JP2002156351A - コイルの傷検出方法および装置 - Google Patents

コイルの傷検出方法および装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コイルに発生した傷の大きさを定量的に判定
できるようにする。 【解決手段】 フッ素系不活性液体にイソプロピルアル
コールを7%混合した溶液19中に、ステータ21にコ
イル17が組み付けられたモータ(ステータアッセンブ
リ)23と電極となる正極導体棒25とをどぶ漬けす
る。コイル17と正極導体棒25との間に安定化電源2
7により電圧を印加し、電圧印加してから5秒経過後の
電流値を電流計31により計測する。この計測電流値に
応じてコイル17に発生している傷33の面積を判定回
路35により定量的に判定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、コイルに発生し
た傷を検出するコイルの傷検出方法および装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、コイル表面の絶縁層に発生した傷
を検出する方法として、図4に示すようなものがある。
これは、コイル1を、食塩水とフェノールフタレインと
を混合した導電性の溶液3にどぶ漬けし、同じく溶液3
にどぶ漬けした電極5とコイル1の端子1aとを、コイ
ル1側を負極として電源7を介して配線9により接続す
る。そして、この電源7によりコイル1と電極5との間
に電圧を印加する。
【0003】ここで、コイル1の絶縁層を破壊する傷1
1が発生していると、コイル1(傷11の発生部位)と
電極5との間に電流が流れ、このとき傷11から気泡1
3が発生したり、溶液3が赤色に変色することに基づい
て、傷11の発生を判定している。
【0004】気泡13の発生は、コイル1側を負極とし
ているため、下記の化学反応が発生することによる。
【0005】2H(水素イオン)+2e(負極の電
荷)=H2↑(水素の気泡) また、溶液3が赤色に変色するのは、酸塩基指示薬であ
るフェノールフタレインが水素イオンと反応することに
よる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来の技術では、単に気泡の発生や溶液の色の変化に
よってコイルの傷を検出しているので、傷の大きさを定
量的に判定することができず、改善が望まれている。
【0007】そこで、この発明は、コイルに発生した傷
の大きさを定量的に判定できるようにすることを目的と
している。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、絶縁被覆されたコイルと電極と
を導電性を備えた溶液中に浸し、前記溶液中のコイルと
電極との間に電圧を印加して前記コイルと電極との間に
流れる電流値を計測し、この計測した電流値に応じて前
記コイルの傷の大きさを判定するようにしている。
【0009】請求項2の発明は、請求項1の発明の方法
において、電流値計測は、電圧印加後所定時間経過した
後に行うようにしてある。
【0010】請求項3の発明は、請求項1または2の発
明の方法において、電流値計測は、電流値が最大となっ
た後に行うようにしてある。
【0011】請求項4の発明は、請求項3の発明の方法
において、電流値計測は、電流値が最大となる点から微
小時間経過した後に行うようにしてある。
【0012】請求項5の発明は、請求項1ないし4のい
ずれかの発明の方法において、電流値計測は、電圧印加
後5秒から50秒経過するまでの間に行うようにしてあ
る。
【0013】請求項6の発明は、請求項1ないし5のい
ずれかの発明の方法において、溶液は、フッ素系不活性
液体にアルコール系溶液を混合したものである。
【0014】請求項7の発明は、請求項6の発明の方法
において、アルコール系溶液は、イソプロピルアルコー
ルである。
【0015】請求項8の発明は、導電性を備えた溶液
と、この溶液中に配置され、前記溶液中に浸した絶縁被
覆されたコイルとの間に電圧が印加される電極と、前記
コイルと電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記コイルと電極との間に流れる電流を検出する電流検
出手段と、前記電圧印加手段による電圧印加後所定時間
経過した後の前記コイルと電極との間の前記電流検出手
段による電流検出値に応じて前記コイルの傷の大きさを
判定するコイル傷判定手段とを有する構成としてある。
【0016】
【発明の効果】請求項1または請求項8の発明によれ
ば、コイルに傷が発生していると、コイル・電極間への
印加電圧により、その傷発生部位と電極との間に電流が
流れるので、この電流値を計測することで、コイルに発
生している傷の大きさを電流値に応じて定量的に判定す
ることができる。
【0017】請求項2の発明によれば、電流値計測を、
電圧印加後所定時間経過した後に行うようにしたので、
安定した電流値計測が行え、コイルに発生している傷の
大きさの定量的判定を精度よく行うことができる。
【0018】請求項3の発明によれば、電流値計測を、
電流値が最大となった後に行うようにしたので、より安
定した電流値計測が行え、コイルに発生している傷の大
きさの定量的判定をより精度よく行うことができる。
【0019】請求項4の発明によれば、電流値計測を、
電流値が最大となる点から微小時間経過した後に行うよ
うにしたので、さらに安定した電流値計測が行え、傷の
大きさの定量的判定を短時間に高精度に行うことができ
る。
【0020】請求項5の発明によれば、電流値計測は、
電圧印加後5秒から50秒経過するまでの間に行うよう
にしたので、電流値の計測を安定した状態で行え、傷の
大きさの定量的判定を高精度に行うことができる。
【0021】請求項6の発明によれば、溶液として、フ
ッ素系不活性液体を使用することで、コイルの腐食を防
止できるとともに、フッ素系不活性液体にアルコール系
溶液を混合することで、導電性を持たせることができ
る。
【0022】請求項7の発明によれば、アルコール系溶
液として、イソプロピルアルコールを使用することで、
導電性を持たせることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づき説明する。
【0024】図1は、この発明の実施の一形態を示すコ
イルの傷検出装置の全体構成図である。容器15内に
は、絶縁被覆されたコイル17に対して腐食性がなく電
子装置の洗浄に用いられるフッ素系不活性液体に、導電
性を備えたアルコール系溶液であるイソプロピルアルコ
ールを7%混合した溶液19が収容されている。
【0025】上記した溶液19中には、ステータ21に
コイル17が組み付けられたモータ(ステータアッセン
ブリ)23と電極となる正極導体棒25とがどぶ付けさ
れている。正極導体棒25は、腐食や酸化しにくい材質
を選択する。そして、コイル17の端末に接続した端子
17aと正極導体棒25とは、配線26により接続し、
配線26には、コイル17側から、端子17aに負極が
接続される電圧印加手段としての安定化電源27、スイ
ッチ29、電流検出手段としての電流計31が順次接続
されている。電流計31には、計測した電流値に基づい
て、コイル17に発生している傷33の面積を判定する
マイクロコンピュータなどで構成されるコイル傷判定手
段としての判定回路35が接続されている。
【0026】この状態で、スイッチ29を投入すると、
コイル17と正極導体棒25との間に電圧が印加され
る。このとき、コイル17に絶縁層を破壊するような傷
33が発生していると、導電性の溶液19を介してコイ
ル17と正極導体棒25との間に電流が流れ、この電流
は電流計31によって計測される。電流計31によって
計測される電流値は、例えば図2に示すようなものとな
る。すなわち、電流値は、電圧印加してから時間t1
過した時点(5秒経過時より僅かに前)で最大(60m
A)となり、その後徐々に低下して50秒程度経過した
後には、20mAと40mAとの間で不安定な値とな
る。
【0027】電流値が最大となった後に低下するのは、
溶液19の電気抵抗が徐々に増大することによるが、こ
れは、正極導体棒25およびコイル17の傷発生部位
と、導電性のある溶液19との化学反応によって起こ
り、この化学反応により正極導体棒25および傷発生部
位の各表面付近の溶液19の濃度が低下していくためで
ある。
【0028】つまり、正極導体棒25の表面では、酸素
や酸素イオンが正極導体棒25の表面に被膜を生成し、
安定した電子eの受け取りを拒否する。一方負極側であ
るコイル17の傷発生部部位の表面では、傷33から発
生する水素の気泡が傷33の表面に被膜を生成し、安定
した電子eの放出を阻害する。
【0029】電圧印加してから5秒経過後は、電流値最
大の時間t1より微小時間経過しており、この5秒経過
した時点の電流値を計測することで、コイル17に発生
している傷33の面積を、判定回路35により判定す
る。電流値計測を5秒経過後としたのは、この時点の電
流値を数回計測してもほぼ安定した結果が得られ、かつ
電圧印加後短時間で計測が行えるためである。時間t1
における電流値最大の点は、電流値のばらつきが大きく
電流値計測に適さない。また、電圧印加後50秒経過し
た後は、電流値が不安定となって電流値計測に適さな
い。したがって、電圧印加後、5秒から50秒経過した
領域が電流計測に適した安定領域Pとなる。
【0030】図3は、判定回路35における図示しない
メモリに格納されている、電圧印加してから5秒経過し
た時点の電流値と傷33の面積との関係を示している。
これによれば、電流値A(mA)と傷面積S(mm2
との関係は、電流値Aの増大に伴い傷面積Sも増大する
比例関係にあり、S=kAとなる。比例定数kは、10
の3乗倍程度である。
【0031】したがって、電圧印加してから5秒経過し
た時点の電流値を計測することで、コイル17に発生し
ている傷33の面積を図3の関係に基づいて、判定回路
35により定量的に判定することができる。
【0032】なお、図3における電流値と傷面積との関
係は、コイル17の種類によって異なるものを用意して
おく。また、図1の例では判定回路35を設けている
が、判定回路35を設けずに、単に電流計31による計
測値を図3のデータと照らし合わせて傷33の面積を求
めるようにしてもよい。
【0033】さらに、フッ素系不活性液体にイソプロピ
ルアルコール7%を混合した溶液19に代えて、例え
ば、水道水などを使用してもよいが、この場合には傷検
出作業終了後に、モータ23に対する脱水・乾燥処理が
必要である。また、溶液19中のイソプロピルアルコー
ルの割合は、労働安全衛生法上7%としてあるが、7%
を多少下回っても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態を示すコイルの傷検出
装置の全体構成図である。
【図2】コイルに傷がある状態での電圧印加後の電流値
を示す説明図である。
【図3】電流値と傷面積との相関図である。
【図4】従来例を示すコイルの傷検出装置の全体構成図
である。
【符号の説明】
17 コイル 19 溶液 25 正極導体棒(電極) 27 安定化電源(電圧印加手段) 31 電流計(電流検出手段) 35 判定回路(コイル傷判定手段)
フロントページの続き Fターム(参考) 2G014 AA15 AB49 AC19 2G016 BA03 BA04 BB03 BC02 BD06 2G060 AA05 AE01 AF02 AF09 AG11 EA04 EA07 HC10 HC21

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁被覆されたコイルと電極とを導電性
    を備えた溶液中に浸し、前記溶液中のコイルと電極との
    間に電圧を印加して前記コイルと電極との間に流れる電
    流値を計測し、この計測した電流値に応じて前記コイル
    の傷の大きさを判定することを特徴とするコイルの傷検
    出方法。
  2. 【請求項2】 電流値計測は、電圧印加後所定時間経過
    した後に行うことを特徴とする請求項1記載のコイルの
    傷検出方法。
  3. 【請求項3】 電流値計測は、電流値が最大となった後
    に行うことを特徴とする請求項1または2記載のコイル
    の傷検出方法。
  4. 【請求項4】 電流値計測は、電流値が最大となる点か
    ら微小時間経過した後に行うことを特徴とする請求項3
    記載のコイルの傷検出方法。
  5. 【請求項5】 電流値計測は、電圧印加後5秒から50
    秒経過するまでの間に行うことを特徴とする請求項1な
    いし4のいずれかに記載のコイルの傷検出方法。
  6. 【請求項6】 溶液は、フッ素系不活性液体にアルコー
    ル系溶液を混合したものであることを特徴とする請求項
    1ないし5のいずれかに記載のコイルの傷検出方法。
  7. 【請求項7】 アルコール系溶液は、イソプロピルアル
    コールであることを特徴とする請求項6記載のコイルの
    傷検出方法。
  8. 【請求項8】 導電性を備えた溶液と、この溶液中に配
    置され、前記溶液中に浸した絶縁被覆されたコイルとの
    間に電圧が印加される電極と、前記コイルと電極との間
    に電圧を印加する電圧印加手段と、前記コイルと電極と
    の間に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記電圧
    印加手段による電圧印加後所定時間経過した後の前記コ
    イルと電極との間の前記電流検出手段による電流検出値
    に応じて前記コイルの傷の大きさを判定するコイル傷判
    定手段とを有することを特徴とするコイルの傷検出装
    置。
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