JP2002107433A - 磁気式センサーとその製造方法、およびエンコーダー - Google Patents

磁気式センサーとその製造方法、およびエンコーダー

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JP2002107433A
JP2002107433A JP2000297017A JP2000297017A JP2002107433A JP 2002107433 A JP2002107433 A JP 2002107433A JP 2000297017 A JP2000297017 A JP 2000297017A JP 2000297017 A JP2000297017 A JP 2000297017A JP 2002107433 A JP2002107433 A JP 2002107433A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エレクトロマイグレーションによる信頼性劣
化を起こすことなく小型化でき、放熱性の良好な磁気式
センサーを提供する。 【解決手段】 磁気抵抗効果膜を有する感磁部と、前記
感磁部を端子部に接続する配線膜と、少なくとも感磁部
を被覆する保護膜を基板上に備える磁気式センサーであ
って、前記配線膜を銅と他の金属の多層構造膜で構成
し、前記配線膜の膜厚は膜厚0.1μm以上且つ1.0
μm以下であり、前記保護膜を膜厚1.0μm以上且つ
5.0μm以下である酸化アルミニウム膜で構成する磁
気式センサーを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、産業機械やOA機
器等に組み込まれる磁気式のエンコーダーに使用される
磁気式センサーに関する。
【0002】
【従来の技術】図7は磁気式センサーを搭載した磁気式
ロータリーエンコーダーの構成例の概略図である。円筒
状の磁気媒体75の外周に設けた磁性体71には所定の
ピッチλで連続した磁化パターンを形成している。この
磁気式ロータリーエンコーダーは、磁気式センサー72
で磁化パターンを検出することで磁気媒体75の回転数
や回転位置を認識するものである。磁気式センサー72
の出力信号は、フレキシブル配線基板73を経由して波
形整形回路74にわたり、出力信号の増幅等の信号処理
をした後、モーター制御部に出力されてモーターの制御
に利用される。モーターはシャフト76を介して磁気媒
体75と接続される。同図ではモーターやモーター制御
部の図示を省略した。以下、磁気式ロータリーエンコー
ダーや、板状あるいはフィルム状の磁気媒体(例えば、
リニアスケール)を用いたエンコーダーを含めて“エン
コーダー”と称する。
【0003】磁気式センサーとして、磁性膜の磁気抵抗
効果(MR効果)や巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を
利用するものが知られている。磁気式センサーは、感磁
部/配線膜/保護膜を素子として基板上に積層し、保護
膜に穴をあけてから露出した配線膜に端子部を設ける。
配線膜にはアルミニウムを用い、保護膜にはシリコン酸
化物を使う。このような磁気式センサーについて、端子
部にフレキシブル配線基板の配線をハンダ付けしてエン
コーダーに組み込む。磁気式センサー72は、図7に示
すように磁性体71と一定の距離を隔てて組み込むもの
と、磁性体71と磁気式センサー72を接触させて使用
するものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】磁気式センサーの小型
化を進めるに当たって、アルミニウム配線(Al配線)
のエレクトロマイグレーションが障害となっている。エ
レクトロマイグレーションによりアルミニウム配線が断
線し易くなる。エレクトロマイグレーションの要因は、
材料の活性化エネルギーが小さいこと、電流密度が大き
いこと、あるいは素子温度が高いことなどである。すな
わち、アルミニウムの活性化エネルギーは0.59eV
という小さい値である。配線の小型化は電流密度を増大
させる。また、配線抵抗によるジュール熱は、素子温度
を上げてしまう。特に、従来の絶縁膜及び保護膜の構成
が素子温度上昇に寄与している。
【0005】絶縁膜および保護膜に用いる酸化シリコン
(SiO)は、膜中にピンホールが多く、信頼性を損
ねる原因になっている。従来技術では、信頼性改善のた
め、酸化シリコン膜の膜厚を増大させることによりピン
ホールの発生を防止したり、酸化シリコン膜にポリイミ
ド系樹脂膜を被覆することによりピンホールを塞いでい
る。しかしながら、これらのピンホール対策は、配線の
温度を上昇させるように作用する。酸化シリコンは熱伝
導率が低いため、厚くすると素子温度が上昇する。ポリ
イミド系樹脂を積層すると、配線からの放熱を妨げられ
て素子温度が上昇する。温度上昇は、素子の劣化にもつ
ながる。特に、配線膜を立体交差させる際にポリイミド
系樹脂膜を用いると、素子の温度が上昇し易い。この立
体交差は、基板上に配線膜/絶縁膜(酸化シリコン膜/
ポリイミド系樹脂膜)/立体交差する配線膜/保護膜
(酸化シリコン膜/ポリイミド系樹脂膜)という順に積
層される。立体交差する箇所では、基板上の配線膜がポ
リイミド系樹脂膜で2重に覆われているため、配線膜の
放熱が更に困難になる。また、絶縁膜の多層化は、工数
の増大という点でも弊害になる。
【0006】そこで、本発明は、従来の問題点を解決し
て、信頼性の高い磁気式センサーを低コストで実現す
る。さらに、小型化が可能な素子構造、製造方法を提供
することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気式センサー
は、磁気抵抗効果膜を有する感磁部と、前記感磁部を端
子部に接続する配線膜と、少なくとも感磁部を被覆する
保護膜を基板上に備える磁気式センサーであって、前記
配線膜を銅と他の金属の多層構造膜で構成し、前記配線
膜の膜厚は0.1μm以上且つ1.0μm以下であり、
前記保護膜を膜厚1.0μm以上且つ5.0μm以下の
酸化アルミニウム膜で構成することを特徴とする。ここ
で、感磁部は1以上の磁気抵抗効果膜を備え、磁気式セ
ンサーの外部の磁界を検知する。配線膜は、感磁部と端
子部を電気的に導通させる。端子部は、磁気式センサー
の電極あるいは端子に相当し、配線膜の端に設けられた
金属膜やハンダ等の少なくともいずれかを含む。銅と他
の金属の多層構造膜は、銅以外の金属膜と銅膜を要素と
して含む積層膜に相当する。
【0008】本発明の他の磁気式センサーは、磁気抵抗
効果膜を有する複数の感磁部と、前記感磁部を端子部に
接続する複数の配線膜と、少なくとも感磁部を被覆する
保護膜を基板上に備える磁気式センサーであって、前記
複数の配線膜の少なくとも一つは補助配線膜を備え、前
記補助配線膜は絶縁膜を介して他の配線膜と立体交差
し、前記配線膜および前記補助配線膜を銅と他の金属の
多層構造膜で構成し、前記配線膜および前記補助配線膜
の膜厚は0.1μm以上且つ1.0μm以下であり、前
記絶縁膜を膜厚0.2μm以上且つ1.0μm以下の酸
化アルミニウム膜で構成し、前記保護膜を膜厚1.0μ
m以上且つ5.0μm以下の酸化アルミニウム膜で構成
することを特徴とする。
【0009】ここで、前記複数の配線膜は、感磁部と端
子部間を配線膜のみで結合するもの(第1の配線膜)
と、配線膜の途中を補助配線膜に置換したもの(第2の
配線膜)とを含む。第2の配線膜によると、感磁部/配
線膜/補助配線膜/配線膜/端子部という順に接続され
る。立体交差とは、第2の配線膜中の補助配線膜が他の
配線膜の上に絶縁膜を介して積層されていることを示
す。立体交差している領域(立体交差部)において、補
助配線膜の両端は、絶縁膜に設けたスルーホールを介し
て第2の配線膜を構成する配線膜に接続される。補助配
線膜の中央近傍は絶縁膜によって他の配線膜と分離され
る。
【0010】本発明の他の磁気式センサーは、上記本発
明のいずれかにおいて、前記配線膜もしくは前記補助配
線膜が、下層に膜厚0.05μm以下のクロム膜もしく
はタンタル膜を有し、上層に銅膜を有する2層構造であ
ることを特徴とする。
【0011】本発明の他の磁気式センサーは、上記本発
明のいずれかにおいて、前記配線膜もしくは前記補助配
線膜が、下層に膜厚0.05μm以下のクロム膜もしく
はタンタル膜を有し、中間層に銅膜を有し、上層に、
金、ニッケル、銀、錫もしくはそれらを主成分とした合
金の膜、もしくはニッケルが70重量%以上且つ90重
量%以下であるニッケル鉄合金膜を有する3層構造であ
ることを特徴とする。3層構造は、基板に近い側から下
層/中間層/上層の順に積層した膜である。
【0012】本発明の他の磁気式センサーは、上記本発
明のいずれかにおいて、感磁部から保護膜までの総合の
厚さに対する保護膜表面の凹凸の比率が5%以上且つ2
0%以下であることを特徴とする。前記保護膜表面の凹
凸を1.0μm以下にすることが望ましい。各層(膜)
をスパッタリングで形成することにより、総合の厚さに
対する保護膜凹凸の比率を5〜20%にすることができ
る。従来の磁気式センサーでは保護膜表面がポリイミド
系樹脂の平坦な面であったため、磁気式センサーが磁気
媒体と摺動する場合、磁気媒体と吸着する恐れがあっ
た。本発明では、保護膜表面の凹凸が磁気媒体と吸着す
ることを防ぎ、良好な摺動特性を実現する。
【0013】総合の厚さとは、感磁部の厚さや保護膜の
厚さを含めた構造の厚さをいう。言い換えると、感磁部
を形成した面から保護膜の凹凸の最も突出している箇所
までの距離に相当する。本発明では各層の膜厚を薄くし
て、感磁部と磁気媒体間の磁気的なスペーシングを小さ
くすることができ、磁気式センサーの感度が向上する。
例えば、総合の厚さ約5μmという薄型の磁気式センサ
ーを作ることができる。また、感磁部で発生したジュー
ル熱を磁気式センサーの外に放出し易いというメリット
もある。
【0014】本発明の他の磁気式センサーは、上記本発
明のいずれかにおいて、前記基板と前記磁気抵抗効果膜
の間に膜厚0.1μm以下の酸化アルミニウム層を有す
ることを特徴とする。酸化アルミニウム層を下地膜とし
て設けることで、磁気抵抗効果膜の放熱に効果がある。
また、非磁性基板に材質の変動があったとしても磁気抵
抗効果膜に与える影響が小さくなり、安定した品質の磁
気式センサーを供給できる。
【0015】また、本発明は、上記本発明のいずれかの
磁気式センサーにおいて、前記絶縁膜にスルーホールを
設けて、前記スルーホールを介して配線膜に接続する補
助配線膜を通し、前記保護膜に電極取り出し穴を設ける
ことにより端子部を露出させて外部端子と接続させる構
造にして、前記磁気式センサーを作製する際に、感磁部
はレジストをマスクとしたイオンミリングによりパター
ニングし、配線膜および補助配線膜および絶縁膜のスル
ーホールはリフトオフにより形成し、保護膜の電極取り
出し穴はレジストをマスクとしたドライエッチングもし
くはウェットエッチングにより形成することを特徴とす
る磁気式センサーの製造方法である。
【0016】本発明のエンコーダーは、上記本発明のい
ずれかの磁気式センサーと、磁性体を設けた磁気媒体を
用いることを特徴とする。特に、総合の厚さを薄くした
ため、磁性体と磁気式センサー間のギャップ長の狭いエ
ンコーダーを構成するのに適している。
【0017】(作用)本発明は、配線膜として銅(C
u)を主とした多層構造膜を用いるため、従来のアルミ
ニウム(Al)配線膜に比べて薄膜化が可能である。ア
ルミニウム配線膜は、アルミニウムの活性化エネルギー
が0.59eVと小さいことから、電流密度が大きい場
合、エレクトロマイグレーションに対して弱い。例え
ば、電流密度を0.2MA/cm以上にすることは信
頼性の上で問題があった。これに対して、銅を主とした
多層構造膜では、銅の活性化エネルギーが1.29eV
と大きいことから、電流密度2.0MA/cmまでエ
レクトロマイグレーションは起こらない。例えば、従来
のアルミニウム配線膜では0.3μm以上の膜厚が必要
であったが、銅を主とした多層構造膜を使用すれば膜厚
を0.1μmまで薄くしても高い信頼性が得られること
が分かった。
【0018】なお、アルミニウム配線膜では工程中に加
わる熱によって、アルミニウムが髭状に粒成長する現象
(ウィスカー成長)が有り、隣接配線膜とのショート不
良を引き起こすことがあった。これに対して、本発明の
銅を主とした多層構造膜において、ウィスカー成長は起
こらないことがわかった。また、Cuの比抵抗は1.6
*10−8Ω・mであり、Alの2.5*10−8Ω・
mに比べて小さく、配線抵抗を増加させることなく配線
の線幅および膜厚の縮小ができ、素子の小型化が可能に
なる。また、配線の膜厚を薄膜化することで工程の成膜
時間が短くなる。
【0019】従来の製造方法ではアルミニウム膜を全面
に成膜して、アルミニウム膜上にレジストパターンを形
成して、これをマスクとしてウェットエッチングやドラ
イエッチングによって配線膜とする部分以外のアルミニ
ウム膜を除去した後、レジストパターンを除去し、最終
的に配線膜のパターンを得る製造方法を採っていた。こ
れに対して、本発明の製造方法では、リフトオフで配線
膜のパターンを形成しており、従来の製造方法に比べて
工程が短縮される。リフトオフとは、配線膜以外の部分
に予めレジストパターンを形成しておき、配線膜の成膜
後、レジスト剥離処理をすることによってレジスト上に
堆積した配線以外の膜を除去する方法である。
【0020】ただし、リフトオフの工程で除去する膜が
厚い場合、除去されないで残ってしまう不良(リフトオ
フ残り不良)が発生する。検討したところ、配線膜ある
いは補助配線膜の膜厚が1.0μm以下であれば、リフ
トオフ残り不良が発生することなく、スルーホールの形
成が可能であることがわかった。配線膜と同様の理由に
より、補助配線膜も膜厚を0.1μm以上且つ1.0μ
m以下にすることが望ましい。
【0021】リフトオフ残りを生じる原因の一つとし
て、レジスト側面を配線膜が完全にカバーしてしまい、
レジスト剥離液が侵入できないことがある。リフトオフ
に用いるレジストの断面形状が底面を切り欠いたキノコ
型になっていれば、少なくともキノコ型レジストの傘の
底面や茎に相当する部分が配線膜でカバーされることは
なく、リフトオフ残り不良が発生するおそれのないプロ
セスとすることができる。
【0022】絶縁膜に用いる酸化アルミニウム(Al
)はピンホールが少なく、薄膜化が可能である。例
えば、従来の酸化シリコン膜(SiO)は膜中のピン
ホールが多いために膜厚1μmとした。さらに、それだ
けでは絶縁性が不十分なことから膜厚1μmのポリイミ
ド系樹脂膜を酸化シリコン膜に積層した2層構造の絶縁
膜が採用されていた。これに対して、酸化アルミニウム
膜は膜厚0.2μm以上の単層膜で十分な絶縁性を得ら
れることが分かった。単層であることから、薄膜化や工
程の短縮が可能である。
【0023】なお、保護膜に用いる酸化アルミニウム膜
は、磁気媒体と摺動させて使うことがあり、素子の保護
のために膜厚を1.0μm以上とすることが望ましい。
但し、全体の放熱性を損なわないように、保護膜の膜厚
の上限を5.0μmとする。
【0024】また、配線膜と補助配線膜を接続する箇所
では、絶縁膜にスルーホールを形成する必要がある。こ
の工程においても、酸化アルミニウム(Al)の
絶縁膜を適用して工程を短縮することができる。従来の
酸化シリコン(SiO)の絶縁膜は、酸化シリコン膜
を全面に成膜した後、レジストマスクを用いたウェット
エッチングもしくはドライエッチングによりスルーホー
ルを形成していた。さらに、酸化シリコン膜上にポリイ
ミド系樹脂を塗布し、スルーホール部をフォトリソグラ
フィーにより除去した後、350℃の温度で焼き固める
工程が必要であった。
【0025】これに対して、酸化アルミニウムの絶縁膜
では、スルーホール部に予めレジストパターンを形成し
ておき、酸化アルミニウム膜を成膜した後にレジストを
剥離することでスルーホール部の酸化アルミニウムを除
去するリフトオフが可能になる。但し、リフトオフの工
程で除去される膜が厚い場合、リフトオフされないで残
ってしまう不良(リフトオフ残り不良)が発生する。酸
化アルミニウム膜の膜厚が1.0μm以下であればリフ
トオフ残り不良が発生することなく、スルーホールの形
成が可能であることが分かった。ピンホールを発生させ
ないこと及びリフトオフで形成することを考慮すると、
酸化アルミニウムの絶縁膜の厚さは膜厚0.2μm以上
且つ1.0μm以下とすることが望ましい。
【0026】リフトオフ残り不良を生じる原因の一つと
して、レジスト側面を酸化アルミニウム膜が完全にカバ
ーしてしまい、レジスト剥離液が侵入できないことがあ
る。リフトオフに用いるレジストの断面形状が底面を切
り欠いたキノコ型になっていれば、少なくともキノコ型
レジストの傘の底面や茎に相当する部分が酸化アルミニ
ウム膜でカバーされることはなく、リフトオフ残り不良
が発生するおそれのないプロセスとすることができる。
【0027】さらに、端子部では保護膜に電極取り出し
穴をあける必要がある。この工程においても、従来構成
は酸化シリコン膜とポリイミド系樹脂膜を有して2種類
の膜を別々にエッチングしていたのに対し、本発明の酸
化アルミニウムの保護膜では酸化アルミニウム膜単層の
エッチングで済み、工程が短縮できる。さらなる素子の
小型化を進め、銅(Cu)配線膜の電流密度が2.8M
A/cm以上になると、銅のエレクトロマイグレーシ
ョンを起こし難い温度範囲に抑えるべく放熱効率を上げ
る必要がある。
【0028】本発明では絶縁膜や保護膜を酸化アルミニ
ウム膜とし、薄膜化することで放熱効果を向上させる。
従来の磁気式センサーの絶縁膜や保護膜に用いていた酸
化シリコン膜は熱伝導率が小さく、また膜厚が厚いこと
から放熱性は十分でなかった。また、ポリイミド系樹脂
膜との積層膜にすることで更に放熱性を低下させてい
た。これに対して本発明では、絶縁膜と保護膜を酸化ア
ルミニウムの単層膜にすることで放熱性を向上させてい
る。さらに、酸化アルミニウム絶縁膜の膜厚を1.0μ
m以下にし、酸化アルミニウム保護膜の膜厚を5.0μ
m以下にすることで良好な放熱性が得られ、小型化を実
現できる。
【0029】多層構造膜において、銅膜の下層に膜厚
0.05μm以下のクロム(Cr)膜もしくはタンタル
(Ta)膜を配置すると、配線膜の密着性が向上するこ
とが分かった。また、銅膜の上層に金(Au)、ニッケ
ル(Ni)、銀(Ag)、錫(Sn)もしくはそれらを
主成分とする合金の膜、もしくはNi70重量%以上且
つ90重量%以下のニッケル鉄合金(NiFe)膜を配
置すると、エッチング工程における腐食を防止すること
ができる。例えば、ドライエッチングもしくはウェット
エッチングで保護膜に電極取り出し穴を形成して配線を
露出させる工程において、エッチャントで腐食し易い銅
(Cu)が金属膜で保護されているため腐食の無いプロ
セスとすることができる。また、電極取り出し部に露出
する配線膜は、金、ニッケル、銀、錫もしくはそれらを
主成分とする合金、もしくはニッケル鉄で構成されてい
るため、配線膜にハンダが乗り易い。従来の製造方法で
は、ハンダづけを乗り易くするためニッケル鉄等の金属
膜を取り出し穴に被覆する工程を付加していた。
【0030】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の磁気センサーに
係る配線パターン例の斜視図である。非磁性基板1上に
設けた4個の磁気抵抗効果膜2a、2b、2c、2dで
感磁部を構成しており、それぞれの磁気抵抗効果膜の両
端には配線膜3a、3b、3c、3d、3eを接続し
た。配線膜3a〜3eの終端には端子A、B、C、D、
Eを形成しており、各端子は、配線膜の端に補助配線膜
7bを積層して端子部を構成した。端子A、Eはそれぞ
れ配線膜3a、3bを通して磁気抵抗効果膜2a、2
b、2c、2dに接続している。端子Bは配線膜3cを
通して磁気抵抗効果膜2aに接続して、端子Dは配線膜
3dを通して磁気抵抗効果膜2b、2dに接続してい
る。端子Cは配線3eを通して磁気抵抗効果膜2cに接
続しているが、途中、配線膜3dと交差する個所を補助
配線膜7aで迂回させている。なお、補助配線膜7bは
立体交差部を構成するものでなく端子部を構成する部材
であるが、補助配線膜7aと同時に成膜するため、本実
施例では便宜上補助配線膜7bと呼ぶ。なお、補助配線
膜7bを設けない構成としても良い。
【0031】電気回路として磁気抵抗効果膜と配線膜は
ブリッジ回路を構成している。端子A、Eは電源端子で
あり、端子Aには電源電圧Vccを印加し、端子Eには
接地(GND)電位を接続した。また、端子B、Cをリ
ード線等で接続して、そのリード線と端子Dを出力端子
とした。そして、各磁気抵抗効果膜に作用する磁界の変
化によって磁気抵抗効果膜の抵抗変化が生じ、それに応
じて出力電圧が出力端子である端子Dとリード線間から
得られた。
【0032】図2は、図1におけるA−A´断面を例
に、本発明の実施例のプロセスフローを(a)〜(f)
の断面図に示したものである。以下に本発明の素子構造
および製造方法を説明する。(a)まず、非磁性基板1
上にAl下地膜21をスパッタリングにて膜厚
0.08μm形成した後、NiFe膜を成膜した。従来
は非磁性基板上に直接NiFe膜を形成しており、ロッ
ト毎の基板材質の変動によってNiFe膜の磁気特性が
変動するという現象が見られた。Al下地膜21
を設けることによって本願の構成は基板材質の変動を無
視できるようになった。続けて、レジストをマスクとし
たイオンミリングでNiFe膜をパターニングして感磁
部を形成した(磁気抵抗効果膜2c)。
【0033】(b)つぎに、感磁部の端部に接続する配
線膜3d、3eをリフトオフで形成した。先ず、配線膜
を配置しない部分に予めレジストのパターンを形成して
おいた。その上から配線膜をスパッタリングにより成膜
して、レジスト剥離処理にてレジストとレジスト上に堆
積した配線膜を除去することで、最終的に配線膜を形成
した。配線膜はCr下地膜0.02μmの上にCu膜
0.4μmという2層膜で構成した。リフトオフに用い
るレジストは、その断面形状をキノコ型にして用いた。
これは、通常の矩形断面のレジストにした場合には、ス
パッタリングで成膜した膜が側面を完全にカバーしてし
まい、レジスト剥離液が侵入できなくなるためである。
キノコ型レジストは次の方法で形成した。まず、現像速
度の速いレジストを下層に、遅いレジストを上層に塗布
した。この2層レジストを同時に露光して現像すると、
下層のレジストが上層レジストの側面より奥の方まで現
像され、下層レジストのパターン幅が上層より小さくな
り、断面がキノコ型のレジストが得られる。
【0034】(c)次に、絶縁膜4を成膜した。これ
は、配線膜3dと補助配線膜7aの立体交差部で双方の
配線膜の絶縁を保持するためである。ただし、配線膜3
eと補助配線膜7aが接続する個所には予めスルーホー
ル5aを形成しておいた。また、端子部では配線膜3e
上に補助配線膜7bを積層させるため、端子部にもスル
ーホール5bを形成しておいた。このスルーホール5a
及び5bの形成には前記配線膜と同様にリフトオフを用
いた。この場合のリフトオフは、スルーホールになる部
分にキノコ型レジストを形成しておき、絶縁膜を成膜
後、レジスト剥離処理を行ってスルーホールにする部分
の絶縁膜を除去した。本実施例で絶縁膜4は膜厚0.6
μmのAl膜で構成した。
【0035】(d)次に、補助配線膜7aを配線3dと
立体交差部で交差させ、スルーホール5aで配線膜3e
と接続する様に配置した。また、端子部では、補助配線
膜7bを配線膜3e上に積層した。この工程も配線膜3
eおよび3dと同様にリフトオフで形成した。補助配線
膜7aおよび7bはCr下地膜0.02μm上にCu膜
0.4μmを積層して、その上にNiFe膜0.1μm
を積層した3層で構成した。
【0036】(e)次に、全面にAl膜2.0μ
mをスパッタリングで成膜して保護膜8を形成した。
(f)端子部として保護膜8に電極取り出し穴9を形成
して補助配線膜7bを露出させた。本実施例では、保護
膜8上にレジストパターンを形成して、これをマスクと
したドライエッチングにより、電極取り出し穴9をあけ
た。エッチャントには三塩化ボロン(BCl)と塩素
(Cl)の混合ガスを用いた。電極取り出し穴9の形
成には、炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウム混合液
によるウェットエッチを用いてもよい。何れのエッチン
グでも、配線膜の表面がCuであると、配線膜の腐食や
エッチングが発生した。本実施例では、補助配線膜7b
の表面をNiFeで構成しており、配線膜の腐食は発生
しなかった。エッチング後にマスクレジストをレジスト
剥離液により除去した。
【0037】電極取り出し穴の形成法として、保護膜を
形成する前にスルーホール部に膜厚10μm以上のレジ
ストを形成しておき、Al膜をスパッタリングし
た後、リフトオフにより電極取り出し穴9を形成する方
法を用いることも可能である。この場合は、エッチャン
トによる腐食を考慮する必要はなく、広い材料選択が可
能である。最後に、電極取り出し穴9を通して端子部に
ハンダを盛り、磁気式センサーを完成させた。
【0038】図2の(f)に示したように本実施例に係
る磁気式センサーの総合の厚さd(磁気抵抗効果膜2c
の底面から保護膜8表面までの距離)は3.54μmで
ある。また、感磁部上での保護膜の表面凹凸dfは0.
30μmであり、保護膜表面の凹凸dfが総合の厚さd
の8.5%になった。
【0039】図3は本発明に係る他の実施例の概略を示
す斜視図である。図3は配線膜、絶縁膜、保護膜の位置
関係を説明するため、絶縁膜と保護膜と基板が積層され
た構造の内部を示し、絶縁膜と保護膜の被覆状態の一部
を切断して分かり易く表示したものである。図3におい
て補助配線膜7の一端は配線膜3と絶縁膜4に設けたス
ルーホール5を介して接続しており、もう一端は保護膜
8下にある配線膜とスルーホールを介して接続してい
る。磁気抵抗効果膜2は一端を端子部の配線膜と、もう
一端を絶縁膜4下にある配線膜と接続している。その配
線膜上を補助絶縁膜7が立体交差している。補助配線膜
7上に表した保護膜8の凸形状は、補助配線膜7の段差
をトレースしてできた保護膜表面の凸部である。電極取
り出し穴9を通して端子部にハンダ12を盛っている。
なお、図1等と同様の機能の膜は同様の符号で説明し
た。
【0040】また、図4は本発明の請求項1に係る実施
例の磁気式センサーの概略を示す斜視図である。図4は
配線膜、保護膜の位置関係を説明するため、保護膜と基
板の積層された構造の内部を示し、保護膜の被覆状態の
一部を切断して分かり易く表示したものである。図4に
おいて配線膜3は磁気抵抗効果膜2に接続しており、更
に保護膜8下にあるもう一つの磁気抵抗効果膜と接続し
ている。配線膜3はCr下地膜0.02μm上にCu膜
0.4μmを形成してその上にNiFe膜0.1μmを
積層した3層で構成した。保護膜8上に表した凸形状
は、配線膜3の段差をトレースしてできた保護膜表面の
凸部である。電極取り出し穴9を通して端子部にハンダ
12を盛っている。なお、図1等と同様の機能の膜は同
様の符号で説明した。
【0041】次に本発明と比較するため、比較例の磁気
式センサーについて説明する。図5は比較例におけるプ
ロセスフローを(a)〜(i)の断面図で示すものであ
る。以下に比較例の製造方法を記す。(a)非磁性基板
1上にNiFe等で構成される磁気抵抗効果膜2を成膜
して、レジストをマスクとしたウェットエッチングによ
りパターニングした。
【0042】(b)その後、配線膜3に相当するCr/
Al多層膜を成膜して、レジストをマスクとしたウェッ
トエッチングよりパターニングした。配線膜3はCr下
地膜の膜厚0.1μm、Al膜の膜厚0.3μmとし
た。(c)次に、層間に配置する絶縁膜4bとしてSi
膜を成膜して、ウェットエッチングもしくはドライ
エッチングよりスルーホール5を形成した。(d)この
SiO膜は膜内のピンホール密度が大きいため厚膜が
必要になった。例えば、膜厚1μmのSiO膜でもピ
ンホールを完全に無くすることはできず、SiO膜上
にポリイミド系樹脂膜6を形成する対策を取った。ポリ
イミド系樹脂膜6は、パターニングした後に350℃の
温度でベークした。
【0043】(e)補助配線膜7としては、Al膜を成
膜してウェットエッチングよりパターニングした。Al
膜厚は1.0μmにした。(f)(g)その後、保護膜
8bとしてSiO膜を成膜して、ウェットエッチング
もしくはドライエッチングにより電極取り出し穴9bを
形成して、配線膜が露出する端子部を得た。(h)前記
絶縁膜4bと同じ理由でSiO膜上にポリイミド系樹
脂膜10を形成した。ポリイミド系樹脂膜は、パターニ
ングした後、350℃の温度でベークした。(i)最後
に、端子部にハンダを乗り易くするためNiFe等の金
属膜11を形成した。この工程は、全面に金属膜を成膜
してレジストをマスクとしたウェットエッチングするこ
とにより、パターニングした金属膜11を形成した。以
上の工程で比較例の磁気式センサーを作製した。
【0044】図6は比較例の磁気式センサーと本発明の
実施例の磁気式センサーを比較した評価結果である。通
電しながらのプレッシャークッカーテスト(PCT)を
121℃、2気圧、湿度99%の条件で行った時の故障
発生率を示す。本発明の磁気式センサーは故障が発生し
ておらず、信頼性の高い磁気式センサーであることがわ
かる。これに対して、比較例の構造での故障発生率は試
験時間100時間で5%程度となった。
【0045】
【発明の効果】本発明の磁気式センサーは、配線膜を銅
と他の金属の多層構造膜で構成し、前記配線膜の膜厚は
膜厚0.1μm以上且つ1.0μm以下であり、前記保
護膜を膜厚1.0μm以上且つ5.0μm以下である酸
化アルミニウム膜で構成しており、放熱性が良好なため
エレクトロマイグレーションによる信頼性劣化を起こす
ことなく小型化が可能である。また、各層の薄膜化でリ
フトオフによるパターニングが可能になるため、製造工
程が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気式センサーの斜視図である。
【図2】図1の実施例におけるプロセスフローを説明す
る断面図である。
【図3】本発明に係る他の磁気式センサーの概略を示す
斜視図である。
【図4】本発明に係る他の磁気式センサーの概略を示す
斜視図である。
【図5】比較例におけるプロセスフローを説明する断面
図である。
【図6】比較例と実施例のPCT評価の結果を示すグラ
フである。
【図7】磁気式ロータリーエンコーダー構成例の概略図
である。
【符号の説明】
1 非磁性基板、2 磁気抵抗効果膜、3 配線膜、2
a 2b 2c 2d 磁気抵抗効果膜、3a 3b
3c 3d 3e 配線膜、4 絶縁膜、4b 絶縁
膜、5 スルーホール、5a 5b スルーホール、6
ポリイミド系樹脂膜、7 補助配線膜、7a 補助配
線膜、7b 補助配線膜、8 保護膜、8b 保護膜、
9 電極取り出し穴、9b 電極取り出し穴、10 ポ
リイミド系樹脂膜、11 金属膜、12 ハンダ、21
Al下地膜、71 磁性体、 72 磁気式センサー、73 フレキシブル配線基板、
74 波形整形回路、75 磁気媒体、76 シャフト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // G01D 5/245 G01R 33/06 R H01L 21/3205 H01L 21/88 M

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気抵抗効果膜を有する感磁部と、前記
    感磁部を端子部に接続する配線膜と、少なくとも感磁部
    を被覆する保護膜を基板上に備える磁気式センサーであ
    って、前記配線膜を銅と他の金属の多層構造膜で構成
    し、前記配線膜の膜厚は0.1μm以上且つ1.0μm
    以下であり、前記保護膜を膜厚1.0μm以上且つ5.
    0μm以下の酸化アルミニウム膜で構成することを特徴
    とする磁気式センサー。
  2. 【請求項2】 磁気抵抗効果膜を有する複数の感磁部
    と、前記感磁部を端子部に接続する複数の配線膜と、少
    なくとも感磁部を被覆する保護膜を基板上に備える磁気
    式センサーであって、 前記複数の配線膜の少なくとも一つは補助配線膜を備
    え、前記補助配線膜は絶縁膜を介して他の配線膜と立体
    交差し、 前記配線膜および前記補助配線膜を銅と他の金属の多層
    構造膜で構成し、前記配線膜および前記補助配線膜の膜
    厚は0.1μm以上且つ1.0μm以下であり、前記絶
    縁膜を膜厚0.2μm以上且つ1.0μm以下の酸化ア
    ルミニウム膜で構成し、前記保護膜を膜厚1.0μm以
    上且つ5.0μm以下の酸化アルミニウム膜で構成する
    ことを特徴とする磁気式センサー。
  3. 【請求項3】 前記配線膜もしくは前記補助配線膜が、
    下層に膜厚0.05μm以下のクロム膜もしくはタンタ
    ル膜を有し、上層に銅膜を有する2層構造であることを
    特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の磁気式
    センサー。
  4. 【請求項4】 前記配線膜もしくは前記補助配線膜が、
    下層に膜厚0.05μm以下のクロム膜もしくはタンタ
    ル膜を有し、中間層に銅膜を有し、上層に金、ニッケ
    ル、銀、錫もしくはそれらを主成分とした合金の膜、も
    しくはニッケルが70重量%以上且つ90重量%以下で
    あるニッケル鉄合金膜を有する3層構造であることを特
    徴とする請求項1または2のいずれかに記載の磁気式セ
    ンサー。
  5. 【請求項5】 感磁部から保護膜までの総合の厚さに対
    する保護膜表面の凹凸の比率が5%以上且つ20%以下
    であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに
    記載の磁気式センサー。
  6. 【請求項6】 前記保護膜表面の凹凸が1.0μm以下
    であることを特徴とする請求項5に記載の磁気式センサ
    ー。
  7. 【請求項7】 前記基板と前記磁気抵抗効果膜の間に膜
    厚0.1μm以下の酸化アルミニウム層を有することを
    特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の磁気式
    センサー。
  8. 【請求項8】 請求項2の磁気式センサーにおいて、前
    記絶縁膜にスルーホールを設けて、前記スルーホールを
    介して配線膜に接続する補助絶縁膜を通し、 前記保護膜に電極取り出し穴を設けることにより端子部
    を露出させ外部端子と接続させる構造にして、 前記磁気式センサーを作製する際に、感磁部はレジスト
    をマスクとしたイオンミリングによりパターニングし、
    配線膜および補助配線膜および絶縁膜のスルーホールは
    リフトオフにより形成し、保護膜の電極取り出し穴はレ
    ジストをマスクとしたドライエッチングもしくはウェッ
    トエッチングによりを形成することを特徴とする磁気式
    センサーの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし7のいずれかに記載の磁
    気式センサーと、磁性体を設けた磁気媒体を用いること
    を特徴とするエンコーダー。
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