JP4238434B2 - 冷凍サイクル装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝縮器を通過した冷媒の気液を分離して液冷媒を蓄える受液器を備える冷凍サイクル装置において、受液器への冷媒充填特性の改善に関するもので、車両用空調装置に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷凍サイクル装置において受液器への冷媒流入方式は次の2つに大別される。その1つは受液器上部に冷媒入口を配置して、この上部の冷媒入口から凝縮器通過後の冷媒の全量を受液器内の下方へ向けて流入させるものである。
【0003】
他の1つは、受液器下部に冷媒入口を配置して、この下部の冷媒入口から凝縮器通過後の冷媒の全量を受液器内下方側の液冷媒中に流入させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来技術について実際に試作検討して、冷凍サイクル内(具体的には、受液器内)への冷媒充填特性を評価してみると、冷凍サイクル効率化のために要望される理想通りの冷媒充填特性が得られにくいことが判明した。
【0005】
図5は、受液器出口からの液冷媒を過冷却する過冷却器を持つ冷凍サイクル(サブクールサイクル)において、過冷却器出口から流出した液冷媒のサブクール(過冷却度)を縦軸にとり、横軸にサイクル内への冷媒封入量をとったものである。
【0006】
車両用空調装置の冷凍サイクルの場合、将来、冷媒漏れが多少発生しても、冷房性能への影響がないように、冷媒封入量は、通常、過冷却器下流のサイトグラスでの泡消点以降、100g程度の冷媒増加分を追加するように設計しており、そして、この追加分の規定値(泡消点以降の100gの冷媒増加分)には、冷媒封入作業のバラツキを考慮してある程度の範囲の公差を設けている。
【0007】
従って、図5の特性Aのように、冷媒封入量が所定量増加しても、サブクールが略一定値に維持される領域Bを設定して、この増加分範囲では、サブクールの増加によるサイクル高圧の上昇を防止して、圧縮機動力の増加を抑制することが望まれている。
【0008】
ところで、前述した従来の受液器冷媒流入方式のうち、受液器上部の冷媒入口から凝縮器通過後の冷媒の全量を受液器内の下方へ向けて流入させる方式では、上部の冷媒入口から流入した冷媒の動圧の影響により受液器内の気液界面が乱されやすい。特に、高流量時には気液界面の乱れが大きくなって、受液器出口から過冷却器へ流入する冷媒中にガス冷媒が混入するという現象が生じる。
【0009】
その結果、上記Aの理想的な冷媒充填特性に対して、サブクールが安定するまでの冷媒封入量が破線▲1▼のように増加することになり、このことはサブクールの安定領域Bの範囲を狭めることになり、冷媒充填特性を悪化させる。
【0010】
これに対して、従来の受液器冷媒流入方式のうち、受液器下部の冷媒入口から凝縮器通過後の冷媒の全量を受液器内下方側の液冷媒中に流入させる方式では、冷媒入口からの冷媒が液冷媒中に流入するので、気液界面の乱れが発生しないという利点があるが、その反面、受液器下方側に冷媒入口と冷媒出口をともに配置しているので、受液器内の下方側において冷媒入口からの冷媒が直接冷媒出口へ向かうショートサーキットを形成する。そのため、受液器内の上方側は流入冷媒による冷却効果を期待できない。
【0011】
その結果、受液器が周囲の高温雰囲気から受熱(例えば、車両エンジンからの輻射熱、ラジエータ通過後の熱風の回り込み等による受熱)すると、受液器内の上方側が高温になるので、次のような不具合が生じる。すなわち、サイクル内への冷媒封入時に、泡消点以降、さらに冷媒封入量を増加していくと、受液器内での冷媒液面が次第に上昇していくが、その際、受液器内の上方側が周囲からの受熱により高温になっていると、受液器内上方側の液冷媒が沸騰してガス化するので、受液器内上方側へは液冷媒が上昇しずらいという現象が発生する。
【0012】
このように、受液器内において液冷媒の上昇が困難になると、冷媒封入時にそれ以降追加された冷媒は受液器内に蓄積できないので、行き場がなくなって、凝縮器のコア部内に液冷媒がオーバーフローし、過充填サイクル状態となるので、図5の破線▲2▼に示すように冷媒封入量が僅か増加するだけでサブクールが連続的に増加してしまい、サイクル高圧の上昇による圧縮機動力の増加を招くという問題が発生する。
【0013】
そこで、本発明は上記点に鑑み、受液器を有する冷凍サイクル装置において、受液器への冷媒流入に際し、受液器内の気液界面の乱れ防止効果と、受液器内上方側の冷却効果とを両立できるようにすることを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項記載の発明では、圧縮機(1)から吐出された過熱冷媒ガスを冷却して凝縮させる凝縮部(36)および液冷媒を過冷却する過冷却部(37)を有する凝縮器(2)と、凝縮部(36)を通過した冷媒の気液を分離して液冷媒を溜める受液器(31)とを備える冷凍サイクル装置を対象としており、
受液器(31)内の上側部に凝縮部(36)を通過した冷媒を流入させる第1の冷媒入口(315)と、
受液器(31)内の下側部に凝縮部(36)を通過した冷媒を流入させる第2の冷媒入口(316)と、
受液器(31)内に溜まる液冷媒を過冷却部(37)に向けて流出させる冷媒出口(313)とを備え、
凝縮器(2)は、所定間隔を開けて上下方向に延びるように配置された一対のヘッダタンク(21、22)と、この一対のヘッダタンク(21、22)の間に配置された熱交換用コア部(23)とを有しており、
熱交換用コア部(23)のうち上方側に凝縮部(36)が構成され、熱交換用コア部(23)のうち下方側に過冷却部(37)が構成され、
一対のヘッダタンク(21、22)のうち、一方のヘッダタンク(21)の上下方向に沿って受液器(31)が配置され、
一方のヘッダタンク(21)の内部空間は、凝縮部(36)に連通する上側空間(21a)と過冷却部(37)に連通する下側空間(21c)とに仕切られており、
第1の冷媒入口(315)は、一方のヘッダタンク(21)と受液器(31)との仕切壁(38)の上部に設けられ、上側空間(21a)の上部から受液器(31)内の上側部に冷媒を流入させるように構成され、
第2の冷媒入口(316)は、仕切壁(38)において第1の冷媒入口(315)よりも下方の位置に設けられ、上側空間(21a)の下部から受液器(31)内の下側部に冷媒を流入させるように構成され、
冷媒出口(313)は、仕切壁(38)において第2の冷媒入口(316)よりもさらに下方の位置に設けられ、受液器(31)内に溜まる液冷媒を下側空間(21c)に流入させるように構成されており、
受液器(31)は一方のヘッダタンク(21)と一体に構成され、受液器(31)は車両エンジンからの輻射熱で加熱される位置に配置されることを特徴としている。
【0031】
これにより、凝縮器(2)に凝縮部(36)と過冷却部(37)の両方を備えるものにおいて、凝縮器(2)のヘッダタンク(21)にさらに受液器(31)を一体化した構成を提供できるとともに、この受液器(31)を一体化した凝縮器(2)を備える車両用冷凍サイクル装置において、受液器内の気液界面の乱れ防止効果と受液器内上方側の冷却効果とを両立できる。
すなわち、第1、第2の冷媒入口(315、316)から受液器(31)内の上下両側に冷媒を流入させることができる。従って、第1の冷媒入口(315)からの冷媒、すなわち、凝縮器(2)を通過して冷却された冷媒により受液器(31)内の上側部空間を常に冷却できる。
従って、車両エンジンからの輻射熱により受液器(31)が受熱する環境下で使用される車両用冷凍サイクル装置においても、上記冷却効果により受液器内上方側の液冷媒が沸騰することを良好に抑制できる。そのため、受液器(31)内上方側へ液冷媒の液面を上昇させることができ、受液器(31)の容積全体を液冷媒の蓄積のために有効に使用できる。
しかも、第1、第2の冷媒入口(315、316)から上下両側への冷媒流入を行うことにより、受液器(31)内の気液界面の乱れも良好に防止できる。すなわち、第2の冷媒入口(316)からの冷媒は、タンク本体(311)内下側の液冷媒中に流入させることができるので、気液界面を乱すことがない。
また、冷媒流入を上下両側に2分割することにより、上側の第1冷媒入口(315)から噴出する冷媒の動圧を十分低減できるので、上側の第1冷媒入口(315)からの冷媒の動圧によって気液界面が乱されることも良好に抑制できる。
また、冷媒出口(313)を第2の冷媒入口(316)より下方に配置しているので、第2の冷媒入口(316)からのガス冷媒が冷媒出口(313)側に混入することを防止できる。
【0033】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態を示しており、本発明を自動車用空調装置における冷凍サイクル装置に適用した例を示している。この自動車用空調装置の冷凍サイクル装置は、圧縮機1、過冷却部一体型凝縮器2、受液器31、サイトグラス3、温度作動式膨張弁(減圧手段)4および蒸発器5を、金属配管またはゴムホースよりなる冷媒配管によって順次接続した閉回路より構成されている。
【0035】
圧縮機1は、自動車の走行用エンジン(図示せず)にベルトと電磁クラッチ(動力断続手段)1aを介して連結され、エンジンの回転動力により駆動される。これにより、圧縮機1は冷媒蒸発器5下流側より低圧ガス冷媒を吸入、圧縮して、高温高圧の過熱ガス冷媒を凝縮器2へ吐出する。
【0036】
凝縮器2は、所定間隔を開けて配置された一対のヘッダタンク、すなわち、第1、第2ヘッダタンク21、22を有し、この第1、第2ヘッダタンク21、22は上下方向に略円筒状に延びる形状になっている。この第1、第2ヘッダタンク21、22の間に熱交換用のコア部23を配置している。
【0037】
本例の凝縮器2は、一般にマルチフロータイプと称されているものであって、コア部23は第1、第2ヘッダタンク21、22の間で、水平方向に冷媒を流す偏平チューブ24を多数並列配置し、この多数の偏平チューブ24の間にコルゲートフィン25を介在して接合している。偏平チューブ24の一端部は第1ヘッダタンク21内に連通し、他端部は第2ヘッダタンク22内に連通している。
【0038】
そして、一方の(第1)ヘッダタンク21の上端側に、圧縮機1からの冷媒の入口側配管ジョイント(第1冷媒入口部)26を接合している。また、ヘッダタンク21の下端側には受液器31からの冷媒の入口側配管ジョイント(第2冷媒入口部)27を接合している。
【0039】
さらに、本例においては、第1ヘッダタンク21内に第1、第2の2枚のセパレータ28a、28bを配置するとともに、第2ヘッダタンク22内に第3セパレータ28cを配置している。これにより、第1ヘッダタンク21の内部を上下方向に複数(3個)の空間21a、21b、21cに仕切るとともに、第2ヘッダタンク22の内部を上下方向に複数(2個)の空間22a、22bに仕切っている。
【0040】
従って、入口側配管ジョイント26からの冷媒を、上部空間22aと上部偏平チューブ24を通過させた後、第2ヘッダタンク22の上部空間22aで矢印aのようにUターンさせて流すことができる。
【0041】
ここで、第1ヘッダタンク21内の下方側の第2セパレータ28bと第2ヘッダタンク22内の第3セパレータ28cは同一高さに配置してある。コア部23において、この第2、第3セパレータ28b、28cより上方側に凝縮部36を構成し、下方側に過冷却部37を構成している。
【0042】
上方側の凝縮部36は、冷媒圧縮機1の吐出ガス冷媒をクーリングファン(図示せず)により送られてくる室外空気と熱交換させて冷媒を冷却、凝縮させる。また、下方側の過冷却部37は、受液器31内部において気液分離された液冷媒を室外空気と熱交換させて過冷却する。
【0043】
第1ヘッダタンク21の中間部空間21bには、受液器31に向かう冷媒の出口側配管ジョイント(第1冷媒出口部)29を接合し、第2ヘッダタンク22の下側空間22bには、サイトグラス3に向かう冷媒の出口側配管ジョイント(第2冷媒出口部)30を接合している。なお、本例では、凝縮器2の各部はアルミニュウム材で成形され、一体ろう付けにて組付けられている。
【0044】
受液器31は本例では、凝縮器2と別体で構成され、凝縮器2の出口側配管ジョイント29と入口側配管ジョイント27に配管32、33を介して連結される。受液器31は冷媒の気液を分離して液冷媒を蓄えるタンク本体311を有している。このタンク本体311はアルミニュウム等の金属にて縦長円筒状の形状に成形されている。
【0045】
そして、タンク本体311の底面部には、凝縮部36で凝縮した冷媒が流入する入口側接続部312と、タンク本体311内の液冷媒を流出させる出口側接続部(冷媒出口)313が配置してある。入口側接続部312には入口パイプ314の下端部が連通するように固定してある。この入口パイプ314は、タンク本体311の内部空間を上下方向に延びるように配置され、その上端部はタンク本体311の天井部近傍まで延びて第1の冷媒入口315を形成している。
【0046】
また、入口パイプ314の下方部には第2の冷媒入口316を形成している。この第2の冷媒入口316は冷媒封入量の正常時における受液器内の気液界面より下方に位置するようになっている。
【0047】
そして、入口パイプ314の上下方向の中間部位には、ゼオライトのような吸水性に優れた水分吸着用乾燥剤317が配置されている。この乾燥剤317はその上下両側に配置された多孔状または網状の仕切り板318、319により保持されている。なお、図1では図示の簡略化のために、タンク本体311の全体を一体構造で図示しているが、入口パイプ314、乾燥剤317、仕切り板318、319等をタンク内部へ挿入するため、実際には、タンク本体311の底面部を他の部位から別体で成形している。
【0048】
次に、上記構成において作動を説明する。いま、自動車用空調装置の運転が開始され、電磁クラッチ1aに通電されると、電磁クラッチ1aが接続状態となり、自動車エンジンの回転が圧縮機1に伝達され、圧縮機1が冷媒を圧縮し、吐出する。
【0049】
これにより、圧縮機1から吐出された過熱ガス冷媒は、入口側配管ジョイント26から凝縮器2の第1ヘッダタンク21の上部空間21aに流入し、ここから凝縮部36の上側チューブ24を通過した後、第2ヘッダタンク22の上部空間22aに流入する。
【0050】
そして、冷媒はこの上部空間22aで矢印aのようにUターンして凝縮部36の下側チューブ24を通過した後、第1ヘッダタンク21の中間部空間21bに流入する。この間に、冷媒はチューブ24およびフィン25を介して冷却空気と熱交換して冷却され、ガス冷媒を一部含む飽和液冷媒となる。この飽和液冷媒は、次に、中間部空間21bから出口側配管ジョイント29、配管32を通過して受液器31の入口側接続部312に向かう。
【0051】
そして、入口側接続部312から冷媒は入口パイプ314に流入し、入口パイプ314の上端部に設けた第1の冷媒入口315と入口パイプ314の下方部に設けた第2の冷媒入口316の両方から冷媒がタンク本体部311内に流入する。
【0052】
タンク本体部311内において冷媒の気液が分離され、液冷媒が蓄えられる。受液器31内の液冷媒は底面部の出口側接続部(冷媒出口)313から流出して配管33、入口側配管ジョイント27を通り、更に、第1ヘッダタンク21の下部空間21cを経由して過冷却部37のチューブ24に流入する。
【0053】
そして、この過冷却部37において液冷媒は再度冷却されて過冷却状態となり、この過冷却液冷媒は第2ヘッダタンク22の下部空間22bを通って出口側配管ジョイント30から凝縮器2外へ流出する。
【0054】
次に、過冷却液冷媒はサイトグラス3を通って温度作動式膨張弁4に流入する。この膨張弁4において、過冷却液冷媒は減圧され、低温、低圧の気液2相冷媒となる。次いで、この気液2相冷媒は蒸発器5にて空調用空気と熱交換して蒸発し、その蒸発潜熱を空調用空気から吸熱して、空調用空気を冷却する。蒸発器5にて蒸発したガス冷媒は圧縮機1に吸入され、再度圧縮される。
【0055】
次に、本発明の要部である、受液器31への冷媒流入経路改善による冷媒充填特性の改善効果について詳述する。
【0056】
本実施形態によると、コア部23の凝縮部36で凝縮した冷媒が入口パイプ314を通って、この入口パイプ314の第1、第2冷媒入口315、316から受液器31のタンク本体311内の上下両側(冷媒液面に対する上下両側)に流入するから、次のごとき作用が得られる。
【0057】
まず、第1には第1冷媒入口315からの冷媒がタンク本体311の天井部の中心に向かって噴出し、天井部に衝突した後に、天井部の内面に沿って外周側へ拡散し、更に、タンク本体311の円筒面の全周に沿って冷媒が落下する。従って、凝縮部36を通過して冷却された冷媒によりタンク本体311の上側部空間を常時良好に冷却できる。
【0058】
従って、車両エンジンからの輻射熱、ラジエータ通過後の熱風の回り込み等により受液器31が受熱する環境下で使用されても、上記冷却効果により受液器内上方側の液冷媒が沸騰することを良好に抑制できる。そのため、受液器内上方側へ液冷媒の液面を上昇させることができ、受液器31の容積全体を液冷媒の蓄積のために有効に使用できる。
【0059】
その結果、本実施形態によると、図5の破線▲2▼の特性よりも冷媒封入量の増加分が十分大きくなってから、始めて過充填サイクル状態になるので、図5の破線▲2▼の特性のように冷媒封入量の少量増加の段階で早めに液冷媒が凝縮器2側へオーバーフローして過充填サイクル状態になることを防止できる。
【0060】
次に、第2の特徴は、受液器31内の気液界面の乱れを良好に防止できることである。すなわち、入口パイプ314の下側の第2冷媒入口316からの冷媒流入は、タンク本体311下側の液冷媒中に流入するから、気液界面を乱すことがない。
【0061】
更に、冷媒流入を上下両側に2分割することにより、上側の第1冷媒入口315から噴出する冷媒の動圧を十分低減できる。しかも、上側の第1冷媒入口315からの冷媒はタンク本体311の天井部に向かって噴出し、衝突した後に、乾燥剤317間の隙間を通って冷媒の気液界面に向かうから、上側の第1冷媒入口315からの冷媒の動圧によって気液界面が乱されることもない。
【0062】
これにより、受液器31出口側へガス冷媒が混入することを防止して、図5の破線▲1▼の特性よりも、冷媒封入量の増加が少量である段階で早めにサブクールが安定させることができる。
【0063】
以上の第1、第2の特徴の総合により、図5において、サブクールの安定領域Bを従来技術よりも拡大でき、冷媒充填特性を実線で示す理想特性Aに近づけることができる。
【0064】
これにより、所定レベルのサブクールを安定的に設定でき、冷房性能の確保と同時に、過充填サイクル状態による高圧上昇(圧縮機動力の増大)を防止できる。
【0065】
(第2実施形態)
図2は第2実施形態であり、第1実施形態ではタンク本体311の底面部に入口側接続部312と出口側接続部(冷媒出口)313の両方を配置しているが、第2実施形態では入口側接続部312をタンク本体311の上面部に配置している。
【0066】
これに伴って、入口パイプ314の上端部を上面部の入口側接続部312に連通するように固定してある。そして、この入口パイプ314の上方側(乾燥剤317の上方側)に第1の冷媒入口315を形成している。入口パイプ314の下端部は乾燥剤317部分を貫通してタンク本体311の底面部近傍まで垂下して、入口パイプ314の下端部に第2の冷媒入口316を形成している。
【0067】
このように受液器31を構成しても、第1、第2の冷媒入口315、316からタンク本体311内の上下両側に冷媒を流入させることにより、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0068】
(第3実施形態)
図3は第3実施形態であり、上記第2実施形態における受液器31の冷媒出口側の構成を変形している。すなわち、第3実施形態では入口側接続部312に加えて、出口側接続部313もタンク本体311の上面部に配置している。
【0069】
これに伴って、出口パイプ320を追加し、この出口パイプ320の上端部を上面部の出口側接続部313に連通するように固定してある。そして、この出口パイプ320の下端部を乾燥剤317部分を貫通して入口パイプ314の下端部よりも更に下方まで垂下させ、この出口パイプ320の下端部に液冷媒の吸入口321を形成している。
【0070】
このように受液器31を構成しても、第1、第2実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0071】
(第4実施形態)
図4は第4実施形態であり、上記第1〜第3実施形態ではいずれも受液器31を凝縮器2と別体で構成しているが、第4実施形態では受液器31を凝縮器2と一体で構成している。
【0072】
すなわち、第4実施形態では、第1ヘッダタンク21の上下方向に沿って受液器31を第1ヘッダタンク21と一体で構成している。ここで、第1ヘッダタンク21と受液器31の両者のタンク形状は具体的にはアルミニュウムの一体押し出し成形で形成することができる。
【0073】
第1ヘッダタンク21の内部は1枚のセパレータ28bにより上下2つの空間21a、21cに仕切っている。そして、第2ヘッダタンク22の上側空間22aに圧縮機1からの冷媒の入口側配管ジョイント26を接合して、コア部23の凝縮部36を通過した冷媒は第1ヘッダタンク21の上側空間21aに流入するようにしてある。
【0074】
受液器31と第1ヘッダタンク21との仕切壁38に上下方向に3つの連通穴39、40、41が開けてある。最上部の連通穴39は、第1ヘッダタンク21の上側空間21aの上部を受液器31内の上部に連通させるもので、第1〜第3実施形態の第1冷媒入口315に相当するものである。また、中間部の連通穴40は、第1ヘッダタンク21の上側空間21aの下部を受液器31内の下部の液冷媒中に連通させるもので、第1〜第3実施形態の第2冷媒入口316に相当するものである。
【0075】
最下部の連通穴41は、受液器31内の底部付近をヘッダタンク21の下側空間21cに連通させるもので、受液器31内の下側に溜まる液冷媒を直接、空間21cに流入させる。従って、最下部の連通穴41は第1〜第3実施形態の出口側接続部(冷媒出口)313に相当するものである。
【0076】
このように受液器31を凝縮器2のヘッダタンク部に一体に構成しても、上下の2つの連通穴39、40(第1、第2の冷媒入口315、316)から受液器31内の上下両側に冷媒を流入させることにより、第1〜第3実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0077】
なお、第4実施形態において、3つの連通穴39、40、41およびチューブ24の挿入孔42は、押出し成形後に穴開け加工をして開けられる。また、受液器31と第1ヘッダタンク21の上下両端面はキャップ部材43、44により閉塞される。
【0078】
また、第4実施形態による、第1ヘッダタンク21と受液器31の一体構造は押し出し成形品に限定されるものではなく、例えば、第1ヘッダタンク21と受液器31をそれぞれアルミニュウム等の金属板材で別々に成形した後に、第1ヘッダタンク21部分と受液器31部分をろう付け等により一体に接合するようにしてもよい。
【0079】
(他の実施形態)
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく種々変形可能なものであり、例えば、凝縮器2のコア部23を凝縮部36のみとし、過冷却部37をコア部23から切り離して独立に構成するタイプの冷凍サイクル装置に本発明を適用できることはもちろんである。
【0080】
この場合は、受液器31の出口側接続部(冷媒出口)313を配管33を介して過冷却部37の入口に接続すればよい。
【0081】
また、過冷却部37を持たない冷凍サイクル装置においても、本発明は同様に実施できる。この場合は、受液器31出口のサブクールを持たない、飽和液冷媒がサイトグラス3部を通過するようになるので、図5の冷媒充填特性図において、縦軸はサブクールの代わりにサイクル高圧で表すことになる。その場合、本発明によると、サイクル高圧の安定領域(図5の領域Bに相当)を拡大でき、同様の作用効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す構成図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示す構成図である。
【図5】冷凍サイクル内への冷媒充填特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…圧縮機、2…凝縮器、3…サイトグラス、4…膨張弁、5…蒸発器、
21…第1ヘッダタンク、21a、21b、21c…空間、
22…第2ヘッダタンク、22a、22b…空間、23…コア部、
24…チューブ、28a、28b、28c…第1〜第3セパレータ、
31…受液器、313…出口側接続部(冷媒出口)、
315、316…第1、第2冷媒入口、36…凝縮部、37…過冷却部。

Claims (1)

  1. 圧縮機(1)から吐出された過熱冷媒ガスを冷却して凝縮させる凝縮部(36)および液冷媒を過冷却する過冷却部(37)を有する凝縮器(2)と、
    前記凝縮部(36)を通過した冷媒の気液を分離して液冷媒を溜める受液器(31)と、
    この受液器(31)内の上側部に前記凝縮部(36)を通過した冷媒を流入させる第1の冷媒入口(315)と、
    前記受液器(31)内の下側部に前記凝縮部(36)を通過した冷媒を流入させる第2の冷媒入口(316)と、
    前記受液器(31)内に溜まる液冷媒を前記過冷却部(37)に向けて流出させる冷媒出口(313)とを備え、
    前記凝縮器(2)は、所定間隔を開けて上下方向に延びるように配置された一対のヘッダタンク(21、22)と、この一対のヘッダタンク(21、22)の間に配置された熱交換用コア部(23)とを有しており、
    前記熱交換用コア部(23)のうち上方側に前記凝縮部(36)が構成され、前記熱交換用コア部(23)のうち下方側に前記過冷却部(37)が構成され、
    前記一対のヘッダタンク(21、22)のうち、一方のヘッダタンク(21)の上下方向に沿って前記受液器(31)が配置され、
    前記一方のヘッダタンク(21)の内部空間は、前記凝縮部(36)に連通する上側空間(21a)と前記過冷却部(37)に連通する下側空間(21c)とに仕切られており、
    前記第1の冷媒入口(315)は、前記一方のヘッダタンク(21)と前記受液器(31)との仕切壁(38)の上部に設けられ、前記上側空間(21a)の上部から前記受液器(31)内の上側部に冷媒を流入させるように構成され、
    前記第2の冷媒入口(316)は、前記仕切壁(38)において前記第1の冷媒入口(315)よりも下方の位置に設けられ、前記上側空間(21a)の下部から前記受液器(31)内の下側部に冷媒を流入させるように構成され、
    前記冷媒出口(313)は、前記仕切壁(38)において前記第2の冷媒入口(316)よりもさらに下方の位置に設けられ、前記受液器(31)内に溜まる液冷媒を前記下側空間(21c)に流入させるように構成されており、
    前記受液器(31)は前記一方のヘッダタンク(21)と一体に構成され、前記受液器(31)は車両エンジンからの輻射熱で加熱される位置に配置されることを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。
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