JP2002162134A - 冷凍サイクル装置 - Google Patents

冷凍サイクル装置

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JP2002162134A
JP2002162134A JP2000353366A JP2000353366A JP2002162134A JP 2002162134 A JP2002162134 A JP 2002162134A JP 2000353366 A JP2000353366 A JP 2000353366A JP 2000353366 A JP2000353366 A JP 2000353366A JP 2002162134 A JP2002162134 A JP 2002162134A
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liquid
liquid receiver
condenser
receiver
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Tetsushige Shinoda
哲滋 信田
Takahisa Suzuki
隆久 鈴木
Keisuke Nagai
圭介 永井
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Denso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 外部からの受液器受熱による熱害の防止と、
受液器から流出する液冷媒における泡消え性の確保との
両立を図って、良好な冷媒封入特性を得る。 【解決手段】 凝縮器2通過後の冷媒を受液器31内の
上側に流入させる上側冷媒流入手段をなす連通パイプ3
2と、凝縮器2通過後の冷媒を受液器31内の下側に流
入させる下側冷媒流入手段をなす連通穴33とを備え、
連通パイプ32上からの上側冷媒流入量Gr1を、30
kg/h〜110kg/hの範囲に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷媒凝縮器を通過
した冷媒の気液を分離して液冷媒を蓄える受液器を備え
た冷凍サイクル装置において、サイクル内への冷媒封入
特性の改善に関するもので、車両用空調装置に用いて好
適なものである。
【0002】
【従来の技術】本出願人は先に、特開2000−745
27号公報において、冷媒凝縮器を通過して凝縮した冷
媒を受液器に対して上下両側の流入路から流入させるよ
うにしたものを提案している。
【0003】これによると、受液器内部の上側空間の冷
媒が外部からの受熱によりガス化するという現象を受液
器内部の上側空間に流入する液冷媒の冷却効果により抑
制できる。そのため、受液器容積をその上側空間まで液
冷媒の蓄積のために有効に使用できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記従来技
術について具体的に検討評価したところ、受液器に対す
る上側からの冷媒流入量の設定如何により冷媒封入特性
が大きく変動してしまうことが分かった。
【0005】そこで、本発明は上記点に鑑み、受液器に
対する上側からの冷媒流入量を具体的に適切に設定する
ことにより、外部からの受液器受熱による熱害の防止
と、受液器から流出する液冷媒における泡消え性の確保
との両立を図って、良好な冷媒封入特性を得ることを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の発明では、凝縮器(2)通過後の
冷媒を受液器(31)内の上側に流入させる上側冷媒流
入手段(32)と、凝縮器(2)通過後の冷媒を受液器
(31)内の下側に流入させる下側冷媒流入手段(3
3、330)とを備え、上側冷媒流入手段(32)から
の上側冷媒流入量Gr1を、30kg/h〜110kg
/hの範囲に設定したことを特徴とする。
【0007】本発明者の実験検討によると、上側冷媒流
入手段(32)からの上側冷媒流入量Gr1を30kg
/h以上にすることにより、上側流入冷媒により受液器
(31)の上側空間の壁面に対する冷却効果を発揮でき
ることが分かった。このため、受液器(31)が外部か
ら受熱するような条件下(例えば、車両エンジンのアイ
ドル時における熱風巻き込み時等)においても、受液器
(31)内部での液冷媒のガス化を良好に抑制でき、受
液器(31)の容積を液冷媒の蓄積のために有効に使用
できることが分かった。
【0008】この結果、受液器(31)内にて本来蓄積
すべき冷媒が凝縮器(2)側にオーバーフローして発生
する「過充填サイクル状態」を抑制できる。そのため、
過充填サイクル状態に起因する圧縮機動力の増加(CO
P悪化)といった不具合を防止できる。
【0009】また、本発明者の実験検討によると、上側
冷媒流入手段(32)からの上側冷媒流入量Gr1を1
10kg/h以下に制限することにより、上側からの冷
媒流入による動圧で、受液器(31)内の冷媒液面が乱
されることを抑制でき、これにより、受液器(31)か
ら流出する液冷媒中にガス冷媒が混入することを抑制で
きることが分かった。その結果、液冷媒における泡消え
性を確保して、良好な冷媒封入特性を得ることができ
る。
【0010】請求項2に記載の発明では、請求項1にお
いて、上側冷媒流入手段(32)の通路面積をA1と
し、下側冷媒流入手段(33、330)の通路面積をA
2としたとき、両冷媒流入手段(32、33、330)
の通路面積比(A1/A2)を、1〜2の範囲とするこ
とを特徴とする。
【0011】本発明者の実験検討によると、上下の両冷
媒流入手段の通路面積比(A1/A2)を、1〜2の範
囲とすることにより、適用対象の冷凍サイクル装置の冷
媒流量が広範囲に変化しても、上側冷媒流入量Gr1を
上記の所定範囲(30〜110kg/h)に規制して、
良好な冷媒封入特性が得られることが分かった。
【0012】請求項3に記載の発明のように、請求項1
または2において、凝縮器(2)のチューブ(24)が
連通するヘッダタンク(21、22)を上下方向に延び
るように配置し、ヘッダタンク(21、22)に受液器
(31)を一体に構成し、上側冷媒流入手段(32)は
パイプ状部材により構成し、下側冷媒流入手段(33)
はヘッダタンク(21、22)と受液器(31)の壁面
を貫通する連通穴により構成してもよい。
【0013】請求項4に記載の発明のように、請求項1
または2において、凝縮器(2)のチューブ(24)が
連通するヘッダタンク(21、22)を上下方向に延び
るように配置し、ヘッダタンク(21、22)に対して
受液器(31)を別体にて構成し、上側冷媒流入手段
(32)および下側冷媒流入手段(330)をともにパ
イプ状部材により構成してもよい。
【0014】なお、上記各手段に付した括弧内の符号
は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を
示すものである。
【0015】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1は第1実施
形態を示しており、本発明を自動車用空調装置における
受液器一体型冷媒凝縮器に適用した例を示している。こ
の自動車用空調装置の冷凍サイクル装置は、冷媒圧縮機
1、受液器一体型冷媒凝縮器2、サイトグラス3、温度
作動式膨張弁4および冷媒蒸発器5を、金属製パイプま
たはゴム製ホースよりなる冷媒配管によって順次接続し
た閉回路より構成されている。
【0016】冷媒圧縮機1は、自動車のエンジンルーム
(図示せず)内に配置された走行用エンジンにベルトと
電磁クラッチ1aを介して連結されている。この冷媒圧
縮機1は、電磁クラッチ1aが接続状態となり、エンジ
ンの回転動力が伝達されると、冷媒蒸発器5下流側より
ガス冷媒を吸入、圧縮して、高温高圧の過熱ガス冷媒を
受液器一体型冷媒凝縮器2へ吐出する。
【0017】サイトグラス3は、受液器一体型冷媒凝縮
器2の出口側配管ジョイント27より流出してくる冷媒
の気液状態を作業者が目視観察して、冷凍サイクル内封
入冷媒量の過不足を点検するものである。温度作動式膨
張弁4は、高温高圧の液冷媒を低温低圧の気液二相の霧
状に減圧膨張させる減圧手段として働く。冷媒蒸発器5
は、車室内へ向かって送風される空気を冷却する冷却手
段として働く。
【0018】以下、受液器一体型冷媒凝縮器2について
詳述すると、凝縮器2は所定間隔を開けて配置された一
対のヘッダタンク、すなわち、第1、第2ヘッダタンク
21、22を有し、この第1、第2ヘッダタンク21、
22は上下方向に略円筒状に延びる形状になっている。
この第1、第2ヘッダタンク21、22の間に熱交換用
のコア部23を配置している。
【0019】本例の冷媒凝縮器2は、一般にマルチフロ
ータイプと称されているものであって、コア部23は第
1、第2ヘッダタンク21、22の間で、水平方向に冷
媒を流す偏平チューブ24を多数並列配置し、この多数
の偏平チューブ24の間にコルゲートフィン25を介在
して接合している。偏平チューブ24の一端部は第1ヘ
ッダタンク21内に連通し、他端部は第2ヘッダタンク
22内に連通している。
【0020】そして、第1ヘッダタンク21の上端側に
冷媒の入口側配管ジョイント(冷媒入口部)26を配置
し接合しており、また、下端側に冷媒の出口側配管ジョ
イント(冷媒出口部)27を配置し接合している。
【0021】さらに、本例においては、第1ヘッダタン
ク21内に第1、第2の2枚のセパレータ28a、28
bを配置するとともに、第2ヘッダタンク22内に第
3、第4の2枚のセパレータ29a、29bを配置して
いる。これにより、第1、第2ヘッダタンク21、22
の内部をそれぞれ上下方向に複数(3個づつ)の空間2
1a、21b、21c、22a、22b、22cに仕切
っている。従って、入口側配管ジョイント26からの冷
媒を第1、第2ヘッダタンク21、22とコア部23と
の間で矢印a〜gのように蛇行状に流通させる。
【0022】ここで、第1ヘッダタンク21内の上方側
の第1セパレータ28aに対して第2ヘッダタンク22
内の上方側の第3セパレータ29aの高さは低くしてあ
るが、第1ヘッダタンク21内の下方側の第2セパレー
タ28bと第2ヘッダタンク22内の下方側の第4セパ
レータ29bは同一高さに配置してある。
【0023】また、第2ヘッダタンク22には、冷媒の
気液を分離して液冷媒を蓄える受液器31が一体に構成
してある。この受液器31は具体的には略円筒形状であ
り、第2ヘッダタンク22より若干低い高さを有してお
り、そして、受液器31は第2ヘッダタンク22の外面
側方(コア部23と反対側の部位)に配置され、一体に
接合される。
【0024】なお、本例では、冷媒凝縮器2の各部およ
び受液器31はアルミニュウム材で成形され、一体ろう
付けにて組付けられている。
【0025】受液器31内部の空間と第2ヘッダタンク
22との間は以下の構成で連通している。連通パイプ3
2は、受液器31の上側空間への冷媒流入手段を構成す
るもので、第2ヘッダタンク22の外表面に沿って上下
方向に配置されている。この連通パイプ32の一端部
(下端部)は第2ヘッダタンク22の中間部空間22b
に連通しており、他端部は受液器31内部空間のうち、
天井部(最上部)付近に連通している。
【0026】また、連通穴33は受液器31の下側空間
への冷媒流入手段を構成するもので、上下方向において
中間部空間22bに対応する部位に位置して第2ヘッダ
タンク22と受液器31の壁面を貫通するように形成さ
れている。これにより、第2ヘッダタンク22の中間部
空間22bの部位を連通穴33にて受液器31の下側空
間に直接連通させることができる。
【0027】一方、略円筒状の受液器31の下端部は取
付台座34により閉塞されている。この取付台座34
は、受液器31の円筒状本体部に図示しないシール材を
介して気密に、かつ、脱着可能にねじ止め固定される。
この支持台座34の上部には異物除去用のフィルタ35
が一体に設けられている。このフィルタ35は円筒状の
網状体で構成されている。フィルタ35の上部に水分吸
着用の乾燥剤36が配置されている。この乾燥剤36は
冷媒の流通可能な適宜の袋状部材の内部に粒状乾燥剤を
収納したものである。
【0028】さらに、第2ヘッダタンク22と受液器3
1との間の壁面のうち、第4セパレータ29bよりも下
方の部位に連通穴37を設けて、受液器31内部の底部
近傍を第2ヘッダタンク22の下方部空間22cに連通
させている。
【0029】なお、受液器31内下側の液冷媒は乾燥剤
36と接触した後、矢印fのように円筒状の網状体から
なるフィルタ35の内部に必ず流入し、その後、フィル
タ35内から連通穴37を通過して下方部空間22cに
流入する。従って、連通穴37は受液器31内部の液冷
媒を下方部空間22c側へ流出させる冷媒流出手段を構
成する。
【0030】コア部23において、第2、第4セパレー
タ28b、29bより上方側の部位は、冷媒圧縮機1の
吐出ガス冷媒をクーリングファン(図示せず)により送
られてくる室外空気と熱交換させて冷媒を冷却、凝縮さ
せる凝縮部38を構成している。また、コア部23にお
いて、第2、第4セパレータ28b、29bより下方側
の部位は、受液器31内部において気液分離された液冷
媒を室外空気と熱交換させて過冷却する過冷却部39を
構成している。
【0031】従って、本例の冷媒凝縮器2は、冷媒流れ
の上流側から順次、凝縮部38、受液器31、および過
冷却部39を構成するとともに、これらを一体に設けた
構成となっている。なお、受液器31内における冷媒の
気液界面は、冷媒封入量の正常時には、第3セパレータ
29aと受液器31の上端面との中間高さに位置するよ
うになっている。
【0032】また、冷媒凝縮器2は周知のように、自動
車エンジンルーム内において最前部(エンジン冷却用ラ
ジエータの前方位置)に配置されて、エンジン冷却用ラ
ジエータと共通のクーリングファンにより冷却される。
【0033】次に、上記構成において作動を説明する。
いま、自動車用空調装置の運転が開始され、電磁クラッ
チ1aに通電されると、電磁クラッチ1aが接続状態と
なり、自動車エンジンの回転が圧縮機1に伝達され、圧
縮機1が冷媒を圧縮し、吐出する。
【0034】これにより、圧縮機1から吐出された過熱
ガス冷媒は、入口側配管ジョイント26から凝縮器2の
第1ヘッダタンク21の上部空間21a内に流入し、こ
こから矢印aのように凝縮部38の上側チューブ24を
通過する。その後、冷媒は第2ヘッダタンク22の上部
空間22aに流入して矢印bのようにUターンし、凝縮
部38の中間部チューブ24を通過する。その後、冷媒
は第1ヘッダタンク21の中間部空間21bに流入して
矢印cのようにUターンし、凝縮部38の下側チューブ
24を通過する。その後、冷媒は第2ヘッダタンク22
の中間部空間22bに流入する。
【0035】この間に、圧縮機1の吐出ガス冷媒はチュ
ーブ24およびフィン25を介して冷却空気と熱交換し
て冷却され、ガス冷媒を一部含む飽和液冷媒となる。こ
の飽和液冷媒は、上記の中間部空間22bから矢印d,
eのように連通パイプ32を通って受液器31内の上側
空間に流入する。
【0036】また、同時に、中間部空間22b内の冷媒
は矢印fのように連通穴33を通過して受液器31の下
側空間に流入する。そして、受液器31内において冷媒
の気液が分離され、液冷媒が蓄えられる。受液器31内
下側の液冷媒は矢印fのように連通穴37を通って第2
ヘッダタンク22の下部空間22cに流入し、更に、下
部空間22cから過冷却部39のチューブ24を通過す
る。
【0037】この過冷却部39において、液冷媒は再度
冷却されて過冷却状態となり、この過冷却液冷媒は第1
ヘッダタンク21の下部空間21cを通って出口側配管
ジョイント27から凝縮器2外へ流出する。
【0038】そして、過冷却液冷媒はサイトグラス3を
通って、温度作動式膨張弁4に流入する。この膨張弁4
において、過冷却液冷媒は減圧され、低温、低圧の気液
2相冷媒となる。次いで、この気液2相冷媒は蒸発器5
にて空調用空気と熱交換して蒸発し、その蒸発潜熱を空
調用空気から吸熱して、空調用空気を冷却する。蒸発器
5にて蒸発したガス冷媒は圧縮機1に吸入され、再度圧
縮される。
【0039】次に、本発明の要部である「連通パイプ3
2及び連通穴33による受液器31の上下両側への冷媒
流入経路」の形成に伴う冷媒封入特性の改善効果を実験
データに基づいて詳述する。
【0040】図2は縦軸にCOP比をとり、横軸に連通
パイプ32から流入する受液器31への上側冷媒流入量
Gr1をとったものである。ここで、縦軸のCOP比は
下記する所定の受熱条件を設定した場合において受液器
31への上側冷媒流入量Gr1を零としたときのCOP
(冷房能力/圧縮機動力)を基準値「1」とし、この基
準のCOPに対する各上側冷媒流入量設定時のCOPの
比率をとっている。
【0041】図2の実験対象の冷凍サイクル装置は軽自
動車用空調装置であり、主な実験条件は凝縮器2の入口
冷却空気温度:30℃、同入口冷却空気風速:1.5m
/s、蒸発器5の吸い込み空気温度27℃、同空気湿
度:50%RH、圧縮機1の回転数:1000rpm
(車両エンジンのアイドル時)である。そして、受液器
31の受熱温度は、受液器内冷媒の飽和温度+20℃と
している。なお、受液器31の内部には冷媒の気液界面
が形成されるから、受液器内冷媒は基本的には飽和状態
にある。従って、本例では、受液器内冷媒温度より20
℃高い雰囲気温度により受液器31に受熱させることに
なる。
【0042】実車搭載時における受液器受熱原因として
は、特開2000−74527号公報記載の第2ヘッダ
ータンク22の上下冷媒温度差によるものと、車両アイ
ドル時におけるエンジンルーム内の熱風回り込み(凝縮
器・ラジエータ通過後の熱風が車両アイドル時に凝縮器
前面側に回り込む現象)によるものとがあるが、受熱の
影響度としては後者の方が大きい。このことを考慮し
て、上記受熱条件は、実車搭載時の熱風回り込みによる
受熱の最も厳しい状態を想定して、冷媒飽和温度+20
℃という条件を設定している。
【0043】図2の実験データから理解されるように、
上側冷媒流入量Gr1を増加させるにつれてCOP比が
増大して、サイクル効率を改善できることがわかる。こ
れは以下の理由による。
【0044】上側冷媒流入量Gr1が少ないと、この上
側流入冷媒により受液器31の上側空間の壁面を十分冷
却できない。すると、受液器31の上側空間では外部か
らの受熱により内部冷媒(飽和液冷媒)が蒸発してガス
冷媒になってしまう。このことは、サイクル内への冷媒
封入時に、サイクル内への冷媒封入量を増加していく場
合に、受液器31内の冷媒液面が比較的低いレベルに抑
えられることを意味している。
【0045】その結果、サイクル内への冷媒封入時に、
受液器31内の冷媒液面の上昇が困難となって、それ以
上、受液器31内に液冷媒を蓄積できなくなると、行き
場のなくなった冷媒が凝縮器側へオーバフローし、凝縮
器の必要放熱能力を増大させる。これにより、サイクル
高圧の上昇を招き、COPを悪化させる。
【0046】これに対して、上側冷媒流入量Gr1を増
やすと、この上側流入冷媒により受液器31の上側空間
の壁面を十分冷却できるので、上述のような厳しい受熱
条件においても、受液器31の上側空間における液冷媒
の蒸発を抑制できる。その結果、サイクル内への冷媒封
入時に、冷媒封入量の増加に伴って受液器31内の冷媒
液面を上昇させることができ、受液器31内部空間を上
方側まで液冷媒の蓄積空間として有効利用できる。
【0047】従って、受液器31内部で本来蓄積すべき
冷媒が上記のように凝縮器側へオーバフローするという
現象(過充填サイクル状態)を抑制して、COPの悪化
を防止できる。
【0048】実車搭載時の熱風回り込みによる受熱(熱
害)が生じるのはアイドル時であり、そして、アイドル
時には圧縮機回転数の減少によりサイクル内循環冷媒流
量が減少するが、図2に示すように、上側冷媒流入量G
r1を線Bで示す30kg/h以上に増加するとCOP
比を1.14以上に増加できる。ここで、線Cは受液器
31の受熱がない場合のCOP比であり、約1.15で
あるから、Gr1を30kg/h以上に増加すると受熱
がない場合と比較して、COPを約1%の減少という微
減のレベルまでCOPを改善できることが分かった。
【0049】このことから、請求項1においては、上側
冷媒流入量Gr1を30kg/h以上にすることを限定
している。
【0050】ところで、上側冷媒流入量Gr1を増加し
すぎると、上側流入冷媒が連通パイプ32の出口端から
受液器31内部へ噴出するときの動圧が受液器31内の
冷媒液面に強く作用して冷媒液面を乱すので、受液器3
1内のガス冷媒が過冷却部39に混入する。この結果、
サイクル内への冷媒封入時に、サイクル内への冷媒封入
量を増加していくときに、過冷却部39出口の液冷媒か
らガス冷媒が消失する時点(以下泡消え点という)での
冷媒封入量が増加する。すなわち、冷媒封入時の泡消え
性が悪化する。
【0051】図3は上側冷媒流入量Gr1による冷媒封
入特性における泡消え性への影響度合いを示す実験デー
タであり、図3の縦軸は凝縮器2の過冷却部39の出口
冷媒のサブクール(過冷却度)であり、横軸はサイクル
内への冷媒封入量である。
【0052】図3の冷媒封入条件は、凝縮器2の入口冷
却空気温度:35℃、同入口冷却空気風速:2.5m/
s、蒸発器5の吸い込み空気温度30℃、同空気湿度:
50%RH、圧縮機1の回転数:1500rpmであ
る。
【0053】図中、〜はそれぞれ上側冷媒流入量G
r1が異なる場合の冷媒封入特性を示し、はGr1=
0kg/hの場合であり、はGr1=110kg/h
の場合であり、はGr1=120kg/hの場合であ
り、はGr1=150kg/hの場合である。
【0054】Gr1=0kg/hの場合は、上側流入
冷媒の動圧による冷媒液面の乱れが発生しないので、当
然ながら泡消え性が最も良好となり、泡消え点での冷媒
封入量が最小となる。そのため、冷媒サブクール値を略
一定値(略9℃)に維持できるサブクール安定域Z1
を、冷媒封入量=略700g〜950gの範囲にわたっ
て設定できる。そして、Gr1=110kg/hまで増
加しても(の場合)、サブクール安定域を冷媒封入量
に対して上記Z1と略同等の範囲に設定できることが分
かった。
【0055】これに対して、Gr1=120kg/hの
場合およびGr1=150kg/hの場合において
は、泡消え性の悪化が顕著となり、泡消え点での冷媒封
入量が増加するので、サブクール安定域に到達するとき
の冷媒封入量も増加することとなる。その結果、上記
、の場合にはサブクール安定域がZ2の範囲(=冷
媒封入量=略800g〜950gの範囲)に狭まってし
まう。
【0056】ところで、サイクル内への実際の冷媒封入
作業に際しては、封入量にある程度のバラツキが生じる
ことは不可避である。従って、サブクール安定域が狭く
なると、冷媒封入量のバラツキによりサブクール値が安
定域の略一定値(略9℃)より小さくなって、冷房能力
を減少させたり、逆に、サブクール値が安定域の略一定
値(略9℃)より大きくなって、サイクル高圧の上昇に
よる圧縮機動力の増加を招くという不具合を生じやす
い。
【0057】これに対し、上側冷媒流入量Gr1を11
0kg/h以下に制限することにより、上側流入冷媒の
動圧による冷媒液面の乱れを抑制して泡消え性を良好に
維持できる。
【0058】すなわち、上側冷媒流入量Gr1を30k
g/h〜110kg/hの範囲に設定することにより、
外部からの受液器31の受熱(熱害)によるCOPの悪
化の抑制と、上側流入冷媒の動圧による泡消え性の悪化
の抑制とを両立できる。
【0059】ところで、車両空調用冷凍サイクル装置に
おいては、車格により要求冷房能力が異なり、それに伴
って、サイクル内循環冷媒流量も異なる。また、外気温
等の冷房熱負荷条件、圧縮機回転数等によっても、サイ
クル内循環冷媒流量が異なる。そこで、冷媒流量の小さ
い軽自動車用の冷凍サイクル装置と、冷媒流量の大きい
大型自動車(エンジン排気量:4000ccクラス前
後)用の冷凍サイクル装置との両方について、上側冷媒
流入量Gr1の変化による冷媒封入特性を評価し、その
結果をまとめたところ図4のようになった。
【0060】図4の縦軸は上側冷媒流入量Gr1であ
り、横軸は下側冷媒流入手段をなす下側連通穴33の通
路面積に対応する内径である。図4の実験例では、上側
冷媒流入手段をなす連通パイプ32の内径はφ6mm一
定にしているので、下側連通穴33の内径を減少するに
つれて上側冷媒流入量Gr1が増加する関係にある。
【0061】図4において、実線(1)(2)は上記大
型自動車用の冷凍サイクル装置の特性であり、1点鎖線
(3)(4)は軽自動車用の冷凍サイクル装置の特性で
ある。そして、(1)(3)は高流量条件(外気温:3
0℃、圧縮機回転数:1500rpm)における特性で
あり、(2)(4)は低流量条件(外気温:20℃、圧
縮機回転数:800rpm、アイドル時)における特性
である。
【0062】上側冷媒流入量Gr1を上限値の110k
g/h以下として泡消え性を確保するためには、この上
限値(110kg/h)のラインと実線(1)との交点
から、下側連通穴33の内径を略4.5mm以上に設定
すればよいことが分かる。なお、軽自動車用の冷凍サイ
クル装置では、元々冷媒流量が少ないから、泡消え性の
観点から連通穴33の内径を規制する必要がない。
【0063】一方、上側冷媒流入量Gr1を下限値の3
0kg/h以上として受液器受熱による熱害防止を図る
ためには、この下限値(30kg/h)のラインと1点
鎖線(4)との交点から、下側連通穴33の内径を略
5.5mm以下に設定すればよいことが分かる。つま
り、軽自動車用の冷凍サイクル装置ではアイドル時にお
ける冷媒流量低下により上側冷媒流入量Gr1も減少す
ることになるが、下側連通穴33の内径を略5.5mm
以下に設定することにより、上側冷媒流入量Gr1を下
限値の30kg/h以上にすることができる。
【0064】以上の結果、上側連通パイプ32の内径=
φ6mm一定の場合に、下側連通穴33の内径を略4.
5mm〜略5.5mmの範囲に設定すれば、軽自動車か
ら大型自動車に至る車格変動およびサイクル運転条件の
変動にかかわらず、泡消え性の確保と、受液器受熱によ
る熱害防止との両立を実現できることが分かった。
【0065】更に、図5は上側冷媒流入量Gr1と下側
冷媒流入量Gr2とを合計した全冷媒流量をパラメータ
として、図4の評価結果を整理したものである。図5に
おいて、線(5)の右側領域は泡消え性の悪化領域であ
り、線(6)の左側領域は熱害発生領域である。
【0066】そして、大型自動車用の冷凍サイクル装置
においては、全冷媒流量が(7)の範囲で変化するとき
に、下側連通穴33の内径を略4.5mm〜略8.1m
mの範囲に設定することにより、泡消え性の確保と熱害
防止を両立できる。
【0067】また、軽自動車用の冷凍サイクル装置にお
いては、全冷媒流量が(8)の範囲で変化するときに、
下側連通穴33の内径を略5.5mm以下に設定するこ
とにより、泡消え性の確保と熱害防止を両立できる。
【0068】ここで、車格変動(冷媒流量変動)にかか
わらず、泡消え性の確保と熱害防止を両立できる下側連
通穴33の内径範囲(略4.5mm〜略5.5mm)
と、上側連通パイプ32の内径(φ6mm)との比を算
出すると、6/4.5〜6/5.5mm=1.33〜
1.09となる。更に、これを通路面積の比に変換した
のが図5の縦軸のβである。すなわち、β=上側連通パ
イプ32の通路面積A1/下側連通穴33の通路面積A
2である。そこで、下側連通穴33の上記内径範囲(略
4.5mm〜略5.5mm)を通路面積比β(=A1/
A2)により表すと、β=1.78〜1.19となる。
【0069】従って、上下の冷媒流入通路面積比βを概
略1〜2の範囲に設定すると、車格変動(冷媒流量変
動)にかかわらず、泡消え性の確保と熱害防止をほぼ両
立できることになる。
【0070】(第2実施形態)図6は第2実施形態であ
り、受液器31を凝縮器2と別体で構成している。この
ため、第2実施形態では第1実施形態における下側冷媒
流入手段をなす連通穴33の代わりに下側連通パイプ3
30を設け、この下側連通パイプ330により凝縮器2
の第2ヘッダータンク22aの中間部空間22bを受液
器31内の下側空間に連通させている。また、第1実施
形態における冷媒流出手段をなす連通穴37の代わりに
下側連通パイプ370を設けて、受液器31内の下側空
間を第2ヘッダータンク22aの下側空間22cに連通
させている。
【0071】一方、上側連通パイプ32の下端部は第2
実施形態では下側連通パイプ330の途中に連通させて
いる。従って、中間部空間22bから下側連通パイプ3
30に流入した冷媒を上側連通パイプ32に分岐して、
受液器31の上側に流入させている。
【0072】また、第2実施形態では受液器31の内部
構成も変更しており、受液器31の上下方向において上
側連通パイプ32の冷媒流入部と下側連通パイプ330
の冷媒流入部との間の部位に、乾燥剤36を配置してい
る。この乾燥剤36は粒状のものであり、この粒状の乾
燥剤36をフエルト製のフィルタ部材40を介在して上
下の保持板41、42により受液器31の内壁面に保持
するようになっている。保持板41、42は冷媒の通過
を許容する小穴を多数開けた多穴板あるいは網状部材に
て構成される。
【0073】第2実施形態においても、上側連通パイプ
(上側冷媒流入手段)32と、下側連通パイプ(下側冷
媒流入手段)330との通路面積比を第1実施形態と同
じ考え方で設定して、上側冷媒流入量を第1実施形態と
同じ範囲に設定することにより、良好な冷媒封入特性を
得ることができる。
【0074】(第3実施形態)図7は第3実施形態であ
り、上記第2実施形態の変形である。上記第2実施形態
との相違点は、第1に、上側連通パイプ32の下端部
(冷媒入口部)を第2ヘッダータンク22aの中間部空
間22bに直接連通している点である。
【0075】第2は、冷媒流出手段をなす下側連通パイ
プ370を受液器31の上面部から受液器31内に挿入
している点である。ここで、下側連通パイプ370は受
液器31内部において、乾燥剤36の中央部分を貫通し
て下方へ垂下し受液器31内底面付近から液冷媒を吸い
込むようになっている。
【0076】(第4実施形態)図8は第4実施形態であ
り、上記第3実施形態の変形である。冷媒流出手段をな
す下側連通パイプ370を受液器31の底面部下方から
受液器31内に開口させている。また、第4実施形態で
は乾燥剤36を第1実施形態と同様に適宜の袋状部材の
内部に収納している。
【0077】(他の実施形態)なお、本発明は上述の各
実施形態に限定されることなく種々変形可能なものであ
る。例えば、第1実施形態では、冷媒の出入口ジョイン
ト26、27を設けていない第2ヘッダタンク22に受
液器31を一体に構成しているが、冷媒の出入口ジョイ
ント26、27を設けている第1ヘッダタンク21に受
液器31を一体に構成してもよい。
【0078】また、凝縮器2のコア部23を凝縮部38
のみとし、過冷却部39をコア部23から切り離して独
立に構成するタイプの凝縮器2に本発明を適用すること
もできる。この場合は、第1ヘッダタンク21における
出口側配管ジョイント27を廃止して、その代わりに、
受液器31にその内部の液冷媒を流出させる出口側配管
ジョイント(冷媒出口部)を設置し、この出口側配管ジ
ョイントからの液冷媒を配管を介して過冷却部に流入さ
せるようにすればよい。
【0079】また、過冷却部39を持たない冷凍サイク
ル装置においても、本発明は同様に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の冷媒凝縮器を示す正面
図で、受液器部を断面図示している。
【図2】冷凍サイクル内への冷媒封入特性の実験結果を
示すグラフである。
【図3】冷凍サイクル内への冷媒封入特性の実験結果を
示すグラフである。
【図4】冷凍サイクル内への冷媒封入特性の実験結果を
示すグラフである。
【図5】冷凍サイクル内への冷媒封入特性の実験結果を
示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態の冷媒凝縮器を示す正面
図で、受液器部を断面図示している。
【図7】本発明の第3実施形態の受液器部を断面図示す
る要部断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態の受液器部を断面図示す
る要部断面図である。
【符号の説明】
21…第1ヘッダタンク、22…第2ヘッダタンク、2
2a、22b、22c…空間、23…コア部、24…チ
ューブ、32、330、370…連通パイプ、31…受
液器、32、37…連通穴、38…凝縮部、37…過冷
却部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永井 圭介 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 3L065 FA13 FA17

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧縮機(1)から吐出された過熱冷媒ガ
    スを冷却して凝縮させる凝縮器(2)と、 前記凝縮器(2)を通過した冷媒の気液を分離して液冷
    媒を溜める受液器(31)とを備える冷凍サイクル装置
    において、 前記凝縮器(2)通過後の冷媒を前記受液器(31)内
    の上側に流入させる上側冷媒流入手段(32)と、前記
    凝縮器(2)通過後の冷媒を前記受液器(31)内の下
    側に流入させる下側冷媒流入手段(33、330)とを
    備え、 前記上側冷媒流入手段(32)からの上側冷媒流入量G
    r1を、 30kg/h〜110kg/hの範囲に設定したことを
    特徴とする冷凍サイクル装置。
  2. 【請求項2】 前記上側冷媒流入手段(32)の通路面
    積をA1とし、前記下側冷媒流入手段(33、330)
    の通路面積をA2としたとき、 前記両冷媒流入手段(32、33、330)の通路面積
    比(A1/A2)を、1〜2の範囲とすることを特徴と
    する請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
  3. 【請求項3】 前記凝縮器(2)には、冷媒が流れるチ
    ューブ(24)が連通するヘッダタンク(21、22)
    が上下方向に延びるように配置され、 前記ヘッダタンク(21、22)に前記受液器(31)
    が一体に構成されており、 前記上側冷媒流入手段(32)はパイプ状部材により構
    成され、前記下側冷媒流入手段(33)は前記ヘッダタ
    ンク(21、22)と前記受液器(31)の壁面を貫通
    する連通穴により構成されていることを特徴とする請求
    項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
  4. 【請求項4】 前記凝縮器(2)には、冷媒が流れるチ
    ューブ(24)が連通するヘッダタンク(21、22)
    が上下方向に延びるように配置され、 前記ヘッダタンク(21、22)に対して前記受液器
    (31)が別体にて構成されており、 前記上側冷媒流入手段(32)および前記下側冷媒流入
    手段(330)がともにパイプ状部材により構成されて
    いることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍サ
    イクル装置。
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