JP2000026309A - 可溶性トロンボモジュリン含有組成物 - Google Patents

可溶性トロンボモジュリン含有組成物

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JP2000026309A JP11153856A JP15385699A JP2000026309A JP 2000026309 A JP2000026309 A JP 2000026309A JP 11153856 A JP11153856 A JP 11153856A JP 15385699 A JP15385699 A JP 15385699A JP 2000026309 A JP2000026309 A JP 2000026309A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】長期間に渡り安定性に優れ、容器への吸着が防
止された血液凝固疾患に係わる疾病の予防および治療薬
として有用な可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥製
剤、その製法、可溶性トロンボモジュリンの安定化剤、
安定化方法、吸着防止剤、および吸着防止方法を提供す
る。 【解決手段】1種あるいは2種以上の分子種の可溶性ト
ロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、
アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤
から選ばれる1種あるいは2種以上を含有する可溶性ト
ロンボモジュリン含有組成物、およびその製法、並びに
可溶性トロンボモジュリンの安定化剤、安定化方法、吸
着防止剤および吸着防止方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、1種または2種以
上の可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクト
ース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種
あるいは2種以上を必須成分として含有することを特徴
とする組成物およびその組成物の製法に関する。また、
本発明は、1種または2種以上の可溶性トロンボモジュ
リンと、非イオン性界面活性剤を必須成分として含有す
ることを特徴とする組成物およびその組成物の製法に関
する。また、本発明は、1種または2種以上の可溶性ト
ロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、
アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは2種
以上と、非イオン性界面活性剤を必須成分として含有す
ることを特徴とする組成物およびその組成物の製法に関
する。また、本発明は、マルトース、ラクトース、蔗
糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは
2種以上を含有することを特徴とする可溶性トロンボモ
ジュリンの安定化剤に関する。また、本発明は、マルト
ース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から
選ばれる1種あるいは2種以上を添加することを特徴と
する可溶性トロンボモジュリンの安定化方法に関する。
また、本発明は、非イオン性界面活性剤を含有すること
を特徴とする可溶性トロンボモジュリンの吸着防止剤に
関する。また、本発明は、非イオン性界面活性剤を添加
することを特徴とする可溶性トロンボモジュリンの吸着
防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】トロンボモジュリンはトロンビンを向凝
固酵素から抗凝固酵素へと変換せしめるユニークな性質
を持つ血管内皮表面に存在する蛋白質として、1981
年エスモン(Esmon)ら(プロシーディングズ・オ
ブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ
・オブ・ザ・ユーエスエー(Proceedingso
f the National Academy of
Sciencesof the USA)78、22
49−2254、1981)により報告された。続く論
文において、ウサギ肺組織よりの単離精製に成功し、こ
れを報告した(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル
・ケミストリー(The Journal of Bi
ological Chemistry)257
(2),859−864,1982)。さらに、ヒトト
ロンボモジュリンの全DNA配列およびアミノ酸配列が
報告され(エンボ・ジャーナル(EMBO Journ
al)6,1891−1897,1987;バイオケミ
ストリー(Biochemistry)26(14),
4350−4357,1987)、各ドメインの役割が
明らかにされつつある。トロンボモジュリンはトロンビ
ンと結合し、トロンビンの持つ血液凝固作用を失わせし
め、トロンビン−トロンボモジュリン複合体はプロテイ
ンCを活性化することにより抗凝固作用を示すとされて
いる。すなわち、トロンボモジュリンは血液凝固阻害作
用と線溶促進作用の両方の作用を発揮する可能性があ
り、臨床応用が期待されている。
【0003】従来、血液凝固能異常に係わる疾患の治療
剤としては、抗血液凝固作用をもったアンチトロンビン
IIIやヘパリンが、一方、血栓溶解作用をもったウロ
キナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン
アクチベーター等が使用されている。しかしながら、こ
れらの物質は、出血傾向等の副作用を有し、作用が抗血
液凝固あるいは血栓溶解のいずれかに偏っている。従っ
て、この両方の作用を発揮する可能性があるトロンボモ
ジュリンあるいは基本的にトロンビンと親和性を有しプ
ロテインCの活性化を促進するというトロンボモジュリ
ン活性を有したトロンボモジュリン様物質の臨床応用に
期待が高まっている。
【0004】ヒトトロンボモジュリンは、溶解性が低
く、特に医薬品として利用する場合、精製や製剤化等で
問題を生じていた。すなわち、トロンボモジュリンは膜
結合性であり、アミノ末端領域、EGF様構造領域、O
−グリコシル化部位領域、細胞膜貫通領域および細胞質
内領域の5つからなる完全長のアミノ酸配列を持つもの
は精製過程あるいは製剤化等に際して溶解補助剤を添加
する必要がある。このため溶解性の高いトロンボモジュ
リン様物質(以下可溶性トロンボモジュリンと呼ぶ)が
望まれていた。抗原性等の安全性のことを考慮すると、
天然型であるヒト尿由来可溶性トロンボモジュリンなど
がより望まれている。このような可溶性トロンボモジュ
リンの例のうち、遺伝子工学的手法によるものとして、
細胞膜貫通領域および細胞質内領域を除去した可溶性ト
ロンボモジュリン(特開平1−6219号公報、特開平
2−255699号公報、特開平3−133380号公
報、特開平3−259084号公報、特開平4−210
700号公報、特表平3−503757号公報、特表平
4−505554号公報、EP474273号公報、W
O91/04276号公報、WO91/05803号公
報、WO91/15514号公報、WO92/0032
5号公報、WO92/03149号公報、WO93/1
5755号公報、土肥ら,日本薬学会,第113年会,
講演要旨集3,演題番号30EM14−1,1993
年)等が挙げられる。あるいは天然型としてヒト尿由来
の可溶性トロンボモジュリン(特開昭63−30423
号公報、特開昭63−146898号公報、特開平3−
86900号公報、特開平3−218399号公報、イ
シイ(Ishii)ら,ザ・ジャーナル・オブ・クリニ
カル・インベスティゲーション(The Journa
l of ClinicalInvestigatio
n)76,2178−2181,1985、平本ら,日
本薬学会,第108年会,講演要旨集,演題番号6F0
5 11−1,1988年、矢谷ら,血液と脈管,2
0,197−200,1989、ヤマモト(Yamam
oto)ら,ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリ
ー(The Journal of Biochemi
stry)113,433−440,1993)等の公
知のものがある。
【0005】具体的には、遺伝子工学的手法によるもの
として、特開平1−6219号公報には少なくともアミ
ノ末端から345−462番目のアミノ酸配列を含む可
溶性トロンボモジュリンが、特開平2−255699号
公報には115のアミノ酸残基からなる可溶性トロンボ
モジュリンが、特開平3−133380号公報には少な
くともアミノ末端から1−497番目のアミノ酸残基を
含む可溶性トロンボモジュリンが、特開平3−2590
84号公報には468のアミノ酸残基からなる可溶性ト
ロンボモジュリンが、特開平4−210700号公報に
は硫酸化グリコサミノグリカンで修飾されない可溶性ト
ロンボモジュリンが、特表平3−503757号公報に
はヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターのアミノ酸
配列の一部を含んでいてもよい可溶性トロンボモジュリ
ンが、特表平4−505554号公報にはヒト組織プラ
スミノーゲンアクチベーター等のアミノ酸配列の一部を
含んでいてもよい可溶性トロンボモジュリンが、EP4
74273号公報には19残基からなるトロンビン結合
部位とプロテインC活性化部位とを含んでなる可溶性ト
ロンボモジュリンが、WO91/04276号公報には
コンドロイチン及び/又はコンドロイチン硫酸を含む糖
鎖を有する可溶性トロンボモジュリンが、WO91/0
5803号公報には硫酸化グリコサミノグリカンで修飾
された可溶性トロンボモジュリンが、WO91/155
14号公報にはメチオニンを他のアミノ酸に置換するこ
とによって酸化を防止した可溶性トロンボモジュリン
が、WO92/00325号公報には組換ヒト尿由来可
溶性トロンボモジュリンおよびその変異型物質が、WO
92/03149号公報にはO−グリコシル化部位領域
の糖鎖を修飾あるいはO−グリコシル化部位領域を欠失
させた可溶性トロンボモジュリンが、WO93/157
55号公報にはアミノ酸配列を修飾することによって蛋
白分解酵素による分解を防止した可溶性トロンボモジュ
リンが、WO93/25675号公報にはアミノ酸配列
を修飾することによってコファクター活性を修飾した可
溶性トロンボモジュリンが、各々開示されている。さら
に、土肥らはウシトロンボモジュリン由来の酸性アミノ
酸配列を含む配列を付加した可溶性トロンボモジュリン
を報告している(日本薬学会,第113年会,講演要旨
集3,演題番号30EM14−1,128頁,1993
年)。
【0006】また、ヒト尿由来の該物質として、特開昭
63−30423号公報には非還元状態での分子量が2
00,000、48,000および40,000からな
る可溶性トロンボモジュリンの混合物が、特開昭63−
146898号公報には非還元状態での分子量が39,
000±10,000および31,000±10,00
0の可溶性トロンボモジュリンが、特開平3−8690
0号公報には非還元状態での分子量が55,000〜5
8,000および60,000〜65,000の可溶性
トロンボモジュリンが、特開平3−218399号公報
には非還元状態での分子量が72,000±3,000
および79,000±3,000の可溶性トロンボモジ
ュリンが、各々開示されている。さらに、イシイ(Is
hii)らは血漿中および尿中の可溶性トロンボモジュ
リンを(ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベス
ティゲーション(The Journal of Cl
inical Investigation)76,2
178−2181,1985)、平本らは血中あるいは
尿中の数種の可溶性トロンボモジュリンを(日本薬学
会,第108年会,講演要旨集,演題番号6F05 1
1−1,1988年)、矢谷らは尿中の還元状態での分
子量が63,000の可溶性トロンボモジュリンを(血
液と脈管,20,197−200,1989)、ヤマモ
ト(Yamamoto)らは468のアミノ酸残基から
なる可溶性トロンボモジュリンを(ザ・ジャーナル・オ
ブ・バイオケミストリー(The Journal o
f Biochemistry)113,433−44
0,1993)、各々報告している。
【0007】しかしながら、可溶性トロンボモジュリン
は化学的に十分安定とはいえず、例えば凍結乾燥下の状
態でも、数ヶ月から数年に渡る長期間室温に放置する
と、活性の低下、凝集物の出現等が起こり問題となって
いる。また、凍結乾燥工程の条件によっては、微量では
あるが変性することがあり問題となっている。可溶性ト
ロンボモジュリンが変性して凝集体を生じ、凝集体が混
在したままヒト血中に投与された場合、その凝集体は変
性した蛋白質であるため、過敏症等の免疫反応を惹起す
る、あるいは塞栓症を誘発する危険性がある。従って、
医薬品として使用するにあたっては、医療現場で強く求
められている品質を長期間に渡り保証できる製剤を調製
することは困難な現状である。
【0008】特定の糖類が特定の蛋白質を安定化するこ
とがこれまでにいくつか報告されている。しかしながら
特定の蛋白質を不安定化する、あるいは安定化しないと
いった報告もいくつかある。例えば、蔗糖はチューブリ
ンを不安定化する(バイオキミカ・エト・バイオフィジ
カ・アクタ(Biochimica et Bioph
ysica Acta)532,155−160,19
78)、また、グルコース等の糖類はガン壊死因子の活
性を安定化するが、ラクトース、マルトース、蔗糖等の
糖類は全く安定化効果を示さない(特開昭59−596
25号公報)ことなどが報告されている。
【0009】トロンボモジュリンあるいはトロンボモジ
ュリン様物質の製剤化について、これまでに報告がほと
んどない。限られた情報であるが、例えば、特開平1−
6219号公報、特開平2−255699号公報および
WO91/04276号公報中の発明の詳細な説明にお
いて、注射剤の添加剤として、蔗糖、グリセリン、メチ
ルセルロース、カルボキシメチルセルロースの記載があ
る。これらの物質は増粘剤として添加されており、安定
化効果についての記載はおろか具体的な効果の実証がな
い。また、特開平1−6219号公報、特開平2−25
5699号公報、特開平3−218399号公報および
WO92/00325号公報中の発明の詳細な説明にお
いて、処方例にアルブミン、精製ゼラチン、あるいはマ
ンニトールを添加した例が記述されているが、その製剤
の安定性等、特徴、すなわち添加したことによる効果に
ついての開示がまったくない。
【0010】そこで、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュ
リンについて、アルブミン、精製ゼラチン、グリシン、
グルコースおよびマンニトールとの組成物を調製し、さ
らなる試験を行ったところ、いずれも長期に渡る安定性
が不十分であることが判った。このように、可溶性トロ
ンボモジュリンを製剤化するにあたり、長期のしかも室
温での保存に耐え得る技術の開示は未だなされていな
い。また、可溶性トロンボモジュリンは比活性が非常に
高いため、臨床使用時は1回の投与蛋白量が微量であ
り、更に輸液で非常に低濃度に希釈して持続投与する場
合が多い。可溶性トロンボモジュリンについて輸液で低
濃度に希釈したときにはガラス容器、プラスチック製容
器あるいは輸液セットへの吸着が起こり、特にプラスチ
ック製容器および輸液セットへの吸着が著しいことが判
った。従って、実際に投与をするときに、有効投与量が
減少してしまうおそれが生じることが判った。吸着を防
止する手段として、塩基性アミノ酸によるセクレチンの
吸着防止(特開昭57−169425号公報)、セルロ
ース誘導体や非イオン性界面活性剤、メチルシクロデキ
ストリンによるセクレチン、インシュリン、主に低分子
ペプタイドの吸着防止(特開昭58−206513号公
報、特開昭59−76024号公報、特開昭60−10
0524号公報)の例が報告されているが、可溶性トロ
ンボモジュリンにおいて吸着を防止する技術についての
開示は未だされていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、長期
保存時でも安定性に優れた可溶性トロンボモジュリン含
有組成物を提供することにある。更に低濃度に希釈した
ときも容器への吸着が起こらない可溶性トロンボモジュ
リン含有組成物を提供することにある。更に詳しくは、
長期の室温保存時でも安全で安定性に優れた医薬品とし
て使用可能な可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組
成物を提供することにある。更に、低濃度水溶液におい
ても容器への吸着による配合量低下を起こさない医薬品
として使用可能な可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾
燥組成物を提供することにある。また、本発明の目的
は、可溶性トロンボモジュリンの安定化剤および安定化
方法を提供することにある。また、本発明の目的は、可
溶性トロンボモジュリンの吸着防止剤および吸着防止方
法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは可溶性トロ
ンボモジュリンの安定性に関する問題点を解消すべく、
特に凍結乾燥した組成物について鋭意研究を行い、マル
トース(α形、β形、またはα形とβ形の任意比率混合
物であっても良く、以下、特に記載のない場合は、マル
トースというときにはこれら全てを包含する)、ラクト
ース(α形、β形、またはα形とβ形の任意比率混合物
であっても良く、以下、特に記載のない場合は、ラクト
ースというときにはこれら全てを包含する)、蔗糖、あ
るいはアルギニン(D体、L体またはラセミ体のいずれ
であっても良く、以下、特に記載のない場合は、アルギ
ニンというときはこれら全てを包含する)およびその塩
に優れた安定化効果、特に長期間に渡る安定化効果、を
見いだした。更に、非イオン性界面活性剤に可溶性トロ
ンボモジュリンを低濃度に希釈した場合の容器への吸着
防止効果を見いだして本発明を完成した。
【0013】従って、本発明は、可溶性トロンボモジュ
リンと、マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンお
よびその塩から選ばれる1種あるいは2種以上を必須成
分とする可溶性トロンボモジュリン含有組成物、並びに
同組成物において非イオン性界面活性剤が添加された可
溶性トロンボモジュリン含有組成物、および、可溶性ト
ロンボモジュリンと非イオン性界面活性剤を必須成分と
する可溶性トロンボモジュリン含有組成物を提供する。
【0014】可溶性トロンボモジュリンは、ヒト尿由来
可溶性トロンボモジュリンであることが好ましい。ま
た、可溶性トロンボモジュリンは、組換えヒト可溶性ト
ロンボモジュリンであることも好ましい。従って、本発
明の可溶性トロンボモジュリンは、前述の従来の技術で
引用された公知文献中の可溶性トロンボモジュリンを含
有し、これらの文献中の記載を引用し本発明の可溶性ト
ロンボモジュリンの内容とする。
【0015】そして、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュ
リンが以下の部分構造及び性質を有する物質であること
がさらに好ましい。 イ)分子量 72,000±3,000 [非還元状態でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)により
測定] ロ)等電点 3.9±0.2 ハ)末端アミノ酸配列 N末端 : Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−P
ro−Gly−Gly−Ser−Gln−Cys−Va
l−Glu−His−Asp−Cys−Phe−Ala
−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro−Ala−
Thr−Phe−Leu− C末端 : −Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−
Arg ニ)糖含量(重量%) 中性糖 :5.5±1.0% [フェノール硫酸法で測定] アミノ糖 :2.2±1.0% [Elson−Morgan法(Blix変法)で測
定] シアル酸 :2.8±1.5% [Warren法で測定]
【0016】また、ヒト尿由来可溶性トロンボモジュリ
ンが以下の部分構造及び性質を有する物質であることが
さらに好ましい。 イ)分子量 79,000±3,000 [非還元状態でのSDS−PAGEにより測定] ロ)等電点 3.8±0.2 ハ)末端アミノ酸配列 N末端 : Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−P
ro−Gly−Gly−Ser−Gln−Cys−Va
l−Glu−His−Asp−Cys−Phe−Ala
−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro−Ala−
Thr−Phe−Leu− C末端 : −Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−
Arg ニ)糖含量(重量%) 中性糖 :6.2±1.0% [フェノール硫酸法で測定] アミノ糖 :3.1±1.0% [Elson−Morgan法(Blix変法)で測
定] シアル酸 :3.8±1.5% [Warren法で測定]
【0017】また、2種あるいは3種以上の分子種の可
溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、
蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるい
は2種以上を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン
含有組成物、並びに同組成物において非イオン性界面活
性剤が添加された可溶性トロンボモジュリン含有組成
物、および、可溶性トロンボモジュリンと非イオン性界
面活性剤を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン含
有組成物を提供する。このときの可溶性トロンボモジュ
リンの好ましい態様は前記と同様である。また、前記の
いずれの組成物も凍結乾燥処理されているのが好まし
い。
【0018】また、可溶性トロンボモジュリンと、マル
トース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩か
ら選ばれる1種あるいは2種以上を必須成分とする可溶
性トロンボモジュリン含有組成物と、非イオン性界面活
性剤を、それぞれ別々に用意し、用時両者を混合する組
成物形態を提供する。このときの可溶性トロンボモジュ
リンの好ましい態様は前記と同様である。
【0019】また、可溶性トロンボモジュリンと、マル
トース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩、
および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは
2種以上とを溶解混合する工程を含む可溶性トロンボモ
ジュリン含有組成物の製法を提供する。
【0020】そして、可溶性トロンボモジュリンと、マ
ルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその
塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種ある
いは2種以上との溶液状態の組成物を凍結乾燥する工程
を含む上述の可溶性トロンボモジュリン含有組成物の製
法を提供する。
【0021】また、2種あるいは3種以上の分子種の可
溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、
蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性界面
活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上とを溶解混合
する工程を含む上述の可溶性トロンボモジュリン含有組
成物の製法を提供する。
【0022】そして、2種あるいは3種以上の分子種の
可溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトー
ス、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性
界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上との溶液
状態の組成物を凍結乾燥する工程を含む上述の可溶性ト
ロンボモジュリン含有組成物の製法を提供する。
【0023】そして、可溶性トロンボモジュリンに、マ
ルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩
から選ばれる1種あるいは2種以上を添加する可溶性ト
ロンボモジュリンの安定化方法を提供する。また、マル
トース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩か
ら選ばれる1種あるいは2種以上からなる可溶性トロン
ボモジュリンの安定化剤を提供する。そして非イオン性
界面活性剤を添加する可溶性トロンボモジュリンの吸着
防止方法および非イオン性界面活性剤からなる可溶性ト
ロンボモジュリンの吸着防止剤を提供する。
【0024】また、2種あるいは3種以上の分子種の可
溶性トロンボモジュリンにマルトース、ラクトース、蔗
糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは
2種以上を添加する可溶性トロンボモジュリンの安定化
方法と、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロン
ボモジュリンに非イオン性界面活性剤を添加する可溶性
トロンボモジュリンの吸着防止方法を提供する。
【0025】また、本発明は、医薬として有効な量の可
溶性トロンボモジュリンと、マルトース、ラクトース、
蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるい
は2種以上を必須成分とする可溶性トロンボモジュリン
含有医薬組成物、並びに同組成物において医薬添加可能
な非イオン性界面活性剤が添加された可溶性トロンボモ
ジュリン含有医薬組成物、および、医薬として有効な量
の可溶性トロンボモジュリンと、医薬添加可能な非イオ
ン性界面活性剤が添加された可溶性トロンボモジュリン
含有医薬組成物を提供し、長期保存時でも安定性に優
れ、低濃度に希釈したときも容器への吸着が起こらない
血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供する。こ
のときの可溶性トロンボモジュリンの好ましい態様は前
記と同様である。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる可溶性トロンボモジュリン
は、天然型あるいは遺伝子工学的に生産されたものいず
れでもよい。また、遺伝子工学的手法により得られる改
変型あるいはキメラ型の可溶性トロンボモジュリンであ
ってもよい。例として、従来の技術に記載した可溶性ト
ロンボモジュリンが挙げられる。医薬品とする場合、好
ましくはヒトの可溶性トロンボモジュリンが望まれる。
さらに好ましくは、天然型のヒト尿由来の可溶性トロン
ボモジュリンがよい。また、具体例としては、特開平3
−218399号公報に記載の非還元状態での分子量が
72,000±3,000(以下、UTM1とする。)
または/および79,000±3,000(以下、UT
M2とする。)の可溶性トロンボモジュリンが、また、
遺伝子工学的に生産されたものとして、WO92/00
325号公報に記載の組換ヒト尿由来可溶性トロンボモ
ジュリン、あるいは特開平1−6219号公報において
取得されている、アミノ末端のアミノ酸配列がAla−
Pro−Ala−であるアミノ酸498残基よりなる可
溶性トロンボモジュリンなどがあげられる。医薬品とし
て用いる場合、可溶性トロンボモジュリンは医薬品とし
て適用可能な程度まで精製されていればよい。
【0027】また、可溶性トロンボモジュリンは、上述
のような可溶性トロンボモジュリンを単独で用いても、
あるいは、2種あるいは3種以上の分子種の可溶性トロ
ンボモジュリン混合物であってもよく、その混合比率は
任意である。例えば、特開平3−218399号公報に
開示される2種類のヒト尿中の可溶性トロンボモジュリ
ンの混合物であってもよい。また、WO91/0427
6号公報に示されるような糖鎖構造の異なる可溶性トロ
ンボモジュリンの混合物であってもよい。このような可
溶性トロンボモジュリンは、例えば、天然型については
特開平3−218399号公報あるいは特開平3−86
900号公報等に記載の方法で、遺伝子組み換え型につ
いてはWO92/00325号公報、特開平1−621
9号公報あるいはWO91/04276号公報等に記載
の方法で製造する事ができる。
【0028】本発明で用いられる安定化剤は、還元性の
ある二糖類、蔗糖またはアミノ酸である。好ましい、本
発明で用いられる安定化のための必須成分としては、マ
ルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩
から選ばれる1種あるいは2種以上が用いられる。アル
ギニンの塩の場合、無機酸、有機酸との塩があるがその
種類としては医薬品として利用可能なものであればよ
い。好ましい例として塩酸塩、クエン酸塩、硫酸塩等が
挙げられ、さらに塩酸塩が好ましい。安定化剤の添加量
としては、特に限定されるものではないが、可溶性トロ
ンボモジュリン1mg力価あたり0.1mg〜1000
mg程度が例示される。より好ましくは可溶性トロンボ
モジュリン1mg力価あたり0.5mg〜500mg程
度である。さらに好ましくは可溶性トロンボモジュリン
1mg力価あたり0.5mg〜100mg程度である。
蔗糖に関しては、凍結乾燥体とした場合、可溶性トロン
ボモジュリンに対する蔗糖の比率が高いと保存中に崩壊
しやすいため、可溶性トロンボモジュリン1mg力価あ
たり0.5mg〜50mg程度にするのが好ましい。ま
た、蔗糖を用いた場合、崩壊を抑制する目的でデキスト
ラン等の高分子を適宜添加してもよい。
【0029】なお、マルトース、ラクトース、蔗糖、ア
ルギニンおよびその塩から選ばれる安定化剤は可溶性ト
ロンボモジュリンを含有する溶液(組成物)1mL当た
り100mg以下であることがより好ましい。これらの
安定化剤はその量により安定化効果ばかりでなく賦形効
果、緩衝効果、等張化効果あるいは分散効果等さまざま
な効果を発揮するので、その組成物の使用目的に応じて
添加量が決定される。
【0030】本発明で用いられる吸着防止剤は、界面活
性剤であり、好ましい成分としては、非イオン性界面活
性剤であり、それは医薬品として利用可能なものが好ま
しいが、特に限定されるものではない。エチレンオキサ
イドプロピレンオキサイド共重合体、ポリ(オキシアル
キレン)モノ−及びトリ−ソルビタンエステル(ソルビ
トールの脂肪酸エステル及び様々のモル数のエチレンオ
キサイドと共重合したその無水物)、ポリオキシエチレ
ン硬化ヒマシ油等が好ましい。エチレンオキサイドプロ
ピレンオキサイド共重合体としては、プルロニックF6
8、ポロクサマー188等、ポリ(オキシアルキレン)
モノ−及びトリ−ソルビタンエステルとしては、ポリソ
ルベート80(オレートエステル)、ポリソルベート2
0(ラウレートエステル)、ポリソルベート40(パル
ミテートエステル)、ポリソルベート69(ステアレー
トエステル)等、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とし
ては、HCO40、HCO60等が挙げられる。これら
の非イオン性界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種
以上を用いることができる。1種を用いる場合は、エチ
レンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、あるい
はポリ(オキシアルキレン)モノ−及びトリ−ソルビタ
ンエステルが好ましく、プルロニックF68、ポリソル
ベート80、あるいはポリソルベート20が好ましく、
さらにプルロニックF68が好ましい。
【0031】吸着防止剤としての非イオン性界面活性剤
の添加量は特に限定されるものではないが、可溶性トロ
ンボモジュリン含有組成物を水溶液とした場合に、当該
水溶液中において0.00005wt%以上であることが
望ましい。また、これらの物質が生体内に投与された場
合に、それ自体が薬理作用を呈しない程度の低い量であ
ることが望ましく、かかる意味で可溶性トロンボモジュ
リン水溶液中で1wt%以下の濃度であることが望まし
い。これらの吸着防止成分は効果が濃度に依存し、また
容器の材質や表面積にも影響を受けるため、組成物の臨
床使用時における希釈倍率や希釈に用いる容器の材質や
大きさなどによって添加量を調節することができる。好
ましくは、当該水溶液中において上記濃度範囲すなわち
0.00005〜1wt%となる量であれば、本発明の目
的を達成する上で適当である。さらに、生体内に投与さ
れる際は、0.0001〜0.01wt%となる量が好ま
しい。
【0032】本発明で用いられる安定化剤および吸着防
止剤の必須成分のマルトース、ラクトース、蔗糖、アル
ギニンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤はそ
れぞれ単独で用いてもよいし、これらから選ばれる2種
以上を組み合わせて用いることもできる。組み合わせの
例としては、マルトースおよび非イオン性界面活性剤、
ラクトースおよび非イオン性界面活性剤、蔗糖および非
イオン性界面活性剤、アルギニンおよび非イオン性界面
活性剤、マルトースおよびアルギニン、ラクトースおよ
びアルギニン、蔗糖およびアルギニン、マルトースおよ
びラクトース、マルトースおよび蔗糖、ラクトースおよ
び蔗糖、マルトース・ラクトースおよび蔗糖、マルトー
ス・アルギニンおよび非イオン性界面活性剤、ラクトー
ス・アルギニンおよび非イオン性界面活性剤、あるい
は、蔗糖・アルギニンおよび非イオン性界面活性剤等が
挙げられ、混合比率は任意である。また、上記のうち、
非イオン性界面活性剤は1種あるいは2種以上を組み合
わせて用いることができる。
【0033】このうち、マルトース、ラクトース、蔗糖
あるいはアルギニンから選ばれる1種と、非イオン性界
面活性剤の組み合わせが好ましく、組み合わせる非イオ
ン性界面活性剤としては、プルロニックF68、ポリソ
ルベート80、あるいはポリソルベート20が好まし
く、さらにプルロニックF68が好ましい。すなわち、
マルトースおよびプルロニックF68、ラクトースおよ
びプルロニックF68、蔗糖およびプルロニックF68
あるいはアルギニンおよびプルロニックF68の組み合
わせが好ましく、混合比率は任意である。
【0034】本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組
成物は、可溶性トロンボモジュリンおよびマルトース、
ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選ばれ
る1種あるいは2種以上の必須成分に加えて、その使用
目的に応じた保存剤、防腐剤、緩衝剤、増粘剤、界面活
性剤等の任意の添加剤を含有していてもよい。また、本
発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、可溶性
トロンボモジュリンおよびマルトース、ラクトース、蔗
糖、アルギニンおよびその塩から選ばれる1種あるいは
2種以上の必須成分、および非イオン性界面活性剤に加
えて、その使用目的に応じた安定化剤、保存剤、防腐
剤、緩衝剤、増粘剤、界面活性剤等の任意の添加剤を含
有していてもよい。また、本発明の可溶性トロンボモジ
ュリン含有組成物は、可溶性トロンボモジュリンおよび
非イオン性界面活性剤に加えて、その使用目的に応じた
安定化剤、保存剤、防腐剤、緩衝剤、増粘剤、界面活性
剤等の任意の添加剤を含有していてもよい。医薬として
用いる凍結乾燥製剤は、その製剤化の目的に応じて、医
薬製造上許容できる、保存剤、安定化剤、結合剤、賦形
剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、芳香剤、矯味
剤、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化
剤、界面活性剤、吸着防止剤、無痛化剤等を含有させる
ことは任意である。特に、pH調節の為の緩衝剤、浸透
圧調節の為の等張化剤の含有は好ましい。本発明はこれ
らの物質の影響を受けるものではないが、塩濃度が高い
と、凍結乾燥を行う際にケーキの形成に害を及ぼすため
好ましくない。
【0035】本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組
成物の製造方法は、前記の方法で得られる可溶性トロン
ボモジュリンを含有する溶液にマルトース、ラクトー
ス、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性
界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上を加えて
溶解し、溶液を得ることにより行われる。
【0036】可溶性トロンボモジュリンの凍結乾燥物に
マルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその
塩、および非イオン性界面活性剤から選ばれる1種ある
いは2種以上を加えて蒸留水や生理食塩水に溶解しても
よい。また、適当な緩衝液に溶解してもよい。すなわ
ち、可溶性トロンボモジュリンとマルトース、ラクトー
ス、蔗糖、アルギニンおよびその塩、および非イオン性
界面活性剤から選ばれる1種あるいは2種以上を溶解混
合し溶液状態の組成物とすればよい。また、いずれの方
法においてもマルトース、ラクトース、蔗糖、アルギニ
ンおよびその塩、および非イオン性界面活性剤から選ば
れる1種あるいは2種以上はその溶液として加えてもよ
い。医薬品として使用する場合にはこれらの添加剤は医
薬品に使える規格を満たすものが好ましい。
【0037】さらにこれらの溶液を通常の方法により凍
結乾燥を行い、ケーキ状のあるいは粉末状に変換された
組成物とすることができる。医薬品として使用する場合
には、上記の溶液を無菌濾過した後、アンプル、バイア
ル等に投与量単位で分注することが望ましく、さらに所
望により通常の方法で凍結乾燥してもよい。
【0038】また、医薬として使用する場合、本発明の
可溶性トロンボモジュリン含有組成物は、一般に使用さ
れている投与方法、すなわち、非経口投与方法、例えば
静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与等によって投与する
ことが好ましい。凍結乾燥製剤とした場合は、用時、注
射用水等に溶解して、患者に投与することができる。経
口投与した場合には、消化管内で分解を受けるため、該
投与方法は効果的ではないが、消化管内での分解を受け
にくい製剤、例えばリポソームやマイクロスフェアー、
ナノスフェアーに内包した形態で経口投与することも可
能である。また、直腸、鼻腔内、舌下等の粘膜から吸収
せしめる投与方法も可能である。1日投与量としては、
例えば特開平3−218399号公報に記載されるよう
に0.005〜500mg力価、好ましくは0.1〜1
0mg力価が例示されるが、患者の年齢、体重、症状等
に応じて適宜増減することができる。
【0039】このようにして得られた本発明の組成物
は、凍結・乾燥・保存・加熱および再溶解の過程いずれ
においても安定であり、室温において長期の保存性に優
れる。今回見いだされた安定化の為の必須成分および吸
着防止剤の成分はいずれも極めて高い安全性を有してお
り、本発明の組成物を医薬品として用いる場合に、長期
間に渡り活性の低下や凝集塊等の心配がなく、極めて高
い品質を維持する事ができる。また、本発明の組成物は
低濃度の水溶液としたときも容器への吸着が防止され、
医療現場において輸液にて希釈して投与する場合も吸着
により有効量を減ずることなく投与が可能となる。以上
のように、安全でかつ室温における長期の保存性に優れ
た血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供すると
が可能となった。更に、臨床使用時の容器への吸着が防
止された血液凝固疾患に係わる疾病の予防治療薬を提供
することが可能となった。また、本発明の組成物、製
法、安定化剤、安定化方法、吸着防止剤あるいは吸着防
止方法は可溶性トロンボモジュリンの精製工程でも利用
でき、さらに各種用途に用いるための可溶性トロンボモ
ジュリンの原体の保存にも利用できる。
【0040】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明する。 (可溶性トロンボモジュリンの取得例1) ヒト尿中可溶性トロンボモジュリンの精製 特開平3−218399号公報の方法に準じてヒト尿中
可溶性トロンボモジュリンを調製した。すなわち、原尿
100Lを10% NaOHでpH8.5に調整し、析
出した沈澱物を除去した。次いで、尿のpHを4M H
ClでpH5.5に調整後、アクリロニトリル繊維で濾
過し尿中のウロキナーゼを吸着除去し、通過尿を分画分
子量4万の限外濾過膜を使用して脱塩濃縮した。
【0041】pHを7.3に調整後、60℃で15分間
処理した。0.068M NaClを含有する0.05
M 燐酸緩衝液(pH6.5)で予めコンディショニン
グしておいたDEAEセルロース(ワットマン社製)の
300mLカラムに濃縮尿を通過させて活性画分を吸着
させ、コンディショニングに使用したと同じ緩衝液75
0mLで洗浄後、0.05M NaClを含む酢酸緩衝
液(pH4.0)で活性画分を溶出した。
【0042】溶出液は、分画分子量3万の限外濾過膜で
濃縮し、2M NaOHでpH7.5に調整し、0.1
M NaCl、1mM ベンザミジン塩酸塩および0.
5mM CaCl2を含む0.02M トリス塩酸緩衝
液(pH7.5)で予めコンディショニングしたDIP
−トロンビン−アガロースの2.5mLカラムを通過さ
せて活性画分を吸着させた。
【0043】次いで、コンディショニングに使用したと
同じ緩衝液25mLで洗浄後、1MNaCl、1mM
ベンザミジン塩酸塩および0.5mM EDTAを含む
0.02M トリス塩酸緩衝液(pH7.5)で溶出
し、この溶出液をコンディショニングに使用したと同じ
緩衝液に対して透析後、再度前回と同様の条件にコンデ
ィショニングしたDIP−トロンビン−アガロースクロ
マトグラフィーで精製した。2回目のDIP−トロンビ
ン−アガロースクロマトグラフィーにおいても同容のカ
ラムを用い、コンディショニングで使用したと同じ緩衝
液10mLで洗浄後、10mLの0.8M NaCl、
1mM ベンザミジン塩酸塩および0.5mM CaC
2 を含む0.02M トリス塩酸緩衝液(pH7.
5)で洗浄し、1M NaCl、1mM ベンザミジン
塩酸塩および0.5mM EDTAを含む0.02M
トリス塩酸緩衝液(pH7.5)で活性画分を溶出し
た。
【0044】溶出液は、分画分子量3万の限外濾過膜で
濃縮し、予め0.14M NaClを含む0.01M
燐酸緩衝液(pH7.0)でコンディショニングしてお
いたセファクリルS−300(ファルマシアファインケ
ミカル社製)の500mLカラムでゲル濾過し、活性画
分を採取した(UTM0)。また、別の実験では非還元
状態下でのSDS−PAGEで分子量72,000±
3,000に相当する活性画分を(UTM1)、あるい
は、分子量79,000±3,000に相当する活性画
分を採取した(UTM2)。これらの画分は一晩蒸留水
に対して透析した後凍結乾燥した。
【0045】このようにして得られた天然型のヒト尿中
可溶性トロンボモジュリンUTM1およびUTM2はそ
れぞれ以下の部分構造および性質を有する。 (1)UTM1 イ)分子量 72,000±3,000 [非還元状態でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)により
測定] ロ)等電点 3.9±0.2 ハ)末端アミノ酸配列(配列表の配列番号1のアミノ酸
配列) N末端 : Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−P
ro−Gly−Gly−Ser−Gln−Cys−Va
l−Glu−His−Asp−Cys−Phe−Ala
−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro−Ala−
Thr−Phe−Leu− C末端 : −Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−
Arg ニ)糖含量(重量%) 中性糖 :5.5±1.0% [フェノール硫酸法で測定] アミノ糖 :2.2±1.0% [Elson−Morgan法(Blix変法)で測
定] シアル酸 :2.8±1.5% [Warren法で測定]
【0046】(2)UTM2 イ)分子量 79,000±3,000 [非還元状態でのSDS−PAGEにより測定] ロ)等電点 3.8±0.2 ハ)末端アミノ酸配列(配列表の配列番号1のアミノ酸
配列) N末端 : Ala−Pro−Ala−Glu−Pro−Gln−P
ro−Gly−Gly−Ser−Gln−Cys−Va
l−Glu−His−Asp−Cys−Phe−Ala
−Leu−Tyr−Pro−Gly−Pro−Ala−
Thr−Phe−Leu− C末端 : −Leu−Ala−Arg、または−Leu−Val−
Arg ニ)糖含量(重量%) 中性糖 :6.2±1.0% [フェノール硫酸法で測定] アミノ糖 :3.1±1.0% [Elson−Morgan法(Blix変法)で測
定] シアル酸 :3.8±1.5% [Warren法で測定]
【0047】(可溶性トロンボモジュリンの取得例2) 遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンボモジュリンの製造
(RTM1) WO92/00325号公報の方法で製造した。すなわ
ち、ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げたDN
Aを利用してアミノ酸456残基よりなる可溶性トロン
ボモジュリン(ruTM−Ala)を発現するベクター
を調製し、これをCHO細胞に組み込んだ後、遺伝子増
幅を行って高発現株を得た。この高発現株の培養液をD
IP−トロンビン−アガロースカラムとゲル濾過により
精製し目的物を得た(RTM1)。
【0048】(可溶性トロンボモジュリンの取得例3) 遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンボモジュリンの製造
(RTM2) WO92/00325号公報の方法に準じて製造した。
すなわち、ヒト胎盤cDNAライブラリーより釣り上げ
たDNAを利用してアミノ末端のアミノ酸配列がAla
−Pro−Ala−であるアミノ酸498残基よりなる
可溶性トロンボモジュリンを発現するベクターを調製
し、これをCHO細胞に組み込んだ後、遺伝子増幅を行
って高発現株を得た。この高発現株の培養液をDIP−
トロンビン−アガロースカラムとゲル濾過により精製し
目的物を得た(RTM2)。
【0049】本発明を詳細に説明するために実験例によ
り効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによっ
て、なんら限定されるものではない。 (実験例1)前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例
1で得られたUTM0を用いて、下記に示した凍結乾燥
された注射剤を調製した。これらを50℃の恒温槽に保
存し、3ヶ月目および6ヶ月目に残存力価を、6ヶ月目
に該物質の凝集体生成率を測定した。測定方法は以下の
方法により行った。結果を表1および表2に示す。尚、
力価残存率は4℃にて同一時間保存した該物質の力価に
対する%で表した。なお、本実験で用いたUTM0はU
TM1とUTM2とがそれぞれ69%、31%含まれて
いた。製剤例1 UTM0 75mg力価とマルトース
300mgを加え、注射用蒸留水30mLにて溶解し
た。この溶液を無菌ろ過後、無菌ガラスバイアルに1m
Lずつ分注した後、凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤を
調製した。以下同様に下記の成分を用いて製剤例2から
9の製剤を調製した。
【0050】(力価の測定方法)トロンビン共存下での
プロテインC活性化能を合成基質Glu−Pro−Ar
g−p−NA(カビ社製)を用い、持田製薬(株)で精
製したヒト尿中可溶性トロンボモジュリン(UTM0)
を標準物質として使用した。すなわち、0.05%ポリ
ソルベート20/トリス塩酸緩衝液(pH8.4)で適
当濃度に希釈した標準物質もしくは本発明の可溶性トロ
ンボモジュリン含有製剤20μLに20mM CaCl
2 /トリス塩酸緩衝液(pH8.4)60μL、さらに
牛トロンビン(持田製薬製)40U/mL溶液を20μ
L添加し、室温で20分間反応する。次いでヒトプロテ
インC(アメリカンダイアグノスティカ社製)12U/
mL溶液を20μL添加し、室温で20分間反応後、反
応液にヒトアンチトロンビンIII(ミドリ十字製)と
ヘパリン(持田製薬製)の混合液(終濃度はそれぞれ
0.15U/mL、15U/mL)80μLを添加し、
室温で20分間反応する。次いで、反応液を125μL
採取し、前記合成基質3mM溶液125μLを添加し、
室温で経時的に405nmの波長における吸光度を測定
し、反応初期速度を求める。標準溶液について得られた
反応初期速度から検量線を作成し、試料の力価を算出し
た。力価は特開平3−218399号公報の記載に従っ
てウサギ肺トロンボモジュリンに換算した。
【0051】(凝集体生成率の測定法)可溶性トロンボ
モジュリンの凝集体生成率をTSK−gelTM G30
00SWXL(東洋曹達製)を用いたゲル濾過法により測
定した。
【0052】
【0053】 表1および表2に示すように、マルトース、ラクトー
ス、蔗糖および塩酸アルギニンを添加した場合、グルコ
ース、マンニトール、グリシン、精製ゼラチン、ヒト血
清アルブミン(HSA)等の他の一般的な添加剤を添加
した場合に比較してヒト尿中可溶性トロンボモジュリン
が有意に安定化された。すなわち、ヒト可溶性トロンボ
モジュリンの保存安定性が有意に増大した。その効果
は、ラクトースおよび塩酸アルギニンでより顕著であっ
た。
【0054】(実験例2)前述の可溶性トロンボモジュ
リンの取得例1で得られたUTM1あるいはUTM2を
用いて、下記に示した凍結乾燥された組成物を調製し
た。これらを40℃湿度75%の恒温槽に保存し、6ヶ
月目に残存力価と該物質の凝集体生成率を測定した。測
定方法は上記実験例1の方法により行った。結果を表3
および表4に示す。尚、力価残存率は実験開始時の力価
に対する%で表した。 組成物例1 UTM2 2.5mg力価とマルトース1
0mgを加え、精製水1mLにて溶解した。この溶液を
凍結乾燥した。以下同様に下記の成分で構成されている
組成物例2から8の組成物を調製した。 組成物例2 UTM1 2.5mg力価 ラクトース 10mg 組成物例3 UTM2 2.5mg力価 塩酸アルギニン 20mg 組成物例4 UTM1 2.5mg力価 蔗糖 10mg 組成物例5 UTM1 2.5mg力価 マンニトール 10mg 組成物例6 UTM1 2.5mg力価 グリシン 20mg 組成物例7 UTM1 2.5mg力価 精製ゼラチン 20mg 組成物例8 UTM1 2.5mg力価 HSA 10mg
【0055】
【表1】
【0056】 表3および表4に示すように、マルトース、ラクトー
ス、蔗糖および塩酸アルギニンを添加した場合、他の一
般的な添加剤を添加した場合に比較してヒト尿中可溶性
トロンボモジュリンが顕著に安定化された。特に長期間
に渡る安定化効果が顕著であった。
【0057】(実験例3) 溶液安定性試験 前述の可溶性トロンボモジュリンの取得例1で得られた
UTM0を用いて、マルトース、ラクトース、蔗糖ある
いは塩酸アルギニンを0.5ないし5mg/mL含有す
る0.05mg力価/mLの可溶性トロンボモジュリン
溶液を調製した。これらを室温に保存し、24時間後に
残存力価を測定した。測定方法は前記実験例1の方法に
より行った。いずれの組成物においても顕著な活性の低
下は認められなかった。
【0058】可溶性トロンボモジュリンが変性して凝集
体を生じ、凝集体が混在したままヒト血中に投与された
場合、その凝集体は変性した蛋白質であるため、過敏症
等の免疫反応を惹起する、あるいは塞栓症を誘発する危
険性がある。従って、凝集体生成率が低いことは、注射
用医薬製剤において重要な利点である。さらに、製剤を
開発する場合、室温で長期間保存可能かどうかは、一般
に40℃、6ヶ月間保存での安定性を目安として判断す
るが、本発明で得られる可溶性トロンボモジュリン含有
製剤は前述の実験例で示されるように、より過酷な条件
である50℃、6ヶ月間の保存でも極めて安定であっ
た。また、溶液状態での保存性もよく、凍結乾燥型の組
成物を医薬として用いる場合にも再溶解後に安心して使
えることが確認された。
【0059】(実験例4)前述の可溶性トロンボモジュ
リンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示
した溶液状の組成物を調製し、力価を測定した。他に、
対照としてUTM0 2.5mg力価を生理食塩液2m
lにて溶解した溶液を用意し、力価を測定した。これら
0.24mlをシリンジを用いてプラスチック製容器に
入った生理食塩液(100ml)に混注し、可溶性トロ
ンボモジュリンの理論終濃度を約0.003mg力価/
mlとした。混注後3時間目に液を採取し、残存力価を
測定した。力価測定方法は前記実験例1の方法により行
った。 組成物例9 UTM0 2.5mg力価とポリソルベ
ート80 5mgを加え、生理食塩液2mlにて溶解し
た。 組成物例10 UTM0 2.5mg力価と精製ゼラチ
ン 10mgを加え、生理食塩液2mlにて溶解した。
【0060】 表5に示すように、ヒト尿中可溶性トロンボモジュリン
はプラスチック製容器に対して著しい吸着を示した。ポ
リソルベート80を添加するとゼラチン添加に比べて、
顕著に吸着が防止された。
【0061】(実験例5)前述の可溶性トロンボモジュ
リンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示
した溶液状の組成物を調製し、力価を測定した。他に対
照としてUTM02.5mg力価を生理食塩液2mlに
て溶解した溶液を用意し、力価を測定した。これら1m
lを輸液セット(テルフュージョンR TS−A200
CK、テルモ製)を装着した生理食塩液(大塚生食注、
500ml、プラスチック製容器)に混注し、可溶性ト
ロンボモジュリンの理論終濃度を約0.0025mg力
価/mlとした。混注直後に輸液セットを通して得られ
た液、また、3時間後にプラボトルから直接採取して得
られた液について残存力価を測定した。力価測定方法は
前記実験例1の方法により行った。 組成物例11 UTM0 2.5mg力価とポリソルベ
ート80 1mgを加え、生理食塩液2mlにて溶解し
た。以下同様に下記の成分で構成されている組成物例2
から6の組成物を調製した。 組成物例12 UTM0 2.5mg力価 ポリソルベート80 0.5mg 組成物例13 UTM0 2.5mg力価 ポリソルベート20 1mg 組成物例14 UTM0 2.5mg力価 ポリソルベート20 0.5mg 組成物例15 UTM0 2.5mg力価 プルロニックF68 5mg 組成物例16 UTM0 2.5mg力価 プルロニックF68 1mg
【0062】 表6に示すように、ポリソルベート80、ポリソルベー
ト20、プルロニックF68を添加した場合、その濃度
が0.00005wt%以上でヒト尿中可溶性トロンボモ
ジュリン希薄水溶液の輸液セット並びにプラスチック製
容器中での活性が維持されることが判明した。
【0063】(実験例6)前述の可溶性トロンボモジュ
リンの取得例1で得られたUTM0を用いて、下記に示
した凍結乾燥された注射剤を調製した。これらを50℃
の恒温槽に保存し、3カ月および6カ月目に力価残存率
を測定した。測定方法は上記実験例1の方法により行っ
た。結果を表7に示す。尚、力価残存率は凍結乾燥直後
の力価に対する%で表した。製剤例10 UTM0 1
50mg力価、塩酸アルギニン1200mgおよびプル
ロニックF68 60mgを加え、注射用蒸留水60m
Lにて溶解した。この溶液を無菌ろ過後、無菌ガラスバ
イアルに2mLずつ分注した後、凍結乾燥し、用時溶解
型の注射剤を調製した。以下同様に下記の成分を用いて
製剤11から13の製剤を調製した。 製剤例11 UTM0 150mg力価 塩酸アルギニン 1200mg ポリソルベート80 60mg 精製ゼラチン 300mg 製剤例12 UTM0 150mg力価 マルトース 600mg プルロニックF68 60mg 製剤例13 UTM0 150mg力価 マルトース 600mg プルロニックF68 60mg 精製ゼラチン 300mg
【0064】 表7に示すように、アルギニンあるいはマルトースと非
イオン性界面活性剤を組み合わせて添加した場合、ヒト
尿中可溶性トロンボモジュリンの長期間に渡る保存安定
性が有意に増大した。従って、長期保存時でも安定性に
優れ、低濃度に希釈したときも容器への吸着が起こらな
い可溶性トロンボモジュリン含有組成物が得られること
が確認できた。
【0065】(製剤実施例)次に実施例によって本発明
を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によ
ってなんら限定されるものではない。 (実施例1) UTM0 10mg力価 ラクトース 100mg 精製ゼラチン 100mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0066】 (実施例2) UTM0 25mg力価 ラクトース 100mg プルロニックF68 10mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 2.73mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0067】 (実施例3) UTM0 25mg力価 L−アルギニン塩酸塩 200mg ポリソルベート80 10mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 2.73mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0068】 (実施例4) UTM0 25mg力価 L−アルギニン塩酸塩 200mg プルロニックF68 10mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0069】 (実施例5) UTM0 50mg力価 マルトース 100mg 精製ゼラチン 100mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg 塩化ナトリウム 81.8mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0070】(実施例6)実施例5と同成分の可溶性ト
ロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。別
に、0.1%ポリソルベート80水溶液を無菌的に調製
し、1.0mlずつ分注して熔閉し、溶解用溶液アンプ
ルとした。
【0071】 (実施例7) UTM0 25mg力価 蔗糖 100mg 精製ゼラチン 100mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0072】(実施例8)実施例7と同成分の可溶性ト
ロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。別
に、0.1%ポリソルベート80水溶液を無菌的に調製
し、1.0mlずつ分注して熔閉し、溶解用溶液アンプ
ルとした。
【0073】 (実施例9) UTM1 25mg力価 ラクトース 800mg 精製ゼラチン 100mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0074】 (実施例10) UTM2 50mg力価 L−アルギニン塩酸塩 200mg 精製ゼラチン 100mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0075】 (実施例11) UTM1 10mg力価 蔗糖 100mg ポリソルベート80 50mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0076】 (実施例12) UTM2 50mg力価 L−アルギニン塩酸塩 200mg 精製ゼラチン 100mg ポリソルベート80 10mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0077】 (実施例13) RTM1 25mg力価 ラクトース 200mg ポリソルベート80 10mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 81.8mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0078】 (実施例14) RTM1 25mg力価 ラクトース 200mg プルロニックF68 10mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 81.8mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0079】 (実施例15) RTM2 25mg力価 ラクトース 100mg 精製ゼラチン 100mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解した全量を10mLと
し、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填
し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結
乾燥組成物を調製した。
【0080】(実施例16)実施例15と同成分の可溶
性トロンボモジュリン含有凍結乾燥組成物を調製した。
別に、0.1%ポリソルベート80水溶液を無菌的に調
製し、1.0mlずつ分注して熔閉し、溶解用溶液アン
プルとした。
【0081】 (実施例17) RTM2 10mg力価 マルトース 100mg 精製ゼラチン 100mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 81.8mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解した全量を10mLと
し、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填
し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結
乾燥組成物を調製した。
【0082】 (実施例18) RTM2 10mg力価 マルトース 100mg 精製ゼラチン 100mg プルロニックF68 10mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 81.8mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解した全量を10mLと
し、無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填
し、凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結
乾燥組成物を調製した。
【0083】 (実施例19) UTM0 25mg力価 L−アルギニン塩酸塩 100mg ラクトース 100mg ポリソルベート80 10mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 0.77mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 0.18mg 塩化ナトリウム 2.73mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0084】 (実施例20) UTM0 25mg力価 L−アルギニン塩酸塩 100mg マルトース 100mg プルロニックF68 10mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0085】 (実施例21) UTM1 10mg力価 ラクトース 100mg 蔗糖 100mg ポリソルベート80 50mg リン酸水素二ナトリウム・12水和物 23.2mg リン酸二水素ナトリウム・2水和物 5.5mg 上記成分を注射用蒸留水に溶解し全量を10mLとし、
無菌濾過した後1.0mLずつ無菌バイアルに充填し、
凍結乾燥して、可溶性トロンボモジュリン含有凍結乾燥
組成物を調製した。
【0086】
【発明の効果】本発明の可溶性トロンボモジュリン含有
組成物は、凍結・乾燥・保存・加熱および再溶解の過程
いずれにおいても安定であり、特に、凍結乾燥した本発
明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物については室
温において長期間に渡る保存性に優れる。今回見いださ
れた安定化のための必須成分および吸着防止剤はいずれ
も極めて高い安全性を有しており、本発明の組成物を医
薬品として用いる場合に、長期間に渡り活性の低下や凝
集物の出現等の心配がなく、極めて高い品質を維持する
事ができる。とくに凍結乾燥製剤は、50℃で6ヶ月の
保存でも十分に安定である。また、本発明の可溶性トロ
ンボモジュリン含有組成物は低濃度の水溶液としたとき
も容器への吸着が防止され、医療現場において輸液にて
希釈して投与する場合も吸着により有効量を減ずること
なく投与が可能となる。従って、安全でかつ室温におけ
る長期の保存性に優れた、血液凝固疾患に係わる疾病の
予防治療薬を提供することが可能である。更に、臨床使
用時の容器への吸着が防止された、血液凝固疾患に係わ
る疾病の予防治療薬を提供することが可能である。ま
た、本発明の可溶性トロンボモジュリン含有組成物、そ
の製法、可溶性トロンボモジュリンの安定化剤、安定化
方法、吸着防止剤あるいは吸着防止方法は可溶性トロン
ボモジュリンの精製工程でも利用でき、さらに各種用途
に用いるための可溶性トロンボモジュリンの原体の保存
にも利用できる。
【0087】
【配列表】SEQUENCE LISTING <110> Mochida Pharmaceutical Co., Ltd. <120> Composition Containing Soluble Thrombomoduli
ns <130> MD0397JP01 <141> 1999-06-01 <160> 1 <210> 1 <211> 28 <212> PRT <213> human
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 畠 誠七 東京都新宿区四谷一丁目7番地 持田製薬 株式会社内 (72)発明者 鈴木 茂治 東京都新宿区四谷一丁目7番地 持田製薬 株式会社内 (72)発明者 工藤 弓夫 東京都新宿区四谷一丁目7番地 持田製薬 株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】可溶性トロンボモジュリンと、マルトー
    ス、ラクトース、蔗糖、アルギニンおよびその塩から選
    ばれる1種あるいは2種以上とを含有することを特徴と
    する可溶性トロンボモジュリン含有組成物。
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