JP2002168870A - フローサイトメーターによる低pH領域の微生物細胞内pH測定法 - Google Patents

フローサイトメーターによる低pH領域の微生物細胞内pH測定法

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井 健 夫 今
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蛍光法による細胞内pH測定法において、1
種類の波長の励起光で、低pH側にある細胞内pHを正
確に計測する。 【解決手段】 酵母または細菌などの微生物細胞を蛍光
物質フルオレセイン(5(6)-カルボキシフルオレセ
インなど)で染色しpH6以下の酸性条件下に保持した
後、微生物細胞に1種の励起光を照射して蛍光を発生さ
せ、2種の蛍光強度をフローサイトメーターにより測定
することを特徴とする、微生物細胞内pH測定法。上記
の微生物細胞内pH測定方法を用いることを特徴とす
る、微生物活性評価方法。 【効果】 個々の微生物細胞の活性あるいは微生物集団
の活性分布を迅速かつより詳細に測定することが可能で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フローサイトメー
ターによる微生物細胞内pH測定法および微生物評価方
法に関し、さらに具体的には低pH側の微生物細胞、特
に食品用の酵母、細菌の細胞内pHをフローサイトメー
ターによって計測することにより、個々の微生物細胞の
活性あるいは微生物集団の活性分布を迅速かつより詳細
に測定する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酵母の活性の測定法には、細胞内に蛍光
物質を取り込ませてpH6以下の低pH環境下に置き、
所定時間経過後に細胞内pHを指標とする方法(特公平
7-108235号)がある。酵母活性を測定する際の細胞内p
Hの測定をするために、酵母細胞にpH感受性蛍光物質
を取り込ませ、2種類の異なった波長の励起光を照射し
て蛍光を発生させ、1種類の波長の蛍光強度を各々測定
し、その値から細胞内pHを計測することができる。こ
の時、酵母細胞集団の平均値的な細胞内pH値を測定す
る場合には蛍光光度計を使用する。「細胞集団の平均値
的な細胞内pH」というのは、キュベット内に存在する
細胞の、個々の蛍光強度を合計した蛍光強度から計算さ
れる細胞内pH値という意味である。細胞集団の詳細な
解析をする為に細胞個々の情報を得ようとする場合に
は、顕微鏡画像処理法を応用することができる。しかし
ながら、この時、複雑な顕微鏡測光と画像処理法が必要
なため、実際に多量の検体を計測しようとすると膨大な
時間がかかり、実用的とは言えなかった。例えば、画像
処理で細胞1個1個を測定する場合には、熟練した技術者
でも10細胞の処理に数分〜60分を要し、複数の細胞集
団(ロット)の評価を充分な細胞数で行おうとすると多
大な労力がかかる。
【0003】そこで、細胞個々の情報を得る場合にはフ
ローサイトメトリーの技法を適用することが考えられ
る。この場合、上記原理に従い、2波長のレーザー光を
用いれば、低pH側のpHも計測が可能であるが(Mole
cular and Cellular Biology.1990. Vol.10. p3737-374
9)、複数本の高価なレーザーを利用するこの方法は汎用
的な技術とはいえない。1波長のレーザー光を用いた汎
用的な手法は、動物細胞の細胞内pHを測定する手法と
して、これまで報告されている(Method in Cell Biolo
gy (Academic Press) Vol.41 p135-148.1994年)。しか
しながら、これらは中性付近のpH(pH6.6-7.4)測定
に適した方法であって、カルボキシ-セミナフトロダフ
ルオル(カルボキシSNARF)などの一般的な蛍光染色を
用いると、低pH側で有効な蛍光を得ることができず、
したがって低pH側にした時の酵母細胞や乳酸菌などで
の細胞内pHの計測はできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、蛍光法によるpH測定法において、1種類
の波長の励起光で、低pH側にある細胞の細胞内pHを
正確に計測することである。本発明は、これにより、酵
母等の微生物細胞集団の個々の細胞内pH(即ち微生物
活性)を計測することを可能とし、産業上有用な酵母細
胞や乳酸菌等の微生物の生理状態を精緻かつ迅速に把握
することができるようにすることを目的とするものであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点
に鑑み、酵母細胞を低pH環境の溶液に一定時間放置後
の細胞質内pHを測定する際、蛍光色素5(6)-カルボキ
シフルオレセインジアセテート(5(6)-carboxylfluorec
ein diacetate)で染色し、励起波長として488nmの一種
類、蛍光測定波長として510nm〜640nmの中の2種類を使
用することにより、個々の細胞質内pHを計測すること
ができ、それによって個々の細胞の活性を迅速に測定
し、ひいては細胞集団の細胞活性を分布として迅速に測
定できることを見出し、この知見を基に本発明を完成さ
せるに至った。すなわち、本発明による微生物細胞内p
H測定法は、微生物細胞を蛍光物質フルオレセインで染
色しpH6以下の酸性条件下に保持した後、該細胞に1
種の励起光を照射して蛍光を発生させ、2種の蛍光強度
をフローサイトメーターにより測定することを特徴とす
るものである。また本発明は、上記の微生物細胞内pH
測定法を用いることを特徴とする微生物活性評価方法に
も関する。本発明評価方法の1つの態様において、微生
物細胞活性を、個々の細胞の活性または細胞集団の活性
分布として表わす。
【0006】
【発明の実施の形態】微生物細胞内pH測定法 本発明による微生物細胞内pH測定法は、基本的に微生
物細胞を特定の蛍光物質で染色し低pH条件下においた
後、該細胞について、1種の励起光に対する2種の蛍光
強度をフローサイトメーターにより測定するものであ
る。
【0007】本発明測定方法における測定対象の微生物
としては、具体的には酵母(ビール酵母、パン酵母、
清酒酵母、焼酎酵母等)、細菌(乳酸菌、ビフィズス菌
等)などの低pH側に変化する性質のある、食品等の分
野に有用な微生物が挙げられる。本発明において、微生
物細胞染色するための蛍光物質は、pH感受性のフルオ
レセインが使用されるが、細胞への取り込まれ易さ等を
考慮すれば、実際には、そのエステル誘導体(例えば低
級カルボン酸(酢酸など)とのエステルを使用するのが
好ましい。本発明に使用できる蛍光物質の上記誘導体に
関し、低級カルボン酸とのエステルとしては5(6)-
カルボキシフルオレセインジアセテート、フルオレセイ
ンジアセテートなどがあげられるが、5(6)-カルボ
キシフルオレセインジアセテートがより好ましい。
【0008】微生物細胞を蛍光物質としてのフルオレセ
イン(上記誘導体を包含する)で染色するには、もしく
はそれを微生物細胞内に取り込ませるには、通常酵母細
胞などの微生物細胞をその水性縣濁液中でたとえば0℃
〜常温で蛍光物質と所定持間、例えば数秒〜60分間程
度、好ましくは低温(0〜10℃)で5〜30分間接触
させればよい。
【0009】本発明においては、微生物細胞内に蛍光物
質を取り込ませた後、微生物細胞をpH6以下の酸性条
件下、好ましくは5以下の条件下に所定時間保持する。
pHの下限は2.0付近にあり、好ましくはpH2.6
〜3.5程度である。このような低pH条件を調整する
には、例えば微生物の水性懸濁液に無機酸(塩酸、硫酸
など)または有機酸(燐酸、酢酸、クエン酸など)を添
加すればよい。また所定のpHを維持するためには、通
常酸性緩衝剤(燐酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝
液、クエン酸リン酸緩衝液など)を用いてpH調整すれ
ばよい。微生物細胞を上記のような低pHの条件下に保
持する時間は、微生物細胞内pHが実質的に変化しなく
なるまでの時間が好ましく、通常1分〜400分程度ま
で、好ましくは5分〜100分、特に好ましくは30分
〜100分程度である。
【0010】また、低pHの条件下における温度は、通
常微生物細胞が活性を有する、もしくは代謝活動を行い
得る温度であり、例えば酵母(ビール酵母、パン酵母な
ど)では、好ましくは0℃から30℃程度であり、細菌
(例えば乳酸菌、ビフィズス菌など)では0℃から37
℃程度である。
【0011】微生物 染色方法と活性測定用サンプルの
調製の条件は、例えば、酵母の測定に関する特公平7-10
8235号に記載された方法に準拠することができ、後記実
施例(2)に 具体的に記載されている。
【0012】本発明測定法において、蛍光物質フルオレ
セインを取り込ませた微生物細胞に1種の励起光を照射
して蛍光を発生させ、2種の蛍光強度をフローサイトメ
ーターを用いて測定することにより微生物細胞内pHを
測定する。1種の励起光の波長としては、例えば、5
(6)-カルボキシフルオレセインの場合には410〜
510nmの波長が使用でき、通常488nmが使用さ
れる。また、測定される2種の蛍光波長としては、具体
的には、5(6)-カルボキシフルオレセインの場合に
は510nm〜640nmの波長範囲から選択され、例
えば525nmと550nm、525nmと575nm、5
25nm と590nm、525nmと610nm、5
25nmと635nmなどの組み合わせがあげられる
が、特に525nmと575mmもしくは525nmと
550nmの組み合わせが好ましい。
【0013】微生物細胞内に取り込まれた蛍光物質(フ
ルオレセイン)は、上記のように励起光を照射すると所
与の細胞内pHに応じた蛍光を発する。所定の1励起波
長によって発生する蛍光を所定の2波長において測定し
て得た2つの蛍光強度値と上記蛍光物質が置かれている
pH条件との関係を予め求めて検量線を作製しておき、
上記励起光により微生物細胞が発生する蛍光の強度を測
定することにより、細胞内pHを知ることができる。こ
の場合、例えば酸性緩衝液のpH系列と得られる2つの
蛍光測定値の比との関係を予め求めて検量線を作製すれ
ばよい。これに関連し、後記実施例および図1〜5に示
されるように、細胞内pHをフローサイトメーターで測
定する時に使用する波長の検討を行なったところ、5(6)
カルボキシフルオレセインのpH系列と、2つの蛍光波
長での測定値の各比には直線関係にあることがわかっ
た。検量線の作成は、例えば、5(6)カルボキシフルオレ
セインを酸性緩衝液のpH系列に溶解した液に無蛍光性
の多孔性微粒子を添加し、フローサイトメーター測定を
実施し2つの蛍光強度を計測して、その両測定値の比と
上記pH系列との関係を求めればよい(後記実施例(4)
および図6参照)。
【0014】本発明において、蛍光強度の測定はフロー
サイトメーターにより測定する。フローサイトメーター
は、流体中の粒子(細胞など)にレーザー光による励起
光を照射し、個々の粒子から発生する蛍光を測定するフ
ローサイトメトリーの原理を用いた測定器を意味するも
のてあり、本発明において、通常のフローサイトメータ
ーの他に、細胞分取装置をさらに備えたセルソーター等
も包含する。
【0015】前述のように、本発明による方法は、微生
物細胞個々の細胞内pHを測定する場合にも、また標品
となりうる微生物の一定集団のpH値分布(活性分布)
を測定するためにも利用することができる。
【0016】微生物細胞活性の評価 本発明による微生物の活性評価方法は、上記のような本
発明による微生物細胞内pH測定法を用いることを特徴
とするものである。本発明評価方法の1つの態様におい
て、得られた細胞内pH値が所定値より高いかまたは微
生物本来の細胞内pH値との差が小さい細胞を活性が高
いものと判定する。本発明評価方法の他の1つの態様に
おいて、微生物細胞活性を、個々の細胞の活性または細
胞集団の活性の分布状態として表わす。
【0017】具体的には、前記のようにして測定された
微生物細胞内pHは当該細胞の活性と相関があり、細胞
内pH値が大きい細胞ほど活性が大きいので、対象とす
る微生物に対して、予め細胞内pH値と細胞活性につい
ての情報を用意しておけば、細胞内pH値から当該細胞
の活性を把握することができる。たとえば酵母であれ
ば、測定した酵母細胞内pH値を当該酵母本来のもしく
は固有の細胞内pH値(活性の劣化のない本来の高い活
性を有する酵母を活性測定に用いた場合に得られる細胞
内pH値)と比較し、その差が小さいものほど活性が高
いと判定することができる。この値は、微生物の種類お
よび使用する低pH値により異なり得るが、通常は例え
ば酵母で4.8〜6.5程度であり、乳酸菌、ビフィズ
菌で6〜8程度である。また、得られた細胞内pH値を
所定値と比較して、例えば所定値を酵母で6.0、乳酸
菌、ビフィズス菌で6.5と設定してこの所定値と比較
してこれより高いものを活性が高いと判定することがで
きる。このような判定法を用いれば、例えば微生物(特
に食品用の酵母、細菌)を産業上の目的で発酵等に利用
する場合において、本発明による微生物活性評価を実施
し、例えば所定値より低いpH値が得られたとき、ある
いは測定されたpH値と微生物本来の細胞内pH値とと
の差がある一定値以上になった時はその細胞を使用しな
いことにより、常に活性の高い細胞のみを利用すること
ができる。
【0018】本発明は、微生物個々の細胞内pHを測定
するのに有用であり、従って、微生物試料について個々
の細胞の活性を測定できるばかりでなく、標品となりう
るその微生物集団(ロット)の細胞活性の詳細な分布を
知ることができる。
【0019】
【実施例】(1) 酵母染色方法と活性測定用サンプルの
調製 pH 感受性蛍光物質を用いた酵母染色方法は、特公平7-
108235号に記載する方法に従って行なった、ビール酵母
(Saccharomyces cerevisiae)を2ml分取し、MESバッ
ファ(pH6.2,50mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホ
ン酸、NaCl 110mM,KCl 5mM,MgCl2 1mM)で洗浄後、終濃
度1mM 5(6)カルボキシフルオレセインジアセテート
(Molecular Probe社製)を添加して0℃に30分放置し
た。その後、pH3のクエン酸/リン酸バッファ(50mM,NaC
l 110mM,KCl 5mM,MgCl2 1mM) で洗浄後、同バッファで
再懸濁し、0℃90分放置した。
【0020】(2) 従来の蛍光光度計での測定方法 特公平7-108235号に記載の条件に従い、2波長の励起光
441,488nmに対する517nmにおける蛍光強度を計測し、そ
の蛍光強度の比をとり、予め作成した検量線より細胞内
pHを求めた。
【0021】(3) 蛍光染色細胞に対する使用波長の検討 細胞内pHをフローサイトメーターで測定する時に使用
する波長の検討を行なった。5(6)カルボキシフルオレセ
インをpH4.5, 5.0, 5.5, 6.0, 6.5のクエン酸/リン酸
バッファーそれぞれに溶解し、1励起光(488nm)に対
する2蛍光強度を525nm,550nm,575nm,590nm,610nm,635n
mで測定し、測定波長525nmでの値と他波長での測定値の
比を求めた。そして各pHと525nm/550nm、525nm/575n
m、525nm /590nm、525nm/610nm、525nm/635nmをプロッ
トしたものを図1〜図5に示す。これらから、pHと各波
長での測定値の比には直線関係にあることがわかり、こ
れらの波長を用いて測定することが可能であることがわ
かった。
【0022】(4) 検量線の作成 無蛍光性の多孔性微粒子である、SuperdexTM200(Pharma
cia Biotech)を用いて、検量線を求めるためのキャリブ
レーションを行った。上記の試験と同じく、5(6)カルボ
キシフルオレセインをクエン酸−リン酸バッファー(pH4.5,
5.0,5.5, 6.0,6.5)に溶解した液を作り、これにSup
erdexTM200(Pharmacia Biotech)を添加し、蛍光染色剤
(5(6)カルボキシフルオレセイン)をSuperdexに浸透・
平衡化させるために、4℃で数日間ローテータ(10-30rp
m)上に置き、その後アルゴンレーザー(488nm)を用い
たフローサイトメーター測定を実施した。525nmと575nm
の蛍光強度を計測して、その比(525nm/575nm)を計算
し、pHに対する平均値をプロットして示したのが図6
である。
【0023】(5) 計測例 蛍光光度計での測定で同一の活性値(5.64)を示したビ
ール酵母2ロット(ロットA,ロットB)のフローサイ
トメーター測定を実施した。結果を図7(ロットA)、
図8(ロットB)に示す。ロットAとBとは、活性分布
が異なり、ロットAには活性の低い細胞がロットBより
多く含まれていることがわかった。すなわち、フローサ
イトメーターでは活性分布をより詳細にとらえることが
可能であり、精度の高い細胞集団(ロット)の評価が可
能である。この結果は、例えば醸造にどの細胞集団を用
いるかを決める際に利用でき、醸造工程管理上きわめて
有効である。
【0024】(6) フローサイトメーターによる活性評価
の応用 同一ロットのビール酵母を2Lの容器に入れ、攪拌機(F
ine社 商品コード386-63-04-04)で攪拌速度200rpm、8
00rpmの設定の2区で、4℃7日間、連続攪拌した。試験開
始時と攪拌7日後にサンプリングし、蛍光光度計とフロ
ーサイトメーターで細胞活性を測定した。第1表に蛍光
光度計測定の結果を示す。 第1表 200rpm 800rpm 試験開始時 5.93 5.93 攪拌後 5.46 5.45 結果から、従来法による2区(200rpm、800rpm)
での酵母活性の変化はほぼ同等とみなされる。フローサ
イトメーター測定の結果を図9に試験開始時、図10に80
0rpm区、図11に200rpm区として示した。蛍光光度計によ
れば2区の活性がほぼ同等にみなされるのに対し、200rp
m区と800rpm区との活性分布は明らかに異なっていた。
すなわち、フローサイトメーターでは、蛍光光度計によ
る結果より、精度の高い活性評価が可能であり、適正な
酵母ハンドリング条件(攪拌槽機種選定、攪拌条件・貯
蔵温度最適化等)の探索に有用であることが確認でき
た。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、1種の励起光の照射に
より低pH側にある微生物細胞(特に酵母、細菌)の細
胞内pHをフローサイトメーターを用いて迅速かつ正確
に測定することが可能である。フローサイトメトリ技術
において、1つのレーザーだけで計測できるので、利用
しやすい汎用技術である。従来の蛍光染色および画像処
理による方法で、個々の細胞活性を測定するには、10
細胞の測定に数分〜60分要したのに比べ、この蛍光染
色とフローサイトメーターによる測定では、1分間で10
000細胞の測定が可能であり、著しく効率的である。ま
た、蛍光光度計による細胞活性評価では、細胞集団の平
均としての活性値しか得られないのに比し、細胞個々の
活性値の分布として得られることから、より精度の高い
評価が可能である。従って、酵母等の微生物細胞集団の
個々の細胞内pH(即ち微生物活性)を計測することを
可能とし、産業上有用な酵母細胞や乳酸菌等の微生物の
生理状態を精緻かつ迅速に把握することができる。フル
オレセインを蛍光物質として用い、1種の励起光照射と
2種の蛍光測定を組み合わせることにより、低pH側の
微生物細胞内pHの迅速かつ正確な測定が可能となった
ことは、従来BCECFやSNARFなどの一般的な蛍光染色では
実現できなかったことからすれば、思いがけなかったこ
とと解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】蛍光物質5(6)-カルボキシフルオレセイン
溶液のpHと使用波長(525nm/550nm)での
測定値との関係を示す相関図。
【図2】蛍光物質5(6)-カルボキシフルオレセイン
溶液のpHと使用波長(525nm/575nm)での
測定値との関係を示す相関図。
【図3】蛍光物質5(6)-カルボキシフルオレセイン
溶液のpHと使用波長(525nm/590nm)での
測定値との関係を示す相関図。
【図4】蛍光物質5(6)-カルボキシフルオレセイン
溶液のpHと使用波長(525nm/610nm)での
測定値との関係を示す相関図。
【図5】蛍光物質5(6)-カルボキシフルオレセイン
溶液のpHと使用波長(525nm/635nm)での
測定値との関係を示す相関図。
【図6】無蛍光性の多孔性微粒子を5(6)-カルボキ
シフルオレセイン溶液で染色し、フローサイトメーター
で測定した時の、二つの蛍光強度の測定値の比とpHと
の関係示す相関図。
【図7】実施例(5)のロットAのフローサイトメータ
ーによる細胞内のpH値を表すグラフ。
【図8】実施例(5)のロットBのフローサイトメータ
ーによる細胞内のpH値を表すグラフ。
【図9】実施例(6)の試験開始時の細胞集団のフロー
サイトメーターによる細胞内pH値を表すグラフ。
【図10】実施例(6)の800rpm区攪拌後の細胞
集団のフローサイトメーターによる細胞内pH値を表す
グラフ。
【図11】実施例(6)の、200rpm区攪拌後の細
胞集団のフローサイトメーターによる細胞内のpH値を
表すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:865) C12R 1:865) (C12Q 1/02 (C12Q 1/02 C12R 1:01) C12R 1:01) Fターム(参考) 2G043 AA01 AA03 BA16 DA02 EA01 GA07 GB21 KA02 KA05 LA01 NA11 2G045 AA28 BB14 BB46 BB51 CB21 DB03 FA29 FB12 GC15 2G054 AA10 BB05 CA03 EA03 EB01 GA04 JA06 4B063 QA01 QA05 QA20 QQ06 QQ07 QQ16 QR41 QR50 QR51 QR66 QS36 QX02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微生物細胞を蛍光物質フルオレセインで染
    色しpH6以下の酸性条件下に保持した後、該細胞に1
    種の励起光を照射して蛍光を発生させ、2種の蛍光強度
    をフローサイトメーターにより測定することを特徴とす
    る、微生物細胞内pH測定法。
  2. 【請求項2】蛍光物質が5(6)-カルボキシフルオレ
    セインである、請求項1記載の微生物細胞内pH測定
    法。
  3. 【請求項3】微生物が食品用の酵母または細菌である、
    請求項1または2記載の微生物細胞内pH測定法。
  4. 【請求項4】1種の励起光の波長が410nm〜510
    nmから選択されるものであり、測定される2種の蛍光
    の波長が510nm〜640nmから選択されるもので
    ある、請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物細胞内
    pH測定法。
  5. 【請求項5】請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物
    細胞内pH測定法を用いることを特徴とする、微生物活
    性評価方法。
  6. 【請求項6】得られた細胞内pH値が所定値より高いか
    または微生物本来の細胞内pH値との差が小さい細胞を
    活性が高いものと判定する、請求項5記載の微生物活性
    評価方法。
  7. 【請求項7】微生物細胞活性を、個々の細胞の活性また
    は細胞集団の活性の分布として表わす、請求項5または
    6記載の微生物活性評価方法。
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