JP2009045747A - 空気入りタイヤの製造方法及び空気入りタイヤ - Google Patents

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大雅 石原
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隆成 佐口
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Abstract

【課題】インナーライナの内面上で、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤの製造する際に、吸音層の貼り付け時のしわや破れを発生を抑制する製造方法を提供する。また、成型ドラム上に、タイヤ構成部材を貼り付けて生タイヤを形成する空気入りタイヤの製造する際に、吸音層高さの均一化を図り、かつ、吸音層の剥離の発生を抑制する製造方法を提供する。更に、空気入りタイヤの空洞共鳴を抑制して、ロードノイズを低減しつつも、吸音層の高さの均一にし、しわや破れの発生を抑制することで吸音層の剥離の発生を抑制した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、インナーライナの内面上に、多孔質材料からなる吸音層を具え、かかる吸音層は、タイヤ周方向に隣接する複数の吸音部材からなる吸音部材列を少なくとも一列有する。
【選択図】図2

Description

この発明は、インナーライナの内面上で、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤの製造方法に関するものであり、特には吸音層の貼り付け時のしわや破れの発生を抑制するものである。また、この発明は、成型ドラム上に、タイヤ構成部材を貼り付けて生タイヤを形成する空気入りタイヤの製造方法に関するものであり、特には吸音層の高さの均一化を図り、かつ、吸音層の剥離の発生を抑制しようとするものである。また、この発明は、インナーライナの内面上で、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤに関するものであり、特にはかかる空気入りタイヤの空洞共鳴を抑制して、ロードノイズを低減しつつも、吸音層の高さの均一にし、しわや破れの発生を抑制することで吸音層の剥離の発生の抑制を図る。
リム組みされ、車両に取り付けられた空気入りタイヤでは、車両の走行中にトレッド部が路面の凹凸に衝接して振動することによって、タイヤ内腔に充填された空気が共鳴する。この空洞共鳴は、いわゆるロードノイズの主たる原因であり、その共鳴周波数の多くは180〜300Hzの範囲内に存在する。ロードノイズが、車室内に伝達されると、他の周波数帯域の騒音とは異なり、鋭く高いピーク値を取るため、車室内の乗員にとって耳障りな騒音となる。
かかる空洞共鳴を抑制し、ロードノイズを低減するため、特許文献1には、リムと、リムに装着される空気入りタイヤとがなすタイヤ内腔に、多孔質材料からなる制音用の環状の吸音層をタイヤ周方向に固定した空気入りタイヤが提案されている。しかし、特許文献1に記載された発明では、走行中のロードノイズは有効に低減できるものの、ゴムや合成樹脂を発泡させた発泡体等からなる帯状シートを、トレッド部の内周側でインナーライナ上に、円周方向に延在させて固着しており、その帯状シートが断熱機能も発揮するため、トレッド部内部で発生した熱を、空気入りタイヤとリムとによって区画される内腔内へ円滑に放熱できなくなるという不都合があった。
特許第3622957号明細書
従来技術が抱えるこのような問題点を解決するため、本願出願人は、特願2007−009062号において、空気入りタイヤのインナーライナ上に吸音層を貼り付けることで、空洞共鳴を抑制して、ロードノイズを低減しつつも、吸音層にインナーライナに達する貫通孔を少なくとも一個設けることで、トレッド部が発熱した際に吸音層の貫通穴から放熱して、トレッド部の熱破壊を抑制した空気入りタイヤを提案している。しかし、かかる空気入りタイヤは、空洞共鳴によるロードノイズは低減しているが、その製造時に吸音層の高さが不均一となったり、しわや破れが発生したりすることで、タイヤ負荷転動時に吸音層がタイヤ本体から剥離してしまう虞がある。また、かかる空気入りタイヤを製造するに当たり、成型ドラム上にて、一枚の帯状の吸音部材を貼り付けて吸音層を具える生タイヤを形成する場合には、吸音層が貼り付けられた生ケースをブラダにより拡張するときに、生ケースの軸線方向の中央部分近傍の拡張率が高く、均等に拡張することから、生ケースの軸線方向の中央部分近傍の内面に貼り付けられた吸音層は、かかる拡張に追従して拡張することができずに、生ケースの内面から剥離したり、吸音層のジョイント部が外れたりする虞があり、一方、生ケースの端部近傍の内面に貼り付けられた吸音層は、生ケースの端部に近いほどその拡張率が小さく、拡張時に拡張差が生じることから、吸音層も生ケースの端部から遠い程引っ張られて高さが不均一になる虞がある。あるいは、かかる空気入りタイヤを製造するに当たり、加硫済み又は未加硫のタイヤ本体のサイドウォール部内面又はショルダー部内面に一枚の帯状の吸音部材を貼り付ける場合には、吸音部材が貼り付けられる領域に径差があることから、一枚の帯状の吸音部材の外周側を、タイヤ本体のサイドウォール部又はショルダー部の外周側に一致させてタイヤ内面に貼り付けると、径差により吸音部材の内周側にしわが発生する虞があり、一方、一枚の帯状の吸音部材の内周側を、タイヤ本体のサイドウォール部又はショルダー部の内周側に一致させてタイヤ内面に貼り付けると、径差により吸音部材の外周側が引っ張られて破れが発生する虞がある。上記したような、吸音層の高さが不均一であったり、そのジョイント部が外れていたり、しわや破れが発生しているような空気入りタイヤは、それらのことに起因して、ユニフォミティが悪化することで走行性能が低下したり、タイヤ負荷転動時に吸音層が剥離して、空洞共鳴によるロードノイズを低減することができなくなる虞がある。なお、ここでいう「吸音層の高さ」とは、タイヤ内面に立てた法線に沿って計測した吸音層の長さをいうものとする。
したがって、この発明は、これらの問題点を解決することを目的とするものであり、その目的は、空気入りタイヤの空洞共鳴によるロードノイズを低減しつつも、吸音層の高さを均一とし、しわや破れの発生を抑制することで、吸音層の剥離の発生を抑制した空気入りタイヤを提供することにある。また、この発明の目的は、そのような空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
前記の目的を達成するため、第一発明は、インナーライナの内面上に、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤを製造するに当たり、未加硫又は加硫済のタイヤ本体のインナーライナの内面上に、多孔質材料からなる複数の吸音部材を、タイヤ周方向に隣接させて貼り付けることで少なくとも一列の吸音部材列を形成して、吸音層を構成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。このような製造方法を採用することにより、サイドウォール部に径差があっても、吸音部材がタイヤ周方向に隣接して離間していることから、一枚の帯状の吸音部材を貼り付ける際に発生するようなしわや破れの発生を抑制することが可能となる。また、一枚の帯状の吸音部材を、タイヤ周方向に沿って、しわや破れが発生しないように均等に貼り付けることは手間及び時間を要するが、複数の吸音部材を、タイヤ周方向に沿って、しわや破れが発生しないように貼り付けることは容易であり、手間及び時間を要さないので、吸音部材の貼り付けを容易とすることが可能である。
第二発明は、ドラム上に、タイヤ構成部材を貼り付けて生タイヤを形成する空気入りタイヤの製造方法において、ドラム上に、多孔質材料からなる複数の吸音部材をドラム周方向に隣接させて貼り付けることで、少なくとも一列の吸音部材列から構成される吸音層を形成する工程を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。このような製造方法を採用することにより、生ケースの軸線方向の中央部分近傍に吸音部材が貼り付けられた場合には、生ケースをブラダにより拡張するときに、生ケースの軸線方向の中央部分近傍が高い拡張率で均等に拡張しても、吸音部材がドラム周方向に離間していることから、かかる離間している領域内のゴムが生ケースの拡張に追従して拡張するので、吸音層の剥離を防止することが可能となる。また、生ケースは、生ケースの端部に近づくほどその拡張率が小さくなり、生ケースの端部に近いほど拡張せずに拡張差が生じることから、生ケースの端部近傍の内面に吸音部材が貼り付けられた場合には、吸音部材間の離間領域内のゴムが、かかる拡張に追従して拡張するので、吸音層の高さが不均一になることを抑制することが可能となる。また、かかる製造方法では、吸音層を生ケースの周方向に連続させるための、吸音部材を重ね合わせて接着したジョイント部が存在しないことから、そもそも、拡張時のジョイント外れを心配する必要がなくなる。
第三発明は、インナーライナの内面上に、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤにおいて、吸音層は、タイヤ周方向に隣接する複数の吸音部材からなる吸音部材列を少なくとも一列有することを特徴とする空気入りタイヤである。かかる空気入りタイヤは、吸音層が配されていることから、空洞共鳴によるロードノイズを低減することができ、また、このタイヤは、第一発明又は第二発明により製造することができるので、吸音層の高さの均一性を確保しつつも、しわや破れの発生の抑制が図られ、タイヤ負荷転動時の吸音層の剥離の発生を抑制することが可能となる。
また、ベルト層のタイヤ幅方向端位置からタイヤ内面のペリフェリに沿ってタイヤ赤道面側に10mm離間した位置と、ベルト層のタイヤ幅方向端位置からタイヤ内面のペリフェリに沿ってビード部のビードトウ側に10mm離間した位置との範囲内に占める、吸音層が配設されている面積の割合が75%以下であることが好ましい。
なお、ここでいう「ベルト層のタイヤ幅方向端位置」とは、次の規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、“Approved Rim”、“Recommended Rim”)にタイヤを組み付け、次の規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)及び最大荷重に対応する空気圧を適用した条件での接地状態にて、タイヤ幅方向断面で見て、タイヤ径方向で最も内側に位置するベルト層である最内ベルト層のタイヤ幅方向端縁からインナーライナの内面に下ろした垂線の延長線と、タイヤ内面、すなわち吸音層の内面との交点に対応する位置をいうものとする。そして規格とは、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格をいい、例えばアメリカ合衆国ではThe Tire and Rim Association Inc.の“Year Book”であり、欧州ではThe European Tyre and Rim Technical Organisationの“Standard Manual”であり、日本では日本自動車協会の“JATMA Year Book”である。また、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスに置換することも可能である。
この発明によれば、インナーライナの内面上で、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤを製造する際に、吸音層の貼り付け時のしわや破れを発生を抑制する製造方法を提供することが可能となる。また、この発明によれば、成型ドラム上に、タイヤ構成部材を貼り付けて生タイヤを形成する空気入りタイヤを製造する際に、吸音層高さが均一となる製造方法を提供することが可能となる。更に、この発明によれば、空洞共鳴によるロードノイズを低減しつつも、吸音層の剥離の発生を抑制した空気入りタイヤを提供することが可能となる。
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的な空気入りタイヤ(以下「タイヤ」という。)をリムに装着して構成したタイヤとリムの組立体のタイヤ幅方向における断面を示している。図2は、図1に示すタイヤのタイヤ内面の部分展開図を示している。
この発明のタイヤ1は、慣例に従い、路面に接地するトレッド部2と、このトレッド部2の両側部からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3のタイヤ径方向内側に設けられ、リムRに嵌合される一対のビード部4とでタイヤ本体5を構成している。このタイヤ本体5の内部には、各ビード部4に埋設したビードコア6、6間にトロイド状に延びてタイヤ本体5の骨格構造をなす、例えばラジアル構造のカーカス7と、このカーカス7のクラウン域の外周側に位置し、トレッド部2を補強するベルト8とが配設されている。また、タイヤ本体5の内面側、すなわちタイヤ1とリムRとにより画定されるタイヤ内腔9に面する側には空気不透過性のインナーライナ10が配設されている。また、この発明のタイヤは、図1に示すように、インナーライナ10の内面上に、多孔質材料からなり、吸音部材11を貼り付けて構成される吸音層12を具える。
かかるタイヤ1を製造する場合には、図3に示すように、加硫前のタイヤ本体5、すなわち生タイヤ14のインナーライナ10の内面上であって、図中にて点線で示すサイドウォール部3内面位置に、複数の吸音部材11を、タイヤ周方向に隣接させて貼り付けることで、この例では3列の吸音部材列13を形成して、吸音層12を構成する。次いで、かかる生タイヤ14を加硫モールドにて加硫成型して、吸音層12を具えるタイヤ1を製造する。このとき、サイドウォール部3内面位置ではなく、ショルダー部15内面位置に複数の吸音部材11を貼り付けることもできる。あるいは、図4に示すように、加硫済みのタイヤ本体5のインナーライナ10の内面上であって、図中にて点線で示すショルダー部15内面位置に、複数の吸音部材11を貼り付けることで、吸音層12を具えるタイヤ1を製造する。このとき、ショルダー部15内面位置ではなく、サイドウォール部3内面位置に複数の吸音部材11を貼り付けることもできる。それらの製造方法を採用することにより、タイヤ本体5のサイドウォール部3内面又はショルダー部15内面に吸音部材11を貼り付けても、複数の吸音部材11がタイヤ周方向に隣接して離間していることから、一枚の帯状の吸音部材11を径差のあるサイドウォール部3内面又はショルダー部15内面に貼り付けることにより発生するような、しわや破れの発生を抑制することが可能となる。また、一枚の帯状の吸音部材11を、タイヤ周方向に沿って、しわや破れが発生しないように均等に貼り付けることは手間及び時間を要するが、複数の吸音部材11を、タイヤ周方向に沿って、しわや破れが発生しないように貼り付けることは手間及び時間を要さないので、吸音部材の貼り付けを容易とすることが可能である。
加硫済のタイヤ本体5に吸音部材11を貼り付ける場合には、スチレン−ブタジエンゴム系のラテックス接着剤、水性高分子−イソシアネート系の接着剤、又はアクリル系、合成樹脂系の粘着テープを用いてインナーライナ10の内面に化学的に接着することもでき、また、未加硫のタイヤ本体5に吸音部材11を貼り付ける場合には、かかる接着テープや接着剤により仮固定した後に、加熱及び加圧による加硫成形により、吸音部材11をインナーライナ10の内面に含浸させて物理的に固定することもできる。
あるいは、かかるタイヤ1を製造する場合には、図5(A)に示すように、成型ドラム16上に、多孔質材料からなる複数の吸音部材11をドラム周方向に隣接させて貼り付けることで、この例では3列の吸音部材列13から構成される吸音層12を形成する。次いで、かかる吸音層12上に、インナーライナ、カーカスプライ、ビードコア、サイドウォールゴム等のタイヤ構成部材を貼り付けて、図5(B)に示すような、生ケース17を構成する。次いで、その生ケース17をブラダ等により膨らませ、別途成型したベルト層、補強層、トレッドゴム等の円筒状のタイヤ構成部材の内周面に生ケース17を貼り付け、ブラダ等により膨らませることで、図5(C)に示すような形状の生タイヤ14を製造する。このとき、生ケース17の軸線方向の中央部分近傍が高い拡張率で均等に拡張しても、生ケース17の軸線方向の中央部分近傍の内面に貼り付けられた吸音部材11がドラム周方向に離間していることから、かかる離間している離間領域内のゴムが、生ケース17の拡張に追従して拡張するので、吸音層12の剥離を防止することが可能となる。また、生ケース6は、生ケース17の端部に近づくほどその拡張率が小さくなり、生ケース17の端部に近いほど拡張せずに拡張差が生じるが、生ケース17の端部近傍の内面に貼り付けられた吸音層12は、吸音部材11間の離間領域内のゴムが、かかる拡張に追従して拡張するので、吸音層12の高さが不均一になることを抑制することが可能となる。更に、かかるタイヤ1の製造方法では、吸音層12には、吸音部材11を重ね合わせて接着したジョイント部が存在しないことから、そもそも、径拡張による吸音層12のジョイント外れを心配する必要がない。それから、そのような生タイヤ14を加硫モールドにて加硫成型して、吸音層12を具えるタイヤ1を製造することができる。なお、図示の例では、吸音層12はトレッド部2内面及びサイドウォール部3内面に配設されているが、吸音層12をショルダー部15内面に配設することももちろん可能である。
このようにして形成したタイヤ1では、吸音層12は、タイヤ周方向に隣接する複数の吸音部材11からなる吸音部材列13を少なくとも一列有している。かかるタイヤ1は、吸音層12が配されていることから、空洞共鳴によるロードノイズを低減することができ、また、上記製造方法により製造されると、吸音層12の高さの均一性を確保しつつも、しわや破れの発生の抑制が図られ、タイヤ負荷転動時の吸音層12の剥離の発生を抑制することが可能となる。また、副次的な効果ではあるが、かかるタイヤ1は、吸音層12が配されていることから、空洞共鳴によるロードノイズを低減することができ、また、タイヤ負荷転動時に発熱し易い領域から発熱しても、吸音部材11間の離間領域から有効に放熱され、タイヤ1の耐久性を有効に向上することが可能となる。タイヤ負荷転動時に発熱し易い領域は、具体的には、タイヤ負荷転動時に剪断変形し易く、耐久走行時に破壊核となり易いベルト層8のタイヤ幅方向端18や、タイヤ負荷転動時に繰返し倒れ込み変形し易い、タイヤ最大幅位置19などが挙げられる。なお、タイヤ最大幅位置19とは、前記した適用サイズにおける標準リムRにタイヤ1を組み付け、適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)及び最大荷重に対応する空気圧を適用した条件での接地状態にて、タイヤ幅方向断面における断面幅が最大となる位置をいうものとする。
更に、ベルト層8のタイヤ幅方向端14位置からタイヤ1内面のペリフェリに沿ってタイヤ赤道面側に10mm離間した位置と、ベルト層8のタイヤ幅方向端14位置からタイヤ1内面のペリフェリに沿ってビード部4のビードトウ20側に10mm離間した位置との範囲内に占める、吸音層12が配設されている面積の割合が75%以下であることが好ましい。なぜなら、かかる範囲内において、吸音層12が配設されている面積が75%を超えている場合には、タイヤ負荷転動時にベルト層8のタイヤ幅方向端14が剪断変形して発熱しても、吸音層12が断熱してしまい、トレッド部2に蓄熱されることとなるので、ベルト層8のタイヤ幅方向端14における温度が大きくなり過ぎて、タイヤ1の耐久性が低下する可能性があるからである。
更にまた、吸音層14を構成する吸音部材11は、連続気泡構造もしくは独立気泡構造の、ゴムや合成樹脂の発泡体、又は、合成繊維、植物繊維もしくは動物繊維からなる不織布等によって構成することができる。そして、吸音部材11を不織布にて構成する場合には、所要の吸音効果を発揮させるためには、その比重を0.1〜2.0の範囲内とすること、及び、繊維の平均直径を0.1〜200μmとすることが好ましい。
なお、上述したところはこの発明の実施形態の一部を示したに過ぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を交互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。例えば、タイヤ幅方向に隣接する複数列の吸音部材列13をトレッド部2内面内面に配して、吸音層12を構成することが可能である。また、例えば図6〜8に夫々示すよように、複数の吸音層12を、トレッド部5内面、ショルダー部15内面又はサイドウォール部3内面のみに配することも可能である。
次に、吸音層を具えない従来のタイヤ(従来例タイヤ)、及びこの発明に従う吸音層を具えるタイヤ(実施例タイヤ1〜4)を、タイヤサイズ215/45R17の乗用車用ラジアルタイヤとして、夫々試作し、タイヤの耐久性及び空洞共鳴の抑制に関し評価したので、以下に説明する。
吸音層を具えない従来例タイヤ、及び、図2のタイヤ内面の部分展開図に示すような、トレッド部内面に及びショルダー部内面にタイヤ周方向に沿って隣接する複数の吸音部材から構成される吸音層を具える実施例タイヤ1〜4は、夫々表1に示す諸元を有する。なお、吸音層は、吸音層の繊度:6dtex、目付け量:500g/mのPET不織布から構成されている。
Figure 2009045747
これら各供試タイヤをサイズ17×7Jのリムに取り付けてタイヤ車輪とし、空気圧:320kPa(相対圧)、タイヤ負荷荷重:3.82kNを適用した状態で、耐久性の評価に供した。
耐久性は、JIS D4230(1998)に規定される、高速性能試験Bの条件(JATMA 自動車用タイヤ安全基準(品質基準編)に準拠)に基づいて、ドラム試験機上にてステップ毎に回転速度を上昇させていき、タイヤに故障が生じるまでの速度を記録し、従来例タイヤにおける故障が発生するまでの速度を100として相対評価した。その結果を表2に示す。このとき、評価結果の数値が大きいほど耐久性に優れることを示す。
また、各供試タイヤをサイズ17×7Jのリムに取り付けてタイヤ車輪とし、空気圧:210kPa(相対圧)、タイヤ負荷荷重:3.92kNを適用した状態で車両に装着し、空洞共鳴の抑制の評価に供した。
空洞共鳴の抑制については、上記車両を60km/hでアスファルト路面上を走行している際の、運転席における車内騒音を測定し、その測定結果を周波数分析することで、230kHz付近におけるピークの音圧レベルを算出し、空洞共鳴の抑制効果を評価した。その評価結果を表2に示す。なお、表中の評価結果は、従来例タイヤの音圧レベルを基準とし、音圧レベルの低減量をデシベル(dB)で表したものであり、その数値が大きいほど空洞共鳴の抑制効果が大きいことを示す。
Figure 2009045747
表2の結果から明らかなように、この発明の吸音層を具える実施例タイヤ1〜4は、吸音層を具えない従来例タイヤと比較して、耐久性を充分に維持しつつも、空洞共鳴による騒音を有効に低減している。なお、耐久性の試験では、実施例タイヤ1〜4が、従来例タイヤに先立ってベルト層のタイヤ幅方向端近傍から破壊されるに至った。
また、従来技術の製造方法により製造された吸音層を具えるタイヤ(比較例タイヤ1〜4)、及びこの発明に従う製造方法により製造された吸音層を具えるタイヤ(実施例タイヤ5〜8)を、タイヤサイズ215/45R17の乗用車用ラジアルタイヤとして、夫々10本ずつ試作し、吸音層の高さの均一性、しわ、剥離の発生について評価したので、以下に説明する。
比較例タイヤ1は、タイヤを製造するに当たり、成型ドラム上にて一枚の帯状の吸音部材を貼り付けて、トレッド部内面にタイヤ赤道面を中心とした吸音層を配したタイヤであり、比較例タイヤ2は、成型ドラム上にて一枚の帯状の吸音部材を貼り付けて、サイドウォール部内面にタイヤ最大幅位置のタイヤ内面位置を中心として吸音層を配したタイヤであり、比較例タイヤ3は、加硫済みのタイヤ本体内に、タイヤ赤道面を中心として一枚の帯状の吸音部材を貼り付けて、トレッド部内面に吸音層を配したタイヤであり、比較例タイヤ4は、加硫済みのタイヤ本体内に、タイヤ最大幅位置のタイヤ内面位置を中心として一枚の帯状の吸音部材の外周側を、タイヤ本体のサイドウォール部の外周側に一致させてタイヤ内面に貼り付けて、吸音層を配したタイヤである。なお、比較例タイヤ1〜4は、一枚の帯状の吸音部材は、重ね代20mmにてその両端同士を貼り付けて、ジョイント部を形成している。また、実施例タイヤ5は、成型ドラム上にて複数の吸音部材を貼り付けて、トレッド部内面にタイヤ赤道面を中心としてタイヤ周方向に離間して隣接する吸音部材からなる吸音層を配したタイヤであり、実施例タイヤ6は、成型ドラム上にて複数の吸音部材を貼り付けて、サイドウォール部内面にタイヤ最大幅位置のタイヤ内面位置を中心としてタイヤ周方向に離間して隣接する吸音部材からなる吸音層を配したタイヤであり、実施例タイヤ7は、加硫済みのタイヤ内に、タイヤ赤道面を中心として複数の吸音部材を貼り付けて、トレッド部内面にタイヤ周方向に離間して隣接している吸音部材からなる吸音層を配したタイヤであり、実施例タイヤ8は、加硫済みのタイヤ内に、タイヤ最大幅位置のタイヤ内面位置を中心として複数の吸音部材を貼り付けて、サイドウォール部内面にタイヤ周方向に離間して隣接している吸音部材からなる吸音層を配したタイヤである。なお、比較例タイヤ1〜4、及び実施例タイヤ5〜8における、吸音部材は、繊度:6dtex、目付け量:500g/mのPET不織布から構成されており、吸音部材はタイヤ内面にゴム系の接着剤により貼り付けられており、それらタイヤは、夫々表3に示す諸元を有する。
その結果、比較例タイヤ1では、10本とも吸音層の剥離が発生しており、比較例タイヤ2では、10本とも吸音層の高さが不均一となっており、比較例タイヤ4では、10本とも吸音層にしわが発生していた。それに対し、比較例タイヤ3、及び、実施例タイヤ5〜8では、いずれのタイヤにおいても、吸音層が剥離せず、その高さも均一となっており、しわも発生していなかった。
Figure 2009045747
以上のことから明らかなように、この発明により、インナーライナの内面上で、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤの製造する際に、吸音層の貼り付け時のしわや破れを発生を抑制する製造方法を提供することが可能となった。また、この発明により、成型ドラム上に、タイヤ構成部材を貼り付けて生タイヤを形成する空気入りタイヤの製造する際に、吸音層高さの均一化を図り、かつ、吸音層の剥離の発生を抑制する製造方法を提供することが可能となった。更に、この発明により、空洞共鳴によるロードノイズを低減しつつも、吸音層の高さの均一にし、しわや破れの発生を抑制することで吸音層の剥離の発生の抑制した空気入りタイヤを提供することが可能となった。
リム組みした、この発明に従う代表的なタイヤのタイヤ幅方向断面図である。 図1に示すタイヤのタイヤ内面の部分展開図である。 生タイヤに吸音部材を貼り付ける前後の状態を示した断面図である。 加硫済みのタイヤに吸音部材を貼り付ける前後の状態を示した断面図である。 (A)は、成型ドラム上に吸音部材を貼り付ける前後の状態を示した断面図であり、(B)は、この発明に従う吸音部材を具える生ケースの断面図であり、(C)は、かかる生ケースを拡張した生タイヤの断面図である。 この発明に従うその他のタイヤのタイヤ内面の部分展開図である。 この発明に従うその他のタイヤのタイヤ内面の部分展開図である。 この発明に従うその他のタイヤのタイヤ内面の部分展開図である。
符号の説明
1 タイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 タイヤ本体
6 ビードコア
7 カーカス
8 ベルト層
9 タイヤ内腔
10 インナーライナ
11 吸音部材
12 吸音層
13 吸音部材列
14 生タイヤ
15 ショルダー部
16 成型ドラム
17 生ケース
18 ベルト層のタイヤ幅方向端
19 タイヤ最大幅位置
20 ビードトウ
R リム
CL タイヤ赤道面

Claims (4)

  1. インナーライナの内面上に、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤを製造するに当たり、
    未加硫又は加硫済のタイヤ本体のインナーライナの内面上に、多孔質材料からなる複数の吸音部材を、タイヤ周方向に隣接させて貼り付けることで少なくとも一列の吸音部材列を形成して、前記吸音層を構成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  2. 成型ドラム上に、タイヤ構成部材を貼り付けて生タイヤを形成する空気入りタイヤの製造方法において、
    前記成型ドラム上に、多孔質材料からなる複数の吸音部材をドラム周方向に隣接させて貼り付けることで、少なくとも一列の吸音部材列から構成される吸音層を形成する工程を含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
  3. インナーライナの内面上に、多孔質材料からなる吸音層を具える空気入りタイヤにおいて、
    前記吸音層は、タイヤ周方向に隣接する複数の吸音部材からなる吸音部材列を少なくとも一列有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  4. ベルト層のタイヤ幅方向端位置からタイヤ内面のペリフェリに沿ってタイヤ赤道面側に10mm離間した位置と、該ベルト層のタイヤ幅方向端位置からタイヤ内面のペリフェリに沿ってビード部のビードトウ側に10mm離間した位置との範囲内に占める、前記吸音層が配設されている面積の割合が75%以下である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
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