JP6741642B2 - くも膜下出血および虚血の治療法 - Google Patents

くも膜下出血および虚血の治療法 Download PDF

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Description

関連出願の参照
本出願は、仮出願であり、2012年3月28日出願の米国特許出願第61/617,001号および2011年12月13日出願の米国特許出願第61/570,264号ならびに2011年12月15日出願のカナダ特許出願第2762338号の利益を主張しており、これらの特許出願の各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照によって取り込まれる。
配列リスト
本出願は、EFS−Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列リストを含み、この配列リストは、その全体が参照によって取り込まれる。このASCIIコピーは、2012年12月12日に作成され、427647SEQLIST.txtと名付けられ、15キロバイトのサイズである。
背景技術
米国において毎年約800,000人の人々が脳卒中を患っており、毎年の直接的および間接的な社会的費用は400億ドルを超えている。脳卒中は全死因のうち3位を占めている。現在のところ、虚血脳の再かん流を誘導する治療(たとえば、アルテプラーゼ(組織プラスミノゲン活性化因子つまりrt−PA)での血栓溶解)のみが、急性脳卒中の治療として広く認可されている。これらは、改善された全体的転帰と重篤な合併症の可能性とのバランスを取るが、十分に活用されてはいない。安全な、薬理学的神経防護作用、虚血に対する脳の回復力を高めることによる脳救済は、急性脳卒中治療から恩恵を得ることができた患者の数を劇的に増し得た。しかし、数十年にわたって、研究は、細胞および齧歯類における発見からの1000を超える神経防護治療をヒトにおける有用性に転換することができておらず、推定の神経防護作用薬の臨床試験は成功していない。この科学的危機は、薬理学的神経防護がヒトにおいては適しないまたは実施可能ではないという、支配的なパラダイムを生じさせた。したがって、神経防護がヒトにおいて可能であるか否かを決定するという、満たされていない差し迫った必要性がある。
脳卒中は、虚血または出血の結果であり得る。出血性脳卒中は、脳卒中の約17%を占めるが、比例しない割合で死および消耗性損傷を引き起こす。出血性脳卒中は、血流を回復するように作用する、tPAなどの認可されている脳卒中薬のみでは、緩和されるよりも、むしろ悪化する。対象者を病院に搬送し、初期診断に達し、脳スキャンを実施して虚血性脳卒中と出血性脳卒中とを識別するために必要な時間があまりに長いため、tPAが有効であり得る時間帯の外に対象者が出てしまう。このため、tPAから恩恵を得られるはずの多くの虚血性脳卒中対象者が、それを享受していない。
CNSにおけるまたはCNS近傍の出血は、虚血性脳卒中とは独立しても起こり得、特に、くも膜下出血および硬膜血腫または硬膜下血腫ならびに脳挫傷においてそうである。このような出血は、転倒もしくは脳への他の打撃、または揺さぶられっ子症候群などの、身体外傷の結果として生じ得る。このような出血の即時の症状は、虚偽的軽度から重度にまでわたり得るが、それらはすべて急速に重篤で生命を脅かすものになり得る。したがって、このような出血は、最善の最新治療をもってしても死または消耗性損傷という結果になることが多い、生命を脅かす緊急事態である。
くも膜下出血(SAH)は、くも膜下腔への出血によって特徴付けられる。SAHは、慢性の衰弱という結果になり得る重篤で急性の生命を脅かす事象である。自然発症SAHの症例の約85%において、原因は、頭蓋内動脈瘤の破裂であり、動脈瘤性SAHと呼ばれている。動脈瘤性SAHは、通常、40〜60歳の年齢の人を襲い、女性に生じ易い。動脈瘤性SAHの発生率は、米国において、1年当たり100,000個体につき10である。SAHの他のあまり一般的でない他の原因には、血管奇形などの疾患が含まれる。後天性危険因子には、高血圧、アルコール乱用、薬物乱用、喫煙、および避妊薬使用が含まれる。他の危険因子には、他の血管の動脈瘤、線維筋性形成異常、および他の結合組織障害、ならびに、多発性嚢胞腎の病歴が含まれる。
SAHは、初期出血時に急性脳損傷が生じ、これに脳血管攣縮および脳水腫から生じる虚血などの2次的な潜在的損傷性事象が続く、多相性の事象である。急性のSAH誘導損傷において、くも膜下腔の血液分布、頭蓋内圧(ICP)の上昇、脳かん流圧(CPP)および脳血流量(CBF)の低下は、一過性脳虚血、ICPの突然の上昇で生じる衝撃による脳外傷、および、ときには脳内血腫形成による脳損傷、を引き起こす急性損傷カスケードを開始させる。さらに、これらの初期事象は、直接的な微小血管損傷、血小板凝集による血管の閉塞および血管作動性物質の放出に至るかも知れない。
2次的な虚血過程には、嫌気的細胞呼吸、エネルギー枯渇、タンパク合成障害、興奮毒性、フリーラジカル攻撃、ニューロンストレス、デオキシリボ核酸(DNA)損傷、アポトーシスおよびネクローシス、一酸化窒素(NO)/一酸化窒素合成酵素(NOS)経路および脂質過酸化における変化が含まれる。SAHに続く脳損傷を生じることに関与する2次的過程の範囲については大筋での合意があるが、急性損傷期中の個々の機構の正確な寄与は、理解が不完全なままである。
SAHにおける脳虚血は、脳動脈攣縮の結果であり、症例の約30%の臨床経過において合併症となる。SAHにおける臨床関連の血管攣縮の発生は、SAH後5〜12日に最も高い。ただし、この合併症は、SAH後の最初の3日間は非常にまれである。SAH後の患者の最終的な臨床転帰は、年齢および同時罹患率などの人口統計学的因子、SAHの重度、ならびに、脳水腫および血管攣縮などのSAHの種々の合併症を含むいくつかの因子に依存するようである。したがって、血管攣縮による脳虚血は、破裂直後に症状が現れるSAHからの悪い臨床転帰に寄与する唯一のものではない。
脳卒中および関連疾患のための異なる形態の治療が、現在臨床試験に付されている(国際特許出願公開公報第WO2010144721号およびAarts et al.,Science 298,846−850(2002)を参照)。この治療は、NMDAR2ファミリーの構成員へのPSD−95の結合を阻害し、したがって、脳虚血によって誘導される興奮毒性を低減する薬剤である、Tat−NR2B9c(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV;配列番号6)としても知られるTAT−NR2B9Cを使用する。治療は、虚血性脳卒中および外傷性脳損傷において、梗塞サイズおよび機能障害を減少させると、報告されている。
本発明は、対象者におけるくも膜下出血の損傷作用を処理する方法であって、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤を、くも膜下出血を有する対象者に投与することを含む方法を提供する。いくつかの方法において、前記くも膜下出血は身体的外傷の結果である。いくつかの方法において、前記くも膜下出血は自発的に生じる。いくつかの方法において、前記くも膜下出血は破裂した動脈瘤による。いくつかの方法において、前記くも膜下出血は動静脈奇形による。いくつかの方法において、前記薬剤は、前記対象者における神経認知障害の進行を抑止する。いくつかの方法において、前記薬剤は、MRIにより検出可能な梗塞の進行を抑止する。いくつかの方法において、前記対象者は、前記くも膜下出血の原因である漏出血管を修復するための血管内手術を受ける。いくつかの方法において、前記薬剤は、血管内手術に起因する疼痛を軽減する。いくつかの方法において、前記疼痛は、前記内視鏡手術を実施する際に使用される内視鏡が通る経路に沿う。いくつかの方法において、前記薬剤は、前記くも膜下出血の原因である破裂の4日後までに投与される。いくつかの方法において、前記薬剤は、前記くも膜下出血の原因である破裂後12日以内に、複数回投与される。いくつかの方法において、前記薬剤は、少なくとも2日間毎日2回または少なくとも3日間毎日1回投与される。いくつかの方法において、前記薬剤の用量は1〜3mg/kgである。
本発明はさらに、対象者における脳内出血の損傷作用を処理する方法であって、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤を、脳内出血を有する対象者に投与することを含む方法を提供する。いくつかの方法において、前記脳内出血は高血圧による。いくつかの方法において、前記脳内出血は薬物による。いくつかの方法において、前記薬物は抗凝血薬である。いくつかの方法において、前記薬剤は、前記対象者における神経認知障害の進行を抑止する。いくつかの方法において、前記薬剤は、MRIにより検出可能なCNSにおける梗塞の進行を抑止する。いくつかの方法において、前記薬剤は、前記出血の原因である血管を修復するための手術の前、途中または後に投与される。いくつかの方法において、前記薬剤は、脳内出血の損傷作用を低減する効果を有する他の薬剤の投与の前、途中または後に投与される。
本発明はさらに、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤であって、対象者のCNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する虚血または出血の損傷作用を低減し、前記虚血または出血を治療する手術に由来する前記対象者における疼痛を軽減する際に使用される薬剤を提供する。いくつかの方法において、前記手術は血管内手術である。いくつかの方法において、前記疼痛は、前記内視鏡手術を実施する際に使用される内視鏡が通る経路に沿う。
本発明はさらに、疼痛を軽減する方法であって、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤を、血管内手術を受ける対象者に投与することを含み、前記薬剤が、血管内手術に起因する前記対象者における疼痛を軽減する方法を提供する。いくつかの方法において、前記疼痛は、前記内視鏡手術を実施する際に使用される内視鏡が通る経路に沿う。
本発明はさらに、対象者のCNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する虚血または出血の損傷作用を抑止する方法であって、CNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する虚血もしくは出血を有するまたは有する疑いのある対象者に、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤の有効な投与計画を実施することを含み、前記対象者が、前記投与計画を実施する時に、虚血と出血とを判別するためのスキャンを受けていない方法を提供する。いくつかの方法において、前記対象者は、CNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する出血を有する。いくつかの方法において、前記対象者は再かん流療法に付されない。
本発明はさらに、中枢神経系に対する虚血または出血の損傷作用を処理する方法であって、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤を、虚血もしくは出血を有するまたは虚血もしくは出血の危険性のある対象者に投与することを含む方法を提供する。いくつかの方法において、前記薬剤は再かん流療法に併せて投与される。いくつかの方法は、出血性脳卒中の損傷作用を処理する。いくつかの方法において、前記薬剤は、前記出血の血管内修復の前、途中または後に投与される。いくつかの方法において、前記薬剤は、中枢神経系に影響する出血の治療のための他の薬物での治療の前、途中または後に投与される。
本発明はさらに、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害し、再かん流に起因して出血性脳卒中に変化する虚血性脳卒中の治療に使用される薬剤であって、前記虚血性脳卒中または出血性脳卒中の損傷作用を抑止する薬剤を提供する。
本発明はさらに、虚血の兆候および/または症状を呈する対象者集団を処理する方法であって、NMDAR2サブユニットまたはnNosへのPSD−95阻害剤の結合を阻害する薬剤を前記対象者に投与することを含み、前記対象者は、再かん流療法の副作用の許容できない危険性について分析され、許容できない危険性を有しない対象者は再かん流療法を受け、許容できない危険性を有する対象者は再かん流療法を受けず、随意的に、前記薬剤は、NMDAR2サブユニットまたはnNosへのPSD−95の結合を阻害するペプチドであり、前記ペプチドは、内在化ペプチドに連結されまたは脂質付加されて、細胞膜または血液脳関門の通過が向上している方法を提供する。
上記のいずれかの方法または薬剤において、前記薬剤は、XtSXV(配列番号7)を含むまたはXtSXV(配列番号7)で構成されるアミノ酸配列を有するペプチドであって、tおよびSは代替アミノ酸であり、XはE,QおよびAから選択され、XはA,Q,D,N,(N−メチル)−A,(N−メチル)−Q,(N−メチル)−Dおよび(N−メチル)−Nから選択され、またはそのアナログであり得、前記ペプチドは、そのN末端アミノ酸にて、内在化ペプチドに連結されている。上記のいずれかの方法または薬剤において、前記薬剤は、YGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号6)もしくはYGRKKRRQRRRKLSSIETDV(配列番号37)を含み得、またはYGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号6)もしくはYGRKKRRQRRRKLSSIETDV(配列番号37)で構成されるアミノ酸配列を有し得る。上記のいずれかの方法において、前記ペプチドまたは他の薬剤は、内在化ペプチドに連結されまたは脂質付加され得、それによって前記ペプチドの細胞膜または血液脳関門の通過が容易である。いくつかのペプチドまたは他の薬剤は、ミリストイル化されている。ペプチドは、好ましくは、N末端にてミリストイル化されている。
本発明はさらに、脳卒中もしくはCNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する出血の治療または予防において有用な活性について化合物をスクリーニングする方法であって、中枢神経系に影響する血管内修復手術を受けるヒトに前記化合物を投与すること、および、前記化合物がMRIによって観察される梗塞の数を、陰性対照に比べて、減少させるかを判断することを含む方法を提供する。いくつかの方法において、前記MRI造影にはDWI MRIが含まれる。いくつかの方法において、前記MRI造影にはFLAIR MRIが含まれる。いくつかの方法において、前記MRI造影にはDWI MRIおよびFLAIR MRIが含まれ、前記血管内手術に起因する梗塞は、DWI MRIおよびFLAIR MRIの両者に存在する梗塞を同定することによって判断される。
本発明はさらに、XtSXV(配列番号7)で構成されまたはXtSXV(配列番号7)を含むアミノ酸配列を有する単離ペプチドであって、tおよびSは代替アミノ酸であり、XはE,QおよびAから選択され、XはA,Q,D,N,(N−メチル)−A,(N−メチル)−Q,(N−メチル)−Dおよび(N−メチル)−Nから選択され、当該ペプチドはN末端アミノ酸にて脂質付加されている単離ペプチドを提供する。いくつかのペプチドは、KLSSIESDVもしくはKLSSIETDVを含むまたはKLSSIESDVもしくはKLSSIETDVで構成されるアミノ酸配列を有する。
登録時(手術前)および血管内手術の2日後(手術後)に単一の患者から得た、実例のDWI MRIおよびFLAIR MRIスキャンである。矢印は、DWI陽性の塞栓症脳卒中(黄色:上パネル)、および、それらのFLAIR陽性の対応物(赤色:下パネル)の例を示す。右端のパネル(ROI)は、計数し虚血性病変の体積を計算するのに使用した注目領域の選択を示す。
2〜4日目にMRI(n=184)を受けた無作為化患者についての、DWI MRI検出可能な病変数の分布および病変体積を示す図である。データの分布がきわめて歪んでいるため、平均およびその標準偏差は外れ値によって大きく影響されると予期される。挿入図は、手術上の併合症の結果、大きな脳卒中(>10cc)を経験した2人の患者からのDWI MRIスキャンの代表的な薄片を提供する。病変の数は体積とは独立なので、数は大きな脳卒中に対する反応が弱い。 脳卒中が<10ccである患者(n=182)についての、DWI MRI検出可能な病変数の分布および病変体積を示す図である。データの分布がきわめて歪んでいるため、平均およびその標準偏差は外れ値によって大きく影響されると予期される。病変の数は体積とは独立なので、数は大きな脳卒中に対する反応が弱い。
スクリーニングした患者の数、試験群に無作為に割り当てた患者の数、および、パープロトコル(per-protocol)集団に含めた患者の数を示す図である。変更包括(intention-to-treat)集団は、登録され試験群に無作為に割り当てられたすべての患者であって、試験薬物(TAT−NR2B9Cまたはプラシーボ)を受けた患者であると規定される。パープロトコル(per-protocol)集団は、TAT−NR2B9Cまたはプラシーボを受けた無作為に割り当てられた患者であって、血管内手術後のMRIスキャンを完了することができないこと(スキャンを行うことができる前に死亡した1人の患者)、または、死亡もしくはフォローアップの拒絶により、30日試験終了訪問に出席しないことを含む大きなプロトコル違反のために除外されなかった患者であると規定される。ただし、無作為化された185人の患者のうち184人が手術の2〜4日後にMRIスキャンを完了し、これらの人々は分析に含めた。
定義
「キメラペプチド」とは、天然には互いに関連せず、融合タンパクとしてまたは化学的連結で互いに結合した2つの成分ペプチドを有するペプチドを意味する。
「融合」タンパクまたは融合ポリペプチドとは、複合ポリペプチド、すなわち、通常は融合して単一ポリペプチド配列になっていない、2つ(または、それ以上)の異なる異種ポリペプチドの配列から成る、単一の連続アミノ酸配列を指す。
「PDZドメイン」の用語は、脳シナプスタンパクPSD−95、ショウジョウバエ中隔結合タンパクDiscs−Large(DLG)、および、上皮密着結合タンパクZO1(ZO1)に対するかなりの配列同一性(たとえば、少なくとも60%)によって特徴付けられる、約90個のアミノ酸のモジュールタンパクドメインを指す。PDZドメインは、また、Discs−Large相同性反復(「DHR」)およびGLGF(配列番号68)反復としても知られる。PDZドメインは、一般に、コアコンセンサス配列を維持しているように見える(Doyle,D.A.,1996,Cell 85:1067−76)。タンパクおよびPDZドメイン配列を含有する例示的なPDZドメインが、米国特許出願第10/714,537号に開示されており、この出願は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
「PLタンパク」または「PDZリガンドタンパク」の用語は、PDZドメインと分子コンプレックスを形成する天然に産するタンパク、または、完全長タンパクとは分離して(たとえば、3,4,5,8,9,10,12,14または16残基などの、3〜25残基のペプチドフラグメントとして)発現されるときに、カルボキシ末端が、そのような分子コンプレックスを形成するタンパクを指す。この分子コンプレックスは、米国特許出願第10/714,537号に記載の「Aアッセイ」または「Gアッセイ」を用いてインビトロで、またはインビボで、観察することができる。
「NMDA受容体」または「NMDAR」の用語は、以下に記載する種々のサブユニット型を含むNMDAと相互作用することが知れられている、膜結合タンパクを指す。このような受容体は、ヒトのものであることも、ヒトのものでない(たとえば、ラット、ウサギ、サル)こともあり得る。
「PLモチーフ」とは、PLタンパクのC末端のアミノ酸配列(たとえば、C末端の3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,16,20または25個の連続残基)(「C末端PL配列」)、または、PDZドメインに結合することが知られている内部配列(「内部PL配列」)を指す。
「PLペプチド」は、PDZドメインに特異的に結合するPLモチーフを含む、もしくはそのPLモチーフから構成される、または、そうでなければ、そのPLモチーフに基づくペプチドである。
「単離された」または「精製された」の用語は、対象種(たとえばペプチド)が、対象種を含有する天然源由来の試料などの、試料に存在する混入物質から精製されていることを意味する。対象種が、単離または精製された場合、それは試料における主たる高分子(たとえばポリペプチド)種であり(つまり、モル基準で、その組成物において他の個々の種のどれよりも多い)、好ましくは、対象種は、存在する全高分子種の少なくとも50%(モル基準)を含む。一般に、単離された、精製されたまたは実質的に純粋な組成物は、組成物に存在する全高分子種の80〜90%よりも多くを含む。より好ましくは、対象種は、組成物が本質的に単一の高分子種で構成される、本質的な均一度(つまり、従来の検出法で組成物中の混入種を検出することができない)にまで、精製される。単離されたまたは精製されたという用語は、単離された種との組み合わせで作用するように意図された他の成分の存在を、必ずしも排除するものではない。たとえば、内在化ペプチドは、活性ペプチドに連結され、または、医薬的に許容可能な添加剤と組み合わされるにもかかわらず、単離されていると記載される。
「ペプチド模倣体」は、天然アミノ酸で構成されるペプチドと実質的に同じ構造および/または機能特性を有する、合成の化学物質を指す。ペプチド模倣体は、完全に合成の非天然のアミノ酸アナログを包含することができ、または、部分的に天然のペプチドアミノ酸と部分的に非天然のアミノ酸アナログとのキメラ分子であり得る。ペプチド模倣体は、また、天然アミノ酸の保存的置換を、その置換が模倣体の構造および/または阻害活性もしくは結合活性を実質的に変更することもない限り、いくらでも取り込むことができる。
個々のペプチド模倣体残基は、ペプチド結合、他の化学結合、または、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、二感応基マレイミド、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)もしくはN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカップリング手段で、結合することができる。従来のアミド結合(「ペプチド結合」)連結に代わり得る連結基には、たとえば、ケトメチレン(たとえば、−C(=O)−NH−に代わる−C(=O)−CH−)、アミノメチレン(CH−NH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CH−O)、チオエーテル(CH−S)、テトラゾール(CN−)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド、またはエステルが含まれる(たとえば、Spatola(1983) in Chemistry and Bi chemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,Vol.7,pp 267−357,A Peptide Backbone Modifications,Marcell Dekker,NYを参照)。
芳香族アミノ酸の模倣体は、たとえば、D−またはL−ナフィルアラニン(naphylalanine);D−またはL−フェニルグリシン;D−またはL−2−チエネイルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−1,2,3−またはA−ピレネイルアラニン(pyreneylalanine);D−またはL−3−チエネイルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−(2−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(3−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(2−ピラジニル)−アラニン;D−またはL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルアラニン;D−p−フルオロフェニルアラニン;D−またはL−p−ビフェニルフェニルアラニン;K−またはL−p−メトキシビフェニルフェニルアラニン;D−またはL−2−インドール(アルキル)アラニン;および、D−またはL−アルキルアイニン(alkylainine)による置換によって生成することができ、ここで、アルキルは、置換または無置換のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、sec−イソチル(isotyl)、イソペンチル、または、非酸性アミノ酸であり得る。非天然アミノ酸の芳香環には、たとえば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル、および、ピリジル芳香環が含まれる。
アミノ酸の模倣体は、たとえば、負電荷を維持した非カルボキシレートアミノ酸;(ホスホノ)アラニン;硫酸化スレオニンによる置換によって生成することができる。カルボキシル側鎖基(たとえば、アスパルチルまたはグルタミル)は、たとえば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−(4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニアー4,4−ジメトールペンチル(dimetholpentyl))カルボジイミドなどの、カルボジイミド(R−N−C−N−R=)との反応によって、選択的に変更することもできる。アスパルチルまたはグルタミルは、アンモニウムイオンとの反応で、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換することもできる。
塩基性アミノ酸の模倣体は、たとえば、(リジンまたはアルギニンへの付加に加えて)オルニチン、シトルリン、または(グアニジノ)酢酸もしくは(グアニジノ)アルキル酢酸というアミノ酸での置換によって生成することができ、ここで、アルキルは上記で規定したとおりである。ニトリル誘導体(たとえば、COOHの代わりにCN部分を有する)は、アスパラギンまたはグルタミンを置換し得る。アスパラギニル残基およびグルタミニル残基は、脱アミノ化して、対応するアスパルチル残基またはグルタミル残基とすることができる。
アルギニン残基模倣体は、アルギニルを、たとえば、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、またはニンヒドリンなどを含む1つ以上の従来の試薬と、好ましくはアルカリ条件下で反応させることによって、生成することができる。
チロシン残基模倣体は、チロシルを、たとえば、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンと反応させることによって、生成することができる。N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンは、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成するのに使用することができる。
システイン残基模倣体は、システイニル残基を、たとえば、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を与える、2−クロロ酢酸またはクロロアセタミドおよび対応するアミンなどの、アルファ−ハロアセテートと反応させることによって、生成することができる。システイン残基模倣体は、システイニル残基を、たとえば、ブロモ−トリフルオロアセトン、アルファ−ブロモ−ベータ−(5−イミドゾイル(imidozoyl))プロピオン酸;クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド;メチル 2−ピリジルジスルフィド;p−クロロメルクリベンゾエート;2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール;または、クロロ−7−ニトロベンゾ−オキサ−1,3−ジアゾールと反応させることによっても、生成することができる。
リジン模倣体は、リジニルを、たとえば、コハク酸または他のカルボン酸の無水物と反応させることによって、生成すること(および、アミノ末端残基を変化させること)ができる。リジンおよび他のアルファ−アミノ含有残基模倣体は、メチルピコリンイミデート、ピリドキサールホスフェート、ピリドキサール、クロロボロハイドレート、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソウレア、2,4−ペンタンジオンなどの、イミドエステルと反応させること、および、グリオキシレートとのトランスアミダーゼ触媒反応によっても生成することができる。
メチオニンの模倣体は、たとえば、メチオニンスルホキシドとの反応で生成することができる。プロリンの模倣体には、たとえば、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、3−もしくは4−ヒドロキシプロリン、デヒドロプロリン、3−もしくは4−メチルプロリン、または、3,3−ジメチルプロリンが含まれる。ヒスチジン残基模倣体は、ヒスチジルを、たとえば、ジエチルプロカーボネート(diethylprocarbonate)またはパラ−ブロモフェナシルブロマイドと反応させることによって生成することができる。
他の模倣体には、たとえば、プロリンおよびリジンの水酸化;水酸基またはセリル残基もしくはスレオニル残基のリン酸化;リジン、アルギニンおよびヒスチジンのアルファアミノ基のメチル化;N末端アミンのアセチル化;主鎖残基のメチル化もしくはN−メチルアミノ酸での置換;または、C末端カルボキシル基のアミド化、によって生成されるものが含まれる。
本発明のペプチド模倣体は、また、構造模倣残基、特に、ベータターン、ベータシート、アルファへリックス構造、ガンマターンなどの、模倣的2次構造を誘導する残基をも含み得る。たとえば、ペプチド内の、D−アミノ酸による天然アミノ酸残基の置換、N−アルファ−メチルアミノ酸;C−アルファ−メチルアミノ酸;または、デヒドロアミノ酸は、ベータターン、ガンマターン、ベータシートまたはアルファへリックスコンホメーションを誘導または安定化することができる。ベータターン模倣構造は、たとえば、Nagai(1985) Tet.Lett.26:647−650;Feigl(1986) J.Amer.Chem.Soc.108:181−182;Kahn(1988) J.Amer.Chem.Soc.110:1638−1639;Kemp(1988) Tet.Lett.29:5057−5060;Kahn(1988) J.Molec.Recognition 1:75−79に記載されている。ベータシート模倣構造は、Smith(1992) J.Amer.Chem.Soc.114:10672−10674に記載されている。たとえば、シスアミド代替物、1,5−二置換テトラゾールによって誘導されるタイプVIベータターンが、Beusen(1995) Biopolymers 36:181−200に記載されている。アミド結合の置換としてポリメチレンユニットを生成するための、アキラルなオメガアミノ酸残基の組み込みが、Banerjee(1996) Biopolymers 39:769−777に記載されている。ポリペプチドの2次構造は、たとえば、高磁場H NMRまたは2D NMR分光分析によって分析することができる。たとえば、Higgins(1997) J.Pept.Res.50:421−435を参照。また、Hruby(1997) Biopolymers 43:219−266,Balaji,et al.,U.S.Pat.No.5,612,895を参照。
ペプチド模倣体は、一般に次の3つの構造群に由来する非天然の構造成分の、あらゆる組み合わせを含有することができる:a)天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連結以外の残基連結群;b)天然に存在するアミノ酸残基に代わる非天然残基;または、c)2次構造模倣を誘導する残基、つまり、たとえば、ベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファへリックスコンホメーションなどの2次構造を誘導または安定化する残基。活性ペプチドおよび内在化ペプチドを含むキメラペプチドのペプチド模倣体において、活性部分および内在化部分の一方または両方は、ペプチド模倣体であり得る。
「特異的結合」の用語は、2つの分子、たとえばリガンドおよび受容体、の間の結合であって、多くの他の様々な分子が存在するときでも、一方の分子(リガンド)が他方の特異的分子(受容体)に会合する能力、つまり、分子の異種混合物における1つの分子の他の分子に対する優先的結合を示す能力、によって特徴付けられる結合を指す。受容体へのリガンドの特異的結合は、また、検出可能に標識されたリガンドの受容体への結合が、過剰の非標識リガンドの存在下で低下すること(つまり、結合競合アッセイ)によっても証明される。
興奮毒性は、ニューロンが、NMDA受容体、たとえば、NMDAR2Bなどの、興奮性神経伝達物質グルタメートの受容体の過剰活性化によって、損傷を受けて死ぬ病理過程である。
「対象者」の用語には、ヒト、ならびに、哺乳動物などの獣医学動物および前臨床試験で使用されるマウスまたはラットなどの実験動物が含まれる。
「薬剤」の用語には、薬理活性を有するまたは有しない化合物、天然化合物、合成化合物、小分子、ペプチド、およびペプチド模倣体、を含むあらゆる化合物が含まれる。
「薬理活性剤」の用語は、薬理活性を有する薬剤を意味する。薬理活性剤には、既知の薬物、および、薬理活性が確認されているが、動物モデルまたは臨床試験においてさらなる治療評価を受けている化合物、が含まれる。キメラ薬剤は、内在化ペプチドに連結した薬理活性剤を含む。薬剤は、活性薬剤が疾患の予防もしくは治療において有用である、または有用であるかも知れないことを示すスクリーニング系において、活性を示す場合には、薬理活性を有すると表現することができる。そのスクリーニング系は、インビトロ、細胞、動物またはヒトであり得る。薬剤は、疾患の治療における実際の予防上または治療上の有用性を確立するために、さらなる試験が必要であるかも知れなくても、薬理活性を有すると表現することができる。
tatペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号1)から成る、または、GRKKRRQRRR(配列番号1)を含むペプチドであって、その配列内で5つ以下の残基が削除、置換または挿入され、連結したペプチドまたは他の薬剤を細胞に取り込むことを促進する能力を維持しているペプチドを意味する。好ましくは、あらゆるアミノ酸変化は、保存的置換である。好ましくは、会合体におけるあらゆる置換、削除または内部挿入は、好ましくは上記の配列のものに類似する、正味正電荷をペプチドに残す。そのようなことは、R残基およびK残基を置換または削除しないことによって達成される。tatペプチドのアミノ酸は、炎症反応を低減するために、ビオチンまたは類似の分子によって誘導体化することができる。
薬理活性剤の同時投与は、それらの薬剤の検出可能な量が血漿中に同時に存在するために、および/または、それらの薬剤が疾患の同じエピソードに対する治療効果を奏する、もしくは、それらの薬剤が疾患の同じエピソードに対して協働的または相乗的に作用するために十分に近接した時間に、それらの薬剤が投与されることを意味する。たとえば、抗炎症剤は、tatペプチドを含む薬剤と、両薬剤が内在化ペプチドによって誘導され得る炎症反応を抗炎症剤が抑止し得るだけ十分に近い時間に投与されるとき、協働的に作用する。
統計的に有意であるとは、p値が、<0.05、好ましくは<0.01、最も好ましくは<0.001であることを指す。
疾患のエピソードとは、疾患の兆候または症状が存在する期間であって、その兆候および/または症状が存在しないもしくはより低い程度で存在する、より長い期間が隣接することによって、間歇的に存在する期間を意味する。
CNSは、従来どおり使用され、脳および/または脊髄を意味する。虚血または出血は、CNSにおいて、くも膜下出血のようにCNSの直近で、または、CNSに供給する血管内のより遠くで発生した場合、CNSに影響し得る。虚血または出血は、CNSに作用し、治療されないときには、CNSにおける検出可能な病状または神経認知障害を引き起こす。
破裂から生じるSAHなどの疾患では、破裂は1日で生じると考えられる。したがって、たとえば、破裂が月曜日に生じ、治療が破裂の4日以内に行われる場合、治療は金曜日の終わりまでに行われる。破裂の5〜12日後に行われる治療は、土曜日から次の金曜日までの期間内に行われる。
本発明は、また、対象者の集団におけるくも膜下出血の損傷作用を処理する方法であって、NMDAR2サブユニットへのPSD−95の結合を阻害する薬剤を、くも膜下出血を有する対象者に投与することを含み、前記損傷作用が、前記投与された集団において、前記薬剤を受けない対照対象者に比べて、減少する方法を提供する。減少する前記損傷作用は、ニューロン細胞死または認知障害であり得る。
発明の詳細な説明
I.概説
本出願は、CNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する動脈瘤の血管内修復を受ける対象者における、PSD−95阻害剤の臨床試験のデータを提供する。対象者は、動脈瘤が血管内手術を実施する前に破裂したか否かによって階層化された。破裂は、高い死亡率、および対象者が生存している場合には衰弱に、関連する。転帰は、梗塞の数および体積ならびに神経認知の測定によって評価された。試験は、血管内修復を必要とする頭蓋内動脈瘤を有する対象者において、その動脈瘤が血管内手術の実施前に破裂したか否かにかかわらず、有意な恩恵があることの証拠を提供し、副作用が最小であることを示した。しかし、驚くべきことに、病理学および神経認知の転帰の双方によって判断して、治療の恩恵を最も受けた対象者は、動脈瘤が血管内手術の前に破裂してくも膜下出血の原因となった対象者であった。これらのデータは、PSD−95阻害剤が、虚血性脳卒中および出血性脳卒中においてのみならず、脳出血、脳内出血、頭蓋内出血(ICH)、神経外傷、外傷性脳損傷ならびに硬膜下出血および硬膜外出血を含む、脳卒中の結果であるか否かにかかわらず、CNSにおけるまたはCNSに影響する出血の形態、特にくも膜下出血(SAH)においても、有益であることの証拠を構成する。PSD−95阻害剤での治療がCNSへの虚血性損傷および出血性損傷の双方において有効であり、副作用が最小であることは、そのような阻害剤は、虚血と出血とを判別するための詳細な診断精密検査、一般には脳スキャンを最初に実施することによる治療の遅延を伴うことなく、脳卒中またはCNSに影響する出血の兆候を呈するいかなる対象者にも与えることができることを意味する。試験は、また、PSD−95阻害剤が、血管内カテーテルを動脈系に挿入するのに必要な鼠径部穿刺から作用部位に至る経路、この場合、鼠径部領域から脳領域までの経路(たとえば、脚、鼠径部、腹部、胸、頚および頭)に沿う、血管内手術に関連することがある疼痛の軽減に有効であることを示した。PSD−95阻害剤は、いくつかの形態の疼痛を治療するのに有効であると先に報告されているが、PSD−95阻害剤の同じ投与が、動脈瘤の血管内修復に起因する損傷、および、血管内手術自体によって生じる種類の疼痛の抑止における二重の作用を有することは、知られていなかった。
II.PSD−95を阻害する薬剤
このような薬剤は、PSD−95と1つ以上のNMDARとの相互作用を、たとえば、PSD−95に特異的に結合することによって、阻害する。好ましくは、阻害は、NMDAR2(たとえば、2A,2B,2Cまたは2D)の阻害である。そのような薬剤への言及は、薬剤単独、または、一般にペプチド薬剤の場合、キメラペプチドとして内在化ペプチドに連結した薬剤を指し得る。そのような薬剤は、脳卒中の1つ以上の損傷作用、および、少なくとも部分的にNMDAR興奮毒性によって媒介される他の神経疾患を低減するのに有用である。そのような薬剤には、NMDA受容体またはPSD−95のPDZドメインのPLモチーフを含むまたはこれに基づくアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。そのようなペプチドは、PSD−95とnNOSならびにKV1〜4およびGluR6などの他のグルタメート受容体(たとえば、カイナイト(kainite)受容体またはAMPA受容体)との相互作用をも阻害し得る。好ましいペプチドは、シナプス後肥厚−95タンパク(PSD−95)(Stathakism,Genomics 44(1):71−82(1997)によって提供されるヒトアミノ酸配列)のPDZドメイン1および2と、ニューロンのN−メチル−D−アスパルテート受容体のNR2Bサブユニットを含む1つ以上のNMDA受容体2サブユニットのC末端PL配列との相互作用を阻害する(Mandich et al.,Genomics 22,216−8(1994))。NMDAR2Bは、GenBank ID 4099612、C末端の20個のアミノ酸FNGSSNGHVYEKLSSIESDV(配列番号11)、および、PLモチーフESDV(配列番号12)を有する。好ましいペプチドは、ヒト型のPSD−95とヒトNMDAR受容体とを阻害する。しかし、阻害は、タンパクの変種からも示され得る。使用可能なNMDAおよびグルタメート受容体のリストを次に示す。
いくつかのペプチドは、PSD−95と複数のNMDARサブユニットとの相互作用を阻害する。そのような場合、そのペプチドの使用は、興奮性神経伝達への異なるNMDARのそれぞれの寄与を理解することを、必ずしも必要としない。他のペプチドは、単一のNMDARに特異的である。
ペプチドは、上記のサブユニットのいずれかのC末端由来のPLモチーフを含み、または、それに基づき、[S/T]−X−[V/L]を含むアミノ酸配列を有することができる。この配列は、好ましくは、本発明のペプチドのC末端に優先的に生じる。好ましいペプチドはC末端に[E/D/N/Q]−[S/T]−[D/E/Q/N]−[V/L](配列番号38)を含むアミノ酸配列を有する。例示的なペプチドは、C末端アミノ酸に、ESDV(配列番号12),ESEV(配列番号29),ETDV(配列番号39),ETEV(配列番号40),DTDV(配列番号41)およびDTEV(配列番号42)を含む。特に好ましい2つのペプチドは、KLSSIESDV(配列番号5)およびKLSSIETDV(配列番号43)を含み、または、KLSSIESDV(配列番号5)およびKLSSIETDV(配列番号43)から成るアミノ酸配列を有する。このようなペプチドは、通常、3〜25個のアミノ酸(内在化ペプチドを除く)を有し、5〜10アミノ酸のペプチド長、特に、9個のアミノ酸(同じく内在化ペプチドを除く)が好ましい。いくつかのそのようなペプチドにおいて、すべてのアミノ酸は、NMDA受容体(内在化ペプチド由来のアミノ酸を含まない)のC末端に由来する。本発明は、また、これらの、および、本明細書に記載の他のペプチドのペプチド模倣体を包含する。
PSD−95とNMDARとの相互作用を阻害する他のペプチドには、PSD−95のPZDドメイン1および/もしくはPZDドメイン2由来のペプチド、または、PSD−95とNR2BなどのNMDA受容体との相互作用を阻害する、これらのいずれかのサブフラグメントが含まれる。このような活性ペプチドは、PSD−95のPDZドメイン1および/またはPDZドメイン2由来の、少なくとも50,60,70,80または90個のアミノ酸を含み、これは、Stathakism,Genomics 44(1):71−82(1997)(ヒト配列)もしくはNP_031890.1,GI:6681195(マウス配列)によって提供されるPSD−95のアミノ酸65〜248内に、または、他の種の変異体の対応領域にほぼ存在する。
本発明のペプチドおよびペプチド模倣体は、変更アミノ酸残基、たとえば、N−アルキル化された残基、を包含し得る。N末端アルキル化変更には、たとえば、N−メチル、N−エチル、N−プロピル、N−ブチル、N−シクロヘキシルメチル、N−シクロヘキシルエチル、N−ベンジル、N−フェニルエチル、N−フェニルプロピル、N−(3,4−ジクロロフェニル)プロピル、N−(3,4−ジフルオロフェニル)プロピル、および、N−(ナフタレン−2−イル)エチルが含まれ得る。
Bach,J.Med.Chem.51,6450−6459(2008)および国際特許出願公開公報第WO2010/004003号には、NR2B9cの一連のアナログが記載されている。PDZ結合活性は、3つのC末端アミノ酸(SDV)のみを有するペプチドによって示される。Bachは、また、XtSXV(配列番号7)を含む、またはXtSXV(配列番号7)から成るアミノ酸配列を有するアナログも報告しており、ここで、tおよびSは代替アミノ酸、XはE,QおよびAの中から選択され、または、それらのアナログであり、XはA,Q,D,N,(N−メチル)−A,(N−メチル)−Q,(N−メチル)−D,および(N−メチル)−Nの中から選択され、または、それらのアナログである。随意的に、このペプチドは、P3位置(C末端から3番目のアミノ酸、つまり、tSによって占められる位置)においてN−アルキル化されている。このペプチドは、シクロヘキサンまたは芳香族置換基によってN−アルキル化され、さらに、その置換基とペプチドまたはペプチドアナログの末端基との間にスペーサ基を含むことができ、スペーサ基は、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンの中から選択されるアルキル基である。芳香族置換基は、ナフタレン−2−イル部分、または、1つまた2つのハロゲンおよび/もしくはアルキル基で置換された芳香族環であり得る。
他の変更も活性に悪影響を及ぼすことなく組み込むことが可能であり、これらには、天然のL異性型の1個以上のアミノ酸の、D異性型のアミノ酸による置換が含まれる。したがって、L配位(これは、化学物質の構造に応じて、RまたはSとも言われる)で天然に産するあらゆるアミノ酸は、同じ化学構造型を有しキラリティーが逆のアミノ酸またはペプチド模倣体、つまり、一般にDアミノ酸と呼ばれるが、RまたはS型と呼ぶこともできるアミノ酸で、置き換えることが可能である。したがって、ペプチド模倣体は、Dアミノ酸残基を、1,2,3,4,5個、少なくとも50%、または、すべて含んでよい。D残基をいくつかまたはすべて含むペプチド模倣体は、「インベルソ」ペプチドと呼ばれることがある。
ペプチド模倣体は、レトロペプチドも含む。レトロペプチドは、逆のアミノ酸配列を有する。ペプチド模倣体は、また、アミノ酸の順序が逆で、したがって、もともとC末端のアミノ酸がN末端に現れ、Lアミノ酸に代えてDアミノ酸が使用される、レトロインベルソペプチドも含む。国際特許出願公開公報第WO2008/014917号には、アミノ酸配列vdseisslk−rrrqrrkkrgyin(配列番号8)(小文字はDアミノ酸を指す)を有する、Tat−NR2B9cのレトロインベルソアナログが記載されており、これが脳虚血の抑止に有効であると報告されている。本明細書に記載の他の有効なペプチドは、Rv−Tat−NR2B9c(RRRQRRKKRGYKLSSIESDV;配列番号9)である。
リンカー(たとえばポリエチレングリコールリンカー)は、ペプチドまたはペプチド模倣体の活性部分を二量化して、タンデムPDZドメインを含有するタンパクに対する、その親和性および選択性を向上させるのに使用することができる。Bach et al.,(2009) Angew.Chem.Int.Ed.48:9685−9689および国際特許出願公開公報第WO2010/004003号を参照。PLモチーフ含有ペプチドは、好ましくは、2つの分子のN末端を結合して二量化され、C末端は自由のままとされる。Bachは、さらに、NMDAR2BのC末端由来の五量体ペプチドIESDV(配列番号10)が、PSD−95へのNMDAR2Bの結合の阻害に有効であることを報告している。随意的に、PEGの2〜10個のコピーは、直列に結合してリンカーとすることができる。
ペプチド、ペプチド模倣体または他の薬剤の適当な薬理活性は、所望の場合、霊長類および本出願に記載の臨床試験における試験に先立ち、前述の脳卒中のラットモデルを用いて、確認することができる。ペプチド、ペプチド模倣体または他の薬剤は、PSD−95とNMDAR2Bとの相互作用を阻害する能力について、米国特許出願公開公報第US20050059597号に記載のアッセイを用いて、スクリーニングすることも可能であり、この公報は参照によって組み込まれる。有用なペプチド、ペプチド模倣体または他の薬剤は、一般に、そのようなアッセイにおいて、50μM,25μM,10μM,0.1μMまたは0.01μMのIC50値を有している。好ましいペプチドは、一般に、0.001〜1μMのIC50値を、より好ましくは、0.05〜0.5μMまたは0.05〜0.1μMのIC50値を有している。ペプチド、ペプチド模倣体または他の薬剤が、1つの相互作用、たとえば、NMDAR2BへのPSD−95の相互作用、の結合を阻害するとして特徴付けられるとき、そのような表現は、ペプチドまたは薬剤が、他の相互作用、たとえば、nNOSへのPSD−95の結合、の相互作用をも阻害することを排除するものではない。
上述のものなどのペプチドは、随意的に、誘導体化(たとえば、アセチル化、リン酸化および/またはグリコシル化)して、阻害剤への結合親和性を高め、阻害剤の細胞膜を透過する能力を高め、または安定性を高めることが可能である。具体的な例として、C末端から3番目の残基がSまたはTである阻害剤については、この残基は、そのペプチドを使用する前に、リン酸化することができる。
薬理活性剤には、PSD−95とNMDAR2Bとの相互作用、および/または上述の他の相互作用、を阻害する小分子も含まれる。好適な小分子阻害剤は、たとえば、国際特許出願公開公報第WO/2009/006611号に、記載されている。好適な化合物の例示的クラスは次の式を有する。
ここで、Rは、0〜4個のRで置換されたシクロヘキシル、0〜4個のRで置換されたフェニル、−(CH−(CHR)、分枝C1−6アルキル(イソプロピル、イソブチル、1−イソプロピル−2−メチル−ブチル、1−エチル−プロピル)および−NH−C(O)−(CR1011Hで構成される群から選択され、
各Rは、C1−6アルキル、C-アルコキシ、−C(O)R12、OH、COOH、−NO、N置換インドリンおよび細胞膜移行ペプチドで構成される群から選択される個別の構成要素であり、
各RおよびRは、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換フェニル、およびシクロペンタジエンで構成される群から個別に選択され、
各R10およびR11は、H,シクロヘキサン、フェニルおよび細胞膜移行ペプチドで構成される群から個別に選択され、
12は、C1−6アルキルおよびアリールで構成される群から選択される構成要素であり、uおよびvの各々は個別に0〜20であり、
ここで、R,R,R,RおよびRのうちの1つは−COOHであり、R,R,R,RおよびRの残余は各々、F,H,OCHおよびCHで構成される群から個別に選択される。
このような化合物の1つは0620−0057であり、その構造は次のとおりである。
薬理活性剤は、内在化ペプチドに連結して、細胞への取り込みおよび/または血液脳関門の通過を促進することができる。上述の薬理活性剤のいずれも、下記の内在化ペプチドのいずれかに連結することができる。内在化ペプチドは、多くの細胞タンパクまたはウイルスタンパクが膜を横断するのを可能にする、比較的短いペプチドの周知のクラスである。内在化ペプチドは、細胞膜形質導入ペプチドまたは細胞透過性ペプチドとしても知られ、たとえば5〜30個のアミノ酸を有し得る。このようなペプチドは、一般に、アルギニン残基および/またはリジン残基の上記の通常の表記から、(一般のタンパクと比べて)正電荷を有し、このことが膜透過を促進すると信じられている。いくつかのこのようなペプチドは、少なくとも5,6,7または8個のアルギニン残基および/またはリジン残基を有する。例には、アンテナペディアタンパク(Bonfanti,Cancer Res.57,1442−6(1997))(およびその変異体)、ヒト免疫不全ウイルスのtatタンパク、タンパクVP22,ヘルペスシンプレックスウイルスタイプ1のUL49遺伝子の産生物、ペネトラチン、SynB1および3、トランスポータン(Transportan)、アンフィパシック(Amphipathic)、gp41NLS、polyArg、ならびに、リシン、アブリン、モデシン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、炭疽毒素、易熱性毒素、および、緑膿菌外毒素A(ETA)などの、いくつかの植物および細菌タンパク毒素が含まれる。他の例は、次の文献に記載されている(Temsamani,Drug Discovery Today,9(23):1012−1019,2004;De Coupade,Biochem J.,390:407−418,2005;Saalik Bioconjugate Chem.15:1246−1253,2004;Zhao,Medicinal Research Reviews 24(1):1−12,2004;Deshayes,Cellular and Molecular Life Sciences 62:1839−49,2005);Gao,ACS Chem.Biol.2011,6,484−491,SG3(RLSGMNEVLSFRWL)(すべて参照によって組み込まれる)。
好ましい内在化ペプチドは、HIVウイルス由来のtatである。先の研究で報告したtatペプチドは、HIVtatタンパクに見られる標準的アミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号2)を含み、またはこの配列から成る。したがって、このtatペプチドを組み込んだ2つの好ましい薬剤は、YGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号6)(Tat−NR2B9cまたはTAT−NR2B9Cとしも知られる)もしくはYGRKKRRQRRRKLSSIETDV(配列番号37)のアミノ酸配列を含み、またはこのアミノ酸配列から成るペプチドである。このようなtatモチーフに隣接する追加の残基が(薬理活性剤の他に)存在する場合、その残基は、たとえば、tatタンパク由来のこのセグメントに隣接する天然アミノ酸、もしくは、2つのペプチドドメインを結合するのに一般に使用される種類のスペーサまたはリンカーアミノ酸、たとえば、gly(ser)(配列番号44)、TGEKP(配列番号45)、GGRRGGGS(配列番号46)、もしくはLRQRDGERP(配列番号47)(たとえば、Tang et al.(1996),J.Biol.Chem.271,15682−15686;Hennecke et al.(1998),Protein Eng.11,405−410)を参照)であり、または、隣接残基なしで変異体の取り込みをもたらす能力を大きく減じることのない他のあらゆるアミノ酸であり得る。好ましくは、活性ペプチド以外の隣接アミノ酸の数は、YGRKKRRQRRR(配列番号2)のどちら側においても10を超えない。YGRKKRRQRRR(配列番号2)のC末端に隣接する追加のアミノ酸残基を含む1つの好適なtatペプチドは、YGRKKRRQRRRPQ(配列番号48)である。ただし、好ましくは、隣接アミノ酸は存在しない。使用可能な他のtatペプチドには、GRKKRRQRRRPQ(配列番号4)およびGRKKRRQRRRP(配列番号26)が含まれる。
N型カルシウムチャンネルに結合する能力が低い上記tatペプチドの変異体は、国際特許出願公開公報第WO/2008/109010号に記載されている。そのような変異体は、アミノ酸配列XGRKKRRQRRR(配列番号49)を含み、またはこのアミノ酸配列から成り、ここで、Xは、Y以外のアミノ酸であるか、存在しない(この場合、Gが自由N末端残基である)。好ましいtatペプチドは、N末端のY残基がFで置換されている。したがって、FGRKKRRQRRR(配列番号3)を含む、またはこの配列から成るtatペプチドが好ましい。他の好ましい変異tatペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号1)から成る。他の好ましいtatペプチドは、RRRQRRKKRGまたはRRRQRRKKRGY(配列番号9のアミノ酸1〜10または1〜11)を含み、またはこの配列から成る。N型カルシウムチャンネルを阻害することなく薬理活性剤の取り込みを促進する他のtat由来ペプチドには、次の表2に示したものが含まれる。
Xは、自由アミノ末端、1個もしくは2個のアミノ酸、または複合部分を表し得る。内在化ペプチドは、連結ペプチドまたはペプチド模倣体を各型内に有するまたは有しない、インベルソ型またはレトロ型またはインベルソレトロ型で使用することができる。たとえば、好ましいキメラペプチドは、RRRQRRKKRGY−KLSSIESDV(配列番号9)のアミノ酸配列を含み、もしくはこのアミノ酸配列から成り、または、RRRQRRKKRGY−KLSSIETDV(配列番号37)のアミノ酸配列を含み、もしくはこのアミノ酸配列から成る。
内在化ペプチドは、従来の方法によって、薬理活性剤に取り付けることが可能である。たとえば、薬剤は、化学連結で、たとえばカップリン剤または複合化剤によって、内在化ペプチドに結合させることができる。多くのそのような試薬が市販されており、S.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press(1991)によって、総説されている。架橋化剤のいくつかの例には、J−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)またはN,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド;N,N’−エチレン−ビス−(ヨードアセタミド)または6〜11個の炭素メチレン架橋(これは、比較的にスルフヒドリル基に特異的である)を有する他の試薬;および、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(これは、アミノ基およびチロシン基と不可逆的結合を形成する)が含まれる。他の架橋化剤には、p,p’−ジフルオロ−m、m’−ジニトロジフェニルスルホン(これは、アミノ基およびフェノール基と不可逆的架橋を形成する);ジメチル アジピミデート(これは、アミノ基に特異的である);フェノール−1,4−ジスルホニルクロライド(これは、主としてアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはジイソチオシアネート、または、アゾフェニル−p−ジイソシアネート(これは、主としてアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(これは、いくつかの異なる側鎖と反応する)、および、ジスジアゾベンジジン(これは、主としてチロシンおよびヒスチジンと反応する)が含まれる。
内在化ペプチドに付着したペプチドである薬理活性剤は、好ましくはN末端にて、内在化ペプチドに融合したペプチド配列を含む融合タンパクを生成することによって達成することができる。
PSD−95を阻害するペプチド(または他の薬剤)を内在化ペプチドに連結することに代えて、または加えて、そのようなペプチドは脂質に連結して(脂質付加)、複合体の疎水性をペプチド単独よりも高め、これによって、連結ペプチドが細胞膜および/または脳関門を透過するのを促進することができる。脂質付加は、好ましくは、N末端アミノ酸において実施されるが、PSD−95とNMDAR2Bとの相互作用を阻害するペプチドの能力が、50%を超えて低下しないことを条件に、内部アミノ酸においても実施することが可能である。好ましくは、脂質付加は、最もC末端の4個のアミノ酸の1つ以外のアミノ酸において実施される。脂質は、水よりもエーテルに溶け易い有機分子であり、脂肪酸、グリセリドおよびステロイドを含む。脂質付加の好適な形態は、ミリストイル化、パルミトイル化、または、ラウリル酸およびステアリン酸などの、好ましくは10〜20炭素の鎖長を有する他の脂肪酸の付加のほか、ゲラニル化、ゲラニルゲラニル化およびイソプレニル化である。天然タンパクの翻訳後の変更で生じる種類の脂質付加が、好ましい。ペプチドのN末端アミノ酸のアルファアミノ基へのアミド結合の形成を介する、脂肪酸での脂質付加も好ましい。脂質付加は、予め脂質付加されたアミノ酸を含むペプチド合成により行うことができ、インビトロで酵素的に、または、遺伝子組み換え発現によって、化学架橋によって、もしくはペプチドの化学的誘導体化によって、実施することができる。ミリストイル化によって変更されたアミノ酸および他の脂質変更体は、市販されている。
脂質付加は、好ましくは、標準的なtatペプチドを高用量(たとえば、3mg/kg以上)で投与したときに見られるような血圧の一過性の低下を引き起こすことなく、または、少なくとも、標準的なtatペプチドに連結した同一のペプチドよりも小さい低下を伴うのみで、連結ペプチド(たとえば、KLSSIESDV(配列番号5)またはKLSSIETDV(配列番号43))が、細胞膜および/または血液脳関門を通過するのを促進する。
随意的にtatペプチドに融合した、薬理活性ペプチドは、固相合成または遺伝子組み換え法によって合成することができる。ペプチド模倣体は、科学文献および特許文献、たとえば、Organic Syntheses Collective Volumes,Gilman et al.(Eds) John Wiley & Sons,Inc.,NY, al−Obeidi(1998) Mol.Biotechnol. 9:205−223;Hruby(1997) Curr.Opin.Chem.Biol.1:114−119;Ostergaard(1997) Mol.Divers.3:17−27;Ostresh(1996) Methods Enzymol.267:220−234、に記載されている様々な手順および手法を用いて合成することができる。
III.再かん流のための薬剤および方法
PSD−95阻害剤での虚血性脳卒中の治療は、再かん流療法と組み合わせることができる。そのような再かん流は、tPA、ストレプトキナーゼもしくはウロキナーゼなどの血栓溶解剤の静脈内もしくは動脈内投与を使用して、閉塞した動脈を再び開く機械的手段を用いて、または、虚血脳領域への側副循環を増大させる他の手段によって、達成することができる。PSD−95阻害剤を投与することによって、虚血性脳卒中の存在を決定するための脳スキャンの実行に利用可能な時間が多くなり、その後、適当であれば、tPAを投与しまたは他の再かん流療法を実施する。したがって、虚血性脳卒中を有するより多くの対象者が、tPA治療または脳再かん流を増大させる他の療法、および、同時に、PSD−95阻害剤での治療の恩恵を受けることができる。
虚血を引き起こすプラーク、血液塊、または他の粒状物質(総称して塞栓としても知られる)は、薬理的手段および物理的手段の双方によって、溶解し、除去し、または迂回することが可能である。塞栓または血流に対する他の障害物の溶解および除去ならびに結果として生じる血流の回復は、再かん流と呼ばれる。1つのクラスの薬剤は、血栓溶解によって作用する。これらの薬剤は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の注入を通じて、プラスミンによる線維素溶解を模すことによって作用する。プラスミンは、架橋したフィブリンの網目(血液塊の骨格)を消去して、血液塊を可溶にし、他の酵素によるさらなるタンパク分解に付し、閉塞した血管の血流を回復させる。血栓溶解剤の例には、組織プラスミノーゲン活性化因子t−PA、アルテプラーゼ(Activase(登録商標))、レテプラーゼ(Retavase(登録商標))、テネクテプラーゼ(TNKase(登録商標))、アニストレプラーゼ(Eminase(登録商標))、ストレプトキナーゼ(Kabikinase(登録商標),Streptase(登録商標))、および、ウロキナーゼ(Abbokinase(登録商標))が含まれる。
再かん流に使用することができる薬物の他のクラスは、血管拡張剤である。これらの薬物は、血管を弛緩させ拡げて、血液が閉塞の周囲を流れるようにすることで、作用する。血管拡張剤の種類のいくつかの例には、アルファ−アドレナリン受容体拮抗剤(アルファ−ブロッカー)、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、ベータ−アドレナリン受容体拮抗剤(β−ブロッカー)、カルシウムチャンネルブロッカー(CCB)、中枢作用性交感神経遮断剤、直接作用性血管拡張剤、エンドセリン受容体拮抗剤、神経節遮断剤、ニトロ拡張剤(nitrodilator)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、カリウムチャンネル開口剤、および、レニン阻害剤が含まれる。
再かん流のための機械的手段には、血管形成、カテーテル挿入、および、動脈バイパス移植手術、ステント留置、塞栓除去、または、動脈内膜切除が含まれる。これらの処置は、プラークの機械的除去によってプラークの流れを回復し、血管を開いたままに維持することにより、血液がプラークの周りを流れ、またはプラークを迂回し得る。再かん流を増大させる他の方法には、大動脈内バルーン(CoAxia NeuroFlo(商標))などの、血液の心拍出量を脳循環に流用させ、それによって、虚血領域への側副かん流を増大せせる補助器具が含まれる(clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00119717を参照)。
IV.脳卒中
脳卒中は、原因によらず、CNSにおける血流障害の結果の疾患である。原因となり得るものには、塞栓症、出血および血栓症がある。血流の障害の結果として、いくつかのニューロン細胞が直ちに死ぬ。これらの細胞は、グルタメートを含むそれらの成分分子を放出し、これはNMDA受容体を活性化し、NMDA受容体は、細胞内カルシウムレベルおよび細胞内酵素レベルを上昇させて、さらなるニューロン細胞の死を招く(興奮毒性カスケード)。CNS組織の死は、梗塞と呼ばれる。梗塞体積(つまり、脳において脳卒中の結果死んだニューロン細胞の体積)は、脳卒中に起因する病理学的損傷の程度の指標として使用することができる。いくつかの例において、脳卒中は、複数の塞栓によって、または、全身性動脈障害によって生じるかもしれない。前者においては、塞栓は、心内膜炎、心房細動または心臓弁膜症の場合のように、心臓から発生するかも知れない。後者においては、動脈障害は、動脈炎(感染性または自己免疫性の動脈の炎症)を含むかも知れない。そのような場合、時に多くの小さい塞栓によって、脳に複数の脳卒中が生じるかも知れない。そのような場合、脳卒中に起因する病理学的損傷の程度を測定する他の手段は、虚血病変の数を数えることである。これは、脳動脈瘤の血管内修復の後に発生する脳卒中などの、手術誘発性の脳卒中の場合に特に適用される。この場合、血管内操作が、脳において多くの脳卒中を生じさせる多くの塞栓を解放するかも知れない。症候性作用は、梗塞の体積、梗塞の数、および、それが脳の何処に位置するかの、双方に依存する。ランキンストロークアウトカムスケール(Rankin,Scott Med J;2:200−15(1957))およびバーセルインデックスなどの障害指数は、症候的損傷の測定に使用することができる。ランキンスケールは、以下のように、対象者の全体的状態を直接評価することに基づいている。
バーセルインデックスは、日常生活の10の基本的動作を行う対象者の能力についての一連の質問に基づいており、結果は0〜100のスコアで表され、低いスコアは障害が重いことを示す(Mahoney et al.,Maryland State Medical Journal 14:56−61(1965))。
代替の脳卒中重度/転帰は、ワールドワイドウェブninds.nih.gov/doctors/NIH_Stroke_Scale_Booklet.pdfにて入手可能な、NIHストロークスケールを用いて測定することができる。
このスケールは、対象者の意識、運動、知覚および言語機能のレベルの評価を含む、11群の機能を行う対象者の能力に基づいている。
虚血性脳卒中とは、より具体的には、脳への血流の妨害によって引き起こされる種類の脳卒中を指す。この種の妨害の基礎疾患は、血管壁を内張りする脂肪性沈着物の成長が、最も普通である。この疾患は、アテローム性動脈硬化と呼ばれる。これらの脂肪性沈着物は、2種類の妨害を引き起こし得る。脳血栓症とは、血管の詰まった部分に成長する血栓(血液塊)を指す。「脳塞栓」とは、一般に、循環系の他の場所、通常、心臓または胸郭上部および頸部の大動脈、で形成された血液塊を指す。次いで、血液塊の一部が抜け出して血流に入り、脳の血管を通って、最終的に、通り抜けるには小さすぎる血管に達する。塞栓の第2の重要な原因は、心房細動として知られる不規則な心拍である。これは、血液塊が心臓で形成され、遊離して脳に達する状況を生成する。虚血性脳卒中の原因となり得るさらなるものには、出血、血栓形成、動脈または静脈の切開、心拍停止、出血を含むあらゆる原因のショック、および、脳血管または脳に達する血管の外科手術または心臓手術などの医原生の原因が含まれる。虚血性脳卒中はすべての脳卒中の症例の、約83%を占める。血栓のもう1つの原因は、脳動脈瘤などの血管病変による、血管内器具の血管内への導入による、または、血管内器具の血管内への導入による血栓形成による、血液の血管内鬱滞である。
一過性脳虚血発作(TIA)は、小脳卒中または警告脳卒中である。TIAにおいては、虚血性脳卒中を示す状態が存在し、一般的な脳卒中の警告信号が現れる。ただし、妨害(血液塊)は、短時間生じて、通常の機構で自然に消える傾向にある。心臓手術を受ける対象者は、一過性脳虚血発作の危険性が特に高い。
出血性脳卒中は、脳卒中症例の約17%を占める。これは、弱くなった血管が破裂して周囲の脳に出血した結果で生じる。血液は鬱積し、周囲の脳組織を圧迫する。出血性脳卒中の2つの一般な種類は、脳内出血およびくも膜下出血である。出血性脳卒中は、弱くなった血管の破裂の結果である。弱くなった血管の破裂の原因となり得るものには、高い血圧が血管の破裂を引き起こす高血圧性出血、または、弱くなった血管の他の根本原因、たとえば、脳動脈瘤を含む破裂性脳血管奇形、動静脈奇形(AVM)もしくは海綿状奇形など、が含まれる。出血性脳卒中は、梗塞部の血管を弱める虚血性脳卒中の出血性変化、または、異常に弱い血管を包含するCNSにおける原発性もしくは転移性の腫瘍からの出血によっても生じ得る。虚血性脳卒中は、また、再かん流の結果、出血性脳卒中に変化し得る。出血性脳卒中は、脳血管への直接の外科的損傷などの、医原生の原因からも生じ得る。動脈瘤は、血管の弱った領域の膨張である。放置すると、動脈瘤は弱くなり続け、最終的に破裂して脳に出血する。動静脈奇形(AVM)は、異常に形成された血管の房である。海綿状奇形は、弱くなった静脈構造からの出血を引き起こし得る静脈異常である。これらの血管のいずれも、破裂して、脳への出血を引き起こし得る。脳の一部分における出血性脳卒中は、出血性脳卒中で失われる血液の不足を通じて、他の部分に虚血性脳卒中をもたらし得る。
未破裂の動脈瘤を有する患者において、手術に関連する脳卒中は、血管内手術によって除去される塞栓の結果として(最も一般的)、または、動脈瘤の穿孔(出血性脳卒中をもたらす)などの、血管内手術の他の合併症によって、もしくは、血管内コイルまたはステントの誤留置による親血管の不慮の閉塞によって、もしくは、血栓症、解離もしくはかん流における結果の血管の損傷による親血管の不慮の閉塞によって、生じる。
未破裂の動脈瘤を有し、動脈瘤が血管内手段によって処理される患者において、手術に関連する脳卒中は、未破裂の動脈瘤を有する患者と同じ理由で生じ得る。しかし、破裂した動脈瘤は未破裂の動脈瘤よりも壊れ易く、手術の前にまたは途中で動脈瘤が破裂する危険性がより高いので、そのような患者は、また、さらなる虚血性または出血性の脳損傷を被り得る。追加の損傷は、また、脳腫脹(浮腫)をもたらす元の動脈瘤の破裂による、もしくは、漏出血液の脳内蓄積による、もしくは両者による、頭蓋内圧の上昇、または、「血管攣縮」の現象による遅発性虚血の結果でもあり得る。くも膜下出血において、血管攣縮の危険性は、動脈瘤破裂の5〜12日後で最大であり、また、脳動脈を取り囲む血液塊によって放出される血管作動性物質の結果である。血管攣縮は、そのような患者において、遅発性虚血性脳卒中の原因となり得る。損傷は、また、破裂直後の頭蓋内圧の突然の上昇に由来する脳血管自己調節能の損失による、脳血流の変化からも生じ得る。
V.治療に適する対象者
臨床試験は、PSD−95阻害剤が、未破裂のおよび破裂した動脈瘤の両方の血管内修復を受ける対象者における、梗塞および神経認知障害の低減に有効であることの証拠を提供する。未破裂の動脈瘤を有する対象者は、虚血性脳卒中またはくも膜下出血の危険性が圧倒的に高い。破裂した動脈瘤を有する対象者も、虚血性脳卒中の危険性が高いが、特にくも膜下出血に由来する、出血性脳卒中の危険性が加わる。出血性脳卒中の危険性が加わることで、破裂した動脈瘤を有する対象者は、動脈瘤の結果としての死または消耗性損傷の危険性が最大になる。驚いたことに、本発明のデータは、病理学的試験(梗塞の数および体積)および神経認識試験の双方によって、これらの患者が、PSD−95阻害剤から最大の恩恵を受けることを示している。これらの結果は、PSD−95阻害剤が、虚血性脳卒中または出血性脳卒中の治療に使用可能であることを示すのみならず、そのような阻害剤が、脳卒中の結果であるか否かによらず、CNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する出血を有する対象者の治療に使用可能であるという証拠を提供する。PSD−95阻害剤は、虚血の低減を通じて作用して、より良い転帰をもたらすと一般に考えられてきたので、このことは驚くべきである。SAHにおいて、Tat−NR2B9cなどのPSD−95阻害剤は、一般に虚血が存在しないときは、破裂の72時間以内に与えられたが、それでも恩恵を示した。SAH患者における虚血は、一般に血管攣縮の後に生じ、一般に破裂の5〜12日後に存在する。Tat−NR2M9cは、血漿中の半減期が短く(約20分)、脳での半減期も短く(約5時間)、これは、Tat−NR2M9cが、少なくとも部分的に、虚血を低減するのとは異なる機構で作用して、下記の実施例に見られる恩恵をもたらすことを示唆している。ただし、本発明の実施は、機構の理解に依存するものではない。
CNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する最も一般的な出血は、脳出血、脳内出血、頭蓋内出血(ICH)(いずれも脳の内側で生じる)、ならびに、硬膜下出血および硬膜外出血、ならびに、くも膜下出血(SAH)(いずれも頭蓋骨内であるが脳自体の外側で生じる)である。これらの出血は、動脈瘤の破裂、または、高血圧もしくは抗凝血剤もしくはコカインなどの薬物に由来する血管の漏出と同時に生じる場合は、出血性脳卒中であるといわれるが、転倒、打撃または揺さぶられっ子症候群などの身体外傷に起因する場合は、単に出血といわれる。本発明の方法は、特にくも膜下出血の治療に適している。なぜなら、この形態の出血は、臨床試験から最大の恩恵を受ける対象者に存在したからである。
治療に適する対象者には、CNS内、もしくは、くも膜下出血、硬膜下出血もしくは硬膜外出血の場合ではCNSの直近のいずれかに、または、そうでなければCNSに影響を及ぼす身体の他の部位であって、閉塞が脳内の血流を妨げることになる血管に影響を及ぼす、もしくは、出血が浮腫、蓄積する血液の圧力などを通じて損傷を引き起こす部位に、虚血または出血の兆候および/もしくは症状を呈している対象者が含まれる。これらの対象者には、脳卒中、心筋虚血、肺塞栓症、肢虚血、腎虚血もしくは網膜虚血、または、脳内もしくは脳の近傍の出血(たとえば、くも膜下出血)、の兆候および/もしくは症状を呈している対象者が含まれる。このような対象者には、そのような疾患が疑われるが他の疾患を排除することができない対象者の他、一般に認められている基準、たとえばDSM IV TRに従って診断される対象者が、含まれる。
治療に適する対象者には、また、虚血または出血の危険性がありながら、虚血または出血が未だ発症していない対象者も含まれる。対象者は、彼または彼女が、対照集団よりも虚血または出血を生じる危険性が高い場合に、危険性がある。対照集団には、その疾患と診断された、または、その疾患の家族歴を有する一般集団(たとえば、年齢、性別、人種および/または民族性で適合する)から無作為に選択された1以上の個体が含まれてよい。対象者は、その疾患に関わる「危険因子」がその対象者に付随していることが判った場合、疾患の危険性があると考え得る。危険因子には、たとえば、対象者の集団の統計的または疫学的研究を通じた、所与の疾患に関わるあらゆる活動、形質、出来事または特性が含まれる。したがって、対象者は、危険因子を特定する研究が特にその対象者を含んでいなかった場合でも、疾患について危険性があると分類され得る。たとえば、一過性脳虚血発作の頻度は、心臓手術を受けていない対象者の集団よりも心臓手術を受けた対象者の集団で高いので、心臓手術を受ける対象者は、一過性脳虚血発作の危険性がある。
CNSにおけるまたはCNSに影響する虚血の危険性のある対象者には、脳またはCNSに、血管内手術、クリッピング、ステント留置、またはマイクロカテーテル挿入などの、外科的手術を受ける者が含まれる。このような対象者には、また、脳に血液を供給する血管(つまり、脳を心臓に接続する血管、たとえば、頸動脈および頸静脈)、または、網膜、腎臓、脊髄もしくは肢に血液を供給する動脈に影響を及ぼす身体のどこかに手術を受ける者も含まれる。CNSに影響を及ぼす出血の危険性のある対象者には、脳に外科手術を受ける者も含まれる。危険性のある他の対象者には、転倒もしくは打撃などの損傷を脳に受けたことのある、または、揺さぶられっ子症候群もしくは交通事故などにおける、速度の急激な変化に曝されたことのある者が含まれる。出血の危険性のある他の対象者には、高血圧、凝固障害、動静脈奇形または動脈瘤を有する者が含まれる。対象者の好ましいクラスは、破裂したか否かによらず、脳動脈瘤を治療するために血管内手術を受ける者である。
VI.組み合わせた治療方法
虚血の兆候については、治療に適する対象者に対して、PSD−95阻害剤および再かん流の一形態を施すことができる(2011年6月24日出願の米国特許出願第US 61/501117号を参照。この出願は、あらゆる目的のために、参照によって取り込まれる)。PSD−95阻害剤および再かん流は、順次または同時に施すことができる。通常、PSD−95阻害剤および再かん流は、同時に、または、重複したもしくは近接した時間(つまり、15分間隔以内)に施され、あるいは、PSD−95阻害剤が先に施される。
前もって予測することができない虚血の治療については、PSD−95阻害剤は、虚血の発症後できるだけ速やかに投与することが可能である。たとえば、PSD−95阻害剤は、虚血の発症後、0.5,1,2,3,4,5,6,12もしくは24時間という時間内に、または、虚血ペナンブラを維持する側副循環が十分残存するような他の時間内に、投与することができる。前もって予測可能な、もしくは、症状の原因となり得る虚血または出血については、PSD−95阻害剤は、虚血の発症前に、発症と同時に、または発症後に、投与することができる。たとえば、手術に起因する虚血または出血については、PSD−95阻害剤は、虚血が発症したか、あるいは発症するかにかかわらず、手術開始前30分から始まり手術後1時間に終了する期間に、規定どおり投与されることもある。PSD−95阻害剤は、重篤な副作用がないので、脳卒中、出血性疾患または他の虚血性疾患が疑われるときに、技術分野において承認されている基準に従う診断なしで、投与することができる。たとえば、PSD−95阻害剤は、対象者を病院に搬送する救急車の中で、投与することが可能である。PSD−95阻害剤は、また、発症前の脳卒中または他の虚血性疾患もしくは出血性疾患の危険性がある対象者であって、その疾患を実際に発症するかも知れず、しないかも知れない対象者に、安全に投与することができる。PSD−95阻害剤は、また、進行中のもしくは差し迫った脳虚血または他の損傷の推定診断に基づいて、手術室または血管内処置室(endovascular suite)において、麻酔された患者に、投与することもできる。
PSD−95阻害剤の投与に続いて、または、時には投与の前に、虚血の兆候および/または症状を呈する対象者は、対象者がCNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する虚血を有するか否かを判断し、対象者が出血を有するあるいは出血を疑われるか否かを判断するための、診断評価にさらに付され得る。特に、脳卒中またはCNSに影響する他の急性疾患の症状を呈する対象者において、試験は、対象者が出血を有するか否かを判別することを試みる。診断試験は、CATスキャン、MRIまたはPET造影スキャンなどの、1つ以上の器官のスキャンを含み得る。スキャンされる器官には、虚血の場所であると疑われるあらゆる器官(たとえば、脳、心臓、四肢、脊椎、肺、腎臓、網膜)に加え、そうではなく、出血の源であると疑われる他のあらゆる器官、が含まれる。脳のスキャンが、虚血性疾患と出血性疾患を識別するための、通常の処理である。診断評価は、また、対象者の医療暦を取得または考察し、他の試験を行うことも含み得る。次の因子のいずれかが、単独でまたは組み合わせで、存在することは、再かん流療法が許容できない危険性をもたらすか否かの評価に使用することができる:対象者の症状が、深刻でないか速やかに改善される;対象者が、脳卒中の始まりに発作を有していた;対象者が、過去3ヶ月以内に別の脳卒中または重篤な脳外傷を有していた;対象者が、最近14日以内に大きな手術を受けた;対象者が、頭蓋内出血の既知の病歴を有している;対象者が、>185mmHgの持続的な収縮期血圧を有する;対象者が、>110mmHgの持続的な拡張期血圧を有する;対象者の血圧を下げるために、積極的治療が必要である;対象者が、くも膜下出血を示唆する症状を有する;対象者が、最近21日以内に胃腸のまたは尿路の出血を有していた;対象者が、最近7日以内に非圧縮性部位に動脈穿刺を受けた;対象者が、最近48日以内にヘパリンを投与され、高いPTTを有している;対象者のプロトロンビン時間(PT)が>15秒である;対象者の血小板数が、<100,000μLである;対象者の血清グルコースが、<50mg/dLまたは>400mg/dLである;対象者が、血友病患者であるか、他の凝固欠乏を有する。
さらなる診察調査は、承認されている基準に従って、または、少なくともより大きな可能性で、調査の前に対象者が虚血性疾患を有しているか、および、対象者が出血を有するか、出血の許容できない危険性を有しているか、または、そうでなければ、別の面で副作用の許容できない危険性により再かん流療法を受けることから除外されるか、を決定する。CNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する虚血性疾患の診断が確認される対象者であって、副作用の許容できない危険性のない対象者は、再かん流療法に付すことができる。好ましくは、再かん流療法は、あらゆる診断処理の完了後、できるだけ速やかに実施される。数人の対象者において、再かん流療法は、虚血の発症から1,2,3,4,4.5,5,6,7,8,10,12,15,18,または24時間以上後に開始される。数人の対象者において、再かん流療法は、虚血の発症から1〜6,1〜12,1〜18または1〜24時間後に開始される。数人の対象者において、再かん流療法は、再かん流療法が有効であるとこれまで考えられてきた通常の3〜4.5時間の時間帯の外に開始される。たとえば、数人の対象者において、再かん流療法は、虚血の発症から3時間以上後、または4.5時間以上後で、虚血の発症から24時間または48時間までに、開始される。数人の対象者において、再かん流療法は、虚血の発症から5,6,7,8,9または10時間後で、虚血の発症から24または48時間までに開始される。数人の対象者において、再かん流療法は、虚血の発症から275〜390分後に開始される。
再かん流の時間は、また、PSD−95阻害剤の投与から測定することもできる。間隔は、たとえば、5分〜24時間であり得る。間隔は、たとえば、30分〜6時間または1〜3時間であってよい。
虚血性疾患が確認されない、または、ありそうにないと考えられる対象者は、通常、再かん流療法、特に薬理的再かん流療法を実施されない。虚血性疾患が確認される、または、ありそうであると考えられるが、薬理的再かん流療法の副作用の許容できない危険性があると考えられる対象者は、通常、薬理的再かん流療法を実施されない。そのような対象者は、PSD−95阻害剤から恩恵を得たかも知れないが、再かん流療法からの副作用の許容できない危険性は回避される。
PSD−95阻害剤での治療および再かん流療法での治療の両者は、虚血による梗塞サイズおよび機能障害を低減する能力を個別に有する。組み合わせて使用するとき、梗塞サイズおよび/または機能障害の低減は、好ましくは、組み合わせのためのものではない同等の投与計画の下で投与されるどちらかの薬剤のみの使用から生じる低減よりも大きい。より好ましくは、梗塞サイズおよび/または機能障害の低減は、少なくとも、組み合わせを除く同等の投与計画の下で投与された単独の薬剤で達成される低減を加えたものであり、好ましくは加えたものを超える。いくつかの投与計画において、再かん流療法は、PSD−95阻害剤の同時投与または先行投与がなければ有効ではないときに、虚血の発症後の一時点(たとえば、4.5時間超)で梗塞サイズおよび/または機能障害を低減するのに有効である。換言すると、対象者がPSD−95阻害剤および再かん流療法を実施されるとき、再かん流療法は、好ましくは、少なくとも、PSD−95阻害剤なしでより早い時点で実施される場合と同様に、有効である。したがって、PSD−95阻害剤は、再かん流療法が効果を生じる前または生じるときに、虚血の1つ以上の損傷作用を低減することによって、再かん流療法の効果を効果的に向上させる。PSD−95阻害剤は、したがって、再かん流の実施の遅れを、その遅れが、対象者を病院または他の医療施設に搬送する途中での、対象者における彼または彼女の初期症状の危険性を認識することの遅れ、あるいは、虚血の存在および/もしくは出血の非存在またはその許容できない危険性を確証するための診断処理の実施の遅れの、どちらに由来するかにかかわらず、補償することができる。PSD−95阻害剤と再かん流療法との、相加的効果または相乗的効果を含む統計的に有意な組み合わせ効果は、臨床試験において集団間で、または、臨床前研究において動物モデルの集団間で、実証することができる。
CNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する出血が、確認される、または、医師が受諾できる確信をもって排除することのできない対象者は、通常、薬理的再かん流療法を実施されないが、外科的および薬理的の双方の、他の組み合わせ治療に付すことができる。PSD−95阻害剤での治療は、他の薬物、治療、または、SAHおよびICHを含む、CNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する出血に関連する適応に有用な治療介入、との組み合わせで行うこともできる。CNSにおけるまたはそうでなければCNSに影響する出血は、外科的介入によって、および診断に応じて、たとえば、降圧薬、第7因子(FactorVIIa)もしくは他の血栓形成因子もしくは凝固因子、頭蓋内圧を上昇させるマンニトールもしくは他の薬物、頭痛を軽減し高熱を避けるアセトアミノフェンもしくは他のNSAID、凍結血漿、ビタミンK、プロタミン、血小板輸血、発作が存在する場合の、もしくは脳葉内出血のための、ホスフェニトインもしくは鎮痙薬、ICHに関連するストレス潰瘍を予防するH拮抗薬もしくはプロトンポンプ阻害剤、もしくは、腫れを低減するコルチコステロイドなどの、治療法または処置によって処理することができる。PSD−95阻害剤Tat−NR2B9cのヒト臨床試験において、安全性または薬物関連相互作用は観察されていないので、そのような組み合わせ治療は有効であると期待される。
対象者が、CNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する虚血を有するまたはその危険性にある、他の方法において、対象者は、虚血の治療または虚血の有効な予防のために、PSD−95阻害剤を、他の薬理学的治療薬の同時投与なしで、投与される。いくつかの方法において、そのような対象者は、虚血の治療または虚血の有効な予防のために、PSD−95阻害剤を、他の薬理学的治療薬を投与されることなく、投与され、機械的再かん流療法は実施されない。いくつかの方法において、CNSにおけるもしくはそうでなければCNSに影響する出血を有するまたはその危険性のある対象者は、出血の治療または出血の有効な予防のために、PSD−95阻害剤を、他の薬理学的治療なしで、投与される。
VI.有効な投与計画
PSD−95阻害剤は、CNSの虚血または出血の1つ以上の損傷作用、および好ましくは、虚血もしくは出血またはその外科的治療に関連する疼痛を軽減し、阻害しまたは遅延させる量、頻度および投与経路で投与される。他に示さない限り、内在化ペプチドに連結した薬理活性剤を含む、キメラ薬剤である阻害剤の用量は、キメラ薬剤の薬理活性剤成分のみならず、薬剤全体についていう。有効量は、疾患を患い本発明の薬剤で治療される対象者(または動物モデル)の集団における虚血および出血ならびに好ましくは疼痛の1つ以上の損傷作用を、その疾患または症状を患いその薬剤で治療されない対象者(または動物モデル)の対照集団における損傷に比べて、軽減し、抑止しまたは発症を遅延させるに足る薬剤の量を意味する。対照集団は、プラシーボで同時に処理され得、または、歴史的対照であり得る。量は、また、個々の治療対象者が、本発明の方法により治療されない比較対象者の対照集団における平均の転帰よりも、好ましい転帰を示す場合に、有効であると考えることができる。有効な投与計画には、意図する目的を達成するために必要な、頻度、投与経路での有効な薬剤の投与が含まれる。
脳卒中またはCNSに影響する出血の治療の転帰は、梗塞体積、梗塞の数、または障害指数によって決定することができる。投与計画は、治療を受けた個々の対象者が、ランキンスケールの2以下の障害、または、バーセルスケールで75以上を示す場合に、有効であると認識することができ(Lees et al.N Engl J Med 2006;354:588−600(2006)を参照)、または、治療を受けた対象者の集団が、いずれかの脳卒中スケール、障害スケールまたは他の適当なスケール(たとえば、バーセル、ランキン、NIHストロークスケール)上で、治療を受けていない比較集団よりも、有意に改善された(つまり、より軽度の障害)スコア分布を示す場合に、もしくは、治療を受けた対象者の集団が、治療を受けていない比較集団と比べて、有意に減少した梗塞体積もしくは梗塞数を示す場合に、有効であると認定することができる。薬剤の単回用量が、通常、脳卒中の治療に十分である。
臨床試験または個々の患者における梗塞は、好ましくは、MRI、特にFLAIR(反点回復撮影法:fluid attenuated inversion recovery)および/またはDWI(拡散強調画像:diffusion weighted imaging)によって評価される。FLAIRは、より感度が高いが、DWIは、新たな梗塞により特異的である。同じ空間位置に存在する梗塞のFLAIRおよびDWIの双方による特定は、脳卒中または出血の現在のエピソードに由来する新たな梗塞を感度よく選択的に検出する。他のMRIシーケンスは、単独で、またはDWIおよび/もしくはFLAIRと組み合わせて使用することができる。
薬剤に応じて、投与は、非経口、静脈内、経鼻、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下、腹腔内、局所的、鼻腔内、または、筋肉内に行うことができる。ペプチド薬剤には静脈内投与が好ましい。
内在化ペプチドを含むキメラ薬剤、特に、アミノ酸配列を含むHIV tatペプチドについては、本薬剤の投与は、ヒスタミンの放出および高レベルの内在化ペプチドに関連するその下流効果を低減するために、抗炎症剤と組み合わせてもよいし、組み合わせなくてもよい。併用に好ましい薬剤は、クロモリンもしくはロドキサミド、または本明細書に記載のいずれか他の薬物などの、肥満細胞の脱顆粒阻害剤である。抗ヒスタミン剤またはコルチコステロイドを、特に、両者を組み合わせて、または高用量で、使用することも可能である(国際特許出願公開公報第WO2009/076105および国際特許出願公開公報第WO2010/14474261号を参照)。
ヒトへの投与については、キメラ薬剤Tat−NR2B9cの好ましい用量は、2〜3mg/kg、より好ましくは2.6mg/kgである。示した用量は、一般的な病院で測定され得る精度の許容範囲を含むものと理解すべきである。この用量は、ほとんどの対象者において、かなりの量のヒスタミンの放出およびその後遺症なしで、薬剤を投与することができる最大用量なので、好ましい。高用量でのヒスタミンの放出は、上述のように抗炎症剤の併用で制御することが可能であり、いずれにせよ、通常は有害事象なしで自然に解消するが、用量を3mg/kg未満、好ましくは2〜3mg/kg、より好ましくは2.6mg/kgに保つことによって、回避するのが最も良い。他の好ましい用量は、1〜3mg/kg、たとえば、1.5mg/kgである。このような量は、単回投与、つまり疾病のエピソード当たり1回投与、のもの、または、複数回投与のもの、であり得る。
上記で示した用量は、キメラ薬剤Tat−NR2B9c(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV;配列番号6)のものである。同じ効果を達成するための他の薬剤の等価用量は、いくつかの手法で決定することができる。1個または数個のアミノ酸が置換、挿入または削除されており、分子量が約±25%の範囲内で同じに保たれている、その薬剤の近縁変異体については、上記の用量が依然として良好な指針である。ただし、一般に、他の薬剤については、等価用量は、内在化ペプチドが存在する場合、これを含むまたは含まないその薬剤の分子量、標的に対するKd、ならびに、その薬物動態および薬力学パラメータ、に依存して変り得る。いくつかの薬剤については、等価用量は、等モル量の薬理活性剤を供給するように、計算することができる。他の薬剤については、Kdまたは薬物動態もしくは薬力学パラメータの差異を考慮して、さらなる調整をする。いくつかの薬剤については、等価用量は、動物モデルまたは臨床試験において同じ終点への到達を達成した用量から、実験的に決定される。
Tat−NR2B9cなどのペプチド薬剤は、好ましくは、血管への注入、より好ましくは、静脈注射によって、供給される。キメラ薬剤Tat−NR2B9cについては、これらの考察間のバランスを提供する好ましい注入時間は、5〜15分、より好ましくは10分である。示した時間は、±10%の誤差の記号を含むと理解すべきである。注入時間は、他の点では完了した初期の注入で残るすべての液滴を洗い落すためのすすぎ注入の延長時間を含まない。Tat−NR2B9cについての注入時間は、随意的に内在化ペプチドに連結した他の薬理活性剤、特に、上述のTat−NR2B9cの近縁変異体、の指針となり得る。
Tat−NR2B9cまたは他のPSD−95阻害剤の複数回投与の投与計画も、また、使用することができる。たとえば、複数回投与の投与計画は、くも膜下出血またはCSNの他の出血を治療するために使用することができる。複数回投与の投与計画は、最大で出血の日から12日間、1日当たり1回または2回(もしくはそれ以上)のPSD−95阻害剤の投与を含むことができる。1つの好ましい投与計画において、阻害剤は、少なくとも3日間、1日当たり1回投与される。他の好ましい投与計画において、阻害剤は、少なくとも2日間、1日当たり2回投与される。いくつかの投与計画において、少なくとも1つの用量が、破裂の4日以内に(つまり、破裂が1日目であるとして、4日目に、または4日目の前に)投与される。いくつかの投与計画において、用量は、破裂の5日後に、またはその後に投与される。いくつかの投与計画において、1つの用量が、1〜4日目のいずれかの日もしくはすべての日に投与され、他の用量が、5〜12日目のいずれかの日もしくはすべての日に投与される。いくつかの投与計画において、1つの用量が、1〜4日以内に投与され、他の用量が、5〜12日以内に投与される。用量は、たとえば、1〜3mg/kg、好ましくは2〜3mg/kgまたは2.6mg/kgである。
PSD−95阻害剤は、医薬組成物の形態で投与することが可能である。医薬組成物は、一般に、GMP条件下で製造される。非経口投与の医薬組成物は、好ましくは、殺菌されており(たとえば、ペプチドのフィルター殺菌)、発熱物質を伴わない。医薬組成物は、単位用量型(つまり、単回投与のための用量)で提供することができる。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、添加剤、または、キメラ薬剤を処理して医薬的に使用し得る組成物にするのを容易にする補助剤、を使用する従来の方法で、調製することができる。適切な剤形は、選択される投与経路に依存する。
キメラ薬剤Tat−NR2B9cの例示的な剤形は、生理食塩水(0.8〜1.0%、好ましくは0.9%生理食塩水)またはリン酸緩衝生理食塩水中に、10〜30mg/mlの濃度、たとえば、16〜20mg/mlまたは18mg/mlの濃度で、ペプチドを含有する。凍結すると、このような組成物は、2年以上の期間にわたって安定である(ペプチドは僅かに分解または凝集する)。追加の添加剤を加えることもできるが、上記の安定性を得るためには、このような添加剤を有しない生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水で十分である。使用のためには、このような組成物は、解凍され、血管への注入のために、希釈されてより大きな体積の生理食塩水とされる。
再かん流のための薬理活性剤の多くの例が、臨床に使用されている。このような薬剤は、それらの従来の剤形、用量、投与経路、および投与頻度に従って、本組み合わせ方法で使用することができる(Physician’s Desk Reference、および適用可能なパッケージ挿入物を参照)。同様に、再かん流の機械的方法を、従来の実務に従って、採用することも可能である。
実施例1:虚血性脳卒中または脳出血後のTAT−NR2B9Cによる神経保護
研究計画
2008年9月〜2011年3月にカナダまたは米国の14の病院にて患者を登録した、無作為化二重盲検プラシーボ制御試験を行った。試験は、地方および国家治験審査委員会によって承認され、患者から、または法的に許容可能な代理人から、インフォームドコンセントを得た。包含および除外基準を、表4に要約する。すべての患者はそれぞれの動脈瘤の治療を受け、破裂した動脈瘤、くも膜下出血の場合は、地方施設治療基準に従った。
臨床評価およびMRI評価
すべの臨床評価およびMRI評価は、処理割当を知らない個人が行った。各登録患者は、血管内手術前2週間以内および血管内手術後24〜96時間に、1.5T(最小)スキャナーでのMRIスキャンを受けた。各スキャンには、次の最小シーケンスを含めた:軸位断(axial)FLAIR:3mm、ギャップなし、軸位断(axial)DWI:3mm、ギャップなし、および、3D T1強調傾斜エコーシーケンス(T1 weighted gradient echo sequence)2.0mm(たとえば、GE装置上のFSPGR)。
患者は、登録時、手術後、および、表5に示すように、30日の試験期間にわたって、評価した。最初の評価には、身体検査、神経画像検査、国立衛生研究所ストロークスケール(NIHSS)および変更ランキンスケール(mRS)に基づく基準値スコアリング、ならびに、神経認識バッテリー(図6に詳述)を含めた。破裂した動脈瘤を有する患者については、基準値神経認識試験は省略し、くも膜下出血(SAH)にフィッシャー等級(Fisher grade)を割り当て、その臨床的重症度を、世界脳神経外科学会連盟(WFNS)等級付けシステムに従って採点した。NIHSSは、神経学的損傷を測定する5項目のスケールである。スコアは0〜42にわたり、高いスコアほど大きな脳卒中重度を意味する。mRSは、0(症状皆無)〜6(死)にわたる身体障害の測定であり、5というスコアは、重度の障害(患者は、寝たきりで失禁を有し、看護および世話を常時必要とする)を示す。WFNSシステム(等級0〜5)は、SAH患者の臨床的状態を、グラスゴー・コーマ・スコア(Glascow Coma Score)(GCS)に従って格付けし、等級1は正常で、等級5は、GCS<7である。フィッシャー等級付けシステムは、脳血管攣縮の危険性を予測するために、CT上のくも膜下出血の様子を分類する。試験者は、熟練しており、すべてのスケールの使用に資格を有していた。手術後および薬物注入の臨床評価は、心肺の安全性、神経機能、および、神経認識に主として着目した。破裂した動脈瘤を有する患者については、神経認識試験を30日目にのみおこなった。
血管造影室(suite)から出た後1〜4時間。
破裂した動脈瘤を有する患者については登録および2〜4日目の評価を省略(30日目にのみ実施)。
投与後。
心臓モニターを1日目に投与後0〜2時間行った。
血圧、心拍数、温度、SaO
投与後24時間まで最低4時間ごとに、その後、治療内科医の決定に従って、ニューロバイタルサインを行った。BP,HRおよびO飽和度は、手術前(つまり、麻酔導入前)および手術後(投与直前)に測定した。BPおよびHR:投与後0.5,1,2,3,4,5,6,9,12,16,20および24時間。温度は、投与後1回、12〜25時間に測定した。O飽和度:投与後0.5,1,2,3,4,5,6であるが、麻酔の終了後および麻酔からの回復時に中断することができ、投与後6時間を超えてまで必要ではなかった。
血圧、心拍数、温度。
体重は、すべての患者について、登録時および2〜4日目に測定すべきである。登録時に(臨床的処置の後に)体重を評価しなければならない、破裂した動脈瘤患者の場合、実際の体重は2〜4日目に測定することを要した。
投与前4〜6時間および投与後12時間の12誘導ECG。登録と1日目が同日の場合、12誘導ECGは、登録時と1日目投与前ECGの双方として作用するように行ってよい。(最小で)3回のECGモニターが、投与の開始から投与後少なくとも2時間まで、麻酔専門医および/または手術後回復室スタッフによって行われるであろう。
10投与後24時間の12誘導ECG。
11投与前および試験薬物注入の終了後10分に、2つの試料を採取した。
12試験薬物注入の開始後5〜10分に、2つの連続試料をPK分析のために、採取した。
13血管内処理後の脳動脈瘤を有する患者の取り扱いにおける施設実施様式のとおりである。
14出産可能な女性についてのみ、尿または血清試験のどちらかを、1日目に行うことができる。より詳細については、8.5.2節を参照。
15投与前。
試験介入
コンピュータ生成コーディングシステムによって、患者を、TAT−NR2B9Cまたはプラシーボのいずれかの静脈内注入を受けるように、無作為に割り当てた。試験薬物は、100ccの生理食塩水への希釈により2.6mg/kgで投与され、10分にわたって静脈内注入される、20mg/ml TAT−NR2B9Cを含有する薬物バイアルとして提供した。注入は、処理割当を知らない個人によってなされ、処理する神経介入者が動脈瘤修復の終了したことを認め、かつ、麻酔が終わる前に、開始した。このタイミングの根拠は、ENACTの目的が、ヒトにおける神経保護が、処理前のパラダイムにおいてのみならず、脳卒中が発生した後に実現可能か否かを、試験することであったことである。
脳卒中の数と体積の評価
新たな虚血病変を、2〜4日目DWI MRI上の新たな高強度信号であると規定した(図1A〜図1C;黄色矢印;DWI病変という)。新たなDWI病変の体積は、各DWI病変(図1A〜図1C)の周りに見出される注目領域(ROI)の表面積に基づき、スライス厚さ(3mm)を乗じて決定した。FLAIR画像上の病変は、新たなDWI病変の場所の内部に入り、かつ、登録時MRI上に前から存在しなかった場合に、新たなものであると判断した(図1A〜図1C)。新たなFLAIR病変の体積は、DWI病変の体積と同様に決定した。すべての計算は、Osirixソフトウェア(v.3.9.2,32ビットバージョン)を用いて行った。
転帰測定
ENACTの主たる目的は、神経保護仮説を試験することであった。したがって、検出可能な新たな病変の数および体積に対するTAT−NR2B9Cの影響は、主要な関心事であった。しかし、ENACTパラダイムはこれまで実施されたことがなく、MRI評価は、同じ関心度の4つの測定(DWI病変数、DWI病変体積、FLAIR病変数、FLAIR病変体積)を提供した。1次有効性成果基準として、手術後24〜96時間のDWI MRIおよびFLAIR MRI造影で測定される塞栓性脳卒中の体積を減少させる、TAT−NR2B9Cの単回静脈内投与の能力を選択した。主たる関心事の他の目的は、現在の患者集団におけるTAT−NR2B9Cの安全性および認容性を決定することであった。2次成果には、TAT−NR2B9Cの、塞栓性脳卒中の数を減少させることにおける有効性、微小脳卒中(<10cc)を有する患者における有効性、30日目フォローアップで手術誘発性認識機能障害を減少させることにおける有用性、大きな脳卒中(>10cc)の頻度を減少させ、破裂したまたは未破裂の動脈瘤を有する患者のサブグループにおける(新たな脳卒中の、神経学的および神経認知の)転帰を改善することにおける有用性、を含めた。
統計分析
変更包括解析(mITT)原理;ITT;および、パープロトコル(per protocol)集団に従ってデータを分析した。mITT原理下では、評価可能な試料には、無作為化されあらゆる量の試験薬物を受けるすべての対象者が含まれる。生存していることが知られている患者の中で臨床結果のデータが欠けている場合は、可能な最悪のスコアを割り当てた。P値は、調整することなく表し、明記した場合には、転帰判断に影響する変数について調整した。
結果
試験患者
すべての試験患者の処分を図2に示す。2008年9月〜2011年3月に、カナダの11ヶ所および米国の3ヶ所からの212人の患者を、試験の包含/除外基準(表4)に従って、スクリーニングした。15人は、基準に合致せず、無作為化しなかった。12例の無作為化失敗があり(患者は無作為化されたが、試験薬物を受けなかった):5例は、血管内動脈瘤修復ができなかったため、3例は、手術前MRI(手術と同日に計画)を得ることができなかったため、2例は、手術前ECGがCTc間隔>45ms(除外基準)を示したため、1例は、手術中かつ薬物注入の前に致命的な動脈瘤破裂があったため、1例は、麻酔専門医が重篤な慢性閉塞性肺疾患を有する患者に試験薬物を投与することを拒んだため、である。185人のすべての患者は、無作為化されて試験薬物を受け(mITT集団)、92人の患者が、無作為にTAT−NR2B9Cを受けるよう割り当てられ、93人の患者が、プラシーボを受けるように割り当てられた(図2)。TAT−NR2B9C群において、1人の患者は、2〜4日目MRIスキャンの前に死亡し、2人は、30日目フォローアップに参加するのを拒絶した。プラシーボ群において、2人の対象者が、2〜4日目MRIスキャンの後に死亡し、第3の対象者は、30日目フォローアップに参加するのを拒絶した(図2)。
2群の基準値人口統計および臨床特性は、同様であった(表7)。血管内手術は、平均で、約2時間続いた(表7)。動脈瘤修復の約半分は、脱離可能な白金コイルのみを用いて行うことができ、残余においては、バルーンもしくはステント支援コイリング、もしくはフローダイバーティングステント用いる修復を含む追加の補助的技術または装置を使用した。破裂したまたは未破裂の動脈瘤を有する患者のサブグループにおけるTAT−NR2B9C群とプラシーボ群とで、プラシーボで処理した破裂動脈瘤を有する患者において高血圧がより高く発生したことを除き、基準値および臨床特性に差はなかった(表7)。
MRI転帰
185人の無作為化した対象者のうち、184人が手術後(2〜4日目)MRIスキャンを完了した。血管内手術の後TAT−NR2B9Cで処理した患者は、DWI MRIで検出される新たな虚血性病変の数において、43%減少を示した(表8;p=0.005)。このことは、また、FLAIR MRIスキャンにも反映され、このスキャンにおいて、TAT−NR2B9Cでの処理は、新たな虚血性病変の数を39%減少させた(表8;p=0.026)。FLAIR MRIおよびDWI MRIで測定した脳卒中体積の中央値も、TAT−NR2B9Cで処理した患者において減少した(表8;FLAIRおよびDWI MRI体積[Stataにおいてランク順序ロジスティック回帰を使用]の双方についてp<0.001)。ただし、体積データの分布が歪んで広く分散しているため(表8)、平均梗塞体積は、大きな脳卒中(>10ccと規定)を示した患者によって、有意に歪められた。特に、TAT−NR2B9C群に割り当てられた2人の患者は、動脈瘤修復手術の間に、大きな脳卒中(10.7ccおよび49.2cc)を引き起こした合併症を患った。このことが、平均脳卒中体積において、処理群間の有意でない全体差をもたらした。
ENACTにおける無作為化された患者のうち、37人が、破裂した動脈瘤によるSAHを示した。このサブグループは、SAHが新たな虚血性病変を患う尤度に影響するかも知れないという可能性があるので、グループ分析のために予め選択した。さらに、そのような患者は、未破裂動脈瘤に選択的な手術を受ける患者よりも、SAHによって、より重篤な神経学的または神経認識上の損傷を患うかも知れない。この患者サブグループにおいて、TAT−NR2B9Cでの処理は、DWI MRIまたはFLAIR MRIのいずれかによって検出される新たな虚血性病変の数を、64%(DWIおよびFLAIRについて、それぞれ、p=0.027およびp=0.046;表8)減少させた。さらに、TAT−NR2B9Cで処理した患者は、DWI MRIで規定される新たな梗塞体積において、80%の減少(p=0.015)を示し、FLAIR MRIで規定される新たな梗塞体積において、87%の減少(p=0.023)を示した。未破裂の動脈瘤を有する患者のサブグループ(n=147)において、TAT−NR2B9Cでの処理のMRI帰結に対する効果は、全体の患者コホートと同じ方向に向かう傾向であった(表8)。
大きい脳卒中のない患者(184人の患者のうち182人)に、追加のサブグループ分析を行った。この分析の根拠は、ENACTパラダイムが、新たな虚血性病変が常に小さい非ヒト霊長類実験においてモデル化した脳卒中と同様に、小さい塞栓性脳卒中に対する処理の効果を調べるために設計されたものである、ということである。しかし、そのようなパラダイムにおいて、梗塞体積の算術平均は、観察された体積中央値をはるかに超える梗塞による歪みを受けた。体積が10cc未満の脳卒中を有する患者において、TAT−NR2B9Cでの処理は、DWI MRIおよびFLAIR MRIによって検出される新たな虚血性病変の数および体積を減少させ(表8)、これは、小さい手術誘発性脳卒中におけるTAT−NR2B9Cの神経保護作用に一致している。したがって、本明細書に記載のMRI法は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、およびSAHにおける他の神経保護作用薬の効果のスクリーニングにも有用であり得る。
ENACTにおける副次的目的は、TAT−NR2B9C処理が大きい(>10cc)脳卒中の頻度を減少させるか否かを判断することであった。しかし、大きい脳卒中の2つの症例は、統計分析を正当化するには不十分であった。
神経学的転帰
ENACTに登録された患者は、選択的動脈瘤修復を受けたか、WFNSスコアI〜III(グラスゴー・コーマ・スコア13〜15)のSAHを経験したかの、どちらかである。したがって、彼らは、血管内手術の時点で、低レベルの神経学的障害を示した
(NIHSSおよびmRSの中央値が0;表7)。手術の30日後に、TAT−NR2B9Cで処理された全患者の93.5%、および、プラシーボで処理された患者の98.2%が、好ましいNIHSSスコアを有した(NIHSS 0〜1,p=0.434;表9)。mRSスコアは、TAT−NR2B9C群およびプラシーボ群の各々の93.5%において、好ましかった(0〜2)(表9)。ただし、破裂した動脈瘤を有する登録対象者において、TAT−NR2B9Cで処理した対象者の100%が、手術の30日後に好ましいNIHSSを有したが、これは、プラシーボで処理した患者では68.4%であったことと好対照である(p=0.020;表4)。TAT−NR2B9Cで処理したSAH患者は、また、プラシーボで処理した患者と比べて、より好ましいmRSスコアを有する傾向にあった(TAT−NR2B9Cおよびプラシーボにおいて、それぞれ、94.4%対73.7%;p=0.180;表9)。手術合併症により大きい脳卒中(>10cc)を被った患者は、TAT−NR2B9Cに含めた。30日目に、1人は、NIHSSが2、mRSが2であり、他の患者は、NIHSSが2、mRSが1であった。
神経認識転帰
神経認識試験バッテリーからの転帰を、補助的表7に詳述する。TAT−NR2B9C処理した患者は、TAT−NR2B9Cでの処理後、神経精神医学的な質問一覧における有意な改善を含む、神経認識利益を示した。驚いたことに、破裂動脈瘤群において、患者の数は統計分析には少なすぎるが、TAT−NR2B9Cで処理した患者について、認識試験および神経精神医学的試験における改善の有意な傾向があった。
安全性
合計で3人の患者が死亡した。1人は、未破裂動脈瘤を有して登録され、TAT−NR2B9Cを受けたが、鼠径部穿孔によって誘導される後腹膜血腫に由来する出血性ショックにより3日目に死亡した。2人はプラシーボを受けた。1人は、先に未破裂であった動脈瘤の手術中破裂に続く神経学的合併症で、13日目に死亡した。他の1人は、破裂動脈瘤を有して登録され、SAHの神経学的合併症により、12日目に死亡した。
有害事象(AE)の一覧を、深刻なAEおよび重篤なAEを含めて、表10に示す。全体として、AEは処理群間でよく均衡している。プラシーボ群において、合計で388のAEがあり、TAT−NR2B9C群において、336のAEがあった。ただし、2つのAEのみが、薬物におそらく関連していると考えられ、両方とも、数分以内に消失した一過性の低血圧から成る軽度のものであった。重篤なAE(死に至るAE、生命を脅かし、新たな入院を必要とし、もしくは現在の入院を長期化させ、持続するもしくは重大な障害または無能力をもたらすAE)のうち、24は、プラシーボを受けた14人の患者に生じ、11は、TAT−NR2B9Cを受けた9人の患者に生じた(表10)。TAT−NR2B9Cに関連するものはなかった。
もう1つの驚くべき知見は、TAT−NR2B9Cを受けた患者は、手術に関連すると報告されている疼痛の発生が有意に少ないことであった。動脈瘤修復手術に関連する疼痛を報告している患者の数は多くはないが、効果は、P値が<0.02未満になるほど、大きい。したがって、TAT−NR2B9Cは、ヒトにおける手術中または手術後の疼痛を軽減することができ、また、動脈瘤修復手術なしの、または、副作用として疼痛を伴う他の手術における、疼痛を軽減しそうである。PSD-95およびNMDAR2サブユニットは、動物においても高度に保存されているので、PSD-95阻害剤は、動物においても、疼痛について有効でありそうである。
考察
手術誘発脳卒中におけるTAT−NR2B9Cのこの試験は、破裂したまたは未破裂の頭蓋内動脈瘤を有する患者において、塞栓性脳卒中の数および中央値体積を減少させるTAT−NR2B9Cの効果を示した。あらかじめ特定したサブグループ分析において、最も恩恵を受けた患者は、破裂した動脈瘤によるSAHを有して登録された患者であり、TAT−NR2B9Cでの処理は、脳卒中の数を64%、体積を80%減少させた。さらに、このサブグループの患者は、NIHSSによる神経学的転帰の改善を示し、mRSによる神経学的転帰および認識転帰を改善する傾向があった。破裂した動脈瘤の対象者のこのサブグループの大きさが小さい(37患者)にもかかわらず、TAT−NR2B9C効果は、統計的に有意な結果をもたらすほど大きかった。このことは、TAT−NR2B9C処理の恩恵が、主として虚血の減少を通じて生じると考えられていたこと、および、SAHにおいて5日目よりも前に虚血はめったに見られないことに鑑みると、驚くべきである。
ENACTの全体的結果の有効性は、試験のいくつかの特徴によって支持される。ENACTは、患者、調査者および試験結果を分析する者が処理割当を知らない、二重盲検方式で実施された。脳卒中またはSAHからの転帰に影響するかも知れない人口統計学的特徴は、均衡がとれ、処理効果との相互作用を示さなかった。
ENACTにおけるほとんどの対象者(80%)は、未破裂の動脈瘤を有しており、神経学的障害および認識障害を含む、30日死亡率および血管内修復の死亡率は、<10%であった。対照的に、SAHを有する患者は、神経学的機能および/または認識機能の損傷を受ける危険性が高い。それにもかかわらず、ENACTが、主に小さい塞栓性脳卒中の危険性のある対象者における、および、比較的小さい患者集団における、主としてMRI基準を用いて神経保護仮説を検証するために設計されたものであるので、小さいSAH患者のサブグループにおける改善の傾向は、驚くべきである。SAHを有する患者において、登録時の神経学的状態は良かった(プラシーボ群およびTAT−NR2B9C群の双方において、mRSおよびNIHSSの中央値は0)。TAT−NR2B9Cで処理しなかったSAH患者における手術の30日後の悪化は、最初の評価後の彼らの臨床状態の悪化を示唆している。この悪化は、彼らが血管内コイリングの神経学的合併症または認知合併症をより患い易いこと、または、SAHが、臨床上の有害事象のカスケードを開始させること、に起因するかも知れない。いずれにしても、SAHを有しTAT−NR2B9Cを受けた対象者は、SAHを有しTAT−NR2B9Cを受けなかった対象者よりも、良好な臨床転帰を有する。
SAHにおける脳虚血の考察
SAHを有する患者は、そのSAHの種々の異なる合併症を患う危険性にある。これらの合併症は、独立に、脳への障害を引き起こし、臨床転帰に影響するかも知れない。そのような合併症には、動脈瘤の破裂の結果としての頭蓋内圧(ICP)の突然の上昇によって被る元の脳障害に加えて、脳血管攣縮による脳水腫または脳虚血などの、より遅い合併症を含む。
SAHにおける脳虚血は、脳動脈攣縮の結果であり、症例の約30%の臨床経過に合併症をもたらす。SAHにおける、臨床関連血管攣縮の発生は、SAHの5〜12日後に最高である。ただし、この合併症は、SAH後の最初の3日間は、非常にまれである。SAH後の患者の最終的な臨床転帰は、年齢および同時罹患率などの人口統計学的要因、SAHの重症度、および、脳水腫および血管攣縮などのSAHの種々の合併症を含む、いくつかの因子に依存するようである。多くの系統の証拠が、血管攣縮による脳虚血はSAH由来の有害な臨床転帰に寄与する唯一のものではない、ことを示している(MacDonald,2007;Kaptain et al.,2000)。
SAHの発症から72時間以内にSAH対象者にTAT−NR2B9Cを使用する場合、SAH後の最初の3日間にはSAHにおける脳虚血が極めてまれであることを考えれば、SAHを有する患者におけるENACT試験で見られるTAT−NR2B9Cの有益な効果は、TAT−NR2B9CがSAHにおける脳虚血損傷を防止し得る時間枠内に投与されるのではないので、抗虚血作用によるものではなさそうである。最高血漿濃度(Cmax)は、用量投与の終わりから5分以内に生じ、30〜45分には血漿からほとんど消失する。TAT−NR2B9Cの半減期は約5分と思われる。したがって、TAT−NR2B9Cは、血管攣縮の発生がより普通になる時である5日には、患者の中枢神経系に残存していないようである。さらに、TAT−NR2B9Cは、脳血流量を変化させないことが示されており(Bratane et al.,Stroke.2011 Nov;42(11):3265−70)、したがって、血管攣縮を多少でも防止するとは期待されない。
したがって、TAT−NR2B9Cが、脳虚血に作用することによって、SAH患者における神経学的転帰を改善することは、ありそうにない。なぜならば、1)TAT−NR2B9Cは血管作動性ではなく、2)TAT−NR2B9Cは、脳虚血がSAHの合併症となる時間枠内には、投与されないからである。むしろ、TAT−NR2B9Cは、SAH後、重大な脳虚血が生じる前に生じる1次脳損傷に対処することによって、神経学的転帰を改善するのかも知れない。その有効性は、SAH後に生じることが知られているICPの急速で一時的な上昇によって生じる1次脳損傷に至る、細胞シグナリング経路の途絶の結果としての、細胞損傷の低減によるかも知れない。したがって、TAT−NR2B9Cは、血管攣縮または脳虚血ではないSAH後の患者の臨床転帰に寄与するかも知れない、様々な因子の中の他の因子に向かっている。
本発明を、理解を明瞭にするために詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内で、一定の変更をしてもよいことは明らかであろう。本出願で引用するすべての文献、受託番号、および特許文献は、各々について個別にそうであると述べるのと全く同様に、それらの全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。異なる時点で、1つ以上の配列が受託番号に関連付けられている場合、その受託番号に関連する配列は、本出願の有効な出願日のものであることが意図されている。有効な出願日は、問題の受託番号を開示した最も早い優先出願の日である。文脈から他に明らかでない限り、本発明のあらゆる要素、実施形態、工程、機能または特徴は、他との組み合わせで実施することが可能である。

Claims (1)

  1. NMDAR2BサブユニットへのPSD−95の結合を阻害し、再かん流に起因して出血性脳卒中に変化する虚血性脳卒中からの出血性脳卒中および虚血性脳卒中の損傷作用の治療に使用される医薬組成物であって、
    前記医薬組成物は、薬剤またはそのレトロ型の薬剤を含み、
    前記薬剤は、Tat-NR2B9cである、医薬組成物。
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