JP3971913B2 - 安全タイヤ用空気のう - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、タイヤのパンク等によってタイヤ内圧が低下もしくは消失しても、所定の距離にわたって安全な走行を継続できる安全タイヤに用いられ、タイヤ内圧の低下等に伴って拡張変形して荷重の支持をタイヤから肩代わりする安全タイヤ用補強空気のうに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タイヤのパンク、エアバルブの損傷等が生じて、タイヤ内圧が減少もしくは消失しても、タイヤの交換、補修等が可能な設備を具える場所まで、タイヤをそのまま継続して安全に負荷転動させることができる安全タイヤの要請に応えるべく、従来から各種の安全タイヤが提案されている。
【0003】
その一例としては、図6に横断面図で示すように、タイヤ21の内側に、軟質ゴムからなる中空円環状の空気のう22を収納するとともに、この空気のう22のクラウン域の外周部分に補強層23をその全周にわたって配設したものがあり、かかる安全タイヤは、タイヤ21を規格リム24にリム組みして、そのタイヤ内に、バルブを介して所定の空気圧を充填するとともに、空気のう22内にもまたバルブを介してタイヤ内圧以上の空気圧を充填することにより使用に供される。
【0004】
ここで、規格リムとは、JATMA YEAR BOOK、ETRTO STANDARD MANUAL、TRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等で規格が定められたリムをいい、JATMA YEAR BOOKで代表すれば、規格リムは、一般情報に記載された適用リムに相当する。
【0005】
この安全タイヤでは、タイヤ21内への所定の空気圧の存在下でのそれの負荷転動に当っては、空気のう22の径成長抑制部材として機能する補強層23の作用により、トレッド接地域内で、その空気のう22がトレッド部の内面に擦れるのを有効に防止することができる。
【0006】
一方、タイヤ内圧の減少、消失等により、空気のう22の内外圧力差が所定値を越えた場合には、その空気のう22は、図7に示すように、補強層23の伸長変形下で、周方向および幅方向に拡張変形してタイヤ21の内面にそれのほぼ全体にわたって密着することで、従来のタイヤチューブの如くに機能して、タイヤ21の撓み変形を小さく抑制しつつ、荷重の支持をタイヤ21から肩代わりするので、タイヤ21のパンク時等における継続した安全走行を実現することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、空気のう22に補強層23を付設してなる補強空気のう25のこのような拡張変形の進行は、好ましくは、図8に横断面図で示すように、補強空気のう25の、補強層23による拘束を受けない左右の側部部分での変形に始まって、その変形が次第に補強層23の中央部側へ進展し、そして、ついては、図7に示すように、補強空気のう25が、タイヤ内面の全体にわたってほぼ均等に密着する変形挙動を辿って行われることになるところ、現実には、補強層23の、図の左右のそれぞれの側部部分でのモジュラスが不均一になることが多く、このモジュラス差に起因して、補強空気のう25が、図9に示すように、モジュラスの低い一方側にだけ偏った拡張変形を開始し、そしてこの変形がその一方側でだけ進行した場合には、甚だしくは、補強層23が、図示のように、他方側へ大きく押し退け変位されることがある。
【0008】
ここで、補強空気のう25のこのような偏った拡張変形は、補強層23の押し退け変位にまで至ると否とにかかわらず、補強空気のう25の一部分での局部的な伸長変形によるそれの薄肉化、その補強空気のう25の、トレッド内面への局部的な密着等を生じることになり、一旦このような現象が生じると、タイヤ内面と空気のう25との摩擦力その他に起因して、図7に示すような所要の接触態様には復し得ないため、補強空気のう25の荷重支持能力、耐久性等が必然的に低下するという問題があった。
【0009】
またこの一方で、空気のうの、荷重の支持の肩代わりに当って拡張変形することになる構成各部、たとえば、それの横断面内のそれぞれの部分でのモジュラス分布が適正でないときは、空気のうは、その拡張変形に当って自然平衡形状に近づく傾向に従って変形を行うことになるため、その変形によって、空気のうのいずれかの部分がタイヤ内面に局部的に早期に接触することがあり、この場合には、最も早くタイヤに接触した空気のう部分を中心とする空気のうのいわゆる片膨れ、および、それを原因とする空気のうの折れ曲がり現象が生じ、これらによってもまた、タイヤ内面の全体にわたる空気のうの均等な密着を実現することが不可能となるため、空気のうの荷重支持能力、耐久性等の低下が不可避になるという問題があった。
【0010】
この発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、それの目的とするところは、空気のうの、拡張変形を行う構成各部のモジュラス分布を、空気のうのクラウン域の幅方向中央部分のモジュラスをも含めて適宜に選択することにより、クラウン域のそれぞれの側部部分のモジュラスが不均一であるはと否とにかかわらず、空気のうの拡張変形を、タイヤ内面に対して、徐々にしてほぼ均等に行わせて、その空気のうをタイヤ内面の全体にわたって密着させることができ、その結果として、空気のうの荷重支持能力、耐久性等を十分に発揮させることができる安全タイヤ用空気のうを提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の安全タイヤ用空気のうは、トレッド部と、トレッド部のそれぞれの側部から半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部と、それぞれのサイドウォール部の内周側に連なるビード部とを具えるタイヤに収納されて内圧を充填され、タイヤ内圧の低下に伴って拡張変形して、荷重の支持をタイヤから肩代わりするものであり、たとえば、繊維部材とゴム、好ましくは、不織布とゴムとの複合体の配設に基づき、全体として中空円環状をなす空気のうの、サイドウォール部およびビード部の内面と対向する側部域の30%モジュラス、正確には、25℃での30%モジュラスを基準値とし、その空気のうの、トレッド部の内面と対向するクラウン域の同様の30%モジュラスを、その幅方向の中央部分を除いて基準値の3倍以上とするとともに、その中央部分の25℃での30%モジュラスを、隣接部分のそれよりも、基準値の1/2以上小さくし、また、タイヤのビードベースと対応してそれの内側に隣接する空気のうの基部域の同様の30%モジュラスを基準値の2倍以上としたものである。
【0012】
これによれば、空気のうの側部域と、クラウン域と、基部域とのそれぞれにおける相対的なモジュラス分布比を、その側部域で1、クラウン域で3以上、基部域で2以上とすることにより、空気のうのクラウン域に関しては、タイヤが正常状態にあって、タイヤ内圧が十分に保持されたままでのタイヤの負荷転動に際し、そのクラウン域の、トレッド部内面への接触を十分に防止できることはもちろん、タイヤ内圧の減少、消滅等に起因する空気のうの拡張変形に当り、クラウン域の、自然平衡形状に近づく傾向の変形を有効に抑制し、そのクラウン域の全体をトレッド部内面にほぼ同時にかつ均等に密着させることができる。
【0013】
そしてこのことは、クラウン域の幅方向中央部分のモジュラスを、隣接部分のそれよりも、基準値の1/2以上小さくして、空気のうの拡張変形をその幅方向中央部分から開始させるとともに、その拡張変形を、クラウン域の両側縁に向けてほぼ対称に進行させることによって一層顕著になる。すなわち、これによれば、クラウン域の中央部分のモジュラスの作為的な低減により、空気のうの拡張変形は、常にその中央部分から開始され、そこから幅方向外側へ伝播されるので、クラウン域のそれぞれの側部部分間にモジュラスのばらつきがあっても、空気のうは、所期した通りに適正に拡張変形することになる。
【0014】
また、空気のうの基部域に関しては、上記モジュラス比の付与により、空気のうの拡張変形時およびそれの前後における、リムの軸線方向へのその基部域の位置ずれおよび、空気のうへの遠心力等の作用に起因する、その基部域のクリープ変形を有効に防止することができる。
【0015】
ここで、空気のうの側部域は、基準となるそれのモジュラスに基づき、その側部域の極端に早期の、また、両側部域で不揃いのタイヤ内面への接触を抑制されることになり、これらの結果として、空気のうのクラウン域の、トレッド部内面への均等にして十分な密着が、より確実に行われることになる。
そしてこれらのことは、側部域の、25℃での30%モジュラスを3〜5MPaとした場合により一層効果的である。
【0016】
ところでこのようなモジュラス分布比を実現するに当り、空気のうの側部域の半径方向高さ(h)は、規格リムに組付けた安全タイヤの、空気のうへの充填圧力を、タイヤへの充填圧力より50kPa高くした空気のう姿勢で、空気のうの断面高さ(H)の0.5〜1.0倍とすることが、モジュラスが小さく、とくに大きく拡張変形するその側部域を十分広く確保して、空気のうのクラウン域の適正なる伸長量の下でのトレッド部内面への密着をもたらす上で好ましい。いいかえれば、それが0.5倍未満では、クラウン域がトレッド部内面に密着するに際しての側部域の十分な伸長量を確保することが難しく、その側部域が不均一に伸長するおそれがある。
【0017】
また、クラウン域の幅(B)は、同様の条件下で、空気のうの最大幅(S)の0.1〜1.0倍の範囲とすることが好ましく、これによれば、タイヤの偏平率等との関連の下で、タイヤの正常時のそれの負荷転動に対しては、クラウン域の不測の拡径変形を十分に抑制することができ、この一方で、タイヤのパンク等に起因する空気のうの拡張変形に当っては、クラウン域をトレッド部の内面に、その全体にわたって十分均等に密着させることができる。しかるに、0.1倍未満では、空気のうの形状維持が難しくなり、空気のうがそこへの遠心力の作用等によって不測の拡張変形を生じるおそれがある。
【0018】
さらに、基部域の幅(C)は、空気のうの最大幅(S)と基部域間隔(W)との差の0.5倍以下とするとともに、その基部域間隔(W)を最大幅(S)の0.3〜0.8倍とすることが、基部域に、空気のうの拡張変形時の固定点としての機能をより十分に発揮させる上で好ましい。
【0019】
加えて、クラウン域の中央部分の、モジュラスの低減幅(E)は、クラウン域の幅(B)の0.2倍以下とすることが、空気のうの拡張変形を、その中央部分から徐々に進行させて、クラウン域の、トレッド部内面への均等接触をもたらす上で好ましい。いいかえれば、0.2倍を越えると、空気のうの急激なる拡張による、不均等な接触を生じるうれいがある。
【0020】
ところで、空気のうの各部の所要のモジュラスは、不織布とゴムとの複合体の配設によって実現することが、好ましく、これによれば、空気のうの大きな伸長変形、いいかえれば拡張変形を十分に許容することができるとともに、空気のうの伸長量の増加に対応する、単位幅当りの引張力の変動を小さくして、空気のうの徐々なる拡張変形を行わせて、それの、タイヤ内面への均等なる密着をより確実に行わせることができる。また、不織布は、それの目付、単位厚さ、繊維の径および長さ等を選択することで、所要のモジュラスを簡易に実現することができる。
【0021】
なお、不織布の目付は、100〜3000mN/mの範囲とすることが好ましい。すなわち、目付が100mN/m未満では、ゴムに対する不織布繊維の分布むらが大きくなって、複合体の均一性の確保が難しく、その複合体の強度、モジュラスおよび破断時伸びのばらつきが大きくなり、目付が3000mN/mを越えると、不織布繊維に対するゴムの浸透性が低下して、ゴムからの繊維の剥離が生じ易く、ゴムに対する繊維の分布むらが大きくなる。
【0022】
この一方で、不織布とともに複合体を構成するゴムの、25℃での50%モジュラスは2〜9MPa、そして、100%モジュラスは40〜150MPaとすることが好ましい。
これによれば、ゴムを、通常時の空気のうの形状維持に有効に機能させる一方で、その空気のうの拡張変形を十分円滑ならしめるべく機能させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態を、安全タイヤのリム組立体の状態で示す横断面図であり、図中1は安全タイヤの全体を示す。
【0024】
この安全タイヤ1は、タイヤ2とそこに収納した空気のう3との組合わせになる。タイヤ2は、一般的な空気入りタイヤと同様のものであり、トレッド部4と、それの両側に連なる一対のサイドウォール部5と、サイドウォール部5の内周側に設けたビード部6とを具える。
【0025】
また、全体として中空円環状をなす空気のう3は、そのペリフェリにおいて、タイヤ2の内圧の低下もしくは消失に伴って、周方向および幅方向に拡張変形して荷重の支持に寄与する拡張変形部分と、タイヤ2に組付けたリムに対向もしくは接触して位置して、実質的に拡張変形しない排拡張部分とを具える。
【0026】
このような安全タイヤ1は、タイヤ2を先に述べたような規格リムRに組付けるとともに、それに固定したバルブを介してタイヤ内へ所定の内圧P、たとえばJATMA YEAR BOOK等でいう最高空気圧を充填し、併せて、空気のう3内へも所定の内圧P、たとえば内圧Pより50kPa高い内圧を充填することにより、リム組立体として使用に供することができる。なお、ここにおける内圧の充填対象物は、空気以外の不活性ガスその他のガスとすることもできる。
【0027】
ところでここにおける空気のうは、少なくとも拡張変形部分、図では、タイヤ2の両ビードベース7と対応して位置してそれらに隣接して位置する基部域8をも含んで、それより半径方向外方部分の全体を、たとえば、不織布とゴムとの複合体9をもって補強してなる。
一方、両基部域8間の排拡張部分はゴムのみをもって形成してなる。
【0028】
なお、図示の空気のう3は、このような複合体9をゴム中に埋設することにより基部域8およびその外方部分を構成しているも、十分な気密性を確保できることを条件に、一層以上の複合体9の相互接合、積層等によってその部分を構成することもでき、また、ゴム製の中空環状体の外面に複合体9を所要に応じて付設して構成することもできる。
【0029】
またここでは、空気のう3の、サイドウォール部5およびビード部6の内面と対向するそれぞれの側部域10の、25℃での30%モジュラスを、たとえば一層の複合体、好ましくは、不織布とゴムとの複合体9の配設下で3〜5MPaとするとともに、その空気のう3の、トレッド部4の内面と対向するクラウン域11の同様の30%モジュラスを、その幅方向の中央部分を除いて、たとえば四層の複合体9を配設することで、側部域モジュラスの3倍以上とする。
【0030】
ここで、クラウン域11の中央部分12、好ましくは、安全タイヤ1の赤道面Cを中心としてクラウン域11の幅の0.2倍以上の幅を有する中央部分12の30%モジュラスを、隣接部分に比して、たとえば、複合体9の配設層数を一層減じることで、その隣接部分の30%モジュラスよりも、側部域モジュラスの1/2以上小さい、すなわち、1.5〜2.5MPa以上小さい値とする。
そしてまた、基部域8の、25℃での30%モジュラスを、たとえば三層の複合体の配設に基づいて、側部域10のそれの2倍以上とする。
【0031】
このようなモジュラス分布によれば、タイヤ2の正常時のそれの負荷転動に際する、空気のう3の、トレッド部内面への接触を十分に防止することができ、この一方で、タイヤ内圧の低下時の空気のう3の、周方向および幅方向への拡張変形を、モジュラスの低い部分から徐々に進行させて、それの局部的な早期拡張に起因する不都合なしに、その空気のうの全体、とりわけクラウン域の全体をタイヤ内面にほぼ同時にかつほぼ均等に密着させることができ、このことは、基部域8に付与したモジュラスをもって、空気のう3の半径方向および幅方向の変位および変形を拘束することでより確実に行われることになる。
【0032】
なお、このようなそれぞれのモジュラス設定領域の好適範囲は、図1に示す空気のうの模式的な拡大図である図2(a)に示す通りとなる。すなわち、側部域10の半径方向高さhは、空気のう3の断面高さHの0.5〜1.0倍の範囲にあり、クラウン域11の幅Bは、空気のう3の最大幅Sの0.1〜1.0倍の範囲にあり、そして、基部域8の幅Cは、空気のう3の最大幅Sと基部域間隔Wとの差の0.5倍以上にあり、その基部域間隔Wは、上記最大幅Sの0.3〜0.8倍の範囲にある。ここで、クラウン域11の中央部分12の幅Eは、前述したように、クラウン域11の幅Bの0.2倍以下とすることが好ましい。
この場合、クラウン域中央部分12におけるモジュラスは、たとえば図2(b),(c)に示すように、その中央部分幅E内で漸次変化させることもできる。
【0033】
モジュラスの設定領域をこのように選択した場合には、空気のう3を、クラウン域11の中央部分12からより均一に拡張変形させることができ、その結果として、空気のう3の、周方向および幅方向の拡張変形を適正にコントロールして、それを、タイヤ内面の全体にわたってほぼ同時にかつ十分均等に密着させることができる。
【0034】
ところで、空気のう3の各部の所要のモジュラスを、不織布とゴムとの複合体9の配設によって実現する場合には、その不織布の目付を100〜3000mN/mとすることが、不織布繊維の分布むらを防いで複合体の均一性を確保し、併せて、複合体内での繊維の剥離を防ぐ上で好ましい。
【0035】
またこの場合には、不織布の、ゴムに対する繊維量を4〜50質量%とすることが、ゴムに対する繊維の均一な分散を担保する上で好ましく、さらには、不織布の繊維の平均径を0.01〜0.2mmの範囲とし、またその長さを8mm以上とすることが好ましい。
【0036】
すなわち、繊維径が0.01mm未満では、繊維の絡み合いは十分であるも、ゴムの浸透性が悪く、層内剥離等を生じるおそれが高く、一方、0.2mmを越えると、逆に、ゴムの浸透性は高いも、繊維の絡み合いが少なくなって、複合体10のモジュラス等が不足するうれいが残る。そして、繊維長さを8mm未満としたときは、これも、繊維の絡み合いが少なくなって、複合体としてのモジュラス等が不足する傾向にある。
【0037】
ここで、不織布に用いられる繊維素材としは、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコールに代表される合成素材や、レーヨン、セルロース等の天然繊維の単独又は二種類以上混合したものを挙げることができるが、前記以外の繊維素材であっても良い。また、繊維自身は、内層、外層を異なる素材とする二層構造の繊維も不織布の材料として使用することができる。
【0038】
なお、このような不織布複合体9におけるゴムは、加硫工程での熱および圧力によって繊維間に浸透又は進入するため、一般的には、不織布への特別の接着剤の塗布等の処理は必要ないが、より一層の接着力が必要な場合には、接着剤の塗布等の処理を施すこともできる。そして、これらのいずれにあっても、ゴムは、25℃での50%モジュラスが2〜9MPa、100%モジュラスが40〜150MPaであることが、空気のう3の形状維持および、それの円滑なる拡張変形を実現する上で好ましい。
【0039】
【実施例】
実施例1
空気のうクラウン域の、25℃での30%モジュラスを変化させたそれぞれの空気のうの拡張変形に際する、そのクラウン域の径成長量の平均値を求めたところ、図3に示すところとなった。
なおここでは側部域の30%モジュラスを4MPaとした。
図3によれば、クラウン域の30%モジュラスを12MPaとすることで、そのクラウン域の、自然平衡形状への変形を有効に抑制して、トレッド部内面に対する径成長量をクラウン域幅の全体にわたってほぼ均等にできることが解る。
従って、クラウン域の30%モジュラスを、側部域のそれの3倍以上とすることで、空気のうのクラウン域の全体をトレッド部の内面に、ほぼ同時に、十分均等に密着させることができる。
【0040】
実施例2
空気のう基部域の25℃での30%モジュラスを変化させたそれぞれの空気のうにつき、図1に示す、安全タイヤのリム組み内圧充填状態での、タイヤの負荷転動(100km/h)による、その空気のう基部域の周長クリープ量を測定したところ、図4にグラフで示す通りとなり、また、空気のうの拡張変形に際する、その基部域の、リム軸線方向への変位量を測定したところ、図5に示す通りとなった。
これらによれば、基部域の30%モジュラスを8MPa以上、すなわち、側部域モジュラスの2倍以上とすることで、その基部域の周長クリープ量、および、軸線方向変位量をともに有効に低減できることが解る。
従って、基部域の30%モジュラスを、側部域のそれの2倍以上とすることで、空気のう基部域をリムにより確実に固定することができ、この結果として、空気のうの拡張変形に際する、それのタイヤ内面への接触タイミング、接触状態等をより十分に揃えることができる。
【0041】
実施例3
サイズが315/60 R22.5(ETRTO 2000で規定)のタイヤのカーカスを、ラジアル配列のスチールコードよりなる一枚のカーカスプライにより形成し、空気のうを、不織布とゴム組成物との複合体により補強するとともに、空気のうの各部のモジュラスを表1に示すように変化させた場合のそれぞれの実施例タイヤにつき、規格リムに組付けたタイヤへの充填空気圧をゲージ圧で900kPa、そのタイヤに収納した空気のうへの充填空気圧をゲージ圧で950kPaとした場合の安全タイヤの走行耐久試験および、タイヤ内圧を大気圧まで低下させたパンク状態で、空気のう内圧をそれの拡張変形下で450kPaとした場合の低圧走行耐久試験を行ったところ表1に示す結果を得た。
【0042】
ここで、走行耐久試験は、ドラム上で34.8kNの荷重を負荷するとともに、60km/hの速度で、市場耐久性の指標としての15万kmを完走できるか否かを走行距離に応じた指数をもって評価することにより行い、低圧走行耐久試験は、同様の荷重および速度条件で、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を測定して指数評価することにより行った。なお指数値は大きいほどすぐれた結果を示すものとした。
なお、表1には、低圧走行耐久試験を行った場合の、空気のうへの偏った拡張変形の発生の有無をも併せて示した。
【0043】
【表1】
Figure 0003971913
【0044】
表1によれば、実施例タイヤはいずれも、すぐれた走行耐久性および低圧走行耐久性を発揮できることが解る。
【0045】
【発明の効果】
以上に述べたところから明らかなように、この発明によれば、とくに、空気のうのモジュラス分布を特定することにより、その空気のうの、タイヤ内面に対する徐々にして均等な拡張変形をもたらして、空気のうの、タイヤ内面の全体にわたる、ほぼ同時の、ほぼ均等な密着を実現できるので、それがタイヤ内面に局部的に早期に接触することに起因する不都合を取り除いて、空気のうの荷重支持能力、耐久性等を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を安全タイヤのリム組立体の状態で示す横断面図である。
【図2】 それぞれのモジュラス設定領域の好適範囲を示す図である。
【図3】 クラウン域モジュラスと径成長量との関連を示す図である。
【図4】 基部域モジュラスと周長クリープとの関連を示す図である。
【図5】 基部域モジュラスと軸線方向変位量との関連を示す図である。
【図6】 提案技術を示す図1と同様の横断面図である。
【図7】 図6に示す安全タイヤの、空気のうによる荷重支持状態を示す横断面図である。
【図8】 提案技術の空気のうの好適拡張状態を示す図である。
【図9】 提案技術の空気のうの好ましくない拡張状態を示す図である。
【符号の説明】
1 安全タイヤ
2 タイヤ
3 空気のう
4 トレッド部
5 サイドウォール部
6 ビード部
7 ビードベース
8 基部域
9 複合体
10 側部域
11 クラウン域
12 中央部分
C 赤道面
R 規格リム
h 側部域半径方向高さ
H 空気のう断面高さ
B クラウン域幅
S 空気のう最大幅
W 基部域間隔
E 中央部分幅
,P 内圧

Claims (6)

  1. トレッド部と、一対のサイドウォール部およびビード部とを具えるタイヤに収納されて内圧を充填され、タイヤ内圧の低下に伴って拡張変形して、荷重の支持をタイヤから肩代わりする空気のうであって、
    全体として中空円環状をなす空気のうの、サイドウォール部およびビード部の内面と対向する側部域の30%モジュラスを基準値とし、その空気のうの、トレッド部の内面と対向するクラウン域の30%モジュラスを、その幅方向の中央部分を除いて基準値の3倍以上とするとともに、上記中央部分の30%モジュラスを、隣接部分のそれよりも、基準値の1/2以上小さくし、タイヤのビードベースと対応する、空気のうの基部域の30%モジュラスを基準値の2倍以上としてなる安全タイヤ用空気のう。
  2. 側部域の30%モジュラスを3〜5MPaとしてなる請求項1に記載の安全タイヤ用空気のう。
  3. 規格リムに組付けた安全タイヤの、空気のうへの充填内圧を、タイヤへの充填圧力より50kPa高くした空気のう姿勢で、側部域の半径方向高さ(h)を、空気のうの断面高さ(H)の0.5〜1.0倍とするとともに、クラウン域の幅(B)を、空気のうの最大幅(S)の0.1〜1.0倍とし、基部域の幅(C)を空気のうの最大幅(S)と基部域間隔(W)との差の0.5倍以下とするとともに、その基部域間隔(W)を、上記最大幅(S)の0.3〜0.8倍としてなる請求項1もしくは2に記載の安全タイヤ用空気のう。
  4. 空気のうの各部の所要のモジュラスを、不織布とゴムとの複合体の配設によって実現してなる請求項1〜3のいずれかに記載の安全タイヤ用空気のう。
  5. 不織布の目付を100〜3000mN/mとしてなる請求項4に記載の安全タイヤ用空気のう。
  6. ゴムの50%モジュラスを2〜9MPa、100%モジュラスを40〜150MPaとしてなる請求項4もしくは5に記載の安全タイヤ用空気のう。
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