうおそれが生じることが判った。吸着を防止する手段として、塩基性アミノ酸によるセクレチンの吸着防止(特開昭57−169425号公報)、セルロース誘導体や非イオン性界面活性剤、メチルシクロデキストリンによるセクレチン、インシュリン、主に低分子ペプタイドの吸着防止(特開昭58−206513号公報、特開昭59−76024号公報、特開昭60−100524号公報)の例が報告されているが、可溶性トロンボモジュリンにおいて吸着を防止する技術についての開示は未だされていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、長期保存時でも安定性に優れた可溶性トロンボモジュリン含有組成物を提供することにある。更に低濃度に希釈したときも容器への吸着が起こらない可溶性トロンボモジュリン含有組成物を提供することにある。更に詳しくは、長期の室温保存時でも安全で安定性に優れた医薬品として使用可能な可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を提供することにある。更に、低濃度水溶液においても容器への吸着による配合量低下を起こさない医薬品として使用可能な可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、可溶性トロンボモジュリンの安定化剤および安定化方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、可溶性トロンボモジュリンの吸着防止剤および吸着防止方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは可溶性トロンボモジュリンの安定性に関する問題点を解消すべく、特に凍結乾燥した組成物について鋭意研究を行い、マルトース(α形、β形、またはα形とβ形の任意比率混合物であっても良く、以下、特に記載のない場合は、マルトースというときにはこれら全てを包含する)、ラクトース(α形、β形、またはα形とβ形の任意比率混合物であっても良く、以下、特に記載のない場合は、ラクトースというときにはこれら全てを包含する)、蔗糖、あるいはアルギニン(D体、L体またはラセミ体のいずれであっても良く、以下、特に記載のない場合は、アルギニンというときはこれら全てを包含する)およびその塩に優れた安定化効果、特に長期間に渡る安定化効果、を見いだした。更に、非イオン性界面活性剤に可溶性トロンボモジュリンを低濃度に希釈した場合の容器への吸着防止効果を見いだして本発明を完成した。
【0013】
従って、本発明は下記のいずれかの発明を提供する。
(1)可溶性トロンボモジュリンと、マルトースと、非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(2)前記可溶性トロンボモジュリンが、ヒト尿由来トロンボモジュリンである上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)前記可溶性トロンボモジュリンが、組換えヒトトロンボモジュリンである上記(1)に記載の医薬組成物。
(4)ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げたDNAを利用してアミノ末端のアミノ酸配列がアラニン−プロリン−アラニン−であるアミノ酸498残基よりなるヒトトロンボモジュリンを発現するベクターを調製し、これをCHO細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行って得られる高発現株の培養液より精製して得られうる組換えヒトトロンボモジュリンと、マルトースと、非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(5)アミノ末端のアミノ酸配列がアラニン−プロリン−アラニン−であるアミノ酸498残基よりなる組換えヒトトロンボモジュリンと、マルトースと、非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(6)さらに、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上とを含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)凍結乾燥処理されている上記(1)〜(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)可溶性トロンボモジュリンに、マルトースおよび非イオン性界面活性剤を添加することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの安定化方法。
【0014】
可溶性トロンボモジュリンは、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンであることが好ましい。また、可溶性トロンボモジュリンは、組換えヒト可溶性トロンボモジュリンであることも好ましい。従って、本発明の可溶性トロンボモジュリンは、前述の従来の技術で引用された公知文献中の可溶性トロンボモジュリンを含有し、これらの文献中の記載を引用し本発明の可溶性トロンボモジュリンの内容とする。
【0015】
そして、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンが以下の部分構造及び性質を有する物質であることがさらに好ましい。
イ)分子量 72,000±3,000
[非還元状態でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)により測定]
ロ)等電点 3.9±0.2
ハ)末端アミノ酸配列
N末端 :
Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−Pro−Gly
−Gly−Ser−Gln−Cys−Val−Glu−His−Asp
−Cys−Phe−Ala−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro
−Ala−Thr−Phe−Leu−
C末端 :
−Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−Arg
ニ)糖含量(重量%)
中性糖 :5.5±1.0%
[フェノール硫酸法で測定]
アミノ糖 :2.2±1.0%
[Elson−Morgan法(Blix変法)で測定]
シアル酸 :2.8±1.5%
[Warren法で測定]
【0016】
また、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンが以下の部分構造及び性質を有する物質であることがさらに好ましい。
イ)分子量 79,000±3,000
[非還元状態でのSDS−PAGEにより測定]
ロ)等電点 3.8±0.2
ハ)末端アミノ酸配列
N末端 :
Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−Pro−Gly
−Gly−Ser−Gln−Cys−Val−Glu−His−Asp
−Cys−Phe−Ala−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro
−Ala−Thr−Phe−Leu−
C末端 :
−Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−Arg
ニ)糖含量(重量%)
中性糖 :6.2±1.0%
[フェノール硫酸法で測定]
アミノ糖 :3.1±1.0%
[Elson−Morgan法(Blix変法)で測定]
シアル酸 :3.8±1.5%
[Warren法で測定]
【0017】
また、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン含有組成物、並びに同組成物において非イオン性界面活性剤が添加された可溶性トロンボモジュリン含有組成物、および、可溶性トロンボモジュリンと非イオン性界面活性剤を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン含有組成物を提供する。このときの可溶性トロンボモジュリンの好ましい態様は前記と同様である。
また、前記のいずれの組成物も凍結乾燥処理されているのが好ましい。
【0018】
また、可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン含有組成物と、非イオン性界面活性剤を、それぞれ別々に用意し、用時両者を混合する組成物形態を提供する。このときの可溶性トロンボモジュリンの好ましい態様は前記と同様である。
【0019】
また、可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上とを溶解混合する工程を含む可溶性トロンボモジュリン含有組成物の製法を提供する。
【0020】
そして、可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上との溶液状態の組成物を凍結乾燥する工程を含む上述の可溶性トロンボモジュリン含有組成物の製法を提供する。
【0021】
また、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上とを溶解混合する工程を含む上述の可溶性トロンボモジュリン含有組成物の製法を提供する。
【0022】
そして、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上との溶液状態の組成物を凍結乾燥する工程を含む上述の可溶性トロンボモジュリン含有組成物の製法を提供する。
【0023】
そして、可溶性トロンボモジュリンに、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を添加する可溶性トロンボモジュリンの安定化方法を提供する。また、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上からなる可溶性トロンボモジュリンの安定化剤を提供する。そして非イオン性界面活性剤を添加する可溶性トロンボモジュリンの吸着防止方法および非イオン性界面活性剤からなる可溶性トロンボモジュリンの吸着防止剤を提供する。
【0024】
また、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロンボモジュリンにマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を添加する可溶性トロンボモジュリンの安定化方法と、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロンボモジュリンに非イオン性界面活性剤を添加する可溶性トロンボモジュリンの吸着防止方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、医薬として有効な量の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン含有医薬組成物、並びに同組成物において医薬添加可能な非イオン性界面活性剤が添加された可溶性トロンボモジュリン含有医薬組成物、および、医薬として有効な量の可溶性トロンボモジュリンと、医薬添加可能な非イオン性界面活性剤が添加された可溶性トロンボモジュリン含有医薬組成物を提供し、長期保存時でも安定性に優れ、低濃度に希釈したときも容器への吸着が起こらない血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供する。このときの可溶性トロンボモジュリンの好ましい態様は前記と同様である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる可溶性トロンボモジュリンは、天然型あるいは遺伝子工学的に生産されたものいずれでもよい。また、遺伝子工学的手法により得られる改変型あるいはキメラ型の可溶性トロンボモジュリンであってもよい。例として、従来の技術に記載した可溶性トロンボモジュリンが挙げられる。医薬品とする場合、好ましくはヒトの可溶性トロンボモジュリンが望まれる。さらに好ましくは、天然型のヒト尿由来の可溶性トロンボモジュリンがよい。
また、具体例としては、特開平3−218399号公報に記載の非還元状態での分子量が72,000±3,000(以下、UTM1とする。)または/および79,000±3,000(以下、UTM2とする。)の可溶性トロンボモジュリンが、また、遺伝子工学的に生産されたものとして、WO92/00325号公報に記載の組換ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリン、あるいは特開平1−6219号公報において取得されている、アミノ末端のアミノ酸配列がAla−Pro−Ala−であるアミノ酸498残基よりなる可溶性トロンボモジュリンなどがあげられる。医薬品として用いる場合、可溶性トロンボモジュリンは医薬品として適用可能な程度まで精製されていればよい。
【0027】
また、可溶性トロンボモジュリンは、上述のような可溶性トロンボモジュリンを単独で用いても、あるいは、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロンボモジュリン混合物であってもよく、その混合比率は任意である。例えば、特開平3−218399号公報に開示される2種類のヒト尿中の可溶性トロンボモジュリンの混合物であってもよい。また、WO91/04276号公報に示されるような糖鎖構造の異なる可溶性トロンボモジュリンの混合物であってもよい。
このような可溶性トロンボモジュリンは、例えば、天然型については特開平3−218399号公報あるいは特開平3−86900号公報等に記載の方法で、遺伝子組み換え型についてはWO92/00325号公報、特開平1−6219号公報あるいはWO91/04276号公報等に記載の方法で製造する事ができる。
【0028】
本発明で用いられる安定化剤は、還元性のある二糖類、蔗糖またはアミノ酸である。好ましい、本発明で用いられる安定化のための必須成分としては、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上が用いられる。アルギニンの塩の場合、無機酸、有機酸との塩があるがその種類としては医薬品として利用可能なものであればよい。好ましい例として塩酸塩、クエン酸塩、硫酸塩等が挙げられ、さらに塩酸塩が好ましい。安定化剤の添加量としては、特に限定されるものではないが、可溶性トロンボモジュリン1mg力価あたり0.1mg〜1000mg程度が例示される。より好ましくは可溶性トロンボモジュリン1mg力価あたり0.5mg〜500mg程度である。さらに好ましくは可溶性トロンボモジュリン1mg力価あたり0.5mg〜100mg程度である。蔗糖に関しては、凍結乾燥体とした場合、可溶性トロンボモジュリンに対する蔗糖の比率が高いと保存中に崩壊しやすいため、可溶性トロンボモジュリン1mg力価あたり0.5mg〜50mg程度にするのが好ましい。また、蔗糖を用いた場合、崩壊を抑制する目的でデキストラン等の高分子を適宜添加してもよい。
【0029】
なお、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる安定化剤は可溶性トロンボモジュリンを含有する溶液(組成物)1mL当たり100mg以下であることがより好ましい。これらの安定化剤はその量により安定化効果ばかりでなく賦形効果、緩衝効果、等張化効果あるいは分散効果等さまざまな効果を発揮するので、その組成物の使用目的に応じて添加量が決定される。
【0030】
本発明で用いられる吸着防止剤は、界面活性剤であり、好ましい成分としては、非イオン性界面活性剤であり、それは医薬品として利用可能なものが好ましいが、特に限定されるものではない。エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、ポリ(オキシアルキレン)モノ−及びトリ−ソルビタンエステル(ソルビトールの脂肪酸エステル及び様々のモル数のエチレンオキサイドと共重合したその無水物)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が好ましい。エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体としては、プルロニックF68、ポロクサマー188等、ポリ(オキシアルキレン)モノ−及びトリ−ソルビタンエステルとしては、ポリソルベート80(オレートエステル)、ポリソルベート20(ラウレートエステル)、ポリソルベート40(パルミテートエステル)、ポリソルベート69(ステアレートエステル)等、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、HCO40、HCO60等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上を用いることができる。1種を用いる場合は、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、あるいはポリ(オキシアルキレン)モノ−及びトリ−ソルビタンエステルが好ましく、プルロニックF68、ポリソルベート80、あるいはポリソルベート20が好ましく、さらにプルロニックF68が好ましい。
【0031】
吸着防止剤としての非イオン性界面活性剤の添加量は特に限定されるものではないが、可溶性トロンボモジュリン含有組成物を水溶液とした場合に、当該水溶液中において0.00005wt%以上であることが望ましい。また、これらの物質が生体内に投与された場合に、それ自体が薬理作用を呈しない程度の低い量であることが望ましく、かかる意味で可溶性トロンボモジュリン水溶液中で1wt%以下の濃度であることが望ましい。これらの吸着防止成分は効果が濃度に依存し、また容器の材質や表面積にも影響を受けるため、組成物の臨床使用時における希釈倍率や希釈に用いる容器の材質や大きさなどによって添加量を調節することができる。好ましくは、当該水溶液中において上記濃度範囲すなわち0.00005〜1wt%となる量であれば、本発明の目的を達成する上で適当である。さらに、生体内に投与される際は、0.0001〜0.01wt%となる量が好ましい。
【0032】
本発明で用いられる安定化剤および吸着防止剤の必須成分のマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、これらから選ばれる2種以上を組み合わせて用いることもできる。組み合わせの例としては、マルトースおよび非イオン性界面活性剤、ラクトースおよび非イオン性界面活性剤、蔗糖および非イオン性界面活性剤、アルギニンおよび非イオン性界面活性剤、マルトースおよびアルギニン、ラクトースおよびアルギニン、蔗糖およびアルギニン、マルトースおよびラクトース、マルトースおよび蔗糖、ラクトースおよび蔗糖、マルトース・ラクトースおよび蔗糖、マルトース・アルギニンおよび非イオン性界面活性剤、ラクトース・アルギニンおよび非イオン性界面活性剤、あるいは、蔗糖・アルギニンおよび非イオン性界面活性剤等が挙げられ、混合比率は任意である。また、上記のうち、非イオン性界面活性剤は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
このうち、マルトース、ラクトース、蔗糖あるいはアルギニンから選ばれる1種と、非イオン性界面活性剤の組み合わせが好ましく、組み合わせる非イオン性界面活性剤としては、プルロニックF68、ポリソルベート80、あるいはポリソルベート20が好ましく、さらにプルロニックF68が好ましい。すなわち、マルトースおよびプルロニックF68、ラクトースおよびプルロニックF68、蔗糖およびプルロニックF68あるいはアルギニンおよびプルロニックF68の組み合わせが好ましく、混合比率は任意である。
【0034】
本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、可溶性トロンボモジュリンおよびマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上の必須成分に加えて、その使用目的に応じた保存剤、防腐剤、緩衝剤、増粘剤、界面活性剤等の任意の添加剤を含有していてもよい。また、本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、可溶性トロンボモジュリンおよびマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上の必須成分、および非イオン性界面活性剤に加えて、その使用目的に応じた安定化剤、保存剤、防腐剤、緩衝剤、増粘剤、界面活性剤等の任意の添加剤を含有していてもよい。また、本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、可溶性トロンボモジュリンおよび非イオン性界面活性剤に加えて、その使用目的に応じた安定化剤、保存剤、防腐剤、緩衝剤、増粘剤、界面活性剤等の任意の添加剤を含有していてもよい。医薬として用いる凍結乾燥製剤は、その製剤化の目的に応じて、医薬製造上許容できる、保存剤、安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、芳香剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、界面活性剤、吸着防止剤、無痛化剤等を含有させることは任意である。特に、pH調節の為の緩衝剤、浸透圧調節の為の等張化剤の含有は好ましい。本発明はこれらの物質の影響を受けるものではないが、塩濃度が高いと、凍結乾燥を行う際にケーキの形成に害を及ぼすため好ましくない。
【0035】
本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物の製造方法は、前記の方法で得られる可溶性トロンボモジュリンを含有する溶液にマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上を加えて溶解し、溶液を得ることにより行われる。
【0036】
可溶性トロンボモジュリンの凍結乾燥物にマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上を加えて蒸留水や生理食塩水に溶解してもよい。また、適当な緩衝液に溶解してもよい。すなわち、可溶性トロンボモジュリンとマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上を溶解混合し溶液状態の組成物とすればよい。また、いずれの方法においてもマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上はその溶液として加えてもよい。医薬品として使用する場合にはこれらの添加剤は医薬品に使える規格を満たすものが好ましい。
【0037】
さらにこれらの溶液を通常の方法により凍結乾燥を行い、ケーキ状のあるいは粉末状に変換された組成物とすることができる。医薬品として使用する場合には、上記の溶液を無菌濾過した後、アンプル、バイアル等に投与量単位で分注することが望ましく、さらに所望により通常の方法で凍結乾燥してもよい。
【0038】
また、医薬として使用する場合、本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、一般に使用されている投与方法、すなわち、非経口投与方法、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与等によって投与することが好ましい。凍結乾燥製剤とした場合は、用時、注射用水等に溶解して、患者に投与することができる。経口投与した場合には、消化管内で分解を受けるため、該投与方法は効果的ではないが、消化管内での分解を受けにくい製剤、例えばリポソームやマイクロスフェアー、ナノスフェアーに内包した形態で経口投与することも可能である。また、直腸、鼻腔内、舌下等の粘膜から吸収せしめる投与方法も可能である。
1日投与量としては、例えば特開平3−218399号公報に記載されるように0.005〜500mg力価、好ましくは0.1〜10mg力価が例示されるが、患者の年齢、体重、症状等に応じて適宜増減することができる。
【0039】
このようにして得られた本発明の組成物は、凍結・乾燥・保存・加熱および再溶解の過程いずれにおいても安定であり、室温において長期の保存性に優れる。今回見いだされた安定化の為の必須成分および吸着防止剤の成分はいずれも極めて高い安全性を有しており、本発明の組成物を医薬品として用いる場合に、長期間に渡り活性の低下や凝集塊等の心配がなく、極めて高い品質を維持する事ができる。また、本発明の組成物は低濃度の水溶液としたときも容器への吸着が防止され、医療現場において輸液にて希釈して投与する場合も吸着により有効量を減ずることなく投与が可能となる。以上のように、安全でかつ室温における長期の保存性に優れた血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供するとが可能となった。更に、臨床使用時の容器への吸着が防止された血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供することが可能となった。また、本発明の組成物、製法、安定化剤、安定化方法、吸着防止剤あるいは吸着防止方法は可溶性トロンボモジュリンの精製工程でも利用でき、さらに各種用途に用いるための可溶性トロンボモジュリンの原体の保存にも利用できる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
(可溶性トロンボモジュリンの取得例1)
ヒト尿中可溶性トロンボモジュリンの精製
特開平3−218399号公報の方法に準じてヒト尿中可溶性トロンボモジュリンを調製した。すなわち、原尿100Lを10% NaOHでpH8.5に調整し、析出した沈澱物を除去した。次いで、尿のpHを4M HClでpH5.5に調整後、アクリロニトリル繊維で濾過し尿中のウロキナーゼを吸着除去し、通過尿を分画分子量4万の限外濾過膜を使用して脱塩濃縮した。
【0041】
pHを7.3に調整後、60℃で15分間処理した。0.068M NaClを含有する0.05M 燐酸緩衝液(pH6.5)で予めコンディショニングしておいたDEAEセルロース(ワットマン社製)の300mLカラムに濃縮尿を通過させて活性画分を吸着させ、コンディショニングに使用したと同じ緩衝液750mLで洗浄後、0.05M NaClを含む酢酸緩衝液(pH4.0)で活性画分を溶出した。
【0042】
溶出液は、分画分子量3万の限外濾過膜で濃縮し、2M NaOHでpH7.5に調整し、0.1M NaCl、1mM ベンザミジン塩酸塩および0.5mM CaCl2を含む0.02M トリス塩酸緩衝液(pH7.5)で予めコンディショニングしたDIP−トロンビン−アガロースの2.5mLカラムを通過させて活性画分を吸着させた。
【0043】
次いで、コンディショニングに使用したと同じ緩衝液25mLで洗浄後、1MNaCl、1mM ベンザミジン塩酸塩および0.5mM EDTAを含む0.02M トリス塩酸緩衝液(pH7.5)で溶出し、この溶出液をコンディショニングに使用したと同じ緩衝液に対して透析後、再度前回と同様の条件にコンディショニングしたDIP−トロンビン−アガロースクロマトグラフィーで精製した。2回目のDIP−トロンビン−アガロースクロマトグラフィーにおいても同容のカラムを用い、コンディショニングで使用したと同じ緩衝液10mLで洗浄後、10mLの0.8M NaCl、1mM ベンザミジン塩酸塩および0.5mM CaCl2 を含む0.02M トリス塩酸緩衝液(pH7.5)で洗浄し、1M NaCl、1mM ベンザミジン塩酸塩および0.5mM EDTAを含む0.02M トリス塩酸緩衝液(pH7.5)で活性画分を溶出した。
【0044】
溶出液は、分画分子量3万の限外濾過膜で濃縮し、予め0.14M NaClを含む0.01M 燐酸緩衝液(pH7.0)でコンディショニングしておいたセファクリルS−300(ファルマシアファインケミカル社製)の500mLカラムでゲル濾過し、活性画分を採取した(UTM0)。また、別の実験では非還元状態下でのSDS−PAGEで分子量72,000±3,000に相当する活性画分を(UTM1)、あるいは、分子量79,000±3,000に相当する活性画分を採取した(UTM2)。これらの画分は一晩蒸留水に対して透析した後凍結乾燥した。
【0045】
このようにして得られた天然型のヒト尿中可溶性トロンボモジュリンUTM1およびUTM2はそれぞれ以下の部分構造および性質を有する。
(1)UTM1
イ)分子量 72,000±3,000
[非還元状態でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)により測定]
ロ)等電点 3.9±0.2
ハ)末端アミノ酸配列(配列表の配列番号1のアミノ酸配列)
N末端 :
Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−Pro−Gly−
Gly−Ser−Gln−Cys−Val−Glu−His−Asp−
Cys−Phe−Ala−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro−
Ala−Thr−Phe−Leu−
C末端 :
−Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−Arg
ニ)糖含量(重量%)
中性糖 :5.5±1.0%
[フェノール硫酸法で測定]
アミノ糖 :2.2±1.0%
[Elson−Morgan法(Blix変法)で測定]
シアル酸 :2.8±1.5%
[Warren法で測定]
【0046】
(2)UTM2
イ)分子量 79,000±3,000
[非還元状態でのSDS−PAGEにより測定]
ロ)等電点 3.8±0.2
ハ)末端アミノ酸配列(配列表の配列番号1のアミノ酸配列)
N末端 :
Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−Pro−Gly−
Gly−Ser−Gln−Cys−Val−Glu−His−Asp−
Cys−Phe−Ala−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro−
Ala−Thr−Phe−Leu−
C末端 :
−Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−Arg
ニ)糖含量(重量%)
中性糖 :6.2±1.0%
[フェノール硫酸法で測定]
アミノ糖 :3.1±1.0%
[Elson−Morgan法(Blix変法)で測定]
シアル酸 :3.8±1.5%
[Warren法で測定]
【0047】
(可溶性トロンボモジュリンの取得例2)
遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンボモジュリンの製造(RTM1)
WO92/00325号公報の方法で製造した。すなわち、ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げたDNAを利用してアミノ酸456残基よりなる可溶性トロンボモジュリン(ruTM−Ala)を発現するベクターを調製し、これをCHO細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行って高発現株を得た。この高発現株の培養液をDIP−トロンビン−アガロースカラムとゲル濾過により精製し目的物を得た(RTM1)。
【0048】
(可溶性トロンボモジュリンの取得例3)
遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンボモジュリンの製造(RTM2)
WO92/00325号公報の方法に準じて製造した。すなわち、ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げたDNAを利用してアミノ末端のアミノ酸配列がAla−Pro−Ala−であるアミノ酸498残基よりなる可溶性トロンボモジュリンを発現するベクターを調製し、これをCHO細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行って高発現株を得た。この高発現株の培養液をDIP−トロンビン−アガロースカラムとゲル濾過により精製し目的物を得た(RTM2)。
【0049】
本発明を詳細に説明するために実験例により効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによって、なんら限定されるものではない。
(実験例1)
前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示した凍結乾燥された注射剤を調製した。これらを50℃の恒温槽に保存し、3ヶ月目および6ヶ月目に残存力価を、6ヶ月目に該物質の凝集体生成率を測定した。測定方法は以下の方法により行った。結果を表1および表2に示す。尚、力価残存率は4℃にて同一時間保存した該物質の力価に対する%で表した。なお、本実験で用いたUTM0はUTM1とUTM2とがそれぞれ69%、31%含まれていた。
製剤例1 UTM0 75mg力価とマルトース300mgを加え、注射用蒸留水30mLにて溶解した。この溶液を無菌ろ過後、無菌ガラスバイアルに1mLずつ分注した後、凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤を調製した。
以下同様に下記の成分を用いて製剤例2から9の製剤を調製した。
【0050】
(力価の測定方法)
トロンビン共存下でのプロテインC活性化能を合成基質Glu−Pro−Arg−p−NA(カビ社製)を用い、持田製薬(株)で精製したヒト尿中可溶性トロンボモジュリン(UTM0)を標準物質として使用した。
すなわち、0.05%ポリソルベート20/トリス塩酸緩衝液(pH8.4)で適当濃度に希釈した標準物質もしくは本発明の可溶性トロンボモジュリン含有製剤20μLに20mM CaCl2 /トリス塩酸緩衝液(pH8.4)60μL、さらに牛トロンビン(持田製薬製)40U/mL溶液を20μL添加し、室温で20分間反応する。次いでヒトプロテインC(アメリカンダイアグノスティカ社製)12U/mL溶液を20μL添加し、室温で20分間反応後、反応液にヒトアンチトロンビンIII(ミドリ十字製)とヘパリン(持田製薬製)の混合液(終濃度はそれぞれ0.15U/mL、15U/mL)80μLを添加し、室温で20分間反応する。次いで、反応液を125μL採取し、前記合成基質3mM溶液125μLを添加し、室温で経時的に405nmの波長における吸光度を測定し、反応初期速度を求める。標準溶液について得られた反応初期速度から検量線を作成し、試料の力価を算出した。力価は特開平3−218399号公報の記載に従ってウサギ肺トロンボモジュリンに換算した。
【0051】
(凝集体生成率の測定法)
可溶性トロンボモジュリンの凝集体生成率をTSK−gelTM G3000
SWXL(東洋曹達製)を用いたゲル濾過法により測定した。
【0052】
【0053】
表1および表2に示すように、マルトース、ラクトース、蔗糖および塩酸アルギニンを添加した場合、グルコース、マンニトール、グリシン、精製ゼラチン、ヒト血清アルブミン(HSA)等の他の一般的な添加剤を添加した場合に比較してヒト尿中可溶性トロンボモジュリンが有意に安定化された。すなわち、ヒト可溶性トロンボモジュリンの保存安定性が有意に増大した。その効果は、ラクトースおよび塩酸アルギニンでより顕著であった。
【0054】
(実験例2)
前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られたUTM1あるいはUTM2を用いて、下記に示した凍結乾燥された組成物を調製した。これらを40℃湿度75%の恒温槽に保存し、6ヶ月目に残存力価と該物質の凝集体生成率を測定した。測定方法は上記実験例1の方法により行った。結果を表3および表4に示す。尚、力価残存率は実験開始時の力価に対する%で表した。
組成物例1 UTM2 2.5mg力価とマルトース10mgを加え、精製水1mLにて溶解した。この溶液を凍結乾燥した。
以下同様に下記の成分で構成されている組成物例2から8の組成物を調製した。
【0055】
【表1】
【0056】
表3および表4に示すように、マルトース、ラクトース、蔗糖および塩酸アルギニンを添加した場合、他の一般的な添加剤を添加した場合に比較してヒト尿中可溶性トロンボモジュリンが顕著に安定化された。特に長期間に渡る安定化効果が顕著であった。
【0057】
(実験例3)
溶液安定性試験
前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られたUTM0を用いて、マルトース、ラクトース、蔗糖あるいは塩酸アルギニンを0.5ないし5mg/mL含有する0.05mg力価/mLの可溶性トロンボモジュリン溶液を調製した。これらを室温に保存し、24時間後に残存力価を測定した。測定方法は前記実験例1の方法により行った。いずれの組成物においても顕著な活性の低下は認められなかった。
【0058】
可溶性トロンボモジュリンが変性して凝集体を生じ、凝集体が混在したままヒト血中に投与された場合、その凝集体は変性した蛋白質であるため、過敏症等の免疫反応を惹起する、あるいは塞栓症を誘発する危険性がある。従って、凝集体生成率が低いことは、注射用医薬製剤において重要な利点である。さらに、製剤を開発する場合、室温で長期間保存可能かどうかは、一般に40℃、6ヶ月間保存での安定性を目安として判断するが、本発明で得られる可溶性トロンボモジュリン含有製剤は前述の実験例で示されるように、より過酷な条件である50℃、6ヶ月間の保存でも極めて安定であった。また、溶液状態での保存性もよく、凍結乾燥型の組成物を医薬として用いる場合にも再溶解後に安心して使えることが確認された。
【0059】
(実験例4)
前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示した溶液状の組成物を調製し、力価を測定した。他に、対照としてUTM0 2.5mg力価を生理食塩液2mlにて溶解した溶液を用意し、力価を測定した。これら0.24mlをシリンジを用いてプラスチック製容器に入った生理食塩液(100ml)に混注し、可溶性トロンボモジュリンの理論終濃度を約0.003mg力価/mlとした。混注後3時間目に液を採取し、残存力価を測定した。力価測定方法は前記実験例1の方法により行った。
組成物例9 UTM0 2.5mg力価とポリソルベート80 5mgを加え、生理食塩液2mlにて溶解した。
組成物例10 UTM0 2.5mg力価と精製ゼラチン 10mgを加え、生理食塩液2mlにて溶解した。
【0060】
表5に示すように、ヒト尿中可溶性トロンボモジュリンはプラスチック製容器に対して著しい吸着を示した。ポリソルベート80を添加するとゼラチン添加に比べて、顕著に吸着が防止された。
【0061】
(実験例5)
前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示した溶液状の組成物を調製し、力価を測定した。他に対照としてUTM02.5mg力価を生理食塩液2mlにて溶解した溶液を用意し、力価を測定した。これら1mlを輸液セット(テルフュージョンR TS−A200CK、テルモ製)を装着した生理食塩液(大塚生食注、500ml、プラスチック製容器)に混注し、可溶性トロンボモジュリンの理論終濃度を約0.0025mg力価/mlとした。混注直後に輸液セットを通して得られた液、また、3時間後にプラボトルから直接採取して得られた液について残存力価を測定した。力価測定方法は前記実験例1の方法により行った。
組成物例11 UTM0 2.5mg力価とポリソルベート80 1mgを加え、生理食塩液2mlにて溶解した。
以下同様に下記の成分で構成されている組成物例2から6の組成物を調製した。
【0062】
表6に示すように、ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニックF68を添加した場合、その濃度が0.00005wt%以上でヒト尿中可溶性トロンボモジュリン希薄水溶液の輸液セット並びにプラスチック製容器中での活性が維持されることが判明した。
【0063】
(実験例6)
前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示した凍結乾燥された注射剤を調製した。これらを50℃の恒温槽に保存し、3カ月および6カ月目に力価残存率を測定した。測定方法は上記実験例1の方法により行った。結果を表7に示す。尚、力価残存率は凍結乾燥直後の力価に対する%で表した。
製剤例10 UTM0 150mg力価、塩酸アルギニン1200mgおよびプルロニックF68 60mgを加え、注射用蒸留水60mLにて溶解した。この溶液を無菌ろ過後、無菌ガラスバイアルに2mLずつ分注した後、凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤を調製した。
以下同様に下記の成分を用いて製剤11から13の製剤を調製した。
【0064】
表7に示すように、アルギニンあるいはマルトースと非イオン性界面活性剤を組み合わせて添加した場合、ヒト尿中可溶性トロンボモジュリンの長期間に渡る保存安定性が有意に増大した。従って、長期保存時でも安定性に優れ、低濃度に希釈したときも容器への吸着が起こらない可溶性トロンボモジュリン含有組成物が得られることが確認できた。
【0065】
(製剤実施例)
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
UTM0 10mg力価
ラクトース 100mg
精製ゼラチン 100mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0066】
(実施例2)
UTM0 25mg力価
ラクトース 100mg
プルロニックF68 10mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 2.73mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0067】
(実施例3)
UTM0 25mg力価
L−アルギニン塩酸塩 200mg
ポリソルベート80 10mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 2.73mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0068】
(実施例4)
UTM0 25mg力価
L−アルギニン塩酸塩 200mg
プルロニックF68 10mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0069】
(実施例5)
UTM0 50mg力価
マルトース 100mg
精製ゼラチン 100mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg
塩化ナトリウム 81.8mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0070】
(実施例6)
実施例5と同成分の可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。別に、0.1%ポリソルベート80水溶液を無菌的に調製し、1.0mlずつ分注して熔閉し、溶解用溶液アンプルとした。
【0071】
(実施例7)
UTM0 25mg力価
蔗糖 100mg
精製ゼラチン 100mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0072】
(実施例8)
実施例7と同成分の可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。別に、0.1%ポリソルベート80水溶液を無菌的に調製し、1.0mlずつ分注して熔閉し、溶解用溶液アンプルとした。
【0073】
(実施例9)
UTM1 25mg力価
ラクトース 800mg
精製ゼラチン 100mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0074】
(実施例10)
UTM2 50mg力価
L−アルギニン塩酸塩 200mg
精製ゼラチン 100mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0075】
(実施例11)
UTM1 10mg力価
蔗糖 100mg
ポリソルベート80 50mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0076】
(実施例12)
UTM2 50mg力価
L−アルギニン塩酸塩 200mg
精製ゼラチン 100mg
ポリソルベート80 10mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0077】
(実施例13)
RTM1 25mg力価
ラクトース 200mg
ポリソルベート80 10mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 81.8mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0078】
(実施例14)
RTM1 25mg力価
ラクトース 200mg
プルロニックF68 10mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 81.8mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0079】
(実施例15)
RTM2 25mg力価
ラクトース 100mg
精製ゼラチン 100mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解した全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0080】
(実施例16)
実施例15と同成分の可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。別に、0.1%ポリソルベート80水溶液を無菌的に調製し、1.0mlずつ分注して熔閉し、溶解用溶液アンプルとした。
【0081】
(実施例17)
RTM2 10mg力価
マルトース 100mg
精製ゼラチン 100mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 81.8mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解した全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0082】
(実施例18)
RTM2 10mg力価
マルトース 100mg
精製ゼラチン 100mg
プルロニックF68 10mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 81.8mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解した全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0083】
(実施例19)
UTM0 25mg力価
L−アルギニン塩酸塩 100mg
ラクトース 100mg
ポリソルベート80 10mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg
塩化ナトリウム 2.73mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0084】
(実施例20)
UTM0 25mg力価
L−アルギニン塩酸塩 100mg
マルトース 100mg
プルロニックF68 10mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0085】
(実施例21)
UTM1 10mg力価
ラクトース 100mg
蔗糖 100mg
ポリソルベート80 50mg
リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg
リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg
上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
【0086】
【発明の効果】
本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、凍結・乾燥・保存・加熱および再溶解の過程いずれにおいても安定であり、特に、凍結乾燥した本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物については室温において長期間に渡る保存性に優れる。今回見いだされた安定化のための必須成分および吸着防止剤はいずれも極めて高い安全性を有しており、本発明の組成物を医薬品として用いる場合に、長期間に渡り活性の低下や凝集物の出現等の心配がなく、極めて高い品質を維持する事ができる。とくに凍結乾燥製剤は、50℃で6ヶ月の保存でも十分に安定である。また、本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は低濃度の水溶液としたときも容器への吸着が防止され、医療現場において輸液にて希釈して投与する場合も吸着により有効量を減ずることなく投与が可能となる。従って、安全でかつ室温における長期の保存性に優れた、血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供することが可能である。更に、臨床使用時の容器への吸着が防止された、血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供することが可能である。また、本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物、その製法、可溶性トロンボモジュリンの安定化剤、安定化方法、吸着防止剤あるいは吸着防止方法は可溶性トロンボモジュリンの精製工程でも利用でき、さらに各種用途に用いるための可溶性トロンボモジュリンの原体の保存にも利用できる。
【0087】
【配列表】
Claims (8)
- 可溶性トロンボモジュリンと、マルトースと、非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
- 前記可溶性トロンボモジュリンが、ヒト尿由来トロンボモジュリンである請求項1に記載の医薬組成物。
- 前記可溶性トロンボモジュリンが、組換えヒトトロンボモジュリンである請求項1に記載の医薬組成物。
- ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げたDNAを利用してアミノ末端のアミノ酸配列がアラニン−プロリン−アラニン−であるアミノ酸498残基よりなるヒトトロンボモジュリンを発現するベクターを調製し、これをCHO細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行って得られる高発現株の培養液より精製して得られうる組換えヒトトロンボモジュリンと、マルトースと、非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
- アミノ末端のアミノ酸配列がアラニン−プロリン−アラニン−であるアミノ酸498残基よりなる組換えヒトトロンボモジュリンと、マルトースと、非イオン性界面活性剤とを含有することを特徴とする医薬組成物。
- さらに、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上とを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
- 凍結乾燥処理されている請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
- 可溶性トロンボモジュリンに、マルトースおよび非イオン性界面活性剤を添加することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの安定化方法。
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