JP2002095433A - 豆乳、豆腐またはその二次加工品の製造方法 - Google Patents

豆乳、豆腐またはその二次加工品の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来ほとんど廃棄されていたオカラを出さない
豆乳(豆乳飲料)および豆腐(二次加工品を含む)の製
造方法を提供する。 【解決手段】大豆スラリーを、374°C以上かつ2
2.1MPa以上の水の超臨界条件と、100°C以上
〜374°C未満でその温度における水の飽和蒸気圧以
上の亜臨界条件とのいずれかの高温高圧条件またはこれ
らを組み合わせた条件の下で0.1秒〜60分加熱処理
し、加工用豆乳や豆乳飲料を得る。必要に応じて、加熱
前または加熱後に大豆スラリーを高圧ホモジナイザー等
の湿式微粉砕処理し、またはpHを3〜10に調整す
る。さらに、この豆乳に凝固剤やゲル化剤を加えて凝固
させ、豆腐またはその二次加工品を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オカラをほとんど
分離することなく滑らかな食感の豆乳、豆腐またはその
二次加工品を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】超臨界状態や亜臨界状態においては、水
の性質は大きく変化し、水の極性が下がり、水に油が溶
けるようになる。特に超臨界状態では水のイオン積(常
温常圧下で10-14)は10-11〜10-12と常温常圧下
の100〜1000倍に高まり、高密度の水蒸気状態に
なる(図3参照)。このような状態においては高分子の
低分子化(加水分解や熱分解等)が起こり、また酸素存
在下では「水の中で燃える」というような酸化(燃焼、
熱分解)反応が起こる。そこで種々の高分子化合物を超
臨界水や亜臨界水を用いて加水分解する技術が開示され
(特公昭62−17509号公報)、ダイオキシンや有
害廃棄物の処理の点から注目されている。また酸化反応
を用いる方法は自己発熱により投入エネルギーがほとん
ど不要であり、ゴミ発電や廃棄物処理のようにすべての
物質を水と炭酸ガス等に分解・燃焼する方法としても注
目されている。なお今までの超臨界水や亜臨界水を用い
る技術は、酸化反応を利用するものが先行し、難分解性
物やゴミ処理など環境分野の技術として研究開発が進ん
できており、一部で実用化されている。
【0003】近年、超臨界水や亜臨界水中での加水分解
や酸化反応を利用して産業廃棄物や家庭の廃棄物を無害
化したり有効利用できる生成物を得る試みがなされてい
る。たとえば特許第3042076号公報にはセルロー
ス、ナイロンなど種々の高分子化合物を超臨界水や亜臨
界水を用いて加水分解する方法が開示されている。化学
原料回収方法については、タンパク質からアミノ酸への
加水分解やペプチド(アミノ酸からの再合成)、グルコ
ース等の低分子成分への加水分解(酸やアルカリの存在
下も含む)に関するものが開示されている(特開平9−
268166号公報、特許第3042076号公報、特
開平5−31000号公報、特公平3−36871号公
報など)。また廃棄有機物を水の亜臨界条件(1.5〜
15MPa、200〜300℃、5〜10分)ないし超
臨界条件(22.1MPa、375℃以上、1〜10
分)で処理(加水分解)し、有機酸、アミノ酸など有用
物質を製造する方法(特開平11−342379号公
報)が開示されている。なお特開平9−9268166
号公報には、タンパク質を加水分解してアミノ酸を製造
する方法において加水分解を超臨界状態または亜臨界状
態の水で行うことが開示されている。
【0004】また超臨界水や亜臨界水中での加水分解や
酸化反応は、食品残渣の有効利用の観点からも期待され
ており、焼酎絞り粕、魚のあら・内臓、籾殻の加水分解
による工業原料分離回収等の研究が試みられている。特
に豆腐の製造過程で多量に生じるオカラのように、食品
を製造する過程で生じる可食性の未利用副生成物を食品
原料として再利用するために、超臨界水や亜臨界水中で
の高分子の変性や一部の分解を利用する加工方法を発明
者らは考案している(特願平11−325710)。ま
たオカラを出さない豆腐の製造方法として、過去様々な
方法が開示されており、最近では特開2000−139
391号等でも開示されている。発明者らも高圧ホモジ
ナイザーを用いる方法を開示している(特公昭62−1
7509号公報:特許第1423285号)。この方法
はオカラを56MPaで3回通す必要があり、処理液を
豆乳に混合する。しかし従来の全粒豆腐は凝固剤で凝固
させても豆腐の食感(咽越し感)はまだザラついてお
り、保水性に乏しく、製品品質として十分ではなかっ
た。一方、大豆全粒から80〜200℃の水蒸気を利用
して生理阻害物質を除去したカードを得る方法も開示さ
れている(特公昭56−35136号公報)。
【0005】また、大豆やオカラを澱粉等と混合し水分
9〜30%に調整した後、エクストルーダーによって例
えば5MPa、130〜155℃で膨化・組織化食品を
製造する方法(特開昭63−84454号公報)や、大
豆等を1.1〜3MPa、120〜200°Cで処理す
る2軸エキストルーダーを使う方法(特開平04−58
853号公報)もあるが、低圧処理であるから極めて短
時間の反応を正確に行うには問題がある。超高圧処理の
研究では60°C以下1,000MPa以下の条件で、
大豆タンパク質の変性や耐熱性胞子の殺菌に関する事例
があるが、150°Cを越える条件での知見はなく、ト
リプシンインヒビターはほとんど失活しないという問題
がある(さんえい出版株式会社発行「加圧食品」参
照)。これに関連して特開昭58−51750号公報に
は、オカラの記述はないが、水分40%以下の難消化性
多糖と穀粉の混合物を130〜180℃(圧力は明示さ
れていない)で加工する方法が開示されている。また酵
母含有物と穀物の混合物をエクストルーダーにて3〜2
0MPa下、60〜200℃で処理し、溶融と殺菌を行
う方法(特開昭61−119167号公報)や、浸漬丸
大豆を80℃〜200℃の範囲で1分以下の高温瞬間処
理(水蒸気または油浴)によって、リポキシゲナーゼを
失活する方法(特開昭52−57353号公報;ただし
オカラは分離する)など、食品素材の加工法としては比
較的高温高圧での加工方法が開示されている。またロン
グライフ牛乳のように、滅菌を目的としても食品成分へ
のダメージを考慮し、1MPa、150°Cを超える条
件は採用されない。
【0006】いずれにしても、高水分(水分40%以
上)の大豆スラリー原材料を水の亜臨界条件または超臨
界条件で高温高圧加工し、選択的にその前後に高圧ホモ
ジナイザーによる微粉砕や均質化、pH調整等を行うこ
とによって、食感を滑らかにするとともに大豆スラリー
原材料のほとんどすべてを豆乳や豆腐に利用するような
方法は未だ開示されていない。
【0007】これら従来の技術では、産業廃棄物・家庭
廃棄物の処理および低水分原料のエクストルーダーによ
る処理が主旨であり、食品原料一般に対し超臨界水や亜
臨界水中での高分子の変性や粗分解を利用して食感や保
水性を改良する加工方法は未だ開示されていない。なお
従来の豆腐の製造においては、常圧ないし0.2MP
a、100〜110°C数分間という条件で加熱加工が
行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように従来におい
ては、超臨界水や亜臨界水中での高分子の変性や一部の
分解を利用する新しい食品原料の加工方法は未だ開発さ
れていない。特にオカラのような多成分系では複雑な反
応が起こり分析が難しいことや日持ちが悪いこと等か
ら、食品素材として栄養価も安全性も高いにもかかわら
ず、多量のオカラの再利用を図る加工方法は未だ開発さ
れておらず、従来ほとんど廃棄されていた。
【0009】そこで本発明の目的は、大豆全粒を、オカ
ラを排出することなく食品素材として食感評価、栄養
価、安全性の高い豆乳または豆腐(二次加工品を含む)
に加工する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、水の亜臨
界条件および超臨界条件における大豆スラリーの加工処
理の研究を長年行い、オカラを排出させない、安全かつ
有効で経済的な加工方法を見出し本発明を完成した。
【0011】すなわち請求項1記載の発明は、大豆に適
量の水を加え、必要に応じて粉砕し、混練してなるスラ
リーを、水の亜臨界条件または超臨界条件のいずれか一
方または両方を組み合わせた高温高圧条件下で0.00
1秒〜60分間加熱することを特徴とする豆乳の製造方
法である。ここで豆乳とは、いわゆる豆乳のほかに、豆
腐加工用豆乳、豆乳飲料、豆乳を含む清涼飲料等をい
う。
【0012】水の亜臨界条件とは、100°C以上37
4°C未満においてその温度での水の飽和蒸気圧以上の
圧力条件をいう。また水の超臨界条件とは、374°C
以上かつ22.1MPa以上の条件をいう(図3参
照)。
【0013】大豆は、通常流通している丸大豆以外に、
大豆を脱皮・脱胚軸・脱脂処理したものや、粗粉砕した
半割状・粗粒状、微粉砕した微粉状、圧偏したフレーク
状のもの等、如何なる加工大豆原料でも構わない。
【0014】大豆に加えられる水としては、浸漬時に大
豆に吸収される水、粉砕時に入る挽き水、粒状または粉
状のものを溶くときの水、濃度調整のための希釈水、そ
の後の加熱の際に入る熱水、蒸気凝縮水、急速冷却のた
めの注入水、添加物の溶き水などがあるが、最終的に大
豆(水分約10wt%前後)1に対し水を0.2以上の
比率で加えることが望ましい。なお、一般に大豆スラリ
ー中の大豆固形分は75wt%未満(すなわち水分は2
5wt%以上)である。
【0015】また使用される水の種類としては、井戸水
(飲用可)、水道水、純水、蒸留水、海水、温泉水(飲
用可)、それらの100℃未満の温水や蒸気、100℃
以上の高温高圧水(超臨界水も含む)、または100℃
以上の高温高圧の飽和水蒸気や過加熱水蒸気などがあ
る。そのほか短時間反応制御する冷却水も加水の一部で
あり、反応温度以下の水である。
【0016】大豆の粉砕は、バッチ式、連続式のいずれ
を選択しても構わない。
【0017】大豆スラリーの加熱方法は、原料液に高温
高圧水もしくは高圧水蒸気を注入するか、または原料液
に対し通電によるジュール加熱、高周波(マイクロ波)
による加熱などの直接加熱法や、電磁誘導加熱、電気
炉、直火、流動砂浴、溶融塩浴などの間接加熱法を単独
でまたは組み合わせて高温高圧条件を段階的または勾配
的に調節するなど、どのような加熱手段や加熱条件を採
用しても構わない(特願平11−325710号参
照)。補助的な加熱方法として、請求項2における高圧
ホモジナイザー処理等の湿式微粉砕処理の際に発生する
発熱も利用しても構わない。なお、高温高圧水や高温水
蒸気についても上記の各種加熱法を利用することができ
る。
【0018】また上記の各加熱は、連続式、セミバッチ
式(半回分式)、バッチ式(回分式)のいずれを選択し
ても構わない。
【0019】なお高温高圧水を注入する方法(熱水注入
法)は、スラリーの流動性を増大させるとともに伝熱面
の焦げ付きも少なく熱伝達が良くなるので、均一かつ急
速な昇温を実現することができる最も有効な方法であ
る。また原料を過度に傷めず、反応停止用の冷水注入や
減圧によるフラッシング等と組み合わせることによって
正確な反応を行うことができる。
【0020】大豆スラリーの加熱時間は0.001秒な
いし60分、好ましくは0.1秒ないし1分である。極
短時間(数秒以下)の場合、例えば超臨界水または亜臨
界水(または100〜374°Cの飽和水蒸気)を室温
ないし100°Cの大豆スラリーに少量注入して混合
し、十分混合した時点の温度が使用した超臨界水または
亜臨界水の温度より十分低くなるケースを指す。その
他、高温の極瞬間反応を得るいかなる方法でも構わな
い。
【0021】上記構成を採用したことにより、オカラを
ほとんど分離せずに豆乳を製造することができる。すな
わち、従来法では生大豆1に対して1〜1.5倍(湿重
量)のオカラが分離されているのに対して、本発明では
少なくとも従来法よりは少量であり、ゼロ倍(湿重量)
に限りなく近いことを表している。すなわち、本発明は
大豆の全粒またはほぼ全粒を利用する方法である。な
お、上記の「ほとんど」とは焦げ粕、スケールや湯葉状
の粕などの異物をフィルターで除去する場合、粒子の大
きい一部のオカラ状のものも同時に分離されることもあ
るからである。
【0022】このように請求項1の発明によれば、水の
超臨界や亜臨界各条件という高温高圧処理によって、大
豆スラリーは例えば「高圧圧力釜で高温極短時間、調
理」された状態になる。大豆中の繊維質の形態はほとん
ど損なわれないか、または物理的に軟化、微細化された
状態になる。大豆スラリー中の各組織・各成分は有為に
選択的かつ部分的に変性・粗分解し、豆乳(または豆
腐)として利用しやすくなる。ここで、上記高温高圧処
理は栄養成分(タンパク質、アミノ酸、脂質、糖質、食
物繊維等)の分解、風味(味、香り、色など)の低下を
防ぐため、できるだけ低温短時間処理が好ましい。なお
本発明では、主として変性・軟化・微細化(コロイド粒
子化)などが中心であり、成分の分解はあくまで副反応
で起こりうる。一般に調理加熱は、喫食かつ消化しやす
くするために物性を改良することが主たる目的である
が、副次的に甘み、旨味、香りの生成が知られている
(例えば炊飯や石焼いも等)。請求項1の発明でも同様
にタンパク質や繊維質を部分的にわずかに分解させるこ
とによってブドウ糖、グルタミン酸などの甘み・旨味成
分を官能的に感じるだけ極少量生成させ(ただし、この
ような低分子化合物を大量に生成させることを目的とは
していない。)、また一方で、ヘキサナール等の青臭み
を除去し、風味向上も図り、タンパク質や食物繊維のよ
うな栄養的価値をできるだけ保持した加工方法を目指し
ている。そして本発明によれば、大豆スラリーの一般細
菌や耐熱性細菌胞子が死滅して日持ちが良くなるととも
に、不溶性繊維成分が軟化・微細化して滑らかな風味の
良い豆乳になる。この豆乳中のタンパク質は適度な変性
状態になっており、豆腐の副原料として使っても保水性
や凝固反応には悪影響を及ぼさず、少なくとも豆腐製造
用の食品原料や飲料用のものとしては何ら問題なく、む
しろ栄養価も安全性も高い。豆腐製造用に使用すると、
豆腐中の可溶性食物繊維量が増え、保水性も高まり、栄
養特性が向上する。オカラを廃棄物として排出せず、食
品としての加工特性を有する有機食品原料としてほとん
ど全てを再利用することができる。このような高温高圧
水加工において、大豆スラリー中の各成分・各組織や加
工後の性状、用途・目的に応じて調整することができ
る。例えば大豆スラリーを30MPaの圧力下、200
℃前後の低温(水の亜臨界条件)で数十秒処理して組織
の軟化・微細化、タンパク質抽出・熱変性や食物繊維の
可溶化等を行った後、350〜400℃の高温(水の超
臨界条件)で極短時間(数秒以下)処理して香ばしい風
味の付けや青臭さの除去の加工を行うことによって、食
品原料としての付加価値を向上させることが可能であ
る。
【0023】請求項2の発明は、請求項1の発明の前工
程で原料の大豆スラリーを、または後工程で生成液であ
る(ややザラツキの残る)豆乳を湿式微粉砕処理する。
具体的には、大豆スリラー中の沈殿物の90%以上が1
6メッシュをパスする状態(1mm以下)、好ましくは3
2メッシュをパスする状態(0.5mm以下)、さらに好
ましくは60メッシュをパスする状態(0.25mm以
下)する。装置は高圧ホモジナイザーやコロイドミル等
の湿式微粉砕手段で、前記粉砕状態が得られる手段なら
ば如何なる方法でも構わない。(以後、高圧ホモジナイ
ザーを使用した場合を例に取り記述する。因みに、高圧
ホモジナイザーは10MPa、1回処理で、ほぼ全てを1
50メッシュパス、0.1mm以下にできる。)実際は次
のような態様になる。最初に、高圧ホモジナイザーで
処理し、次いで高温高圧水加工を行う。最初に高圧ホ
モジナイザーで処理し、次いで高温高圧水加工を行い、
再度高圧ホモジナイザーで処理する。最初に高温高圧
水加工を行い、次いで高圧ホモジナイザーで処理する。
高圧ホモジナイザー処理と、高温高圧水加工をほぼ同
時に行う。両装置を一体化して行う;具体的には高圧ホ
モジナイザーの高圧粉砕部の第1ステージと第2ステー
ジの中間またはその直前・直後に熱水を注入。これら
を、交互に数回繰り返し、その回数は問わない。なお高
圧ホモジナイザーは1段または2段以上の高圧粉砕部
(第1ステージ、第2ステージ)を有しており、一般に
第1ステージ処理後の粒子の再凝集を防ぐ等の目的で第
2ステージは第1ステージの1/10の圧力設定にす
る。本発明では、そのいずれかまたは両方で1〜200
0MPa、好ましくは10〜200MPaの圧力を発生
させる。また、高温高圧処理部と高圧粉砕部とを一体に
形成した装置としてもよい。
【0024】まず大豆スラリーを含む原料を高圧ホモジ
ナイザーによって前処理すると、原料粒子の微細化やタ
ンパク質、繊維質など高分子高次構造の変性が起きる。
そのため分子各部位で様々な反応に敏感になり、後工程
の高温高圧水による部分分解や熱・圧力による変性を、
より穏やかな温度・圧力条件又はより短時間かつ正確に
行なうことが可能になる。流動性もよくなって高圧ポン
プによる送液が容易になり、閉塞などのトラブルも避け
ることができる。高圧ホモジナイザーによる前処理で
は、急激な圧力変化によって大豆組織細胞や微生物の細
胞壁を傷つけることもできるのでタンパク質の抽出も容
易になり、後工程の高温高圧処理によって枯草菌の耐熱
性胞子も十分殺菌することができる。高圧ホモジナイザ
ー等の物理的な微粉砕処理では、豆乳や豆乳飲料、豆腐
の品質としてザラツキのある食感があり限界はあるが、
請求項1記載のその後の高温高圧水加工によりほとんど
滑らかな食感にすることができる。
【0025】他方、高圧ホモジナイザー等の湿式微粉砕
処理を高温高圧水加工の後処理に使うと、軟化した原料
スラリーを滑らかな沈殿物のないコロイド分散液に加工
することができる。高温高圧加工済みの原料はひと茹で
した状態であり、高圧粉砕によって容易に舌触りはざら
つくが、分散液体状(微粒子状、コロイド状)にするこ
とができる。この高温高圧加工にあたっては、着色や焦
げ臭、酸味など好ましくない性状になるのを抑えるた
め、できるだけ短時間かつ低温での加工が望ましい。す
なわち食品原料の加工度を抑えて、細胞壁や細胞膜の軟
化、高分子成分の高次構造の変性にとどめ、なおかつ有
用低分子成分(遊離糖、遊離アミノ酸など)の分解をで
きるだけ抑えた条件を設定するのが実用的である。した
がって高温高圧工程では若干ざらつきが残る状態とし
て、後工程で高圧ホモジナイザー処理を行うことが望ま
しい。前工程または後工程において高圧ホモジナイザー
等の湿式微粉砕処理を併用すれば、高温高圧加工の条件
を一層穏和なひと茹で程度の必要最小限の条件に緩和す
ることができる。
【0026】請求項3の発明は、請求項1または請求項
2の発明を前提として、高温高圧処理、高圧ホモジナイ
ザー処理の前後においてpHを3〜10に調整すること
を特徴とするものである。pH調整は通常、pH調整剤
(食品添加物や食品素材)を添加することにより行う。
なお商品の差別化のために、乳化安定剤、品質安定剤、
色素、香料、コーヒー、糖質・油脂・タンパク質等の食
品素材を使用しても構わない。
【0027】食品添加物(化学合成品以外の食品添加
物;いわゆる天然添加物も含む)とは、主としてクエン
酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(以下、重曹とい
う)、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、アンモニ
アなどの弱アルカリ性剤や低濃度かつ少量の炭酸ナトリ
ウムや水酸化ナトリウム、かんすい等の強アルカリ性
剤、クエン酸や酢酸などの弱酸性剤や低濃度かつ少量の
塩酸などの強酸性剤である。
【0028】食品素材とは、例えばヨーグルトなどの乳
酸発酵食品、柑橘系の酸性果汁等のほか、使用する水
(原料に加える水、それに混合する熱水、反応停止用の
冷却水、その後他の成分を調合する際に添加される水や
希釈水等を含む)が酸性・アルカリイオン水、温泉水、
地下水、海水、それらの氷や氷水、それらを逆浸透膜ろ
過処理、活性炭処理等により浄化処理した飲料水適合水
など)も含む。
【0029】pH調整の時期は、高温高圧処理、高圧ホ
モジナイザー処理の前後、すなわち、前工程において原
料(液)をあらかじめpH調整しておく方法、途中の工
程において熱水のpHを調整しておく方法、直後の工程
において注入冷却水のpHを調整しておく方法、または
後工程において系外に出た生成液の中和を含めてpHを
調整する方法のいずれを選択しても構わない。
【0030】pH調整剤については、従来、塩酸などの
強酸を高濃度で大量に用いる加水分解(pH3未満)に
よってタンパク質原料から調味料液などを製造したり、
水酸化ナトリウムなどの強アルカリを高濃度で大量に用
いる加水分解によってセルロール原料を可溶化する。そ
して塩酸や水酸化ナトリウム等は食品加工助剤として使
用許可を受けた食品添加物であるが、劇薬を大量に扱う
危険性、作業環境の悪化、脱塩工程の手間、装置の腐
食、中和に逆液性の強アルカリや強酸などを使用する
等、問題点が多い。これに対して請求項3の発明では、
主としてクエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢
酸ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどの弱アルカリ成
分や少量の炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の強ア
ルカリ成分を低濃度で用いることによって、原料液のp
Hをアルカリ側にpH10までの範囲で調整するか、ま
たは主としてクエン酸、酢酸などの弱酸成分やそれらを
含む食品素材、少量の塩酸などの強酸成分を低濃度で用
いて原料液のpHを酸性側にpH3までの範囲で調整す
ることによって、大豆スラリーの物性改良や部分分解、
選択的な成分分解をより安全にかつ経済的にも有利に行
うことができる。
【0031】過去、超臨界条件において酸やアルカリ添
加によって、加水分解反応が促進される知見は得られて
いる(特公平03−36871;森ら、化学工学会徳島
大会講演要旨集p161、1999年)。本発明者ら
は、食品原材料を水の亜臨界または超臨界条件で高温高
圧加工する場合において、pH調節が色調や物性を有効
に制御する手段であることを見出した。これによって温
度、圧力、時間の要素とともに調節の幅が増え、生成物
(液)の品質調整、差別化を多彩に行うことが可能にな
る。また、グルコースの生成(すなわちセルロースの部
分的な分解=食感の改良;ただし本発明ではグルコース
の生成は主たる目的ではなく、分析手法上グルコースの
生成を指標にしたが、実際にはセルロース高分子の部分
的な崩壊が本来の目的である。条件的にはグルコース生
成の最適条件よりも穏和な条件である)に付加価値を見
出す場合など、他の目的によっては圧力や温度条件を低
く設定することも可能であり、装置コストや運転コスト
を大幅に軽減することが可能になる。
【0032】請求項4の発明は、請求項1または請求項
2または請求項3の発明を前提として、得られた豆乳に
通常の凝固剤(ニガリ;塩化マグネシウム、すまし粉;
硫酸カルシウム、GDL;グルコノデルタラクトン、塩
化カルシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸などの有機
酸、トランスグルタミナーゼ(以下、TGという)な
ど)、またはゲル化剤(寒天、ゼラチン、カラギーナ
ン、カードラン、デンプンなど)を加え、凝固を行うこ
とを特徴とするものであり、凝固物を成形するなどして
豆腐(絹ごし豆腐、木綿豆腐)やその2次加工品(生揚
げ・厚揚げ・油揚げ生地、ガンモドキの生地)を製造す
ることが可能である。タンパク質とは原料大豆由来の大
豆タンパク質のほか、分離大豆タンパク質、ゼラチン、
グルテン、卵白、乳清タンパク質などを指す。
【0033】請求項4の発明によれば、大豆(ほぼ全
粒)スラリーから得た滑らかな食感の豆乳に対して通常
の凝固剤を添加することによって、大豆のほぼ全粒を豆
乳(豆乳飲料)や豆腐などに利用することができ、絹豆
腐としての収率は生大豆1に対して約8倍(湿重量)と
なる。従来の豆腐製造方法では生大豆1に対して約5倍
(湿重量、約12%brix)であるので、およそ40〜60
%の歩留り向上になる。また、繊維質、特にペクチン質
などの高分子構造の変化によって保水性が高まり、従来
よりも保水力のある豆腐となる(ただし、温度や時間等
の条件によっては高熱によるタンパク質の過変性が起こ
り、若干硬さが出にくくなるケースもある)。さらに高
熱によるタンパク質の過変性が多少あっても、TGの作
用によって十分な弾力を付与することが可能になる。ま
た大豆タンパク質や卵白などの添加や濃縮装置によっ
て、タンパク質濃度を高め、かつその熱凝固性や高分子
間の相互作用も寄与してTG併用の効果も増強され、ま
たはカードランやカラギーナンなどのゲル化剤の添加に
よって、食感的にしっかりした豆腐または豆腐様食品を
形成することができる。ちなみに、絹豆腐状に凝固させ
るには、タンパク質の種類にもよるが、タンパク質濃度
はおよそ3wt%以上、好ましくは5〜6wt%が必要であ
る。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態として
丸大豆スラリーの加工を例に図面を参照しながら説明す
るが、本発明は、大豆(全脂丸大豆・脱皮大豆・脱胚軸
大豆・脱脂大豆など)またはその浸漬大豆に水を加えな
がら粗粉砕したスラリー、または大豆もしくは浸漬大豆
の半割れ状、粗粒状、微粉状、フレーク状のものに水を
加え、混練したスラリーについても適用できる。なお水
の亜臨界条件と超臨界条件については、図3に示す。
【0035】本発明による大豆スラリーの加工システム
の基本的構成は、図2と図5に示すような各工程と装置
を適宜組み合わせたシステムである。なお従来の加工シ
ステムを図1と図4に示す。
【0036】図2と図5に示すように大豆スラリーは、
大豆を浸漬し湿式粉砕機で加水しながら得るか、脱皮機
で脱皮した脱皮大豆(半割れ状態も含む)を浸漬したの
ち湿式粉砕機で加水しながら得るか、大豆を乾式粉砕機
にて粗粉砕したのち分級機によって種皮や胚軸を除いた
脱皮・脱胚軸大豆に水を加え混練して得るか、大豆を乾
式粉砕機によって粉状にしたのち(あるいは市販粉大豆
をそのまま使用する)水を加えて混練して得るか、また
は大豆を圧偏機にて圧偏した後の圧偏大豆(あるいは市
販圧偏大豆をそのまま使用する)に水を加え混練して得
ることができ、その際公知の装置を使うことができる。
なおスラリー調製に用いる水としては、氷、氷水、100
℃以下の温水や水蒸気、100℃以上の高温高圧水や水蒸
気(過熱水蒸気)も使用できる。
【0037】大豆スラリーには、必要に応じてpH調整
剤を添加し、また必要に応じて高圧ホモジナイザーを1
回〜数回通すなどの前処理を行う。未処理または前処理
済みの大豆スラリーは、供給ポンプを介して高圧ポンプ
によって予熱装置を経て反応混合部へ送られる。次いで
反応混合部で別途調製された熱水(水蒸気)と混合さ
れ、所定の温度、所定の時間保持した後、水(反応温度
より低い水)を注入するか、オリフィス等により減圧し
フラッシングするか、熱交換器(プレート式、シェル&
チューブ式、掻き取り式など)を通過させることによっ
て、急激に冷却を行う。こうして高温高圧短時間の加熱
を行う。そのまま豆腐等の製造を行う場合は、凝固温度
(一般に60〜90℃、充填豆腐の場合は0〜20℃)
付近まで冷却する。次にオリフィス、比例弁、背圧弁や
ロータリーバルブ、バルブ、オリフイス、ポンプ、シリ
ンダー等の取出装置を介して、高圧系内から豆乳(大豆
スラリー)を得る。まだざらつきが残る場合、必要に応
じて供給ポンプを介して接続される高圧ホモジナイザー
に1回〜数回通して豆乳を得る。また必要に応じて豆乳
のpHを調整する。
【0038】得られた豆乳はそのまま飲料用製品として
もよいが、その豆乳をベースに風味、味、濃度、pH、
安全性等を調整した上で豆乳飲料、清涼飲料などとして
商品化することもできる。
【0039】また前記豆乳は、必要に応じてpH調整や
適度な加熱を行い、豆腐や生揚、油揚などの加工品を製
造する工程にも利用できる。
【0040】高圧ホモジナイザーは、例えば10〜20
0MPaに加圧した原液試料を極少の隙間から噴射させ
インパクトリングに激突させることによりせん断、破
砕、均質化するものである。
【0041】高温高圧装置は超臨界または亜臨界流体用
の加熱装置であり、水や原料(大豆スラリー)を加熱す
る熱源としては、溶融塩浴装置、流動砂浴装置、電気炉
装置、電磁誘導加熱装置、ジュール加熱装置、または高
圧ボイラーからの高圧水蒸気による蒸気吹き込み等があ
り、直接式加熱または間接式加熱など各方式に限定され
ず、これらを組み合わせて使用することも可能である。
原料または得られる豆乳のpH調整、高圧ホモジナイザ
ー処理等の湿式微粉砕は必要に応じて行われる。ただ
し、酸化剤(酸素、過酸化水素など)の添加による酸化
反応(燃焼など酸化分解、熱分解)は本発明の意図する
ところではない。
【0042】また上記加工システムには、高温高圧装置
と連結される高圧ポンプや、加熱装置として高温高圧水
を注入する高温高圧水注入装置、または高圧水蒸気を吹
き込む高圧水蒸気吹き込み装置が備えられると共に、冷
却装置(冷水注入装置)、減圧装置(オリフィス、背圧
弁、蒸発缶などで構成される)、熱交換器(多管式、プ
レート式、掻き取り式など)、取出装置(背圧弁、ポン
プ、ロータリーバルブ、比例バルブ、オリフイス、シリ
ンダーなど)が配設されている。熱交換器としては多管
式、プレート式、掻き取り式等いずれのものでもよく、
その種類は問わない。
【0043】このような構成により上記大豆スラリーに
対し、飽和蒸気圧以上の高温高圧条件で1段ないし多段
階または連続的に温度、圧力を加減させる。冷却水注入
装置によって水を注入するか、減圧装置を介して減圧前
の流体温度における飽和水蒸気圧未満に1段ないし多段
階に減圧し、水蒸気を放出させ(この場合、濃縮も伴
う)、急速あるいは多段階的冷却工程を行う。多段階的
または連続的温度降下の場合、上記加熱工程と同様な加
工(反応)が行なわれる。最終的には、取出装置を介し
て取出すときに大気圧および大気圧時の水沸点以下の温
度に調節する。これらの段階的加熱工程や段階的冷却工
程はそれぞれ複数の条件を組み合わせてもよい。高温高
圧水の注入や高圧水蒸気の吹き込みは数回行ってもよ
い。また減圧装置から得た高圧高温水蒸気や、熱交換器
で排出した高温水や温水(またはシリコーンオイル等の
熱媒)は、再び原料の加熱に使うことができるため、エ
ネルギー循環による経済的なシステムを構築しやすい。
特に水蒸気は、気体であり移送しやすく、直接加熱や間
接加熱でその潜熱を利用できるので、効率の良い経済的
な加工システムを実現できる。
【0044】以上の加工システムには次のような使用の
態様が考えられる。最初に、高圧ホモジナイザーで処
理し、次いで高温高圧水加工を行う。最初に高圧ホモ
ジナイザーで処理し、次いで高温高圧水加工を行い、再
度高圧ホモジナイザーで処理する。最初に高温高圧水
加工を行い、次いで高圧ホモジナイザーで処理する。
高圧ホモジナイザー処理と、高温高圧水加工をほぼ同時
に行う。両装置を一体化して行う;具体的には高圧ホモ
ジナイザーの高圧粉砕部の第1ステージと第2ステージ
の中間またはその直前・直後に熱水を注入。これら
を、交互に数回繰り返し、その回数は問わない。またこ
れらの前後において必要に応じてpH調整を行う。得ら
れた豆乳は必要に応じて調味、風味を調整して豆乳(飲
料)や清涼飲料水となる。また、得られた豆乳に必要に
応じて豆乳や大豆タンパク質などを添加し、その豆乳ま
たは調整豆乳に凝固剤またはゲル化剤を添加して凝固さ
せ、豆腐(豆腐様食品)またはその2次加工品を製造す
る。
【0045】また上記加工システムは、豆乳飲料や清涼
飲料の製造工程に組み込まれるように構成されている。
すなわち豆乳飲料や清涼飲料の製造に使う場合、通常の
豆乳の代わりに本発明による(全粒)豆乳を使用する。
本発明の豆乳は大豆種子中のほとんどの成分を含んでい
る一方で、不溶性の繊維質や沈殿物をほとんど含まない
滑らかな液体であり、条件によっては独特の青臭みを除
去し、香ばしい炒り豆臭やコーヒー風味を持たせること
ができる。また条件によっては大豆中のトリプシンイン
ヒビターをほとんど失活させることも可能である。そし
てすでに無菌状態であり、あえて従来法による殺菌工程
は要しない。また本発明による豆乳は大豆のほぼ全量を
使用するので、同じ濃度を得る場合は歩留まりが約10
〜60%増加する。最近豆乳の消費量は増加傾向にあ
り、その収率アップにより、天然食物繊維の豊富な飲料
としての需要に拍車がかかることが見込まれている。
【0046】また上記加工システムは、豆腐の製造工程
に組み込まれるようにも構成されている。すなわち通常
の豆腐の加工に使う場合、通常の豆乳の代わりに本発明
による豆乳を使用する。本発明による豆乳は大豆種子中
のほとんどの成分を含んでいるが、不溶性の繊維質や沈
殿物をほとんど含まない滑らかな液体であり、豆腐用豆
乳として使用しても豆腐の品質に影響を及ぼさない。条
件によっては保水性のある状態も得られ、豆腐の保水性
を補強するような付加価値がある。豆乳の場合と同様に
歩留まりが約10〜60%増加する。表1に示したよう
に、中規模の生産工場では設備費やランニングコストを
考慮しても1丁当たり数円の増収になるので経済性評価
も良い。
【0047】以下、上記の加工システムについてさらに
具体的に説明する。まず、各種方法で得た大豆スラリー
を必要に応じて高圧ホモジナイザーにより例えば10〜
200MPaで前処理し、微細化、細胞組織破壊、微乳
化等する。また必要に応じてpH調整を行う。次に高圧
ポンプで圧送し、高温高圧装置に送る。ここで、高温高
圧系内(すなわち高圧ポンプから取出装置までの間)の
最高温度における飽和蒸気圧以上(例えば200°Cの
とき1.5538MPa以上、300°Cのとき8.5
81MPa以上;日本機械学会偏「蒸気表」参照)で圧
送する(図3参照)。また、例えば400°C、30M
Paの高温高圧水注入装置による注入や、高圧水蒸気
(その高圧系の圧力と同等以上の圧力で水蒸気状態また
は超臨界流体状態、例えば300°C、8.5MPaや
400℃、30MPa等)の吹き込み装置による吹込み
によって直接加熱する。すなわち、水の亜臨界状態が1
00°C以上かつその温度における飽和蒸気圧以上の圧
力(例えば150°Cのとき0.476MPa以上)、
または水の超臨界条件(374°C以上かつ22.1
MPa以上)を、1または2以上の条件を組み合わせ
て、各条件を所定時間(0.001秒〜60分)維持形
成する。
【0048】この工程によって、大豆中の成分(タンパ
ク質、繊維質、糖質等)を豆乳飲料として滑らかでかつ
栄養特性を保つように加工できる。条件によって青臭み
の除去や香ばしい風味を持たせることも可能である。ま
たやや穏やかな条件では、大豆タンパク質を適正な変性
状態(高次構造の変化)にすることができ、豆腐用豆乳
として凝固性、保水性などの加工特性、食感、栄養特性
を損なわないように加工できる。これらは食品流通上、
ほぼ無菌状態になる。条件によっては負の栄養成分であ
る大豆オリゴ糖(ラフィノース、スタキオースなど鼓腸
成分)の分解やトリプシンインヒビターの完全失活も行
うことができる。遺伝子組み換え大豆を原料とした場
合、導入遺伝子由来のDNAやタンパク質を機能を発揮
しないように十分変性させることもできる。
【0049】高温高圧処理の前工程である高圧ホモジナ
イザー処理では、10MPa、1回処理によって、大豆
スラリーの粒子(0.5〜2mm程度)が微細化され
て、100〜10μm以下の滑らかなペースト状にな
り、多少ざらつき感が残るがそのまま食品原料としても
利用できる。例えばそのまま豆乳飲料としたり、通常の
凝固剤やゲル化剤を用いて豆腐(豆腐様食品)またはそ
の2次加工品として製品にすることも可能である。
【0050】前処理に高圧ホモジナイザーを用いる利点
は、後工程で高圧系に導入する際高圧ポンプによる送液
が容易になり、流動性が高くなり、熱伝達、伝熱の効率
が良くなることである。すなわち、大きな粒子があると
高圧ポンプの逆止弁の全閉を阻害して送液ができなくな
る恐れがあり、また物理的にもできるだけ細かくした方
ができる限り低い温度圧力条件で、しかもできるだけ短
時間の条件によって原料全体を均一、正確かつスムーズ
に加工することができ、風味や色合いに違和感のない食
品原料としての特性を維持することができる。さらに細
粒化により流動性が高まるので、原料への加水を最小限
にできる効果もある。
【0051】また上記高温高圧加熱加工済みの「大豆ス
ラリーを含む高温高圧流体」を、直接または冷却工程途
中または冷却工程を終えた後、背圧弁またはロータリー
バルブ、比例バルブ、ポンプ、オリフイス、シリンダー
等の取出装置を介して高温高圧系から加工済み原料を取
り出す工程が設けられている。
【0052】また上記加熱加工済みの「大豆スラリーを
含む高温高圧流体」を、直接または冷却工程途中または
冷却工程を終えた後、高圧ホモジナイザーを用いて例え
ば10〜200MPaで後処理(微細化、細胞組織破
壊、微乳化等)する工程が設けられている。なお同様の
微粉砕効果が得られるならば高圧ホモジナイザーに限ら
ず、いかなる湿式粉砕機(コロイドミル等)を用いても
構わない。
【0053】ここで大豆スラリーの高温高圧加工では、
前処理の高圧ホモジナイザーによって原料粒子の微細化
やタンパク質や繊維質など高分子の高次構造の変性が起
きる。そのため分子各部位で様々な反応に敏感になり、
その後の工程の高温高圧水による粗分解や熱・圧力によ
る変性をより穏やかな温度・圧力条件により短時間かつ
正確に行なうことが可能になる。また大豆や大豆成分を
含む場合は、大豆組織すなわち「へそ」や種皮等の柔軟
化、細胞膜や細胞壁組織等の柔軟化・粗分解、大豆中の
構成高分子(セルロース、ペクチン、タンパク質、DN
A、例えば遺伝子組換大豆中の微生物由来DNAやタン
パク質等)に対する熱・圧力・時間による変性、タンパ
ク質であればSS結合(イオン結合、静電結合、疎水結
合、水素結合)やサブユニット結合の解離や再結合によ
る高分子の高次構造(一次構造ないし四次構造)の変化
や、大豆中の構成成分、即ち前記高分子や消化酵素阻害
成分トリプシンインヒビター(タンパク質)の失活や、
スタキオースやラフィノースといった鼓腸性オリゴ糖
(嫌われる成分)や、ダイジン、ゲニスチンというイソ
フラボン配糖体(糖鎖を切ったイソフラボンはより高い
女性ホルモン活性がある)等の低分子成分が副反応とし
て部分的に分解し、付随的に栄養価を高め得る。青臭み
の原因とされるn−ヘキサナール等の分解もでき、嗜好
性を向上させ得る。またタンパク質や不溶性繊維質の一
部分もわずかに副反応として粗分解し、甘みや旨味成分
(低ないし中分子)を生成し得る。
【0054】このような加工システムにより超臨界条件
と亜臨界条件の温度条件を段階的または連続的に選択す
ると、次のような各成分に応じた加工が可能である。
【0055】(1)亜臨界条件(100〜374°C、
各温度における飽和蒸気圧以上の圧力下)では、繊維質
やタンパク質など大豆の構成高分子が変性し、細胞壁な
ど繊維質が軟化し、タンパク質で生理活性物質(悪影響
成分)であるトリプシンインヒビターを失活させ消化性
を向上させる。高分子、例えばタンパク質であれば、サ
ブユニット集合体(四次構造)から個々のサブユニット
(三次構造)への解離、個々のサブユニット(三次構
造)の緩みや疎水性領域の露出などの変化、アルファー
螺旋構造やベータ構造(折りたたみ構造)のランダム構
造への変化(二次構造)が起こる。繊維質であれば、高
次構造が変化し、粘性や保水性の増強を行うことができ
る。
【0056】また糖鎖やアミノ酸鎖(一次構造)は、部
分的には分解を受け、中程度の分子(例えば、繊維質は
ポリデキストリンへ、タンパク質はポリペプチドへ)に
分解できる。本発明では原料はほとんど分解せず、その
一部分について変性した状態からβ−D−グルコース
(セルロースの構成成分であり、甘み成分)やそれが数
個から数百個連なったいわゆる可溶性食物繊維、グルタ
ミン酸(大豆中最も多いアミノ酸であり、旨味成分)、
アミノ酸が2個以上つながったペプチドや10個以上つ
ながったポリペプチドのような甘みや旨味、生理活性成
分への低分子化が可能である。完全に分解しなくとも中
程度に分解した分子も選択的に適量含有させ得る。ま
た、きな粉や煎り豆のような香ばしい香りやコーヒー風
味等の微量な臭い成分の風味付けや青臭みの軽減・除去
など、付加価値のある成分を加工生成物中に含ませるこ
とができる。このような風味成分は味覚に感じる程度の
少量でよい。例えばグルタミン酸であれば、最終食品中
0.03〜0.1%程度含有すれば十分旨みを感じると
言われている。このように本発明の実施形態は食品添加
物を使用しない風味付け加工も含んでいる。
【0057】一方、遺伝子組み換え作物(大豆等)の場
合、バクテリア由来のDNA(除草剤「Roundup
Ready」耐性遺伝子)を含めて、DNAやRNA
(遺伝子)を変性させ、一部をオリゴヌクレオシドに分
解することが可能である。完全に分解しなくとも中程度
に分解した分子がより多く含まれるように加工された状
態になる。
【0058】本発明の条件は通常の豆乳や豆腐製造の加
熱条件よりも強い条件であるため、遺伝子や遺伝子由来
のタンパク質も十分に変性し機能し得ない状態になるた
め、GMO大豆を使った豆乳や豆腐への信頼が高まる。
【0059】(2)超臨界条件(374°C以上、2
2.1MPa以上)では高分子は大半が分解を受け、し
たがって低分子にすることができる。例えば、繊維質や
ポリデキストリンからは例えば単糖であるβ−D−グル
コースのような甘み成分を生成させ、タンパク質やポリ
ペプチドからは例えばアミノ酸の1種であるグルタミン
酸(大豆中最も多いアミノ酸)のようないわゆる旨味成
分を生成させ、これらを多く含む味を向上させた加工品
を得ることができる。バクテリア由来の組み換え遺伝子
をヌクレオシド、ヌクレオチド、アグリコン(グアニ
ン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシルなどの塩
基)まで分解し、より安心できる加工品を得ることもで
きる。また大豆オリゴ糖(ラフィノース、スタキオース
など鼓腸成分)を単糖に部分分解し、鼓腸作用を低減で
きる。また大豆イソフラボンの配糖体(ゲニスチンやダ
イジン等)の糖質残基を除去し、アグリコン(ゲニステ
インやダイゼイン等)に分解し、女性ホルモンとしての
生理活性効果を高めることができる(糖質部分は分解を
受けやすく、イソフラボン骨格は比較的安定と見られ
る)。また青臭みの分解、除去も可能になる。また水の
超臨界条件によっては原料のほとんどが分解し、清涼飲
料水(たとえば黒酢蜂蜜飲料様製品)としての利用、食
品製造水としての再利用、排水設備での生物処理による
浄水などの用途が考えられる。
【0060】ただし、超臨界条件の反応時間が極短時間
の場合には亜臨界条件と同様な現象が起きる場合がある
ので、過度の分解までは起きないように例えば0.1秒
以下の反応時間をとることによって本来の目的を達し得
る(前述したように本発明の趣旨は水の亜臨界条件や超
臨界条件を採用することによって原料のほとんどを分解
せず上記のような変性・変化した状態に加工することに
ある)。
【0061】上記の加工システムによれば、高圧送液ポ
ンプは高価なスラリー対応ポンプである必要がなくな
り、初期コストの軽減が図られる。また背圧弁などが閉
塞する心配が少なくなり、安定な稼動と運転コストの軽
減が図られる。また高温高圧系(原料送液ポンプ、加熱
工程、冷却工程、取出装置工程を含む)において、高温
高圧条件から高温高圧系内の最低温度における飽和水蒸
気圧以上の圧力までの範囲で、オリフィス、比例バル
ブ、背圧弁等を介して1段ないし多段階に減圧変更し、
各圧力条件を所定時間設けてもよい。亜臨界域での減圧
過程では当該温度における飽和蒸気圧以下に減圧した場
合、水蒸気化と同時に濃縮が可能であり、ほぼ原料濃度
を維持することができる。一方、超臨界域では減圧して
も相の変化や濃縮は起こらない。
【0062】また前記加熱加工済みの大豆スラリーの高
温高圧流体(豆乳)を、熱交換器を通して急速あるいは
多段階的または連続的な冷却を行う冷却工程および多段
階的または連続的温度降下の場合、上記加熱工程と同様
な加工(反応)を行う。なお目的に応じて100°C以
下に保持しながら通常の豆腐製造法と同様にタンパク質
の変性を行い、最適な製品条件を設定してもよい。
【0063】さらに上記加工システムにおいて加熱工程
(原料液の予熱など)と冷却工程(減圧工程を含む)等
は、熱エネルギー循環的なシステムとして構成すること
が好ましく経済的である。すなわち上記加工システムに
おいて更に、冷却工程で得た飽和水蒸気、またはその飽
和水蒸気を加圧し再凝縮させた高温高圧水、または熱交
換器を経て得た高温高圧水または飽和水蒸気の熱回収を
行い、その熱を再び原料の流入側に戻し、熱交換器によ
る間接加熱または直接加熱によって原料を予熱する。
【0064】上記加工システムの製造規模に応じた使用
方法を図5を用いて概説する。図5に示すように通常の
豆腐製造法によって浸漬丸大豆から挽き水を加えて粉砕
して得た大豆スラリー(いわゆる「生ゴ」)や、脱皮半
割れ大豆、粗粉砕大豆、大豆粉、圧偏大豆などに加水、
混練して得た大豆スラリーを、供給ポンプを用いて高温
高圧装置に供給する。ただし、その前処理として高圧ホ
モジナイザーで微粉砕する場合や予熱装置にて予熱する
場合もある。一方、水を供給ポンプにて高温高圧装置に
送り、加熱装置によって加熱し、熱水(100〜800
°C前後)を調製する。その熱水を原料スラリーに混合
し、所定の温度に所定の時間保持する。その後直ちに冷
水注入またはフラッシングまたは熱交換による冷却を行
う。必要に応じて複数段階の条件を経て所定温度まで冷
却する。その後取出装置を経て高圧系内から豆乳を取り
出す。取り出した豆乳は再度高圧ホモジナイザーにて処
理してもよい。得られた豆乳はそのまま豆乳飲料または
清涼飲料の原料として風味やpHの調整を行い製品化で
きる。また、得られた豆乳は必要に応じてpHや濃度の
調整、品質安定剤の添加等を行い、ニガリ、すまし粉、
GDL、TG、ゲル化剤等によって凝固を行い、豆腐ま
たは豆腐様食品を製造する。なお高温高圧装置は連続式
が基本であるが、極少量の処理であればバッチ式を採用
してもよい。
【0065】以上から明らかなように本発明は、大豆ス
ラリーのみならず、同様な植物性食品原料、例えばミカ
ン、リンゴ、ブドウ、桃などの果実スラリー、茶葉やコ
ーヒー豆のスラリー、日本酒・ワイン・ビールや醤油な
どの発酵後の「もろみ」のスラリー等、可食性植物性廃
棄物を伴う加工食品や飲料にも適用することができる。
【0066】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明する。以下の実施例では、蒸留水をプランジャー2
連式高圧ポンプ(NP−AX−15日本精密科学製)で
送液し、出口の背圧弁にて所定の高圧力に調整し、次い
で高温高圧装置を通過させ所定の高温度まで加熱し、高
温高圧水すなわち超臨界水または亜臨界水を得た。一方
別経路で、原料液を同じく高圧で送液し前記高温高圧水
と合流させ、大豆スラリーを100℃未満に予備加熱
し、一気に所定温度(100〜500°C)に加熱し、
さらに所定の時間(0.001〜60秒)経過後、冷却
装置を通過させてできるだけ急速に水温まで冷却し、背
圧弁を介して加工液を得た。なお高温高圧反応の時間は
加熱装置から冷却装置までの配管長やポンプ流速を考慮
しながら調整した。
【0067】(実施例1)生大豆(平成10年度産米国
産オハイオ、GMO混入大豆)10kgを水温15℃の
井戸水で15時間浸漬した。この漬大豆22kgを湿式
粉砕機(コニカルグラインダーG08型)にて井戸水2
7.5kgを加水しながら粗粉砕し、生ゴ(大豆スラリ
ー:A)49.5kg(生大豆約4倍加水)を得た。こ
の大豆スラリーAは高圧ポンプを介して7ml/分で高
温高圧装置へ導入した。別途に、高圧ポンプを介して水
を7ml/分で高温高圧装置へ導入し、電気炉内を通過
させ、120〜800℃の熱水を調整した。出口部の背
圧弁によって内圧を30MPaに調整した。反応部で大
豆スラリーに熱水を注入・混合し、100〜400℃の
反応温度で水熱反応を行った。水の密度を考慮して約1
5秒間反応させた後、反応停止のため高圧ポンプを介し
て水を7ml/分の速度で注入した。なお混合から水注
入までの反応部の容積は約3.8mlであった。反応液
(豆乳)は熱交換器を介して常温まで冷却後、背圧弁よ
り取り出した。各反応温度による生成液(豆乳)につい
て、その反応条件、分析結果を表1に示す。
【0068】また各豆乳に対し、ニガリ(ホワイトニガ
リ、ナイカイ塩業製)を0.12、0.18、0.2
4、0.30、0.31%添加し、十分に混合した後、
80℃の湯浴中で40分間静置して豆腐を調製した。冷
却後、3,000rpmで15分間遠心分離を行い、各
反応条件における保水性を測定した。その結果も併せて
表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】表1に示すように、混合温度180°Cを
超えると、豆乳のざらつきが無くなり、滑らかな舌触り
になった。また香ばしい風味と同時に青臭みが軽減し
た。固形分は280°Cを超えると減少したが、360
°Cまでは30%の減少、400°Cでは約1/2とな
った。グルコース生成量をみると、380°Cで最大値
を示した。一般細菌数は140°C以上でゼロになっ
た。豆腐の保水力は、260〜280°Cまでは有して
おり、TGを補強するとさらに320°Cまでは増強さ
れた。豆乳の粘度は200〜220°Cで最大値を示し
たが、このことはペクチンやタンパク質など水溶性高分
子構造がほぐれて(変性して)、保水性が高まったこと
を示している。豆腐の保水性をみると、220°Cまで
は豆腐の保水性は対照試料の約50%近くを維持してい
たが、240°Cを超えると50%以下に急に低下して
いる点と一致していた。
【0071】(実施例2)実施例1において、大豆スラ
リーAを高圧ホモジナイザー(NS2006LPON
Y、Niro Soavi社製)により140MPaで
1回処理し、微粉砕した(大豆スラリーB)。この大豆
スラリーBを同様に高圧ポンプを介して7ml/分で高
温高圧装置へ導入した。同様に、反応温度140℃(亜
臨界条件)および380℃(超臨界条件)で水熱反応を
行った。また高温高圧処理後の豆乳についても高圧ホモ
ジナイザーにより140MPaで1回処理し、微粉砕し
た。高圧ホモジナイザーによる前後処理を組み合わせた
場合も同様に処理した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】表2に示すように、140°Cでは豆乳の
ざらつきは残るが、前処理あるいは後処理に高圧ホモジ
ナイザーを使用した場合、ざらつきは僅かに少なくなっ
た。さらに高圧ホモジナイザーを前後に使用した場合、
ほぼ滑らかな食感になった。実施例1でも180°Cか
ら食感が滑らかになったが、高圧ホモジナイザーを前後
処理に使用した場合、140°Cでも同様の効果が得ら
れた。また、380°Cでは高圧ホモジナイザーを使用
しなくとも滑らかな食感が得られた。特に後処理で高圧
ホモジナイザーを使用すると、分離しにくく均質にな
り、豆乳や清涼飲料水として製品の品質を向上させるこ
とが可能であった。
【0074】(実施例3)実施例1において、原料の大
豆スラリーに対して最終濃度が1wt%になるように、
クエン酸あるいは重曹を混合した。それぞれの大豆スラ
リーと対照原料について、混合温度260°C、340
°C、400°Cにおける高温高圧処理を行い、同様に
豆乳の品質を評価した。反応時間は約0.1秒であっ
た。その結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】表3に示すように、1%クエン酸区ではグ
ルコース生成が260°C、340°Cで検出され、約
13mg/dlと高濃度であった。対照の無調整区では
400°Cで約4mg/dlの生成であったので、約3
倍の収率になった。このことはセルロースの加水分解が
酸性区ではかなり低温条件でも起こることを示してい
る。グルコースまでの分解は本発明の趣旨ではないが、
中程度の分解や高分子の構造変化もかなり低温側にシフ
トするものと考えられる。また酸性区では高温になって
も着色が少なかった。このことは食品品質としても有利
になる。一方1%重曹区では、若干着色が進みやすく、
グルコースの生成は400°Cでも認められなかった。
しかし260°Cや340°Cにおける凝固性のタンパ
ク質量やタンパク変性度をみると、コントロールや1%
クエン酸区に比べて大きな値を示した。このことから、
豆腐加工適性として重要なタンパク質の性質がより好ま
しいと言える。このように食品添加物である弱酸や弱ア
ルカリを用いて、目的に応じて豆乳品質を有意にコント
ロールできることが実証された(高濃度の強酸や強アル
カリを大量に用いないことも食品危害防止上有利であ
る)。
【0077】以上、実施例1〜3は大豆を用いた例であ
るが、上述したところから明らかなように本発明は植物
性繊維質を含む食品原料にも広く適用することができ
る。
【0078】
【発明の効果】本発明によれば、水の亜臨界条件および
超臨界条件における高温高圧処理によって、大豆スラリ
ー中の各成分(タンパク質や、セルロース、ヘミセルロ
ース、ペクチン質などの繊維質等の高分子、オリゴ糖、
生理活性阻害物質等)は有為に選択的または部分的に変
性・粗分解し、食品原料として再利用しやすく、安全
で、しかも香ばしい香りや青臭み除去、生理活性物質の
失活(トリプシンインヒビター)・増強(イソフラボ
ン)など、品質付加価値を高めることができる。また高
圧ホモジナイザー等による微粉砕加工を前処理として行
うことにより、安価な装置を構成でき、安定な稼働が可
能になる。さらに高温高圧処理の前工程または後工程で
高圧ホモジナイザー処理を行うことにより、高温高圧水
による部分分解や熱・圧力による変性を、より穏やかな
温度・圧力条件でより短時間で、いわゆる「ひと茹で」
程度の加工を正確に行うことが可能になる。またpHを
調整することによって更に穏やかな条件を選択でき、経
済的な装置コスト、ランニングコストを実現できる。し
かもpH調整による各成分の選択性や部分的分解にも効
果的な手法となる。
【0079】さらに高温高圧水を注入したり、高圧水蒸
気を吹込むことにより、不溶性食物繊維やタンパク質、
DNA、大豆オリゴ糖、イソフラボン、青臭み等各成分
に応じた加工条件を設定することが可能であり、大豆ス
ラリーを豆乳や豆腐への加工に最適であり汎用性に優れ
ている。また他の食品(パン、うどん、菓子、ケーキ、
清涼飲料など)の原料にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の豆腐製造工程を示すフロー図である。
【図2】本発明による豆腐製造工程を示すフロー図であ
る。
【図3】水の超臨界・亜臨界条件を示す水の飽和蒸気線
図である。
【図4】従来の大豆スラリー加工システムを示す装置構
成図である。
【図5】本発明による大豆スラリー加工システムを示す
装置構成図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿尻 雅文 宮城県仙台市太白区三神峯1−3−4− 203 (72)発明者 高井 東一郎 石川県石川郡野々市町稲荷一丁目1番地 株式会社高井製作所内 (72)発明者 栗津 透 石川県石川郡野々市町稲荷一丁目1番地 株式会社高井製作所内 (72)発明者 笠間 健二 石川県石川郡野々市町稲荷一丁目1番地 株式会社高井製作所内 (72)発明者 西 正人 石川県石川郡野々市町稲荷一丁目1番地 株式会社高井製作所内 (72)発明者 天野 原成 石川県石川郡野々市町稲荷一丁目1番地 株式会社高井製作所内 Fターム(参考) 4B001 AC08 BC08 BC12 EC05 4B017 LC02 LC03 LG08 LP18 4B020 LB02 LB18 LC04 LC05 LC08 LG01 LP02 LP03 LP08 LP09 LQ03 LQ04 LR02 LR04

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】大豆に適量の水を加え、必要に応じて粉砕
    し、混練してなるスラリーを、水の亜臨界条件または超
    臨界条件のいずれか一方または両方を組み合わせた高温
    高圧条件下で0.001秒〜60分間加熱することを特
    徴とする豆乳の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、加熱前および/または
    加熱後に大豆スラリーを湿式微粉砕処理することを特徴
    とする豆乳の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2において、大豆ス
    ラリーのpHを3〜10に調整することを特徴とする豆
    乳の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方
    法によって得られる豆乳に、必要に応じてタンパク質濃
    度を高めたのち、凝固剤または/およびゲル化剤を加え
    て前記豆乳を凝固させることを特徴とする豆腐またはそ
    の二次加工品の製造方法。
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