JP2002120526A - 安全タイヤ用空気のうおよびそれを用いた安全タイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 いわゆるランフラット状態で、タイヤトレッ
ド部に損傷が生じても、空気のうを損傷から有効に保護
する。 【解決手段】 タイヤに内蔵されて、そのタイヤのパン
ク時に輪重を支持する円環状の空気のうであって、中空
環状弾性体７の外周面に、ほぼ波形状をなして円周方向
に延びる複数本の補強素子９よりなる少なくとも一層の
補強層８を設け、各補強素子９に、空気のう３の、タイ
ヤ内面への密着姿勢でなお波形状を残留させてなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、パンクその他に
よって、タイヤ内の圧力が急激に低下してもなお、車両
の継続的な走行を可能とする安全タイヤに用いて好適な
空気のうおよびそれを用いた安全タイヤに関し、とく
に、トレッド部内周面に密着して輪重を支持する、拡張
姿勢の空気のうの耐外傷性を大きく向上させたものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】空気入りタイヤがパンク等しても、修
理、補修等ができる場所までの相当距離を安全に継続走
行できるようにしたランフラットタイヤまたは安全タイ
ヤは、従来から各種のものが研究され、開発されてお
り、たとえば、タイヤに内蔵されて、タイヤのパンク時
に輪重を支持する空気のうに工夫を凝らしたタイプとし
ては、補強空気のう、多室空気のう、折り畳み空気のう
などが知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかるに、タイヤのパ
ンク時に、空気のうを、そこへの供給内圧に基づく拡張
変形下でトレッド部内周面に密着させた状態でそれに輪
重を支持させる場合には、その空気のうがタイヤのパン
ク以前から予めタイヤ内面に密着していると否とにかか
わらず、空気のうが比較的大きく伸長変形されているた
め、空気のうのこのような作用中に、タイヤがさらに、
異物による外傷を受けたときに、空気のうも直ちに損傷
を受けるおそれが高く、所要の距離にわたる、十分安全
な継続走行を確実に実現することが難しかった。

【０００４】この発明は、従来技術が抱えるこのような
問題点を解決することを課題とするものであり、それの
目的とするところは、空気のうが、タイヤのトレッド部
内周面に密着した輪重の支持状態にあって、タイヤのト
レッド部に外傷が生じても、空気のうを損傷から有効に
保護することができる安全タイヤ用空気のうおよびそれ
を用いた安全タイヤを提供するにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明の安全タイヤ用
空気のうは、トレッド部と、一対のサイドウォール部お
よびビード部とを具えるタイヤに内臓されて、そのタイ
ヤのパンク時に、拡張姿勢で輪重を支持する円環状の空
気のうであって、中空環状弾性体の外周面に、ほぼ波形
状をなして円周方向に延びる複数本の補強素子、好まし
くはゴムコーティングを施した補強素子よりなる少なく
とも一層の補強層を設け、各補強素子に、空気のうの、
タイヤ内面への密着姿勢でなお波形状が残留する大きな
振幅を付与したものである。ここで、それぞれの補強素
子は、平面内で波形状が、同位相で、または規則的な位
相ずれの下で揃って並ぶ配置とすることが好ましい。

【０００６】この空気のうでは、それが拡張姿勢でトレ
ッド部内周面に密着して輪重を支持した状態の下で、タ
イヤトレッド部が、尖った石その他の異物による外傷を
受けた場合に、その異物がたとえ空気のうに達しても、
空気のうの外周面に設けた補強層の、波形状に延びるコ
ードもしくはフィラメントからなる補強素子は、空気の
うの拡張下でなお波形状を維持しており、そこへの張力
の作用がほとんどないことはもちろん、十分な伸長代を
を残しているので、その補強層、ひいては、空気のう
は、異物を包み込むように柔軟に変形することができ、
これがため、空気のうの、異物との衝接等に起因する損
傷が効果的に防止されることになる。

【０００７】なお、ここにおける補強素子は、化学繊維
コードにより形成することが、空気のうの軽量化を図る
上でスチールコードより好ましく、なかでも、アラミド
繊維コードにて形成した場合には、コードの強度を大き
く高めることができる。

【０００８】またここで、補強層の内周側に、二層以上
のコード交差層よりなるベルトを配設した場合には、空
気のうの拡縮変形を十分に許容してなお、空気のうそれ
自体の強度を所要に応じて高めることができる。このよ
うなベルトのコードは、直線状に延びる化学繊維コード
もしくはスチールコードとすることができる。

【０００９】そして、空気のうの同様の強度増加は、上
述したコード交差層に代えて、不織布ベルトもしくは、
超高分子量ポリエチレンその他からなる円管状樹脂ベル
トを配設することまたは、ほぼ波形状をなして円周方向
に延びるスチールコードよりなるウェィビィベルトを配
設することによってもまた実現することができる。

【００１０】ところで、このような空気のうの構造は、
タイヤからの内圧の洩出後に拡張変形してタイヤ内面に
密着するものに適用することができ、この場合は、空気
のうの内部を単一気室とすることも、複数の独立した気
室とすることもできる。

【００１１】またこの一方で、内部に独立した気室を有
し、従来の一般的なタイヤチューブの如く、タイヤへの
所定の圧力の充填によって、各気室部分がタイヤ内面に
密着するタイプの空気のうにも上記構造を適用すること
もできる。

【００１２】そして、この発明の係る安全タイヤは、タ
イヤからの内圧の洩出後に拡張変形してタイヤ内面に密
着する空気のうをリム組み姿勢でタイヤに内蔵するとと
もに、空気のうおよびタイヤのそれぞれに所定の圧力を
充填した状態で、タイヤの負荷転動時のトレッド接地領
域で、空気のうの外周面をトレッド部内周面から離隔さ
せて位置させたものである。

【００１３】ここで、リム組みに用いるリムは、ＪＡＴ
ＭＡ ＹＥＡＲ ＢＯＯＫに規定される適用リムを意味
するものとし、タイヤに充填する所定の圧力とは、ＪＡ
ＴＭＡ ＹＥＡＲ ＢＯＯＫに規定される最高空気圧に
等しい圧力をいうものとする。なおここでは、タイヤ内
に空気を充填する場合の他、窒素ガスその他の不活性ガ
ス等を充填する場合もあることを考慮して単に圧力とし
ている。

【００１４】また、空気のうに充填する所定の圧力と
は、タイヤの所定圧力と同等もしくはそれより幾分高圧
の空気、不活性ガス等の圧力をいうものとする。さら
に、ここでのタイヤの負荷転動時の負荷条件は、最大負
荷能力に等しい質量を負荷した場合をいうものとする。

【００１５】かかる安全タイヤでは、タイヤがパンク等
の損傷を生じる以前の負荷転動時には、空気のうの、ト
レッド部内周面への接触、ひいては、その接触に起因す
る空気のうの不測の摩耗を十分に防止して、タイヤの損
傷時の、空気のうの拡張変形に基づく輪重の支持を確実
ならしめるとともに、所要の距離の、継続した安全走行
を十分に担保することができる。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下にこの発明の実施の形態を図
面に示すところに基づいて説明する。図１はこの発明に
係る空気のうの、安全タイヤへの適用状態を示す横断面
図であり、図中１はタイヤを、２は、そのタイヤ１への
適用リムをそれぞれ示し、３は、リム組み姿勢でタイヤ
１に内蔵され、所定の圧力を充填された円環状の空気の
うを示す。

【００１７】なお図に示すところでは、タイヤ１内に、
所定の圧力、すなわち、ＪＡＴＭＡＹＥＡＲ ＢＯＯＫ
に規定される最高空気圧に等しい圧力が充填されてお
り、空気のう３内には、その最高空気圧とほぼ等しいか
またはそれより幾分高い所定の圧力が充填されている。

【００１８】ここでタイヤ１は、トレッド部４と、その
両側部から半径方向内方に延びる一対のサイドウォール
部５と、サイドウォール部５の内周側に連続してリム２
の拘束を受けるビード部６とを具えてなり、また、空気
のう３は、中空環状弾性体７の外周面に、ほぼ波形状を
なして円周方向に延びるコードまたはフィラメント、好
ましくは化学繊維コードからなる複数本の補強素子、好
適にはゴムコーティング補強素子により形成した一層以
上の補強層８を設けてなる。

【００１９】図２は、図１に示す空気のう、補強層を誇
張して示す平面図であり、補強層８の補強素子９は、空
気のう３への所定の圧力の充填状態にあっても、図示の
ような波形状を有しており、この場合、それぞれの補強
素子９は、平面内で波形状が同位相で、または、規則的
な位相ずれの下に揃って並ぶ相対配置関係を有すること
が好ましい。従って、空気のう３への圧力の充填前に
は、それらの補強素子９は、より小さい波形ピッチで、
より大きな振幅の波形状を有することになる。

【００２０】ところで、ここにおけるこの空気のう３の
外周面は、タイヤ１にパンクその他の故障が生じる以前
には、空気のう３に固有の弾性率、耐張力等により、タ
イヤの負荷転動時のトレッド接地領域においてもトレッ
ド部内周面から十分に離隔して位置する。

【００２１】この一方で、空気のう３は、タイヤ１が故
障して、タイヤ内圧が大気圧もしくはその近傍まで低下
したときは、そこへの予めの充填圧力の作用下で、図
１，２に示す状態から、周長にして約１５〜２５％程度
拡張変形して、図３に横断面図で示すようなタイヤ内面
への密着姿勢で輪重の支持に寄与することになる。そし
て、この場合の補強層８は、接地領域にあってなお、補
強素子９に波形状が残留した状態にあり、それ故に、補
強素子９は、未だ十分な伸長代を有しており、そこへの
張力の作用はほとんどない。

【００２２】ところで、この状態においてなお、補強素
子９に十分な伸長代を残すためには、空気のう３の、図
１，２に示す状態から図３に示す状態に至るまでの周長
増加が２０％であるとすると、図１，２に示す状態の下
でのその補強素子９の、図４に示すような波形ピッチλ
に対する、振幅Ａの比Ａ／λを０．３５〜０．５０の範
囲とすることが好ましい。

【００２３】従って、図３に示すようないわゆるランフ
ラット状態にあって、タイヤ１のトレッド部４にさらな
る外傷を与えた異物が空気のう３に達した場合には、そ
の空気のう３は、補強素子９がもつ伸長代の下ですぐれ
た可撓性を有して、異物を包み込むように変形するの
で、異物の到達に起因する空気のう３の損傷は十分に防
止されることになる。そしてこれらのことは、図１〜３
に示す空気のうにおいて、その内部を、圧力を充填され
る複数の独立した気室に区分した場合にもまた同様であ
る。

【００２４】図５は、他の実施形態を示す横断面図であ
り、ここに示す空気のう２３は、周知のタイヤチューブ
と同様の機能をも有するものであり、タイヤ１への所定
圧力の充填に当たって、空気のう２３に圧力を充填し
て、その空気のう２３をタイヤ内面に密着させるもので
ある。

【００２５】ここにおける空気のう２３は、その外周面
に、ほぼ波形状をなして円周方向に延びる複数本の補強
素子からなる、前述したと同様の補強層２８を有する
他、その内部に、相互に独立した、ともにほぼ等しい大
きさの、たとえば二個もしくは三個の気室２９を有して
おり、各気室２９は給気管を介してバルブ３０に連通さ
れている。

【００２６】かかるタイヤ１もまた、たとえば、トレッ
ド部４からいずれか一の気室２９への釘の刺さり込み等
によってパンクすることがあるも、この場合には、その
一の気室２９からの内圧の洩出によって複数の気室相互
の圧力の釣合いが崩れることにより、たとえば図６に例
示するように、他方の気室２９が一の気室を押し潰して
一層膨脹してタイヤ内面に密着するので、そのパンクの
後になお、トータル内圧の幾分の減少下で輪重を十分に
支持することができる。

【００２７】そして、このようなランフラット状態の下
で、トレッド部４が異物によって再度損傷された場合に
おいて、その異物が空気のう２３まで達したときは、補
強層２８の、波形状を残す補強素子の作用の下での空気
のうそれ自体の可撓性により、その空気のう２３を、異
物を包み込むように変形させることで、空気のう２３の
損傷を有効に防止して、すぐれたランフラット性能を発
揮させることができる。

【００２８】ところで、以上に述べたところにおいて、
補強素子９は、化学繊維コード、なかでもアラミド繊維
コードにより形成することが、重量増加を抑制しつつ高
い強度を確保する上で好ましい。

【００２９】またここで、空気のう３，２３に、より一
層の強度を付与するためには、補強層８，２８の内周側
に、二層以上のコード交差層よりなるベルト、不織布ベ
ルトまたは円管状樹脂ベルト等の、空気のう３，２３の
拡張変形を許容し得るベルトを配設することが好まし
い。このようなコード交差層を構成するコードとして
は、化学繊維コード、スチールコード等を上げることが
でき、不織布ベルトとしては、たとえば、長さ５０mm、
径１２μｍのアラミド短繊維からなる目つけが６０ｇ／
ｍ^２の不織布を、コーティングゴムを介して四層に積層
したものを用いることができる。また、円管状樹脂ベル
トとしては、たとえば、初期弾性率が０．６ＧＰａ、降
伏応力が２４．０ＭＰａ、切断時の伸びが５００％の超
高分子量ポリエチレンの形成体を用いることができる。

【００３０】そしてまた、補強層８，２８の内周側に
は、上述したところに代えてもしくは加えて、ほぼ波形
状をなして円周方向に延びるスチールコードよりなるウ
ェィビィベルトを配設することもできる。

【００３１】

【実施例】サイズが３１５／６０Ｒ２２．５の重荷重用
タイヤに、図１に示すように空気のうを収納した安全タ
イヤにおいて、表１に示す補強構造を有する比較例およ
び実施例のそれぞれの空気のうにつき、耐カット性試験
を行ったところ表２に示す結果を得た。

【００３２】ここで、耐カット性試験は、タイヤが路上
の異物を踏み、それがタイヤに貫通して空気のうに達し
た場合に、異物の先端による空気のうの損傷が懸念され
る異物を想定して、一辺が６０ｍｍの正三角形をなし、
厚みが４０ｍｍの三角刃を用い、それをトレッドセンタ
にプランジャをもって、タイヤがカットを受けるまで押
し付け、タイヤがカットを受けた後の空気のうへのカッ
トの発生の有無を検査することにより行った。

【００３３】

【表１】

【００３４】

【表２】

【００３５】表２に示されるところによれば、実施例の
空気のうはいずれも、すぐれた耐カット性を有すること
が明らかである。

【００３６】

【発明の効果】以上に述べたところから明らかなよう
に、この発明によれば、とくに補強層を構成する複数本
の補強素子のそれぞれに、空気のうがタイヤ内面に密着
してなお十分な波形状が残留する程度のピッチおよび振
幅の波形を予め付与することで、タイヤの内圧が洩出し
たランフラット状態で、そのタイヤのトレッド部が、空
気のうにまで達する異物によって損傷されることがあっ
ても、空気のう自体はその異物を包み込むかのように変
形して、そこへの損傷の発生が十分に防止されるので、
すぐれたランフラット耐久性を発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明の実施の形態を示す、安全タイヤの
幅方向断面図である。

【図２】 図１に示す空気のうの平面図である。

【図３】 ランフラット状態を示す幅方向断面図であ
る。

【図４】 補強素子の延在態様を示す平面図である。

【図５】 他の実施形態を示す幅方向断面図である。

【図６】 ランフラット状態を示す幅方向断面図であ
る。 １ タイヤ ２ リム ３，２３ 空気のう ４ トレッド部 ５ サイドウォール部 ６ ビード部 ７ 中空環状体 ８，２８ 補強層 ９ 補強素子 ２９ 気室 λ 波形ピッチ Ａ 振幅

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 トレッド部と、一対のサイドウォール部
   およびビード部とを具えるタイヤに内蔵されて、そのタ
   イヤのパンク時に輪重を支持する円環状の空気のうであ
   って、 中空環状弾性体の外周面に、ほぼ波形状をなして円周方
   向に延びる複数本の補強素子よりなる少なくとも一層の
   補強層を設け、各補強素子に、空気のうの、タイヤ内面
   への密着姿勢でなお波形状を残留させてなる安全タイヤ
   用空気のう。
2. 【請求項２】 補強素子を化学繊維コードにより形成し
   てなる請求項１に記載の安全タイヤ用空気のう。
3. 【請求項３】 補強層の内周側に、二層以上のコード交
   差層よりなるベルトを配設してなる請求項１もしくは２
   に記載の安全タイヤ用空気のう。
4. 【請求項４】 補強層の内周側に、不織布ベルトもしく
   は円管状樹脂ベルトを配設してなる請求項１もしくは２
   に記載の安全タイヤ用空気のう。
5. 【請求項５】 補強層の内周側に、ほぼ波形状をなして
   円周方向に延びるスチールコードよりなるウェィビィベ
   ルトを配設してなる請求項１もしくは２に記載の安全タ
   イヤ用空気のう。
6. 【請求項６】 タイヤからの内圧の洩出後に拡張変形し
   てタイヤ内面に密着する請求項１〜５のいずれかに記載
   の安全タイヤ用空気のう。
7. 【請求項７】 内部を複数の独立した気室に区分してな
   る請求項６に記載の安全タイヤ用空気のう。
8. 【請求項８】 内部に独立した複数の気室を有し、タイ
   ヤへの所定の圧力の充填によってタイヤ内面に密着する
   請求項１〜５のいずれかに記載の安全タイヤ用空気の
   う。
9. 【請求項９】 請求項６もしくは７に記載の空気のうを
   リム組み姿勢でタイヤに内蔵するとともに、空気のうお
   よびタイヤのそれぞれに所定の圧力を充填した状態で、
   タイヤの負荷転動時のトレッド部接地領域で、空気のう
   の外周面をトレッド部内周面から離隔させて位置させて
   なる安全タイヤ。