JP2002130960A - 焼成炉、焼成体の製造方法及び焼成体 - Google Patents
焼成炉、焼成体の製造方法及び焼成体Info
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Abstract
を図りながらも、放射冷却により熱勾配が被焼成体にお
いて発生するのを抑制することができる焼成炉、焼成体
の製造方法及び焼成体を提供する。 【解決手段】 チャンバ11の内部には隔壁15によっ
て区画形成された焼成室16がある。隔壁15は、外殻
15aと内殻15bの二層構造になっている。外殻15
aは断熱性を有するとともにマイクロ波の透過を許容
し、内殻15bはマイクロ波によって自己発熱する。こ
の内殻15bのマイクロ波による単位体積当たりの発熱
量は、被焼成体10の単位体積当たりの発熱量よりも大
きく、2倍以下であることが好ましい。
Description
インセラミックス材料などで形成された被焼成体を焼成
して焼成体を製造するための焼成炉、焼成体の製造方法
及び焼成体に関するものである。
ス炉などが一般に使用されている。しかし、こうした外
部加熱の場合には、被焼成体の表面と内部とで温度差が
生じないように炉内の温度を徐々に上昇させる必要があ
り、焼成時間が長くなるという問題があった。
として、マイクロ波を使って被焼成体を焼成する焼成炉
が種々提案されている(特公昭58−23349号、特
開平3−257072号、特開平6−87663号な
ど)。この場合、マイクロ波が被焼成体の表面、内部に
関わらず均一に吸収されるため、加熱時に被焼成体の表
面と内部とで温度差が生じるおそれは小さい。従って、
昇温速度を大きくすることができ、焼成にかかる時間を
大幅に短縮することが可能であるとともに、均一な焼成
が可能である。
成の際、被焼成体と等価なマイクロ波吸収特性を有する
ブランケットで被焼成体を囲むことによって被焼成体を
擬似的に完全に断熱できることを見出した。この場合、
放射冷却により被焼成体に熱勾配が生じるのを抑制する
ことができ、より一層の均一な焼成が可能である。
ケットで被焼成体を囲んで焼成した場合には、マイクロ
波のエネルギーが被焼成体だけでなくブランケットにも
吸収されて消費されるため、焼成に要するエネルギー量
が著しく増大するという問題があった。
抑えるためには、ブランケットの厚みを薄くしてその重
量及び熱容量を小さくすることが必要である。しかし、
ブランケットの厚みを薄くするほど、ブランケットがマ
イクロ波によって得る熱エネルギーの量に比べて熱伝導
によってブランケットから外部へと失われる熱エネルギ
ーの量の方が無視できないほどに大きくなり、そのため
にブランケットの内側表面と被焼成体との間に大きな温
度差が生じてしまう。そうなると、擬似断熱空間の仮定
が崩れてしまい、放射冷却により被焼成体に熱勾配が生
じることになる。
る問題点に着目してなされたものである。その目的とす
るところは、被焼成体の焼成に要するエネルギー量の低
減を図りながらも、放射冷却により熱勾配が被焼成体に
おいて発生するのを抑制することができる焼成炉、焼成
体の製造方法及び焼成体を提供することにある。
めに、請求項1に記載の発明は、マイクロ波によって自
己発熱しうるブランケットにより区画された焼成室と、
その焼成室内に配置される被焼成体に対してマイクロ波
を照射するマイクロ波発生手段とを備え、マイクロ波に
よる前記ブランケットの単位体積当たりの発熱量が、前
記被焼成体の単位体積当たりの発熱量よりも大きく、か
つ、ブランケットの内側表面温度と被焼成体の表面温度
とが実質的に同一であることを要旨とする。
の焼成炉において、前記ブランケットが、ブランケット
の内側表面温度と被焼成体の表面温度との差分を補償す
るようにマイクロ波によって自己発熱することを要旨と
する。
求項2に記載の焼成炉において、前記ブランケットを構
成する材料の単位体積当たりの発熱量が、被焼成体を構
成する材料の単位体積当たりの発熱量の2倍以下である
ことを要旨とする。
求項3のいずれか一項に記載の焼成炉において、前記ブ
ランケットを、断熱性を有し、かつマイクロ波透過性を
有する別のブランケットの内側に設けたことを要旨とす
る。
って自己発熱しうるブランケットにより区画された焼成
室の内部に被焼成体を配設し、マイクロ波発生手段によ
り焼成室の外部から前記被焼成体に対してマイクロ波を
照射して被焼成体を焼成する焼成体の製造方法であっ
て、マイクロ波による前記ブランケットの単位体積当た
りの発熱量が、前記被焼成体の単位体積当たりの発熱量
よりも大きく、かつ、ブランケットの内側表面温度と被
焼成体の表面温度とが実質的に同一であることを要旨と
する。
って自己発熱しうるブランケットにより区画された焼成
室の内部に被焼成体を配設し、マイクロ波発生手段によ
り焼成室の外部から前記被焼成体に対してマイクロ波を
照射して被焼成体を焼成することにより得られる焼成体
であって、マイクロ波による前記ブランケットの単位体
積当たりの発熱量が、前記被焼成体の単位体積当たりの
発熱量よりも大きく、かつ、ブランケットの内側表面温
度と被焼成体の表面温度とが実質的に同一であることを
要旨とする。
形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施
形態における焼成炉を示す概略平断面図である。同図に
示す焼成炉は、被焼成体10を焼成して焼成体を製造す
るためのものである。被焼成体10は、陶磁器材料又は
ファインセラミックス材料を所定形状に成形した成形体
よりなるもので、その成形体、成形体を素焼きしたも
の、成形体に施釉をしたもの、あるいは素焼きした成形
体に施釉をしたものでもよい。
を備えている。チャンバ11は、少なくとも内面がマイ
クロ波を反射可能な構成になっている。本実施形態の場
合、チャンバ11は、ステンレス鋼により長さ2m×幅
1.1m×高さ1.1mの四角箱状に形成されている。
してのマイクロ波発振器12が導波管13を介して接続
されている。そして、マイクロ波発振器12から出力さ
れるマイクロ波は、導波管13を経由してチャンバ11
内に入射されるようになっている。マイクロ波の周波数
は、0.9〜100GHzが好ましく、0.9〜10G
Hzがより好ましく、特に2.45GHzが好ましい。
この周波数が0.9GHz未満では、波長が長くなりす
ぎるとともにマイクロ波の吸収率が低下するため好まし
くない。逆に100GHzを超える場合には、高価なマ
イクロ波発振器12が必要となるため好ましくない。マ
イクロ波発振器12から出力されるマイクロ波を2.4
5GHzとした場合には、マイクロ波発振器12を比較
的小型で低価格なもので済ますことができる。本実施形
態の場合、2.45GHzのマイクロ波を出力するマイ
クロ波発振器12(出力1.5kW)が6台(図1では
4台のみ示す。)使用されている。
よって区画された空間があり、さらにその補助断熱壁1
4によって区画された空間内には、隔壁15によって区
画形成された焼成室16がある。この焼成室16の容積
は、0.3〜0.6m3が好ましい。
の二層構造になっている。外殻15aは、断熱性を有す
るとともにマイクロ波の透過を許容する。この外殻15
aを構成する材料としては、アルミナファイバーや発泡
アルミナなどが挙げられる。
己発熱し、そのマイクロ波による単位体積当たりの発熱
量は、被焼成体10の単位体積当たりの発熱量よりも大
きいことが必須であり、2倍以下であることが好まし
い。この内殻15bを構成する材料としては、ムライト
系材料、窒化ケイ素系材料、アルミナなどが挙げられ、
焼成する被焼成体10に応じて適宜選択される。この内
殻15bを構成する材料は、マイクロ波吸収率の大きい
金属酸化物(例えばマグネシア、ジルコニア、酸化鉄な
ど)又は無機材料(例えば炭化ケイ素など)を少量添加
して用いてもよい。また内殻15bの厚みは、1〜2m
mが好ましい。
れたマイクロ波を攪拌するためのマイクロ波攪拌手段を
備えている。このマイクロ波攪拌手段は、チャンバ11
の内面に内側に向かって延設された回転軸17と、その
回転軸17に支持された攪拌羽根18と、その攪拌羽根
18を回転軸17を中心にして積極回転させる駆動モー
タ19とから構成されている。
方法について説明する。焼成体を製造する場合には、ま
ず陶磁器材料又はファインセラミックス材料を所定形状
に成形して被焼成体10を作製し、その被焼成体10を
焼成室16内に配置する。続いて、マイクロ波発振器1
2を作動させて、マイクロ波をチャンバ11に入射させ
る。チャンバ11に入射したマイクロ波は、外殻15a
を透過して内殻15b及び被焼成体10に吸収され、熱
エネルギーに変換されて内殻15b及び被焼成体10の
温度を上昇させる。
bの厚みを従来よりも薄く形成しているため、熱伝導に
よって内殻15bから外部へと失われる熱エネルギーの
量が、マイクロ波によって内殻15bが得る熱エネルギ
ーの量に比べて無視できない大きさになるおそれがあ
る。しかし、内殻15bの単位体積当たりの発熱量が被
焼成体10の単位体積当たりの発熱量よりも大きいた
め、この発熱量の差によって内殻15bの内側表面温度
と被焼成体10の表面温度との差分が補償されることに
なる。その結果、内殻15bと被焼成体10の熱平衡が
保たれて、内殻15bの内側表面温度と被焼成体10の
表面温度とが実質的に同一の状態となり、被焼成体10
が擬似的に完全に断熱されることになる。尚、内殻15
bの内側表面温度と被焼成体10の表面温度とが実質的
に同一であるとは、両者の温度差が焼成体に有害な熱歪
みを生じない程度の差であることをいい、この温度差は
具体的には20℃以下であることが好ましい。
を保ちながら加熱されるために、被焼成体10から放射
によって失われる熱エネルギーは、内殻15bの内側表
面から放射される熱エネルギーによって相殺され、被焼
成体10の放射損失は原理的にゼロとなる。すなわち、
被焼成体10にとって焼成室16は擬似的に完全に断熱
された閉空間になる。このため、放射冷却により熱勾配
が被焼成体10において発生するのが抑制される。
誘電体(被焼成体10)が適当な距離をおいて他の誘電
体(内殻15b)で囲まれていると仮定した場合、熱伝
導方程式は下記(1)及び(2)式のように書ける。 ∂θ1/∂t=κ1(∂2θ1/∂x2+∂2θ1/∂y2+∂2θ1/∂z2) +σ(θ2 4−θ1 4)+2πf/(c1ρ1)E2ε0ε1tanδ1 …(1) ∂θ2/∂t=κ2(∂2θ2/∂x2+∂2θ2/∂y2+∂2θ2/∂z2) +σ(θ1 4−θ2 4)+2πf/(c2ρ2)E2ε0ε2tanδ2 …(2) ここで、θは温度、κは熱伝導率、cは比熱、ρは密度
を表し、添字「1」は被焼成体10、添字「2」は内殻
15bを示す。
0の表面で放射、熱伝導及び熱伝達による熱の出入り差
がゼロ、つまり熱平衡になっている。このような状態
は、被焼成体10の表面温度と内殻15bの内側表面温
度が等しいとき実現される。言い換えれば、表面からの
エネルギー損失、つまり、内部から表面に向かう熱流束
がないから、温度勾配∂θ1/∂x,∂θ1/∂y,∂θ
1/∂zはゼロになる。従って、上記(1)式は、 ∂θ1/∂t=2πf/(c1ρ1)E2ε0ε1tanδ1 …(1′) 上記(2)式は、 ∂θ2/∂t=Prf/(c2ρ2)ε2tanδ2−Ploss/(c2ρ2) …(2′) と書ける。
∂t、θ1=θ2、かつ、内殻15bが閉空間(あるいは
等価的に閉空間)を構成しているから、その内側表面で
熱平衡が成り立つには、内側表面でのエネルギーの授受
がゼロ、つまり、内側表面で∂θ/∂x=0でなければ
ならない。従って、上記(2′)式を満足する条件は、
下記(3)式で表される。 ε1tanδ1/c1ρ1=ε2tanδ2/c2ρ2−Ploss/Prf …(3) ここで、Prf(=2πfE2ε0)はマイクロ波電力密
度、Plossは内殻15bから外部に失われるエネルギー
である。
な効果が発揮される。 ・ 被焼成体10から放射によって失われる熱エネルギ
ーは、内殻15bの内側表面から放射される熱エネルギ
ーによって相殺されるため、被焼成体10の放射損失は
原理的にゼロとなる。このため、放射冷却により熱勾配
が被焼成体10において発生するのを抑制することがで
き、従来のマイクロ波による焼成炉に比べて、より一層
の均一な焼成が可能であり、歪みや割れの発生を抑制す
ることができる。
積当たりの発熱量を被焼成体10の単位体積当たりの発
熱量よりも大きくすることにより、被焼成体10と内殻
15bの内側表面との間の熱平衡を維持しながら内殻1
5bの厚みを薄くしてその重量及び熱容量を小さくする
ことが可能である。これにより、内殻15bで消費され
るエネルギー量を抑え、被焼成体10の焼成に要するエ
ネルギー量の低減を図ることができる。
波透過性を有する外殻15aの内面に設けたことによ
り、内殻15bの熱損失を効果的に抑えることができ
る。 ・ 焼成炉は複数のマイクロ波発振器を有し、そのマイ
クロ波発振器12から出力されるマイクロ波がチャンバ
11に入射する入射口は、一つでなく複数設けられてい
る。このため、被焼成体10の一部分に電界が集中して
斑焼けが生じるのを抑制することができる。
具体的に説明する。 (実施例1)陶磁器材料から形成された被焼成体10
(重量10kg、平均肉厚5mm)を図1に示す前記実
施形態の焼成炉を使って焼成し、焼成体(陶磁器)を得
た。
ト系磁器で内殻15bを形成し、アルミナファイバーボ
ードで外殻15aを形成した。尚、内殻15bは肉厚8
mmで重量45kg、外殻15aは肉厚40mmで重量
5kgである。内殻15b、外殻15a及び被焼成体1
0の物性を1に示す。
(重量10kg、平均肉厚5mm)を図1に示す前記実
施形態の焼成炉を使って焼成し、焼成体(陶磁器)を得
た。
(FeO)を0.1%添加したムライト系セメントで内
殻15bを形成し、アルミナファイバーボードで外殻1
5aを形成した。尚、内殻15bは肉厚2mmで重量5
kg、外殻15aは肉厚40mmで重量5kgである。
内殻15b、外殻15a及び被焼成体10の物性を表2
に示す。
被焼成体10(重量10kg、平均肉厚5mm)を図1
に示す前記実施形態の焼成炉を使って焼成し、焼成体を
得た。
ニアを1モル%添加したアルミナで内殻15bを形成
し、アルミナファイバーボードで外殻15aを形成し
た。尚、内殻15bは肉厚1mmで重量0.2kg、外
殻15aは肉厚40mmで重量5kgである。内殻15
b、外殻15a及び被焼成体10の物性を表3に示す。
以下に記載する。
ランケットが、マイクロ波吸収率の大きい金属酸化物又
は無機材料を含んで構成されることを特徴とする請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の焼成炉。このよ
うに構成した場合、ブランケットの発熱量を容易に高め
ることができる。
被焼成体の焼成に要するエネルギー量の低減を図りなが
らも、放射冷却により熱勾配が被焼成体において発生す
るのを抑制することができる。
図。
クロ波発振器、14…断熱性を有し、かつマイクロ波透
過性を有するブランケットとしての補助断熱壁、15a
…断熱性を有し、かつマイクロ波透過性を有するブラン
ケットとしての外殻、15b…マイクロ波によって自己
発熱しうるブランケットとしての内殻、16…焼成室。
Claims (6)
- 【請求項1】 マイクロ波によって自己発熱しうるブラ
ンケットにより区画された焼成室と、その焼成室内に配
置される被焼成体に対してマイクロ波を照射するマイク
ロ波発生手段とを備え、マイクロ波による前記ブランケ
ットの単位体積当たりの発熱量が、前記被焼成体の単位
体積当たりの発熱量よりも大きく、かつ、ブランケット
の内側表面温度と被焼成体の表面温度とが実質的に同一
であることを特徴とする焼成炉。 - 【請求項2】 前記ブランケットが、ブランケットの内
側表面温度と被焼成体の表面温度との差分を補償するよ
うにマイクロ波によって自己発熱することを特徴とする
請求項1に記載の焼成炉。 - 【請求項3】 前記ブランケットを構成する材料の単位
体積当たりの発熱量が、被焼成体を構成する材料の単位
体積当たりの発熱量の2倍以下であることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の焼成炉。 - 【請求項4】 前記ブランケットを、断熱性を有し、か
つマイクロ波透過性を有する別のブランケットの内側に
設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれ
か一項に記載の焼成炉。 - 【請求項5】 マイクロ波によって自己発熱しうるブラ
ンケットにより区画された焼成室の内部に被焼成体を配
設し、マイクロ波発生手段により焼成室の外部から前記
被焼成体に対してマイクロ波を照射して被焼成体を焼成
する焼成体の製造方法であって、マイクロ波による前記
ブランケットの単位体積当たりの発熱量が、前記被焼成
体の単位体積当たりの発熱量よりも大きく、かつ、ブラ
ンケットの内側表面温度と被焼成体の表面温度とが実質
的に同一であることを特徴とする焼成体の製造方法。 - 【請求項6】 マイクロ波によって自己発熱しうるブラ
ンケットにより区画された焼成室の内部に被焼成体を配
設し、マイクロ波発生手段により焼成室の外部から前記
被焼成体に対してマイクロ波を照射して被焼成体を焼成
することにより得られる焼成体であって、マイクロ波に
よる前記ブランケットの単位体積当たりの発熱量が、前
記被焼成体の単位体積当たりの発熱量よりも大きく、か
つ、ブランケットの内側表面温度と被焼成体の表面温度
とが実質的に同一であることを特徴とする焼成体。
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